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明細書 :植物保護剤及び植物病害の防除方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 植物保護剤及び植物病害の防除方法
国際特許分類 A01N  59/16        (2006.01)
A01P   3/00        (2006.01)
A01N  63/02        (2006.01)
A01N  25/14        (2006.01)
FI A01N 59/16 Z
A01P 3/00
A01N 63/02 B
A01N 63/02 A
A01N 25/14
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 23
出願番号 特願2015-506747 (P2015-506747)
国際出願番号 PCT/JP2014/056963
国際公開番号 WO2014/148396
国際出願日 平成26年3月14日(2014.3.14)
国際公開日 平成26年9月25日(2014.9.25)
優先権出願番号 2013056674
優先日 平成25年3月19日(2013.3.19)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】白石 友紀
【氏名】豊田 和弘
【氏名】高田 潤
【氏名】久能 均
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H011
Fターム 4H011AA01
4H011BA01
4H011BB18
4H011BB21
4H011BC18
4H011DA02
4H011DA15
4H011DC05
4H011DD03
4H011DE15
要約 開示されているのは、非晶質及び/又は微結晶性のケイ素及びリン含有酸化鉄を含む植物保護剤、並びに当該植物保護剤を施用する工程を備えた植物病害の防除方法である。
特許請求の範囲 【請求項1】
非晶質及び/又は微結晶性のケイ素及びリン含有酸化鉄を含む植物保護剤を施用する工程を備えた、植物病害の防除方法。
【請求項2】
前記酸化鉄が、鉄及び酸素を主成分として含有し、
鉄、ケイ素及びリンの元素比率が原子数%で各々66~87:2~27:1~32(鉄、ケイ素及びリンの原子数%の合計は100)である、
請求項1に記載の防除方法。
【請求項3】
前記酸化鉄が、更に0.1~5重量%の炭素を含有する、請求項1又は2に記載の防除方法。
【請求項4】
前記微結晶性酸化鉄が、フェリハイドライト及び/又はレピドクロサイトである、請求項1~3のいずれか一項に記載の防除方法。
【請求項5】
前記酸化鉄が、鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄である、請求項1~4のいずれか一項に記載の防除方法。
【請求項6】
前記酸化鉄が、鉄バクテリア浄水法によって生じた凝集沈殿物から分離された酸化鉄である、請求項5に記載の防除方法。
【請求項7】
前記鉄酸化細菌が、レプトスリックス属(Leptothrix)及び/又はガリオネラ属(Gallionella)に属する細菌である、請求項5又は6に記載の防除方法。
【請求項8】
前記鉄酸化細菌が、レプトスリックス・コロディニ(Leptothrix cholodnii) OUMS1(NITE BP-860)である、請求項5又は6に記載の防除方法。
【請求項9】
前記植物保護剤が、鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄と水との懸濁液から分離した上澄み液を含有する、請求項5~8のいずれか一項に防除方法。
【請求項10】
前記植物保護剤が、水和剤の形態である、請求項1~9のいずれか一項に記載の防除方法。
【請求項11】
前記植物保護剤が、散布剤の形態である、請求項1~9のいずれか一項に記載の防除方法。
【請求項12】
非晶質及び/又は微結晶性のケイ素及びリン含有酸化鉄を含む植物保護剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な植物保護剤及び該植物保護剤を用いる植物病害の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物と関連した既存の植物保護技術としては、土壌微生物や植物内生微生物を用いた微生物農薬がよく知られており、これらの幾つかは市販されている。これまで、20種類近い微生物農薬が発売されているが、一般に保存や取り扱いが難しいなどの問題点が指摘されている。また、微生物農薬は、微生物が多様な環境下やストレス下で十分な能力を発揮できないことや、ストレス下で有害な代謝産物を産生する可能性が捨てきれない。
【0003】
自然界では水酸化鉄等からなる凝集体やバイオマットが形成され、これらは腐蝕配管の鉄さびとしてもよく知られている。この集塊中には、リボン状やマイクロチューブ状のいわゆる微生物起源の酸化鉄(以下、BIOXと称することもある)が多量に含まれており、低エネルギー低コストで生産できる次世代機能性材料として注目されている。この形成にかかわる細菌類としては、レプトスリックス属(Leptothrix)、スフェロチルス属(Sphaerotilus)、ガリオネラ属(Gallionella)、シデロカプサ属(Siderocapsa)などの属が知られており、マイクロチューブ状の酸化鉄(L-BIOX)はレプトスリックス属によって形成されることが判明している。
【0004】
しかし、自然界のバイオマットは通常多種多様な微生物の集合体によって生成されるもであり、結果として、均質なBIOXを得ることは難しく、工業的利用の壁となっている。さらに、L-BIOXを生成するレプトスリックス属の単離は難しく、単離された場合でも、レプトスリックス属自体又はL-BIOX形成能の維持は困難を極めていた。しかし、2011年、澤山らによって、これらの問題は解決された。すなわち、同氏らは、レプトスリックス・コロディニ(L. cholodnii) SP6株(L33974)と近縁のレプトスリックス・コロディニOUMS1株(以下、単にOUMS1と称することもある)の単離と、これを用いたL-BIOXの生成に成功した(特許文献1、非特許文献1)。なお。OUMS1はこれまで3年間に渡りL-BIOX生成能を維持している。このような微生物起源の酸化鉄の利用方法としては、例えば、特許文献2~4には以下のような報告がある。
【0005】
特許文献2では、微生物由来のセラミックスに化学処理を施すことにより、有機基で化学修飾された有機・無機複合材料が得られること、及び当該有機・無機複合材料に導入された有機基を利用して触媒等を固定化できることが報告されている。
【0006】
特許文献3では、微生物由来のセラミックスに加熱処理を施すことにより、特異な性質を有する磁性セラミックスが得られることが報告されている。
【0007】
特許文献4では、微生物が作る酸化鉄の鉄分を酸処理し、Fe成分を溶解除去することによってアモルファスシリカを得ることができること、当該アモルファスシリカは、固体酸触媒として作用する酸点を有し、人工的に合成したシリカ触媒と比較し優れた酸強度及び触媒活性を有していることが報告されている。
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1~4を含め、これまでに微生物起源の酸化鉄を用いた植物感染症防止に関する実施例や報告はない。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】国際公開第2011/074586号
【特許文献2】国際公開第2010/110435号
【特許文献3】国際公開第2011/074587号
【特許文献4】国際公開第2012/124703号
【0010】

