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明細書 :球面アクチュエータ、血管内視鏡

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6180036号 (P6180036)
登録日 平成29年7月28日(2017.7.28)
発行日 平成29年8月16日(2017.8.16)
発明の名称または考案の名称 球面アクチュエータ、血管内視鏡
国際特許分類 H02N   2/00        (2006.01)
A61B   1/00        (2006.01)
A61B   1/018       (2006.01)
A61B   1/04        (2006.01)
A61B  17/3205      (2006.01)
FI H02N 2/00
A61B 1/00 715
A61B 1/018 513
A61B 1/04
A61B 17/3205
請求項の数または発明の数 6
全頁数 15
出願番号 特願2014-558534 (P2014-558534)
出願日 平成26年1月14日(2014.1.14)
国際出願番号 PCT/JP2014/050481
国際公開番号 WO2014/115606
国際公開日 平成26年7月31日(2014.7.31)
優先権出願番号 2013009491
優先日 平成25年1月22日(2013.1.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年9月7日(2016.9.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】遠山 茂樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】三澤 哲也
参考文献・文献 国際公開第2005/114824(WO,A1)
国際公開第2007/055052(WO,A1)
特開2011-182485(JP,A)
特開平6-326369(JP,A)
調査した分野 H02N 2/00
A61B 1/00
A61B 1/018
A61B 1/04
A61B 17/3205
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも一部に球面状の球面部を有する球部材と、
曲げられたワイヤで形成され、前記球部材の周囲に互いに間隔をあけて配置されると共に、前記球面部に沿うように前記球面部と接触して前記球部材を支持する複数の支持部と、
夫々の前記支持部の端部に繋がって形成され、前記支持部に振動を入力可能な一対の入力部と、
を備える球面アクチュエータ。
【請求項2】
前記支持部と前記入力部とで振動部材が構成され、
前記振動部材は弾性変形可能であり、
前記振動部材が弾性変形することで生じる復元力により前記支持部が前記球面部に押し付けられる請求項1に記載の球面アクチュエータ。
【請求項3】
前記支持部は、前記球部材を支持する支持方向から見て、前記球部材の中心線に対して対称に形成されている請求項1又は2に記載の球面アクチュエータ。
【請求項4】
前記支持部は、前記球面部に沿うように前記ワイヤをぜんまい状に曲げることで形成されている請求項1又は2に記載の球面アクチュエータ。
【請求項5】
先端側が血管の内部に挿入可能な柱状の挿入部材と、
前記挿入部材の先端部に取り付けられる請求項1~4の何れか1項に記載の球面アクチュエータと、
前記球面アクチュエータの球部材に取り付けられ、被写体を観察するのに用いられる観察部材と、
を備える血管内視鏡。
【請求項6】
前記挿入部材の先端側に配置され、内部に前記挿入部材の先端側が挿通する螺旋状のコイルと、
前記コイルに進行波を生じさせる進行波入力部と、
内周面が前記コイルと接触して前記コイルを外側から覆う円筒状に形成され、前記コイルに進行波が生じると周方向に回転して血管内の異物を除去する円筒材と、
を備える請求項5に記載の血管内視鏡。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、球面アクチュエータ及び血管内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2009-225591号公報)には、被回動部材の可動範囲を大きくすることができる球面アクチュエータが記載されている。
【0003】
この球面アクチュエータは、球状の支持部材と、この支持部材を固定する固定部材と、支持部材に回動自在に支持されて支持部材の球面に沿って回動する可動部材とを備えている。この可動部材は、所定の間隔をあけて配置されて支持部材の球面に接触する複数の駆動力発生部と、被回動部材が取り付けられる台座部とを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成の駆動力発生部は、球面に接触する接触片と、この接触片を振動させる圧電素子とを備えている。このため、従来の球面アクチュエータを小型化することは困難であった。
【0005】
本発明の課題は、小型化可能な球面アクチュエータを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様の球面アクチュエータは、少なくとも一部に球面状の球面部を有する球部材と、曲げられたワイヤで形成され、前記球部材の周囲に互いに間隔をあけて配置されると共に、前記球面部に沿うように前記球面部と接触して前記球部材を支持する複数の支持部と、夫々の前記支持部の端部に繋がって形成され、前記支持部に振動を入力可能な一対の入力部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、球面アクチュエータには、曲げられたワイヤで形成される支持部が複数備えられている。そして、この支持部が、球部材の周囲に互いに間隔をあけて配置され、球面部に沿うように球面部と接触して球部材を支持している。
【0008】
さらに、夫々の支持部の端部に繋がって形成される夫々の入力部によって、夫々の支持部に振動が入力される。夫々の支持部に振動が入力されることで、支持部と球面部との間に生じる摩擦力により、振動による進行力が支持部から球面部へ伝わる。これにより、球部材が回転移動する。
【0009】
