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明細書 :熱輻射光源

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月9日(2017.2.9)
発明の名称または考案の名称 熱輻射光源
国際特許分類 H01K   1/00        (2006.01)
H02S  10/30        (2014.01)
H01K   1/14        (2006.01)
FI H01K 1/00
H02S 10/30
H01K 1/14
国際予備審査の請求
全頁数 21
出願番号 特願2015-504273 (P2015-504273)
国際出願番号 PCT/JP2014/055056
国際公開番号 WO2014/136671
国際出願日 平成26年2月28日(2014.2.28)
国際公開日 平成26年9月12日(2014.9.12)
優先権出願番号 2013047281
優先日 平成25年3月8日(2013.3.8)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】芝原 達哉
【氏名】デ ゾイサ メーナカ
【氏名】浅野 卓
【氏名】北野 圭輔
【氏名】鈴木 克佳
【氏名】井上 卓也
【氏名】石崎 賢司
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 5F151
Fターム 5F151JA21
5F151JA22
要約 本発明は、従来よりも材料の選択の幅が広く、それにより、容易に所望のピーク波長を有する光を得ることができる熱輻射光源を提供する。熱輻射光源10は、真性半導体から成る部材11に、該真性半導体のバンドギャップに対応する波長よりも短い波長の光に共振するように屈折率分布が形成されている光学構造を有する熱-光変換器を備える。外部から熱-光変換器に熱を供給すると、真性半導体におけるバンド間吸収により、カットオフ波長よりも短い波長帯にスペクトルを有する発光が生じ、その波長帯のうち光学構造において共振する共振波長λrの光が選択的に強められ、熱輻射光として発光する。本発明では、材料の選択の幅が広い真性半導体を用いるため、所望のピーク波長を有する狭帯域の光を生じる熱輻射光源を容易に得ることができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
真性半導体から成る部材に、該真性半導体のバンドギャップに対応する波長よりも短い波長の光に共振するように屈折率分布が形成されている光学構造を有する熱-光変換器を備えることを特徴とする熱輻射光源。
【請求項2】
前記光学構造が、熱輻射光源から熱輻射光を放出させようとする方向に関して非対称性を有することを特徴とする請求項1に記載の熱輻射光源。
【請求項3】
前記光学構造が、前記真性半導体よりも屈折率が低い材料から成る基体の表面に、該真性半導体から成る高屈折率部材を2次元状に配置したものであることを特徴とする請求項2に記載の熱輻射光源。
【請求項4】
前記光学構造が、前記真性半導体から成る板状部材に、該板状部材とは屈折率が異なる異屈折率領域が周期的に設けられて成る2次元フォトニック結晶構造であり、該異屈折率領域が該板状部材に垂直な方向に関して非対称な形状を有することを特徴とする請求項2に記載の熱輻射光源。
【請求項5】
前記異屈折率領域が、前記板状部材の一方の表面で開口し、他方の表面で開口しないように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の熱輻射光源。
【請求項6】
前記光学構造が、3次元的に周期的屈折率分布を形成した3次元フォトニック結晶構造であることを特徴とする請求項1に記載の熱輻射光源。
【請求項7】
前記真性半導体がSiであり、前記共振の波長が1000nm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の熱輻射光源。
【請求項8】