【非特許文献1】Sawayama et al., Curr Microbiol (2011) 63: 173-180
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、取り扱いが簡便で安定的な保存が可能であり、安定的且つ安全に使用できる植物保護剤及び該植物保護剤を用いる植物病害の防除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記OUMS1の生成するL-BIOX (以下、OUMS1-BIOXと称することもある)について、作物(植物)保護への利用の可能性について検討した。すると、OUMS1-BIOXは、直接的な抗菌性及び細胞毒性がほとんど認められず安全である上に、病原菌の侵入を顕著に阻害できる活性を有し、更に植物に抵抗性を誘導する活性も有するという知見を得た。
【0013】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の植物保護剤及び植物病害の防除方法を提供するものである。
【0014】
(I) 植物保護剤
(I-1) 非晶質及び/又は微結晶性のケイ素及びリン含有酸化鉄を含む植物保護剤。
(I-2) 前記酸化鉄が、鉄及び酸素を主成分として含有し、
鉄、ケイ素及びリンの元素比率が原子数%で各々66~87:2~27:1~32(鉄、ケイ素及びリンの原子数%の合計は100)である、
(I-1)に記載の植物保護剤。
(I-3) 前記酸化鉄が、更に0.1~5重量%の炭素を含有する、(I-1)又は(I-2)に記載の植物保護剤。
(I-4) 前記微結晶性酸化鉄が、フェリハイドライト及び/又はレピドクロサイトである、(I-1)~(I-3)のいずれか一項に記載の植物保護剤。
(I-5) 前記酸化鉄が、鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄である、(I-1)~(I-4)のいずれか一項に記載の植物保護剤。
(I-6) 前記酸化鉄が、鉄バクテリア浄水法によって生じた凝集沈殿物から分離された酸化鉄である、(I-5)に記載の植物保護剤。
(I-7) 前記鉄酸化細菌が、レプトスリックス属(Leptothrix)及び/又はガリオネラ属(Gallionella)に属する細菌である、(I-5)又は(I-6)に記載の植物保護剤。
(I-8) 前記鉄酸化細菌が、レプトスリックス・コロディニ(Leptothrix cholodnii) OUMS1(NITE BP-860)である、(I-5)又は(I-6)に記載の植物保護剤。
(I-9) 鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄と水との懸濁液から分離した上澄み液を含有する、(I-5)~(I-8)のいずれか一項に植物保護剤。
(I-10) 水和剤の形態である、(I-1)~(I-9)のいずれか一項に記載の植物保護剤。
(I-11) 散布剤の形態である、(I-1)~(I-9)のいずれか一項に記載の植物保護剤。
(I-12) 非晶質及び/又は微結晶性のケイ素及びリン含有酸化鉄の植物保護剤としての使用。
【0015】
(II) 植物病害の防除方法
(II-1) (I-1)~(I-11)のいずれか一項に記載の植物保護剤を施用する工程を備えた、植物病害の防除方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の植物保護剤は、直接的な抗菌性及び細胞毒性をほとんど認めず安全な資材である上に、植物に与えると病原菌の侵入を顕著に阻害できる活性を有している。
【0017】
さらに、本発明の植物保護剤は、植物に複数の経路を介する抵抗性を誘導することもできる。これは、植物に侵入を試みる病原菌を標的にできることを示しており、安全性の面からも高い価値がある。また、これは、広汎な病原体に対して有効であることを示しており、作用点も多いことから耐性菌の出現も回避可能であると考えられる。
【0018】
従来の微生物農薬は、一般に保存や取扱いが難しいなどの問題点が指摘されているが、本発明の植物保護剤は、取扱いが簡便で安定的な保存が可能である。また、従来の微生物農薬は、微生物が多様なストレス下で十分な効果が発揮できないことや、有害な代謝産物を産生する可能性が捨てきれないが、本発明の植物保護剤ではそのような問題はなく、安定的且つ安全に使用できる。
【0019】
本発明は、上水道浄化施設で処理が問題となっているBIOXの有効利用に道を拓くものであり、既存技術にはない活用法で、上水道施設における廃棄物の有効利用に道を拓く技術である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】スライドグラス上における灰色かび病菌分生胞子の発芽を示す顕微鏡写真である。A, B, C 及びDは、各々0, 27, 133, 667μg/mlのOUMS1-BIOXを示している。ap, 付着器; gt, 発芽管; s, 柄胞子。バーは50μm
【図2】スライドグラス上におけるエンドウ褐紋病菌柄胞子の発芽を示す顕微鏡写真である。A, B, C及びDは、各々0, 27, 133及び667μg/mlのOUMS1-BIOXを示している。gt, 発芽管; s, 柄胞子。バーは50μm
【図3】スライドグラス上でOUMS1-BIOXで処理された灰色かび病菌分生胞子とエンドウ褐紋病菌柄胞子の発芽率を示すグラフである。最終濃度は、グラフ内の表示濃度の 1/3 である。
【図4】エタノールで処理したタマネギ表皮上における灰色かび病菌の形態形成を示す顕微鏡写真である。バーは30μm。a, 付着器; gt, 発芽管; ih, 侵入菌糸; s, 分生胞子
【図5】タマネギ表皮細胞への灰色かび病菌の侵入率を示すグラフである。異なるアルファベットは有意差を示す。
【図6】エンドウ葉における褐紋病菌感染に及ぼすOUMS1-BIOX の効果を示す写真である。
【図7】OUMS1-BIOX処理シロイヌナズナ(Col-0)における防御関連遺伝子の発現を示すグラフである。H, 健全葉; W, 水処理葉; Biox, OUMS1-BIOX処理葉。PAD3, カマレキシン(抗菌性低分子物質)生合成遺伝子; PR1, サリチル酸情報伝達系の遺伝子; AtGSTU11, グリタチオンSトランスフェラーゼ遺伝子
【図8】タマネギ表皮細胞への褐紋病菌の侵入に及ぼす、岡山大学農学部内浄水タンクと京都府城陽市浄水場より調製した天然BIOXの効果を示す。H2O, 水処理;Ou-Biox, 岡山大学農学部内浄水タンクより調製した天然BIOX;京都Biox, 京都府城陽市浄水場より調製した天然BIOX.***, p<0.001 で有意差有り.2O, 水処理;Ou-Biox, 岡山大学農学部内浄水タンクより調製した天然BIOX;京都Biox,京都府城陽市浄水場より調製した天然BIOX.***, p<0.001 で有意差有り.【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。

