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明細書 :乳酸菌増殖促進剤、制御性T細胞増加剤、乳酸菌増殖促進方法、制御性T細胞を増加させる方法、制御性T細胞増加効果の評価方法、および乳酸菌増殖促進効果の評価方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 乳酸菌増殖促進剤、制御性T細胞増加剤、乳酸菌増殖促進方法、制御性T細胞を増加させる方法、制御性T細胞増加効果の評価方法、および乳酸菌増殖促進効果の評価方法
国際特許分類 C12N   1/20        (2006.01)
C12N   5/0783      (2010.01)
C12Q   1/06        (2006.01)
FI C12N 1/20 ZNAA
C12N 5/00 202L
C12Q 1/06
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 66
出願番号 特願2015-504466 (P2015-504466)
国際出願番号 PCT/JP2014/056220
国際公開番号 WO2014/136982
国際出願日 平成26年3月10日(2014.3.10)
国際公開日 平成26年9月12日(2014.9.12)
優先権出願番号 61/775,309
優先日 平成25年3月8日(2013.3.8)
優先権主張国 アメリカ合衆国(US)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】岩倉 洋一郎
【氏名】唐 策
【氏名】大野 尚仁
出願人 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4B065
Fターム 4B063QA01
4B063QA18
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4B065BB18
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4B065CA44
要約 分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する、ラクトバチルス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)もしくはラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)との間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤、制御性T細胞増加剤、乳酸菌増殖促進方法、制御性T細胞を増加させる方法、制御性T細胞増加効果の評価方法、および乳酸菌増殖促進効果の評価方法。
特許請求の範囲 【請求項1】
分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する、ラクトバチルス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)もしくはラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)との間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤。
【請求項2】
前記βグルカンが、分子量1K~10Kのβグルカンである、請求項1に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤。
【請求項3】
前記βグルカンが、β(1→3)グルカンである、請求項1または請求項2に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤を含有する、制御性T細胞増加剤。
【請求項5】
分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有するラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤を対象に投与すること、を含むラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進方法。
【請求項6】
前記βグルカンが、分子量1K~10Kのβグルカンである、請求項5に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進方法。
【請求項7】
前記βグルカンが、β(1→3)グルカンである請求項5または請求項6に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進方法。
【請求項8】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤を対象に投与すること、を含む制御性T細胞の増加方法。
【請求項9】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤を投与された対象から採取した試料の微生物叢を解析すること、および、全細菌に対するラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の割合を算出すること、を含むラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進効果の評価方法。
【請求項10】
請求項9に記載の乳酸菌増殖促進効果の評価方法であって、(1)請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤を投与される前の対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対するラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の割合を算出すること、および、(2)請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤を投与された後の対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対するラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の割合を算出すること、とを含むラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進効果の評価方法。
【請求項11】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤を投与された対象から採取した試料中における制御性T細胞数を測定すること、を含むラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進効果の評価方法。
【請求項12】
請求項11に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進効果の評価方法であって、(1)請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤を投与される前の対象から採取した試料中における制御性T細胞数を測定すること、および、(2)請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進剤を投与された後の対象から採取した試料中における制御性T細胞数を測定すること、とを含むラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の増殖促進効果の評価方法。
【請求項13】
請求項4に記載の制御性T細胞増加剤を投与された対象から採取した試料の微生物叢を解析すること、および、全細菌に対するラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の割合を算出すること、を含む制御性T細胞増加効果の評価方法。
【請求項14】
請求項13に記載の制御性T細胞増加効果の評価方法であって、(1)請求項4に記載の制御性T細胞増加剤を投与される前の対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対するラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間の16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の割合を算出すること、および、(2)請求項4に記載の制御性T細胞増加剤を投与された後の対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対するラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間の16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の割合を算出すること、とを含む制御性T細胞増加効果の評価方法。
【請求項15】
ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間の16S
rDNAのホモロジーが90%以上である細菌を含む、制御性T細胞増加剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌増殖促進剤、制御性T細胞増加剤、乳酸菌増殖促進方法、制御性T細胞を増加させる方法、制御性T細胞増加効果の評価方法、および乳酸菌増殖促進効果の評価方法に関する。ここで、乳酸菌はラクトバチルス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus
salivarius)、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)もしくはラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)との間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌を表し、以後、ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌を「特定乳酸菌」と記載することもある。
【背景技術】
【0002】
骨髄II型C型レクチンファミリーのメンバーであるデクチン-1(Dectin-1)は、β-1,3またはβ-1,6結合グルカン(βグルカン)の受容体であり(Taylor
et al., 2002)、真菌の重要な細胞壁構成要素である。マウスおよびヒトの両方において、デクチン-1の遺伝的欠損は特異的な真菌種に対する顕著に過剰な感受性をもたらし(Ferwerda et al., 2009; Saijo et al., 2007; Taylor et al., 2007)、真菌感染からの宿主保護におけるデクチン-1の重要な役割を実証している。カスパーゼ動員ドメイン含有タンパク質9-核内因子κB経路の活性化を介して、デクチン-1は、樹状細胞(DC)およびマクロファージ(MΦ)において活性酸素種および炎症性サイトカイン産生を誘導し、続いてTh17免疫応答を誘導する(Conti et al., 2009; LeibundGut-Landmann et al., 2007)。天然由来のβグルカンは、一般に宿主の免疫向上に対して効果を有すると信じられており食品添加物として広く用いられているが、デクチン-1シグナル伝達の消化管の粘膜免疫系に対する正確な機能は依然としてほとんど知られていない。
【0003】
腸内微生物叢のバランスは、腸の疾患および健康において重要な役割を果たしている。いくつかの研究により哺乳類腸内にも共生真菌類が存在することが明らかにされているが(Iliev et al., 2012; Ott et al., 2008; Scupham et al., 2006)、真正細菌のメンバーがヒトの腸遠位部に含まれる何兆個もの微生物の中心となっており、宿主に役立つ種々の機能を果たしている(Berg, 1996; Bjorksten et al., 2001; Martin and Rhodes, 2000; Umesaki and Setoyama, 2000)。粘膜免疫系は、微生物叢と共に発達し、微生物の構成要素に対する寛容性および侵入病原体に対する防御の両方を含む二重の能力特性を獲得している。Toll様受容体およびヌクレオチド結合オリゴマー形成ドメインタンパク質様受容体などの病原体関連分子パターン(PAMP)受容体を介して、腸細胞またはパネート細胞は、細菌性病原体を感知して、続いて粘液および抗菌ペプチド(AMP)を産生して保護バリアを与える(Janeway and Medzhitov, 2002; Petnicki-Ocwieja et al., 2009; Vaishnava et al., 2008; Vaishnava et al., 2011)。一方で腸の貪食細胞は、防御性IgAまたはサイトカインを誘導することにより管腔の細菌性病原体を感知して応答する(Lande et al., 2007; Macpherson and Uhr, 2004; Niess et al., 2005)。PAMP受容体のメンバーとして、C型レクチン受容体であるデクチン-1は、腸内免疫細胞に対するその機能および腸内微生物に対するその影響について、ほとんど研究されていない。
【0004】
最近の研究により、単一の特定腸内共生細菌属が、養子腸免疫に影響を及ぼし、その後腸疾患および自己免疫疾患に影響を及ぼし得ることが示されている。RORγtTh17細胞の分化誘導により、セグメント細菌(SFB)は実験的な自己免疫性脳髄膜炎または自己免疫性関節炎を促進することができる(Lee et al., 2011; Wu et al., 2010)。一方でFoxp3Treg細胞の発生を促進することにより、クロストリジウム(Clostridium)は化学的に誘発された大腸炎を抑制することができる(Atarashi et al., 2011)。しかし、その他の共生細菌による免疫系に対する機能は、未だ明らかにされていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記状況を考慮して行われたものである。本発明の態様には、以下が包含される。
【0006】
<1> 分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する、特定乳酸菌増殖促進剤。
<2> 前記βグルカンが、分子量1K~10Kのβグルカンである、<1>に記載の特定乳酸菌増殖促進剤。
<3> 前記βグルカンが、β(1→3)グルカンである<1>または<2>に記載の特定乳酸菌増殖促進剤。
<4> <1>~<3>のいずれか1に記載の乳酸菌増殖促進剤を含有する、制御性T細胞増加剤。
【0007】
<5> 分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤を対象に投与すること、を含む特定乳酸菌の増殖促進方法。
<6> 前記βグルカンが、分子量1K~10Kのβグルカンである、<5>に記載の特定乳酸菌の増殖促進方法。
<7> 前記βグルカンが、β(1→3)グルカンである<5>または<6>に記載の特定乳酸菌の増殖促進方法。
<8> <1>~<3>のいずれか1に記載の特定乳酸菌増殖促進剤を対象に投与すること、を含む制御性T細胞の増加方法。
【0008】
<9> <1>~<3>のいずれか1に記載の特定乳酸菌増殖促進剤を投与された対象から採取した試料の微生物叢を解析すること、および、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出すること、を含む特定乳酸菌増殖促進効果の評価方法。
<10> <9>に記載の特定乳酸菌増殖促進効果の評価方法であって、(1)<1>~<3>のいずれか1に記載の特定乳酸菌増殖促進剤を投与される前の対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出すること、および、(2)<1>~<3>のいずれか1に記載の特定乳酸菌増殖促進剤を投与された後の対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出すること、とを含む特定乳酸菌増殖促進効果の評価方法。
<11> <1>~<3>のいずれか1に記載の特定乳酸菌増殖促進剤を投与された対象から採取した試料中における制御性T細胞数を測定すること、を含む特定乳酸菌増殖促進効果の評価方法。
<12> <11>に記載の特定乳酸菌増殖促進効果の評価方法であって、(1)<1>~<3>のいずれか1に記載の特定乳酸菌増殖促進剤を投与される前の対象から採取した試料中における制御性T細胞数を測定すること、および、(2)<1>~<3>のいずれか1に記載の特定乳酸菌増殖促進剤を投与された後の対象から採取した試料中における制御性T細胞数を測定すること、とを含む特定乳酸菌増殖促進効果の評価方法。
<13> <4>に記載の制御性T細胞増加剤を投与された対象から採取した試料の微生物叢を解析すること、および、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出すること、を含む制御性T細胞増加効果の評価方法。
<14> <13>に記載の制御性T細胞増加効果の評価方法であって、(1)<5>に記載の制御性T細胞増加剤を投与される前の対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出すること、および、(2)<5>に記載の制御性T細胞増加剤を投与された後の対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出すること、とを含む制御性T細胞増加効果の評価方法。
【0009】
<15> ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間の16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の細胞を含む、制御性T細胞増加剤。
