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明細書 :抗腫瘍DNAワクチン

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2016-516667 (P2016-516667A)
公報種別 公表特許公報(A)
公表日 平成28年6月9日(2016.6.9)
発明の名称または考案の名称 抗腫瘍DNAワクチン
国際特許分類 A61K  31/7088      (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  39/00        (2006.01)
A61K  39/39        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
FI A61K 31/7088
C12N 15/00 ZNAA
A61K 48/00
A61K 39/00 Z
A61K 39/39
A61P 35/00
A61P 35/02
国際予備審査の請求
全頁数 35
翻訳文提出日 平成27年12月4日(2015.12.4)
出願番号 特願2015-549702 (P2015-549702)
出願日 平成26年4月4日(2014.4.4)
国際出願番号 PCT/JP2014/060356
国際公開番号 WO2014/163213
国際公開日 平成26年10月9日(2014.10.9)
優先権出願番号 2013079854
優先日 平成25年4月5日(2013.4.5)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】中野 賢二
出願人 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100120134、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 規雄
【識別番号】100153693、【弁理士】、【氏名又は名称】岩田 耕一
【識別番号】100104282、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 康仁
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4C084
4C085
4C086
Fターム 4B024AA01
4B024CA04
4B024CA20
4B024DA06
4B024EA04
4B024GA11
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB271
4C085EE06
4C085FF13
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
要約 本発明は、少なくとも1つの腫瘍関連抗原遺伝子を内包するミセルである、腫瘍を治療するための医薬組成物を提供する。本発明はまた、腫瘍を治療する方法であって、少なくとも1つの腫瘍関連抗原遺伝子を内包するミセルをかかる治療を必要とする患者に投与することを含む前記方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも1つの腫瘍関連抗原遺伝子および少なくとも1つのアジュバント遺伝子を内包するミセルである、腫瘍を治療するための医薬組成物。
【請求項2】
前記腫瘍関連抗原遺伝子が、T細胞3により認識される扁平上皮癌抗原(SART3)、Yボックス結合タンパク質1(YB-1)、細胞表面関連ムチン1(MUC1)およびサバイビンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記アジュバント遺伝子が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびCD40Lからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アジュバント遺伝子が、以下の(a)~(e):
(a)配列番号13のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号14のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(c)1~40個のアミノ酸が配列番号14のアミノ酸配列において欠失、置換、挿入および/または付加されているアミノ酸配列からなり、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号13のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
からなる群から選択されるポリヌクレオチドのいずれか1つである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ポリヌクレオチドをGM-CSFおよびCD40Lのいずれか1つまたは両方と組み合わせて含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ミセルがポリイオン複合体ミセルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記腫瘍が、骨肉腫、軟部組織肉腫、乳房の癌腫、肺の癌腫、膀胱の癌腫、甲状腺の癌腫、前立腺の癌腫、結腸の癌腫、結腸直腸の癌腫、膵臓の癌腫、胃の癌腫、肝臓の癌腫、子宮の癌腫、子宮頸部の癌腫、卵巣の癌腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、メラノーマ、ミエローマ、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、グリオーマ、および網膜芽細胞腫からなる群から選択される1つである、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの腫瘍関連抗原遺伝子および少なくとも1つのアジュバント遺伝子を内包するミセルの有効量を対象に投与することを含む、対象における腫瘍を予防および/または治療する方法。
【請求項9】
前記腫瘍が獲得拒絶記憶免疫により予防される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記腫瘍関連抗原遺伝子が、T細胞3により認識される扁平上皮癌抗原(SART3)、Yボックス結合タンパク質1(YB-1)、細胞表面関連ムチン1(MUC1)、およびサバイビンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記アジュバント遺伝子が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびCD40Lからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アジュバント遺伝子が、以下の(a)~(e):
(a)配列番号13のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号14のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(c)1~40個のアミノ酸が配列番号14のアミノ酸配列において欠失、置換、挿入および/または付加されているアミノ酸配列からなり、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号13のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
からなる群から選択される、ポリヌクレオチドのいずれか1つである、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドが、GM-CSFおよびCD40Lのいずれか1つまたは両方と組み合わせて用いられ得る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ミセルがポリイオン複合体ミセルである、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記腫瘍が、骨肉腫、軟部組織肉腫、乳房の癌腫、肺の癌腫、膀胱の癌腫、甲状腺の癌腫、前立腺の癌腫、結腸の癌腫、結腸直腸の癌腫、膵臓の癌腫、胃の癌腫、肝臓の癌腫、子宮の癌腫、子宮頸部の癌腫、卵巣の癌腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、メラノーマ、ミエローマ、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、グリオーマ、および網膜芽細胞腫からなる群から選択される1つである、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子担体デバイス、少なくとも1つの腫瘍関連抗原遺伝子を内包するミセルである、腫瘍を治療するための医薬組成物に関する。本発明はまた、腫瘍を治療する方法であって、少なくとも1つの腫瘍関連抗原遺伝子を内包するミセルをかかる治療を必要とする対象(被験対象)に投与することを含む前記方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
化学療法、放射線療法、外科的療法と異なり、癌ワクチンは低侵襲性に抗腫瘍効果を発揮するので、悪性腫瘍に対する有望な治療法として注目されつつある。抗腫瘍効果は、腫瘍特異的な拒絶免疫の賦活化によりもたらされる。腫瘍関連抗原(TAA)は、樹状細胞(DC)/抗原提示細胞(APC)に運ばれ[1]、ここで断片化されたTAAペプチドが、細胞表面の主要組織適合抗原複合体(MHC)クラス1分子およびクラス2分子に提示される。これらは、補助刺激作用、例えば、B7/CD28およびCD40/CD40Lと共同して活性化される、特異的細胞傷害性Tリンパ球およびヘルパーTリンパ球により、それぞれ認識される[2]。更に顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)による細胞外刺激は、DC/APC細胞を成熟させ、MHCクラス2分子の発現を亢進し[3]、ワクチン効果を増強する[4]。
【0003】
三つのタイプのワクチン(ペプチド、細胞および遺伝子ワクチン)が、癌治療法として基礎研究や臨床試験において検討されてきた。ペプチドワクチンは、低い生産コスト、臨床における高い安全性および良好な服薬コンプライアンスという優れた特性を有するが、免疫原性の低い腫瘍に対して強力なワクチン効果を誘発するTAAエピトープペプチドの同定は困難である[5、6]。エピトープペプチドと提示できるMHC型(ハプロタイプ)が一致することも必要であり、ペプチドワクチンの適応がある患者が限られることになる[5、6]。細胞ワクチンは、ウイルスベクターを通常用いて培養DCまたは自己の腫瘍細胞にTAA遺伝子を導入して作製される。細胞ワクチンは、構築に時間がかかり、改変は容易ではなく、病原体に関する安全性の問題を有し、かつ高い生産コストがかかる問題点を有する[7]。一方、ウイルスベクターなしでTAA単独またはアジュバント遺伝子を併用してTAAを導入する遺伝子ワクチンにより抗腫瘍免疫が誘発されるならば、上記の問題点を解決することになる[8]。
【0004】
種々の合成素材、例えば、カチオン性リポソーム[9、10]、多糖類[11、12]、デンドリマー[13、14]およびカチオン性ポリマー[15~17]を用いた非ウイルス性遺伝子担体デバイスの開発が研究されてきた。しかしながら、非ウイルス性遺伝子担体デバイスの特性は未だ完成の域に遠く、正常組織損傷を引き起こすことなく、生体内での高率な遺伝子導入が達成できていない。近年、カチオン性ポリマーの改変により正常組織損傷少なく生体内に遺伝子導入できる高分子ミセル型遺伝子担体の開発が報告されている[18~21]。
