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明細書 :抗微生物活性を有するコラーゲン様ペプチド及びその組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-014126 (P2017-014126A)
公開日 平成29年1月19日(2017.1.19)
発明の名称または考案の名称 抗微生物活性を有するコラーゲン様ペプチド及びその組成物
国際特許分類 C07K  14/00        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
C07K   7/08        (2006.01)
C12Q   1/18        (2006.01)
FI C07K 14/00
A61P 31/04
A61K 37/02
C07K 7/08 ZNA
C12Q 1/18
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 31
出願番号 特願2015-130295 (P2015-130295)
出願日 平成27年6月29日(2015.6.29)
発明者または考案者 【氏名】小出 隆規
【氏名】増田 亮
【氏名】工藤 正和
【氏名】太宰 結
【氏名】美間 健彦
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100178445、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 淳二
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4C084
4H045
Fターム 4B063QA01
4B063QA06
4B063QQ06
4B063QQ15
4B063QR48
4B063QR75
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4B063QX01
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA06
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4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA13
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA31
4C084MA34
4C084MA35
4C084MA36
4C084MA37
4C084MA38
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB351
4C084ZB352
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA50
4H045EA01
4H045EA29
4H045FA20
4H045FA33
4H045FA51
4H045FA52
4H045GA25
要約 【課題】 体内で分解を容易に受けることなく、強い抗微生物活性を有するコラーゲン様ペプチドを提供する。
【解決手段】 塩基性と三重らせん構造をもち、塩基性残基と疎水性残基の種類を変えたペプチドをスクリーニングしたところ、細菌に対する抗微生物活性をもつペプチドとして、R3Css-Fを得た。そこで、R3Css-Fをリード化合物として、各種コラーゲン様ペプチドを作製し、抗微生物活性に必要なコラーゲン様ペプチドの構造を明らかにすることにより、体内で分解を容易に受けることなく、強い抗微生物活性を有するコラーゲン様ペプチドを提供できる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドであって、
該3本鎖ペプチドは、15~30個の任意のアミノ酸残基からなる同一のアミノ酸配列を有するペプチド鎖の3本から形成され、
各ペプチド鎖は、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含み、
Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよく、
前記ペプチド鎖のカルボキシ末端は、アミド化されていてもよく、
前記ペプチド鎖は、アミノ末端から、
(i) Xaa若しくはYaaがアルギニン(Arg)残基である-(Xaa-Yaa-Gly)-が連続して3回以上繰り返す繰り返し構造を有する、又は
(ii) -(Arg-Arg-Gly)-が連続して2回以上繰り返す繰り返し構造を有する
ことを特徴とする、3本鎖ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の3本鎖ペプチドであって、
前記ペプチド鎖は、カルボキシ末端から1~10個のアミノ酸残基に、少なくとも2個のシステイン残基を含むペプチド基を含み、該システイン残基によるジスルフィド結合により、三重らせん構造を形成する他のペプチド鎖と酸化架橋されてなることを特徴とする、3本鎖ペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の3本鎖ペプチドであって、
抗微生物活性を有することを特徴とする、3本鎖ペプチド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の3本鎖ペプチドであって、
下記式(1)~(10)で表されることを特徴とする、3本鎖ペプチド。
【化1】
JP2017014126A_000019t.gif

【化2】
JP2017014126A_000020t.gif

【化3】
JP2017014126A_000021t.gif

【化4】
JP2017014126A_000022t.gif

【化5】
JP2017014126A_000023t.gif

【化6】
JP2017014126A_000024t.gif

【化7】
JP2017014126A_000025t.gif

【化8】
JP2017014126A_000026t.gif

【化9】
JP2017014126A_000027t.gif

【化10】
JP2017014126A_000028t.gif

[式(1)~(10)において、各式に記載のアミノ酸配列を有するペプチド基のカルボキシ末端がアミド化されたペプチド鎖の3本が、らせん構造を有する3本鎖を形成し、さらに、各ペプチド鎖に含まれるCys残基が他のペプチド鎖のCys残基とジスルフィド結合で架橋されていることを表す。]

【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の3本鎖ペプチド又はその塩を、有効成分として含有することを特徴とする、組成物。

【請求項6】
請求項5に記載の組成物であって、
前記組成物は、抗微生物用であることを特徴とする、組成物。

【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、
前記組成物は、感染症の予防又は治療のための医薬組成物であることを特徴とする、組成物。

【請求項8】
請求項5~7に記載の組成物であって、
前記組成物は、多剤耐性菌に対する抗微生物用であることを特徴とする、組成物。

【請求項9】
ペプチド鎖であって、
任意のアミノ酸残基からなり、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として5~10回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含むペプチド鎖であり、
該ペプチド鎖は、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含み、
Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよく、
前記ペプチド鎖のカルボキシ末端は、アミド化されていてもよく、
前記ペプチド鎖は、アミノ末端から、
(i) Xaa若しくはYaaがアルギニン(Arg)残基である-(Xaa-Yaa-Gly)-が連続して3回以上繰り返す繰り返し構造を有する、又は
(ii) -(Arg-Arg-Gly)-が連続して2回以上の繰り返し構造を有する
ことを特徴とする、ペプチド鎖。

【請求項10】
請求項9に記載のペプチド鎖であって、
前記ペプチド鎖は、カルボキシ末端から1~10個のアミノ酸残基に、少なくとも2個のシステイン残基を含むペプチド基を含むことを特徴とする、ペプチド鎖。

【請求項11】
請求項9又は10に記載のペプチド鎖であって、
前記ペプチド鎖は、アミノ酸配列が配列番号3~11又は19で表されることを特徴とする、請求項9又は10に記載のペプチド鎖。

【請求項12】
請求項1に記載の3本鎖ペプチドの製造方法であって、
15~30個の任意のアミノ酸残基からなる同一のアミノ酸配列を有するペプチド鎖であり、
各ペプチド鎖は、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含み、
Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよく、
前記ペプチド鎖のカルボキシ末端は、アミド化されていてもよく、
前記ペプチド鎖は、アミノ末端から、
(i) Xaa若しくはYaaがアルギニン(Arg)残基である-(Xaa-Yaa-Gly)-が連続して3回以上繰り返す繰り返し構造を有する、又は
(ii) -(Arg-Arg-Gly)-が連続して2回以上繰り返す繰り返し構造を有するペプチド鎖を溶媒に溶解し、自己集合させることにより三重らせん構造を形成させる工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法であって、
さらに、各ペプチド鎖を相互に酸化架橋する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の製造方法で製造されることを特徴とする、3本鎖ペプチド。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物活性を有するコラーゲン様ペプチド及びその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多種の基本骨格及び作用機序を有する抗微生物活性を有する化合物が既に医療に提供されている。しかし、これらの化合物の長年の使用から、現在、多剤耐性菌が認められている。多剤耐性菌は様々な作用機序によってはたらく種々の抗生物質に対して耐性を持つことから、既存の抗生物質による治療が困難であり、医療の現場で問題視されている。そこで現在、多剤耐性菌に対する新薬として抗微生物活性を有するペプチドの利用が期待されている。抗微生物ペプチドの多くは、既存の低分子量の抗微生物化合物とは異なった作用機序を持つと考えられ、多剤耐性菌に抗微生物活性を示す可能性を秘めている。既存の抗微生物化合物が核酸合成阻害、細胞壁合成阻害などの方法によって抗微生物活性を示すのに対し、抗微生物ペプチドは細菌膜破壊や細菌の分裂阻害によって抗微生物活性を示すと考えられている。
【0003】
一方、天然のコラーゲンの特徴的な構造と特性を有する人工的なコラーゲン様ペプチドが、製造され、種々の分野でその応用が検討されている(特許文献1~3)。そして、膜破壊作用に基づく抗微生物活性が期待されるコラーゲン様ペプチドが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、一般に、ペプチドを体内に投与した場合、体内のプロテアーゼにより容易に加水分解され、体内で生理活性を発揮することはできなかった。本発明者は、剛直な三重らせん構造を形成するコラーゲン様ペプチドを静注すると、血中でプロテアーゼに分解されることなく未変化体として定量的に尿中に排泄されることを見出した(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開公報WO2008/114577
【特許文献2】特開2005-263784号公報
【特許文献3】特開2013-074936号公報
【0006】

