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明細書 :ハンドエグゾスケルトン装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 ハンドエグゾスケルトン装置
国際特許分類 B25J  11/00        (2006.01)
A61H   1/02        (2006.01)
FI B25J 11/00 Z
A61H 1/02 K
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 15
出願番号 特願2015-504425 (P2015-504425)
国際出願番号 PCT/JP2014/056032
国際公開番号 WO2014/136958
国際出願日 平成26年3月7日(2014.3.7)
国際公開日 平成26年9月12日(2014.9.12)
優先権出願番号 2013046449
優先日 平成25年3月8日(2013.3.8)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】荒田 純平
【氏名】ガサート ロジェ
出願人 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002000、【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 3C707
4C046
Fターム 3C707AS38
3C707ES10
3C707HS01
3C707HT36
3C707XK06
3C707XK19
4C046AA09
4C046AA35
4C046AA42
4C046BB05
4C046DD06
4C046DD12
4C046DD36
要約 小型、軽量であり、人体の手指部に装着し、日常生活動作を支援することが可能なハンドエグゾスケルトン装置を提供する。
ハンドエグゾスケルトン装置は、三層のスライドばね機構により、ひとつの駆動手段によって動作変換を行うことで、ヒトの手指における中手指節間関節、近位指節間関節、遠位指節間関節について、動力を伝達し、日常生活動作を支援することができる。上記ハンドエグゾスケルトン装置によれば、従来と比較して、小型、軽量に人体の手指の把持動作を支援する装置を実現できる。上記ハンドエグゾスケルトン装置は、ひとつの駆動手段により手指の三関節について屈曲・伸展を駆動できる点と、大きな駆動力を伝達できることに特徴がある。さらに、装置本体に柔軟性を有するため,安全に駆動できる。
特許請求の範囲 【請求項1】
駆動手段によって駆動され手指に装着される三層のスライドばね機構であるハンドエグゾスケルトン装置であって、
前記手指の長手方向に沿って先端より直列に配置された第0外装部と第1外装部と第2外装部と第3外装部とから構成され、
前記第0外装部と前記第1外装部、前記第1外装部と前記第2外装部、前記第2外装部と前記第3外装部は、上下方向に並列に配置され複数組を成す上部ばね及び下部ばねによりそれぞれ連結され、
それぞれの外装部の上部を固定する前記上部ばねは、スライド機構により、ある一定の距離を自在に手指長手方向に対して固定端を移動することができるように、可変長となっており、
それぞれの前記外装部の下部を固定する前記下部ばねは、その両端においてその外装部にそれぞれ固定され、
それぞれの前記外装部内には、手指長手方向についてのみ自在にスライド移動可能な駆動ばねを備え、
前記駆動ばねの先端は前記第0外装部へ固定され、前記駆動ばねの他端は、駆動軸へ固定され、
前記外装部を連結する前記上部ばね及び前記下部ばねと、前記駆動ばねとは、上下方向に三層を構成し、
人体の手指に装着する際には、遠位指節間関節より末端部の部位に前記第0外装部を、前記遠位指節間関節と近位指節間関節と間の部位に前記第1外装部を、前記近位指節間関節と中手指節間関節と間の部位に前記第2外装部を、手掌部に前記第3外装部を、それぞれ固定し、
前記人体に装着した状態で、前記駆動軸を人体手指に対してその人体手指の長手方向に駆動することにより、前記遠位指節間関節と前記近位指節間関節と前記中手指節間関節とに対して回転力を供給し、前記人体の手指についての屈曲伸展動作を支援することを特徴とするハンドエグゾスケルトン装置。
【請求項2】
前記三層のスライドばね機構において、前記第0外装部と前記第1外装部と前記第2外装部と前記第3外装部とをそれぞれ連結する前記上部ばね及び前記下部ばねの長さと、駆動ばねの長さとは、装着者の手指サイズ、各関節を屈曲させるタイミングを変化させる指標となっており、
これらのばね長さを変更することで動作を調整可能となっている請求項1に記載のハンドエグゾスケルトン装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドエグゾスケルトン装置に関する。例えば、人体に装着し、手指動作を支援するための、三層のスライドばね機構による、ハンドエグゾスケルトン装置に関する。また、例えば、三層のスライドばね機構による手指の屈曲伸展運動を支援するハンドエグゾスケルトン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
身体的機能に関する医療リハビリテーションは、病気または外傷によって低下した身体機能の回復のため、病院等で施される。近年、より有効な機能回復手法の提供、機能回復の定量的評価、またはリハビリテーション従事者の負担軽減等を目的として、ロボット技術をリハビリテーションへ応用する試みがなされている。特に、ロボットを装着することにより低下した身体機能を支援し日常生活動作を支援するロボット等の試みは、活発に行われている。
【0003】
