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明細書 :クローラ型ロボット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-036018 (P2017-036018A)
公開日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 クローラ型ロボット
国際特許分類 B62D  55/065       (2006.01)
B62D  57/02        (2006.01)
FI B62D 55/065
B62D 57/02 J
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2015-160113 (P2015-160113)
出願日 平成27年8月14日(2015.8.14)
発明者または考案者 【氏名】永瀬 純也
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100121337、【弁理士】、【氏名又は名称】藤河 恒生
審査請求 未請求
要約 【課題】回転トルクがウォームからクローラベルトに伝達されるときのエネルギーロスを低減できるクローラ型ロボットを提供する。
【解決手段】このクローラ型ロボット1は、中空孔2aを形成する壁部にクローラベルトコア部2bが形成されたフレームと、回転トルク生成部3と、回転トルクによって中心軸Cのまわりを回転し、ウォーム歯部41が形成されたウォーム4と、クローラベルトコア部2bに巻かれて配置され、ウォーム歯部41にかみ合い得る多数の突起したクローラベルト歯部51が外周面に形成されており、それらの一部のクローラベルト歯部51がその歯部接触面51aにおいてウォーム歯部41に接触してかみ合うことでウォーム4の回転に追従して回動するクローラベルト5と、を備えており、クローラベルト歯部51の歯部接触面51aは、クローラベルト5の幅方向に対する角度である進み角θbが歯先51aa側になるにつれて大きくなっている。
【選択図】図8
特許請求の範囲 【請求項1】
長手方向の中心軸に沿って中空孔を有するとともに、該中空孔を形成する壁部にクローラベルトコア部が形成されたフレームと、
前記中空孔に収容され、回転トルクを生成する回転トルク生成部と、
前記中空孔に収容され、前記回転トルクによって中心軸のまわりを回転し、螺旋状の突起したウォーム歯部が側面に形成されたウォームと、
前記ウォームの側面の外方に前記クローラベルトコア部に巻かれて配置される輪状のものであって、前記ウォームのウォーム歯部にかみ合い得る多数の突起したクローラベルト歯部が外周面に形成されており、該多数のクローラベルト歯部の一部のクローラベルト歯部がその歯部接触面において前記ウォーム歯部に接触してかみ合うことで該ウォームの回転に追従して回動するクローラベルトと、を備えており、
前記クローラベルト歯部の前記歯部接触面は、前記クローラベルトの幅方向に対する角度である進み角が歯先側になるにつれて大きくなっていることを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記クローラベルト歯部の前記歯部接触面において前記ウォームの前記中心軸から距離xの点は、その前記進み角θbが、θb=arctan(p/2πx)となる(ここで、pは前記ウォーム歯部のピッチ)ように形成されていることを特徴とするクローラ型ロボット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクローラ型ロボットにおいて、
前記ウォーム歯部の断面は、台形形状であることを特徴とするクローラ型ロボット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、レスキュー用や配管内作業用などに好適なクローラ型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の進入が難しい場所での検査や探索等の作業は、その場所を適切に走行可能なロボットに行わせることが好ましい。そのようなロボットとしては、種々のものが知られている。その中で、クローラ(無限軌道)型ロボットは、クローラのクローラベルトが地面に接することで地面の状態に柔軟に対応して走行することが可能であるといったメリットを有する。
