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明細書 :通信システム、送信装置、受信装置、通信方法およびプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6206885号 (P6206885)
登録日 平成29年9月15日(2017.9.15)
発行日 平成29年10月4日(2017.10.4)
発明の名称または考案の名称 通信システム、送信装置、受信装置、通信方法およびプログラム
国際特許分類 H04J  99/00        (2009.01)
H04L  27/02        (2006.01)
FI H04J 99/00 100
H04L 27/02
請求項の数または発明の数 17
全頁数 27
出願番号 特願2015-513505 (P2015-513505)
出願日 平成26年3月14日(2014.3.14)
国際出願番号 PCT/JP2014/001472
国際公開番号 WO2014/174754
国際公開日 平成26年10月30日(2014.10.30)
優先権出願番号 2013094469
2013173408
優先日 平成25年4月26日(2013.4.26)
平成25年8月23日(2013.8.23)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成29年1月10日(2017.1.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】杉浦 慎哉
個別代理人の代理人 【識別番号】110000877、【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
審査官 【審査官】太田 龍一
参考文献・文献 米国特許出願公開第2011/0188550(US,A1)
特表2010-504656(JP,A)
特開2002-57605(JP,A)
特表2006-521711(JP,A)
A. D. Liveris et al.,Exploiting faster-than-Nyquist signaling,IEEE Transactions on Communications,米国,2003年 9月,Vol. 51, No. 9,Pages 1502 - 1511
Y. J. D. Kim et al.,An architecture for faster than Nyquist Turbo broadcasting,2012 7th International Symposium on Turbo Codes and Iterative Information Processing (ISTC),米国,2012年,Pages 170 - 174
X. Wang et al.,Robust channel estimation and ISI cancellation for OFDM systems with suppressed features,IEEE Journal on Selected Areas in Communications,米国,2005年 5月,Vol. 23, No. 5,Pages 963 - 972
調査した分野 H04J 99/00
H04L 27/00-27/38
H04J 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
送信装置および受信装置を含む、帯域制限された通信システムであって、
前記送信装置は、
送信データの複数のシンボルを時間軸において順番に配置した各ブロックの先頭に、各ブロックの最後尾における予め定められた個数のシンボルを含む長さのデータをコピーしたプレフィックスを付加するプレフィックス付加部と、
前記プレフィックスが付加された各ブロックの各シンボルを、前記通信システムの帯域に応じたナイキストレートよりも短い時間間隔で送信する送信部と
を備え、
前記受信装置は、
受信データの各ブロックから前記プレフィックスを除去するプレフィックス除去部と、
前記プレフィックスが除去された各ブロックにおいて、前記送信部が前記ナイキストレートよりも短い時間間隔でシンボルを送信したことにより生じた各ブロック内におけるシンボル間干渉を除去する干渉除去部と
を備える通信システム。
【請求項2】
前記干渉除去部は、前記受信データの各ブロックにおいて、前記プレフィックスの長さより長い区間で生じる前記シンボル間干渉を無視して、前記プレフィックスの長さ以下の区間で生じる前記シンボル間干渉を除去する
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記干渉除去部は、前記送信部における各シンボルの時間間隔に基づいて、前記受信データから前記シンボル間干渉を除去する
請求項に記載の通信システム。
【請求項4】
前記送信装置は、前記プレフィックスが付加された前記送信データの帯域幅を、予め定められた帯域幅に制限して前記送信部に入力する送信フィルタを更に備え、
前記干渉除去部は、前記送信フィルタのフィルタ特性に基づいて、前記受信データから前記シンボル間干渉を除去する
請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記プレフィックス付加部は、前記送信フィルタのフィルタ特性および前記送信データの各ブロックの長さの少なくとも一方に基づいて、前記プレフィックスの長さを定める
請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記干渉除去部は、
前記ブロックにおけるシンボル間干渉を示す等価チャネルマトリクスを巡回行列で近似し、
前記受信データの各周波数成分に対して、前記巡回行列に応じたウェイト係数を乗算して前記シンボル間干渉を除去する
請求項1から5のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記干渉除去部は、前記送信部における前記時間間隔に基づいて、前記受信データに重畳されたランダム雑音の大きさを補正して、前記シンボル間干渉を除去する
請求項2から6のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記送信装置は、
送信すべき情報を示すソースビット列を受け取り、ソースビット列を予め定められた長さの複数のサブブロックに分割し、各サブブロックのソースビット列を、ソースビット列の一部のビット値に対応するシンボル位置に、ソースビット列の残りのビット値に応じた送信シンボルを有するシンボル列に変換して、前記プレフィックス付加部に入力する変調部を更に備え、
前記プレフィックス付加部は、シンボル列を分割した前記ブロックの先頭に、前記プレフィックスを付加する
請求項2から7のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項9】
前記受信装置は、前記受信データにおける各サブブロックについて、前記送信シンボルと、前記送信シンボルの位置とに基づいて、前記ソースビット列を復調する復調部を更に備える
請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記送信装置は、
送信すべき情報を示すソースビット列にRSC符号を付加するRSCエンコーダと、
入力されるビット列に応じたシンボル列を生成する複数の変調部と、
前記RSCエンコーダがRSC符号を付加した前記ソースビット列の各ビットを、前記複数の変調部のいずれかに割り当てて入力する割り当て部と、
前記複数の変調部が生成したシンボル列を合成する合成部と
を有し、
前記複数の変調部は、それぞれ異なる時間間隔でシンボルを送信するための前記シンボル列を生成する2以上の変調部を含み、
前記割り当て部は、前記RSCエンコーダにおける符号化率に基づいて、それぞれの変調部に入力するビットの個数の比を制御する
請求項2から9のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項11】
前記割り当て部は、
前記RSCエンコーダの符号化率に応じた外側EXIT曲線と、前記複数の変調部に対応する複数の個別EXIT曲線を合成した内側EXIT曲線とが、予め定められた間隔以下となるように、前記ビットの個数の比を制御する
請求項10に記載の通信システム。
【請求項12】
前記複数の変調部は、入力されたビット列を予め定められた長さの複数のサブブロックに分割し、各サブブロックのビット列を、ビット列の一部のビット値に対応するシンボル位置に、ビット列の残りのビット値に応じた送信シンボルを有するシンボル列に変換する2以上の変調部を含み、
前記2以上の変調部におけるサブブロックの長さが異なる
請求項10または11に記載の通信システム。
【請求項13】
帯域制限された通信システムにおける送信装置であって、
送信データの複数のシンボルを時間軸において順番に配置した各ブロックの先頭に、各ブロックの最後尾における予め定められた個数のシンボルを含む長さのデータをコピーしたプレフィックスを付加するプレフィックス付加部と、
前記プレフィックスが付加された各ブロックの各シンボルを、前記通信システムの帯域に応じたナイキストレートよりも短い時間間隔で送信する送信部と
を備える送信装置。
【請求項14】
帯域制限された通信システムにおける受信装置であって、
送信データの複数のシンボルを時間軸において順番に配置した各ブロックの先頭に、各ブロックの最後尾における予め定められた個数のシンボルを含む長さのデータをコピーしたプレフィックスが付加して送信されたデータを受信し、受信した受信データの各ブロックからプレフィックスを除去するプレフィックス除去部と、
前記プレフィックスが除去された前記各ブロックから、送信装置が前記通信システムのナイキストレートよりも短い時間間隔でシンボルを送信したことにより生じた各ブロック内におけるシンボル間干渉を除去する干渉除去部と
を備える受信装置。
【請求項15】
送信装置および受信装置を含む、帯域制限された通信システムにおける通信方法であって、
前記送信装置は、
送信データの複数のシンボルを時間軸において順番に配置した各ブロックの先頭に、各ブロックの最後尾における予め定められた個数のシンボルを含む長さのデータをコピーしたプレフィックスを付加し、
前記プレフィックスが付加された各ブロックの各シンボルを、前記通信システムの帯域に応じたナイキストレートよりも短い時間間隔で送信し、
前記受信装置は、
受信データから前記プレフィックスを除去し、
前記プレフィックスが除去された前記受信データから、前記送信装置が前記ナイキストレートよりも短い時間間隔でシンボルを送信したことにより生じた各ブロック内におけるシンボル間干渉を除去する
通信方法。
【請求項16】
コンピュータを、請求項13に記載の送信装置、または、請求項14に記載の受信装置として機能させるプログラム。
