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明細書 :歯周組織再生用材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月23日(2017.2.23)
発明の名称または考案の名称 歯周組織再生用材料
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
FI A61L 27/00
国際予備審査の請求
全頁数 19
出願番号 特願2015-521440 (P2015-521440)
国際出願番号 PCT/JP2014/064633
国際公開番号 WO2014/196503
国際出願日 平成26年6月2日(2014.6.2)
国際公開日 平成26年12月11日(2014.12.11)
優先権出願番号 2013119441
優先日 平成25年6月6日(2013.6.6)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】本田 雅規
【氏名】秋田 大輔
【氏名】加野 浩一郎
【氏名】松本 太郎
【氏名】金子 正
【氏名】山中 克之
【氏名】坂井 裕大
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
【識別番号】000181217
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C081
Fターム 4C081AB06
4C081BA12
4C081CA171
4C081CD121
4C081CD34
4C081DA01
4C081DB03
要約 本発明は、簡便で安全な歯周組織再生用材料の提供や、歯周組織を再生する方法の提供を課題とする。
脱分化脂肪細胞(DFAT)を含む歯周組織再生用材料を、簡便で安全な歯周組織再生用材料として提供する。また、該歯周組織再生用材料により、歯周組織を再生する方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
脱分化脂肪細胞を含む歯周組織再生用材料。
【請求項2】
さらに担体を含む請求項1に記載の歯周組織再生用材料。
【請求項3】
担体が乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を主成分とする担体である請求項2に記載の歯周組織再生用材料。
【請求項4】
担体が、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を主成分とする気孔率が60%以上95%以下の担体である請求項2に記載の歯周組織再生用材料。
【請求項5】
担体が、顆粒状の乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を成型して得られるブロック状の担体である請求項2~4のいずれかに記載の歯周組織再生用材料。
【請求項6】
組織再生用吸収性メンブレンと組み合わせて使用する請求項1~5のいずれかに記載の歯周組織再生用材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の歯周組織再生用材料および組織再生吸収性メンブレンを含む歯周組織再生用キット。
【請求項8】
組織再生吸収性メンブレンが乳酸-グリコール酸共重合体膜またはコラーゲン膜である請求項7に記載の歯周組織再生用キット。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の歯周組織再生用材料を歯周組織欠損部に移植する工程を含む歯周組織を再生する方法。
【請求項10】
さらに、移植部に組織再生吸収性メンブレンを被覆する工程を含む請求項9に記載の歯周組織を再生する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脱分化脂肪細胞(Dedifferentiated Fat Cells;DFAT(以下、DFATと示す場合がある))を含む歯周組織再生用材料に関する。
また、該歯周組織再生用材料により、歯周組織を再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラーク細菌やその代謝産物によって歯周組織に炎症が起こることにより、歯周組織が破壊される。破壊された歯周組織の再生は、プラーク等の原因除去療法では不可能であることから、近年、様々な歯周組織の再生技術が開示されている。
例えば、特許文献1では、幹細胞を細胞支持体上で培養して得られる組織または器官再生用材料が開示されている。そして、間葉系幹細胞を含む該材料が、イヌの下顎骨領域の骨欠損部位への移植において良好な骨形成能を示したことを確認している。
