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明細書 :迅速アレルギー検査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6108570号 (P6108570)
登録日 平成29年3月17日(2017.3.17)
発行日 平成29年4月5日(2017.4.5)
発明の名称または考案の名称 迅速アレルギー検査方法
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/567       (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
FI G01N 33/53 Q
G01N 33/567
C12Q 1/02
請求項の数または発明の数 11
全頁数 29
出願番号 特願2015-500271 (P2015-500271)
出願日 平成26年2月13日(2014.2.13)
国際出願番号 PCT/JP2014/053259
国際公開番号 WO2014/126125
国際公開日 平成26年8月21日(2014.8.21)
優先権出願番号 2013025991
優先日 平成25年2月13日(2013.2.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年9月16日(2015.9.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
発明者または考案者 【氏名】芝口 浩智
【氏名】安高 勇気
【氏名】二神 幸次郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100062144、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 葆
【識別番号】100106518、【弁理士】、【氏名又は名称】松谷 道子
審査官 【審査官】赤坂 祐樹
参考文献・文献 国際公開第2005/023771(WO,A1)
国際公開第2007/066684(WO,A1)
国際公開第2012/074106(WO,A1)
特表2008-510765(JP,A)
高田正典 ほか,金属アレルギーの診断に対する白血球遊走阻止試験(LMIT) の臨床応用,歯学,2000年,88(1),9-19
山内明 ほか,細胞走化性測定装置—免疫疾患に対する薬剤開発への可能性—,アレルギーの臨床,2008年 7月,28(8),89-94
阿部学 ほか,白血球遊走試験による薬疹の検討,アレルギー,1998年12月30日,47(12),1264-1272
K Herbrig et al.,Endothelial dysfunction in patients with rheumatoid arthritis is associated with a reduced number and impaired function of endothelial progenitor cells,Ann Rheum Dis,2006年 2月,65(2),157-163
M. Picardo et al.,Migration stimulating activity in serum of breast cancer patients,The Lancet,1991年 1月19日,Volume 337, Issue 8734,130-133
調査した分野 G01N 33/48-33/98
C12Q 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
(i)被験者由来の血清により惹起された細胞遊走の移動距離が、健常人由来の血清により惹起された細胞遊走の移動距離に比較し長いとき、被験者がアレルギー疾患を罹患している、またはアレルギーを発症しているとし;または
(ii)被験者由来の血清により惹起された細胞遊走の移動距離が、健常人由来の血清により惹起された細胞遊走の移動距離と同じとき、被験者がアレルギー疾患を罹患していない、またはアレルギーを発症していないとする基準にしたがい、アレルギー疾患の診断、またはアレルギー疾患の発症の判定をすための方法であって、
(1)被験者由来の血清の濃度勾配を作成し、該血清の濃度勾配の存在下で走化性細胞の遊走を惹起する工程;および
(2)遊走した細胞の移動距離を測定する工程
を含む、in vitroで実施され、走化性細胞が健常人由来の白血球細胞または樹立細胞株である、方法であり、
さらに、陰性対照として、被検者由来の血清の代わりに健常人由来の血清を用いて前記工程(1)および(2)を行、方法。
【請求項2】
(i)被験者由来の血清により惹起された細胞遊走の移動速度が、健常人由来の血清により惹起された細胞遊走の移動速度に比較し速いとき、被験者がアレルギー疾患を罹患している、またはアレルギーを発症しているとし;または
