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明細書 :疼痛治療薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月23日(2017.2.23)
発明の名称または考案の名称 疼痛治療薬
国際特許分類 A61K  31/454       (2006.01)
A61P  25/04        (2006.01)
FI A61K 31/454
A61P 25/04
国際予備審査の請求
全頁数 17
出願番号 特願2015-519850 (P2015-519850)
国際出願番号 PCT/JP2014/063850
国際公開番号 WO2014/192698
国際出願日 平成26年5月26日(2014.5.26)
国際公開日 平成26年12月4日(2014.12.4)
優先権出願番号 2013110899
優先日 平成25年5月27日(2013.5.27)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】十川 千春
【氏名】十川 紀夫
【氏名】秦泉寺 紋子
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001896、【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA08
要約 本発明は、1-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)プロピル]-4-(2-メトキシフェニル)-4-ピペリジノールまたはその薬学的に許容され得る塩を含むことを特徴とする疼痛治療薬に関し、これにより単剤でも充分な治療効果を得ることができる副作用の少ない疼痛治療薬、特に神経因性疼痛治療薬、またはアロデニアもしくは痛覚過敏の治療薬を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
1-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)プロピル]-4-(2-メトキシフェニル)-4-ピペリジノールまたはその薬学的に許容され得る塩を含むことを特徴とする疼痛治療薬。
【請求項2】
疼痛が神経因性疼痛またはアロデニアもしくは痛覚過敏であることを特徴とする請求項1記載の治療薬。
【請求項3】
神経因性疼痛が、遷延性術後疼痛、幻肢痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、多発性神経障害に伴う疼痛、帯状疱疹後痛、反射性交感神経萎縮症に伴う疼痛、三叉神経痛、舌咽神経痛、またはアロデニアもしくは痛覚過敏であることを特徴とする請求項2記載の治療薬。
【請求項4】
1-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)プロピル]-4-(2-メトキシフェニル)-4-ピペリジノールの投与量が、1日当たり0.2μg/kg以上、100mg/kg以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の治療薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、1-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)プロピル]-4-(2-メトキシフェニル)-4-ピペリジノールを有効成分とする疼痛治療薬に関し、より詳細には神経因性疼痛治療薬またはアロデニアもしくは痛覚過敏の治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
神経因性疼痛(Neuropathic Pain: NP)は、2008年に国際疼痛学会(IASP)において「体性神経を司る神経系の損傷または疾患に伴って生じる慢性疼痛」と定義された。さらにNPは、発症の特徴にもとづき、自発性NPと誘発性NPに分類される。自発性NPにおける疼痛症状の発症は、末梢神経の刺激によらないが、誘発性NPにおける疼痛症状は、外部からの刺激によって誘発され、軽微な触圧覚や一般的な冷熱刺激といった末梢自然刺激に対する明らかな異痛症(アロデニア)や日常の疼痛刺激に対する過敏な反応である痛覚過敏が主な症状である。
【0003】
NPの発症機序は非常に複雑であり、完全な解明には至っておらず、現在のところ、末梢および中枢神経系における様々な要素がNPの発症メカニズムに関わっていると考えられている。臨床においては、NPの発症機序にもとづいて薬物を選択することによって疼痛を抑制することが主要な手段となっており、これまでにも多くの薬剤の開発が行われてきた。
【0004】
国際疼痛学会が2007年に提示した指針を参考に、日本での承認ならびに使用可能状況を鑑み日本神経治療学会から示された治療指針によると、第一選択薬として、三環系抗うつ薬(TCA)、セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI)、カルシウムチャネルα2δサブユニット結合薬、局所麻酔薬(リドカイン外用薬)、第二選択薬として、オピオイド系鎮痛薬、第三選択薬として、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、抗不整脈薬、カプサイシンといった化合物が挙げられている。
【0005】
ここで、神経因性疼痛治療薬の有効性の指標としては、NNT(疼痛が50%軽減する患者1人得るために何人の患者に薬剤を投与する必要があるか、という数値)が用いられているが、末梢性神経因性疼痛に対し、三環系抗うつ薬ではおおよそ3.1、カルシウムチャネルα2δサブユニット結合薬で4.7と報告されており(非特許文献1)、患者の苦痛を充分に軽減できているとは言い難いのが現状である。
【0006】
現在もっとも有効とされている三環系抗うつ薬は、三級アミン系のアミトリプチリンやイミプラミンなどのノルアドレナリンおよびセロトニンの両方の再取込み阻害作用を有する化合物であるが、これらは、便秘や口渇といった抗コリン作用、眠気(抗ヒスタミン作用)や起立性低血圧(抗アドレナリン作用)といった様々な受容体阻害作用による副作用が出現しやすいため、ノルトリプチリンなどの二級アミン系の三環系抗うつ薬が推奨される。しかし、依然として三環系抗うつ薬の治療有効域は狭く、その副作用のため薬剤の有効量まで増量できないことが多い。