特許文献2では、歯または歯周組織から単離したSSEA-4陽性間葉系幹細胞の脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞等への分化を確認している。そして、この文献においてSSEA-4陽性間葉系幹細胞を分化させて歯あるいは歯周組織としたものを歯周組織に移植することで歯周組織の再生を行うことが記載されている。また、特許文献3は乳歯歯髄間葉系幹細胞、永久歯歯髄間葉系幹細胞の培養法に関するものであるが、この方法によって培養された細胞を歯周組織等の再生用とすることが記載されている。
その他にも歯周組織の再生技術として、特許文献4では、BMP-2、ヘパラン硫酸、ヘパリン等を有効成分とする細胞の細胞増殖促進剤、分化促進剤を歯周組織の形成促進、再生促進剤とすることが開示されている。
さらに、脂肪組織由来の間質細胞群による歯周組織の再生についても検討されている(非特許文献1)。
【0003】
これらは歯周組織の再生にあたり、有用な技術であるといえるが、例えば、特許文献1~3に記載されているような間葉系幹細胞や、歯周組織から間葉系幹細胞を単離するには、材料を提供するヒト等において抜歯の必要や、侵襲・疼痛が大きい等の問題があり、現実的な方法とはいえなかった。また、非特許文献1の間質脂肪細胞の培養には簡便かつ大量に採取することはできるものの、多様な細胞から構成されるため年齢や症例によって移植結果に差異が生じるおそれがあった。
そこで、より簡便で安全な歯周組織再生用材料の提供や、歯周組織を再生する方法の提供が望まれていた。
【0004】
ところで、これらの特許文献に開示されているような幹細胞とは異なる細胞であって幹細胞と同様な分化能を有する、脱分化脂肪細胞(DFAT)が知られている。DFATは、脂肪組織を構成する成熟脂肪細胞を単離し、天井培養法を用いることで自発的に脱分化を開始して多分化能を獲得した細胞であり、筋芽細胞や軟骨細胞への分化が可能であることが知られている(特許文献5)。
しかし、これまで、DFATを歯周組織の再生に利用した例は知られていない。なお、ラットの上顎臼歯部に骨欠損部を作製し、DFATをアテロコラーゲンスポンジからなる担体(Scaffold)とともに移植して歯周組織の再生可能性について検討した報告がある(非特許文献2)。しかし、本報告では、移植後の歯周組織の再生は、DFATと担体の両方を移植した群と、担体のみを移植した群の両方に再生が認められ、その有意差については明らかにされていない。したがって、DFAT自体に再生能があることは確認されているとはいえない。さらに、担体についても有効であったかどうかに関する記載も認めない。
また、当該文献には、新生骨面、新生歯根膜、結合組織においてGFP陽性細胞を認めたことは記載されているものの、DFAT細胞によって組織の再生が行われたのかどうかについては明らかではなく、あくまでも、DFATが歯周組織再生に関与している可能性について記載するにとどまる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2005-278910号公報
【特許文献2】国際公開WO2012/016492号パンフレット
【特許文献3】特開2010-268715号公報
【特許文献4】特開2008-74732号公報
【特許文献5】特表2004-111211号公報
【0006】

【非特許文献1】公益社団法人日本補綴歯科学会 設立80周年記念 第122回学術大会プログラム・抄録集 p132
【非特許文献2】特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2010年度秋季学術大会プログラムおよび講演抄録集(Web)第133回 p181「ラット脱分化脂肪細胞を用いた歯周組織再生能の検討」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡便で安全な歯周組織再生用材料の提供や、歯周組織を再生する方法の提供を課題とする。特に、DFATを利用した実用価値の高い歯周組織の再生方法等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、脱分化脂肪細胞(DFAT)が歯周組織の再生に有効に作用することを見出し、該細胞を含む歯周組織再生用材料の提供を完成するに至った。また、該歯周組織再生用材料により、歯周組織を再生する方法の提供も可能となった。
本発明の歯周組織再生用材料に含まれる脱分化脂肪細胞は、歯科医師等が簡便に入手できる脂肪組織から、天井培養法により高純度かつ大量に得られる細胞であるため、多様な細胞から構成されている間質細胞群等を使用した従来の歯周組織再生療法よりも、より生体安全性が高く、安定した治療効果が得られる可能性が高い。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
