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明細書 :遺伝子発現の制御方法、目的物質の製造方法、および、それらに用いるDNA配列、発現ベクター、並びに、シアノバクテリア

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月23日(2017.2.23)
発明の名称または考案の名称 遺伝子発現の制御方法、目的物質の製造方法、および、それらに用いるDNA配列、発現ベクター、並びに、シアノバクテリア
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/13        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/13
C12P 21/02 C
C12N 1/21
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 26
出願番号 特願2015-519881 (P2015-519881)
国際出願番号 PCT/JP2014/064017
国際公開番号 WO2014/192765
国際出願日 平成26年5月27日(2014.5.27)
国際公開日 平成26年12月4日(2014.12.4)
優先権出願番号 2013115822
優先日 平成25年5月31日(2013.5.31)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】阿部 公一
【氏名】早出 広司
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090398、【弁理士】、【氏名又は名称】大渕 美千栄
【識別番号】100090387、【弁理士】、【氏名又は名称】布施 行夫
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B064
4B065
Fターム 4B024AA03
4B024BA80
4B024CA04
4B024CA20
4B024DA05
4B024EA04
4B024FA02
4B024FA10
4B024FA17
4B024GA14
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC03
4B064CC30
4B064CD02
4B064CD07
4B065AA01X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA03
4B065BB02
4B065BB08
4B065BB20
4B065BC48
4B065CA24
要約 シアノバクテリア中の目的遺伝子の発現を強化および/または抑制することのできる制御方法を提供すること。
本発明に係る目的遺伝子の発現の制御方法の一態様は、シアノバクテリアを宿主として目的遺伝子を発現する方法であって、プロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、前記目的遺伝子の開始コドンの上流側に、12塩基以上50塩基以下の発現調節配列を挿入することを含む。
特許請求の範囲 【請求項1】
シアノバクテリアを宿主として目的遺伝子を発現する方法であって、プロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、前記目的遺伝子の開始コドンの上流側に、12塩基以上50塩基以下の発現調節配列を挿入することを含む、前記目的遺伝子の発現の制御方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記プロモーターは、光応答性プロモーターである、制御方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記光応答性プロモーターが、配列番号1の1番目~237番目で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する配列を有する、制御方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項において、
前記発現調節配列は、フィコシアニンβサブユニット(cpcB)の開始コドンから上流の5'非翻訳領域の塩基配列と、90%以上の相同性を有する、制御方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記発現調節配列は、配列番号2で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列である、制御方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記シアノバクテリアが、さらに、外因性遺伝子を含むDNA配列を保持し、
前記外因性遺伝子、および、前記目的遺伝子を共発現させる、制御方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記外因性遺伝子は、ccaRである、制御方法。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項において、
前記シアノバクテリアは、Synechocystis sp. PCC6803、Nostoc punctiforme PCC 73102、Synechococcus sp. NKBG15041c、Synechococcus sp. PCC7002、Synechococcus elongatus PCC7942、Thermosynechococcus elongatus BP-1、およびSynechococcus sp. JA-3-3Abからなる群より選択される少なくとも1種である、制御方法。
【請求項9】
配列番号1で表される、DNA配列。
【請求項10】
プロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、目的遺伝子の開始コドンの上流側に、12塩基以上50塩基以下の発現調節配列が挿入された配列を含み、シアノバクテリアに用いられる、発現ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載の発現ベクターで形質転換されたシアノバクテリア。
【請求項12】
目的物質を産生する能力を有するシアノバクテリアを培地中に、緑色光および赤色光の照射により培養し、当該目的物質を生成させ、当該目的物質を採取することを含む、当該目的物質の製造方法であって、
前記シアノバクテリアが、請求項10に記載のDNA配列を保持し、
前記目的遺伝子の発現が調節される、製造方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記シアノバクテリアが、さらに、外因性遺伝子を含むDNA配列を保持し、
前記外因性遺伝子、および、前記目的遺伝子を共発現させる、製造方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記外因性遺伝子は、ccaRである、製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子発現の制御方法、目的物質の製造方法、および、それらに用いるDNA配列、発現ベクター、並びに、シアノバクテリアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物により、持続的なエネルギー供給を目指したバイオ燃料関連化合物等の有用な物質生産を行うシステムが注目されている。シアノバクテリア等の光合成を行う原核生物は、このようなシステムにおける宿主生物として有用と目され、研究が盛んである。特に、シアノバクテリアのうち、Synechocystis sp. PCC6803なる株は、早期(5番目)にゲノムが解析された生物であり、その生化学的解析が進んでいるため、多くの研究者がバイオ燃料生産用の宿主として注目している。
【0003】
宿主として大腸菌を利用する場合には、プロモーターとして、ラクトースで誘導可能なlacプロモーター(Plac)、アラビノース誘導型のaraBADプロモーター等が用いられる。一方、Synechocystis sp. PCC6803等のシアノバクテリアを宿主として利用する場合には、プロモーターの選択の幅は制限される。例えば、Huangらによって、通常大腸菌で使われるプロモーターである、Placプロモーター、Ptetプロモーター、PRプロモーターは、シアノバクテリアであるSynechocystis sp. PCC6803中では機能しないことが示されている(非特許文献1)。
【0004】
また同文献においてHuangらは、誘導プロモーターPtrcプロモーターがシアノバクテリア中で機能することを見出しているが、誘導剤非存在下での発現レベルが高いことを問題として挙げている。さらにシアノバクテリアは、ラクトース、IPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド)、アラビノース等の糖または糖の誘導体をほとんど取り込まないため、非誘導時と比べた際の誘導時の発現レベルも低いことが示唆されている。
【0005】
Synechosystis sp. PCC6803中で機能するプロモーターとしては、Ni2+によって誘導可能なプロモーターが報告されている(非特許文献2)。しかし、Ni2+は重金属であるため、バイオ燃料生産を指向した大規模な培養を目標とする場合には、必ずしも適切な誘導剤とは言えない。
【0006】
シアノバクテリアは光合成を効率的に行うために、様々な光を受容し、遺伝子発現制御を行うシステムを有している。KehoeらはFremyella diplosiphonが有する赤色と緑色の光で遺伝子発現を受容するRcaE(センサーヒスチジンキナーゼ)を利用した発現制御システムを開示している(特許文献1)。また、Synechocystis sp. PCC6803中でも、多くの光センサータンパク質が報告されており、Hiroseらによって2008年に緑色光を受容するセンサータンパク質CcaS(センサーヒスチジンキナーゼ)が報告されている(非特許文献3)。同文献では、CcaSは、緑色光を受容することで自己リン酸化し、CcaR(レスポンスレギュレーター)にリン酸基を転移させる。そして、係るリン酸化されたCcaRがDNA結合能を獲得し、cpcG2のプロモーターの下流の遺伝子の発現を促すことができる旨示唆されている。
【0007】
この出願は、平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願である。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0093051明細書
【0009】

