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明細書 :微粒子分離用マイクロ流路チップ、該チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成28年9月5日(2016.9.5)
発明の名称または考案の名称 微粒子分離用マイクロ流路チップ、該チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法
国際特許分類 G01N   1/04        (2006.01)
G01N  35/08        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
G01N   1/28        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
FI G01N 1/04 H
G01N 35/08 A
G01N 37/00 101
G01N 1/28 J
C12M 1/00 Z
国際予備審査の請求
全頁数 29
出願番号 特願2014-542131 (P2014-542131)
国際出願番号 PCT/JP2013/077905
国際公開番号 WO2014/061631
国際出願日 平成25年10月15日(2013.10.15)
国際公開日 平成26年4月24日(2014.4.24)
優先権出願番号 2012227717
優先日 平成24年10月15日(2012.10.15)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】新井 史人
【氏名】益田 泰輔
【氏名】新美 京
【氏名】道家 悠希
【氏名】中西 速夫
【氏名】伊藤 誠二
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【識別番号】304031427
【氏名又は名称】愛知県
個別代理人の代理人 【識別番号】100167689、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 征二
審査請求 未請求
テーマコード 2G052
2G058
4B029
Fターム 2G052AA30
2G052BA22
2G052BA24
2G052DA09
2G052EA08
2G052ED01
2G052FC02
2G052GA32
2G058DA07
2G058GA02
4B029AA09
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC01
4B029HA10
要約 粒径が異なる微粒子が混在している溶液から、抗体等を使用する必要がなく、また、目詰まりすることなく連続的に微粒子を分離することができる微粒子分離用マイクロ流路チップ、該チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法を提供する。
複数の主流路、及び該主流路の幅より大きな捕捉部位が各々の主流路に1以上設けられていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップを用いることで、微粒子を捕捉することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の主流路、及び該主流路の幅より大きな捕捉部位が各々の主流路に1以上設けられていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項2】
前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路の幅AはY<A<X、前記捕捉部位の幅Bは1X<B<10Xであり、前記捕捉部位の深さCは1X<C<10X、前記捕捉部位における主流路の深さDはY<Dであり、前記捕捉部位以外の主流路の深さEはE=C+Dであることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項3】
前記捕捉部位の幅Bが1X<B<2Xであり、前記捕捉部位の深さCが1X<C<2Xであることを特徴とする請求項2に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項4】
前記主流路の幅AがY<A<0.8Xであることを特徴とする請求項2又は3に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項5】
複数の主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する1以上の分岐流路、及び該分岐流路に分岐流路の幅より大きな捕捉部位が設けられていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項6】
前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路及び分岐流路の幅FはY<F<X、前記捕捉部位の幅Gは1X<G<10X、前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の深さHは1X<H<10Xであることを特徴とする請求項5に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項7】
前記捕捉部位の幅Gが1X<G<2X、前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の深さHが1X<H<2Xであることを特徴とする請求項6に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項8】
前記主流路及び分岐流路の幅FがY<F<0.8Xであることを特徴とする請求項6又は7に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項9】
前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の下方に、幅がF、深さJがY<Jの流路が更に設けられていることを特徴とする請求項6~8の何れか一項に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項10】
前記複数の主流路の一端に連結する排出路を含むことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項11】
前記捕捉部位で捕捉される微粒子がCTCで、除去される微粒子が血球細胞であることを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、サンプル液用薄板、シース液用薄板、シース液を吸引する吸引手段及び/又は吸引装置を含むことを特徴とする微粒子分離用システム。
【請求項13】
請求項1~11の何れか一項に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、カバー板、吸引手段及び/又は吸引装置を含むことを特徴とする微粒子分離用システム。
【請求項14】
横溝及び該横溝に連通する吸引孔を含む吸引ユニットを更に含むことを特徴とする請求項12又は13に記載の微粒子分離用システム。
【請求項15】
前記微粒子分離用マイクロ流路チップの捕捉部位に磁場発生装置及び/又は電場発生装置を設けることを特徴とする請求項12~14の何れか一項に記載の微粒子分離用システム。
【請求項16】
請求項1~11の何れか一項に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル液用薄板の間にサンプル液を注入し、微粒子分離用マイクロ流路チップとシース液用薄板の間にシース液を注入し、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル液用薄板及びシース液用薄板を相対移動させることで発生するメニスカスにより、目的とする微粒子は前記微粒子分離用マイクロ流路チップに設けられた捕捉部位に捕捉され、除去される微粒子は吸引手段及び/又は吸引装置により吸引されたシース液により微粒子分離用マイクロ流路チップから除去されることを特徴とする微粒子分離方法。