従来のハンドエグゾスケルトン装置として、リンク機構を応用したものは、非特許文献1、非特許文献2などが知られている。ワイヤ機構を応用したものとして、非特許文献3、非特許文献4などが知られている。流体駆動を応用したものとして、非特許文献5、非特許文献6などが知られている。また、非特許文献7は、三層の連結スライドばねを用いた機構である。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】B. L. Shields, J. A. Main, S. W. Peterson, A. M. Strauss,“An Anthropomorphic Hand Exoskeleton to Prevent Astronaut Hand Fatigue During Extravehicular Activities,” IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics Part A: Systems and Humans, 27(5) , 1997.
【非特許文献2】S. Ito, H. Kawasaki, Y. Ishigure, M. Natsume, T. Mouri, Y. Nishimoto,“A design of fine motion assist equipment for disabled hand in robotic rehabilitation system,” Journal of the Franklin Institute, 2009.
【非特許文献3】T.T. Worsnopp, M.A. Peshkin, J.E. Colgate, and D.G. Kamper, “An Actuated Finger Exoskeleton for Hand Rehabilitation Following Stroke,”IEEE10th International Conference on Rehabilitation Robotics, pp.896-901, 2007.
【非特許文献4】Y. Hasegawa, Y. Mikami, K. Watanabe, Y. Sankai, “Five-Fingered Assistive Hand with Mechanical Compliance of Human Finger,” 2008 IEEE International Conference on Robotics and Automation, pp.718-724, 2008.
【非特許文献5】L. Connelly, Y. Jia, M. L. Toro, M. E. Stoykov, R. V. Kenyon, D. G. Kamper, “A Pneumatic Glove and Immersive Virtual Reality Environment for Hand Rehabilitative Training After Stroke,” IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering, 18(5), pp.551-559, 2010.
【非特許文献6】只野耕太郎, 赤井正雄, 門田和雄, 川嶋健嗣, “空気圧ゴム人工筋を用いた外骨格型握力増幅グローブの開発,” ロボティクス・メカトロニクス講演会, 1P1-E15, 2009.
【非特許文献7】荒田純平, 大本圭一, Roger Gassert, Olivier Lambercy, 藤本英雄, 和田郁雄,“3層の連結スライドばね機構によるハンドエグゾスケルトン装置プロトタイプの開発,”計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会予稿集, pp.2458-2459, 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人体に装着し、手指の日常生活動作を支援するための装置の要件として、小型、軽量である点、人体に装着可能であり自然な動作が可能である点、動作支援に十分な力を発生可能である点、安全に駆動可能である点、などが挙げられる。
【0006】
このような装置を構成するための駆動手段として、従来では、リンク駆動、ワイヤ駆動、流体駆動、が挙げられる。
【0007】
リンク駆動は、手指の動作を、リンクを介して先端まで伝達し、各手指関節を駆動する機構である。リンク駆動の特色として、比較的大きな出力を得やすい特徴があるが、一方で装置が大型になりやすい。また、リンク駆動部にガタなどが発生しやすい。
【0008】
ワイヤ駆動は、ワイヤを用いて関節部を駆動する機構で、ワイヤにより伝達経路を小型、細径とすることで、機構全体を小型にすることが可能である。一方で、ワイヤは引張力方向のみに動力伝達可能であるため、動力部機構が複雑になりがちである。また、ワイヤの伸び、縮みが生ずる。
【0009】
流体駆動は、機構内部に流体を充填し、その圧力変化により駆動動力を発生させる手法である。身体に装着する装置は小型に実装可能である一方、流体の圧縮等のためのアクチュエータが必要となる。
【0010】
過去に開発された、三層の連結スライドばねを用いた機構は、リンク駆動、ワイヤ駆動、流体駆動と比較して、小型、軽量であるなどの点を有しているが、内部に複数の可動部品を有しているため、構造が複雑である。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、人体の手指動作を支援するための新規の構成から成るハンドエグゾスケルトン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一態様では、駆動手段によって駆動され手指に装着される三層のスライドばね機構であるハンドエグゾスケルトン装置であって、