前記真性半導体が3C-SiCであり、前記共振の波長が750nm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の熱輻射光源。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の熱輻射光源と、該熱-光変換器が発する光を受光し、前記共振の波長を含む波長帯を有する光による光電変換を行う太陽電池とを備えることを特徴とする太陽光発電装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱を光に変換する熱輻射光源に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物体を加熱すると、物体を構成する物質及び物体の温度に応じたスペクトルを有する光(電磁波)が放出される熱輻射が生じる。外部から照射した光を完全に吸収する理想的な物体(黒体)から発生する熱輻射は黒体輻射と呼ばれている。黒体輻射では、広い波長帯に亘って強度が分布し、その分布が温度のみによって定まる波長スペクトルを有する光が放出される。また、通常の物体を加熱した際の波長スペクトルも幅広い波長帯に亘る分布を有するが、同じ温度における黒体の波長スペクトルを超えることはできないことが知られている。このような熱輻射を利用して、広い波長帯に亘って強度が分布するスペクトルを有する光が放出される。このような場合、物体と熱源を組み合わせることにより、広い波長スペクトルを有する光源(熱輻射光源)を得ることができる。
【0003】
一方、このような広い波長スペクトルを有する光ではなく、特定の波長帯において大きい強度を有する光を発する熱輻射光源も求められている。その一例として、太陽電池の分野が挙げられる。現在実用化されている太陽電池では、太陽光に含まれる広い波長帯のうち、特定の波長域の光のみが光電変換に寄与し、それ以外の波長の光のエネルギーは損失となる。
【0004】
非特許文献1及び2には、AlGaAsから成る層と、GaAsから成る層を交互に積層して成る量子井戸構造を有する板状部材に、空孔が三角格子状に複数個設けられて成る2次元フォトニック結晶を有する熱輻射光源が記載されている。板状部材が加熱されると、量子井戸のエネルギー準位間における電子の熱励起により、エネルギー準位差に対応する複数の波長の発光が生じるが、その発光の波長スペクトルは一般的な熱輻射光源の波長スペクトルよりも狭い。さらに、2次元フォトニック結晶は、空孔の周期によって定まる所定波長の光に共振し、その波長の光を選択的に強めることができる。これら量子井戸及び2次元フォトニック結晶が組み合わされることにより、前記所定波長付近において線幅が狭くピークの強度が大きい波長スペクトルが得られる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開WO2005/086302号
【特許文献2】国際公開WO2007/029661号
【特許文献3】特開2001-074955号公報
【0006】

【非特許文献1】De Zoysa Menaka et al.(デ ゾイサ メーナカ 他5名)、"Conversion of broadband to narrowband thermal emission through energy recycling"(エネルギーリサイクルによる広帯域熱輻射から狭帯域熱輻射への変換)、[online]、2012年7月8日、Nature Photonics(ネイチャー フォトニックス)、[平成25年2月26日検索]、インターネット<URL:http://www.nature.com/nphoton/journal/v6/n8/full/nphoton.2012.146.html>
【非特許文献2】国立大学法人京都大学、「物体からの熱輻射スペクトルの大幅な狭帯域化に成功 —高効率太陽電池応用など、エネルギーの有効利用に向けた重要な一歩を達成—」、[online]、平成24年7月9日、京都大学2012年度ニュースインデックス、[平成25年2月26日検索]、インターネット<URL:http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/120709_1.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1及び2に記載の熱輻射光源では、波長スペクトルのピーク波長が約10μmであるのに対して、太陽電池において光電変換に寄与する波長帯は、一般的に用いられているシリコン系のものでは1.0μm前後であり、シリコン系よりも長い波長帯に対応できるシリコン-ゲルマニウム系のものにおいても1.5μm前後である。また、量子井戸構造では、バンドギャップが大きく異なる2種の材料を組み合わせて使用する必要があることから、適用可能な材料の組み合わせが限られるため、量子井戸構造を用いる限り、ピーク波長を所望の値にすることは難しい。従って、非特許文献1及び2に記載の熱輻射光源では、太陽電池における光電変換に寄与する光の割合を高めることはできず、光電変換効率の高い太陽光発電を実現することはできない。
【0008】
