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明細書 :MUC4遺伝子多型を検出することを含む、抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月2日(2017.2.2)
発明の名称または考案の名称 MUC4遺伝子多型を検出することを含む、抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
国際予備審査の請求
全頁数 28
出願番号 特願2015-503002 (P2015-503002)
国際出願番号 PCT/JP2014/054796
国際公開番号 WO2014/133055
国際出願日 平成26年2月27日(2014.2.27)
国際公開日 平成26年9月4日(2014.9.4)
優先権出願番号 2013041305
優先日 平成25年3月1日(2013.3.1)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】萩原 弘一
【氏名】宮澤 仁志
【氏名】椎原 淳
【氏名】田中 知明
【氏名】井上 慶明
出願人 【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
【識別番号】100131392、【弁理士】、【氏名又は名称】丹羽 武司
【識別番号】100151596、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 俊明
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B063
Fターム 4B024AA01
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4B024HA08
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4B063QX02
要約 抗癌剤の投与等に起因するびまん性肺胞障害の発症リスクの判定方法および判定キットを提供することを目的とする。また、抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法を提供することを目的とする。
MUC4遺伝子に存在する遺伝子多型を検出することを含む、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定方法および判定キットである。また、抗癌剤の投与が予定される患者における、MUC4遺伝子に存在する遺伝子多型を検出することを含む、抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法である。
特許請求の範囲 【請求項1】
びまん性肺胞障害の発症リスクの判定方法であって、
MUC4遺伝子に存在する遺伝子多型を検出することを含む
判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の判定方法であって、
前記「MUC4遺伝子に存在する遺伝子多型」が、前記MUC4遺伝子のエクソン2に存在する遺伝子多型であること
を特徴とする判定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の判定方法であって、
前記検出する遺伝子多型が、下記の(1)から(6)よりなる群より選択される少なくとも一つの一塩基多型;
(1)rs150551454(染色体3番、塩基番号195507491番目の塩基におけるC/T多型)、
(2)rs62282480(染色体3番、塩基番号195510749番目の塩基におけるC/A多型)、
(3)rs2911272(染色体3番、塩基番号195510773番目の塩基におけるA/G多型)、
(4)rs413807(染色体3番、塩基番号195510827番目の塩基におけるC/T多型)、
(5)rs6805660(染色体3番、塩基番号195512042番目の塩基におけるT/C多型)、および、
(6)rs62282486(染色体3番、塩基配列195512245番目の塩基におけるT/C多型)、
であること
を特徴とする判定方法。
【請求項4】
請求項2に記載の判定方法であって、
前記検出する遺伝子多型が、下記の(5)および(6)の一塩基多型;
(5)rs6805660(染色体3番、塩基番号195512042番目の塩基におけるT/C多型)、
(6)rs62282486(染色体3番、塩基配列195512245番目の塩基におけるT/C多型)、
を含むこと
を特徴とする判定方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の判定方法であって、
前記びまん性肺胞障害が、薬剤の投与に起因すること
を特徴とする判定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の判定方法であって、
前記薬剤が、抗癌剤であること
を特徴とする判定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の判定方法であって、
前記抗癌剤が、分子標的薬、代謝拮抗剤、および、微小管脱重合阻害薬からなる群より選択される少なくとも一種であること
を特徴とする判定方法。
【請求項8】
請求項6に記載の判定方法であって、
前記抗癌剤が、ゲフィチニブ、エルロチニブ、クリゾチニブ、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセド、および、ドセタキセルからなる群より選択されるいずれか一種であること
を特徴とする判定方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載の判定方法であって、
前記びまん性肺胞障害が、特発性肺線維症の急性増悪に起因すること
を特徴とする判定方法。
【請求項10】
抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法であって、
抗癌剤の投与が予定される患者における、MUC4遺伝子に存在する遺伝子多型を検出することを含む
方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記副作用が、びまん性肺胞障害であること
を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記抗癌剤が、ゲフィチニブ、エルロチニブ、クリゾチニブ、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセド、および、ドセタキセルからなる群より選択されるいずれか一種であること
を特徴とする方法。
【請求項13】
MUC4遺伝子に存在する遺伝子多型を検出するための、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)MUC4遺伝子多型を検出することを含む、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定方法、(2)MUC4遺伝子多型を検出することを含む、抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法、および、(3)それらの判定に用いるキット、などに関する。
【背景技術】
【0002】
イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)やタルセバ(一般名:エルロチニブ)といった抗癌剤投与は、びまん性肺胞障害と呼ばれる重大な副作用を引き起こす場合がある。また、特発性肺線維症の急性増悪においても、びまん性肺胞障害と呼ばれる重大な副作用を引き起こす場合がある。びまん性肺胞障害は、治療に抵抗性を示し、また再発性があり、さらに治療中に増悪を繰り返して早期に悪化して重篤化するため、非常に注意が必要な症状の一つである。
【0003】
