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明細書 :2次元フォトニック結晶面発光レーザ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6080941号 (P6080941)
登録日 平成29年1月27日(2017.1.27)
発行日 平成29年2月15日(2017.2.15)
発明の名称または考案の名称 2次元フォトニック結晶面発光レーザ
国際特許分類 H01S   5/18        (2006.01)
H01S   5/343       (2006.01)
H01S   5/062       (2006.01)
FI H01S 5/18
H01S 5/343
H01S 5/062
請求項の数または発明の数 6
全頁数 19
出願番号 特願2015-504246 (P2015-504246)
出願日 平成26年2月25日(2014.2.25)
国際出願番号 PCT/JP2014/054429
国際公開番号 WO2014/136607
国際公開日 平成26年9月12日(2014.9.12)
優先権出願番号 2013046564
優先日 平成25年3月8日(2013.3.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年2月3日(2016.2.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】沖野 剛士
【氏名】北村 恭子
【氏名】田中 良典
【氏名】梁 永
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査官 【審査官】佐藤 宙子
参考文献・文献 特開2013-41948(JP,A)
特開2008-288558(JP,A)
調査した分野 H01S 5/00-5/50
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
電流が注入されることにより波長λLの光を生じさせる活性層と、板状の母材に、該母材とは屈折率が異なる異屈折率領域が2次元的に配置されることにより屈折率分布が形成されて成る2次元フォトニック結晶層とが積層された構成を有し、該2次元フォトニック結晶層の法線から傾斜角θの方向にレーザビームを発振するレーザであって、
該2次元フォトニック結晶層において各異屈折率領域が、2次元定在波を形成することによって前記波長λLの光の共振状態を形成し且つ該波長λLの光を外部に出射させないように定められる周期性を持つ基本2次元格子の各格子点において変調して配置されており、
前記各格子点における変調位相Ψが、前記2次元フォトニック結晶層内における前記波長λLの光の波数ベクトルk↑=(kx, ky)、前記2次元フォトニック結晶層の有効屈折率neff、及び前記基本2次元格子の所定の基準線からの方位角φを用いて表される逆格子ベクトルG'↑=(g'x, g'y)=(kx±|k↑|(sinθcosφ)/neff, ky±|k↑|(sinθsinφ)/neff)と、前記各格子点の位置ベクトルr↑とを用いて、Ψ=r↑・G'↑で表されることを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項2】
各格子点において前記異屈折率領域が該格子点から同一の距離だけずれて配置されており、該ずれの方向を表す、基本2次元格子の所定の基準線との成す角度が前記変調位相Ψで変調されていることを特徴とする請求項1に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項3】
各格子点において前記異屈折率領域が該格子点から同一方向にずれて配置されており、該ずれの距離dの絶対値がゼロと最大値dmaxの間で、変調位相Ψで変調されていることを特徴とする請求項1に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項4】
前記異屈折率領域が各格子点に配置されており、各異屈折率領域の面積Sが最小値(S0-S')と最大値(S0+S')の間で、変調位相Ψで変調されていることを特徴とする請求項1に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項5】
前記活性層中に電流を注入する電流注入位置を制御する電流注入位置制御手段を有し、
前記電流注入位置からの発光が増幅される領域である、前記2次元フォトニック結晶層における変調領域毎に、各格子点の変調位相Ψが異なる
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
【請求項6】
前記電流注入位置制御手段が、
前記活性層及び前記2次元フォトニック結晶層を挟むように対をなす電極であって、該対の電極の一方又は両方が該活性層及び該2次元フォトニック結晶層に平行に2次元状に複数配置された電極と、
該複数の電極のうち該活性層に電流を注入する電極を切り換える切替手段を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元フォトニック結晶面発光レーザに関し、より詳しくは、レーザビームを結晶面の法線から傾斜した方向に出射する2次元フォトニック結晶面発光レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザは小型、安価、低消費電力、長寿命等の多くの利点を有し、光記録用光源、通信用光源、レーザディスプレイ、レーザプリンタ、レーザポインタ等の幅広い分野で使用されている。レーザディスプレイやレーザプリンタではビームを走査して文字や図形を形成する方式が一般的であるが、現在用いられている半導体レーザのレーザビームは、多角形状反射鏡(ポリゴンミラー)やMEMS(Micro-Electro Mechanical System)マイクロミラー、音響光学素子を用いたものなど、外部に設けた付加的な要素によりレーザビームの出射方向を制御することによって走査が実現されている。しかしながら、このように半導体レーザに走査のための機構を付加すると、小型化、並びに動作速度及び耐久性の向上が困難になるという問題がある。
【0003】
特許文献1及び非特許文献1には、2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、レーザビームの出射方向を可変にしたもの(以下、「出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザ」と呼ぶ)が記載されている。
【0004】
出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザを説明する前に、まず、一般的な(それ自体では光出射方向が結晶面の法線方向であって、可変ではない)2次元フォトニック結晶面発光レーザについて説明する。一般的な2次元フォトニック結晶面発光レーザは、活性層と、板状の部材内に該部材とは屈折率が異なる領域(「異屈折率領域」と呼ぶ。典型的には空孔。)を周期的に配置した2次元フォトニック結晶層を有する。この2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、活性層に電荷を注入することにより、その活性層の材料により定まる波長域の光が発生し、その光のうち、異屈折率領域の周期により定まる所定の波長を有する光が定在波を形成することによって増幅される。このように増幅された光は2次元フォトニック結晶層内において、異屈折率領域により様々な方向に散乱されるが、設定された異屈折率領域の周期によっては、互いに隣接する2個の異屈折率領域によって2次元フォトニック結晶層の法線方向に散乱された2つの光の光路差が波長と一致すると共に、それら散乱光の位相が揃う。この条件を満たす場合に、2次元フォトニック結晶層に垂直な方向にレーザビームが出射される。
【0005】
一方、特許文献1に記載の出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザは、活性層と、異屈折率領域の周期が互いに異なる2層の2次元フォトニック結晶層を有する。これにより、2つの2次元フォトニック結晶層では、異屈折率領域の周期に対応した互いに異なる波長の光が、定在波を形成することによって増幅される。そして、それらの定在波の周波数差によって、うなりが空間的に生じることにより、出射されるレーザビームは2次元フォトニック結晶層の法線に対して傾斜した方向を向く。このような方向に出射するレーザビームを、以下では「傾斜ビーム」と呼ぶ。2次元フォトニック結晶層の法線に対する傾斜ビームの角度(傾斜角)は、上記周波数差が大きくなるほど大きくなる。そして、少なくとも一方の2次元フォトニック結晶層における異屈折率領域の周期を、面内の位置によって異なるように形成することで、活性層に電荷を注入する位置(レーザ発振させる面内位置)によって傾斜角の異なる傾斜ビームを出射させることが可能となる。
【0006】
また、非特許文献1に記載の出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザは、活性層と、正方格子と斜方格子を重ね合わせた格子点に異屈折率領域が配置された1層の2次元フォトニック結晶層を有する。正方格子は、活性層で生成された光の共振状態を2次元フォトニック結晶層内において形成する役割を有し、斜方格子は共振状態の光を2次元フォトニック結晶層の法線から傾斜した方向に出射させる役割を有するとされている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2009-076900号公報
【0008】