このようなピーク波長の選択の困難性という問題は、太陽電池と組み合わせて用いる熱輻射光源に限らず、種々の用途においても同様に生じる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、より材料の選択の幅が広く、それにより、容易に所望のピーク波長を有する光を得ることができる熱輻射光源を提供することである。併せて、当該熱輻射光源を用いた、光電変換効率の高い太陽光発電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係る熱輻射光源は、
真性半導体から成る部材に、該真性半導体のバンドギャップに対応する波長よりも短い波長の光に共振するように屈折率分布が形成されている光学構造を有する熱-光変換器を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る熱輻射光源では、外部から熱-光変換器に熱を供給すると、真性半導体においてエネルギーが吸収され、価電子バンドからバンドギャップを越えて伝導バンドへの電子の熱励起が生じる。このような吸収を「バンド間吸収」と呼ぶ。そして、励起された電子がバンドギャップを越えて価電子バンドに遷移することにより、光が生じる。この光は、バンドギャップよりも高いエネルギーを有することとなるため、バンドギャップのエネルギーEgに対応する波長λg=hc/Eg(hはプランク定数、cは光速)よりも短い波長を有する。従って、バンド間吸収により真性半導体から発せられる光の波長スペクトルは、波長λgよりも短い波長帯内に収まる(図1(a))。以下、波長λgを「カットオフ波長」と呼ぶ。
【0012】
そして、このようにバンド間吸収によって生じた光のうち、前記光学構造において共振する波長(以下、「共振波長λr」とする。図1(b)。)付近の光が選択的に強められ、熱-光変換器の外部に放出される(図1(c))。前記光学構造の一例として、フォトニック結晶構造が挙げられる。フォトニック結晶構造では周期的な屈折率分布が形成されており、その周期に対応した波長λrの光が定在波を形成する。なお、共振波長λrの定在波を形成することができるフォトニック結晶構造は、当業者であれば、例えば特許文献1、2等の開示に沿って作製することができるものである。また、前記光学構造の他の例として、後述のように基体上にそれよりも屈折率が高い部材を複数配置したものが挙げられる。この例では、各部材内において、該部材の大きさにより定まる波長λrの光による定在波が形成される。
【0013】
以上の原理により、本発明に係る熱輻射光源では、共振波長λrをピーク波長とし、熱輻射のスペクトルよりも線幅が狭い波長スペクトルを有する熱輻射光を発する。
【0014】
なお、前記光学構造では、共振波長λrの光だけではなく該共振波長λrよりも短波長側においても共振(高次共鳴)が生じ得る。しかしながら、熱輻射の強度の最大値が黒体輻射スペクトルの強度で定まり、該黒体輻射スペクトルの強度が短波長側に向かうに従って急激に減少するため、高次共鳴による発光は十分に抑制される。
【0015】
真性半導体のバンドギャップの大きさは、温度により変化する。また、熱-光変換器内における共振波長は前記光学構造の構成により定まるため温度には依存しないが、温度変化により屈折率が変化し、それに伴って光速が変化する。従って、共振波長は温度により変化する。そのため、カットオフ波長λg及び共振波長λrは、本発明に係る熱輻射光源を使用する際の加熱温度における真性半導体のバンドギャップの大きさ及び屈折率に基づいて定めればよい。
【0016】
本発明では、真性半導体を用いるため、2種の半導体を組み合わせた量子井戸構造を用いる場合よりも材料の選択の幅が広い。そのため、目的とする波長に応じた光を発する熱輻射光源を容易に得ることができる。前記真性半導体にはSi(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、Cu2O(酸化銅(I))等、様々なものを用いることができる。カットオフ波長λgは、Siでは約1700nm(1400K)、3C-SiC(SiCのうち、「3C」と呼ばれる立方晶構造を有するもの)では約800nm(2200K)、Cu2Oでは約900nm(1200K)である。なお、ここに示したカットオフ波長λgは括弧内に示した温度における値であり、これらの温度は、真性半導体毎に融点(Si:1687K、3C-SiC:3100K、Cu2O:1505K)を考慮して定めた、熱輻射光源の使用時における温度の一例である。
【0017】
共振波長λrは、カットオフ波長λgに近すぎると、熱輻射光の波長スペクトルの長波長側における裾がカットオフされてしまうため、カットオフ波長λgよりもある程度短い方が望ましい。例えば、共振波長λrは、真性半導体がSiの場合には1600nm以下(温度1400K)、3C-SiCの場合には約750nm以下(2200K)、Cu2Oの場合には約850nm以下(1200K)とすることが望ましい。
【0018】