【非特許文献1】H. Yasuiら、Biopolymers (Pept. Sci.) 100, 705-713 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
体内で分解を容易に受けることなく、強い抗微生物活性を有するコラーゲン様ペプチドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
生体内で分解を受けにくい三重らせん構造に加えて、塩基性をもつペプチドをスクリーニングしたところ、細菌に対する抗微生物活性をもつペプチドとして、R3Css-F(下記式(1)及び図5A参照)を得た。そこで、R3Css-Fをリード化合物として、各種コラーゲン様ペプチドを作製し、抗微生物活性の発現に必要なコラーゲン様ペプチドの構造を明らかにすることにより、本発明を完成させた。
【0009】
具体的には、本発明は、三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドであって、
該3本鎖ペプチドは、15~30個の任意のアミノ酸残基からなる同一のアミノ酸配列を有するペプチド鎖の3本から形成され、
各ペプチド鎖は、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含み、
Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよく、
前記ペプチド鎖のカルボキシ末端は、アミド化されていてもよく、
前記ペプチド鎖は、アミノ末端から、
(i) Xaa若しくはYaaがアルギニン(Arg)残基である-(Xaa-Yaa-Gly)-が連続して3回以上繰り返す繰り返し構造を有する、又は
(ii) -(Arg-Arg-Gly)-が連続して2回以上繰り返す繰り返し構造を有する
3本鎖ペプチドを提供する。
【0010】
本発明の前記三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドにおいて、各ペプチド鎖は三重らせん構造を形成する他のペプチド鎖と酸化架橋されてなる場合がある。
【0011】
本発明の前記三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドにおいて、前記ペプチド鎖は、カルボキシ末端から1~10個に、少なくとも2個のシステイン残基を含むペプチド基を含み、該システイン残基によるジスルフィド結合により、三重らせん構造を形成する他のペプチド鎖と酸化架橋されてなる場合がある。
【0012】
本発明の前記三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドは、抗微生物活性を有する3本鎖ペプチドの場合がある。
【0013】
本発明の前記三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドは、下記式(1)~(10)で表される場合がある。
【化1】
JP2017014126A_000002t.gif
【化2】
JP2017014126A_000003t.gif
【化3】
JP2017014126A_000004t.gif
【化4】
JP2017014126A_000005t.gif
【化5】
JP2017014126A_000006t.gif
【化6】
JP2017014126A_000007t.gif
【化7】
JP2017014126A_000008t.gif
【化8】
JP2017014126A_000009t.gif
【化9】
JP2017014126A_000010t.gif
【化10】
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[式(1)~(10)において、各式に記載のアミノ酸配列を有するペプチド基のカルボキシ末端がアミド化されたペプチド鎖の3本が、三重らせん構造を有する3本鎖を形成し、さらに、各ペプチド鎖に含まれるCys残基が他のペプチド鎖のCys残基とジスルフィド結合で架橋されていることを表す。]
【0014】
また、本発明は、前記3本鎖ペプチド又はその塩を、有効成分として含有する組成物の場合がある。
【0015】
本発明の前記組成物において、前記組成物は、抗微生物用である場合がある。
【0016】
本発明の前記組成物において、前記組成物は、感染症の予防又は治療のための医薬組成物である場合がある。
【0017】
本発明の前記組成物において、前記組成物は、多剤耐性菌に対する抗微生物用である場合がある。
【0018】
また、本発明は、必要とする患者に、前記抗微生物ペプチドを投与することを含む、感染症に対する予防又は治療のための方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、感染症の予防又は治療のための方法における使用のための抗微生物ペプチドを提供する。
【0020】
さらに、本発明は、感染症の予防又は治療用の医薬を製造するための前記抗微生物ペプチドの使用を提供する。
【0021】
前記感染症は、多剤耐性菌を起炎菌とする感染症である場合がある。
【0022】
また、本発明は、ペプチド鎖であって、
任意のアミノ酸残基からなり、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として5~10回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含むペプチド鎖であり、
該ペプチド鎖は、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含み、
Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、 ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよく、
前記ペプチド鎖のカルボキシ末端は、アミド化されていてもよく、
前記ペプチド鎖は、アミノ末端から、
(i) Xaa若しくはYaaがアルギニン(Arg)残基である-(Xaa-Yaa-Gly)-が連続して3回以上繰り返す繰り返し構造を有する、又は
(ii) -(Arg-Arg-Gly)-が連続して2回以上の繰り返し構造を有する
ペプチド鎖を提供する。
【0023】
本発明の前記ペプチド鎖において、
前記ペプチド鎖は、カルボキシ末端から1~10個のアミノ酸残基に、少なくとも2個のシステイン残基を含むペプチド基を含むペプチド鎖の場合がある。
【0024】
本発明の前記ペプチド鎖において、該ペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号3~11又は19で表される場合がある。
【0025】
さらに、本発明は、前記3本鎖ペプチドの製造方法であって、
15~30個の任意のアミノ酸残基からなる同一のアミノ酸配列を有するペプチド鎖であり、
各ペプチド鎖は、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含み、
Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよく、
前記ペプチド鎖のカルボキシ末端は、アミド化されていてもよく、
前記ペプチド鎖は、アミノ末端から、
(i) Xaa若しくはYaaがアルギニン(Arg)残基である-(Xaa-Yaa-Gly)-が連続して3回以上繰り返す繰り返し構造を有する、又は
(ii) -(Arg-Arg-Gly)-が連続して2回以上繰り返す繰り返し構造を有するペプチド鎖を溶媒に溶解し、自己集合させることにより三重らせん構造を形成させる工程を含む製造方法を提供する。
【0026】
本発明の前記製造方法において、さらに、各ペプチド鎖を相互に酸化架橋する工程を含む場合がある。
【0027】
さらに、本発明は、前記製造方法で製造される3本鎖ペプチドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】1本鎖ペプチドR3Css-FmのHPLCクロマトグラム。
【図2】3本鎖ペプチドR3Css-FのHPLCクロマトグラム。
【図3】R3Css-Fペプチドを滅菌水に溶解して測定したCDスペクトルを表す。
【図4】R3Css-Fペプチドを滅菌水に溶解して測定した225 nmのコットン効果の温度変化測定の結果を表す。
【図5A】R3Css-Fペプチドの 3 次構造を表す。 (左図 : N 末端方向から見た構造、右図 : 側面方向から見た構造)
【図5B】R1Css-Fペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5C】R2Css-Fペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5D】R4Css-Fペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5E】R5Css-Fペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5F】R6Css-Fペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5G】R7Css-Fペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5H】XR4Css-Fペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5I】RR2Css-Fペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5J】RR2Css-FSペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5K】RR2Css-FSSペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5L】R3C-Fペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5M】R3Css-Mペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5N】R3Css-Nペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5O】CssR3-Fペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図5P】CssR3-Nペプチドの立体モデルの側面方向から見た構造を表す。
【図6】R3Css-F、R3Css-FD、R3C-F、R3-F、R3Css-M、R3Css-N、CssR3-N及びCssR3-Fの大腸菌に対する増殖抑制活性をCFU assayにより評価した結果を表す。Magainin 2をポジティブコントロールとして、塩基性アミノ酸残基を含まないコラーゲン様ペプチドである(POG)10を併せて評価した。
【図7】Arg残基の数、Arg残基の位置、ペプチド鎖の鎖長の変化と増殖抑制活性の変化について評価した結果を表す。X位は(Xaa-Yaa-Gly)配列におけるXaa位でのArgの配位を、Y位はYaa位での配位を、(X,Y位)はXaa位及びYaa位の両方での配位を表す。
【図8】Magainin 2と比較した、RR2Css-Fペプチドの多剤耐性緑膿菌に対する増殖抑制作用の評価結果を表す。
【図9】R3Css-F、R3-F、magainin 2、POG10及びmelittinを被験ペプチド又は被験化合物とするヒト線維芽細胞に対する細胞毒性試験の結果を表す。
【図10】R3Css-F、R3-F、magainin 2、POG10及びmelittinを被験ペプチド又は被験化合物とする溶血性試験の結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.3本鎖ペプチド
本発明の態様の一つは、3本のペプチド鎖がらせん構造を形成するコラーゲン様ペプチドである。
本発明のコラーゲン様ペプチドは、下記の構造を有する。
三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドであって、
該3本鎖ペプチドは、15~30個の任意のアミノ酸残基からなる同一のアミノ酸配列を有するペプチド鎖の3本から形成され、
各ペプチド鎖は、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含み、
Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよく、
前記ペプチド鎖のカルボキシ末端は、アミド化されていてもよく、
前記ペプチド鎖は、アミノ末端から、
(i) Xaa若しくはYaaがアルギニン(Arg)残基である-(Xaa-Yaa-Gly)-が連続して3回以上繰り返す繰り返し構造を有する、又は
(ii) -(Arg-Arg-Gly)-が連続して2回以上繰り返す繰り返し構造を有する
ことを特徴とする、3本鎖ペプチド。

