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明細書 :抗てんかん薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月23日(2017.2.23)
発明の名称または考案の名称 抗てんかん薬
国際特許分類 A61K  31/4458      (2006.01)
A61P  25/08        (2006.01)
FI A61K 31/4458
A61P 25/08
国際予備審査の請求
全頁数 14
出願番号 特願2015-522706 (P2015-522706)
国際出願番号 PCT/JP2014/064120
国際公開番号 WO2014/203696
国際出願日 平成26年5月28日(2014.5.28)
国際公開日 平成26年12月24日(2014.12.24)
優先権出願番号 2013129364
優先日 平成25年6月20日(2013.6.20)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】大内田 守
【氏名】大守 伊織
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA06
要約 従来の抗てんかん薬とは作用機序の異なるてんかん発作の予防及び/又は治療のための新たな抗てんかん薬を提供する。メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む、抗てんかん薬による。
特許請求の範囲 【請求項1】
メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む、てんかん発作の予防及び/又は治療のための抗てんかん薬。
【請求項2】
てんかんが、変異型SCN1A遺伝子によるてんかんである、請求項1に記載の抗てんかん薬。
【請求項3】
てんかん発作が、けいれん発作である、請求項1又は2に記載の抗てんかん薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、てんかん患者の発作治療に関するものであり、より詳細には、てんかん発作の予防及び/又は治療に使用し得る抗てんかん薬及びその使用に関する。
【0002】
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願、特願2013-129364号優先権を請求する。
【背景技術】
【0003】
てんかん(epilepsy)の罹患率は1000人当たり約8~10人で、神経疾患の中で頻度が高い疾患である。てんかんの主な症状として、けいれん(強直性又は間代性などの不随意運動)や、けいれんを伴わない欠神発作(意識消失)などが挙げられる。近年、分子遺伝学研究の発展によりてんかんの原因遺伝子が同定されつつある。その結果、てんかんと種々のチャネル遺伝子との関連性が明らかとなり、一部のてんかん症候群はチャネル遺伝子の変異によって発症する、いわゆるチャネル病(channelopathy)と考えられるようになってきた。特に、電位依存性Ca2+ チャネルや、電位依存性Na+ チャネル、K+ チャネルなどの変異がてんかん患者において検出されている。
【0004】
熱性けいれんは小児の約8%にみられる発症率の高い疾病である。熱性けいれんとは、主に感冒などのウイルス感染や細菌感染などによる38℃以上の発熱に伴って、1~5分間持続する全身のけいれんである。生後6ヶ月から5歳頃までに発症し、大多数の症例は6歳までに治癒する。そのため、積極的な治療を必要としないことが多く、原則として良性疾患である。しかし、1歳未満に発症する熱性けいれんの患者のなかには、熱性けいれんで終始する良性疾患の患者の他に、6歳以降もけいれんが持続する患者や、Dravet症候群(別名:乳児重症ミオクロニーてんかん(Severe Myoclonic Epilepsy in Infancy:SMEI))という難治てんかん患者が混在している。
【0005】
現在の臨床現場では、てんかん発作を如何に抑制するかがてんかん患者治療の重要な課題である。そのための治療戦略が立てられ、その中で抗てんかん薬を用いる薬物療法が優先される。これまでに、例えばフェノバルビタール(PB)、フェニトイン(PHT)、エトサクシミド(ESM)、アセタゾラミド(AZA)、クロナゼパム(CZP)、バルプロ酸ナトリウム(VPA)、カルバマゼピン(CBZ)等の抗てんかん薬が市販されている。しかしながら、これら薬物療法においては、既存の抗てんかん薬では薬物抵抗性により、発作の抑制が困難となる、いわゆる難治性のてんかんが存在するため、複数の抗てんかん薬を組み合わせて長期間に亘り使用せざるを得ないという問題点がある。さらに、このような状況から、抗てんかん薬による副作用により、投与中断を余儀なくされる患者も多い。例えば、部分発作に多く使用されているCBZは、肝機能障害、眠気、皮疹等の副作用があり、全般発作に多く使用されているVPAは、肝機能障害、血小板減少、体重増加、振戦、脱毛等の副作用が挙げられ、特に小児てんかん患者においては、これらの副作用は非常に重大な問題となっている。
【0006】
難治性のDravet症候群患者の約80%、及び良性の全般てんかん熱性けいれんプラス(Generalized epilepsy with febrile seizure plus: GEFS+)患者の約5~10%に電位依存性ナトリウムイオンチャネルα1サブニットSCN1A遺伝子の変異が見つかっており、SCN1A遺伝子変異が熱性けいれん発症に関わることが明らかになっている(非特許文献1-3)。
【0007】
上記の点から、抗てんかん作用を増強し、副作用を改善することのできる新たなてんかん治療薬の開発が望まれている。
【0008】
メチルフェニデートは注意欠陥・多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder、ADHD)及びナルコレプシー(強い眠気の発作を主な症状とする脳疾患)患者に対して使われる中枢神経刺激薬である。一般にADHD患者の約10%程度はてんかんを有することが公知である。しかしながら、てんかんを合併するADHD患者に対してメチルフェニデートを投与すると、ADHD治療には効果がある一方、てんかんの発作頻度は悪化するという報告がなされている(非特許文献4)。また、ADHD患者についてSCN1A遺伝子の変異の報告はない。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】Biochem Biophys Res Commun. 295(1), 17-23 (2002)
【非特許文献2】Am J Hum Genet 68: 866-873 (2001)
【非特許文献3】J Neurosci. 2010 Apr 21;30(16):5744-53. doi: 10.1523/JNEUROSCI.3360-09.2010.
【非特許文献4】Developmental Medicine and Child Neurology (2013), http://dx.doi.org/10.1111/dmcn.12111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、てんかん発作を伴う疾患に対し、従来の抗てんかん薬とは作用機序の異なる新たな抗てんかん薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するためにメチルフェニデート製剤に着目し、鋭意検討を重ねた結果、てんかん発作の発症を抑制し、軽減化しうることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む、てんかん発作の予防及び/又は治療のための抗てんかん薬。
2.てんかんが、変異型SCN1A遺伝子によるてんかんである、前項1に記載の抗てんかん薬。
3.てんかん発作が、けいれん発作である、前項1又は2に記載の抗てんかん薬。
【0013】
4.メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を投与することを特徴とするてんかん発作の予防方法及び/又は治療方法。
5.メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を、1日あたり0.05~5mg/kg投与することを特徴とするてんかん発作の予防方法及び/又は治療方法。
6.メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を、用時0.05~5mg/kg投与することを特徴とするてんかん発作の予防方法及び/又は治療方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のメチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む抗てんかん薬により、けいれん発作の抑制効果が確認でき、てんかん発作の予防及び/又は治療のために有用であると考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】モデルラットについて、メチルフェニデート(MPH)による熱性けいれん発作の抑制効果を、脳波で確認した結果を示す図である。(実施例1)
【図2】モデルラットについて、MPHによる熱性けいれん発作の抑制効果を、発作頻度で確認した結果を示す図である。(実施例1)
【図3】モデルラットについて、MPHによる熱性けいれん発作の抑制効果を、発作持続時間で確認した結果を示す図である。(実施例1)
【図4】モデルラットについて、MPHによる熱性けいれん発作の抑制効果を、発作誘発までの時間で確認した結果を示す図である。(実施例1)
【図5】モデルラットについて、MPHによる熱性けいれん発作の抑制効果を、発作誘発時の直腸温で確認した結果を示す図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0016】
メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む、てんかん発作の予防及び/又は治療のための抗てんかん薬に関する。

