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明細書 :導電性マイエナイト型化合物粉末の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6152381号 (P6152381)
登録日 平成29年6月2日(2017.6.2)
発行日 平成29年6月21日(2017.6.21)
発明の名称または考案の名称 導電性マイエナイト型化合物粉末の製造方法
国際特許分類 C01F   7/16        (2006.01)
B01J  32/00        (2006.01)
B01J  23/02        (2006.01)
B01J  37/16        (2006.01)
B01J  37/00        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
B01J  37/10        (2006.01)
B01J  35/10        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  23/58        (2006.01)
C01C   1/04        (2006.01)
FI C01F 7/16
B01J 32/00
B01J 23/02 M
B01J 37/16
B01J 37/00 Z
B01J 37/08
B01J 37/10
B01J 35/10 301G
B01J 35/10 301J
B01J 37/02 301P
B01J 23/58 M
C01C 1/04 D
C01C 1/04 E
請求項の数または発明の数 7
全頁数 14
出願番号 特願2014-532935 (P2014-532935)
出願日 平成25年8月20日(2013.8.20)
国際出願番号 PCT/JP2013/072163
国際公開番号 WO2014/034473
国際公開日 平成26年3月6日(2014.3.6)
優先権出願番号 2012189371
優先日 平成24年8月30日(2012.8.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年7月8日(2016.7.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】原 亨和
【氏名】井上 泰徳
【氏名】北野 政明
【氏名】林 文隆
【氏名】横山 壽治
【氏名】松石 聡
【氏名】戸田 喜丈
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査官 【審査官】森坂 英昭
参考文献・文献 国際公開第2012/077658(WO,A1)
特開2012-082081(JP,A)
特開2007-083126(JP,A)
特開2006-083009(JP,A)
調査した分野 C01F 7/00 - 7/76
B01J 21/00 - 38/74
C01C 1/00 - 1/28

