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明細書 :タウ凝集阻害剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 タウ凝集阻害剤
国際特許分類 A61K  31/136       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  31/05        (2006.01)
A61K  31/085       (2006.01)
A61K  31/11        (2006.01)
A61K  31/5375      (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
FI A61K 31/136
A61P 43/00 111
A61K 31/05
A61K 31/085
A61K 31/11
A61K 31/5375
A61P 25/28
A61P 25/00
国際予備審査の請求
全頁数 32
出願番号 特願2015-509918 (P2015-509918)
国際出願番号 PCT/JP2014/001919
国際公開番号 WO2014/162737
国際出願日 平成26年4月2日(2014.4.2)
国際公開日 平成26年10月9日(2014.10.9)
優先権出願番号 2013076614
優先日 平成25年4月2日(2013.4.2)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】宮坂 知宏
【氏名】杉本 八郎
【氏名】時實 梨衣
【氏名】新崎 由紀
【氏名】大江 洋平
【氏名】太田 哲男
【氏名】高島 明彦
【氏名】添田 義行
【氏名】井原 康夫
【氏名】井上 善一
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
【識別番号】510108858
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
個別代理人の代理人 【識別番号】110001427、【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
4C206
Fターム 4C086AA01
4C086BC73
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA14
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4C206CA19
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4C206CB08
4C206FA31
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4C206ZA02
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZC41
要約 細胞内のタウ凝集を十分に抑制できるタウ凝集阻害剤を提供する。炭化水素基を除く、電子供与性の置換基Rを、カテコール環の4位に有する4位置換カテコール構造化合物又はその塩を含む。4位置換カテコール構造化合物は、好ましくは4-アミノカテコール又は1,2,4-ベンゼントリオールである。対象となるタウオパチーは、例えば、AD、ダウン症、前頭側頭型認知症、皮質基底核変性症(CBD)、又は進行性核上性麻痺(PSP)である。
特許請求の範囲 【請求項1】
カテコール、
炭化水素基を除く、電子供与性の置換基Rを、カテコール環の4位に有する4位置換カテコール構造化合物、若しくは
電子供与性の置換基Rを、カテコール環の3位に有する3位置換カテコール構造化合物、
又はこれらの塩を含む、
タウオパチーの予防及び/又は治療に用いられるタウ凝集阻害剤。
【請求項2】
前記4位置換カテコール構造化合物は、アミノ基、水酸基、アルコキシ基又はチオール基の何れかからなる置換基Rを、カテコール環の4位に有するものである請求項1記載のタウ凝集阻害剤。
【請求項3】
前記4位置換カテコール構造化合物は、4-アミノカテコールである請求項2記載のタウ凝集阻害剤。
【請求項4】
前記4位置換カテコール構造化合物は、1,2,4-ベンゼントリオールである請求項2記載のタウ凝集阻害剤。
【請求項5】
前記4位置換カテコール構造化合物は、
4-(イソペンチルアミノ)カテコール、又は、
4-メトキシカテコールであることを特徴とする請求項2記載のタウ凝集阻害剤。
【請求項6】
前記4位置換カテコール構造化合物は、
4-(4-アミノブタノイルアミノ)カテコール、
4-(モルホリノカルボニルアミノ)カテコール、又は、
4-(ジイソペンチルアミノ)カテコール
であることを特徴とする請求項1記載のタウ凝集阻害剤。
【請求項7】
前記3位置換カテコール構造化合物は、アミノ基、水酸基、アルコキシ基又はチオール基の何れかからなる置換基Rを、カテコール環の3位に有するものである請求項1記載のタウ凝集阻害剤。
【請求項8】
前記3位置換カテコール構造含有化合物は、3-メトキシカテコールである請求項7記載のタウ凝集阻害剤。
【請求項9】
前記3位置換カテコール構造含有化合物は、ピロガロールである請求項7記載のタウ凝集阻害剤。
【請求項10】
前記3位置換カテコール構造含有化合物は、3-アミノカテコールである請求項7記載のタウ凝集阻害剤。
【請求項11】
2,3-ジヒドロキシベンズアルデヒド、4-tert-ブチルカテコール、3,4-ジヒドロベンジルアミン、4-クロロアセチルカテコール、1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-モルホリノエタノール、及び、4-クロロカテコールからなる群から選ばれたカテコール構造含有化合物又はその塩を含む、タウオパチーの予防及び/又は治療に用いられるタウ凝集阻害剤。
【請求項12】
前記タウオパチーは、AD、ダウン症、前頭側頭型認知症、皮質基底核変性症(CBD)、又は進行性核上性麻痺(PSP)である請求項1乃至11の何れか1項に記載のタウ凝集阻害剤。
【請求項13】