このようなびまん性肺胞障害は、日本人において高頻度で発症していることが報告されている(非特許文献1)。例えば、ゲフィチニブによるケースは海外での調査における頻度は0.3%であるのに対し、日本人における頻度は3.98%と10倍以上の頻度となっている。また、エルロチニブによるケースは、アジア人を対象とした調査では0.2%であるのに対し、日本人を対象とした調査では2.7%であり、これも10倍以上の頻度となっている。また、特発性肺線維症患者において、他国より高頻度に急性増悪が起こり、高い致死率を示すことが報告されている(非特許文献2)。びまん性肺胞障害による日本人死者は、年間数千人に及ぶと推定されている。もっとも、日本人に限らず、海外においても、頻度はともかくとしても、薬剤の副作用により死亡するケースが存在するということは、重大な問題である。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】JMAJ(Japan Medical Association)50巻107頁(2007年)
【非特許文献2】Am J Respir Crit Care Med. 177(12)巻1397頁-1398頁(2008年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗癌剤療法は、当然のことながら、癌を治療するために行われる。しかしながら、上述したように、抗癌剤投与に起因してびまん性肺胞障害となるケースが存在する。びまん性肺胞障害は、その重篤化の進行が早いことや、致死率が高いことから、抗癌剤投与に起因してびまん性肺胞障害となる発症リスクを事前に判定する方法が提供できれば、極めて有用である。なぜなら、本来、癌患者の命を救う目的で投与されるべき抗癌剤によって、皮肉にも、患者を死に至らしめることを未然に防ぐことができるからである。
【0006】
また、抗癌剤投与に起因するびまん性肺胞障害に限らず、びまん性肺胞障害は、一般的に、その初期症状は通常の肺炎との区別がつきにくいため、医療現場では、どちらの症状なのか初診時に判断できない場合が多く、その場合、肺炎とびまん性肺胞障害の両方の観点からの治療が行われている。びまん性肺胞障害は、その重篤化の進行が早いことや、致死率が高いことから、その初期症状が見られる時点において、びまん性肺胞障害の発症リスクを事前に判定する方法が提供できれば、極めて有用である。
【0007】
しかしながら、これまでの世界中の研究機関の努力にもかかわらず、びまん性肺胞障害に関連する遺伝子多型は、何ら発見されなかった。したがって、いうまでもなく、びまん性肺胞障害と、極めて強い相関を有する遺伝子多型は、これまで、一切報告されていない。その理由は、数多くあると考えられるが、そのひとつの理由は、病状が急激に悪化し早期に死に至るため、患者からのサンプルの取得が困難であることが挙げられる。
【0008】
そこで、本発明は、(1)MUC4遺伝子多型を検出することを含む、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定方法、(2)MUC4遺伝子多型を検出することを含む、抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法、および、(3)それらの判定に用いるキット、を提供すること、などを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の特徴を備える。
【0010】
すなわち、本発明は、一態様において、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定方法であって、MUC4遺伝子に存在する遺伝子多型を検出することを含む判定方法に関する。
【0011】
本発明の一態様においては、前記「MUC4遺伝子に存在する遺伝子多型」は、MUC4遺伝子のエクソン2に存在する遺伝子多型であり得る。
【0012】
本発明の一態様においては、前記「MUC4遺伝子のエクソン2に存在する遺伝子多型」は、以下の(1)から(6)よりなる群;
(1)rs150551454(染色体3番、塩基番号195507491番目の塩基におけるC/T多型)、
(2)rs62282480(染色体3番、塩基番号195510749番目の塩基におけるC/A多型)、
(3)rs2911272(染色体3番、塩基番号195510773番目の塩基におけるA/G多型)、
(4)rs413807(染色体3番、塩基番号195510827番目の塩基におけるC/T多型)、
(5)rs6805660(染色体3番、塩基番号195512042番目の塩基におけるT/C多型)、および、
(6)rs62282486(染色体3番、塩基配列195512245番目の塩基におけるT/C多型)
より選択される少なくとも一つの一塩基多型であり得る。
【0013】
本発明の一態様においては、前記「MUC4遺伝子のエクソン2に存在する遺伝子多型」は、以下の(5)および(6);
(5)rs6805660(染色体3番、塩基番号195512042番目の塩基におけるT/C多型)、
(6)rs62282486(染色体3番、塩基配列195512245番目の塩基におけるT/C多型)
の一塩基多型であり得る。
【0014】
本発明の一態様においては、前記びまん性肺胞障害は、薬剤の投与に起因するものであり得る。前記薬剤は、抗癌剤であり得る。そのような抗癌剤は、分子標的薬、代謝拮抗剤、および、微小管脱重合阻害薬からなる群より選択され得る。そのような抗癌剤の具体例としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、クリゾチニブ、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセド、および、ドセタキセルが挙げられ得る。
【0015】
本発明の一態様においては、前記びまん性肺胞障害は、特発性肺線維症の急性増悪に起因するものであり得る。
【0016】
また、本発明は、一態様において、抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法であって、抗癌剤の投与が予定される患者における、MUC4遺伝子に存在する遺伝子多型を検出することを含む方法に関する。ここで、前記副作用は、びまん性肺胞障害であり得る。そのような抗癌剤の具体例としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、クリゾチニブ、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセド、および、ドセタキセルが挙げられ得る。
【0017】
また、本発明は、一態様において、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定キットであって、MUC4遺伝子に存在する遺伝子多型を検出することを特徴とする、判定キットに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法を提供することができる。これにより、抗癌剤の投与前に、副作用の発症リスクを判定することができ、適切な治療法を選択して、癌患者の命を救うことができる可能性がある。例えば、ある抗癌剤によって、びまん性肺胞障害という副作用の発症リスクが極めて高いことが判明した場合には、当該抗癌剤の投与を中止することや、低容量により投与することができる。また、当該抗癌剤の使用をすでに開始している患者に対しても、本発明の抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法は有用であり得る。
【0019】
また、本発明によれば、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定方法および判定キットを提供することができる。これにより、びまん性肺胞障害の発症リスクを判定して、患者に対して適切な処置を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】全遺伝子コード領域の変異に関する、「イレッサILD+タルセバILD」患者と一般日本人との間における関連解析を示す図である。
【図2】各多型が疫学データを満たす確率を示す図である。
【図3】MUC4領域の変異に関する、「イレッサILD+タルセバILD」患者と一般日本人との間における関連解析を示す図である。
【図4】全遺伝子コード領域の変異に関する、IPF急性増悪患者と一般日本人との間における関連解析を示す図である。
【図5】MUC4領域の変異に関する、IPF急性増悪患者と一般日本人との間における関連解析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、MUC4遺伝子多型を検出することを含む、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定方法および判定キット、ならびに抗癌剤療法の副作用の発症リスクを判定する方法に関する。