特許請求の範囲 【請求項1】
導電性マイエナイト型化合物の製造方法であって、
下記(1)~(4)の工程を含み、得られる導電性マイエナイト型化合物の伝導電子濃度が1015cm-3以上であり、比表面積が5m-1以上であることを特徴とする、導電性マイエナイト型化合物の製造方法。
(1)マイエナイト型化合物の原料と水の混合物を水熱処理法により得られる水和酸化物である、マイエナイト型化合物の前駆体粉末を合成する工程、
(2)前記前駆体粉末を加熱脱水してマイエナイト型化合物粉末を形成する工程、
(3)前記マイエナイト型化合物粉末を不活性ガス雰囲気又は真空中で400~1000℃の温度範囲で、3時間以上加熱する工程(以下、前処理工程という)、
(4)前記前処理工程を経たマイエナイト型化合物粉末と還元剤を混合し、400~1100℃の温度範囲に加熱して還元処理によりマイエナイト型化合物に電子を注入する工程。
【請求項2】
前記工程(4)の後に、さらに、(5)迅速昇温加熱法(RTA法)により、昇温と加熱保持を繰り返す工程を有する請求項1に記載の導電性マイエナイト型化合物の製造方法。
【請求項3】
前記マイエナイト型化合物が、12CaO・7Al23である請求項1又は2に記載の導電性マイエナイト型化合物の製造方法。
【請求項4】
前記還元剤が、Ca又はCaH2である請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性マイエナイト型化合物の製造方法。
【請求項5】
伝導電子度が1015cm-3以上であり、かつ比表面積が5m-1以上であることを特徴とする導電性マイエナイト型化合物。
【請求項6】
請求項5に記載の導電性マイエナイト型化合物を担体とし、前記担体に遷移金属を担持したことを特徴とするアンモニア合成用の担持金属触媒。
【請求項7】
窒素ガスと水素ガスを請求項6に記載の担持金属触媒上で反応させてアンモニアを合成することを特徴とするアンモニアの合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気伝導性を有する電子材料や触媒材料などに有用な、比表面積の大きい導電性マイエナイト化合物粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CaO、Al23、SiO2を構成成分とするアルミノケイ酸カルシウム中に、鉱物名をマイエナイトと呼ぶ物質があり、その結晶と同型の結晶構造を有する化合物を「マイエナイト型化合物」という。マイエナイト型化合物は、12CaO・7Al23(以下、「C12A7」と記す)なる代表組成を有し、C12A7結晶は、2分子を含む単位胞にある66個の酸素イオンの内の2個が、結晶骨格で形成されるケージ内の空間に「フリー酸素」として包接されているという、特異な結晶構造を持つことが報告されている(非特許文献1)。
【0003】
2003年以降、マイエナイト型化合物に含まれるフリー酸素イオンが種々の陰イオンで置換できることが本発明者らにより明らかにされた。特に、強い還元雰囲気にC12A7を保持すると、全てのフリー酸素イオンを電子で置換することができる。フリー酸素イオンを電子で置換したC12A7は、化学式で、[Ca24Al2864]4+(e-4(以下、「C12A7:e-」)と記すことができる。また、このように、陰イオンに対し電子が置き換わった物質を「エレクトライド」と呼び、エレクトライドは良好な電子伝導特性を示す特徴を有する(非特許文献2)。
【0004】
本発明者らは、(イ)C12A7の単結晶や微粉末の静水圧プレス成型体をアルカリ金属又はアルカリ土類金属蒸気中、600~800℃に保持する方法、(ロ)C12A7の薄膜に不活性イオンをイオン打ち込みする方法、又は、(ハ)C12A7の微粉末の静水圧プレス成型体を還元雰囲気で溶融し、融液から直接固化する方法で、1×1019cm-3以上の濃度の伝導電子を有するC12A7:e-及びC12A7と同型化合物が得られることを見出した(特許文献1)。
【0005】
また、本発明者らは、良好な導電性マイエナイト型化合物の原料物質を溶融し、低酸素分圧の雰囲気中で保持してから冷却凝固させる方法に関する発明(特許文献2)、原料粉末を高温保持して固相反応で焼結した焼結物を粉砕した粉末、その粉末のプレス成型体、又はその成型体を1200~1350℃で焼結した焼結体に炭素、Al、Ti等の還元剤を加えて、600~1415℃で熱処理して導電性を付与(すなわち、フリー酸素イオンと電子の置換)する方法に関する発明(特許文献3、4)を特許出願した。さらに、C12A7単結晶をチタン金属(Ti)蒸気中でアニールし、金属電気伝導性を示すC12A7:e-を得ることに成功し、その製法及び電子放出材料としてのその用途に関する発明を特許出願した(特許文献5)。
【0006】
導電性マイエナイト型化合物の製造方法としては、例えば、非水溶液原料を500~1500℃に加熱焼成して得られる12Ca1-xSrxO7Al23(x=0~1)で示される複合酸化物膜を700~1500℃に加熱して還元処理する方法(特許文献6)、混合した原料を還元雰囲気下で、酸素分圧が1000Pa以下の不活性雰囲気又は真空雰囲気中において、1200~1415℃で加熱する方法(特許文献7)、金属Alや金属Ca等の還元剤と原料の混合物を1200~1415℃で焼結するか、1415~1600℃で溶融する方法(特許文献8)、マイエナイト型化合物粉末を300~1200℃に加熱して開気孔を有する焼結体を形成し、得られた焼結体を還元性雰囲気中で1200~1450℃に加熱する方法(特許文献9)などに関する発明が特許出願されている。
【0007】
金属電気伝導性を示すC12A7:e-に関しては、CaCO3及びAl23を11:7で混合して、1300℃で加熱した生成物を金属Ca蒸気雰囲気中で加熱することで粉末を直接合成することもできる(非特許文献3)。導電性マイエナイト型化合物は、電子エミッター、フィールドエミッションディスプレイ装置、冷陰極蛍光管、平面型照明装置、及び電子放出材料(特許文献10)、放電ランプ用電極(特許文献11)等に使用される。
【0008】
さらに、導電性マイエナイト型化合物であるC12A7のAlの一部をGa又はInで置換したマイエナイト型化合物に係わる発明の出願がなされており、これは、PDP保護膜材料や、有機ELデバイスにおける電荷注入材料など、高温加熱処理が必要とされる電極材料として適する(特許文献12)。
【0009】
本発明者らは、導電性マイエナイト型化合物に、RuやFeなどの金属を担持したアンモニア合成反応の触媒に関する発明(特許文献13)及び導電性マイエナイト型化合物を用いて二酸化炭素を一酸化炭素に還元する方法に関する発明(特許文献14)について特許出願した。また、C12A7は、導電性を有しないものでも触媒や触媒担体としての用途を有し、例えば、原料の錯体溶液を噴霧乾燥後1300~1400℃で2時間以上仮焼して得られた触媒を軟質オレフィン生成用の水蒸気分解反応触媒として使用することが知られている(特許文献15)。最近では、水熱法やゾルーゲル法で前駆体を合成後、焼成する方法により高比表面積の担体を得る方法が提案されている(非特許文献4,5)。
【0010】
なお、C12A7を、水分を含む雰囲気に放置すると水酸基イオン(OH-)がケージ中に包接され、高温でも離脱し難いことが報告されている(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】WO2005/000741
【特許文献2】WO2005/077859
【特許文献3】WO2006/129674
【特許文献4】WO2006/129675
【特許文献5】WO2007/060890
【特許文献6】特開2009-107858号公報
【特許文献7】特開2010-132467号公報
【特許文献8】特開2012-082081号公報
【特許文献9】特開2012-126618号公報
【特許文献10】WO2006/112455
【特許文献11】WO2011/024821
【特許文献12】特開2009-203126号公報
【特許文献13】WO2012/077658
【特許文献14】特開2012-025636号公報
【特許文献15】米国特許第6,696,614号明細書
【0012】

