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明細書 :カーボンナノウォール及びその製造方法、酸素還元触媒、酸素還元電極及び燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6080056号 (P6080056)
登録日 平成29年1月27日(2017.1.27)
発行日 平成29年2月22日(2017.2.22)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノウォール及びその製造方法、酸素還元触媒、酸素還元電極及び燃料電池
国際特許分類 B01J  27/24        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   8/02        (2016.01)
H01M   4/88        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
B01J  37/34        (2006.01)
C01B  32/152       (2017.01)
C01B  32/158       (2017.01)
FI B01J 27/24 M
H01M 4/90 X
H01M 8/02 E
H01M 4/88 K
B01J 37/08
B01J 37/34
C01B 31/02 101F
請求項の数または発明の数 12
全頁数 13
出願番号 特願2014-560814 (P2014-560814)
出願日 平成26年2月7日(2014.2.7)
国際出願番号 PCT/JP2014/052860
国際公開番号 WO2014/123213
国際公開日 平成26年8月14日(2014.8.14)
優先権出願番号 2013021911
優先日 平成25年2月7日(2013.2.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月26日(2015.10.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
発明者または考案者 【氏名】吉村 昭彦
【氏名】松尾 貴寛
【氏名】河口 紀仁
【氏名】義久 久美子
【氏名】橘 勝
【氏名】シン ソクチョル
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100100712、【弁理士】、【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100095500、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 正和
【識別番号】100098327、【弁理士】、【氏名又は名称】高松 俊雄
審査官 【審査官】延平 修一
参考文献・文献 特開2007-096136(JP,A)
特開2012-041249(JP,A)
特開2011-032117(JP,A)
特開2012-025601(JP,A)
特開2012-167400(JP,A)
電気学会研究資料,2010年 5月 7日,PST-10-8,p.37-39
第57回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 2010春,2010年,18a-TD-9
W. Takeuchi et al.,Electron field emission enhancement of carbon nanowalls by plasma surface nitridation,Applied Physics Letters,2011年 3月21日,Vol.98, No.12,p.123107/1-123107/3
Joshua P. McClure,Oxygen Reduction on Metal-Free Nitrogen-Doped CarbonNanowall Electrodes,Journal of The Electrochemical Society,米国,The Electrochemical Society,2012年 9月14日,Vol.159, No.11,F733~F742
第53回応用物理学関係連合講演会講演予稿集 第1分冊 2006春,2006年,24a-ZN-3
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
C01B 31/02
H01M 4/88
H01M 4/90
H01M 8/02
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
プラズマによる窒素励起を利用する窒化時に600~800℃の間(但し、600℃を除く)で温度制御をして0.98~1.88at%の窒素がドープされたカーボンナノウォールを有する酸素還元触媒。
【請求項2】
窒素がドープされた前記カーボンナノウォールの結晶化度が0.5~3.5である請求項1記載の酸素還元触媒。
【請求項3】
ガス拡散層と、
前記ガス拡散層上に配置され、プラズマによる窒素励起を利用する窒化時に600~800℃の間(但し、600℃を除く)で温度制御をして0.98~1.88at%の窒素がドープされたカーボンナノウォールを有する酸素還元触媒である触媒層と、
を有する酸素還元電極。
【請求項4】
窒素がドープされた前記カーボンナノウォールの結晶化度が0.5~3.5である請求項3記載の酸素還元電極。
【請求項5】
前記ガス拡散層はカーボン基板であって、
前記触媒層は、前記カーボン基板から成るガス拡散層上に形成された酸素還元触媒である
請求項3又は4に記載の酸素還元電極。
【請求項6】
電解質膜と、
前記電解質膜の両側にそれぞれ配置されるガス拡散層と、前記ガス拡散層上に配置され、プラズマによる窒素励起を利用する窒化時に600~800℃の間(但し、600℃を除く)で温度制御をして0.98~1.88at%の窒素がドープされたカーボンナノウォールを有する酸素還元触媒である触媒層とを有する酸素還元電極と、
前記酸素還元電極の外側にそれぞれ位置するセパレータと、
を有する燃料電池。
【請求項7】
窒素がドープされた前記カーボンナノウォールの結晶化度が0.5~3.5である請求項6記載の燃料電池。
【請求項8】
前記酸素還元電極の前記ガス拡散層はカーボン基板であって、前記酸素還元電極の前記触媒層は、前記カーボン基板から成るガス拡散層上に形成された酸素還元触媒である請求項6又は7に記載の燃料電池。
【請求項9】
カーボンナノウォールを用意し、
適正量の窒素をドープ可能なように600~800℃の間(但し、600℃を除く)で制御された温度で加熱しながら、プラズマ発生によって窒素分子を励起させて前記カーボンナノウォールを窒化する
ことを有する、窒素がドープされたカーボンナノウォールの製造方法。
【請求項10】
前記窒化によってドープされる窒素の量は、0.98~1.88at%である請求項に記載の窒素がドープされたカーボンナノウォールの製造方法。
【請求項11】
前記窒化によって、結晶化度が0.5~3.5である酸素還元触媒用カーボンナノウォールが得られる請求項9又は10に記載の窒素がドープされたカーボンナノウォールの製造方法。
【請求項12】
