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明細書 :n型熱電変換材料および熱電変換素子、ならびにn型熱電変換材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月2日(2017.2.2)
発明の名称または考案の名称 n型熱電変換材料および熱電変換素子、ならびにn型熱電変換材料の製造方法
国際特許分類 H01L  35/16        (2006.01)
H01L  35/18        (2006.01)
H01L  35/22        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
FI H01L 35/16
H01L 35/18
H01L 35/22
H01L 35/34
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 21
出願番号 特願2015-500316 (P2015-500316)
国際出願番号 PCT/JP2014/053512
国際公開番号 WO2014/126211
国際出願日 平成26年2月14日(2014.2.14)
国際公開日 平成26年8月21日(2014.8.21)
優先権出願番号 2013028394
優先日 平成25年2月15日(2013.2.15)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】野々口 斐之
【氏名】河合 壯
【氏名】足羽 剛児
出願人 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査請求 未請求
要約 優れた熱電変換特性と柔軟性とを兼ね備え、かつ軽量であるn型熱電変換材料を提供する。本発明のn型熱電変換材料は、ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブが不織布状に集積して形成されている。
特許請求の範囲 【請求項1】
ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブが不織布状に集積して形成されていることを特徴とするn型熱電変換材料。
【請求項2】
上記ナローギャップ半導体は、TeおよびSeの少なくとも一方を含んでいる化合物であることを特徴とする請求項1に記載のn型熱電変換材料。
【請求項3】
上記ナローギャップ半導体は、Biを含んでいる化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のn型熱電変換材料。
【請求項4】
上記ナローギャップ半導体は、BiTe、BiSe、またはBiSeTe3-x(0<x<3)であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のn型熱電変換材料。
【請求項5】
上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブは、カーボンナノチューブとともに不織布状に集積されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のn型熱電変換材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のn型熱電変換材料を含んでいることを特徴とする熱電変換素子。
【請求項7】
金属酸塩または金属酸化物が溶解している溶媒に対して、金属塩を加え、ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブを形成する工程と、
上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブを不織布状に集積させる工程と、を含んでいることを特徴とするn型熱電変換材料の製造方法。
【請求項8】
上記金属酸塩または上記金属酸化物はTeまたはSeを含んでいることを特徴とする請求項7に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
【請求項9】
上記金属塩はBiを含んでいることを特徴とする請求項7または8に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
【請求項10】
上記金属酸塩は、NaTe、NaSe、KaTe、KaSe、MgOTe、MgOSe、CaOTe、CaOSe、HTe、HSe、HTeOまたはHSeOであることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
【請求項11】
上記金属酸化物は、TeO、SeO、TeO、SeO、TeまたはSeであることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
【請求項12】
上記ナノワイヤまたはナノチューブを不織布状に集積させる工程の前に、上記ナノワイヤまたはナノチューブを含んでいる溶媒に対してカーボンナノチューブを加える工程を含んでいることを特徴とする請求項7~11のいずれか1項に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
【請求項13】
上記ナノワイヤまたはナノチューブを不織布状に集積させる工程において、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブを含んでいる溶媒を濾過することによって、上記ナノワイヤまたはナノチューブを不織布状に集積させることを特徴とする請求項7~12のいずれか1項に記載のn型熱電変換材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はナノワイヤまたはナノチューブを不織布状に織り込んだn型熱電変換材料、および該熱電変換材料を含んだ熱電変換素子、ならびに該n型熱電変換材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換素子とは、温度差によって物質内に生じる電位差を利用することにより、発電を行うものである。従来は、工業炉等の産業廃熱の有効利用を目指して、その開発が進められてきた。近年、環境発電への要請が高まりつつあるため、自然再生可能エネルギーや排熱から電力を得るものであるCOフリーの発電技術の一つとして、熱電変換材料が注目されている。また一方で、緊急時用、災害時用または医療用の電源として利用するために、小型かつ軽量な熱電変換材料が求められている。また、上記熱電変換材料をウェアラブルデバイスまたはポータブルデバイス等に適用する場合、熱電変換材料を体の形状に沿って密着させ、熱源として体温を利用できることが好ましい。そのため、柔軟性を有する熱電変換材料も求められていた。そこで、屋根、壁、変電所等の産業廃熱および生活廃熱による中低温で動作する柔軟かつ軽量な熱電変換材料の実現が待たれている。
【0003】
しかしながら、従来開発されてきた熱電変換材料は、主に図12に示すようなバルク状の固体材料であった。当該バルク状の固体材料では柔軟性が得られないことから、熱源に密着させることができず、熱伝達の観点から不利である。
【0004】