【0005】
参考文献
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
遺伝子担体ミセルが、in vivoで生体適合性を維持しつつ遺伝子導入を高率に達成することが近年示された。本研究において、本発明者らは、マウス腫瘍モデルにおいて腫瘍関連抗原(TAA)、CD40LおよびGM-CSF遺伝子を内包するミセルの腹腔内(i.p.)投与実験を行い、DNAワクチンプラットフォームとしての可能性を調べた。TAA(SART3またはYB-1)、CD40LおよびGM-CSF遺伝子を搭載するDNAワクチンは、Mock対照群、または単一遺伝子療法群と比較して、colon-26腹膜播種マウスの生存期間を有意に延長した。同癌細胞の再移植(チャレンジ)実験により、DNAワクチンで治療した長期生存マウスにおいて拒絶記憶免疫の定着が確認された。また、DNAワクチンはcolon-26やLewis肺癌皮下腫瘍モデルにおいて腫瘍増大と肺転移を阻害した。両腫瘍モデルにおいて、細胞傷害性T細胞(CTL)活性は、DNAワクチンによってのみ高度に活性化され、一方、NK活性は、GM-CSF内包ミセルにより活性化された。CTLの活性化が主要組織適合抗原複合体およびSART3特異的に生じたことは、抗MHC抗体およびSART3 siRNAノックダウンにより確認された。さらに、DNAワクチン治療により、リンパ節および脾臓におけるGM-CSFおよびCD11c陽性細胞の皮下腫瘍への浸潤(7日目)、およびCD4およびCD8a陽性Tリンパ球の皮下腫瘍への浸潤(14日目および28日目)の増強が認められた。これらのデータは、TAA/CD40L/GM-CSF遺伝子搭載ミセルがCTLを介した拒絶免疫活性化により腫瘍成長および転移を抑制できる新規のワクチンプラットフォームであることを示している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下を提供する。
【0008】
[1]少なくとも1つの腫瘍関連抗原遺伝子および少なくとも1つのアジュバント遺伝子を内包するミセルである、腫瘍を治療(処置)するための医薬組成物。
【0009】
[2]腫瘍関連抗原遺伝子が、T細胞により認識される扁平上皮癌抗原-3(SART3)、Yボックス結合タンパク質1(YB-1)、細胞表面関連ムチン1(MUC1)およびサバイビンからなる群から選択される少なくとも1つである、[1]の医薬組成物
【0010】
[3]アジュバント遺伝子が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびCD40Lからなる群から選択される少なくとも1つである、[1]または[2]の医薬組成物。
【0011】
[4]アジュバント遺伝子が、以下の(a)~(e):
(a)配列番号13のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号14のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(c)1~40個のアミノ酸が配列番号14のアミノ酸配列において欠失、置換、挿入および/または付加されているアミノ酸配列からなり、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号13のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
からなる群から選択されるポリヌクレオチドのいずれか1つである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0012】
[5]ポリヌクレオチドをGM-CSFおよびCD40Lのいずれか1つまたは両方と組み合わせて含む、[4]の医薬組成物。
【0013】
[6]ミセルがポリイオン複合体ミセルである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0014】
[7]腫瘍が、骨肉腫、軟部組織肉腫、乳房の癌腫、肺の癌腫、膀胱の癌腫、甲状腺の癌腫、前立腺の癌腫、結腸の癌腫、結腸直腸の癌腫、膵臓の癌腫、胃の癌腫、肝臓の癌腫、子宮の癌腫、子宮頸部の癌腫、卵巣の癌腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、メラノーマ、ミエローマ、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、グリオーマ、および網膜芽細胞腫からなる群から選択される1つである、[1]~[6]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0015】
[8]少なくとも1つの腫瘍関連抗原遺伝子および少なくとも1つのアジュバント遺伝子を内包するミセルの有効量を対象に投与することを含む、対象における腫瘍を予防および/または治療(処置)する方法。
【0016】
[9]腫瘍が、獲得拒絶記憶免疫により予防される、[8]に記載の方法。
【0017】
[10]腫瘍関連抗原遺伝子が、T細胞により認識される扁平上皮癌抗原-3(SART3)、Yボックス結合タンパク質1(YB-1)、細胞表面関連ムチン1(MUC1)、およびサバイビンからなる群から選択される少なくとも1つである、[8]または[9]に記載の方法。
【0018】
[11]アジュバント遺伝子が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびCD40Lからなる群から選択される少なくとも1つである、[8]~[10]のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
[12]アジュバント遺伝子が、以下の(a)~(e):
(a)配列番号13のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号14のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(c)1~40個のアミノ酸が配列番号14のアミノ酸配列において欠失、置換、挿入および/または付加されているアミノ酸配列からなり、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号13のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
からなる群から選択されるポリヌクレオチドのいずれか1つである、[8]~[10]のいずれか1つに記載される方法。
【0020】
[13]前記ポリヌクレオチドが、GM-CSFおよびCD40Lのいずれか1つまたは両方と組み合わせて用いられ得る、[12]に記載の方法。
【0021】
[14]ミセルがポリイオン複合体ミセルである、[8]~[13]のいずれか1つに記載の方法。
【0022】
[15]腫瘍が、骨肉腫、軟部組織肉腫、乳房の癌腫、肺の癌腫、膀胱の癌腫、甲状腺の癌腫、前立腺の癌腫、結腸の癌腫、結腸直腸の癌腫、膵臓の癌腫、胃の癌腫、肝臓の癌腫、子宮の癌腫、子宮頸部の癌腫、卵巣の癌腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、メラノーマ、ミエローマ、ウィルムス腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、グリオーマ、および網膜芽細胞腫からなる群から選択される1つである、[8]~[14]のいずれか1つに記載の方法。
【発明の効果】
【0023】
本研究において、本発明者らは、マウス腫瘍モデルにおいて、TAA(SART3またはYB-1)、CD40LおよびGM-CSF遺伝子を内包するミセルのDNAワクチンプラットフォームとしての可能性を調べた。これらの遺伝子を有するミセルの腹腔内投与は、腹膜播種マウスの生存を延長し、皮下腫瘍の増大および転移を阻害し、CTL/NK活性の活性化ならびにCD4およびCD8a陽性リンパ球(CTL)の腫瘍組織浸潤の増強が認められている。これらの結果は、TAA/CD40L/GM-CSF搭載ミセルが、非常に強力なDNAワクチンのプラットフォームとなり得ることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)脾臓におけるポリプレックスミセルの局在を示す顕微鏡写真(左パネル)およびリンパ節におけるポリプレックスミセルの局在を示す顕微鏡写真(中央パネル)、ならびにリンパ節におけるポリプレックスミセルと樹状細胞の共局在を示す顕微鏡写真(右パネル)の図である。(B)mGM-CSF発現を示すグラフである。
【図2】(A)CT26腹膜播種モデルにおいて、治療用遺伝子を内包するポリプレックスミセルを用いたワクチン接種スケジュールを示す図である。(B)SART3、CD40LおよびGM-CSFを搭載するDNAワクチンが、マウス癌モデルの生存期間を有意に延長したことを示すカプラン・マイヤー生存曲線の図である。(C)ポリプレックスミセルを用いたワクチン接種スケジュールを示す図である。(D)14日目のCT26癌およびLLC皮下腫瘍の腫瘍重量を示すグラフである。
【図3】(A)LLC癌の皮下移植の28日後の、図示したDNAワクチンまたはMockミセルを接種したマウスから得た肺組織の免疫組織化学画像の図である。(B)CD4およびCD8a陽性Tリンパ球の肺組織への浸潤を示す免疫組織化学染色の画像である。
【図4】(A)NK活性(上部のパネル)およびCTL活性(下側のパネル)を示すグラフである。(B)腫瘍を保有するマウスの写真画像の図である。(C)DNAワクチン接種長期生存マウスおよびワクチン非接種対照マウスのCTL活性を示すグラフである。(D)CFSE標的細胞殺傷性のMHCおよびTAAに対する特異性を確認する目的で実施した、CTLアッセイにおける抗MHCクラス1(H-2LおよびH-2D)抗体を用いたブロッキング実験またはsiRNAトランスフェクションによるSART3ノックダウン実験の結果を示す図である。
【図5】図示した抗体で免疫染色した脾臓、リンパ節および腫瘍の組織切片の顕微鏡画像、およびデジタル化したタンパク質シグナルレベルのグラフ(右パネルにおける赤色)(左パネル)である。
【図6】(A)SART3、CD40LおよびGM-CSFを内包するリポソーム搭載DNAワクチンがCT26腹膜播種を宿しているマウスの生存を延長することを示す図である。(B)DNAワクチンの鼠径部皮下投与は、腹膜播種を有するマウスの生存期間を延長することを示す図である。
【図7】BALB/cマウスの腹腔内にCT26大腸癌細胞を移植した1週間後に、マウスMUC1/CD40L/GM-CSF遺伝子を内包するポリプレックスミセルを腹腔内投与して、マウスの生存期間をモニターしたことを示す図である。
【図8】BALB/cマウスの腹膜腔にCT26大腸癌細胞を移植した1週間後に、マウスサバイビン/CD40L/GM-CSF遺伝子を内包するポリプレックスミセルを腹腔内投与して、マウスの生存期間をモニターしたことを示す図である。
【図9】CT26大腸癌細胞をマウス脇腹領域皮下に移植した翌日、腹腔内に、SART3及び図示したアジュバント遺伝子を内包するブロック/ホモ混合ポリプレックスミセル(pDNA60μg、NP比=10)を投与した図である。アジュバント遺伝子は、(A)CD40L+GM-CSF、(B)“28=scFv28-CD86キメラ”である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において以下で、本発明が詳細に記載される。後述の実施形態は、単に本発明を記載するための例示の目的で提示することを意図し、以下の実施形態のみに限定されない。本発明は、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の方法で実施され得る。