〔1〕脱分化脂肪細胞を含む歯周組織再生用材料。
〔2〕さらに担体を含む上記〔1〕に記載の歯周組織再生用材料。
〔3〕担体が乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を主成分とする担体である上記〔2〕に記載の歯周組織再生用材料。
〔4〕担体が、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を主成分とする気孔率が60%以上95%以下の担体である上記〔2〕に記載の歯周組織再生用材料。
〔5〕担体が、顆粒状の乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を成型して得られるブロック状の担体である上記〔2〕~〔4〕のいずれかに記載の歯周組織再生用材料。
〔6〕組織再生用吸収性メンブレンと組み合わせて使用する上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の歯周組織再生用材料。
〔7〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の歯周組織再生用材料および組織再生吸収性メンブレンを含む歯周組織再生用キット。
〔8〕組織再生吸収性メンブレンが乳酸-グリコール酸共重合体膜またはコラーゲン膜である上記〔7〕に記載の歯周組織再生用キット。
〔9〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の歯周組織再生用材料を歯周組織欠損部に移植する工程を含む歯周組織を再生する方法。
〔10〕さらに、移植部に組織再生吸収性メンブレンを被覆する工程を含む上記〔9〕に記載の歯周組織を再生する方法。

【発明の効果】
【0009】
本発明の歯周組織再生用材料の提供や、該歯周組織再生用材料により歯周組織を再生する方法の提供により、歯周病等の歯周組織の欠損が生じる疾病に対し、安全で簡便かつ有用な治療剤、治療法等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】脱分化脂肪細胞(線維芽細胞様細胞)を観察した図である(実施例1)。
【図2】脱分化脂肪細胞の播種のために前処理を行ったPLGA担体を示した図である(実施例1)。
【図3】歯周組織欠損モデルにおける欠損部位を示した図である(実施例2)。
【図4】移植後の各移植群における硬組織量を示した図である(実施例2)。
【図5】移植後の各移植群における歯周組織の再生を確認した図である(実施例2)。
【図6】移植後の各移植群におけるセメント質の再生を確認した図である(実施例2)。
【図7】移植後の各移植群におけるセメント質の再生を確認した図である(実施例2)。
【図8】移植後の各移植群におけるセメント質の再生率を示した図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の「歯周組織再生用材料」とは、歯肉、歯根膜の軟組織と、セメント質、歯槽骨の硬組織の4つの組織で構成される歯周組織が、例えば歯周病等の生物的作用、物理的作用、または機械的作用等によって破壊、欠損等された場合に、破壊、欠損等された箇所が歯周組織として機能し得るような状態に戻すための材料のことをいう。
本発明の「歯周組織再生材料」は、歯周組織を構成する組織のうち、例えばセメント質、または歯根膜等の少なくとも一つ以上の組織を再生し得る材料であり、さらには歯周組織を構成する全ての組織を再生し得る材料であることが好ましい。

【0012】
本発明の「歯周組織再生用材料」は脱分化脂肪細胞を含む歯周組織再生用材料であれば良い。ここで、「脱分化脂肪細胞」とは、ヒト、ブタ、イヌ、トリ等の動物の脂肪組織から得られる成熟脂肪細胞を材料として、天井培養法等を行うことにより、該脂肪細胞が脱分化されることによって得られる線維芽細胞様の未分化な細胞のことをいう。このような本発明の「脱分化脂肪細胞」は、脂肪細胞以外の他の機能を有する細胞として、例えば、骨芽細胞、筋芽細胞、上皮細胞、または神経細胞等にも分化し得る、多分化能を有するものである。
本発明では従来知られているいずれの方法によって得られた「脱分化脂肪細胞」も使用することができ、このように得られた初代の脱分化脂肪細胞を、数代、数十代まで長期間継代したものも使用することができる。

【0013】
本発明の「歯周組織再生用材料」は、脱分化脂肪細胞に加え、さらに「担体」を含むものであることが好ましい。本発明における「担体」は、脱分化脂肪細胞が歯周組織を再構成するための足場や、脱分化脂肪細胞が増殖する場として作用し得るものであることが好ましく、本発明の「歯周組織再生用材料」が移植される動物等において安全なものであれば従来知られているいずれのものも使用することができる。