そこで、柔軟性に関する問題を解決するために、導電性高分子やカーボンナノチューブからなる熱電変換材料が検討されている。例えば、非特許文献1には、ジアルコキシフェニレン単位を含むフェニレンビニレン共重合体にヨウ素をドープすることによって形成されている導電性高分子のフィルムが記載されている。また、非特許文献2には、導電性高分子として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を利用することが記載されている。
【0005】
さらに非特許文献3には、PEDOTおよびポリ(スチレンスルホン酸)の複合体(PEDOT:PSS)とカーボンナノチューブとを利用した複合材料が記載されている。非特許文献4には、カーボンナノチューブとフッ素ポリマーとの複合材料を使用した熱電モジュールが記載されている。非特許文献5には、遷移金属ジカルコゲナイドと炭素系材料とを混合した複合材料をフィルム状に成形することが記載されている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Y. Hiroshige et al.,Synthetic Metals 157,p.467-474,2007
【非特許文献2】O. Bubnova et al., Nature Materials 10, p429-433, 2011
【非特許文献3】D. Kim et al., ACS Nano 4, p513-523, 2010
【非特許文献4】C.A. Hewitt et al.,Nano Letters 12,p.1307-1310,2012
【非特許文献5】J.N. Coleman et al.,Science 331,p.568-571,2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術は、熱電変換特性と柔軟性とを両立できていないという問題がある。具体的には、非特許文献1~5に記載の技術は、ある程度の柔軟性を有する材料または熱電変換特性を有する材料を提供しているが、実用化するために十分な熱電変換特性と柔軟性とを両立できていない。
【0008】
熱電変換材料の特性を評価する指標として、無次元性能指数ZTが挙げられる。ZTが大きいほど、良好な熱電変換特性を有するといえる。熱電変換素子の実用化のためには、ZTが1以上であることが望ましいとされているが、実現は難しい。そこで、まずZTが0.1程度のものを実現することが求められている。なお、詳しくは後述するが、ZTはゼーベック係数、導電率および熱伝導率から求められるものである。ここで、ゼーベック係数の絶対値および導電率はより大きいほうが好ましく、熱伝導率はより小さいほうが好ましい。
【0009】
例えば、非特許文献1に記載の導電性高分子のフィルムは、熱伝導率が0.25~0.80W/mKであり、313Kにおける無次元性能指数ZTが約0.006~0.09である。実用化のためには、熱伝導率がさらに小さく、ZTがさらに大きい熱電変換材料とする必要がある。
【0010】
また、非特許文献2に記載の技術は、条件によってはZTが0.25程度を示す場合もあるが、酸化の程度によってZTが変動しやすい。つまり、非特許文献2に記載の技術は環境変化に敏感であり、利用のためには緻密な調整が必要となる。よって、非特許文献2に記載の技術は、安定した熱電変換特性を有するとは言えない。
【0011】
非特許文献3に記載の技術では、柔軟性を付与するためにゴムが含まれている。ゴムは絶縁体であるため、ゼーベック効果および導電率を大きく低減させる。そのため、非特許文献3に記載の技術では、室温におけるZTは0.02程度と低い値となっている。
【0012】
また、非特許文献4および5に記載の技術においても、十分な熱電変換特性と柔軟性とを実現するには至っていない。
【0013】
また、非特許文献1~5に記載の技術は、いずれもp型熱電変換材料に関するものである。柔軟性と優れた熱電変換特性とを兼ね備えたn型熱電変換材料については、何ら開示されていない。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、軽量かつ柔軟であるとともに優れたn型熱電変換特性を備えた熱電変換材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブを不織布状に集積することによって、軽量かつ柔軟であるとともに優れた熱電変換特性を備えたn型熱電変換材料を実現できるということを独自に見出した。本発明は、本発明者らが独自に見出した新規知見によって完成されたものであり、以下の発明を包含する。
【0016】
すなわち、本発明に係るn型熱電変換材料は、上記の課題を解決するために、ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブが不織布状に集積して形成されていることを特徴としている。
【0017】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法は、金属酸塩または金属酸化物が溶解している溶媒に対して、金属塩を加え、ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブを形成する工程と、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブを不織布状に集積させる工程と、を含んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るn型熱電変換材料は、ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブが不織布状に集積して形成されている構成である。
【0019】
それゆえ、軽量かつ柔軟であるとともに優れた熱電変換特性を備えたn型熱電変換材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るn型熱電変換材料の外観を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るn型熱電変換材料の外観を示す図である。
【図3】本発明の実施例におけるn型熱電変換材料の製造方法を示す概略図である。
【図4】本発明の実施例におけるn型熱電変換材料の製造方法を示す概略図である。
【図5】(a)は、本発明の実施例1において作製されたナノワイヤを示す図であり、(b)は本発明の実施例2において作製されたナノチューブを示す図である。
【図6】(a)~(c)は本発明の実施例1において作製されたn型熱電変換材料を示す図であり、(d)~(f)は本発明の実施例2において作製されたn型熱電変換材料を示す図である。
【図7】本発明の実施例1および2における温度によるゼーベック係数の変化を示す図である。
【図8】本発明の実施例1および2における温度による無次元性能指数ZTの変化を示す図である。
【図9】(a)~(d)は、本発明の実施例3において製造されたn型熱電変換材料を示す図である。(a)は単層カーボンナノチューブ(SWNT)を1重量%含んでいる場合、(b)はSWNTを5重量%含んでいる場合、(c)および(d)はSWNTを10重量%含んでいる場合を示す。
【図10】本発明の実施例3および4におけるSWNTの含有量による導電率の変化を示す図である。
【図11】本発明の実施例3および4におけるSWNTの含有量による無次元性能指数ZTの変化を示す図である。
【図12】従来型の熱電変換素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。