更に製薬上許容される等張化剤、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、及びpH調整剤から選択される1又はそれ以上の添加剤を含有する請求項1乃至12の何れか1項に記載のタウ凝集阻害剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、神経脱落及びシナプス消失の原因となるタウ凝集体の形成を阻害するタウ凝集阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)は、認知機能低下や人格の変化を主な症状とする認知症の一種である。認知症は85歳以上の日本人口の約25%が発症するcommon diseaseであるが、ADがそのうち約半数を占めている。2011年の日本には約160~180万人のAD患者が存在し、今後の高齢化に従い患者数は増加の一途を辿る。これはとりわけ少子高齢化が進む我が国において深刻な問題となっている。
【0003】
ADの予防と治療について現在最も有効とされているアセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、軽度乃至中度の患者に部分的に効果を有するのみであり、病状が進行した患者に対する有効性については否定的な見解が多い。
【0004】
AD患者の神経病理学的所見においてはβアミロイドからなる老人斑とタウタンパク質が異常に重合し形成される神経原線維変化(Neurofibrillary Tangles: NFT)の二つが特徴的であるにもかかわらず、現在のAD研究はアミロイドβペプチドの異常がAD発症の引き金であるとするアミロイドβ仮説に基づくものが主流である。
【0005】
しかしながら、家族性前頭側頭型認知症(FTDP)ではタウ遺伝子の変異によりNFTの形成が促進され認知症状が出現すること、タウタンパク質が脳内で凝集・蓄積するだけで神経細胞に異常が生ずること等が明らかとなってきている。そのため、近年、タウの凝集とAD発症との関係について大きな注目が集まっている。
【0006】
タウタンパク質は中枢神経細胞に多量に存在し、脳の神経ネットワークを構成する神経軸索の機能に必須なタンパク質であるが、タウタンパク質が細胞内で不溶性の凝集を作ると軸索輸送がうまくいかず、神経細胞の死を招く。
【0007】
特許文献1には、ADの症状改善のため、タウ凝集を阻害するナフトキノン型化合物を主成分とする薬剤が記載されている。この薬剤によれば細胞内のタウ凝集がある程度抑制されるため、NFTの形成が抑制されることによりADの症状が緩和される。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特表2004-534854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述のタウ凝集阻害剤では、細胞内のタウ凝集阻害の程度は十分ではなく、ADをはじめとするタウオパチーの治療が的確になされるとはいえない。
【0010】
本発明は斯かる問題点に鑑みてなされたものであって、細胞内のタウ凝集を十分に抑制できるタウ凝集阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態にかかるタウ凝集阻害剤は、カテコール、炭化水素基を除く、電子供与性の置換基Rを、カテコール環の4位に有する4位置換カテコール構造化合物、若しくは電子供与性の置換基Rを、カテコール環の3位に有する3位置換カテコール構造化合物、又はこれらの塩を含む。
【0012】
また、本実施形態にかかるタウ凝集阻害剤は、2,3-ジヒドロキシベンズアルデヒド、4-tert-ブチルカテコール、3,4-ジヒドロベンジルアミン、4-クロロアセチルカテコール、1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-モルホリノエタノール、及び、4-クロロカテコール、からなる群から選ばれたカテコール構造含有化合物又はその塩を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、細胞内のタウ凝集を十分に抑制できる。そのため、有効な治療法のなかったADをはじめとするタウオパチーに罹患した患者を救済し、高齢化社会を迎える現在において、高齢者の生活向上、介護負担軽減、医療費の削減等により多くの社会的貢献が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】11種の各化合物のチオフラビンT活性を示す図である。
【図2】14種の各化合物のチオフラビンT活性を示す図である。
【図3】3種の各化合物のチオフラビンT活性を示す図である。
【図4】6種の各化合物のチオフラビンT活性を示す図である。
【図5】8種の各化合物のチオフラビンT活性を示す図である。
【図6】4-アミノカテコールのチオフラビンT活性を示す図である。
【図7】1,2,4-ベンゼントリオールのチオフラビンT活性を示す図である。
【図8】各種化合物のチオフラビンT活性を示す図であり、そのうち(a)はカテコール、(b)は2,3-ジヒドロキシベンズアルデヒド、(c)は3-メトキシカテコール、(d)は4-tert-ブチルカテコール、(e)は3,4-ジヒドロキシベンジルアミン、(f)は3-クロロアセチルカテコール、(g)は1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-モルホリノエタノール、(h)はピロガロール、(i)は3,4-ジヒドロキシアセトフェノン、(j)は4-クロロカテコール、(k)は3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-(イソプロピルアミノ)プロパン酸である。
【図9】3-アミノカテコールのチオフラビン T活性を示す図である。
【図10】各種化合物のチオフラビンT活性を示す図であり、そのうち(a)は4-(イソペンチルアミノ)カテコール、(b)は4-(モルホリノカルボニルアミノ)カテコール、(c)は4-(4-アミノブタノイルアミノ)カテコール、(d)は4-(ジイソペンチルアミノ)カテコールある。
【図11】4-メトキシカテコールのチオフラビン T活性を示す図である。
【図12】各種化合物のチオフラビンT活性を示す図であり、そのうち(a)はメチレンブルーであり、(b)はイソプロテレノールであり、(c)は4-アミノカテコールであり、(d)はメチレンブルー、イソプロテレノール及び4-アミノカテコールの比較である。
【図13】サルコシル可溶性タウ及びサルコシル不溶性タウの泳動結果であり、そのうち(a)はメチレンブルーの泳動結果であり、(b)はイソプロテレノールの泳動結果であり、(c)は4-アミノカテコールの泳動結果である。
【図14】(a)はショ糖密度勾配遠心法による重合タウの密度分画の説明であり、(b)はメチレンブルーの泳動結果であり、(c)はイソプロテレノールの泳動結果であり、(d)は4-アミノカテコールの泳動結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。

