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明細書 :水素化物イオンを含有するペロブスカイト型酸化物とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5872555号 (P5872555)
登録日 平成28年1月22日(2016.1.22)
発行日 平成28年3月1日(2016.3.1)
発明の名称または考案の名称 水素化物イオンを含有するペロブスカイト型酸化物とその製造方法
国際特許分類 C01G  23/00        (2006.01)
FI C01G 23/00 C
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2013-523910 (P2013-523910)
出願日 平成24年7月5日(2012.7.5)
国際出願番号 PCT/JP2012/067157
国際公開番号 WO2013/008705
国際公開日 平成25年1月17日(2013.1.17)
優先権出願番号 2011151738
優先日 平成23年7月8日(2011.7.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年5月26日(2015.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】陰山 洋
【氏名】小林 洋治
【氏名】高野 幹夫
【氏名】矢島 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開2007-220406(JP,A)
国際公開第2010/105787(WO,A1)
R. Waser,Solubility and diffusivity of hydrogen defects in BaTiO3 ceramics,Science of Ceramics,1988年,Vol.14,pp.383-388
調査した分野 C01G 1/00-23/08
C01B 3/00-6/34
C01B 13/00-13/36
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)

特許請求の範囲 【請求項1】
チタン含有ペロブスカイト型酸化物に含まれる酸化物イオンの1原子%以上が水素化物イオン(H-)で置換された、水素化物イオン伝導性を有するペロブスカイト型酸化物からなる水素化物イオン伝導性と電子伝導性をあわせもつ混合伝導体。
【請求項2】
ペロブスカイト型チタン含有酸化物の粉末を出発原料とし、真空中又は不活性ガス雰囲気中で水素化リチウム(LiH)、水素化カルシウム(CaH)、水素化ストロンチウム(SrH)、水素化バリウム(BaH)から選ばれるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物粉末とともに300℃以上該水素化物の融点未満の温度範囲に保持して、該酸化物中の酸化物イオンの一部を水素化物イオンで置換することを特徴とする請求項1に記載される混合伝導体の粉末の製造方法。
【請求項3】
ペロブスカイト型チタン含有酸化物の薄膜を出発原料とし、真空中又は不活性ガス雰囲気中で水素化リチウム(LiH)、水素化カルシウム(CaH)、水素化ストロンチウム(SrH)、水素化バリウム(BaH)から選ばれるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物粉末とともに300℃以上該水素化物の融点未満の温度範囲に保持して、該酸化物中の酸化物イオンの一部を水素化物イオンで置換することを特徴とする請求項1に記載される混合伝導体の薄膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載された混合伝導体を用いたことを特徴とする水素電極、水素透過膜、又は水素ガスセンサ。
【請求項6】
請求項1に記載された混合伝導体を用いたことを特徴とする水素化触媒。
【請求項7】
請求項1に記載された混合伝導体を用いたことを特徴とする水素吸蔵、放出材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン含有ペロブスカイト型酸化物、特に水素化物イオン伝導性を有するチタン含有ペロブスカイト型酸化物、該酸化物の製造方法、及び該酸化物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
MTiO3(Mは、Ca、Ba、Mg、Sr、又はPb)に代表されるペロブスカイト型結晶構造又は層状ペロブスカイト型結晶構造のチタン含有酸化物やTiの一部をHf、Zrの内の少なくとも一種で置換したチタン含有酸化物(特許文献1)等(合わせて、「チタン含有ペロブスカイト型酸化物」という)は、極めて高い比誘電率をもつことからキャパシタ材料や誘電体膜などのデバイスとして、また、他のペロブスカイト型の遷移金属酸化物の基板材料、非線形抵抗体への利用などの観点から古くから盛んに研究が進められている。
【0003】
これらの優れた性能に加え、チタンが環境への負荷が小さい生体に安全な元素であること、加えて地球上で豊富に存在することもペロブスカイト型のチタン含有酸化物の生体親和性材料への利用、電子材料や光学材料等の工業利用を後押ししている。地殻に存在する元素の割合を表すクラーク数では、チタンは全元素で10番目、遷移金属では鉄に次いで2番目である。
【0004】
チタン化合物は、+4価(3d0)とともに+3価(3d1)のTiが安定に存在することが知られており、このd電子の伝導性を活用したチタン含有酸化物の材料開発は盛んである。例えば、Nbドープアナターゼ(TiO2)は、透明電極素材として、マグネリ相の一つとして知られるTi47は、金属-絶縁体転移を示すことからスイッチング材料(非特許文献1)として期待されている。
【0005】
絶縁性のチタン含有ペロブスカイト型酸化物に酸素欠損(空孔)を作る、すなわち電子をドープすることによって、チタンを+3価、+4価の混合原子価状態にし、電気抵抗の低い材料に変換することができることが知られている(非特許文献2)。その方法としては、真空中、水素、窒素、アルゴンガス中、酸素ゲッターを用いた高温での熱処理等、様々な方法が使われている。
【0006】
酸化物では、酸化物イオン混合伝導体(特許文献2)や、プロトン(H+)イオン伝導性をもつ材料を固体電解質として含む電気化学デバイス等が盛んに研究されている(特許文献3)が、これに対して負の電荷をもつ水素化物イオン(H-)は殆ど研究されていない。酸化物中の水素が水素化物イオンとして伝導する可能性は、2001年にS.Steinsvikらによって提唱されたが(非特許文献3)、この説に反対する意見もあり信憑性は未だに議論の的である。
【0007】
一般に、酸化物イオンと水素化物イオンの相性は非常によくないため、酸素欠損(defect)量レベルを超えた量の水素化物イオンを酸化物に内包させることに成功した例は、典型元素を用いた僅かな数の物質に限られている。このような物質は、例えば、LaHO(非特許文献4)や12CaO・7Al23(非特許文献5、特許文献4)である。
【0008】
2002年に、M.A.Haywardらは、水素化物イオンを有するコバルト酸化物-水素化物LaSrCoO30.7を合成することに成功した(非特許文献6)。次いで、2006年に、C.A.Bridgesらは、コバルト酸化物LaSrCoO30.7中の水素化物イオンの拡散現象について報告した(非特許文献7)。これは、当該物質の中の水素化物イオンが移動度(mobility)をもつことを示す。ただし、周りの雰囲気(例えば、気相)との化学反応を示すものではなく、また、イオン伝導性は未知である。さらに、R.M.Helpsらは、この物質に似た構造をもつコバルト酸化物-水素化物Sr3Co24.330.84を報告した(非特許文献8)。これらの2つの物質は遷移金属酸化物で大量の水素化物イオンを取り込んだ初めての例である。
【0009】