前記カーボンナノウォールは、0.36Pa以上0.67Pa以下の圧力で窒化する請求項9~11の何れか一項に記載の窒素がドープされたカーボンナノウォールの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノウォール及びその製造方法、カーボンナノウォールを利用する酸素還元触媒、酸素還元電極及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギー源として、燃料電池が注目されている。燃料電池にはいくつかの種類があり、その1つである固体高分子形燃料電池では、電極用の触媒として白金を担持したカーボン材料を利用している。例えば、カーボンナノウォールに白金を担持し、これを触媒とすることができる。一方、白金は、希少で高価な物質である。したがって、白金を担持したカーボン材料を触媒として利用する電極は製造コストが高い。そのため、白金の使用は、燃料電池が十分に普及していない一因となっている。
【0003】
白金を担持したカーボン材料に代えて触媒に利用可能な物質として、窒素をドーピングしたカーボン材料が提案されている(例えば、非特許文献1又は2参照)。窒素は手軽に入手可能な物質であるため、仮に、窒素を触媒用材料に使用することで、燃料電池で利用する触媒を安価に生成することができる。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Kuanping Gong 他4名、「Nitrogen-Doped Carbon Nanotube Arrays with High Electrocatalytic Activity for Oxygen Reduction」、Science vol.323、p.760-764、2009年2月
【非特許文献2】Liangti Qu 他3名、「Nitrogen-Doped Graphene as Efficient Metal-Free Electrocatalyst for Oxygen Reduction in Fuel Cells」、ACS Nano.4、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の方法では、触媒に白金を使用することで、電極の製造コストが増加する問題があった。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、安価かつ容易にカーボンナノウォール、酸素還元触媒、酸素還元電極及び燃料電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明によれば、プラズマによる窒素励起を利用する窒化時に600~800℃の間(但し、600℃を除く)で温度制御をして0.98~1.88at%の窒素がドープされたカーボンナノウォールを有する酸素還元触媒を提供しうる。
【0009】
また、本発明によれば、窒素がドープされたカーボンナノウォールの結晶化度が0.5~3.5である酸素還元触媒を提供しうる。
【0010】
また、本発明によれば、ガス拡散層と、当該ガス拡散層上に配置され、上記何れかの発明で提供される酸素還元触媒である触媒層とを有する酸素還元電極を提供しうる。
【0011】
また、本発明によれば、前記ガス拡散層はカーボン基板であって、前記触媒層は、前記カーボン基板から成るガス拡散層上に形成された酸素還元触媒である酸素還元電極を提供しうる。
【0012】
また、本発明によれば、前記触媒層は、1μm以上である酸素還元電極を提供しうる。
【0013】
また、本発明によれば、電解質膜と、当該電解質膜の両側にそれぞれ配置され、上記何れかの発明で提供される酸素還元電極と、当該電極の外側にそれぞれ位置するセパレータとを有する燃料電池を提供しうる。
又、本発明によれば、カーボンナノウォールを用意し、適正量の窒素をドープ可能なように600~800℃の間(但し、600℃を除く)で制御された温度で加熱しながら、プラズマ発生によって窒素分子を励起させて前記カーボンナノウォールを窒化することを有する、窒素がドープされたカーボンナノウォールの製造方法を提供しうる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安価にカーボンナノウォール、酸素還元触媒、酸素還元電極及び燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、第1実施形態に係る酸素還元触媒で利用するカーボンナノウォールを製造する装置の構成を説明する概略図である。
【図2】図2(a)は、シリコン基板上に生成されたカーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、図2(b)は、カーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、図2(c)は、カーボンナノウォール片のXPSスペクトルである。
【図3】図3は、燃料電池を説明する概略図である。
【図4】図4は、実施例1に係るカーボンナノウォールのSEM像である。
【図5】図5(a)は、実施例1に係るカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルであり、図5(b)は、実施例1に係るカーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、図5(c)は、実施例1に係るカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルであり、図5(d)は、実施例1に係るカーボンナノウォール片のXPSスペクトルである。
【図6】図6(a)は、実施例2に係るカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルであり、図6(b)は、実施例2に係るカーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、図6(c)は、実施例2に係るカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルであり、図6(d)は、実施例2に係るカーボンナノウォール片のXPSスペクトルである。
【図7】図7(a)は、実施例3に係るカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルであり、図7(b)は、実施例3に係るカーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、 図7(c)は、実施例3に係るカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルであり、図7(d)は、実施例3に係るカーボンナノウォール片のXPSスペクトルである。
【図8】図8は、実施例1~3に係るカーボンナノウォールの触媒特性を表すグラフである。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、第2実施形態に係る酸素還元触媒で利用するカーボンナノウォールのSEM像である。
【図10】図10は、第2実施形態に係る酸素還元触媒で利用するカーボンナノウォールのXPSスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〈第1実施形態〉
第1実施形態に係る酸素還元触媒は、窒素がドープされたカーボンナノウォール又は窒素がドープされたカーボンナノウォール片である。また、第1実施形態に係る酸素還元電極は、ガス拡散層と、触媒層である酸素還元触媒とを備える。さらに、第1実施形態に係る燃料電池は、電解質膜と、ガス拡散層と、触媒層である酸素還元触媒と、セパレータとを備える。