【0016】
本発明者らは、鋭意研究の結果、カテコール;炭化水素基を除く、電子供与性の置換基Rを、カテコール環の4位に有する4位置換カテコール構造化合物;若しくは電子供与性の置換基Rを、カテコール環の3位に有する3位置換カテコール構造化合物が、タウオパチーの予防及び治療に有益であるという新知見を見いだし、この事実に基づいて本発明を完成させた。

【0017】
ここでのカテコール構造含有化合物とは、構造式中にカテコール構造を含有する化合物である。カテコール構造とは、ベンゼン環の置換基の2つがヒドロキシル基であって、該2つのヒドロキシル基がオルト位の関係にある化合物であるカテコールの構造を意味する。

【0018】
また、「炭化水素基を除く、電子供与性の置換基R」とは、全ての置換基から炭化水素基を除き、そこから更に電子供与性の置換基を選択したものを規定する。「炭化水素基」とは、アルキル基、アルケンから導かれる基、及び芳香族炭化水素基である。

【0019】
アルキル基は、特に限定されるものではないが、炭素原子が1ないし6から構成されるC1~6のアルキル基が好ましい。C1~6アルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができ、より具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基等を例示できる。アルキル基には、アミノアルキル基等のようなアルキル基誘導体も含まれる。

【0020】
アルケンから導かれる基は、特に限定されるものではないが、例えばCH=CH-,CH=CHCH-,CHCH=CH-等が例示される。芳香族炭化水素基(アリール基)は、特に限定されるものではないが、例えば、C-フェニル基,CH-トリル基(o-,m-,p-がある)、(CH-キシリル基,C10-ナフチル基等が例示される。

【0021】
「電子供与性の置換基R」とは、特に限定されるものではないが、例えばアミノ基、水酸基、アルコキシ基又はチオール基の何れかからなる電子供与性の置換基である。

【0022】
アミノ基とは、-NRR’である。R、R’は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、複素環基等を表す。

【0023】
R、R’としてのアルキル基は、炭素数1~6の直鎖又は分枝のアルキル基が好ましく、炭素数1~5の直鎖又は分枝のアルキル基がより好ましい。R、R’としてのアラルキル基は、炭素数7~11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルメチル基等である。なお、アルキル基及びアラルキル基におけるアルキル鎖を構成する炭素原子の1以上が、不飽和結合、エーテル結合又はエステル結合に置き換わっていてもよく、R及びR'は互いに結合して環を形成していてもよい。

【0024】
R、R’としてのシクロアルキル基は、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3~6のシクロアルキル基がより好ましい。

【0025】
R、R’としてのアリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、フルオレニル基等である。

【0026】
R、R’としての複素環基は、炭素原子以外に窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1~4個のヘテロ原子を含む5~7員の芳香族複素環、飽和複素環、不飽和複素環又はこれらの複素環とベンゼン環が縮合した縮合複素環であり、例えば、2-フリル基、3-フリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-オキサゾリル基、2-オキサゾリニル基、3-イソオキサゾリル基、4-イソオキサゾリル基、5-イソオキサゾリル基、3-イソオキサゾリニル基、2-チアゾリル基、2-チアゾリニル基、3-イソチアゾリル基、3-イソチアゾリニル基、2-ピラニル基、4-テトラヒドロピラニル基、1-アゼチジニル基、2-アゼチジニル基、3-アゼチジニル基、2-ピロリル基、2-ピロリジニル基、2-イミダゾリル基、3-ピラゾリル基、2-イミダゾリニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ピペリジル基、ピペリジノ基、2-モルホリニル基、モルホリノ基、2-ピペラジニル基、2-ピリミジニル基、3-ピリダジニル基、2-ピラジニル基等である。

【0027】
また、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、複素環基は、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、フェニル基、アルコキシ基、スルフヒドリル基、カルボニル基、アルデヒド基、及び、ハロゲン基からなる群より選択される基のうち1以上で置換されていてもよい。

【0028】
アルコキシ基とは、酸素原子(O)にアルキル基Rが直接結合したものをいい、Rが示すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルコキシ基とは、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシおよびオクチルオキシ等の直鎖状又は分枝鎖状のアルコキシ基を意味する。

【0029】
4位置換カテコール構造化合物は、アミノ基、水酸基、アルコキシ基又はチオール基の何れかからなる置換基Rを、カテコール環の4位に有するものであることが好ましい。

【0030】
4位置換カテコール構造化合物は、特に好ましくは4-アミノカテコール又は1,2,4-ベンゼントリオールである。

【0031】
また、4位置換カテコール構造化合物は、例えば4-(イソペンチルアミノ)カテコール、又は、4-メトキシカテコールである。

【0032】
また、4位置換カテコール構造化合物は、例えば、4-(4-アミノブタノイルアミノ)カテコール、4-(モルホリノカルボニルアミノ)カテコール、又は、4-(ジイソペンチルアミノ)カテコールである。

【0033】
3位置換カテコール構造化合物は、アミノ基、水酸基、アルコキシ基又はチオール基の何れかからなる置換基Rを、カテコール環の3位に有するものであることが好ましい。