【請求項17】
請求項1~11の何れか一項に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板の間にサンプル液を注入し、吸引手段及び/又は吸引装置で前記サンプル液を吸引することで発生するメニスカスにより、目的とする微粒子を前記微粒子分離用マイクロ流路チップに設けられた捕捉部位に捕捉することを特徴とする微粒子分離方法。
【請求項18】
前記サンプル液を吸引した後に、微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板の間にシース液を注入し、吸引手段及び/又は吸引装置で前記シース液を吸引することで、残存している除去される微粒子を洗い流すことを特徴とする請求項17に記載の微粒子分離方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に混在するサイズの異なる微粒子を分離するための微粒子分離用マイクロ流路チップ、該チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法に関するもので、特に、血液中の循環腫瘍細胞(Circulating tumor cell、以下「CTC」と略記することもある。)を選択的に捕捉するためのCTC分離用マイクロ流路チップ、該チップを用いたCTC分離用システム及びCTC分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CTCはがん患者の末梢血流を循環する腫瘍細胞と定義され、原発腫瘍又は転移腫瘍から血管中へ浸潤した腫瘍細胞である。このCTCの検出は、転移性悪性腫瘍の早期発見の方法の一つとして近年注目されている。その理由は、X線写真や血清中の腫瘍マーカー検出よりも低侵襲かつ正確に転移性悪性腫瘍の診断を行え、患者の予後予測や治療効果の指標として利用できる点にある。
【0003】
CTCは非常に稀少な細胞であり、転移性がん患者の血液に含まれる108~109個の血液細胞の内、わずか1細胞程度しか存在しないことが知られている。そのため、末梢血から稀少なCTCを正確に検出するための技術開発に多大な努力が注がれている。これまでに開発されてきた主要な検出方法には、免疫組織化学法、PCR法、フローサイトメトリー法などがある。しかしながら、前述したようにCTCは非常に稀少な細胞であるため、血液をそのままこれらの検出方法に供することは出来ないので、通常は前処理として、CTCの濃縮操作が必須であり、検出法に則したレベルまでCTC存在比を濃縮させる必要がある。
【0004】
CTCの濃縮方法として開発されてきた様々な手法の中で、最も広く利用されているのは、細胞表面の特異的抗原を標的とした腫瘍細胞の濃縮である。その多くは、上皮細胞接着分子(Epithelial cell adhesion molecule:EpCAM)に対するモノクローナル抗体を固定化した磁気微粒子を血液と混合した後、磁石を用いて腫瘍細胞を濃縮する方法をとっている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、EpCAMの発現量は腫瘍のタイプに依存し大きく変動することが知られている。
【0005】
その他の濃縮方法としては、細胞のサイズなどの形態を基準として濃縮する手法がある。白血球に比べてサイズが大きな上皮性腫瘍細胞をフィルトレーションによって選別する方法は、ISET法(Isolation by Size of Epithelial Tumor cells)と呼ばれている。ISETは、孔径8μmのポリカーボネートメンブレンフィルターを用いて血液をフィルトレーションするという簡便な手法であり、安価かつユーザーフレンドリーな手法である。ここで用いられているポリカーボネートメンブレンフィルターは、重イオンを照射した後、エッチングを行うトラックエッチングという手法によって、孔が形成されている。しかし、孔が比較的低密度であり、二つ又はそれ以上の孔が重なりあったりする問題があるため、CTCの捕捉に利用した場合、その捕捉効率は50~60%とされており、濃縮法が簡便かつ効率も良い手法は未だ開発されていない。
【0006】
CTCの検出を効率的かつ正確なものにするためには、濃縮と検出といった技術を首尾一貫して行うことが必要である。多段階のハンドリング操作、例えば細胞の染色、洗浄、分離、分注などの操作はCTCのロスを引き起こすため、可能な限りこれらの操作を避け、一体の検出装置中で分析が一貫して行える形が好ましい。Cellsearch(VeridexTM,Warren,PA)はCTC検出装置として唯一FDAの認可を受けた装置である。この装置では、全血に対し抗EpCAM抗体固定化磁気微粒子によるCTCの濃縮を行い、腫瘍細胞に対して免疫染色を行った後、自動化蛍光顕微鏡を用いて腫瘍細胞の計数が行われる(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、当該装置を用いる場合、一般的に大型の装置導入と訓練されたオペレーターの確保が必要であり、ベッドサイドで短時間且つ正確に検査をすることは困難である。
【0007】
一方で、CTC検出のための小型のマイクロ流体デバイスも知られている。例えば、Tonerらが開発したCTC検出用マイクロ流体デバイスはCTC-chipと呼ばれ、フォトリソグラフィーによって形成されたシリコン製の流路内に、円筒状構造物(マイクロポスト)が78000個構成されている。このマイクロポストには、抗EpCAM抗体がコーティングされており、本流路に血液を送液すると、血液中のCTCがマイクロポスト上に捕捉される。捕捉されたCTCに対して、上皮細胞マーカー(cytokeratin)をターゲットとした蛍光免疫染色を行い、蛍光顕微鏡を用いて腫瘍細胞の計数が行われる。本装置は、手のひらに乗る小型デバイスでありながら、5mL以上の血液をそのまま分析に供することができるという大きな利点を持っている。実際に転移性がん患者血液からCTC検出を行っており、回収したCTCからチロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性を生む変異を検出することが出来る。しかしながら、CellsearchやCTC-chipを用いたCTC検出は、転移性がん患者血液などの実サンプルを用いた実験が精力的に行われ実績を挙げているが、これらの手法は抗EpCAM抗体でCTCを濃縮するという原理になっている。そのため、EpCAM陰性又は弱陽性の腫瘍細胞は検出できないという問題点が挙げられる。
【0008】
その他の方法としては、腫瘍細胞のサイズと形態を指標として、CTCを検出するマイクロ流体デバイスが開発されている。これらのデバイスでは、その流路構造内にメンブレンマイクロフィルター、三日月型の細胞捕捉ウェル(非特許文献3参照)、4段階の細さの流路(非特許文献4参照)を配して、血液中の血球細胞と腫瘍細胞をサイズによって選別し、腫瘍細胞を選択的に濃縮している。また、その流路を利用して、濃縮後の細胞に対して溶解などの操作を連続的に行うことが出来る。これらのデバイスを用いたモデル腫瘍細胞の回収効率の評価実験においては、80%以上のCTC回収効率を得ている。しかしながら、この評価はあくまでモデル細胞を用いた実験で行われており、実際にCTC検出時に必要となる細胞の染色操作や洗浄操作といった要素技術項目については検討されていない。さらに、がん患者血液などの実サンプルを用いた実験は行われておらず、実際にCTC検出に利用できるかどうかは明らかにされていない。
【0009】
更に、抗EpCAM抗体を使用しない小型のデバイスとしては、マイクロ流路内にマイクロキャビティアレイ(微細貫通孔)を設け、CTCを捕捉することができるマイクロ流体デバイスが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、前記マイクロ流体デバイスは、微細貫通孔にCTCを捕捉するタイプであるので、CTCの目詰まりによる作業効率の低下、更には分離したCTCの回収が困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2011-163830号公報
【0011】