【0022】
<びまん性肺胞障害>
びまん性肺胞障害(DAD:diffuse alveolar damage)は、その最も特徴的な症状の一つとして、肺全体がただれた状態になる。

【0023】
びまん性肺胞障害は、薬剤の投与に起因するものであり得る。また、びまん性肺胞障害は、特発性肺線維症の急性増悪に起因するものであり得る。

【0024】
また、びまん性肺胞障害のその他の原因としては、以下のものが挙げられる。
(1)照射野以外の肺に広範に広がる放射線肺臓炎
(2)肺線維症合併患者への抗癌剤投与や手術後に見られる急速進行性間質性肺炎(RPIP:rapid progressive interstitial pneumonia)
(3)皮膚筋炎患者に見られる致死性急速進行性間質性肺炎、
(4)特発性肺線維症(IPF:idiopathic pulmonary fibrosis)以外の間質性肺炎患者に見られる急速進行性間質性肺炎、
(5)急性呼吸窮迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome)。

【0025】
<抗癌剤>
上述のとおり、びまん性肺胞障害は、抗癌剤によって引き起こされ得る。そのような抗癌剤の具体例としては、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ等)、エルロチニブ(商品名:タルセバ等)、クリゾチニブ(商品名:ザーコリ等)、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセド(商品名:アリムタ等)、および、ドセタキセル(商品名:タキソテール等)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。