【0010】
<16> <15>に記載の制御性T細胞増加剤を投与することを含む、制御性T細胞を増加させる方法。
【0011】
<17> ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間の16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の細胞を含む、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状の予防、治療もしくは改善のため、または整腸のための組成物。
【0012】
<18> 前記ラクトバチルス・ムリヌスがラクトバチルス・ムリヌスNBRC14221株である、<17>に記載の組成物。
【0013】
<19> 前記ラクトバチルス・サリバリウスがラクトバチルス・サリバリウスNBRC102160株である、<17>または<18>に記載の組成物。
【0014】
<20> 前記細胞が生細胞または死細胞である、<17>~<19>のいずれか一つに記載の組成物。
【0015】
<21> 前記炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状が炎症性腸疾患である、<17>~<20>のいずれか一つに記載の組成物。
【0016】
<22> 前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎またはクローン病である、<21>に記載の組成物。
【0017】
<23> 前記炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状が食品アレルギーである、<17>~<20>のうちいずれか一つに記載の組成物。
【0018】
<24> 前記炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状が全身アレルギーである、<17>~<20>のいずれか一項に記載の組成物。
【0019】
<25> 前記全身アレルギーが花粉症である、<24>に記載の組成物。
【0020】
<26> 医薬組成物である、<17>~<25>のいずれか一つに記載の組成物。
【0021】
<27> 前記医薬組成物が経口医薬組成物である、<26>に記載の組成物。
【0022】
<28> 前記組成物が食品または飼料である、<17>~<25>のいずれか一つに記載の組成物。
【0023】
<29> 炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状の予防もしくは治療のため、または整腸のための医薬の製造における、ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間の16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の細胞の使用。
【0024】
<30> <26>または<27>に記載の医薬組成物を治療有効量、それを必要とする対象に投与することを含む、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状の予防もしくは治療のための、または整腸のための方法。
【0025】
<31> 活性成分として、分子量0.2K~50Kのβグルカンを含む、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状を予防、治療もしくは改善するための、または腸の健康を維持するための組成物。
【0026】
<32> 前記βグルカンが水溶性である、<31>に記載の組成物。
【0027】
<33> 分子量0.2K~50Kのβグルカン混合物を含む、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状を予防、治療もしくは改善するための、または腸の健康を維持するための組成物。
【0028】
<34> 前記炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状が炎症性腸疾患である、<31>~<33>のいずれか一つに記載の組成物。
【0029】
<35> 前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎またはクローン病である、<34>に記載の組成物。
【0030】
<36> 前記炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状が食品アレルギーである、<31>~<33>のいずれか一つに記載の組成物。
【0031】
<37> 前記炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状が全身アレルギーである、<31>~<33>のいずれか一つに記載の組成物。
【0032】
<38> 前記全身アレルギーが花粉症である、<37>に記載の組成物。
【0033】
<39> 医薬組成物である、<31>~<38>のいずれか一つに記載の組成物。
【0034】
<40> 前記医薬組成物が経口医薬組成物である、<39>に記載の組成物。
【0035】
<41> 食品である、<31>~<38>のいずれか一つに記載の組成物。
【0036】
<42> 炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状の予防もしくは治療のための、または腸の健康を維持するための医薬品または飼料の製造における、分子量が0.2K~50Kのβグルカンの使用。
【0037】
<43> <31>~<41>のいずれか一つに記載の組成物を治療有効量、必要とする対象に投与することを含む、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状を予防もしくは治療するための、または腸の健康を維持するための方法。
【0038】
本発明の一の態様によれば、ラクトバチルス細菌、特にラクトバチルス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)NBRC14221株、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間の16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌が、腸内で制御性T細胞を誘導することにより腸炎症を抑制することが示された。このため、このような細菌の生細胞または死細胞を摂取すると、腸内の免疫バランスが抗炎症側にシフトし、炎症誘発食品、微生物感染、ストレス、食物アレルギーなどによって誘導される炎症性大腸炎に対しまたは自己免疫性大腸炎に対し、炎症抑制効果を示す。よって、炎症性腸疾患の予防又は治療のための新たな薬剤、および整腸作用を有する機能性食品を提供することができる。さらに、その効果は腸疾患に限定されず、本発明の第一の態様は、全身性アレルギー又は自己免疫の予防、治療または改善に対しても有効である。
【0039】
本発明において同定されたラクトバチルス・ムリヌスおよびラクトバチルス・サリバリウスは、デクチン-1欠損マウスのメタゲノム解析から抗炎症性特性を付与する株として同定され、制御性T細胞誘導効果を有する新たなグループの細菌である。
【0040】
本発明の一の態様には、分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤、分子量0.2K~50Kのβグルカンを投与することを含む特定乳酸菌の増殖促進方法、および、分子量0.2K~50Kのβグルカンの投与による特定乳酸菌の増殖促進効果の評価方法、が包含される。
【0041】
発明者らは、分子量0.2K~50Kのβグルカンがデクチン-1を介して特定乳酸菌の増殖を促進することを見いだした。デクチン-1は、真菌の細胞壁構成要素であるβグルカンの受容体であり、グルカンは、デクチン-1を介して自然免疫反応を活性化することが知られている。発明者らは、デクチン-1を欠損するClec7a-/-マウスの糞便中において、全細菌叢における特定乳酸菌の割合が増大することを見出した。さらに、分子量0.2K~50Kのβグルカンの投与によって、大腸の特定乳酸菌の割合が分子量0.2K~50Kのβグルカン非投与のコントロール群と比較して顕著に増加することを見出した。さらに、特定乳酸菌を投与することによって制御性T細胞数が増加し、炎症性腸疾患等の炎症性疾患もしくはアレルギー性の疾患が抑制されることを見い出した。発明者らは、これらの知見に基づいて、分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤、分子量0.2K~50Kのβグルカンを投与することを含む、特定乳酸菌の増殖促進方法、および、分子量0.2K~50Kのβグルカンの投与による特定乳酸菌の増殖促進効果の評価方法、を完成させた。
【0042】
分子量0.2K~50Kのβグルカンは、治療薬または機能性食品として投与された際に潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の予防および治療において有用であることが見いだされた。分子量0.2K~50Kのβグルカンは、潰瘍性大腸炎だけでなく食品アレルギーまたは全身性アレルギーの予防、治療または改善においても有用であると考えられる。さらに、本発明により、分子量が0.2K~50Kの範囲であるβグルカン分子が該範囲外の分子量を有するβグルカン分子と比べ、デクチン-1の抑制において強い活性を示すことが明らかにされた。上記範囲内の分子量を有するβグルカン分子は、特定乳酸菌の増殖を促進するための食品または医薬品、制御性T細胞を増加させるための食品または医薬品、炎症性腸疾患のための新たな治療薬に使用可能であり、健康増進を図る新たな機能性食品に応用のために特に適している。更に、家畜、家禽、ペットなどに投与する事により、炎症を抑制する事によって、健康を維持し、成長、体重増加などを促進する事ができる。
【0043】
分子量0.2K~50Kのβグルカンによる特定乳酸菌の増殖促進、制御性T細胞の増加効果または、炎症性腸疾患の抑制については知られておらず、本発明により初めて明らかにされた。βグルカンの免疫賦活活性の効果は、実験系によって一定ではない(すなわち、抑制型または活性化型に変化する)。これは、不純物として含まれるリポ多糖(LPS)などにより引き起こされるデクチン-1以外の因子の活性化によって結果が影響を受けていること、βグルカンの受容体が知られていないこと、および、βグルカンの分子量が多様であること、が原因であると考えられる。本発明では、分子量0.2K~50Kのβグルカンがデクチン-1に作用してデクチン-1の活性化を阻害することが初めて明らかにされた。さらに、βグルカンの分子量によってデクチン-1の活性化を阻害する作用の強さが相違すること明らかにされた。これまで用いられてきたβグルカン試料は、種々の分子量を有する種々の分子の混合物であり、この混合物は、分子量が50Kより大きい免疫賦活活性を有する分子、および分子量が0.2K~50Kであって免疫抑制活性を示す分子を含むものである。これらの分子の割合によって試料が異なった活性を示していたと推定される。一方、本発明では、両分子量範囲の分子を互いに分離し、免疫抑制活性を有する画分のみが良好に単離される。その結果、混入していた免疫賦活活性成分が除去されるため、抽出画分は強い免疫抑制効果を示す。さらに、これまで用いられてきた粒子状のβグルカンとはことなり、本発明で使用される分子量0.2K~50Kのβグルカンは可溶性であり、透析法などにより分子量に基づいて容易に分画することが可能である。したがって、本発明により、従来の技術では得ることができなかった、特定乳酸菌の増殖を促進する機能、制御性T細胞を増加させる機能、腸炎症を抑制する機能を有する分子量0.2K~50Kのβグルカンが良好に産生される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】Clec7a-/-マウスはDSS誘発性大腸炎に対して抵抗性を示し、その大腸菌内微生物叢はこの非感受性を伝達することができる。生存率(A)を毎日評価した(n=6/グループ)。
【図1B】Clec7a-/-マウスはDSS誘発性大腸炎に対して抵抗性を示し、その大腸菌内微生物叢はこの非感受性を伝達することができる。疾患スコア(B)を毎日評価した(n=6/グループ)。
【図1C】2%DSS処理後11日目にマウスを屠殺し、大腸の長さを測定した(C)。
【図1D】cLP中の好中球の細胞絶対数をFACSで評価した(D)。
【図1E】刺激を加えずに48時間培養した後にELISAでサイトカイン産生を測定した。図1C、D、およびEにおいては、4~6匹のマウスを1グループで使用した。(図1A~E)のデータは、3回の独立実験を代表するものである。
【図1F】SPFマウスに1%DSSを投与し、体重を毎日測定した(n=5/グループ)。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【図1G】無菌マウスに1%DSSを投与し、体重を毎日測定した(n=5/グループ)。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【図1H】無菌野生型レシピエントマウスの盲腸の大きさ、およびSPF野生型マウスまたはClec7a-/-マウスからのパイエル板(PP)移植後の盲腸の大きさ。
【図1I】野生型マウスまたはClec7a-/-マウスからパイエル板を移植後、レシピエントマウスに1%DSSを11日間投与し、大腸の長さを測定した。
【図1J】大腸中のTnfa mRNAおよびIl12p35 mRNAをリアルタイムRT-PCRで測定した(n=5/グループ)。
【図1K】SPFの野生型マウスまたはClec7a-/-マウスの大腸微生物叢を接種した無菌野生型マウスまたは無菌Clec7a-/-マウスに2%DSSを3日後に投与し、体重を3日毎に測定した。
【図1L】DSS処理後11日目のレシピエントマウスの大腸の長さを測定した(図1KおよびLにおいて、n=4/グループ)。データは、2回の独立実験を代表するものである。(図1B、C、D、E、I、L)のデータは、平均±標準偏差で表される。野生型に対して、p<0.05、**p<0.01。
【図2A】Clec7a-/-マウスの大腸において、ラクトバチルス・ムリヌス、Foxp3Treg集団が上方制御され、RORγtの発現が増強される。野生型マウスおよびClec7a-/-マウスの糞便微生物叢について細菌16S rDNA解析を行い、主要な共生細菌の割合を示した。
【図2B】野生型マウスおよびClec7a-/-マウスの糞便微生物叢について細菌16S rDNA解析を行い、グラム陽性菌:グラム陰性菌の比率を示した。
【図2C】野生型マウスおよびClec7a-/-マウスの糞便およびパイエル板における共生微生物叢全体に占める全ラクトバチルス属の割合を示した。
【図2D】野生型マウスおよびClec7a-/-マウスの糞便およびパイエル板における共生微生物叢全体に占める糞便クロストリジウム属の割合を示した。
【図2E】糞便微生物叢における主要なラクトバチルス種の頻度。(図2A~Dにおいて、n=3/グループ)。(図2A~E)のデータは、2回の独立実験を代表するものである。
【図2F】無感作マウスまたはDSS投与マウスのcLP細胞におけるFoxp3CD4T細胞の頻度を、フローサイトメトリーで評価した。各記号は別々のマウスを示す。
【図2G】マウス大腸におけるT-bet、RORγt、またはTGF-βをコードするmRNA転写物の発現をRT-PCRで測定した(n=4/グループ)。
【図2H】マウス大腸におけるT-bet、RORγt、またはTGF-βをコードするmRNA転写物の発現をRT-PCRで測定した(n=4/グループ)。(図2F~H)のデータは、3回の独立実験を代表するものである。
【図2I】CD25CD45RBhighCD4ナイーブT細胞をRag2-/マウスまたはRag2-/-Clec7a-/-マウスに移植し、35日後に、回収したFoxp3CD4T細胞の頻度をフローサイトメトリーで評価した(n=4/グループ)。
【図2J】Foxp3またはTGF-βの発現をリアルタイムRT-PCRで測定した(n=4/グループ)。データは、2回の独立実験を代表するものである。(図2F~I)のデータは、平均±標準偏差で表される。野生型マウスまたはRag2-/マウスに対して、p<0.05、**p<0.01。
【図3A】ラクトバチルス・ムリヌス生着マウスにおいてTreg細胞およびTh17細胞が増大する。CD25Foxp3Treg細胞の割合を、10CFUのラクトバチルス・ムリヌスを無菌ICR野生型マウスに5週間経口移植した後にFACSで調べた。
【図3B】全cLP細胞中のFoxp3CD4T細胞含有量を、10CFUのラクトバチルス・ムリヌスまたはアルカリゲネス・フェカリスを無菌C57BL/6野生型マウスに5週間経口移植した後にFACSで調べた(n=3~4/グループ)。
【図3C】IFN-γTh1細胞およびIL-10Tr1細胞の割合を、10CFUのラクトバチルス・ムリヌスを無菌ICR野生型マウスに5週間経口移植した後にFACSで調べた。
【図3D】IFN-γTh1細胞、IL-10Tr1細胞、およびIL-17Th17細胞の割合を、10CFUのラクトバチルス・ムリヌスを無菌ICR野生型マウスに5週間経口移植した後にFACSで調べた。
【図3E】LPリンパ球を抗CD3マウス抗体で48時間刺激し、培養上清中のIL-10濃度およびIL-17濃度をELISAで測定した(n=5~6/グループ)。データは、2回の独立実験を代表するものである。 データは、2回の独立実験を代表するものである。(図3A、B、D、E)のデータは、平均±標準偏差で表される。無菌コントロールに対して、p<0.05、**p<0.01。
【図4A】ラクトバチルス・ムリヌスは、大腸DCおよびMΦ(マクロファージ)においてTGF-βおよびIL-10を特異的に誘導する。CD11b細胞およびCD11c細胞はAutoMacsを用いて野生型cLP細胞から精製し、4×10個の細胞を(1ウエルあたり)4×10CFUのラクトバチルス・ムリヌス、アルカリゲネス・フェカリス、または大腸菌と12時間共培養した。サイトカイン遺伝子の発現をリアルタイムRT-PCRで測定した。