【非特許文献1】Huang et al. Nucleic Acids Res. 2010, 38(8) 2577-2593
【非特許文献2】Lopez-Maury et al. Mol. Microbiol. 2002, 43(1) 247-256
【非特許文献3】Hirose et al. PNAS 2008, 105(28) 9528-9533
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明者らは、合成生物学的アプローチを用い、光制御可能な合成藍藻(シアノバクテリア)を用いたバイオプロセスの構築を目指している。効率的なバイオ燃料生産を実現するためには、遺伝子の発現制御系が重要である。シアノバクテリアを利用して物質生産を行う上では、遺伝子発現制御を行うことは重要である。そして、光センサータンパク質を利用することで、任意の時間に遺伝子の発現のON/OFFをコントロールすることが出来ると考えられる。
【0011】
天然で機能している光センサーは、バクテリアの生存に必要なレベルで遺伝子発現をコントロールしているため、バイオ燃料を大量生産するには不向きな場合が多い。また、研究対象として、その代謝等の生化学的解析が進んでいるSynechocystis sp. PCC6803においてでさえ、遺伝子発現を制御する誘導型のプロモーターとして優れているものはほとんど見出されていない。
【0012】
一方、シアノバクテリアの遺伝子発現を行うためには、効率的な光合成に必要な赤色光以外の光を利用することが望ましいと考えられる。上記特許文献1のKehoeらによって開示されているRcaEは、赤色光を受容することで下流の遺伝子の発現を活性下する。またKehoeらが用いているF. diplosiphonでは、他の緑色光センシング系が知られているものの、詳細はわかっておらず、異種株では使用することが難しいと考えられる。
【0013】
発明者らは、上記非特許文献3に関し、cpcG2のプロモーターの下流にGFPuvをレポーター遺伝子として連結し評価したところ、その蛍光強度は、必ずしも高くないとの知見を得た。さらに、cpcG2のプロモーターの下流の遺伝子発現量は、Ptrcのプロモーターと比較して極端に低く、その上、CcaSは緑色光で活性化されるものの、効率的な増殖に必要な赤色光では不活化されることが報告されている。
【0014】
本発明の幾つかの態様に係る目的の1つは、シアノバクテリア中の目的遺伝子の発現を強化および/または抑制することのできる制御方法を提供することにある。また、本発明の幾つかの態様に係る目的の1つは、シアノバクテリア中の目的遺伝子の発現を強化または抑制することのできる発現ベクターを提供することにある。さらに、本発明の幾つかの態様に係る目的の1つは、そのようなDNA配列を保持するシアノバクテリア、および該シアノバクテリアによる目的物質の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するために為されたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0016】
[適用例1]本発明に係る目的遺伝子の発現の制御方法の一態様は、シアノバクテリアを宿主として目的遺伝子を発現する方法であって、プロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、前記目的遺伝子の開始コドンの上流側に、12塩基以上50塩基以下の発現調節配列を挿入することを含む。
【0017】
本適用例の制御方法によれば、シアノバクテリア中の目的遺伝子の発現を強化および/または抑制することができ、目的遺伝子の発現量を広いレンジで調節・制御することができる。また、これにより、シアノバクテリアによる有用物質(目的物質)の生産を制御することができる。
【0018】
[適用例2]適用例1において、前記プロモーターは、光応答性プロモーターであってもよい。
【0019】
[適用例3]適用例2において、前記光応答性プロモーターが、配列番号1の1番目~237番目で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する配列を有してもよい。
【0020】
[適用例4]適用例1~適用例3のいずれか1例において、前記発現調節配列は、フィコシアニンβサブユニット(cpcB)の開始コドンから上流の5'非翻訳領域の塩基配列と、90%以上の相同性を有してもよい。
【0021】
[適用例5]適用例4において、前記発現調節配列は、配列番号2で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列であってもよい。
【0022】
[適用例6]適用例4または適用例5において、前記シアノバクテリアが、さらに、外因性遺伝子を含むDNA配列を保持し、前記外因性遺伝子、および、前記目的遺伝子を共発現させてもよい。
【0023】
[適用例7]適用例6において、前記外因性遺伝子は、ccaRであってもよい。
【0024】
[適用例8]適用例1~適用例7のいずれか1例において、前記シアノバクテリアは、Synechocystis sp. PCC6803、Nostoc punctiforme PCC 73102、Synechococcus sp. NKBG15041c、Synechococcus sp. PCC7002、Synechococcus elongatus PCC7942、Thermosynechococcus elongatus BP-1、およびSynechococcus sp. JA-3-3Abからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0025】
[適用例9]本発明に係るDNA配列の一態様は、配列番号1で表される。
【0026】
本適用例のDNA配列によれば、下流側に配置された目的遺伝子の発現量を大幅に制御することができる。
【0027】
[適用例10]本発明に係る発現ベクターの一態様は、プロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、目的遺伝子の開始コドンの上流側に、12塩基以上50塩基以下の発現調節配列が挿入された配列を含み、シアノバクテリアに用いられる。
【0028】
本適用例の発現ベクターによれば、シアノバクテリア中の目的遺伝子の発現を強化および/または抑制することができ、目的遺伝子の発現量を広いレンジで調節・制御することができる。また、これにより、シアノバクテリアによる有用物質(目的物質)の生産を制御することができる。
【0029】
[適用例11]本発明に係るシアノバクテリアの一態様は、適用例10に記載の発現ベクターで形質転換されたものである。
【0030】
本適用例のシアノバクテリアによれば、シアノバクテリア中の目的遺伝子の発現を強化および/または抑制することができ、目的遺伝子の発現量を広いレンジで調節・制御することができる。また、これにより、当該シアノバクテリアによる有用物質(目的物質)の生産を制御することができる。
【0031】
[適用例12]本発明に係る目的物質の製造方法の一態様は、目的物質を産生する能力を有するシアノバクテリアを培地中に、緑色光および赤色光の照射により培養し、当該目的物質を生成させ、当該目的物質を採取することを含む、当該目的物質の製造方法であって、前記シアノバクテリアが、適用例10に記載のDNA配列を保持し、前記目的遺伝子の発現が調節される。
【0032】
本適用例の製造方法によれば、シアノバクテリアの目的遺伝子の発現が調節されることにより、シアノバクテリアによる目的物質の生産量を制御することができる。
【0033】
[適用例13]適用例12において、前記シアノバクテリアが、さらに、外因性遺伝子を含むDNA配列を保持し、前記外因性遺伝子、および、前記目的遺伝子を共発現させてもよい。
【0034】
[適用例14]適用例13において、前記外因性遺伝子は、ccaRであってもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、シアノバクテリア中の目的遺伝子の発現を強化および/または抑制することができ、シアノバクテリア中の遺伝子の発現を容易に制御することができる。また、本発明によれば、シアノバクテリア中の遺伝子を非常に高い発現量で発現させることができる。さらに、本発明によれば、光合成に重要でない光を用いて、シアノバクテリア中の遺伝子発現を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、実験例に係る発現ベクターを説明する模式図である。
【図2】図2は、cpcBの5'非翻訳領域を連結したことによる発現量向上を説明する図である。白は赤色光下で培養した際の蛍光強度、グレーは赤色光+緑色光下で培養した際の蛍光強度を示す。それぞれの値は、PcpcG2を赤色光+緑色光下で培養した際の蛍光強度を1として標準化した。
【図3】図3は、CcaR追加発現による発現量向上を説明する図である。白は赤色光下で培養した際の蛍光強度、グレーは赤色光+緑色光下で培養した際の蛍光強度を示す。それぞれの値は、PcpcG2を赤色光+緑色光下で培養した際の蛍光強度を1とし標準化した。
【図4】図4は、cpcBの5'非翻訳領域とCcaR追加発現の組み合わせによる発現量向上を説明する図である。白は赤色光下で培養した際の蛍光強度、グレーは赤色光+緑色光下で培養した際の蛍光強度を示す。それぞれの値は、PcpcG2を赤色光+緑色光下で培養した際の蛍光強度を1とし標準化した。
【図5】図5は、cpcBの5'非翻訳領域と開始コドンの間の距離と発現量の影響を説明する図である。白は赤色光下で培養した際の蛍光強度、グレーは赤色光+緑色光下で培養した際の蛍光強度を示す。それぞれの値は、PcpcG2を赤色光+緑色光下で培養した際の蛍光強度を1とし標準化した。
【図6】図6は、実験例に係る発現ベクターを説明する模式図である。
【図7】図7は、実験例に係る培養の際の光の照射を説明する概略図である。
【図8】図8は、cpcBの5'非翻訳領域とCcaR追加発現の組み合わせによる発現量向上を説明する図である。白は赤色光下で培養した際の蛍光強度、グレーは赤色光+緑色光下で培養した際の蛍光強度を示す。グラフ中の左側は、図6の(d)に示すベクターによる形質転換体、右側は、図6の(e)に示すベクターによる形質転換体の結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を例示的に説明するものであって、本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要素であるとは限らない。