【特許文献1】特開2006-199578号公報
【特許文献2】特許第4374631号公報
【特許文献3】特開2005-100978号公報
【特許文献4】特許第4219821号公報
【非特許文献1】S.Ohkoshi et al.,“Nature Chemistry”2,p.539-545(2010)
【非特許文献2】W.Gong et al.,“Journal of Solid State Chemistry”90,p.320-330(1991)
【非特許文献3】S.Steinsvik et al.,“Solid State Ionics”143,p.103-116(2001)
【非特許文献4】K.Hayashi et al.,“Nature”419,p.462-465(2002)
【非特許文献5】B.Malaman,J.F.Brice,Journal of Solid State Chemistry“53,p.44-54(1984)
【非特許文献6】M.A.Hayward et al.,“Science”295,p.1882-1884(2002)
【非特許文献7】C.A.Bridges et al.,“Advanced Mate rials”18,p.3304-3308(2006)
【非特許文献8】R.M.Helps et al.,“Inorganic Chemistry”49,p.11062-11068(2010)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
負のイオンを利用するイオン伝導体として最も開発が進んでいるのが、酸化物イオン伝導体であるが、酸化物イオンの場合、その大きな重量と電荷のために高温での高い機能を発揮するものが多く、低温で機能を発揮させることは困難であった。昨今の石油資源の枯渇と環境汚染の改善の要請からクリーンエネルギーである水素資源の有効活用の機運の高まりから、水素化物イオンを利用し、生体に安全な構成元素からなるイオン伝導体の開発が待たれている。
【0011】
イオン伝導性と電子伝導性をあわせもつには電極などの用途が考えられるため、遷移金属を含む物質が必要になるが、特許文献6~7に示される唯一の例であるコバルト酸化物-水素化物では、通常の酸化物でコバルトは2価以上の価数をとるのに対して、コバルトが1価イオンからなる極めて低い酸化状態をとるため不安定であり、理論計算によるとコバルトのd電子は局在することが示されているので電子伝導性はなく、また、コバルトは希少金属であり、場合によって毒性もあるため、電極などに応用する上では問題になる。
【0012】
遷移金属の酸化物は、水素化物イオンの伝導を利用した電池などへの応用が考えられ、実現のためにはイオン伝導性と電子伝導性を併せ持つ遷移金属の酸化物が求められている。しかしながら、既存のコバルト酸化物-水素化物の場合、コバルトイオンの希少性、毒性に加え、1価イオンからなる極めて低い酸化状態に由来する不安定性、強電子相関による電子伝導性の欠如など不利な要素が多い。そのため、チタンのようなありふれた元素を含有し、かつその元素が安定な酸化数をとる金属酸化物からなる水素化物イオン・電子混合伝導体の開発が必要である。また、水素の有効利用のために水素吸蔵、放出特性の優れた新規なセラミックス系材料の開発も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、Ti含有ペロブスカイト型酸化物が、水素化物イオン(H-)を特定の熱処理条件で低濃度からから高濃度まで取り込むことが可能であり、得られた水素化物イオンを含有するTi含有ペロブスカイト型酸化物が水素化物イオン伝導性と電子伝導性を併せ持ち、さらに外界の水素ガスとの450℃程度以下の低温における反応性、すなわちイオン伝導性等の優れた特性を有することを見出した。この水素化物イオンを含有するTi含有ペロブスカイト型酸化物は、「Ti含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物」と定義することができる。すなわち、本発明は、下記のとおりである。
【0014】
本発明は、新規な組成からなり、それによって特異かつ有用な特性がもたらされるところの、チタン含有ペロブスカイト型酸化物に含まれる酸化物イオンの1原子%以上が水素化物イオン(H-)で置換された、水素化物イオン伝導性を有するペロブスカイト型酸化物、である。
【0015】