【0017】
(酸素還元触媒)
第1実施形態に係る酸素還元触媒は、窒素がドープされたカーボンナノウォール又はカーボンナノウォールより微小な1又は複数のナノグラファイトで構成されるカーボンナノウォール片である。このカーボンナノウォール片は、窒素がドープされたカーボンナノウォールを粉砕して得られる。窒素がドープされたカーボンナノウォールは、例えば、シリコン基板等の基板上に生成されて窒素がドーピングされた後に、基板から剥離される。

【0018】
例えば、図1に示す装置1を利用して、基板上に生成されるカーボンナノウォールに窒素をドープさせることができる。図1に示す装置1は、密閉可能な空間である反応室10と、基板2を支持する支持手段11と、プラズマを発生して反応室10に供給するプラズマ発生装置12と、窒素を含むガス(以下、「窒素ガス」とする)を反応室10内に供給するガス供給装置13とを備えている。

【0019】
例えば、反応室10内の支持手段11にカーボンナノウォールが生成されている基板2を配置し、その後、ガス供給装置13によって窒素ガスを反応室10内に供給する。この反応室10は、基板2上のカーボンナノウォールに窒素をドーピングする際には外部から空気等の他のガスが入らないように構成されている。また、支持手段11は、基板2を固定可能であることが好ましい。さらに、ガス供給装置13が供給する窒素ガスは、窒素が含まれるとともにカーボンと化学反応を生じないガスであればよく、例えば、アルゴンと窒素の混合ガスである。