【0038】
1.目的遺伝子の発現の制御方法
本実施形態の目的遺伝子の発現の制御方法は、シアノバクテリアを宿主として目的遺伝子を発現する方法であって、プロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、前記目的遺伝子の開始コドンの上流側に、発現調節配列を挿入することを含む。

【0039】
1.1.シアノバクテリア
シアノバクテリアは、光合成を行うことができる原核生物であり、真正細菌ドメインの一門を構成する。本実施形態の目的遺伝子の発現の制御方法は、シアノバクテリアを宿主として該目的遺伝子の発現を制御する。

【0040】
本実施形態において宿主として使用するシアノバクテリアとしては、Synechocystis sp. PCC6803、Nostoc punctiforme PCC 73102、Synechococcus sp. NKBG15041c、Synechococcus sp. PCC7002、Synechococcus elongatus PCC7942、Thermosynechococcus elongatusBP-1、Synechococcus sp. JA-3-3Ab、Chroococcacae、Stigonematacae、Mastigocladacae、Oscillatroriacae、Mastigocladus、Phormidium、Symploca、Aphanocapsa、Fisherella、等を例示することができる。

【0041】
これらのシアノバクテリアのうち、Synechocystis sp. PCC6803、Nostoc punctiforme PCC 73102、Synechococcus sp. NKBG15041c、Synechococcus sp. PCC7002、Synechococcus elongatus PCC7942、Thermosynechococcus elongatus BP-1、およびSynechococcus sp.JA-3-3Abからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、本実施形態で宿主として使用するシアノバクテリアは、Synechocystis sp. PCC6803、および/またはNostoc punctiforme PCC 73102であることがより好ましい。

【0042】
シアノバクテリアは、各種の遺伝子と、その発現を調節する各種のプロモーターを有している。シアノバクテリアにおいては、そのようなプロモーターには、光応答性プロモーターが含まれる。シアノバクテリアが有する光応答性プロモーターとしては、例えば、PcpcG2、PlsiR、等がある。なお、本明細書では、プロモーターを、「P」に遺伝子を表す記号の添字を付して表記することがある。

【0043】
本実施形態の制御方法では、宿主のシアノバクテリアは、後述する発現ベクターによって形質転換されたものである。

【0044】
1.2.目的遺伝子
本実施形態における目的遺伝子とは、本実施形態のシアノバクテリアによって目的物質を効率的に生産するために有用なタンパク質をコードする遺伝子のことをいう。目的遺伝子は、特に限定されず、宿主となるシアノバクテリアの内在性遺伝子であってもよいし、プラスミド等による形質転換で外部から導入された(外因性)遺伝子であってもよい。なお目的遺伝子には、開始コドンが存在する。

【0045】
また、目的遺伝子がコードするタンパク質についても、特に限定されず、例えば、酵素、抗体、溶菌タンパク質、細胞凝集関連タンパク質等とすることができる。

【0046】
本実施形態の制御方法では、目的遺伝子は、宿主となるシアノバクテリアの遺伝子の1種であってもよいし、複数種であってもよい。また、目的遺伝子は、外因性の遺伝子であってもよいし、内在性および外因性の遺伝子の両者を目的遺伝子としてもよい。

【0047】
目的遺伝子の具体的な例としては、エタノールの生産に必要な酵素をコードするadhE、炭化水素合成関連酵素をコードするAcyl-ACP Reductase、およびAldehyde Decarbonylase、溶菌タンパク質をコードするホーリン、エンドライシン、細胞凝集関連タンパク質をコードするAntigen43、AIDA-I、tibA等を挙げることができる。

【0048】
本明細書において、用語「外因性」とは、分子生物学的技法によって生物に導入した特定の遺伝子配列であり、野生型の細胞または生物のゲノムDNA中に存在するものと区別するために用いる。野生型の細胞または生物において、ゲノム中に存在するか否かを問わず、ゲノム中に存在する配列を、分子生物学的技法により導入した場合においても、外因性遺伝子とする。また遺伝子に関して、用語「内在性」は、所定の野生型の細胞または生物中に見つかり得る、ゲノムDNA中に存在する遺伝子配列をいう。

【0049】
1.3.プロモーター
プロモーターとは、転写開始反応に関与するDNAの領域であって、RNAポリメラーゼや転写因子が結合する領域のことをいう。本実施形態の制御方法におけるプロモーターとしては、所定の目的遺伝子に応じて適宜選択することができる。また、本明細書では、所定の目的遺伝子に対して、プロモーターとして機能する塩基配列であれば、特定の名称が与えられていなくてもプロモーターと称することがある。