このような本発明の「担体」として、例えば、吸収性の材質からなる担体、好ましくは乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を主成分とする担体を使用することが好ましい。この担体は、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を主成分とする気孔率が60%以上95%以下のブロック状のPLGA担体であることが好ましく、特に気孔率80%のブロック状のPLGA担体であることが好ましい。
気孔率が60%未満または気孔率が95%を超えるものも、本発明の「担体」として使用することが可能であるが、気孔率が60%未満となると、強度は高いものの、成型性が悪くなり、気孔の連通性、気孔径が小さくなるため、脱分化脂肪細胞を担体内部に均一に播種することが困難になる。また、気孔率が95%を超えると、気孔の連通性、気孔径が大きくなり、脱分化脂肪細胞の播種性は良くなるものの、担体内に脱分化脂肪細を留めにくくなり、担体の強度も低下するため、培養時や移植後の形状の維持が困難になるためである。
また、気孔径は、100μm~500μmがよく、150~400μmがさらに好ましい。
本発明の歯周組織の再生には、気孔径と気孔率の両方が適切な範囲にあることが組織再生効率を向上させるために重要であり、気孔径が100μm~500μmかつ気孔率60%以上95%以下が好ましく、気孔径が150μm~400μmかつ気孔率60%以上90%以下がさらに好ましい範囲である。
具体的には、例えば気孔率80%で気孔径約180um、気孔率90%で気孔径約350μmの担体が挙げられる。

【0014】
また、本発明の担体として、凍結乾燥法やリーチング法により作製されるスポンジ状の乳酸—グリコール酸製の共重合体を使用することもできるが、これらの方法により作製された担体は強度が低く、培養期間中もしくは移植後に形状を維持することが困難であり、また、気孔の独立性が高く、担体内部に脱分化脂肪細胞を均一に播種することが困難である。従って、より強度の高い乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を主成分とする担体を使用することが好ましい。
本発明のブロック状の乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を主成分とする担体は顆粒状の材料を成型することにより得られるため、強度が高く、気孔に連通性がありスポンジ状の担体の欠点を補うことが可能である。本発明のブロック状のPLGA担体を使用すると、スポンジ状の担体と比べて移植した際に細胞が増殖できる場を広く維持でき組織が形成される場を維持できる等の利点もある。
また、ブロックの形状としては、移植する欠損部の形状に合うものであればよく、その断面形状は、円形、三角形、四角形、その他の多角形があり、四角形としては、正方形、長方形、台形、ひし形などが挙げられる。

【0015】
本発明の「歯周組織再生用材料」は、脱分化脂肪細胞を担体に播種し、担体に生着させた状態で使用することが好ましい。脱分化脂肪細胞は担体上、担体内部等の担体のいずれの箇所に生着していても良いが、担体内部に生着していることが特に好ましい。
脱分化脂肪細胞の担体への生着には、従来知られているいずれの方法も用いることができるが、例えば、前処理等した担体に脱分化脂肪細胞を播種し、これを一定時間静置することで生着させる等の方法が挙げられる。
本発明の「歯周組織再生用材料」において、担体に生着させる脱分化脂肪細胞の数は、歯周組織の再生が可能である数であれば良く、担体の大きさ等に合わせて調整することができる。使用する担体の大きさも、歯周組織の欠損部の大きさ等、本発明の「歯周組織再生用材料」を移植し歯周組織を再生させたい箇所に合わせて調整することができる。

【0016】
本発明の「歯周組織再生用材料」はさらに、組織再生用吸収性メンブレンと組み合わせて使用することが好ましい。「組織再生用吸収性メンブレン」を組み合わせて使用することにより、咬筋に付随する骨膜や筋膜を含めた歯周組織外の組織から本発明の「歯周組織再生用材料」を遮蔽し、歯周組織の再生を阻害する細胞の侵入を回避することで、脱分化脂肪細胞および担体の再生促進能力を高めることが可能となる。
ここで「組織再生用吸収性メンブレン」とは、脱分化脂肪細胞や、該細胞を含む担体の移植した箇所からの離脱、および歯周組織の再生を阻害する細胞の該担体への侵入等を防止できるものであることが好ましく、本発明の「歯周組織再生用材料」が移植される動物等において安全なものであれば従来知られているいずれのものも使用することができる。