【0034】
3位置換カテコール構造化合物は、特に好ましくは3-メトキシカテコール、ピロガロール、又は、3-アミノカテコールである。

【0035】
またその他のタウ凝集阻害剤としては、例えば、2,3-ジヒドロキシベンズアルデヒド、4-tert-ブチルカテコール、3,4-ジヒドロベンジルアミン、4-クロロアセチルカテコール、1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-モルホリノエタノール、及び、4-クロロカテコールからなる群から選ばれる。更に、その他のタウ凝集阻害剤としては、例えば、2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシプロパン酸(ドロキシドパ)であって2S,3R以外の光学異性体が該当する。2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシプロパン酸の(2S,3R)以外の光学異性体はドロキシドパに比べ2-位のアミノ基の立体構造の違いにより生体内における代謝消失速度が遅くなり、より脳内滞留性、生体内での安定性が高くなると考えられる。これはドロキシドパよりもより低容量で、長時間作用させる事が可能となる。また、3-位のヒドロキシ基の立体構造の違いにより、生体内のアドレナリン受容体への結合を大幅に低下させ、アドレナリン受容体を介する副作用を大きく軽減させる事が可能と考えられる。本発明はタウ重合阻害剤であり、その用途として高齢者への長期投与が想定される。これら光学異性体を適切に用いることにより、ドロキシドパを用いるよりも高い安全性、少ない投与量、少ない投与回数が可能となり、認知症治療において高い優位性が考えられる。

【0036】
また、その他のタウ凝集阻害剤として、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-(イソプロピルアミノ)プロパン酸であって4種類の光学異性体が該当する。3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-(イソプロピルアミノ)プロパン酸の4つの光学異性体はドロキシドパにくらべアミノ基がイソプロピル化されたことにより、体内におけるαアドレナリン受容体を介する副作用の軽減が期待出来る。また、ドロキシドパに比べ、代謝消失が早いことにより、仮に副作用が生じた場合の体内からの薬物除去が迅速に行える。これは本発明であるタウ重合阻害剤の用途が、高齢者への長期投与であることを考えると高い安全性で治療に用いる事が可能となり、ドロキシドパに比べて有利と考えられる。

【0037】
本実施形態にかかるタウ凝集阻害剤は、これらのカテコール構造含有化合物を単一で用いても良く、また複数を組み合わせて用いることも可能である。

【0038】
本実施形態にかかるタウ凝集阻害剤には、その塩も含まれる。塩は、薬理的に許容される塩であって、例えば、アルカリ金属塩(例えばカリウム塩、ナトリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩、カルシウム塩等)等の金属塩、炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等)、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等の無機塩基の塩;トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等)、ピリジン、キノリン、ピペリジン、イミダゾール、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、N-アルキル-モルホリン、DBN、DBU等の有機塩基の塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩;ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、ピクリン酸塩、メタンスルホン酸塩、グルタミン酸塩等の有機酸の塩等である。

【0039】
本実施形態にかかるタウ凝集阻害剤は、その有効量を、薬学的に許容される担体と共に含有することも可能である。担体は、賦形剤等の固体、又は、希釈剤等の液体が用いられる。具体的には、例えばステアリン酸マグネシウム、乳糖、スターチ、ゼラチン、寒天、タルク、ペクチン、アラビアゴム、オリーブ油、ゴマ油、カカオバター、エチレングリコール、蒸留水等である。

【0040】
タウオパチーとは、神経細胞やグリア細胞内にリン酸化タウの蓄積がみられる神経変性疾患のことである。タウオパチーは、例えば、AD、ダウン症、前頭側頭型認知症、皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)等である。

【0041】
タウオパチーの予防とは、タウオパチー障害が生じることを防ぐことを意味し、タウオパチーの治療とは、タウオパチー障害の進行を阻止、又は改善・軽減することを意味する。

【0042】
本実施形態にかかるタウ凝集阻害剤は、製薬上許容される等張化剤、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、pH調整剤から選択される1又はそれ以上の添加剤を適宜配合することができる。

【0043】
等張化剤としては、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、ホウ酸、マンニトール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マルトース、ショ糖、ソルビトール、ブドウ糖等が使用できる。

【0044】
緩衝剤としては、例えば、アミノ酸、コハク酸等の有機酸、及び、ホウ酸、リン酸等の無機酸等、及びその医薬的に許容される塩類等が挙げられる。

【0045】
溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の高分子;ポリソルベート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポロオキシエチレンポリオキシプロピレン等の界面活性剤;プロピレングリコール等の多価アルコール;安息香酸、ソルビン酸等の有機酸;アスパラギン酸、ヒスチジン、グリシン、リジン等のアミノ酸等が使用できる。

【0046】
防腐剤としては、例えば、ベンゼトニウム、ベンザルコニウム、ベンゾドデシニウム等の第四アンモニウムの塩、クロルヘキシジン等の陽イオン化合物の塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール化合物等を使用することができる。

【0047】
pH調整剤としては、例えば、硫酸、塩酸、酢酸、乳酸、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等を使用することができる。

【0048】
本実施形態にかかるタウ凝集阻害剤の投与量は、適切な効果が生じる限り特に限定されるものではなく、投与される患者の症状の程度、性別、年齢等を考慮して適宜決定される。例えば、タウ凝集阻害剤の量が1日成人1人当たり0.0001~1000mgとすることができる。この1日当たりの投与量は、1日に1回で投与してもよいが、1日に数回に分けて投与することが好ましい。

【0049】
本実施形態にかかるタウ凝集阻害剤は、投与態様に応じた製剤形態に調製できる。経口投与形態としては、例えば、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤等の固形剤及び液剤形態とすることができる。また、非経口投与形態としては、例えば、静注、筋注等の注射剤形態とすることができる。