この酸化物は、ペロブスカイト型チタン含有酸化物の粉末を出発原料とし、真空中又は不活性ガス雰囲気中で水素化リチウム(LiH)、水素化カルシウム(CaH2)、水素化ストロンチウム(SrH2)、水素化バリウム(BaH2)から選ばれるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物粉末とともに300℃以上該水素化物の融点未満の温度範囲に保持して、該酸化物中の酸化物イオンの一部を水素化物イオンで置換することによってペロブスカイト型酸化物の粉末として製造できる。
【0016】
また、この酸化物は、ペロブスカイト型チタン含有酸化物の薄膜を出発原料とし、真空中又は不活性ガス雰囲気中で水素化リチウム(LiH)、水素化カルシウム(CaH2)、水素化ストロンチウム(SrH2)、水素化バリウム(BaH2)から選ばれるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物粉末とともに300℃以上該水素化物の融点未満の温度範囲に保持して、該酸化物中の酸化物イオンの一部を水素化物イオンで置換することによってペロブスカイト型酸化物の薄膜として製造できる。
【0017】
この酸化物は、水素化物イオン伝導性と電子伝導性をあわせもつ混合伝導体として有用である。セラミックス電極は水素イオンの透過性+電子伝導性が必要であるが、この酸化物は、水素電極、水素透過膜、水素ガスセンサ等の電気化学デバイスや水素化触媒として用いることができる。また、水素吸蔵、放出材料としても用いることができる。また、コバルト酸化物-水素化物のコバルトのように、異常低原子価状態にあると、他の材料と組み合せることは困難であると考えられるが、本発明のTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物では、チタンは+3価と+4価の混合原子価状態であり、電子伝導性を利用して他の材料と組み合せることが容易である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、従来あまり注目されていなかった負の電荷をもつ水素化物イオン(H-)をイオン伝導に利用した特異な化合物、すなわち、チタン含有ペロブスカイト型酸化物の酸化物イオン(O2-)の一部を水素化物イオンで置換した酸化物を提供するものである。この酸化物は、環境に優しく安価なチタン系の酸化物として水素化物イオン伝導性と電子伝導性をあわせもつ混合伝導性等の優れた特性を有するので低温で機能を発揮させることができる電子デバイス材料として有用である。さらに、この酸化物は新規な水素吸蔵、放出材料としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における熱処理前のBaTiO3の結晶構造(左)と熱処理後の試料aの結晶構造(右)を示す図。
【図2】実施例1の試料aに関して、重水素を流しながら、室温から昇温したときに気相中に検出されたH2、及びHDの濃度変化を示す図である。
【図3】実施例1の試料aと重水素ガス中での熱処理後の試料bの中性子回折強度(上)とその計算パターン(下)を代表的な回折ピークに関して示す図である。
【図4】実施例2における単結晶薄膜の電気抵抗の温度変化を示す図である。
【図5】実施例3における熱処理前のSrTiO及びSrTiの結晶構造(左)と熱処理後の試料の結晶構造(右)を示す図。
【図6】実施例3における熱処理後の試料の四重極質量分析装置により検出されたHガスの濃度変化を示す図。
【図7】実施例4における熱処理前のEuTiOの結晶構造(左)と熱処理後の試料の結晶構造(右)を示す図。
【図8】実施例4における熱処理後の試料の四重極質量分析装置により検出されたHガスの濃度変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ペロブスカイト型酸化物は一般的に式ABO3、A2BO4、A327で表わされる。これらの酸化物は、まとめて一般式でAn+1n3n+1(式中、nは1,2,∞のいずれか)で表わされる。本発明において出発物質とされるものは、B成分がTiであり、下記の式Iで示すことができる。
(式I)Mn+1Tin3n+1 (式中、nは1,2,∞のいずれか)。
すなわち、n=1のときは、M2TiO4 、n=2のときは、M3Ti27、n=∞のときは、実質的にMTiO3である。Mは、代表的には、Ca、Ba、Sr、Pb、Mgのうち少なくとも1つであるが、これらの2価の陽イオンに限らず、LaやNaなどの異価数のカチオンや欠損を含むものを固溶させたものでもよい。また、Tiのサイトも他の遷移金属、例えば、Hf,Zrで一部置換したものでもよい。