このような「組織再生用吸収性メンブレン」は、従来知られているいずれのものも使用することができ、市販のものであってもよい。このような「組織再生用吸収性メンブレン」として、例えば、コーケンティッシュガイド(コラーゲン膜、株式会社高研)、バイオメンド(コラーゲン膜、株式会社白鳳)、またはジーシーメンブレン(乳酸-グリコール酸共重合体膜、株式会社ジーシー)等を挙げることができる。また、海外において市販されているバイクリルメッシュ(polyglactin,J&J)、INION GTR(登録商標)(PLLA,INION)、またはBIO-GUIDE(登録商標)(コラーゲン,GEISTLICH-PHARMA)等を挙げることもできる。

【0017】
本発明の「歯周組織を再生する方法」では、このような本発明の「歯周組織再生用材料」を移植する工程を含み、これによって歯周組織が再生できる方法であればよい。この工程を含む方法であればよく、その他、歯周組織の再生に有用な方法を含んでいてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0018】
〔実施例1〕
歯周組織再生用材料の調製
次の1)および2)の工程を経て歯周組織再生用材料を調製した。
1)脱分化脂肪細胞(DFAT)の調製
8週齢の雄性F344ラット(日本クレア)の鼠径部から約1gの皮下脂肪組織を採取し洗浄後、0.1%コラゲナーゼ(SIGMA)溶液にて酵素処理を行った。さらに100μmセルストレイナー(BD Falcon)にて余分な組織を排除後、135Gにて3分間遠心分離を行い、遠沈管上部に浮遊する成熟脂肪細胞分画を採取した。
採取した成熟脂肪細胞群をDulbecco's Modified Eagle Medium(DMEM培地:SIGMA)にて3回洗浄後、20% FETAL BOVINE SERUM(FBS:Nichirei Biosciences.INC)および1% Pen Strep(GIBCO)を添加したDMEM培地で満たした25cm2フラスコに5×104の細胞を移すと、成熟脂肪細胞群は培地内にて反転させたフラスコの天井部分に接着した(天井培養)。
天井部分に細胞を接着させたまま7日間、同培養液にて培養を続けると、7日後に成熟脂肪細胞から脱分化し、均一な形態を示す線維芽細胞様細胞が観察された(図1、AおよびB)。
線維芽細胞様細胞を確認後、フラスコを正位に戻した後も培地交換を行い、培養を続けると線維芽細胞様細胞は増殖を続けた。この線維芽細胞様細胞を脱分化脂肪細胞(DFAT)とした。なお正位の位置で、線維芽細胞様細胞を培養できるように,天井培養の際には反転させている。
成熟脂肪細胞から脱分化により得られた脱分化脂肪細胞をトリプシン-EDTA液で通法に従って継代操作することで、必要な細胞数を獲得した。なお、この脱分化脂肪細胞について、骨芽細胞及び脂肪細胞への分化能を調べ、多分化能を有する脱分化脂肪細胞であることも確認した。
今回の歯周組織再生用材料の調製においては3継代目の細胞を歯周組織の再生に使用したが、成熟脂肪細胞から脱分化により得られた脱分化脂肪細胞であれば、初代のものも、数十代まで長期間継代したものも、いずれのものも歯周組織再生用材料の調製に使用することができる。
【実施例】
【0019】
2)担体への脱分化脂肪細胞の播種
(1)担体の調製
乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)を主成分とする気孔率80%のブロック状のPLGA担体(大きさ:縦2mm横3mm厚さ1mm,気孔径180μm、株式会社ジーシーにて作製)を使用した。これを70%エタノールにより脱気処理(図2)し、脱分化脂肪細胞の播種のための前処理を行った。
【実施例】
【0020】
(2)脱分化脂肪細胞の播種
上記(1)にて調製したPLGA担体をDMEM培地にて24時間浸漬した後,担体上面に上記1)にて調製した脱分化脂肪細胞を含む細胞懸濁液(1.0×106個/200μl)を加え、脱分化脂肪細胞を播種した。これをDMEM培地にて37℃,5%CO2下にて6時間静置し、静置後漏出した細胞数を計測することで脱分化脂肪細胞が担体内部に生着していることを確認した。このように調製したものを歯周組織再生用材料とした。
【実施例】
【0021】
〔実施例2〕
歯周組織の再生
実施例1にて調製した歯周組織再生用材料により、歯周組織の再生を行った。
1.歯周組織欠損モデルの作製
歯周組織欠損モデルの作製はキングらの方法に従った(King GN et al. J Dent Res 1997;76:1460e70.)。
即ち、8週齢の雄性F344ラットにソムノペンチル(共立製薬株式会社)にて腹腔内麻酔を施し、左側口角から下顎角にわたり除毛および皮膚切開を行い、咬筋を切断した。次に切断した咬筋を翻転させ、露出させた下顎骨の第一臼歯遠心根頬側周囲を象牙質が露出するまで歯科用インバーテッドバー(ジョダ社)によって注水下にて機械的に欠損させた。これにより、縦2mm×横3mm×深さ1mmの欠損部位(図3)を有する歯周組織欠損モデルを作製した。