【0017】
メチルフェニデートの薬学的に許容しうる塩としては、無機塩基との塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)、有機塩基との塩(例えば、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩等のような有機アミン塩)、無機酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩等)、有機カルボン酸又はスルホン酸付加塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)、塩基性又は酸性アミノ酸(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)との塩等といった、塩基との塩又は酸付加塩が挙げられる。

【0018】
本発明の抗てんかん薬を生体に投与する場合、適当な剤型に製剤化して用いるのが好ましく、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤、坐剤、シロップ剤、ローション剤、軟膏剤、パップ剤等の製剤で用いることができる。これらの剤型に製剤化するには薬学上許容しうる適当な担体、賦形剤、添加剤等を用いて行うことができる。

【0019】
例えば静脈内投与する際に好ましい剤型は液剤であり、液剤を調製するには、例えば精製水、生理食塩水、エタノール・プロピレングリコール・グリセリン・ポリエチレングリコール等のアルコール類、トリアセチン等の溶媒を用いて行うことができる。このような製剤にはさらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定剤のような補助剤を加えても良い。また懸濁剤として投与することも可能である。

【0020】
また錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤等の固形製剤を調製するには、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、デンプン、ショ糖、マンニトール、カルボキシメチルセルロース等の担体、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、グリセリン等の添加剤を加えて常法により行うことができる。またセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコールフタレート、スチレン-無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体等の腸溶性物質の有機溶媒あるいは水中溶液を吹き付けて、腸溶性被膜を施して、腸溶性製剤として製剤化することもできる。薬学上許容しうる担体には、その他通常、必要により用いられる補助剤、芳香剤、安定剤あるいは防腐剤を含む。