【0022】
本発明の植物保護剤は、非晶質及び/又は微結晶性のケイ素及びリン含有酸化鉄を含むことを特徴とする。

【0023】
本発明における酸化鉄は、鉄及び酸素を主成分として含有し、鉄、ケイ素及びリンの元素比率が原子数%で各々66~87:2~27:1~32、好ましくは70~75:5~15:5~20 (鉄、ケイ素及びリンの原子数%の合計を100とする)であることが望ましい。

【0024】
本発明における酸化鉄が微結晶性酸化鉄である場合は、当該微結晶性酸化鉄は、好ましくはフェリハイドライト及び/又はレピドクロサイトである。

【0025】
フェリハイドライトとは、低結晶性の酸化鉄を意味する。X線回折パターンに現れるピークの数によって2-line ferrihydriteや6-line ferrihydrite等と呼ばれている。2-line ferrihydriteの組成はFe4(O, OH, H2O)で6-line ferrihydriteの組成はFe4.6(O, OH, H2O)12とされている(R. A. Eggleton and R. W. Fitzpatrick, “New data and a revised structural model for ferrihydrite”, Clays and Clay Minerals, Vol.36, No. 2, pp111-124, 1988)。

【0026】
レピドクロサイトとは、化学式がγ-FeOOHで表される結晶性の酸化鉄である。結晶系は斜方晶系、空間群はBbmm、格子定数はa=0.3071, b=1.2520, c=0.3873Å,α=β=γ=90°である。

【0027】
本発明における酸化鉄としては、合成法により調製された酸化鉄、及び鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄のいずれも使用することができる。

【0028】
(合成法により調製された酸化鉄)
本発明における酸化鉄の合成法としては、鉄化合物、ケイ素化合物、リン化合物を次のように反応させることを例示できる。

【0029】
鉄化合物、ケイ素化合物及びリン化合物を所定の比で溶媒に溶かし攪拌下にアルカリ水溶液(例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム等)を滴下しpHを10程度にし、得られた沈殿物を蒸留水で洗浄し、遠心分離で回収する。得られたものを減圧下で乾燥し、粉砕することでケイ素及びリン含有酸化鉄を調製することができる。

【0030】
鉄化合物としては、具体的には硝酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄、炭酸鉄等を例示することができるが、これらの中では、硝酸鉄が好ましい。

【0031】
ケイ素化合物としては、具体的にはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等を例示することができる。

【0032】
リン素化合物としては、具体的にはリン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等を例示することができる。

【0033】
鉄化合物等を反応させる媒体としては、水溶液、アルコール等を例示できるが、水溶液が好ましい。

【0034】
反応の際の温度は、10~50℃、好ましくは20~30℃である。

【0035】
(鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄(バイオジナス酸化鉄))
鉄酸化細菌としては、非晶質及び/又は微結晶性のケイ素及びリン含有酸化鉄を形成するものであればよく、特に限定されるものではない。鉄酸化細菌としては、例えば、トキソシリックス属細菌(Toxothrix sp.)、レプトスリックス属細菌(Leptothrix sp.)、クレノシリックス属細菌(Crenothrix sp.)、クロノシリックス属細菌(Clonothrix sp.)、ガリオネラ属細菌(Gallionella sp.)、シデロカプサ属細菌(Siderocapsa sp.)、シデロコッカス属細菌(Siderococcus sp.)、シデロモナス属細菌(Sideromonas sp.)、プランクトミセス属細菌(Planktomyces sp.)などを挙げることができる。

【0036】
上記レプトスリックス属細菌であるレプトスリックス・オクラセア(Leptothrix ochracea)は、中空繊維状鞘構造のバイオジナス酸化鉄を生成することが可能である。また、ガリオネラ属細菌であるガリオネラ・フェルギネア(Gallionella ferruginea)は、螺旋状のバイオジナス酸化鉄を生成することが可能である。

【0037】
また、クロノシリックス属細菌は枝分かれしたチューブ状又は糸状、トキソシリックス属細菌は糸状(ハープのような形状、扇状)、シデロモナス属細菌は短幹状、シデロカプサ属細菌はカプセル状、シデロコッカス属細菌は球状のバイオジナス酸化鉄を生産することが知られている(例えば、「小島貞夫、須藤隆一、千原光雄編:“環境微生物図鑑”講談社 (1995)」)。

【0038】
バイオジナス酸化鉄の大きさは、その種類によって様々であるが、通常0.1~3000μm程度である。より具体的には、鞘状、螺旋状、枝分かれしたチューブ状、糸状及び短幹状であれば、通常、直径0.1~5μm程度、長さ5~3000μm程度である。また、カプセル状であれば、通常、長さ1.2~24μm程度である。さらに、球状であれば、通常、0.1~1μm程度である。