【0026】
本出願において引用される刊行物、公開された特許出願、特許および他の特許文書の全てが、本明細書において参照によりその全体が組み込まれる。本出願は、本明細書により、2013年4月5日付けで出願された日本国特許出願(第2013-079854号)における明細書および図面の内容を参照により組み込み、これに基づく優先権を主張する。

【0027】
第1の実施形態において、本発明は、少なくとも1つの腫瘍関連抗原遺伝子および少なくとも1つのアジュバント遺伝子を内包するミセルである、腫瘍を治療するための医薬組成物を提供する。本明細書において以下で、ミセルは、本発明の「DNAワクチン」としても表され得る。

【0028】
本発明において、腫瘍関連抗原遺伝子は、T細胞により認識される扁平上皮癌抗原-3(SART3)、Yボックス結合タンパク質1(YB-1)、細胞表面関連ムチン1(MUC1)およびサバイビンからなる群から選択される少なくとも1つである。

【0029】
上に挙げたTAA遺伝子の図解のヌクレオチド配列は、以下の表1において要約される。しかしながら、TAA遺伝子のヌクレオチド配列は、表において示されるものに限定されず、その相同遺伝子のヌクレオチド配列も含む。

【0030】
【表1】
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【0031】
さらに、アジュバント遺伝子は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびCD40Lからなる群から選択される少なくとも1つである。

【0032】
上に挙げたアジュバント遺伝子の図解のヌクレオチド配列は、以下の表2において要約される。しかしながら、アジュバント遺伝子のヌクレオチド配列は、表において示されるものに限定されず、その相同遺伝子のヌクレオチド配列も含む。

【0033】
【表2】
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【0034】
あるいは、アジュバント遺伝子は、28scFv(LH)-CD86キメラ、または28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有する、その変異体であり得る。28scFv(LH)-CD86キメラまたはその変異体を含むポリヌクレオチドは、以下の(a)~(e):
(a)配列番号13のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号14のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(c)1~40個のアミノ酸が配列番号14のアミノ酸配列において欠失、置換、挿入および/または付加されているアミノ酸配列からなり、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列を有し、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号13のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、28scFv(LH)-CD86キメラの活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
からなる群から選択され得る。

