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明細書 :多孔質基板電極体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 多孔質基板電極体及びその製造方法
国際特許分類 A61N   1/04        (2006.01)
A61B   5/0408      (2006.01)
FI A61N 1/04
A61B 5/04 300W
A61B 5/04 300Y
国際予備審査の請求
全頁数 34
出願番号 特願2015-508711 (P2015-508711)
国際出願番号 PCT/JP2014/058947
国際公開番号 WO2014/157550
国際出願日 平成26年3月27日(2014.3.27)
国際公開日 平成26年10月2日(2014.10.2)
優先権出願番号 2013070450
優先日 平成25年3月28日(2013.3.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】西澤 松彦
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090251、【弁理士】、【氏名又は名称】森田 憲一
【識別番号】100139594、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 健次郎
【識別番号】100185915、【弁理士】、【氏名又は名称】長山 弘典
審査請求 未請求
テーマコード 4C053
4C127
Fターム 4C053BB03
4C053BB04
4C053BB06
4C053BB07
4C053BB34
4C053EE11
4C053JJ40
4C127LL22
4C127LL24
要約 本発明の目的は、ハイドロゲルを基板とする高電圧の発生が可能な電極体を提供することである。また、本発明の更なる目的は、ハイドロゲルの変形によっても、断線しない電極体を提供することである。
前記課題は、電極が、多孔質体に導電性高分子接着層によって接着している多孔質基板電極体であって、前記電極が、金属電極、伸縮性電極、及びカーボン電極からなる群から選択されることを特徴とする多孔質基板電極体によって解決することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
電極が、多孔質体に導電性高分子接着層によって接着している多孔質基板電極体。
【請求項2】
前記電極が、金属電極、伸縮性電極、カーボン電極及びそれらの複合材料電極からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする多孔質基板電極体。
【請求項3】
前記電極が、金、グラファイト、又は導電性ウレタンである、請求項1又は2に記載の多孔質基板電極体。
【請求項4】
電極が多孔質体上への配設、又は多孔質体内への埋設によって、接着している請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体。
【請求項5】
前記電極の表面に、更に導電性高分子重合層を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体。
【請求項6】
前記導電性高分子が、ポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリビチオフェン、ポリイソチオフェン、ポリドデシルチオフェン、ポリイソナイトチオフェン、ポリ-3-ヘキシルチオフェン、ポリアニオン、ポリイソチアナフテン、ポリチアジル、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレスルフィドからなる群から選択される1つ以上の導電性高分子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体。
【請求項7】
前記多孔質体がゲルである請求項1~6のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体。
【請求項8】
前記多孔質体がハイドロゲルである請求項1~7のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体。
【請求項9】
前記多孔質体が、アガロースゲル、コラーゲンゲル、グルコマンナンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、フィブリンゲル、ポリビニルアルコールゲル、ポリヒドロキシエチルメタクリレートゲル、シリコーンハイドロゲル、ポリビニルピロリドンゲル、ポリエチレングリコールゲル、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ゲル、アルギン酸ゲル、カラギーナンゲル、キトサンゲル、ポリNイソプロピルアクリルアミドゲル、アクリル酸ゲル、ポリスチレンスルホン酸ゲル、及びそれらの2つ以上の複合ゲルからなる群から選択される1つ以上の多孔質体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体。
【請求項10】
乾燥及び/又は滅菌された請求項1~9のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体。
【請求項11】
エレクトロポレーション用である、請求項1~10のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体。
【請求項12】
(1)電極形成用基材に、電極を形成する工程、
(2)電極形成用基材に形成された電極に接触するように、多孔質体を形成する工程、
(3)導電性高分子モノマーを含む電解質液中で電解重合を行い、電極から多孔質体中に導電性高分子接着層を形成させることによって、電極と多孔質体とを接着する工程、
(4)電極形成用基材と、電極とを剥離する工程、
を含む多孔質基板電極体の製造方法。
【請求項13】
(5)電極の表面に、導電性高分子のモノマーを含む電解質液を接触させ、電解重合により、前記電極面に導電性高分子重合層を形成する工程、を更に含む請求項12に記載の多孔質基板電極体の製造方法。
【請求項14】
前記電極形成用基材がガラス板であり、そして電極が金属電極、伸縮性電極、及びカーボン電極からなる群から選択される1つ以上である、請求項12又は13に記載の多孔質基板電極体の製造方法。
【請求項15】
前記電極形成用基材がガラス板であり、そして電極が金、グラファイト、又は導電性ウレタンである、請求項12~14のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体の製造方法。
【請求項16】
前記電極形成工程(1)が、棒状の電極形成用基材の側周面に、電極を形成する工程であり、
前記多孔質体の形成工程(2)が、前記電極が形成された棒状の電極形成用基材の周囲に多孔質体を形成する工程、または前記電極が形成された棒状の電極形成用基材を多孔質体に挿入する工程である、請求項12~15のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体の製造方法。
【請求項17】
前記導電性高分子のモノマーが、3,4エチレンジオキシチオフェン、アセチレン、ピロール、チオフェン、ビチオフェン、イソチオフェン、ドデシルチオフェン、イソナイトチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、アニオン、イソチアナフテン、チアジル、フェニレン、フルオレン、ジアセチレン、アセン、パラフェニレン、チエニレンビニレン、及びフェニレスルフィドからなる群から選択される1つ以上のモノマーである、請求項12~16のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体の製造方法。
【請求項18】
前記多孔質体が、アガロースゲル、コラーゲンゲル、グルコマンナンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、フィブリンゲル、ポリビニルアルコールゲル、ポリヒドロキシエチルメタクリレートゲル、シリコーンハイドロゲル、ポリビニルピロリドンゲル、ポリエチレングリコールゲル、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ゲル、アルギン酸ゲル、カラギーナンゲル、キトサンゲル、ポリNイソプロピルアクリルアミドゲル、アクリル酸ゲル、ポリスチレンスルホン酸ゲル、及びそれらの2つ以上の複合ゲルからなる群から選択される1つ以上の多孔質体である、請求項12~17のいずれか一項に記載の多孔質基板電極体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質基板電極体及びその製造方法に関する。本発明の多孔質基板電極体は、高電圧のパルスを発生させることができる、生体親和性の高い柔軟な電極体である。
【背景技術】
【0002】
従来、電気刺激を用いた治療機器、又は電気刺激を用いた診断機器などでは、皮膚と直接接触する電極が用いられている。また、近年、体内埋め込み式の医療機器、又は神経に信号を入力するための神経インターフェースなどの開発が進められてきており、これらに用いる細胞(神経)神経刺激用電極などの開発も行われている。更に、生体組織(細胞)に遺伝子を、直接導入するエレクトロポレーションの機器も開発されている。前記の機器に用いられる電極は、生体の組織又は細胞に、直接接触する可能性が高く、生体適合性を有する材料であることが好ましい。
【0003】
本発明者らは、生体適合性を有する電極として、基板にハイドロゲルを用いた電極を開発した。ハイドロゲルは柔軟であり、含水性及び分子拡散性が高いものが多く、細胞又は組織などの生体親和性に優れている。しかしながら、ハイドロゲルなどの含水性の高い多孔質材料に、導電性の電極を直接形成することはできなかった。本発明者らは、電解重合により、ハイドロゲルを基板として、導電性高分子の電極パターンを形成させた電極を開発した(特許文献1、非特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2011/118800号
【0005】