【非特許文献1】Allard WJ, Matera J, Miller MC, Repollet M, Connelly MC, Rao C, Tibbe AG, Uhr JW, Terstappen LW. 2004. Tumor cells circulate in the peripheral blood of all major carcinomas but not in healthy subjects or patients with nonmalignant diseases. Clin Cancer Res 10(20):6897-904.
【非特許文献2】Riethdorf S, Fritsche H, Muller V, Rau T, Schindlbeck C, Rack B, Janni W, Coith C, Beck K, Janicke F and others. 2007. Detection of circulating tumor cells in peripheral blood of patients with metastatic breast cancer: a validation study of the CellSearch system. Clin Cancer Res 13(3):920-8.
【非特許文献3】Tan SJ, Yobas L, Lee GY, Ong CN, Lim CT. 2009. Microdevice for the isolation and enumeration of cancer cells from blood. Biomed Microdevices 11(4):883-92.
【非特許文献4】Mohamed H, Murray M, Turner JN, Caggana M. 2009. Isolation of tumor cells using size and deformation. J Chromatogr A 1216(47):8289-95.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされた発明であり、鋭意研究を行ったところ、(1)複数の主流路、及び該主流路の幅より大きな捕捉部位が各々の主流路に1以上設けられていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ、又は(2)複数の主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する複数の分岐流路、及び該分岐流路に分岐流路の幅より大きな捕捉部位が設けられている微粒子分離用マイクロ流路チップ、を用い、気液界面のメニスカスで生じる力を利用して微粒子をチップに施したマイクロ流路に沈降させ、目的とする微粒子のみをマイクロ流路に設けられた捕捉部位で捕捉できることを新たに見出した。
【0013】
更に、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル液用薄板及びシース液用薄板を相対移動させることでメニスカスを発生させる場合は、サンプルとして全血を用いてもCTCのみを連続的に分離・回収ができること、及び、微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板を相対移動させずサンプルを吸引することでメニスカスを発生させる場合は、操作性よくCTCのみを連続的に分離・回収ができることを新たに見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の目的は、微粒子分離用マイクロ流路チップ、該チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下に示す、微粒子分離用マイクロ流路チップ、該チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法に関する。
【0016】
(1)複数の主流路、及び該主流路の幅より大きな捕捉部位が各々の主流路に1以上設けられていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(2)前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路の幅AはY<A<X、前記捕捉部位の幅Bは1X<B<10Xであり、前記捕捉部位の深さCは1X<C<10X、前記捕捉部位における主流路の深さDはY<Dであり、前記捕捉部位以外の主流路の深さEはE=C+Dであることを特徴とする上記(1)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(3)前記捕捉部位の幅Bが1X<B<2Xであり、前記捕捉部位の深さCが1X<C<2Xであることを特徴とする上記(2)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(4)前記主流路の幅AがY<A<0.8Xであることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(5)複数の主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する1以上の分岐流路、及び該分岐流路に分岐流路の幅より大きな捕捉部位が設けられていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(6)前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路及び分岐流路の幅FはY<F<X、前記捕捉部位の幅Gは1X<G<10X、前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の深さHは1X<H<10Xであることを特徴とする上記(5)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(7)前記捕捉部位の幅Gが1X<G<2X、前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の深さHが1X<H<2Xであることを特徴とする上記(6)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(8)前記主流路及び分岐流路の幅FがY<F<0.8Xであることを特徴とする上記(6)又は(7)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(9)前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の下方に、幅がF、深さJがY<Jの流路が更に設けられていることを特徴とする上記(6)~(8)の何れか一に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(10)前記複数の主流路の一端に連結する排出路を含むことを特徴とする上記(1)~(9)の何れか一に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(11)前記捕捉部位で捕捉される微粒子がCTCで、除去される微粒子が血球細胞であることを特徴とする上記(1)~(10)の何れか一に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(12)上記(1)~(11)の何れか一に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、サンプル液用薄板、シース液用薄板、シース液を吸引する吸引手段及び/又は吸引装置を含むことを特徴とする微粒子分離用システム。
(13)上記(1)~(11)の何れか一に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、カバー板、吸引手段及び/又は吸引装置を含むことを特徴とする微粒子分離用システム。
(14)横溝及び該横溝に連通する吸引孔を含む吸引ユニットを更に含むことを特徴とする上記(12)又は(13)に記載の微粒子分離用システム。
(15)前記微粒子分離用マイクロ流路チップの捕捉部位に磁場発生装置及び/又は電場発生装置を設けることを特徴とする上記(12)~(14)の何れか一に記載の微粒子分離用システム。
(16)上記(1)~(11)の何れか一に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル液用薄板の間にサンプル液を注入し、微粒子分離用マイクロ流路チップとシース液用薄板の間にシース液を注入し、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル液用薄板及びシース液用薄板を相対移動させることで発生するメニスカスにより、目的とする微粒子は前記微粒子分離用マイクロ流路チップに設けられた捕捉部位に捕捉され、除去される微粒子は吸引手段及び/又は吸引装置により吸引されたシース液により微粒子分離用マイクロ流路チップから除去されることを特徴とする微粒子分離方法。
(17)上記(1)~(11)の何れか一に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板の間にサンプル液を注入し、吸引手段及び/又は吸引装置で前記サンプル液を吸引することで発生するメニスカスにより、目的とする微粒子を前記微粒子分離用マイクロ流路チップに設けられた捕捉部位に捕捉することを特徴とする微粒子分離方法。
(18)前記サンプル液を吸引した後に、微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板の間にシース液を注入し、吸引手段及び/又は吸引装置で前記シース液を吸引することで、残存している除去される微粒子を洗い流すことを特徴とする上記(17)に記載の微粒子分離方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の微粒子分離用システムは、液体中のサイズの異なる微粒子、例えば、赤血球、白血球等が混在している全血中から前処理なしにCTCのみを短時間で高精度に分離することができるので、簡便な操作によるベッドサイド型がん診断が可能となる。
【0018】
本発明の微粒子分離用システムに用いられる微粒子分離用マイクロ流路チップは抗EpCAM抗体を使用していないので、CTC陰性又は弱陽性の腫瘍細胞であっても確実に検出することができる。また、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップは、赤血球、白血球等のサイズの小さい細胞はシース液によりチップの外に流し、CTC等のサイズが大きな細胞は流路に設けた捕捉部位で捕捉することができるので、従来のフィルタタイプのデバイスと異なり、デバイスの目詰まりが無く、連続的に処理することが可能となる。
【0019】
更に、本発明の微粒子分離用システムに用いられる微粒子分離用マイクロ流路チップは、半導体形成プロセスを用いて量産が可能であることから、CTC検査のコストを大幅に削減することができる。
【0020】
また、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル液用薄板及びシース液用薄板を相対移動させることでメニスカスを発生させる場合は、全血を用いてもCTCのみを連続的に分離・回収ができる。
【0021】
一方、微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板を相対移動させずサンプルを吸引することでメニスカスを発生させる場合は、微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板の間隔を保持した状態で相対移動操作をする必要が無いことから、微粒子分離用システムの操作性を向上することができる。更に、カバー板を微粒子分離用マイクロ流路チップに形成した主流路の全てを覆う大きさで形成すると、相対移動させる場合と比較して、一度に多くの主流路にメニスカスを発生することができるので、処理効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1の主流路2の断面を示す図である。
【図3】図3は、微粒子分離用マイクロ流路チップを作製する手順を示したフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップの他の例の概略を示す図である。
【図5】図5は、本発明の微粒子分離用システムの概略及び使用形態を示す図で、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル液用薄板及びシース液用薄板を相対移動させることでメニスカスを発生させる実施形態を示している。
【図6】図6は、メニスカスの発生原理を説明する図である。
【図7】図7は、本発明の微粒子分離用システムの概略及び使用形態を示す図で、微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板を相対移動させずサンプルを吸引することでメニスカスを発生させる実施形態を示している。
【図8】図8(1)~(5)は、図7のA-A′断面図で、本実施形態におけるメニスカスの発生原理を説明する図である。
【図9】図9(1)は吸引ユニット35の概略を示す上面図で、図9(2)は吸引ユニット35のB-B′断面図を示している。
【図10】図10は、図面代用写真で、実施例1で得られた微粒子分離用マイクロ流路チップの外観を示す写真である。
【図11】図11は、図面代用写真で、実施例2で得られた微粒子分離用マイクロ流路チップの外観を示す写真である。
【図12】図12は、図面代用写真で、実施例4で得られた微粒子分離用マイクロ流路チップの外観を示す写真である。
【図13】図13、実施例1~4で得られた微粒子分離用マイクロ流路チップを用いて血液サンプルからCTCを分離した際の捕捉率を示す図である。
【図14】図14は、図面代用写真で、実施例12において、サンプル液を吸引することで、メニスカスが発生する位置がずれていることを示す写真である。
【図15】図15は、図面代用写真で、実施例13において、サンプル液を吸引することでメニスカスが発生する位置がずれること、及び直径20μmのビーズが捕捉部位で捕捉されていることを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、微粒子分離用マイクロ流路チップ、該チップを用いた微粒子分離用システム及び微粒子分離方法について詳しく説明する。