このように、曲げられたワイヤで形成された支持部と球面部との間で生じる摩擦力によって球部材を回転移動させる構成となっている。このため、例えば、球部材を圧電素子で支持してこの圧電素子と球面部との間で生じる摩擦力によって球部材を回転移動させる構成と比して、小型化可能な球面アクチュエータを得ることができる。
【0010】
上記態様において、前記支持部と前記入力部とで振動部材が構成され、前記振動部材は弾性変形可能であり、前記振動部材が弾性変形することで生じる復元力により前記支持部が前記球面部に押し付けられることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、支持部と入力部とで構成される振動部材が弾性変形することで生じる復元力により、支持部が球面部に押し付けられる。これにより、球部材が所定の位置に配置される。
【0012】
例えば、新たに付勢部材を備え、この付勢部材の付勢力により支持部を球面部に押し付ける場合と比して、安価な構成で支持部を球面部に押し付けることができる。
【0013】
上記態様において、前記支持部は、前記球部材を支持する支持方向から見て、前記球部材の中心線に対して対称に形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、支持部は、球部材を支持する支持方向から見て、球部材の中心線に対して対称に形成されている。このため、支持部が球部材を支持する支持方向から見て、球部材の中心線に対して対称に形成されていない場合と比して、球部材を安定した状態で支持することができる。
【0015】
上記態様において、前記支持部は、前記球面部に沿うように前記ワイヤをぜんまい状に曲げることで形成されていることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、支持部は、球面部に沿うようにワイヤをぜんまい状に曲げることで形成されている。このため、ワイヤを円形状に一周させて支持部を形成させる場合と比して、支持部と球面部との接触面積が広くなり、球部材を効果的に回転移動させることができる。
【0017】
本発明の第一態様の血管内視鏡は、先端側が血管の内部に挿入可能な柱状の挿入部材と、前記挿入部材の先端部に取り付けられる請求項1~4の何れか1項に記載の球面アクチュエータと、前記球面アクチュエータの球部材に取り付けられ、被写体を観察するのに用いられる観察部材と、を備えることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、挿入部材の先端部に、請求項1~4の何れか1項に記載される球面アクチュエータが取り付けられている。さらに、被写体を観察するのに用いられる観察部材が、球面アクチュエータの球部材に取り付けられている。
【0019】
例えば医師は、挿入部材の先端側を例えば被験者の血管の内部に挿入し、球部材を回転移動させながら観察部材を移動させて被験者の血管の内部を満遍なく観察する。
【0020】
このように、請求項1~4の何れか1項に記載される球面アクチュエータを用いることで、請求項1~4の何れか1項に記載される球面アクチュエータを用いない場合と比して、血管の内部を満遍なく観察することができる。
【0021】
上記態様において、前記挿入部材の先端側に配置され、内部に前記挿入部材の先端側が挿通する螺旋状のコイルと、前記コイルに進行波を生じさせる進行波入力部と、内周面が前記コイルと接触して前記コイルを外側から覆う円筒状に形成され、前記コイルに進行波が生じると周方向に回転して血管内の異物を除去する円筒材と、を備えることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、進行波入力部が、コイルに進行波を生じさせる。そして、コイルに進行が生じると、円筒材が周方向に回転して血管内の異物を除去する。
【0023】
このように、簡易な方法で、血管内の異物を除去することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小型化可能なアクチュエータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る球面アクチュエータを示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る球面アクチュエータを示した斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る球面アクチュエータを示した斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る球面アクチュエータを示した斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る球面アクチュエータに備えられた球部材を3個の支持ワイヤで支持する状態を説明するのに用いた説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る球面アクチュエータに備えられた球部材の回転動作を説明するのに用いた説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る球面アクチュエータに備えられた支持ワイヤの形状を説明するのに用いた説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る血管内視鏡を示した斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る球面アクチュエータに備えられた支持ワイヤの形状を説明するのに用いた説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る血管内視鏡を示した斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る血管内視鏡を示した斜視図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る血管内視鏡を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る球面アクチュエータ及び血管内視鏡の一例について図1~図8に従って説明する。