【0035】
28scFv(LH)-CD86キメラまたはその変異体を含むポリヌクレオチドは、GM-CSFおよびCD40Lのいずれか1つまたは両方と組み合わせて用いられ得る。

【0036】
本明細書で用いられる、用語「ポリヌクレオチド」は、DNAまたはRNAを意味する。

【0037】
本明細書で用いられる、用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、プローブとして、例えば、配列番号13のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、または配列番号14のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの全体もしくは部分を用いた、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などにより得られたポリヌクレオチドを指す。ハイブリダイゼーション法について、例えば、「Sambrook & Russell, Molecular Cloning; A Laboratory Manual Vol. 3, Cold Spring Harbor, Laboratory Press 2001」および「Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987-1997」などに記載される方法が用いられる。

【0038】
本明細書で用いられる、用語「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中程度のストリンジェントな条件または高ストリンジェントな条件のいずれかであり得る。用語「低ストリンジェントな条件」は、例えば、32℃での5×SSC、5×デンハート液、0.5%SDS、50%ホルムアミドである。用語「中程度のストリンジェントな条件」は、例えば、42℃での5×SSC、5×デンハート液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、または42℃での5×SSC、1%SDS、50mMトリス-HCl(pH7.5)、50%ホルムアミドである。用語「高ストリンジェントな条件」は、例えば、50℃での5×SSC、5×デンハート液、0.5%SDS、50%ホルムアミドまたは65℃での0.2×SSC、0.1%SDSである。これらの条件下で、より高い相同性を有するDNAが、より高い温度で効率的に得られると予想されるが、温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度などを含む複数の因子が、ハイブリダイゼーション ストリンジェンシーに関与し、当業者は、これらの因子を適宜選択して、同様のストリンジェンシーを達成し得る。

【0039】
市販のキットが、ハイブリダイゼーションのため用いられるとき、例えば、Alkphos Direct Labeling and Detection System(GE Healthcare)が用いられ得る。この場合、添付のプロトコールに従い、標識プローブと一晩培養後、0.1%(w/v)SDSを含有する一次洗浄緩衝液で55℃にて膜を洗浄し、これにより、ハイブリダイズしたDNAを検出する。あるいは、配列番号13のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、または配列番号14のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の全体もしくは部分に基づくプローブの生産において、プローブが、市販の試薬(例えば、PCR Labeling Mix(Roche Diagnostics)など)を用いてジゴキシゲニン(DIG)で標識されるとき、ハイブリダイゼーションは、DIG Nucleic Acid Detection Kit(Roche Diagnostics)で検出され得る。

【0040】
上述のものに加えて、ハイブリダイズし得る他のポリヌクレオチドは、デフォルトのパラメーターを用いて、相同性検索ソフトウェア、例えば、FASTAおよびBLASTにより計算される、配列番号13のDNA、または配列番号14のアミノ酸配列をコードするDNAに対して70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上または99.9%以上の同一性を有するDNAを含む。

【0041】
アミノ酸配列またはヌクレオチド配列間の同一性は、KarlinおよびAltschul(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 2264-2268, 1990、Proc. Nail Acad. Sci. USA, 90: 5873, 1993)によるアルゴリズムBLASTを用いて決定され得る。BLASTアルゴリズムに基づくBLASTN、BLASTX、BLASTP、tBLASTNおよびtBLASTXと呼ばれるプログラムが、開発されている(Altschul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215: 403, 1990)。ヌクレオチド配列がBLASTNを用いて配列決定されるとき、パラメーターは、例えば、スコア=100およびワード長=12である。アミノ酸配列がBLASTPを用いて配列決定されるとき、パラメーターは、例えば、スコア=50およびワード長=3である。BLASTおよびGapped BLASTプログラムが用いられるとき、プログラムのそれぞれについてデフォルトのパラメーターが利用される。

【0042】
上述の本発明のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子操作技術、公知の合成方法などにより獲得され得る。

【0043】
腫瘍の例は、(1)肉腫、例えば、骨肉腫および軟部組織肉腫、(2)癌腫、例えば、乳房の癌腫、肺の癌腫、膀胱の癌腫、甲状腺の癌腫、前立腺の癌腫、結腸の癌腫、結腸直腸の癌腫、膵臓の癌腫、胃の癌腫、肝臓の癌腫、子宮の癌腫、子宮頸部の癌腫および卵巣の癌腫、(3)リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、(4)神経芽細胞腫、(5)メラノーマ、(6)ミエローマ、(7)ウィルムス腫瘍、(8)白血病、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および慢性リンパ性白血病(CLL)、(9)グリオーマ、および(10)網膜芽細胞腫を含む。

【0044】
腫瘍関連抗原(TAA)遺伝子およびアジュバント遺伝子は、発現ベクターの形態において適当な発現カセットに挿入され得る。適当な発現カセットは、以下の構成物(i)~(iii):
(i)標的腫瘍細胞において転写可能なプロモーター、
(ii)プロモーターにインフレームでライゲーションされた遺伝子、および
(iii)RNA分子の転写終結およびポリアデニル化シグナルをコードする配列
を少なくとも含有する。

【0045】
標的腫瘍細胞において転写可能なプロモーターの例は、CMV、CAG、LTR、EF-1αおよびSV40プロモーターを含むが、これらに限定されない。

【0046】
発現カセットの例は、挿入された遺伝子を発現することができる限り、制限されないが、pEGFP-C1(商標)(Clontech)、pCMV-HA(商標)(Clontech)、pMSCVpuro(商標)(Clontech)、pEF-DEST51(商標)(Invitrogen)、pCEP4(商標)(Invitrogen)、ViraPower II Lentiviral Gateway System(商標)(Invitrogen)、pVIVO1-mcs2プラスミド(Invitrogen)を含む。

【0047】
本発明の組成物がDNAワクチンとして用いられる場合、遺伝子導入は、ミセルが身体に直接的に注射される直接投与、またはベクターが、遺伝子導入のため対象自身の細胞または他の細胞に感染し、次に、感染細胞が標的部位に注射される間接投与のいずれかにより達成され得る。ベクターの直接的注射のため、腹腔内注射なども用いられ得る。

【0048】
あるいは、本発明のミセルは、ポリプレックスミセルまたはリポソームを含むポリイオン複合体ミセルであり得る。かかるミセルを用いて、そこに内包されるTAA遺伝子およびアジュバント遺伝子が、リポフェクションのように細胞に導入される。次に、得られた細胞が、例えば、静脈内経路または動脈内経路により全身性に投与される。それらは、標的組織、例えば、脳などに局所性に投与され得る。

【0049】
ポリイオン複合体ミセルを形成するために用いられ得る脂質の例は、リン脂質、コレステロールおよび窒素含有脂質を含む。天然のリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、およびリゾレシチンを含むリン脂質、ならびに標準的方法で得られる水素添加産物が一般に好ましい。合成リン脂質、例えば、リン酸ジセチル、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、エレオステアロイルホスファチジルコリン、エレオステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ならびにホモ-ポリ{N’-[N-(2-アミノエチル)-2-アミノエチル]アスパルトアミド}P[Asp(DET)]およびブロック-カチオマーポリ(エチレングリコール)(PEG)-b-P[Asp(DET)]を用いることも可能である。

【0050】
ミセルの調製は、得られたミセルがDNAを保持する限り、決して制限されない。ミセルは、従来の方法で、例えば、逆相蒸発、エーテル注入、界面活性剤に基づく技術などにより調製され得る。

【0051】
これらのリン脂質を含む脂質は、単独または組合せのいずれかで用いられ得る。DNA分子は電気的に負であるので、DNA、すなわち、TAAおよびアジュバント遺伝子とミセルの間の結合率は、カチオン基(例えば、エタノールアミンまたはコリン)を有する原子団を含有する脂質を用いることにより、増強され得る。これらのリン脂質に加えて、他の添加物、例えば、コレステロール、ステアリルアミン、α-トコフェロールなどをミセルにおいて用いることも可能であり、これらは、ミセル形成添加物として一般的に公知である。このようにして得られたミセルは、標的組織の患部での細胞へのこれらの取り込みを増強するために、膜融合プロモーター(例えば、ポリエチレングリコール)をさらに含んでもよい。

【0052】
本発明によるDNAワクチンまたは医薬組成物は、所定の方法で製剤され、ミセルを懸濁するための薬学的に許容される担体を含み得る。かかる担体は、添加物であり得、水、緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、薬学的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶解性デキストラン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、および医薬添加剤などとして許容可能な界面活性剤を含む。

【0053】
上記添加剤は、本発明のそれぞれの治療剤の投薬形態に依存して、単独または上に挙げたもののなかから組み合わせて選択され得る。例えば、注射可能な製剤として使用するため、精製されたベクターが、溶媒(例えば、生理学的食塩水、緩衝液、グルコース溶液)に溶解され、次に、Tween80、Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミンなどを補足した。あるいは、成分は、使用前に再構成される投薬形態としての使用のため凍結乾燥され得る。凍結乾燥のための賦形剤の例は、糖、例えば、マンニトール、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトールおよびソルビトール、デンプン、例えば、トウモロコシ、麦、米、ジャガイモおよび他の植物からもたらされるもの、セルロース、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、ゴム、例えば、アラビアゴムおよびトラガカントゴム、ならびにゼラチン、コラーゲンなどを含む。

【0054】
第2の実施形態において、本発明は、腫瘍を予防および/または治療する方法であって、少なくとも1つの腫瘍関連抗原遺伝子および少なくとも1つのアジュバント遺伝子を内包するミセルをかかる治療を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。

【0055】
本発明のDNAワクチンを投与されるべき対象(被験対象)は、例えば、ヒトおよび他の全ての哺乳類、例えば、非ヒト霊長類(例えば、サル)、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシおよびイヌを含み、ヒトがより好ましい。対象はまた、例えば、癌、例えば、結腸癌に罹患しているもの、癌、例えば、結腸癌を有することが疑われるものであってもよい。