【非特許文献1】Von Hans Bartl und Thomas Scheller,"N.Jahrbuch F.Mineralogie.Monatshefte",35,547-552,(1970)
【非特許文献2】S.Matsuishi,Y.Toda,M.Miyakawa,K.Hayashi,T.Kamiya,M.Hirano,I.Tanaka and H.Hosono,"Science",301,626-629,(2003)
【非特許文献3】S.Matsuishi,T.Nomura,M.Hirano,K.Kodama,S.Shamoto and H.Hosono,"Chemistry of Materials",21,2589-2591,(2009)
【非特許文献4】L.Gong,Z.Lin,S.Ning,J.Sun,J.Shen,Y.Torimoto and Q.Li,"Material Letters",64,1322-1324,(2010)
【非特許文献5】C.Li,D.Hirabayashi and K.Suzuki,"Materials Research Bulletin",46,1307-1310,(2011)
【非特許文献6】K.Hayashi,M.Hirano and H.Hosono,"J.Phys.Chem.B",109,11900-11906,(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
導電性マイエナイト型化合物は、コールド電子エミッター、導電体、有機ELの電子注入電極、熱電変換材料、熱電子発電材料、還元剤、酸化剤、触媒、などへの応用が期待されている。
【0014】
伝導電子を1015cm-3以上含む導電性マイエナイト型化合物を製造するための公知方法においては、例えば、還元剤を混合した原料を1200℃以上の高温で焼成すると同時に還元処理する(特許文献8)か、1200℃以上の高温で焼成して合成したマイエナイト型化合物に対して還元処理する(特許文献8)等の方法のように、高温の合成工程が必要である。
【0015】
そのため、比表面積の大きな原料を用いてもマイエナイト型化合物が生成、結晶化する過程において粒子のシンタリングが生じ、結果として表面積が小さい粒子又は塊となってしまうので、比表面積がせいぜい2m2-1程度の小さなマイエナイト型化合物しか得られない。したがって、従来、比表面積が大きく、且つ、1015cm-3以上の伝導電子を含むマイエナイト型化合物及び、その製造手段は知られていない。比表面積が5m2-1以上の導電性マイエナイト型化合物が得られれば、導電性マイエナイト型化合物の上記の各用途の有用性は著しく高まると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、比表面積が大きい導電性マイエナイト型化合物粉末の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、従来の方法では、マイエナイト型化合物に1200℃以上の高温での還元処理による電子注入操作が必要であり、比表面積の大きな原料粉末を用いても高温処理による原料粉体の焼結により、比表面積の大きな粉末が得られなかったが、本発明者らは1100℃以下の低温で電子注入操作が可能な手段を見出し、比表面積が5m2-1以上の導電性マイエナイト型化合物粉末の製造を実現した。
【0018】
本発明は、(1)マイエナイト型化合物の原料粉末と水の混合物を水熱処理してマイエナイト型化合物の前駆体粉末を形成する工程、
(2)前記前駆体粉末を加熱脱水してマイエナイト型化合物粉末を形成する工程、
(3)前記マイエナイト型化合物粉末を不活性ガス雰囲気又は真空中で400~1100℃の温度範囲で、3時間以上加熱して活性化したマイエナイト型化合物粉末を形成する工程、
(4)前記活性化したマイエナイト型化合物粉末と還元剤を混合し、400~1100℃の温度範囲に加熱して還元処理によりマイエナイト型化合物に電子を注入する工程、
を少なくとも含む、伝導電子濃度が1015cm-3以上であり、比表面積が5m2-1以上の導電性マイエナイト型化合物粉末の製造方法、である。
【0019】
また、本発明は、上記の製造方法において、工程(4)の後に、さらに、(5)迅速昇温加熱法(RTA法)により、30~60℃min-1の昇温速度、900~1100℃の加熱保持を繰り返す工程を有する導電性マイエナイト型化合物粉末の製造方法、である。
【0020】
本発明の方法において、マイエナイト型化合物は、代表的には12CaO・7Al23である。また、還元剤は、好ましくはCa又はCaH2である。
【0021】
比表面積が5m2-1以上の導電性マイエナイト型化合物粉末が得られた理由は以下の2点である。まず、1点目として、水熱合成法を用いることで、マイエナイト型化合物の原料、例えば、C12A7の場合はCa源とAl源が均一によく混ざり、低温で結晶の元となる水和酸化物を前駆体として形成することができる。その前駆体を加熱脱水することで、固相合成よりも低温でマイエナイト化合物が得られる。その結果、得られたマイエナイト化合物はサブマイクロオーダーの微粒子であるため高い比表面積を有する。しかし、このような微粒子は従来の方法と同様な方法では還元能力が高い還元剤を用いても、還元剤が機能せず、電子の注入は困難である。このような比表面積が大きいマイエナイト化合物粉末を800~1000℃で真空排気処理すると、吸着水、表面水酸基、ケージ内のOH-等を十分除去できるため、還元剤を失活させることなく利用できる。また、還元能力の高いCaH2を用いると、低温(700~800℃)で還元処理することで、導電性マイエナイト化合物粉末を得ることができる。
【0022】
2点目として、前記還元処理後に表面の一部が絶縁的になった粉末表面をさらに還元する際に、迅速昇温加熱法(Rapid Thermal Anealing(以下、RTA法という)を用いると、高速昇温ができるため、粒子の焼結・凝集が起こる前に還元処理を終えることができるため、比較的高い温度(900~1100℃)で加熱還元しても、高い比表面積の導電性マイエナイト化合物が得られる。
【0023】
さらに、本発明は、上記の方法で製造した導電性マイエナイト型化合物粉末に金属触媒を含浸法、物理的混合法、熱分解法、液相法、スパッタリング法又は蒸着法により担持させて担持金属触媒を製造する方法である。
【0024】