【0027】
(全体構成)
第1実施形態に係る血管内視鏡10は、図8に示されるように、血管の内部に挿入可能な挿入部材の一例としてのカテーテル12と、カテーテル12の先端部(図中左側の端部)に取り付けられた球面アクチュエータ14と、球面アクチュエータ14に少なくとも一部が取り付けられると共に被写体を観察するのに用いられる観察部材の一例としてのファイバースコープ16(図1参照)と、血管の内部の血栓を除去する等の作業に用いられる作業ユニット18と、を備えている。

【0028】
〔カテーテル〕
カテーテル12は、管状とされている。また、カテーテル12の外径は、一例として、φ0.9〔mm〕で、カテーテル12の長さは、一例として、1200〔mm〕とされている。また、カテーテル12は、弾性変形が可能な弾性部材で成形され、ワイヤーメッシュ(図示省略)で補強されている。

【0029】
さらに、カテーテル12の基端部(図中右側の端部)には、カテーテル12を被験者の血管の内部に挿入する際に、医師が把持する把持部22が取り付けられている。さらに、この把持部22には、複数(本実施形態では3個)の操作ボタン20が備えられている。そして、医師がこの操作ボタン20を操作することで、作業ユニット18や後述する加振部材38が稼働するようになっている。

【0030】
〔球面アクチュエータ〕
球面アクチュエータ14は、図1に示されるように、球面状(突出した球面状)の球面部30Aを有する球部材30と、ワイヤを用いて形成され、弾性変形が可能とされると共に振動可能とされる複数(本実施例では3個)の振動部材32と、を備えている。

【0031】
球部材30の外径は、一例として、φ0.7〔mm〕とされている。また、振動部材32を形成するのに用いられるワイヤの外径は、一例として、φ0.1〔mm〕とされている。

【0032】
振動部材32は、ワイヤを曲げることで球部材30の球面部30Aに沿うように球面部30Aと接触する支持部の一例としての支持ワイヤ34を備えている。支持ワイヤ34は、球部材30の周囲に互いに間隔をあけて配置されている。そして、3個の支持ワイヤ34によって球部材30が支持されている。さらに、振動部材32は、支持ワイヤ34の夫々の端部に繋がって形成され、支持ワイヤ34に振動を入力可能な一対の入力部の一例としての一対の入力ワイヤ36を備えている。

【0033】
一対の入力ワイヤ36は、カテーテル12の長手方向に沿ってカテーテル12の周壁の内部に配置されている。図8に示されるように、一対の入力ワイヤ36の基端部(図中右側の端部)は、カテーテル12の基端部に取り付けられた把持部22から外部に突出して露出している。そして、一対の入力ワイヤ36の基端部には、入力ワイヤ36の基端部に振動を印加して振動部材32を加振する加振部材38(例えば、ランジュバン型振動子)が夫々備えられている。

【0034】
また、一対の入力ワイヤ36の先端部(図中左側の端部)は、カテーテル12の先端部の端面に取り付けられたリング状のリング部材12Aから外部に突出して露出している。図1に示されるように、この露出した入力ワイヤ36の先端部に前述した支持ワイヤ34が繋がって形成されている。

【0035】
一方、支持ワイヤ34によって支持される球部材30には、球部材30の中心線に沿って延びる円柱状の円孔30Bが形成されている。なお、球面アクチュエータ14の詳細については、後述する。