【0024】
図1は、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップの一例を示しており、微粒子分離用マイクロ流路チップ1は、主流路2、主流路2に設けられた複数の捕捉部位3、複数の主流路2の一端に連結する排出路4、排出路4から排出される流体の排出口5を有している。なお、本発明において、「微粒子」とは、液体に分散できる粒子であって、粒子の形態は単独又は凝集状態のものを意味する。微粒子の大きさは、メニスカスの原理が適用できる範囲であれば特に制限はなく、約1mm以下の大きさであればよい。また、「複数の主流路」とは主流路が少なくとも2本以上であることを意味する。

【0025】
図2は、図1の主流路2の断面を示す図で、(1)は主流路2の捕捉部位3が設けられていない位置a-aの断面図、(2)は主流路2の捕捉部位3が設けられている位置b-bの断面図である。主流路2の幅及び深さ、捕捉部位3の幅及び深さは、分離する対象物の大きさに応じて適宜設定すればよいが、図2(2)の下段部分の流路で除去すべき微粒子を後述するシース液を用いてチップから排出し、上段の捕捉部位で目的の微粒子を捕捉することから、前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路2の幅AはY<A<X、前記捕捉部位3の幅Bは1X<B<10X、前記捕捉部位3の深さCは1X<C<10X、前記捕捉部位3における流路の深さDはY<Dとすることが望ましく、前記捕捉部位3以外の流路の深さEはE=C+Dとすることが好ましい。B及びCを10X以上にすると、捕捉部位3の大きさに対する主流路2の幅が小さくなりすぎ、微粒子の分離・除去の処理能力が低下するので好ましくない。なお、前記の1X<B<10X、1X<C<10Xは、捕捉部位3の下段の主流路2が一本の例であるが、捕捉部位3の下段に複数本の主流路2を設けて微粒子分離の処理能力を上げれば、B及びCは10X以上であってもよい。

【0026】
また、前記の数値は目的の微粒子の濃縮等、捕捉部位で複数個の微粒子を捕捉する場合の範囲であるが、捕捉した微粒子を分析等するために個々の捕捉部位3で捕捉する微粒子を1個とする場合は、1X<B<2X、1X<C<2Xとすればよい。更に、捕捉部位3で捕捉される目的の微粒子が生体細胞等、形状が変化し易い場合は、流体力により細胞が変形して捕捉部位3をすり抜けてしまう可能性がある。そのため、主流路の幅Aは目的の微粒子の形状の変化割合に応じて適宜選択すればよく、例えば、CTCの場合は、前記主流路2の幅AをY<A<0.8Xとすることが好ましい。

【0027】
全血から、CTCを捕捉し、CTC以外の赤血球、白血球等の血球細胞を除去する場合、主流路2の幅Aは、CTCの直径(15~30μm)よりは小さく、赤血球、白血球等の血球細胞(約7μm)より大きくすればよく、8~12μmが好ましい。一方、捕捉部位3は、CTCを捕捉できる形状であれば特に制限はなく、円形、略正方形、6、8等の多角形が挙げられ、捕捉部位3でCTCを捕捉する必要があることから、捕捉部位3の幅B及び深さCは、CTCの直径より大きい必要があり、16~36μmが好ましい。なお、捕捉部位3の幅とは、捕捉部位3の形状が円形の場合は直径、正方形の場合は1辺、6、8等の多角形の場合は多角形の中心を通る最短となる長さを意味する。

【0028】
また、捕捉部位3においては、(2)で示される上段部分でCTCを捕捉し、下段部分の主流路2で、後述するシース液で血球細胞を除去することから、主流路2の深さDは、少なくとも血球細胞の直径より大きい必要があり、また、1以上の血球細胞を同時に除去できることが好ましいことから、深さDは、8~20μmが好ましい。捕捉部位3が設けられていない主流路2の深さEはC+Dとすればよい。

【0029】
上記の例は、全血からCTCを分離する場合の大きさであるが、例えば、腹腔洗浄液において血球細胞または中皮細胞(約7~15μm)から胃がん細胞塊(25~50μm)を分離する場合は、主流路2の深さDは8~24μmとすればよく、捕捉部位3の幅B及び深さCは26μm~60μmとすればよい。

【0030】
前記微粒子分離用マイクロ流路チップは、フォトリソグラフィー技術を用いて作製することができる。図3は作製手順の一例を示したフローチャートで、図1及び2に示す微粒子分離用マイクロ流路チップは2段形状になっているため、2段露光技術を用いて作製する。

【0031】
先ず、シリコン基板を超音波洗浄機により有機洗浄し、ベイクする。次いで、図3に示す以下の手順で作製する。
1.ネガティブフォトレジスト(SU-8)をSiの基板上にスピンコートし、ホットプレート上でプリベイクする。
2.クロムマスク等のフォトマスクを用い露光する。
3.ホットプレート上でポストエクスポージャーベイクを行い、現像液(PMシンナー等)を用い現像した後、超純水を用いリンスし、スピンドライヤー等で水分をとばし乾燥させる。
4.2段目のSU-8のネガティブフォトレジストをスピンコートし、プリベイクする。
5.クロムマスク等を用い露光する。
6.ポストエクスポージャーベイク、現像、リンスを行い、パターンを形成する。
7.形成されたパターンを、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に転写する。
8.形成されたパターンからPDMSを分離する。
9.PDMS表面を親水化する。

【0032】
有機洗浄は、アセトン、エタノール等、半導体製造分野で一般的に用いられている洗浄剤であれば特に制限はされない。また、上記の手順では、基板としてSiを用いた例を示したが、フォトリソグラフィー技術分野で一般的に用いられている材料であれば基板の材料は特に限定はされず、例えば、シリコンカーバイド、サファイア、リン化ガリウム、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、窒化ガリウム等が挙げられる。ネガティブフォトレジストもSU-8に限定されず、例えば、KMPR等、また、ポジティブフォトレジストであれば、例えば、PMER、AZ等一般的に使用されているレジストを用いることもできる。

【0033】
また、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップの材料としては、上記手順ではPDMSを用いたが、例えば、PMMA(Poly(methyl methacrylate))、PC、硬質ポリエチレン製等のプラスチック、ハイドロゲル、ガラス等を用いてもよい。

【0034】
チップ表面は親水化処理されることで、マイクロチップに液体を注入した際、溝に気泡が入ることを防止できる。親水化処理方法としては、プラズマ処理、界面活性剤処理、PVP(ポリビニルピロリドン)処理、光触媒等が挙げられ、例えば、チップ表面を10~30秒間プラズマ処理することで、チップ表面に水酸基を導入することができる。また、チップ表面の浸水化処理は、主流路、後述する分岐流路及び捕捉部位のみを親水化処理してもよい。主流路、分岐流路及び捕捉部位以外の部分は親水化処理されていないので、サンプル液やシース液は主流路、分岐流路及び捕捉部位に流れやすくなり、微粒子の捕捉効率を向上することができる。主流路、分岐流路及び捕捉部位の親水化処理は、他の部分をマスク等で多い、上記と同様の方法で親水化処理すればよい。あるいは、上記マスクをポジネガ反転させてフッ素樹脂等を蒸着させて、疎水処理を行ってもよい。

【0035】
図4は、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップの他の例の概略を示す図である。図4の(1)~(3)に示す例は、いずれも、主流路11から分岐する分岐流路12を設け、該分岐流路12中に捕捉部位13が設けられ、そして、分岐流路12は、再び主流路11と接続している。なお、分岐流路12に設けられる捕捉部位13は図4の(1)~(3)に示されるように、主流路11と接触していてもよい。(1)は分岐流路12に設けられた捕捉部位13が円形状の例を示しており、(2)は主流路11の流れ方向の鉛直方向に、角が滑らかな略正方形の捕捉部位13が設けられた例を示しており、(3)は主流路11の流れ方向に角を滑らかにした略正方形の捕捉部位13が設けられるとともに主流路11の流れ方向を約90度変化させた例を示している。

【0036】
主流路11及び分岐流路12の幅・深さ、捕捉部位13の大きさは、分離する対象物の大きさに応じて適宜設定すればよいが、図2に示す微粒子分離用マイクロ流路チップと同様、捕捉部位13で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路11及び分岐流路12の幅FはY<F<Xが好ましく、前記捕捉部位13の幅G、並びに前記主流路11、分岐流路12及び捕捉部位13の深さHは、1X<G<10X、1X<H<10Xとすることが好ましいが、捕捉部位13に連結する分岐流路12の数を複数本設ける場合、G及びHは10X以上であってもよい。また、捕捉部位13で捕捉する微粒子を1個とする場合は、1X<G<2X、1X<H<2Xとすることが好ましい。更に、捕捉部位13で捕捉される目的の微粒子が生体細胞等、形状が変化し易い場合は、Y<F<0.8Xとすることが好ましい。捕捉部位13の下方にも更に流路を設ける場合は、主流路11、分岐流路12及び捕捉部位13の下方に、幅がF、深さJがY<Jの流路を更に設ければよい。