前記光学構造は、熱輻射光源から熱輻射光を放出させようとする方向に関して非対称性を有することが望ましい。このような非対称性が無い場合(すなわち、前記方向に関して対称である場合)には、該方向とそれとは180°異なる方向に同じ強度で熱輻射光が放出されるのに対して、このような非対称性を有する場合には一方の方向に、より大きい強度で熱輻射光を放出させることができる。
【0019】
前記光学構造の一例として、真性半導体から成る板状部材に、それとは屈折率が異なる領域(異屈折率領域)が周期的に設けられて成る2次元フォトニック結晶構造が挙げられる。異屈折率領域には、空孔(空気又は真空)を用いることもでき、前記真性半導体とは異なる材料から成る部材を用いることもできる。この例では、異屈折率領域の配置周期の長さにより定まる波長の定在波が熱-光変換器内に形成される。また、この例のフォトニック結晶構造では、板状部材に垂直な方向に関して、異屈折率領域が非対称性を有することが望ましい。これによって、板状部材の一方の表面の方により大きい強度で熱輻射光を放出させることができる。このような非対称性を有する異屈折率領域には、板状部材に垂直な断面の形状が三角形や台形のもの等があるが、板状部材の一方の表面で開口し、他方の表面で開口しない異屈折率領域が、作製が容易であるという点で望ましい。
【0020】
また、前記光学構造には、前記真性半導体よりも屈折率が低い材料から成る基体の表面に、真性半導体から成る同一形状の部材(高屈折率部材)を2次元状に配置したものを用いることが望ましい。この高屈折率部材の配置は、周期的でなくてもよい。このような構成を取ることにより、個々の高屈折率部材内に、該高屈折率部材の大きさに対応した波長の定在波が形成される。従って、高屈折率部材自身を光共振器(高屈折率部材光共振器)として機能させることができ、前記定在波の波長を共振波長とする光を選択的に増幅することができる。この光学構造は前述の非対称性を有するため、一方向に、より大きい強度で熱輻射光を放出させることができる。
【0021】
また、前記光学構造には、3次元的に周期的屈折率分布を形成した3次元フォトニック結晶構造を用いてもよい。3次元フォトニック結晶構造では、そこに存在することができない波長帯を、光の偏光方向に関わらず形成することができる。このような波長帯は、電子のバンドギャップと同様の理由によって光に関して形成されるものであり、電子のバンドギャップと区別して「フォトニックバンドギャップ」と呼ばれている。本発明において3次元フォトニック結晶構造を用いることにより、3次元フォトニック結晶構造に共振する所定波長の光(すなわち、3次元フォトニック結晶構造内に存在可能な波長の光)を選択的に増幅する一方、フォトニックバンドギャップ内の波長の光が発せられることを防ぐことができるため、所定波長の光をより効率的に発光することができる。
【0022】
本発明に係る熱輻射光源を太陽電池と組み合わせることにより、高効率の太陽光発電装置が得られる。すなわち、この太陽光発電装置は、本発明に係る熱-光変換器と、該熱-光変換器が発する光を受光し、前記共振波長を含む波長帯を有する光による光電変換を行う太陽電池と、を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る太陽光発電装置では、太陽電池が、太陽光の波長スペクトルよりも線幅が狭く、光電変換が可能な波長である前記共振波長を含む波長スペクトルを有する光を熱-光変換器から受光することにより、直接太陽光を受光した場合よりも、光電変換が可能な波長帯の光の強度を高めることができる。そのため、太陽電池が太陽光を直接受光する場合よりも、光電変換の効率が高まる。例えば、シリコン太陽電池では波長約1000nmを超える光を光電変換することができないため、熱-光変換器の共振波長λrは、1000nm以下とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、より材料の選択の幅が広い真性半導体を用いることができ、それにより、所望のピーク波長を有する狭帯域の光を生じる熱輻射光源を容易に得ることができる。
【0025】
また、本発明により、太陽電池が太陽光を直接受光する場合よりも光電変換の効率が高い太陽光発電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る熱輻射光源において、特定の波長帯の光が生じる理由を説明するための図であって、真性半導体のバンド間吸収の波長スペクトルの概念図(a)、光学構造による波長選択の概念図(b)、及び本発明の熱輻射光源による発光の波長スペクトルの概念図(c)。
【図2】第1実施例の熱輻射光源を示す斜視図。
【図3】第1実施例の熱輻射光源を示す平面図。