担持金属成分は特に限定しないが、1A族元素から選ばれる、Li、Na、K、Rb、あるいはCs、2A族元素から選ばれるMg、Ca、Sr、あるいはBa、3A族から選ばれるSc、Y、ランタニド、あるいはアクチニド、4A族元素から選ばれるTi、Zr、あるいはHf、5A族元素のV、Nb、あるいはTa、6A族元素のCr、MoあるいはW、7A族元素のMn、Tc、あるいはRe、8族遷移金属のFe、Ru、あるいはOs、9族元素のCo、Rh、あるいはIr、10族元素のNi、Pd、あるいはPt、11族元素のCu、Ag、あるいはAu、12族元素のZn、Cd、あるいはHg、13族元素のB、Al、Ga、In、あるいはTl、14族元素から選ばれるSi、Ge、Sn、あるいはPb、15族元素から選ばれるAs、Sb、あるいはBi、16族元素から選ばれるSe、あるいはTeのいずれかを用いることができる。あるいは、これら成分を組み合わせることもできる。
【0025】
本発明の触媒は、酸化、水素化、異性化、不均化、エステル化、縮合反応、酸塩基反応、あるいは重合反応など各種の触媒反応に用いることができるが、これに限定されるものではない。なかでも遷移金属元素は均一系・不均一系の触媒として各種の合成反応に使用されており、特に、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Mo等の6族、8族又は9族遷移金属は、水素と窒素との直接反応によりアンモニアを合成する触媒として適する。
【0026】
例えば、アンモニア合成活性をもつ遷移金属として、Mo、W、Re、Fe、Co、Ru、Rh、Osが知られており、これら成分にアルカリ金属、アルカリ土類金属などの電子注入材で修飾した触媒、あるいは前述元素の組み合わせや、8族又は6B族遷移金属の窒化物やCo・Mo複合窒化物を触媒に用いることができる。
【0027】
マイエナイト型化合物粉末や多孔体を担体として用いる場合は、前記工程で得られた伝導電子を1×1015cm-3以上含むマイエナイト型化合物粉末や多孔体を、遷移金属化合物と含浸法や物理的混合法で混合した後に加熱して、遷移金属化合物を遷移金属に還元分解することで得られる。さらに、遷移金属化合物をその表面にCVD法、スパッタ法等で堆積させ、該遷移金属化合物を熱分解して遷移金属を析出させるなどの方法を使用できる。
【0028】
遷移金属化合物は特に限定されないが、例えば、トリルテニウムドデカカルボニル[Ru3(CO)12]、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)[RuCl2(PPh3)4]、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)[RuCl2(PPh3)3]、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)[Ru(acac)3]、ルテノセン[Ru(C5H5)]、塩化ルテニウム[RuCl3]、ペンタカルボニル鉄[Fe(CO)5]、ノナカルボニル鉄[Fe2(CO)9]、テトラカルボニル鉄ヨウ化物[Fe(CO)4I2]、塩化鉄[FeCl3]、フェロセン[Fe(C5H5)2]、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)[Fe(acac)3]、ドデカカルボニル三鉄[Fe3(CO)12]、塩化コバルト[CoCl3]、トリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)[Co(acac)3]、コバルト(II)アセチルアセトナト[Co(acac)2]、コバルトオクタカルボニル[Co2(CO)8]、コバルトセン[Co(C5H52]、トリオスミウムドデカカルボニル[Os3(CO)12]、モリブデンヘキサカルボニル[Mo(CO)6]、などの熱分解し易い無機金属化合物又は有機金属錯体などを例示できる。
【0029】
含浸法としては、次の工程を採用できる。例えば、炭体粉末を遷移金属化合物溶液(例えば、Ruカルボニル錯体のヘキサン溶液)に分散し、撹拌する。この際、遷移金属化合物は、担体粉末に対して0.01~40wt%、好ましくは0.02~30wt%、より好ましくは0.05~20wt%程度である。その後、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス気流中、又は真空下、50~200℃で30分から5時間の間、加熱して溶媒を蒸発させ乾固する。次に、乾固した遷移金属化合物からなる触媒前駆体を還元する。以上の工程により担体粉末に数nm~数百nmの粒子径の微粒子として遷移金属を坦持した担持金属触媒が得られる。
【0030】
遷移金属の量は担体粉末に対して0.01~30wt%、好ましくは0.02~20wt%、より好ましくは0.05~10wt%である。遷移金属が担持された担体粉末は、担持工程後も当初と同程度の電子を包接しており、担体として仕事関数が小さいので遷移金属への電子供与能力が大きく、遷移金属上での窒素及び水素の活性化を著しく促進する結果、高性能なアンモニア合成触媒として機能する。
本発明の触媒は、アルカリ金属やアルカリ土類金属及びそれらの化合物を促進剤化合物に用いないでも高性能なアンモニア合成触媒となるが、必要に応じてこれらの促進剤化合物を用いてもかまわない。
【0031】
また、担持金属触媒は通常の成型技術を用い成型体として使用することができる。具体的には、粒状、球状、タブレット、リング、マカロニ、四葉、サイコロ、ハニカム状などの形状が挙げられる。また、適当な支持体にコーティングしてから使用することもできる。
【0032】
また、本発明は、上記の方法で製造した担持金属触媒を窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)を反応させてアンモニアガス(NH3)を生成する合成反応に用いるアンモニア合成法、である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の方法により、PDP保護膜材料や高温加熱処理が必要とされる電極材料などの電子材料部品や、あるいは触媒素材として有用な、比表面積の大きい、導電性マイエナイト型化合物粉末を従来の還元剤を用いる電子注入法により提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の製造法について詳細に説明する。
マイエナイト型化合物の結晶は、内径0.4nm程度の籠状の構造(ケージ)がその壁面を共有し、三次元的に繋がることで構成される。通常、マイエナイト型化合物のケージの内部にはO2-などのアニオンが含まれているが、化学処理によってそれらを伝導電子に置換できる。アニール時間を長くすることで、マイエナイト型化合物中の伝導電子濃度は高くなる。