【0022】
〔熱電変換特性に関する指標〕
本発明の実施の形態の説明に当たり、まず、熱電変換材料の特性(本明細書において「熱電変換特性」とも称する)を表す指標について説明する。熱電変換材料の特性を評価する指標として、無次元性能指数ZTが挙げられる。ZTは以下の式(1)によって求められる。

【0023】
ZT=SσT/κ (1)
式(1)中で、Sはゼーベック係数、σは導電率、Tは温度、κは熱伝導率を示す。

【0024】
ZTが大きいほど、優れた熱電変換材料であることを表している。式(1)から、大きいZTを得るためには、ゼーベック係数の絶対値および導電率は大きいほうが好ましいことがわかる。2つの異なる物質を接続し、温度差を設けると当該物質間に熱起電力が生じる。この熱起電力を生じる現象をゼーベック効果という。ゼーベック係数はこの熱起電力を表すものとして用いられる。ゼーベック係数の絶対値が大きいほど、熱起電力が大きいことを表す。

【0025】
また、式(1)から、大きいZTを得るためには、熱伝導率は小さいほうが好ましいことがわかる。このことは熱電変換材料が温度差を利用するものであることに対応している。熱伝導率が大きい場合、物質中の温度が容易に均一になってしまい、温度差を生じにくい。

【0026】
なお、式(1)中のゼーベック係数および導電率から求められる値は、下記式(2)で示すようにパワーファクターPと表すことができる。上述のように、ゼーベック係数の絶対値および導電率は大きいほうが好ましいため、パワーファクターも大きいことが好ましい。

【0027】
P=Sσ (2)
本明細書において、「優れた熱電変換特性を備える」とは、少なくとも従来型の柔軟性を有する熱電変換材料と同等またはそれを上回るZTを示すことを意味する。

【0028】
〔n型熱電変換材料〕
本発明に係るn型熱電変換材料は、ナノワイヤまたはナノチューブが不織布状に集積して形成されている。換言すれば、本発明に係るn型熱電変換材料では、ナノワイヤまたはナノワイヤ同士が互いに絡み合うように不織布状の構造を形成している。上記構成によれば、ナノワイヤまたはナノチューブ同士が滑り合うことによって、熱電変換材料に柔軟性を付与することができる。

【0029】
図1および2は、本発明の一実施形態に係るn型熱電変換材料1の外観を示す図である。図1および2に示すように、n型熱電変換材料1は容易に変形させることができる。そのため、本発明に係るn型熱電変換材料は加工性に優れている。例えば、本発明に係るn型熱電変換材料は複雑な形状のシリコンまたはプラスチックに貼り付けることも可能であり、人間の体の形状に合わせて変形させることも可能である。また、本発明に係るn型熱電変換材料は、変形させた状態で形状記憶させることも可能である。

【0030】
本発明に係るn型熱電変換材料の形状は特に限定されず、例えば円形、四角形等であってもよい。また、本発明に係るn型熱電変換材料の大きさも特に限定されず、用途によって適宜決定すればよい。

【0031】
また、本発明に係るn型熱電変換材料は、不織布状の構造に起因して多数の空隙を有している。そのため、本発明に係るn型熱電変換材料は、軽量である。さらに、上記多数の空隙に起因して、本発明に係るn型熱電変換材料は、バルクの状態に比べて低い熱伝導率を示す。

【0032】
なお、本明細書において、ナノワイヤとは、微小な繊維状の物質であって、中心が充填されており、中空ではない物質を意味する。また、本明細書において、ナノチューブとは、中空である微小な繊維状の物質を意味する。ナノワイヤおよびナノチューブの大きさは特に限定されないが、例えば長さが0.5μm以上1000μm以下であってもよい。また、ナノワイヤおよびナノチューブの直径は1nm以上1000nm以下であってもよい。なお、本明細書において、ナノワイヤを「NW」、ナノチューブを「NT」と記載する場合もある。