【図4】第1実施例の熱輻射光源により得られる波長スペクトルを計算により求めた例を示すグラフ。
【図5】第1実施例の熱輻射光源を用いた太陽光発電装置の一例を示す概略構成図。
【図6】第1実施例で作製した熱輻射光源を撮影した光学顕微鏡写真(a)、及び電子顕微鏡写真(b)。
【図7】第1実施例で作製した熱輻射光源により得られた波長スペクトルの測定結果を示すグラフ。
【図8】第2実施例の熱輻射光源を示す斜視図。
【図9】第2実施例の熱輻射光源を示す上面図(a)、A-A面における断面図(b)、及びB-B面における断面図(c)。
【図10】第2実施例の熱輻射光源により得られる波長スペクトルを計算により求めた例を示すグラフ。
【図11】第2実施例の熱輻射光源の変形例を示す斜視図。
【図12】第3実施例の熱輻射光源を示す斜視図。
【図13】厚みの異なる板状部材における吸収率の相違を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る熱輻射光源の実施例を、図2~図13を用いて説明する。
【実施例1】
【0028】
第1実施例の熱輻射光源10は、図2及び図3に示すように、真性半導体から成る円柱状のロッド11を、該真性半導体よりも屈折率が低い基体13の表面に複数個配置した光学構造を有する。本実施例では、ロッド11の材料にはSi(屈折率:3.4)を、基体13の材料にはSiO2(屈折率:1.5)を、それぞれ用いた。ロッド11の半径rは100nm、ロッドの高さhは500nmとした。なお、本実施例では、ロッド11を、周期長aが600nmである正方格子の格子点に配置したが、このようにロッド11を周期的に配置することは、本発明では必須ではない。
【実施例1】
【0029】
上記のパラメータのうち、ロッド11の屈折率n及び半径r、並びに正方格子の周期長aにより、以下のように、本実施例の光学構造における共振波長λrが定まる。
熱-光変換器内では、周囲よりも屈折率が高いロッド11に沿って、光がロッド11の高さ方向に伝搬する。そして、この光がロッド11の上端及び下端において反射されることにより、定在波が生じ、光の共振状態が形成される。共振波長λrは、ロッド11の高さhに依存すると共に、光がロッド11からしみ出すと有効屈折率が変化することからロッド11の半径rにも依存する。また、ロッド11の周期長aの相違は、有効屈折率の相違という点で共振波長λrに影響を及ぼすが、ロッド11の半径rの相違による影響ほど大きいものではない。ロッド11の周期長aが短すぎると、ロッド11間で電磁界分布の重なりが大きくなって相互作用が生じ、それにより、光の出射角度に依存して共振波長が変化するという影響が生じてしまう。一方、該周期長aが発光波長よりも長くなると、高次の回折が生じることで一つの共振モードからの輻射が複数の方向に発生する。よって周期長aは、各ロッドからの電磁界のしみ出し距離よりも大きく、且つ、発光波長よりも小さくすることが望ましい。
本実施例では、ロッド11の半径rを100nm、ロッドの高さhを500nmとすることで、各ロッドに生じる共振モードの波長λrを950nmとしている。さらに周期長aを共振波長λrよりも短く、かつロッド半径よりも十分大きい600nmと設定することで発光強度を保ちつつ出射角度依存性を抑制した。
【実施例1】
【0030】
第1実施例の熱輻射光源10が熱を光に変換する原理を説明する。熱輻射光源10を1400K程度の温度まで加熱すると、Siのカットオフ波長λg≒1700nmよりも短波長側(カットオフ波長λgに対応する光子のエネルギーである0.73eVよりも高エネルギー側)において、真性半導体であるSiのバンド間吸収によるエネルギーの吸収が生じ、そのエネルギーに対応する発光が、カットオフ波長λgよりも短波長側(高エネルギー側)において生じる。こうして生じた光のスペクトルは、図1(a)に示したようにλgよりも短波長側で連続しているが、このように連続した波長帯のうち、本実施例の光学構造によって共振波長λr≒950nm付近を最大値(ピークトップ)とする波長スペクトルが得られる。
【実施例1】
【0031】
第1実施例の熱輻射光源10により得られる波長スペクトルを計算により求めた例を図4に示す。この例では、熱輻射光源10を1400K(1127℃)に加熱した場合について計算した。この図に示すように、波長スペクトルは波長約950nmをピークトップとする単一のピークになる。Siのカットオフ波長λgは約1700nm(対応する光子のエネルギーは約0.73eV)であり、カットオフ波長λgよりも長波長側では発光がほとんど生じていない。また、ピークよりも低波長側では、波長が短くなるほど黒体輻射のスペクトルが小さくなるため、それに対応して、熱輻射光源10の波長スペクトルも波長が短くなるほど小さくなっている。
【実施例1】
【0032】
