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明細書 :信号制御装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6164592号 (P6164592)
登録日 平成29年6月30日(2017.6.30)
発行日 平成29年7月19日(2017.7.19)
発明の名称または考案の名称 信号制御装置
国際特許分類 H04R   3/00        (2006.01)
H04R   3/12        (2006.01)
H04R   1/40        (2006.01)
FI H04R 3/00 310
H04R 3/12 A
H04R 1/40 310
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2015-521515 (P2015-521515)
出願日 平成26年6月9日(2014.6.9)
国際出願番号 PCT/JP2014/065259
国際公開番号 WO2014/196653
国際公開日 平成26年12月11日(2014.12.11)
優先権出願番号 2013120953
優先日 平成25年6月7日(2013.6.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年2月10日(2017.2.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 寧
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査官 【審査官】大野 弘
参考文献・文献 特開2009-260690(JP,A)
特開2003-143686(JP,A)
調査した分野 H04R 3/00
H04R 1/40
H04R 3/12
特許請求の範囲 【請求項1】
入力信号における正成分に相当する変調信号を入力する第1系統の遅延器と、
入力信号における負成分に相当する変調信号を入力する第2系統の遅延器と、
それぞれの系統の遅延器から出力された信号を入力し、超音波として各系統ごとに出力するトランスデューサと、
前記トランスデューサから出力されたそれぞれの系統からの超音波を検知する検知手段と、
前記検知手段が検知した各系統ごとの超音波を統合し、正の音波及び負の音波の各波形特性を検出する波形特性検出手段と、
前記波形特性検出手段が検出した前記波形特性に基づいて、前記第1系統の遅延器から出力された信号と前記第2系統の遅延器から出力された信号との位相差が減少するように、前記第1系統の遅延器又は前記第2系統の遅延器に、前記位相差に応じた遅延量の情報を入力する遅延調整手段とを備えることを特徴とする信号制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号制御装置において、
前記波形特性検出手段が、前記正の音波におけるピーク及び負の音波におけるピークをそれぞれ検出し、
前記遅延調整手段が、
前記正の音波におけるピークと前記負の音波におけるピークとを加算する加算手段と、
加算した結果得られた前記信号の正負に応じて前記遅延量の情報を前記第1系統の遅延器又は前記第2系統の遅延器に入力する遅延量決定手段とを備えることを特徴とする信号制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の信号制御装置において、
前記波形特性検出手段が、前記正の音波におけるピーク及び負の音波におけるピークをそれぞれ検出し、
前記遅延調整手段が、前記正の音波におけるピークの成分値と前記負の音波におけるピークの成分値との割合を算出し、当該割合に応じた前記遅延量の情報を前記第1系統の遅延器又は前記第2系統の遅延器に入力することを特徴とする信号制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の信号制御装置において、
前記波形特性検出手段が、デューティ比を検出し、
前記遅延調整手段が、前記デューティ比に応じた前記遅延量の情報を前記第1系統の遅延器又は前記第2系統の遅延器に入力することを特徴とする信号制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の信号制御装置において、
前記入力信号のゼロクロス信号に同期して、前記第1系統の遅延器又は前記第2系統の遅延器に信号を割り振る選択手段を備えることを特徴とする信号制御装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波の音信号の位相制御を行う信号制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指向性が非常に強く特定のエリアに音を伝える手段として、超音波スピーカが利用されている。超音波スピーカは、超音波が伝えるエネルギーが非線形特性により空気中で可聴音に変換されることで音として聞くことができるものである。この超音波スピーカにおいて、音を伝送する方向を可変にしたい場合、音波発生面を機械的に傾けるなどの大掛かりな機構が必要となってしまう。