【0030】
本発明の三本鎖ペプチド、すなわち、コラーゲン様ペプチドは、ペプチド鎖にCys残基を有し、らせん構造を形成する3本鎖ペプチドの各ペプチド鎖間で、ジスルフィド架橋されていてもよい。

【0031】
本発明の前記3本鎖ペプチドは、例えば、配列番号3~11又は19のペプチドを、当業者に慣用の化学合成的手法又は遺伝子工学的手法によって、製造し、これを変性温度以上の水溶媒中に溶解した後に、冷却することにより、コラーゲン様ペプチドを製造し、このコラーゲン様ペプチドを、酸化的架橋することにより製造できるが、これに限定されない。

【0032】
本発明において、ペプチド鎖は、配列番号3~11又は19のアミノ酸配列を有するペプチドのアミノ酸配列に対して1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であってもよい。

【0033】
本明細書において、「コラーゲン様ペプチド」とは、非天然のペプチドであって、天然のコラーゲンと同様に、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し構造を有するペプチド鎖の3本が、三重らせん構造を形成することにより、3本鎖ペプチドを形成するペプチドを言う。ただし、前記Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよい。

【0034】
前記コラーゲン様ペプチドにおける-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位とする繰り返し構造は、構成するアミノ酸残基により最小繰り返し回数は相違する。この基本単位に4-ヒドロキシプロリンを含む場合に、5回以上の繰り返し単位であれば、安定な三重らせん構造を形成できることが知られている(Sakakibara S. (1973) Biochem. Biophys. Acta, 303, 198-202)。

【0035】
また、コラーゲン様ペプチドは、各ペプチド鎖に複数のCys残基を含み、各ペプチド間でジスルフィド架橋されていてもよい。

【0036】
本明細書において、「ペプチド基」とは、ペプチド分子の構造の一部であって、ペプチド分子から水素原子又は水酸基若しくはアミノ基等の置換基が脱離した構造を表す基又は原子団をいう。一般に、「ペプチジル基」といわれる場合がある。

【0037】
本明細書と、本明細書に添付される配列表において、ペプチドの構造は、当業者に周知慣用のアミノ酸の3文字及び1文字による表記法で記述される。本明細書においてアミノ酸は、特に断らない限り、L体である。本明細書のアミノ酸は、分子生物学で一般的なタンパク質の翻訳に用いられることが知られた20種類のL-アミノ酸の他、当該技術分野においてよく知られる修飾アミノ酸残基、例えば、4-ヒドロキシ-L-プロリン、4-フルオロ-L-プロリン及びN-イソブチル基グリシンを含む。本明細書において、ヒドロキシルプロリンは、3-ヒドロキシ-L-プロリン又は4-ヒドロキシ-L-プロリンであり、三文字表記で「Hyp」と、一文字表記で「O」と表される。

【0038】
本明細書において、本発明の抗微生物活性を奏するコラーゲン様ペプチドの構造的特徴を説明する際に、ペプチド鎖におけるArg残基及びCys残基等の特定のアミノ酸残基の配置に言及し、「N末端側の半分内」及び「C末端側の半分内」と記載する場合がある。1本鎖ペプチド及び3本鎖ペプチドのN末端からC末端までのペプチド鎖長の半分を境界として、N末端側を「N末端側の半分内」と、C末端側を「C末端側の半分内」と記載される。

【0039】
本明細書において、変性温度とは、本明細書のコラーゲン様ペプチドにおいて、その三重らせん構造の半量がランダムコイルに転移する温度をいう。変性温度は、例えば、円二色性スペクトル(CDスペクトル)測定による高次構造解析などの公知の方法により測定されるが、これに限定されない。