【0037】
例えば、全血から、CTCを捕捉し、CTC以外の赤血球、白血球等の細胞を除去する場合、主流路11の幅は、CTCの直径(15~30μm)よりは小さく、血球細胞(約7μm)より大きくすればよく、8~12μmが好ましい。一方、捕捉部位13は、CTCを捕捉する必要があることから、捕捉部位13の大きさは、CTCの直径より大きい必要がある。例えば、図4(1)の捕捉部位13が円形状の場合は、直径14が16~36μmであることが好ましく、(2)及び(3)の捕捉部位13が略正方形の場合は、辺15、16が、16~36μmであることが好ましい。なお、捕捉部位13の形状は、CTCが捕捉できる形状であれば特に制限はなく、6,8角形等の多角形でもよく、多角形の場合は上記のとおり、中心を通る最短となる線の長さが16~36μmとすればよい。

【0038】
図4(1)~(3)に示される形状の微粒子分離用マイクロ流路チップの場合、CTCは捕捉部位13にトラップされるが、後述するシース液は主流路11を流れるため、CTCはシース液の流体力を受けることがない。さらに、CTC以外の血球細胞の多くは、後述するシース液と共に主流路11を流れ、捕捉部位13に流入してしまった血球細胞は、捕捉部位13から更に伸びている分岐流路12を通り再び主流路11に戻すことができる。したがって、図1及び2に示される微粒子分離用マイクロ流路チップと違い、図4に示される微粒子分離用マイクロ流路チップでは、CTCとCTC以外の細胞の主要な流れが異なることから、捕捉部位13の下方に流路を形成することは必須ではない。下方に流路を設けない場合、主流路11、分岐流路12及び捕捉部位13の深さは16~36μmが好ましい。捕捉部位13の下方に流路を設ける場合は、図2に示されている場合と同様、捕捉部位13の下方の流路の深さは8~20μmが好ましく、捕捉部位13以外の部分については、捕捉部位13と流路の深さを合計した深さとすればよい。

【0039】
図4に示される形状の微粒子分離用マイクロ流路チップは、段差を設けない場合、図4に示される形状のマスクを用い、上記手順「4.~6.」の2段目のレジスト層を設ける手順を省略する以外は、上記と同様の手順で作製することができる。また、段差を設ける場合は、図4に示される形状のマスクを用いる以外は、上記と同様の手順で作製することができる。

【0040】
次に、上記の微粒子分離用マイクロ流路チップを用いた微粒子分離用システム及び使用方法について説明する。

【0041】
図5は、本発明の微粒子分離用システムの概略及び使用形態を示す図で、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル液用薄板及びシース液用薄板を相対移動させることでメニスカスを発生させる実施形態を示している。本実施形態の微粒子分離用システムは、微粒子分離用マイクロ流路チップ、サンプル液用薄板21、シース液用薄板22、シース液を吸引する図示しない吸引装置を含んでいる。

【0042】
サンプル液用薄板21、シース液用薄板22は、ガラス、プラスチック等、サンプルやシース液と反応しないものであれば特に制限はない。シース液としては、分離すべき微粒子に損傷等を与えないものであれば特に制限はなく、全血をサンプルとして用いる場合は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝液等各種緩衝液、疑似体液(SBF)、一般的な細胞培養液等、一般的に使用されているシース液であれば特に制限はない。

【0043】
図5は、サンプルとして全血を用いた例が示されており、全血23を微粒子分離用マイクロ流路チップ1とサンプル液用薄板21の間に注入し、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル用薄板21を相対的に移動させることで、メニスカス25が発生する。

【0044】
図6は、メニスカスの発生原理を説明する図で、本発明では、移流集積法と呼ばれる、気液界面に存在する微粒子間の毛管力(とくに横毛管力:lateral capillary forceと呼ばれる)を利用して、微粒子同士を細密充填構造に配列する手法を用いている。微粒子が溶液に分散した懸濁液のメニスカスを基板上に形成すると、メニスカスの先端において、図に示すように微粒子が溶液から頭を出す箇所が形成される。この頭が出ている箇所では、界面張力及び重力により下に押し付けられる力が微粒子に発生しながらメニスカスと共に移動し、微粒子はチップに設けられたマイクロ流路に捕捉される。また、シース液も同様にメニスカスを発生させることで、シース液が微細な主流路内に入り易くなる。

【0045】
ここで、図1のb-b断面図である図2(2)に示すように、マイクロ流路は2段形状になっており、CTCは上段の捕捉部位3にトラップされ、サイズの小さな血球細胞は下段の流路に落ちる。さらに、流路の上流側に、微粒子分離用マイクロ流路チップ1とシース液用薄板22の間にシース液24を注入しておき、そして、微粒子分離用マイクロ流路チップ1とシース液用薄板22を相対移動させながら図示しない吸引装置で下流側から吸引することによりシース液を上流から下流に流し、CTCを捕捉部位3にトラップしたまま血球細胞を洗い流すことで、CTCを効率的に分離することができる。また、図4に示す形状の微粒子分離用マイクロ流路チップを用いた場合は、CTCは捕捉部位13にトラップされるが、他の血球細胞等はシース液と共に、主流路11及び/又は分岐流路12を通って洗い流すことができる。なお、メニスカスを発生させるためには、微粒子分離用マイクロ流路チップを固定してサンプル液用薄板21及びシース液用薄板22を移動させてもよいし、サンプル液用薄板21及びシース液用薄板22を固定し微粒子分離用マイクロ流路チップを移動させてもよい。

【0046】
微粒子分離用マイクロ流路チップと、サンプル液用薄板21及びシース液用薄板22との間隔は、700~1000μmとすることが好ましい。700μmより小さいとサンプル液の導入量が減少し処理能力が低下し、1000μmより大きいとメニスカス力が低下し十分な分離が得られない。なお、上記間隔は、マイクロステージで調整することができる。また、微粒子分離用マイクロ流路チップと、サンプル液用薄板21及びシース液用薄板22との相対移動速度は、20~50μm/sが好ましい。20μm/sより遅いと、処理時間が長くなり処理能力が低下し、50μm/sより速いと微粒子が捕捉されずに分離効率が低減する。

【0047】
シース液の流速は、20~500μm/sが好ましい。20μm/sより遅いと血球細胞を洗浄する能力の低下により分離効率が低減し、500μm/sより速いと一旦捕捉されたCTCが吸引され分離効率が低減する。シース液の流速は、吸引装置の吸引力により調整すればよい。吸引装置は吸引ポンプ、マイクロシリンジ等、液体を吸引できるものであれば特に制限はない。なお、図5に示す例は、微粒子分離用マイクロ流路チップとシース液用薄板22との間にシース液24を必要に応じて注入する形式であるが、シース液用薄板22の一端に、シース液容器又はシース液容器から伸長しているチューブ等を連結することで、シース液を自動的に供給できるようにしてもよい。