(ii)被験者由来の血清により惹起された細胞遊走の移動速度が、健常人由来の血清により惹起された細胞遊走の移動速度と同じとき、被験者がアレルギー疾患を罹患していない、またはアレルギーを発症していないとする基準にしたがい、アレルギー疾患の診断、またはアレルギー疾患の発症の判定をすための方法であって、
(1)被験者由来の血清の濃度勾配を作成し、該血清の濃度勾配の存在下で走化性細胞の遊走を惹起する工程;および
(2)遊走した細胞の移動速度を測定する工程
を含む、in vitroで実施され、走化性細胞が健常人由来の白血球細胞または樹立細胞株である、方法であり、
さらに、陰性対照として、被検者由来の血清の代わりに健常人由来の血清を用いて前記工程(1)および(2)を行、方法。
【請求項3】
(i)被験者由来の血清により惹起された細胞遊走の移動距離が、phytohemagglutininで刺激した白血球細胞の培養上清により惹起された細胞遊走の移動距離に比較し同じまたは長いとき、被験者がアレルギー疾患を罹患している、またはアレルギーを発症しているとし;および/または
(ii)被験者由来の血清により惹起された細胞遊走の移動速度が、phytohemagglutininで刺激した白血球細胞の培養上清により惹起された細胞遊走の移動速度に比較し同じまたは速いとき、被験者がアレルギー疾患を罹患している、またはアレルギーを発症しているとする基準にしたがい、アレルギー疾患の診断、またはアレルギー疾患の発症の判定をすための方法であって、
(1)被験者由来の血清の濃度勾配を作成し、該血清の濃度勾配の存在下で走化性細胞の遊走を惹起する工程;および
(2)遊走した細胞の移動距離および/または移動速度を測定する工程
を含む、in vitroで実施され、走化性細胞が健常人由来の白血球細胞または樹立細胞株である、方法であり、
さらに、陽性対照として、被験者由来の血清の代わりにphytohemagglutininで刺激した白血球細胞の培養上清を用いて前記工程(1)および(2)を行、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
検体において、被験者のアレルギー誘発性物質を同定または検出する方法であって、
(1)被験者由来の白血球細胞を、検体を添加した培地で培養する工程;
(2)培養上清を回収する工程;
(3)培養上清の濃度勾配を作成し、培養上清の濃度勾配の存在下で走化性細胞の遊走を惹起する工程;および
(4)遊走した細胞の移動距離および/または移動速度を測定する工程
を含み、走化性細胞が健常人由来の白血球細胞または白血球系細胞株である、方法であり、
さらに、陽性対照として検体の代わりにphytohemagglutininを用いて前記工程(1)-(4)を行い、
(i)検体を試験したときの細胞遊走の移動距離が、phytohemagglutininを試験したときの細胞遊走の移動距離に比較し同じまたは長いとき、検体がアレルギー誘発性物質である、または検体にアレルギー誘発性物質が検出されると判定し;および/または
(ii)検体を試験したときの細胞遊走の移動速度が、phytohemagglutininを試験したときの細胞遊走の移動速度に比較し同じまたは速いとき、検体がアレルギー誘発性物質である、または検体にアレルギー誘発性物質が検出されると判定する、方法。
【請求項5】
アレルギー発症前に検体が被験者に対しアレルギー誘発性物質であるか否かを事前に検査する方法であって、
(1)被験者由来の白血球細胞を、検体を添加した培地で培養する工程;
(2)培養上清を回収する工程;
(3)培養上清の濃度勾配を作成し、培養上清の濃度勾配の存在下で走化性細胞の遊走を惹起する工程;および
(4)遊走した細胞の移動距離および/または移動速度を測定する工程
を含み、走化性細胞が健常人由来の白血球細胞または白血球系細胞株である、方法であり、
さらに、陰性対照として被験者由来の白血球細胞の代わりに健常人由来の白血球細胞を用いて前記工程(1)-(4)を行い、
(i)被験者由来の白血球細胞を用いたときの方が、健常人由来の白血球細胞を用いたときに比較し、細胞遊走の移動距離が長いとき、検体がアレルギー誘発性物質であると判定し;および/または
(ii)被験者由来の白血球細胞を用いたときの方が、健常人由来の白血球細胞を用いたときに比較し、細胞遊走の移動速度が速いとき、検体がアレルギー誘発性物質であると判定する、方法。
【請求項6】
走化性細胞がヒトT細胞系細胞株である、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
走化性細胞がヒト前骨髄性細胞株である、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
走化性細胞がJurkat細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
走化性細胞がHL-60細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
細胞の移動を経時的に記録し、その記録に基づいて細胞の移動距離および移動速度を決定する、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