【0056】
本発明のDNAワクチンの投薬量は、対象の年齢、性別および症状、投与経路、投与頻度、ならびに意図される投薬形態に依存して変動するであろう。投与様式は、対象の年齢および症状に応じて選択される。DNAワクチンの有効な投薬量は、疾患の兆候または状態を低減するのに必要なワクチンの量である。かかるDNAワクチンの治療効果および毒性は、細胞培養におけるまたは実験動物における標準的医薬的手法により、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効な用量)またはLD50(集団の50%についての致死用量)アッセイにより、決定され得る。

【0057】
投与の経路は、必要に応じて選択され得、例は、経皮経路、鼻腔内経路、経気管支経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路および皮下経路を含むが、これらに限定されない。特に好ましい経路は、腹腔内投与、皮下投与などである。接種は、単一の部位にてまたは複数の部位にてなされ得る。

【0058】
発現ベクターの種類は、必要に応じて選択され得、例は、プラスミドベクターを含むが、これに限定されない。一般的に好ましいベクター、例えば、アデノウイルス遺伝子ベクター、アデノ随伴ウイルス遺伝子ベクター、ワクシニアウイルス遺伝子ベクター、センダイウイルス遺伝子ベクターおよびポックスウイルス遺伝子ベクターも、本発明のため用いることが可能である。治療効果と毒性作用の間の用量比は、治療指標であり、ED50/LD50として表され得る。ヒトにおいて、本発明のワクチンの1回投薬量は、約1μg~1000μg、好ましくは、約10~500μg、より好ましくは、約50~250μgである。投与頻度は、副作用が臨床上許容可能な範囲内にある限り、1回または複数回であり得る。
【実施例】
【0059】
本発明は、ここで、以下の実施例を用いて詳細に記載される。しかしながら、本発明の範囲は、実施例に限定されず、添付の請求の範囲により考慮されるべきである。
【実施例】
【0060】
材料および方法
プラスミドDNAコンストラクト
GM-CSF、CD40L、T細胞により認識される扁平上皮癌抗原-3(SART3)およびYボックス結合タンパク質1(YB-1)遺伝子の発現プラスミドを以下の通り構築した。マウスGM-CSF、CD40L、SART3またはヒトYB-1遺伝子の部分配列(1~121のアミノ酸に対応する)のオープンリーディングフレームを、pVIVO1-mcs2プラスミド(Invivogen)におけるマルチクローニングサイトにて組み込んだ。プラスミドDNAを、大腸菌(Escherichia coli)DH5Aコンピテント細胞において増幅し、EndoFree Plasmid Giga Kit(QIAGEN inc.)を用いて精製した。
【実施例】
【0061】
pDNAを内包するポリプレックスミセルの調製
既に報告された[参考文献19、22]通り合成したホモ-ポリ{N’-[N-(2-アミノエチル)-2-アミノエチル]アスパルトアミド}、P[Asp(DET)](重合度(DP):55)およびブロック-カチオマーポリ(エチレングリコール)、(PEG)-b-P[Asp(DET)](PEGのMw:12000、DP:65)を、日油株式会社(川崎、日本)から親切にも提供いただいた。pDNA(50μg)、PEG-b-P[Asp(DET)]およびP[Asp(DET)]を10mM HEPES緩衝液(pH7.3)において、ブロック/ホモ比7/3およびN/P比10(N=ポリカチオンにおける総アミン、P=pDNAにおける総リン酸陰イオン)にて混合することにより、ポリプレックスミセルを調製した。検出角度160°のHe-Neイオンレーザー(633nm)を入射ビームとして備えた、ELSZ-SV2(大塚電子株式会社)を用いて25℃にて、動的光散乱(DLS)測定を行った。キュムラント法により、光相関関数における減衰の比を分析し、次に、ストークス・アインシュタインの式により、ポリプレックスの対応する流体力学的径を計算した。
【実施例】
【0062】
細胞株
マウス大腸癌腫(CT26)、リンパ腫(YAC-1)およびルイス肺癌(3LL/LLC)を、American Type Culture Collectionから得た。これらの細胞を、10%熱失活ウシ胎児血清(FBS、和光純薬工業株式会社)、100U/ml ペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシンを添加したRPMI1640培地(ナカライテスク株式会社)において37℃で5%COを含有する加湿インキュベーターにて培養した。
【実施例】
【0063】
動物
BALB/c AnNCrlCrljマウス(メス、6週齢)およびC57BL/6J(メス、6週齢)を、日本チャールス・リバー株式会社(横浜、日本)から購入した。12/12時間の明/暗サイクル下、温度を制御した部屋に動物を収容し、自由に食餌および水の摂取にアクセスさせた。全ての動物の手法は、九州大学の動物の愛護および使用委員会の動物実験の施設ガイドラインに従い承認され、行われた。
【実施例】
【0064】
i.p.投与後のポリプレックスミセル分布
[Kumagai A]らが既に報告した方法で、Fluolid蛍光でPEG-b-P[Asp(DET)]を標識した。pVIVO-1-Mockを有する蛍光標識PEG-b-P[Asp(DET)]/P[Asp(DET)]混合ミセルを、マウスの腹膜腔に投与した。24時間後、いくつかの器官組織(肝臓、脾臓およびリンパ節)を得て、蛍光標識ポリプレックスミセルの組織局在を、レーザー共焦点顕微鏡下で調べた。
【実施例】
【0065】
i.p.投与後のポリプレックスミセルからの遺伝子発現の局在
GM-CSF遺伝子を内包するPEG-b-P[Asp(DET)]/P[Asp(DET)]混合ミセルを、マウスの腹腔内に投与し、1日、3日および7日(それぞれにおいてn=4)にて、器官組織(肝臓、脾臓、肺、腎臓およびリンパ節)を得た。RNA抽出キット(Roche)を用いて、総RNA試料を抽出し、その後、既に報告された[Ohgitani M]通り、合成したcDNA試料を、GM-CSF遺伝子発現についてリアルタイムRT-PCR分析にかけた。
【実施例】
【0066】
マウス腫瘍モデルおよびワクチン接種プロトコール
外科的切除後に、微小転移を有する癌の対象を模倣するためのアジュバント設定のため、治療ワクチンとしてワクチン接種プロトコールを設計した。本発明者らは、2種類の同系腫瘍モデル、BALB/cマウスにおいてマウス大腸癌CT26細胞、およびC57/BL6マウスにおいて高い転移の可能性を有するマウス肺癌LLC細胞で発生させた腹膜播種および皮下腫瘍モデルを作成した。
【実施例】
【0067】
腹膜播種モデルのため、BALB/cマウスの腹腔内にCT26細胞(1×10細胞/マウス)を接種した(0日)。その後、1週間の間隔毎に4回(1日、8日、15日および22日)、示した遺伝子(表3)を内包するポリプレックスミセルを腹腔内投与した。CT26細胞の第1の接種後80日まで、マウスの生存をモニターして、DNAワクチンを内包するポリプレックスミセルの抗腫瘍効果を評価した。CT26特異的拒絶免疫の獲得を調べるために、CT26細胞(1×10細胞/マウス)を80日より長く生存したマウス(長期生存者)の脇腹領域の皮下に接種した(再移植実験)。CT26細胞の再移植後60日間、注射部位での皮下腫瘍の発生率および成長を注意深く観察した。一部の実験において、長期生存マウスから脾細胞を新たに単離し、CTLおよびNK細胞傷害アッセイにかけて、これらの細胞の抗腫瘍免疫活性を調べた。
【実施例】
【0068】
皮下腫瘍モデル作成のため、同系CT26細胞またはLLC細胞(共に、1×10細胞/マウス)を、それぞれBALB/cまたはC57/BL6マウスの脇腹領域の皮下に移植した(0日)。次に、1週間間隔で4回(1日、8日、15日および22日)、図示した遺伝子(表3)を内包するポリプレックスミセルを腹腔内に投与した。BALB/cマウスについては14日目に、C57/BL6マウスについては(28日未満に死亡したマウスを除き)28日目にマウスを屠殺した。群間で皮下腫瘍の重量を比較して、ポリプレックスミセル搭載DNAワクチンの抗腫瘍効果を評価した。腫瘍およびいくつかの器官組織を採取し、採取した組織はOCTコンパウンドに包埋し、液体窒素内でスナップ凍結させた。組織化学染色で3LL/LLC腫瘍モデルにおける肺転移の有無を調べ、免疫組織染色で脾臓、リンパ節および腫瘍組織への免疫細胞浸潤を検討した。一部の実験において、CTLおよびNK細胞傷害アッセイのため脾細胞を別途新たに単離し、標的CT26、LLC、またはYAC-1細胞と共培養した。
【実施例】
【0069】
鼠径部領域におけるDNAワクチンの皮下投与
N/P比10にて、PEG-b-[Pasp(DET)]/Pasp(DET)でSART3、CD40LおよびGM-CSFのpDNA(計50μg)を内包した。CT26大腸癌腹膜播種を宿しているマウスの鼠径部領域において、ポリプレックスミセル搭載DNAワクチンを皮下投与した。
【実施例】
【0070】
CTLおよびNKアッセイ(CFSEに基づく細胞傷害アッセイ)
細胞増殖を停止するため、CT26またはLLC細胞を20Gy照射で処理した。10%FBS、5×10-5M 2-メルカプトエタノール、100U/ml ペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地(ナカライテスク株式会社)20mlを用いて、37℃で5%COを含有する加湿インキュベーター内で、CT26およびLLC皮下腫瘍マウスから単離した脾細胞(5×10細胞)を、放射線照射で増殖停止させたCT26またはLLC/3LL(5×10細胞)と共培養した。72時間のインキュベーション後、これらの脾細胞を回収し、既に記載された通り[参考文献23]、CTLおよびNKアッセイのためのエフェクター細胞として用いた。
【実施例】
【0071】
CT26または3LL/LLC(CTLアッセイのため)、およびYAC-1標的細胞(NKアッセイのため)を、密度20×10細胞/mLにてRPMI-1640培地で再懸濁し、37℃で10分間、10μM CFSE(株式会社同仁化学研究所)で標識した。当量のウシ胎児血清(FCS)を加えることにより、標識反応を停止させた。RPMI培地で2回洗浄後、異なる標的細胞/エフェクター(T/E)比、1/0、1/25、1/50または1/100(T:1×10細胞/E:それぞれ、0、25×10、50×10、100×10細胞)となるように、RPMI培地200μlを用いてCFSE標識標的細胞をエフェクター細胞と直ちに混合し、5%COおよび37℃の加湿状態でさらに6時間インキュベーションした。フローサイトメトリー(BD FACS CANT-II)分析の直前に、Flow-Count Fluorospheres(それぞれの試料において10,000、Coulter Corporation)およびヨウ化プロピジウム(1μg/mL、死亡細胞のマーカー)を細胞混合物に加えた。標的細胞の数を揃えるため、Cell Questソフトウェアでの事象カウントで2,000個のミクロビーズを指標にした。生存の割合を以下の通り計算した:[T/E比1/25~1/100についての生CFSE標的細胞数]を[T/E比1/0についての生CFSE標的細胞数]で割り、100倍した。
【実施例】