【0050】
プロモーターは、宿主となるシアノバクテリアに内在する、内在性プロモーターであってもよいし、外部から導入される(外因性)プロモーターであってもよい。また、形質転換されたシアノバクテリアにおいて、プロモーターの数は特に制限されず、目的遺伝子の数と同じであっても異なっていてもよい。

【0051】
プロモーターとしては、例えば、光応答性プロモーターや、高温、低温、塩等のストレスによって、その下流側に配置された目的遺伝子の発現を誘導し得るプロモーターが挙げられる。これらのうち、本実施形態の制御方法では、シアノバクテリアの内在性のプロモーターを利用できる観点から、光応答性プロモーターがより好ましい。なお、光応答性プロモーターを用いる場合には、外因性の光応答性プロモーターを宿主に導入してもよい。

【0052】
本実施形態の制御方法に使用しうるプロモーターの具体例としては、PcpcG2等が挙げられる。

【0053】
本実施形態の制御方法においては、プロモーターとしては、PcpcG2(配列番号1の1番目から237番目の塩基配列)と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列を使用することが、緑色誘導の観点から、より好ましい。このようなプロモーターを選択すれば、光合成に重要でない光を用いて、シアノバクテリア中の目的遺伝子発現を制御することができる。

【0054】
ここで「相同性」とは、2つのDNA間の配列の同一性または類似性をいう。「相同性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNAは、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加または欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような相同性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673-4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。なお、相同性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYXや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベース等についても当業者には一般的に利用可能である。

【0055】
1.4.発現調節配列
発現調節配列は、上述のプロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、上述の目的遺伝子の開始コドンの上流側に、挿入される。

【0056】
発現調節配列は、12塩基以上50塩基以下の長さの塩基配列を有する。発現調節配列の長さは、13塩基以上40塩基以下がより好ましく、14塩基以上35塩基以下がさらに好ましく、15塩基以上30塩基以下がさらに好ましく、18塩基以上25塩基以下が特に好ましい。

【0057】
発現調節配列が、12塩基以上50塩基以下の長さの塩基配列を有することにより、本実施形態の制御方法において、目的遺伝子の発現量を広いレンジで調節・制御することができる。すなわち、例えば、発現調節配列が、12塩基以上50塩基以下の長さの塩基配列を有することにより目的遺伝子の発現量が増大する場合には、プロモーターの作動量に対する目的遺伝子の発現量の幅を大きくすることができる。また、例えば、発現調節配列が、12塩基以上50塩基以下の長さの塩基配列を有することにより目的遺伝子の発現量が減少する場合には、プロモーターの作動量に対する目的遺伝子の発現量の幅を小さくすることができる。これにより、例えば、宿主のシアノバクテリアによる有用物質(目的物質)の生産量を制御することができる。

【0058】
発現調節配列は、上述のプロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、上述の目的遺伝子の開始コドンの上流側に、当分野の定法により、挿入されることができる。

【0059】
発現調節配列は、特定のDNA配列としてもよい。例えば、発現調節配列は、特定の遺伝子の開始コドンの上流の5’非翻訳領域の塩基配列とすることができる。発現調節配列を特定の遺伝子の5’非翻訳領域の塩基配列とすることにより、目的遺伝子の発現量を増大させることができる場合がある。このような遺伝子としては、導入することによって宿主のシアノバクテリアが生存できる限り任意であるが、例えば、cpcB、psbAI等が挙げられる。

【0060】
また、この場合、前記特定の遺伝子として、シアノバクテリアにおける発現量の大きい遺伝子を選ぶと、目的遺伝子の発現量を増大させることができる場合がある。そのような遺伝子としては、cpcB、psbAI等が挙げられ、その開始コドンから上流の5’非翻訳領域の塩基配列、または、当該塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列を発現調節配列とすることができる。さらに、発現調節配列として、フィコシアニンβサブユニットをコードするcpcBの開始コドンから上流の5’非翻訳領域を選択すると目的遺伝子の発現量を増大させることができる。さらにこの場合、当該発現調節配列が由来するシアノバクテリアの株としては、Synechocystis sp. PCC6803、Synechococcus sp. NKBG15041c、Synechococcus sp. PCC7002、Synechococcus elongatus PCC7942、Thermosynechococcus elongatus BP-1、Synechococcus sp. JA-3-3Ab、Nostoc sp. PCC 7120、およびSynechococcus sp. CC9311からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは、Synechococcus sp. NKBG15041c、Synechococcus sp. PCC7002、Synechococcus sp. JA-3-3Ab、Synechococcus sp. CC9311、特に好ましくは、Synechococcus sp. NKBG15041c、である。

【0061】
表1に、上記例示した株の主なもののcpcBの開始コドンから上流の5’非翻訳領域の20塩基程度の塩基配列を示す。なお、Synechococcus sp. NKBG15041cの開始コドンから上流の5’非翻訳領域の20塩基は、表1中、配列番号2である。また、Synechococcus sp. PCC7002の開始コドンから上流の5’非翻訳領域の20塩基は、配列番号32(TATAAGTAGGAGATAAAAAC)で表される。

【0062】
【表1】
JP2014192765A1_000003t.gif

【0063】
表1をみると、8種の株において、cpcBの開始コドンから上流の5’非翻訳領域の20塩基程度の塩基配列の中央付近に共通する配列(以下これをコンセンサスという場合がある。)が存在している。上記8種の株に限らず、このようなコンセンサスが存在する株の群がある場合で、特定の株に由来する発現調節配列をその中から選択する場合には、目的遺伝子の開始コドンからコンセンサスまでの距離(塩基数)を指標としてもよい。また、本明細書では、目的遺伝子の開始コドンからコンセンサスまでの配列を「スペーサー」と称する場合がある。

【0064】
この場合には、目的遺伝子の開始コドンからコンセンサスまでの距離(スペーサー)は、当該群においてより短いことが好ましい場合がある。例えば、表1の上段より7種の株を1群とした場合にはそのコンセンサスはAGGAGAであり、当該7種の株からこのような指標によって特定の株を選択する場合には、Synechococcus sp. NKBG15041cが選択される。

【0065】
1.5.外因性遺伝子の共発現
本実施形態の目的遺伝子の発現制御方法において、上述の発現調節配列を挿入することに加えて、外因性遺伝子を共発現させてもよい。外因性遺伝子を共発現させると、目的遺伝子の発現量を増大させることができる場合がある。

【0066】
共発現させる外因性遺伝子としては、導入することによって宿主のシアノバクテリアが生存できる限り任意であるが、例えば、ccaR、ccaS等が挙げられる。また、共発現させる外因性遺伝子の選択にあたっては、例えば、プロモーターからの転写に必要な因子、転写量を増強するという技術思想に基づくことができる。