アレルギーが、花粉、化学物質、薬剤または食物アレルギーである、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年2月13日に出願された日本出願(出願番号:特願2013-025991)に基づく優先権を主張し、引用によりその全ての記載内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、アレルギー疾患の診断方法、アレルギー誘発性物質または抑制性物質の検出方法、それら方法を利用したアレルギー疾患の処置または予防方法、それら方法に使用するキット等に関する。
【背景技術】
【0003】
アレルギーとは、特定のアレルギー誘発性物質、つまりアレルゲンと呼ばれる抗原に対して、生体が免疫反応を過剰に発現することをいう。生活環境において曝露される多種多様な環境由来の外来物質がアレルギーを引き起こすアレルゲン(アレルギー誘発性物質)となりえる。花粉、食物、動物の体成分・排泄物、カビ、化学物質、薬剤などの様々な外来物質により誘発される代表的なアレルギー性疾患としては、例えば、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、薬剤アレルギーなどが挙げられる。
【0004】
これらのアレルギー性疾患は、上記のようなアレルギー誘発性物質が、それ自体がアレルゲンとして、あるいはそれ自体は抗原とはならないが、生体内のタンパク質などの高分子と結合してアレルゲンとなり、過剰な免疫反応を惹起しアレルギーを起こすことによって発症する。
【0005】
これらのアレルギー性疾患のうち、特に薬剤アレルギーには、比較的軽度な薬疹や血液障害をはじめ、Stevens-Johnson症候群(SJS)や中毒性皮膚壊死融解症(TEN)、薬剤過敏性症候群(DIHS)として知られる重症薬疹、あるいは肝臓や肺、消化管などの臓器障害やアナフィラキシーショックのように後遺症が問題となるものや場合によっては死に至るような重篤なものまである。
【0006】
薬剤アレルギー発現による投薬の中止は、原疾患の治療の中断となるため、予防的措置により回避することが望ましい。
【0007】
しかしながら、薬剤に対する反応性は個人差が大きいうえに併用薬による影響など複合的な要因があり、また、現在行われているアレルギー検査のうち、事前に行う皮内テストやパッチテストなどでは、薬剤アレルギーの発現予測は必ずしも正確でなく、さらに、薬剤の負荷試験ではアレルギー誘発時に患者への負担が大きく、ショックなどの危険性も増すため望ましくないなど、予防的措置には限界がある。
【0008】
したがって、薬剤アレルギー発現時には、慎重かつ迅速な起因薬剤の検出/同定が求められる。
【0009】
薬剤アレルギー起因薬の検出法としては、drug-induced lymphocyte stimulation test(DLST)、leukocyte migration test(LMT)などのほか、疑わしい薬剤の投薬中止といった時間のかかる消去法によって検出/同定を行っているのが現状である。
【0010】
このうち、DLSTやLMTは患者から採血をして行う検査であり、血液採取後は患者自身(の反応)を必要としないため安全性という面からも有用な手段であるが、検査に被検薬当たり約10ml程度の患者血液を必要とする点や検査結果の判明までに一週間程度の時間を要することが、偽陽性の問題とともに欠点として挙げられる。
【0011】
薬剤アレルギーは、I~IVすべての型の発現機序で起こりうるが、患者に発現した症状が免疫反応を介した薬剤アレルギーなのか、免疫反応を介さない(アレルギーとはいえない)副作用(擬似反応)なのか、という確定診断は治療や症状の緩和を考える上で重要である。
【0012】
一般に、アレルギー診断の血液検査では、好酸球やIgEなどが測定されるが、これらの多くはI型アレルギーなどでアレルギー状態の把握や参考指標にはなるものの普遍的な指標ではなく、まして確定診断に用いるものではない。
【0013】
さらに、DLSTなどでの陽性率は決して高くなく(非特許文献1、2)、これは薬剤アレルギーではない擬似反応を排除できていないことも原因の一つと考えられる。
【0014】
一方、通風治療薬のアロプリノールや抗てんかん薬のカルバマゼピンの服用時に、特に漢民族をはじめとする南アジア人において、しばしば見られる重篤なSJSやTENの発症に、特定のヒト組織適合性抗原(HLA)遺伝子型の危険因子として関与することが最近明らかになった(非特許文献3、4)。このことから、HLA遺伝子解析を上記薬剤服用前の危険性予測の参考にする方法が開発された(非特許文献5)が、あくまで危険性の回避にとどまり、未だ十分な検査方法とは言い難い。
【0015】
したがって、薬剤アレルギーを精度良く検査すること、また、原疾患を治療するための代替薬選択を目的に薬剤アレルギーを誘発する薬剤を効率的かつ高感度に検査/同定することを可能とする方法が望まれている。
【先行技術文献】
【0016】

【非特許文献1】武藤 美香ほか、日本皮膚科学会雑誌 2000; 110(10): 1543-1548.