【0072】
CTLアッセイにおけるMHCおよびSART3ブロッキング実験
CTLアッセイにおいて標的細胞の分解(target cell lysis)が主要組織適合複合体(MHC)に拘束されるかを分析するために、中和抗体を用いて阻害(ブロッキング)実験を行った。エフェクター細胞と混合する前に、30分間、標的細胞を飽和濃度の抗MHCクラスIモノクローナル抗体(H-2L:28-14-8、BioLegendおよびH-2K:SF1-1.1.1、eBioScience)とインキュベーションした。あるいは、CTLアッセイにおいて標的細胞の分解のTAA特異性を確認するために、製造元のプロトコール(Life techonology(商標))に従い、リポフェクタミン2000を用いてsiRNA(センス:5’-CUACAGUCAGUACCUAGAUTT-3’(配列番号15)およびアンチセンス:5’-AUCUAGGUACUGACUGUAGTT-3’(配列番号16))により、CT26においてSART3発現をノックダウンした。リアルタイムRT-PCR法により、mRNAノックダウンの効率を確認した。MHC分子をブロッキング後またはSART3発現をノックダウン後、CTLアッセイのため、いくつかのE/T比で処理したCT26細胞をエフェクター細胞と混合した。
【実施例】
【0073】
リアルタイムRT-PCR
illustra(商標)RNAspin Mini RNA Isolation Kit(GE Healthcare)を用いて、総RNAを抽出し、Transcriptior First Strand cDNA synthesis Kit(Roche Applied Science)を用いて、cDNAを合成した。既に報告された[参考文献24]通り、LightCycler480 II system(Roche Diagnostics)において、GM-CSFおよびベータ-アクチンについての公開されたプライマーセット、ならびにSART3について5’-GTGAGCTCTTCCCCCTGAC-3’(配列番号17)および5’-CATGCTGATCTCATCGTGGA-3’(配列番号18)を用いて、マウスGM-CSF、SART3およびβ-アクチン(ハウスキーピング遺伝子)についてのリアルタイムRT-PCRを行った。
【実施例】
【0074】
SART3、CD40LおよびGM-CSFを内包するリポソーム搭載DNAワクチン
製造元のプロトコールに従い、リポソーム(Coatsome EL-01-C、日油株式会社)でSART3、CD40LおよびGM-CSFのpDNA(計50μg)を内包した。ポリプレックスミセル搭載DNAワクチンと同様に、CT26腹膜播種マウスにおいて、リポソーム搭載DNAワクチンを腹腔内に投与した。
【実施例】
【0075】
組織免疫化学
皮下腫瘍モデルにおける腫瘍、肺および免疫器官組織(脾臓、肝臓およびリンパ節)を、厚さ10μmに薄切し、10分間氷冷アセトンで固定した。切片を3%Hおよび1%ウシ血清アルブミンで浸漬して、内在性ペルオキシダーゼ活性を失活させた。室温で1時間、標本を、CD4(1:250、番号100505、BioLegend)、CD8a(1:1000、番号100701、BioLegend)、CD11c(1:500、ab33483、Abcam)、またはGM-CSF(1:1000、ab13789、Abcam)についての一次抗体と、次に、VECTASTAINビオチン/アビジンシステム(ベクター、USA)を用いてインキュベーションし、続いて、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)およびヘマトキシリン対比染色で可視化した。光学顕微鏡(ECLIPSE 55i、株式会社ニコン)下でデジタル画像データとして免疫染色のシグナルを取得し、NIS-Elements D 3.2定量分析プログラム(株式会社ニコン)で発現レベルを定量化した。
【実施例】
【0076】
統計的分析
結果を平均±標準偏差(SD)として表す。2群間の有意差はスチューデントt検定を用いて、また複数群間は分散分析(ANOVA)を用いて統計学的に検討した。カプラン・マイヤー法により生存曲線を作成しログランク検定で検定した。0.05未満のP値を、統計的に有意であるとみなした。
【実施例】
【0077】
遺伝子ワクチンのTAAとしてのMUC1およびサバイビンの検証
BALB/cマウスの腹腔内にCT26大腸癌細胞を移植した。1週間後、マウスMUC1/CD40L/GM-CSF遺伝子またはマウスサバイビン/CD40L/GM-CSF遺伝子を内包するポリプレックスミセルを腹腔内投与し、マウスの生存期間をモニターした。
【実施例】
【0078】
CD86分子に融合した抗CD28抗体の可変断片の1本鎖のキメラはアジュバント効果を有する
共刺激分子(co-stimulatory molecule)としてのCD28に対する1本鎖抗体の遺伝子配列情報(scFv28:配列番号14の28~140番目および156~278番目のアミノ酸残基)を、Kumagaiおよび同僚らにより報告されたアンタゴニスト抗CD28抗体の配列情報から得た。次に、本発明者らは、CD86のシグナル配列(配列番号14の1~27番目)の直後に第1のスペーサー配列(配列番号14の141~155番目のアミノ酸残基)を挟んでscFv28配列を、更に第2のスペーサー配列(配列番号14の279~283番目のアミノ酸残基)の後ろにCD86の284~499番目のアミノ酸残基を融合したキメラアジュバント遺伝子:scFv28-CD86(配列番号13)を生成した。CT26大腸癌細胞(1×10/マウス)をマウス脇腹領域の皮下に移植し、翌日SART3およびアジュバント遺伝子搭載DNAワクチン(pDNA60μg、NP比=10)を腹腔内に投与した。ワクチン接種を繰り返した(1週間間隔で4回)後、28日目に皮下腫瘍を採取して、DNAワクチンとmockコントロール群の間で腫瘍重量を比較した。
【実施例】
【0079】
参考文献
22. Itaka K, Ishii T, Hasegawa Y, Kataoka K (2010) Biodegradable polyamino acid-based polycations as safe and effective gene carrier minimizing cumulative toxicity. Biomaterials 31: 3707-3714.
23. Furugaki K, Pokorna K, Le Pogam C, Aoki M, Reboul M, et al. (2010) DNA vaccination with all-trans retinoic acid treatment induces long-term survival and elicits specific immune responses requiring CD4+ and CD8+ T-cell activation in an acute promyelocytic leukemia mouse model. Blood 115: 653-656.
24. Ohgidani M, Furugaki K, Shinkai K, Kunisawa Y, Itaka K, et al. (2013) Block/homo polyplex micelle-based GM-CSF gene therapy via intraperitoneal administration elicits antitumor immunity against peritoneal dissemination and exhibits safety potentials in mice and cynomolgus monkeys. J Control Release 167: 238-247.
【実施例】
【0080】
結果
ポリプレックスミセルの特徴付け
PEG-P[Asp(DET)]、P[Asp(DET)]およびpDNA(50μg)混合ポリプレックス(ブロック/ホモ=7/3、NP=10)は、直径91.3±3.16nmのミセルを形成した。ポリプレックスミセルは、中性ζ-電位値1.55±1.16(mV)を示した。
【実施例】
【0081】
ポリプレックスミセルの組織局在および遺伝子発現
ミセル化した蛍光標識PEG-P[Asp(DET)]、P[Asp(DET)]およびpDNA(50μg)混合ポリプレックス(ブロック/ホモ=7/3、NP=10)は、脾臓およびリンパ節に主に局在した(図1A)。本発明者らは、GM-CSF pDNA内包ポリプレックスミセルのi.p.投与の1日、3日、7日後に、種々の正常器官組織をqRT-PCR解析し、治療遺伝子:GM-CSFの発現レベルおよび分布を調べた。ポリプレックスミセルは、Mockコントロール群と比較して、リンパ節において20倍高いGM-CSF発現および脾臓において24倍高いGM-CSF発現を認めた(図1B)。一方、肺(図1B)、肝臓および腎臓において、有意な発現亢進を検出しなかった。
【実施例】
【0082】
SART3、CD40LおよびGM-CSF遺伝子を内包するポリプレックスミセル搭載DNAワクチンは、腹膜播種マウスの生存期間を延長する
本発明者らは、CT26癌の腹膜播種マウスの生存期間を比較した(表3)。SART3のみを内包するポリプレックスミセル(38.7±6.9日)、CD40Lのみを内包するポリプレックスミセル(44.0±9.9日)またはGM-CSFのみを内包するポリプレックスミセル投与群(44.3±13.3日)は、Mock対照群(32.5±9.8日)と比較して、生存期間を有意に延長しなかった。さらに、CD40L+GM-CSF(39.1±10.3日)、SART3+CD40L(36.0±9.1日)、Mock対照群と比較して、有意な生存期間の延長を認めなかった。SART3+CD40L+GM-CSFの3遺伝子を内包するポリプレックスミセル投与群(62.7±19.1日)、およびSART3+GM-CSF内包ミセル群(50.3±9.8日)がMock対照群(32.5±9.8日)と比較して、有意に長い生存期間を達成した(図6A)。カプラン・マイヤー分析により、SART3またはYB-1+CD40L+GM-CSFを搭載するDNAワクチン群が、Mock対照群より有意に生存率の向上を認めている(P=0.00003、図2B左パネル)。一方、単一遺伝子を有するポリプレックスミセル(図2B 右パネル)またはポリプレックスミセルを有さない裸プラスミド(SART3/CD40L+GM-CSF)(データ非公開)のいずれによっても、生存率の改善は認められなかった。
【実施例】
【0083】
【表3】
JP2016516667A_000004t.gif
【実施例】
【0084】
値を、生存中央値についての平均±SDとして表す(n=6~19)。
P<0.05、**P<0.0001 対 Mock対照群
SART3:T細胞により認識される扁平上皮癌抗原-3
【実施例】
【0085】
SART3、CD40LおよびGM-CSF遺伝子を内包するポリプレックスミセル搭載DNAワクチンは皮下腫瘍の増大を阻害する。
