TOP > 国内特許検索 > 水または海水との摩擦抵抗の小さい防汚塗膜 > 明細書

明細書 :水または海水との摩擦抵抗の小さい防汚塗膜

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 水または海水との摩擦抵抗の小さい防汚塗膜
国際特許分類 C09D 201/00        (2006.01)
C09D   5/16        (2006.01)
C09D   7/12        (2006.01)
C09D 105/08        (2006.01)
C09D 167/00        (2006.01)
C09D 157/00        (2006.01)
C09D 163/00        (2006.01)
FI C09D 201/00
C09D 5/16
C09D 7/12
C09D 105/08
C09D 167/00
C09D 157/00
C09D 163/00
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 26
出願番号 特願2015-505445 (P2015-505445)
国際出願番号 PCT/JP2014/056016
国際公開番号 WO2014/142035
国際出願日 平成26年3月7日(2014.3.7)
国際公開日 平成26年9月18日(2014.9.18)
優先権出願番号 2013050365
優先日 平成25年3月13日(2013.3.13)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】平沢 洋治
【氏名】岩井 薫
【氏名】北野 克和
出願人 【識別番号】513061895
【氏名又は名称】株式会社エステン化学研究所
【識別番号】505195384
【氏名又は名称】国立大学法人奈良女子大学
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100156122、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 剛
【識別番号】100126789、【弁理士】、【氏名又は名称】後藤 裕子
審査請求 未請求
テーマコード 4J038
Fターム 4J038BA011
4J038CH171
4J038DB211
4J038DD091
4J038DD161
4J038HA216
4J038JB34
4J038KA02
4J038KA03
4J038KA08
4J038NA05
4J038PB05
4J038PB07
要約 本発明は、船舶、水路等のように海水との摩擦が生じる箇所において、海水との摩擦抵抗を低減することができる水中摩擦低減防汚塗膜を提供する。
本発明は高分子ハイドロゲルから構成される塗膜中に防汚剤を含有する防汚塗膜であって、該防汚塗膜が、膨潤度10~80%およびヤング率500~30,000N/cm2を有することを特徴する水または海水との摩擦抵抗の小さい防汚塗膜およびそれを形成する防汚塗料組成物を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子ハイドロゲルから構成される塗膜中に防汚剤を含有する防汚塗膜であって、該防汚塗膜が、膨潤度10~80%およびヤング率500~30,000N/cm2を有することを特徴する水または海水との摩擦抵抗が小さい防汚塗膜。
【請求項2】
前記防汚剤が平均粒径3μm以下を有する亜酸化銅粒子である請求項1記載の水または海水との摩擦抵抗の小さい防汚塗膜。
【請求項3】
前記高分子ハイドロゲルがキトサンポリマー、ポリエーテルエステルポリマー、またはビニルポリマーである請求項2記載の水または海水との摩擦抵抗の小さい防汚塗膜。
【請求項4】
前記高分子ハイドロゲルが、親水性ビニルモノマーおよびグリシジル基を有するモノマーの共重合体であり、かつ前記架橋剤がトリアジン系化合物である請求項3記載の水または海水との摩擦抵抗の小さい防汚塗膜。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の防汚塗膜を適用した物体。
【請求項6】
親水性ビニルポリマー1~50重量%、防汚剤0~40重量%、溶剤および架橋剤その他の添加剤20~70重量%(重量%は防汚塗料組成物の全量に基づく)を含有する防汚塗料組成物であって、硬化した防汚塗膜が膨潤度10~80%およびヤング率500~30,000N/cm2を有することを特徴とする、水または海水との摩擦抵抗を低減する防汚塗料組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水または海水との摩擦抵抗の小さい防汚塗膜、特に海水との摩擦抵抗を少なくし、かつ水棲生物が付着しない船舶などの防汚塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
防汚塗料の主要な役割は藻類や貝類付着を防止して、船舶等のスムーズな航行を助けたり、発電所などの海水を導入する水路の場合は高い冷却効率を長期間維持したり、また漁業用の網の場合は網の目詰まりを防止したり、水中構造物の耐用年数を高めるために海棲生物の付着を防止したりすることが行われる。
【0003】
船舶等の海棲生物付着防止は船舶のスムーズな航行には欠かせないが、昨今の燃費の向上などで付着防止だけでなく低燃費航行を実現する塗膜が強く求められている。また導水路では電力エネルギー効率を高めるため海水との低摩擦抵抗を実現する塗膜の開発が求められている。
【0004】
このような海水との摩擦を低減する塗料組成物は下記の特許文献1~4に開示されている。これらの特許文献は、アクリル樹脂およびポリオキシエチレン鎖を有するアクリル樹脂を塗料中のバインダーとして用いた塗料用樹脂組成物が開示されている。
【0005】
これらの特許文献において、摩擦抵抗低減の方法として無機粒子を防汚塗料組成物に配合(特許文献1)する技術、有機高分子物質の複合粒子を配合(特許文献2)する技術、表面を親水性にする方法(特許文献3~4)、また多糖類のバインダーを添加するなどの方法が提供されているが、どの方法も摩擦低減の方法として不十分であった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平5-86309号公報
【特許文献2】特開2007-169628号公報
【特許文献3】特開平11-29747号公報
【特許文献4】特開2003-277691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の現状に鑑み、船舶、水路、漁網等のように海水との摩擦が生じる箇所において、海水との摩擦抵抗を低減することができる水中摩擦低減塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、高分子ハイドロゲルから構成される塗膜中に防汚剤を含有する防汚塗膜であって、該防汚塗膜が、膨潤度10~80%およびヤング率500~30,000N/cmを有することを特徴する水または海水との摩擦抵抗の小さい防汚塗膜を提供する。
【0009】
上記防汚剤は、平均粒径3μm以下を有する亜酸化銅粒子であるのが好ましい。
【0010】
前記の高分子ハイドロゲルはキトサンポリマー、ポリエーテルエステルポリマー、またはビニルポリマーであるのが好ましい。
【0011】
前記高分子ハイドロゲルはまた、親水性ビニルモノマーおよびグリシジル基を有するモノマーの共重合体であるのが好ましく、かつ前記架橋剤はトリアジン系化合物であるのが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記の防汚塗膜を適用した物体も提供する。
【0013】
本発明は更に、親水性ビニルポリマー1~50重量%、防汚剤0~40重量%、溶剤および架橋剤その他の添加剤20~70重量%(重量%は防汚塗料組成物の全量に基づく)を含有する防汚塗料組成物であって、硬化した防汚塗膜が膨潤度10~80%およびヤング率500~30,000N/cmを有することを特徴とする、水または海水との摩擦抵抗を低減する防汚塗料組成物と提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法で形成される高分子ハイドロゲル膜内では、水または海水が自由に移動できる。そのため、水や海水との摩擦抵抗が小さくなる。また、本発明の高分子ハイドロゲル膜は、水や海水が自由に移動できることから、水棲生物の付着の足掛かりになり難いが(水棲生物にとって「足場が悪い」ともいう。)、さらに高分子ハイドロゲルの分子骨格に忌避性のあるトリアジンがあることで水棲生物の付着を阻害している。本発明によれば、高分子ハイドロゲル膜に防汚剤を含有させることで、海棲生物の付着がきわめて有効に防止され得る。
【0015】
加えて、本発明の高分子ハイドロゲル樹脂塗膜は加水分解性が乏しいため、膜が崩壊しがたい。任意に防汚剤などが含まれている場合、それらは膜内の三次元架橋構造内に保持され、場合によりイオン的に固定されており、膜が崩壊されない限り水中への放出が生じえない。従って本発明の高分子ハイドロゲル膜は膜自体の耐用期間が延長されるのみならず、海水汚染をも防止する。また、本発明では、防汚塗膜のヤング率も規定した。ヤング率が所定の範囲に無いと、長期にわたる耐水物性や、水棲生物の付着を阻止することは難しい。
【0016】
すなわち本発明の接触抵抗低減膜は、少なくとも1年間以上、特に少なくとも2~4年間以上に亙って、これで被覆された被塗物表面への貝類、腔腸動物、管棲多毛類等の海棲生物の付着を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例で得られた膨潤度(含水率:%)と摩擦抵抗低減率(%)とをプロットしたグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の防汚塗膜は、膜の水中での膨潤度(含水率)が10~80%で、ヤング率が500~30,000N/cmである。