【0040】
本発明に係るコラーゲン様ペプチドの製造は、市販のアミノ酸を使用し、これに限定されない、公知のペプチドの化学合成法によって製造できる(特許文献1)。また、所望のアミノ酸配列をコードする核酸配列を製造し、これを発現ベクターに組み込んで、組換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、遺伝子組換えペプチド鎖が産生されるので、培養物から産生された遺伝子組換えペプチド鎖を回収することにより、本発明で用いる遺伝子組換えペプチド鎖を調製することができる。(EP1014176A2、US6992172、WO2004/85473、WO2008/103041等)。

【0041】
得られたペプチド鎖を、例えば、変性温度以上の状態で高速液体クロマトグラフィー等の分離手段を用いて精製し、取得し、3本鎖ペプチドの製造に使用できる。

【0042】
また、前記ペプチド鎖は、製造した時点の水溶媒中で自己集合により三重らせん構造を有する3本鎖ペプチドを形成する場合がある。あるいは、この化学合成で合成されたペプチド鎖、遺伝子工学で製造されたペプチド鎖又は自己集合で形成された3本鎖ペプチドを、例えば、変性温度以上の温度の水等の溶媒に溶解させた後に、冷却することにより、3本のペプチド鎖が自己集合し、らせん構造を有するペプチド三量体を形成する。これにより、コラーゲン様ペプチドを製造できる(特許文献2及び3)。

【0043】
本発明では、前記ペプチド鎖に複数のシステイン残基を有するコラーゲン様ペプチドを製造する場合がある。ジメチルスルホキシド(DMSO)等の酸化剤で酸化架橋させることにより、コラーゲン様ペプチドがジスルフィド結合で酸化架橋された本発明の3本鎖ペプチドが提供される場合がある。

【0044】
本発明の3本鎖ペプチドを製造する場合の酸化剤としては、上記DMSO以外にも、酸素、ヨウ素、過酸化水素、臭素酸ナトリウム(ブロム酸ナトリウム)、臭素酸カリウム、過ホウ素酸ナトリウム、過ホウ素酸カリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。

【0045】
本発明のジスルフィド結合による架橋形成は、例えば、エルマン試薬で酸化的架橋反応後の残存チオール基を定量することにより、ジスルフィド結合による架橋形成を確認できる。

【0046】
2.抗微生物活性
本明細書において、抗微生物活性とは、細菌、糸状菌、酵母及び変形菌等の単細胞生物並びに原生生物などの微生物に対する、殺菌作用等の殺細胞活性、静菌作用等の増殖抑制活性などの活性をいうが、これらに限定されない。また、本明細書において、抗微生物活性を有するペプチドの微生物に対する作用を、抗微生物作用という場合がある。

【0047】
本発明の3本鎖ペプチドは、特に優れた抗微生物活性を有する。特に優れた抗微生物活性を有する3本鎖ペプチドとして、配列番号3~11又は19に表されるアミノ酸配列を有するペプチド鎖より製造された3本鎖ペプチドの場合がある。そこで、本発明の3本鎖ペプチドを含有する組成物は、下記に詳細に説明するように抗微生物用の組成物及び医薬組成物として使用できる。

【0048】
また、本発明の微生物に対して優れた抗微生物活性を有する3本鎖ペプチドは、配列番号3~11又は19のアミノ酸配列を有するペプチドのアミノ酸配列に対して1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド鎖の3本鎖ペプチドの場合がある。

【0049】
本明細書において、抗微生物ペプチドとは、抗微生物活性を有するペプチド、オリゴペプチド又はポリペプチドをいい、抗微生物活性を有する限り、それらの断片、並びに、アミノ酸配列に対して1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド、オリゴペプチド又はポリペプチドも含まれる。

【0050】
本発明の3本鎖ペプチドが抗微生物活性を奏する場合の対象が細菌の場合の例として、大腸菌、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、チフス菌、パラチフス菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、バシラス属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニイ、プロビデンシア属、ペスト菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、レジオネラ属、ブルセラ属、野兎病菌、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、アクネ菌、Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス)、肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)、クロストリジウム・デフィシル菌などが挙げられる。

【0051】
さらに、本発明の前記3本鎖ペプチドは、多剤耐性菌に対しても抗微生物活性を有する。本発明の前記3本鎖ペプチドが多剤耐性菌に対して抗微生物活性を奏する微生物としては、例えば、カルバペネム系を含む広域β-ラクタム系、フルオロキノロン系、アミノ配糖体系の3系統の抗微生物薬に対し広範な耐性を示す大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、プロビデンシア属(Providencia spp.)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、シトロバクター属(Citrobacter spp.)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、(モルガネラ・モルガニイ(Morganella morganii)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)などの細菌が挙げられるが、これらに限定されない。

【0052】
本発明の前記3本鎖ペプチドが抗微生物活性を奏する微生物としては、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、多剤耐性結核菌(MDR-TB)/超多剤耐性結核菌(XDR-TB)などが挙げられるが、これらに限定されない。

【0053】
抗微生物活性は、当業者に周知の、例えば、CFU (Colony- forming Unit) assay法、寒天拡散法などの直接接触法、並びに、液体希釈法及び寒天平板希釈法などの希釈法等の微生物試験を行い、評価することができる。

【0054】
3.組成物及び医薬組成物
本発明の前記3本鎖ペプチドを有効成分として含有する医薬組成物に使用できる。すなわち、上記の抗微生物活性を有するコラーゲン様ペプチドに、薬学的に許容可能な添加剤を加え、抗微生物用の医薬組成物として、該微生物の感染の予防又は治療を目的に、患者に投与することができる。

【0055】
前記抗微生物用の医薬組成物の調製に使用される薬学的に許容可能な医薬品添加剤は、当業者に公知の、安定化剤、抗酸化剤、pH調整剤、緩衝剤、懸濁剤、乳化剤、溶解補助剤、界面活性剤又は増粘剤等の添加物を添加して、調製することができる。これらの医薬品添加剤の種類及びその用法・用量は、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編、薬事日報社、2007年7月)などに記載され、これらの記載に従って調製し、使用することができる。

【0056】
より具体的には、安定化剤として酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸が、抗酸化剤として例えばアスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン又は没食子酸プロピル等が、pH調整剤として希塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液等が、緩衝剤としてクエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸若しくはアスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン若しくはアルギニン又はその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸若しくはホウ酸又はその塩類が、懸濁剤又は乳化剤としてレシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート又はポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物等が、抗酸化剤としては、亜硫酸塩又はアスコルビン酸等が、界面活性剤として例えばポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が、使用できるが、これらに限定されない。

【0057】
前記医薬組成物の剤形としては、例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などの経口剤;及び注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤)、外用剤(例、経皮製剤、軟膏剤など)、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤)、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤等の非経口剤が挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤又は徐放性製剤などの放出制御製剤(例、徐放性マイクロカプセル)であってもよい。

【0058】
本発明の医薬組成物は、一般には、皮下、筋肉内、又は静脈内注射などの非経口投与によって又は経口投与によって患者に投与される。注射剤は、任意の従来の形態、例えば液状溶液もしくは懸濁液、注射前に液体中に溶解もしくは懸濁するのに好適な固体の形態、又はエマルジョンとして調製できる。