【請求項17】
前記プレフィックス付加部は、前記送信部における前記時間間隔に基づいて、前記プレフィックスの長さを定める
請求項1から12のいずれか一項に記載の通信システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、送信装置、受信装置、通信方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
帯域制限された通信システムでは、シンボル間干渉を生じさせない各シンボルの送信間隔が、利用可能な周波数帯域Wにより定まるナイキストレートで与えられる(例えば、特許文献1参照)。ナイキストレートより長い時間間隔で各シンボルを送信することで、送信シンボル間で干渉が生じないことを前提とした単純な受信装置を用いることができる。これに対して、ナイキストレートより短い時間間隔で各シンボルを送信するFTN(Faster-Than-Nyquist)方式も考案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
FTN方式では、通信システムが利用可能な帯域を増大させることなく、送信レートを向上させることができる。一方、受信側では、シンボル間干渉の影響を受けるので、復調のための演算量が大幅に増加する。近年の信号処理能力の向上に合わせて、いくつかのFTN復調アルゴリズム(時間空間等化アルゴリズム)が考案されている(例えば、非特許文献3、4参照)。非特許文献3では、シンボル間干渉が生じた受信データを畳み込み符号とみなしてビタビアルゴリズムを適用する。非特許文献4では、SIC(successive interference cancellation)に基づく繰り返し信号を利用している。また、シンボル間干渉を送信側で補償するプリコーディングアルゴリズム(例えば、特許文献1参照)、および、FTN送受信機に適したタイミング同期アルゴリズム(例えば、特許文献2参照)が開発された。
【0004】
また、信号が伝送するチャネルにおける周波数選択性フェージング等の影響で生じたシンボル間干渉を低減する技術が知られている(例えば、非特許文献5参照)。
関連する先行技術文献を以下に示す。
非特許文献1 J. G. Proakis, Digital Communications, 5th ed. McGraw-Hill, New York, 2008.
非特許文献2 J. E. Mazo, "Faster-than-Nyquist signaling," Bell System Technical Journal, vol. 54, no. 8, pp. 1451-1462, 1975.
非特許文献3 A. D. Liveris and C. N. Georghiades, "Exploiting faster-than-Nyquist signaling," IEEE Transactions on Communications, vol. 51, no. 9, pp. 1502-1511, 2003.
非特許文献4 F. Rusek and J. Anderson, "Multistream faster than Nyquist signaling," IEEE Transactions on Communications, vol. 57, no. 5, pp. 1329-1340, May 2009.
非特許文献5 林和則 「変復調と等化方式の基礎(Fundamentals of Modulation/Demodulation and Equalization Technologies)」Proc. MWE2004、 pp523-532, 2004.
非特許文献6 Nan Wu and Lajos Hanzo, "Near-Capacity Irregular-Convolutional-Coding-Aided Irregular Precoded Linear Dispersion Codes" IEEE TRANSACTIONS ON VEHICULAR TECHNOLOGY, VOL. 58, NO. 6, JULY 2009.
特許文献1 欧州特許第2342832号明細書
特許文献2 欧州特許第2436140号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のFTN送受信機においては、受信機における演算負荷が大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、送信装置および受信装置を含む、帯域制限された通信システムであって、送信装置は、送信データの各ブロックの先頭に、各ブロックの最後尾における予め定められた長さのデータをコピーしたプレフィックスを付加するプレフィックス付加部と、プレフィックスが付加された送信データの各シンボルを、通信システムの帯域に応じたナイキストレートよりも短い時間間隔で送信する送信部とを備え、受信装置は、受信データの各ブロックからプレフィックスを除去するプレフィックス除去部と、プレフィックスが除去された各ブロックにおいて、送信部がナイキストレートよりも短い時間間隔でシンボルを送信したことにより生じたシンボル間干渉を除去する干渉除去部とを備える通信システム、および、当該通信システムに係る通信方法を提供する。
【0007】
干渉除去部は、受信データの各ブロックにおいて、プレフィックスの長さより長い区間で生じるシンボル間干渉を無視して、プレフィックスの長さ以下の区間で生じるシンボル間干渉を除去してよい。干渉除去部は、送信部における各シンボルの時間間隔に基づいて、受信データからシンボル間干渉を除去してよい。
【0008】
送信装置は、プレフィックスが付加された送信データの帯域幅を、予め定められた帯域幅に制限して送信部に入力する送信フィルタを更に備え、干渉除去部は、送信フィルタのフィルタ特性に基づいて、受信データからシンボル間干渉を除去してよい。送信装置は、送信部における時間間隔を示す情報を、受信装置に送信してよい。送信装置は、送信フィルタのフィルタ特性を示す情報を、受信装置に送信してよい。
【0009】
プレフィックス付加部は、送信部における時間間隔に基づいて、プレフィックスの長さを定めてよい。プレフィックス付加部は、送信フィルタのフィルタ特性に基づいて、プレフィックスの長さを定めてよい。プレフィックス付加部は、送信データの各ブロックの長さに基づいてプレフィックスの長さを定めてよい。
【0010】
干渉除去部は、受信データを周波数領域の信号に変換し、周波数領域においてシンボル間干渉の成分を除去してよい。干渉除去部は、ブロックにおけるシンボル間干渉を示す等価チャネルマトリクスを巡回行列で近似し、受信データの各周波数成分に対して、巡回行列に応じたウェイト係数を乗算してシンボル間干渉を除去してよい。干渉除去部は、送信部における時間間隔に基づいて、受信データに重畳されたランダム雑音の大きさを補正して、シンボル間干渉を除去してよい。
【0011】
送信装置は、送信すべき情報を示すソースビット列を受け取り、ソースビット列を予め定められた長さの複数のサブブロックに分割し、各サブブロックのソースビット列を、ソースビット列の一部のビット値に対応するシンボル位置に、ソースビット列の残りのビット値に応じた送信シンボルを有するシンボル列に変換して、プレフィックス付加部に入力する変調部を更に備え、プレフィックス付加部は、シンボル列を分割したブロックの先頭に、プレフィックスを付加してよい。変調部は、送信シンボル以外のシンボルの値が零であるシンボル列を生成してよい。受信装置は、受信データにおける各サブブロックについて、送信シンボルと、送信シンボルの位置とに基づいて、ソースビット列を復調する復調部を更に備えてよい。
【0012】
送信装置は、送信すべき情報を示すソースビット列にRSC符号を付加するRSCエンコーダと、入力されるビット列に応じたシンボル列を生成する複数の変調部と、RSCエンコーダがRSC符号を付加したソースビット列の各ビットを、複数の変調部のいずれかに割り当てて入力する割り当て部と、複数の変調部が生成したシンボル列を合成する合成部とを有し、複数の変調部は、それぞれ異なる時間間隔でシンボルを送信するためのシンボル列を生成する2以上の変調部を含み、割り当て部は、RSCエンコーダにおける符号化率に基づいて、それぞれの変調部に入力するビットの個数の比を制御してよい。
【0013】
割り当て部は、RSCエンコーダの符号化率に応じた外側EXIT曲線と、複数の変調部に対応する複数の個別EXIT曲線を合成した内側EXIT曲線とが、予め定められた間隔以下となるように、ビットの個数の比を制御してよい。割り当て部は、内側EXIT曲線の入力相互情報量の全範囲に渡って、内側EXIT曲線の出力相互情報量の値が、外側EXIT曲線の入力相互情報量の値より大きくなるように、ビットの個数の比を制御してよい。
【0014】
複数の変調部は、入力されたビット列を予め定められた長さの複数のサブブロックに分割し、各サブブロックのビット列を、ビット列の一部のビット値に対応するシンボル位置に、ビット列の残りのビット値に応じた送信シンボルを有するシンボル列に変換する2以上の変調部を含み、2以上の変調部におけるサブブロックの長さが異なってよい。
【0015】
本発明の第2の態様においては、第1の態様における送信装置、または、受信装置を提供する。本発明の第3の態様においては、コンピュータを、第2の態様の送信装置または受信装置として機能させるプログラムを提供する。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システム100の構成例を示す図である。
【図2】干渉除去部36の構成例を示す図である。
【図3】FTN送信の概念を説明する図である。
【図4】送信装置10の動作を説明する図である。
【図5】受信装置30の動作を説明する図である。
【図6】等価チャネルマトリクスHの概要を示す図である。
【図7】送信装置10の動作例を示す図である。
【図8】受信装置30の動作例を示す図である。
【図9】信号対雑音比(SNR)に対するビットエラーレート(BER)を示す図である。
【図10】パック係数αに対する等価チャネルマトリクスHの推定誤差の大きさを示す図である。
【図11】パック係数αに対するSNRを示す図である。
【図12】通信システム100における送受信方式(FDE-FTN)と、従来の送受信方式(No ISI、ML Limit)とを比較した結果を示す図である。
【図13】変調部12およびプレフィックス付加部14の動作例を示す図である。
【図14】通信システム100の他の構成例を示す図である。
【図15】図14に示した受信装置30におけるEXITチャートの一例を示す。
【図16】コンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。