【0021】
出発物質の形態は粉末が良い。MTiO3の場合では、基板上に堆積した薄膜でも良い。MTiO3薄膜の基板としては、熱処理温度に耐えられる材料を用いた基板であれば何でも良い。また、MTiO3薄膜は単結晶薄膜でも、多結晶薄膜でも良い。MTiO3単結晶薄膜に適している基板は(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7(LSATと略記)である。

【0022】
出発物質であるMn+1Tin3n+1 は、MとTiが原子当量比でn+1:n含む原料を用い、焼成温度800℃以上、1500℃未満で空気中や酸化雰囲気中で固相反応させることで合成される。代表的な原料はMの炭酸塩と酸化チタンである。水熱法、ゾルゲル法などの水溶液を用いた手法によっても得ることができる。これらの方法は公知であり適宜採用できる。また、市販品の粉末としても入手できる。

【0023】
MTiO3薄膜は、MTiO3焼結体をターゲットに用い、パルスレーザー堆積法(PLD)によりLSATなどの基板上に成膜する。製膜法はPLD法に限られるものではなく、スパッター法、プラズマ溶射法などの気相成長法を用いることができる。これらの方法も公知であり適宜採用できる。

【0024】
上記の出発物質に含まれる酸化物イオンの一部を引抜き、水素化物イオン(H-)に置換するために水素化リチウム(LiH;融点680℃)、水素化カルシウム(CaH2;融点816℃)、水素化ストロンチウム(SrH2;融点675℃)、水素化バリウム(BaH2;融点675℃)から選ばれるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物を用いる。これらの水素化物は、イオン性水素化物として同様な性質を有する。これらのイオン性水素化物が酸化物イオンを水素化物イオンに置換できるのは、これらの物質は、固体状態すなわち融点以下の低温の加熱だけでもTi含有ペロブスカイト型酸化物からの酸素引抜き能力だけでなく水素化物イオンを引き抜かれた酸素サイトに供与する能力を有するために出発物質に酸素欠損を予め導入しないでも水素化物イオンが挿入されると考えられる。また、本発明の製造方法においては、比較的低温でイオン性水素化物が解離して生成した水素化物イオンの挿入置換反応が生じるので出発物質の構造骨格を壊すことなく、さらに、トポケミカルに脱酸素反応、大量の水素化物イオンの挿入反応を同時に達成することができるので製造が容易である。

【0025】
以下は、CaH2粉末を用いる場合について説明するが、他の前記水素化物粉末についても同様に使用できる。出発物質のMn+1Tin3n+1粉末又はMTiO3薄膜を、CaH2粉末を含む雰囲気中、200℃以上CaH2の融点(816℃)未満、望ましくは300℃以上600℃以下の温度に保持することにより熱処理した後、室温まで冷却する。昇温速度、降温速度には制限はない。熱処理に要する時間は温度にもよるが1時間程度以上であればよい。

【0026】
CaH2粉末を含む雰囲気は、石英ガラスやステンレス鋼管のような熱的、化学的耐久性のある容器中にCaH2粉末と出発物質のMn+1Tin3n+1の粉末成形体又は薄膜試料を同時に真空封入すると良い。封管内の雰囲気としては、真空のかわりにアルゴンや窒素のような不活性ガスを用いても良い。真空ポンプで真空引きをしながら反応させてもよいが、CaH2等のイオン性水素化物は、水と激しく反応する性質を有するので、真空ポンプの流通経路を通じて封管内の雰囲気中に水分が継続的に供給されることのないようにする必要がある。反応前に封入管内の反応系に存在する酸素ガス及び水分は、これらと反応するだけの過剰CaH2を用いることで取除くことができる。