【0026】
これらのうち、ゲフィチニブ、エルロチニブ、および、クリゾチニブは、いわゆる分子標的薬のうち、チロシンキナーゼ阻害剤に分類される抗癌剤である。また、ゲムシタビン、イリノテカン、および、ペメトレキセドは、いわゆる代謝拮抗剤に分類される抗癌剤である。また、ドセタキセルは、微小管脱重合阻害薬に分類される抗癌剤である。

【0027】
<分子標的薬>
分子標的薬とは、腫瘍の増殖、浸潤、転移に関わる分子を標的にして、その分子を阻害することにより、腫瘍の増殖等を抑制する抗癌剤である。大きく分けると低分子化合物とモノクローナル抗体に分類される。低分子化合物である分子標的薬は、さらに細かく、チロシンキナーゼ阻害剤、Rafキナーゼ阻害薬、TNF-α阻害剤、および、プロテアソーム阻害剤に分類される。

【0028】
<チロシンキナーゼ阻害剤>
チロシンキナーゼ阻害剤としては、上記のゲフィチニブ、エルロチニブ、および、クリゾチニブの他、例えば、イマチニブ、ダサチニブ、バンデタニブ、スニチニブ、ラパチニブ、および、ニロチニブなどが知られている。ゲフィチニブおよびエルロチニブは、ともに、上皮成長因子受容体のチロシンキナーゼを選択的に阻害し、シグナル伝達を遮断することにより腫瘍の増殖等を抑制する抗癌剤として知られている。クリゾチニブは、受容体型チロシンキナーゼである未分化リンパ種キナーゼ(ALK)のチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、腫瘍の増殖等を抑制する抗癌剤として知られている。

【0029】
<代謝拮抗剤>
代謝拮抗剤は核酸塩基アナログ(類似体)であり、DNA鎖に取り込まれることにより、DNA鎖の伸長を停止させたり、DNA鎖を切断したりすることにより、腫瘍の増殖等を抑制する抗癌剤である。ゲムシタビンは核酸塩基シチジンのアナログであり、DNA鎖に取り込まれて別の核酸塩基が1つ付くと、DNA鎖の伸長が停止する。イリノテカンは、植物アルカロイドの一種であるカンプトテカンの誘導体であり、トポイソメラーゼIによる一本鎖DNA切断後の再結合を阻害して腫瘍の増殖等を抑制する抗癌剤である。ペメトレキセドは、葉酸に分子構造が類似している葉酸代謝拮抗剤であり、チミジル酸生成酵素、ジヒドロフォレート還元酵素、および、グリシンアミドリボヌクレオチド・ホルミル基転移酵素を阻害することにより、プリンおよびピリミジン・ヌクレオチド前駆体の合成を阻害する。

【0030】
<微小管脱重合阻害薬>
微小管の脱重合を阻害することにより腫瘍の増殖等を抑制する抗癌剤である。細胞分裂の際に形成される分裂装置の主体である微小管に結合し、微小管が脱重合してチューブリンに戻るのを阻害して微小管を安定化・過剰形成させることにより、細胞周期をG2/M期で停止させて細胞分裂を阻害するものである。代表的なものとして、ドセタキセルやパクリタキセルがある。

【0031】
<特発性肺線維症及びその急性増悪>
特発性肺線維症(IPF:idiopathic pulmonary fibrosis)は、厚生労働省特定疾患(難病)のうちの一つであり、慢性的に肺が崩壊し、呼吸不全、感染症、急性増悪などにより死亡する、慢性疾患である。IPF患者のうち、1/3は慢性であった病態が突然変わり、急速に進行する呼吸不全を起こして死亡する。これが特発性肺線維症の急性増悪(IPF AE)である。死亡率は70%と非常に高い。また、IPF患者に対して抗癌剤の投与や、放射線治療、外科手術などを施した場合に、高率にIPF AEを起こして死亡することが知られている。

【0032】
<MUC4遺伝子>
本発明の判定方法は、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定方法として、MUC4遺伝子に存在する少なくとも一種の遺伝子多型を検出することによる判定方法である。