【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of the American Chemical Society)」(米国)2010年、第132巻、p.13174-13175
【非特許文献2】「エイシーエス・マクロ・レターズ(ACS Macro Letters)」(米国)2012年、第1巻、p.400-403
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は、前記特許文献1及び非特許文献1及び2に記載のハイドロゲルを基板とする電極の検討を進めたところ、前記の電極は導電性高分子を電極配線材料として用いているため、抵抗が高く高電圧のパルスを発生させることが不可能であった。また、導電性高分子自体は伸縮性がなく、ハイドロゲルが変形することによって、断線してしまうことがあった。
従って、本発明の目的は、ハイドロゲルを基板とする高電圧の発生が可能な電極体を提供することである。また、本発明の更なる目的は、ハイドロゲルの変形によっても、断線しない電極体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ハイドロゲルを基板とする高電圧の発生が可能な電極体について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、金属電極又はカーボン電極を高分子導電体の重合により多孔質体と接着させることにより、高電圧のパルスを発生することができる電極体を製造できることを見出した。また、伸縮性電極を高分子導電体の重合により多孔質体と接着させることにより、伸縮可能で、電極の断線が発生しない電極体を製造できることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]電極が、多孔質体に導電性高分子接着層によって接着している多孔質基板電極体、
[2]前記電極が、金属電極、伸縮性電極、カーボン電極及びそれらの複合材料電極からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする多孔質基板電極体、
[3]前記電極が、金、グラファイト、又は導電性ウレタンである、[1]又は[2]に記載の多孔質基板電極体、
[4]電極が多孔質体上への配設、又は多孔質体内への埋設によって、接着している[1]~[3]のいずれかに記載の多孔質基板電極体、
[5]前記電極の表面に、更に導電性高分子重合層を有する[1]~[4]のいずれかに記載の多孔質基板電極体、
[6]前記導電性高分子が、ポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリビチオフェン、ポリイソチオフェン、ポリドデシルチオフェン、ポリイソナイトチオフェン、ポリ-3-ヘキシルチオフェン、ポリアニオン、ポリイソチアナフテン、ポリチアジル、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレスルフィドからなる群から選択される1つ以上の導電性高分子である、[1]~[5]のいずれかに記載の多孔質基板電極体、
[7]前記多孔質体がゲルである[1]~[6]のいずれかに記載の多孔質基板電極体、
[8]前記多孔質体がハイドロゲルである[1]~[7]のいずれかに記載の多孔質基板電極体、
[9]前記多孔質体が、アガロースゲル、コラーゲンゲル、グルコマンナンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、フィブリンゲル、ポリビニルアルコールゲル、ポリヒドロキシエチルメタクリレートゲル、シリコーンハイドロゲル、ポリビニルピロリドンゲル、ポリエチレングリコールゲル、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ゲル、アルギン酸ゲル、カラギーナンゲル、キトサンゲル、ポリNイソプロピルアクリルアミドゲル、アクリル酸ゲル、ポリスチレンスルホン酸ゲル及びそれらの2つ以上の複合ゲルからなる群から選択される1つ以上の多孔質体である、[1]~[8]のいずれかに記載の多孔質基板電極体、
[10]乾燥及び/又は滅菌された[1]~[9]のいずれかに記載の多孔質基板電極体、
[11]エレクトロポレーション用である、[1]~[10]のいずれかに記載の多孔質基板電極体、
[12](1)電極形成用基材に、電極を形成する工程、(2)電極形成用基材に形成された電極に接触するように、多孔質体を形成する工程、(3)導電性高分子モノマーを含む電解質液中で電解重合を行い、電極から多孔質体中に導電性高分子接着層を形成させることによって、電極と多孔質体とを接着する工程、(4)電極形成用基材と、電極とを剥離する工程、を含む多孔質基板電極体の製造方法、
[13](5)電極の表面に、導電性高分子のモノマーを含む電解質液を接触させ、電解重合により、前記電極面に導電性高分子重合層を形成する工程、を更に含む[12]に記載の多孔質基板電極体の製造方法、
[14]前記電極形成用基材がガラス板であり、そして電極が金属電極、伸縮性電極、及びカーボン電極からなる群から選択される1つ以上である、[12]又は[13]に記載の多孔質基板電極体の製造方法、
[15]前記電極形成用基材がガラス板であり、そして電極が金、グラファイト、又は導電性ウレタンである、[12]~[14]のいずれかに記載の多孔質基板電極体の製造方法、
[16]前記電極形成工程(1)が、棒状の電極形成用基材の側周面に、電極を形成する工程であり、前記多孔質体の形成工程(2)が、前記電極が形成された棒状の電極形成用基材の周囲に多孔質体を形成する工程、または前記電極が形成された棒状の電極形成用基材を多孔質体に挿入する工程である、[12]~[15]のいずれかに記載の多孔質基板電極体の製造方法、
[17]前記導電性高分子のモノマーが、3,4エチレンジオキシチオフェン、アセチレン、ピロール、チオフェン、ビチオフェン、イソチオフェン、ドデシルチオフェン、イソナイトチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、アニオン、イソチアナフテン、チアジル、フェニレン、フルオレン、ジアセチレン、アセン、パラフェニレン、チエニレンビニレン、及びフェニレスルフィドからなる群から選択される1つ以上のモノマーである、[12]~[16]のいずれかに記載の多孔質基板電極体の製造方法、及び
[18]前記多孔質体が、アガロースゲル、コラーゲンゲル、グルコマンナンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、フィブリンゲル、ポリビニルアルコールゲル、ポリヒドロキシエチルメタクリレートゲル、シリコーンハイドロゲル、ポリビニルピロリドンゲル、ポリエチレングリコールゲル、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ゲル、アルギン酸ゲル、カラギーナンゲル、キトサンゲル、ポリNイソプロピルアクリルアミドゲル、アクリル酸ゲル、ポリスチレンスルホン酸ゲル、及びそれらの2つ以上の複合ゲルからなる群から選択される1つ以上の多孔質体である、[12]~[17]に記載の多孔質基板電極体の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多孔質基板電極体は、高電圧のパルスを発生させることができる生体親和性の高い柔軟な電極体である。従って、本発明の多孔質基板電極体は、高電圧パルスを必要とする神経又は筋肉の電気刺激に用いることができる。また、細胞への遺伝子導入のためのエレクトロポレーションに用いることもできる。また、多孔質基板電極体は、更に、体内埋め込み式の神経又は筋肉の計測制御の電極としても用いることができる。
本発明の伸縮性電極を用いた多孔質基板電極体は、伸縮性を有しているため、電極の変形が発生する箇所で使用しても、電極の断線が発生しない。例えば、本発明の多孔質基板電極体は、体表に貼って用いる診断治療器具の電極としても適している。
更に、電極が多孔質体内に埋設されている本発明の多孔質基板電極体を用いると、神経細胞や筋肉細胞の3次元培養を電気刺激下で行うことができる。特に、伸縮性電極が多孔質体内に埋設されている多孔質基板電極体の場合は、多孔質体及び電極が柔軟性を有しているため、電極の破断が生じず、前記の3次元培養を、力学刺激を加えながら行うことができる。また、体内に埋め込む圧力・ひずみセンサに用いられる可能性がある。
本発明の多孔質基板電極体を用いたエレクトロポレーションによれば、生存率を低下させることなく、付着性細胞に分子導入することができる。特に、電極表面に導電性高分子重合層を有する電極体を用いることにより、電極付近の気泡の発生及びpHの変化を防ぐことができ、細胞の生存率を上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の多孔質基板電極体の製造方法(特には金電極パターンの形成)を模式的に示した図である。
【図2】本発明の多孔質基板電極体の製造方法における接着工程(導電性高分子の重合)を模式的に示した図である。
【図3】本発明の多孔質基板電極体の製造方法における電極形成工程(a)、多孔質体形成工程(b)、接着工程(c)、剥離する工程(d)を示す図である。
【図4】本発明の多孔質基板電極体の製造方法における、犠牲層(PVA)上への導電性ウレタンの溶液塗布(a)、熱処理(b)、多孔質体への接着工程(c)、剥離する工程(d)を示す図である。
【図5】実施例1で得られたポリアクリルアミドゲルと金電極による多孔質基板電極体(a)及び実施例2で得られたアガロースと金電極による多孔質基板電極体(b)の写真である。
【図6】実施例3で得られたアガロースとカーボン電極による多孔質基板電極体の写真である。
【図7】実施例4で得られたウレタン(伸縮性電極)(A)を用いた多孔質基板電極体(B)及び抵抗を測りながら行った連続伸縮試験の結果(C)である。
【図8】導電性高分子重合層を有する多孔質基板電極体の製造方法を模式的に示した図である。
【図9】実施例5で得られた導電性高分子重合層を有する金電極による多孔質基板電極体の写真(A)及びそれによる界面インピーダンスの低下のデータ(B)である。
【図10】ハイドロゲル内に電極を埋設して導電性高分子接着層で接着した多孔質基板電極体の製造方法を模式的に示した図である。
【図11】実施例5で得られたウレタン(伸縮性電極)を埋設した多孔質基板電極体の写真である。
【図12】多孔質基板電極体及び多孔質細胞保持体を用いるエレクトロポレーションの模式図(A及びB)及び写真(C)、並びに電極間の細胞の拡大写真(D)、細胞内に取り込まれたPIの蛍光を示した写真(E)、及びCalcein-AMを生細胞に取り込ませ、PI由来の赤色蛍光と、Calcein-AM由来の緑色蛍光を同時に観察した蛍光写真(F)である。
【図13】多孔質基板重合電極体を用いた多孔質細胞保持体を用いるエレクトロポレーションの模式図(A及びB)、及び電極間の細胞の拡大写真(C)、細胞内に取り込まれたPIの蛍光を示した写真(D)、及びCalcein-AMを生細胞に取り込ませ、PI由来の赤色蛍光と、Calcein-AM由来の緑色蛍光を同時に観察した蛍光写真(E)である。
【図14】スピンコーター及びカッティングプロッターを用いて作成した伸縮性電極を含む多孔質基板電極体の3つの配線パターン(A、B、C)を示した写真である。
【図15】インクジェットプリンターを用いてガラス板状に作製した2つの配線パターンを示した写真である。
【図16】多孔質基板電極体を乾燥させ、それを水に浸漬させることによって、復元することを示した写真である。
【図17】高温高圧の飽和水蒸気滅菌を行った前(a)及び後(b)の導電率を示した写真及びグラフ(c)である。
【図18】多孔質基板電極体の表面で筋肉細胞(C2C12細胞)及び運動神経細胞(NG108-15細胞)を培養した写真である。
【図19】多孔質基板電極体において、電極とハイドロゲルとが導電性高分子接着層により強固に結合していることを示す光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1]多孔質基板電極体
本発明の多孔質基板電極体は、電極、好ましくは金属電極、カーボン電極、伸縮性電極、又はその組み合わせが、多孔質体に導電性高分子接着層によって接着しているものである。
多孔質基板電極体の導電体は、電極、好ましくは金属電極、カーボン電極、伸縮性電極、又はその組み合わせが多孔質体によってサポートされており、電極及び多孔質体が、導電性高分子接着層により強固に接着されているものである。導電性高分子接着層の高分子重合体は、多孔質体の分子と強固に絡まり結合している。また、高分子重合体は電極上に電解析出しておりその結合は強固である。