【0059】
これらの製剤の非経口投与としては、静脈内、皮下、及び筋肉内投与が挙げられる。非経口投与のための調製物には、そのまま注射できる滅菌溶液、使用直前に溶媒と組み合わせることができる滅菌し乾燥した可溶性製品、例えば本明細書に記載される凍結乾燥粉末が含まれ、皮下錠剤、そのまま注射できる滅菌懸濁液、使用直前にビヒクルと組み合わされる滅菌し乾燥した不溶性製品、及び滅菌したエマルジョンを含む。この溶液は、水性又は非水性のいずれであってもよい。

【0060】
静脈内投与する場合、好適な担体の例としては、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびに増粘剤及び可溶化剤(グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ならびにこれらの混合物等)を含有する溶液が挙げられるが、これらに限定されない。

【0061】
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピ口リドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤や力ルボキシメチルスターチナトリウム等のような崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。

【0062】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。

【0063】
本発明の医薬組成物が対象とする疾患として、例えば、敗血症、表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、子宮頸管炎、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、炭疽、ブルセラ症、ペスト、野兎病、Q熱、眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、瞼板腺炎、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、眼科周術期の無菌化療法などが挙げられるが、これらに限定されない。

【0064】
通常静脈内投与される場合は、1日の投与量は、本発明の3本鎖ペプチドとして、体重当たり約0.0001~10mg/kgが適当で、1日1回又は複数回に分けて投与する。経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり約0.001~100mg/kg、好ましくはO.1~30mg/kg、更に好ましくは0.1~10mg/kgが適当であり、これを1回で、あるいは2回以上に分けて投与する。

【0065】
また、本発明の抗微生物ペプチドは、溶媒、緩衝剤、pH調整剤、溶解補助剤及び/又は安定化剤等の添加物を添加した組成物として、例えば、敷布、不敷布、器具、道具又は家具等の種々の材料や日用品に該組成物を塗布又はスプレー等により被覆又は練り込むことにより抗微生物活性を有する組成物として使用できる。この組成物は、抗微生物用の組成物として使用できる。組成物に添加する溶媒や添加剤として、前記医薬組成物で使用されるものと同一の添加剤を使用できるが、これらに限定されない。

【0066】
4.一本鎖ペプチド
本発明のもう一つの態様は、一本鎖のペプチドである。本ペプチドは、
任意のアミノ酸残基からなり、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として5~10回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含むペプチド鎖であって、
該ペプチド鎖は、-(Xaa-Yaa-Gly)-を基本単位として少なくとも5回の連続した繰り返し構造を有するペプチド基を含み、
Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、プロリン(Pro又はP)残基、ヒドロキシプロリン(Hyp又はO)残基、アルギニン(Arg又はR)残基、リシン(Lys又はK)残基、バリン(Val又はV)残基、ロイシン(Leu又はL)残基、イソロイシン(Ile又はI)残基、セリン(Ser又はS)残基、トレオニン(Thr又はT)残基、アラニン(Ala又はA)残基、グリシン(Gly又はG)残基、フェニルアラニン(Phe又はF)残基、メチオニン(Met又はM)残基、グルタミン酸(Glu又はE)残基、アスパラギン酸(Asp又はD)残基、アスパラギン(Asn又はN)残基、グルタミン(Gln又はQ)残基、ヒスチジン(His又はH)残基、トリプトファン(Trp又はW)残基又はチロシン(Tyr又はY)残基から選択され、プロリン残基はアミノ基又はフッ素原子で修飾されていてもよく、Xaa位及びYaa位にはN-イソブチル基グリシン残基を用いてもよく、
前記ペプチド鎖のカルボキシ末端は、アミド化されていてもよく、
前記ペプチド鎖は、アミノ末端から、
(i) Xaa若しくはYaaがアルギニン(Arg)残基である-(Xaa-Yaa-Gly)-が連続して3回以上繰り返す繰り返し構造を有する、又は
(ii) -(Arg-Arg-Gly)-が連続して2回以上の繰り返し構造を有する
ことを特徴とする、ペプチド鎖である。

【0067】
本発明のペプチド鎖は、本発明の前記3本鎖ペプチドを製造するための原料として使用できる。本発明のペプチド鎖は、ホモ三量体として、又は、他のペプチド鎖と組み合わせたヘテロ三量体として製造できる。

【0068】
本発明ペプチド鎖の製造は、市販のアミノ酸を使用し、これに限定されない、公知のペプチドの化学合成法によって製造できる(特許文献1、2)。また、所望のアミノ酸配列をコードする核酸配列を製造し、これを発現ベクターに組み込んで、組換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、遺伝子組換えペプチド鎖が産生されるので、培養物から産生された遺伝子組換えペプチド鎖を回収することにより、本発明で用いる遺伝子組換えペプチド鎖を調製することができる(特許文献3、EP1014176A2、US6992172、WO2004/85473、WO2008/103041)。