【0027】
CaH2とMn+1Tin3n+1 は容器中で接触している方が高い反応性を示すが、非接触でも反応性を示す。非接触の場合には、Mn+1Tin3n+1を収容した箇所とCaH2を収容した箇所の温度を独立に制御可能であり、Mn+1Tin3n+1の分解を防ぎつつ反応を進行させることが可能なので、CaH2を収容した箇所をCaH2の融点付近まで上げることが可能である。ただし、非接触の場合には、より長時間の加熱が必要となる。

【0028】
CaH2はMn+1Tin3n+1 に含まれる酸素と反応し、酸化カルシウム(CaO)を形成する。この形成に伴い、Mn+1Tin3n+1中に生成した酸素空孔の全部又は一部をCaH2の分解により生成する水素が占める水素化が生じ、同時に反応雰囲気中に水素ガスも生成する。使用するCaH2の量が多い程、熱処理時間が長い程、熱処理温度が高い程、Mn+1Tin3n+1からの酸素引抜き、Mn+1Tin3n+1の水素化反応は高速に進展する。また、Mn+1Tin3n+1粉末試料のサイズを小さくするか、又はMTiO3薄膜の膜厚を薄くすることによっても酸素引抜き、水素化反応を高速に進展させることが可能である。CaH2の量が十分でない場合、熱処理時間が短い場合、熱処理温度が低い場合では、酸素引抜き、水素化反応の速度は遅く、高濃度の水素化物イオンを含むMn+1Tin3n+1酸化物を作ることができない。このように、CaH2の量、熱処理時間、熱処理温度、粒子のサイズと形態の各因子に依存してMn+1Tin3n+1に取り込まれる水素量が変わるので、これらの因子を「水素化能決定因子」と呼ぶ。

【0029】
熱処理温度が650℃を超えるとMn+1Tin3n+1は分解しTiH2などの不純物を生じるため水素化物イオンを含むMn+1Tin3n+1酸化物の単相を作ることができない。実施例に示すように、熱処理前の試料BaTiO3は室温ではチタンのd軌道が空であることに起因する強誘電性によって理想的な立方晶ペロブスカイトから歪んだ正方晶となるが、熱処理後の試料は室温では酸化物イオンと水素化物イオンの交換によってチタンのd軌道に電子が注入されるために全て立方晶である。

【0030】
熱処理時間の長さとともに、Mn+1Tin3n+1酸化物中に含まれる酸素空孔量が増加し、生成する酸化カルシウムの量が増加する。過剰なCaH2が存在する限りは反応が進行するが、Mn+1Tin3n+1に取り込まれる最大濃度を超えて水素を挿入することはできない。上記の熱処理により、酸素の最大20原子%を水素に置換できる。置換された酸素の量が1原子%以上であれば水素化物イオン伝導性を確認できる。水素化物イオン伝導性は置換量にしたがって増大するため5原子%以上置き換えることが好ましい。10原子%以上置換することがさらに好ましい。

【0031】
n+1Tin3n+1酸化物中の水素濃度は、粉末試料の場合には、粉末X線回折、粉末中性子回折、HClなどの酸性溶液中での分解実験、還元雰囲気下での燃焼実験、四重極重量分析、磁化率の温度変化から求めることができる。薄膜試料の場合には、二次イオン質量分析計(SIMS)で求めることができる。

【0032】
上記の方法で得られたTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物は、酸素サイトのうち、最大20原子%を水素で置き換えた物質である。すなわち、下記の基本式IIで示すことができる。
(式II)Mn+1Tin(O1-xx3n+1 (式中、Mは出発物質に同じ、Hは酸化物イオンを置換した水素化物イオン、0.01≦x≦0.2、nは1、2、∞のいずれか)。
置換された水素は酸素サイトをランダム(統計的)に占有する。しかし、水素化能決定因子のいずれかを制御することにより、粉末又は薄膜の表面から中央に向かって水素濃度の分布に勾配を作ることができる。

【0033】
得られたTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物の電気抵抗は含有される水素化物イオン濃度の上昇とともに減少する。粉末試料の場合には、接触抵抗により電気抵抗の定性的、定量的見積は困難であるが、薄膜試料の場合には室温で10-2Ωcm以下の電気抵抗率をもち、正の温度依存性、つまり金属的な挙動振舞いを示す。