【0048】
図7は、本発明の微粒子分離用システムの概略及び使用形態を示す図で、微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板を相対移動させずサンプル液を吸引することでメニスカスを発生させる実施形態を示している。本実施形態の微粒子分離用システムは、微粒子分離用マイクロ流路チップ1、該微粒子分離用マイクロ流路チップ1に重ねサンプル液及びシース液を吸引することでメニスカスを発生させるためのカバー板31、図示しない吸引手段及び/又は吸引装置を少なくとも含んでいる。図7に示す実施形態では、微粒子分離用マイクロ流路チップ1に排出口5を設ける必要は無く、複数の主流路2の一端に連結する排出路4から、サンプル液及びシース液を吸引できるようにすればよい。サンプル液及びシース液は、後述する吸引手段及び/又は吸引装置を用いて、排出路4から直接吸引・排出してもよいし、長手方向に形成した横溝33と該横溝33に連通する吸引孔34を含む吸引ユニット35を介して吸引手段及び/又は吸引装置により吸引してもよい。本実施形態では、後述する吸引手段及び/又は吸引装置を微粒子分離用マイクロ流路チップに密着して、主流路2から直接サンプル液及びシース液を吸引することもでき、その場合は、排出路4を設けなくてもよい。なお、本実施形態の吸引手段及び/又は吸引装置を用いて、必要に応じて吸引ユニット35を介してサンプル液及びシース液32を排出路4又は主流路2から直接吸引・排出する形態は、図5に示す実施形態にも適用することができる。また、本実施形態では、吸引手段及び/又は吸引装置を用いてサンプル液を吸引することでサンプル液中に含まれる微粒子を分離することから、希釈したサンプル液を使用すればサンプル液自体がシース液の役割をするので、サンプル液を流した後にシース液を流すことは必須ではない。目的微粒子の高純度な分離の場合はシース液を流すことで残存している除去する微粒子を洗い流す等、分離の目的に応じてシース液を流すか否かの選択を行えばよい。

【0049】
図8は、図7のA-A′断面図で、本実施形態におけるメニスカスの発生原理を説明する図である。図8(1)に示すように、微粒子分離用マイクロ流路チップ1とカバー板31の間にサンプル液、シース液32を注入し、図示しない吸引手段及び/又は吸引装置で吸引すると、サンプル液、シース液32は主流路2から排出路4を経由して排出される。その際、微粒子分離用マイクロ流路チップ1及びカバー板31との間のサンプル液、シース液32には、毛細管力が発生するため、図8(2)に示すようなメニスカスが発生する。

【0050】
なお、図8(2)に示すサンプル液及びシース液32の移動方向は、微粒子分離用マイクロ流路チップ1に対してカバー板31を平行に配置した場合であり、例えば、図8(3)に示すように、排出路4側のカバー板31を微粒子分離用マイクロ流路チップ1に近付けるように傾斜して配置すると、サンプル液及びシース液32に係る圧力のため、サンプル液及びシース液32は排出路4側に移動する。逆に、図8(4)に示すように、微粒子分離用マイクロ流路チップ1の排出路4側とは反対側のカバー板31を微粒子分離用マイクロ流路チップ1に近付けるように傾斜して配置すると、サンプル液及びシース液32に係る圧力のため、サンプル液及びシース液32は排出路4とは反対側に移動する。図8(2)~(4)の何れの実施形態でも本発明の実施をすることができるが、図8(3)に示す実施形態は、サンプル液及びシース液32が排出路4側に近付くことから、吸引手段及び/又は吸引装置の吸引力を小さくすることができるので好ましい。微粒子分離用マイクロ流路チップ1とカバー板31の間隔は、上記のサンプル液用薄板21と同様に、700~1000μmの間が好ましく、この間隔の範囲内で、マイクロステージを用いて調整すればよい。カバー板31を傾斜する場合は、6°~18°程度傾けることが好ましい。傾斜角度が6°より小さい場合は、サンプル液及びシース液に係る圧力が不足し、18°より大きい場合は、微粒子の捕捉に有効なメニスカスの角度より大きくなり過ぎるので好ましくない。図8(5)に示す実施形態は、吸引側にサンプル液及びシース液32のメニスカスを発生させないように、第2のカバー板311を設けたもので、閉じられた流路系を構成できることから安定した吸引を行うことができる。

【0051】
カバー板31及び第2のカバー板311は、上記のサンプル液用薄板21と同様の材料で作製すればよい。また、カバー板31の大きさは特に制限は無いが、本実施形態では、カバー板31を移動することなくメニスカスを発生することができることから、処理効率を向上させるためには、微粒子分離用マイクロ流路チップ1に形成した主流路2の全てを覆うことができる大きさで形成することが望ましい。また、第2のカバー板311の大きさは、主流路2と直交する横方向の長さはカバー板31と同じ長さにすればよく、幅はメニスカスが発生しない範囲内で適宜調整すればよい。

【0052】
サンプル液及びシース液32の吸引手段としては、例えば、布、コットン、スポンジ、セーム皮等の吸引パッドが挙げられ、排出路4又は主流路2に直接吸引パッドを当接してサンプル液及びシース液を吸引・排出すればよい。

【0053】
サンプル液及びシース液32の吸引・排出は、吸引ユニット35を介して行ってもよい。図9(1)は吸引ユニット35の概略を示す上面図で、図9(2)は吸引ユニット35のB-B′断面図を示している。吸引ユニット35は、サンプル液及びシース液32を毛管力で吸引することができる横溝33と該横溝33に連通し図示しない吸引装置と接続するための吸引孔34が設けられている。横溝33の幅は、少なくとも除去された微粒子を通過させる必要があることから、サンプルが全血の場合は少なくとも8μm以上、処理能力を上げるためには10μm以上とすることがより好ましい。一方、横溝33の幅は毛管力が発生すれば特に上限は無く、吸引するサンプル液、シース液の量や毛管力等を考慮して適宜調整すればよく、例えば、200μm程度の幅を設けてもよい。吸引ユニット35を排出路4又は主流路2上に当接させ、毛管力でサンプル液及びシース液32を横溝33に吸引することで、サンプル液及びシース液32を排出路4又は主流路2から排出することができる。また、横溝33に吸引したサンプル液及びシース液32を、ポンプ、マイクロシリンジ等の吸引装置を用い、吸引孔34を通して吸引・排出してもよい。排出するサンプル液、シース液の量が多く、横溝33のみでは吸引できない場合は、吸引装置を組合せて用いればよい。吸引孔34の数は特に制限は無く、各主流路2を流れるサンプル液及びシース液32の流速に大きな差異が発生しない程度の数を設ければよい。

【0054】
また、横溝33の幅を大きくし、横溝33に上記の布、コットン、スポンジ、セーム皮等の吸引手段を挿入し、該吸引手段に吸収したサンプル液及びシース液32を、吸引孔34をとおして吸引装置で吸引してもよい。本実施形態においては、主流路2を流れるサンプル液及びシース液の流速は、吸引手段及び/又は吸引装置の吸引力により調整する。そのため、単に吸引手段でサンプル液及びシース液32を吸引する、又は、毛管力により横溝33にサンプル液及びシース液32を吸引するより、吸引手段に吸引したサンプル液及びシース液を更に吸引装置で吸引することで、サンプル液及びシース液の吸引速度を安定に保つことができる。吸引装置と吸引孔34は、シリコン等のチューブを用いて連結すればよい。