【0019】
高分子ハイドロゲル樹脂
本発明の防汚被膜のバインダーは高分子ハイドロゲルから構成される。高分子ハイドロゲル樹脂は親水性の高いポリマー分子が3次元的に架橋している。親水性のハイドロゲルは天然の高分子を原料とするキトサンゲル、メチルセルロースゲルや親水性のポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリオールを主成分とするポリエーテルエステルポリマーなども挙げられ、これらは防汚被膜のバインダーとして単独またはビニルポリマーとの併用で用いられる。しかしながら合成が容易で取り扱いが容易なビニルモノマーを原料として合成される親水性ビニルポリマーが好適である。

【0020】
キトサンポリマー
キトサンポリマーは本発明の防汚被膜のバインダーとして単独またはビニルポリマーとの併用で用いられる。キトサンポリマーは市販のキトサン粉末をクエン酸などの有機酸の水溶液に溶解後、アルカリで中和して容易に得ることができる。

【0021】
ポリエーテルエステルポリマー
ポリエーテルエステルポリマーは本発明の防汚被膜のバインダーとして単独またはビニルポリマーとの併用で用いられる。ポリエーテルエステルポリマーは2官能のカルボン酸エステルをポリエーテルポリマーなどとのエステル交換反応で容易に得ることができる。

【0022】
親水性ビニルモノマーを原料として合成される親水性ビニルポリマー
好適な親水性ビニルモノマーの例としては、カチオン性ビニルモノマー、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アリルアミン、N-メチルアリルアミン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミドおよびビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン等;アニオン性ビニルモノマー、例えば(メタ)アクリル酸およびその塩、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、アコニット酸、4-ペンテン酸、ω—ウンデセン酸およびこれらの塩、ビニルスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、2-アクリルアミドー2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-アクリロイルプロパンスルホン酸、2-メタクロイルエタンスルホン酸、およびこれらの塩、更には、リン酸基およびその塩;等が挙げられる。

【0023】
上記親水性ビニルモノマーと共重合する他のモノマーの例としては、N-アルキル置換(メタ)アクリルアミド;例えば(メタ)アクリルアミド、(メタ)N-アクリロールーLアラニン、(メタ)アミノプロピルアクリルアミド、(メタ)N-アミノプロピルアクリルアミド、(メタ)N-イソプロピルアクリルアミド、t-ブチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)イソブチルアクリルアミド、(メタ)ダイアセトンアクリルアミド等;(メタ)アクリル酸エステル;例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸i—ブチル、(メタ)アクリル酸nーブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸i—オクチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル;あるいは水酸基を含む(メタ)アクリル酸、例えば、(メタ)アクリ酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられる。