このように、本実施例の熱輻射光源10は、共振波長λr=950nm付近の波長のみを選択的に放出することができる。一方、シリコン太陽電池は、波長約1000nmを超える光を光電変換することができない。そこで、図5に示すように、熱輻射光源10と、熱輻射光源10に太陽光を集光する集光レンズ19Aと、熱輻射光源10による熱輻射光を受光するシリコン太陽電池19Bにより、太陽光発電装置19を構成することができる。これにより、波長約1000nmを超える光を含む広い波長スペクトルを有する太陽光を、熱輻射光源10によって波長1000nm以下(本実施例では950nm)に波長スペクトルのピークを有する光に変換したうえで、シリコン太陽電池19Bにおいて光電変換を行うことができるため、光電変換の効率を高めることができる。
【実施例1】
【0033】
次に、実際に熱輻射光源10を作製したうえで測定を行った結果を、図6及び図7を用いて説明する。図6(a)は作製した熱輻射光源10を撮影した光学顕微鏡写真であり、(b)は熱輻射光源10のロッド11及び基体13を拡大して撮影した電子顕微鏡写真である。作製した熱輻射光源10では、SiO2製であって厚さ約3μmの板状の基体13の表面に、Si製であって円柱状のロッド11を、1辺が400μmである正方形の領域内に正方格子状に配置した。ロッド11の半径rは100nm、高さhは450nmであり、正方格子の周期長aは500nmである。また、基体13の下面(ロッドの反対側の面)に接するように、基体13に近い側から順にTiから成る層、Ptから成る層、Tiから成る層の3層構造を有する板状のヒータ15が設けられている。ヒータ15に電流を流すと、熱輻射光源10は約500Kの温度に加熱され、上述の原理によって熱が光に変換されることにより、発光が得られた。得られた発光のスペクトルを測定したところ、図7に示すように、約900nmの波長においてピークを有する波長スペクトルが得られた。
【実施例1】
【0034】
ここまではロッド11の材料にSiを用いた例を示したが、SiCやCu2Oなど、Si以外の真性半導体を用いてもよい。ロッド11の材料に3C-SiCを用いた場合には、カットオフ波長λgがSiの場合よりも短い800nmとなるため、ロッド11の高さ及び半径をSiの場合よりも小さくすることにより、750nmよりも短波長側にピークを有する波長スペクトルを有する熱輻射光を発する熱輻射光源が得られる。このような特性を有する熱輻射光源は、GaAs太陽電池に、太陽光を変換した熱輻射光を照射する光源として好適に用いることができる。
【実施例1】
【0035】
また、第1実施例ではロッド11を正方格子状に配置したが、三角格子状などの配置を取ってもよい。また、ロッド11の形状は円柱状としたが、角柱、円錐、角錐などの形状としてもよい。さらには、ロッド11の周囲を、SiO2等、ロッド11よりも屈折率が低い材料で埋めてもよい。
【実施例2】
【0036】
第2実施例の熱輻射光源20は、図8及び図9に示すように、真性半導体から成る塊状部材21の上面への法線から45°傾斜した方向に延びる空孔柱22を周期的に形成したものである。空孔柱22は、塊状部材21の上面における断面においては、周期長aで三角格子状に配置されている。また、空孔柱42が延びる方向は、この三角格子の格子点の一列おき(図9(a)の断面A-A上、及び断面B-B上の交互)に互いに90°異なっている(図9(b), (c))。このような構成により、真性半導体から成る塊状部材21内に3次元的な周期的屈折率分布を有する3次元フォトニック結晶構造(本実施例における光学構造)が形成されている。本実施例では、塊状部材21の材料はSiとし、周期長aは680nmとした。
【実施例2】
【0037】
第2実施例の熱輻射光源20により得られる波長スペクトルの例を図10に示す。この例では、熱輻射光源20を1300K(1027℃)に加熱した場合について、計算により波長スペクトルを求めた。この図に示すように、波長約1300nmをピークトップとする波長スペクトルが得られる。
【実施例2】
【0038】
塊状部材21の材料は上述のSiには限られず、SiCやCu2O等を用いることもできる。また、空孔柱22の代わりに、塊状部材21よりも屈折率が低い部材を用いてもよい。あるいは、図11に示すように、真性半導体から成るロッド状部材29を平行に並べたものを、ロッド状部材の向きを90°変えながら積層した3次元フォトニック結晶(特許文献3を参照)を用いることもできる。
【実施例3】
【0039】