【0039】
レプトスリックス属に属する細菌などの鉄酸化細菌によって生成される酸化鉄は、一般的には非晶質の酸化鉄である。

【0040】
レプトスリックス属細菌の一例としては、レプトスリックス・コロディニ OUMS1株が挙げられる。当該レプトスリックス・コロディニOUMS1株は、2009年12月25日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818))に、受託番号NITE P-860として寄託されている。また、この菌株は、現在国際寄託に移管されており、その受託番号はNITE BP-860である。

【0041】
レプトスリックス・コロディニ OUMS1株が生成する酸化鉄は、フェリハイドライト及びレピドクロサイトの構造を有し、フェリハイドライトナノ粒子又はレピドクロサイトナノ粒子の集合体である。当該フェリハイドライトナノ粒子の一次粒子径は好ましくは3~5 nm程度であり、レピドクロサイトナノ粒子の一次粒子径は好ましくは30~50 nm程度である。

【0042】
レプトスリックス・コロディニが生成するバイオジナス酸化鉄の形状としては、マイクロチューブ状、ナノチューブ状、中空ひも状、カプセル状、ひも状と球状の凝集体、ひも状、ロッド状等が挙げられる。これらのバイオジナス酸化鉄の大きさとしては、マイクロチューブ状:直径0.3~4μm、長さ5~200μm、ナノチューブ状:直径300~450nm、長さ5~200μm、中空ひも状:長さ3~10μm、カプセル状:長径0.5~7μm、短径0.5~3μm、ひも状:長さ0.5~5μm、ロッド状:長さ5~30μmが挙げられる。

【0043】
バイオジナス酸化鉄を得る方法としては、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。例えば、バイオ浄水法(鉄バクテリア浄水法)や浄水場などに存在している鉄酸化細菌によって生成された凝集沈殿物から得る方法(特開2005-272251号公報参照)、及び特開平10-338526号公報に開示されたパイプ状微粒子酸化鉄の製造方法などを、バイオジナス酸化鉄を得る方法として用いることができ、その説明は当該文献を適宜援用することができる。

【0044】
ここで上記「鉄バクテリア浄水法」とは、ポリ塩化アルミニウム(PAC)などの凝集剤の凝集効果のみを利用して原水中の不純物を除去する急速濾過浄水法とは対照的に、微生物の浄化作用によって不純物を除去させる方法である。ここで微生物の浄化作用によって不純物を除去させる方法としては、例えば鉄酸化細菌等の微生物が有する凝集作用を利用して原水中の不純物を凝集沈殿させ除去する方法が挙げられる。また、微生物を用いて浄水を行なうこと以外は特に限定されるものではなく、既述の砂層の表面に微生物膜形成させ、砂層で原水を濾過するだけの所謂「緩速濾過浄水法(自然濾過法)」であっても、濾過層の閉塞を防ぎ濾過速度を維持するために濾過層の洗浄を行なう、所謂「中速濾過浄水法」であってもよい。

【0045】
上記鉄バクテリア浄水法に含まれる鉄酸化細菌のうち、特にレプトスリックス属細菌は、鉄バクテリア浄水法の濾過層における優勢菌であり、中空繊維状鞘構造のバイオジナス酸化鉄を主に生成する。本発明者らは、レプトスリックス属細菌が生産する中空繊維状鞘構造のバイオジナス酸化鉄が内径約1.0μm、外径約1.2μmの中空を有し、ほぼ均一な粒子であるという優れた特性を有していることを確認している。

【0046】
なお、本発明において「鉄バクテリア浄水法」は、上述と同じ作用によって原水中の鉄イオン等を凝集させて除去する現象自体を含む意味であり、真に浄水を目的とした実用規模での浄水の実施のみを含むものではなく、実験室レベルの小規模実施をも含む意味である。

【0047】
本発明で用いられ得るバイオジナス酸化鉄としては、鉄バクテリア浄水法によって生じた凝集沈殿物から、そこに含まれるバイオジナス酸化鉄を分離したものが好適に利用され得る。バイオジナス酸化鉄の分離方法は、凝集沈殿物からバイオジナス酸化鉄を分離し得る方法であれば特に限定されるものではなく、簡単には上記凝集沈殿物の懸濁液を、バイオジナス酸化鉄を通さず、不純物のみを通すポアサイズ(メッシュサイズ)を持った篩、メッシュ、フィルター、紙漉きで用いられる簀子状ネット等に、当該懸濁液を通じればよい。

【0048】
上記凝集沈殿物は、既述の鉄バクテリア浄水法において原水中の鉄イオン等が鉄酸化細菌の凝集作用によって凝集し、塊状となって沈殿したものである。但し、本発明でいう凝集沈殿物は、鉄酸化細菌の凝集作用によって、原水中の不純物が凝集していれば足り、特に沈降(沈殿)していない凝集物をも含む意味である。即ち本発明でいう凝集沈殿物は、水等において浮遊状態であっても、また洗浄等によって沈殿物が再懸濁された懸濁液状態であってもよい。更には水分を蒸発させた乾燥状態であってもよい。

【0049】
また、凝集沈殿物の取得方法は、特に限定されるものではなく、浄水施設における濾過層上に堆積した沈殿物を掻きとってもよいし、緩速(中速)濾過浄水法における逆洗水(洗浄水)であってもよい。また、別途濾過装置で濾別した濾過残渣であってもよいし、遠心分離機で取得した沈殿であってもよい。更には自然沈降により沈降した凝集沈殿物を、デカンテーションにより得た沈殿物であってもよい。

【0050】
次に、浄水場などに存在している鉄酸化細菌によって生成された凝集沈殿物からバイオジナス酸化鉄を得る方法を以下に説明する。まず、自然濾過法などを用いている浄水場に存在している鉄酸化細菌、例えば、レプトスリックス属細菌であるレプトスリックス・オクラセア(以下適宜「L. ochracea」と記す)が形成する沈殿物を採取する。このL. ochraceaが沈殿物を形成するバイオジナス酸化鉄の構成元素比、構造などは、上記鉄酸化細菌が生存する環境の温度、水質などにより変化するが、L. ochraceaが沈殿物を生成することができる条件であれば、特に限定されるものではなく、中空繊維状鞘構造の構造を主とするバイオジナス酸化鉄を得ることができる。