【0021】
メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む医薬組成物は、背景技術の欄で示したように、小児期における注意欠陥/多動性障害(ADHD)に対して報告がある。メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む医薬組成物を本発明の抗てんかん薬として使用する場合の剤形や投与システムについては、自体公知の方法又は今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。

【0022】
本明細書におけるてんかんとは、種種の病因によってもたらされる慢性の脳疾患であり、大脳ニューロンの過剰な放電から由来する反復性の発作(てんかん発作、seizure)を主徴とし、それに変異に富んだ臨床ならびに検査所見の表出を伴う疾患又は症状をいう。てんかん症候群という言葉は毎回随伴して起こる徴候、症状の組み合わせや病因、誘因因子、発症年齢、重症度および慢性化傾向などに特徴づけられる症候群である。脳波・臨床症候群(Electroclinical syndrome)ともいわれ、若年ミオクロニーてんかんやWest症候群、Lennox-Gastaut症候群などが挙げられる。

【0023】
てんかん発作は、全般発作と部分発作に大別される。全般発作の例としては、強直間代発作、単純欠神発作、複雑欠神発作(例えば、意識障害にくわえて他の症状、自動症やミオクロニー発作などを伴う発作)、点頭発作、脱力発作などが挙げられる。部分発作の例としては、単純部分発作、複雑部分発作の他、部分発作から始まり、全身のけいれんが起こる二次性全般化発作などが挙げられる。本発明におけるてんかん発作は、上記列挙した発作のうち、特に強直間代発作が挙げられる。 強直間代発作の症状として、例えばけいれんが挙げられる。けいれんについては、上記背景技術の欄で説明したとおりである。本発明におけるけいれん発作は、てんかん患者に生じる発作に特定され、例えばDravet症候群(SMEI)という難治てんかんや全般てんかん熱性けいれんプラス(GEFS+)にみられるけいれん発作が挙げられる。

【0024】
本発明において適用されるてんかんは、てんかんの中でも特に電位依存性ナトリウムイオンチャネルα1サブニットSCN1A遺伝子の変異を伴うてんかんが挙げられ、例えばDravet症候群(SMEI)や全般てんかん熱性けいれんプラス(GEFS+)が挙げられる。また、てんかんに関し、Dravet症候群や全般てんかん熱性けいれんプラスとは診断されない場合であっても変異型SCN1A遺伝子を伴うてんかんであると認められる場合には、本発明の抗てんかん剤を使用することができる。

【0025】
Dravet症候群(SMEI)の可能性を判定する方法は特に限定されないが、例えば特許第4461263号公報に示す方法を適用することができる。具体的には、例えば以下の(a)~(i)をリスクスコアとして算出することで判定することができる。
(a)半身痙攣の経験がある
(b)遷延性痙攣の経験がある
(c)発作回数が5回以上ある
(d)熱性痙攣の発症が生後8ヶ月未満である
(e)入浴による痙攣誘発の経験がある
(f)SCN1A遺伝子のトランケーション変異が存在する
(g)部分発作の経験がある
(h)SCN1A遺伝子のミスセンス変異が存在する
(i)ミオクロニー発作の経験がある

【0026】
上記(a)~(i)のうち、特にSCN1A遺伝子の変異を認める場合が好適に挙げられ、変異についてはトランケーション変異又はミスセンス変異のいずれであってもよい。SCN1A遺伝子の変異解析方法は、遺伝子診断の分野において、自体公知の方法、例えば特許第4461263号公報に示す方法や今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。

【0027】
メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩の有効量としては、患者の年齢、体重、症状の重篤度、薬物の塩の種類などにもよるが、例えば、メチルフェニデートを使用する場合、子供および大人の双方について1日あたり0.05~5mg/kgであり、好ましくは0.1~3mg/kg、より好ましくは0.5~2mg/kgとすることができる。

【0028】
本発明は、メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む医薬組成物を用いることによる、てんかん発作の予防方法及び/又はてんかん発作の治療方法にも適用しうる。てんかん発作の予防方法及び/又はてんかん発作の治療方法において、メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を、1日あたり0.05~5mg/kg投与することができる。また、メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を、用時0.05~5mg/kg投与することができる。投与方法としては、症状や製剤によっても異なるが、メチルフェニデート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む医薬組成物の剤形等により有効成分の作用時間が短い場合は、一日に3~4回に分けて服用することもできるし、有効成分の作用時間が長時間の場合は、一日2回、場合によっては一日1回等、適宜選択することができる。また、本発明の抗てんかん剤は、併用しても生体に安全であると認められた場合において、自体公知又は今後開発される抗てんかん剤を併用して使用することもできる。