【図4B】全cLP細胞を図1Aに記載のように細菌と共培養し、Foxp3、RoRγt、およびT-betをコードする遺伝子をリアルタイムRT-PCRで測定した。3回の独立実験を代表するデータを示す。p<0.05、**p<0.01
【図5A】デクチン-1シグナル伝達の下流で抗菌ペプチドが誘導される。無感作の野生型マウスおよびClec7a-/-マウスの大腸におけるS100A、ホスホリパーゼA2(Pla2g2a)、Reg3、デフェンシンαおよびデフェンシンβ、ならびにリゾチームファミリーのメンバーの発現をリアルタイムRT-PCRを用いて測定した(n=4/グループ)。
【図5B】ラクトバチルス・ムリヌスまたはアルカリゲネス・フェカリスを組み換えS100A8+S100A9(1:1混合物、各ペプチド5mg/ml)の存在下で9時間培養し、分光計で細菌増殖を測定した。(図5AおよびB)のデータは、3回の独立実験を代表するものである。
【図5C】新鮮大腸切片(5mm)を100μg/mlのTLRリガンド除去ザイモサン(D-ザイモザン)と共に12時間培養し、S100a8の発現をリアルタイムRT-PCRで測定した。データは、2回の独立実験を代表するものである。データは、平均±標準偏差で表される。
【図6A】デクチン-1のアンタゴニストであるラミナリンは、マウスのDSS誘発性大腸炎を予防する。野生型マウスを蒸留水中の4%チオグリコール酸培地(TGC)で4日間腹腔内処理してTGC誘導腹腔内MΦ(マクロファージ)を回収し、1000μg/mlのラミナリンで3時間前処理した後、100μg/mlのTLRリガンド除去ザイモサンで3時間刺激した。Il1b mRNAおよびIl6 mRNAをリアルタイムqPCRで測定し、GAPDHで標準化した。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【図6B】5%のラミナリン(デクチン-1アンタゴニスト)またはカードラン(アゴニスト)を含む食品を3日間投与後の野生型マウスにおいてDS大腸炎が誘発された。これらのリガンドは実験期間中投与し続け、体重を毎日評価した(n=6/グループ)。
【図6C】5%のラミナリン(デクチン-1アンタゴニスト)またはカードラン(アゴニスト)を含む食品を3日間投与後の野生型マウスにおいてDS大腸炎が誘発された。これらのリガンドは実験期間中投与し続け、大腸炎疾患スコアを毎日評価した(n=6/グループ)。
【図6D】図6BおよびCに記載のDDS処理を11日間行った後、マウスを屠殺し大腸の長さを測定した。
【図6E】cLP細胞を回収し、全CLP細胞、好中球、および炎症性DCの絶対数をフローサイトメトリーで評価した。
【図6F】cLP細胞を刺激を加えずに48時間培養し、培養上清中のTNFおよびIL-10をELISAで測定した。
【図6G】cLP細胞中のFoxp3Treg細胞の頻度をフローサイトメトリーで評価した(n=4/グループ)。
【図6H】cLP細胞中のFoxp3Treg細胞の絶対数をフローサイトメトリーで評価した(n=4/グループ)。(図6B~H)のデータは、3回の独立実験を代表するものである。
【図6I】β-アクチンまたは16S rDNAに対する、糞便中ラクトバチルス・ムリヌスのリボソームDNA含有量を、ラミナリン処理の9日後にリアルタイムRT-PCRで測定した(n=6~8/グループ)。データは、2回の独立実験を代表するものである。平均±標準偏差。コントロールに対して、p<0.05、**p<0.01。
【図7A】ラクトバチルス・ムリヌスは、ヒトの腸にはほとんど存在せず、抗炎症性サイトカインをより効率的に誘導することができる。全ラクトバチルスDNAに対する、ヒト糞便中ラクトバチルス・ムリヌスのリボソームDNA含有量を、リアルタイムPCRで測定した。2種類の用量の糞便DNAテンプレート(0.5ng/μlおよび5ng/μl)を使用した。
【図7B】16S rDNAに対する、ヒトおよびマウスの糞便中のラクトバチルス・サリバリウスのリボソームDNA含有量を、リアルタイムRT-PCRで測定した。
【図7C】野生型マウスの1×10個の全cLP細胞を(1ウエルあたり)1×10CFUのラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・アニマリス(L.animalis)、ラクトバチルス・サリバリウス(L.salivarius)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)、またはラクトバチルス・ロイテリ(L.reuteri)と共に12時間共培養した。サイトカイン遺伝子の発現をリアルタイムRT-PCRで測定した。(図7A~C)のデータは、2回の独立実験を代表するものである。
【図8A】デクチン-1の発現は、DSS投与後に上方制御される。無感作の野生型およびClec7a-/-脾細胞由来の免疫細胞におけるデクチン-1の発現、を、リアルタイムRT-PCRで測定した(n=3/グループ)。
【図8B】無感作マウスまたはDSS投与マウスの大腸におけるサイトカインの発現を、リアルタイムRT-PCRで測定した(n=3/グループ)。
【図8C】無感作マウスまたはDSS投与マウスの大腸におけるデクチン-1の発現を、リアルタイムRT-PCRで測定した(n=3/グループ)。
【図8D】無感作の野生型マウスおよびClec7a-/-マウスの大腸の長さを測定した(n=3/グループ)。両試料とも黄褐色であった。
【図8E】IFN-γCD4(Th1)細胞およびIL-17CD4(Th17)細胞の割合を、フローサイトメトリーで調べた(n=4/グループ)。
【図8F】無感作Clec7a-/-マウスのCD4cLP T細胞中のTh17細胞の絶対数を、フローサイトメトリーで調べた(n=4/グループ)。
【図8G】無感作の野生型マウスまたはClec7a-/-マウスのIL-23cLP非リンパ球の割合をフローサイトメトリーで調べた(n=4/グループ)。
【図8H】無感作の野生型マウスまたはClec7a-/-マウスのIL-23cLP非リンパ球の絶対数をフローサイトメトリーで調べた(n=4/グループ)。2回の独立実験の代表データを示す。(図8B~D)のデータは、平均±標準偏差で表される。無感作コントロールまたは野生型コントロールに対して、p<0.05、**p<0.01。
【図9A】Clec7a-/-マウスは、DSS誘発性大腸炎に対して抵抗性を示す。図1に示すDSS処理した野生型マウスまたはClec7a-/-マウスのcL細胞によるサイトカイン産生を、刺激を加えずに24時間培養した後にELISAで評価した。
【図9B】野生型マウスまたはClec7a-/-マウスのcLPにおける炎症性の自然免疫細胞浸潤をフローサイトメトリーで測定した。左ブロックは、Gr1好中球、F4/80MΦ(マクロファージ)、およびCD11b+/-CD11cDCの割合を示し(象限中の数はパーセンテージを表す)、右ブロックは、MΦ(マクロファージ)およびDCの絶対数を示す。
【図9C】LPリンパ球をPMAおよびイオノマイシンで5時間刺激して、IL-17T細胞またはIFN-γCD4T細胞の頻度をフローサイトメトリーで分析した(AおよびB中、n=3~5/グループ)。データは、3回の独立実験を代表するものである。野生型コントロールに対して、p<0.05。
【図9D】HE染色により大腸遠位部の組織構造を調べた(40倍)。
【図9E】DSS投与した野生型マウスおよびClec7a-/-マウスの大腸の肉眼所見を示す。Clec7a-/-マウスの試料は黄褐色であったが、野生型マウスの試料はほぼ黒色だった。
【図10A】食品由来βグルカンは、Clec7a-/-マウスのDSS大腸炎抵抗性に関与していない。野生型マウスおよびClec7a-/-マウスにβグルカンを含まない合成飼料を3日間与え、2%DSSを飲料水投与して大腸炎を誘発した。生存率を毎日評価した(n=6/グループ)。
【図10B】体重を毎日評価した(n=6/グループ)。
【図10C】大腸疾患スコアを毎日評価した(n=6/グループ)。
【図10D】DSS投与12日後、全cLP細胞を回収して刺激を加えずに48時間培養し、ELISAでTNF産生を測定した(n=4/グループ)。(A~D)のデータは、3回の独立実験を代表するものである。(図10B~D)のデータは、平均±標準偏差で表される。野生型コントロールに対して、p<0.05、**p<0.01。
【図11A】大腸中に生存真菌は存在しない。Clec7a-/-マウスではラクトバチルスの割合が増加していたが、真菌rDNAはClec7a-/-SPFマウス、野生型SPFマウス、および無菌マウスのいずれにおいても同様に検出された。マウス糞便中の細菌rDNAを定量的リアルタイムRT-PCRで測定した。
【図11B】Clec7a-/-マウスではラクトバチルスの割合が増加していたが、真菌rDNAはClec7a-/-SPFマウス、野生型SPFマウス、および無菌マウスのいずれにおいても同様に検出された。真菌rDNAを定量的リアルタイムRT-PCRで測定した。
【図11C】SPFマウスの糞便中に生存真菌は検出されなかった。ポジティブコントロールとして、既知のCPUのカンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)をマウス糞便と混合し、真菌CFUを真菌特異的培地プレート上で48時間後に測定した、データは、2回の独立実験を代表するものである。野生型コントロールに対して、p<0.05。
【図12A】BALB/c Rag2-/-バックグラウンドのClec7a-/-マウスもまた、ラクトバチルス・ムリヌスが豊富である。Rag2-/-マウスまたはRag2-/-Clec7a-/-マウスに2%DSSを投与し、生存率を12日目まで毎日評価した(n=6/グループ)。
【図12B】Rag2-/-マウスまたはRag2-/-Clec7a-/-マウスに2%DSSを投与し、大腸疾患スコアを12日目まで毎日評価した(n=6/グループ)。
【図12C】Rag2-/-マウスまたはRag2-/-Clec7a-/-マウスの糞便中の全細菌rDNAおよびラクトバチルス・ムリヌスのrDNAをリアルタイムRT-PCRで定量的に測定した(n=4/グループ)。データは、3回の独立実験を代表するものである。
【図12D】野生型マウスのナイーブT細胞を図に示したマウスに移植し、大腸炎を誘発した。35日後、レシピエントであるRag2-/-マウスまたはRag2-/Clec7a-/-マウスにおける、大腸の長さを調べた(n=4~6/グループ)。
【図12E】野生型マウスのナイーブT細胞を図に示したマウスに移植し、大腸炎を誘発した。35日後、レシピエントであるRag2-/-マウスまたはRag2-/Clec7a-/-マウスにおける、盲腸炎症性浮腫の肉眼所見を調べた(n=4~6/グループ)。
【図12F】野生型マウスのナイーブT細胞を図に示したマウスに移植し、大腸炎を誘発した。35日後、レシピエントであるRag2-/-マウスまたはRag2-/Clec7a-/-マウスにおける、cLP Th17細胞、Th1細胞、およびIFN-γIL-17CD4T細胞の割合をフローサイトメトリーで調べた(n=4~6/グループ)。データは、2回の独立実験を代表するものである。(図12B、C、D、F)のデータは、平均±標準偏差で表される。Rag2-/-コントロールに対して、p<0.05、**p<0.01。
【図13】腸内共生細菌は脾臓DCおよびMΦ(マクロファージ)において種々のサイトカインを誘導することができる。 共生細菌を脾臓DCおよびMΦ(マクロファージ)と12時間共培養し、サイトカインの発現をリアルタイムRT-PCRで測定した。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【図14A】Clec7a-/-マウスの大腸では特定の抗菌タンパク質の発現が低下する。無感作のRag2-/-マウスまたはRag2-/-Clec7a-/-マウスの大腸におけるS100a8、ホスホリパーゼA2(Pla2g2a)、Reg3g、およびReg3bの発現を、リアルタイムRT-PCRを用いて測定した(n=4/グループ)。
【図14B】全大腸細胞中のCD11b細胞、CD11c細胞、MHC classII細胞、DX5細胞、およびCD45細胞を除去することにより上皮細胞を精製し、Reg3γおよびReg3βの発現をリアルタイムRT-PCRで測定した(n=4/グループ)。(図14AおよびB)のデータは、3回の独立実験を代表するものである。
【図14C】Rag2-/-マウスまたはRag2-/-Clec7a-/-マウスの大腸におけるリゾチーム(Lys1、2)、αデフェンシン(Defa1、3、rs1)、βデフェンシン(Defb1~3)、およびカテリシジン抗菌ペプチド(Camp)などの抗菌タンパク質の発現を、リアルタイムRT-PCRで測定した。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【図15】分子量0.2K~50Kのラミナリンは、デクチン-1を介したサイトカイン誘導を効果的に抑制する。 アラメ由来のラミナリン混合物を巨大分子透析膜で分画し、異なる分子量(<1000、<3500、<10000、および<50000)を有するラミナリン調製物に分離した。図6Aに記載の方法と同じ方法でTGC-MΦ(TGC-マクロファージ)を回収して1000μg/mlの分画前のラミナリン混合物または異なる分子量を有するラミナリンで3時間前処理した後、100μg/mlのTLRリガンド除去ザイモサンで48時間刺激した。細胞培養上清中のTNFおよびIL-10の産生をELISAで測定した、データは、2回の独立実験を代表するものであり、平均±標準偏差で表される。TLRリガンド除去ザイモサングループに対して、p<0.05、**p<0.01。
【図16A】ラクトバチルス・ムリヌスは大腸炎の発症を改善することができる。無菌C57BL/6マウスにラクトバチルス・ムリヌス(NBRC14221)またはアルカリゲネス・フェカリス(NBRC13111)を生着させた。4カ月後、これらのマウスに2%DSSを投与し、体重減少を11日間経時的に観察した。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【図16B】無菌C57BL/6マウスにラクトバチルス・ムリヌス(NBRC14221)またはアルカリゲネス・フェカリス(NBRC13111)を生着させた。4カ月後、これらのマウスに2%DSSを投与し、疾患指数を11日間経時的に観察した。データは、2回の独立実験を代表するものである。
【図16C】SPF野生型マウスに熱殺菌した1×10個のラクトバチルス・ムリヌスを7日間経口投与した後、2%DSSで処理した。大腸疾患スコアを毎日評価した(n=6/グループ)。データは、2回の独立実験で再現可能であり、平均±標準偏差で表される。コントロールに対して、p<0.05、**p<0.01。
【図16D】SPF野生型マウスに熱殺菌した1×10個のラクトバチルス・ムリヌスを7日間経口投与した後、2%DSSで処理した。生存率を毎日評価した(n=6/グループ)。データは、2回の独立実験で再現可能であり、平均±標準偏差で表される。コントロールに対して、p<0.05、**p<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施形態は、分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤、分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する制御性T細胞増加剤、分子量0.2K~50Kのβグルカンを対象に投与することを含む特定乳酸菌の増殖促進方法、分子量0.2K~50Kのβグルカンを対象に投与することを含む制御性T細胞の増加方法、および、特定乳酸菌の増殖促進効果の評価方法、を含む。
本発明の一つの態様によれば、分子量0.2K~50Kのβグルカンが特定乳酸菌の増殖を促進する作用を有すること、特定乳酸菌の増殖が制御性T細胞を上方制御し、炎症性腸疾患を抑制する活性を有することが初めて明らかにされた。これに基づいて、(1)分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤、(2)特定乳酸菌増殖促進剤を含有する、制御性T細胞増加剤、(3)分子量0.2K~50Kのβグルカンを対象に投与することを含む特定乳酸菌の増殖促進方法、(4)分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤を対象に投与することを含む制御性T細胞の増加方法、(5)分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤を投与された対象から採取した試料の微生物叢を解析すること、および、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出すること、を含む特定乳酸菌増殖促進効果の評価方法、(6)分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤を投与された対象から採取した試料中における制御性T細胞数を測定すること、を含む特定乳酸菌増殖促進効果の評価方法、(7)分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する制御性T細胞増加剤を投与された対象から採取した試料の微生物叢を解析すること、および、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出すること、を含む制御性T細胞増加効果の評価方法、(8)ラクトバチルス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)もしくはラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)との間の16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌の細胞を含む、制御性T細胞増加剤、が提供される。

