TOP > 国内特許検索 > 新規化合物 > 明細書

明細書 :新規化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-036240 (P2017-036240A)
公開日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 新規化合物
国際特許分類 C07C  49/737       (2006.01)
A61K  31/122       (2006.01)
A61K  35/614       (2015.01)
A61P  35/00        (2006.01)
C07C 401/00        (2006.01)
FI C07C 49/737 CSP
A61K 31/122
A61K 35/614
A61P 35/00
C07C 401/00
請求項の数または発明の数 1
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-158368 (P2015-158368)
出願日 平成27年8月10日(2015.8.10)
発明者または考案者 【氏名】上村 大輔
【氏名】川添 嘉徳
【氏名】小林 里美
【氏名】大村 幸和
【氏名】犬塚 俊康
出願人 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
【識別番号】100120891、【弁理士】、【氏名又は名称】林 一好
審査請求 未請求
テーマコード 4C087
4C206
4H006
Fターム 4C087AA02
4C087AA10
4C087BB04
4C087CA06
4C087CA37
4C087NA14
4C087ZB26
4C206AA02
4C206AA03
4C206CB24
4C206KA18
4C206NA14
4C206ZB26
4H006AA01
4H006AB28
要約 【課題】細胞毒性を示す新規化合物を提供すること。
【解決手段】沖縄県南風原村にて採取されたマメスナギンチャクから単離した次の化学式(1)で表される新規化合物。
【化1】
JP2017036240A_000008t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
次の化学式(1)で表される化合物。
【化1】
JP2017036240A_000007t.gif
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
新規生物活性物質の発見は、生命科学や医学の分野におけるブレークスルーにつながることがある。例えば、腔腸動物イワスナギンチャク毒パリトキシンはナトリウムポンプに作用し、クロイソカイメンなど由来のオカダ酸はタンパク質脱リン酸化酵素に作用することから、生理機能解明のツールとして利用されている。クロイソカイメン由来の抗癌活性を示すハリコンドリンBの発見は、抗癌剤エリブリンの創製へとつながった。
【0003】
このように、生物活性物質の探索研究は基礎生命科学研究のみならず、臨床応用へも発展する可能性がある。中でも、海洋生物は、酸素濃度や塩濃度、温度や圧力、日照などの生息条件が陸上と全く異なることから、陸上生物には見られない特異な構造や機能を持つ二次代謝産物を生産しており、有用生物活性物質の探索源として今なお注目されている。本発明者らも、近年、渦鞭毛藻Amphidinium sp.由来のカルシウムイオンチャネル阻害活性物質Amdigenol類(非特許文献1,2)やシアノバクテリアLeptolyngbya sp.由来の脂肪細胞分化阻害活性物質Yoshinone A(非特許文献3)などの新規生物活性物質の単離・構造解析・生物活性評価について報告している。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Inuzuka,T.,Yamamoto,Y.,Yamada,K.,Uemura D. Tetrahedron Letters 2012,53,239-242
【非特許文献2】Inuzuka,T.,Yamada,K.,Uemura,D. Tetrahedron Letters 2014,55,6319-6323
【非特許文献3】Inuzuka,T.,Yamamoto,K.,Iwasaki,A.,Ohno, O.,Suenaga,K.,Kawazoe,Y.,Uemura,D. Tetrahedron Letters 2014,55,6711-6714
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は細胞毒性を示し、抗癌剤としての利用が期待される新規化合物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、沖縄県南風原村で採集したマメスナギンチャクから分離した下記化学式(1)で表される化合物が、HeLa細胞に対して細胞毒性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記化学式(1)
【化1】
JP2017036240A_000002t.gif
で表される化合物に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、細胞毒性を示す化学式(1)で表される化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る化学式(1)で表される化合物の分画・精製過程を示す図である。
【図2】本発明に係る化学式(1)で表される化合物の分画・精製過程を示す図である。
【図3】本発明に係る化学式(1)で表される化合物のH-NMRのチャートを示す図である。
【図4】本発明に係る化学式(1)で表される化合物の13C-NMRのチャートを示す図である。
【図5】本発明に係る化学式(1)で表される化合物のX線構造解析の結果を示す図である。
【図6】本発明に係る化学式(1)で表される化合物の(S)-MTPAエステル体と(R)-MTPAエステル体のH-NMRの化学シフト値の差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳述する。