【0033】
MUC4遺伝子は、気道上皮に発現するムチンのコアタンパク質をコードする遺伝子として知られている。MUC4遺伝子の塩基配列は公知であり、例えば、The National Center for Biotechnology Information(NCBI)にNM_018406で登録されており、ヒトゲノムUCSC hg19 NCBI b37.3において、染色体3番の塩基番号195473636-195541844(塩基番号はプロモーター領域3000塩基対を含む。)に存在する。最も典型的なMUC4遺伝子のコード配列(cDNA配列)として、NM_018406に登録されている塩基配列を配列番号1に示し、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。

【0034】
本発明において、びまん性肺胞障害の発症リスクを判定する方法は、MUC4遺伝子多型を検出することを含む方法である。ここで、「含む」とは、MUC4遺伝子多型を検出する工程が、びまん性肺胞障害の発症リスクを判定する方法の本質的部分であることを意味し、その他の工程をも含み得ることを意味する。

【0035】
MUC4遺伝子多型の検出は、MUC4遺伝子のエクソン2(染色体3番の塩基番号195518368-195505661)に存在する一つ又は複数の一塩基多型の検出であることが好ましく、その中でも特に、以下の(1)から(6)の一塩基多型のうちの少なくとも一つの一塩基多型の検出であることが、より好ましい(なお、以下で、rsは、reference SNP IDを意味する。)。

【0036】
(1)rs150551454(染色体3番、塩基番号195507491番目の塩基におけるC/T多型)
(2)rs62282480(染色体3番、塩基番号195510749番目の塩基におけるC/A多型)
(3)rs2911272(染色体3番、塩基番号195510773番目の塩基におけるA/G多型)
(4)rs413807(染色体3番、塩基番号195510827番目の塩基におけるC/T多型)
(5)rs6805660(染色体3番、塩基番号195512042番目の塩基におけるT/C多型)
(6)rs62282486(染色体3番、塩基配列195512245番目の塩基におけるT/C多型)

【0037】
<遺伝子多型の検出方法>
MUC4遺伝子において、上記(1)から(6)よりなる群より選択された少なくとも一つの一塩基多型を検出するための方法としては、核酸を複製又は増幅する方法、プローブを用いたハイブリダイゼーション法やシークエンス法など、核酸配列の多型を検出する方法として一般的に用いられている公知の方法を適宜用いることができる。

【0038】
例えば、MUC4遺伝子の上記多型が存在する位置を含む核酸断片を増幅し、その核酸増幅産物についてシークエンサーを用いて配列決定することにより、MUC4遺伝子の多型を直接検出することができる。核酸を複製又は増幅する方法としては、PCR法を好適に例示できるが、これに限定されることはなく、LAMP法、NASBA法、LCR法、SDA法など公知の方法を用いることができる。また、TaqManプローブによるリアルタイムPCR法を用いて、MUC4遺伝子の多型を含む特定の断片に対するTaqManプローブのハイブリダイゼーションを検出することにより、MUC4遺伝子の多型を検出することもできる。

【0039】
PCR法では、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いる。これらのプライマーは、MUC4遺伝子の多型を検出することができるような位置のDNA配列に基づいて設計することができる。たとえば、本発明において同定された一塩基多型(1)から(6)のいずれかをフォワードプライマーとリバースプライマーの間に挟むように設計することができる。また、遺伝子多型を有する場合にのみ増幅する(あるいは増幅しない)ように、フォワードプライマーおよびリバースプライマーのうち少なくとも一方を、一塩基多型を有する位置に設計することもできる。
プライマーの長さは、十分なDNA増幅断片が得られれば良く、選択する配列のGC含量などにもよるが、10~100塩基程度の配列であることが好ましく、10~50塩基の配列であることがより好ましい。

【0040】
プローブを用いたハイブリダイゼーション法では、前記の一塩基多型(1)から(6)のいずれか一つ以上の一塩基多型部位を含む部分をプローブとして用いることができる。プローブは、必要に応じて、蛍光物質や放射性物質等により標識することができる。プローブについては、一塩基多型を検出することが可能である限り特に制限はない。すなわち、一塩基多型の有無をプローブのハイブリダイゼーションの有無あるいは検出強度の差で判断し得る限り、プローブの長さに特に制限はなく、また、ハイブリダイズする対象配列に対して1又はそれ以上の置換、欠失、不可を含んでいてもよい。ハイブリダイゼーションの条件は、プローブの長さやGC含量などに合わせて、適宜決定することができる。