【0046】
βグルカンは、グルコースがβ1-3結合を介して重合した多糖類である。βグルカンを製造するための材料は、βグルカンを含むものであれば特に限定されない。キノコ類、真菌類、酵母、海藻等の細胞壁に多く含まれ、これらを材料として製造することができる。βグルカンの製造は、公知の方法で行うことができる。例えば、キノコ類、真菌類、酵母、海藻等を熱水に浸漬することによってβグルカンを抽出することができる。本発明に用いられるβグルカンの材料のうち、分子量0.2K~50Kのβグルカンの分画を多く含有していることから、海藻が材料として好適である。海藻に含有されるβグルカンは、ラミナリンと呼ばれている。

【0047】
ラミナリンは、アラメ(Eisenia Bicyclis)などの海藻に由来するβグルカンを指し、ラミナランとも呼ばれる。ラミナリンの構造は、下記の一般式(1)で表される(CAS登録番号9008-22-4)。一般式(1)において、nは、1以上の整数を表す。ラミナリンは、長鎖β-1,3結合糖鎖上にβ-1,6結合側鎖を有していてもよい。
【化1】
JP2014136982A1_000002t.gif

【0048】
ラミナリンは、海藻類のうちコンブ目、ヒバマタ目等の褐藻類の細胞壁に多く含まれ、これらの褐藻類から抽出することができる。抽出は種々の方法によって行うことができる。例えば、材料を熱水に浸漬することによる抽出、あるいは、松田らによる北海道大学水産科学研究彙報(BULLETIN OF FISHERIES SCIENCES, HOKKAIDO UNIVERSITY, 56(3):75-86、2005年12月)に記載の方法によってラミナリンの抽出を行うことができる。

【0049】
本発明のβグルカンの分子量は、デクチン-1の活性化阻害作用の観点から、0.2K~50Kであることが好ましく、1K~10Kであることがより好ましい。1K~3.5K、3.5K~10K、4K~10K、3.5K~8K、もしくは、5K~7Kの分子量を有するβグルカンを用いてもよい。本発明のβグルカンの分子量の分布は1種類の分子量のβグルカンを含有する一峰性のものでもよいし、2種類の分子量のβグルカンを含有する二峰性、三峰性以上の多峰性、あるいはスメアな分子量分布を示すものでもよい。

【0050】
本明細書において「分子量」は数平均分子量を示す。βグルカンの分子量は、既知の方法によって決定することができる。数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、膜浸透圧測定などによって測定することができる。 なお、分子量1Kは分子量が1000であることを示す。

【0051】
特定の分子量のβグルカンは、種々の分子量のβグルカンを含む混合物から、限外濾過、透析およびゲル濾過などの既知の方法によって得ることができる。所望の分子量を超える分子量のβグルカンを多く含有する材料を用いて本発明に用いるβグルカンを調製する場合には、化学的または酵素的に加水分解して使用することもできる。化学的な加水分解としては、例えば、酸を使用することができる。酵素的な加水分解としては、例えば、エンドβ-グルカナーゼ型の酵素を使用することができる。あるいは、本発明の効果を有する限りは、特定の分子量のβグルカンを高い割合で含有する褐藻の乾燥粉末等を使用することもできる。

【0052】
対象に分子量0.2K~50Kのβグルカンを投与する方法は特に制限されないが、経口投与、経腸投与が好ましい。本発明の特定乳酸菌増殖促進剤および制御性T細胞増加剤は、投与対象の腸内細菌叢の特定乳酸菌の割合を増大させる。分子量0.2K~50Kのβグルカンを投与する対象は特に制限されないが、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ヤギ、シカ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、リスなどの哺乳類、ニワトリ、アヒル、カモ、ガチョウ、キジ、ハト、ウズラ、ホロホロ鳥、七面鳥、インコ、オウムなどの鳥類が好ましい。特に好ましい対象は哺乳類である。

【0053】
本発明に用いる分子量0.2K~50Kのβグルカンは、医薬品または食品もしくは飼料に配合して対象に投与することが好適である。本発明の特定乳酸菌増殖促進剤または制御性T細胞増加剤は、本発明の効果を有する限りは分子量0.2K~50Kのβグルカン以外の他の成分を含んでいてもよい。本発明の特定乳酸菌増殖促進剤または制御性T細胞増加剤は、本発明の効果を有する限りは分子量が0.2K~50Kの範囲内ではないβグルカンを含んでいてもよい。本発明の特定乳酸菌増殖促進剤または制御性T細胞増加剤が含んでいてもよい他の成分としては、例えば、ビタミン類、アミノ酸等の成分、賦形剤、増粘剤等が挙げられる。

【0054】
本発明の特定乳酸菌増殖促進剤によって増殖が促進される特定乳酸菌は腸内に生息し得る乳酸菌である。制御性T細胞を増加させる効果を有する、特定乳酸菌は、ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、または、これらとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上(例えば、92%以上、95%以上、98%以上、99%以上)である細菌である。ホモロジーは、例えば、NCBI BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を用いて算出することができる。ラクトバチルス・ムリヌスはラクトバチルス・ムリヌスNBRC14221株であってもよく、ラクトバチルス・サリバリウスはラクトバチルス・サリバリウスNBRC102160株であってもよい。

【0055】
本発明の分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤を対象に投与することによって、投与対象の制御性T細胞を増加させることができる。つまり、本発明の特定乳酸菌増殖促進剤は、制御性T細胞増加剤として用いてもよい。

【0056】
本発明の1つの実施形態は、分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤を投与された対象において、特定乳酸菌の増殖促進効果を評価する方法である。特定乳酸菌の増殖促進効果を評価する方法としては、特定乳酸菌増殖促進剤を投与された対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出することを含む方法、及び、分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤を投与された対象から採取した試料中における制御性T細胞数を測定すること、を挙げることができる。

【0057】
分子量0.2K~50Kのβグルカンを投与された対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出することを含む方法は、(1)分子量0.2K~50Kのβグルカンを投与される前の対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出すること、および、(2)分子量0.2K~50Kのβグルカンを投与された後の対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を測定すること、とを含むことが好ましい。(2)で算出した全細菌に対する特定乳酸菌の割合が、(1)で算出した全細菌に対する特定乳酸菌の割合より高い場合には、当該対象において分子量0.2K~50Kのβグルカンの投与による特定乳酸菌増殖促進効果があったと評価する。(2)で算出した全細菌に対する特定乳酸菌の割合から、(1)で算出した全細菌に対する特定乳酸菌の割合を引いた値が大きいほど、当該対象において分子量0.2K~50Kのβグルカンの投与による特定乳酸菌増殖促進効果が高かったと評価することができる。
例えば、(2)で算出した全細菌に対する特定乳酸菌の割合が、(1)で算出した全細菌に対する特定乳酸菌の割合を引いた値が統計学的に有意に増加していれば、当該対象において分子量0.2K~50Kのβグルカンの投与による特定乳酸菌増殖促進効果があったと評価してもよい。統計学的方法としては、一般的に用いられる方法のいずれも用いることができる。例えば、ステューデントt検定等が挙げられる。

【0058】
あるいは、(2)で算出した全細菌に対する特定乳酸菌の割合の、(1)で算出した全細菌に対する特定乳酸菌の割合に対する増加率について基準値を設定し、前記基準値より増加率が高いときに、当該対象において分子量0.2K~50Kのβグルカンの投与による特定乳酸菌増殖促進効果があったと評価してもよい。基準値は、所望の特定乳酸菌増殖促進効果の大きさに応じて任意に設定することができる。例えば、受信者動作特性(ROC)曲線から基準値を決定してもよい。基準値は、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上などに設定され得る。

【0059】
特定乳酸菌の増殖促進効果を評価する方法において対象とされる特定乳酸菌は、本発明の特定乳酸菌増殖促進剤によって増殖が促進される特定乳酸菌として本明細書に記載されている細菌の定義、説明および範囲がそのまま適用される。つまり、本発明の特定乳酸菌の増殖促進効果を評価する方法は、ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間での16S rDNAのホモロジーが90%以上(例えば、92%以上、95%以上、98%以上、99%以上)である細菌の殖促進効果を評価する方法であってもよい。

【0060】
分子量0.2K~50Kのβグルカンを投与された対象から採取した試料の微生物叢を解析し、全細菌に対する特定乳酸菌の割合を測定することを含む方法において、対象から採取する試料は、糞便、腸管内容物、腸液、腸洗浄液、腸組織などを含む。非侵襲性であるという観点から、糞便であることが好ましい。採取された試料の微生物叢を解析して全細菌に対する特定乳酸菌の割合を算出する方法は、既知の微生物叢の解析方法のいずれを使用してもよい。例えば、細菌の全ゲノムシークエンスを決定する方法(メタゲノム解析法)や、16S細菌リボソームDNA配列を分析する方法、などが挙げられる。16S細菌リボソームDNA配列を分析する方法としては、FISH法、16Sr DNAクローンライブラリー法、DGGE/TGGE法、T-RFLP法、PCR法などが挙げられる。定量性に優れているという観点から、16S rDNAクローンライブラリー法が好適に使用される。具体的には、糞便中の細菌の16S rDNAを本明細書の表1に記載のユニバーサルプライマーを用いてPCR法によって増幅し、増幅された16S rDNAを大腸菌に導入してクローニングし、各クローンのDNA配列を決定する事により、特定細菌の全細菌中の割合を算出する。この時、特定細菌、例えば、L. murinusに特異的なプライマーを用いてPCRを行う事により、容易に全細菌中のL.murinusの割合を知ることが出来る。それぞれの方法に用いるためのプロープやプライマーは公知のものから適宜選択することができる(例えば、Salzman NH et al., Nat. Immunol. 2010;11(1):76-83など)。あるいは、16S細菌リボソームDNA配列からプローブやプライマーを設計してもよい。本明細書の表1に記載のプライマーを用いてもよい。

【0061】
分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤を投与された対象から採取した試料中における制御性T細胞数を測定することを含む方法は、(1)分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤を投与される前の対象から採取した試料中の制御性T細胞数を測定すること、および、(2)分子量0.2K~50Kのβグルカンを含有する特定乳酸菌増殖促進剤を投与された後の対象から採取した試料中の制御性T細胞数を測定すること、とを含むことが好ましい。(2)で測定した制御性T細胞数が、(1)で測定した制御性T細胞数より大きい場合には、当該対象において特定乳酸菌増殖促進剤の投与による特定乳酸菌増殖促進効果があったと評価する。(2)で測定した制御性T細胞数から、(1)で測定した制御性T細胞数を引いた値が大きいほど、当該対象において特定乳酸菌増殖促進剤の投与による特定乳酸菌増殖促進効果が高かったと評価することができる。例えば、(2)で測定した制御性T細胞数が、(1)で測定した制御性T細胞数を引いた値が統計学的に有意に増加していれば、当該対象において特定乳酸菌増殖促進剤の投与による特定乳酸菌増殖促進効果があったと評価してもよい。統計学的方法としては、一般的に用いられる方法のいずれも用いることができる。例えば、t検定等が挙げられる。

【0062】
あるいは、(2)で測定した制御性T細胞数の、(1)で測定した制御性T細胞数に対する増加率について基準値を設定し、前記基準値より増加率が高いときに、当該対象において分子量0.2K~50Kのβグルカンの投与による特定乳酸菌増殖促進効果があったと評価してもよい。基準値は、所望の特定乳酸菌増殖促進効果の大きさに応じて任意に設定することができる。例えば、受信者動作特性(ROC)曲線から基準値を決定してもよい。基準値は、例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上などに設定され得る。

【0063】
分子量0.2K~50Kのβグルカンを含む特定乳酸菌増殖促進剤を投与された対象から採取した試料中における制御性T細胞数を測定することを含む方法において、対象から採取する試料は、血液、組織片などを含む、いずれの生体試料でもよい。侵襲性が低いという観点から、血液であることが好ましい。血液を遠心分離してバッフィーコートを回収して検体としてもよいし、Ficoll等を含む適当な分離液を用いてリンパ球を分離して検体としてもよい。採取された試料中にける制御性T細胞数を測定することを含む方法を測定する方法としては、制御性T細胞数測定方法のいずれをも使用することができる。例えば、CD4およびFoxP3をマーカーとしてフローサイトメトリーなどを用いて制御性T細胞を判別および/または計数することができる。CD4およびFoxP3が陽性であれば制御性T細胞であると判定される。制御性T細胞を分画する際のマーカーとしては、CD25、CD127などを用いてもよい。

【0064】
本発明の一の実施形態は、ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスとの間の16S rDNAのホモロジーが90%以上(例えば、92%以上、95%以上、98%以上、99%以上)である細菌の細胞を含む、制御性T細胞増加剤、および、前記制御性T細胞増加剤を投与することを含む、制御性T細胞を増加させる方法、を提供する。

【0065】
ラクトバチルス・ムリヌスおよびラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスと16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌は、ラクトバチルス・ムリヌスはラクトバチルス・ムリヌスNBRC14221株であってもよく、ラクトバチルス・サリバリウスはラクトバチルス・サリバリウスNBRC102160株であってもよい。

【0066】
本発明のある実施形態は、ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスと16S rDNAのホモロジーが90%以上(例えば、92%以上、95%以上、98%以上、99%以上)である細菌を含む、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状の予防、治療もしくは改善のため、または整腸のための組成物を提供する。ラクトバチルス・ムリヌスはラクトバチルス・ムリヌスNBRC14221株であってもよく、ラクトバチルス・サリバリウスはラクトバチルス・サリバリウスNBRC102160株であってもよい。したがって、例えば、組成物は、ラクトバチルス・ムリヌスNBRC14221株の細菌、ラクトバチルス・サリバリウスNBRC102160の細菌、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスNBRC14221もしくはラクトバチルス・サリバリウスNBRC102160と16S rDNAのホモロジーが90%以上である細菌を含んでいてもよい。

【0067】
さらに、組成物中に含まれる細菌は、生菌または死菌のいずれであってもよい。疾患または症状について、組成物は、潰瘍性大腸炎またはクローン病などの炎症性腸疾患の予防、治療、または改善のために使用されてもよい。あるいは組成物は、食品アレルギーの予防、治療、または改善のために使用されてもよい。組成物はまた、花粉症などの全身アレルギーの予防、治療、または改善のために使用されてもよい。組成物は例えば、医薬組成物(医薬品)または食品であってもよい。医薬組成物は、経口投与されてもよいし、経腸投与されてもよい。

【0068】
本発明はまた、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状の予防もしくは治療のため、または整腸のための医薬の製造における、ラクトバチルス・ムリヌス、ラクトバチルス・サリバリウス、またはラクトバチルス属に属しラクトバチルス・ムリヌスもしくはラクトバチルス・サリバリウスと16S rDNAのホモロジーが90%以上(例えば、92%以上、95%以上、98%以上、99%以上)である細菌の細胞の使用も提供する。

【0069】
本発明はさらに、上記医薬組成物を治療有効量、それを必要とする対象に投与することを含む、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状の予防もしくは治療のための、または整腸のための方法を提供する。ここで、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状の予防もしくは治療のための、または整腸のための組成物に対する上記説明は、使用および方法に直接適用される。