【0020】
次に、プラズマ発生装置12でプラズマを生成するための放電用ガスを用いてプラズマを発生し、発生したプラズマを反応室10に供給する。続いて、反応室10において、プラズマ発生装置12から供給されたプラズマによって、ガス供給装置13から供給された窒素ガスに含まれる窒素を基板2上のカーボンナノウォールにドーピングする。すなわち、プラズマによって窒素ガスの窒素原子が励起、イオン化されてカーボンナノウォールにドーピングされる。したがって、カーボンナノウォールを構成するカーボン構造に窒素を構成する原子を入れ込むことができる。

【0021】
また、カーボンナノウォールが生成されていない基板2を反応室10の支持手段11で支持して装置1を利用して基板2上にカーボンナノウォールを生成した後に、上述したように装置1を利用してカーボンナノウォールに窒素をドーピングさせることもできる。

【0022】
窒素をドープするカーボンナノウォールの基板2からの剥離方法は限定されないが、例えば、スクレーパを利用する方法がある。また、基板2から剥離したカーボンナノウォールの粉砕方法も限定されないが、以下では、メノウ乳鉢を利用して手動で20分間粉砕したカーボンナノウォール片の一例について説明している。

【0023】
例えば、第1実施形態に係る酸素還元触媒である窒素がドープされたカーボンナノウォールは、図2(a)乃至図2(c)に一例を示すようなXPSスペクトルが得られる。図2(a)乃至図2(c)に示す例において、横軸は結合エネルギー[eV]であって、縦軸は強度[arb.units]である。

【0024】
図2(a)は、窒素をドーピングしたカーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、シリコン基板に生成されたカーボンナノウォールをそのまま測定したものである。図2(a)に示すカーボンナノウォールは、装置1を使用して、条件A1でシリコン基板上にカーボンナノウォールを生成した後、条件A2でシリコン基板上のカーボンナノウォールに窒素をドーピングさせたものである。

【0025】
条件A1:圧力0.67Pa、加熱温度700℃、放電電流70A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、メタンの流量10sccm、成長時間360分
条件A2:圧力0.36Pa、加熱温度600℃、放電電流50A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、窒素の流量10sccm、処理時間5分

【0026】
図2(a)のカーボンナノウォールの成分比は、炭素(C1s)が97.08at%であり、窒素(N1s)が2.06at%であり、酸素(O1s)が0.86at%である。なお、図2(a)に示す例において、カーボンナノウォールにドープする窒素の量は2.06at%であるが、酸素還元触媒にドープされる窒素の量は、0.5~20.0at%程度であることが好ましい。

【0027】
また、図2(b)は、図2(a)と同一のカーボンナノウォールの窒素に関するXPSスペクトルである。さらに、図2(c)は、図2(a)のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片の窒素に関するXPSスペクトルである。図2(b)及び図2(c)を比較すると、粉砕により、性質が変化していないことがわかる。なお、酸素還元触媒は、XPSスペクトルにおけるピリジン窒素とsp2窒素との面積比が1:0.4~1:1.5となることが好ましい。また、酸素還元触媒は、ラマン散乱スペクトルにおいて、D-バンドとG-バンドの強度比で求められる結晶化度(ID/IG)が0.5~3.5であることが好ましい。

【0028】
(電極)
図3に示すように、第1実施形態に係る電極35は、触媒層31とガス拡散層32とを備えている。触媒層31は、第1実施形態に係る酸素還元触媒である。また、ガス拡散層32は、触媒層31への空気等のガスを供給するものであって、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスである。電極35では、ガス拡散層32の片面に、酸素還元触媒を付着させて触媒層31が設けられている。ここで、触媒特性を好適にするためには、触媒層31の厚さは、1μm以上であることが好ましい。

【0029】
(燃料電池)
図3に示すように、第1実施形態に係る燃料電池3は、電解質膜30、電解質膜30の両側に位置する触媒層31、触媒層31の外側にそれぞれ位置するガス拡散層32及びガス拡散層32の外側にそれぞれ位置するセパレータ33を備えている。触媒層31は、第1実施形態に係る酸素還元触媒である。