【0033】
上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブは、ナローギャップ半導体からなる。本明細書において、ナローギャップ半導体とは、バンドギャップが小さい半導体を指す。上記ナローギャップ半導体は、特にバンドキャップが0.01eV以上1.0eV以下であることが好ましい。バンドギャップが小さい半導体においては、小さな熱エネルギーによって容易にキャリアが励起される。よって、ナローギャップ半導体を使用すれば、低温であっても利用可能な熱電変換材料を得ることができる。

【0034】
上記ナローギャップ半導体は、Te、Se、またはその両方を含んでいる化合物が好ましい。換言すれば、上記化合物は、TeおよびSeの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。また、上記ナローギャップ半導体は、Biを含んでいる化合物が好ましい。上記ナローギャップ半導体として好ましい例としては、BiTe、BiSe、またはBiSeTe3-x(0<x<3)が挙げられる。上記構成によれば、比較的低い温度(例えば200~580K)においても、優れた熱電変換特性を示す熱電変換材料を提供することができる。なお、上記物質は、バルクの状態でナローギャップ半導体としての性質を示すことが知られている。

【0035】
以上のように、本発明に係るn型熱電変換材料は、ナローギャップ半導体に起因してゼーベック係数の絶対値が大きく、不織布状の構造に起因して熱伝導率が小さい。よって、本発明に係るn型熱電変換材料は、ナローギャップ半導体を使用していることと不織布状の構造であることとの相互作用によって、優れた熱電変換特性を示す。また、本発明に係るn型熱電変換材料は、不織布状の構造に起因して、軽量かつ柔軟である。従って、本発明に係るn型熱電変換材料は、軽量かつ柔軟であるとともに優れた熱電変換特性を示す。以上のことは、本発明者らが独自に見出したものである。

【0036】
本発明に係る熱電変換材料は、ゼーベック係数が負の値となることからn型熱電変換材料であることが確認できる。軽量かつ柔軟であるとともに、優れた熱電変換特性を備えたn型熱電変換材料は、本発明によって初めて実現できるものである。

【0037】
また、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブは、カーボンナノチューブとともに不織布状に集積されていてもよい。つまり、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブは、カーボンナノチューブと絡み合うように不織布状の構造を形成していてもよい。上記構成によれば、熱電変換材料の機械的強度を高めることができる。また、上記構成によれば、導電率を向上させることができる。つまり、熱電変換材料のパワーファクターを向上させることができる。

【0038】
なお、上記カーボンナノチューブを使用した場合、ゼーベック係数の絶対値が小さくなる場合もある。従って、上記カーボンナノチューブの含有量は、ゼーベック係数、導電率、機械的強度等のバランスを考慮して、適宜決定すればよい。上記カーボンナノチューブの含有量は、形成された熱電変換材料を100重量%とした場合に、例えば1重量%以上90重量%以下であってもよく、1重量%以上20重量%以下であってもよいが、1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。

【0039】
上記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであってもよく、多層カーボンナノチューブであってもよいが、単層カーボンナノチューブ(以下、SWNTとも称する)が特に好ましい。上記構成によれば、熱電変換材料に対して、優れた弾性および強度を付与することができる。

【0040】
〔熱電変換素子〕
本発明に係る熱電変換素子は、本発明に係るn型熱電変換材料を備えている。そのため、本発明に係る熱電変換素子は、軽量であるとともに、優れた熱電変換特性を備えている。また、本発明に係るn型熱電変換材料は柔軟性を有しており、加工性に優れているため、様々な形状の熱電変換素子を製造することができる。

【0041】
本発明に係る熱電変換素子は、本発明に係るn型熱電変換材料と、p型熱電変換材料とを組み合わせることで実現できる。本発明に係るn型熱電変換材料と組み合わせるp型熱電変換材料としては、特に限定されないが、例えば公知のp型熱電変換材料を用いることができる。

【0042】
例えば、本発明に係る熱電変換素子は優れた熱電変換特性を有するため、地熱発電等の環境発電、ならびに配管および電気炉等の工業廃熱、ならびに車体、エンジン周辺機器、空調設備等の機器廃熱の利用に適用することができる。また、本発明に係る熱電変換素子は軽量かつ優れた熱電変換特性を有するため、緊急時用、災害時用および医療用の電源に利用することができる。さらに、本発明に係る熱電変換素子は、軽量かつ柔軟性を有し、優れた熱電変換特性を有するため、ポータブルデバイス、ウェアラブルデバイス、フレキシブルデバイス等の小型機器の電源に利用することができる。当該小型機器としては、例えば、携帯電話、腕時計、心臓ペースメーカー等が挙げられる。

【0043】
〔n型熱電変換材料の製造方法〕
本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法を以下に説明する。なお、前述の〔n型熱電変換材料〕および〔熱電変換素子〕において既に説明した構成については、詳細な説明は省略する。