【0051】
その後、上記沈殿物を洗浄する。洗浄に用いる液としては、特に限定されるものではないが、蒸留水を用いることが好ましい。更に、篩を用いて、洗浄した汚泥から砂などの不純物を除去することによりバイオジナス酸化鉄を得ることができる。また、必要であれば、得られたバイオジナス酸化鉄に対し遠心分離機を用いて比重ごとに選別してもよい。

【0052】
なお、特開平10-338526号公報に開示されたパイプ状微粒子酸化鉄の製造方法を用いることによって、パイプ状の酸化鉄を得ることも可能である。

【0053】
上記鉄酸化細菌によって生成されたバイオジナス酸化鉄の構造は、生成に用いる鉄酸化細菌や、生成時の条件によって異なるが、中空繊維状鞘構造、螺旋状、粒状及び糸状の何れかの形状が含まれているものである。例えば、汚泥を採取する浄水場によって、中空繊維状鞘構造のバイオジナス酸化鉄が主に含まれる場合があり、また、粒状のバイオジナス酸化鉄が主に含まれる場合がある。

【0054】
しかし、上記鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄であれば、上記何れかの形状、又は上記何れかの形状を複数含んでいるにかかわらず、本発明の植物保護剤に用いることができる。

【0055】
上記バイオジナス酸化鉄の構成元素としては、鉄及び酸素を主成分とし、ケイ素、リンなどを更に含んだ組成である。また、バイオジナス酸化鉄には、更に、炭素が0.1~5重量%、特に0.2~2重量%の割合で含まれていることがある。この組成は、鉄酸化細菌が存在している環境などによって適宜変化するものである。したがって、2-line ferrihydrite などの合成された酸化鉄には、その組成においてリン及びケイ素が含まれていない点で異なっている。更に、SEMによるサンプル測定結果から、バイオジナス酸化鉄において各構成元素は、均一に分布していることが明らかとなっている。

【0056】
本発明において鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄を使用する場合、当該酸化鉄と水との懸濁液から分離した上澄み液を植物保護剤の成分として使用してもよい。例えば、鉄酸化細菌によって生成された酸化鉄の乾燥標品に水を加えた後、超音波処理してコロイド様溶液を調製し、水に分散できた上澄みだけを植物保護剤の成分として使用する。

【0057】
本発明における酸化鉄は、以下の実施例で示されているように、直接的な抗菌性及び細胞毒性をほとんど認めないため安全な資材であり、また、植物に与えると病原菌の侵入を顕著に阻害できる活性を有している。

【0058】
さらに、本発明における酸化鉄は、以下の実施例で示されているように、植物に複数の経路を介する抵抗性を誘導することができる。このことは、植物に侵入を試みる病原菌を標的にできることを示しており、安全性の面からも高い価値がある。また、このことは、当該酸化鉄が広汎な病原体に対して有効であることを示しており、作用点も多いことから耐性菌の出現も回避可能であると考えられる。

【0059】
また、本発明における酸化鉄は、従来の微生物農薬と異なり、取扱いが簡便で安定的な保存が可能であり、安定的且つ安全に使用できるという特性を有している。

【0060】
本発明の植物保護剤は、上記酸化鉄が奏する効果を勘案すると、植物病害防除組成物と称することもできる。

【0061】
本発明の植物保護剤は、上記酸化鉄以外の成分としては、担体、界面活性剤、湿潤剤、防腐剤、固着剤、安定剤、着色剤、乳化剤、分散剤、浸透剤、増粘剤、消泡剤等を必要に応じて適宜配合することができる。また、本発明の植物保護剤は、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、乳剤、散布剤、粉剤、エアゾール剤、ペースト剤、懸濁剤、液剤等の形態に公知の方法により適宜製剤化されていてもよい。本発明の植物保護剤は、そのまま使用するか、又は希釈剤で所定の濃度に希釈して使用してもよい。本発明の植物保護剤における上記酸化鉄の含有量は、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、好ましくは0.003~99重量%、より好ましくは0.013~95重量%、更に好ましくは0.067~90重量%である。また、本発明の植物保護剤では、上記酸化鉄以外にも、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤等の農薬が併用使用されていてもよい。

【0062】
本発明の植物保護剤の施用方法としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、例えば、植物体への散布処理、土壌表面への散布処理、土壌中への注入処理、植物種子への吹き付け処理、植物種子への塗沫処理、植物種子への浸漬処理等が挙げられる。

【0063】
本発明の植物保護剤の施用量は、対象病害、対象植物、剤型、病害の発生程度、施用方法等に応じて適宜選択することができる。

【0064】
本明細書の植物保護剤が対象とする植物としては、これらに限定されるものではないが、例えば、稲、小麦、大麦、エンドウ、タマネギ、トウモロコシ、ブドウ、リンゴ、ナシ、モモ、カキ、カンキツ、大豆、イチゴ、インゲン、ジャガイモ、キャベツ、レタス、トマト、キュウリ、テンサイ、ホウレンソウ、ナス、スイカ、カボチャ、サトウキビ、ピーマン、テンサイ、サツマイモ、サトイモ、綿、ヒマワリ、チューリップ、キク等が挙げられる。

【0065】
本発明の植物保護剤が対象とする植物病害としては、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、例えば、以下の植物病害を挙げることができる。