【0003】
このような問題に関して、例えば、特許文献1、2に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、AD変換器が、超音波信号を振幅変調するための変調信号を予め定められたサンプリング周波数でサンプリングして、変調信号のサンプルを順次生成し、生成された変調信号のサンプルは記憶部に記憶され、読出部が、変調信号のサンプルの内の予め定められた時間間隔を有する複数のサンプルを記憶から読み出し、超音波信号発振器が、超音波信号を発振し、複数の振幅変調器が、読み出された複数のサンプルをそれぞれ用いて超音波信号を振幅変調して複数の被変調信号を出力し、複数の電気音響変換器が、複数の被変調信号でそれぞれ駆動されるものである。
【0004】
また、特許文献2に示す技術は、サンプル生成部が、変調信号を用いて超音波信号が振幅変調された被変調信号のサンプルを順次生成し、生成された被変調信号のサンプルは記憶部に記憶され、読出部が、被変調信号のサンプルの内の予め定められた時間間隔を有する複数のサンプルを記憶部から読み出し、複数の電気音響変換器が、複数のサンプルでそれぞれ駆動されるものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009-260689号公報
【特許文献2】特開2009-260690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
位相制御による超音波スピーカの方向制御の場合、外部環境の壁や天井、床などによる反射の影響で十分な方向性の制御が困難となる。
【0007】
特許文献1、2に示す技術は、いずれも位相制御を行う技術であるが、時間的な要素を用いた複雑な演算を行う必要があり、処理が煩雑になってしまう。また、演算に音速cを用いた場合、この音速cは温度により変動するものであるため、固定値として利用すると、温度変化により正確な演算を行うことができなくなってしまう。固定値としない場合であっても、そのときの温度に対応する音速cを特定する処理が必要となり、処理が煩雑なものになってしまうという課題を有する。
【0008】
本発明は、外部環境の影響を受けることなく、簡単な構成及び処理で高精度に位相制御を行うことが可能な信号制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る信号制御装置は、入力信号における正成分に相当する変調信号を入力する第1系統の遅延器と、入力信号における負成分に相当する変調信号を入力する第2系統の遅延器と、それぞれの系統の遅延器から出力された信号を入力し、超音波として各系統ごとに出力するトランスデューサと、前記トランスデューサから出力されたそれぞれの系統からの超音波を検知する検知手段と、前記検知手段が検知した各系統ごとの超音波を統合し、正の音波及び負の音波の各波形特性を検出する波形特性検出手段と、前記波形特性検出手段が検出した前記波形特性に基づいて、前記第1系統の遅延器から出力された信号と前記第2系統の遅延器から出力された信号との位相差が減少するように、前記第1系統の遅延器又は前記第2系統の遅延器に、前記位相差に応じた遅延量の情報を入力する遅延調整手段とを備えるものである。
【0010】
このように、本発明に係る信号制御装置においては、2系統の遅延器を用意し、一方に入力信号の正成分に相当する変調信号、他方に入力信号の負成分に相当する変調信号を入力し、それぞれから出力された超音波を検知し、各超音波を統合した際の波形特性から、それぞれの位相差が減少するように遅延量の情報をフィードバックすることで、簡素化された構成で且つシンプルな処理を行うだけで、高精度に位相制御を行うことが可能になるという効果を奏する。
【0011】
本発明に係る信号制御装置は、前記波形特性検出手段が、前記正の音波におけるピーク及び負の音波におけるピークをそれぞれ検出し、前記遅延調整手段が、前記正の音波におけるピークと前記負の音波におけるピークとを加算する加算手段と、加算した結果得られた前記信号の正負に応じて前記遅延量の情報を前記第1系統の遅延器又は前記第2系統の遅延器に入力する遅延量決定手段とを備えるものである。
【0012】
このように、本発明に係る信号制御装置においては、波形特性検出手段が、正のピーク及び負のピークをそれぞれ検出し、遅延調整手段が、それぞれのピークを加算し、加算の結果得られた信号の正負に応じて遅延量の情報を遅延器に入力するため、簡素化された構成且つシンプルな処理でフィードバックをかける適切な遅延量を演算することができるという効果を奏する。すなわち、コストを削減して高性能な信号制御を実現することができる。
【0013】
本発明に係る信号制御装置は、前記波形特性検出手段が、前記正の音波におけるピーク及び負の音波におけるピークをそれぞれ検出し、前記遅延調整手段が、前記正の音波におけるピークの成分値と前記負の音波におけるピークの成分値との割合を算出し、当該割合に応じた前記遅延量の情報を前記第1系統の遅延器又は前記第2系統の遅延器に入力するものである。