【実施例】
【0022】
2.歯周組織再生用材料による歯周組織の再生
上記1にて調製した歯周組織欠損モデルの欠損部位を洗浄後、実施例1にて調製した脱分化脂肪細胞を含む歯周組織再生用材料を欠損部に填塞後(対照群は担体のみを填塞)、ジーシーメンブレン(乳酸-グリコール酸共重合体膜、縦7mm×横8mm、株式会社ジーシー)にて被覆することで移植を行った。移植後に咬筋および皮膚を旧位に復して縫合した。移植期間は5週間とした。
【実施例】
【0023】
歯周組織再生用材料を移植した歯周組織欠損モデルの群を歯周組織再生用材料移植群(n=3)とし、比較として、歯周組織欠損モデルの欠損部位を洗浄後、上記(1)にて前処理したPLGA担体とジーシーメンブレン(縦7mm×横8mm)を填塞することで移植し、縫合し、移植期間を5週間とした担体移植群(n=3)を作製した。
この歯周組織再生用材料移植群と担体移植群の移植箇所(欠損部位周辺部)をそれぞれ、移植期間である5週間中、7日間ごとにX線CTシステム(R_mCT:リガク)にて90kv,100mA,撮影倍率20倍(voxelサイズ:30×30×30μm)17秒間の条件下で撮影した。
得られた投影データをもとに、統合画像処理ソフトI-view-3DX Ver.1.82(MORITA)によりCT画像の処理を行った。μCT画像は3by4viewer Ver.2.4(北千住ラジスト歯科,I-View画像センター)にて解析し,作製した欠損部内の硬組織量を定量的に評価した。有意差検定はボンフェローニ補正マンホイットニー検定を用いた。その結果、歯周組織再生用材料移植群は担体移植群と比較して有意に欠損部内の硬組織量が増加したことが確認でき(図4)、セメント質と歯槽骨との間に歯根膜様の空隙の存在も確認できた(図5)。
【実施例】
【0024】
また、移植期間終了後、移植箇所(欠損部位周辺部)を含む下顎骨を取り出し、10%中性緩衝ホルマリン液にて固定した。その後、EDTA液で4週間脱灰操作を行い、組織学的解析を行うために通法に従って脱水、透徹、浸漬しパラフィン包埋した。これを7μmに薄切し、ヘマトキシリン・エオジン染色をして評価した。その結果、歯周組織再生用材料移植群及び担体移植群のいずれにおいても、第一臼歯近心根において、セメント質(図6、7、矢印で囲われた部分)、歯槽骨様及び歯根膜様の組織が認められた。
セメント質の再生の程度を、再生したセメント質の幅径を測定することにより評価した。各群において、作製した欠損周辺部から無作為に選択した複数の箇所の幅径を測定したところ、歯周組織再生用材料移植群は担体移植群と比較して有意にセメント質の幅径が広く、セメント質の再生の程度が高いことが確認できた。
【実施例】
【0025】
また、各歯周組織欠損モデルにおいて、セメント質の再生率として欠損部位において再生したセメント質の幅径の比率(第一臼歯遠心根において、欠損を作製しなかった舌側のセメント質の幅径に対する、欠損を作製した頬側のセメント質の幅径の比率)を算出した。
算出した比率を頬側周囲欠損させず維持していた健全な第一臼歯の歯根中央部のセメント質の幅径を100%(図8、A)とした場合と比較したところ、担体移植群(図8、C)ではセメント率の再生率が低く、担体も歯周組織再生用材料も移植しなかった群(図8、B)でも十分なセメント質の再生率が得られなかった。一方歯周組織再生用材料移植群(図8、D)では健全な歯周組織のセメント質の幅径の8割に達し、セメント質の再生率が非常に高いことが確認できた。
【実施例】
【0026】
再生した歯根膜について観察したところ、歯根膜線維の走行は,歯根に直行した配列が観察された。また,歯根膜の線維がセメント質内に埋入していることも認められた。これは、欠損させず維持していた健全な歯に見られる歯根膜の線維の走行と一致し、健全なセメント質内に認められるシャーピー線維と同一なものであると示唆された。
従って、本発明の歯周組織再生用材料によって、セメント質の再生や、歯根膜の機能を有する線維群の再生が可能であることから、本発明の歯周組織再生用材料は歯周組織の再生に有用であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のDFATを含む歯周組織再生用材料によりや、歯周組織の再生を実現することが可能となり、歯周病等の歯周組織の欠損が生じる疾病に対し、安全で簡便かつ有用な治療剤、治療法等を提供できる。
図面
【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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