【0007】
そこで、三環系抗うつ薬の副作用発現に対する問題を解決するために、セロトニンまたはノルアドレナリントランスポーター選択的阻害薬SSRIやSNRIの使用が試みられているが、これらはNNT値が大きく(SSRIはおおよそ6.8、SNRIはおおよそ5.5)、その鎮痛効果が劣るという欠点がある。以上のように、神経因性疼痛治療の現状では、単剤では充分な治療効果を得ることができず、多剤併用や他の療法と組み合わせた治療が一般的である。
【0008】
一方、GABAトランスポーター阻害剤としては、GAT-1選択的阻害剤について鎮痛作用が報告されているが、作用持続時間は比較的長いが、作用発現には高投与量を必要とし、作用発現までに時間がかかるという問題がある。このため副作用が懸念され、臨床応用は難しい(非特許文献2)。その他のサブタイプ選択的阻害剤、とりわけBGT-1選択的阻害剤については、鎮痛作用に関する報告はなされていない。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】Finnerup NB, et al., Pain, 118, (2005), p.289-305
【非特許文献2】Neuroscience Letters, 494, (2011), p.6-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、単剤でも充分な治療効果を得ることができる副作用の少ない疼痛治療薬、特に神経因性疼痛治療薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、驚くべきことに、GABAトランスポーターBGT-1の選択的阻害剤であり抗痙攣作用を有する化合物として知られる1-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)プロピル]-4-(2-メトキシフェニル)-4-ピペリジノール(以下、NNC 05-2090と略称する場合もある)が、低用量で有意な疼痛治療効果をもたらすことを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、1-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)プロピル]-4-(2-メトキシフェニル)-4-ピペリジノールまたはその薬学的に許容され得る塩を含むことを特徴とする疼痛治療薬に関する。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、疼痛が神経因性疼痛またはアロデニアもしくは痛覚過敏である。
【0014】
本発明のより好ましい態様においては、神経因性疼痛が、遷延性術後疼痛、幻肢痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、多発性神経障害に伴う疼痛、帯状疱疹後痛、反射性交感神経萎縮症に伴う疼痛、三叉神経痛、舌咽神経痛、またはアロデニアもしくは痛覚過敏である。
【0015】
本発明の疼痛治療薬においては、1-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)プロピル]-4-(2-メトキシフェニル)-4-ピペリジノールの投与量が、1日当たり0.2μg/kg以上、100mg/kg以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の疼痛治療薬の有効成分であるNNC 05-2090は、従来の神経因性疼痛に対して鎮痛効果が強いとされる三環系抗うつ薬よりも低用量で十分な抗アロデニア効果を奏する。このような低用量での効果は、副作用のない安全性の高い薬剤を提供できる点でも非常に優れたものである。つまり、本発明によれば、単剤により低用量で安全に鎮痛作用をもたらすことができる。とりわけ本発明は、現状において有望な適用薬が見出されていないアロデニアに対し、優れた抗アロデニア効果を奏するものである。
【0017】
また、本発明の疼痛治療薬は、同様の従来の神経因性疼痛適用薬と比較しても、作用発現までの時間が短く、作用持続時間も比較的長い有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】NNC 05-2090の脊髄腔投与による抗アロデニア効果を、アデロニアスコアを用いて評価した結果を示すグラフである。
【図2】NNC 05-2090の脊髄腔投与による抗アロデニア効果を、疼痛閾値を用いて評価した結果を示すグラフである。
【図3】SKF 89976Aの脊髄腔投与による抗アロデニア効果を、疼痛閾値を用いて評価した結果を示すグラフである。
【図4】NNC 05-2090の腹腔内投与による抗アロデニア効果を、疼痛閾値を用いて評価した結果を示すグラフである。
【図5】アミトリプチリンの腹腔内投与による抗アロデニア効果を、疼痛閾値を用いて評価した結果を示すグラフである。
【図6】NNC 05-2090およびアミトリプチリンの強制水泳試験の結果を示すグラフである。
【図7】NNC 05-2090およびアミトリプチリンの小腸輸送能試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の疼痛治療薬は、1-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)プロピル]-4-(2-メトキシフェニル)-4-ピペリジノールを有効成分として含有することを特徴とする。1-[3-(9H-カルバゾール-9-イル)プロピル]-4-(2-メトキシフェニル)-4-ピペリジノールは、次のような構造を有し、選択的BGT-1阻害剤としてNNC 05-2090の名称で知られているものである。また、NNC 05-2090は塩酸塩としてトクリス・バイオサイエンス社(Tocris Bioscience)などから市販されている。
【化1】
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【0020】
本発明においては、NNC 05-2090は、薬学的に許容され得る種々の塩としても使用することができる。薬学的に許容され得る種々の塩としては、塩酸塩、臭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩などのような無機酸付加塩および有機酸付加塩、または本技術分野において慣用されている薬学的に許容され得る塩などが挙げられる。