【0050】
タウはリン酸化されると会合してタウオリゴマーを形成する。このタウオリゴマーが成長しβシート構造を持つようになると、球状の顆粒状タウ凝集体が形成される。顆粒状タウ凝集体は約40個のタウ分子によって構成されていると考えられる。この顆粒状タウ凝集体が連結して、ペアになった螺旋状フィラメント(paired helical filament:PHF)と呼ばれるタウ線維を形成する(NFT)。近年のマウスモデルを用いた研究では、タウの過剰発現をNFTが出来る時期に抑制するとマウスの記憶学習は改善されるが、NFTは形成され続けた。このことは、主として、NFTよりもそれを形成する過程で神経機能低下が起きていることが示唆される。NFT自体は毒性を持たず、そこに至るまでの凝集過程が神経毒性の主原因であると考えられる。本実施形態にかかるタウ凝集阻害剤は、顆粒状タウ凝集体が連結してPHFを形成する過程におけるタウ凝集を阻害するのみならず、球状の顆粒状タウ凝集体が形成される過程におけるタウ凝集をも阻害する。また、脳の神経細胞の変性は変異型タウタンパク質だけでなく、正常なタウタンパク質の蓄積でも起きるが、本発明のタウ凝集阻害剤は、正常なタウタンパク質の凝集をも阻害する。そのためADをはじめとするタウオパチー症状の予防又は治療が可能となる。
【実施例】
【0051】
はじめに大腸菌 BL21(DE3)株にヒト型タウ0N4R アイソフォーム(383 アミノ酸)を発現させるプラスミドを導入し、リコンビナントタウを精製した。精製方法は谷口らの方法(Taniguchi et al,2008, JBC, 280, 7614)を改変した。イソプロピル-β-チオガラクトピラノシドにてタウの発現を誘導後の大腸菌から可溶性画分を調整し、ホスホセルロースカラム(Whatman 社、P11カラム)による分画を行った。NaCl 0.1~0.3 Mの濃度で溶出される画分を回収し、硫酸アンモニウムによる沈殿濃縮を行った。得られた沈殿を0.5M NaCl, 2% 2-メルカプトエタノール含有緩衝液で溶解し、100℃で5分間加熱した。15,000 xg,15分遠心後の上清を回収し、硫酸アンモニウムによる沈殿濃縮を行った。得られた沈殿を20%アセトニトリル, 0.1% ギ酸溶液で溶解し、逆相 HPLC(ナカライテスク社、Cosmosil protein-R カラム)による精製を行った。全長リコンビナントタウを含む画分を混合し、凍結乾燥器で乾燥させ、乾燥精製リコンビナントタウ標品とした。得られたタウの収量、濃度は10% ポリアクリルアミドゲルにより電気泳動後、クーマシーブリリアントブルー(CBB)染色により解析した。
【実施例】
【0052】
乾燥精製リコンビナントタウ標品は0.9 mg/mlの濃度で精製水に溶解した。これを終濃度10μM チオフラビンT、0.1M NaCl, 0.45 mg/ml リコンビナントタウ、10 mM HEPESpH7.4、及び各種化合物を目的の濃度となるように希釈し、蛍光プレートリーダー(TECAN社、infinit F200)により蛍光値(励起光 360 nm / 蛍光 465 nm)を測定した。その後、60μg/ml となるようにヘパリンを加え、保湿箱中37℃でインキュベーションし、時間に伴う蛍光値の変化を測定した。168時間インキュベーション、蛍光値測定後、反応液を回収し、サルコシル不溶性画分を調整した。サルコシル不溶性画分は回収した反応液に 1/10量の10% N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム水溶液を加え、終濃度1% とした。4℃で30分間インキュベーション後、100,000 xg、20分間遠心し、上清と沈殿を分離した。上清画分を可溶性タウ画分、沈殿をサルコシル不溶性画分とし、10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により、タウの収量について解析した。また、回収した反応液の一部は前田らの方法(Maeda et al. 2007, Biochemistry, 46, 3856)により、ショ糖密度勾配遠心法による分画を行った。遠心後、密度に応じて1~6に分画し、10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、ウエスタンブロット法によりタウの収量について解析した。
【実施例】
【0053】
構造展開としてはイソプロテレノールの構造を(A)カテコール骨格の2つのヒドロキシル基、(B)カテコール骨格のベンゼン環、(C)α-ヒドロキシル基、(D)イソプロピルアミド基の4つのパートに分け、それぞれ構造を一部改変した化合物について購入、又は合成し、上記タウ凝集阻害実験を行った。スクリーニングにおいて化合物の濃度は1μMとし、同インキュベーション条件下におけるイソプロテレノール1μMの効果と比較した。
【実施例】
【0054】
はじめにカテコール骨格自体の効果について検証する目的で、(A)の構造活性相関について検証した。図1及び図2は、各種化合物のチオフラビンT活性を示す図である。図1及び図2に示すように、イソプロテレノールと同等のタウ重合阻害活性を有する化合物としてカテコール(CC,化学式1)があり、いずれかのヒドロキシル基を変換した2-メトキシフェノール(2-MP,化学式2)、2-アミノフェノール(2-AP,化学式3)、レゾルシノール(Resorcinol,化学式4)、サリチリックアルコール(Salicylic Alcohol,化学式5)、サリチル酸(Salicylic Acid,化学式6)、については効果が認められなかった。
【実施例】
【0055】
【化1】
JP2014162737A1_000003t.gif