【0014】
このように、本発明に係る信号制御装置においては、波形特性検出手段が、正のピーク及び負のピークをそれぞれ検出し、遅延調整手段が、正のピークの成分値と負のピークの成分値との割合を算出し、当該割合に応じた遅延量の情報を遅延器に入力するため、簡素化された構成且つシンプルな処理でフィードバックをかける適切な遅延量を演算することができるという効果を奏する。
【0015】
本発明に係る信号制御装置は、前記波形特性検出手段が、デューティ比を検出し、前記遅延調整手段が、前記デューティ比に応じた前記遅延量の情報を前記第1系統の遅延器又は前記第2系統の遅延器に入力するものである。
【0016】
このように、本発明に係る信号制御装置においては、波形特性検出手段が、デューティ比を検出し、デューティ比に応じた遅延量の情報を遅延器に入力するため、簡素化された構成且つシンプルな処理でフィードバックをかける適切な遅延量を演算することができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る信号制御装置は、入力信号のゼロクロス信号に同期して、前記第1系統の遅延器又は前記第2系統の遅延器に信号を割り振る選択手段を備えるものである。
【0018】
このように、本発明に係る信号制御装置においては、入力信号のゼロクロス信号に同期して、第1系統の遅延器又は第2系統の遅延器に信号を割り振るため、それぞれの遅延器に適切な信号を正確に入力することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係る信号制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】入力信号の波形の一例を示す図である。
【図3】各遅延器に入力される変調信号を示す図である。
【図4】位相差とマイクとの位置関係を示す図である。
【図5】マイクで検知される直前(復調前)における各スピーカの統合された信号波形を模式的に示す図である。
【図6】マイクで検知された直後(復調後)の統合された信号波形を示す図である。
【図7】第1の実施形態に係る波形特性検出部の構成を示すブロック図である。
【図8】第1の実施形態に係る遅延調整部の構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施形態に係る信号制御装置においてトランスデューサから出力された波形を示す図である。
【図10】第2の実施形態に係る信号制御装置においてマイクで検出された波形を示す第1の図である。
【図11】第2の実施形態に係る信号制御装置においてマイクで検出された波形を示す第2の図である。
【図12】第2の実施形態に係る信号制御装置におけるピーク検出を示す図である。
【図13】第3の実施形態に係る遅延調整部の構成を示すブロック図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0021】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る信号制御装置について、図1ないし図8を用いて説明する。本実施形態に係る信号制御装置は、超音波スピーカの指向の方向制御を位相を制御することで電気的に行うものであり、外部環境(例えば、反射、干渉、温度による音速の変化等)の影響を受けることなく、簡単な構成で正確な方向制御を安価に行うものである。
【0022】
図1は、本実施形態に係る信号制御装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る信号制御装置は、1対(2個のトランスデューサからなる)の超音波スピーカと一体の構成となっており、各スピーカにおいては、配設されている複数のエレメントから共通の超音波信号が出力される。
【0023】
信号制御装置1は、任意の入力信号を入力する信号入力部2と、入力信号をキャリア発振器(例えば、30kHz)の信号で変調する変調部5と、入力信号のゼロクロスを検出するゼロクロスコンパレータ3と、ゼロクロスコンパレータ3の検出に応じてスイッチングを行う切替部6と、入力信号の正成分の位相を制御する第1遅延器7と、入力信号の負成分の位相を制御する第2遅延器8と、各遅延器から出力された信号を増幅する複数のアンプ9,10と、アンプ9,10で増幅された信号により駆動されて超音波を出力するトランスデューサ11,12と、各トランスデューサ11,12から出力された超音波を可聴音の音波信号として統合して検知するマイク13と、検知した音波信号を増幅するマイクアンプ14と、検知した音波信号の信号波形における正の音波の波形特性と負の音波の波形特性を検出する波形特性検出部15と、検出された波形特性から位相を制御するための遅延量を演算し、第2遅延器に入力して位相制御を行う遅延調整部18とを備える。
【0024】
本実施形態においては、分かり易くするために、図2に示すようなサイン波を入力信号とした場合について説明するが、通常の音声のような複雑な信号波形であっても、本実施形態に係る信号制御を適用可能である。