【0024】
前記モノマー種から親水性ビニルポリマーが調製されるが、塗布時に架橋剤の作用によって内部に三次元構造が形成される。架橋剤として忌避性のある化合物、特にトリアジン系化合物などが適しており、このため形成した三次元構造の架橋点にトリアジン骨格が配位されており、海棲生物が付着しにくい構造となる。

【0025】
好適なトリアジン系化合物の例としては;6-(4-(アミノメチル)ピペリジン-1-イル)-N,N-ジイソプロピル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、6-(4-(アミノメチル)ピペリジン-1-イル)-N,N-ビス(2-メトキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、6-(4-(アミノメチル)ピペリジン—1—イル)-N,N-ビス(3-(メチルチオ)プロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、N-(2-アミノエチル)-N、N-ジイソプロピル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N—ビス(2-(1H-インドール-3-イル)エチル)-N-(2-アミノエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N-(2-アミノエチル)-N、N-ビス(2-メトキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N-(2-(1H-インドール-3-イル)エチル)-N、N-ビス(2-アミノエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N-(2-(1H-インドール3-イル)エチル)-N-(2-アミノエチル)-N-メチル-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、などが挙げられる。

【0026】
本発明において、高分子ハイドロゲルは、硬化系の異なる別のアクリル系樹脂と混ぜて使用してもよい。そのような樹脂は重合性不飽和基を導入したポリマーで、ドライヤーと呼ばれる硬化性触媒の存在下で常温乾燥される。またシリコーン樹脂(SiR)系を混ぜて使用してもよい。例えば湿気硬化性のメチルシロキサンゴム(一般名「RTVシリコーンゴム」)等が挙げられる。

【0027】
本発明の高分子ハイドロゲルは、水中または海水中に浸漬すると、三次元架橋構造内に水または海水が浸透する。その結果、前記三次元架橋構造内に水または海水が包含された(すなわち、水または海水で膨潤された)本発明のハイドロゲル膜が得られる。

【0028】
防汚剤(抗菌剤)
本発明の防汚塗膜は、前記高分子ハイドロゲルの3次元架橋構造内に防汚剤を含有していてよい。防汚剤には、有機系と無機系の2種類があるが、本発明では無機系(例えば、亜酸化銅)または有機系の防汚剤と併用してもよい。

【0029】
本発明において好適に用いられる有機系防汚剤は、公知のものであってよく、例えば、ニトリル系、ピリジン系、ハロアルキルチオ系、有機ヨード系、チアゾール系およびベンズイミダゾール系抗菌剤から選択される2種以上を包含していてよい。好ましい抗菌剤の具体例を以下に列挙する。

【0030】
(a)ニトリル系抗菌剤;ハロイソフタロニトリル化合物(例えば、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、5-クロロ-2,4,6-トリフルオロフタロニトリル)およびハロアリールニトリル化合物

【0031】
(b)ピリジン系抗菌剤;ハロゲン化されたピリジン誘導体(例えば、ハロアルキルチオ2-クロロ-6-トリクロロメチルピリジン、2-クロロ-4-トリクロロメチル-6-メトキシピリジン、2-クロロ-4-トリクロロメチル-6-(2-フリルメトキシ)ピリジン、ジ(4-クロロフェニル)ピリジンメタノール、スルホニルハロピリジン化合物(2,3,5,6-テトラクロロ-4-メチルスルホニルピリジン、2,3,5-トリクロロ-4-(n-プロピルスルホニル)ピリジン)およびピリジンチオール-1-オキシド化合物(例えば、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛、ジ(2-ピリジンチオール-1-オキシド))、

【0032】
(c)ハロアルキルチオ系抗菌剤;ハロアルキルチオフタルイミド化合物(例えば,N-フルオロジクロロメチルチオフタルイミド、N-トリクロロメチルチオフタルイミド)、ハロアルキルチオテトラヒドロフタルイミド化合物(例えば、N-1,1,2,2-テトラクロロエチルチオテトラヒドロフタルイミド、N-トリクロロメチルチオテトラヒドロフタルイミド)、ハロアルキルチオスルファミド化合物(例えば、N-トリクロロチオ-N-(フェニル)メチルスルファミド、N-トリクロロメチルチオ-N-(4-クロロフェニル)メチルスルファミド、N-(1-フルオロ-1,1,2,2-テトラクロロエチルチオ)-N-(フェニル)メチルスルファミド、N-(1,1-ジフルオロ-1,2,2-トリクロロエチルチオ)-N-(フェニル)メチルスルファミド)、およびハロアルキルチオスルフィミド化合物(例えば、N,N-ジメチル-N’-フェニル-N’-(フルオロジクロロチオ)スルフィミド、N,N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’-フェニルスルフィミド、N,N-ジメチル-N’-(p-トリル)-N’-(フルオロジクロロメチルチオ)スルフィミド、

【0033】
(d)有機ヨード系抗菌剤;ヨードスルホン化合物、ヨウ化不飽脂肪族化合物(例えば、3-ヨード-2-プロパルギルブチルカルバミン酸、4-クロロフェニル-3-ヨードプロパルギルホルマール、3-エトキシカルボニルオキシ-ブロモ-1,2-ジヨード
-1-プロペン、2,3,3-トリヨードアリルアルコール)、ヨードスルフェニルベンゼン化合物(例えば、ジヨードメチルスルホニル-4-メチルベンゼン、1-ジヨードメチルス
ルホニル-4-クロロベンゼン、