【非特許文献1】信岡俊之、他3名「正方格子M点フォトニック結晶共振器を用いた2次元ビーム偏向制御」、第59回応用物理学関係連合講演会講演予稿集、公益社団法人応用物理学会、2012年2月29日発行、講演番号16a-E5-2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、レーザビームが2次元フォトニック結晶層に垂直な方向に出射される特性を有する2つの2次元フォトニック結晶を組み合わせるという制約があるため、傾斜角を大きくすることが難しい。
【0010】
非特許文献1に記載の出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、正方格子によって形成された共振状態の光が、斜方格子によって様々な方向に散乱される。それにより、目的とする傾斜角を有する傾斜ビームの他に、その傾斜角とは異なる方向にも光が散乱されるため、光の損失が生じる。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、傾斜角を大きくすることができると共に、光の損失を従来よりも少なくすることができる、傾斜ビームを出射する2次元フォトニック結晶面発光レーザを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、電流が注入されることにより波長λLの光を生じさせる活性層と、板状の母材に、該母材とは屈折率が異なる異屈折率領域が2次元的に配置されることにより屈折率分布が形成されて成る2次元フォトニック結晶層とが積層された構成を有し、該2次元フォトニック結晶層の法線から傾斜角θの方向にレーザビームを発振するレーザであって、
該2次元フォトニック結晶層において各異屈折率領域が、2次元定在波を形成することによって前記波長λLの光の共振状態を形成し且つ該波長λLの光を外部に出射させないように定められる周期性を持つ基本2次元格子の各格子点において変調して配置されており、
前記各格子点における変調位相Ψが、前記2次元フォトニック結晶層内における前記波長λLの光の波数ベクトルk↑=(kx, ky)、前記2次元フォトニック結晶層の有効屈折率neff、及び前記基本2次元格子の所定の基準線からの方位角φを用いて表される逆格子ベクトルG'↑=(g'x, g'y)=(kx±|k↑|(sinθcosφ)/neff, ky±|k↑|(sinθsinφ)/neff)と、前記各格子点の位置ベクトルr↑とを用いて、Ψ=r↑・G'↑で表されることを特徴とする。
【0013】
前記活性層には、波長λLを含む波長範囲の光を生じさせるものが含まれる。
また、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、上記活性層及び上記2次元フォトニック結晶層の他に、クラッド層やスペーサ層等を有していてもよい。
前記波長λLは、真空中における波長で定義する。波長λLの光は、2次元フォトニック結晶層内では波長(以下、「結晶層内波長λPC」とする)がλPCL/neffとなる。ここで、neffは、上記各層が積層した構造において2次元フォトニック結晶層に分布する光の電界強度の割合、及び母材に対する異屈折率領域の充填率を考慮した有効屈折率である。
【0014】
以下、本発明における(1)基本2次元格子、(2)変調について説明する。
【0015】
(1)基本2次元格子
基本2次元格子、すなわち波長λLの光の共振状態を形成し且つ該波長λLの光を外部に出射させない2次元格子は、従来より知られているものである。基本2次元格子の例の1つとして、格子定数aが
a=2-1/2λL/neff=2-1/2λPC
である正方格子が挙げられる。また、格子定数a1及びa2
(1/2)×(a1-2+a2-2)1/2=1/λPC
の関係式を満たす長方格子(面心長方格子を含む)や、格子定数aが
a=(2/3)λPC
である三角格子も、前記基本2次元格子の例として挙げられる。
【0016】
このような基本2次元格子が波長λLの光を増幅し且つ該波長λLの光を外部に出射させない理由を、上記の式a=2-1/2λPCを満たす正方格子の場合を例に、図1を用いて説明する。
【0017】