【0003】
産業用の分野では、個々の作業に特化したクローラ型ロボットが提案されている。例えば、特許文献1及び2などには、工場の配管内の検査等を行う配管内作業用のものが提案されている。特許文献1に記載のクローラ型ロボットは、3個のクローラが中心軸に対して互いに回転対称な位置に設けられ、それらのクローラが半径方向に移動可能であるものである。3個のクローラベルトが配管の内壁に押し付けられることで、配管が傾斜したり垂直になったりしていても走行できる、としている。特許文献2に記載のクローラ型ロボットは、2個のクローラがハの字型に設けられたものである。2個のクローラにより、安定して配管内を走行できる、としている。
【0004】
その一方、近年、災害等が起こった場合に被害者の探索や救助又は被害物の検査などを行うレスキュー用のロボットが注目されている。レスキュー用のクローラ型ロボットとしては、例えば、特許文献3には、クローラを左右に設けたクローラ装置を2種類備え、大きな段差を容易に乗り越えることができるように、2種類のクローラ装置のどちらかを地面の状況に応じて選択するようなクローラ型ロボットが提案されている。また、特許文献4には、瓦礫の狭い空間にも進入し得るように、上下2段に積層したクローラの一対をロボット本体の左右それぞれに設けたクローラ型ロボットが提案されている。
【0005】
特許文献5には、レスキュー用や配管内作業用などに利用可能なものであって、配管や瓦礫の中などの非常に狭い空間への進入が容易なように、単一のウォームと、その側面の外方に配置されそれに追従して回動する複数のクローラベルトを備えているクローラ型ロボットが提案されている。このウォームは、螺旋状の突起したウォーム歯部が側面に形成されており、回転トルク生成部(ギヤモータ)によって回転する。クローラベルトは、ウォームのウォーム歯部にかみ合い得る多数の突起したクローラベルト歯部が外周面に形成されており、その多数のクローラベルト歯部の一部のクローラベルト歯部がウォーム歯部にかみ合うことで、ウォームの回転に追従して回動する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2002-220049号公報
【特許文献2】実用新案登録第3133667号公報
【特許文献3】特開2007-237991号公報
【特許文献4】特開2008-213671号公報
【特許文献5】特開2014-193707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、配管や瓦礫の中などの非常に狭い空間は、極めて狭いものが有り、その中に進入でき、しかも、高精度のカメラなど各種の機能を発揮する部品を収容できる小さなクローラ型ロボットが求められる場合も少なくない。その場合、特許文献5に開示されるクローラ型ロボットでは、回転トルク生成部が小さくなるので、クローラ型ロボットが許容速度以上で走行するのに十分な回転トルクを得ることができなくなる場合も起こり得る。
【0008】
そこで、本願発明者は、回転トルクが小さくてもクローラ型ロボットを許容速度以上で走行可能にするには、回転トルクがウォームからクローラベルトに伝達されるときのエネルギーロスを低減すればよいと考えた。
【0009】
このような2個の物品が相互に滑り合うように接触してエネルギーを伝達する技術分野は、トライボロジーと呼ばれて、2個の物品が剛体のものが広く研究されている。また、2個の物品が剛体のものの古典的な法則としてはクーロン・アモントンの法則が有り、(1)摩擦力は接触面積に依存しない、(2)摩擦力は接触面に加えられる垂直の力に比例する、(3)摩擦力は滑り速度に依存しない、(4)摩擦力は滑り面の性質に依存する、という法則を基本としている。
【0010】
本願発明者は、回転トルクが剛体であるウォームから弾性体であるクローラベルトに伝達される際には、これまでのトライボロジーの研究及びクーロン・アモントンの法則が必ずしも適用されるものではないと思料し、鋭意工夫し、本発明を案出した。