【実施例】
【0056】
【化2】
JP2014162737A1_000004t.gif

【実施例】
【0057】
【化3】
JP2014162737A1_000005t.gif

【実施例】
【0058】
【化4】
JP2014162737A1_000006t.gif

【実施例】
【0059】
【化5】
JP2014162737A1_000007t.gif

【実施例】
【0060】
【化6】
JP2014162737A1_000008t.gif

【実施例】
【0061】
また、図1及び図2に示すように、各種化合物について(S)-(+)-ノルエピネフリン(D-Nor)とチオフラビンT活性を比較した。2-アミノ-1-フェニルエタノール(2-A-1PE,化学式7)、2-アミノ-1-(3,4-ジクロロフェニル)エタノール(2-A-1-DCPE,化学式8)でタウ重合阻害活性が得られなかった。ホモベラチラミン(HV,化学式9)、2-(3,4-ジメトキシ)エチルアミン(3,4-DMPT,化学式10)ではタウ重合阻害活性が認められなかった。
【実施例】
【0062】
【化7】
JP2014162737A1_000009t.gif
【実施例】
【0063】
【化8】
JP2014162737A1_000010t.gif

【実施例】
【0064】
【化9】
JP2014162737A1_000011t.gif

【実施例】
【0065】
【化10】
JP2014162737A1_000012t.gif

【実施例】
【0066】
次にカテコール核自体の変換を試みた。カテコール核をフラン環、1-メチルイミダゾール環、ピリジン環、ニトロフェニル環、クロロフェニル環、アミノフェニル環、ジメチルフェニル環、ヒドロキシフェニル環に置換した以下の化合物、即ち、2-アミノ-1-(フラン-2-イル)エタノール(2-A-1F-2-E,化学式11)、2-アミノ-1-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)エタノール(2-A-1H1-E,化学式12)、2-アミノ-1-(ピリジン-3-イル)エタノール(2-A-1-P-3E,化学式13)、2-アミノ-1-(4-ニトロフェニル)エタノール(2-A-1-NPE,化学式14)、1-(3,4-ジメチルフェニル)エチルアミン(34DMPT,化学式15)、1-(2-ヒドロキシフェニル)エチルアミン(2-HPEA,化学式16)についてタウ重合阻害活性を調べた。図3は、各種化合物のチオフラビンT活性を示す図である。図2及び図3に示すように、これらの化合物についてはタウ重合阻害活性は認められなかった。
【実施例】
【0067】
【化11】
JP2014162737A1_000013t.gif
【実施例】
【0068】
【化12】
JP2014162737A1_000014t.gif

【実施例】
【0069】
【化13】
JP2014162737A1_000015t.gif

【実施例】
【0070】
【化14】
JP2014162737A1_000016t.gif

【実施例】
【0071】
【化15】
JP2014162737A1_000017t.gif

【実施例】
【0072】
【化16】
JP2014162737A1_000018t.gif

【実施例】
【0073】
以上より、カテコール骨格、2つの隣り合ったフェノール性水酸基がタウ重合阻害活性に必須と考えた。
【実施例】
【0074】
次にカテコール核4位に配位した置換基の影響について検討した。イソプロテレノールでは2-イソプロピルアミノ-1-ヒドロキシエチル基であるが、これをアミノメチル基、tert-ブチル基、クロル基、ケトン基に変換した。即ち、3,4-ジヒドロキシベンジルアミン(化学式17)、4-tert-ブチルカテコール(4TBC,化学式18)、4-クロロカテコール(4-Cholorocatechol,化学式19)、3,4-ジヒドロキシアセトフェノン(34-DAP,化学式20)につき、タウ重合阻害活性を調べた。図4及び図5は、各種化合物のチオフラビンT活性を示す図である。図1,2,4,5に示すように、これらは、イソプロテレノール、カテコールと同等のタウ重合阻害活性を呈した。
【実施例】
【0075】
【化17】
JP2014162737A1_000019t.gif

【実施例】
【0076】
【化18】
JP2014162737A1_000020t.gif

【実施例】
【0077】
【化19】
JP2014162737A1_000021t.gif

【実施例】
【0078】
【化20】
JP2014162737A1_000022t.gif

【実施例】
【0079】
また、図1に示すように、3-メトキシカテコール(3MOC,化学式21)、2,3-ジヒドロキシベンズアルデヒド(23DHB,化学式22)も同等なタウ重合阻害活性が確認された。
【実施例】
【0080】
【化21】
JP2014162737A1_000023t.gif

【実施例】
【0081】
【化22】
JP2014162737A1_000024t.gif

【実施例】
【0082】
一方、図1に示すように、4位の置換基についてアルデヒド基、エトキシカルボニル基に変換した3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(34DHB,化学式23)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチル(EDHB,化学式24)についてはタウ重合阻害活性が確認出来なかった。
【実施例】
【0083】
【化23】
JP2014162737A1_000025t.gif

【実施例】
【0084】
【化24】
JP2014162737A1_000026t.gif

【実施例】
【0085】
また、図2に示すように、4-クロロアセチルカテコール(4-CAC,化学式25)、1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-モルホリノエタノール(1-D-2-ME,化学式26)についてはイソプロテレノール、カテコールよりもやや強いタウ重合阻害活性を示した。
【実施例】
【0086】
【化25】
JP2014162737A1_000027t.gif