【0055】
吸引ユニット35を構成する材料は、アクリル、ナイロン、テフロン(登録商標)等の樹脂、又はガラス等、サンプル液やシース液と反応しないものであれば特に制限はない。吸引ユニット35は、ドリル及びエンドミル等の切削工具を用いた切削加工、又は吸引ユニット35の形状のモールドを作製し射出成形により作製することができる。

【0056】
本実施形態の微粒子分離用システムは、先ず、微粒子分離用マイクロ流路チップ1とカバー板31の間にサンプル液を入れ、吸引手段及び/又は吸引装置によりサンプル液を吸引し、次に、必要に応じて、シース液を微粒子分離用マイクロ流路チップ1とカバー板31の間に入れ、シース液を吸引することで、例えば、血液サンプル中のCTCを捕捉部位にトラップし、他の血球細胞等はシース液と共に洗い流すことができる。微粒子分離用マイクロ流路チップ1とカバー板31の間へのサンプル液又はシース液は、シリンジ等を用いて微粒子分離用マイクロ流路チップ1とカバー板31の間から注入してもよいし、カバー板31に孔を設け、該孔からサンプル液及びシース液を注入してもよい。

【0057】
サンプル液及びシース液32の流速は、20~500μm/sが好ましい。20μm/sより遅いと血球細胞を分離・洗浄する能力の低下により分離効率が低減し、500μm/sより速いと一旦捕捉されたCTCが吸引され分離効率が低減する。サンプル液及びシース液の流速は、吸引手段及び/又は吸引装置の吸引力により調整すればよい。

【0058】
なお、本実施形態では、サンプル液を先ず流した後に、必要に応じてシース液を流す。したがって、全血等の粘性の高いサンプル液をそのまま吸引すると、大きな吸引力が必要となる。そのため、サンプル液として血液を用いる場合は、シース液等を用いて、2~10倍、好ましくは3~5倍程度に希釈してもよい。本実施形態では、相対移動により複数の主流路2に順番にメニスカスを発生させるのではなく、微粒子分離用マイクロ流路チップ1とカバー板31が重なっている部分の主流路2に対して同時にメニスカスを発生することができるので、全血を希釈した場合でも、分離に要する時間を十分短くすることができる。

【0059】
本発明の微粒子分離用システムは、捕捉部位での微粒子の捕捉効率を上げるための磁場発生装置及び/又は電場発生装置等を設けてもよい。例えば、捕捉部位下面に磁場発生装置として永久磁石または電磁石を設置して磁場ポテンシャル場を発生させ、EpCAM抗体等を標識した磁性粒子を特異的に吸着させたCTC、又は磁性粒子を非特異的に吸着させたCTC(エンドサイトーシスから取り込む)等、捕捉したい粒子に磁性を帯びさせた上で、本発明の微粒子分離用システムを用いると、磁性標識されていない他の粒子から精度よく分離することが可能である。

【0060】
また、捕捉部位下面又は捕捉部位側面に、電場発生装置として電極を設けて電場ポテンシャル場(不均一電場中)を発生させ、CTCと周囲媒質の分極と電場の勾配により生じる静電気力(クーロン力)を用いてCTCの捕捉をアシストすることも可能である。

【0061】
捕捉されたCTCの検出方法としては、FITCやPEで標識された抗EpCAM抗体等のCTC特異的な抗体を用いて蛍光染色して蛍光顕微鏡等により観察することにより行うことができる。また、光学顕微鏡を用いて明視野観察を行う場合には、パパニコロウ染色やギムザ染色を行うことで細胞内の核、細胞質等の形態的特徴を指標としてCTC検出を行うことが出来る。特に、捕捉したCTCを長期的に観察する際には、光学顕微鏡を用いて明視野観察することが好ましい。