【0034】
(e)チアゾール系抗菌剤;インチアゾリンー3-オン化合物(例えば、1,2-ベンズイソチアゾリンー3-オン、2-(n—オクチル)-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロー2-メチルー4-イソチアゾリンー3-オン、2-メチルー4-イソチアゾリンー3-オン、4,5-ジクロロー2-シクロヘキシルー4-イソチアゾリンー3-オン、ベンズチアゾール化合物(例えば、2-(4-チオシアノメチルチオ)-ベンズチアゾール、2-メルカプトベンズチアゾールナトリウム、2-メルカプトベンズチアゾール亜鉛)、およびイソチアゾリンー3-オン化合物。

【0035】
(f)ベンズイミダゾール系抗菌剤;ベンズイミダゾールカルバミン酸化合物(例えば、1-H-2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、ブチルカルバモイル-2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、6-ベンゾイル-1H-2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル)、硫黄含有ベンズイミダゾール化合物(例えば、1H-2-チオシアノメチルチオベンズイミダゾール、1-ジメチルアミノスルホニル-2-シアノ-3-ブロモ-6-トリフルオロメチルベンズイミダゾール)、ベンズイミダゾールの環状化合物誘導体(例えば、2-(4-チアゾリル)-1H-ベンズイミダゾール、2-(2-クロロフェニル)1H-ベンズイミダゾール、2-(1-(3,5-ジメチルピラゾリル)-1H-ベンズイミダゾール、2-(フリル)-1H-ベンズイミダゾール)、ベンズイミダゾールカルバミン酸化合物、チアゾリルベンズイミダゾール化合物。

【0036】
本発明において好適に使用される無機系の防汚剤、すなわち金属含有防汚剤としては、例えば、亜酸化銅、ロダン銅、ナフテン酸銅、ステアリン酸銅、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、ビスー(ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛、エチレン—ビスー(ジチオカルバミン酸)亜鉛、エチレンービスー(ジチオカルバミン酸)マンガン、エチレンービスー(ジチオカルバミン酸)銅が挙げられる。最も好適なものは亜酸化銅である。

【0037】
本発明者らは防汚剤、特に亜酸化銅について、更に詳細に検討し、亜酸化銅の粒径を小さくして表面積を増やすことによって配合量を減らした。亜酸化銅の配合量を減らすと、塗膜の強度が劣り、海水中での長期の耐水物性が確保できなくなる。このためバインダー樹脂の強度を高める必要があり、バインダー樹脂の架橋剤として従来より用いられている脂肪族アルキル系アミン化合物の代わりに前述のトリアジン系化合物を用いることで亜酸化銅低減による強度不足をカバーしただけでなく長期にわたる防汚性も確保できた。

【0038】
亜酸化銅の防汚性は亜酸化銅が海水中で溶解して銅イオンが生成することによる。しかしながら、亜酸化銅は海水中でごく僅かしか溶解しない。このため防汚性を確保するため、多量の亜酸化銅が配合されている。一方、亜酸化銅の粒径を小さくして表面積を大きくすれば少ない亜酸化銅の配合量でも防汚性が得られることを確認した。

【0039】
亜酸化銅は、一般に粒径(3μm)を約0.5μmまで微粒子化(表面積は36倍に増える)して、配合量を10分の1にまで少なくしても防汚性が確保できる。微粒子を船底塗料に使用することは製造の難しさからコスト的に高価であり、加水分解型樹脂の併用では防汚性の効果が疑問であり、かつハンドリングが難しいことから業界の常識では考えられないことであった。亜酸化銅は従って、平均粒径3μm以下、好ましくは0.5~3μmである。

【0040】
使用されている亜酸化銅量は通常、塗膜構成成分の約半分の量であり、したがって樹脂バインダ量は50%以下にせざるをえない。しかしながら微粒子亜酸化銅(約0.5μ)の使用により、樹脂の配合量は90質量%以上に増やすことも可能であり、膨潤度(含水量)を大きく高めることが可能となった。発明者らは同重量の亜酸化銅で、亜酸化銅を微粒子化することによって膨潤度が10%以上大きくなることも見出した。

【0041】
前記防汚剤の一部は、本発明の高分子ハイドロゲル膜の3次元架橋構造内にイオン的に結合されていてよい。

【0042】
溶剤および各種添加物
本発明の高分子ハイドロゲル樹脂塗膜は、溶剤や、可塑剤、着色顔料、体質顔料、溶出助剤などの各種添加剤をさらに含んでいてよい。

【0043】
本発明で好適に使用される溶剤は、水および有機系の水溶性溶剤であってよい。溶剤の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;アセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテルおよびエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドやN-メチルピロリドン;などが好ましく使用される。

【0044】
可塑剤には、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレートなどのフタル酸系、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル系、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル類、トリクレジルリン酸、トリクロロエチルリン酸等のリン酸エステル系、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチルなどのエポキシ系、等が含まれる。

【0045】
着色顔料としては、酸化チタン、酸化ジルコン、カーボンブラック、ベンガラ、フタロシアニングリーン、キナクリドン、エメラルドグリーン、フタロシアニンブルーが使用される。

【0046】
体質顔料には、タルク、クレー、シリカホワイト、アルミナホワイト、チタンホワイト、バントナイト、バライト、沈降性硫酸バリウム、等が含まれる。

【0047】
溶出助剤としては、パラフイン等が使用されうる。

【0048】
本発明では、高分子ハイドロゲル膜が膨潤度(含水量)10~80%およびヤング率500~30,000N/cmを有することが必要である。膨潤度(含水量)は、高分子ハイドロゲル膜を有する塗板を海水に12時間浸漬した後に引き上げて表面の余分な水をキムタオルを使用して拭いた後、直ちに重さを測定し、その後塗板を90℃で3時間乾燥させた後重さを測定し、(乾燥前の重さ-乾燥後の重さ)/乾燥前の重さ×100により計算して求める。膨潤度は、好ましくは10~80%、より好ましくは15~60%である。10%を下回ると、水との摩擦抵抗の低減効果がない。80%を超えると高分子ハイドロゲル膜のヤング率が大きく低減する。