【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る通信システム100の構成例を示す図である。通信システム100は、送信装置10および受信装置30を備える。送信装置10は、帯域制限された送信データの各シンボルを、ナイキストレートよりも短い時間間隔で送信する。なお、ナイキストレートにおける各シンボルの時間間隔Tは、T=1/(2W)で与えられる。但し、Wは通信システムが利用可能な帯域幅を示す。

【0020】
本明細書では、ナイキストレートよりも短い時間間隔で送信データを送信することを、FTN送信と称する。FTN送信により、送信データにシンボル間干渉が生じる。なお、本明細書における「シンボル間干渉」の用語は、FTN送信により生じた干渉を意味しており、特に明示している場合を除き、チャネルにおける周波数選択性フェージングおよびディレイスプレッド等の影響によるシンボル間干渉を含まない。

【0021】
受信装置30は、送信装置10が送信した送信データを、チャネル20を介して受信する。本例のチャネル20は、無線チャネルである。受信装置30は、送信装置10がFTN送信したことにより生じたシンボル間干渉を除去して、受信データを復調する。これにより、通信システム100の帯域を広げずに、高い送信レートを実現する。シンボル間干渉の除去方法は後述する。なお、受信装置30は、FTN送信により生じるシンボル間干渉に加え、チャネルにおける周波数選択性フェージング等で生じるシンボル間干渉も除去してよい。

【0022】
本例の送信装置10は、変調部12、プレフィックス付加部14、送信フィルタ16および送信部18を備える。また、受信装置30は、受信部32、プレフィックス除去部34、干渉除去部36および復調部38を備える。各構成の機能は後述する。本実施形態では、送受信装置がそれぞれ1本のアンテナを持ち、シングルキャリア伝送する場合について述べるが、送受信装置は、それぞれ複数のアンテナを有してよい。また、通信システム100は、マルチキャリア伝送するシステムであってもよい。

【0023】
図2は、干渉除去部36の構成例を示す図である。干渉除去部36は、プレフィックスを除去した各受信ブロックを周波数領域の信号に変換し、周波数成分毎にウェイト係数を乗算した後に時間領域の信号に逆変換する。本例の干渉除去部36は、フーリエ変換部40、チャネルマトリクス算出部42、ウェイト係数乗算部44およびフーリエ逆変換部46を有する。各構成の機能は後述する。

【0024】
図3は、FTN送信の概念を説明する図である。なお、通信システム100の周波数帯域幅をWとする。当該周波数帯域幅Wは、例えば送信装置10における送信フィルタ16の周波数帯域幅で定まる。FTN送信ではなく、ナイキストレートで送信データを送信すると、各シンボルの時間間隔はT=1/(2W)となる。なお、シンボルの時間間隔とは、例えば隣接するシンボルの中央どうしの間隔である。図3においては、各シンボルを一つの山型の波形で示している。この場合、それぞれのシンボル間においては干渉が生じない。これに対し、FTN送信においては、各シンボルの時間間隔はT<Tとなる。このため、各シンボル間において干渉が生じてしまう。

【0025】
通信システム100は、上記のシンボル間干渉の影響を容易に除去する通信方式を提供する。具体的には、送信装置10が、送信データの各ブロックの先頭にサイクリックプレフィックス(本明細書では、単にプレフィックスと称する)を付加してからFTN送信を行う。

【0026】
受信装置30は、受信データの各ブロックにおいてシンボル間干渉が生じる区間を、プレフィックスの長さより短いと仮定して、シンボル間干渉の近似モデルを算出する。つまり、受信データの各ブロックにおいて、プレフィックスの長さより長い区間で生じるシンボル間干渉を無視して、プレフィックスの長さ以下の区間で生じるシンボル間干渉の近似モデルを算出する。例えば、プレフィックスがν個のシンボルを含む場合、ブロックに含まれる各シンボルは、最大でν-1個離れたシンボルに対して干渉を与えると仮定する。当該近似モデルは、少なくとも送信装置10が各シンボルを送信する時間間隔に基づいて生成する。上記の仮定により、近似モデルは巡回行列で表されるので、当該近似モデルを用いた簡単な演算により、シンボル間干渉の影響を容易に除去することができる。

【0027】
図4は、送信装置10の動作を説明する図である。変調部12は、ソースビット列を受け取り、予め定められる変調サイズMおよびブロックサイズNに基づいて、複数の送信ブロックを生成する。なお変調サイズとは、一つの複素シンボルが取り得る値の数を指す。また、ブロックサイズとは、一つの送信ブロックに含まれる複素シンボルの数を指す。図4では、変調サイズが4のQPSK方式を用い、ブロックサイズがNの場合を示している。本明細書においては、複素シンボルを単にシンボルと略称する。

【0028】
変調部12は、ソースビット列におけるlogMビット毎に一つのシンボルを生成する。そして、複素シンボル列におけるNシンボル毎に一つの送信ブロックを生成する。つまり、変調部12は、ソースビット列におけるNlogMビット毎に送信ブロックを生成する。