【0011】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転トルク生成部と単一のウォームと複数のクローラベルトを備えるクローラ型ロボットにおいて、回転トルクがウォームからクローラベルトに伝達されるときのエネルギーロスを低減できるクローラ型ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のクローラ型ロボットは、長手方向の中心軸に沿って中空孔を有するとともに、該中空孔を形成する壁部にクローラベルトコア部が形成されたフレームと、前記中空孔に収容され、回転トルクを生成する回転トルク生成部と、前記中空孔に収容され、前記回転トルクによって中心軸のまわりを回転し、螺旋状の突起したウォーム歯部が側面に形成されたウォームと、前記ウォームの側面の外方に前記クローラベルトコア部に巻かれて配置される輪状のものであって、前記ウォームのウォーム歯部にかみ合い得る多数の突起したクローラベルト歯部が外周面に形成されており、該多数のクローラベルト歯部の一部のクローラベルト歯部がその歯部接触面において前記ウォーム歯部に接触してかみ合うことで該ウォームの回転に追従して回動するクローラベルトと、を備えており、前記クローラベルト歯部の前記歯部接触面は、前記クローラベルトの幅方向に対する角度である進み角が歯先側になるにつれて大きくなっていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載のクローラ型ロボットは、請求項1に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記クローラベルト歯部の前記歯部接触面において前記ウォームの前記中心軸から距離xの点は、その前記進み角θbが、θb=arctan(p/2πx)となる(ここで、pは前記ウォーム歯部のピッチ)ように形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載のクローラ型ロボットは、請求項1又は2に記載のクローラ型ロボットにおいて、前記ウォーム歯部の断面は、台形形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のクローラ型ロボットによれば、回転トルクがウォームからクローラベルトに伝達されるときのエネルギーロスを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るクローラ型ロボットを示す斜視図である。
【図2】同上のクローラ型ロボットのフレームの一部を切断して内部を示す平面図である。
【図3】同上のクローラ型ロボットのA-Aで示す切断面で切断し他方の端部側から見た断面図である。
【図4】同上のクローラ型ロボットの動作を示す模式図である。
【図5】同上のクローラ型ロボットの動作を示す別の模式図である。
【図6】同上のクローラ型ロボットのクローラベルトの一部を拡大して示す側面図である。
【図7】同上のクローラ型ロボットのウォームの一部を拡大して示す側面図である。
【図8】同上のクローラ型ロボットのウォーム歯部とクローラベルト歯部のかみ合いを拡大して示すものであって、(a)が側面図、(b)B-Bで示す切断面で切断した断面図である。
【図9】同上のクローラ型ロボットのクローラベルトのクローラベルト歯部の歯部接触面の進み角の変化を示すグラフである。
【図10】同上のクローラ型ロボットのウォーム歯部とクローラベルト歯部の変形例の一部を拡大して示す側面図であって、(a)がウォーム歯部であり、(b)がそれにかみ合うクローラベルト歯部である
【図11】同上のクローラ型ロボットのカメラを収容したときのフレームの一部を切断して内部を示す平面図である。
【図12】同上のクローラ型ロボットの動作実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係るクローラ型ロボット1は、レスキュー用などに好適なロボットであって、図1に示すように、大略柱形状をなしたものである。このクローラ型ロボット1は、走行のために、図2に示すように、フレーム2と、回転トルク生成部3と、ウォーム4と、複数の(本実施形態では6個の)クローラベルト5、5、・・・と、を備えている。