【0049】
ヤング率は、テンシロン(引っ張り試験機)による膨潤塗膜の引っ張り試験において、引張り長さとその時にかかる応力との勾配から求められる。ヤング率は、好ましくは500~30,000N/cmであり、より好ましくは1,000~25,000N/cmである。500N/cmより小さいと、水棲生物の付着がおこる。逆に、30,000N/cmを超えると、塗膜が脆く簡単な衝撃で塗膜ワレを引き起こしたりする、などの欠点が生じる。また伸び率はテンシロンによる膨潤塗膜の引っ張り試験で、引っ張り前の長さ(L1)と引っ張りにより塗膜が破断した時の長さ(L2)とすると:(L2-L1/L1)×100(%)で表す。

【0050】
塗膜の摩擦抵抗の測定は種々の方法があるが、発明者らは浴槽中で円筒形回転ドラム(周囲に塗装)を回転、水との摩擦で生じる僅かな抵抗(トルク)が求められる装置を設計・製作して求めた。回転ドラム(円筒形;直径:26cm、長さ:20cm)の外囲に塗装、20℃の人工海水中、300rpmで回転してその抵抗値(トルク値:最少単位:0.001cN・m)をトルク計で求めた。低減率(%)は市販塗膜の抵抗値に比較し、低減した割合を求めた。

【0051】
防汚対象
本発明は、第二態様として、本発明の高分子ハイドロゲル膜が適用された物体も提供する。本発明の目的から、本発明の高分子ハイドロゲル膜が適用された物体は水または海水と接触する物体であって、特にその表面に水棲動物が付着することにより、その機能または性能あるいは操作性などに多大な影響を受けうるものである。このような物体は具体的には船舶(船底)海水導入管、例えば港湾施設、海上掘削施設、橋梁、パイプライン、海底基地などの洋上構築物、および漁網を包含する。

【0052】
防汚塗料
本発明の別の態様は、主成分として親水性ビニルポリマーを含有し、および溶剤および添加剤を含有する防汚塗料である。必要に応じて、防汚剤や架橋剤を防汚塗料に配合してもよい。本発明の防汚塗料は、本発明の高分子ハイドロゲル樹脂塗膜を形成するのに使用される。

【0053】
本発明の防汚塗料の主成分である親水性ビニルポリマーは、防汚塗料全重量に対して1~50重量%、好ましくは5~45重量%配合されていてよい。

【0054】
本発明の防汚塗料組成物には、更に、前記防汚剤が、防汚塗料組成物全重量に対して0~40重量%、好ましくは防汚塗料組成物全重量に対して5~30重量%の量で、および溶剤および各種添加剤が合計で、防汚塗料組成物全重量に対して20~70重量%、好ましくは防汚塗料組成物全重量に対して25~60重量%の量で配合されていてよい。

【0055】
前記防汚剤および各種添加剤を配合する場合は、これらを前記高分子樹脂に添加して、ボールミル、ロールミル、サンドグラインドミル等の混合機を用いて混合することにより、本発明の防汚塗料組成物が得られる。

【0056】
本発明の防汚塗料組成物は、調製後、塗布に必要な使用粘度まで水溶性の溶剤を用いて適宜希釈されてよい。

【0057】
本発明の防汚塗料は被塗物である船舶表面などに塗布した後、常温乾燥および架橋して架橋高分子樹脂塗膜を形成する。

【0058】
次いで、前記架橋高分子樹脂塗膜を(この膜で被覆された被塗物ごと)水中または海水中に、例えば0.1~7日間浸漬する。この間に三次元架橋構造内に水または海水が前記構造内に包含される。その結果三次元架橋構造内に水または海水が包含された(すなわち水または海水で膨潤された)本発明の高分子ハイドロゲル樹脂塗膜が得られる。

【0059】
本発明の方法で形成される高分子ハイドロゲル膜内では、水または海水が自由に移動できる。そのため、本発明の高分子ハイドロゲル膜は、水棲生物の付着の足掛かりになり難く(水棲生物にとって「足場が悪い」ともいう)、結果として水棲生物が付着し難い。
本発明によれば、高分子ハイドロゲル膜の分子骨格に忌避性の高いトリアジン骨格を用い、かつ防汚剤を含有させることで、海棲生物の付着が極めて有効に阻害される。

【0060】
加えて、本発明の高分子ハイドロゲル樹脂塗膜は加水分解性が乏しいため、膜が崩壊しがたい。任意に防汚剤などが含まれている場合、それらは膜内の三次元架橋構造内に保持され、場合によりイオン的に固定されており、膜が崩壊されない限り水中への放出が生じえない。従って本発明の高分子ハイドロゲル膜は膜事態の耐用期間が延長されるのみならず、海水汚染をも防止する。