【0035】
マイエナイト型化合物は、構造中に内包する酸化物イオン(O2-)を置換した電子が伝導電子となり、C12A7の場合、組成式([Ca24Al28644+(O2-2-x(e-2x)(0<x<2)で示される。更に、酸化物イオンを電子で置換することにより、伝導電子濃度は1×1015cm-3以上になる。したがって、伝導電子を含むマイエナイト型化合物は、「導電性マイエナイト型化合物」と称することができる。伝導電子の理論的最大濃度はC12A7:e-の場合、2.3×1021cm-3であり、前記の方法により、理論値に等しい量の伝導電子濃度を持つマイエナイト型化合物を得ることができる。

【0036】
導電性マイエナイト型化合物は、2.8eV及び0.4eVに光吸収を生じる。この光吸収係数を測定することにより電子密度が得られる。試料が粉末体であるとき、拡散反射法を用いると簡便に電子密度が得られる。また、ケージ中の電子はスピン活性があるので、電子スピン共鳴(ESR)を用いてケージ中の電子密度を測定することも可能である。さらに、伝導電子を含むマイエナイト型化合物は、ヨウ素を含む溶液中に溶かすことでヨウ素を還元する。この作用を利用し、酸化還元滴定でケージ中の電子密度を測定できる。

【0037】
本発明に関して、比表面積は、液体窒素温度(-196℃)における窒素分子の吸着等温線により測定した値である。吸着等温線の平衡圧(P/P0;Pは-196℃で試料表面と平衡状態にある吸着気体の分圧(Pa)、P0は吸着気体の蒸気圧(Pa))0.05~0.3の範囲においてBET(Brunauer,Emmett and Teller)式を適用し、合成した導電性マイエナイト型化合物の比表面積を見積もった。

【0038】
<マイエナイト型化合物の合成>
本発明の方法において、目的化合物の出発原料に用いるマイエナイト型化合物は、微粉末(一次粒子サイズ100nm以下)又は細孔構造を持ったバルクの多孔体であればより好ましい。マイエナイト型化合物を微粒子にすることにより、グラム当たりの表面積が増加し、粒子の間隙もメソ孔領域(2nmから100nm以下)になる。マイエナイト型化合物の前駆体となる水酸化物は、水熱処理法により得ることができる。

【0039】
<水熱処理によるマイエナイト型化合物の合成方法>
水熱合成法は結晶性の良い微粒子の無機酸化物を合成する方法として古くから検討されている。水やアルコール等の溶媒と原料を耐圧容器に入れて溶媒の沸点以上の温度で数時間~数日加熱することで前駆体化合物を得ることができる。

【0040】
マイエナイト型化合物C12A7の前駆体となる水酸化物であるCa3Al2(OH)12は水と水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムを化学量論組成で混合し、例えば、150℃、6時間程度加熱することで得ることができる。得られた前駆体を大気中で、400~1000℃程度で加熱して脱水することにより、比表面積の大きな(20~60m2-1程度)マイエナイト型化合物粉末C12A7が得られる。

【0041】
<マイエナイト型化合物の前処理>
水熱処理を経由して合成した高比表面積のマイエナイト型化合物粉末は表面やケージ骨格内に強固に結合した水酸基を保有しており、伝導電子を含ませる工程で還元剤が水酸基と反応(2CaH2+2OH→2CaO+3H2)して消費されるため、電子を注入する工程の前処理工程により水酸基を極力なくして粉末の表面又はケージ骨格内を活性化しておく必要がある。前処理後の比表面積は前処理温度の上昇に伴い減少し、400~1000℃の温度範囲では比表面積は、例えば、60m2-1から6m2-1に変化する。