【0030】
上述したように、第1実施形態に係る酸素還元触媒は、窒素がドープされたカーボンナノウォール又はカーボンナノウォール片を利用することで、安価に生成することができる。また、第1実施形態に係る酸素還元触媒を利用することで、電極や燃料電池も安価に生成することが可能となる。

【0031】
〈実施例1〉
図4に、実施例1に係るカーボンナノウォールのSEM像を示している。この窒素がドープされたカーボンナノウォールは、図1を用いて上述した装置1を利用して条件B1でシリコン基板上にカーボンナノウォールを生成した後に、条件B2でシリコン基板上のカーボンナノウォールに窒素をドープしたものである。

【0032】
条件B1:圧力0.67Pa、加熱温度600℃、放電電流50A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、メタンの流量10sccm、成長時間360分
条件B2:圧力0.67Pa、加熱温度700℃、放電電流70A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量0sccm、窒素の流量20sccm、処理時間1分

【0033】
図5(a)に、実施例1の窒素がドープされたカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルを示す。図5(b)に、実施例1のカーボンナノウォールのXPSスペクトルを示す。図5(c)に、実施例1のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルを示す。図5(d)に、実施例1のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のXPSスペクトルを示す。

【0034】
図5(a)及び図5(c)のラマン散乱スペクトルにおいて、横軸はラマンシフト[cm-1]であって、縦軸はラマン散乱強度[arb.units]である。また、このラマン散乱スペクトルでは、具体的には、測定値、ピークフィットによるピーク積算値、D-バンド、G-バンド及びD’-バンドを表している。

【0035】
図5(b)及び図5(d)のXPSスペクトルにおいて、横軸は結合エネルギー[eV]であって、縦軸は強度 [arb.units]である。また、このXPSスペクトルでは、具体的には、測定値、ピークフィットによるピーク積算値、ピリジン窒素、sp2窒素、酸素と結合した窒素(N-O)及びバックグラウンドを表している。

【0036】
図5(a)乃至図5(d)に示す例では、粉砕前のカーボンナノウォールの窒素含有量は2.2at%、ピリジン窒素含有量は0.78at%、sp2窒素含有量は0.62at%、ピリジン窒素‐sp2窒素含有比は1.25、結晶化度(ID/IG)は1.42である。また、粉砕後のカーボンナノウォール片の窒素含有量は1.88at%、ピリジン窒素含有量は0.61at%、sp2窒素含有量は0.66at%、ピリジン窒素‐sp2窒素含有比は0.92、結晶化度(ID/IG)は1.89である。

【0037】
〈実施例2〉
実施例2の窒素がドープされたカーボンナノウォールは、図1を用いて上述した装置1を利用して条件C1でシリコン基板上にカーボンナノウォールを生成した後に、条件C2でシリコン基板上のカーボンナノウォールに窒素をドープしたものである。

【0038】
条件C1:圧力0.67Pa、加熱温度800℃、放電電流50A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量0sccm、メタンの流量20sccm、成長時間360分
条件C2:圧力0.67Pa、加熱温度800℃、放電電流50A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、窒素の流量10sccm、処理時間1分

【0039】
図6(a)に、実施例2の窒素がドープされたカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルを示す。図6(b)に、実施例2のカーボンナノウォールのXPSスペクトルを示す。図6(c)に、実施例2のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルを示す。図6(d)に、実施例2のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のXPSスペクトルを示す。図6(a)及び図6(c)は、図5(a)及び図5(c)と同様に横軸がラマンシフト、縦軸がラマン散乱強度である。図6(b)及び図6(d)は、図5(b)及び図5(d)と同様に横軸が結合エネルギー、縦軸が強度である。