【0029】
プレフィックス付加部14は、変調部12が生成した各送信ブロックの先頭に、各ブロックの最後尾における予め定められた長さのデータをコピーしたプレフィックスを付加する。本例では、送信ブロックのシンボル列sをs・・・sN-1とし、プレフィックスの長さ(シンボル数)をνとする。プレフィックス付加部14は、プレフィックス(sN-ν~sN-1)を、送信ブロックの先頭に付加する。

【0030】
送信フィルタ16は、プレフィックス付加部14がプレフィックスを付加した後の送信ブロックの帯域を、予め定められた帯域幅Wに制限する。送信フィルタ16は、例えばレイズド・コサインフィルタである。一例として、送信フィルタ16のロールオフ係数をβ=0.22とする。

【0031】
送信部18は、送信フィルタ16が帯域制限した各送信ブロックをFTN送信する。送信部18が送信するシンボル間隔をT=α・Tとすると、送信レートRは下式で表される。但し、αは0から1の間の実数であり、αが小さいほどシンボル間隔が短い。本明細書においては、αをパック係数と称する。
【数1】
JP0006206885B2_000002t.gif

【0032】
図5は、受信装置30の動作を説明する図である。受信部32は、送信部18が送信した各送信ブロックを受信する。受信部32が受信する各受信ブロックには、プレフィックスが含まれている。

【0033】
プレフィックス除去部34は、各受信ブロックにおけるプレフィックスを除去する。本例では、送信装置10および受信装置30の間でタイミング同期がとれていると仮定して、各受信ブロックの先頭からνシンボル分除去している。

【0034】
なお、受信信号は下式で表すことができる。
【数2】
JP0006206885B2_000003t.gif
但し、nはシンボルの番号、Eは送信信号に含まれるシンボルの平均パワー、h(t)は送信フィルタ16のフィルタ特性、sは送信ブロックの各シンボル、n(t)はチャネル20におけるランダム雑音を指す。本例においてn(t)は、平均値0、分散(ノイズ電力)Nの複素数のガウス分布雑音である。通信システムにおける信号対雑音比(SNR)は、Es/Nで定義される。

【0035】
式(2)から、受信ブロックにおけるk番目のシンボルは、下式で表される。
【数3】
JP0006206885B2_000004t.gif
なお、シンボル間干渉が生じる範囲をνと仮定しているので、長さνのプレフィックスを隔てたブロック間におけるシンボル間干渉は無視する。また、シンボル間干渉の項は、α=1(T=T)のときに0となる。FTN送信においてはα<1なので、シンボル間干渉が生じる。干渉除去部36は、FTN送信により生じたシンボル間干渉の影響を除去する。復調部38は、シンボル間干渉の影響が除去された受信ブロックを復調する。

【0036】
なお、チャネルにおける周波数選択性フェージングおよびディレイスプレッドを考慮すると、受信ブロックにおけるk番目のシンボルは、下式で表される。
【数3B】
JP0006206885B2_000005t.gif
ここで、Lはチャネルにおけるディレイスプレッドを、シンボル間隔を単位として示している。また、qlは、k番目のシンボルに対するl個前のシンボルの干渉の大きさを示す。

【0037】
時間領域の受信ブロックは、下式で近似される。
【数4】
JP0006206885B2_000006t.gif
但し、Hは式(5)で定義されるN×Nの等価チャネルマトリクスであり、受信ブロックにおけるシンボル間干渉を示す。また、sはs=[s,・・・、sN-1]で定義されるベクトルであり、nはノイズ成分を示す。
【数5】
JP0006206885B2_000007t.gif
但し、hは、等価チャネルマトリクスHの第k番目の列成分を示す。
上述したように、シンボル間干渉が生じる範囲をνと仮定することで、等価チャネルマトリクスHは巡回行列となる。

【0038】
図6は、等価チャネルマトリクスHの概要を示す図である。図6の横方向が等価チャネルマトリクスHの行方向に対応し、縦方向が列方向に対応する。式(5)に示すように、等価チャネルマトリクスHは、h(x)(但し、x=0、1、・・・、νー1)で示される非ゼロのフィルタ係数が巡回して現れる巡回行列で近似される。シンボル間干渉が生じる範囲をνとしたので、各行に含まれるフィルタ係数h(x)の個数はνとなる。本例においてそれぞれのフィルタ係数h(x)は、送信フィルタ16におけるフィルタ係数で与えられる。

【0039】
なお、シンボル間干渉が生じる範囲として仮定する区間は、プレフィックスの長さνと同一でなくともよい。例えば、プレフィックスの長さνより短い区間を、シンボル干渉が生じる範囲として仮定してもよい。この場合、等価チャネルマトリクスHの各行に含まれるh(x)の個数は、νより少なくなる。

【0040】
図2に示したチャネルマトリクス算出部42は、送信部18におけるシンボル間隔および送信フィルタ16のフィルタ特性に基づいて、等価チャネルマトリクスHを算出する。本例のチャネルマトリクス算出部42は、送信部18が各シンボルを出力する時間間隔T、および、送信フィルタ16のフィルタ係数h(x)に基づいて、等価チャネルマトリクスHを算出する。これらの情報は、チャネルマトリクス算出部42に予め記憶されていてよく、また、送信装置10がチャネルマトリクス算出部42に送信してもよい。当該情報の送信は、送信データの送信に先立って行ってよく、送信データと同時に行ってもよい。

【0041】
干渉除去部36は、等価チャネルマトリクスHで特定されるシンボル間干渉の影響を、受信ブロックから除去する。本例の干渉除去部36は、受信ブロックを周波数領域の信号に変換して、周波数領域での演算によりシンボル間干渉の影響を除去する。フーリエ変換部40は、プレフィックスが除去された受信ブロックを高速フーリエ変換して、周波数領域の信号に変換する。なお、本例のフーリエ変換部40におけるFFTサイズは、ブロック長Nと同一とする。FFTサイズとは、スペクトルの周波数ビンの数を指す。周波数領域の信号に変換してシンボル間干渉の影響を除去することで、干渉除去部36における演算量を低減することができる。例えば、非特許文献3および4では、時間領域において等化演算を行っているが、シンボル間干渉(チャネルタップ長)の増加とともに演算量が等比級数的に増加してしまう。このため、FTNを用いた高速通信環境ではリアルタイムに復調することが困難になる。

【0042】
ウェイト係数乗算部44は、受信ブロックの各周波数成分に、等価チャネルマトリクスHに応じたウェイト係数を乗算してシンボル間干渉を除去する。ウェイト係数の算出方法を、以下の式(6)から式(11)を用いて説明する。

【0043】
等価チャネルマトリクスHは巡回行列なので、固有値分解により以下の式で表される。
【数6】
JP0006206885B2_000008t.gif
但し、Qは離散フーリエ変換行列、Λはi番目の要素が等価チャネルマトリクスHの固有値λ(i,i)で示される対角行列である。QはQの共役転置行列であり、離散フーリエ逆変換の演算に対応する。

【0044】
なお、行列Qの第l行、第k列の要素は、下式で示される。
【数7】
JP0006206885B2_000009t.gif
また、固有値λは、下式で示される。
【数8】
JP0006206885B2_000010t.gif

【0045】
周波数領域に変換した受信ブロックyは、式(6)に示したQ、Λを用いて下式で表される。
【数9】
JP0006206885B2_000011t.gif
但し、sは周波数領域に変換した送信ブロック、nは周波数領域に変換したノイズ成分を示す。