【0069】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【実施例】
【0070】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例】
【0071】
以下に記載の実施例で使用した略語
(1) アミノ酸残基の略号(特に断りのない場合、アミノ酸はL体とする)
Arg(R):arginine(アルギニン)
Cys(C):cysteine(システイン)
Flp: 4(R)-fluoroproline(4(R)-フルオロプロリン)
Gly(G):glycine(グリシン)
Hyp(O):4(R)-hydroxyproline(4(R)-ヒドロキシプロリン)
Pro(P):proline(プロリン)
Tyr(Y):tyrosine(チロシン)
(2) 保護基の略称
Fmoc: 9-fluorenylmethoxycalbonyl(9-フルオレニルメトキシカルボニル基)
Pbf: 2,2,4,6,7-pentamethyldihydrobenzofuran-5-sulfonyl(2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルフォニル基)
tBu: tertiary butyl(tert-ブチル基)
Trt: trityl(トリチル基)
(3) 縮合剤及び関連試薬の略号
CHCA: α-cyano-4-hydroxycinnamic acid(α-シアノ-4-ヒドロキシけい皮酸)
DIC: N,N'-diisopropylcarbodiimide(ジイソプロピルカルボジイミド)
DIEA: N,N-diisopropylethylamine(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)
DMF: N,N-dimethylformamide(ジメチルホルムアミド)
EDT: 1,2-ethanedithiol(1,2-エタンジチオール)
HBTU: 2-(1H-benzotriazole-1-yl)-1,1,3, 3-tetramethyluronium hexafluorophosphate(O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェイト)
HOBt: 1-hydroxy-1H-benzotriazole(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)
MeCN: acetonitrile(アセトニトリル)
NMP: N-methylpyrrolidone(N-メチルピロリドン)
TFA: trifluoroacetic acid(トリフルオロ酢酸)
(4) その他略号
CD: circular dichroism(円偏光二色性)
HPLC: high-performance liquid chromatography(高速液体クロマトグラフィー)
MALDI-TOF-MS: matrix-assisted laser desorption-ionization time-of-flight mass spectrometry(MALDI-TOFマススペクトロメトリー)
PBS: phosphate buffered saline(リン酸緩衝生理食塩液)
(POG)10: H-(Pro-Hyp-Gly)10-OH
LB: Luria-Bertani(ルリア・ベルターニ)
MH: Mueller-Hinton(ミュラー・ヒントン)
PySSPy: 2,2'-dipyridyldisulfide(2,2'-ジピリジルジスルフィド)
HDF: human dermal fibroblasts(ヒト皮膚線維芽細胞)
【実施例1】
【0072】
材料及び方法
1. 試薬
Fmocアミノ酸及びRink amide resinはNovabiochem(Merck Kga、ドイツ)及びBACHEM(Bachem Holding AG、スイス)より購入した。DIC、DMF、HOBt、DIEA、NMP、thioanisoleは和光純薬工業株式会社(大阪)より購入した。m-cresol、EDT、AldrithiolはSigma Aldrich(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社、東京)より購入した。HBTUはナカライテスク株式会社(京都)より購入した。ミュラー・ヒントン培地粉末はDIFCO(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社、東京)より購入した。Tryptone、yeast extractはBectonDickinson(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社、東京)より購入した。
【実施例1】
【0073】
2. 実験に用いた機械、器具
吸光度の測定には、BioTek Instruments社(米国)Viento XSプレートリーダーを用いた。ペプチドの質量分析には、BRUKER Corporation (ドイツ)Autoflex を用いた。合成したペプチドの分取精製には、株式会社日立製作所(東京)のL-2000シリーズ、日本分光株式会社(JASCO、東京)のLC-2000 Plusシリーズを用い、分析には、株式会社島津製作所(京都)のSHIMADZU HPLC 20Aシリーズを用いた。CDスペクトル測定、三重らせん構造の熱安定性測定にはJASCO製の 円偏光二色分散計J-820を用いた。ペプチドの固相合成時は、GE Healthcare社 PD-10 (empty) カラムを用いた。細胞毒性実験での生存細胞のカウントには、株式会社同仁化学研究所(DOJINDO、熊本)のCell Counting Kit-8を用いた。振盪機はエッペンドルフ(Eppendorg AG、ドイツ)のMixMateを用いた。Sep-pakカラムには、Waters社(米国)のSep-pak C18 cartridgeを用いた。
【実施例1】
【0074】
3. ペプチドの合成
Fmoc化アミノ酸として、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Hyp(tBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-Pro-Hyp-Gly-OHを使用して、当業者に慣用の方法(特開2005-263784号公報)で、ペプチド合成を行い、HPLCで分離精製することにより、一本鎖ペプチドを得た。
【実施例1】
【0075】
ペプチドの精製は逆相HPLCで行った。カラムはCOSMOSIL 5C18-AR-II (20×250 nm、ナカライテスク株式会社、京都)を用い、ペプチドの分析と同様に、0.05% TFA/H2O (v/v)、0.05% TFA/MeCN (v/v)を移動相とし、直線濃度勾配分析を行った。精製時のHPLCの条件は、流速5~7 ml/min、温度60℃、検出波長220~235 nmとした。
【実施例1】
【0076】
4. ペプチドの分析
ペプチドの分析は逆相HPLCを用いて行った。また、カラムはCOSMOSIL 5C18-AR-II (size 4.6×250 mm)を用いた。0.05% TFA/H2O (v/v)、0.05% TFA/MeCN (v/v)を移動相とし、直線濃度勾配をかけてペプチドの分析を行った。このとき、条件を流速1.0 ml/分、温度60℃、グラジエント10 ~40% / 30分、検出波長220 nmとした。
【実施例1】
【0077】
5. ペプチド鎖の三量体化
精製した1本鎖ペプチドを脱気した0.05% TFAに溶解し3 mM程度に調製した。その後N2雰囲気下、70℃で5分間加熱した。加熱後は室温放置し、室温まで徐冷した後に4℃で冷蔵、一晩静置することで三重らせん構造を有する3鎖ペプチドを形成させた。その後100 mM Tris / HCl(pH 8.8)で300μMに希釈し、4℃で5~10日間静置して三重らせん内でジスルフィド結合を形成させた。三量体化したペプチドの酸化の進行を逆相HPLCで確認した。
【実施例1】
【0078】
6. 大腸菌に対する抗微生物活性の評価
本研究では大腸菌を用いて増殖抑制作用を検討することにより本研究で合成したペプチドの抗微生物活性を評価した。ペプチドの終濃度が0.1μM、1μM及び10μMとなるように調製し、大腸菌は濁度(OD600)=2.5×10-4となるような濃度にMH培地で希釈した。これらの溶液をペプチド溶液:大腸菌懸濁液= 1 : 9となるように混合し96-well plateに播種し、密閉した。この96-well plateを15℃、6時間の条件で振盪培養した後に、MH培地で1/250の濃度に希釈した培養液100μlをLB plate上に播種した。これを37℃で一晩静置し、形成されたコロニー数を計測し、被験ペプチドの抗微生物活性を評価した。
【実施例1】
【0079】
7. 多剤耐性菌に対する抗微生物活性の評価
菌体として多剤耐性緑膿菌(multiple-drug-resistant Pseudomonas aeruginosa, MDRP)を、被験ペプチドとしてRR2Css-Fを使用した以外は、前記「6. 大腸菌に対する抗微生物活性の評価被験」と同様の方法で、多剤耐性菌に対する増殖抑制活性を検討することにより抗微生物活性を評価した。
【実施例1】
【0080】
8. ペプチドのコンフォメーション解析
円偏光二色分散計を用いてCDスペクトルを測定し、ペプチドのコンフォメーション解析を行った。ペプチドを滅菌水、あるいはPBSに0.5 mg/mlとなるように溶解し、一夜4℃で放置し三重らせん構造を形成させた後に測定した。測定条件は、スペクトル解析については次の通りである。測定温度:4℃、測定波長:190~260 nm、データ取り込み間隔:0.5 nm、セル長:0.05 cm、走査速度:50 nm/分 (continuous)、レスポンス:0.25秒、バンド幅:1 nm、感度:standard (100 mdeg)、積算回数:3回とした。温度変化測定については、測定温度:4~85℃、測定波長:225 nm、データ取り込み間隔:0.2℃、待ち時間:0秒、温度勾配:18℃/h、レスポンス:0.5 秒、バンド幅:1 nm、感度:standardとした。
【実施例1】
【0081】
9. 細胞毒性実験
細胞毒性は、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)細胞を用いて確認した。96-wellのplateに細胞が3000個/wellとなるように播種し、10% FBSを加えたDMEMで、一夜培養した。10% FBSを加えたDMEMを用いてwellを洗浄し、細胞にペプチドを加えた状態で24時間培養した。生存細胞は、全溶液に対して10% (v/v)の割合でCell Counting kit-8を加え、1時間、37℃で培養した後に450 nmでの吸光度を測定した。吸光度はプレートリーダーを用いて測定した(n = 3)。
【実施例1】
【0082】
10. 溶血性実験
健康なボランティアからインフォームドコンセントを得た後に赤血球を得た。赤血球をPBSで3回洗浄し、MixMateを用いて1時間、37℃、900 rpmの条件でペプチド溶液と振盪混合した。5分間、細胞を234×gで遠心分離した。それぞれの上清を96-well plateへ移し、それらの540 nmの吸光度をプレートリーダーで測定した。各ペプチドの溶血活性は、1% Triton X-100の溶血性を100%として計算した。ミツバチの溶血毒に含まれる、陽イオン性の溶血性ペプチドのmelittinをポジティブコントロールとして用いた。
【実施例1】
【0083】
11. in vivo急性毒性試験
R3Css-F (750 μg/mL (97.2 μM) in PBS)をICRマウス (29.6~31.4 g, 6週齢、日本クレア株式会社)に、72.3 μg/head (9.71 μMol/head, 推定血中濃度4.85 μM) となるように静注し、その後の所見及び24時間後の生存率を求め、急性毒性を評価した(n = 4)。
【実施例2】
【0084】
1. ペプチドの配列と合成ペプチドの確認
それぞれの1本鎖ペプチドの配列を表1に示す。合成した1本鎖ペプチドはBnC(ss)-F(M, N)mと表記する。Bn、C(ss)については、原則として、アミノ末端(N末端)に近い要素から順に左から示す。(B= 塩基性残基、n = 1本鎖ペプチド中の塩基性残基の数、C = Cys残基有、ss = ジスルフィド結合有、F, M, N = Arg残基とCys残基との距離(F:遠い、M:中間、N:近い)、Y = Tyr残基無、本鎖ペプチドを示すときは末尾のmを外す)
【実施例2】
【0085】
3本鎖ペプチドはこれらの1本鎖ペプチドを水等の溶媒中で加熱後徐冷し、空気酸化により1本鎖間にジスルフィド結合を形成させることでホモ三量化したペプチドである。(R3C-Fは空気酸化を行わない状態を3本鎖ペプチドとした。)
【実施例2】
【0086】
R3Css-FDは、Cys側鎖のジスルフィド結合を位置選択的に形成させ、3本鎖ペプチドを合成した(表1)。
【実施例2】
【0087】
【表1】
JP2017014126A_000012t.gif
Y-amideは、カルボキシ末端がアミド化されたチロシン残基を、D-PはD-プロリンを、(Spy)は2-ピリジルチオ基を、C-amideは、カルボキシ末端がアミド化されたシステイン残基を表す。
【実施例2】
【0088】
それぞれのペプチドの1本鎖ペプチドの質量をMALDI-TOF-MSにより測定した。理論質量を[M+H]calcd.、MALDI-TOF-MSで観測した質量を[M+H]+obs.とし、表2に示す。それぞれの1本鎖ペプチドの質量はモノアイソトピック質量で示している。
【実施例2】
【0089】
【表2】
JP2017014126A_000013t.gif
【実施例2】
【0090】
それぞれの3本鎖ペプチドをMALDI-TOF-MSを用いて測定した。理論質量を[M+H]+calcd., 質量測定値を[M+H]+obs.とし、表3に示す。それぞれの3本鎖ペプチドの質量は平均質量で示している。
【表3】
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【実施例2】
【0091】
2. 合成ペプチドの純度の確認
(1) ペプチドの逆相HPLCによる精製後の分析
合成し、取得した1本鎖ペプチド及び3本鎖ペプチドに対して、逆相HPLCにより、下記条件で純度を確認した。1本鎖ペプチドR3Css-Fm及び3本鎖ペプチドR3Css-Fのクロマトグラムを図1及び図2に示した。R3Css-Fm及びR3Css-Fは、各々保持時間11.7分及び12.9分にそれぞれ1本の鋭いピークを認めたが、それ以外のピークを認めず、これらのペプチドがほぼ100%近くの高純度を有することが確認された。また、他のペプチドについても、同様にHPLCで純度を確認し、同様に高純度を示すクロマトグラムが得られた(データ非提示)。各ペプチドの保持時間を表4に示す。
なお、逆相HPLCの分析条件は以下の通りである。
・HPLC条件
移動相溶媒と測定時の濃度勾配:
0.05% TFA / MeCN10-40 % / 30分 40-90 % / 5分
測定波長:220 nm
カラム温度:60℃
流速:1 ml/分
【実施例2】
【0092】
【表4】
JP2017014126A_000015t.gif