【0044】
本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法は、金属酸塩または金属酸化物が溶解している溶媒に対して、金属塩を加え、ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブを形成する工程を含んでいる。上記構成によれば、上記金属酸塩または上記金属酸化物と上記金属塩とに由来するナローギャップ半導体を形成することができる。よって、上述のように上記ナローギャップ半導体に起因して、当該製造方法によって得られたn型熱電変換材料におけるゼーベック係数を向上させることができる。

【0045】
金属酸塩または上記金属酸化物はTeまたはSeを含んでいることが好ましい。具体的には、上記金属酸塩は、NaTe、NaSe、KaTe、KaSe、MgOTe、MgOSe、CaOTe、CaOSe、HTe、HSe、HTeOまたはHSeOであることが好ましい。また、上記金属酸化物は、TeO、SeO、TeO、SeO、TeまたはSeであることが好ましい。上記構成によれば、得られるナローギャップ半導体をTeまたはSeを含んでいる化合物とすることができる。また、Teを含んでいる金属酸塩または金属酸化物と、Seを含んでいる金属酸塩または金属酸化物とを使用すれば、得られるナローギャップ半導体をTeおよびSeの両方を含んでいる化合物とすることができる。

【0046】
また、上記金属塩はBiを含んでいることが好ましい。上記金属塩において、上記Biに対するカウンターイオンは特に限定されないが、例えば、Cl、Br、I、NO、SO2-、SCNであってもよい。上記構成によれば、得られるナローギャップ半導体を、Biを含んでいる化合物とすることができる。

【0047】
つまり、TeまたはSeを含んでいる金属酸塩または金属酸化物と、Biを含んでいる金属塩とを使用した場合、得られるナローギャップ半導体をBiTe、BiSeまたはBiSeTe3-x(0<x<3)とすることができる。また、化学量論比を正確にするため、上記金属酸塩または上記金属酸化物と上記金属塩とは、使用するモル比を3:2とすることが好ましい。

【0048】
なお、上記工程において、上記金属酸塩を用いた場合、ナノワイヤを形成することができる。また、上記工程において、上記金属酸化物を用いた場合、ナノチューブを形成することができる。よって、上記構成によれば、金属酸塩および金属酸化物を使い分けることによって、ナノワイヤおよびナノチューブを選択的に形成することができる。このことは、本発明者によって独自に見出されたことである。

【0049】
また、上記金属酸塩、上記金属酸化物および上記金属塩は、その種類にもよるが、比較的安価である。よって、本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法は、PEDOT等を使用する従来技術に比べて、コストを低減することができる。

【0050】
本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法は、ワンポット反応として行うことが好ましい。上記構成によれば、廃液が生じることがなく、ナノワイヤまたはナノチューブの収率の低下も防ぐことができる。また、上記構成によれば、容器の洗浄も不要である。さらに、上記構成によれば、溶媒の使用量も抑えることができる。

【0051】
上記工程において使用される溶媒は、(a)160℃以上の沸点を有すること、(b)弱還元性を示すこと、および(c)金属塩に対し優れた溶解性を示すこと、のうちの少なくとも1つ以上の性質を有することが好ましく、(a)~(c)の性質を全て備えていることがより好ましい。上記溶媒としては、例えば、ポリオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、アルキルアミン(オレイルアミン等)、アルキルホスフィン(トリオクチルホスフィン等)が挙げられる。酸化された場合に、ポリオールはアルデヒドやカルボン酸に、アミンはヒドロキシルアミン、オキシム、ニトロソ化合物、ニトロ化合物に、ホスフィンはホスフィンオキシドに変換される。よって、上記溶媒は還元性を有している。

【0052】
上記工程における反応温度は、使用する金属酸塩、金属酸化物、金属塩および溶媒に応じて適宜決定すればよいが、50℃以上250℃以下であることが好ましく、140℃以上200℃以下であることがより好ましい。

【0053】
さらに、本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法は、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブを不織布状に集積させる工程を含んでいる。

【0054】
上記構成によれば、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブが不織布状に集積して形成されている熱電変換材料を作製することができる。よって、上述のように不織布状の構造に起因して、当該製造方法によって得られた熱電変換材料を、熱伝導率が小さく、軽量かつ柔軟な熱電変換材料とすることができる。

【0055】
上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブを不織布状に集積する方法は特に限定されず、例えば、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブを含んでいる溶媒を濾過もしくはスプレー塗布する方法、またはエレクトロスピニング法によって、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブを支持体上に集積させる方法が挙げられる。中でも、簡便に実施できるという観点からは、上記溶媒を濾過する方法が好ましい。