【0042】
前処理法としては、400~1100℃の温度で、不活性ガス雰囲気又は真空下で加熱する方がよい。加熱温度は、好ましくは700~1000℃、より好ましくは、800~900℃の範囲が良い。400℃未満の温度では、高い比表面積を有する粉末が得られるが、還元処理工程において還元剤が粉末に保有されている水酸基により消費されるため高い伝導電子濃度を得ることはできない。一方、1100℃を超える温度では、高い伝導電子濃度が得られるが、粉末の焼結が進行するので、高い比表面積のマイエナイト型化合物粉末を得ることはできない。活性化を十分行うために3時間以上加熱することが好ましい。

【0043】
<マイエナイト型化合物に還元処理により伝導電子を含ませる工程>
伝導電子を含んだマイエナイト型化合物の粉末を作製する場合、化学当量組成のマイエナイト型化合物の原料の粉末を還元雰囲気下、400~1100℃の範囲で加熱すればよい。好ましくは、600~900℃の範囲が、より好ましくは700~800℃が良い。400℃未満では、ケージ内の酸素イオンと還元剤との反応が不十分で、高い伝導電子濃度を得る事が出来ない。一方、1100℃超の温度では、高い伝導電子濃度を得ることができるが、シンタリングにより比表面積の低下が生じる。処理時間は十分に酸素イオンを拡散させ、伝導電子と交換させるため3時間以上が好ましい。

【0044】
還元剤としては、上記加熱温度範囲でケージ内の酸素イオンと反応するものであればよく、例えば、Na、Liなどのアルカリ金属、Mg、Ca、CaH2などのアルカリ土類金属及びそれらの水素化物が使用できる。CaH2は還元後CaOとなって不純物として残留するため導電性マイエナイト型化合物の有効表面積を低下させる要因となる。伝導電子を含ませる処理工程を経たマイエナイト型化合物粉末は工程時の処理温度が高いほど比表面積は小さくなり、例えばマイエナイト型化合物粉末を800℃で前処理を行った試料に対して600℃から800℃の温度領域で還元処理を行うと、例えば30m2-1から20m2-1程度へと変化する。

【0045】
<RTA処理法>
還元剤と反応したマイエナイト型化合物粉末の表面の一部は、例えば酸化カルシウムに覆われて絶縁的になっていることがある。この絶縁的になった粉末表面を還元する方法として、RTA法を使用できる。RTA法は迅速昇温加熱法の略であり、半導体の結晶性を向上させる方法として知られている。粉末の表面を加熱するための従来の方法では、昇温速度が5~10℃min-1程度と遅く、粒子のシンタリングによる表面積の低下を防ぐことはできなかった。一方、RTA法を用いると表面積を低下させることなく、エレクトライド表面の結晶性を上げることができ、かつマイエナイト型化合物粉末の表面を含めた伝導化が可能である。RTA法で結晶化する場合、不活性雰囲気、還元性雰囲気、又は真空中で30~60℃min-1の昇温速度で昇温し、加熱温度として900~1100℃で5~15秒間保持して、昇温と加熱保持工程を2~5回繰り返し加熱する。好ましくは、保持温度は950~1100℃の範囲が良い。

【0046】
<導電性マイエナイト型化合物を担体とする触媒の製造工程>
上記の方法で製造した導電性マイエナイト型化合物粉末にRu等の遷移金属触媒を含浸法、物理的混合法、熱分解法、液相法、スパッタリング法、又は蒸着法により担持させることにより触媒を製造することができる。物理的混合法は、導電性マイエナイト型化合物粉末と遷移金属化合物粉末とを物理的混合法により固相混合した後に水素雰囲気等の還元雰囲気で50~600℃の温度範囲で遷移金属化合物を加熱還元することによって担持金属触媒を得る。加熱還元の前に、真空中で昇温、維持を数回繰り返すことが担持金属粒子のシンタリングを抑制させる点で望ましい。

【0047】
含浸法は、導電性マイエナイト型化合物粉末を遷移金属化合物の溶媒溶液に分散させる工程、該溶媒溶液の溶媒を蒸発させて乾固した該遷移金属化合物からなる触媒前駆体を形成する工程、還元雰囲気中で加熱して該遷移金属化合物を還元して前記金属触媒を形成する工程からなる。