手指の長手方向に沿って先端より直列に配置された第0外装部と第1外装部と第2外装部と第3外装部とから構成され、
第0外装部と第1外装部、第1外装部と第2外装部、第2外装部と第3外装部は、上下方向に並列に配置され複数組を成す上部ばね及び下部ばねによりそれぞれ連結され、
それぞれの外装部の上部を固定する上部ばねは、一端をスライド機構により、ある一定の距離を自在に手指長手方向に対して固定端を移動することができるように、可変長となっており、
それぞれの外装部の下部を固定する下部ばねは、その両端においてその外装部にそれぞれ固定され、
それぞれの外装部内には、手指長手方向についてのみ自在にスライド移動可能な駆動ばねを備え、
駆動ばねの先端は第0外装部へ固定され、駆動ばねの他端は、駆動軸へ固定され、
外装部を連結する上部ばね及び下部ばねと、駆動ばねとは、上下方向に三層を構成し、
人体の手指に装着する際には、遠位指節間関節より末端部の部位に第0外装部を、遠位指節間関節と近位指節間関節と間の部位に第1外装部を、近位指節間関節と中手指節間関節と間の部位に第2外装部を、手掌部に第3外装部を、それぞれ固定し、
人体に装着した状態で、駆動軸を人体手指に対してその人体手指の長手方向に駆動することにより、遠位指節間関節と近位指節間関節と中手指節間関節とに対して回転力を供給し、人体の手指についての屈曲伸展動作を支援することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様では、三層のスライドばね機構において、第0外装部と第1外装部と第2外装部と第3外装部とをそれぞれ連結する上部ばね及び下部ばねの長さと、駆動ばねの長さとは、装着する人体の大きさ、また各関節を屈曲させるタイミングを変化させる指標となっており、
これらのばね長さを変更することで動作を調整可能となっている。
【0014】
本発明の一態様は、人体に装着され手指動作を支援するためのハンドエグゾスケルトン装置であり、三層のスライドばね機構により、ひとつの駆動手段のみにより、一本の手指動作に対して、遠位指節間関節(DIP関節)、近位指節間関節(PIP関節)、中手指節間関節(MP関節)へ同時に回転力を供給し、装置本体が人体の自然な動作に沿うように動作する。
【0015】
本装置は、人体の手指に沿うように手指の上方である爪側に配置される。よって、装置から手指側を下方、その逆方向を上方とする。
【0016】
本発明の一態様における三層のスライドばね機構は、手指の長手方向に沿って先端より直列に配置された第0外装部と第1外装部と第2外装部と第3外装部とから構成される。
【0017】
第0外装部と第1外装部、第1外装部と第2外装部、第2外装部と第3外装部は、それぞれ上下方向をばね要素により連結される。外装部の下部を固定する下部ばねは、その両端においてそれぞれ外装部に対して固定される。
【0018】
それぞれの外装部上部を固定する上部ばねは、スライダ機構により自在に手指長手方向に対して固定端を移動することができるため,可変長である。
【0019】
それぞれの外装部下部を固定する下部ばねは、それぞれの両端に固定される。
【0020】
それぞれの外装部内には、手指長手方向についてのみ自在にスライド移動可能な駆動ばねをそなえ、駆動ばねの先端は第0外装部へ固定され、駆動ばねの他端は、駆動軸へ固定される。
【0021】
よって、それぞれの外装部を連結する上部のばねと、それぞれの外装部を連結する下部のばねと、駆動ばねは、上下方向に三層を構成する。
【0022】
それぞれの外装部は、装着対象である指の各部位に柔軟なベルトなどを用いて固定される。このとき、DIP関節より末端部の部位に第0外装部を、DIP関節とPIP関節間の部位に第1外装部を、PIP関節とMP関節間の部位に第2外装部を、手掌部に第3外装部を、それぞれ固定する。
【0023】
第0外装部、第1外装部、第2外装部、第3外装部、駆動軸はそれぞれを連結するばねに対して、十分な強度をもつ素材で構成する。
【0024】
本構成により、人体に装着した状態で、駆動軸を人体手指に対して長手方向に駆動することにより、DIP関節と、PIP関節と、MP関節に対して回転力を供給し、手指の自然な把持動作を支援する装置として応用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る三層のスライドばね機構によるハンドエグゾスケルトン装置システムを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る三層のスライドばね機構モデルの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る三層のスライドばね機構モデルの一部透視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る三層のスライドばね機構の構成を示す概念図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る三層のスライドばね機構によるハンドエグゾスケルトン装置のアクチュエータ実装例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態に係るハンドエグゾスケルトン装置は、人体に容易に装着可能であり、ひとつの直動アクチュエータを用いて、遠位指節間関節(DIP関節)と、近位指節間関節(PIP関節)と、中手指節間関節(MP関節)とに対して駆動力を与える動作変換機構である三層のスライドばね機構により、装着した人体の把持動作を支援することができる。