【0040】
図6(a)乃至図6(d)に示す例では、粉砕前のカーボンナノウォールの窒素含有量は2.88at%、ピリジン窒素含有量は0.72at%、sp2窒素含有量は0.87at%、ピリジン窒素‐sp2窒素含有比は0.82、結晶化度(ID/IG)は2.65である。また、粉砕後のカーボンナノウォール片の窒素含有量、ピリジン窒素含有量、sp2窒素含有量及びピリジン窒素‐sp2窒素含有比は確認できなかったが、結晶化度(ID/IG)は3.11である。

【0041】
〈実施例3〉
実施例3の窒素がドープされたカーボンナノウォールは、図1を用いて上述した装置1を利用して条件D1でシリコン基板上にカーボンナノウォールを生成した後に、条件D2でシリコン基板上のカーボンナノウォールに窒素がドープされたものである。

【0042】
条件D1:圧力0.67Pa、加熱温度700℃、放電電流70A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、メタンの流量10sccm、成長時間360分
条件D2:圧力0.36Pa、加熱温度600℃、放電電流50A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、窒素の流量10sccm、処理時間5分

【0043】
図7(a)に、実施例3の窒素がドープされたカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルを示す。図7(b)に、実施例3のカーボンナノウォールのXPSスペクトルを示す。図7(c)に、実施例3のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルを示す。図7(d)に、実施例3のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のXPSスペクトルを示す。図7(a)及び図7(c)は、図5(a)及び図5(c)と同様に横軸がラマンシフト、縦軸がラマン散乱強度である。図7(b)及び図7(d)は、図5(b)及び図5(d)と同様に横軸が結合エネルギー、縦軸が強度である。

【0044】
図7(a)乃至図7(d)に示す例では、粉砕前のカーボンナノウォールの窒素含有量は2.06at%、ピリジン窒素含有量は0.53at%、sp2窒素含有量は0.70at%、ピリジン窒素‐sp2窒素含有比は0.76、結晶化度(ID/IG)は1.49である。また、粉砕後のカーボンナノウォール片の窒素含有量は0.98at%、ピリジン窒素含有量は0.23at%、sp2窒素含有量は0.44at%、ピリジン窒素‐sp2窒素含有比は0.53、結晶化度(ID/IG)は1.43である。

【0045】
図8では、実施例1乃至3の各カーボンナノウォールの触媒特性を示している。図8において、横軸は電位であって、縦軸は電流密度である。この図8に示すグラフでは、曲線の落ち始めが右にあるほどカーボンナノウォールの触媒特性が高い。したがって、ここでは、実施例1のカーボンナノウォールの触媒特性が最も高いことがわかる。

【0046】
〈第2実施形態〉
第2実施形態に係る酸素還元触媒は、カーボンペーパー又はカーボンクロス上に生成された窒素がドープされたカーボンナノウォールである。図9(a)及び図9(b)に、この第2実施形態に係る酸素還元触媒のSEM像の一例を示している。また、第2実施形態に係る酸素還元電極は、ガス拡散層であるカーボンペーパー又はカーボンクロスと、このガス拡散層上に形成される触媒層である酸素還元触媒とを備える。さらに、第2実施形態に係る燃料電池は、電解質層と、ガス拡散層であるカーボンペーパー又はカーボンクロスと、このガス拡散層上に形成される触媒層である酸素還元触媒と、セパレータとを備える。以下の説明において、酸素還元触媒を生成する装置は第1実施形態に置いて図1を用いて上述した装置1と同一であるため、図1を用いて説明する。また、電極及び燃料電池については、図3を用いて説明する。

【0047】
(酸素還元触媒)
第2実施形態に係る酸素還元触媒と第1実施形態に係る酸素還元触媒とを比較すると、第1実施形態に係る酸素還元触媒は、シリコン基板等の基板上にカーボンナノウォールを生成し、このカーボンナノウォールに窒素をドーピングした後に基板から剥離していた。これに対し、第2実施形態に係る酸素還元触媒は、カーボンペーパー又はカーボンクロス等のカーボン基板上に窒素をドープするカーボンナノウォールを生成している点で異なる。なお、カーボン基板上へのカーボンナノウォールの生成及びカーボンナノウォールへの窒素のドーピングには、図1を用いて上述した装置を利用することができる。このとき、カーボン基板上に形成するカーボンナノウォールの高さは、1μm以上であることが好ましい。