【0021】
GABAトランスポーターについては、4つのサブタイプが同定されており、一般的にはヒトのサブタイプについての、それぞれGAT-1、BGT-1、GAT-2、GAT-3との命名が認知されており、本明細書においてもこの命名法を採用する。マウスにおけるサブタイプでは命名に違いがあり、前述のGAT-1、BGT-1、GAT-2およびGAT-3が、それぞれマウスのGAT1、GAT2、GAT3およびGAT4に対応しているとされる(日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)2006年、127巻、279~287頁など参照)。

【0022】
このなかで、BGT-1については、その発現が必ずしもGABA作動性ニューロン近傍ではないことから、GABA作動性ニューロンの神経伝達の終結というよりは、シナプスから流出してきたGABAの除去かあるいは浸透圧制御に関与している可能性が高いとされている。このため、BGT-1に対する選択的阻害剤であるNNC 05-2090が疼痛治療薬として種々の既存の薬剤と比較しても低用量で優れた治療効果を有することは非常に驚くべきことである。

【0023】
本発明においては、このNNC 05-2090が、選択的BGT-1阻害作用に加えて、セロトニンおよびノルアドレナリン再取込み阻害作用を複合的に有することを見出した。NNC 05-2090の奏する低用量での単剤による鎮痛効果は、この複合的な阻害作用によるものと考えられ、単独のトランスポーターを標的とする既存の薬物とは異なる相加的あるいは相乗的な効果が得られる。

【0024】
本発明の疼痛治療薬は、種々の疼痛、とりわけ神経因性疼痛またはアロデニアもしくは痛覚過敏に効果を有する。

【0025】
疼痛の分類には様々な方法があり、その1つが原因による分類であり、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、心因性疼痛に分けられる。その他には、たとえば慢性痛と急性痛といった分類もある。そして、神経因性疼痛とは、神経障害が原因となり起こる痛みの総称である。