【非特許文献2】Suzuki Y, et al., CHEST 2008; 134(5): 1027-1032.
【非特許文献3】Somkrua R, et al., BMC Med Genet, 2011; 12: 118.
【非特許文献4】Yip VL, et al., Clin Pharmacol Ther. 2012; 92(6): 757-65.
【非特許文献5】(株)メディビック、2012 年8 月27日、プレスリリース。
【発明の概要】
【0017】
本発明者は、鋭意研究した結果、アレルギー様症状を発現した被験者の血清と健常ボランティアの白血球などを用いることによって、アレルギーの有無を迅速に、精度良くかつ効率的に検査できることを見いだした。また、本発明者は、被験者のリンパ球をアレルギー誘発性物質などで刺激した反応液や培養上清と健常ボランティアの白血球などを用いることで、アレルギー誘発性物質のアレルギー誘発性を検査できることも見いだした。これら知見に基づき、簡便なアレルギー誘発性物質の同定方法ならびにアレルギー発症の危険性を予測する方法としても応用できる極めて有用なアレルギー検査方法等を完成させた。
【0018】
一つの側面において、本発明は、アレルギー疾患を診断する、またはアレルギーを発症する危険性を判断する方法であって、
(1)被験動物由来の検体により走化性細胞の遊走を惹起する工程;および
(2)遊走した細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)を測定する工程
を含む方法を提供する。
【0019】
一つの側面において、本発明は、被験動物のアレルギー誘発性物質または抑制性物質を同定、検出または定量する方法であって、検体が被験動物のアレルギー誘発性物質または抑制性物質であることを同定するための、検体中に被験動物のアレルギー誘発性物質または抑制性物質を検出するための、または検体中の被験動物のアレルギー誘発性物質または抑制性物質を定量するための方法であり、
(1)被験動物由来の白血球細胞を、検体を添加した培地で培養する工程;
(2)培養上清を回収する工程;
(3)培養上清により走化性細胞の遊走を惹起する工程;および
(4)遊走した細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)を測定する工程
を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】被験者(健常あるいは軽度の皮膚掻痒症のボランティアと薬剤アレルギーが疑われる患者)の血清を上部ウェルに添加後の走化性細胞(白血球)の細胞動態を顕微鏡下で2分毎20分間記録した観測開始時および観測終了時の画像を示す図である。
【図2A】観察時の空間座標を原点とした場合の個々の細胞の動きを示す図である。
【図2B】移動速度の解析結果を示す図である。
【図2C】移動距離の解析結果を示す図である。
【図3A】対照群(健常ボランティア血清の場合:図1a)を基準としたときの移動速度の百分率を示す図である。
【図3B】対照群(健常ボランティア血清の場合:図1a)を基準としたときの移動距離の百分率を示す図である。
【図4A】被験者(患者#3)の血清を上部ウェルに添加後のJurkat細胞の細胞動態(移動速度)を顕微鏡下で2分毎50分間記録した観測開始時および観測終了時の画像をそれぞれ示す図である。
【図4B】被験者(健常ボランティア)の血清を上部ウェルに添加後のJurkat細胞の細胞動態(移動速度)を顕微鏡下で2分毎50分間記録した観測開始時および観測終了時の画像をそれぞれ示す図である。
【図4C】被験者(患者#3)における移動距離を解析した結果を示す図である。
【図4D】被験者(健常ボランティア)における移動距離を解析した結果を示す図である。
【図4E】移動速度の解析結果を示す図である。
【図5A】対照群のPHA(a)、gasmotin(b)ならびにその他の被疑薬剤(cとd)および溶媒(DMSO,e)に対する走化性/遊走能の解析結果を示す図である。
【図5B】移動速度の解析結果を示す図である。
【図5C】移動距離の解析結果を示す図である。
【図6A】対照群(PHA 刺激反応液:a)を基準としたときの移動速度の百分率を計算した結果を示す図である。
【図6B】対照群(PHA 刺激反応液:a)を基準としたときの移動距離の百分率を計算した結果を示す図である。
【図7A】スギ花粉抗原SBPに対する走化性/遊走能の解析結果を示す図である。
【図7B】移動速度の解析結果を示す図である。