【0066】
トマト、キュウリ、豆類、イチゴ、ジャガイモ、キャベツ、ナス、レタス等の灰色かび病(Botrytis cinerea);トマト、キュウリ、豆類、イチゴ、ジャガイモ、ナタネ、キャベツ、ナス、レタス等の菌核病(Sclerotinia sclerotiorum);トマト、キュウリ、豆類、ダイコン、スイカ、ナス、ナタネ、ピーマン、ホウレンソウ、テンサイ等各種野菜の苗立枯病(Rhizoctonia spp.、Pythium spp.、Fusarium spp.、Phythophthora spp.、Sclerotinia sclerotiorum等);ウリ類のべと病(Pseudoperonospora cubensis)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、炭疽病(Colletotrichum lagenarium)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、つる割病(Fusarium oxysporum)、疫病(Phytophthora parasitica、Phytophthora melonis、Phytophthora nicotianae、Phytophthora drechsleri、Phytophthora capsici等);ナタネの黒斑病(Alternaria brassicae)、アブラナ科野菜の黒斑病(Alternaria brassicae等)、白斑病(Cercosporella brassicae)、根朽病(Leptospheria maculans)、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、べと病(Peronospora brassicae);ダイズの紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycinnes)、黒点病(Diaporthe phaseololum)、リゾクトニア根腐病(Rhizoctonia solani)、茎疫病(Phytophthora megasperma)、べと病(Peronospora manshurica)、さび病(Phakopsora pachyrhizi)、炭疽病(Colletotrichum truncatum);トマトの輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Cladosporium fulvam)、疫病(Phytophthora infestans)、萎凋病(Fusarium oxysporum)、根腐病(Pythium myriotylum、Pythium dissotocum)、炭疽病(Colletotrichum phomoides);インゲンの炭疽病(Colletotrichum lindemuthianum);キャベツの株腐病(Rhizoctonia solani)、萎黄病(Fusarium oxysporum);ハクサイの尻腐病(Rhizoctonia solani)、黄化病(Verticillium dahlie);ネギのさび病(Puccinia allii)、黒斑病(Alternaria porri)、白絹病(Sclerotium rolfsii. Sclerotium rolfsii)、白色疫病(Phytophthora porri);ナスのうどんこ病(Sphaerotheca fuliginea等)、すすかび病(Mycovellosiella nattrassii)、疫病(Phytophthora infestans)、褐色腐敗病(Phytophthora capsici);ラッカセイの黒渋病(Mycosphaerella personatum)、褐斑病(Cercospora arachidicola);エンドウのうどんこ病(Erysiphe pisi)、べと病(Peronospora pisi)、褐紋病(Mycosphaerella pinodes);ソラマメのべと病(Peronospora viciae)、疫病(Phytophthora nicotianae);ジャガイモの夏疫病(Alternaria solani)、黒あざ病(Rhizoctonia solani)、疫病(Phytophthora infestans)、銀か病(Spondylocladium atrovirens)、乾腐病(Fusarium oxysporum、Fusarium solani)、粉状そうか病(Spongospora subterranea);イチゴのうどんこ病(Sphaerotheca humuli)、疫病(Phytophthora nicotianae)、炭疽病(Gromerella cingulata)、果実腐敗病(Pythium ultimum Trow var.ultimum);

【0067】
ブドウのべと病(Plasmopora viticola)、さび病(Phakopsora ampelopsidis)、うどんこ病(Uncinula necator)、黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Glomerella cingulata)、黒腐病(Guignardia bidwellii)、つる割病(Phomopsis viticola)、すす点病(Zygophiala jamaicensis)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、芽枯病(Diaporthe medusaea)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、白紋羽病(Rosellinia necatrix);リンゴのうどんこ病(Podosphaera leucotricha)、黒星病(Venturia inaequalis)、斑点落葉病(Alternaria alternata(Apple pathotype))、赤星病(Gymnosporangium yamadae)、モニリア病(Monillia mali)、腐らん病(Valsa ceratosperma)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、炭疽病(Colletotrichum acutatum)、すす点病(Zygophiala jamaicensis)、すす斑病(Gloeodes pomigena)、黒点病(Mycosphaerella pomi)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、白紋羽病(Rosellinia necatrix)、胴枯病(Phomopsis mali、Diaporthe tanakae)、褐斑病(Diplocarpon mali);カキの炭疽病(Gloeosporium kaki)、落葉病(Cercospora kaki; Mycosphaerella nawae)、うどんこ病(Phyllactinia kakikora);モモの黒星病(Cladosporium carpophilum)、フォモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)、疫病(Phytophthora sp.)、炭疽病(Gloeosporium laeticolor);オウトウの炭疽病(Glomerella cingulata)、幼果菌核病(Monilinia kusanoi)、灰星病(Monilinia fructicola);ナシの黒斑病(Alternaria alternata(Japanese pear pathotype))、黒星病(Venturia nashicola)、赤星病(Gymnosporangium haraeanum)、輪紋病(Physalospora piricola)、胴枯病(Diaporthe medusaea、Diaporthe eres)、セイヨウナシの疫病(Phytophthora cactorum);カンキツの黒点病(Diaporthe citri)、緑かび病(Penicillium digitatum)、青かび病(Penicillium italicum)、そうか病(Elsinoe fawcettii);

【0068】
ヒマワリの菌核病(Sclerotinia sclerotiorum);バラの黒星病(Diplocarpon rosae)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa)、べと病(Peronospora sparsa)、疫病(Phytophthora megasperma);キクの褐斑病(Septoria chrysanthemi-indici)、白さび病(Puccinia horiana)、疫病(Phytophthora cactorum);

【0069】
イネのいもち病(Pyricularia oryze)、紋枯病(Thanatephorus cucumeris)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、苗立枯病(Pythium spp.、Fusarium spp.、Trichoderma spp.、Rhizopus spp.、Rhizoctonia solani等)、稲こうじ病(Claviceps virens)、黒穂病(Tilletia barelayana);ムギ類のうどんこ病(Erysiphe graminis f.sp.hordei)、さび病(Puccinia striiformis、Puccinia graminis、Puccinia recondita、Puccinia hordei)、斑葉病(Pyrenophora graminea)、網斑病(Pyrenophora teres)、赤かび病(Fusarium graminearum、Fusarium culmorum、Fusarium avenaceum、Microdochium nivale)、雪腐病(Typhula incarnata、Typhula ishikariensis、Micronectriella nivalis)、裸黒穂病(Ustilago nuda、Ustilago tritici、Ustilago nigra、Ustilago avenae)、なまぐさ黒穂病(Tilletia caries、Tilletia pancicii)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、株腐病(Rhizoctonia cerealis)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、苗立枯病(Fusarium spp.、Pythium spp.、Rhizoctonia spp.、Septoria nodorum、Pyrenophora spp.)、立枯病(Gaeumannomyces graminis)、炭疽病(Colletotrichum gramaminicola)、麦角病(Claviceps purpurea)、斑点病(Cochliobolus sativus);トウモロコシの赤かび病(Fusarium graminearum等)、苗立枯病(Fusarium avenaceum、 Penicillium spp.、 Pythium spp.、Rhizoctonia spp.)、さび病(Puccinia sorghi)、ごま葉枯病(Cochliobolus heterostrophus)、黒穂病(Ustilago maydis)、炭疽病(Colletotrichum gramaminicola)、北方斑点病(Cochliobolus carbonum);