【0025】
信号入力部2に入力された入力信号は、変調部5で変調される。この変調部5による変調処理は、AM変調、FM変調、SSB変調、DSB変調等のようにいずれの変調であってもよい。また、入力信号はゼロクロスコンパレータ3に入力され、そこで入力信号のゼロクロスが検出される(図2を参照)。検出されたゼロクロスに同期して切替部6がスイッチングを行い、入力信号の正成分に相当する変調信号は第1遅延器7に入力され、入力信号の負成分に相当する変調信号は第2遅延器8に入力される。
【0026】
図3は、それぞれの遅延器に入力される変調信号を示す図である。ここでは、変調部5により入力信号がFM変調されたものとする。図3(A)は入力信号、図3(B)は変調信号、図3(C)は第1遅延器7に入力された正成分の変調信号、図3(D)は第2遅延器8に入力された負成分の変調信号である。図3(C)、(D)に示すように、検出されたゼロクロスに同期してスイッチングが行われることで、第1遅延器7には正成分の変調信号、第2遅延器8には負成分の変調信号が入力される。
【0027】
それぞれの遅延器に入力された信号は、アンプ9,10を介してトランスデューサ11,12に入力され、超音波として出力される。各トランスデューサ11,12から出力された超音波は、マイク13で検知され、復調されて一つの波形に統合される。このとき、マイク13は、トランスデューサ11から出力された信号波形とトランスデューサ12から出力された信号波形の区別が付かないため、通常はそれぞれの位相を検知することはできず、マイク13の位置によって位相差に応じた信号の歪みが検知される。
【0028】
図4は、位相差とマイクとの位置関係を示す図、図5は、マイク13で検知される直前(復調前)における各スピーカの統合された信号波形を模式的に示す図、図6は、マイク13で検知された直後(復調後)の統合された信号波形を示す図である。
【0029】
図4(A)に示すように、各スピーカから出力された超音波信号の位相が揃った状態でマイクに入力された場合、すなわち、第1遅延器7側のスピーカ(以下、第1系統のスピーカとする)とマイク13との距離をd、第2遅延器8側のスピーカ(以下、第2系統のスピーカとする)とマイク13との距離をdとすると、d=dの場合は、図5(A)に示すように入力信号と同様の変調された信号波形となり、復調すると図6(A)に示すように入力信号と同形のサイン波が検出される。
【0030】
図4(B)に示すように、マイク13の位置関係がd<dの場合は、トランスデューサ11から出力された信号が強く、トランスデューサ12から出力された信号が弱くなり、各トランスデューサから出力された超音波信号の位相がずれてしまうため、図5(B)に示すような状態の変調信号となり、復調されることで図6(B)に示すような歪んだ波形として検出される。
【0031】
なお、この図6(B)の信号波形は、DC成分が取り除かれた状態を示しており、負成分にするどいピークが現れている。つまり、このように、トランスデューサ11から出力された信号とトランスデューサ12から出力された信号の位相がずれていると、正確な入力信号の音波として捉えることができない。
【0032】
同様に、図4(C)に示すように、マイク13の位置関係がd>dの場合は、トランスデューサ12から出力された信号が強く、トランスデューサ11から出力された信号が弱くなり、各トランスデューサから出力された超音波信号の位相がずれてしまうため、図5(C)に示すような状態の変調信号となり、復調されることで図6(C)に示すような歪んだ波形が検出され、図6(B)の場合と同様に、正確な入力信号の音波として捉えることができない。
【0033】
すなわち、マイク13の位置に応じて、検出される波形が、図6(A)の状態から図6(B)や図6(C)の状態に変化することとなる。図4(B)及び図4(C)に示したように、位相がずれた状態の場合に、遅延器(第1遅延器7又は第2遅延器8のいずれか一方又は双方)の遅延量を調整することで、位相のずれを解消し、揃えることができる。なお、図5の信号波形は、説明のために模式的に示した波形であり、実際にマイク13で検出される波形ではない。
【0034】
以下に、本実施形態における遅延量の調整方法について具体的に説明する。ここでは、マイク13で検知された信号波形の正のピーク及び負のピークを用いて、調整する遅延量を求めるものである。図7は、本実施形態に係る波形特性検出部の構成を示すブロック図、図8は、本実施形態に係る遅延調整部の構成を示すブロック図である。図7において、波形特性検出部15は、マイク13で検出された信号波形(図6に示す信号波形)からプラスのピークを検出する+ピーク検出部16と、マイナスのピークを検出する-ピーク検出部17とを備える。ここで検出されたそれぞれのピークを用いて遅延調整部18が調整する遅延量を算出する。
【0035】