2次元フォトニック結晶層内では、基本2次元格子90の正方格子の格子点91に異屈折率領域が配置されていると、結晶層内波長λPCの光が様々な方向に散乱される。それら散乱光のうち、ある1個の格子点911において、散乱前の進行方向とは180°異なる方向に散乱(180°散乱)された光L1は、その格子点に最隣接の4個の格子点912においてそれぞれ180°散乱された光L2との光路差が結晶層内波長λPCに一致するため、干渉により増幅される(図1(a)。この図では、1個の格子点912に散乱された光L2のみを示す。)。また、格子点911において格子面内で散乱前の進行方向とは90°異なる方向に散乱(90°散乱)された光L3は、4個の格子点912においてそれぞれ格子面内で90°散乱された光L4との光路差が結晶層内波長λPCに一致するため、干渉により増幅される(図1(a))。このように、180°散乱と90°散乱の双方によって2次元定在波が形成され、光が増幅される。
【0018】
一方、2次元フォトニック結晶層内を伝播する結晶層内波長λPCの光は、格子点91において、該層に対して角度をもった方向にも散乱される。しかしながら、このような散乱光は、格子点911において散乱されるものと、格子点912において散乱されるものの光路差がλPC/2になり(図1(b)の光L5と光L6)、両者の位相がπだけずれるため、打ち消し合う。そのため、光は2次元フォトニック結晶層の外部に出射されない。
【0019】
なお、ここでは基本2次元格子が正方格子の場合を例に説明したが、長方格子においても同様である。基本2次元格子が三角格子(六方格子)の場合には、干渉により増幅される光が、格子面内で散乱前の進行方向とは120°異なる方向に散乱(120°散乱)された光である点を除いて、正方格子の場合と同様である。
【0020】
(2)変調
上記のように、異屈折率領域は各格子点において変調して配置されている。本発明において「変調」とは、基本2次元格子の各格子点に同じ形態の異屈折率領域が配置された状態に対して、基本2次元格子の周期とは別個の空間的な周期(変調周期)で周期的変化が与えられていることをいう。この周期的変化は、例えば各格子点において異屈折率領域を該格子点から位置をずらして配置し、そのずれの方向又は/及び大きさを変調周期で周期的に変化させることにより形成することができる。あるいは、この周期的変化は、異屈折率領域の面積を変調周期で周期的に変化させることにより形成することもできる。
【0021】
基本2次元格子の各格子点における変調は位相Ψ(変調位相)で表すことができる。各格子点の変調位相Ψは、基本2次元格子の各格子点の位置ベクトルr↑と、逆格子ベクトルG'↑により定まる。この逆格子ベクトルG'↑は、ちょうど、非特許文献1における斜方格子の逆格子ベクトルに相当する。しかしながら、本発明では、この逆格子ベクトルG'↑に対応する格子は存在せず、その代わりに、基本2次元格子の各格子点において、異屈折率領域が変調して配置されている。本発明において、この各格子点における異屈折率領域の変調には、異屈折率領域の位置(各格子点からのずれ)、及び、異屈折率領域の面積の双方を含む。具体的には、以下のものである。
【0022】
(i)各格子点において、異屈折率領域が該格子点から同一の距離だけずれて配置されており、該ずれの方向を表す、基本2次元格子の所定の基準線との成す角度が変調位相Ψで変調されているもの。この場合、この角度の値がΨとなり、0~2πの間で変動する。
(ii)各格子点において、異屈折率領域が該格子点から同一方向にずれて配置されており、該ずれの距離dの絶対値がゼロと最大値dmaxの間で、変調位相Ψで変調されているもの。具体的には、d=dmaxsinΨと表される。
(iii)異屈折率領域は各格子点に配置されており、各異屈折率領域の面積Sが最小値(S0-S')と最大値(S0+S')の間で、変調位相Ψで変調されているもの。具体的には、S=S0+S'sinΨと表される。
【0023】
前記基本2次元格子が格子定数aの正方格子である場合には、各格子点の変調位相Ψは以下のように求められる。まず、格子点の位置ベクトルr↑は、直交座標系において整数mx, myを用いてr↑=(mxa, mya)と表される。この場合、波数ベクトルk↑はk↑=(π/a, π/a)であり、逆格子ベクトルG'=(g'x, g'y)は
【数1】
JP0006080941B2_000002t.gif