【0011】
(電極)
本発明の多孔質基板電極体に用いられる電極(導電体)は、特に限定されるものではないが、金属電極、カーボン電極、伸縮性電極、又はそれらの複合材料電極を挙げることができる。複合材料電極としては、金属電極及びカーボン電極の組み合わせ、金属電極及び伸縮性電極の組み合わせ、又はカーボン電極及び伸縮性電極の組み合わせを挙げることができる。例えば、伸縮性電極の表面にカーボン電極であるカーボン微粒子を埋め込んだ複合材料電極を用いることができる。

【0012】
(金属電極)
本発明の多孔質基板電極体に含まれる金属電極は、電極として用いることのできるものである限りにおいて、特に限定されるものではない。具体的には、金、白金、チタン、アルミニウム、又はタングステンを挙げることができるが、好ましくは、金、又は白金である。これらの金属は、安定で生体安全性に優れるからである。また、金はガラスを電極形成用基板として製造した場合、ガラス基板から剥離しやすい点で好ましい。
金属電極の導電率(σ(S/cm))は、限定されるものではないが、10~10σ(S/cm)が好ましい。

【0013】
(カーボン電極)
本発明の多孔質基板電極体に含まれるカーボン電極は、電極として用いることのできるものである限りにおいて、特に限定されるものではない。具体的には、グラフェンシート、カーボンナノチューブの凝集体、カーボン微粒子の凝集体、又はカーボン布を挙げることができる。

【0014】
(伸縮性電極)
本発明の多孔質基板電極体に含まれる伸縮性電極は、電極として用いることのできるエラストマーである限りにおいて、特に限定されるものではない。すなわち、エストラマーに導電性が付与されてものを用いることができる。具体的には、ウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴムを挙げることができるが、好ましくは、ウレタンである。ウレタンは、ポリチオフェンとの複合化によって10σ(S/cm)程度の導電性を有するからである。
伸縮性電極の導電率(σ(S/cm))は、限定されるものではないが、10~10σ(S/cm)が好ましい。

【0015】
金属電極及び伸縮性電極の電極パターンは、特に限定されるものではなく、それぞれの電極の用途に応じて、適宜デザインすることができる。例えば、図5に示した電極パターンは、細胞に遺伝子を導入するエレクトロポレーション用の電極のパターンとして、好適に用いることができる。
また、図11に示した電極は、キュービック状の多孔質体を中空状に貫通しているものである。本電極は、後述のように棒状の電極形成用基板の全面に電極パターンを形成することによって得ることができる。

【0016】
(多孔質体)
本発明の多孔質基板電極体に含まれる多孔質体は、柔軟性を有するものである限りにおいて、限定されるものではないが、生体親和性に優れたものが好ましく、例えばゲルを挙げることができ、特にはハイドロゲルが好ましい。
ハイドロゲルは、三次元網目構造中に溶媒として水を保持したゲルであり、非常に優れた吸水性を示す。天然又は合成を問わずゲルのほとんどが水を包含するので、通常ゲルといえばハイドロゲルを意味する。また、角膜、水晶体、硝子体、筋肉、血管、神経軸索、又は軟骨など、生体を構成する軟組織のほとんどは生体高分子の網目構造に60~80%の水分を含む典型的なハイドロゲルである。更に、骨や歯などの硬組織に関しても、それ自体はハイドロゲルではないが、無機物であるハイドロキシアパタイトの隙間にコラーゲンなどのゲル状物質が充填された構造をとっていることが多い。従って、ハイドロゲルには生体由来のものや生体適合性に優れたものが数多く存在する。
具体的には、ハイドロゲルとしては、アガロースゲル、コラーゲンゲル、グルコマンナンゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、フィブリンゲル、ポリビニルアルコールゲル、ポリヒドロキシエチルメタクリレートゲル、シリコーンハイドロゲル、ポリビニルピロリドンゲル、ポリエチレングリコールゲル、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ゲル、アルギン酸ゲル、カラギーナンゲル、キトサンゲル、ポリNイソプロピルアクリルアミドゲル、アクリル酸ゲル、ポリスチレンスルホン酸ゲル又はこれらの2つ以上の混合物(複合ゲル)を挙げることができる。例えば、ポリアクリルアミド及びポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸によるダブルネットワークゲルは強靭であるため大変形が可能である。
多孔質体は、本発明の効果が得られる限りにおいて、多孔質体を構成する材料以外の材料を含むことができる。具体的には、細胞、タンパク質(抗体、抗原、酵素、細胞成長因子など)、DNAやRNAなどの核酸、ペプチド分子、マイクロ・ナノ粒子、蛍光・りん光分子、酸化還元剤、等が挙げられる。例えば、細胞、タンパク質、ペプチド分子、核酸を含む多孔質体は、それらを薬剤とした薬剤投与システムとして利用できる。マイクロ・ナノ粒子は、それらを架橋点とすることで多孔質体を強靭化する。蛍光・りん光分子は、その化学応答性を利用し多孔質体にセンサ機能を付与するのに利用できる。また、酸化還元剤、酵素や抗体等のタンパク質は、その反応を利用した多孔質体の構造制御に利用できる。
多孔質体の含水率は、特に限定されるものではないが、60~99.5質量%が好ましく、より好ましくは70~99質量%であり、更に好ましくは80~99質量%である。