【図7C】移動距離の解析結果を示す図である。
【図8A】対照(スギ花粉抗原SBP:0μg/ml)を基準としたときの移動速度の百分率を計算した結果を示す図である。
【図8B】対照(スギ花粉抗原SBP:0μg/ml)を基準としたときの移動距離の百分率を計算した結果を示す図である。
【図9】花粉症による細胞動態の容量依存的な増加を示す図である。
【図10A】泌尿煎の細胞動態に対する影響を示す図である。
【図10B】漢方成分毎の細胞動態に対する影響を示す図である。
【図11】本発明が提供する方法による非典型例(重篤かつ典型的なアレルギー様皮膚症状を示さない患者)で陰性の試験結果を示す図である。
【図12】本発明が提供する方法による典型例(重篤かつ典型的なアレルギー様皮膚症状を示す患者)で陽性の試験結果を示す図である。
【図13】花粉エキスを暴露したスギ花粉症患者単核球の培養上清が、HL-60細胞の遊走距離を増加させることを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0021】
本明細書において、アレルギー疾患またはアレルギーは、I型、II型、III型またはIV型アレルギーであり得、たとえば、蕁麻疹、食物アレルギー、花粉症、アトピー性皮膚炎、化学物質によって惹起されるアレルギー、薬剤によって惹起されるアレルギーであり得る。薬物によって惹起されるアレルギーの例としては、薬疹が挙げられ、例えば、Stevens-Johnson症候群(SJS)や中毒性皮膚壊死融解症(TEN)、薬剤過敏性症候群(DIHS)が挙げられる。薬物によって惹起されるアレルギーの原因となる薬剤の例としては、抗生物質(ペニシリン系、セフェム系、アミノグリコシド系、マクロライド系、キノロン系など)、非ステロイド性抗炎症薬、ピリン系薬剤(解熱鎮痛薬)、局所麻酔薬、ヨウ素系薬剤、中枢神経作用薬(例えば、カルバマゼピン)、痛風治療薬(例えば、アロプリノール)が挙げられる。
【0022】
本発明で使用される検体は、被験動物由来の生体成分、例えば、体液、血液、より具体的にはその成分であるリンパ液、血清、血漿などであり得る。また、本発明で使用される検体は、被験動物の白血球とアレルギー誘発性物質または抑制性物質の反応液ないし培養上清、またはアレルギー誘発性物質または抑制性物質であってもよい。本発明に使用される検体の量は当業者により適宜設定され得るが、一つの実施態様において、本発明で使用される検体は、微量の血清(例えば1-10μl)、微量のアレルギー誘発性または抑制性物質(例えば、1ng-1μg)であり得る。
本明細書において、被験動物は、哺乳類動物であり、好ましくはヒトである。
【0023】
例えば、本発明が提供するアレルギーの診断方法またはアレルギーを発症する危険性を判断する方法には、体液や血液などの被験者の生体成分、より具体的にはその成分であるリンパ液や血清を検体として使用してもよい。また、例えば、本発明が提供するアレルギー誘発性または抑制性物質を同定、検出、または定量する方法には、被験対象のアレルギー誘発性または抑制性物質を被験者の白血球を含む培養液に添加して刺激した反応液/培養上清を検体として使用してもよい。
【0024】
アレルギー誘発性物質とは、それ自体がアレルゲンとして、あるいはそれ自体は抗原とはならないが、生体内のタンパク質などの高分子と結合することなどによってアレルゲンとなり、過剰な免疫反応を誘発してアレルギーを発現する可能性を有する物質であり得る。花粉、化学物質、薬剤、食物などが代表的なアレルギー誘発性物質として例示される。
アレルギー抑制性物質とは、アレルギーの発現を抑制する物質である。
【0025】
本明細書において、用語「走化性」(または「遊走能」ないし「化学走性」ともいう)は、細胞を含む生物体が特定の化学物質の濃度勾配に基づいて方向性を持った運動をするという性質を意味している。
【0026】
また、本明細書において、用語「走化性因子」(または「遊走因子」ともいう)とは、上記走化性を惹起する化学物質であって、例えば、インターロイキン、サイトカイン、ケモカインなどが代表的な走化性因子として例示される。
【0027】
本明細書において、走化性細胞は、走化性(または遊走能)を有する細胞であり得、例えば、白血球、樹立細胞株などが挙げられる。白血球は、顆粒球(例えば、好中球、好酸球、好塩基球)、単核球(単球、リンパ球)またはそれらの混合物であり得る。
【0028】