…(1)
である。従って、この場合の各格子点の変調位相Ψ=r↑・G'↑は
【数2】
JP0006080941B2_000003t.gif

…(2)
である。
【0024】
同様に、基本2次元格子が格子定数a1, a2の長方格子の場合には、格子点の位置ベクトルr↑は直交座標系において整数mx, myを用いてr↑=(mxa1, mya2)と表される。逆格子ベクトルG'=(g'x, g'y)は
【数3】
JP0006080941B2_000004t.gif

…(3)、
各格子点の変調位相Ψ=r↑・G'↑は
【数4】
JP0006080941B2_000005t.gif

…(4)
となる。
【0025】
基本2次元格子が格子定数aの三角格子の場合には、格子点の位置ベクトルr↑は直交座標系において整数m1, m2を用いてr↑=(m1a+(1/2)m2a, (31/2/2)m2a)と表される。逆格子ベクトルは
【数5】
JP0006080941B2_000006t.gif

…(5)
または
【数6】
JP0006080941B2_000007t.gif

…(6)
のいずれかの組み合わせを用いることができる。各格子点の変調位相Ψ=r↑・G'↑は、G↑が前者の場合には
【数7】
JP0006080941B2_000008t.gif

…(7)、
後者の場合には
【数8】
JP0006080941B2_000009t.gif

…(8)
となる。
【0026】
(3) 本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの動作
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの動作を説明する。活性層に電流が注入されると、波長λLの光が生じ、該光が2次元フォトニック結晶層において基本2次元格子の周期性によって定在波が形成される。それにより、位相が揃った波長λLの光が増幅される。このように増幅された光は、変調位相Ψで変調された屈折率分布により、逆格子ベクトルG'↑を回折ベクトルとする光の回折が生じ、光が2次元フォトニック結晶層の法線に対して傾斜して出射される。この出射光は、波長及び位相が揃ったレーザビームとなる。
【0027】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザでは上述のように、複数の格子構造を重ねるのではなく、1つの基本2次元格子の格子点からずれた位置に異屈折率領域を配置する。そのため、特許文献1に記載のレーザとは異なり、2次元フォトニック結晶層に垂直な方向に出射される特性を有する2つの2次元フォトニック結晶を組み合わせるという制約が無い。同様の理由により、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、非特許文献1に記載のレーザとは異なり、正方格子(本発明の基本2次元格子に相当)に重ねた斜方格子による不要な散乱が生じることも無い。
【0028】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、各格子点において、前記異屈折率領域が該格子点から同一の距離だけずれて配置されており、該ずれの方向を表す、基本2次元格子の所定の基準線との成す角度が前記変調位相Ψで変調されている、という構成を取ることができる。このようにずれの方向に変調を与えることにより、円偏光を有する出射光が得られる。
また、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、各格子点において、前記異屈折率領域が該格子点から同一方向にずれて配置されており、該ずれの距離dの絶対値がゼロと最大値dmaxの間で、変調位相Ψで変調されている、という構成を取ることもできる。このように異屈折率領域を同一方向にずらすことにより、当該ずれの方向に垂直な方向の直線偏光を有する出射光が得られる。
【0029】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、
前記活性層中に電流を注入する位置(電流注入位置)を制御する電流注入位置制御手段を有し、
前記電流注入位置からの発光が増幅される領域である、前記2次元フォトニック結晶層における変調領域毎に、各格子点の変調位相Ψが異なるように形成されている
ことにより、出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザが得られる。すなわち、この出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、電流注入位置制御手段により活性層中の一部の領域(異屈折率領域とは異なる)に電流を注入することにより発生する光が、その領域に対応した2次元フォトニック結晶層の一部分に導入される。そして、光が導入された2次元フォトニック結晶層の位置における変調位相Ψにより定まる傾斜角θ、及び方位角φに傾斜ビームが出射される。
【0030】
前記出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、前記電流注入位置制御手段には、前記活性層及び前記2次元フォトニック結晶層を挟むように対をなす電極であって、該対の電極の一方又は両方が該活性層及び該2次元フォトニック結晶層に平行に1次元状又は2次元状に複数配置された電極と、該複数の電極のうち該活性層に電流を注入する電極を切り換える切替手段を備えるものを用いることができる。特に、2次元状に複数配置された電極を用いることにより、1次元状の場合よりも変調領域を多く設けることが可能になり、より多数の傾斜角θ及び方位角φの組み合わせを設定することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、傾斜角を大きくすることができると共に、光の損失が従来よりも少ない、傾斜ビームを出射する2次元フォトニック結晶面発光レーザが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)基本2次元格子が波長λLの光を増幅し、且つ(b)該波長λLの光を外部に出射させない理由を説明するための図。
【図2】本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの第1実施例を示す斜視図。
【図3】第1実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける2次元フォトニック結晶層を示す上面図(a)、及び基本2次元格子である正方格子と空孔の重心を示す部分拡大図(b)。
【図4】波長λL=987.4nm、傾斜角θの設計値が36.2°である第1実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける2次元フォトニック結晶層を示す顕微鏡写真(a)、及び得られた傾斜ビームの遠視野像(b)。
【図5】波長λL=987.4nm、傾斜角θの設計値が30°及び40°である第1実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける2次元フォトニック結晶層を示す顕微鏡写真(a-1)及び(a-2)、並びに、得られた傾斜ビームの遠視野像(b-1)及び(b-2)。
【図6】波長λL=987.4nm、傾斜角θの設計値が30°である第1実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザにより得られた発振スペクトル。
【図7】波長λL=987.4nm、傾斜角θの設計値が30°であって、方位角の設計値が60°及び90°である第1実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける2次元フォトニック結晶層を示す顕微鏡写真(a-1)及び(a-2)、並びに、得られた傾斜ビームの遠視野像(b-1)及び(b-2)。
【図8】波長λL=987.4nm、傾斜角θの設計値が30°であって、方位角の設計値が60°である第1実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザから得られた傾斜ビームの偏光特性を測定した結果を示すグラフ。
【図9】図8の例と同じ2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、1/4波長板を通過した後に偏光板を通過した傾斜ビームの遠視野像。
【図10】第2実施例である出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザを示す縦断面図(a)及び2次元フォトニック結晶層の平面図(b)。
【図11】第2実施例の変形例である、2次元状に配置された下部電極を有する出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける下部電極の平面図(a)及び2次元フォトニック結晶層の平面図(b)。
【図12】第3実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける2次元フォトニック結晶層を示す上面図(a)、及び基本2次元格子である正方格子と空孔の重心を示す部分拡大図(b)。
【図13】波長λL=987.4nm、傾斜角θの設計値が30°、方位角φの設計値が0°である第3実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける2次元フォトニック結晶層を示す顕微鏡写真(a-1)~(a-3)、及び得られた傾斜ビームの遠視野像(b-1)~(b-3)。
【図14】図13(b-1)~(b-3)に示した傾斜ビームの偏光特性を測定した結果を示すグラフ。
【図15】波長λL=987.4nm、傾斜角θの設計値が30°であって、方位角の設計値が異なる3つの、第3実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザから得られた傾斜ビームの遠視野像。
【図16】第4実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザにおける2次元フォトニック結晶層を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの実施例を、図2~図16を用いて説明する。