【実施例】
【0087】
【化26】
JP2014162737A1_000028t.gif

【実施例】
【0088】
以上より、カテコールの4位の置換基については炭素鎖からなるものはイソプロテレノール、カテコールと同等であり、アルデヒド、カルボン酸、ニトロ基等では効果が現弱することを見出した。
【実施例】
【0089】
生体内、天然物由来のカテコール誘導体は4位に炭素鎖からなる側鎖を有するものがほとんどである。これに対し、本発明では新たに炭素鎖以外の元素からなる側鎖について検討した。図6は、4-アミノカテコールのチオフラビンT活性を示す図である。図7は、1,2,4-ベンゼントリオールのチオフラビンT活性を示す図である。図6及び図7において、図中の(●)は化合物がない場合のチオフラビンT活性、(○)は各化合物1μM存在下でのチオフラビンT活性、(◇)は同条件下で測定したイソプロテレノール1μM存在下でのチオフラビンT活性である。
【実施例】
【0090】
図6及び図7に示すように、アミノ基、ヒドロキシル基を有する化合物である4-アミノカテコール(化学式27)、1,2,4-ベンゼントリオール(化学式28)ではイソプロテレノール、カテコールに比べて1μMの濃度で強力にタウの重合を阻害した。一方、図5に示すように、ニトロ基に置換した4-ニトロカテコール(4-Nitropyrocatechol,化学式29)にはタウ重合阻害活性は確認出来なかった。
【実施例】
【0091】
4-アミノカテコールについてさらに構造展開した結果、図5に示すように、1つのヒロドキシル基を無くした4-アミノフェノール(4-aminophenol,化学式30)、3-アミノフェノール(3-aminophenol,化学式31)では効果が減弱し、2つのヒドロキシル基を変換した3,4-(メチレンジオキシル)アニリン(3,4-MDA,化学式32)でタウ重合阻害活性は消失した。
【実施例】
【0092】
【化27】
JP2014162737A1_000029t.gif
【実施例】
【0093】
【化28】
JP2014162737A1_000030t.gif

【実施例】
【0094】
【化29】
JP2014162737A1_000031t.gif

【実施例】
【0095】
【化30】
JP2014162737A1_000032t.gif

【実施例】
【0096】
【化31】
JP2014162737A1_000033t.gif
【実施例】
【0097】
【化32】
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【実施例】
【0098】
図8は、各種化合物のチオフラビンT活性を示す図であり、そのうち(a)はカテコール、(b)は2,3-ジヒドロキシベンズアルデヒド、(c)は3-メトキシカテコール、(d)は4-tert-ブチルカテコール、(e)は3,4-ジヒドロキシベンジルアミン、(f)は3-クロロアセチルカテコール、(g)は1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-モルホリノエタノール、(h)はピロガロール、(i)は3,4-ジヒドロキシアセトフェノン、(j)は4-クロロカテコール、(k)は 3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-(イソプロピルアミノ)プロパン酸である。
【実施例】
【0099】
図中の(●)は化合物がない場合のチオフラビンT活性、(○)は各化合物1μM存在下でのチオフラビンT活性、(◇)は同条件下で測定したイソプロテレノール1μM存在下でのチオフラビンT活性である。図8に示すように、これらの化合物はタウ凝集の阻害活性を有することが判明した。また、上述した図6及び図7に示すように、タウの重合阻害剤としてカテコール核の4位にアミノ基、ヒドロキシル基を有する化合物がタウの重合を強力に阻害することを発見した。
【実施例】
【0100】
更にカテコール核へのアミン置換の部位による差異について検討した。図9は、3-アミノカテコール(化学式33)のチオフラビン T 活性を示す図である。
【実施例】
【0101】
【化33】
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【実施例】
【0102】
図中の(●)は化合物が無い場合のチオフラビン T 活性、(○)は3-アミノカテコール 1μM 存在下でのチオフラビン T 活性、(◇)は同条件下で測定したイソプロテレノール1μM存在下でのチオフラビンT活性、(◆)は同条件下で測定した 4-アミノカテコール1μM存在下でのチオフラビンT活性である。4-アミノカテコールと同様にカテコール核3位にアミノ基を有する化合物についても同様にタウの重合を強力に阻害する事を発見した。
【実施例】
【0103】
次に4-アミノカテコール中アミノ基への側鎖付加の影響について検討した。検討した化合物は下記である。4-(イソペンチルアミノ)カテコール(化学式34)、4-(モルホリノカルボニルアミノ)カテコール(化学式35)、4-(4-アミノブタノイルアミノ)カテコール(化学式36)、4-(ジイソペンチルアミノ)カテコール(化学式37)である。
【実施例】
【0104】
【化34】
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【実施例】
【0105】
【化35】
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【実施例】
【0106】
【化36】
JP2014162737A1_000038t.gif