【0011】
本発明に係る化学式(1)で表される化合物は、マメスナギンチャクから抽出し、精製することにより得ることができる。より詳細には、本発明に係る化学式(1)で表される化合物は沖縄県南風原村にて採取したマメスナギンチャク(Zoanthus sp.)から抽出し、精製することにより得た。

【0012】
例えば、マメスナギンチャクを採取した後に冷凍保存し、含水メタノールにて粉砕・抽出し、粗抽出物を得、粗抽出物を酢酸エチル層と水層とに分配し、さらに、有機層としての酢酸エチル層をODSシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより画分することができる。

【0013】
本発明に係る化学式(1)で表される化合物は新規な化合物であり、本発明者により細胞毒性を示すことを見出されたものである。

【0014】
本発明に係る化学式(1)で表される化合物は、特にHeLa細胞に対して細胞毒性を示すことから、抗癌剤としての使用が期待されるものである。

【0015】
以下、実施例を挙げて、本発明の具体的態様を示すものであるが、本発明の技術的範囲は実施例の記載により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
本発明に係る化学式(1)で表される化合物の単離・精製・構造決定
【実施例】
【0017】
沖縄県南風原村で採取したマメスナギンチャク500g(湿重量)を冷凍保存し、小石を取り除いてから含水メタノール中にてブレンダーで粉砕した。抽出液を吸引濾過し、エバポレーターを用いて濾液を濃縮した。粗抽出物を酢酸エチル(200ml×3)と水(200ml)とで分配した。得られた酢酸エチル層を減圧濃縮し、濃縮物を90%メタノール-水(200ml)に溶解し、ヘキサン(200ml×3)で脱脂した。得られた90%メタノール層を減圧濃縮し、濃縮物をODSカラムクロマトグラフィー[Cosmosil(登録商標) 75C18-OPN(φ20×300mm)、メタノール/水(20/80→40/60→60/40→80/20→メタノール)]により5画分(Fr.1~5)に分離した。
(図1参照)
【実施例】
【0018】
得られた各溶出画分の内、メタノール溶出画分(Fr.3)25.7mgを分取薄層クロマトグラフィー(Silica gel 60 F254(0.5×200×200mm)、メタノール/クロロホルム(15/85))により4画分(Fr.3-1~4)に分離した。この内の第3画分(Fr.3-3)を逆相高速液体クロマトグラフィー[Develosil(登録商標)ODS HG-5(φ10×250mm)、アセトニトリル/水(20/80)→(グラジェント10分)→(50/50)→(グラジェント20分)→(70/30)→(グラジェント10分)→(100/0)、検出UV215nm、流速4.5mL/分]により5画分(Fr.3-3-1~3-3-5)に分離した。この内の第4画分(Fr.3-3-4)にHeLa細胞増殖阻害活性が認められた。得られたFr.3-3-4を逆相高速液体クロマトグラフィー[Develosil ODS HG-5(φ10×250mm)、アセトニトリル/水(20/80)→(グラジェント10分)→(50/50)→(グラジェント20分)→(70/30)→(グラジェント10分)→(100/0)、検出UV215nm、流速4.5mL/分)]により7画分(Fr.3-3-4-1~3-3-4-7)に分離した。この内の第6画分(Fr.3-3-4-6)にHeLa細胞増殖阻害活性が認められた。得られたFr.3-3-4-6を減圧濃縮・乾固して式(1)で表される化合物(0.3mg)を不定形白色粉末として得た。
(図2参照)
【実施例】
【0019】
図1および図2に示した操作により得られた不定形白色粉末である本発明に係る式(1)で表される化合物について、高分解能ESI-MSにより分子イオンピーク[m/z469.3283(M+Na)、Δ-1.1mmu]が観測され、分子式がC2846であることが判明した。