【0027】
以下、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。

【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る三層のスライドばね機構によるハンドエグゾスケルトン装置システムを示している。

【0029】
本発明の一実施形態のハンドエグゾスケルトン装置システムは、三層のスライドばね機構1と、三層のスライドばね機構1の駆動手段2を制御するコントロール部3と、から構成される。このシステムは、人体の手指部に装着され、その手指部の動作を支援するために用いられる。またリハビリテーションでの他動的な繰り返し動作のために用いられる。

【0030】
次に、図2から図4を参照して、三層のスライドばね機構1の構成について詳しく説明する。図2は本実施形態における機構モデルの斜視図、図3は本実施形態の機構モデルの一部である外装部を透視した斜視図、図4は本実施形態の機構構成を示す概念図、である。

【0031】
三層のスライドばね機構1は、第0外装部4と、第1外装部5と、第2外装部6と、第3外装部7と、駆動軸8と、から構成される。それぞれの外装部4~7は、板ばねから成るばね9~15により直列に連結される。

【0032】
第1外装上部ばね9、第2外装上部ばね10、及び第3外装上部ばね11はそれぞれ外装部4~7の上部を連結しており、第1スライダ機構16、第2スライダ機構17、及び第3スライダ機構18のそれぞれにより、スライドばね機構1の長手方向すなわち機構長手方向に自在にスライドする。よって、第1外装上部ばね9、第2外装上部ばね10、及び第3外装上部ばね11は各々、撓むことが可能なばね長さが変化する可変長である。ただし、それぞれのスライダ機構16、17、18内のストッパ19、20、21により、各外装部4~7に対する各ばね9、10、11のスライド距離は制限可能である。

【0033】
第1外装下部ばね12、第2外装下部ばね13、及び第3外装下部ばね14はそれぞれ外装部4~7の下部を連結している。そして、それらの下部ばね12、13、14は、その両端部に連結される外装部4~7にそれぞれに固定されている。

【0034】
駆動ばね15は、それぞれの外装部4~7の内部を手指長手方向にのみ自在にスライド移動可能に挿入され、駆動ばね15の先端は第0外装部4へ固定され、駆動ばねの他端は、駆動軸8へ固定されている。