【0017】
(導電性高分子接着層)
導電性高分子接着層は、前記金属電極、カーボン電極、又は伸縮性電極と、多孔質体とを結合させている層である。導電性高分子が電極から重合により多孔質体の内部に伸長することにより、前記電極と多孔質体とを強固に結合させている(図19)。
導電性高分子接着層に含まれる導電性高分子は、特に限定されるものではないが、ポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)(以下、PEDOTと称することがある)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリビチオフェン、ポリイソチオフェン、ポリドデシルチオフェン、ポリイソナイトチオフェン、ポリ-3-ヘキシルチオフェン、ポリアニオン、ポリイソチアナフテン、ポリチアジル、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレスルフィド、又はその2つ以上の混合物を挙げることができ、好ましくはポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)、ポリピロールである。

【0018】
例えば、前記PEDOTは、以下の式(1)で表される化合物である。
【化1】
JP2014157550A1_000003t.gif
PEDOTは、thiopheneの3位と4位に電子供与性のアルコキシ鎖が導入されたモノマーから構成される導電性高分子である。PEDOTの重合度はそれほど大きくなく5~10くらいで、従って分子量も1000~2000程度である。しかし、導電性は重合度の高いポリアニリンやポリピロールと比較して高いと言う性質を有している。

【0019】
(導電性高分子重合層)
本発明の多孔質基板電極体は、電極表面に導電性高分子重合層を含んでもよい。導電性高分子重合層を有することによって、電極の分極が起こり難くなり、電気分解によるガス発生などが細胞や組織を傷害することを防ぐことができる。
本明細書において「電極表面」とは、電極が導電性高分子で接着されている導電性高分子接着層の反対側の面を意味する。
導電性高分子重合層に用いる導電性高分子は、前記の導電性高分子接着層に用いるものを、同様に用いることができ、具体的には、限定されるものではないが、ポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリビチオフェン、ポリイソチオフェン、ポリドデシルチオフェン、ポリイソナイトチオフェン、ポリ-3-ヘキシルチオフェン、ポリアニオン、ポリイソチアナフテン、ポリチアジル、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレスルフィド、又はその2つ以上の混合物を挙げることができ、好ましくはポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン)、ポリピロール、又はポリアセチレンである。

【0020】
(乾燥)
本発明の多孔質基板電極体は、乾燥させて体積を小さくし、それを水性液に浸漬することにより、元に体積に戻すことができる。特に、伸縮性電極を用いた多孔質基板電極体は、電極に伸縮性があるため、高い収縮率で収縮させ、そして復元させることが可能である。

【0021】
(滅菌)
本発明の多孔質基板電極体は、滅菌して用いることができる。滅菌方法としては、特に限定されるものではないが、高温高圧の飽和水蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)、ガス滅菌、煮沸滅菌、又は薬剤(例えば、アルコール、又は次亜塩素)による滅菌、をあげるこことができる。これらの滅菌方法は、多孔質基板電極体の用途に応じて、適宜使い分けることができる。
実施例に示すように、オートクレーブによって滅菌した多孔質基板電極体を用いて、その表面で細胞を培養することが可能である。

【0022】
[2]多孔質基板電極体の製造方法
本発明の多孔質基板電極体の製造方法は、(1)電極形成用基材に電極を形成する工程、(2)電極形成用基材に形成された電極に接触するように、多孔質体を形成する工程、(3)導電性モノマーを含む電解質液中で電解重合を行い、電極から多孔質体中に導電性高分子接着層を形成させることによって、電極と多孔質体とを接着する工程、(4)電極形成用基材と、電極とを剥離する工程、を含み、好ましくは(5)電極表面に、導電性モノマーを含む電解質液を接触させ、電解重合により、前記電極表面に導電性高分子重合層を形成する工程、を更に含む。

【0023】
(1)電極形成工程
(電極形成用基板)
電極形成用基板は、金属電極、又は伸縮性電極パターンを形成することができる限りにおいて、限定されるものではない。
素材としては、例えばガラス、プラスチック、布、又は木材を挙げることができるが、平坦であり電極との密着性が低いという点でガラスが好ましい。
電極形成用基材の形状も、限定されるものではなく、板状の基材に電極パターンを形成してもよく、棒状の基材の表面に電極パターンを形成してもよい。

【0024】
(金属電極)
金属電極の材料としては、前記「[1]多孔質基板電極体」の項に記載の金属電極材料を用いることができる。

【0025】
金属電極パターンの形成方法も、本技術分野における従来公知の方法を限定することなく、用いることができる。例えば、エッチング法による電極パターンの形成について、図1に従って説明する。
(a)スライドガラスを適当なサイズに切り分け、アセトン、86%エタノール IP、蒸留水の順で15分ずつ超音波洗浄する。
(b)スパッタ蒸着装置を用いて金属(例えば、Au)を成膜する。
(c)金属を成膜したガラス基板に、ポジ型フォトレジストをスピンコート(例えば、4000rpm、30sec)する。
(d)CADなどを用いて設計した電極パターンを、レーザー描画装置を用いてエマルジョンマスクに描画し、現像してフォトマスクを得る。ガラス基板とフォトマスクを重ね、高圧水銀灯で露光(例えば、50mJ cm-2)する。
(e)現像液を用いて現像し、蒸留水で洗浄する。
(f)ガラス基板をエッチング液(例えば、金エッチング液)に浸し、電極パターン以外の金属(Au)を除去する。
(g)アセトンを用いて、フォトレジストを除去し、ガラス基板表面に電極パターンを形成する。
なお、スライドガラスとの結合力の強い金属電極の場合は、スライドグラスに予め、ポリビニルアルコールを塗布することにより、後述の剥離を容易に行うことができる。

【0026】
(カーボン電極)
カーボン電極の材料としては、前記「[1]多孔質基板電極体」の項に記載のカーボン電極の材料を用いることができる。
カーボン電極の形成方法は、特に限定されるものではないが、以下のように形成することができる。
(a)スライドガラスを適当なサイズに切り分け、アセトン、86% エタノール-イソプロパノール、蒸留水の順で15分ずつ超音波洗浄し、2-プロパノール中に保管する。(b)スライドガラスに10重量%のポリビニルアルコール水溶液をスピンコート(1000rpm、20秒)し、70℃オーブンで基板を加熱し、溶媒を蒸発させてポリビニルアルコール犠牲層を形成する。
(c)スライドガラスに厚さ2mmのシリコーンシートで作製した四角形の枠を設置する。
(d)グラファイト溶液を、1-メチル-2-ピロリドンに25mg/mL グラファイト粉末(粒径3μm)を添加し調製する。
(e)グラファイト溶液を200μL、前記の枠に流し込み、80℃オーブンで1時間溶媒を蒸発させ、その後、枠を外し、グラファイト電極パターン基板を得る。