【0070】
本発明の別の実施形態は、活性成分として、分子量0.2K~50Kのβグルカンを含む、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状を予防、治療もしくは改善するための、または腸の健康を維持するための組成物を提供する。βグルカンは水溶性βグルカンであってもよい。また、分子量0.2K~50Kのβグルカンを含む、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状を予防、治療もしくは改善するための、または腸の健康を維持するための組成物も提供する。両組成物について、組成物は潰瘍性大腸炎またはクローン病などの炎症性腸疾患の予防、治療、または改善のために使用されてもよい。あるいは組成物は、食品アレルギーの予防、治療、または改善のために使用されてもよい。組成物はまた、花粉症などの全身アレルギーの予防、治療、または改善のために使用されてもよい。組成物は例えば、医薬組成物(医薬品)または食品であってもよい。医薬組成物は、経口投与されてもよい。

【0071】
本発明はまた、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状の予防もしくは治療のための、または腸の健康を維持するための医薬品の製造における、分子量が0.2K~50Kのβグルカンの使用を提供する。また、上記組成物(いずれかの組成物)を治療有効量、必要とする対象に投与することを含む、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状を予防もしくは治療するための、または腸の健康を維持するための方法も提供する。更には腸の炎症を抑制する事によって、家畜や家禽、ペット等の健康を維持し、成長を促進する事もできる。ここで、炎症性もしくはアレルギー性の疾患もしくは症状を予防、治療もしくは改善するための、または腸の健康を維持するための組成物に対する上記説明は、使用および方法に直接適用される。

【0072】
βグルカンは、真菌の細胞壁構成要素であり、受容体であるデクチン-1を介して自然免疫反応を活性化するとされている。発明者らは、デクチン-1欠損(Clec7a-/)マウスが、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎に対して抵抗性を示すことを実証した。共生細菌におけるラクトバチルス・ムリヌス(L.murinus)の割合がClec7a-/-マウスの大腸で増加し、その結果Foxp3制御性T(Treg)細胞が増大した。ラクトバチルス・ムリヌスの経口投与によりTreg細胞の増大が引き起こされた。興味深いことに、ラクトバチルス・ムリヌスを死滅させることができる抗菌ペプチドであるカルプロテクチンS100Aが、Clec7a-/-マウスの大腸で顕著に減少していた。さらに、デクチン-1のアンタゴニストであるラミナリンの経口投与により、DSS誘発性大腸炎の発症が大幅に抑制された。これらの観察により、デクチン-1が腸内微生物叢の調節による腸内免疫の恒常性維持にとって重要であることが示され、炎症性腸疾患(IBD)の治療標的候補であることが示唆される。

【0073】
本発明では、デクチン-1シグナル伝達を介して腸内免疫系が大腸内微生物叢バランスおよびヘルパーT細胞分化を調節する機序が実証された。デクチン-1欠損マウスでは、共生微生物叢の主要メンバーの提示が著しく変化している。特に、この変化した微生物叢は、Treg細胞の発生および腸炎惹起性表現型と関連している。デクチン-1依存性殺菌分子の分泌は大腸内微生物叢のバランスを説明するものであり、デクチン-1シグナル伝達の阻害による大腸炎抑制に対する効果によりIBDの治療戦略についての新しい知見がもたらされる。

【0074】
結果
Clec7a-/-マウスはDSS誘発性大腸炎に対して抵抗性を示す
デクチン-1は、リンパ球よりもDCおよびMΦ(マクロファージ)などの骨髄細胞で発現していた(図8A)。大腸におけるこの分子の発現は、DSS投与後にTNFの発現と共に著しく上方制御されていた(図8Bおよび図8C)デクチン-1の同様の上方制御はまたIBD患者で観察されており(de Vries et al., 2009)、デクチン-1が腸の炎症性疾患に関与していることが示唆される。次に、Clec7a-/-マウスのDSS誘発性急性大腸炎に対する感受性を調べた。生理的条件下で、Clec7a-/-マウスの大腸の長さは正常であった(図8D)。Clec7a-/-の大腸固有層(cLP)において、Th1細胞ではなくTh17細胞の割合は野生型マウスより顕著に低かったが(図8E)、Th17細胞数は野生型マウスとClec7a-/-マウスで同様であった(図8F、1.5~3.5×10個のTh17細胞/大腸)。IL-23の主要産生細胞であるCD11c内在的cLP細胞の数および割合は、無感作の野生型マウスとClec7a-/-マウスで同様であった(図8Gおよび図8H)。

【0075】
2%DSSの飲料水投与12日後、すべての野生型マウスが死んだが、Clec7a/-マウスはDSS投与に対して完全に抵抗性を示した(図1A)。一貫して、下痢レベル、血便、および体重減少により評価した大腸炎重症度スコアは、Clec7a-/-マウスで顕著に低かった(図1B)。Clec7a-/-マウスにおける炎症性浮腫誘導性の大腸短縮が緩和され(図1Cおよび図9E)、Clec7a-/-マウスのcLP中の好中球、MΦ(マクロファージ)、およびDCの数および頻度が顕著に減少した(図1Dおよび図9B)。Clec7a-/-マウスの自然免疫cLP細胞によるTNFおよびIL-12の産生が著しく減少していたが、IL-1、IL-6、およびIL-17Fの産生は減少していなかった(図1Eおよび図9A)。一方、cLP中のTh1細胞およびTh17細胞の頻度は、Clec7a-/-マウスで変化していなかった(図9C)。組織学的検査により、Clec7a-/-マウスが大腸上皮細胞の損傷および炎症性細胞浸潤で評価されるように軽度の大腸炎のみを発症することが示された(図9D)。したがって、これらの観察により、デクチン-1シグナル伝達が自然免疫炎症性サイトカインの誘導を介してDSS誘導性大腸炎を悪化させることが示唆される。

【0076】
Clec7a-/-マウス腸由来の微生物叢は大腸炎に対する抵抗性に関与している
イーストなどのβグルカン成分を含む通常のマウス飼料として、食品由来βグルカンがDSS誘発性大腸炎をデクチン-1の活性化を介して促進する可能性について調べた。通常の固形飼料の代わりにβグルカンを含まない合成飼料をマウスに継続的に与えた後、大腸炎を誘導した。図10A~図10Dに示すように、Clec7a-/-マウスはDSS投与後に依然として長期間生存し、体重減少および疾患活性が非常に軽度であり、TNF産生が野生型マウスと比べて減少した。これらの観察により、食品中のβグルカンは、デクチン-1により促進される腸炎症の直接的な原因ではないことが示唆される。

【0077】
次に、デクチン-1シグナル伝達に関連する共生微生物叢候補のDSS誘発性大腸炎の発症に対する効果について調べた。DSS誘発性炎症の発症は、腸内微生物叢に依存していることが報告されている(Tlaskalova-Hogenova et al., 2005)。発明者らの飼育条件下のSPFマウスとは対照的に、無菌マウスはDSS誘発性大腸炎を発症しないことが確認された(図1Fおよび図1G)。パイエル板(PP)は重要な腸付属リンパ節であり、ここで腸内DCが種々の腸内微生物に対してナイーブT細胞を活性化する(Obata et al., 2010)。PP関連微生物叢がDSS誘導性大腸炎に影響するか否かを調べるため、SPF条件下で維持した野生型マウスおよびClec7a-/-マウスのPPのホモジェネートを無菌野生型マウスに移植し、DSSを投与した。PP中の微生物叢を移植した後、無菌マウスにおける盲腸肥大はSPFマウス同様に正常化した(図1H)。大腸炎誘導の際、Clec7a-/-SPFマウスの微生物叢を接種された野生型マウスの大腸の長さは、野生型の微生物叢を接種されたマウスの大腸の長さよりも顕著に長かった(図1I)。Clec7a-/-マウスの微生物叢を接種された野生型マウスの大腸におけるTNFおよびbIL-12の発現は、SPFのClec7a-/-マウスで見いだされるものと同様のレベルまで減少していた(図1Jおよび図1E)。微生物叢の大腸炎発症に対する貢献をさらに確認するため、SPFの野生型マウスまたはClec7a-/-マウスの大腸管腔の微生物叢を無菌野生型マウスに移植した。Clec7a-/-マウス中の大腸微生物叢はまた、大腸炎に対して抵抗性を与えることを見出した(図1Kおよび図1L)。しかし、野生型SPFマウスの微生物叢は、Clec7a-/-無菌マウスにおいてでさえ重度の大腸炎を発症させた。このことにより、第二宿主における直接的なデクチン-1シグナル伝達ではなく微生物叢の変化が大腸炎の発症にとって重要であることが示唆される(図1Kおよび図1L)。これらのデータは、デクチン-1の遺伝的変異により腸の微生物構成が変化して大腸炎の発症が抑制されたことを示唆する。

【0078】
大腸微生物叢におけるラクトバチルスの割合はClec7a-/-マウスにおいて増大する
次に、PP調製物および糞便調製物由来のDNAの16S細菌リボソームDNA配列の分析により、マウス腸内微生物叢を野生型マウスとClec7a-/-マウスで比較した。共生細菌の主要な門は、約80%のファーミキューテス門、10%のバクテロイデス門、2~3%のプロテオバクテリア、およびその他であって、Clec7a-/-微生物叢と野生型微生物叢で同様であった(図2A)。しかし、グラム陽性細菌のグラム陰性細菌に対する比率は、Clec7a-/-マウスにおいて野生型マウスに比べて1.5倍高かった(図2B)。特に、Clec7a-/-マウスの糞便微生物叢およびPP微生物叢の両方において、ファーミキューテス門に属するラクトバチルスの割合が野生型マウスと比べて著しく増加していた(図2C)。ファーミキューテス門に属するクロストリジウムの頻度は、Clec7a-/-マウスと野生型マウスで同様であった(図2D)。16S細菌rDNAの総量は野生型マウスとClec7a-/-マウスの糞便で同様であったが、ラクトバチルスrDNAの割合はClec7a-/-マウスで野生型マウスの4~5倍高かった(図11A)。さらに、Clec7a-/-マウスの糞便微生物叢における主要な株として、ラクトバチルス・ムリヌス(L.murinus)NBRC14221株を同定し、これは、野生型微生物叢では<1%であるのに対し、ラクトバチルス・ムリヌスが>10%を構成していた(図2E)。これらの観察から、このラクトバチルス株の割合がデクチン-1シグナル伝達により制御され、この共生細菌がDSS誘導性大腸炎に対する感受性に影響し得ることが示唆された。

【0079】
共生真菌は、マウスおよびヒトなどの哺乳類の腸で検出され(Iliev et al., 2012; Ott et al., 2008; Scupham et al., 2006)、Ilievらによる最近の研究によりDSS処理により病原性真菌類が腸壁から浸潤することが可能となり、デクチン-1が「真菌により悪化した」大腸炎から宿主を保護する重要な役割を果たしていることが示された(Iliev et al., 2012)。しかし、発明者らのSPFマウスコロニーでは、糞便または腸粘膜中に生存真菌が全く検出されなかった(10匹の野生型マウスおよび10匹のClec7a/-マウスの糞便試料または管腔洗浄試料の各々について、0CFU/プレート)。このような条件下で、Ilievの報告(Iliev et al., 2012)においてマウス糞便全真菌の>65%を構成するカンジダ・トロピカリス(C.tropicalis、NBRC1400)のコロニーを、糞便溶解物との共培養の後であっても検出することができた(図11C)。SPFマウスの糞便において真菌rDNAの内部転写スペーサー領域(ITS1-2)およびカンジダ・トロピカリスrDNAがqPCRにより検出された(図11B)。しかし、ITS1-2およびカンジダ・トロピカリスrDNAはともに、無菌マウス糞便においてもSPFマウスと同様のレベルで検出されたが(図11B)、細菌16S rDNAおよびラクトバチルスDNAは、無菌マウス糞便において全く検出されなかった(図11A)。したがって、これらの結果により、生存真菌はSPFマウスの微生物叢を構成しておらず、糞便中で検出されたrDNAは食品から混入したものである可能性があることが示唆される。同時に、これらの結果により、真菌ではなく細菌がSPF条件下でのClec7a-/-マウスの軽度の大腸炎に関与している可能性があることが示される。

【0080】
Clec7a-/-マウスにおいてFoxp3Treg細胞およびRORγt細胞の集団が増大する
大腸炎マウスだけではなく未処理マウスにおいても、Clec7a-/-マウスのcLPにおいてCD4Foxp3Treg細胞集団が野生型マウスと比較して顕著に増大していることが見出された(図2F)。さらに、T-betではなくRORγtの大腸における発現が、Clec7a-/-マウスおよびRag2-/-Clec7a-/-マウスの両方で顕著に増加していた(図2G)。Foxp3およびRorcの発現誘導に重要である(Fontenot et al., 2003; Hori et al., 2003; Ivanov et al., 2006; Mangan et
al., 2006)TGF-βの発現もまた、Clec7a-/-マウスおよびRag2-/-Clec7a-/-マウスの両方で顕著に高かった(図2H)。

【0081】
Treg細胞は炎症応答の制御において重要であるので(Atarashi et al., 2011; Friswell et al., 2010; Siddiqui and Powrie, 2008)、Clec7a-/-マウスにおけるTreg細胞の増大は、Clec7a-/-マウスのDSS誘導性大腸炎に対する相対的抵抗性を説明する可能性がある。実際、T細胞を有しないRag2-/-Clec7a-/-マウスが大腸炎に対して感受性を示すようになり、DSS誘導性大腸炎後の生存がClec7a-/-マウスとRag2-/-Clec7a-/-マウスで同様であることが見出された(図12A)。Rag2-/-Clec7a-/-マウスの重症度スコアもまた、Rag2-/-マウスと同様であった(図12B)。しかし、Rag2-/-バックグラウンドでは、Clec7a-/-マウスにおいてもラクトバチルス・ムリヌス(NBRC14221)集団が依然として増大しており(図12C)、このラクトバチルスの増大には獲得免疫系が関与していないことが示唆される。