つまり、図6(B)のように、マイナスのピークが大きく、プラスのピークが小さい場合は、マイナスのピークを小さく、プラスのピークを大きくするように遅延器(ここでは、第2遅延器8)の遅延量を算出する。また、図6(C)のような場合は、逆に、マイナスのピークが小さく、プラスのピークが大きくなっているため、マイナスのピークを大きく、プラスのピークを小さくするように第2遅延器8の遅延量を算出する。算出された遅延量は、第2遅延器8に入力されて遅延量が調整される。プラスのピークとマイナスのピークとの割合が図6(A)に示すように1:1になるまで、すなわちコヒレンシが0に近づくように調整を行うことで、指向の方向制御を正確に行うことが可能となる。
【0036】
こうすることで、各トランスデューサ11,12から出力される超音波信号の位相を時間関係で検出して詳細に解析するような複雑な処理を行うことなく、マイク13で検知された合成波形のピークの割合のみで簡単に且つ正確な位相制御が可能となる。
【0037】
次に、図8に示す遅延調整部18の具体的な処理について説明する。図8において、遅延調整部18は、+ピーク検出部16が検出したピーク値と-ピーク検出部17が検出したピーク値とを加算する加算部51と、加算された信号から低周波成分を抽出して位相を検出するローパスフィルタ52と、検出された波形のゼロクロスを検出するゼロクロスコンパレータ53と、検出されたゼロクロス及びサンプリングクロックに同期して、正又は負の値に応じたカウントを行うアップ/ダウンカウンタ54とを備える。
【0038】
つまり、図6(B)のような波形の場合は、それぞれのピーク値を加算することにより負の値が検出され、アップ/ダウンカウンタ54がカウントダウンを行い、そのカウントダウンに応じて第2遅延器8の遅延量が遅く調整される。逆に、図6(C)のような波形の場合は、それぞれのピーク値を加算することにより正の値が検出されてアップ/ダウンカウンタ54がカウントアップを行い、そのカウントアップに応じて第2遅延器8の遅延量が速く調整される。
【0039】
なお、上記のように第2遅延器8の遅延量を調節する場合に、第1遅延器7の遅延量がゼロの状態だと、第2遅延器8の遅延量を速く調整することが困難となる。したがって、第1遅延器7を所定の遅延量(例えば、100ms等)で遅延させておくことで、第2遅延器8の遅延量を調整して(例えば、70ms等)、第1遅延器7より相対的に速く設定することが可能となる。
【0040】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る信号制御装置について、図9ないし図12を用いて説明する。なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と同様の説明は省略する。本実施形態に係る信号制御装置は、特に変調の種別を限定しない場合の処理について具体的に説明する。本実施形態の場合も最終的には第1の実施形態の場合と同様の波形を得る結果となる。
【0041】
図9は、本実施形態に係る信号制御装置において、トランスデューサ11及びトランスデューサ12から出力された信号の波形を示す図である。実線で示す正の波形がトランスデューサ11から出力された信号の波形を示し、長破線で示す負の波形がトランスデューサ12から出力された信号の波形を示している。マイク13の位置が、それぞれのトランスデューサ11及びトランスデューサ12から同じ距離、すなわち、図4(A)のようなd=dにおける位置では、図9に示すようにそれぞれの波形が同位相となり、きれいなサイン波が検出される。
【0042】
これに対して、マイク13の位置が図4(C)のようなd>dにおける位置では、図10(A)、(B)に示すようにそれぞれの波形(図10(A)がトランスデューサ11から出力された信号の波形、図10(B)がトランスデューサ12から出力された信号の波形)で位相差が生じ、すなわち位相がずれる。ここでは、dの距離が長いため、トランスデューサ11から出力された波形がトランスデューサ12から出力された波形に比べて遅れている。それぞれの波形は、マイク13において図10(C)のように合成され、さらにローパスフィルタにより図10(D)のような波形で検出される。図10(D)は、プラス側に鋭いピークが現れ、マイナス側のピークが歪んで値が小さくなっている。これは、図6(C)の波形に対応しており、FM変調した場合と同様の波形が得られている。
【0043】
一方、マイク13の位置が図4(B)のようなd<dにおける位置では、図11(A)、(B)に示すようにそれぞれの波形(図11(A)がトランスデューサ11から出力された信号の波形、図11(B)がトランスデューサ12から出力された信号の波形)で位相差が生じ、すなわち位相がずれる。ここでは、dの距離が短いため、トランスデューサ11から出力された波形がトランスデューサ12から出力された波形に比べて進んでいる。それぞれの波形は、マイク13において図11(C)のように合成され、さらにローパスフィルタにより図11(D)のような波形で検出される。図11(D)に示すように、マイナス側に鋭いピークが現れ、プラス側のピークが歪んで値が小さくなっている。これは、図6(B)の波形に対応しており、FM変調した場合と同様の波形が得られている。