【0048】
遷移金属が担持された担体粉末は、担持工程後も当初と同程度の電子を包接しており、担体として仕事関数が小さいので遷移金属への電子供与能力が大きく、かつ担体の比表面積が大きいので遷移金属上での窒素及び水素の活性化を著しく促進する結果、比表面積の小さい導電性マイエナイト粉末を用いた場合よりも高性能なアンモニア合成触媒として機能する。これらの方法で導電性マイエナイト型化合物粉末に担持された遷移金属触媒を用い、反応装置内で、100℃から600℃以下の反応温度、10kPa~30MPaの反応圧力条件で、原料の窒素と水素を前記触媒上で反応させてアンモニアを合成することができる。
【実施例1】
【0049】
<マイエナイト型化合物粉末の合成>
Ca(OH)2とAl(OH)3をCa:Al=12:14となるように秤量し、混合した。混合粉体の重量が10wt%となるように蒸留水を測りとり、合計160gを遊星型ボールミルにて4時間撹拌・混合した。得られた混合溶液を耐圧密閉容器に入れ、撹拌しながら150℃、6時間加熱処理(水熱処理)を施した。得られた沈殿物を濾別し、乾燥後粉砕してマイエナイト型化合物の前駆体粉末:Ca3Al2(OH)12約20gを得た。この前駆体粉末を大気中で600℃、5時間加熱脱水を施し、原料の比表面積の大きいマイエナイト型化合物粉体を得た。この原料の比表面積は60m2-1であった。
【実施例1】
【0050】
<前処理>
前処理として前記粉体をシリカガラス管内に入れ、1×10-4Paの真空中で900℃、5時間排気しながら加熱して取り出した。この段階で得られた粉体の比表面積は約30m2-1であった。
【実施例1】
【0051】
<還元処理による電子注入>
前処理後の粉体3gに対し還元剤であるCaH2を0.4g加え十分に混合して混合物とした後、Ta製チューブに前記混合物を詰めた。前記混合物の詰まったTa製チューブをシリカガラス管内に入れて、1×10-4Paの真空中で700℃、15時間加熱した。伝導電子濃度が1.0×1021cm-3、比表面積が17m2-1の導電性マイエナイト型化合物粉末を得た。
[比較例1]
【実施例1】
【0052】
<マイエナイト型化合物粉末の合成>
CaCO3及びAl23の各粉末をCaとAlの割合が11:14となるように混合し、合計30gをアルミナ坩堝中にて1300℃で6時間加熱した。得られた粉末をシリカガラス管内に挿入し1×10-4Paの真空中で1100℃、15時間加熱し原料のマイエナイト型化合物粉末を得た。この段階で得られた粉体の比表面積は1m2-1以下であった。
【実施例1】
【0053】
<還元処理による電子注入>
上記の合成法によって得た粉末3gを、シリカガラス管内に金属Ca粉末0.18gとともに挿入し、700℃で15時間加熱することにより内部を金属Ca蒸気雰囲気として粉体と反応させた。真空に封管された試料を取り出し、乳鉢ですりつぶした後、再びシリカガラス管内に詰めて真空に引きながら封管した。このシリカガラス管を1100℃、2時間加熱することで伝導電子濃度が約2×1021cm-3、比表面積は1m2-1の導電性マイエナイト型化合物粉末C12A7:e-(C12A7e21と表記する)を得た。
【実施例2】
【0054】
実施例1の原料の前処理温度900℃に代えて、800℃で前処理した以外は実施例1と同じ条件で比表面積の大きいマイエナイト型化合物粉末の合成を実施した。この段階で得られた粉体の比表面積は40m2-1となっていた。
【実施例2】
【0055】
<還元処理による電子注入>
実施例1の還元処理温度を700℃に代えて、600℃で還元処理した以外は実施例1と同じ条件で導電性マイエナイト化合物粉末の合成を実施した。伝導電子濃度が1.0×1021cm-3であり、比表面積は31m2-1であった。
【実施例3】
【0056】
<還元処理による電子注入>
実施例1の還元処理温度を700℃に代えて、600℃で還元処理した以外は実施例1と同じ条件で導電性マイエナイト化合物粉末の合成を実施した。伝導電子濃度が0.8×1021cm-3であり、比表面積は20m2-1であった。
【実施例4】
【0057】
<前処理>
実施例1の原料の前処理温度900℃に代えて、800℃で前処理した以外は実施例1と同じ条件で比表面積の大きいマイエナイト型化合物粉末の合成を実施した。この段階の比表面積は40m2-1となっていた。
【実施例4】
【0058】
<還元処理による電子注入>
実施例1と同様の条件で還元処理して導電性マイエナイト化合物粉末の合成を実施した。伝導電子濃度が1.0×1021cm-3であり、比表面積は23m2-1であった。
【実施例5】
【0059】
<前処理>
実施例1の原料前処理温度900℃に代えて、800℃で前処理した以外は実施例1と同じ条件で比表面積の大きいマイエナイト型化合物粉末の合成を実施した。この段階の比表面積は40m2-1となっていた。
【実施例5】
【0060】
<還元処理による電子注入>
実施例1の還元処理温度を700℃に代えて、800℃で還元処理した以外は実施例1と同じ条件で導電性マイエナイト化合物粉末の合成を実施した。伝導電子濃度が0.4×1021cm-3であり、比表面積は10m2-1であった。
[比較例2]
【実施例5】
【0061】
実施例1と同じ方法でマイエナイト型化合物粉末を合成した。ただし、実施例1の前処理を行わず、還元処理による電子注入も実施しなかった。伝導電子濃度はゼロで、比表面積は60m2-1であった。
【実施例6】
【0062】
<前処理>
実施例1の原料の前処理温度900℃に代えて、1000℃で前処理した以外は実施例1と同じ条件でエレクトライドの合成を実施した。伝導電子濃度が1.4×1021cm-1、比表面積が6m2-1の導電性マイエナイト型化合物粉末が得られた。
【実施例7】
【0063】
<マイエナイト型化合物の合成>
実施例1で得たCa3Al2(OH)12を酸素気流中、800℃で2時間加熱脱水し、原料のマイエナイト型化合物粉末を得た。