【実施例】
【0107】
【化37】
JP2014162737A1_000039t.gif

【実施例】
【0108】
図10は、各種化合物のチオフラビンT活性を示す図であり、そのうち(a)は4-(イソペンチルアミノ)カテコール、(b)はN-(3,4-dihydroxyphenyl)morpholine-4-carboxamide、(c)は4-(4-アミノブタノイルアミノ)カテコール、(d)は4-(ジイソペンチルアミノ)カテコールである。図中の(●)は化合物がない場合のチオフラビンT活性、(○)は各化合物1μM存在下でのチオフラビンT活性、(◇)は同条件下で測定したイソプロテレノール1μM存在下でのチオフラビンT活性、(◆)は同条件下で測定した 4-アミノカテコール1μM存在下でのチオフラビンT活性である。
【実施例】
【0109】
図10(a)に示すように、4-アミノ基のイソペンチル化により 4-アミノカテコールの有する強力なタウ重合阻害活性は変化しなかった。また図10(b)に示すように、4-アミノ基のモルホリン 4-カルボキシアミド化では僅かに4-アミノカテコールの有する強力なタウ重合阻害活性は低下した。また図10(c)、(d)に示すように、4-アミノ基の4-アミノブタンアミド化、ジイソペンチル化により、4-アミノカテコールの有する強力なタウ重合阻害活性は大きく低下し、イソプロテレノールと同等となった。これより、とくに4-アミノカテコールについて4-位アミノ基のモノアルキル化誘導体は強いタウ凝集阻害効果を有する事を発見した。一方、4-位アミノ基への電子吸引性側鎖の付加、ジアルキル化はタウ凝集阻害効果に影響を与える事を発見した。
【実施例】
【0110】
次に、1,2,4-ベンゼントリオールの4-位ヒドロキシル基への側鎖付加の影響に付いて調べた。図11は、1,2,4-ベンゼントリオールの4-位ヒドロキシル基をメトキシル基に置換した 4-メトキシカテコール(化学式38)のチオフラビンT活性を示す図である。
【実施例】
【0111】
【化38】
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【実施例】
【0112】
図中の(●)は化合物がない場合のチオフラビンT活性、(○)は4-メトキシカテコール 1μM存在下でのチオフラビンT活性、(◇)は同条件下で測定したイソプロテレノール1μM存在下でのチオフラビンT活性、(◆)は同条件下で測定した 4-アミノカテコール1μM存在下でのチオフラビンT活性である。図11に示すように1,2,4-ベンゼントリオールの4-位ヒドロキシル基のアルキル化は、1,2,4-ベンゼントリオールの有する強力なタウ重合阻害活性に影響をあたえなかった。
【実施例】
【0113】
さらに4-アミノカテコールについて、タウ重合阻害活性既知の化合物であるメチレンブルー、イソプロテレノールとの比較をおこなった。
【実施例】
【0114】
図12は、各種化合物のチオフラビンT活性を示す図であり、そのうち(a)はメチレンブルーであり、(b)はイソプロテレノールであり、(c)は4-アミノカテコールであり、(d)はメチレンブルー、イソプロテレノール及び4-アミノカテコールの比較である。各化合物濃度を0.1, 1, 10, 100μMに調製し、タウの重合阻害活性を検討した。図12に示すように、チオフラビンT活性を指標にすると1μM以上のすべての濃度でイソプロテレノールよりも有意に同活性の阻害を示した。このときメチレンブルーは強い有色化合物であるため、参考と考えた。
【実施例】
【0115】
さらに168時間インキュベーション後のサンンプルを回収し、サルコシル不溶性タウの量について検討した。図13は、サルコシル可溶性タウ及びサルコシル不溶性タウの電気泳動結果であり、そのうち(a)はメチレンブルーであり、(b)はイソプロテレノールであり、(c)は4-アミノカテコールである。図13に示すように、各薬物とも濃度依存的にタウの重合を阻害したが、4-アミノカテコールは1μMという低濃度においてメチレンブルー、イソプロテレノールに比べて有意にサルコシル不溶性のタウ重合体を減少させた。
【実施例】
【0116】
次にタウの重合阻害機構について検証するため、ショ糖密度勾配遠心法による重合タウの密度分画をおこなった。図14(a)に示すように、可溶性のタウは主にフラクション1、僅かにフラクション2に回収されるが、ヘパリンによる重合によりフラクション4、5に線維化したタウ、フラクション3にオリゴマータウが回収されることが知られている。
【実施例】
【0117】
図14(b)はメチレンブルーであり、図14(c)はイソプロテレノールであり、図14(d)は4-アミノカテコールである。図14(b)~(d)に示すように、メチレンブルー、イソプロテレノール10μM存在下ではタウの線維形成にあたるフラクション4、5に回収されるタウが大きく減少、オリゴマータウにあたるフラクション3に回収されるタウも減少が認められた。これに対し、4-アミノカテコール10μM存在下では線維化タウ、オリゴマータウともにほぼ完全に消失させた。これより、4-アミノカテコールは既存のタウ重合阻害剤に比べより低濃度でタウの重合、オリゴマー形成を抑えることを見出した。
【実施例】
【0118】
以上の実験結果から、カテコール;炭化水素基を除く、電子供与性の置換基Rを、カテコール環の4位に有する4位置換カテコール構造化合物;若しくは電子供与性の置換基Rを、カテコール環の3位に有する3位置換カテコール構造化合物、又はこれらの塩を含む化合物が、カテコール核が強力なタウの重合阻害活性を有する事実を見出した。イソプロテレノール、カテコールとのタウ重合阻害活性の比較から、4-アミノカテコール等電子供与性側鎖の付加によりおよそ5~10倍程度といった飛躍的な活性増強が見込まれる。本発明で得られた4-アミノカテコール、1,2,4-ベンゼントリオール等の化合物はそのまま、あるいは適切な構造展開を経ることにより、これまでの化合物に比べより低濃度で有効性を示すタウ重合阻害剤になり、より有用なアルツハイマー病をはじめとするタウオパチー全般に対する認知症治療薬となりうる。とくに認知症患者が高齢であること、長期投与が予想されること、体内に吸収され且つ脳内に移行する必要があること、長期にわたり一定の脳内濃度が必要であると考えられること、認知患者による服薬遵守が困難であること等から、より低濃度で有効性の強い化合物が治療において有利であるといえる。また、本発明で得られた4-アミノカテコール、1,2,4-ベンゼントリオールを基本骨格とした化合物は認知症治療薬だけでなく、タウ研究のツールとしての有用性も期待出来る。
【産業上の利用可能性】
【0119】
タウオパチーの治療に有益である。
図面
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【図2】
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【図14】
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