【実施例2】
【0093】
3. ペプチドのコンフォメーション解析
円偏光二色分散計でCDスペクトルを測定し、ペプチドの三重らせん構造の形成を確認した。スペクトル測定は、4℃で行った。また、三重らせん構造がランダムコイル化する熱変性温度(Tm)は、225 nmにおけるコットン効果の温度変化測定により求めた。
【実施例2】
【0094】
それぞれのペプチドの熱変性温度より、微生物に対する増殖抑制作用の評価(15℃で実施)時に、ペプチドの全体量の全てが三重らせん構造を形成することが示された。各ペプチドのCDスペクトルで、R3Css-Fペプチドを滅菌水に溶解して測定した結果を図3に示した。さらに、225 nmにおけるコットン効果の温度変化測定の結果で、R3Css-Fペプチドを滅菌水に溶解して測定したデータを図4に示した。また、225 nmにおけるコットン効果の温度変化測定より得られた滅菌水及びPBSでの変性温度(Tm)をそれぞれ表5及び表6に示す。
【実施例2】
【0095】
R3Css-FD、R3C-Fを除く全てのペプチドのCDスペクトルにおいて、4℃で225 nmにおける正のコットン効果が確認された。つまり、4℃においてこれらのペプチドが三重らせん構造を形成していることが示された。
【実施例2】
【0096】
【表5】
JP2017014126A_000016t.gif