【0082】
デクチン-1シグナル伝達、ラクトバチルスの増大、およびTreg細胞の増大の関係を調べるため、CD45RBhighナイーブCD4T細胞をラクトバチルス・ムリヌス集団が増大しているRag2-/-Clec7a-/-マウスに移植した(図12C)。5週間後、Rag2-/-Clec7a-/-マウスにおいて、Rag2-/-マウスよりも効率的にドナー由来のナイーブT細胞がFoxp3Treg細胞に分化したことが見出された(図2I)。Foxp3のmRNAだけではなくTGF-βのmRNAもレシピエントRag2-/-Clec7a-/-マウスの大腸において顕著に上方制御されており(図2J)、Clec7a-/-条件下でTreg分化が促進されることが示唆される。実験中、大腸炎誘導性の体重減少は観察されなかったが、ナイーブT細胞を投与されたRag2-/-Clec7a-/-マウスは、Rag2-/-マウスと比較して軽度の大腸短縮および盲腸炎症を示し(図12Dおよび図12E)、Clec7a-/-マウスにおけるTreg細胞の増大と一致している。Clec7a-/-レシピエントにおいては、IL-17CD4T細胞集団も顕著に増大していたが、IFN-γCD4T細胞集団が減少していた(図12F)。これらの結果により、ラクトバチルス・ムリヌスがClec7a-/-マウスにおいてTreg細胞を誘導する可能性が示唆される。

【0083】
ラクトバチルス・ムリヌスは、Treg細胞およびTh17細胞の分化を直接誘導する
Clec7a-/-マウスにおいて増加したラクトバチルス・ムリヌスが直接Treg細胞分化を誘導する可能性を調べるため、無菌マウスにラクトバチルス・ムリヌスを5週間生着させT細胞集団を分析した。cLP中のFoxp3Treg細胞およびIL-10Tr1細胞がともにラクトバチルス・ムリヌス生着後に顕著に増加したが(図3A、図3C)、アルカリゲネス・フェカリス(A.faecalis)を生着後には増加しない(図3B)ことが見いだされた。興味深いことに、INF-γ産生Th1細胞ではなく、IL-17産生Th17細胞もまたラクトバチルス・ムリヌスの生着により顕著に増大した(図3D)。ラクトバチルス・ムリヌスで感作したT細胞におけるIL-10およびIL-17の産生はまた、ex vivoで確認された(図3E)。これらの知見は、デクチン-1シグナル伝達の抑制によりラクトバチルス集団が上方制御されて大腸における制御性T細胞集団が増加し、その結果、腸炎症が抑制されることを示唆している。

【0084】
ラクトバチルス・ムリヌスは、大腸DCおよびMΦ(マクロファージ)におけるTGF-β産生を上方制御することによりFoxp3およびRorcの発現を誘導する
腸骨髄細胞で産生されるTGF-βは、ナイーブT細胞におけるFoxp3発現の誘導によるTreg細胞分化において重要な役割を果たしている(Siddiqui and Powrie, 2008; Worthington et al., 2011)。最近の研究により、腸に常在するDCまたはMΦ(マクロファージ)の病原性微生物に対する応答は、骨髄由来DC、脾臓DC、または脾臓MΦ(マクロファージ)の応答とは異なることが示されている(Franchi et al., 2012; Ueda et al., 2010)。ラクトバチルス・ムリヌスが大腸においてTGF-βを誘導する可能性について調べるため、cLPまたは脾臓からDC+MΦ(マクロファージ)を精製し、これらを典型的なマウス腸内共生微生物叢であるラクトバチルス・ムリヌス、アルカリゲネス・フェカリス、または大腸菌(E.coli)K12と12時間共培養した。大腸抗原提示細胞(APC)におけるTgfbおよびIl10のmRNA発現がラクトバチルス・ムリヌスの刺激により著しく上方制御されていたが、アルカリゲネス・フェカリスまたは大腸菌の刺激では上方制御されなかった(図4A)。これら3種の共生細菌はいずれも大腸APCにおけるThf、Il6、またはIl1bの発現を上方制御せず(図4A)、これらの炎症性サイトカインが著しく誘導された脾臓APCとは明らかに対照的である(図13)。全cLP細胞をこれらの共生細菌と共培養すると、アルカリゲネス・フェカリスまたは大腸菌ではなくラクトバチルス・ムリヌスがFoxp3およびRorcの発現を誘導したが、Tbx21の発現は誘導せず(図4B)、in vivoでのラクトバチルス・ムリヌス生着後にTreg細胞およびTh17細胞が増大したがTh1細胞は増大しなかったことと一致している(図3)。これらの観察により、共生ラクトバチルス・ムリヌスがcLPのAPCにおいてTGF-βおよびIL-10を特異的に誘導し、続いてTreg細胞およびTh17細胞の分化が促進されることが示唆される。

【0085】
デクチン-1シグナル伝達は抗菌ペプチドを直接誘導する
抗菌ペプチド(AMP)は腸上皮細胞、パネート細胞、および自然免疫細胞から分泌される低分子量タンパク質であり、細菌およびその他の微生物に対して幅広い抗菌活性を有する(Gallo and Hooper, 2012)。S100Aファミリーのメンバー、特にS100A8-S100A9ヘテロダイマーは、ブドウ球菌の抑制に効果的であり(Corbin et al., 2008)、Reg3γまたはReg3βなどのReg3ファミリーメンバーおよびホスホリパーゼはグラム陽性菌を特異的に死滅させる(Cash et al., 2006; Lehotzky et al., 2010; Qu and Lehrer, 1998)。Clec7a-/-マウスの大腸におけるS100a8の発現が野生型と比べて特異的に低いことが見出された(図5A)。しかし、Rag2-/Clec7a-/-マウスの大腸では、S100a8の発現に加えて、Reg3b、Reg3g、およびPla2g2a(ホスホリパーゼA2をコード)などのその他のAMPの発現レベルがRag2-/-マウスの大腸と比べて顕著に低下していた(図14Aおよび図14C)。Rag2-/-Clec7a-/-マウス大腸由来の精製上皮細胞におけるReg3bおよびReg3gの発現もまた、顕著に低下していた(図14B)。

【0086】
次に、これらのAMPがデクチン-1シグナル伝達の下流で直接誘導されるか否かについて調べた。TLRリガンド除去ザイモサンで刺激した後、デクチン-1のリガンドであるS100a8の発現がRag2-/-マウスの大腸において顕著に誘導されたが、Rag2-/-Clec7a-/-マウスの大腸では誘導されず、S100a8がデクチン-1シグナル伝達により直接誘導されることが示唆される(図5C)。

【0087】
次にAMPが、腸内細菌叢の変化を説明する、細菌種特異的な効果を示すか否かを調べた。ラクトバチルス・ムリヌスおよびアルカリゲネス・フェカリスを組み換えS100A8+S100A9ペプチドと9時間共培養すると、ラクトバチルス・ムリヌスの増殖のみが抑制されアルカリゲネス・フェカリスの増殖は抑制されなかった(図5B)。これらのデータにより、デクチン-1シグナル伝達の下流標的候補として、少なくともS100AファミリーAMPが大腸におけるラクトバチルス増殖を制限可能であることが示される。

【0088】
デクチン-1アンタゴニストであるラミナリンは、DSS誘導性大腸炎の発症を抑制することができる
シグナルを伝達することなくデクチン-1に競合的に結合する短鎖βグルカンであるラミナリン(Huang et al., 2012; Maneu et al., 2011)のDSS誘導性大腸炎の発症に対する効果を評価した。最初に、ラミナリンが炎症性サイトカインの誘導においてTLRリガンド除去ザイモサン活性化デクチン-1シグナル伝達を阻害可能であることを確認した(図6A)。全ラミナリン混合物を異なった分子量(MW)のグルカンに分画することにより、分子量が約1000~10,000であるラミナリンがデクチン-1を介したサイトカイン産生を阻害する特に高い活性を有することを同定した(図15B)。DSS処理の3日前からラミナリンを継続的に投与すると、体重減少が防止されコントロール群と比較して大腸炎の重症度が軽減された(図6B~図6D)。LPにおける好中球および炎症性CD103DCの浸潤ならびにTNF産生もまた、ラミナリン処理マウスで顕著に抑制された(図6Eおよび図6F)。cLP細胞によるIL-10産生は顕著に増大し(図6F)、Foxp3Treg集団がラミナリン投与後に大幅に増大した(図6Gおよび図6H)。ラミナリン投与9日後、糞便中のラクトバチルス・ムリヌスの割合はコントロール群と比較して顕著に増加し(図6I)、Clec7a-/-マウスにおけるラクトバチルス・ムリヌス集団の増大と一致していた(図2C、図2E、図11A、図12C)。無菌マウスにラクトバチルス・ムリヌスを生着させたマウスは、アルカリゲネス・フェカリス生着マウスと比較して顕著に軽度の大腸炎を示し(図16Aおよび図16B)、熱殺菌ラクトバチルス・ムリヌスでマウスを経口的に前処理してもDSS誘導性大腸炎の症状を抑制することが可能であった(図16Cおよび図16D)。したがって、これらの知見は、デクチン-1シグナル伝達の阻害により、腸内のラクトバチルス・ムリヌスの割合の増加を介したTreg集団の増大によって大腸炎の発症を阻害可能であることを示している。

【0089】
ヒト糞便においてラクトバチルス近縁種が検出される
ヒト糞便におけるラクトバチルス・ムリヌス(NBRC14221)または近縁種の存在を調べた。16S rDNAの核酸配列を比較することにより、キムチの生産に使用される最も普及しているラクトバチルスの一種である(Nam et al., 2011)ラクトバチルス・アニマリス(L.animalis、KCTC3501株、NBRC15882)が、ラクトバチルス・ムリヌスと99.7%の相同性を有することを見出した。さらに、TGF-β産生またはCD25CD4T細胞分化を誘導する(Castellazzi et al., 2007; O'Mahony et al., 2006)ラクトバチルス・サリバリウス(L.salivarius、NBRC102160)が、ラクトバチルス・ムリヌスと94.2%の相同性を有することを見出した。各株に特異的なプライマーを使用することで、ヒト糞便中にはラクトバチルス・ムリヌス集団はほとんど存在しないが(図7A、全ラクトバチルス中、約0.00001%)、近縁種(94.2%のrDNA相同性)であるラクトバチルス・サリバリウスがマウスおよびヒト両方の糞便中で検出可能であった(図7B)。興味深いことに、ラクトバチルス・アニマリスではなくラクトバチルス・ムリヌスのみがTGF-βおよびIL-10の発現を100倍超上方制御し、Foxp3の発現を8倍上方制御することが見出された(図7C)。ラクトバチルス・サリバリウスもまたTgfbおよびIl10を10倍超誘導した(図7C)。ラクトバチルス・ムリヌスおよびラクトバチルス・アニマリスはRorcの発現を誘導したが、ラクトバチルス・サリバリウスは誘導しなかった(図7C)。Clec7a-/-マウスの糞便中で過剰発現しているラクトバチルス・ジョンソニーおよびラクトバチルス・ロイテリ(図2E)では、これらの遺伝子の発現は変化しなかった(図7C)。

【0090】
考察
今回の報告では、Clec7a-/-マウスがDSS誘導性大腸炎に対して抵抗性を有することを示した。これはTreg細胞集団がClec7a-/-マウスのcLPにおいて増大していることが原因である。Treg細胞集団の増大は腸内微生物叢中のラクトバチルス・ムリヌスにより誘導され、Clec7aシグナル伝達の欠損により、S100AなどのAMPの発現の下方制御によって腸でのラクトバチルス・ムリヌスの増殖が可能になる。さらに、ラミナリンでデクチン-1シグナル伝達を阻害することにより、腸におけるラクトバチルス・ムリヌスが同様に増殖し、Treg細胞の増大を介してDSS誘導性大腸炎の発症抑制が可能であることが示された。

【0091】
β-1,6結合側鎖を有する重合β-1,3結合β-D-グルコピラノシドは、デクチン-1のリガンドであり、真菌、酵母、細菌、海藻、およびキノコなどの種々の生物で発現している。これらのβグルカン発現生物は、多くの場合種々の食品に含有されており、これらの生物はまた腸内共生微生物叢にも存在している(Ott et al., 2008; Scupham et
al., 2006)。デクチン-1の欠損はDSS誘導性大腸炎に対する感受性にこのような劇的な効果をもたらすため、最初にデクチン-1のリガンドが食品に由来するかまたは腸内微生物叢に由来するかについて調べた。βグルカンを含まない飼料を与えたClec7a-/-マウスが依然としてDSS誘導性大腸炎に対して抵抗性を示し、Clec7a欠損の効果が無菌マウスで観察されなかったことから、大腸炎の重症度への共生微生物叢の関与が示唆された。この考えと一致して、Clec7a-/-マウス糞便に含まれる細菌叢の移植により野生型無菌マウスに抵抗性を与えることができることが見出された。最近の研究により哺乳類の腸における共生真菌の存在が示唆されているが(Iliev et al., 2012; Ott et al., 2008; Scupham et al., 2006)、マウス腸内共生真菌の主要な構成要素であるカンジダ・トロピカリスを含む生存真菌を実験マウスの糞便において全く検出することができなかった(1個の糞塊あたり1CFU以下)。代わりに、マウス糞便においてある種の真菌rDNAを検出した。これらは無菌マウスでも検出されているため(図11B)、恐らくこれらは食品(Iliev et al., 2012)またはケージ床敷に由来する。したがって、最近の報告(Iliev et al., 2012)で示唆されているような病原性真菌のDSS誘導性大腸炎悪化への関与は、今回の場合は考えられない。ヒトおよびその他の哺乳類における共生細菌であるアルカリゲネス・フェカリスのある株が、ある種の培養条件においてβ-1,3-グルカンであるカードランを分泌可能であり(Matsushita, 1990; Phillips and Lawford, 1983)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)などの極めて少数の共生細菌が不溶性のグルカン合成酵素を分泌して(Abo et al., 1991)胃腸管系においてグルカンを合成し得ることが報告されている。しかしながら、これまで腸内でデクチン-1の活性化に関与している共生微生物叢はまだ完全には明らかになっていない。