本発明においてアレルギー発現の有無や誘発性の判定に用いる走化性細胞としては、分離操作が簡便で、かつ、あらゆる液性因子(走化性因子)に対応できることから、例えば、健常ボランティアの白血球、特に顆粒球を含む白血球を用いるのが望ましいが、目的によっては精製分離した好中球や好酸球、あるいは特定の受容体を発現する樹立細胞株などを用いることも可能である。樹立細胞株を用いれば、分離精製などの処理をして被験者の細胞を調製する必要がないことから、検査を簡便に行える。樹立細胞株には、ヒト白血球系細胞株、例えば、ヒトT細胞系細胞株(例えば、Jurkat細胞)やヒト前骨髄性細胞株(例えば、HL-60細胞)等の樹立細胞株が挙げられる。ヒト白血球系細胞株のその他の例としては、HL60RG、K562、MOLT-4F、IM-9、CCRF-HSB2、CCRF-SB、CCRF-CEM、RPMI 8226、RPMI 1788、HLCL-1、HEL、KG-1、BALL-1、TALL-1、P31/FUJ、P30/OHK、P32/ISH、A4/Fuk、A3/KAW、KU812、KU812E、KU812F、KY821、KY821A3、THP-1、LC4-1、SCC-3、KMS-12-BM、KMS-12-PE、PEER、RAJI、U937、CCRF-CEM、MOLT-4、MOLT-3、KG-1、HS-Sultan、WIL2-NS、Daudi、Ramos(RA1)、U937 cl1-14、U937 cl1-22、KO52、KHM-1B、SKM-1、MLMA、JKT-beta-del、KHYG-1、TK、MY-M12、MY-M13、SLVL、MY、RPMI 8226、RPMI 1788、NC-37、Namalwa、Raji、MEG-01、MEG-01SSF、MOLT-4、KU812、CCRF-CEM、CMK-86、CMK-11-5、MEG-01s、NOMO-1、NOMO-1s、NKM-1、MEG-A2、NAGL-1、MTA、TMD5、KAI3、Kasumi-4、HL60(S)、KHM-10B、K562/ADM、Kasumi-1、Kasumi-3、Kasumi-6、Ki-JK、CPT-K5、NOMO-1/ADM、NCO2、SKNO-1、KMS-11、KMM-1、KMS-21BM、KMS-26、KMS-27、KMS-28PE、KMS-28BM、KMS-34、KMS-20、TK、KCL-22、PL-21、MKPL-1、NALL-1、RC-K8、HD-70、DL-40、delta-47、PALL-2、FLAM-76、B104、KML-1、STR-428、KMS-33、KHM-2B、Kasumi-2、Kasumi-5、Kasumi-7、Kasumi-8、Kasumi-9、Kasumi-10、Minami-1、Minami-2、KasumiA-541、KasumiA-568、KasumiA-554等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
細胞培養は当業者が適宜実施することができる。例えば、Jurkat細胞であれば、10%FBSを添加したDMEMを、白血球や単核球であれば、10%FBSを添加したRPMI1640を培養用培地として用いることができる。
【0030】
走化性細胞の遊走は、走化因子の濃度勾配を作成し、その環境下に細胞を配置することにより惹起することができる。走化因子の濃度勾配は、当業者が適宜作成することができる。例えば、Dunn chamberやμ-Slideなどの、いわゆるchemotaxis chamberを用いて作成することができる。また、走化性因子の濃度勾配は、それを含む検体または培養上清の濃度勾配を作成することにより作成してもよい。一つの実施態様において、検体に含まれる走化性因子の濃度勾配の存在下での、走化性細胞の細胞動態(例えば移動距離、移動時間および/または方向性)に基づいて、アレルギーを診断し、アレルギーを発症する危険性を判断し、アレルギー誘発性または抑制性物質を同定、検出、または定量する。
【0031】
本明細書において、細胞動態は、例えば、細胞の走化性または遊走能などの運動性を意味しており、具体的には、細胞の移動距離、移動時間、移動方向などを意味している。細胞動態は、顕微鏡視野内の座標空間における個々の細胞を経時的に観察し、移動の軌跡を記録することにより測定することができる。
【0032】