【0018】
フレーム2は、大略筒状をなし、長手方向に向かう中心軸Cに沿って中空孔2aを有する。この中空孔2aを形成する壁部は、図2及び図3に示すように、後に詳述するクローラベルト5が巻かれるクローラベルトコア部2bと、クローラベルト5が巻かれないクローラベルト間部2cと、が、中心軸Cの軸回りに複数個(本実施形態では6個づつ)交互に設けられている。クローラベルト間部2cは、クローラベルトコア部2bよりも少し長手方向に延びたものとなっている。このフレーム2は、例えば、硬い樹脂製のものを用いることができる。

【0019】
回転トルク生成部3は、ギヤモータ又はギヤ付きでないモータを用いることができる。回転トルク生成部3は、フレーム2の中空孔2aに収容され、クローラベルト間部2cから内方に延びた接続部2dに固定して接続されている。回転トルク生成部3は、電力が供給されると、その出力軸部(図示せず)が中心軸Cのまわりを回転する。なお、回転トルク生成部3の中心軸Cは、次に述べるウォーム4の中心軸Cと共通である。

【0020】
ウォーム4は、回転トルク生成部3が生成した回転トルクによって中心軸Cの回りを回転する単一のものである。ウォーム4は、フレーム2の中空孔2aに収容されている。ウォーム4は、中心部に回転トルク生成部3の出力軸部(図示せず)が接続されている。ウォーム4は、例えば、硬い樹脂製のものを用いることができる。

【0021】
ウォーム4は、その側面に螺旋状の突起したウォーム歯部41が形成されている。

【0022】
クローラベルト5は、ウォーム4の側面の外方に配置され、無限軌道を形成するように、閉じて輪状になっており、フレーム2のクローラベルトコア部2bに巻かれて配置されている(図2参照)。複数のクローラベルト5、5、・・・は、中心軸Cの軸回りに略等間隔に配置されている(図3参照)。

【0023】
クローラベルト5は、クローラ型ロボット1の一方の端部1aと他方の端部1bにおいて折り返すので、比較的柔軟な材料(弾性体)からできており、例えば、シリコーンゴム製である。また、クローラベルト5は、フレーム2の外側に位置する部分が、様々な外圧に応じて変形することが可能なように撓んだ形状になっている。

【0024】
クローラベルト5の外周面には、突起し少し斜めにクローラベルト5を横断する形状のクローラベルト歯部51が多数形成されている(後述する図6参照)。クローラベルト5は、クローラベルトコア部2bの内側に位置する一部のクローラベルト歯部51が単一のウォーム4のウォーム歯部41とかみ合い得るように配置される(図2等参照)。多数のクローラベルト歯部51のうちの一部のクローラベルト歯部51がその歯部接触面51a(図1及び後述する図6など参照)においてウォーム歯部41に接触してかみ合うことでウォーム4の回転に追従して回動する。こうして、回転トルクがウォーム4からクローラベルト5に伝達される。

【0025】
回動するクローラベルト5は、クローラベルトコア部2bの側面の外側と内側において長手方向に動く。クローラ型ロボット1が他方の端部1bから一方の端部1aに向かって(図2において左から右へ)走行するときは、他方の端部1b側(図2において左側)から見て右回りにウォーム4が回転する。そして、クローラベルト5は、クローラベルトコア部2bの側面の内側に位置したクローラベルト歯部51がかみ合ったウォーム4のウォーム歯部41に歯部接触面51aが押されて、クローラ型ロボット1の他方の端部1bから一方の端部1aに向かって(図2において左から右へ)長手方向に動き、その一方の端部1aで折り返し、クローラベルトコア部2bの側面の外側に位置したクローラベルト歯部51がクローラ型ロボット1の一方の端部1aから他方の端部1bに向かって(図2において右から左へ)長手方向に動き、その他方の端部1bで折り返す。そして、クローラベルト5の多数のクローラベルト歯部51のうちフレーム2の外側の位置に回って来ているクローラベルト歯部51が平地、配管内、瓦礫などを蹴り出すことで、クローラ型ロボット1が走行する。

【0026】
例えば、クローラ型ロボット1は、図4に示すように配管Tの中を走行するとき、複数のクローラベルト5、5、・・・のうちの幾つかが配管Tの内壁面に接触して、走行する。クローラ型ロボット1は、配管Tの中に図5(a)、(b)に示すような異物TDが有っても、走行可能である。

【0027】
また、回転トルク生成部3にかける電圧の正負により、回転トルク生成部3の回転方向を変えて、ウォーム4の回転方向を変え、それにより、クローラ型ロボット1の他方の端部1bから一方の端部1aに、及び一方の端部1aから他方の端部1bに向かっての走行が可能である。