図2Cにおいて示す通り、本発明者らは、CT26またはLLC/3LL皮下腫瘍モデルにおいて、DNAワクチンの腫瘍増大抑制効果も調べた。図2D(左パネル)に示す通り、腹膜播種モデルと同様に、SART3、CD40LおよびGM-CSFの組合せを搭載するDNAワクチンは、Mock対照群と比較して、CT26皮下腫瘍の増大を有意に抑制した(0.22±0.17g対1.3±0.46g、P=0.0001)。一方、CD40L(0.92±0.28g、P=0.2)、SART3(0.89±0.09g、P=0.06)、GM-CSF(0.60±0.40g、P=0.05)、CD40L+GM-CSF(0.58±0.40g、P=0.05)、SART3+GM-CSF(0.73±0.12g、P=0.02)およびSART3+CD40L(0.69±0.49g、P=0.045)治療群においては、腫瘍の増大抑制は認められないか、その抑制の程度は小さなものであった。
【実施例】
【0086】
別のMHC型および腫瘍種に対してもDNAワクチンが有効か否かを検証するために、本発明者らは、異なるハプロタイプのMHCクラス1であるH-2Bを有するCB57/BL6マウスにおいて、LLC/3LL細胞の皮下腫瘍の増大に対する抑制効果を調べた。図2D(右パネル)に示す通り、LLC皮下腫瘍の増大は、SART3、CD40L及びGM-CSFを搭載するDNAワクチン投与(2.0±1.3g)により、Mock対照群(5.5±1.1g、P=0.0004)と比較して、有意に抑制された。一方、SART3(3.7±0.5g)、GM-CSF(5.3±1.5g)、CD40L(5.7±2.7g)、CD40L+GM-CSF(4.3±3.5g)、SART3+GM-CSF(6.5±3.1g)、またはSART3+CD40L(6.4±2.0g)の治療群については、Mock対照群と比較して有意差を認めなかった(図2D 左パネル)。
【実施例】
【0087】
SART3、CD40LおよびGM-CSF遺伝子を内包するポリプレックスミセル搭載DNAワクチンはLLC皮下腫瘍の肺転移を阻害する
LLC/3LL癌は高い転移性形質を有することが報告されており、本発明者らは、DNAワクチンまたはMock遺伝子を内包するポリプレックスミセルのi.p.投与後4週間目に、LLC皮下腫瘍マウスにおける肺転移を検索した。予想した通り、組織学的検査により対照群100%(4/4例)で肺転移が認められた(図3A、左パネル)。一方、SART3、CD40およびGM-CSFの組合せを搭載するDNAワクチンを投与した全てのマウスは、肺転移を認めず(0/4例、図3A、右パネル)、腫瘍の増大の抑制も認めている(図2D、左パネル)。DNAワクチン群の肺組織に転移結節は認められなかった代わりに免疫細胞が肺組織に多く浸潤していた。従って、本発明者らは、GM-CSF、CD11c、CD4およびCD8aについて免疫組織化学分析を行い、GM-CSF、CD4およびCD8a陽性免疫細胞の浸潤が、Mock対照群と比較して、2倍程度増加していることを見出した(それぞれ、P=0.006、0.024、および0.001、それぞれにおいてn=4、図3B)。
【実施例】
【0088】
DNAワクチンの鼠径部皮下投与は腹膜播種を有するマウスの生存を延長する
左パネルは、ポリプレックスミセル搭載DNAワクチンが、Mock対照群および生理食塩水対照群と比較して、CT26腹膜播種マウスの生存期間を延長したことを示す(ログランク検定:各々、P=0.02およびP=0.005)。右パネルは、Fluolid標識ポリプレックスミセルが、マウス鼠径部リンパ節に送達されていることを示す(図6B)。
【実施例】
【0089】
SART3、CD40LおよびGM-CSFを内包するリポソーム搭載DNAワクチンはCT26腹膜播種マウスの生存を延長する
リポソーム搭載DNAワクチンは、Mock対照群(32.5±9.8日、ログランク検定: P=0.06と比較して、CT26腹膜播種マウスの生存期間を延長した(48.0±19.5日)。
【実施例】
【0090】
CTLおよびNK細胞傷害性はSART3、CD40LおよびGM-CSF遺伝子を発現するポリプレックスミセル搭載DNAワクチンにより増強される
BALB/cおよびCB57/BL6マウスは正常免疫系を有し、2つの機序:自然免疫および/または獲得免疫による抗腫瘍効果があり得ると仮定した。自然免疫の活性化は獲得免疫の誘導に必須とされるので、まず、本発明者らはNK細胞活性を解析した。YAC-1細胞は、マウスリンパ腫に由来し、NK細胞による殺傷作用に対する感受性が高い。Mock遺伝子、SART3遺伝子のみ、またはCD40L遺伝子のみを内包するポリプレックスミセルのいずれも、NK活性を亢進しなかった(図4A、左の上部のパネル)。一方、GM-CSF遺伝子導入、例えば、GM-CSFのみ、GM-CSF+SART3およびGM-CSF+SART3/CD40Lを発現するポリプレックスミセルは、NK活性を明らかに活性化した(図4A、左上部のパネル)。
【実施例】
【0091】
本発明者らは、CTL活性を高感度に評価できる、CT26またはLLC/3LLの標的細胞を用いたCFSEに基づく細胞傷害性アッセイを評価方法として用いた。CT26皮下腫瘍モデル(図4A、左の一番下のパネル)において、CFSE標識された標的CT26細胞は、SART3、CD40LおよびGM-CSFの遺伝子搭載DNAワクチン投与により低減し、その程度は脾細胞エフェクター/標的細胞の比に依存性であったが、Mock対照群、GM-CSFのみまたはGM-CSF+SART3群では、顕著な変化を認めなかった(図4A、左の一番下のパネル)。LLC/3LL皮下腫瘍モデル(図4A、右の一番下のパネル)において、CFSE標識された標的LLC/3LL細胞は、DNAワクチン群ではエフェクター/標的細胞比に比例して低減したが、対照群では低減を認めなかった(図4A、右の一番下のパネル)。BALB/cマウスは、MHCハプロタイプ「d」を有し、一方、C57BL/6マウスは、ハプロタイプ「b」を有する。これらの結果を合わせて考慮すると、本発明DNAワクチンが、腫瘍特異的抗原の全配列を使用することで有効な抗原エピトープの同定を省略できるという利点を示しており、また、種々のMHCハプロタイプを持つ患者に対しても投与適応があることを示唆する。
【実施例】
【0092】
YB-1遺伝子搭載DNAワクチンはCTL活性化および抗腫瘍効果を誘導するためのこのワクチンプラットフォームの有用性を表す
DNAワクチンプラットフォームが、他のTAAでも機能するかどうかを調べるために、本発明者らは、YB-1、CD40LおよびGM-CSFの組合せを搭載するDNAワクチンを、CT26腹膜播種マウスに投与した。SART3を搭載するDNAワクチンと同様に、YB-1搭載DNAワクチンは、Mock対照群(32.5±9.8日)より有意に生存期間(47.2±12.8日)を延長し、カプラン・マイヤー分析で有意に生存率の改善を認めている(P=0.02、図2B 左パネル)。さらに、SART3搭載DNAワクチンで認められたように、高いCTLおよびNK活性が誘発された(図4A)。
【実施例】
【0093】
同癌再移植(リ・チャレンジ)実験はDNAワクチン治療により拒絶記憶免疫が定着したことを示唆する
CT26腹膜播種モデルにおいて、SART3、CD40LおよびGM-CSF遺伝子を有するDNAワクチンを接種したマウスにのみ長期生存例が認められた。DNAワクチン接種マウスはCT26特異的な拒絶記憶免疫を獲得したかどうかを明らかにするために、長期生存マウスにCT26癌細胞の再移植(1×10細胞)を行い、非ワクチン接種マウス(対照群)と比較した。図4Bに示す通り、DNAワクチン群では、再移植したCT26癌細胞を完全に拒絶したが(全8例)、対照マウスでは皮下腫瘍が形成された。CT26拒絶の機序に関連するデータとして、DNAワクチン接種マウスのCTL活性はNK活性と同様に(データ非公開)活性化を認め、その程度はエフェクター/標的細胞比に依存して増大した(図4C)。一方、対照マウスにおいてはCTL、NK活性はいずれも変化しなかった(図4C)。
【実施例】
【0094】
CTLの細胞殺傷活性のTAAおよびMHC分子に対する特異性
CTL活性がMHC拘束性に生じることを確認するために、本発明者らは、MHC(H-2LおよびH-2D)中和抗体を用いて、MHC阻害によりCTL活性の変化を検討した(図4D)。SART3、CD40LおよびGM-CSF遺伝子発現DNAワクチンを接種したマウスから単離した脾細胞のCTL活性は、MHC阻害条件下で、対照値の3分の1まで顕著に減退した。CTL活性のTAA特異性を調べるために、本発明者らは、SART3標的siRNAを用いてCT26細胞でSART3発現をノックダウンし、mRNA発現がsiRNA対照の30%まで低下することを確認した。CTL活性の低下は、残ったSART3発現に起因したMHC阻害ほどではないものの、SART3サイレンシングCT26細胞に対するDNAワクチン治療マウス由来の脾細胞のCTL活性は、無治療の対照群と比較して低減した(図4D)。これらの結果は、DNAワクチンにより誘発されるCTL活性には、MHCクラス1分子に提示されたSART3ペプチドが介在することを示唆する。
【実施例】
【0095】
免疫組織染色分析は、GM-CSF、CD11c、CD4、および/またはCD8a陽性免疫細胞のリンパ節、脾臓および腫瘍への浸潤がDNAワクチン治療によって亢進することを示す
免疫組織染色法の解析により、リンパ節、脾臓および腫瘍組織において、GM-CSF、CD11c、CD4、CD8aを発現する免疫細胞の浸潤度の変化が明らかになった(図5)。DNAワクチン接種7日後の脾臓を除き、対照と比較してDNAワクチン群の7~21日のリンパ節および脾臓におけるGM-CSF、CD11c発現細胞は数倍増加した。腫瘍組織のCD4、CD8a発現は、治療後早期(7日)ではDNAワクチン群とMock対照群の間に有意差は認めなかった。その後14日(右パネル 写真)および21日に、CD4およびCD8a陽性細胞数の増加をDNAワクチン群のみで認めている。定量分析の結果(左パネル)は、対照群に比較してDNAワクチン群で腫瘍におけるCD4およびCD8aの発現レベルがワクチン接種14日後および21日後に3~10倍高かったことを示す。
【実施例】
【0096】
遺伝子ワクチンのTAAとしてのMUC1およびサバイビンの検証
MUC1またはサバイビンTAA遺伝子を搭載したDNAワクチンにより、生存期間は両方ともMock対照群より有意に延長した(それぞれ、32.3±8.2対24.9±3.1日、32.4±6.8対25.0±3.0日)。カプラン・マイヤー分析において、MUC1遺伝子搭載DNAワクチンおよびサバイビン遺伝子搭載DNAワクチンは両治療とも生存率を有意に改善することを示し(ログランク検定:図7および図8においてP<0.05)、これは、MUC1およびサバイビンが、DNAワクチンのための有用なTAAであることを示唆する。
【実施例】
【0097】
CD86分子と、抗CD28抗体の可変領域断片の一本鎖が融合したキメラ分子は、アジュバント効果を有する
SART3/scFv28-CD86、SART3/scFv28-CD86/GM-CSFおよびSART3/scFv28-CD86/GM-CSF/CD40L搭載DNAワクチン治療群の腫瘍重量は、SART3+GM-CSF+CD40L搭載DNAワクチンおよびMock対照群に比較して有意に低かった(図9においてそれぞれ、0.92±0.1(中央値0.55)g、0.59±0.1(中央値0.51)g、1.2±0.9(中央値0.55)g対2.4±0.3(中央値2.5)g、5.2±0.2(中央値5.0)g)。これらの結果は、scFv28-CD86キメラ遺伝子が、DNAワクチンのアジュバント効果を有することを示唆する。