【実施例7】
【0064】
<前処理>
この原料の前処理として粉体をシリカガラス管内に入れ、1×10-4Paの真空中で800℃、20時間排気しながら加熱した。
【実施例7】
【0065】
<還元処理による電子注入>
実施例1のCaH2の代わりに、還元剤としてCaメタルを用いた。前処理後の粉体2gに対し還元剤であるCaメタルを0.12g加えて、シリカガラス管内に入れて、1×10-4Paの真空中で700℃、15時間加熱した。
【実施例7】
【0066】
<RTA処理>
さらに粉体の表面活性化のため、タンマン管に詰めて真空封管したのち、45℃min-1の昇温速度で昇温し、950℃で5秒間加熱保持する工程を、2回繰り返してRTA処理した。伝導電子濃度は0.5×1021cm-1、比表面積が19m2-1の導電性マイエナイト型化合物粉末が得られた。
【実施例8】
【0067】
<RTA処理>
実施例7のRTA処理温度950℃に代えて、処理温度1000℃でRTA処理したこと以外は実施例7と同じ条件で導電性マイエナイト型化合物粉末の合成を実施した。伝導電子濃度が1.5×1021cm-1、比表面積が14m2-1の導電性マイエナイト型化合物粉末が得られた。
実施例1~8、比較例1、2の合成及び処理条件を表1にまとめて示す。
【表1】
JP0006152381B2_000002t.gif
【実施例9】
【0068】
<導電性マイエナイト型化合物粉末へのRuの担持>
実施例1で得られた電子注入量が1.0×1021cm-3であり、比表面積が17m2-1のC12A7e-粉末1gとRu3(CO)120.042gをパイレックス(登録商標)ガラス管に入れ、真空封管した。真空封管したものを電気炉内で回転させながら以下のプログラムで加熱処理をした。
【実施例9】
【0069】
[40℃、20min昇温→40℃、60min維持→70℃、120min昇温→70℃、60min維持→120℃、120min昇温→120℃、60min維持→250℃、150min昇温→250℃、120min維持]
その後、真空封管を破り、水素ガス(26.7kPa)雰囲気下、300℃で5時間昇温、2時間加熱処理をすることで、2wt%のRuを担持した導電性マイエナイト型化合物粉末を得た。
【実施例9】
【0070】
<アンモニア合成反応>
窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)を反応させてアンモニアガス(NH3)を生成する反応を行った。得られた触媒0.2gを石英ガラス管に詰め、固定床流通系反応装置に取り付けて反応を行った。ガスの流量は、N2:15mL
min-1,H2:45mLmin-1,計60mLmin-1に設定し、圧力:大気圧、反応温度:320~400℃で反応を行った。流通系の反応器から出てきたガスを0.005M硫酸水溶液中にバブリングさせ、生成したアンモニアを溶液中に溶解させ、生じたアンモニウムイオンをイオンクロマトグラフにより定量した。340℃におけるアンモニアの生成速度は、2388マイクロmolg-1-1であった。
【実施例9】
【0071】
[比較例3]
比較例1で得られた電子注入量が2.0×1021cm-3であり、比表面積が1m2-1のC12A7e21粉末を使う以外は実施例9と同様な方法で2wt%Ru担持触媒を調製し、アンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニア生成速度は、1229マイクロmolg-1-1であった。
【実施例10】
【0072】
実施例2で得られた比表面積が31m2-1の導電性マイエナイト型化合物粉末を使う以外は実施例9と同様な方法で2wt%Ru担持触媒を調製し、アンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニア生成速度は、1575マイクロmolg-1-1であった。
【実施例11】
【0073】
実施例3で得られた比表面積が20m2-1の導電性マイエナイト型化合物粉末を使う以外は実施例9と同様な方法で2wt%Ru担持触媒を調製し、アンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニア生成速度は、1831マイクロmolg-1-1であった。
【実施例12】
【0074】
実施例4で得られた比表面積が23m2-1の導電性マイエナイト型化合物粉末を使う以外は実施例9と同様な方法で2wt%Ru担持触媒を調製し、アンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニア生成速度は、1696マイクロmolg-1-1であった。
【実施例13】
【0075】
実施例5で得られた比表面積が10m2-1の導電性マイエナイト型化合物粉末を使う以外は実施例9と同様な方法で2wt%Ru担持触媒を調製し、アンモニア合成反応を実施した。340℃におけるアンモニア生成速度は、1793マイクロmolg-1-1であった。
[比較例4]
【実施例13】
【0076】
比較例2で得られた比表面積が60m2-1のマイエナイト型化合物粉末を使う以外は実施例9と同様な方法で2wt%Ru担持触媒を調製し、アンモニア合成実験を実施した。340℃におけるアンモニア生成速度は895マイクロmolg-1-1であった。
実施例9~13、比較例3、4の結果を表2にまとめて示す。
【実施例13】
【0077】
【表2】
JP0006152381B2_000003t.gif

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の製造方法で得られる比表面積の大きい導電性マイエナイト型化合物は、電子的特性の優れた透明電極やコールドエミッターなどの電子材料として利用することができる。さらに、高性能な還元剤や触媒材料などとしても利用可能である。