【0026】
また、アロデニアや痛覚過敏は、疼痛症状の1つであり、神経障害のみが原因となるものではない。したがって、本発明においては、アロデニアおよび痛覚過敏は、神経因性のもののみならず、その他の原因により生じる症状をも包含するものとする。

【0027】
神経因性疼痛としては、神経系の一次的損傷あるいは機能的障害によって発症する痛みを意味し、具体的には、遷延性術後疼痛、幻肢痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、多発性神経障害(糖尿病性など代謝性、あるいは、感染性、遺伝性、炎症性、癌性、傍腫瘍性によるものなど)に伴う疼痛、帯状疱疹後痛、反射性交感神経萎縮症に伴う疼痛、三叉神経痛、舌咽神経痛などが挙げられ、その症状としては、持続的な自発痛やアロデニア、痛覚過敏が特徴的である。本発明の疼痛治療薬は中でも、神経因性のアロデニアもしくは痛覚過敏に対してとりわけ優れた治療効果を示す。

【0028】
本発明のNNC 05-2090を有効成分とする疼痛治療薬は、選択する投与形態にあわせて、経口製剤、非経口製剤のいずれの製剤形態をも用いることができ、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体、その他の製剤助剤などを用いて常法にしたがって製造することができる。

【0029】
本発明の製剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、散剤、丸剤、顆粒剤、糖衣剤、トローチ剤、吸入剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、注射剤、貼付剤、パッチ剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。

【0030】
投与方法は、経口投与、経皮投与、経粘膜投与、静脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、神経周囲投与、硬膜外投与、硬膜下腔内投与、脳室内投与または吸入などの投与経路が使用でき、即時の効果が得られる点からは髄腔内投与、神経周囲投与、硬膜外投与、硬膜下腔内投与、脳室内投与などが好ましく、持続的な効果が得られる点からは静脈内投与や腹腔内投与が好ましく、臨床応用が広がる点からは経口投与が好ましい。

【0031】
本発明において使用できる薬学的に許容される賦形剤など製剤助剤としては、一般的に製剤学の分野において使用されているものを使用することができる。具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトール、白糖、ソルビトール、エリスリトール、キシリトールなどの糖類、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース類、デンプン類、ペクチン、寒天、タルク、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース、モノステアリン酸グリセリン、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、硬化ひまし油、水などがあげられる。

【0032】
本発明の疼痛治療薬の投与量は特に限定されるものではないが、例えば1日当たりの有効成分NNC 05-2090の量で0.2μg/kg以上、100mg/kg以下の範囲で、疼痛の種類や程度、患者の年齢、剤形、投与経路など種々の条件によって適宜選択されるものである。例えば、経口投与の場合、有効成分NNC 05-2090の1日当たりの量で、下限は好ましくは50μg/kg、より好ましくは100μg、最も好ましくは200μgであり、50μg/kgより少ないと十分な効果が得られない恐れがあり、また上限は好ましくは100mg/kg、より好ましくは10mg/kg、最も好ましくは5mg/kgであり、100mg/kgより多いと、副作用が現れる恐れがある。髄腔内投与、神経周囲投与、硬膜外投与、硬膜下腔内投与、脳室内投与などの場合、有効成分NNC 05-2090の1日当たりの量で、下限は好ましくは0.2μg/kg、より好ましくは0.7μg/kg、最も好ましくは1μg/kgであり、0.2μg/kgより少ないと十分な効果が得られない恐れがあり、また上限は、好ましくは200μg/kg、より好ましくは10μg/kg、最も好ましくは5μg/kgであり、200μg/kgより多いと副作用が現れる恐れがある。静脈内投与や腹腔内投与の場合、有効成分NNC 05-2090の1日当たりの量で、下限は好ましくは10μg/kg、より好ましくは50μg/kg、最も好ましくは100μg/kgであり、10μg/kgより少ないと十分な効果が得られない恐れがあり、また上限は、好ましくは10mg/kg、より好ましくは1mg/kg、最も好ましくは500μg/kgであり、10mg/kg以上であると副作用が現れる恐れがある。