【実施例】
【0098】
考察
本発明者らは、本研究において新規DNAワクチンを構築した。腹膜播種マウスモデルにおいて、腫瘍関連抗原(TAA):SART3またはYB-1遺伝子ならびにCD40LおよびGM-CSFアジュバント遺伝子を搭載したDNAワクチンは、CTL活性化を介して生存期間を延長し、再移植腫瘍細胞を完全に拒絶したことから、腫瘍特異的な拒絶記憶免疫を誘導できることが示唆された。DNAワクチン治療は、皮下腫瘍モデルにおいてCTLを活性化してCD4およびCD8a陽性Tリンパ球を皮下腫瘍および肺組織へ浸潤させる。中和抗体を用いてCD4およびCD8a陽性細胞を阻害すると、DNAワクチンの抗腫瘍効果は消失した。これらの結果は、TAA、CD40LおよびGM-CSF遺伝子の組合せを内包する高分子ミセルが特異的抗腫瘍免疫を活性化するDNAワクチンとして機能することを示している。
【実施例】
【0099】
ペプチドワクチンの場合はTAAの弱い免疫原性を増感するために、フロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバントを同時に投与する[参考文献25]。細胞ワクチンの場合、ウイルス成分および細菌成分、例えば、pCpGモチーフが、アジュバントとして働き得るし[参考文献26]、DC細胞自体も抗原提示能を有する[参考文献1]。遺伝子ワクチンについては、弱い抗原性の問題を解決するために、アジュバント効果、例えば、ポリユビキチン化配列[参考文献27]およびスカベンジャー分子についての熱ショックタンパク質[参考文献28]を発現する方法が報告されている。本研究において、本発明者らは、ミセル型遺伝子担体を用いて、TAA、サイトカインおよび共(副)刺激因子を組み合わせていくつかの発現の組み合わせを試みた。細胞ワクチン臨床試験において、サイトカインGM-CSFまたは共(副)刺激分子CD40Lが、抗原提示能を亢進することが報告されている[参考文献29、30]。それ故、本発明者らはまずTAA、CD40LまたはGM-CSF遺伝子を単体で内包する高分子ミセルを検討したが、腫瘍の増大の抑制が認められず(図2D)、生存期間の延長も認められなかった(図2B 右パネル、表3)。一方、TAA、CD40LおよびGM-CSFの3つの遺伝子の組合せは、DNAワクチンで治療したマウスの40%において播種の長期生存(治癒)をもたらし(図2B 左パネル)、肺転移を防止した(図3)。本発明者らは、TAA/CD40L/GM-CSF添加ミセルのi.p.投与という単純なワクチン接種法を初めて発明した。
【実施例】
【0100】
本発明者らは、この研究において、様々な癌において過剰発現する2つの遺伝子をTAAの候補として検討した。SART3に関しては、ワクチン効果を誘導するエピトープペプチドの配列が報告されている[参考文献31]。ワクチン効果を誘導する可能性のあるYB-1のエピトープペプチド配列は不明であるが、神経膠芽腫患者におけるSEREX分析によりYB-1に抗原性がある可能性が報告されている[参考文献32]。in vivoでTAA遺伝子を導入すれば、TAA遺伝子コードタンパク質が細胞質において発現し、エンドソームで断片化ペプチドに分解され、種々のタイプのMHC分子に提示されることになる。BALB/cおよびCB57/BL6マウスの両腫瘍モデルにおいて、CTL活性化を介した抗腫瘍効果が本発明者らの見出したDNAワクチン組成遺伝子により誘導された。これは、遺伝子導入によりSART3およびYB-1抗原が発現し、複数のエピトープペプチドを生じ、異なるハプロタイプのMHCに結合して表面に出て、腫瘍抗原を強く免疫細胞に提示したことに由来するものと考えられる。さらに、全ゲノムマイクロアレイおよび配列シーケンスにおける近年の技術進歩により、多くのTAAとしての候補遺伝子のスクリーニングが可能になりつつある[参考文献33]。ペプチドワクチンと違って、TAA遺伝子のスクリーニングは、網羅的に可能であり、遺伝子ワクチンはMHCハプロタイプに関わらず、全ての患者に適応することができる。
【実施例】
【0101】
ナノサイズ化された担体デバイスは、i.p.投与後、リンパ管に吸収されるという特性を有するという報告がある[参考文献34]。例えば、マンノースリガンドで囲まれた超音波応答性リポソームは、網内系(例えば、脾臓)に取り込まれ、リポソームが超音波刺激により放出されるとき、導入遺伝子を放出する[参考文献35]。既に示されたように[参考文献24]、ブロック/ホモポリプレックスミセルは、i.p.投与後にリンパ節および脾臓に多くは運ばれるという特徴を有する。その後、ミセルの一部はDC細胞に取り込まれ(図1)、発現したGM-CSFとCD40Lの協調刺激により、DC細胞におけるTAAに対する免疫不応答性が改善すると予想される。この可能性は、ミセル投与後早期にGM-CSF、CD11c陽性免疫細胞のリンパ節および脾臓での増加を認めた免疫組織染色の結果(図5)により、支持される。GM-CSFなしの治療群は、NK活性を活性化しなかったので、導入されたGM-CSFは、DC細胞を成熟させるばかりでなく、NK細胞も刺激すると考えられる(図4A)。自然免疫が活性化されたうえで、DC細胞におけるTAA/MHCクラス1および2ならびにCD40/CD40Lからの両シグナルがCD8リンパ球およびCD4リンパ球に活性化シグナルを伝達すると思われる。再移植した腫瘍細胞が完全な拒絶されたという結果は、本発明者らのDNAワクチン組成が特異的拒絶記憶免疫を誘発したことを意味するが、腫瘍組織におけるヘルパー(CD4+)Tリンパ球および細胞傷害性(CD8a+)Tリンパ球の増加および浸潤という結果がこの可能性を裏付けている(図5)。
【実施例】
【0102】
本研究において、本発明者らは、外科的切除後補助治療としての臨床応用を想定したワクチン接種プロトコールを設計し検討した。癌の進行に伴って腫瘍微小環としては免疫抑制の方向にバランスシフトし、制御性T細胞(Treg)および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)が増加すると報告されているが[参考文献36、37]、本発明者らの予備実験によると癌細胞の移植の1週間後まではTreg細胞の増加は認めていない(データ非公開)。
【実施例】
【0103】
参考文献
25. Slingluff CL, Petroni GR, Smolkin ME, Chianese-Bullock KA, Smith K, Murphy C, et al. Immunogenicity for CD8+ and CD4+ T cells of 2 formulations of an incomplete freund's adjuvant for multipeptide melanoma vaccines. J Immunother. 2010;33:630-8.
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【実施例】
【0104】
図面の説明
図1 ポリプレックスミセルのin vivoでの分布および遺伝子発現
(A)マウス腹腔内にpDNAを内包するFluolid標識ポリプレックスミセル(50μg、N/P比=10)を投与した。24時間後、器官組織をスナップ凍結して、蛍光レーザー共焦点顕微鏡下に組織分布を調べた。また、切片を抗CD11c抗体で免疫染色して、ポリプレックスミセルと樹状細胞の共局在性を検討した。ポリプレックスミセルは、脾臓(左パネル)およびリンパ節(中央パネル)に主に局在し、マージ画像処理は、リンパ節におけるポリプレックスミセルと樹状細胞の共局在を示す(右パネル)。(B)GM-CSF遺伝子を内包するポリプレックスミセルのi.p.投与の24時間後に採取した凍結組織から総RNAを抽出し、作成したcDNA試料をリアルタイムRT-PCR分析にかけた。主に脾臓およびリンパ節においてGM-CSFの発現は亢進し、肺および他の器官においてはほとんど検出されなかった。
【実施例】
【0105】
図2 腹膜播種および皮下腫瘍マウスにおけるポリプレックスミセル搭載DNAワクチンの抗腫瘍効果
(A)図は、CT26腹膜播種モデルにおける治療用遺伝子(表3)を発現するポリプレックスミセル搭載ワクチンの接種スケジュールを示す。(B)カプラン・マイヤー生存曲線は、SART3、CD40LおよびGM-CSFを搭載するDNAワクチンが、Mock対照群と比較して、CT26腹膜播種マウスの生存期間を有意に延長したことを示す(左パネル)。単一遺伝子導入群は生存率の有意な改善を認めなかった(右パネル)。(C)図は、CT26およびLLCの皮下腫瘍モデルにおける治療用遺伝子を内包するポリプレックスミセル搭載ワクチンの接種スケジュールを示す。(D)14日目のCT26癌の腫瘍重量は、Mock対照群または単一遺伝子治療群に比較してDNAワクチン群で有意に少なかった(左パネル)。LLC皮下腫瘍重量は、Mock対照群または単一遺伝子治療群に比較して、DNAワクチン治療群で有意に低下した(右パネル)。
【実施例】
【0106】
図3 LLC腫瘍の肺転移に対するポリプレックスミセル搭載DNAワクチンの阻害効果
(A)LLC癌の皮下接種の28日後に、図示したDNAワクチンまたはMock遺伝子をを投与されたマウスから肺組織を得た。HE染色により、肺転移はMock対照群マウスにおいて高度に発生し(4/4例、左パネル)、DNAワクチン群において検出されなかったこと(0/4例、右パネル)が示されている。(B)免疫組織染色により、CD4およびCD8a陽性Tリンパ球の肺組織浸潤は、Mock対照群(左パネル)と比較して、DNAワクチン群(右パネル)で増加したこと(それぞれ、P<0.05およびP<0.01)が示されている。
【実施例】
【0107】
図4 ポリプレックスミセル搭載DNAワクチンによる、NKおよびCTL活性の活性化とTAA特異的な拒絶記憶免疫の獲得
(A)CT26およびLLC皮下腫瘍を保有するマウスから脾細胞(エフェクター細胞)を単離し、図示したエフェクター/標的細胞比にて、照射したCSFE標識CT26またはYAC-1(標的細胞)と共培養し、フローサイトメトリーを通じてCTLまたはNKアッセイを行った。GM-CSF遺伝子を導入しいた全ての治療群において、NK活性(上部のパネル)は増大された。一方、CTL活性(下側のパネル)は、SART3またはYB-1、CD40LおよびGM-CSF遺伝子を内包するポリプレックスミセル(DNAワクチン群)においてのみエフェクター/標的細胞比に依存した活性化を認めた。(B)80日より長く生存したマウスにおいて、CT26細胞を脇腹の皮下に再移植し、皮下腫瘍の形成をさらに60日間モニターした。DNAワクチン群マウスにおいて特異的拒絶が認められ、対照群では認められなかった。(C)図2Aと同じく、CT26の再移植後に脾細胞を単離し、CFSE標識標的CT26細胞と共培養してCTL活性を評価した。DNAワクチン接種長期生存マウスのCTL活性は亢進したが、ワクチン非接種の対照群マウスでは亢進を認めなかった。(D)抗MHCクラス1(H-2LおよびH-2D)抗体を用いたブロッキングまたはsiRNAトランスフェクションによるSART3ノックダウンを行った後のCTLアッセイによって、MHC拘束性およびTAA特異的なCFSE標的細胞殺傷性を確認した。
【実施例】
【0108】
図5 腫瘍および免疫器官組織に浸潤した免疫細胞の免疫組織化学分析
脾臓、リンパ節および腫瘍組織の切片を作成し、図示した抗体を用いて免疫染色した。ある一定の閾値を上回るタンパク質発現シグナルをデジタル化し(右パネルにおける赤色)、NIS-Elementプログラムを用いて、シグナルの強さによりタンパク質の発現レベルを定量化した(左パネル)。
【実施例】
【0109】
図6 SART3、CD40LおよびGM-CSFを内包するリポソーム搭載DNAワクチンの腹腔内投与、ならびに鼠径部皮下投与の治療効果
(A)製造元のプロトコールに従い、SART3、CD40LおよびGM-CSFのpDNA(計50μg)をリポソーム(Coatsome EL-01-C、日油株式会社)で内包した。ポリプレックスミセル搭載DNAワクチンと同様に、CT26腹膜播種担癌マウスモデルにおいてリポソーム搭載DNAワクチンを腹腔内投与した。リポソーム搭載DNAワクチンは、Mock対照群と比較して生存期間を延長した(48.0±19.5日 対 32.5±9.8日、ログランク検定:P=0.06)。(B)N/P比10にて、SART3、CD40LおよびGM-CSFのpDNA(計50μg)をPEG-b-[Pasp(DET)]/Pasp(DET)で内包した。CT26腹膜播種マウスモデルにおいて、ポリプレックスミセル搭載DNAワクチンを鼠径部皮下投与した。左パネルは、ポリプレックスミセル搭載DNAワクチンがMock対照群および生理食塩水対照に比べて生存期間を延長したことを示す(ログランク検定で、それぞれ、P=0.02およびP=0.005)。右パネルは、Fluolid標識ポリプレックスミセルは、マウスの鼠径部リンパ節に送達されたことを示す。
【実施例】
【0110】
図7 カプラン・マイヤー生存曲線
BALB/cマウスの腹腔内にCT26大腸癌細胞を移植した。1週間後マウスMUC1/CD40L/GM-CSF遺伝子搭載ポリプレックスミセルを腹腔内投与し、マウスの生存期間をモニターした。カプラン・マイヤー分析は、MUC1搭載DNAワクチンについて、生存率が有意に改善されたことを示し(ログランク検定:P<0.05)、これはMUC1がDNAワクチンのための有用なTAAであることを示唆する。
【実施例】
【0111】
図8 カプラン・マイヤー生存曲線
BALB/cマウスの腹腔内にCT26大腸癌細胞を移植した。1週間後、マウスサバイビン/CD40L/GM-CSF遺伝子搭載ポリプレックスミセルを腹腔内投与し、マウスの生存期間をモニターした。カプラン・マイヤー分析は、サバイビン搭載DNAワクチンについて、生存率が有意に改善されたことを示し(ログランク検定:P<0.05)、これはサバイビンが、DNAワクチンのための有用なTAAであることを示唆する。
【実施例】
【0112】
図9 CT26皮下腫瘍
CT26大腸癌細胞をわき腹領域の皮下に移植し、1日後、マウスの腹腔内に、SART3および図示したアジュバント遺伝子を内包しているブロック/ホモ混合ポリプレックスミセル(pDNA60μg、NP比=10)を投与した:(A)アジュバント=CD40L+GM-CSF、および(B)アジュバント=「28=scFv28-CD86キメラ」。腫瘍重量は、SART3/scFv28-CD86、SART3/scFv28-CD86/GM-CSFおよびSART3/scFv28-CD86/GM-CSF/CD40L搭載DNAワクチン群が、SART3/GM-CSF/CD40LまたはMock対照群より有意に低かった(それぞれ、0.92±0.1(中央値0.55)g、0.59±0.1(中央値0.51)g、1.2±0.9(中央値0.55)g対2.4±0.3(中央値2.5)g、5.2±0.2(中央値5.0)g)。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本データは、マウス腫瘍モデルにおいて、TAA(SART3またはYB-1)、CD40LおよびGM-CSF遺伝子の組合せを内包するミセルを用いたDNAワクチン遺伝子治療の効用を明らかにした。DNAワクチンは、腹膜播種担癌マウスの生存期間を延長し、CTL活性化およびCD4およびCD8a陽性リンパ球(CTL)の腫瘍への浸潤を誘導し、皮下腫瘍の増大および転移を阻害した。TAA/CD40L/GM-CSF遺伝子内包ミセルが、難治性の癌に対して抗腫瘍免疫を活性化して治療効果を発揮するための新規DNAワクチンプラットフォームとなると結論付けられる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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