【0028】
ここで、クローラベルト歯部51は、前述したように斜めにクローラベルト5を横断した形状である。すなわち、クローラベルト歯部51の歯部接触面51aは、図6に示すように、クローラベルト5の幅方向(クローラベルト5の延伸方向に対して垂直方向)(図6において上下方向)に対して角度(進み角)θbを有している。この進み角θbは、歯先51aa側になるにつれて大きくなっている。換言すれば、進み角θbは、歯先51aaの進み角θbaが歯底51abの進み角θbbよりも大きくなっている。なお、本実施形態のクローラベルト歯部51は、クローラベルト5の両方の側縁端5a、5aの近傍51b、51bが緩やかな曲面状であり、中央近傍51c(その端が歯先51aaとなる部分)は平面状であるが、中央まで曲面状にしたり側縁端5a、5aまで平面状にしたりすることは可能である。

【0029】
以下、クローラベルト歯部51の歯部接触面51aの進み角θbについて詳細に説明する。ウォーム4において螺旋状に突起したウォーム歯部41の歯部接触面41aの歯先41aaと歯底41abでは、螺旋に沿った道のり距離が歯先41aaの方が歯底41abよりも長いため、ウォーム歯部41の歯先41aaと歯底41abでは、図7に示すように、進み角(ウォーム4の長手方向の垂直方向に対する角度)θwは、歯先41aaの進み角θwaが歯底の進み角θwbよりも小さい。そして、クローラベルト歯部51の歯部接触面51aにおいて、その歯先51aaはウォーム歯部41の歯底41abの近傍に位置し、その歯底51abはウォーム歯部41の歯先41aaの近傍に位置するので、進み角θbを、ウォーム4の前述した中心軸Cに向かう方向(半径方向)に沿って歯先51aa側になるにつれて大きくすれば、歯先51aaから歯底51abにかけてウォーム歯部41の進み角θwに近似又は合致させることができる(図8(a)参照)。それにより、クローラベルト歯部51の歯部接触面51aにおいて、局所的な変形を起こり難くし、ウォーム歯部41に対する有効な接触面積を増大させることができる。このようにして、回転トルクがウォーム4からクローラベルト5、5、・・・に伝達される際のエネルギーロスを低減させることができる。

【0030】
この進み角θbは、
θb=arctan(p/2πx) ・・・(1)
となるように形成させることができる。ここで、pはウォーム歯部41のピッチ(螺旋状の隣接する突起間の中心距離)であり(図7参照)、xはウォーム4の前述した中心軸Cからクローラベルト歯部51の歯部接触面51aの一点までの距離である(図3参照)。図9の曲線aは、この(1)式を図示したものである。図9の横軸はxの値であり、xの値が小さいと歯先51aa側であり、xの値が大きいと歯底51ab側である。なお、図9では、ピッチpは、16.3mmとしており、例えば、xが10mmのときの進み角θbは14.5度となる。また、図9の曲線bは、xの値に係わらず進み角θbが一定、つまり歯先51aaの進み角θbaと歯底51abの進み角θbbが同じ(14.5度)である従来のもの、を示している。

【0031】
進み角θbが(1)式を満たすようにすると、クローラベルト歯部51の歯部接触面51aにおいて、歯先51aaから歯底51abにかけて進み角θbをウォーム歯部41の進み角θwに精度良く合致させることができる。それにより、回転トルクがウォーム4からクローラベルト5に伝達される際のエネルギーロスを正確に低減させることができる。

【0032】
また、ウォーム歯部41の好ましい形状として、ウォーム歯部41の断面を台形形状とするのが良い(図8(b)参照)。そうすると、クローラベルト歯部51の歯部接触面51aの歯先51aaを、平面視において、歯底51abよりもほとんど全て内側にすることができる(図6等参照)。これに対し、図10(a)に示すように、ウォーム歯部41の歯先41aaにおける幅と歯底41abにおける幅を等しくしその断面を長方形形状とすることも可能であるが、それに応じたクローラベルト歯部51は、図10(b)に示すように、歯部接触面51aにおいて歯先51aaが歯底51abよりも外側になる部分(同図において左下側の部分)が生じる。そのような部分は、加工が一般に難しい。