【0027】
(伸縮性電極)
伸縮性電極の材料としては、前記「[1]多孔質基板電極体」の項に記載の伸縮性電極の材料を用いることができる。
伸縮性電極の形成方法は、特に限定されるものではない。例えば、ウレタンの形成方法は、図4のa,bに記載の様にして形成することができる。
(a)スライドガラスを適当なサイズに切り分け、アセトン、86% エタノール-イソプロパノール、蒸留水の順で15分ずつ超音波洗浄し、2-プロパノール中に保管する。(b)スライドガラスに10重量%のポリビニルアルコール水溶液をスピンコート(1000rpm、20秒)し、70℃オーブンで基板を加熱し、溶媒を蒸発させてポリビニルアルコール犠牲層を形成する。
(c)重合溶液を、1-ブタノールを2mL、1M EDOTモノマー溶液を0.22mL、400mM p-トルエンスルホン酸鉄(III)含有1-ブタノール溶液を6.5mL(EDOT酸化剤、ドーパントイオン)、10重量%ポリウレタン/テトラヒドロフラン溶液を22.5mL、アニソール(溶媒の蒸発抑制用)を4.17mL混合して調製する。
(d)マイクロインジェクター(EzROBO-Ace ST4040、岩下エンジニアリング)を用いてスライドガラスに上記の重合溶液をライン形状(幅5mm、長さ10mm)に塗布し、65℃のホットプレートで10分間加熱し、溶媒の蒸発と重合反応の進行を促すことで導電性ウレタンパターンを形成する。

【0028】
(2)多孔質体形成工程
多孔質体形成工程において、多孔質体は、電極形成用基材に形成された電極に接触するように形成する。多孔質体の形成は、電極が多孔質体に配設されるように形成してもよく、電極が多孔質体埋設されるように形成してもよい。また、既に形成された多孔質体を電極に接触するように配置してもよい。
多孔質体としては、前記「[1]多孔質基板電極体」の項に記載の多孔質体の材料を用いることができる。
多孔質体の形成は、例えばスライドグラス上に電極パターンが形成されている場合は、その電極パターンを囲むように、シリコーンシートなどで作製した枠を設置する。その枠の中に多孔質体の材料となる化合物を含む液を流しこみ、ゲル化させることによって多孔質体を形成することができる。
ゲルの含水率はそれぞれの材料によって適宜決定することが可能であり、特に限定されるものではないが、例えば60~99.5質量%が好ましく、より好ましくは70~99質量%であり、更に好ましくは80~99質量%である。

【0029】
多孔質体のゲル化は、公知の方法に従って、行うことができる。すなわち、それぞれの材料のゲル化方法に従って行うことができる。以下に、代表的な材料のゲル化方法の例を示す。

【0030】
(アガロース)
アガロースは、例えば100℃で、2.8重量%程度の濃度で緩衝液に溶解し、得られたゾルを冷却することによって、40℃程度でゲル化することができる。

【0031】
(グルコマンナン)
グルコマンナンは、アルカリ溶液中でゲル化する。従って、例えばグルコマンナン粉末を1.5重量%程度で水に溶解させた後、10重量%のNaCO水溶液を、4.5重量%添加し、素早くかき混ぜ、枠に流し込む。85℃で2時間加熱することによって、グルコマンナンゲルを得ることができる。

【0032】
(ポリビニルアルコール)
ポリビニルアルコール粉末を、加熱した蒸留水に加えて溶解し、10重量%の水溶液とする。その水溶液に3重量%となるようにグルタルアルデヒドを加えて十分に撹拌する。1、500rpmで3分間遠心し脱泡する。1MのHCl水溶液を1:50の割合で加えて素早く撹拌し、枠に流しこみ、12時間静置することによってゲル化することができる。

【0033】
(ポリアクリルアミド)
蒸留水にアクリルアミドとN,N’-メチレンビスアクリルアミドをそれぞれ500mg/mL、25mg/mLになるように添加し、50%(w/v)のモノマーストック溶液を調整する。ストック溶液を10倍に希釈し、APS及びTEMEDを、それぞれ0.4容量%及び0.1容量%になるように添加してよく混合する。枠に流し込み、室温で2時間静置することによりゲル化することができる。

【0034】
(フィブリン)
フィブリノーゲンを任意の溶媒(水、培地、PBS等)に加え、30mg/mLの溶液とする。トロンビンを任意の溶媒(水、培地、PBS等)に加え、20Units/mLの溶液とする。枠に等量ずつ流し込み、37℃で2~4時間インキュベートすることによって、ゲル化することができる。

【0035】
(3)接着工程
接着工程は、導電性モノマーを含む電解質液中で電解重合を行い、電極から多孔質体中に導電性高分子接着層を形成させることによって、電極と多孔質体とを接着する工程である。

【0036】
(導電性高分子のモノマー)
導電性高分子のモノマーとしては、前記「[1]多孔質基板電極体」の項に記載の導電性高分子の原料となるモノマーを用いることができる。具体的には、3,4エチレンジオキシチオフェン(以下、EDOTと称することがある)、アセチレン、ピロール、チオフェン、ビチオフェン、イソチオフェン、ドデシルチオフェン、イソナイトチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、アニオン、イソチアナフテン、チアジル、フェニレン、フルオレン、ジアセチレン、アセン、パラフェニレン、チエニレンビニレン、フェニレスルフィド、又はその混合物を挙げることができる。
例えば、前記EDOTは、下記式(2)で表される化合物である。
【化2】
JP2014157550A1_000004t.gif

【0037】
接着工程においては、モノマーを溶媒に溶解し、多孔質体のゲルに加え、図2に示すように電極に電位を印加することによって、導電性高分子を電解重合する。
溶媒中のモノマーの濃度は、適宜決定することができるが、例えば1~500mMで行うことができ、好ましくは10~100mMである。
電解重合で印加する電位も、適宜決定することができるが、好ましくは0.5~1.5Vである。

【0038】
通常の電解酸化重合は溶液中で行い、作用電極に対して重合電位を印加した瞬間から重合が開始する。しかしながら、接着工程における電解重合は、ハイドロゲル内部を導電性高分子のモノマーが拡散し、作用電極表面に到達するまでに時間がかかるため、電位の印加と重合開始とにタイムラグが生じる。例えば、厚さ2mmのアガロースを用いた場合は電位の印加から重合が開始するまでに約10分を要する。この時間はゲルの厚みや種類によって異なるため、重合量の制御はクーロンメータを用いて行うことが好ましい。
重合量は、電極と多孔質体とが実質的に結合される限りにおいて、限定されるものではないが、例えば100mC/cm~300mC/cmが好ましい。

【0039】
(4)剥離工程
剥離工程は、電極形成用基材から電極を剥離する工程である。
例えば、金属電極としてAuを用いて、ガラス基板にAu電極パターンを形成した場合、前記接着工程におけるAu電極と多孔質体との結合力が、Au電極とガラス基板の結合よりも強いため、ガラス基板から多孔質体を剥離することによって、多孔質基板電極体をガラス基板から剥離することができる。

【0040】
また、ガラス基板との結合が強い金属電極、カーボン電極又は伸縮性電極を用いた場合は、ガラス基板に、例えばポリビニルアルコールを、予め塗布し、電極パターンを形成することによって、剥離を容易にすることができる。