【0044】
マイク13で得られた波形(図10(D)、図11(D))に対して、図12に示すように、+ピーク検出部16と-ピーク検出部17とが、それぞれのピークを検出する。ピーク検出後は、上述した処理と同様の処理を行うことで、遅延を制御することができる。
【0045】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る信号制御装置について、図13を用いて説明する。本実施形態に係る信号制御装置は、遅延量の情報をピーク値の割合から算出して、その遅延量に応じて第2遅延器8を制御するものである。なお、本実施形態において、前記各実施形態と同様の説明は省略する。
【0046】
本実施形態においては、遅延調整部18を、図13のような構成とする。すなわち、+ピーク検出部16が検出したピーク値と-ピーク検出部17が検出したピーク値(ピーク値の絶対値)との割合を算出する割合算出部61と、算出された割合に対応する遅延量の情報を遅延情報記憶部63から抽出する遅延量抽出部62とを備える。遅延情報記憶部63には、マイク13の位置に応じて予め測定されたピーク値の割合と、それに応じて位相を揃えるための遅延量とが対応付けて記憶されており、ピーク値の割合を算出することで、遅延量を取得することができる構成となっている。取得した遅延量の情報は、第2遅延器8に入力され位相が調整される。情報の記憶や演算を行う場合は、例えば、メモリやCPUを用いることができる。
【0047】
(その他の実施形態)
その他の実施形態について説明する。ここでは、遅延量の調整を行う第2の方法について説明する。第2の方法では、第1の実施形態の場合と異なり、マイク13で検知された信号波形のデューティ比を用いて、調整する遅延量を求める。すなわち、波形特性検出部15が、マイク13で検知された信号波形のデューティ比を算出し、算出されたデューティ比に応じて遅延調整部18が調整する遅延量を算出する。
【0048】
なお、この第2の方法における遅延調整部18の処理については、図8で説明したように、プラスピークとマイナスピークとの差分からカウンタによる遅延量を演算した場合と同様に、デューティ比に応じたカウントアップ/カウントダウンを行い、そのカウントに応じて遅延器の遅延量が調整されるようにしてもよい。
【0049】
また、図13で説明したように、プラスピークとマイナスピークとの割合から対応する遅延量の情報を抽出する場合と同様に、マイク13の位置に応じて予め測定されたデューティ比と、それに応じて位相を揃えるための遅延量とが対応付けて記憶された遅延情報記憶部63に基づいて、遅延器の遅延量が調整されるようにしてもよい。
【0050】
以上、各実施形態において説明したように、いずれの手法であっても、マイク13の位置に対応した位相調整を正確に行うことができる。また、回路構成も非常に簡素化され、低コストで高精度な位相調整を可能としている。
【0051】
なお、上記各実施形態の説明においては、入力信号としてサイン波を入力したが、音波信号であればどのような信号であっても本発明に係る信号制御を行うことが可能である。例えば、人の音声を入力信号とした場合であっても、サイン波を入力信号とした場合と全く同じ処理で、同様の効果が得られる信号制御を行うことが可能である。
【0052】
また、利用者(超音波スピーカから出力される音を聴く人)がマイク13(例えば、ワイヤレスマイク)を保持し、利用者の移動に伴ってマイク13も同時に移動する構成とすることで、超音波スピーカの指向性が常に利用者を追従することができる。つまり、利用者が移動した場合であっても、常に利用者にのみ音波を送信することができるものである。
【0053】
さらに、上記の説明では、スピーカとマイクの位置関係を二次元平面(地面に対して水平方向の二次元平面)に限定しているが、スピーカを縦方向(地面に対して垂直方向)に配置することで、高さ方向の位相制御も可能となる。また、水平方向に並列する1対のスピーカと垂直方向に並列する1対のスピーカとを組み合わせることで、3次元的に位相制御を行うことが可能となる。
【0054】
さらにまた、スピーカを3つ以上(直線上に配置しない)を配設し、各スピーカごとの遅延量を調整することでも3次元的に位相制御を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 信号制御装置
2 信号入力部
3 ゼロクロスコンパレータ
4 キャリア発振器
5 変調部
6 切替部
7 第1遅延器
8 第2遅延器
9,10 アンプ
11,12 トランスデューサ
13 マイク
14 マイクアンプ
16 +ピーク検出部
17 -ピーク検出部
18 遅延調整部
51 加算器
52 ローパスフィルタ
53 ゼロクロスコンパレータ
54 カウンタ
61 割合算出部
62 遅延量抽出部
63 遅延情報記憶部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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