【0046】
ウェイト係数乗算部44は、上記の受信ブロックyから、時間領域の送信ブロックs^を復元する。時間領域の送信ブロックs^は、下式で表される。
【数10】
JP0006206885B2_000012t.gif
ウェイト係数乗算部44は、等価チャネルマトリクスHに基づいて、式(10)の関係を満たすような対角行列Wを算出して、受信ブロックyに乗算する。対角行列Wの各要素ω(i,i)は、受信ブロックyの各周波数成分に乗算されるウェイト係数の一例である。式(10)から明らかなように、ノイズ成分nが零であれば、対角行列Wは対角行列Λの逆行列となる。ノイズ成分sが零でない場合、対角行列Wの各要素は、下式のように最小二乗誤差法(MMSE法)により算出される。
【数11】
JP0006206885B2_000013t.gif
但し、λは、λの複素共役を示す。

【0047】
ウェイト係数乗算部44は、算出した対角行列Wを、受信ブロックyに乗算する。フーリエ逆変換部46は、ウェイト係数が乗算された周波数領域の受信ブロックWyを、時間領域の信号に逆変換する。フーリエ逆変換部46における処理は、式(10)におけるQを乗算する処理に対応する。

【0048】
以上の処理により、FTN送信により生じたシンボル間干渉の影響の低減を、受信側において少ない演算量で実現できる。つまり、高速FTN通信を、現実的な受信演算量で実現できる。これにより、帯域制限された通信システムにおいて、帯域、送信パワーを増加させることなく、送信レートを大幅に向上させることができる。なお、通信システム100における送信レートは、式(1)で与えられる。

【0049】
なお、式(1)におけるN/(N+ν)は、プレフィックスを付加したことによる送信レートのロスを示す。また、プレフィックスを付加したことにより、送信パワーの面でもロスが生じる。このため、変調部12は、プレフィックスの長さνに対して十分大きいブロックサイズNを選択することが好ましい。例えば、ブロックサイズNを、プレフィックスの長さνの数十から百倍以上にする。具体例として、ブロックサイズをN=4096、プレフィックスの長さをν=10程度にしてよい。このように、プレフィックス付加部14は、送信データの各ブロックの長さNに基づいてプレフィックスの長さνを定めてよい。

【0050】
図7は、送信装置10の動作例を示す図である。S202において、送信装置10は、Lビットのソースビット列Bを受け取る。S204において、変調部12は、ソースビット列Bを、N個のシンボルを含む送信ブロックに分割して変調する。

【0051】
S206において、プレフィックス付加部14は、各送信ブロックにプレフィックスを付加する。S208において、送信フィルタ16は、各送信ブロックを帯域制限する。S210において、送信部18は、各送信ブロックをFTN送信する。

【0052】
なお、S206において、プレフィックス付加部14は、FTN送信によって生じるシンボル間干渉の度合いに応じて、プレフィックスの長さνを調整してよい。シンボル間干渉の度合いとは、例えば無視できないシンボル間干渉が生じるシンボル間隔の最大値を指す。

【0053】
プレフィックス付加部14は、送信部18におけるシンボル間隔に基づいて、プレフィックスの長さνを定めてよい。シンボル間隔が短いほど、シンボル間干渉の度合いが大きくなるので、プレフィックス付加部14は、プレフィックスの長さνを大きくする。

【0054】
また、プレフィックス付加部14は、送信フィルタ16のフィルタ特性に基づいて、プレフィックスの長さνを定めてよい。例えば送信フィルタ16のロールオフ係数に基づいて、プレフィックスの長さνを定める。ロールオフ係数が小さいほど、シンボル間干渉の度合いが大きくなるので、プレフィックス付加部14は、プレフィックスの長さνを大きくする。

【0055】
図8は、受信装置30の動作例を示す図である。S212において、受信部32は、受信信号を周期Tでサンプリングして、受信ブロックを生成する。S214において、プレフィックス除去部34は、各受信ブロックからプレフィックスを除去する。

【0056】
S216において、チャネルマトリクス算出部42は、送信装置10におけるシンボル送信間隔Tおよびフィルタ係数hに基づいて、等価チャネルマトリクスHを算出する。チャネルマトリクス算出部42またはウェイト係数乗算部44は、等価チャネルマトリクスHを固有値分解して、行列QおよびΛを更に算出する。

【0057】
S218において、フーリエ変換部40は、受信ブロックを高速フーリエ変換する。S220において、ウェイト係数乗算部44は、式(11)を用いて、行列Λの各要素λ(i,i)に基づいてウェイト係数ω(i,i)を算出する。

【0058】
S222において、ウェイト係数乗算部44は、周波数領域の受信ブロックに、ウェイト係数を乗算する。これにより、受信ブロックからシンボル間干渉(Λ)が除去される。S224において、フーリエ逆変換部46は、シンボル間干渉が除去された受信ブロックを、時間領域の信号に逆変換する。これにより、FTN送信によるシンボル間干渉の影響を低減した送信ブロックを取得する。復調部38は、フーリエ逆変換部46が出力する時間領域の信号を復調する。これにより、FTN送信により生じたシンボル間干渉の影響の低減を、受信側において少ない演算量で実現できる。

【0059】
例えば、受信ブロックの高速フーリエ変換は、N回の複素乗算で実現できる。また、式(11)に示したウェイト係数は、4N回の実数乗算で算出できる。また、式(10)の乗算は、2N回の実数乗算で実現できる。そして、高速フーリエ逆変換は、N回の複素乗算で実現できる。1回の複素乗算は、4回の実数乗算に相当するから、干渉除去部36における1シンボル当たりの演算量は、(8N+6N)/N=(8N+6)回の実数乗算になる。つまり、干渉除去部36における演算量は、ブロックサイズNに比例しており、ブロックサイズNが増大しても、演算量は等比級数的には増大しない。このため、ブロックサイズNが増大しても、FTN通信を実現することができる。また、変調サイズMが増大しても、演算量は増大しない。

【0060】
なお、ウェイト係数乗算部44は、送信部18におけるシンボル間隔Tに基づいて、受信ブロックに重畳されたランダム雑音の大きさNを補正して、シンボル間干渉を除去してよい。この場合、ウェイト係数乗算部44は、式(11)におけるNを補正して、各ウェイト係数ωを算出する。ウェイト係数乗算部44は、シンボル間干渉の度合いが大きいほど、Nを大きくする。具体的には、ウェイト係数乗算部44は、シンボル間隔Tが小さいほど、Nを大きくしてよい。例えば、ウェイト係数乗算部44は、下式に基づいてNを補正する。
【数12】
JP0006206885B2_000014t.gif
但し、||ΔH||2は、図10の縦軸における等価チャネルマトリクスHの推定誤差を示す。

【0061】
図9から図12は、通信システム100の特性を評価したシミュレーション結果を示す。シミュレーションの条件は以下の通りである。
チャネル :AWGN(加法性ホワイトガウスノイズ)
変調方式 :PSKまたはQAM
フィルタ :レイズド・コサインフィルタ
ブロック長 :4096
パック係数α :0.1~1.0
ロールオフ率β :0.22
プレフィックス長ν:1~100
FTN復調方式 :FDE-MMSE(周波数領域等価-最小二乗誤差法、式10)
また、図9から図12においては、ナイキストレートで送信し(α=1.0)、最尤推定法(Maximum-Likelihood estimation)で復号した場合を、「No ISI、ML Limit」として示している。