【0061】
すなわち、本発明の接触抵抗低減膜は、長期間例えば、少なくとも1年間、特に少なくとも2~5年間に亙って、これで被覆された被塗物表面への貝類、腔腸動物、管棲多毛類等の海棲生物の付着を有効に防止することができる。
【実施例】
【0062】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものと解してはならない。
【実施例】
【0063】
実施例1
高分子樹脂ワニス(A~D)(表1)の調製
攪拌機、冷却器、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた500mlの4つ口フラスコに2-プロパノール60g、エタノール60g、イオン交換水30gを入れ、窒素を導入しながら撹拌した。続いて表1に示した組成表のモノマーを順次滴下、開始剤として2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.2gを添加し、60℃で8時間窒素化で加温した。これにより、透明な高分子樹脂ワニスA~Eが得られた。
【実施例】
【0064】
【表1】
JP2014142035A1_000003t.gif
【実施例】
【0065】
高分子樹脂ワニス(E)(表1)の調製
高分子樹脂ワニス(A~D)の調製で、硬化基を有するグリシジルモノマーの代わりに不飽和基を有するアリルメタクリレートを使用する以外は同様にして調製した。硬化触媒として有機系コバルト化合物を使用した。
【実施例】
【0066】
実施例2
キトサンポリマーの調製
2.63gのキトサン粉末を、1%のクエン酸溶液30gに加えて、室温で3時間撹拌しながら溶解し粘性のある透明な液体を得た。得られて液体に2Nの水酸化カリウム溶液を少しずつ加えてpH8のアルカリにして、キトサンゲルの白色沈殿物を得た。この沈殿物を回収し、塩ビ板上に均一に塗布、沈殿物表面の余分な水分をキムタオルを使用して完全に除去した。拭き取った後の重量を測定後、乾燥機(80℃)で3時間乾燥した。乾燥前後の重量変化から含水率は64%であった。
【実施例】
【0067】
実施例3
ポリエーテルポリエステルポリマーの調製
4つ口フラスコに2,6-ジメチルナフタレート37.62g、ポリエチレングリコール(分子量2000)98.94g、1,4ブタンジオール17.75gおよび10ppm(キシレン溶液)のテトラブトキシチタン2mlを入れ、窒素置換をしながら加温した。温度約160~200℃で均一な液体となった。反応は220~230℃で約7時間行い、留出するメタノールを除去した。得られた化合物(室温では結晶化する)をテトラヒドロフランに溶解し、(濃度約15%)、塩ビ板に塗布、乾燥してポリエステル膜を得た。この膜を蒸留水に一昼夜浸漬、浸漬前後の重量変化から膜の含水率を求めたところ、45%であった。
【実施例】
【0068】
亜酸化銅(3μ、1μ、0.5μ)ペーストの調製
200mlの分散容器に混合溶剤50g(2-プロパノール20g、エタノール20g、水10g)を入れ、続いてアクリル酸系顔料分散剤(濃度50%)2.4gを加えて溶解した。分散溶液に平均粒径3μまたは1μまたは0.5μの亜酸化銅50g、分散ビーズ(ジルコニウム製)50gを入れて、分散羽根を装着した分散機にかけて回転数2500rpmで20分間分散した。分散後、茶こしでビーズを除き分散ペーストを得た。
【実施例】
【0069】
実施例4
トリアジン化合物の調製(硬化剤1)
溶剤のテロラヒドロフランに塩化シアヌル18.8gを溶解した溶液(350ml)にN,N-ジイソプロピルエチルアミン39.7g、イソプロピルアミン15.1gを加え、室温で72時間撹拌した。反応液に水を加え、目的物を析出させた後、吸引濾過して化合物6-クロロ-N,N-ジイソプロピル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン22.2gを得た。この化合物をテトラヒドロフラン150mlに溶解してえられた溶液にジイソプロピルアミン31.2g、4-(アミノメチル)ピペリジン27.6gを加え、室温で24時間撹拌した。反応液を濃縮した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧化溶媒を除去した。残留物をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフイ(酢酸エチル:メタノール=3:1)で精製し、化合物6-(4-(アミノメチル)ピペリジン-1-イル)-N,N-ジイソプロピル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン27gを得た。次いでこの化合物をエタノール27gに溶解して50%溶液を得た。硬化剤1の化学式は以下の通りである。
【実施例】
【0070】
トリアジン化合物の調製(硬化剤2)
溶剤のテトラヒドロフランに塩化シアヌル15.0gを溶解した溶液(150ml)にN,N-ジイソプロピルエチルアミン21.1g、メトキシエチルアミン12.2gを加え、室温で72時間撹拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、化合物6-クロロ-N,N-ビス(2-メトキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンを10.8g(収率51%)得た。この化合物 10.0gを150mlのテトラヒドロフランに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン9.9g、4-(アミノメチル)ピペリジン8.75gを加え、室温で72時間撹拌した。反応液を濃縮した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=3:1トリエチルアミン2%含)で精製し、化合物6-(4-(アミノメチル)ピペリジン-1-イル)-N,N-ビス(2-メトキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン7.94g(収率61%)を得た。
【実施例】
【0071】
トリアジン化合物の調製(硬化剤3)
溶剤のテロラヒドロフランに塩化シアヌル4.21gを溶解した溶液(50ml)にN、N-ジイソプロピルエチルアミン5.9g、3-メチルチオプロピルアミン4.8gを加え、室温で4日間撹拌した。反応液に水を加え、目的物を析出させた後、吸引ろ過し、化合物6-クロロ-N,N-ビス(3-(メチルチオ)プロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン6.54g(収率89%)を得た。この化合物のテトラヒドロフラン溶液50mlにジイソプロピルエチルアミン6.57g、4-(アミノメチル)ピペリジン5.8gを加え、室温で24時間撹拌した。反応液を濃縮した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=1:1トリエチルアミン2%含)で精製し、化合物6-(4-(アミノメチル)ピペリジン—1—イル)-N,N-ビス(3-(メチルチオ)プロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンを6.67g(収率82%)得た。