【0056】
上記溶媒を濾過する方法には、多孔性膜等のフィルターを用いることができる。フィルターを用いて上記溶媒を濾過し、当該フィルター上に上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブを集積させることができる。上記多孔性膜の孔の直径は、ナノワイヤまたはナノチューブの多くが約5μm以上の長さであることから、5μm以下であることが好ましく、回収率の観点から0.5μm以下であることがより好ましく、実用的な観点から0.2μm以下であることがさらに好ましい。

【0057】
また、本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法は、上記ナノワイヤまたはナノチューブを不織布状に集積させる工程の前に、上記ナノワイヤまたはナノチューブを含んでいる溶媒に対してカーボンナノチューブを加える工程を含んでいてもよい。上記構成によれば、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブが、カーボンナノチューブとともに不織布状に集積されて形成されている熱電変換材料を製造できる。上記カーボンナノチューブは、前述のように単層カーボンナノチューブであることが好ましい。また、上記カーボンナノチューブを加える場合、超音波を用いて上記カーボンナノチューブを溶媒中に分散させておくことが好ましい。上記構成によれば、上記カーボンナノチューブが均一に含まれた熱電変換材料を製造することができる。

【0058】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。

【0059】
本発明は、以下のように構成することも可能である。

【0060】
すなわち、本発明に係るn型熱電変換材料は、上記の課題を解決するために、ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブが不織布状に集積して形成されていることを特徴としている。

【0061】
上記構成によれば、本発明に係るn型熱電変換材料は、ナローギャップ半導体に起因してゼーベック係数の絶対値が大きい。さらに、不織布状構造は多数の空隙を有しているため、熱伝導率が小さい。よって、無次元性能指数ZTが大きく、優れた熱電変換特性を示すn型熱電変換材料を提供することができる。

【0062】
また、本発明に係るn型熱電変換材料は、不織布状に成形されているため、柔軟性を有しているとともに軽量である。

【0063】
よって、上記構成によれば、軽量かつ柔軟であるとともに優れた熱電変換特性を備えた熱電変換材料を提供することができる。

【0064】
本発明に係るn型熱電変換材料では、上記ナローギャップ半導体は、TeおよびSeの少なくとも一方を含んでいる化合物であることが好ましい。

【0065】
本発明に係るn型熱電変換材料では、上記ナローギャップ半導体は、Biを含んでいる化合物であることが好ましい。

【0066】
本発明に係るn型熱電変換材料では、上記ナローギャップ半導体は、BiTe、BiSe、またはBiSeTe3-xであることが好ましい。ただし0<x<3とする。

【0067】
本発明に係るn型熱電変換材料では、上記ナノワイヤまたはナノチューブは、カーボンナノチューブとともに不織布状に集積されていてもよい。

【0068】
上記の課題を解決するために、本発明に係る熱電変換素子は、本発明に係るn型熱電変換材料を含んでいることを特徴としている。

【0069】
上記の課題を解決するために、本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法は、金属酸塩または金属酸化物が溶解している溶媒に対して、金属塩を加え、ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブを形成する工程と、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブを不織布状に集積させる工程と、を含んでいることを特徴としている。

【0070】
上記構成によれば、上記金属酸塩または上記金属酸化物と上記金属塩との反応産物として、ナローギャップ半導体からなるナノワイヤまたはナノチューブを得ることができる。よって、ゼーベック係数の絶対値が大きいn型熱電変換材料を得ることができる。

【0071】
また、上記構成によれば、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブが不織布状に集積して形成されたn型熱電変換材料を得ることができる。よって、不織布状の構造に起因して熱伝導率が小さく、軽量かつ柔軟であるn型熱電変換材料を得ることができる。

【0072】
従って、上記構成によれば、軽量かつ柔軟であるとともに優れた熱電変換特性を備えたn型熱電変換材料を提供することができる。

【0073】
本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法では、上記金属酸塩または上記金属酸化物はTeまたはSeを含んでいることが好ましい。

【0074】
本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法では、上記金属塩はBiであることが好ましい。

【0075】
本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法では、上記金属酸塩は、NaTe、NaSe、KaTe、KaSe、MgOTe、MgOSe、CaOTe、CaOSe、HTe、HSe、HTeOまたはHSeOであることが好ましい。

【0076】
本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法では、上記金属酸化物は、TeO、SeO、TeO、SeO、TeまたはSeであることが好ましい。

【0077】
本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法は、上記ナノワイヤまたはナノチューブを不織布状に集積させる工程の前に、上記ナノワイヤまたはナノチューブを含んでいる溶媒に対してカーボンナノチューブを加える工程を含んでいてもよい。