【0067】
共発現させる外因性遺伝子は、同一の発現ベクターによって宿主に導入されてもよいし、それぞれ別個の発現ベクターによって宿主に導入されてもよい。いずれの方法であっても目的遺伝子の発現量を制御することができるが、同一の発現ベクターによって宿主に導入する場合は、プラスミドを安定的に導入しやすいため、好ましい。

【0068】
また、例えば、Synechocystis sp. PCC6803とNostoc punctiforme PCC 73102は、CcaSおよびCcaR(PcpcG2の制御を行う遺伝子)を有しているが、そのような遺伝子を有さない他のシアノバクテリアに対してCcaSおよびCcaRを導入するようにしてもよい。

【0069】
1.6.その他の構成
本実施形態の目的遺伝子の発現の制御方法は、上述の発現調節配列を挿入すること以外に、以下の構成を有してもよい。

【0070】
本実施形態の制御方法等で用いられる遺伝子工学的技術は、例えば、J.,Sambrook, E.,F.,Frisch, T.,Maniatis著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2n d edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年、及びD.,M.,Glover著、DNAクローニング(DNA Cloning)、IRL発行、1985年等に記載されている通常の方法に準じて行うことができる。

【0071】
1.6.1.発現ベクター
本実施形態の目的遺伝子の発現の制御方法は、シアノバクテリアを宿主として用いられる発現ベクターを構築することを含んでもよい。発現ベクターは、宿主シアノバクテリアに遺伝子を運搬するDNA、言い換えればベクターDNAであって、宿主細胞中で当該遺伝子を発現させ得るDNAをいう。ベクターDNAは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、宿主の種類および使用目的により適宜選択される。ベクターDNAは、天然に存在するDNAを抽出して得られたベクターDNAの他、複製に必要な部分以外のDNAの部分が一部欠落しているベクターDNAでもよい。代表的なベクターDNAとしては例えば、プラスミド、バクテリオファージおよびウイルス由来のベクターDNAを挙げることができる。本実施形態で使用するベクターの具体例としては、例えば、pKT230、pBBR122等が挙げられる。また、プラスミドベクターの構築にあたっては、適宜の制限酵素を用いることができ、PCR、インバースPCR、クローニング、リン酸化、脱リン酸化、二本鎖処理、ライゲーション、大腸菌等の形質転換等の工程を適宜含むことができる。

【0072】
1.6.2.形質転換体
本実施形態の目的遺伝子の発現の制御方法は、上述の発現ベクターを用いて宿主となるシアノバクテリアを形質転換することを含んでもよい。形質転換は、エレクトロポレーション等の定法にしたがって行うことができる。

【0073】
1.6.3.培養
本実施形態の目的遺伝子の発現の制御方法は、宿主となるシアノバクテリア(上記形質転換体)を培養することを含んでもよい。培養の条件としては、シアノバクテリアが生存できる条件であれば特に制限されず、シアノバクテリアに合わせて適宜選択される。培地についても特に制限はなく、固形培地、液体培地等を使用することができる。培養の条件についても特に制限されず、公知の条件にしたがうことができる。

【0074】
1.6.4.誘導
本実施形態の目的遺伝子の発現の制御方法は、プロモーターを活性化させ、目的遺伝子の発現を誘導することを含んでもよい。プロモーターの種類に応じて、例えば、培養の際、培地温度、培地濃度、組成を変化させたり、光を照射したりすることを含んでもよい。また、本実施形態において、プロモーターとして、光応答性プロモーターを使用する場合には、その特性に応じた波長域の光を照射してもよく、複数の互いに異なる波長域の光を照射してもよい。また、本実施形態において、プロモーターとして、光応答性プロモーターを使用する場合には、誘導との関連を問わず、例えばシアノバクテリアの増殖に適した波長域の光を照射してもよい。

【0075】
1.7.作用効果
本実施形態の目的遺伝子の発現の制御方法によれば、プロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、目的遺伝子の開始コドンの上流側に、発現調節配列が挿入されることにより、目的遺伝子の発現を容易に制御することができる。また、目的遺伝子を非常に高い発現量で発現させることができる。さらに、光応答性プロモーターである、PcpcG2を選択すれば、光合成に重要でない光を用いて、シアノバクテリア中の目的遺伝子発現を制御することができる。

【0076】
2.DNA配列
目的遺伝子の開始コドンの上流に配置される、プロモーターから発現調節配列までの具体的なDNA配列としては、下記配列(配列番号1)の1番目~237番目(下線)で表される配列が挙げられる。

【0077】
AGCCCATTGTGCTTTTCTCTATCAACCTCAGCTTACCTGAAGGGGTGAACAGGTCTGGGTTAATTCATGTTGCGAAATGTAACAGTTTTAGTCGCATCAGCTAACTTTCCGATTTCTTTACGATTTTCTCCCCCTTTTCTTCAATTTTACTTTGTTAGGATCGCATTTTTAATGCCAACACATACCAGTTATTGGCTGGACATTAAACAACTTTTAAGTTTAATTACTAACTTTACATATAAGTAGGAGATAAAAAT

【0078】
また、係るDNA配列は、目的遺伝子の発現に支障がない限り、塩基の変更、付加、または欠失が存在してもよい。したがって本実施形態のDNA配列としては、配列番号1の1番目~237番目で表される配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の相同性を有する配列である。また特に、配列番号1の105番目から126番目の配列、238番目から257番目が重要である。したがって本実施形態のDNA配列としては、配列番号1の105番目~126番目で表される配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有する配列がさらに好ましい。また、238番目~257番目で表される配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有する配列がさらに好ましい。

【0079】
このようなDNA配列によれば、下流側に配置された目的遺伝子の発現量を大幅に増大させることができる。

【0080】
3.発現ベクター
本実施形態の発現ベクターは、「1.6.1.発現ベクター」の項で述べたように構築された発現ベクターである。係る発現ベクターは、具体的には、プロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、目的遺伝子の開始コドンの上流側に、12塩基以上50塩基以下の発現調節配列が挿入された配列を含み、シアノバクテリアに用いられる。

【0081】
このような発現ベクターによってシアノバクテリアを形質転換すれば、目的遺伝子の発現量を広いレンジで調節・制御することができる。また、これにより、シアノバクテリアによる有用物質(目的物質)の生産を制御することができる。

【0082】
なお、発現ベクターにおける、プロモーター、目的遺伝子、発現調節配列、外因性遺伝子等は、「1.目的遺伝子の発現の制御方法」で説明したとおりであり、それらいずれの手法も適用しうる。