【0034】
[実施例1]
図2は、第1実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザ(以下、「フォトニック結晶レーザ」とする)10の斜視図である。このフォトニック結晶レーザ10は、下部電極151と、下部基板141と、第1クラッド層131と、2次元フォトニック結晶層11と、活性層12と、第2クラッド層132と、上部基板142と、上部電極152とを、この順に積層したものである。本実施例のフォトニック結晶レーザ10では、レーザビームは、上部電極152の中央部に設けられた窓(空洞)1521を通って、2次元フォトニック結晶層11の法線から出射角θだけ傾斜した方向に出射される。上部電極152には、窓1521を有するものの代わりに、ITO(インジウム錫酸化物)等から成る透明電極を用いてもよい。なお、2次元フォトニック結晶層11と、活性層12の順番は上記のものとは逆であってもよい。また、本願では便宜上、「上」及び「下」という語を用いるが、これらの語は実際にフォトニック結晶レーザを使用する際の向き(上下)を規定するものではない。また、活性層と2次元フォトニック結晶の間には、スペーサ等の部材が挿入されていてもよい。

【0035】
本実施例では、下部基板141にはp型半導体のガリウムヒ素(GaAs)を、上部基板142にはn型GaAsを、第1クラッド層131にはp型半導体のアルミニウム・ガリウム砒素(AlGaAs)を、第2クラッド層132にはn型AlGaAsを、それぞれ用いた。活性層12には、インジウム・ガリウム砒素/ガリウムヒ素(InGaAs/GaAs)から成る多重量子井戸(Multiple-Quantum Well; MQW)を有するものを用いた。下部電極151及び上部電極152の材料には金を用いた。なお、これら各層の材料は上記のものには限定されず、従来のフォトニック結晶面発光レーザで用いられている各層の材料をそのまま用いることができる。また、上記各層の間には、スペーサ層などの他の層が介挿されていてもよい。

【0036】
2次元フォトニック結晶層11は、板状の母材(スラブ)114内に空孔(異屈折率領域)111を後述のように配置したものである。本実施例では、母材114の材料にはp型GaAsを用いた。空孔111の形状は、本実施例では正三角形である(図3)が、円形などの他の形状を用いてもよい。なお、母材114の材料は上記のものには限られず、従来のフォトニック結晶レーザで用いられているものを用いることができる。また、異屈折率領域には、空孔111の代わりに、母材114とは屈折率が異なる部材(異屈折率部材)を用いてもよい。空孔は容易に加工することができるという点において優れているのに対して、異屈折率部材は加工時の加熱などにより母材が変形するおそれがある場合に有利である。

【0037】
図3を用いて、母材114内での空孔111の配置を説明する。図3(a)は2次元フォトニック結晶層11の上面図である。この図には、2次元フォトニック結晶層11に実際に設けられた空孔111を実線で示した他、基本2次元格子である正方格子を一点鎖線で示し、その正方格子の格子点に仮想的に空孔111Vの重心が配置された状態を破線で示す。また、図3(b)に、(a)を拡大したうえで、正方格子(一点鎖線)及び空孔111の重心(黒丸)のみを示す。