第3実施例の熱輻射光源30は、図12に示すように、板状部材31に空孔(異屈折率領域)32が周期的に空けられていることにより、2次元フォトニック結晶構造(本実施例における光学構造)が形成された構成を有する。板状部材31の材料には、本実施例ではSi(屈折率:3.4)を用いた。空孔32は三角格子状に配置されている。個々の空孔32の平面形状は円形である。このように、本実施例の熱輻射光源30では、真性半導体であって屈折率が3.4であるSi製の板状部材31に、屈折率が約1である空孔32が周期的に配置されていることにより、2次元的な周期的屈折率分布が形成されている。
【実施例3】
【0040】
本実施例では、空孔32の周期長aを600nmとした。また、空孔32の半径は150nmとした。また、板状部材31は厚みを500nmとし、空孔32は板状部材31の一方の表面から深さ200nmまで形成した。このように空孔32が板状部材31の一方の表面で開口し、他方の表面で開口しないように設けられているため、板状部材31に垂直な方向に関して非対称性が形成される。そのため、空孔32が貫通した方の板状部材31の表面から、より大きい強度で熱輻射光を放出させることができる。なお、本実施例では、空孔32の直径が大きいほど板状部材31と空孔32を合わせた平均の屈折率が小さくなるため、周期長aが同じ場合には、該直径が大きいほど、空気中での波長は短くなる。
【実施例3】
【0041】
本実施例では、Siのカットオフ波長λg≒1700nmよりも短波長側の共振波長λr=1600nmに近い波長の光のみが選択されて増幅し、外部に放出される。
【実施例3】
【0042】
板状部材31の厚みは、孔径、孔の深さ、周期等を調整することで、同様の共振波長を保ちながらある範囲内で変えることが可能である。しかしながら、この厚みを厚くしすぎると、真性半導体における真性キャリアによるエネルギーの吸収が生じ、それにより、カットオフ波長λgよりも長波長側において不所望の発光が生じるおそれがある。一例として、本実施例と同じ厚みが0.5μm(500nm)のSiの板状部材と、厚みが10μm及び100μmのSiの板状部材について、1400K(1127℃)に加熱したときのエネルギーの吸収率を計算で求めた。図13に示すように、吸収率はSiのカットオフ波長λg≒1700nm(対応する光子のエネルギー:0.73eV)よりも長波長側において、板状部材の厚みが100μmの場合にはほぼ0.7であり、厚みが10μmの場合には0.30~0.35という値を有するのに対して、厚みが0.5μmの場合にはほぼ0である。これは、板状部材の厚みが厚いほど、長波長側における不所望の発光がより大きい強度で生じることを意味している。従って、このような発光を抑えるために、板状部材31の厚みは薄い方が望ましい。ただし、板状部材31の厚みが極端に薄くなると、共振波長における発光も減少してしまうので、この点も勘案して適切な厚みを選択することが望ましい。本実施例では0.5μmが最適であった。
【実施例3】
【0043】
このような長波長側の不要な発光は、第1及び第2実施例でも生じうる。第1実施例においては、真性半導体製のロッド11の高さや径を変更することで、基体13の表面に平行な方向で平均した真性半導体の実効厚みを変化させることができ、それにより、長波長側の発光が抑制されるように調整することができる。第2実施例においては、共振波長よりも長波長側に3次元的なフォトニックバンドギャップが形成されるように空孔柱22やロッド状部材29の周期を調整することにより、長波長側の光は3次元フォトニック結晶構造内に存在できなくなるため、その発光が抑制される。
【実施例3】
【0044】
ここまでは板状部材31の材料にSiを用いた例を示したが、SiCやCu2Oなど、Si以外の真性半導体を用いてもよい。また、ここまでは空孔32を三角格子状に配置した例を示したが、正方格子状などの配置を取ってもよい。空孔32の平面形状は円形としたが、正三角形など、円形以外の平面形状としてもよい。さらには、空孔32の代わりに、SiO2から成る部材など、板状部材31の材料よりも屈折率が低い部材を設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10、20、30…熱輻射光源
11…ロッド
13…基体
15…ヒータ
19…太陽光発電装置
19A…集光レンズ
19B…シリコン太陽電池
21…塊状部材
22…空孔柱
29…ロッド状部材
31…板状部材
32…空孔
図面
【図1】
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【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図7】
4
【図9】
5
【図10】
6
【図11】
7
【図13】
8
【図2】
9
【図6】
10
【図8】
11
【図12】
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