【0070】
本発明の植物保護剤が対象とする植物病害としては、好ましくは灰色かび病(Botrytis cinerea)やエンドウ褐紋病(Mycosphaerella pinodes)である。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例等を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【実施例】
【0072】
製造例1
1 OUMS1-BIOXの作成
OUMS1-BIOXは、OUMS1を以下の培養液(SIGP培地(Sawayama et al., Curr Microbiol (2011) 63: 173-180))を用いて培養することにより作成した。
【実施例】
【0073】
城陽市浄水場より回収した地下水中のICP分析から得た元素組成を指標に、以下の塩類を1Lの純水中に添加した。
Na2SiO3-9H2O 0.2 g
CaCl2-2H2O 0.044 g
MgSO4-7H2O 0.041 g
【実施例】
【0074】
さらにGPGP培地に用いた以下の試薬を加えた。
グルコース 1 g (終濃度0.1%)
ペプトン 1 g (終濃度0.1%)
Na2HPO2-12H2O 0.076 g
KH2PO4-2H2O 0.02 g
HEPES 2.383 g
FeSO4 0.05 mmol
【実施例】
【0075】
これらを順次溶解した後、NaOH溶液でpH7.0に調整し、PTFE製フィルター(0.02μm、ミリポア)で濾過後、99.9%鉄小片(10 x 10 x 1.2 mm、高純度化学)を入れ、OUMS1を70 rpm、20℃で7日間回転培養した。鉄小片を取り出した後、表面に形成されたバイオマットを60℃で24時間乾燥して、OUMS1-BIOXを得た。
【実施例】
【0076】
2 OUMS1-BIOX分散液の調製
上で得られたOUMS1-BIOXの乾燥標品2 mgを秤量し、1 mlの蒸留水を加えた後、20分間超音波処理してコロイド様溶液を調製した。これら一連の操作でも、一部沈殿が認められたので、以下の試験例では水に分散できた上澄みだけを用いた。
【実施例】
【0077】
試験例1(OUMS1-BIOXの抗菌性/細胞毒性の検定)
植物保護への応用の可能性を探る目的で、灰色かび病菌ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)やエンドウ褐紋病菌ミコスファエレラ・ピノデス(Mycosphaerella pinodes)の形態形成(発芽や侵入行動)に及ぼす影響について調べた。ボトリティス・シネレアは、花卉及び蔬菜の栽培や流通及び保存の過程で発生する多犯性の重要植物病原菌で、薬剤耐性も発達し易く、世界中で大きい被害を及ぼしている。また、エンドウ褐紋病菌は、国際的なエンドウの最重要病害で、これに対する完全な抵抗性品種は見出されていない。
【実施例】
【0078】
まず、スライドグラス上で、両菌の発芽に及ぼす影響を調べた。スライドグラス上に5μlのOUMS1-BIOX (0、0.08 mg/ml、0.40 mg/ml、2 mg/ml)を置き、その上から、10μlの灰色かび病菌(系統R02)又は褐紋病菌の分生胞子懸濁液(105/ml)を加えて、23℃16時間、湿室に静置した。接種16時間後の光学顕微鏡(オリンパスIX70-22FL/PH)での観察像を図1、2に、灰色かび病菌とエンドウ褐紋病菌の発芽率(発芽管を形成した胞子数÷全胞子数×100)の結果を図3に示す。
【実施例】
【0079】
発芽率を調べた結果、0~667μg/mlのいずれの処理区においてもほぼ100%で、処理区間に有意差は認められなかった(図3)。この結果から、OUMS1-BIOXには、直接的な抗菌性/細胞毒性はほとんど認められず、極めて安全な資材と考えられる。
【実施例】
【0080】
試験例2(病原菌の侵入行動に及ぼす作用)
タマネギのモデル表皮を用いて、灰色かび病菌の発芽、付着器形成、侵入行動(穿孔)に対する影響を調べた。
【実施例】
【0081】
1 cm2のタマネギ内表皮を剥離し、70%エタノールで低分子抗菌性物質等を除いた。水で洗浄後、スライドグラス上に置いた100μlの蒸留水上に浮かべ、これに5μlの0、0.08、0.4、2 mg/mlのOUMS1-BIOX液を置き、同じ場所に灰色かび病菌の分生胞子(PDA培地上でBLランプ下、23℃1ヶ月培養)10μl (105胞子/ml)を接種した。湿室条件下23℃で18時間静置後、コットンブルーで染色し、光学顕微鏡下に観察した。光学顕微鏡の観察像を図4に、タマネギ表皮細胞への灰色かび病菌の侵入率(侵入に成功した胞子数÷付着器を形成した胞子数×100)の結果を図5に示す。
【実施例】
【0082】
観察の結果、スライドグラス上での実験と同様に、各処理区間において発芽率に有意差は認められなかった。水処理対照区の灰色かび病菌ボトリティス・シネレア分生胞子は発芽直後に付着器を形成し、直ちに表皮細胞に侵入した。一方、27μg/mlのOUMS1-BIOX存在下では、発芽して直ちに付着器は形成されたものの、侵入率は有意に抑制され(図5)、侵入菌糸長も水処理対照区と比較して短いことが明らかになった(図4)。さらに、133μg/mlの処理では、発芽率は高く、発芽管も顕著に伸長し、付着器も発芽管上に形成されたが、侵入は全く認められなかった(図4)。このように、OUMS1-BIOXは顕著な侵入阻害活性を示すことが明らかとなった。
【実施例】
【0083】