【0078】
本発明に係るn型熱電変換材料の製造方法は、上記ナノワイヤまたはナノチューブを不織布状に集積させる工程において、上記ナノワイヤまたは上記ナノチューブを含んでいる溶媒を濾過することによって、上記ナノワイヤまたはナノチューブを不織布状に集積させることが好ましい。
【実施例】
【0079】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0080】
〔実施例1および2〕
<実施例1>
図3に示す製造方法によって、BiTeのナノワイヤを作製した。図3の(a)に示すように、50mLの三つ口フラスコに、332.4mg(1.5mmol)のNaTe、0.5gのポリビニルピロリドン、0.3gのNaOHおよび10mLのエチレングリコールを加えて室温で15分間脱気し、N置換した。当該工程にて得られた液を溶液(A)とする。さらに、サンプル管中に409.2mg(1mmol)のBi(NO・5HOおよび2.5mLのエチレングリコールを加え、超音波照射して十分に溶かした後、N置換した。当該工程にて得られた液を溶液(B)とする。溶液(A)を160℃まで昇温し、ヒドラジン一水和物0.5mLを加え10分間加熱還元した。このとき溶液(A)は薄いオレンジ色から濃青色に変化した。10分後、溶液(B)を溶液(A)にインジェクションし、さらに1時間撹拌した。このとき得られた溶液は濃青色から黒色に変化した。溶液(A)と溶液(B)とを混合して得られた溶液を溶液(C)とする。1時間後、加熱を止めて室温に戻るまで窒素雰囲気下で溶液(C)を撹拌した。
【実施例】
【0081】
次に、図3の(b)に示すように、ナノワイヤの精製を行った。室温まで冷ました溶液(C)を、ヒドラジン一水和物:エタノール=1:10の溶液80mLに加え、30分間80℃で加熱撹拌した。30分後加熱を止め、遠心分離(10000g,10min)を行い、上澄みを除去し、沈殿をエタノールで再分散させた。この遠心分離による余剰な配位子の洗浄を計3回行い、BiTeナノワイヤを得た。
【実施例】
【0082】
得られたBiTeナノワイヤをエタノールで分散させ、メンブレンフィルターを用いて吸引濾過を行った。上記メンブレンフィルターの孔の直径0.2μmであった。上記吸引濾過によって、BiTeナノワイヤが不織布状に集積した熱電変換材料が得られた。
【実施例】
【0083】
なお、得られた熱電変換材料は、空気中で容易に酸化され、その熱電性能が損なわれてしまうため、各物性測定前に還元を行った。図4に還元方法を示す。メンブレンフィルター上に付着した熱電変換材料を、ヒドラジン一水和物:エタノール=1:10の溶液中で80℃、30分間還元し、エタノールで数回洗浄した。このとき、熱電変換材料をメンブレンフィルターからゆっくり丁寧に剥がし、濾紙で挟んでから80℃で真空乾燥した。熱電変換材料の物性測定を行う前は、必ずこの還元プロセスを行った。
【実施例】
【0084】
<実施例2>
図3の(a)において、出発物質であるNaTeを239.4mgのTeOに置き換えて、BiTeナノチューブを作製した。TeOを使用すること以外は実施例1と同じ方法を用いて、BiTeナノチューブが不織布状に集積した熱電変換材料を作製した。
【実施例】
【0085】
<熱電変換材料の観察>
図5の(a)は、実施例1において得られたナノワイヤをSEMによって150,000倍にて観察した結果を示しており、図5の(b)は、実施例2において得られたナノチューブをSEMによって100,000倍にて観察した結果を示している。ナノワイヤの中心は充填されており、一方、ナノチューブの中心は中空である。
【実施例】
【0086】
図6の(a)は、実施例1において得られた熱電変換材料の外観を示している。また、図6の(b)および(c)は、実施例1において得られた熱電変換材料をSEMによって観察した結果を示している。図6の(d)は、実施例2において得られた熱電変換材料の外観を示している。また、図6の(e)および(f)は、実施例2に得られた熱電変換材料をSEMによって観察した結果を示している。なお、図6の(b)および(e)は、5,000倍にて観察した結果であり、図6の(c)および(f)は25,000倍にて観察した結果である。実施例1および2において得られた熱電変換材料は略円形であり、その直径は、ともに約16mmであった。実施例1および2のいずれにおいても、得られた熱電変換材料が不織布状の構造を有しており、多数の空隙を有していることがわかる。
【実施例】
【0087】
<熱電変換材料の特性>
実施例1および2において得られた熱電変換材料に関して、ゼーベック係数、導電率および熱伝導率を測定した。また、得られたゼーベック係数、導電率および熱伝導率からZTを求めた。ゼーベック係数はゼーベック効果測定装置(MMR社、SB-100)を用いて測定した。導電率は4探針法(三菱化学アナリテック、ロレスタGP)を用いて測定した。熱伝導率は熱拡散率・熱伝導率測定装置(ai-Phase Mobile 1u)を用いて測定した。
【実施例】
【0088】