【0029】
本発明の抗てんかん薬を、てんかん発作の予防及び/又は治療のために投与する場合は、経口的にあるいは直腸内、皮下、髄腔内、筋肉内、静脈内、動脈内、経皮等、非経口的に投与することができる。
【実施例】
【0030】
本発明の理解を助けるために、参考例及び実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでないことはいうまでもない。
【実施例】
【0031】
(実施例1)メチルフェニデートによるけいれん発作の抑制効果
本実施例では、Scn1a遺伝子に変異を持つラット(Kyo811)に対して、メチルフェニデート(MPH)を投与することによる温浴負荷による熱性けいれんに対する効果を確認した。
【実施例】
【0032】
1.Scn1a遺伝子変異ラット(熱性けいれんモデルラット)の作製
Scn1a遺伝子に変異を持つラット(Kyo811)は、非特許文献3(J Neurosci. 2010 Apr 21;30(16):5744-53. doi: 10.1523/JNEUROSCI.3360-09.2010.)に記載の方法で作製した。すなわち、雄のF344ラットの腹腔内に突然変異剤(N-nitro-N-ethylurea; ENU)を導入し、精子のDNAに人為的な変異を導入後、精子を搾取し、得られた精子を雌ラットの卵に人工授精(intracytoplasmic sperm injection)する技術により、電位依存的ナトリウムイオンチャネルScn1a遺伝子に変異を持つラットを作製した。
【実施例】
【0033】
遺伝子解析の結果、Kyo811ラットは、Scn1a遺伝子の4251番目のヌクレオチド「A」が「C」へ変異を生じており、その結果、1417番目のアミノ酸であるアスパラギン(AAT)がヒスチジン(CAT)に変化していた(N1417H)。1417番目のアスパラギンはナトリウムイオンチャネル第3ドメインのイオン透過に関わるポア形成領域に位置しており、変異型電位依存的ナトリウムチャネルの機能解析の結果、N1417H変異型ナトリウムイオンチャネルはチャネル機能に異常が生じ、けいれんを起こしやすくなっていることが判明した。本変異型ホモ接合型ラットは、45℃の温浴につけると約3~4分後で熱性けいれんを引き起こすため、温浴負荷による熱性けいれんモデルラットとして非常に有用なラットであり、全般てんかん熱性けいれんプラス(GEFS+)モデルラットとして公知である。
【実施例】
【0034】
2.メチルフェニデート(MPH)の効果の確認
5週齢のScn1a遺伝子変異ラット(熱性けいれんモデルラット)にメチルフェニデート(MPH)を0.5mg/kg(14匹)及び2mg/kg(15匹)で腹腔内投与した。対照群には生理食塩水(Saline)(14匹)を投与した。薬剤投与1時間後に45℃の温浴負荷をかけ、以下の(1)発作時脳波、(2)発作頻度、(3)発作持続時間、(4)発作を誘発するまでの時間、及び(5)発作が起こった時点の直腸温を測定した。発作が起こった時点で温浴からラットを取り出し、発作を起こさない場合は温浴を5分間で停止(即ち、発作を誘発するまでの時間(Latency)の最高は300秒)とした。
【実施例】
【0035】
その結果、図1~5に示す結果が得られた。
(1)発作時脳波では、生理食塩水(Saline)投与(上段)に比し、メチルフェニデート(MPH)投与(下段)による、有意な発作時脳波の抑制が観察された。(図1)
(2)MPH投与による、発作頻度の減少が認められた。(図2)
(3)MPH投与による、発作持続時間の有意な短縮が認められた。(図3)
(4)MPH投与による、発作出現までの所用時間の延長が認められた。(図4)
(5)MPH投与による、発作が起こった時点の直腸温、即ち発作誘発閾値の上昇が認められた。つまり、MPH投与すると同じ温度になっても発作が起こりにくいことが明らかになった。(図5)
【産業上の利用可能性】
【0036】
難治てんかんDravet症候群の80%以上、及び、全般てんかん熱性けいれんプラス患者の約5~10%にはSCN1A遺伝子異常があると考えられている。本発明の抗てんかん薬、すなわちメチルフェニデート製剤(多動性障害治療薬及びナルコレプシー治療薬)の服用により、Scn1a遺伝子に変異を持つ熱性けいれんモデルラットのてんかん発作を抑制できることを見出した。これにより、メチルフェニデート製剤は、けいれんを伴うてんかん発作の予防及び/又は治療のために有用であると考えられた。本発明の抗てんかん薬を使用することができれば、てんかん発作の予防方法及び/又は治療方法の選択肢を増やすことができ、例えば既存の抗てんかん薬による副作用の軽減化を図ることができる。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図1】
4