【表6】
JP2017014126A_000017t.gif

【実施例3】
【0097】
各三重らせんペプチドの立体構造モデル
分子グラフィックスツールであるPyMOLを用い、それぞれの三量体ペプチドの構造のモデリングを行った。H-(Gly-Pro-Hyp)9-OHのコラーゲン様三重らせんモデル上のアミノ酸を置換することで、合成したペプチドの立体モデルを構築した。これらのモデルでは、左側がN末端、右側をC末端で示している。リードとして用いたR3ss-Fペプチドは、N末端方向から見た構造と側面方向から見た構造とを図5Aに、それ以外のペプチドは、モデルの側面から見た構造を図5B~図5Oに示す。R3Css-Nについては、モデリング上の問題で、(-Gly-Pro-Hyp-)繰り返し配列を1つ短くしたペプチドを表す。
【実施例4】
【0098】
<細菌の抗微生物活性の評価>
次に、上記ペプチドの微生物に対する増殖抑制作用を評価し、各ペプチドの構造と活性との関係を評価した。
【実施例4】
【0099】
まず初めに、リード化合物であるR3Css-Fの三重らせん構造、Cys残基の位置、ジスルフィド結合の有無、Arg残基の位置、三重らせん上でのArg残基とCys残基の距離の変化と抗微生物活性の相関について検討した。R3Css-F、R3Css-FD、 R3C-F、R3-F、R3Css-M、R3Css-N、CssR3-N及びCssR3-Fの大腸菌に対する増殖抑制作用をCFU assayにより検討することにより抗微生物活性を評価した。コロニー数を計測した結果を図6に示した。また、それぞれのペプチドの模式図を細菌に対する抗微生物活性のグラフの左に示した 。
【実施例4】
【0100】
細菌に対して、アフリカツメガエル由来の抗微生物ペプチドであるmagainin 2をポジティブコントロール、ペプチド内に塩基性アミノ酸残基を含まず抗増殖抑制活性をもたない三重らせん構造ペプチドであるH-(Pro-Hyp-Gly)10-OH:(POG)10をネガティブコントロールとした。
【実施例4】
【0101】
まず、R3Css-F、R3Css-FDの結果を比較すると、1 μM及び10 μMのどちらにおいても、R3Css-Fのコロニー数がより少なかった。この結果より、三重らせん構造が細菌に対する抗微生物活性の発揮に重要であることが示された。
【実施例4】
【0102】
次に、10 μMにおけるR3-FとR3C-Fの比較、1 μMにおけるR3C-FとR3Css-Fの比較から、抗微生物活性の強さはR3Css-F > R3C-F > R3-Fの順であった。これらの結果から、強い抗微生物活性を示すには、Cys残基が必要であり、かつ、そのCys残基は三重らせんを構成するペプチド鎖間でジスルフィド結合を形成することが重要であることが示された。
【実施例4】
【0103】
さらに、R3Css-FとR3Css-M, R3Css-N の抗微生物活性の比較から、Cys残基とArg残基の距離が近づくにつれて、コロニー数が増加した。つまり、強い抗微生物活性を発揮するにはペプチドのCys残基とArg残基の距離は15残基程度離れていることが好ましいことが示された。
【実施例4】
【0104】
最後に、R3Css-FとCssR3-Fを比較したとき、R3Css-Fの方が1 μM及び10 μMのどちらにおいてもコロニー数が減少した。つまり、ジスルフィド結合をC末端側、塩基性クラスターをN末端側に持つペプチドが強い抗微生物活性の発現に重要であることが示された。これは、R3Css-NとCssR3-Nを比較したときにも同様の結果であった。
【実施例4】
【0105】
つづいて、Arg残基の数、Arg残基の位置、ペプチド鎖の鎖長の変化と抗微生物活性の変化について評価した。その結果を図7に示した。
【実施例4】
【0106】
それぞれのペプチドの模式図をコロニー形成に対する効果のグラフの左に示した。まず、R1Css-F~R7Css-Fを比較すると、Arg残基の数が3個以上の場合に細菌の増殖が抑制され、Arg残基の数が4個以上の場合に、ペプチド濃度が1 μM及び10 μMでコロニーがほぼ完全に形成されなかった。つまり、Argが3個以上のとき、強い細胞増殖抑制作用を示し、4個以上のときに、特に顕著な細胞増殖抑制作用を示し、抗微生物活性を与えることが明らかとなった。さらに、R4Css-F、XR4Css-F及びRR2Css-Fを比較すると、0.1 μMにおいて細胞増殖抑制作用を示したのはRR2Css-Fのみであり、R4Css-F、XR4Css-Fに比べて強い活性を有する。つまり、Arg残基をN末端側半分に集めて、かつ、Xaa位とYaa位の両方に配置することで、ペプチドがより強い抗微生物活性を示した。最後に、RR2Css-F、RR2Css-FS、RR2Css-FSSを比較すると、0.1 μMにおいて、抗微生物活性の強さはRR2Css-F>RR2Css-FS、RR2Css-FSSの順で差を認めた。このことから、ペプチドの鎖長は25残基程度であるとより強い抗微生物活性を発揮することが示された。
【実施例4】
【0107】
<構造活性相関の総括>
上記実施例4に示した各種ペプチドの抗微生物活性の評価結果より、ペプチドの構造と抗微生物活性には相関関係があることが示された。各構造的要件と、強い抗微生物活性を示す条件については次の表7の関係が示された。
【実施例4】
【0108】
【表7】
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【実施例5】
【0109】
<多剤耐性菌に対する細胞増殖抑制効果の評価>
多剤耐性緑膿菌(multiple-drug-resistant Pseudomonas aeruginosa, MDRP)に対して、3本鎖ペプチドRR2Css-Fの0.1、1、10及び20 μMでコロニー数を計測することにより細胞増殖抑制効果を評価し、10 μM以上の濃度で、顕著な増殖抑制効果を認めた。
【実施例5】
【0110】
本結果は、本件発明のペプチドが、従来の抗生物質と異なった作用機序を有すること、また、多剤耐性菌が大きな問題となっている臨床への適用に対して顕著な効果が期待されることが示された(図8)。
【実施例6】
【0111】
<安全性試験>
(1) ヒト線維芽細胞に対する毒性試験
R3Css-F、R3-FについてHDF細胞を用いて細胞毒性実験を行った。melittinはミツバチが生成する毒物であり、細胞毒性、溶血性を示す。細胞毒性実験の結果を各々図9に示した(n = 3、mean ±S.D.)。Melittinでは3 μM及び30 μMでほとんどの細胞が死滅していたのに対し、R3-Fは同じ濃度でも細胞毒性を示さなかった。R3Css-Fは30 μMにおいて弱い細胞毒性を示した。R3Css-Fについては、30 μMのとき、細胞の生存率が83%であった。
【実施例6】
【0112】
(2) 赤血球に対する溶血性試験
R3Css-F、R3-Fについて、赤血球を用いて溶血性を確認した。吸光度から計算した細胞生存率とペプチドの濃度の関係を図10に示した。その結果、melittinは強い溶血性を示した一方、R3Css-F、R3-Fは0.03~30 μMの濃度において溶血性を示さなかった (n = 3、mean ±S.D.)。
【実施例6】
【0113】
(3) in vivoでの急性毒性試験
R3Css-F (750 μg/mL (97.2 μM) in PBS) をICRマウスに、72.3 μg/head (9.71 μMol/head, 推定血中濃度4.85 μM) となるように静注し、その後の所見及び24時間後の生存率を求め、急性毒性を評価したところ、24時間経過しても異常を示さなかった (n = 4)。
【実施例6】
【0114】
<安全性試験の総括>
上記のとおり、ヒト線維芽細胞に対する毒性試験、ヒト赤血球に対する溶血性試験、マウスの急性毒性試験において、本発明の3本鎖ペプチドが、優れた安全性を示した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図8】
4
【図5A】
5
【図5B】
6
【図5C】
7
【図5D】
8
【図5E】
9
【図5F】
10
【図5G】
11
【図5H】
12
【図5I】
13
【図5J】
14
【図5K】
15
【図5L】
16
【図5M】
17
【図5N】
18
【図5O】
19
【図5P】
20
【図6】
21
【図7】
22
【図9】
23
【図10】
24