【0092】
ラクトバチルス・ムリヌス(NBRC14221)の割合はClec7a-/-マウスの大腸において顕著に増加しており、野生型マウスにおける1%以下と比べるとClec7a-/-マウスにおいては共生微生物叢の10%以上であった。カルプロテクチンS100A8、C型レクチンであるREG3γおよびREG3β、ならびにホスホリパーゼA2などのいくつかの抗菌ペプチド(AMP)の発現がClec7a-/-マウスにおいて著しく抑制されていることが見出された。このことは、これらのタンパク質の発現はデクチン-1シグナル伝達により制御されていることを示唆する。実際、S100a8の発現はデクチン-1刺激により直接誘導された(図5C)。興味深いことに、これらの異なる抗菌ペプチドは異る腸細胞から産生されて異なる抗菌活性を有しているが、これらはともにグラム陽性菌を標的として抑制する(Cash et al., 2006; Corbin et al., 2008; Lehotzky et al., 2010; Qu and Lehrer, 1998)。これと一致して、微生物叢の主要集団をラクトバチルスが形成しているClec7a-/-マウスの大腸において、グラム陽性共生細菌の増大が観察された。特に、グラム陰性菌であるアルカリゲネス・フェカリスの阻害剤候補としてではなく、ラクトバチルス・ムリヌス増殖の阻害剤候補としてS100A8-9を同定した。したがって、これらの観察により、生理的条件下では、共生微生物叢を介したデクチン-1シグナル伝達により誘導されるAMPによって、ラクトバチルスの増殖が抑制されることが示唆される。

【0093】
ラクトバチルス・ムリヌス集団の増大と関連して、Clec7a-/-マウスのcLPにおけるFoxp3Treg細胞集団が増大することが見出された。さらに、アルカリゲネス・フェカリスではなくラクトバチルス・ムリヌスの生着により、無菌マウスにおいてTreg集団およびTrl集団を増加させることが可能であることが示された。これは、アルカリゲネス・フェカリスではなくラクトバチルス・ムリヌスがcLP常在DCおよびMΦ(マクロファージ)を直接的に刺激してTGF-βおよびIL-10を産生したためである。TGF-βはTreg細胞に特徴的な転写因子であるFoxp3を誘導し(Fontenot et al., 2003; Hori et al., 2003; Ivanov et al., 2006; Khattri et al., 2003; Mangan et al., 2006; Veldhoen et al., 2006)、IL-10もまた制御性T細胞の分化を誘導するので、ラクトバチルス・ムリヌスによるTGF-βおよびIL-10の上方制御はClec7a-/-マウスにおけるTreg細胞およびTrl細胞の発生に重要であるはずである。これらの制御性T細胞はDSS誘導性大腸炎の抑制に重要な役割を果たしている可能性がある(Ahern et al., 2010; Atarashi et al., 2011; Yang et al., 2008)。この考えの裏付けとして、いたラクトバチルス・ムリヌス生着マウスはTreg細胞およびTrl細胞が増大しておりDSS誘導性大腸炎に対して抵抗性を示したが、アルカリゲネス・フェカリス生着マウスは制御性T細胞が増大しておらず感受性を示した(図16Aおよび図16B)。さらに、Rag2-/-Clec7a-/-マウスにおいてTh17集団もまた増大していたことが示され(図12F)、RORγt発現も誘導するTGF-βの上方制御と一致していた(図2G~図2J、および図4B)。Th17細胞は、恐らく損傷腸細胞壁の修復において重要であるIL-22の産生および病原性Th1細胞の分化抑制(O'Connor et al., 2009)によって大腸炎の発症において保護的な役割を果たしているため(Ogawa et al., 2004; Yang et al., 2008)、Th17集団のこのような増加はまたClec7a-/-マウスのDSS誘導性大腸炎に対する抵抗性に貢献している可能性がある。この考えの裏付けとして、いくつかの研究により、あるラクトバチルス種がFoxp3Treg細胞の分化と関連しており、皮膚炎および喘息の発症を抑制することが明らかにされている(Jang et al., 2012; Shah et al., 2012)。

【0094】
MΦ(マクロファージ)をラミナリンで前処理すると、TLRリガンド除去ザイモサンにより誘導されるサイトカイン産生が阻害されることが示された(図6A)。このことは、ラミナリンがデクチン-1を介したβグルカンの結合および貪食を特異的に阻害可能であるという以前の報告と一致している(Huang et al., 2012; Maneu et al., 2011)。ラミナリンを予め投与することにより、炎症性サイトカイン産生の減少を伴ってDSS誘導性大腸炎の発症が抑制される。ラミナリン前処理後に腸内微生物叢におけるラクトバチルス・ムリヌスの割合が著しく増加し、cLPにおけるFoxp3Treg細胞集団が大幅に増大する。DSS誘導性大腸炎に対する感受性ならびに大腸微生物叢および大腸免疫細胞集団において観察された変化は、Clec7a-/-マウスで見いだされたものと酷似していた。したがって、これらの観察により、デクチン-1シグナル伝達はラクトバチルス集団の制御を介して大腸におけるTreg細胞分化を制御し、デクチン-1シグナル伝達の抑制によってTreg細胞の増大を介して大腸の炎症緩和が可能であることが示唆される。さらに、ラクトバチルス・ムリヌスに近縁のラクトバチルス種であるラクトバチルス・サリバリウが、ヒトの糞便中から検出され、大腸免疫細胞においてTGF-βおよびIL-10の両方の発現を誘導可能であることが示された。これらすべての知見は、ヒトの腸炎症性疾患を予防または治療するための新しい戦略を開発する手がかりを提供するはずである。

【0095】
実験手順
すべての実験手順は、拡張実験手順に詳細に記載される。

【0096】
マウス
Clec7a-/-マウスの予備的特性評価はすでに述べた(Saijo et al., 2007)。マウスはC57BL/6Jマウスに9世代戻し交配した後に実験に用いた。年齢および性別を一致させたC57BL/6Jマウス(日本クレア株式会社、川崎)を同じマウス室で3~4週間飼育した後にコントロールとして使用した。Rag2-/-Clec7a-/マウスを作製するため、BALB/cAマウスに10世代戻し交配したClec7a/-マウスを、BALB/cAバックグラウンドのRag2-/-マウス(京都大学 眞貝洋一博士より提供)と交配した。すべてのマウスは、東京大学医科学研究所システム疾患モデル研究センターおよび東京理科大学生命科学研究所において、特定病原体未感染条件下で環境制御された無菌室で維持した。実験は施設の動物実験倫理指針および遺伝子操作実験安全指針に従って実施し、施設の委員会により承認された。

【0097】
糞便微生物叢DNAの単離およびrDNAの定量
マウスから糞便を回収し、QIAamp DNA stool Mini Kit(キアゲン社、ドイツ、ヒルデン)を用いて取扱説明書に従って糞便微生物叢の全DNAを単離した。糞便中の細菌rDNAおよび真菌rDNAの定量には、20ngの全糞便DNAをリアルタイムRT-PCR解析のテンプレートとして用いた。表1に示す細菌または真菌に対するプライマーを使用した。相対量はΔCt法により計算し、全DNA量またはマウスβ-アクチン量で標準化した。

【0098】
統計解析
生存率の差はログランク検定(マンテル・コックス検定)で評価した。疾患活性指数および組織学的スコアは、マンホイットニーのU検定を用いて統計的に解析した。パラメトリックデータの差は、スチューデントt検定により評価した。p<0.05の差を統計的に有意であるとみなした。

【0099】
補足データ
補足データには、拡張実験手順、8つの図、1つの表、および1つの参考文献が含まれ、本論文とともにオンラインで検索可能である。

【0100】
参考文献
Abo, H., Matsumura, T., Kodama, T., Ohta, H., Fukui, K., Kato, K., and Kagawa,
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Ahern, P.P., Schiering, C., Buonocore, S., McGeachy, M.J., Cua, D.J., Maloy, K.J., and Powrie, F. (2010). Interleukin-23 drives intestinal inflammation through direct activity on T cells. Immunity 33, 279-288.
Arstila, T., Arstila, T.P., Calbo, S., Selz, F., Malassis-Seris, M., Vassalli,
P., Kourilsky, P., and Guy-Grand, D. (2000). Identical T cell clones are located within the mouse gut epithelium and lamina propia and circulate in the thoracic duct lymph. The Journal of experimental medicine 191, 823-834.
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Cooper, H.S., Murthy, S.N., Shah, R.S., and Sedergran, D.J. (1993). Clinicopathologic study of dextran sulfate sodium experimental murine colitis. Laboratory investigation; a journal of technical methods and pathology 69, 238-249.
【実施例】
【0101】
拡張実験手順
DSS誘導性大腸炎
DSSによる急性大腸炎の誘導のため、2%または4%(重量/体積)のDSS(分子量36~50kDa、MPバイオメディカルズ、フランス、イルキルシュ)をマウスに飲料水投与した。大腸炎の程度を評価するために、体重、糞便の硬さ、および血便をCooperらの方法(Cooper et al., 1993)の改変法を用いて毎日モニターした。下痢は以下のようにスコア化した。0:正常、2:軟便、4:水様下痢。血便は以下のようにスコア化した。0:正常、2:わずかな出血、4:肉眼的な出血。体重減少は以下のようにスコア化した。0:なし。1:1~5%、2:5~10%、3:10~15%、4:>15%。疾患活性指数はこれらのスコアの平均、すなわち、(体重減少、糞便の硬さ、および出血を合わせたスコア)/3である。マウスは、11日目または12日目に屠殺した。盲腸および大腸を取り出し、細胞培養、フローサイトメトリー(FCM)、および組織学的検査のために切片を調製した。
【実施例】
【0102】
微生物
ラクトバチルス・ムリヌス(NBRC14221)、ラクトバチルス・アニマリス(NBRC15882)、ラクトバチルス・サリバリウス(NBRC102160)、ラクトバチルス・ジョンソニー(NBRC13952)、ラクトバチルス・ロイテリ(NBRC15892)、アルカリゲネス・フェカリス(NBRC13111)、大腸菌(NBRC102203)、およびカンジダ・トロピカリス(NBRC1400)は、製品評価技術基盤機構生物遺伝資源センター(日本、292-0818、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)から直接入手した。括弧内のNRBC番号は、寄託番号を表す。ラクトバチルスは、嫌気性条件下、ラクトバチルスMRS培地で培養し、MRC寒天上でコロニーを形成させた。アルカリゲネスおよび大腸菌は、好気性条件下、液体または固形のLB基本培地で培養した。カンジダ・トロピカリスまたはカンジダ・トロピカリス+糞便溶解物混合物は、好気性条件下、クロムアガー(登録商標)カンジダプレートまたはサブローデキストロース培地で培養した。すべての微生物は37℃で培養した。すべての培養液はBD社(米国、メリーランド州)から購入した。
【実施例】
【0103】
細胞の調製
CLP細胞は前述の方法をわずかに改変して用いて単離した(Arstila et al., 2000)。すなわち、腸片を2mm片に切り分けた後、3mM EDTAを含むリン酸緩衝食塩水中で各15分間、37℃で2回撹拌し、1%ウシ胎児血清(FBS)、1mM EGTA、および1.5mM MgClを含むRPMI(シグマケミカル社、米国、ミズーリ州、セントルイス)中で各20分間、2回撹拌した。その後、腸片を回収し、20%FBS、200U/mlコラゲナーゼ(C2139、シグマアルドリッチ社)、および5U/ml DNase1(シグマアルドリッチ社)を含むRPMI中、37℃で120分撹拌した。培養後、試料を1分間ボルテックスし、滅菌ガーゼ濾過後に単一細胞懸濁液を回収した。いくつかの実験では、45%/66.6%不連続パーコール(ファルマシア社、スウェーデン、ウプサラ)勾配上、2200rpm、20分間で、LP細胞をLPリンパ球にさらに精製した。
【実施例】
【0104】
フローサイトメトリー
抗CD3抗体(145-2C11)、抗CD4抗体(RM4-5)、および抗IL-17A抗体(TC11-18H10)は、BDバイオサイエンス社(米国、フランクリンレイクス)から入手し、抗IFN-γ抗体(XMG1.2)、抗IL-10抗体(JES5-16E3)、抗Foxp3抗体(150D/E4)、抗Gr-1抗体(RB6-8C5)、抗CD11b抗体(M1/70)、抗CD11c抗体(N418)、抗CD103抗体(2E7)、抗F4/80抗体(BM8)、抗CD25抗体(PC61.5)、および抗MHC class II抗体(M5/114.15.2)は、eバイオサイエンス社(米国、サンディエゴ)から入手した。2.4G2(抗FCγRII/III特異的マウス抗体、ラットIgG1、産生ハイブリドーマ)は、アメリカ培養細胞系統保存機関(バージニア州、マナッサス)から入手した。すべての抗体は、1:100希釈で使用した。CantoIIフローサイトメーターまたはFACSCaliburフローサイトメーター(BDバイオサイエンス社)、およびCellQuestソフトウエア(BDバイオサイエンス社)またはFlowJo FACSソフトウエアを解析に用い、FACS AriaII(BDバイオサイエンス社)を細胞選別に用いた。
【実施例】
【0105】
in vitro培養およびサイトカイン濃度測定
CLP細胞(2×10)を抗CD3(17A2)抗体(バイオレジェンド社、米国、サンディエゴ)を加えずに、または該抗体とともに、48時間、37℃、5%COで、96ウエル平底プレート(ファルコン、ベクトン・ディッキンソン社、英国、オックスフォード)中、0.2mlの10%FBS含有RPMI中で培養した。48時間培養後、培養上清を回収し、サイトカイン濃度をマウスTNF-α、IL-6、IL-1β、IL-12p40(OptiEIAキット、BD PharMingen社、米国、フランクリンレイクス)、ならびにIL-17、IL-17F、IFN-γ、およびIL-10(R&Dシステムズ社、米国、ミネアポリス)に対する酵素結合免疫吸着測定(ELISA)発色キットで測定した。
【実施例】
【0106】
リアルタイムRT-PCR
全RNAは、Mammalian Total RNA Miniprep kit(シグマアルドリッチ社、米国、セントルイス)を用いて取扱説明書に従って抽出した。RNAをオリゴdTプライマーの存在下で変性した後、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(アプライドバイオシステムズ社、米国、サンフランシスコ)で逆転写した。定量的リアルタイムRT-PCRはSYBR Green qPCR kit(米国、カールスバッド)およびiCycler
system(バイオラッド社、米国、ハーキュリーズ)で、表1に記載のプライマーセットを用いて行い、サイトカインをコードする各mRNAの発現をgapdh発現レベルで標準化した。
【実施例】
【0107】
16S rDNA解析
16S rDNAは、抽出DNAから細菌ユニバーサルPCRプライマーであるBact-27F(5’-AGRGTTTGATYMTGGCTCAG-3’)およびBact-1492R(5’-GGYTACCTTGTTACGACTT-3’)を用いて増幅した。以下の反応条件を用いた。全量50μl中に、2.5μlの10×PCR buffer(タカラバイオ株式会社、日本、大津)、2.5μlのdNTP(25 mM、タカラバイオ株式会社)、0.5μlのプライマー(各10pmol/μl)、0.1μlのExTaq DNA polymerase(5U/μl、タカラバイオ株式会社)、0.5μlのテンプレートDNA、および18.4μlのDNaseフリー水。PCRは、T1 Thermal cycler(バイオメトラ社)を用いて行った。以下のサイクルパラメーターを用いた。96℃で30秒間の初期変性後、20サイクルの変性(96℃で30秒間)、アニーリング(56℃で20秒間)、および伸長(68℃で90秒間)、ならびに72℃で10分間の最終伸長。全10試料からの増幅産物は、1μlのPCR反応混合液を用いたゲル電気泳動により1.0%アガロースゲルで確認した。PCR産物はpCR-4-TOPOベクター(インビトロジェン)にクローニングし、シークエンス用TOPO-TAクローニングキット(インビトロジェン)を用いてDH12Sコンピテント大腸菌を形質転換した。各細菌PCR産物から96コロニーをランダムに単離した。配列決定テンプレートはプライマーとしてM13F(5’-GTAAAACGACGGCCAG-3’)およびM13R(5’-CAGGAAACAGCTATGAC-3’)を用いてコロニーPCRにより調製した。その後、PCR産物をエクソヌクレアーゼIおよびエビアルカリフォスファターゼ(GEヘルスケア社)で処理した。挿入断片の16S配列は、サイクルシークエンス法により、BigDye Terminator(アプライドバイオシステムズ社)、ならびに3.2pmolのTシークエンスプライマー7(5’-TAATACGACTCACTATAGGG-3’)、T3シークエンスプライマー(5’-AATTAACCCTCACTAAAGGG-3’)、およびBact-357Fシークエンスプライマー(5’-CCTACGGGAGGCAGCAG-3’)を用いて決定した。DNAをエタノール沈殿により洗浄し、自動ABI3730キャピラリーシクエンサー(アプライドバイオシステムズ社)で泳動した。各クローンのデータは、Phred-Phrapプログラムでアセンブルした。Phrapでアセンブルした配列は、Clustalw解析でアライメントし、マルチプルアライメント配列を全配列の距離行列に対して計算した。DOTURを用いて操作上の分類単位(OTU)計算を行い、全典型的OTU配列をNCBI BLASTのリボソームデータベースプロジェクトII(RDP)データベースの16S rRNA配列とアライメントした。
【実施例】
【0108】
抗菌ペプチドの殺菌アッセイ
ラクトバチルス・ムリヌスまたはアルカリゲネス・フェカリスは、組み換えS100A8+S100A9(1:1混合物、各ペプチド5mg/ml)の存在下、嫌気性環境下、37℃で9時間培養し、NanoDrop2000c分光計(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、日本、横浜)で細菌増殖を測定した。
【実施例】
【0109】
養子移植
脾臓またはリンパ節からの細胞をビオチン結合抗CD-25、抗CD8α、抗B220、抗CD11c、抗CD11b、抗DX5、γδTCR、および抗MHC class IIマウス抗体で標識し、続いて抗ビオチンマイクロビーズで標識した。autoMACSを用いてCD4T細胞を陰性精製した後、FITC 抗CD25マウス抗体、PE 抗CD45RBマウス抗体、およびAPC 抗CD4マウス抗体で染色した。CD25CD45RBhighCD4ナイーブT細胞をFACS AriaII(BDバイオサイエンス社)で選別し、レシピエントマウスにマウス1匹当たり4×10個の細胞で静脈内(i.v.)養子移植を行った。
【実施例】
【0110】
微生物叢の移植
PPは、SPF条件の野生型マウスまたはClec7a-/-マウスの小腸から単離した。70%エタノールで2分間処理後、5個のPPをPBSで2回洗浄し、スライドグラスを用いてPBS中で破砕し、レシピエント無菌マウスの胃腸管に移植した。3日後、1%DSSを飲料水投与した。大腸管腔由来の微生物叢の場合、SPF条件マウスの糞便5粒をPBS中で滅菌ガラス棒を用いて粉砕し、2分間激しくボルテックスして100mmメッシュのナイロンフィルターで濾過した。次に回収した上清を4℃で、5000×g、10分間遠心分離し、沈査をさらにPBSで2回洗浄した。単一の細菌細胞懸濁液を無菌マウスに移植し、3日後に2%DSSを飲料水投与した。
【実施例】
【0111】
ラミナリン巨大分子の透析
ラミナリン混合物(東京化成工業株式会社、日本、東京)を蒸留水(100mg/ml)中に溶解し、各透析膜(分子量カットオフ:1000、3500、10000、50000、スペクトラムラボラトリーズ社)で、4℃、2日間、蒸留水に対して透析した。透析後、異なった分子量を有する透析された内部液を回収して凍結乾燥した。
【実施例】
【0112】
特別な試薬
チオグリコール酸培地は日水製薬株式会社(日本、東京)から購入した。アラメ由来のラミナリンは東京化成工業株式会社(日本、東京)から購入した。カードラン(β-1,3-グルカン)は和光純薬工業株式会社(日本、大阪)から購入した。TLRリガンド除去ザイモサン(D-ザイモサン、熱アルカリ処理済み出芽酵母細胞壁)はインビトロジェン社(米国、カリフォルニア、サンディエゴ)から入手した。
【実施例】
【0113】
リアルタイムRT-PCRプライマー
以下のリアルタイムRT-PCRプライマーを用いた。
【実施例】
【0114】
【表1】
JP2014136982A1_000003t.gif