【0062】
図9は、信号対雑音比(SNR)に対するビットエラーレート(BER)を示す図である。但し、変調方式は、PSK(BPSK)とした。また、α=0.7とし、プレフィックス長を1から20の間で変化させた。これらの条件においては、式(1)による送信レートRは、1.43となる。なお、上述したようにSNRは、E/Nで定義される。図9に示すように、ν=10までは、プレフィックス長νを大きくするとBERが改善することがわかる。

【0063】
図10は、パック係数αに対する等価チャネルマトリクスHの推定誤差の大きさを示す図である。上述したように、通信システム100では、シンボル間干渉がνの範囲内でのみ生じると仮定して等価チャネルマトリクスHを算出している。図10では、上記の仮定を置かないで算出したマトリクスに対する誤差を算出している。図10に示すように、パック係数αが小さくなるに従い、推定誤差は大きくなる。プレフィックス長νは、推定誤差が十分小さくなる程度の大きさを有することが好ましい。

【0064】
図11は、パック係数αに対するSNRを示す図である。但し、BER=10-5とした。図3から予測されるように、αが低い領域では、小さいνにおけるSNRは悪化する。但し、プレフィックス長νを長くしすぎると、伝送効率が悪化する。従って、プレフィックス長νは、パック係数α(シンボル間隔T)に応じて適切に選択することが好ましい。例えば、α=0.1程度の場合、プレフィックス長νは50程度にすることが好ましい。α=0.2の場合、プレフィックス長νは20程度にすることが好ましく、α=0.3以上の場合、プレフィックス長νは10以下にすることが好ましい。

【0065】
図12は、通信システム100における送受信方式(FDE-FTN)と、従来の送受信方式(No ISI、ML Limit)とを比較した結果を示す図である。但し、通信システム100における送受信方式では、α=0.5とした。つまり、通信システム100における送受信方式は、同一の変調方式による従来の送受信方式(α=1.0)に対して、2倍の送信レートRとなる。図12におけるRは式(1)の送信レートであり、相対値を示す。

【0066】
図12に示すように、いずれの送信レートRにおいても、通信システム100の送受信方式は、従来の送受信方式よりも低いBERを示している。特に、送信レートが大きくなるにつれて、その差は顕著になる。つまり、通信システム100によれば、高い送信レートでの通信を容易に実現することができる。

【0067】
以上説明したように、通信システム100によれば、高速FTN通信を、現実的な受信演算量で実現することができる。従来から、FTN通信の概念自体は知られていたが、受信側において煩雑な演算を要し、現実的な受信装置の規模でFTN通信を実現することはできていない。本例の通信システム100によって、初めて現実的な装置規模で高速FTN通信が可能となり、送信レートの飛躍的な増大が期待できる。なお通信システム100は、無線通信システムに限定されない。光ファイバーによる通信、衛星通信等のあらゆる帯域制限された通信システムに適用することができる。

【0068】
なお、非特許文献5には、サイクリックプレフィックスを用いた信号の等価が開示されている。しかし、非特許文献5は、チャネルでの周波数選択性フェージングによるシンボル間干渉を除去するものであり、FTN送信によるシンボル間干渉を除去することは何ら示唆しておらず、当該文献に記載された等価方法を、FTN送信に適用する場合に、どのようなパラメータを用いて受信側が等価処理を実行すべきか等、具体的な適用方法も示唆していない。このため、通信システム100のように、送信レートを向上させることはできない。

【0069】
図13は、変調部12およびプレフィックス付加部14の動作例を示す図である。本例の変調部12は、送信すべき情報を示すソースビット列を受け取る。変調部12は、ソースビット列を、予め定められた長さの複数のサブブロックに分割する。ここで長さとは、サブブロックに含まれるビットの数を指す。本例では、ソースビット列を、6ビットの長さのサブブロックに分割している。それぞれのサブブロックの長さは同一である。

【0070】
変調部12は、各サブブロックについて、ソースビット列の一部のビット値をシンボル位置データとして用い、残りのビット値を送信シンボルSに変換する。本例の変調部12は、各サブブロックの最初の4ビットを送信シンボルSに変換し、残りの2ビットをシンボル位置データとして用いる。

【0071】
変調部12は、各サブブロックの送信シンボルSおよびシンボル位置データに基づいて、ソースビット列をシンボル列に変換する。具体的には、各サブブロックの送信シンボルSを、各サブブロックのシンボル位置データに対応するシンボル位置に配置したシンボル列を生成する。シンボル列における各サブブロックは、シンボル位置データのビット数に応じたシンボル数を有する。すなわち、シンボル位置データのビット数をvとすると、各サブブロック長は2^vシンボル区間である。これにより、シンボル位置データの各ビットパターンに対して、それぞれ異なるシンボル位置が割り当てられる。

【0072】
本例では、シンボル位置データのビットパターン00、01、10、11に対して、1番目、2番目、3番目、4番目のシンボル位置が割り当てられる。例えば、本例のサブブロック0のシンボル位置データは01なので、送信シンボルSは、サブブロック0における2番目のシンボルとなる。

【0073】
なお、シンボル列における送信シンボルS以外のシンボルの値は、予め定められた一定値に設定される。シンボル間干渉を低減するべく、送信シンボルS以外のシンボルの値は零であることが好ましい。

【0074】
変調部12は、シンボル列を、N個のシンボル毎に分割して、図4に関連して説明した送信ブロックを生成する。本例の変調部12は、送信シンボルS以外のシンボル(本例では値が0のシンボル)も含めて、N個のシンボル毎に分割する。図13では、一例としてN=12の例を示している。この場合、変調部12はサブブロック0からサブブロック2までを一つの送信ブロックとする。ただし、送信ブロックの境界は、サブブロックの境界と一致してよく、一致しなくともよい。

【0075】
変調部12は、シンボル列を分割した送信ブロックをプレフィックス付加部14に入力する。プレフィックス付加部14は、各送信ブロックの先頭にプレフィックスを付加する。図13では、一例として、プレフィックスの長さを3シンボルとしている。

【0076】
このように、シンボル位置データに応じた位置に送信シンボルSを配置することで、送信シンボルSを連続して配置する場合に比べて、送信シンボルSの平均間隔を広くすることができる。このため、送信シンボル間の干渉を低減することができる。従って、FTN送信における送信レートを大きくしても、送信シンボル間の干渉を抑制することができる。なお、シンボル位置データの情報は、受信した送信シンボルSの位置から復号できる。

【0077】
受信装置30における受信部32、プレフィックス除去部34および干渉除去部36の動作は、図1から図12に関連して説明した例と同様である。なお、本例におけるシンボル間隔Tは、送信シンボルSの間隔ではなく、送信シンボルS以外のシンボルを含めた各シンボルの間隔である。例えばシンボル間隔Tは、送信シンボルSと、値が0のシンボルとの間隔を指す。

【0078】
受信装置30における復調部38は、受信データにおけるシンボル列を、複数のサブブロックに分割する。サブブロックの長さは、送信装置10から受信装置30に通知してよい。復調部38は、各サブブロックにおける送信シンボルSと、送信シンボルSの位置とに基づいて、元のソースビット列を復調する。送信シンボルSの位置と、元のシンボル位置データのビットパターンとの関係は、送信装置10から受信装置30に通知してよい。