【0036】
〔ファイバースコープ〕
ファイバースコープ16は、円孔30Bを囲むように、円孔30Bの延伸方向に沿って球部材30の内部に取り付けられた複数の光ファイバー40から構成されている。そして、光ファイバー40は、被写体に照射される光を基端部から先端部に送る光ファイバー40Aと、先端部に広角レンズ(図示省略)が取り付けられると共に被写体から反射した光を先端部から取り込んで基端部に送る光ファイバー40Bとを備えている。

【0037】
具体的には、光ファイバー40A、40Bの先端側が、球部材30に取り付けられている。そして、光ファイバー40Bの基端側は、カテーテル12の内部を通って把持部22(図8参照)の内部に配置された撮像素子(図示省略:例えばCCD)に取り付けられている。この撮像素子が、光ファイバー40Bによって送られる光を電気信号に変換するようになっている。

【0038】
また、光ファイバー40Aの基端側は、カテーテル12の内部を通って把持部22の内部に配置された発光素子(図示省略)に取り付けられている。この発光素子から発光された光が、光ファイバー40Aによって光ファイバー40Aの基端部から先端部へ送られる。そして、光ファイバー40Aの先端部から出射された光によって、被写体が照らされるようになっている。

【0039】
〔作業ユニット〕
作業ユニット18は、図1、図2に示されるように、カテーテル12の内部に挿入されると共に、先端側が球部材30の円孔30Bに進退自在とされる円柱状の円柱部材50を備えている。さらに、円柱部材50の先端側の端面50Aには、外部に突出する円柱状の突出部52が備えられている。そして、突出部52の先端側には、血栓等を切除するのに用いられるニッパ54が取り付けられている。

【0040】
さらに、円柱部材50には、円柱部材50の長手方向に延びる3個の円孔56が形成されている。そして、この円孔56を介して薬液剤が血管の内部に送られ、また、血管の内部の容物が回収されるようになっている。

【0041】
(要部構成)
次に、球面アクチュエータ14について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、図1に示されるように、入力ワイヤ36の先端側が、リング部材12Aから外部に突出する突出方向をZ方向と称し、Z方向に対して直交する一の方向をX方向と称し、Z方向及びX方向に対して直交する方向をY方向と称する。

【0042】
球面アクチュエータ14は、前述したように球部材30と、この球部材30を支持する支持ワイヤ34を有する3個の振動部材32と、を備えている。

【0043】
また、支持ワイヤ34は、図1に示されるように、Z方向の先端側(図1の左側)が離間した円形状(C形状)とされ、球部材30の球面部30Aに沿うように球面部30Aと接触している。そして、球部材30は、前述したように3個の支持ワイヤ34によって支持されている。

【0044】
また、支持ワイヤ34においてZ方向の一対の先端側は、球部材30から離れる方向に折り曲げられて一対の入力ワイヤ36の先端部と繋がっている。

【0045】
図5に示されるように、3個の支持ワイヤ34は、Z方向回りに、120〔°〕のピッチで配置されている。さらに、円形状の支持ワイヤ34の中心Fと球部材30の中心Eとを通る仮想線(図5に示す一点鎖線C)は、球部材30の中心Eを通るXY平面に対して、Z方向の基端側(図5の下側)へ10〔°〕~15〔°〕程度傾いている。

【0046】
また、支持ワイヤ34を一点鎖線C方向から見ると(支持ワイヤ34を支持ワイヤ34が球部材30を支持する支持方向から見ると)、支持ワイヤ34は、図7に示されるように、球部材30のZ方向に延びる中心線Dに対して対称に形成されている。

【0047】
さらに、前述したように、振動部材32は弾性変形が可能とされおり、振動部材32が弾性変形することで生じる復元力により支持ワイヤ34が球面部30Aに接触して押し付けられている。

【0048】
そして、このような構成において、各振動部材32に進行波が生じるように、一方の加振部材38(図8参照)が入力ワイヤ36の基端部から振動を印加すると、支持ワイヤ34に円周方向に進む進行波が生じる。そして、この進行波が生じる支持ワイヤ34と球部材30の球面部30Aとの間に生じる摩擦力により、進行波による進行力が支持ワイヤ34から球面部30Aへ伝わる。これにより、球部材30が球部材30の中心Eを通る回転軸周りに回転移動するようになっている。