【実施例】
【0072】
トリアジン化合物の調製(硬化剤4)
化合物6-クロロ-N,N-ジイソプロピル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン1.0gのテトラヒドロフラン溶液(テトラヒドロラン15ml)にジイソプロピルエチルアミン4.5g、N-アセチルエチレンジアミン2.22gを加え、24時間加熱還流した。反応液を濃縮した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、化合物N-(2-((4,6-ビス(イソプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)エチル)アセトアミドを1.09g(収率85%)を得た。この化合物12.4 gのエタノール(200 mL)溶液に、60%水酸化カリウム水溶液(200 mL)を加え、48時間加熱還流した。反応液を濃縮した後、水を加えクロロホルムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=5:1 トリエチルアミン3%含)で精製し、化合物N-(2-アミノエチル)-N、N-ジイソプロピル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンを8.57g(収率81%)を得た。
【実施例】
【0073】
トリアジン化合物の調製(硬化剤5)
塩化シアヌル11.5 gのテトラヒドロフラン(200 mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン16.15g、トリプタミン20.0gを加え、室温で24時間撹拌した後、吸引ろ過し、化合物N、N-ビス(2-(1H-インドール-3-イル)エチル-6-クロロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンを26 g得た。この化合物13.3gのテトラフラン溶液(200 mL)に、ジイソプロピルエチルアミン47.8g、N-アセチルエチレンジアミン23.7gを加え、24時間加熱還流した。反応液を濃縮した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=5:1)で精製し、化合物N-(2-((4,6-ビス((2-(1H-インドール-3-イル)エチル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)エチル)アセトアミドを14.3 g(収率94%)得た。この化合物14.3 g(28.7 mmol)のエタノール(150 mL)溶液に、60%水酸化カリウム水溶液(150 mL)を加え、24時間加熱還流した。反応液を濃縮した後、水を加えクロロホルムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=5:1)で精製し、化合物N,N—ビス(2-(1H-インドール-3-イル)エチル)-N-(2-アミノエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンを10.7 g(収率82%)得た。
【実施例】
【0074】
トリアジン化合物の調製(硬化剤6)
化合物6-クロロ-N,N-ビス(2-メトキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン15.0 gのテトラヒドロフラン(150 mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン59.45g、N-アセチルエチレンジアミン29.3 gを加え、24時間加熱還流した。反応液を濃縮した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=5:1)で精製し、化合物N-(2-((4,6-ビス((2-メトキシエチル)アミノ)1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)エチル)アセトアミドを8.9g(収率47%)得た。この化合物8.90gのエタノール(100 mL)溶液に、60%水酸化カリウム水溶液(100 mL)を加え、72時間加熱還流した。反応液を濃縮した後、水を加えクロロホルムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=5:1 トリエチルアミン3%含)で精製すし、化合物N-(2-アミノエチル)-N、N-ビス(2-メトキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンを7.08 g(収率91%)得た。
【実施例】
【0075】
トリアジン化合物の調製(硬化剤7)
塩化シアヌル1.00 gのTHF(20 mL)溶液に、氷—食塩浴で冷却下、炭酸水素ナトリウム0.68 g(8.13 mmol)を加え、トリプタミン0.90 gのTHF(5 mL)溶液を滴下した後、70分間撹拌した。反応液を濃縮した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、化合物N-(2-(1H-インドール-3-イル)エチル)-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-アミンを1.62g得た。この化合物17.0 g(55.2 mmol)のTHF(200 mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン57.0g、N-アセチルエチレンジアミン28.2 gを加え、24時間加熱還流した後、反応液に水を加え酢酸エチルで抽出した。この時、エマルジョン部分は別途分取し、減圧下溶媒を留去した。有機層は飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。有機層とエマルジョン部の残留物を混ぜ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=5:1 トリエチルアミン2%含)で精製し、化合物N,N’-(((6-((2-(1H-インドール-3-イル)エチル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(アザンジイル))ビス(エタン-2,1-ジイル))ジアセトアミドを13.5g得た。この化合物13.5 gのエタノール(150 mL)溶液に、60%水酸化カリウム水溶液(150 mL)を加え、72時間加熱還流した。反応液を濃縮した後、水を加えクロロホルムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、化合物N-(2-(1H-インドール-3-イル)エチル)-N、N-ビス(2-アミノエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンを10.2 g(収率94%)得た。
【実施例】
【0076】
トリアジン化合物の調製(硬化剤8)