【0079】
図14は、通信システム100の他の構成例を示す図である。図14では、送信部18、チャネル20および受信部32を省略して示している。本例において、送信装置10は、RSCエンコーダ50、第1インターリーバ52、割り当て部54、複数のURCエンコーダ56、複数の第2インターリーバ58、複数のFTNサブエンコーダ60および合成部62を有する。また、受信装置30は、割り当て部64、複数のFTNサブデコーダ66、複数の第3インターリーバ68、複数のURCデコーダ70、合成部72、第4インターリーバ74およびRSCデコーダ76を有する。

【0080】
RSCエンコーダ50は、送信すべき情報を示すソースビット列に誤り訂正符号であるRSC(Recursive Systematic Convolutional)符号を付加する。RSCエンコーダ50がRSC符号を付加する元の情報のビット数と、RSC符号を付加した後の全体のビット数との比を、RSCエンコーダ50における符号化率とする。ただし、ここでRSCエンコーダ50は任意の畳み込み符号エンコーダで代替可能である。

【0081】
第1インターリーバ52は、RSCエンコーダ50が出力するビット列をインターリーブする。ここで、インターリーブとは、ビットの順番を並べ替える処理を指す。割り当て部54は、第1インターリーバ52が出力するRSC符号が付加されたソースビット列の各ビットを、複数のURCエンコーダ56のいずれかに割り当てて入力する。割り当て部54は、それぞれのURCエンコーダ56に入力されるビットの個数の比が、所定の割合となるように、それぞれのビットをいずれかのURCエンコーダ56に入力する。

【0082】
複数のURCエンコーダ56は、入力されるビット列に対して、誤り訂正符号であるURC(Unity Rate Convolutional)符号を付加する。複数の第2インターリーバ58は、複数のURCエンコーダ56に対して一対一に設けられる。それぞれの第2インターリーバ58は、対応するURCエンコーダ56が出力するビット列をインターリーブする。

【0083】
複数のFTNサブエンコーダ60は、複数の第2インターリーバ58に対して一対一に設けられる。それぞれのFTNサブエンコーダ60は、対応する第2インターリーバ58から入力されるビット列に応じたシンボル列を生成する。それぞれのFTNサブエンコーダ60は、図1から図13に関連して説明した変調部12、プレフィックス付加部14および送信フィルタ16として機能する。ただし、それぞれのFTNサブエンコーダ60は、異なる特性を有する。

【0084】
本例では、複数のFTNサブエンコーダ60は、それぞれ異なる時間間隔Tでシンボルを送信するためのシンボル列を生成する2以上のFTNサブエンコーダ60を含む。この場合、それぞれのFTNサブエンコーダ60におけるプレフィックス長が異なる。それぞれのFTNサブエンコーダ60が生成したシンボル列は、送信部18により、対応する時間間隔Tで送信される。

【0085】
また、複数のFTNサブエンコーダ60は、図13に関連して説明したサブブロックの長さがそれぞれ異なる2以上のFTNサブエンコーダ60を含んでもよい。つまり、それぞれのFTNサブエンコーダ60において、送信シンボルSの平均間隔が異なる。

【0086】
また、複数のFTNサブエンコーダ60は、ロールオフ率βがそれぞれ異なる2以上のFTNサブエンコーダ60を含んでもよい。また、複数のFTNサブエンコーダ60は、図1から図12に関連して説明した変調部12、プレフィックス付加部14および送信フィルタ16におけるいずれかのパラメータが異なる2以上のFTNサブエンコーダ60を含んでよい。また、複数のFTNサブエンコーダ60は、変調部12、プレフィックス付加部14および送信フィルタ16におけるいずれかのパラメータが可変であってもよい。

【0087】
合成部62は、複数のFTNサブエンコーダ60が出力するシンボル列を合成して、送信部18に伝送する。合成部62は、複数のFTNサブエンコーダ60が出力するシンボル列を順番に結合してよい。

【0088】
受信装置30は、送信装置10が送信した送信データを復号する。本例の受信装置30は、送信装置10における各構成要素に対応する構成要素を有しており、送信装置10における各構成要素の処理の逆変換を行う。逆変換に必要なプレフィックス長等の情報は、送信装置10から受信装置30に通知される。また、受信装置30は、点線で示されるように、外側の構成および内側の構成の間で互いに処理結果を受け渡す。外側の構成および内側の構成は、相手方の処理結果に基づいて更に情報を処理して、処理結果を相手方に伝送する。このような処理の繰り返しにより、受信データの復号の精度が向上する。繰り返し処理は、例えば下記の文献に記載されている。
Nan Wu and Lajos Hanzo, "Near-Capacity Irregular-Convolutional-Coding-Aided Irregular Precoded Linear Dispersion Codes" IEEE TRANSACTIONS ON VEHICULAR TECHNOLOGY, VOL. 58, NO. 6, JULY 2009.

【0089】
割り当て部64は、受信部32から受け取った受信データのシンボル列を、割り当て部54におけるビット個数の比に応じた割合で、それぞれのFTNサブデコーダ66に入力する。複数のFTNサブデコーダ66は、複数のFTNサブエンコーダ60と一対一に対応する。それぞれのFTNサブデコーダ66は、対応するFTNサブエンコーダ60における処理の逆変換を行う。それぞれのFTNサブデコーダ66は、プレフィックス除去部34、干渉除去部36および復調部38の機能を有する。

【0090】
複数の第3インターリーバ68は、複数のFTNサブデコーダ66と一対一に対応する。それぞれの第3インターリーバ68は、対応するFTNサブデコーダ66およびURCデコーダ70との間で情報を伝送する。FTNサブデコーダ66からURCデコーダ70に情報を伝送する場合、第3インターリーバ68は、第2インターリーバ58と逆の変換を行うデインタリーバとして機能する。URCデコーダ70からFTNサブデコーダ66に情報を伝送する場合、第2インターリーバ58はインターリーバとして機能する。

【0091】
複数のURCデコーダ70は、複数の第3インターリーバ68と一対一に対応する。それぞれのURCデコーダ70は、URC符号に基づいて、ビット列の誤りを訂正する。合成部72は、複数のURCデコーダが出力するビット列を合成する。また、合成部72は、外側の第4インターリーバ74から情報を受け取った場合、それぞれの情報を、対応するURCデコーダ70に入力する。URCデコーダ70およびFTNサブデコーダ66は、外側からの情報に基づいて、受信データを再度処理する。また、URCデコーダ70とFTNサブデコーダ66間であらかじめ決められた回数だけ出力情報を交換し、復号を行うものとする。

【0092】
第4インターリーバ74は、合成部72およびRSCデコーダ76の間で情報を伝送する。第4インターリーバ74も、第3インターリーバ68と同様に、デインタリーバおよびインターリーバの両方として機能する。RSCデコーダ76は、入力されたビット列に含まれるRSC符号を用いて、当該ビット列の誤りを訂正する。

【0093】
割り当て部54は、受信装置30における受信データの復号が最適化されるように、それぞれのURCエンコーダ56に割り当てるビット数の比を制御する。最適なビット数の比は、EXIT(EXtrinsic Information Transfer)チャートを用いて解析することができる。

【0094】
図15は、図14に示した受信装置30におけるEXITチャートの一例を示す。図15における横軸は、受信装置30の内側の構成(FTNサブデコーダ66およびURCエンコーダ56)が、受信装置30の外側の構成から受け取る入力相互情報量IAを示し、縦軸は、受信装置30の内側の構成が、受信装置30の外側の構成に出力する出力相互情報量IEを示す。なお、横軸は、受信装置30の外側の構成(RSCデコーダ76)における出力相互情報量IEにも対応しており、縦軸は、外側の構成における入力相互情報量IAにも対応する。なお、相互情報量の値が1の場合、送信データの情報を完全に復号できたことを示し、0の場合、情報を全く復号できていないことを示す。