【0034】
本発明のTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物は、水素化物イオン伝導性と電子伝導性をあわせもつ混合伝導体であり、このような特性を利用して固体電解質型燃料電池や水の電気分解を利用した水素ガス発生装置などの電極触媒、水素透過膜、燃料電池や水素ガスセンサの固体電解質として有用である。

【0035】
上記のとおりの方法で得られたTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物について、重水素ガスを含む雰囲気下で300℃以上に加熱すると、雰囲気中の重水素ガスと酸化物中の水素が交換し、交換した重水素は酸化物中を伝搬する。

【0036】
一般の酸化物イオン伝導体と比べて、本発明のTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物は、300℃程度の比較的低温で外界の水素ガスとの交換反応が進行するのは、酸化物イオン(O2-)と比べ、水素化物イオン(H-)が軽く、電荷が半分のためである。この酸化物-水素化物中に含有する水素化物イオンが多いほど、加熱温度が高いほど、交換反応は迅速に進行する。Mn+1Tin3n+1のMの種類、nの値によって決まる閾値以上の加熱温度になると、交換反応は進行するものの、この酸化物の分解も始まる。この閾値温度未満では、この酸化物-水素化物中の水素濃度に変化はないが、若干量の水素の放出が起こる場合もある。

【0037】
さらに、本発明のTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物は、水素吸蔵、放出材料としても用いることができる。水素ガスを含まない雰囲気下でTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物を昇温すると、約400℃以上で水素ガスを放出する。通常、アルケン、アルキンの水素化や、COからメタノールを合成する触媒反応では、第1段階として水素分子H2を吸着し、単一原子Hに解離させる段階が必要である。従来はPt、Pdなどの貴金属がこの作用を担っていた。しかし、Ti含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物も水素ガス中で、同様にH-種を生成するので、貴金属を含まない無機材料で、同様の触媒活性が得られる。水素放出後の物質は、CaH2との反応によって、形態を保ったまま再び水素を吸収させることが可能である。