【実施例】
【0020】
さらに、H-NMR、13C-NMRおよびHMBCを測定し、得られたスペクトルを解析することにより、不定形白色粉末であって、C2846の分子式を有する化合物の平面構造を決定した。
【実施例】
【0021】
図1および図2に示した操作により得られた不定形白色粉末である本発明の化学式(1)で表される化合物についてのH-NMR、および13C-NMRのスペクトルデータを以下に示す。
【実施例】
【0022】
本発明の化学式(1)で表される化合物のH-NMR(800MHz,CDCl)のスペクトルデータは以下のとおりである。
【表1】
JP2017036240A_000003t.gif
【実施例】
【0023】
表中、sは一重線を表し、dは二重線を表し、mは多重線を表す。
【実施例】
【0024】
本発明の化学式(1)で表される化合物の13C-NMR(200MHz,CDCl)のスペクトルデータは以下のとおりである。
【表2】
JP2017036240A_000004t.gif
【実施例】
【0025】
表中、sは一重線を表し、dは二重線を表し、tは三重線を表し、qは四重線を表す。
【実施例】
【0026】
また、メタノールを用いて化学式(1)で表される化合物を結晶化して、X線結晶構造解析を行い、図5の結果を得て相対立体配置を決定した。
【実施例】
【0027】
さらに、化学式(1)で表される化合物における不斉炭素の絶対立体配置を決定することを目的として、化学式(1)で表される化合物の3位の水酸基の(S)-MTPAエステル体と(R)-MTPAエステル体を合成した。
【実施例】
【0028】
化学式(1)で表される化合物の3位の水酸基の(S)-MTPAエステル体と(R)-MTPAエステル体のH-NMR(800MHz,CDCl)の代表的なスペクトルデータは以下のとおりである。
【実施例】
【0029】
【表3】
JP2017036240A_000005t.gif
【実施例】
【0030】
表中、sは一重線を表し、dは二重線を表し、mは多重線を表す。
【実施例】
【0031】
化学式(1)で表される化合物の3位の水酸基の(S)-MTPAエステル体と(R)-MTPAエステル体の3位の周辺についてH-NMRの化学シフトの差を測定したところ図6のとおりであった。このことから、化学式(1)で表される化合物の3位の絶対立体配置はSであることが改良モッシャー法により明らかとなった。なお、MTPAとは、α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニル酢酸を意味する。
【実施例】
【0032】
以上のことから、化学式(1)で表される化合物における不斉炭素の絶対立体配置は、以下の化学式
【化2】
JP2017036240A_000006t.gif
に示すように、3S,8S,10R,13R,14R,17S,20R,24Rであることが判明した。
【実施例】
【0033】
試験例(化学式(1)で表される化合物の癌細胞増殖阻害活性試験(HeLa))
【実施例】
【0034】
ヒト子宮頸がん由来細胞株(HeLa)は、10%ウシ胎児血清含有のDMEM培地にて炭酸ガス培養器(5%CO、37℃)で培養した。HeLa細胞を96穴プレートに播種し(1×10cells/well)、16時間培養後にDMSOに溶解した本発明に係る化学式(1)で表される化合物を所定の濃度(0μMから10μMおきに100μMまでの11段階)になるように細胞に添加し、さらに48時間培養を続けた。細胞数の測定にはcell counting kit(同仁化学)を用い、取扱説明書に従って行った。その結果、IC50=7.75μMの濃度で癌細胞の増殖を阻害した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の式(1)で表される化合物は、HeLa細胞に対して細胞毒性を示すことから、抗癌剤として有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5