一つの実施態様として、本発明が提供するアレルギーの診断方法、アレルギーを発症する危険性を判断する方法、またはアレルギー誘発性または抑制性物質を同定、検出、または定量する方法は、微量な検体を用いて実施することができ、迅速、高感度および/または特異的である。一つの実施態様として、本発明が提供するアレルギーの診断方法、アレルギーを発症する危険性を判断する方法、またはアレルギー誘発性または抑制性物質を同定、検出、または定量する方法に必要な被験者の血液量は、被検薬当たり約10ml程度必要なDLSTやLMTに比較し少量でよく、例えば、被験者の血液(細胞)は、被検薬当たり100μl以下でよい。また、一つの実施態様として、本発明が提供するアレルギーの診断方法、アレルギーを発症する危険性を判断する方法、またはアレルギー誘発性または抑制性物質を同定、検出、または定量する方法は、通常約80時間かかるDLSTやLMTに比較し早く結果をえることができ、例えば、血清または血漿を用いる診断方法では約2時間で、その他の方法は約30時間で全工程を完了することができる。また、一つの実施態様として、本発明が提供するアレルギーの診断方法は、アレルギー症状の重症度を判断することができ、例えば、実施例1に示されるように、軽度のアレルギー症状を呈する患者と強いアレルギー症状を呈する患者とを判別することができる。また、例えば、実施例5に示されるように、アレルギー誘発性物質が被験動物(好ましくは、ヒト)においてアレルギーを発症する危険性を判断するとき、アレルギーを発症した場合の重症度を判別することができる。
【0033】
遊走した細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)を測定するために、当業者は適切な測定系を使用することができる。例えば、Dunn chamberやμ-Slideなどの、いわゆるchemotaxis chamberのように試験液(血清)に含まれる走化性因子の濃度勾配の存在下、顕微鏡視野内で適当な座標空間における個々の細胞動態を経時的に観察・記録することが可能な系を用いてもよい。また、顕微鏡一体型でなくても、個々の細胞動態を経時的に観察・記録することが可能であればよい。
【0034】
一つの実施態様において、遊走した細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)の測定は、走化性細胞の個々の細胞動態を経時的に観察記録した画像を、画像処理ソフトウェア、例えば無償で提供され、あるいは市販されている画像処理ソフトウェアなどを用いて画像処理して、例えば移動時間や移動距離ならびに方向性などの細胞の走化性/遊走能に関する各種パラメータを算出して行うことができる。
【0035】
本発明が提供する方法によれば、測定した遊走細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)のデータに基づき、被験動物(好ましくは、被験者(ヒト))がアレルギー疾患を有するか否か、アレルギーを発症する危険性があるか否か、検体がアレルギー誘発性物質であるか否か、検体にアレルギー誘発性物質があるか否か、検体がアレルギー抑制性物質であるか否か、検体にアレルギー抑制性物質があるか否か、等が判断され得る。
【0036】
例えば、本発明が提供する、
(1)被験動物由来の検体により走化性細胞の遊走を惹起する工程;および
(2)遊走した細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)を測定する工程を含むアレルギー疾患を診断する、またはアレルギーを発症する危険性を判断する方法については、被験動物由来の検体に加えて陰性対照および/または陽性対照を試験することにより、被験動物がアレルギー疾患を有するか否か、アレルギーを発症する危険性があるか否かを判定してもよい。このような陰性対照の例には、健常動物(好ましくはヒト)またはアレルギー疾患に罹患していない動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)が挙げられるが、これらに限定されない。また、陽性対照には、白血球細胞(例えば、単核球細胞)を白血球の刺激物質で刺激して調製した培養上清が挙げられる。このような培養上清は、例えば、白血球細胞の培養液に、白血球の刺激物質を添加し、一定期間(例えば、1日、2日、3日、4日または5日)培養することにより、調製することができる。白血球の刺激物質としては、例えば、マイトジェンが挙げられる。具体的な白血球の刺激物質の例には、phytohemagglutinin(以下、PHAとも称す)、コンカナバリンA、PWM(pokeweed mitogen)などの植物レクチン、LPS(lipopolysaccharide)、PPD(purified protein derivative of tuberculin)、dextran sulfateが挙げられるが、これらに限定されない。