【0038】
本発明のTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物は高い熱的、化学的安定性を示す。空気中で安定であるとともに水やアルカリ性溶液に安定である。沸騰水でも安定である。ただし、強酸中では分解しながら水素を放出する。
【実施例1】
【0039】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。クエン酸法などの溶液を用いた合成手法によって合成した粒径が100nmから200nmの範囲に分布するチタン酸バリウム(BaTiO3)粒子は、200℃程度の熱処理によって表面に付着した水分を除去した後、3当量のCaH2粉末とBaTiO3粒子をグローブボックス中で混合し、ハンドプレス器によりペレットに成型した。このペレットを内部容量約15cm3の石英管中に入れ、真空封入した。3個の試料を表1に示す熱処理条件で、熱処理し水素化反応を行なった。熱処理後の試料を0.1M、NH4Clのメタノール溶液により処理することで、生成物に付着した未反応のCaH2と副生成物のCaOを取除いた。
【実施例1】
【0040】
【表1】
JP0005872555B2_000002t.gif
【実施例1】
【0041】
0.1M、NH4Clのメタノール溶液での洗浄後の試料は、水素化能が弱い水素化反応条件のときには薄い青色で、水素化能が強くなるにつれて黒色に近づく。得られた試料は、粉末X線回折、粉末中性子回折からペロブスカイト構造の結晶構造を維持していることが分かった。熱処理前の試料a,b,cは室温ではその強誘電性によって理想的な立方晶ペロブスカイトから歪んだ正方晶となるが、熱処理後の試料は室温では全て立方晶であった。
【実施例1】
【0042】
得られた試料は、リートベルト解析から、表1で示した組成をとることが確認された。ただし、試料内に5原子%以内の酸素欠損が存在する可能性はある。回折実験で決定された試料中の酸素量、水素量については、磁化率(によるチタンの価数)測定、四重極質量分析測定、熱重量分析、分解実験からも正しいことを確認した。図1に、決定した熱処理後の試料aの結晶構造(右)を熱処理前のBaTiO3の結晶構造(左)とともに示す。熱処理後のBaTiO3は酸化物イオンの一部が水素化物イオンに置換された状態となる。
【実施例1】
【0043】
なお、MをCa,Sr,Pbとした他のMn+1Tin3n+1酸化物でも上記と同様な熱処理条件で同様の水素化現象が起きること、すなわち酸素サイトのうち最大約20原子%が水素に置き換わることが分かった。
【実施例1】
【0044】
図2に、試料aの1.2gに関して、重水素ガスを含むガス(5容積% D2/Ar)を30mL/minの流量で流しながら、室温から400℃に約160分かけて昇温したときに四重極質量分析装置により検出されたH2ガス、及び重水素化水素(HD)ガスの濃度変化を示す。250℃付近から試料内部の水素と気相中の重水素が交換したことにより微量のHDが検出されるが、350℃になるとその交換速度は急激に早くなる。
【実施例1】
【0045】
図3は、試料aと、上記の重水素ガス中での熱処理後の試料bの中性子回折強度(上)とその計算パターン(下)を示しているが、試料a中の水素(H)が表面だけでなく試料全体にわたって重水素(D2)に迅速に交換されていることを示す。この現象は水素化物イオンが薄膜中にて伝導する能力があることを示す。
【実施例1】
【0046】
なお、MをCa,Sr,Pbとした他のMn+1Tin3n+1酸化物でも同様の現象が起きた。後述の実施例2で得られた試料の電気抵抗の測定結果からわかるように、本発明のTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物は、高い電子伝導のため、イオン伝導率の測定は困難であるが、高温では該物質が高いイオン伝導率を示す手がかりとなった。
【実施例2】
【0047】
試料として、1cm×1cmの面積、120nmの厚さをもったMTiO3(M=Ba,Sr,Ca)の単結晶薄膜を、下記のとおりPLD法によってLSAT上に堆積した。MTiO3(M=Ba,Sr,Ca)のペレットをターゲットとして用いた。基板の温度700℃、堆積中の酸素圧は0.05Pa、励起光源にはKrFエキシマーレーザーパルス(波長=248nm)を採用した。Arで満たしたグローブボックス中で、得られた単結晶薄膜を0.2gのCaH2粉末とともに石英管に真空封入し、300℃から530℃の温度にて1日熱処理し水素化反応を行った。実施例1のときと同様に、生成物に付着した未反応のCaH2と副生成物のCaOはアセトンによる超音波洗浄を行い取除いた。
【実施例2】
【0048】
得られた試料は、X線回折によりペロブスカイト構造の結晶構造を維持した単結晶薄膜であることが分かった。水素化反応を施した薄膜に対するSIMSのデプスプロファイルより、全ての薄膜試料について、この熱処理の条件では水素がほぼ均一に試料中に分布していることが分かった。また、参照データのあるM=Srの場合の組成はSrTiO2.850.15であることが分かった。同様の熱処理を施したM=Ba,Caの薄膜試料の水素量も同程度であった。
【実施例2】
【0049】
水素(H)を含むMTiO3(M=Ba,Sr,Ca)単結晶薄膜に対し、重水素(D2)を含む雰囲気下にて400℃で1時間保持したところ、MTiO3(M=Ba,Sr,Ca)中のHが完全にD2に置き換わっていることがSIMSのデプスプロファイルにより分かった。実施例1のときと同様、この現象は水素化物イオンが薄膜中にて伝導する能力があることを示す。
【実施例2】
【0050】