【0038】
本実施例では、格子点と空孔111Vの重心の距離(位置ずれの距離d)は全ての格子点で同一とし、以下のように、ずれの方向を変調した。
x方向を基準線の方向とし、傾斜ビームの設計値を傾斜角θ=36.2°、方位角φ=0°とした。変調位相、すなわちずれの方向と前記基準線との成す角度(以下、「ずれ方位角」とする)Ψは、(2)式に複号(「±」)があるため4つの値が得られるが、そのうちここでは
Ψ≡Ψθ=36.2°=(3/4)πmx+πmy
を用いた。この場合、x方向に隣接する2個の格子点同士でのずれ方位角Ψの差(以下、"δΨx"とする)は、(3/4)π、すなわち135°である。また、y方向に隣接する2個の格子点同士でのずれ方位角Ψの差(以下、"δΨy"とする)はπ、すなわち180°である。また、有効屈折率はneff=3.4とした。

【0039】
そこで、隣接する格子点間でx方向に135°ずつ、y方向に180°ずつずれ方位角Ψを変化させた、有効屈折率neff=3.4であって、格子定数a=208nmの正方格子を基本2次元格子とする2次元フォトニック結晶層11を有するフォトニック結晶レーザを実際に作製した。格子点からの位置ずれの距離dは0.1aとした。作製した2次元フォトニック結晶層11の電子顕微鏡写真を図4(a)に示す。このフォトニック結晶レーザに電流を注入したところ、波長987.4nmのレーザビームが観測された。このレーザビームは、図4(b)に遠視野像で示すように、2次元フォトニック結晶層11の法線に対して実測値で36.1°の傾斜角θを有する傾斜ビーム19であり、傾斜ビーム19は2本(傾斜ビームのスポット19Sが2個)観測された。傾斜角θの実測値と設計値の差は0.01°であり、ほぼ設計通りの傾斜ビームが得られた。

【0040】
また、この例と格子定数が同じa=208nmであって、設計値を(i)θ=30°、φ=0°、(ii)θ=40°、φ=0°とした例についても、同様の実験を行った。これらの例におけるδΨxは、(i)では0.792π、(ii)では0.733πである。δΨyは、(i)、(ii)共にπである。作製した2次元フォトニック結晶層11の顕微鏡写真を(i)図5(a-1)、及び(ii)図5(a-2)に、それぞれ示す。また、フォトニック結晶レーザに電流を注入することで得られた傾斜ビームの遠視野像を(i)図5(b-1)、及び(ii)図5(b-2)に、それぞれ示す。いずれの実験においても、設計値に近い傾斜角θを有する傾斜ビームが得られた。傾斜角θの実測値は、(i)では29.5°、(ii)39.2°であった。また、(i)のフォトニック結晶レーザで得られたレーザ光の発振スペクトルを図6に示す。発振波長λLが987.4nmであることが確認できる。

【0041】
さらに、傾斜角の設計値をθ=30°とし、方位角φの設計値を(i)60°、(ii)90°とした例につき、作製した2次元フォトニック結晶層11の顕微鏡写真を(i)図7(a-1)、及び(ii)図7(a-2)に、フォトニック結晶レーザに電流を注入することで得られた傾斜ビームの遠視野像を(i)図7(b-1)、及び(ii)図7(b-2)に、それぞれ示す。いずれも、傾斜角θの実測値が29.5°であって、方位角φの実測値が設計値通りである傾斜ビームが得られた。

【0042】
傾斜角θ及び方位角φの設計値がθ=30°、φ=60°である上記(図7(a-1), (b-1))のフォトニック結晶レーザにおいて、観測した傾斜ビームの偏光方向を図8のグラフに示す。このグラフは方向に依存しない強度の光を検出していることを示しており、ビームが円偏光又は無偏光(電界の振動方向が異なる様々な光が混合したもの)であることを意味している。そこで、ビームを、1/4波長板を通過させたうえで偏光板を通過させる実験を行った。ここで1/4波長板は、円偏光を直線偏光に変換する機能を有する。この実験の結果、図9に示すように、偏光板の向きを変えてゆくと、特定の向きにおいて2個のレーザスポットのうちの一方が消失し(図9(a))、そこから更に偏光板を90°回動させると、他方のレーザスポットが消失した。これは、本実施例で得られた傾斜ビームは無偏光ではなく円偏光を有することを意味する。レーザスポットが消失する理由は、傾斜ビームの円偏光が1/4波長板によって直線偏光に変換され、その直線偏光が特定の向きの偏光板により遮蔽されることにある。また、レーザスポットが消失するときの偏光板の向きが2本のレーザビームの間で90°異なることは、一方のレーザビームが右回りの円偏光を有し、他方のレーザビームが左回りの円偏光を有することを意味する。このように一方のレーザビームが遮蔽されることを利用して、本発明のフォトニック結晶レーザと、1/4波長板及び偏光板を組み合わせたものとを用いて、傾斜ビームを1本のみ出射するレーザ光源が得られる。