【0083】
4.シアノバクテリア
本実施形態に係るシアノバクテリアは、「1.1.シアノバクテリア」の項で述べたシアノバクテリアであって、プロモーターとして機能する塩基配列の下流側であって、目的遺伝子の開始コドンの上流側に、上述の発現調節配列が挿入された配列を保持したものである。

【0084】
このようなシアノバクテリアによれば、目的遺伝子の発現量を広いレンジで調節・制御することができる。また、これにより、シアノバクテリアによる有用物質(目的物質)の生産を制御することができる。

【0085】
なお、本実施形態に係るシアノバクテリアにおける、プロモーター、目的遺伝子、発現調節配列、外因性遺伝子等は、「1.目的遺伝子の発現の制御方法」で説明したとおりであり、それらいずれの手法も適用しうる。

【0086】
5.目的物質の製造方法
本実施形態の目的物質の製造方法は、目的物質を産生する能力を有するシアノバクテリアを培地中に、緑色光および赤色光の照射により培養し、当該目的物質を生成させ、当該目的物質を採取することを含む。

【0087】
本実施形態の製造方法によって製造される目的物質としては、バイオ燃料に関連する化合物(水素、エタノール、セルロース、2,3ブタンジオール、イソブチルアルデヒド、アルカン、アルケン、脂肪酸、トリグリセリド等)、バイオプラスチック(ポリヒドロキシ酪酸等)、酵素(グルコース脱水素酵素、ルシフェラーゼ等)、外来タンパク質産物(細胞凝集関連タンパク質、溶菌関連タンパク質等)、アミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ビタミン等が挙げられる。また、目的物質は、目的遺伝子の発現によって生じるタンパク質等であってもよいし、目的遺伝子の発現によって生じるタンパク質(酵素等)が触媒する反応等によって生じる物質であってもよい。

【0088】
本実施形態の製造方法における、シアノバクテリア、光、培養、外因性遺伝子等については、既に述べた通りである。すなわち、本実施形態の製造方法における、プロモーター、目的遺伝子、発現調節配列、外因性遺伝子等は、「1.目的遺伝子の発現の制御方法」で説明したとおりであり、それらいずれの手法も適用しうる。例えば、本実施形態の製造方法において、シアノバクテリアに外因性遺伝子を含むDNA配列を導入し、外因性遺伝子および目的遺伝子を共発現させれば、シアノバクテリアの目的遺伝子の発現が増強される場合がある。また、例えば、本実施形態の製造方法において、当該外因性遺伝子としてccaRを選択すれば、シアノバクテリアの目的遺伝子の発現が増強される場合がある。

【0089】
菌体や培養液等の培養物からの目的物質の採取は、通常には、イオン交換樹脂法、沈澱法その他の公知の方法を組み合わせることにより実施することができる。

【0090】
本実施形態の製造方法によれば、シアノバクテリアの目的遺伝子の発現が調節されることにより、シアノバクテリアによる目的物質の生産量を制御することができる。

【0091】
6.実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に何ら限定されるものではない。

【0092】
6.1.プロトコル
以下に本実験例のシアノバクテリア(形質転換体)の作成、培養および評価に関するプロトコルを記載する。図1は、実験例に係る発現ベクターを説明する模式図である。

【0093】
<1>
Synechocystis sp. PCC6803から
5'-TTTGAGCTCCTAAGCTCGAGGCAAATGG-3'(配列番号10)、
5'-TTTAAGCTTCTAGTTTTTCCCTTGGCAC-3'(配列番号11)
を用いて、ccaS-cpcG2-ccaRをpUC18ベクターにクローニングした。その後、SacIとHindIIIを用いて、cpcG2をGFPuvに置換し、pUC18-PccaR-ccaR-PcpcG2-GFPuv-PccaS-ccaSを構築した。ccaSとccaRのプロモーターはSynechocystis sp. PCC6803由来のものである。

【0094】
<2>
転写終結因子を導入するため、下記プライマーを用いて増幅し、PstIとH indIIIを用いてpTrc99Aに導入した。
Primer Fw: 5'-GACCTGCAGGCGAAAAAACCCCGCCGAAGCGGGGTTTTTTGCGCTAAGCTCGAGGCAAATGGTTATAG-3'(配列番号12)
Primer Rev: 5'-GCCAAGCTTCTAGTTTTTCCCTTGGCACAAAG-3'(配列番号13)

【0095】
<3>
ccaSとPcpcG2-GFPuv、ccaRとPcpcG2-GFPuv、およびPcpcG2-GFPuvを含む断片を下記のプライマーを用いて増幅し、制限酵素PstIを用いて広宿主域ベクターであるpKT230にクローニングし、pKT230-PcpcG2-GFPuv(図1(a)), pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaS-ccaS, pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaR-ccaRを構築した。PcpcG2-GFPuvの断片は、P CR後pGEM-T-Easy (Promega)に導入し、同プラスミドをPstIで切断後、広宿主域ベクターであるpKT230にクローニングした。

【0096】
<4>
Primer Fw (pKT230-PcpcG2-GFPuv):AACTGCAGTCCTCCACTAAAAGAATTCTCATAG(配列番号14)
Primer Rev (pKT230-PcpcG2-GFPuv):ATATTAGCGAATCCCAGTAGAAAAACCTTAC(配列番号15)
Primer Fw (pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaS-ccaS): 5'-AACTGCAGTCCTCCACTAAAAGAATTCTCATAG-3'(配列番号16)
Primer Rev (pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaS-ccaS): GTAAAACGACGGCCAGT(配列番号17)
Primer Fw (pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaR-ccaR):5'-AACTGCAGATATTAGCGAATCCCAGTAGAAAAACC-3'(配列番号18)
Primer Rev (pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaR-ccaR):CAGGAAACAGCTATGAC(配列番号19)

【0097】
<5>
PcpcG2-GFPuvのGFPの開始コドンの上流に合成したcpcBの5'側の非翻訳領域20塩基を以下の合成DNAと制限酵素NdeIを用いて導入した(PcpcG2-cpcB-GFPuv)(図1(b))。合成DNAをリン酸化した後に、熱処理および徐冷によって二本鎖を形成させた。NdeIで切断したpKT230-PcpcG2-GFPを脱リン酸化した後に、二本鎖処理した合成DNAと混合し、ライゲーション、およびDH5αの形質転換を行い、目的のプラスミドを構築した。
合成DNA1: 5'-TATAAGTAGGAGATAAAAA-3'(配列番号20)
合成DNA2:5'-TATTTTTATCTCCTACTTA-3'(配列番号21)

【0098】
<6>
pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaR-ccaRのGFPuvの開始コドンの上流に合成したPcpcBの5'側の非翻訳領域を上記の合成DNAを用いて導入した(図1(c))。