化合物N-(2-(1H-インドール-3-イル)エチル)-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-アミン14.0 gのTHF(150 mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン23.5g、ベタスチン・メタンスルホン酸塩22.4 gを加え、室温で24時間撹拌した。反応液を濃縮した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物を温メタノール中で撹拌し、固体成分をろ過し、化合物N-(2-(1H-インドール-3-イル)エチル)-6-クロロ-N-メチル-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)-1,3,5-トリアジン-4,6-ジアミンを14.6g(中立79%)を得た。この化合物14.6 g(35.8mmol)のTHF(150 mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン36.97g、N-アセチルエチレンジアミン18.3 gを加え、24時間加熱還流した。反応液を濃縮した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=5:1 トリエチルアミン2%含)で精製し、化合物N-(2-((4-((2-(1H-インドール-3-イル)エチル)アミノ)-6-(メチル(2-(ピリジン-2-イル)エチル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)エチル)アセトアミドを13.6 g(収率80%)得た。この化合物13.6gのエタノール(150 mL)溶液に、60%水酸化カリウム水溶液(150 mL)を加え、24時間加熱還流した。反応液を濃縮した後、水を加えクロロホルムで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。残留物を酢酸エチルで再結晶し、化合物N-(2-(1H-インドール3-イル)エチル)-N-(2-アミノエチル)-N-メチル-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンを8.15 g(収率66%)得た。
【実施例】
【0077】
硬化剤1~8の化学式は以下の通りである。
【実施例】
【0078】
【化1】
JP2014142035A1_000004t.gif
【実施例】
【0079】
実施例5
塗料A-1~Eの作成(表2)
表2の組成表に従い、300mlの容器に樹脂溶液A~Eを100~172g、亜酸化銅ペーストCを22~80g、トリアジン系触媒を0.16~0.32gを加えてミキサーで十分に撹拌後、混合溶剤(エタノール/2-プロパノール/水=2/2/1)6~20gを加えて撹拌、希釈した。
【実施例】
【0080】
実施例6
塗膜A-1~Eの性能(表2)
実施例4で作成した塗料(A-1~E)の一部を摩擦抵抗測定用の回転ドラムに塗布して室温で2時間乾燥後、測定した。一方海水での防汚性を調べるため、10×30cmの塩ビ板に塗布して海水に浸漬した。また物性測定(ヤング率、伸び率)のため、ガラス板に塗布、2時間乾燥後、人工海水に一晩浸漬して膨潤し、膨潤塗膜をガラス板より直ちに短冊片に切り取ってテンシロン(引っ張り試験機)による引っ張り試験で物性を測定した。ヤング率と伸び率の測定は、前述した通り、テンシロン(引っ張り試験機)により測定した。
【実施例】
【0081】
摩擦抵抗の測定
摩擦抵抗は浴槽中で円筒形回転ドラム(周囲に塗装)を回転、水との摩擦で生じる僅かな抵抗(トルク)が求められる装置を設計・製作して求めた。回転ドラム(円筒形;直径:26cm、長さ:20cm)の外囲に塗装、20℃の人工海水中、300rpmで回転してその抵抗値(トルク値:最少単位:0.001cN・m)をトルク計で求めた。低減率(%)は市販塗膜の抵抗値に比較し、低減した割合を求めた。
【実施例】
【0082】
防汚性は、海水に1年間浸漬して、海棲生物の付着状況を目視で観察した。
○は海棲生物、海藻の付着が認められず、膜の劣化も認められない。
△は海棲生物、藻類が僅かに付着し、膜の劣化が多少認められる。
×は海棲生物、藻類が付着し、膜の劣化が著しい。
【実施例】
【0083】
比較例1
市販の塗料を実施例5と同様に塗膜を作成し、摩擦抵抗、防汚性、物性試験に供した。結果を表3に示す。
【実施例】
【0084】
比較例2
実施例4の塗料の作成(B-2)において、トリアジン系触媒の代わりにジエチレントリアミンを用いる以外は全く同じ方法で塗膜を作成し、各種試験(摩擦抵抗、防汚性、物性)に供した。結果を表3に示す。
【実施例】
【0085】
比較例3
実施例4の塗料の作成(D-3)において、トリアジン系触媒の代わりにジエチレントリアミンを用いる以外は全く同じ方法で塗膜を作成し、各種試験(摩擦抵抗、防汚性、物性)に供した。各実施例、比較例についての測定結果を表2、3に示した。
【実施例】
【0086】
ヤング率の測定
テンシロン(引っ張り試験機)による膨潤塗膜の引っ張り試験で、引っ張り長さとその時にかかる応力との勾配から求められる。
【実施例】
【0087】
伸び率の測定
テンシロンによる膨潤塗膜の引っ張り試験で、引っ張り前の長さ(L1)と引っ張りにより塗膜が破断した時の長さ(L2)とすると:(L2-L1/L1)×100(%)で表す。
【実施例】
【0088】
【表2】
JP2014142035A1_000005t.gif
【実施例】
【0089】
【表3】
JP2014142035A1_000006t.gif
【実施例】
【0090】
表2および3の結果より、市販の塗膜に比し、摩擦抵抗は著しく向上した。物性の面でヤング率、伸び率が大きく、膜の物性としては固くて脆い市場塗膜よりも丈夫で柔軟性に富む塗膜が得られた。塗膜B-3およびD-3でヤング率がやや低いが、長期の海水浸漬に十分に耐えられる物性である。一方、比較2、3でヤング率が劣る塗膜では物性的には保持しているが、海棲生物、藻類の付着が認められた。
【実施例】
【0091】
図1には、表2に記載した実施例の防汚塗膜の膨潤度(%)および摩擦抵抗低減率(%)の値を、摩擦抵抗低減率(%)を縦軸に膨潤度(%)を横軸にしたグラフを表す。図1に示したように摩擦抵抗低減率は塗膜の膨潤度に比例して大きくなることが解った。このことは、これまでに知られていない発見であり、この発見に基づいて本発明は完成された。本発明の塗膜は、海水中での優れた摩擦抵抗低減を有していることが明白である。本発明は水性塗料で環境汚染が少なく、海水においても従来の塗膜のように加水分解することがなく、かつ防汚性に最も効果のある亜酸化銅の配合量も大きく低減しており、海水汚染も著しく低減した技術の提供である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の防汚塗膜は、海水および真水を問わず、水上および水中で使用する物体の塗装にきわめて有効である。特に、本発明の防汚塗膜は、船舶に応用した場合、水との抵抗が低減されて燃料の節約になるだけで無く、早い走行が可能となり、時間および経費の両方が低減される。
図面
【図1】
0