【0041】
(5)導電性高分子重合層形成工程
導電性高分子重合層形成工程は、電極表面に、導電性高分子のモノマーを含む電解質液を接触させ、電解重合により、前記電極表面に導電性高分子重合層を形成する工程である。
本工程では、モノマーを溶媒に溶解し、それを電極表面に接触させる。そして電極に電圧を印加することにより、電極表面に導電性高分子を重合させる。
モノマーの濃度は、適宜決定することができるが、例えば1~500mMで行うことができ、好ましくは10~100mMである。用いる容量に対する溶媒量も適宜決定することができる。電解重合で印加する電位も、適宜決定することができるが、好ましくは0.5~1.5Vである。本工程で使用する導電性高分子のモノマーは、前記接着工程で用いた導電性高分子のモノマーを用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1》
本実施例では、電極形成用基材としてスライドガラスを用い、多孔質体としてポリアクリルアミドを用い、そして電極材料として金を用いて多孔質基板電極体を作製した。
(1)電極パターンの形成(電極形成工程)
AutoCAD 2990(AutoDesk)を用いて電極パターンを設計した。レーザー描画装置(Heidelberg Instruments)を用い、エマルジョンマスク(2 inch、FUJIFILM)にパターンを描画し、現像してフォトマスクを得た。スライドガラスを適当なサイズに切り分け、アセトン、86%エタノール 、イソプロパノール、蒸留水の順で15分ずつ超音波洗浄し、2-プロパノール中に保管した。スパッタ蒸着装置(L-350-C、ANELVA)を用いて、Au(300nm)を成膜した。Auを成膜したガラス基板にポジ型フォトレジスト(AZ1500、38cp、AZ Electronic Materials)をスピンコート(4000rpm、30sec)した、ガラス基板とフォトマスクを重ね、高圧水銀灯で露光(50 mJ cm-2)した。専用現像液(AZ 300MIF developer、AZ Electronic Materials)で2分間現像した後、蒸留水で洗浄(30sec×2)した。ガラス基板を金エッチング液(AURUM-302、関東化学株式会社)に浸し、電極パターン以外のAuを除去した。アセトンに浸してフォトレジストを除去し、ガラス基板表面に電極パターンを得た。
【実施例】
【0043】
(2)多孔質体形成工程
前記電極パターンを形成したガラス基板の上に、電極パターンを囲むように厚さ2mmのシリコーンシートで作製した四角形の枠を設置した。
一方、アクリルアミド溶液は、以下のように調製した。蒸留水にアクリルアミドを500mg/mL、N,N’-メチレンビスアクリルアミドを25mg/mLになるように添加し、50%(w/v)のモノマーストック溶液を調整した。ストック溶液を10倍に希釈し、APSとTEMEDをそれぞれ0.4容量%、0.1容量%になるように添加してよく混合した。混合液を前記の枠に流し込み、室温で2時間静置することによって、アクリルアミドを重合させ、アクリルアミドゲルを形成させた。
【実施例】
【0044】
(3)導電性高分子接着層の形成(接着工程)
蒸留水中に、EDOTモノマー50mM、及びLiClO(ドーパントイオン)100mMとなるように添加し、重合溶液を調整した。重合溶液を多孔質体に、0.2mL滴下し、Auの電極と重合溶液とに、1.0V(vs.Ag/AgCl)の電位を印加して、重合量300mC/cm、電解酸化重合を行った。
【実施例】
【0045】
(4)剥離工程
PEDOT重合の終了後に、アクリルアミドゲルを基板から剥離し、金がパターニングされたアクリルアミドゲル基板電極体を得た。
得られた多孔質基板電極体を図5(a)に示す。
【実施例】
【0046】
《実施例2》
本実施例では、電極形成用基板としてスライドグラスを用い、多孔質体としてアガロースを用い、そして電極材料として金を用いて多孔質基板電極体を作製した。
多孔質体として、アクリルアミドに代えてアガロースを用いてことを除いて、実施例1の操作を繰り返した。アガロース多孔質体形成工程は、以下の通り行った。
【実施例】
【0047】
(2)多孔質体形成工程
前記電極パターンを形成したガラス基板の上に、電極パターンを囲むように厚さ2mmのシリコーンシートで作製した四角形の枠を設置した。
一方、アガロース溶液は、以下のように調製した。蒸留水にアガロース粉末を2.8重量%になるように添加し、100℃で加熱溶解し、アガロースのゾルを調整した。アガロースのゾルを前記の枠に流し込み、40℃以下まで冷却することによって、アガロースゲルを形成させた。
得られた多孔質基板電極体を図5(b)に示す。
【実施例】
【0048】
《実施例3》
本実施例では、電極形成用基板としてスライドガラスを用い、多孔質体としてアガロースを用い、そして電極材料としてグラファイトを用いて多孔質基板電極体を作製した。
(1)電極パターンの形成(電極形成過程)
スライドガラスを適当なサイズに切り分け、アセトン、86%エタノール-イソプロパノール、蒸留水の順で15分ずつ超音波洗浄し、2-プロパノール中に保管した。スライドガラスに10重量%のポリビニルアルコール水溶液をスピンコート(1000rpm、20秒)した。70℃オーブンで基板を加熱し、溶媒を蒸発させてポリビニルアルコール犠牲層を形成した。
スライドガラスに厚さ2mmのシリコーンシートで作製した四角形の枠を設置した。グラファイト溶液は、1-メチル-2-ピロリドンに25mg/mLグラファイト粉末(粒径3μm)を添加し調製した。前記のグラファイト溶液を200μL、前記の枠に流し込み、80℃オーブンで1時間溶媒を蒸発させた。その後、枠を外し、グラファイト電極パターン基板を得た。
【実施例】
【0049】
(2)多孔質体形成工程
スライドガラス上に、厚さ2mmのシリコーンシートで作製した四角形の枠を設置した。一方、アガロース溶液は、以下のように調製した。蒸留水にアガロース粉末を2.8重量%になるように添加し、100℃で加熱溶解し、アガロースのゾルを調製した。アガロースのゾルを前記の枠に流し込み、40℃以下まで冷却することによって、アガロースゲルを形成した。
【実施例】
【0050】
(3)導電性高分子接着層の形成
重合溶液は、蒸留水中にEDOTモノマーを50mM、及びLiClO4(ドーパントイオン)を100mMとなるように添加し、調製した。前記のアガロースゲルは適当なサイズに切り分け、重合溶液に30分浸漬した。
前記のアガロースゲルをグラファイト電極パターン上に貼り、重合溶液を0.2mL滴下した。グラファイトの電極と重合溶液とに1.2V(vs.Ag/AgCl)の電位を印加して、重合量300mC/cm、電解酸化重合を行った。
【実施例】
【0051】
(4)剥離工程
PEDOT重合終了後、基板を室温の蒸留水に5分間浸漬し、ポリビニルアルコール犠牲層を溶解させた。アガロースゲルを基板から剥離し、グラファイト電極がパターンされたアガロースゲル基板電極体を得た。
得られた多孔質基板電極体を図6に示す。
【実施例】
【0052】
《実施例4》
本実施例では、電極形成用基板としてスライドガラスを用い、多孔質体としてポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(PAMPS)ゲルとポリアクリルアミドゲルから成るダブルネットワークゲルを用い、そして電極材料として導電性ウレタンを用いて多孔質基板電極体を作製した。
(1)電極パターンの形成(電極形成工程)
スライドガラスを適当なサイズに切り分け、アセトン、86% エタノール-イソプロパノール、蒸留水の順で15分ずつ超音波洗浄し、イソプロパノール中に保管した。スライドガラスに10重量%のポリビニルアルコール水溶液をスピンコート(1000rpm、20秒)し、70℃オーブンを用いた基板の加熱により溶媒を蒸発させてポリビニルアルコール犠牲層を形成した。