【0033】
従来神経因性疼痛に対して鎮痛効果が強いとされる代表的なTCAであるアミトリプチリンでは、副作用の点から1日投与量が10~75mgと制限されており、この用量では充分な鎮痛効果が得られていない。しかしながら、NNC 05-2090では、アミトリプチリンと比較して低用量で十分な鎮痛効果を発揮するものである。NNC 05-2090については、抗痙攣作用が知られているが、抗痙攣作用を得るための用量は、33mg/kgであり、本願発明において見出された抗アロデニア作用は、これよりも低用量で示されているため、特に安全性が高いものである。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において使用した試薬はつぎのとおりである。
<試薬>
NNC 05-2090塩酸塩(トクリス・バイオサイエンス社)
SKF 89976A(トクリス・バイオサイエンス社)
アミトリプチリン(シグマ-アルドリッチ社)
【実施例】
【0035】
実施例1:各種トランスポーターに対する阻害作用
各トランスポーターcDNA(mGAT1、mGAT2、mGAT3、mBGT1、rSERT、rNETおよびrDAT)を安定発現させたチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞を、Gerile et al., International Journal of Molecular Sciences, 13, 2578-2589, 2012を参考にして作製した。このCHO細胞を用い、各試験試薬を0.1~300μM作用させた。その後、CHO細胞をクレブス・リンガーHEPES緩衝溶液(KRH:125mM NaCl、5.2mM KCl、1.2mM CaCl2、1.4mM MgSO4、1.2mM KH2PO4、5mM グルコース、20mM HEPES、pH7.3)で3回洗浄し、[3H]ラベルした各基質を37℃、10分間反応させた。反応後は過剰な[3H]ラベル基質を除き、氷冷KRHで3回洗浄して完全に反応を止めた。細胞を1M NaOHにて溶解させて回収し、1M HClで中和した後、細胞内へ残った放射活性を液体シンチレーションカウンターにて測定した。IC50値は、阻害曲線を作成し、Prism5(Graphpad Software)を用いて算出した。
【実施例】
【0036】
結果を表1に示す。NNC 05-2090およびSKF 89976AのGATサブタイプに対する阻害作用(IC50)は、それぞれ文献値とよく一致していた。また、NNC 05-2090は、BGT-1に対する阻害とほぼ同程度にSERTに対しても強い阻害作用を示した。
【実施例】
【0037】
【表1】
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【実施例】
【0038】
これらの結果から、NNC 05-2090は、これまでBGT-1選択的阻害剤として認識されてきたが、BGT-1と同程度にSERT(セロトニントランスポーター)、NET(ノルアドレナリントランスポーター)、DAT(ドパミントランスポーター)を阻害することがわかり、モノアミントランスポーターに対する複合的な阻害作用を有することが証明された。
【実施例】
【0039】
実施例2:神経因性疼痛への作用
神経因性疼痛モデルとしては、最も一般的に使用されている坐骨神経部分結紮モデルを使用した。まず、マウス(ddY系雄性マウス4~5週齢:体重25~35g)をネンブタール60mg/kgにて麻酔後、片側坐骨神経を1/2~1/3結紮し、結紮2週間後にアロデニア反応を確認した。対照群には、偽手術を施した。
【実施例】
【0040】