【0033】
このような構造のクローラ型ロボット1は、回転トルクがウォーム4からクローラベルト5に伝達されるときのエネルギーロスを低減できるので、小さくしても、更には、図11に示すように、高精度のカメラ6を収容しても、クローラ型ロボット1を許容速度以上(例えば、約20mm/s以上)で走行可能となる。

【0034】
次に、試作したクローラ型ロボット1及び比較のために試作したクローラ型ロボット1’の動作実験について述べる。なお、試作のクローラ型ロボット1、1’のフレーム2及びウォーム4は、ABS樹脂を3Dプリンタによって造形したものである。試作のクローラ型ロボット1、1’のクローラベルト5は、型の中で液状ゴム(信越化学工業株式会社製KE1600)を固めて成形し、その後、それぞれの片端に液状ゴムを塗布して接着させることで輪状としたものである。クローラ型ロボット1、1’は、その全長(一方の端部1aから他方の端部1bまでの長さ)が約90mm、外径が外圧を受けていない状態で半径約45mmとした。ウォーム4は、ウォーム歯部41のピッチが16.3mm、歯先半径(中心軸Cから歯先41aaまでの距離)が11.8mm、歯底半径(中心軸Cから歯底41abまでの距離)が8.3mmとした。クローラベルト5は、その幅が10mm、厚さ(裏面から歯底51abまでの距離)が2mm、歯たけ(歯先51aaから歯底51abまでの距離)が3mmとした。クローラベルト5の歯先51aaとウォーム4の歯底41abまでの距離(クリアランス)は、0.5mmとした。クローラ型ロボット1は、進み角θbが歯先51aa側になるにつれて大きくなっている上記(1)式を満たすものであり、クローラ型ロボット1’は、進み角θbが歯先51aaの進み角θbaと歯底51abの進み角θbbが同じ従来のものである。

【0035】
クローラ型ロボット1、1’が直径(内径)が50mmの配管Tの中を走行する場合に、ウォーム4を回転させる回転トルク生成部3にかかる負荷トルクを測定する動作実験を行った、この動作実験では、それぞれのクローラ型ロボット1、1’で、6個のクローラベルト5、5、・・・全てを取り換えながら3回行った。その結果、図12に示すように、クローラ型ロボット1の負荷トルクは約150mNmであり、クローラ型ロボット1’の負荷トルクは約250mNmであった。この結果より、クローラ型ロボット1は、回転トルクがウォーム4からクローラベルト5に伝達されるときのエネルギーロスを低減でき、負荷トルクがクローラ型ロボット1’の負荷トルクに対して約40%の低減が可能であることが分かる。

【0036】
また、クローラ型ロボット1、1’に高精度のカメラを収容して、直径(内径)が50mmの配管Tの中を図4に示したように走行させる動作実験を行った。クローラ型ロボット1の走行速度は21mm/sであり、クローラ型ロボット1’の走行速度は12mm/sであった。この結果より、クローラ型ロボット1は、クローラ型ロボット1’に比べ、約1.7倍の走行速度の向上が可能であることが分かる。なお、回転トルク生成部3への電力の供給は、回転トルク生成部3に接続したケーブルを通して行った。

【0037】
以上、本発明の実施形態に係るクローラ型ロボットについて説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内での様々な設計変更が可能である。例えば、特許文献5に記載されているのと同様に、クローラ型ロボット1が横移動を可能にする横移動制御部を更に備えるようにしてもよいし、クローラ型ロボット1を関節部を介して複数個連結し走行ロボット連結体にすることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 クローラ型ロボット
1a クローラ型ロボットの一方の端部
1b クローラ型ロボットの他方の端部
2 フレーム
2a フレームの中空孔
2b フレームのクローラベルトコア部
3 回転トルク生成部
4 ウォーム
41 ウォーム歯部
5 クローラベルト
51 クローラベルト歯部
51a クローラベルト歯部の歯部接触面
51aa クローラベルト歯部の歯部接触面の歯先
C 中心軸
θb クローラベルト歯部の歯部接触面の進み角
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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