【0049】
なお、振動部材32に一方向に進む進行波を生じさせる場合は、一方の加振部材38だけを稼働させ、一方の加振部材38が一方の入力ワイヤ36の基端部から振動を印加する。これに対して、振動部材32に他方向に進む進行波を生じさせる場合は、他方の加振部材38だけを稼働させ、他方の加振部材38が他方の入力ワイヤ36の基端部から振動を印加するようになっている(図8参照)。

【0050】
ここで、球部材30が回転移動する回転軸及び回転速度について説明する。

【0051】
図6には、3個の支持ワイヤ34に生じる進行波の角速度ベクトルω1~ω3と、球部材30の角速度ベクトル(後述する合成ベクトルω)と、が示されている。各ベクトルの矢印の向きは、各支持ワイヤ34に生じた進行波による回動動作の回転軸の方向を示し、各ベクトルの長さは、回動動作の角速度(回転トルク)の大きさを示している。

【0052】
3個の支持ワイヤ34が、それぞれ角速度ベクトルω1~ω3で示される回転トルクを発生すると、3つの角速度ベクトルω1~ω3の合成ベクトルωの向きを回転軸とする回転トルクが球部材30に作用する。これにより、球部材30は、合成ベクトルωの周りに回転移動するようになっている。

【0053】
この構成により、単位時間当たりに支持ワイヤ34を通過する進行波の数(周波数)を、各支持ワイヤ34間で異ならせることで、角速度(回転トルク)が各支持ワイヤ34間で異なるようになる。これにより、合成ベクトルωの向き及び大きさを変えることができるようになっている。

【0054】
(作用・効果)
次に、血管内視鏡10の作用等について説明する。

【0055】
血管内視鏡10(図8参照)を被験者の血管の内部に挿入する際には、医師は、血管内視鏡10の把持部22を把持し、血管内視鏡10の先端部から血管内視鏡10を被験者の血管の内部に図示せぬガイド部材を用いて挿入する。

【0056】
そして、医師は、ファイバースコープ16(図1参照)及び撮像素子を介してディスプレイ(図示省略)に表示された血管の内部の画像を見ながら被験者の血管の内部(被写体)を観察する。

【0057】
ここで、医師は、把持部22に備えられた操作ボタン20を操作して、加振部材38を稼働させて各振動部材32に進行波を生じさせる。各振動部材32に進行波が生じることで、支持ワイヤ34に円周方向に進む進行波が生じる。そして、この進行波が生じる支持ワイヤ34と球部材30の球面部30Aとの間に摩擦力により、図1、図3、図4に示されるように、進行波による進行力が支持ワイヤ34から球面部30へ伝わる。そして、球部材30が回転移動する。これにより、医師は被験者の血管の内部において観察したい部分を満遍なく観察することができる。

【0058】
さらに、医師が、血管の内部の映像を見て血栓を見つけると、医師は、血栓を見つけた位置で、操作ボタン20を操作して球部材30の回転移動を停止させる。また、医師は、操作ボタン20を操作して、図1、図2に示されるように、作業ユニット18の先端側を球部材30から突出させる。そして、医師は、血管の内部の映像を見ながら、ニッパ54を用いて血栓を切除する。

【0059】
以上説明したように、球面アクチュエータ14においては、ワイヤを曲げて形成された支持ワイヤ34と球面部30Aとの間に生じる摩擦力により、進行波による進行力が支持ワイヤ34から球面部30Aへ伝わる。そして、球部材30が回転移動させる構成となっている。このため、例えば、球部材30を圧電素子で支持して圧電素子と球面部30Aとの間で生じる摩擦力によって球部材30を回転移動させる構成と比して、小型化が可能な球面アクチュエータ14を得ることができる。

【0060】
また、球面アクチュエータ14の小型化が可能とされるため、前述したように、この球面アクチュエータ14を小型化して血管内視鏡10に用いることができる。そして、医師が、血管の内部を満遍なく観察することができる。