NNC 05-2090塩酸塩をDMSOに溶解し(40mg/ml)、生理的食塩水で段階希釈して用いた。SKF 89976Aは、DMSOに溶解し(30mg/ml)、生理食塩水で段階希釈して用いた。アミトリプチリンは1mg/mlの濃度で生理的食塩水に溶解して用いた。各試薬を脊髄腔内に投与し、薬剤投与直前および投与後のアロデニア反応を、薬剤投与時を0として薬剤投与後28時間まで経時的に測定した。NNC 05-2090の投与群1~3の薬剤投与量は、投与群1:15pmol(n=6)、投与群2:50pmol(n=6)および投与群3:150pmol(n=7)であり、SKF 89976Aの比較投与群1~4の薬剤投与量は、比較投与群1:1.5pmol(n=6)、比較投与群2:15pmol(n=7)、比較投与群3:150pmol(n=10)および比較投与群4:500pmol(n=7)とした。また別に、NNC 05-2090(100μg/kg)を神経結紮群および対照群に腹腔内投与(それぞれ投与群4:n=8および対照群1:n=7)し、アミトリプチリン(10mg/kg)を神経結紮群および対照群に腹腔内投与(それぞれ比較投与群5:n=5および対照群2:n=4)した。薬剤投与直前および投与後のアロデニア反応を、薬剤投与時を0として薬剤投与後24時間まで経時的に測定した。
【実施例】
【0041】
<機械的アロデニアの評価>
神経因性疼痛に対する鎮痛効果の指標として、機械的アロデニアを(1)アロデニアスコアまたは(2)疼痛閾値を用いて評価した。
【実施例】
【0042】
(1)アロデニアスコア
絵筆で右側後肢をなでたときの反応を以下のとおりスコア化し、アロデニアスコアとして用いた。
0:無反応
1:足を上げる(触圧部位から逃れる)
2:足を舐める・噛む、足を激しく振る
【実施例】
【0043】
(2)疼痛閾値
所定の力を与えることができるいくつかのフィラメント(von Frey フィラメント)を結紮側後肢足底にあて、逃避反応を起こす閾値(マウスがフィラメントに反応する際のフィラメント荷重グラム数)を測定し、評価した。
【実施例】
【0044】
結果を図1~5に示す。NNC 05-2090は、脊髄腔内投与では、15pmol(投与群1)から用量依存的にアロデニアスコアを低下させ(図1)、さらに、疼痛閾値も用量依存的に上昇させ(図2)、150pmol(投与群3)でほぼ完全に疼痛反応が抑えられた(図1および2)。これに対し、代表的なGAT-1選択的阻害剤であるSKF 89976Aでは、NNC 05-2090と同用量(比較投与群2および3)あるいはそれ以上の用量(比較投与群4)においてもNNC 05-2090と同程度の十分な抗アロデニア効果は示さなかった(図3)。腹腔内投与では、NNC 05-2090は、2時間後から24時間後まで持続的な抗アロデニア効果が見られた(図4)。一方、代表的な抗アロデニア薬であるアミトリプチリンは、NNC 05-2090の100倍量使用しても抗アロデニア効果は観察されなかった(図5)。
【実施例】
【0045】
これらの結果から、NNC 05-2090は、既存薬と比較して低用量で十分な疼痛治療効果を有することがわかった。腹腔内投与においても、100μg/kgで十分な効果が得られたことは、NNC 05-2090の抗痙攣作用が33mg/kgであらわれるのに対して、非常に驚くべきものであり、副作用のない安全な疼痛治療薬として非常に有効である。
【実施例】
【0046】
実施例3:抗うつ作用
強制水泳試験は、Porsoltらにより提案された方法で、現在最も汎用されている抗うつ作用評価法である。強制水泳下における無動状態は、中枢のカテコールアミン作動活性の低下に基づくと報告されており、薬剤の抗うつ作用を評価することによって、中枢におけるカテコールアミン作動性活性の変化を検証する。
【実施例】
【0047】
マウス(ddY系雄性マウス7~8週齢:体重35~40g)を試験前日に23~24℃の水浴中で予備水泳(10分間)させた。24時間後、NNC 05-2090を0.5容量%のDMSOに溶解し、100μg/kg、2mg/kgの用量にて腹腔内投与(それぞれ投与群5および6:n=7)し、1時間後に本水泳(4分間)に供した。本水泳4分間の無動時間を算出した。対照群3として、0.5容量%DMSOを腹腔内投与(10mg/kg)したマウスについて無動時間を比較した(n=5)。
【実施例】
【0048】