【0099】
<7>
PcpcBの配列を削るまたは付加し、異なる種間にあるcpcBの5'非翻訳領域と長さ(スペーサー)を 6、8、9塩基に合わせたものを構築するために、PcpcG2-cpcB-GFPuvを鋳型とし、前もって5'をリン酸化した下記のプライマーを用いてインバースPCRを行い、インバースPCR後に精製、ライゲーションし、DH5αを形質転換し、目的のプラスミドを構築した。
Primer Fw (6塩基): 5'-ATGAGTAAAGGAGAAGAACTTTTCACTG-3'(配列番号22)
Primer Rev (6塩基):5'- TTTTTATCTCCTACTTATATGTAAAGTTAGTAATTAAAC-3'(配列番号23)
Primer Fw (8塩基): 5'-AATGAGTAAAGGAGAAGAACTTTTCACTG-3'(配列番号24)
Primer Rev (8塩基):5'- ATTTTTATCTCCTACTTATATGTAAAGTTAGTAATTAAAC-3'(配列番号25)
Primer Fw (9塩基):5'- AAATGAGTAAAGGAGAAGAACTTTTCACTG-3'(配列番号26)
Pri mer Rev (9塩基): 5'- ATTTTTATCTCCTACTTATATGTAAAGTTAGTAATTAAAC-3'(配列番号27)
この工程で得られたプラスミドの配列を表2に示す。

【0100】
【表2】
JP2014192765A1_000004t.gif

【0101】
<8>
<1>~<7>で構築したプラスミドベクターを用いて、Synechocystis sp. PCC6803をエレクトロポレーション法により形質転換した。形質転換後、660nm付近の赤色を含む、例えばPanasonic社製赤色LED基盤を用いて、光照射下で1週間程度、下記に示す組成のBG11固形培地を用いて培養を行った。この際に、50μg/mLのストレプトマイシンを用いて形質転換体を選択してある。得られたコロニーは25μg/mLのストレプトマイシンを含むBG11(組成は下記に示す)中に播種し、赤色光下で1週間静置培養した。その後、同様に赤色照射下でOD730が0.5~1程度の値になるまでTAITEC社製のBR-42FL等を用いて振盪培養を行った。

【0102】
<BG11固形培地>
NaNO3 18mM
K2HPO4・3H2O 30mg/L
MgSO4・7H2O 75mg/L
CaCl2・2H2O 36mg/L
Citric acid 6mg/L
Ferric ammonium citrate 6mg/L
Na2EDTA 1mg/L
Na2CO3 20mg/L
Vitamin B12 0.01mg/L
Trace mix astro 1mL
1 M TES-KOH(pH7.4) 5 mL
チオ硫酸ナトリウム 3g/L
寒天 15g/L
蒸留水で1Lにメスアップ

【0103】
オートクレーブで滅菌後、滅菌シャーレに注ぎ、固形培地とした。この際に用いているTrace mix astroの組成は下記の通りである。
H3BO4 286mg
MnCl2・4H2O 181mg
ZnSO4・7H2O 22.2mg
Na2MgO4・2H2O 39mg
CuSO4・5H2O 7.9mg
Co(NO3)2・6H2O 4.94mg
蒸留水で100mLにメスアップ

【0104】
<BG11液体培地>
NaNO3 18mM
K2HPO4・3H2O 30mg/L
MgSO4・7H2O 75mg/L
CaCl2・2H2O 36mg/L
Citric acid 6mg/L
Ferric ammonium citrate 6mg/L
Na2EDTA 1mg/L
Na2CO3 20mg/L
Vitamin B12 0.01mg/L
Trace mix astro 1mL
1 M TES-KOH(pH7.4) 20 mL
蒸留水で1Lにメスアップ

【0105】
<9>
得られた形質転換体を、赤色照射下または、525nm付近の光を含む、例えば、日本医化器械製作所製の3in1LED照明ユニットを用い、緑色の光照射下で培養を行った。この際に緑色光照射する場合には赤色光を同時に照射した。

【0106】
<10>
緑色光下で培養後、1 mLの培養液を13000g、5分の遠心分離により集菌した。集菌した菌体をBG11またはPBSで洗浄した後に、プレートリーダー(Varioskan Flash Multimode Reader, Thermo scientific) を用いて、蛍光強度を測定した。この際の励起光は395nm、蛍光は509nmとした。

【0107】
<11>
また、(d) PcpcG2-cpcB(発現調節配列)-gfpmut3b, および(e) PcpcG2-cpcB(発現調節配列)-gfpmut3b-ccaR(非翻訳領域を56bp含む)のベクター(図6(d)、図6(e)参照)を構築し、Synechocystis sp. PCC 6803にエレクトロポレーションによって導入した。

【0108】
ここで、gfpmut3bは、上述のGFPuvと同様に、GFPの変異体であり、UV光による励起に特化したものがGFPuvであり、GFPの蛍光強度を高めたものがgfpmut3bである。また、この実験ではフローサイトメーターを利用するため、青色光レーザーで励起しやすくするためにgfpmut3bを用いた。GFPuv及びgfpmut3bの塩基配列は、それぞれ、配列番号33及び配列番号34に示した。

【0109】
導入後、BG11培地で赤色光下で培養した。培養後、50 mLのBG11 (100mLの三角フラスコ)にそれぞれの形質転換体について植菌を行い、赤色光下でOD730が0.5付近になるまで培養した。

【0110】
その後、図7に示すように、緑色光(中心波長520nm)を下方から、赤色光(中心波長660nm)を上方から照射し、培養を行った。

【0111】
適宜サンプリングし、遠心分離後、菌体をリン酸バッファーで洗浄した。洗浄後の菌体を10~10cells/mLに希釈後、BD AccuriTM C6 フローサイトメーター(ベクトンディッキンソン・アンド・カンパニー製、NJ、US)にて10000cellsの蛍光を測定した。測定時には青色光レーザーを用い、FL1フィルター(533±15 nm)を用いた。

【0112】
6.2.実験例の説明
緑色光センサーは、Synechocystis sp. PCC6803由来のものであり、CcaSとCcaRの二種のタンパク質によって構成される二成分制御系である。CcaSは緑色光を受容し、自己リン酸化する。CcaRは自己リン酸化されたCcaSからリン酸基を受け取り、活性型となる。活性型CcaRはDNA結合能を獲得し、cpcG2の上流に結合し、CpcG2の発現を促す。

【0113】
CcaSは緑色光で活性化し、赤色光で不活化する。しかし赤色は光合成に重要であるため、赤色と緑色を供に照射し、GFPの発現量を評価した。その結果、赤色照射下と比較し、高いGFPの発現が確認された。しかしその発現量は不十分であった。発明者らは、赤色光が光合成に重要な光であることから、赤色光と緑色光の両方を照射する必要があり、相対的に緑色光による誘導が僅かなものになったことによって、このような不十分な遺伝子発現となったものと考えている。