重合溶液は、1-ブタノールを2mL、1M EDOTモノマー溶液を0.22mL、400mM p-トルエンスルホン酸鉄(III)含有1-ブタノール溶液を6.5mL(EDOT酸化剤、ドーパントイオン)、10重量%ポリウレタン/テトラヒドロフラン溶液を22.5mL、アニソール(溶媒の蒸発抑制用)を4.17mL混合して調製した。マイクロインジェクター(EzROBO-Ace ST4040、岩下エンジニアリング)を用いてスライドガラスに上記の重合溶液をライン形状(幅5mm、長さ10mm)に塗布した。65℃のホットプレートで10分間加熱し、溶媒の蒸発と重合反応の進行を促すことで導電性ウレタンパターンを形成した。
【実施例】
【0053】
(2)多孔質体形成工程
2種類のモノマー溶液は、以下のように調整した。モノマー溶液1は、蒸留水に2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を1M、N,N’-メチレンビスアクリルアミドを40mM、APSを0.9mM、2-オキソグルタル酸(光重合開始剤)を2mMになるように添加し、よく混合した。モノマー溶液2は、蒸留水にアクリルアミドを1M,N,N’-メチレンビスアクリルアミドを1mM、APSを0.4mM、2-オキソグルタル酸を0.5mMになるように添加し、よく混合した。
スライドガラスに厚さ0.5mmのシリコーンシートで作製した四角形の枠を設置した。前記のモノマー溶液1を前記の枠に流し込み、スライドガラスで蓋をした状態で紫外線(波長256nm、出力8W)を室温で6時間照射しゲル化した。得られたゲルを前記のモノマー溶液2に浸漬し、遮光した状態で4℃で24時間、モノマー溶液2をゲルに染み込ませた。その後、再度紫外線(波長256nm、出力8W)を室温で6時間照射し、モノマー溶液2を重合することでダブルネットワークゲルを得た。
【実施例】
【0054】
(3)導電性高分子接着層の形成(接着工程)
ダブルネットワークゲルを前記の導電性ウレタンパターン基板に設置した。重合溶液は、蒸留水中に、EDOTモノマーを50mM、LiClO4(ドーパントイオン)を100mMとなるように添加して調製した。重合溶液を多孔質体に0.5 mL滴下し、導電性ウレタンと重合溶液に、1.2V(vs.Ag/AgCl)の電位を印加して、重合量300mC/cm、電解酸化重合を行った。
【実施例】
【0055】
(4)剥離工程
PEDOT重合後、基板を100℃の蒸留水に30分間浸漬し、ポリビニルアルコール犠牲層を溶解させた。ダブルネットワークゲルを基板から剥離し、導電性ウレタンがパターニングされたダブルネットワークゲル基板電極体を得た。
得られた多孔質基板電極体を伸縮実験の結果を図7(b)に示す。
【実施例】
【0056】
《実施例5》
本実施例では、金を電極材料とした多孔質基板電極体を用い、電極表面を導電性高分子PEDOTで被覆した。実施例1、あるいは実施例2の工程後に以下の操作を行った。
(1)導電性高分子重合層形成工程
重合溶液は、蒸留水中にEDOTモノマーを50mM、及びLiClO4(ドーパントイオン)を100mM添加して調製した。重合溶液を多孔質基板電極体のAu電極表面に100μL滴下し、電極と重合溶液とに1.0V(vs.Ag/AgCl)の電位を印加して、重合量150mC/cm、電解酸化重合を行い、導電性高分子重合層を電極表面に形成した。
得られた多孔質基板重合電極体を図9(a)に示す。
【実施例】
【0057】
(2)インピーダンス計測
前記の多孔質基板電極体のACインピーダンススペクトルを、0.1MのLiClO水溶液中で±5mVの強度で測定した。結果を図9(b)に示す。
【実施例】
【0058】
《実施例6》
本実施例では、電極形成用基板としてスライドガラスと針を用い、多孔質体としてダブルネットワークゲルを用い、そして電極材料として導電性ウレタンを用いて多孔質基板電極体を作製した。
(1)電極パターンの形成(電極形成工程)
スライドガラスを適当なサイズに切り分け、アセトン、86% エタノール-イソプロパノール、蒸留水の順で15分ずつ超音波洗浄し、イソプロパノール中に保管した。スライドガラスに10重量%のポリビニルアルコール水溶液をスピンコート(1000rpm、20秒)し、70℃オーブンを用いた基板の加熱により溶媒を蒸発させてポリビニルアルコール犠牲層を形成した。
重合溶液は、実施例4(1)記載の溶液を使用した。マイクロインジェクター(EzROBO-Ace ST4040、岩下エンジニアリング)を用いて前記のスライドガラスに重合溶液を1cm角の四角形に塗布した。65℃のホットプレートで10分間加熱し、溶媒の蒸発と重合反応の進行を促すことで導電性ウレタンを得た。
基板を100℃の蒸留水に30分浸漬し、ポリビニルアルコール犠牲層を溶解させ、導電性ウレタンを基板から剥離した。直径1.4mmの針に5重量%のポリビニルアルコール溶液を犠牲層としてディップコートした後、前記の導電性ポリウレタンを巻き付け、針状導電性ポリウレタンを得た。
【実施例】
【0059】
(2)導電性高分子接着層の形成(接着工程)
多孔質体は、実施例4(2)記載のダブルネットワークゲルを用いた。重合溶液は、蒸留水中に、EDOTモノマー50mM、及びLiClO4(ドーパントイオン)100mMとなるように添加して調製した。前記の針状導電性ウレタンをダブルネットワークゲルに刺した状態で重合溶液に浸漬し、針と重合溶液とに、1.2V(vs.Ag/AgCl)の電位を印加して、重合量300mC/cm、電解酸化重合を行った。
【実施例】
【0060】
(3)剥離工程
PEDOT重合後、多孔質体を100℃の蒸留水に30分浸漬し、ポリビニルアルコール犠牲層を溶解させ、導電性ウレタンを針から剥離した。針を多孔質体から抜き、ダブルネットワークゲル基板電極体を得た。
得られたキュービック状の多孔質基板電極体の圧縮実験の結果を図11に示す。
【実施例】
【0061】
《参考例1》
本参考例では、実施例1で得られた多孔質体基板電極体及び多孔質細胞保持体を用いて蛍光試薬Propidium Iodide(PI)をエレクトロポレーションで導入した。PIは細胞膜不透過性の蛍光試薬である。
(1)細胞ゲルシートの作製(細胞保持体取得工程)
FBM培地にフィブリノーゲンとアプロチニンをそれぞれ30mg/mL及び1mg/mLになるように添加し、フィブリノーゲン溶液を調整した。FBM培地にトロンビンを20Units/mLになるように添加し、トロンビン溶液を調整した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞NHDF-Neo株を、培養用培地(FBM培地(タカタバイオ株式会社)500mLに、hFGF-Bを0.5mL、FBSを10mL、GA-1000(50mg/mLゲンタマイシン及び50μg/mLアンホテリシンB)を0.5mL添加)を用いて、24ウェルプレートで、コンフルエントになるまで培養した。細胞を傷つけないように注意しながらプレート内の培地を抜いた。ピペットを用いてPBS(-)を静かに注ぎ、細胞を洗浄した。PBS(-)を抜いた後、細胞上に前記のフィブリノーゲン溶液及びトロンビン溶液を等量添加した。4時間、37℃でインキュベートし、ゲル化およびゲル表面への細胞の付着を促した。細胞培養基板(24ウェルプレート)からフィブリンゲルを剥離し、細胞が表面に固定化され多孔質細胞保持体(細胞ゲルシート)を得た。
【実施例】
【0062】
(2)PIの導入(導入工程)
PI溶液は、エレクトロポレーション用バッファ(Hyposmolar buffer、eppendorf)にPIを1.0mg/mLになるように添加することによって作製した。得られたPI溶液は、使用までアルミホイルで遮光して37℃のウォーターバス内で保温した。
前記参考例1で得られた多孔質体基板電極体(ハイドロゲル基板電極)を、FBM培地(タカラバイオ株式会社)に浸漬し、37℃で2時間インキュベートした。多孔質体基板電極体上に、前記PI溶液を、数滴、滴下した。その上から、前記工程(1)で得られた多孔質細胞保持体(細胞ゲルシート)の細胞面が、多孔質体基板電極体の電極面に密着するように貼り合わせた。エレクトロポレーター(CUY21EDITII、株式会社ベックス)電極体の金電極に接続し、80V、0.1msec、及び30パルス(1Hz周期)の条件で、電気パルスを印加した。