【0041】
一塩基多型の検出は、制限酵素断片長多型分析法(RFlP:Restriction fragment length polymorphism)や電気泳動法によっても行なうことができる。一塩基多型の位置を含む配列を認識して特異的に切断する制限酵素を用いて消化し、得られた断片の大きさを電気泳動法によって調べることにより、制限酵素による切断の有無を検出することができ、これにより、多型を検出することができる。また、一本鎖コンフォメーション多型解析(SSCP:single strand conformation polymorphism)や、キャピラリー電気泳動法を用いることもできる。

【0042】
<びまん性肺胞障害の発症リスクの判定キット>
本発明において、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定キットとは、上述したMUC4遺伝子の多型を検出するための方法に用いられる試薬を含む判定キットである。試薬とは、上記の遺伝子多型の検出方法において一般的に用いられるものであり、市販され購入可能のものや、合成オリゴDNAなどを含む。例えば、PCR法による判定の場合は、目的とするDNA断片を増幅するためのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼなどを含む。

【0043】
なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。

【0044】
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。

【0045】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。

【0046】
第一の、第二のなどの用語が種々の要素を表現するために用いられる場合があるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第一の要素を第二の要素と記し、同様に、第二の要素は第一の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。

【0047】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、しかしながら、本発明はいろいろな形態により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
<患者検体>
全国30の協力医療機関より、薬剤性肺障害とされた患者262例および間質性肺疾患とされた180例の合計442例の患者検体を収集した。
ここで、間質性肺疾患とされた患者180例には、IPF急性増悪患者141例を含む。
また、薬剤性肺障害とされた患者262例には、以下の症例を含む。
・イレッサまたはタルセバによる間質性肺疾患(ILD)(以下、「イレッサILD+タルセバILD」)患者49例、
・ザーコリによる間質性肺疾患(ILD)(以下、ザーコリILD)患者3例、
・タキソテールによる間質性肺疾患(ILD)(以下、タキソテールILD)患者38例
【実施例】
【0049】
<エキソーム解析>
上記442例のうち、患者データ+患者画像を279例収集して診断の確認を行った。そのうち、診断確実例のうち劇症例や死亡例(びまん性肺胞障害を発症した患者であると考えられる。)を中心に、ヒト全遺伝子コード領域シークエンス解析(エキソーム解析)を98名(「イレッサILD+タルセバILD」患者36名、IPF急性増悪患者45名、ザーコリILD患者2名、タキソテールILD患者15名)に対して施行した。
【実施例】
【0050】
対照として、コーカシアン(53名)、中国漢人(68名)、日本人(70名)についてのエキソームfastqデータをsequence read archiveデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sra)より取得した。全てのデータは、CLC Genomics Workbench(CLC bio)にてヒトゲノム標準配列(hg19)にマッピングした。各患者で、90%以上のエクソン領域が10回以上読まれていることを確認したのち、Probablistic variant detectionアルゴリズムにて遺伝子変異の情報を取得した。
【実施例】
【0051】
その結果、日本人(患者98名+対照70名)の何れか1名以上で検出された変異のうち、アミノ酸変化を生じる変異(non-synonymous変異)が全ゲノムで180215カ所存在した。
【実施例】
【0052】
(実施例2)<「イレッサILD+タルセバILD」患者>
【実施例】
【0053】
(実施例2-1)<関連解析>
上記180215の多型全てについて、「イレッサILD+タルセバILD」患者合計36名と、一般日本人70名との間における関連解析を行った。結果を図1に示す。Bonferroniの補正を行い、P値が0.001/180215以下のものを有意とした。
【実施例】
【0054】