【実施例】
【0115】
【表2】
JP2014136982A1_000004t.gif

【実施例】
【0116】
ラクトバチルス・ムリヌスの16S rDNA配列
GATGAACGCTGGCGGCGTGCCTAATACATGCAAGTCGAACGAAACTTCTTTATCACCGAGTGCTTGCACTCACCGATAAAGAGTTGAGTGGCGAACGGGTGAGTAACACGTGGGCAACCTGCCCAAAAGAGGGGGATAACACTTGGAAACAGGTGCTAATACCGCATAACCATAGTTACCGCATGGTAACTATGTAAAAGGTGGCTATGCTACCGCTTTTGGATGGGCCCGCGGCGCATTAGCTAGTTGGTGGGGTAAAGGCTTACCAAGGCAATGATGCGTAGCCGAACTGAGAGGTTGATCGGCCACATTGGGACTGAGACACGGCCCAAACTCCTACGGGAGGCAGCAGTAGGGAATCTTCCACAATGGGCGAAAGCCTGATGGAGCAACGCCGCGTGGGTGAAGAAGGTCTTCGGATCGTAAAACCCTGTTGTTAGAGAAGAAAGTGCGTGAGAGTAACTGTTCACGTTTCGACGGTATCTAACCAGAAAGCCACGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATACGTAGGTGGCAAGCGTTATCCGGATTTATTGGGCGTAAAGGGAACGCAGGCGGTCTTTTAAGTCTGATGTGAAAGCCTTCGGCTTAACCGGAGTAGTGCATTGGAAACTGGGAGACTTGAGTGCAGAAGAGGAGAGTGGAACTCCATGTGTAGCGGTGAAATGCGTAGATATATGGAAGAACACCAGTGGCGAAAGCGGCTCTCTGGTCTGTAACTGACGCTGAGGTTCGAAAGCGTGGGTAGCAAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCACGCCGTAAACGATGAATGCTAAGTGTTGGAGGGTTTCCGCCCTTCAGTGCTGCAGCTAACGCAATAAGCATTCCGCCTGGGGAGTACGACCGCAAGGTTGAAACTCAAAGGAATTGACGGGGGCCCGCACAAGCGGTGGAGCATGTGGTTTAATTCGAAGCAACGCGAAGAACCTTACCAGGTCTTGACATCTTTTGACAATCCTAGAGATAGGACTTTCCCTTCGGGGACAAAATGACAGGTGGTGCATGGTTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGATGTTGGGTTAAGTCCCGCAACGAGCGCAACCCTTATTGTTAGTTGCCAGCATTAAGTTGGGCACTCTAGCAAGACTGCCGGTGACAAACCGGAGGAAGGTGGGGATGACGTCAAATCATCATGCCCCTTATGACCTGGGCTACACACGTGCTACAATGGACGGTACAACGAGTCGCAAGACCGCGAGGTTTAGCAAATCTCTTAAAGCCGTTCTCAGTTCGGATTGTAGGCTGCAACTCGCCTACATGAAGTCGGAATCGCTAGTAATCGCGGATCAGCATGCCGCGGTGAATACGTTCCCGGGCCTTGTACACACCGCCCGTCACACCATGAGAGTTTGTAACACCCAAAGCCGGTGGGGTAACCTTTTGGAGCCAGCCGTCTAAGGTGGGACAGATGATTGGGGTGAAG
【実施例】
【0117】
ラクトバチルス・サリバリウスの16S rDNA配列
GACGAACGCTGGCGGCGTGCCTAATACATGCAAGTCGAACGAAACTTTCTTACACCGAATGCTTGCATTCANCGTAAGAAGTTGAGTGGCGGACGGGTGAGTAACACGTGGGTAACCTGCCTAAAAGAAGGGGATAACACTTGGAAACAGGTGCTAATACCGTATATCTCTAAGGATCGCATGATCCTTAGATGAAAGATGGTTCTGCTATCGCTTTTAGATGGACCCGCGGCGTATTAACTAGTTGGTGGGGTAACGGCCTACCAAGGTGATGATACGTAGCCGAACTGAGAGGTTGATCGGCCACATTGGGACTGAGACACGGCCCAAACTCCTACGGGAGGCAGCAGTAGGGAATCTTCCACAATGGACGCAAGTCTGATGGAGCAACGCCGCGTGAGTGAAGAAGGTCTTCGGATCGTAAAACTCTGTTGTTAGAGAAGAACACGAGTGAGAGTAACTGTTCATTCGATGACGGTATCTAACCAGCAAGTCACGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATACGTAGGTGGCAAGCGTTGTCCGGATTTATTGGGCGTAAAGGGAACGCAGGCGGTCTTTTAAGTCTGATGTGAAAGCCTTCGGCTTAACCGGAGTAGTGCATTGGAAACTGGAAGACTTGAGTGCAGAAGAGGAGAGTGGAACTCCATGTGTAGCGGTGAAATGCGTAGATATATGGAAGAACACCAGTGGCGAAAGCGGCTCTCTGGTCTGTAACTGACGCTGAGGTTCGAAAGCGTGGGTAGCAAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCACGCCGTAAACGATGAATGCTAGGTGTTGGAGGGTTTCCGCCCTTCAGTGCCGCAGCTAACGCAATAAGCATTCCGCCTGGGGAGTACGACCGCAAGGTTGAAACTCAAAGGAATTGACGGGGGCCCGCACAAGCGGTGGAGCATGTGGTTTAATTCGAAGCAACGCGAAGAACCTTACCAGGTCTTGACATCCTTTGACCACCTAAGAGATTAGGCTTTCCCTTCGGGGACAAAGTGACAGGTGGTGCATGGCTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGATGTTGGGTTAAGTCCCGCAACGAGCGCAACCCTTGTTGTCAGTTGCCAGCATTAAGTTGGGCACTCTGGCGAGACTGCCGGTGACAAACCGGAGGAAGGTGGGGACGACGTCAAGTCATCATGCCCCTTATGACCTGGGCTACACACGTGCTACAATGGACGGTACAACGAGTCGCGAGACCGCGAGGTTTAGCTAATCTCTTAAAGCCGTTCTCAGTTCGGATTGTAGGCTGCAACTCGCCTACATGAAGTCGGAATCGCTAGTAATCGCGAATCAGCATGTCGCGGTGAATACGTTCCCGGGCCTTGTACACACCGCCCGTCACACCATGAGAGTTTGTAACACCCAAAGCCGGTGGGGTAACCGCAAGGAGCCAGCCGTCTAAGGTGGGACAGATGATTGGGGTGAAG
【実施例】
【0118】
2013年3月8日に出願された米国仮特許出願61/775,309号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。本発明の例示的実施形態についての以上の記載は例示および説明の目的でされたものであり、網羅的であることあるいは発明を開示されている形態そのものに限定することを意図するものではない。明らかなことではあるが、多くの改変あるいは変更が当業者には自明である。上記実施形態は発明の原理及び実用的応用を最もうまく説明し、想定される特定の用途に適するような種々の実施形態や種々の改変と共に他の当業者が発明を理解できるようにするために選択され、記載された。本発明の範囲は以下の請求項およびその均等物によって規定されることが意図されている。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図1D】
3
【図1E】
4
【図1F】
5
【図1G】
6
【図1H】
7
【図1I】
8
【図1J】
9
【図1K】
10
【図1L】
11
【図2A】
12
【図2B】
13
【図2C】
14
【図2D】
15
【図2E】
16
【図2F】
17
【図2G】
18
【図2H】
19
【図2I】
20
【図2J】
21
【図3A】
22
【図3B】
23
【図3C】
24
【図3D】
25
【図3E】
26
【図4A】
27
【図4B】
28
【図5A】
29
【図5B】
30
【図5C】
31
【図6A】
32
【図6B】
33
【図6C】
34
【図6D】
35
【図6E】
36
【図6F】
37
【図6G】
38
【図6H】
39
【図6I】
40
【図7A】
41
【図7B】
42
【図7C】
43
【図8A】
44
【図8B】
45
【図8C】
46
【図8D】
47
【図8E】
48
【図8F】
49
【図8G】
50
【図8H】
51
【図9A】
52
【図9B】
53
【図9C】
54
【図9D】
55
【図9E】
56
【図10A】
57
【図10B】
58
【図10C】
59
【図10D】
60
【図11A】
61
【図11B】
62
【図11C】
63
【図12A】
64
【図12B】
65
【図12C】
66
【図12D】
67
【図12E】
68
【図12F】
69
【図13】
70
【図14A】
71
【図14B】
72
【図14C】
73
【図15】
74
【図16A】
75
【図16B】
76
【図16C】
77
【図16D】
78