【0048】
図9(a)及び図9(b)は、第2実施形態に係る酸素還元触媒の一例のSEM像である。図9(a)と図9(b)の画像は、倍率が異なる。具体的には、カーボンペーパー上に生成される窒素がドープされたカーボンナノウォールのSEM像である。図9(a)及び図9(b)に示す酸素還元触媒は、図1を用いて上述した装置1を利用して条件E1でカーボンペーパー上にカーボンナノウォールを生成した後に、条件E2でカーボンペーパー上のカーボンナノウォールに窒素をドープしたものである。

【0049】
条件E1:圧力0.67Pa、加熱温度700℃、放電電流70A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、メタンの流量10sccm、成長時間360分
条件E2:圧力0.67Pa、加熱温度700℃、放電電流70A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量0sccm、窒素の流量20sccm、処理時間1分

【0050】
図10は、第2実施形態に係る酸素還元触媒のXPSスペクトルである。図10に示す例において、横軸は結合エネルギー [eV]であって、縦軸は強度 [arb.units]である。図10のカーボンナノウォールの成分比は、炭素97.12at%、窒素2.33at%、酸素0.55at%である。

【0051】
なお、第1実施形態に係る酸素還元触媒と同様に、第2実施形態に係る酸素還元触媒でも含有する窒素の量は、0.5~20.0at%程度であることが好ましい。また、酸素還元触媒は、XPSスペクトルにおけるピリジン窒素とsp2窒素との面積比が1:0.4~1:1.5となることが好ましい。さらに、酸素還元触媒は、ラマン散乱スペクトルにおいて、D-バンドとG-バンドの強度比で求められる結晶化度(ID/IG)が0.5~3.5であることが好ましい。

【0052】
(電極)
図3に示すように、第2実施形態に係る電極35は、触媒層31とガス拡散層32とを備えている。触媒層31は、第1実施形態に係る酸素還元触媒である。また、ガス拡散層32は、カーボンナノウォールの生成のカーボン基板に利用したカーボンペーパー又はカーボンクロスである。ここで、触媒層31の厚さは、1μm以上であることが好ましい。

【0053】
(燃料電池)
図3に示すように、第2実施形態に係る燃料電池3は、電解質膜30、電解質膜30の両側に位置する触媒層31、触媒層31の外側にそれぞれ位置するガス拡散層32及びガス拡散層32の外側にそれぞれ位置するセパレータ33を備えている。触媒層31は、第2実施形態に係る酸素還元触媒である。また、ガス拡散層32は、触媒層31である酸素還元触媒の生成の際にカーボン基板として利用したカーボンペーパー又はカーボンクロスである。

【0054】
上述したように、第2実施形態に係る酸素還元触媒は、窒素がドープされたカーボンナノウォールを利用することで、安価に生成することができる。

【0055】
また、第2実施形態に係る電極35は、カーボンナノウォールの生成にカーボン基板として利用したカーボンペーパー又はカーボンクロスをガス拡散層32とし、カーボン基板であるガス拡散層32上に生成される酸素還元触媒を触媒層31とすることができる。したがって、第2実施形態に係る電極35は、基板から酸素還元触媒であるカーボンナノウォールを剥離する作業及びガス拡散層32に酸素還元触媒を付着する作業が不要であり、酸素還元触媒の生成と同時に電極35の生成を実現することができる。すなわち、容易に酸素還元電極である電極35を生成することができる。

【0056】
さらに、酸素還元触媒の生成と同時に電極35の生成が可能となるため、燃料電池3も容易に生成することができる。

【0057】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 装置
10 反応室
11 支持手段
12 プラズマ発生装置
13 ガス供給装置
2 基板
3 燃料電池
30 電解質膜
31 触媒層
32 ガス拡散層
33 セパレータ
35 電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図10】
7
【図4】
8
【図9】
9