図1において、孤立した点は、エクソン補足効率のキット毎の違いによるartifactの可能性も考えられる。また、点が尖塔状に集合している部分に含まれる点(たとえば、図1に矢印で示した位置)は、広い染色体領域において両群間の多型に頻度差があることを示しており、真の関連を示している可能性が高いと考えられる。
【実施例】
【0055】
(実施例2-2)<遺伝子多型の同定>
実施例2-1の<関連解析>において有意なP値を示した多型のみを選択し、国際頻度の比較をした。
【実施例】
【0056】
イレッサILD、および、タルセバILDについては、以下の疫学データが知られている。
(1)日本人での発症頻度は約4%である。
(2)西洋人での発症頻度は日本人の1/10以下である。
(3)中国人での発症頻度は日本人の発症頻度以下である。
【実施例】
【0057】
上述の疫学データに基づいて、各多型について、
・日本人の遺伝子保有者頻度が4%以上の確率(P1)
・西洋人での遺伝子保有頻度が日本人の1/10以下の確率(P2)
・中国人での遺伝子保有頻度が日本人以下の確率(P3)
を、実施例1において得られた日本人(70名)、コーカシアン(53名)、中国漢人(68名)についてのエキソームデータより計算し、すべてを満たす確率P(P1×P2×P3)を算出した。
【実施例】
【0058】
確率Pは、各多型が上記の疫学データに一致する確率として捉えることができる。結果を図2に示す。
図2におけるP>0.1以上の点全てに関して、所属する遺伝子機能および遺伝子発現部位を検討した結果、肺で発現しており、間質性肺疾患と関連があり得る機能を有する遺伝子はMUC4(図2中、矢印で示した位置)のみであった。
【実施例】
【0059】
(実施例2-3)<MUC4における遺伝子多型の同定>
実施例1の<エキソーム解析>と同様の手法により、MUC4遺伝子領域における全ての変異を特定した。
【実施例】
【0060】
これら全ての変異に関して、「イレッサILD+タルセバILD」患者合計36名と一般日本人70名について関連解析を行った。なお、実施例2-1の<関連解析>においてはアミノ酸変化を生じる変異(non-synonymous変異)のみを用いたが、ここではアミノ酸変化を生じる変異(non-synonymous変異)であるか否かに関わらず、全ての変異を用いた。
【実施例】
【0061】
結果を図3に示す。MUC4はreserve strandに存在するため、図3において、右側が5’側である。特に、エクソン2(塩基番号195505661-195518368)に相当する部分に、多くの変異が含まれていた。
エクソン2の中で特に関連の強い位置は、rs150551454(塩基番号195507491)、rs62282480(塩基番号195510749)、rs2911272(塩基番号195510773)、rs413807(塩基番号195510827)、rs6805660(塩基番号195512042)、および、rs62282486(塩基配列195512245)であった。その中でも、極めて関連の強い位置は、rs6805660(塩基番号195512042)およびrs62282486(塩基配列195512245)であった。
【実施例】
【0062】
(実施例2-4)<遺伝子多型と疾患との相関関係>
最も強い関連が示されたrs6805660およびrs62282486についての多型頻度を検証した。その結果を表1に示す。表1において、Ref/Refはヒトゲノム標準配列のホモ接合、Alt/Altは変異配列のホモ接合、Ref/Altはヘテロ接合を示す。
【実施例】
【0063】
【表1】
JP2014133055A1_000003t.gif
【実施例】
【0064】
表1から明らかなとおり、驚くべきことに、「イレッサILD+タルセバILD」患者(すなわち、実施例1において記載のとおり、びまん性肺胞障害を発症した患者である。)においては、全ての患者がrs6805660の変異配列をホモで有しており、rs62282486についても2例を除いた全ての患者が変異配列をホモで有していた。すなわち、これらの薬剤に起因するびまん性肺胞障害患者のうち、100%(36/36)がrs6805660の変異配列を有しており、約95%(34/36)がrs62282486の変異配列を有していた。このような極めて強い相関が発見されることは、極めて驚くべきことである。
【実施例】
【0065】
念のために、一般日本人70人のうち、rs6805660の変異配列をホモで有している者はたったの5名であり、rs62282486についてはたったの3名であった。いずれの変異についても、一般日本人は、約4%~約7%しか保有していない変異である。
【実施例】
【0066】
なお、エクソン2はMUC4のvariable number of tandem repeat(VNTR)領域である。上記のrs6805660およびrs62282486はアミノ酸変異を生じるが、アミノ酸変異ではなくVNTRの数と関連している可能性も考えられる。
【実施例】
【0067】
(実施例3)<IPF急性増悪患者>
【実施例】
【0068】
実施例2-1の<関連解析>と同様の方法により、IPF急性増悪患者45名と一般日本人70名との間における関連解析を行った。結果を図4に示す。
【実施例】
【0069】