また、すでに抗うつ効果の報告されているアミトリプチリンについても同様に強制水泳試験を行った。アミトリプチリン20mg/kgの用量にて腹腔内投与(比較投与群6:n=12)し、40分後に本水泳(4分間)に供した。対照群4として、生理的食塩水を腹腔内投与(10ml/kg)したマウスについて無動時間を比較した(n=5)。
【実施例】
【0049】
結果を図6に示す。NNC 05-2090は、抗アロデニア効果を示す用量である100μg/kgの投与群5では無動時間は対照群3と比較して差がなかったが、2mg/kgの投与群6では無動時間が有意に減少した。アミトリプチリン20mg/kgの比較投与群6でも同様に無動時間は対照群4と比較して有意に減少した。
【実施例】
【0050】
この結果から、NNC 05-2090は2mg/kgの投与群6において、強制水泳下での無動時間が有意に減少したことから、NNC 05-2090は2mg/kgの用量で中枢におけるカテコールアミン活性の上昇による抗うつ作用を示すことがわかった。この作用は、先の実施例1で証明されたNNC 05-2090の複合的なモノアミントランスポーター阻害作用に起因すると考えられ、行動薬理学的解析においてもNNC 05-2090の複合的なモノアミントランスポーター阻害作用が証明された。
【実施例】
【0051】
実施例4:小腸消化管運動への影響
アミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬は、抗コリン作用による便秘、唾液分泌抑制などの副作用が発現することが知られている。このため、NNC 05-2090について、消化管運動に対して影響を及ぼすかどうか、マウス小腸輸送能実験によって検討した。
【実施例】
【0052】
マウス(ddY系雄性マウス6~7週齢:体重30~40g)を4~6時間絶食させ、NNC 05-2090を2mg/kg(投与群7:n=9)、100μg/kg(投与群8:n=8)の用量にて腹腔内投与した。また、対照として0.5%DMSOを腹腔内投与(10ml/kg)した(対照群5:n=9)。投与から40分経過後、炭末(12%活性炭末を懸濁させた2%アラビアゴム水溶液)を0.2ml経口投与した。炭末投与の20分後にエーテル麻酔下、瀉血致死させて全小腸を摘出した。また、アミトリプチリンについては、10mg/kgの用量にて腹腔内投与し(比較投与群7:n=8)、30分後に炭末を0.2ml経口投与し、炭末投与の20分後に上記と同様にして全小腸を摘出した。ここで、NNC 05-2090は、0.5%DMSOに、10μg/mlおよび200μg/mlでそれぞれ溶解したものを10ml/kgでマウスに投与し、アミトリプチリンは、0.5%DMSOに1mg/mlで溶解したものを10ml/kgでマウスに投与した。
【実施例】
【0053】
<小腸輸送能の評価>
摘出した小腸全長および幽門部から炭末の先端までの距離をそれぞれ測定し、炭末移動率(%)=(炭末の幽門部からの移動距離)/(全小腸の長さ)×100を算出し、小腸輸送能として評価した。
【実施例】
【0054】
結果を図7に示す。統計学的な処理は、一元配置分散分析およびダネットの多重比較検定を用いて行った。NNC 05-2090は、100μg/kgの投与群7および2mg/kgの投与群8のいずれにおいても対照群5と比べて小腸輸送能に差が見られなかった。一方、アミトリプチリン10mg/kgの比較投与群7では、実施例2において抗アデロニア効果が得られなかったような低用量であっても、小腸輸送能は有意に減少していた(P<0.01)。
【実施例】
【0055】
NNC 05-2090は、100μg/kgで十分な鎮痛効果が見られる。したがって、これらの結果より、NNC 05-2090は、鎮痛に用いられる用量およびその20倍の用量まで、三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンを用いた場合に見られるような便秘の副作用は発現しないと考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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