【0061】
また、球面アクチュエータ14においては、振動部材32が弾性変形することで生じる復元力により支持ワイヤ34が球面部30Aに押し付けられる。これにより、球部材30が所定の位置に配置される。例えば、新たに付勢部材を備え、この付勢部材の付勢力により支持ワイヤを球面部に押し付ける場合と比して、安価な構成で支持ワイヤ34を球面部30Aに押し付けることができる。

【0062】
また、球面アクチュエータ14においては、振動部材32が弾性変形することで生じる復元力により支持ワイヤ34が球面部30Aに押し付けられる。これにより、支持ワイヤ34と球面部30Aとの間に摩擦力を生じさせることができる。

【0063】
また、球面アクチュエータ14においては、各支持ワイヤ34は、球部材30を支持する支持方向から見て、球部材30の中心線Dに対して対称に形成されている。このため、支持ワイヤ34を支持ワイヤ34が球部材30を支持する支持方向から見て、球部材30の中心線Dに対して対称に形成されていない場合と比して、球部材30を安定した状態で支持することができる。

【0064】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る球面アクチュエータ及び血管内視鏡の一例について図9を用いて説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。また、第1実施形態と異なる部分のみ説明し、他の部分の説明は省略する。

【0065】
第2実施形態に係る球面アクチュエータ70の支持ワイヤ74は、図9に示されるように、球面部30Aに沿うようにワイヤをぜんまい状(渦巻き状)に曲げることで形成されている。また、支持ワイヤ74の中央側を支持する支持部材76(図9には二点鎖線で示す)が、リング部材12Aから突出して備えられている。なお、支持ワイヤが奏する作用及び効果以外の作用及び効果については、第1実施形態と同様である。

【0066】
支持ワイヤ74が、ワイヤをぜんまい状に曲げることで形成されているため、ワイヤを円形状に一周させて支持部を形成させる場合と比して、支持ワイヤ74と球面部30Aとの接触面積が広くなり、球部材30を効果的に回転移動させることができる。

【0067】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第1、第2実施形態では、3個の振動部材32を用いて球部材30を回転移動させたが。3個に限定されず、2個又は4個以上の振動部材を用いて球部材30を回転移動させてもよい。

【0068】
また、上記第1、第2実施形態では、球部材30の外表面が、球面状とされたが、球部材30を回転移動させた際に、可動範囲において、支持ワイヤ34と接触する部分が球面状であればよく、球部材30は、少なくとも一部に球面状の球面部を有していればよい。

【0069】
また、上記第1、第2実施形態では、血栓を切除する場合を例にとって、血管内視鏡10の作用を説明したが、円孔56を介して薬液剤を血管の内部に送ったり、円孔56を介して血管の内部の容物を回収したりしてもよい。さらには、単に、血管の内部を観察するためだけに血管内視鏡を用いてもよい。

【0070】
また、上記第1、第2実施形態では、血管の内部に挿入可能な挿入部材として管状(空洞)のカテーテル12を用いて説明したが、中実の挿入部材を用いてもよい。

【0071】
また、上記第1、第2実施形態では、球面アクチュエータ14を血管内視鏡10に用いて説明したが、血管内視鏡に限定されず、例えば、球面アクチュエータをマイクロスコープ等に用いてもよい。

【0072】
また、上記第1実施形態では、支持ワイヤ34は、Z方向の先端側が離間した円形状とされが、Z方向の基端側等の他の方向が離間した円形状であってもよい。

【0073】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る球面アクチュエータ及び血管内視鏡の一例について図10~図12を用いて説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。また、第1実施形態と異なる部分のみ説明し、他の部分の説明は省略する。

【0074】
(構成)
第3実施形態に係る血管内視鏡80は、図10に示されるように、操作ユニットを備えておらず、これに替えて、血管内の血栓等(異物の一例)を破砕するために用いられる破砕部材82を備えている。

【0075】
この破砕部材82は、カテーテル12の先端側に配置されている。そして、破砕部材82は、内部にカテーテル12の先端側が挿通する螺旋状のコイル84と、内周面がコイル84と接触してコイル84を外側から覆う円筒状の円筒材86とを含んで構成されている。