生細胞を染色するために、細胞ゲルシート上からCalcein-AM溶液を滴下し、インキュベータ内で1時間培養した。蛍光顕微鏡を用いて細胞の蛍光観察を行い、PIの取り込みの評価と生細胞判定を行った。結果を図12に示す。
【実施例】
【0063】
図12(E)に示すように、電極間の細胞にPI由来の赤色蛍光が観察され、PIが細胞内に取り込まれたことが分かる。図12(F)は、Calcein-AMを生細胞に取り込ませ、PI由来の赤色蛍光と、Calcein-AM由来の緑色蛍光を同時に観察した蛍光写真である。電極と電極の中間に位置する細胞に、赤色蛍光及び緑色蛍光が確認され、生細胞にPIを導入されたことが分かる。
但し、電極付近の細胞、及び図12(D)に見られる気泡に近い細胞は、緑色蛍光が弱く、死細胞であると考えられる。細胞の生存率は約50%程度であった。
【実施例】
【0064】
《参考例2》
本参考例では、実施例5で製造した、多孔質基板重合電極体を用いて、付着細胞へのPIの導入を行った。
実施例1で製造された多孔質基板電極体に代えて、実施例5で製造された多孔質基板重合電極体を用いたこと、及びパルス条件を60V、0.1msec、及び30パルス(1Hz周期)としたことを除いては、参考例1の操作を繰り返した。結果を図13に示す。
電極間の細胞にPI由来の赤色蛍光が観察され、PIが細胞内に取り込まれた。また図13(C)の写真から分かるように電極付近での、気泡の発生がなかった。また、図13(E)は、Calcein-AMを生細胞に取り込ませ、PI由来の赤色蛍光とCalcein-AM由来の緑色蛍光を同時に観察した蛍光写真である。PIが導入された細胞のほとんどが生細胞であった。生存率は80%を超えていた。すなわち、多孔質基板重合電極体を用いることにより、細胞の生存率を更に上昇させることができる。
【実施例】
【0065】
《実施例7》
本実施例では、電極形成用基板としてスライドガラスを用い、多孔質体としてポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(PAMPS)ゲルとポリアクリルアミドゲルから成るダブルネットワークゲルを用い、そして電極材料として導電性ウレタンを用いて多孔質基板電極体を作製した。電極パターンは、スピンコーター及びカッティングプロッターを用いて作製した。
(1)電極パターンの形成(電極形成工程)
スライドガラスを適当なサイズに切り分け、アセトン、86% エタノール-イソプロパノール、蒸留水の順で15分ずつ超音波洗浄し、イソプロパノール中に保管した。スライドガラスに10重量%のポリビニルアルコール水溶液をスピンコート(1000rpm、20秒)し、70℃オーブンを用いた基板の加熱により溶媒を蒸発させてポリビニルアルコール犠牲層を形成した。
重合溶液(EDOT/PU溶液)は、1-ブタノールを2mL、1M EDOTモノマー溶液を0.22mL、400mM p-トルエンスルホン酸鉄(III)含有1-ブタノール溶液を6.5mL(EDOT酸化剤、ドーパントイオン)、10重量%ポリウレタン/テトラヒドロフラン溶液を22.5mL、アニソール(溶媒の蒸発抑制用)を4.17mL混合して調製した。スピンコーターを用いてスライドガラスに上記の重合溶液を、750rpm、30秒で塗布した。100℃のホットプレートで10分間加熱し、溶媒の蒸発と重合反応の進行を促すことで導電性ウレタン(PEDOT/PU)の薄膜を形成した。
カッティングプロッター(Craft ROBO Pro, Graphtec, Japan)で所望のパターンを切り出した。PEDOT/PU薄膜の余分な部分は水中でピンセットを用いて除去し、PEDOT/PUの配線パターンを得た。
【実施例】
【0066】
実施例4の「(2)多孔質体形成工程」、「(3)導電性高分子接着層の形成(接着工程)」、及び「(4)剥離工程」の操作を繰り返して、多孔質基板電極体を得た(図14)。
【実施例】
【0067】
《実施例8》
本実施例では、電極形成用基板としてスライドガラスを用い、インクジェットプリンターを用いて電極パターンの作製を行った(図15)。
(1)電極パターンの形成(電極形成工程)
スライドガラスを適当なサイズに切り分け、アセトン、86% エタノール-イソプロパノール、蒸留水の順で15分ずつ超音波洗浄し、イソプロパノール中に保管した。スライドガラスに10重量%のポリビニルアルコール水溶液をスピンコート(1000rpm、20秒)し、70℃オーブンを用いた基板の加熱により溶媒を蒸発させてポリビニルアルコール犠牲層を形成した。
重合溶液(EDOT/PU溶液)は、1-ブタノールを2mL、1M EDOTモノマー溶液を0.22mL、400mM p-トルエンスルホン酸鉄(III)含有1-ブタノール溶液を6.5mL(EDOT酸化剤、ドーパントイオン)、10重量%ポリウレタン/テトラヒドロフラン溶液を22.5mL、アニソール(溶媒の蒸発抑制用)を4.17mL混合して調製した。インクジェットプリンター(SIJ Technology,PR150)にEDOT/PU溶液を充填し、100℃のホットプレート上のスライドガラス上へ、配線パターンを描画し、PEDOT/PUの配線パターンを得た。
【実施例】
【0068】
《実施例9》
本実施例では、実施例7で得られた多孔質基板電極体の乾燥を行った。
多孔質基板電極体を25℃の空気中で、12時間放置して乾燥させた。多孔質基板電極体は1/4の体積に縮んだ。乾燥した多孔質基板電極体を水に浸漬することによって、5分で元の体積に回復した(図16)。多孔質基板電極体の電極の剥離は起こらなかった。また、通電を行ったところ、抵抗の上昇も見られなかった。
【実施例】
【0069】
《実施例10》
本実施例では、実施例7で得られた多孔質基板電極体の滅菌を行った。
多孔質基板電極体を、高温高圧(121℃,2気圧)の飽和水蒸気で20分間の加熱処理を行った。多孔質基板電極体の電極の剥離は起こらなかった。また、滅菌前の多孔質基板電極体(図17a)及び滅菌前の多孔質基板電極体(図17b)で、導電率は変化しなかった(図17c)。
【実施例】
【0070】
《実施例11》
本実施例では、実施例10で滅菌した多孔質基板電極体上で、細胞培養を行った。
多孔質基板電極体の表面でC2C12細胞(筋肉細胞)又はNG108-15細胞(運動神経細胞)の培養を行い、その電極表面への接着性を評価した。結果を図18に示す。細胞吸着タンパク質や接着因子を用いていないにも拘らず、どちらの細胞もほぼ全く死滅することなく多孔質基板電極体の表面で接着及び増殖していた。また、この培養状態を数日間維持し続けても、死細胞の増加は観察されなかった。従って、本発明の多孔質基板電極体は、細胞に対して優れた生体適合性(非毒性)を有していた。図の矢印で示した通り、神経細胞の場合には隣接する細胞へ向かって神経突起を長く伸ばす様子も確認でき、多孔質基板電極体が細胞間相互作用に対しても非常に有利な基板として利用可能であることも同時に分かった。
【実施例】
【0071】
《導電性高分子接着層の撮影》
実施例7で得られた多孔質基板電極体の電極と、ハイドロゲルとの界面を光学顕微鏡で撮影した。図19に示すように電極と、ハイドレオゲルとが、導電性高分子接着層によって、強固に接着していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の多孔質基板電極体は、エレクトロポレーション用の電極、体表に貼って用いる診断治療器具の電極、体内埋め込み式の神経又は筋肉の計測制御の電極、神経又は筋肉細胞の培養用の電極、又は体内に埋め込む圧力・ひずみセンサの電極として用いることができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18