試験例3(接種実験)
OUMS1-BIOX処理エンドウ葉における褐紋病菌の病斑形成について調べた。
【実施例】
【0084】
播種後30日目のエンドウ展開葉(第2~第5葉)を切取り、これに0、0.08、0.4、2 mg/mlに調製したOUMS1-BIOXを5μl添加し、直ちに10μlのエンドウ褐紋病菌(50万胞子/ml)を接種し、接種30時間後の感染(病斑形成)に及ぼす作用を調べた。接種30時間目にトリパンブルーで染色した結果を図6に示す。
【実施例】
【0085】
結果としては、濃度依存的に病斑形成を抑制し、667μg/ml区では全く病斑が形成されなかった(図6)。顕微鏡観察の結果、OUMS1-BIOXの高濃度処理区では、付着器は形成されるものの、細胞質の染色性が失われた(細胞内容物が吐出した)ことから、侵入菌糸の細胞膜に決定的なダメージを与える可能性が推察された。
【実施例】
【0086】
試験例4(OUMS1-BIOXによる防御関連遺伝子発現の誘導)
上記の様にOUMS1-BIOXは、病原菌の侵入行動を顕著に抑制する活性が認められたが、植物に対する効果は不明であった。そこで、OUMS1-BIOXを処理して3時間後のシロイヌナズナCol-0における防御関連遺伝子発現についてRT-PCR法によって解析した。播種後6週齢の葉に2 mg/mlに調製したOUMS1-BIOXを40μl添加し、3時間後に液体窒素で固定した後、トリゾール法(TRIzol 試薬;Life Technologies)で全RNAを抽出した。RNA (500 ng)にOligo-dT プライマー、Nuclease free waterを加えた後に70℃10分→直ぐに氷上で急冷して熱変性を行った後に逆転写酵素(タカラ)、逆転写用バッファー、dNTPを加えて逆転写反応(42℃、60分)を行いcDNAを得た。得られたcDNAを用い、表1に記載したプライマーを用いてRT-PCR(Promega、GoTaq Green Master Mix)を行い、各遺伝子の発現量を調べた。各遺伝子の発現量の結果を図7に示す。
【実施例】
【0087】
この結果、低分子抗菌性物質(ファイトアレキシン)の生合成に関わるPAD3、サリチル酸情報伝達系下流のPR1及び活性酸素生成系(消去系)に関わるGSTU11の転写活性が顕著に上昇することが判明した(図7)。このように、OUMS1-BIOXは植物に抵抗性を誘導する活性も有することが判明した。
【実施例】
【0088】
【表1】
JP2014148396A1_000002t.gif
【実施例】
【0089】
試験例5(天然BIOXの病原菌の侵入行動に及ぼす作用)
レプトスリックス・コロディニ(L. cholodnii) OUMS1が生成するBIOXには病原菌胞子からの侵入を阻害する作用があることが判明したが、この効果が自然界に生息する酸化鉄生成菌由来の天然のBIOXにも見られるのかについて、岡山大学農学部内に設置された浄水タンク及び京都府城陽市内の浄水場から採取したBIOXを使って調べることとした。それぞれ、Ou-Biox及び京都Bioxと表記する。なお、使用したそれぞれの天然BIOXは特許文献2及び3の方法に従って調製した。
【実施例】
【0090】
タマネギのモデル表皮上に褐紋病菌の胞子懸濁液5μl置き、これに等量の水、Ou-Biox又は京都Biox液を加えて、湿室条件下23℃で27時間静置後、コットンブルーで染色し、光学顕微鏡下に観察した。タマネギ表皮細胞への褐紋病菌の侵入率(侵入に成功した胞子数÷付着器を形成した胞子数×100)の結果を図8に示す。
【実施例】
【0091】
観察の結果、水処理対照区の褐紋病菌ミコスファエレラ・ピノデス胞子は発芽直後に付着器を形成し、直ちに表皮細胞に侵入した。しかし、5 mg/mlのOu-BIOX又は京都Bioxの存在下では、発芽して直ちに付着器は形成されたものの、侵入率は有意に抑制された。
【実施例】
【0092】
類似の効果は、黒斑病菌アルタナリナ・アルタナータ(Alternaria alternata)分生胞子に対しても見られ、自然界に生息する微生物からの生成物(天然BIOX)にも侵入阻害の効果があることが明らかとなった(図9)。
【実施例】
【0093】
実施例1(圃場での散布)
OUMS1-BIOX又は岡山大学農学部内浄水タンクから採取したBIOX 10 gを10Lの水で懸濁し十分に混合する。これを、噴霧器に入れ、作物:コマツナ(播種後、14日後)に対して以下の条件で散布を行う。結果として、優れた灰色かび病や炭疽病の抑制効果が得られる。
散布水量:1L/25 m2相当
実施例2(圃場での散布)
OUMS1-BIOX又は岡山大学農学部内浄水タンクから採取したBIOX 10 gを10Lの水で懸濁し十分に混合する。これを、噴霧器に入れ、作物:エンドウ(播種後、28日後)に対して以下の条件で散布を行う。結果として、優れた褐紋病の抑制効果が得られる。
散布水量:1L/25 m2相当
実施例3(圃場での散布)
OUMS1-BIOX又は岡山大学農学部内浄水タンクから採取したBIOX 10 gを10Lの水で懸濁し十分に混合する。これを、噴霧器に入れ、作物:キュウリ(播種後、28日後)に対して以下の条件で散布を行う。結果として、優れた炭疽病の抑制効果が得られる。
散布水量:1L/25 m2相当
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図9】
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