【0035】
このとき、外装部上部ばね9~11、外装部下部ばね12~14、駆動ばね15は、それぞれ機構上下方向へ三層を構成する。そして、駆動ばね15は、機構上下方向において外装部上部ばね9~11と外装部下部ばね12~14との間に設けられている。

【0036】
スライドばね機構1である本装置を人体の手指部に固定する場合、その手指部の爪側すなわち手の甲側に本装置を装着する。そして、DIP関節より末端部の部位について第0外装部4を、DIP関節とPIP関節間の部位に第1外装部5を、PIP関節とMP関節間の部位に第2外装部6を、手掌部に第3外装部7を、それぞれ固定する。

【0037】
それぞれの外装部は、装着対象である指の各部位に柔軟なベルトなどを用いて固定可能である。

【0038】
駆動軸8を機構長手方向へ駆動することにより、DIP関節と、PIP関節と、MP関節に対して回転力を供給し、手指の自然な把持動作を支援する装置として応用することが可能となる。

【0039】
図5は、直動アクチュエータ(駆動手段2の一例)を装着したときの三層の連結ばねスライド機構1の実装形態の一例である。

【0040】
より具体的には、駆動軸8を機構本体へ近づける方向(図5における左方向)へ駆動した場合、駆動ばね15は、同方向へ機構内部をスライド移動する。

【0041】
この駆動ばね15のスライド移動は、外装下部ばね12~14が固定長であり且つ外装下部ばね12~14と駆動ばね15とがばね並び方向(上下方向)に離間しているため、駆動ばね15の曲げ方向動作を生じさせる。

【0042】
その結果として、外装上部ばね9~11におけるばね長さがスライダ機構16~18により伸展することに伴い、本装置は屈曲運動を行う。

【0043】
このとき、外装上部ばね9~11は、駆動ばね15の過度の変形と、座屈を防止する働きをなす。

【0044】
このように、駆動ばね15の機構長手方向への動作は、各関節部のばねにより、回転方向への動作変換を行う。すなわち、その駆動ばね15の機構長手方向への動作は、各関節部における曲げ方向の動作を伴う。

【0045】
各関節における屈曲運動の回転動作中心は、上下に三層をなす外装上部ばね9~11、駆動ばね15、外装下部ばね12~14、が屈曲に伴うそれぞれのばね長の変化により、扇形をなして屈曲することから、機構1が装着されるおおよその人体手指関節の動作中心22~24に、外装部4~7、ばね9~15の寸法を適切に設定することで、一致させることができる。なお、上記おおよその人体手指関節の動作中心22~24は、図5に示すように三層のスライドばね機構1の外部に存在する。

【0046】
スライダ機構16~18は、ばねの一部を自由端とし、外装部内の溝を自由にスライドしてばね長を可変とすることが簡便に実現できる。また、ばねの一端をT字型に構成し、外装部へ切り欠きを設けることで、ストッパが構成される。

【0047】
スライダ機構16~18内のストッパは、一定以上のスライド運動は抑制され、よって回転運動は抑制される。このとき、駆動力はより末端側の関節へ伝達するため、結果として末端側のDIP関節、PIP関節の駆動が促進される。

【0048】
第1外装下部ばね12と、第2外装下部ばね13と,第3外装下部ばね14と,は一本の連続したばねで構成し、それぞれの外装部4~7と接着されてスライドばね機構1を構成可能である。

【0049】
本装置は、人体手指の屈曲進展を行うため、各関節の上部に配置される三層のばねの装置長手方向(機構長手方向)についての長さは、人体の手指関節中心に合わせて配置されるように決定する。

【0050】
本装置では、それぞれのばね9~15と外装部4~7とのそれぞれの寸法と、それぞれのばね9~15のかたさは、装着者の手指サイズ、各関節を屈曲させるタイミングを変化させる指標であり、これらを変更することで動作を調整可能である。