【0095】
図15において、実線は、受信装置30の内側の構成における入力相互情報量および出力相互情報量の関係を示す内側EXIT曲線である。また、破線は、受信装置30の外側の構成における入力相互情報量および出力相互情報量の関係を示す外側EXIT曲線である。また、丸印でプロットされた線は、FTNサブデコーダ66およびURCエンコーダ56の各組における入力相互情報量および出力相互情報量の関係を示す個別EXIT曲線である。なお、内側EXIT曲線は、それぞれの個別EXIT曲線を、それぞれのFTNサブデコーダ66に入力されるシンボルの割合(すなわち、割り当て部54が、URCエンコーダ56およびFTNサブエンコーダ60に入力するビットの割合)で重みづけ加算した曲線である。

【0096】
受信装置30の内側の構成には受信データが入力されるので、外側の構成からの入力相互情報量IAがゼロでも、出力相互情報量IEは非ゼロ(図15では0.2程度)となる。受信装置30の内側の出力相互情報量IEは、受信装置30の外側の構成の入力相互情報IAとなる。受信装置30の外側の構成は、当該入力相互情報IAに対応する出力相互情報IEを出力する(図15では0.1程度)。受信装置30の外側の構成の出力相互情報量IEは、受信装置30の内側の構成の入力相互情報IAとなる。受信装置30の内側の構成は、入力相互情報IAに応じた出力相互情報IE(図15では0.28程度)を出力する。このような処理を繰り返すことで、相互情報量が徐々に増大していく。

【0097】
なお、内側EXIT曲線および外側EXIT曲線は、できるだけ近接していることが好ましい。両曲線が乖離している状態は、送信データに対して必要以上の冗長性を与えていることを示す。このため、伝送効率にロスが生じてしまう。また、受信装置30の内側EXIT曲線の入力相互情報量IAの全範囲に渡って、内側EXIT曲線の出力相互情報量IEの値が、外側EXIT曲線の入力相互情報量IAの値より大きいことが好ましい。これにより、受信装置30の内側および外側の構成における相互処理を繰り返すことで相互情報量を1にすることができる。なお、外側EXIT曲線は、RSCエンコーダ50における符号化率により変化する。

【0098】
本例の割り当て部54は、RSCエンコーダ50における符号化率に基づいて、それぞれのURCエンコーダ56およびFTNサブエンコーダ60に入力するビットの個数の比を制御する。これにより、外側EXIT曲線の変化に応じて、個別EXIT曲線の重みを変更することができ、外側EXIT曲線に近似した内側EXIT曲線を生成することができる。割り当て部54には、符号化率毎の外側EXIT曲線が予め与えられる。また、割り当て部54には、それぞれの個別EXIT曲線が予め与えられる。

【0099】
また、割り当て部54は、外側EXIT曲線と内側EXIT曲線とが、所定の間隔以下となるように、それぞれのURCエンコーダ56に入力するビットの個数の比を制御する。ここで間隔とは、EXITチャートの横軸の所定の値における、縦軸方向の間隔であってよい。一例として、横軸が0.2のときの、縦軸方向における外側EXIT曲線と内側EXIT曲線の差が0.05以下となるように、それぞれのURCエンコーダ56に入力するビットの個数の比を制御してよい。また、間隔は、EXITチャートにおいて外側EXIT曲線と内側EXIT曲線で挟まれる領域の面積で与えられてもよい。

【0100】
また、割り当て部54は、内側EXIT曲線の入力相互情報量IAの全範囲に渡って、内側EXIT曲線の出力相互情報量IEの値が、外側EXIT曲線の入力相互情報量IAの値より大きくなるように、ビットの個数の比を制御することが好ましい。これにより、相互情報量の上限を1にすることができる。

【0101】
また、個別EXIT曲線は、チャネル20におけるS/N比によっても変化する。割り当て部54は、チャネル20におけるS/N比に更に基づいて、それぞれのURCエンコーダ56に入力するビットの個数の比を制御してよい。割り当て部54には、S/N比毎の個別EXIT曲線が予め与えられる。なお、送信装置10は、伝送すべき信号を送信する前に、S/N比を測定するためのパイロット信号を受信装置30に送信してよい。受信装置30は、受け取った既知のパイロット信号に基づいて、チャネル20におけるS/N比を測定する。受信装置30は、S/N比を送信装置10に通知する。このような構成により、FTN送信における各パラメータの組み合わせを最適化して、送信信号を最適化することができる。

【0102】
図16は、コンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。コンピュータ1900は、図1から図15に関連して説明した送信装置10の少なくとも一部、または、受信装置30の少なくとも一部として機能する。2台のコンピュータ1900が、通信システム100の少なくとも一部として機能してもよい。

【0103】
コンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD-ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有するレガシー入出力部とを備える。

【0104】
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。

【0105】
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD-ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、ネットワークを介して他の装置と通信する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD-ROMドライブ2060は、CD-ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。

【0106】
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラム、及び/又は、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続すると共に、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。

【0107】
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD-ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。

【0108】
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を送信装置10または受信装置30として機能させるプログラムは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、送信装置10または受信装置30としてそれぞれ機能させる。

【0109】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である変調部12、プレフィックス付加部14、送信フィルタ16、送信部18、受信部32、プレフィックス除去部34、干渉除去部36、および、復調部38の少なくとも一部として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の送信装置10または受信装置30が構築される。

【0110】
一例として、コンピュータ1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、又はCD-ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置又は通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。

【0111】
また、CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、CD-ROMドライブ2060(CD-ROM2095)、フレキシブルディスク・ドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイルまたはデータベース等の中から、全部または必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020および外部記憶装置等をメモリ、記憶部、または記憶装置等と総称する。本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。

【0112】
また、CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数または定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすかどうかを判断し、条件が成立した場合(又は不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、またはサブルーチンを呼び出す。

【0113】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。

【0114】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0115】
10・・・送信装置、12・・・変調部、14・・・プレフィックス付加部、16・・・送信フィルタ、18・・・送信部、20・・・チャネル、30・・・受信装置、32・・・受信部、34・・・プレフィックス除去部、36・・・干渉除去部、38・・・復調部、40・・・フーリエ変換部、42・・・チャネルマトリクス算出部、44・・・ウェイト係数乗算部、46・・・フーリエ逆変換部、50・・・RSCエンコーダ、52・・・第1インターリーバ、54・・・割り当て部、56・・・URCエンコーダ、58・・・第2インターリーバ、60・・・FTNサブエンコーダ、62・・・合成部、64・・・割り当て部、66・・・FTNサブデコーダ、68・・・第3インターリーバ、70・・・URCデコーダ、72・・・合成部、74・・・第4インターリーバ、76・・・RSCデコーダ、100・・・通信システム、1900・・・コンピュータ、2000・・・CPU、2010・・・ROM、2020・・・RAM、2030・・・通信インターフェイス、2040・・・ハードディスクドライブ、2050・・・フレキシブルディスク・ドライブ、2060・・・CD-ROMドライブ、2070・・・入出力チップ、2075・・・グラフィック・コントローラ、2080・・・表示装置、2082・・・ホスト・コントローラ、2084・・・入出力コントローラ、2090・・・フレキシブルディスク、2095・・・CD-ROM
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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