【0114】
プロモーターからの発現を評価するために、cpcG2のプロモーター(PcpcG2)の下流にレポーター遺伝子としてGFPuv(配列番号33)を連結し、広宿主域ベクターに導入し、Synechocystis sp. PCC6803を形質転換した。

【0115】
また、同プロモーターに対し、シアノバクテリア中で高発現しているcpcBの5'非翻訳領域を連結した(PcpcG2-cpcB)。開始コドン周辺の5'非翻訳領域はタンパク質の翻訳に重要である。この際の5'非翻訳領域はSynechococcus sp. NKBG15041c株中のcpcB遺伝子の開始コドンから上流20bpの配列(TATAAGTAGGAGATAAAAAC)(配列番号2)を選択し、末尾のCをTに変更した配列番号28の配列を評価に供した。PcpcG2-cpcBの下流に同様にGFPuvを連結し、広宿主域ベクターに導入した。

【0116】
それぞれの形質転換体を赤色光下で培養した。CcaSは赤色光で不活化されるために、PcpcG2からの漏出発現を抑制できる。ある程度増殖したところで緑色光および赤色光の二色の光を同時に照射し、経時的にGFPuvの蛍光強度を測定した。

【0117】
24時間後の蛍光強度の測定結果を図2に示す。PcpcG2単独でのGFPuvの蛍光を1とした場合に、Pcpc G2-cpcBは15~25倍もの値を示し、その発現量は大幅に向上することが判明した。

【0118】
次に、転写量増強のために、転写因子であるCcaRをプラスミドベクターを用いてSynechocystis sp. PCC6803に導入し、先と同様に評価した(PcpcG2-cpcB+CcaR)。この評価結果を図3に示す。

【0119】
図3をみると、CcaRを導入することで、GFPuvの発現量が上昇したことがわかった。転写因子量を増強することで、転写量を上昇させられると考えられる。さらに、PcpcG2-cpcBを持つプラスミドベクターに対して、CcaRを導入したところ、その効果は相乗的であり、PcpcG2と比較して40倍もの発現量向上をすることが判明した(図4)。

【0120】
更に、複数種のcpcBの5'非翻訳領域の配列を比較したところ、保存されているAGGAGAと開始コドンの距離(スペーサー)に違いが見られたため(表1、2参照)、長さの検討を試みたところ、7、8、9塩基(配列番号26、28、29)の場合と比較し、6塩基(配列番号27)の場合が一番高いことが判明した(図5)。

【0121】
更に、プラスミドベクター中のCcaRの導入位置による、GFP(変異体)の発現量の変化を確認した。すなわち、図4のPcpcG2-cpcB+CcaRは、図1(c)に示すように、CcaRがPcpcG2の上流側に位置するプラスミドベクターによって形質転換されているが、これと比較するために、図6(e)に示すように、CcaRがPcpcG2の下流側に位置するプラスミドベクターによって形質転換した場合について、gfpmut3b(変異体)(配列番号34)の発現量の変化を調べた。図6(e)に示すプラスミドベクターは、緑色光のセンサーシステムのプロモーター(PcpcG2)に、標的遺伝子(gfpmut3b)と一緒にCcaRが発現されるように構築されている点で、図1(c)に示すプラスミドベクター(天然のプロモーターによってCcaRが発現されるように構築されている)と異なる。すなわち、図6(e)に示すプラスミドベクターによるSynechocystis sp. PCC6803の形質転換体は、CcaRの発現が恒常的となっている。また、同時に図6(d)に示すように、CcaRを導入しない場合のgfpmut3bの発現量を調べ、これらの結果を図8に併載した。

【0122】
図8をみると、緑色光および赤色光の照射で、CcaRがPcpcG2の下流側に導入された場合には、導入されない場合に比較してgfpmut3bの発現量が3倍程度向上することが判明した。さらに、赤色光の照射では、CcaRがPcpcG2の下流側に導入された場合には、導入されない場合に比較してgfpmut3bの発現量がほとんど増加しなかった。一方、CcaRがPcpcG2の上流側に位置するプラスミドベクターによって形質転換された場合(図4参照)には、赤色光の照射で、導入されない場合に比較してGFPuvの発現量が増加している。したがって、CcaRがPcpcG2の下流側に導入された場合には、赤色光の照射による目的遺伝子の発現量を抑えつつ、緑色光での発現量を向上できることが判明した。

【0123】
以上のように、本発明に係るプロモーターを用いることで、緑色を用いた有用物質生産コントロールまたは凝集・溶菌コントロール等を行うことができる可能性があることが判明した。

【0124】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【産業上の利用可能性】
【0125】
シアノバクテリアは、炭酸固定能に加え、優れたバイオ燃料関連化合物生産能力を有しているため、バイオ燃料関連化合物生産を行ううえで魅力的な宿主である。本発明はSynechocystis sp. PCC6803中で高発現可能な光制御型のプロモーターを提供するものであり、様々なバイオ燃料生産を行うために利用されることが期待できる。また、シアノバクテリアを利用した組み換えタンパク質生産にも応用が期待できる。本発明では、高発現可能な緑色光誘導型のプロモーターを開発しており、本プロモーターの強度は極めて高い。また、その発現量は緑色光の強度で容易に調節可能と予測されることから、バイオ燃料生産を行ううえで、有用なツールになることが期待できる。
【配列表フリ-テキスト】
【0126】
配列番号1は、cpcG2プロモーターおよび発現調節配列の配列である。
配列番号12は、フォワードプライマーの配列である。
配列番号13は、リバースプライマーの配列である。
配列番号14は、pKT230-PcpcG2-GFPuvフォワードプライマーの配列である。
配列番号15は、pKT230-PcpcG2-GFPuvリバースプライマーの配列である。
配列番号16は、pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaS-ccaSフォワードプライマーの配列である。
配列番号17は、pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaS-ccaSリバースプライマーの配列である。
配列番号18は、pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaR-ccaRフォワードプライマーの配列である。
配列番号19は、pKT230-PcpcG2-GFPuv-PccaR-ccaRリバースプライマーの配列である。
配列番号20は、DNA1の配列である。
配列番号21は、DNA2の配列である。
配列番号22は、6ntフォワードプライマーの配列である。
配列番号23は、6ntリバースプライマーの配列である。
配列番号24は、8ntフォワードプライマーの配列である。
配列番号25は、8ntリバースプライマーの配列である。
配列番号26は、9ntフォワードプライマーの配列である。
配列番号27は、9ntリバースプライマーの配列である。
配列番号28は、7ntの配列である。
配列番号29は、6ntミュータントの配列である。
配列番号30は、8ntミュータントの配列である。
配列番号31は、9ntミュータントの配列である。
配列番号33は、GFPuv(ミュータント)の配列である。
配列番号34は、gfpmut3b(ミュータント)の配列である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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