【0051】
例えば、各ばねの幅と厚みは、ばねを構成する材質を鑑み、それぞれの関節間でのバランスを考慮して決定する。ある関節のばねの幅と、厚みと、を小さくした場合は、関節が柔らかくなり、最初に屈曲しやすくなる。なお、各関節のばねの幅と、厚みと、を全体として大きく設定した場合には、装置全体の剛性が高くなり、関節部により高いトルクを発生することが可能となる。しかしながら、この場合は駆動に必要な力が増加する。よって、各ばねのかたさは、装着する人体手指の寸法、関節の硬さ,支援動作などを鑑みて設計する必要がある。

【0052】
最大に屈曲した場合において、ばね材質の降伏応力に満たない範囲で使用することがばねの破断を回避する点から好ましい。

【0053】
本発明の一実施形態の駆動手段には、駆動軸8に接続され直線運動を出力する出力軸を具備する駆動装置、例えばモータとボールネジを組み合わせたアクチュエータを用いることができる。

【0054】
なお、本構成においては、外装上部ばね9~11と、駆動ばね15の機構上下方向についての距離を短く設定可能である。よって、駆動ばね15と外装下部ばね12~14間の距離を長く設定し、前記各関節での回転運動(曲げ運動)への動作変換において、効率的に回転トルクを生じることができる。

【0055】
以上に述べた構成によれば、図1で述べた同様の構成により、三層のスライドばね機構1を人体の手指へ装着することにより、手指の把持動作を支援するための動力伝達が可能である。

【0056】
また、本構成によれば、駆動ばねが外装部4~7内を自在に長手方向へスライドする構成を有しているため、例えば、非特許文献7の機構と比較して、機構部品点数を減らすことができるため、小型、軽量化、また、簡素化が可能である。

【0057】
本装置は人体の拇指を除く手指へ装着可能であるが、実装を簡易的に2関節として構成することで、拇指の屈曲伸展運動への適用も可能である。

【0058】
なお、本装置装着者の人体へ筋電センサを別途装着し、コントロール部3へ入力することで、筋電計信号に応じて支援動作を行うことが可能である。

【0059】
また、上述したように本実施形態では、小型で持ち運びが容易であり且つ指の屈曲伸展運動を支援するハンドエグゾスケルトン装置を、三層のスライドばね機構により構成する。本装置によって、まず他動的に動作を繰り返し行う手指のCPM (Continuous Passive Motion)訓練への応用が期待される。さらに、本装置は小型、軽量であることから、人体の手指に装着可能な装置構成とし、例えば末梢神経障害患者の上述した筋電計信号を用いてロボット(本装置)を動作させることで、日常生活動作を支援することが可能である。

【0060】
そして、本実施形態によれば、小型、軽量に人体の手指の把持動作を支援する装置を実現できる。また、本装置はひとつの駆動手段により手指の三関節について屈曲、伸展を駆動できる点と、大きな駆動力を伝達できることとに特徴がある。さらに、装置本体に柔軟性を有するため、安全に駆動できる。

【0061】
以上において、本発明を実施形態に則して説明したが、本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。

【0062】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2013年3月8日出願の日本特許出願No.2013-046449に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の三層のスライドばね機構によるハンドエグゾスケルトン装置は、日常生活動作支援用の装置として、リハビリテーションにおける他動的の繰り返し動作装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 三層のスライドばね機構
2 駆動手段
3 コントロール部
4 第0外装部
5 第1外装部
6 第2外装部
7 第3外装部
8 駆動軸
9 第1外装上部ばね
10 第2外装上部ばね
11 第3外装上部ばね
12 第1外装下部ばね
13 第2外装下部ばね
14 第3外装下部ばね
15 駆動ばね
16 第1スライダ機構
17 第2スライダ機構
18 第3スライダ機構
19 第1スライダ機構内のストッパ
20 第2スライダ機構内のストッパ
21 第3スライダ機構内のストッパ
22 人体手指のおおよその遠位指節間関節の動作中心
23 人体手指のおおよその近位指節間関節の動作中心
24 人体手指のおおよその中手指節間関節の動作中心
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4