【0076】
この円筒材86の先端側及び基端側には、図12に示されるように、カテーテル12の外周面に向けて突出する一対の規制部92が形成されている。そして、この一対の規制部92の間にコイル84が配置されている。これにより、コイル84におけるカテーテル12の長手方向の移動が規制されている。さらに、破砕部材82は、円筒材86におけるカテーテル12の長手方向の移動を規制する図示せぬ規制手段を備えている。なお、円筒材86は、カテーテル12の周方向に移動が可能とされている。

【0077】
さらに、円筒材86の外周面には、円筒材86の先端から基端にかけて螺旋状の溝部88が複数形成されている。溝部88の長手方向に対して直交する方向の断面は、図12に示されるように、開口が窄められたU字状とされている。そして、溝部88の両縁には、鋭角に尖った突起90が互いに先端を対向させるように形成されている。

【0078】
また、コイル84の両端には、図示せぬ一対の入力ワイヤの先端部が夫々繋がっている。そして、この一対の入力ワイヤは、カテーテル12の長手方向に沿ってカテーテル12の周壁の内部を通っている。また、一対の入力ワイヤの基端部は、カテーテル12の基端部に取り付けられた把持部22(図8参照)から外部に突出して露出している。そして、一対の入力ワイヤの基端部には、入力ワイヤの基端部に振動を印加する図示せぬ加振部材が備えられている。
以上の構成により、加振部材が入力ワイヤに振動を印加することで、コイル84に進行波が生じるようになっている。つまい、コイル84に進行波を生じさせる進行波入力部は、入力ワイヤと加振部材とを含んで構成されている。

【0079】
(作用)
次に、血管内視鏡80に備えられる破砕部材82の作用について説明する。

【0080】
血管内視鏡80を被験者の血管の内部に挿入する際には、医師は、血管内視鏡80の把持部22(図8参照)を把持し、血管内視鏡80の先端部から血管内視鏡80を被験者の血管の内部に図示せぬガイド部材を用いて挿入する。

【0081】
そして、医師は、ファイバースコープ16(図10参照)及び撮像素子を介してディスプレイ(図示省略)に表示された血管の内部の画像を見ながら被験者の血管の内部(被写体)を観察する。

【0082】
そして、医師が、血管の周壁等に形成される血栓を発見した場合には、血栓を粉砕するために、円筒材86をカテーテル12の周方向(図11に示す矢印H方向)に回転させる。

【0083】
具体的には、コイル84に螺旋状に進む進行波が生じるように、入力ワイヤを介してコイル84に振動(超音波振動)を印加する。これにより、コイル82に螺旋状に進む進行波が生じる。この進行波が生じているコイル84と円筒材86の内周面との間の摩擦力により、進行波による進行力がコイル84から円筒材86へ伝わる。これにより、図10、図11に示されるように、円筒材86が、カテーテル12の周方向(図11に示す矢印H方向)に回転する。

【0084】
円筒材86が回転することで、円筒材86に形成される溝部88も回転する。そして、溝部88の両縁に形成される突起90が、血栓と接触して血栓を粉砕する。このように、コイル84を用いて円筒材86を回転させることで、被験者の血管の周壁等に形成される血栓を粉砕することができる。

【0085】
そして、医師は、ファイバースコープ16及び撮像素子を介してディスプレイに表示された血管の内部の画像を見ることで、被験者の血管の周壁等に形成された血栓が粉砕されたのを確認することができる。

【0086】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第3実施形態では、円筒材86が、図11に示す矢印H方向に回転するように、コイル82に進行波を生じさせたが、矢印H方向に対して逆方向に円筒材86が回転するようにコイル82に進行波を生じさせてもよい。

【0087】
また、上記第3実施形態の血管内視鏡80には、第1実施形態の支持ワイヤ34が用いられたが、第2実施形態の支持ワイヤ74が用いられてもよい。

【0088】
(符号の説明)
10 血管内視鏡
12 カテーテル(挿入部材の一例)
14 球面アクチュエータ
16 ファイバースコープ(観察部材の一例)
30 球部材
30A 球面部
32 振動部材
34 支持ワイヤ(支持部の一例)
36 入力ワイヤ(入力部の一例)
70 球面アクチュエータ
74 支持ワイヤ(支持部の一例)
80 血管内視鏡
84 コイル
86 円筒材
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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