図7は、実施例1および2における温度によるゼーベック係数の変化を示す図である。実施例1では、実施例2に比べて、ゼーベック係数の絶対値が約20%大きかった。例えば、310Kにおけるゼーベック係数は、実施例1では-124μV/K、実施例2では-101μV/Kであった。これらの値は、バルクのBiTeにおいて示される値(約200μV/K)と比べても遜色ない値であった。また、ゼーベック係数が負の値であることから、実施例1および2の熱電変換材料はn型熱電変換材料であることがわかる。
【実施例】
【0089】
図8は、本発明の実施例1および2における温度によるZTの変化を示す図である。実施例1のZTは、実施例2のZTに比べて大きかった。特に実施例1では、350K以上にて0.1を上回るZTを示した。具体的には、実施例1では、310KにおいてZTは0.06、450KにおいてZTは0.16であった。また、実施例2では、310KにおいてZTは0.026、450KにおいてZTは0.07であった。よって、実施例1および2では、従来の熱電変換材料と同等またはそれ以上のZTを示すことがわかった(例えば、非特許文献1に記載のフィルムは313KにおけるZTが0.006~0.09)。なお、実施例1の熱電変換材料は、実施例2の熱電変換材料に比べて、より優れた熱電変換特性を示すことがわかった。
【実施例】
【0090】
なお、導電率および熱伝導率の代表的な値を以下に挙げる。実施例1では、310Kにおける導電率は290S/m、熱伝導率は0.023W/mKであった。また実施例2では、310Kにおける導電率は240S/m、熱伝導率は0.029W/mKであった。よって、実施例1および2では、従来の熱電変換材料に比べて、より小さい熱伝導率を示すことがわかる(例えば、非特許文献1に記載のフィルムは313Kにおける熱伝導率が0.25~0.80W/mK)。このことからも、本発明に係る熱電変換材料が、従来の熱電変換材料に比べて優れた熱電変換特性を有することがわかる。
【実施例】
【0091】
〔実施例3および4〕
<実施例3>
メンブレンフィルターを用いて吸引濾過を行う前に、エタノール中に分散したBiTeナノワイヤに対し、DMSO中に分散させたSWNTを加えたこと以外は、実施例1と同様の方法で熱電変換材料を作製した。SWNTの含有量は0~10重量%の間で変化させた。なお、SWNTの含有量は、得られた熱電変換材料を100重量%とした場合の値である。
【実施例】
【0092】
<実施例4>
メンブレンフィルターを用いて吸引濾過を行う前に、エタノール中に分散したBiTeナノチューブに対し、DMSO中に分散させたSWNTを加えたこと以外は、実施例2と同様の方法で熱電変換材料を作製した。SWNTの含有量は0~10重量%の間で変化させた。なお、SWNTの含有量は、得られた熱電変換材料を100重量%とした場合の値である。
【実施例】
【0093】
<熱電変換材料の観察>
図9の(a)~(d)は、実施例3において得られた熱電変換材料をSEMによって観察した結果を示している。(a)はSWNTを1重量%含んでいる場合、(b)はSWNTを5重量%含んでいる場合、(c)および(d)はSWNTを10重量%含んでいる場合を示す。なお、(a)~(c)は300倍にて観察した結果であり、(d)は100,000倍にて観察した結果である。図中の白い部分がSWNT、黒い部分がナノワイヤである。
【実施例】
【0094】
<熱電変換材料の特性>
実施例1および2と同様に、実施例3および4において得られた熱電変換材料に関しても、ゼーベック係数、導電率および熱伝導率を測定した。また、得られたゼーベック係数、導電率および熱伝導率からZTを求めた。なお、上記測定において、温度は310Kに固定した。
【実施例】
【0095】
図10は、実施例3および4におけるSWNTの含有量(ΦSWNT)による導電率の変化を示す図である。実施例3および4のいずれにおいても、SWNTの含有量を増加させると、導電率が上昇した。
【実施例】
【0096】
図11は、本発明の実施例3および4におけるSWNTの含有量(ΦSWNT)によるZTの変化を示す図である。実施例3においては、SWNTを含む場合は、SWNTを含まない場合に比べてZTが減少したが、実施例4においてはSWNTを含む場合、SWNTを含まない場合に比べてZTが増加した。いずれにせよ、実施例3および4では、従来の熱電変換材料(例えば、非特許文献1に記載のフィルム)と同等またはそれ以上のZTを示した。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、例えば環境発電、緊急・災害時用電源、医療電源、小型機器電源、工業廃熱用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 ・・・n型熱電変換材料
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図7】
2
【図8】
3
【図10】
4
【図11】
5
【図12】
6
【図1】
7
【図2】
8
【図5】
9
【図6】
10
【図9】
11