図4に、これらの試料に関する、2Kから300Kでの電気抵抗の温度変化を示す。M=Caについては30K以下の低温で原因は明確でないが電気抵抗の上昇がみられるものの、全ての試料について電気抵抗が温度の低下と共に減少する、金属的な温度依存性を示した。室温での電気抵抗率は、M=Ca,Ba,Srの順に、8×10-3Ωcm、8×10-4Ωcm、2×10-4Ωcmであった。ペロブスカイト型酸化物では室温ではここまで低い抵抗率でイオン伝導が起こることは考えにくいことから、MTiO3(M=Ba,Sr,Ca)は高温での水素化物イオン伝導だけではなく、極めて高い電子伝導の両方を兼ね備える混合伝導体であることが示された。
【実施例3】
【0051】
クエン酸法などの溶液を用いた合成手法によって合成した粒系が200nm程度の層状チタン酸ストロンチウム(SrTiO及びSrTi)粒子を、120℃において真空乾燥し、表面に付着した水分を十分除去した後、SrTiOの場合は3当量、SrTiの場合は6当量のCaH粉末とグローブボックス中で混合し、ハンドプレス器によってペレット成型した。このペレットを内部容量約15cmのパイレックス(登録商標)管中に入れ真空封入し、480℃において7日間熱処理を行った。処理後の試料は、0.1MのNHCl/メタノール溶液により洗浄し、残存する未反応のCaH及び副生成物のCaOを除去した。
【実施例3】
【0052】
0.1MのNHCl/メタノール溶液で洗浄後の試料は、BaTiO3-xなどと同様に濃青色を示した。得られた試料は、粉末X線回折、粉末中性子回折から層状ペロブスカイト構造の結晶構造を維持していることがわかった。
【実施例3】
【0053】
得られた試料はリートベルト解析より、SrTiO3.70.3、SrTi6.40.6という組成をとることが確認された。ただし、試料内に5原子%以内の酸素欠損が存在する可能性はある。回折実験で決定された試料中の酸素量、水素量については、四重極質量分析測定、熱重量分析からも正しいことを確認した。図5に、決定した熱処理後の試料の結晶構造(右)及び、熱処理前の試料の結晶構造(左)を示す。熱処理後のSrTiO及びSrTiは酸化物イオンの一部が水素化物イオンに置換された状態となる。
【実施例3】
【0054】
図6に、SrTiO3.70.3及びSrTi6.40.6に対して、アルゴンガスを300mL/minの流量で流しながら、室温から800℃まで10℃/minで昇温したときに四重極質量分析装置により検出されたHガスの濃度変化を示す。比較のため、ペロブスカイト構造を有するSrTiO2.70.3も同条件で測定した。そのデータを図6に併せて示した。SrTiO2.70.3は、400℃付近でHガスの放出が極大となる一方で、SrTi6.40.6は480℃付近で、SrTiO3.70.3は620℃付近でHガスの放出が極大となる。この結果は、不活性雰囲気中であれば、層状構造を持つチタン酸ストロンチウムの方が、ペロブスカイト型チタン酸ストロンチウムよりも、高温まで安定に酸化物-水素化物として存在しうることを示している。
【実施例4】
【0055】
錯体重合法(クエン酸法)によって還元雰囲気下で合成した、ペロブスカイト型構造を持つチタン酸ユウロピウム(EuTiO3)粒子を、焼成した後にグローブボックス中に保管することで空気中の水分の付着を防いだ。3当量のCaH2粉末と、このEuTiO3粒子をグローブボックス中で混合し、ハンドプレス器によりペレット成型した。このペレットを内部容量約15cm3のパイレックス(登録商標)管中に入れ、真空封入した。3個の試料を550、575、600の反応温度、48時間の熱処理条件で熱処理し、水素化反応を行なった。熱処理後の試料を濃度0.1MのNH4Clメタノール溶液により処理することで、生成物に付着した未反応のCaH2と副生成物のCaOを取除いた。
【実施例4】
【0056】
水素化反応前のEuTiO3の色は黒色で、濃度0.1MのNH4Clメタノール溶液での洗浄後の試料の色もいずれも黒色をしていて、還元温度による色の違いは無かった。得られた試料は、粉末X線回折からペロブスカイト型の結晶構造を維持していることがわかった。熱処理前の試料も、熱処理後の試料も、室温では全て立方晶であった。
【実施例4】
【0057】
後述のパイロクロア型構造を持つチタン酸ユウロピウムを水素化して得られた試料は、放射光X線回折パターンのリートベルト解析から、立方晶ペロブスカイト型構造を持ち、EuTiO2.70.3なる組成をとることが確認された。回折実験で決定された試料中の酸素量、水素量については、この他にも四重極質量分析測定、熱重量分析からも正しいことを確認した。図7に、決定した熱処理後の試料の結晶構造(右)を熱処理前の試料の結晶構造(左)とともに示す。熱処理後のEuTiO3は酸化物イオンの一部が水素化物イオンに置換された状態となる。
【実施例4】
【0058】
なお、大気雰囲気下で合成を行うと、パイロクロア型構造を持つチタン酸ユウロピウムEu2Ti27が得られるが、この酸化物についても上記と同様な熱処理条件で同様の水素化現象が起きること、すなわち酸素サイトのうち最大約20原子%が水素に置き換わることがわかった。
【実施例4】
【0059】
図8に、EuTiO2.70.3に対して、アルゴンガスを300mL/minの流量で流しながら、室温から600まで10/minの速度で昇温したときに、四重極質量分析装置により検出されたHガスの濃度変化を示す。EuTiO2.70.3においては450付近でHガスの放出が極大となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、ありふれた元素であるチタンを成分とするペロブスカイト型酸化物からなる新規な水素化物イオン・電子混合伝導体を提供するものであり、従来の酸化物イオン伝導体にはない特性をもつセラミックス材料からなる混合イオン伝導体として期待される。また、本発明のTi含有ペロブスカイト型酸化物-水素化物は、水素吸蔵、放出材料としても利用できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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