【0043】
[実施例2]
次に、第2実施例として、出射方向可変2次元フォトニック結晶面発光レーザ(以下、「出射方向可変フォトニック結晶レーザ」とする)20の実施例を説明する。図10(a)は、第2実施例の出射方向可変フォトニック結晶レーザ20の縦断面図である。ここでは、第1実施例のフォトニック結晶レーザ10と同様の構成要素には、第1実施例と同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。出射方向可変フォトニック結晶レーザ20は、下部電極251と、下部基板141と、第1クラッド層131と、2次元フォトニック結晶層21と、活性層12と、第2クラッド層132と、上部基板142と、上部電極252とを、この順に積層したものである。上部電極252は、本実施例では上部基板142の全体を覆う透明電極を用いている。

【0044】
出射方向可変フォトニック結晶レーザ20は、仮想的に複数の領域(「変調領域」と呼ぶ。これは、異屈折率領域とは異なるものである。)A、B、C…に分かれている。各変調領域では、それに対応して互いに独立に下部電極251A、251B、251C…が設けられている(図10(a))と共に、2次元フォトニック結晶層21が変調領域毎に異なる構造を有している(図10(b))。また、出射方向可変フォトニック結晶レーザ20には、電流を注入する下部電極251A、251B、251Cを切り替える電流注入位置制御部29が設けられている。その他の構成要素は、全ての変調領域において同じ構成を有している。下部電極及び変調領域は共に1次元状に並んでいる。

【0045】
各変調領域A、B、C…における2次元フォトニック結晶層21内の2次元フォトニック結晶構造21A、21B、21C…はいずれも、格子定数aの正方格子の格子点からずれ方位角Ψの方向にずれた位置に空孔111が配置されており、ずれ方位角Ψのみが2次元フォトニック結晶構造毎に異なっている。ここでは、各変調領域A、B、C…におけるずれ方位角ΨA、ΨB、ΨC…は、δΨxが2次元フォトニック結晶構造毎に異なる値δΨxA、δΨxB、δΨxCとなるように設定し、δΨyは全ての2次元フォトニック結晶構造においてπとした。

【0046】
本実施例の出射方向可変フォトニック結晶レーザ20では、下部電極251A、251B、251C…のうちの1個と上部電極252の間に電流を流す。ここで、電流を流す下部電極を切り替えることにより、以下のように、レーザビームの出射方向を変化させることができる。

【0047】
まず、下部電極251Aと上部電極252の間に電流を流す場合を例に説明する。このように電流を流すと、活性層12のうち、下部電極251Aの直上付近の部分において、波長λLの光が生じる。この光は、当該部分の直上にある2次元フォトニック結晶構造21Aにおいて増幅される。そして、2次元フォトニック結晶構造21Aにおけるずれ方位角ΨAに対応した傾斜角θAで傾斜ビームが出射される。

【0048】
そして、電流を流す下部電極を、下部電極251Aから下部電極251Bに切り替えると、今度は2次元フォトニック結晶構造21Bにおいて増幅され、2次元フォトニック結晶構造21Bにおけるずれ方位角ΨBに対応した、前記傾斜角θAとは異なる傾斜角θBで傾斜ビームが出射される。さらに、下部電極251C等の他の下部電極に切り替えても同様に傾斜角θが変化する。このように、電流を流す下部電極を切り替えることにより、異なる傾斜角で傾斜ビームを出射させることができる。

【0049】
図11に、出射方向可変フォトニック結晶レーザの変形例を示す。この変形例では、図11(a)に示すように、下部電極251XY(X:A、B、C…、Y:A、B、C…)が2次元状に配置されている。これら下部電極251XYに対応して、2次元フォトニック結晶層21には、図11(b)に示すように、2次元フォトニック結晶構造XY(X:A、B、C…、Y:A、B、C…)が2次元状に配置されている。各2次元フォトニック結晶構造XYにおいては、δΨxが互いに異なる値δΨxXY(X:A、B、C…、Y:A、B、C…)となるように設定されている。この出射方向可変フォトニック結晶レーザでは、電流を流す下部電極251XYを切り換えることにより、異なる傾斜角で傾斜ビームを出射させることができる。そして、下部電極251XY及び2次元フォトニック結晶構造XYが2次元状に配置されているため、1次元状配置の場合よりも多数の傾斜角θ及び方位角φの組み合わせを設定することができる。

【0050】
なお、ここまでは上部電極を1個、下部電極を1次元状又は2次元状に多数配置した例を示したが、下部電極を1個、上部電極を1次元状又は2次元状に多数配置してもよいし、下部電極と上部電極の双方を1次元状又は2次元状に多数配置してもよい。

【0051】
[実施例3]
第3実施例では、フォトニック結晶層の基本2次元格子の各格子点において、空孔(異屈折率領域)が格子点から同一方向にずれ、そのずれの距離が変調されている例を示す。以下では、フォトニック結晶層以外の構成は第1実施例と同様であるため説明を省略し、フォトニック結晶層の構成について説明する。