【0062】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例】
【0063】
<実施例1>
〔微粒子分離用マイクロ流路チップの作製〕
先ず、シリコン基板をアセトン・エタノール・超純水の順に、45kHzで5分間ずつ超音波洗浄機により有機洗浄し、145℃で20分間ベイクした。次に、シリコン基板上にSU-8をスピンコートし、ホットプレート上で95℃で30分間、プリベイクした。次に、捕捉部位3の形状が略8角形のクロムマスクを用い露光後、ホットプレート上で95℃で2分間、ポストエクスポージャーベイクを行い、PMシンナーを用い現像した。現像後は、超純水を用いリンスし、スピンドライヤー等で水分をとばし乾燥させ、1段目の処理を行った。次いで、SU-8をスピンコートし、ホットプレート上で95℃で30分間プリベイクした。主流路の形状のクロムマスクを用い露光後、ホットプレート上で95℃で2分間、ポストエクスポージャーベイクを行い、PMシンナーを用い現像した。現像後は、超純水を用いリンスし、スピンドライヤー等で水分をとばし乾燥させ、2段目の処理を行った。形成されたパターンを、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に転写し、転写後、両者を分離し、PDMS表面をプラズマ処理(周波数50kHz,出力700W、30秒間)により親水化した。
【実施例】
【0064】
図10は実施例1で得られた微粒子分離用マイクロ流路チップの外観を示す写真で、微粒子分離用マイクロ流路チップの大きさは縦30mm、横30mmであった。マイクロ流路は、個々の捕捉部位の中心が流路の中心に一致した略8角形の形状で、捕捉部位の中心を通る最短となる線の長さは約30μm、深さは約30μmであった。また、流路の幅は約10μm、捕捉部位における流路の深さは約20μm、捕捉部位以外の流路の深さは約50μmであった。また、流路と流路の中心間距離は約60μmであった。
【実施例】
【0065】
<実施例2>
実施例1のクロムマスクに代え、図4(1)に示される、主流路及び主流路から分岐し再び主流路に接続する分岐流路を配置し、該分岐流路に円形状の捕捉部位を設けたクロムマスクを用い、2段目の処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の手順で微粒子分離用マイクロ流路チップを作製した。
【実施例】
【0066】
図11は実施例2で得られた微粒子分離用マイクロ流路チップの外観を示す写真で、微粒子分離用マイクロ流路チップの大きさは縦30mm、横30mmであった。捕捉部位は直径約30μmの円形状で、1段形成のため、主流路及び分岐流路の何れの箇所でも深さは約30μmであった。また、主流路及び分岐流路の幅は約8μm、主流路と主流路の中心間距離は約80μmであった。
【実施例】
【0067】
<実施例3>
実施例2のクロムマスクに変え、図4(2)に示される形状のマスクに変えた以外は、実施例2と同様の手順で微粒子分離用マイクロ流路チップを作製した。得られた微粒子分離用マイクロ流路チップの捕捉部位は、一辺が約30μmの角が滑らかな略正方形で、その他の寸法は、実施例2と同様であった。
【実施例】
【0068】
<実施例4>
実施例2のクロムマスクに変え、図4(3)に示される形状のマスクに変えた以外は、実施例2と同様の手順で微粒子分離用マイクロ流路チップを作製した。
【実施例】
【0069】
図12は実施例4で得られた微粒子分離用マイクロ流路チップの外観を示す写真である。写真から明らかなように、実施例2と違い、実施例4(実施例3も同様)では、捕捉部位の上流側と下流側で主流路の位置が変わる。したがって、実施例4では、次の捕捉部位を設ける際に、主流路の位置を一つ上流側の捕捉部位の主流路の位置と一致するようにマスクを設計したが、図4(3)に示す形状と同様の形状のものを繋げ、主流路が階段状になるように配置してもよい。捕捉部位は一辺が約30μmの角が滑らかな略正方形で、その他の寸法は、実施例2と同様であった。
【実施例】
【0070】
〔血液サンプルの作製〕
採取したヒト血液20μlに、1.0×10個の胃がん細胞株(ヒト胃がん由来の細胞株(GCIY-GFP)をトリプシン処理でバラバラにしたもの)を懸濁し、がん患者の血液を模した血液サンプルを作製した。なお、がん細胞の平均粒径は25μmであった。
【実施例】
【0071】
<実施例5>
〔微粒子分離用システムの作製及び血液サンプルからのCTC分離実験〕
実施例1~4で作製された微粒子分離用マイクロ流路チップと、ガラスで作製された縦20mm、横20mmのサンプル液用薄板の間に上記血液サンプル20μlを注入した。微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル液用薄板との間は、マイクロステージを用いて700μmとなるように調整した。また、微粒子分離用マイクロ流路チップと、ガラスで作製された縦10mm、横20mmのシース液用薄板との間にシース液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))10μlを注入した。なお、シース液については、適宜補充した。微粒子分離用マイクロ流路チップは、20μm/sの一定速度で移動させた。シース液の流速は20μm/sとした。
【実施例】
【0072】
上記〔血液サンプルからのCTC分離実験〕の結果を図13に示す。従来の抗EpCAM抗体を用いたCTCの捕捉の場合、血中のCTCの100乃至1000分の1程度しか捕捉することができないといわれており、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップは、非常に効率よくCTCを捕捉できることが明らかとなった。
【実施例】
【0073】
また、主流路上に捕捉部位を設けた実施例1と比較し、主流路に分岐流路を設け且つ分岐流路に捕捉部位を設けた実施例2~4では、CTCの捕捉効率が格段に向上した。これは、実施例1の主流路上に捕捉部位を設けた場合、捕捉されたCTCがシース液の流体力により変形し、捕捉部位から流出したためと考えられる。
【実施例】
【0074】
一方、実施例2~4の場合、CTCは捕捉部位で捕捉されるが、シース液は主流路を流れるため、CTCが受けるシース液の流体力は大幅に小さくなり、また、捕捉部位に流入した血球細胞は、分岐流路を通って再び主流路に戻すことができるため、CTCの捕捉効率が上がったと考えられる。
【実施例】
【0075】
<実施例6>
捕捉部位の中心を通る最短となる線の長さを約20μm、深さを約20μm、捕捉部位における流路の深さを約30μmとした以外は、実施例1と同様の手順で、微粒子分離用マイクロ流路チップを作製した。
【実施例】
【0076】
<実施例7>
捕捉部位の直径を約20μm、深さを約20μmとした以外は、実施例2と同様の手順で、微粒子分離用マイクロ流路チップを作製した。
【実施例】
【0077】
<実施例8>
捕捉部位の一辺の長さを約20μm、深さを約20μmとした以外は、実施例3と同様の手順で、微粒子分離用マイクロ流路チップを作製した。
【実施例】
【0078】
<実施例9>
捕捉部位の一辺の長さを約20μm、深さを約20μmとした以外は、実施例4と同様の手順で、微粒子分離用マイクロ流路チップを作製した。
【実施例】
【0079】
〔ポリスチレンビーズ懸濁液の作製〕
純水20μlに、18μmのポリスチレンビーズ及び7μmのポリスチレンビーズを懸濁したサンプル液を作製した。
【実施例】
【0080】
<実施例10>
〔ポリスチレンビーズ懸濁液からの18μmポリスチレンビーズの分離実験〕
実施例6~9で作製した微粒子分離用マイクロ流路チップ、及びシース液として純水を使用した以外は、上記〔血液サンプルからのCTC分離実験〕と同様の手順で分離実験を行った。形状が変化し難いビーズを分離した場合、実施例6~9の何れの形状のチップでも、大多数の18μmポリスチレンビーズのトラップが確認された。
【実施例】
【0081】
<実施例11>
〔微粒子分離用システムの作製〕
吸引ユニットのモールドを作製し、PDMSに該モールドの形状を転写して吸引ユニットを作製した。吸引ユニットの幅は6mm、長さは30mm、横溝の幅は160μm、吸引孔は直径1mmであった。また、吸引孔には、シリコンチューブ(アズワン社製)の一端を接続し、他端をマイクロシリンジ(KD Scientific社製)に接続した。カバー板は、ガラスで縦22mm、横30mmとなるように作製した。そして、実施例2で作製した微粒子分離用マイクロ流路チップと組み合わせることで、微粒子分離用システムを作製した。
【実施例】
【0082】
<実施例12>
〔血液サンプルの調整〕
上記〔血液サンプルの作製〕の手順で作製した血液サンプルを、シース液を用いて5倍に希釈してサンプル液を作製した。
【実施例】
【0083】
〔血液サンプル液の吸引実験〕
実施例11で作製した微粒子分離用マイクロ流路チップの排出路の上に、吸引ユニットを配置した。また、微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板の間隔を、吸引ユニット側は2mm、吸引ユニットと反対側は2mmとなるようにセットした。次に、作製したサンプル液750μlを、微粒子分離用マイクロ流路チップとカバー板の間に注入し、主流路を流れるサンプル液の速度が、400μm/sとなるようにマイクロシリンジを調整した。
【実施例】
【0084】
図14は、実施例12において、サンプル液を吸引することで、メニスカスが発生する位置がずれていることを示す写真で、図14(2)は、図14(1)から15秒経過後の写真である。図14(1)及び(2)の写真の比較から明らかなように、サンプル液を吸引することで、発生するメニスカスのラインが移動した。また、サンプル液吸引後に蛍光顕微鏡による観察を行ったところ、捕捉部位にCTCが捕捉されたことを確認した。
【実施例】
【0085】
<実施例13>
〔ポリスチレンビーズ懸濁液の作製〕
純水に、20μmのポリスチレンビーズは2.4×106/ml、3μmのポリスチレンビーズは1.1×10/mlの濃度となるように懸濁したサンプル液を作製した。
【実施例】
【0086】
〔ポリスチレンビーズ懸濁液からの20μmポリスチレンビーズの分離実験〕
血液サンプル液に換え、ポリスチレンビーズ懸濁液をサンプル液に用いた以外は、実施例12と同様の手順で分離実験を行った。図15は、実施例13において、サンプル液を吸引することでメニスカスが発生する位置がずれること、及び直径20μmのビーズが捕捉部位で捕捉されていることを示す写真で、図15(2)は、図15(1)から7秒経過後の写真である。図15(1)及び(2)の写真の比較から明らかなように、サンプル液を吸引することで、発生するメニスカスのラインが移動した。また、メニスカスラインが通過した後の捕捉部位には、20μmのポリスチレンビーズが捕捉されたことを確認した。
【実施例】
【0087】
以上の結果より、本発明の微粒子分離用システムは、微粒子分離用マイクロ流路チップの流路と捕捉部位の形状を変えることで、形状の変わり易い微粒子、形状の変わり難い微粒子を問わず、幅広い微粒子を効率よく分離できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップを含む微粒子分離用システムを使用することで、サンプル中のサイズの異なる微粒子を、抗体等を用いることなく迅速かつ高効率で分離することができる。したがって、全血からのCTCの分離等、臨床の場において非常に有効であることから、病院や救急センターなどの医療機関や大学医学部などの研究機関、教育機関において、がん診断のシステムとして利用が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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