また、実施例2-3<MUC4における遺伝子多型の同定>と同様の方法により、IPF急性増悪患者45名と一般日本人70名との間における関連解析を行った。結果を図5に示す。MUC4はreserve strandに存在するため、図5において、右側が5’側である。特に、エクソン2(塩基番号195505661-195518368)に相当する部分に、多くの変異が含まれていた。
エクソン2の中で極めて関連の強い位置は、rs6805660(塩基番号195512042)およびrs62282486(塩基配列195512245)であった。
【実施例】
【0070】
また、実施例2-4<遺伝子多型と疾患との相関関係>と同様の方法により、最も強い関連が示されたrs6805660およびrs62282486についての多型頻度を検証した。その結果を表2に示す。表2において、Ref/Refはヒトゲノム標準配列のホモ接合、Alt/Altは変異配列のホモ接合、Ref/Altはヘテロ接合を示す。
【実施例】
【0071】
【表2】
JP2014133055A1_000004t.gif
【実施例】
【0072】
表2から明らかなとおり、驚くべきことに、IPF急性増悪患者(すなわち、実施例1において記載のとおり、びまん性肺胞障害を発症した患者である。)においては、全ての患者がrs6805660の変異配列をホモで有しており、rs62282486についても5例を除いた全ての患者が変異配列をホモで有していた。すなわち、これらの薬剤に起因するびまん性肺胞障害患者のうち、100%(45/45)がrs6805660の変異配列を有しており、約89%(40/45)がrs62282486の変異配列を有していた。このような極めて強い相関が発見されることは、極めて驚くべきことである。
【実施例】
【0073】
既に述べたとおり、一般日本人70人のうち、rs6805660の変異配列をホモで有している者はたったの5名であり、rs62282486についてはたったの3名であった。いずれの変異についても、一般日本人は、約4%~約7%しか保有していない変異である。
【実施例】
【0074】
(実施例4)<タキソテールILD患者およびザーコリILD患者>
さらに、実施例2-4<遺伝子多型と疾患との相関関係>と同様の方法により、タキソテールILD患者15名およびザーコリILD患者2名についても、rs6805660およびrs62282486における多型頻度を検証した。結果を表3に示す。
【実施例】
【0075】
【表3】
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【実施例】
【0076】
表3から明らかなとおり、驚くべきことに、タキソテールILD患者(すなわち、実施例1において記載のとおり、びまん性肺胞障害を発症した患者である。)においては、全ての患者がrs6805660の変異配列をホモで有しており、rs62282486についても1例を除いた全ての患者が変異配列をホモで有していた。すなわち、これらの薬剤に起因するびまん性肺胞障害患者のうち、100%(15/15)がrs6805660の変異配列を有しており、約93%(14/15)がrs62282486の変異配列を有していた。このような極めて強い相関が発見されることは、極めて驚くべきことである。
【実施例】
【0077】
さらに、表3から明らかなとおり、驚くべきことに、ザーコリILD患者(すなわち、実施例1において記載のとおり、びまん性肺胞障害を発症した患者である。)においては、全ての患者がrs6805660およびrs62282486の変異配列をホモで有していた。このような極めて強い相関が発見されることは、極めて驚くべきことである。
【実施例】
【0078】
(総括)
以上のとおり、本件発明者らが鋭意研究の結果、「イレッサILD+タルセバILD」患者、タキソテールILD患者、ザーコリILD患者、IPF急性増悪患者であって、びまん性肺胞障害に罹患した患者は、それ以外のポピュレーションとは全く異なり、極めて高い確率で、MUC4遺伝子に所定の遺伝子多型を有していることが、発見された。
【実施例】
【0079】
これまでの世界中の研究機関の努力にもかかわらず、びまん性肺胞障害に関連する遺伝子多型は、何ら発見されなかった。したがって、いうまでもなく、びまん性肺胞障害と、極めて強い相関を有する遺伝子多型は、これまで、一切報告されていない。
【実施例】
【0080】
なお、イレッサ、タルセバ、ザーコリといったチロシンキナーゼ阻害剤に属する抗癌剤のみならず、タキソテールのような微小管脱重合阻害薬に属する抗癌剤についても、全く同様の結果が得られたことは、びまん性肺胞障害が、薬剤の作用機序に関わらず、所定の遺伝子多型と極めて強い相関を有していることに起因するであろう。したがって、いかなる抗癌剤、あるいは、薬剤一般についても、本件発明の判定方法は、びまん性肺胞障害の発症リスクの判定のための、極めて有用な手段となるであろう。そうすることにより、本来、癌患者の命を救う目的で投与されるべき抗癌剤によって、皮肉にも、患者を死に至らしめることを未然に防ぐことができるからである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4