【0052】
図12(a)に示すように、本実施例における基本2次元格子は、第1実施例と同様の正方格子である。異屈折率領域である空孔111は、基本2次元格子の格子点からずれた位置に配置されている。ずれの方向は、図12(b)に示すように、いずれの空孔111においても基準方向であるx方向である。ずれの距離dは、変調位相Ψによりd=dmaxcosΨ、すなわち|d|が0と最大値dmaxの間で変調されるように定められている。本実施例では、変調位相Ψは、x方向で隣接する格子点の間における差δΨxが3π/4になるように設定した。このδΨxの値は、第1実施例で示したδΨxの値の一例と同じであることから、この出射方向可変フォトニック結晶レーザは、第1実施例における当該一例と同様に、傾斜角θ=36.2°の傾斜ビームを出射する。なお、ここで示した変調位相Ψ(及び隣接格子点間の変調位相の差δΨx、δΨy)は一例であり、上述の式(2)を用いて、傾斜角θ及び方位角φの設計値に応じて設定すればよい。


【0053】
以下に、有効屈折率neffが3.4であって、格子定数a=206nmの正方格子を基本2次元格子とする2次元フォトニック結晶層を有する第3実施例のフォトニック結晶レーザを作製した例を示す。ここでは、レーザビームの傾斜角θ及びx方向からの方位角φの設計値がθ=30°、φ=0°であって、空孔のずれの方向が(1)x方向、(2)y方向、(3)x方向から135°の方向である3つのフォトニック結晶レーザを作製した。δΨx及びδΨyの値は、(1)ではδΨx=0.792π、δΨy=0、(2)ではδΨx=0、δΨy=0.792π、(3)ではδΨx=0.792π、δΨy=0.792πである。なお、フォトニック結晶層に形成する空孔の平面形状は、本実施例では円形とした。これらフォトニック結晶レーザにおけるフォトニック結晶層の電子顕微鏡写真を図13(a-1)~(a-3)に、得られた傾斜ビームの遠視野像を図13(b-1)~(b-3)に、それぞれ示す。いずれの例においても、設計通りにθ=30°、方位角φ=0°の傾斜ビームが得られた。

【0054】
これら3つのフォトニック結晶レーザにつき、観測した傾斜ビームの偏光方向を図14のグラフに示す。これらのグラフから、(1)空孔のずれがx方向のときにはy方向の直線偏光、(2)空孔のずれがy方向のときにはx方向の直線偏光、(3)空孔のずれがx方向から135°方向であるときには、x方向から45°方向の直線偏光、がそれぞれ得られることがわかる。すなわち、空孔のずれの方向とは90°異なる方向の直線偏光が得られる、といえる。

【0055】
次に、空孔のずれの方向がx方向、レーザビームの傾斜角θの設計値がθ=30°であって、x方向からの方位角φの設計値が(1)0°、(2)45°、(3)90°である3つのフォトニック結晶レーザを作製した。δΨxの値は、(1)では0.792π、(2)では0.853π、(3)ではπである。δΨyの値はいずれの例においても0°である。有効屈折率が3.4であり、基本2次元格子が格子定数a=206nmの正方格子である点は上記の例と同じである。これらフォトニック結晶レーザにより得られた傾斜ビームの遠視野像を図15(1)~(3)に示す。いずれの例においても、設計通りの傾斜角θ及び方位角φで傾斜ビームが得られた。

【0056】
[実施例4]
第4実施例では、空孔(異屈折率領域)は重心と格子点が一致するように各格子点に配置され、各空孔の面積が変調されている例を示す。この例においても、フォトニック結晶層以外の構成は第1実施例と同様であるため説明を省略し、フォトニック結晶層の構成について説明する。

【0057】
図16に示すように、本実施例における基本2次元格子は、第1実施例と同様の正方格子である。各空孔111の面積Sは、S=S0+S'cosΨ、すなわち最小値(S0-S')と最大値(S0+S')の間で変調されるように定められている。本実施例では、変調位相Ψは、第3実施例と同様に、x方向で隣接する格子点の間における差δΨxが3π/4になるように設定した。また、S'=(1/2)S0とした。このような構成により、本実施例の出射方向可変フォトニック結晶レーザは、第3実施例(及び第1実施例における一例)と同様に、傾斜角θ=36.2°の傾斜ビームを出射する。

【0058】
ここまでの各実施例では、基本2次元格子が正方格子である場合の例を示したが、これらの例に倣って、長方格子の場合には上式(4)、三角格子の場合には上式(7)又は(8)に示した変調位相Ψによる変調を与えればよい。
【符号の説明】
【0059】
10…フォトニック結晶レーザ
11、21…2次元フォトニック結晶層
111…空孔
111V…仮想的な空孔
114…母材
12…活性層
131…第1クラッド層
132…第2クラッド層
141…下部基板
142…上部基板
151、251A、251B、251C、251XY(X=A、B、C…、Y=A、B、C…)…下部電極
152、252…上部電極
1521…上部電極の窓
19…傾斜ビーム
19S…傾斜ビームのスポット
20…出射方向可変フォトニック結晶レーザ
21A、21B、21C、21XY(X=A、B、C…、Y=A、B、C…)…2次元フォトニック結晶構造
29…電流注入位置制御部
90…基本2次元格子
91、911、912…基本2次元格子の格子点
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15