例えば、陰性対照として健常動物(好ましくはヒト)またはアレルギー疾患に罹患していない動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)を用いる場合は、被験動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)により惹起された細胞遊走の移動距離が、健常動物(好ましくはヒト)またはアレルギー疾患に罹患していない動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)により惹起された細胞遊走の移動距離に比較して長いとき、被験動物(好ましくはヒト)がアレルギー疾患を罹患している、またはアレルギーを発症する危険性がある、と判定することができる。一つの実施態様として、被験動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)により惹起された細胞遊走の移動距離が、健常の動物(好ましくはヒト)またはアレルギー疾患に罹患していない動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)により惹起された細胞遊走の移動距離に比較して、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2倍以上長い場合に、被験動物(好ましくはヒト)がアレルギー疾患を罹患している、またはアレルギーを発症する危険性がある、と判定することができる。
また、被験動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)により惹起された細胞遊走の移動速度が、健常動物(好ましくはヒト)またはアレルギー疾患に罹患していない動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)により惹起された細胞遊走の移動速度に比較して速いとき(例えば、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2倍以上速いとき)、被験動物(好ましくはヒト)がアレルギー疾患を罹患している、またはアレルギーを発症する危険性がある、と判定することができる。
一方、被験動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)により惹起された細胞遊走の移動距離および/または移動速度の数値が、健常動物(好ましくはヒト)またはアレルギー疾患に罹患していない動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)により惹起された細胞遊走の移動距離よび/または移動速度の数値の1.1 、1、0.9 または0.8倍以下のとき、被験者がアレルギー疾患を罹患していない、またはアレルギーを発症する危険性がない、と判定することができる。
さらに、陽性対照としてPHAで刺激した白血球細胞の培養上清を用いる場合は、被検動物(好ましくはヒト)由来の検体(例えば、血清)により惹起された細胞遊走の移動距離および/または移動速度の数値が、PHAで刺激した白血球細胞の培養上清により惹起された細胞遊走の移動距離および/または移動速度の数値に比較して同じまたは大きいとき(例えば、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2倍以上大きいとき)、被験動物がアレルギー疾患を罹患している、またはアレルギーを発症する危険性がある、と判定することができる。
本発明が提供するアレルギー疾患を診断する方法またはアレルギーを発症する危険性を判断する方法において、上記のような陽性対照および陰性対照は一つのみを用いてもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0037】
一つの実施態様として、本発明が提供するアレルギー疾患を診断する方法またはアレルギーを発症する危険性を判断する方法を用いて、アレルギー疾患の程度またはアレルギーを発症する危険性の程度を判断できる。例えば、いくつかの既知量の陽性対照(例えば、白血球細胞(例えば、単核球細胞)を異なる濃度の白血球の刺激物質(例えば、PHA)でそれぞれ刺激して調製した培養上清)を用いて惹起された細胞遊走の移動距離および/または移動速度を基に検量線を作成し、そして、被検動物(好ましくはヒト)由来の検体を試験した結果を、検量線を用いて定量化して、アレルギー疾患の程度またはアレルギーを発症する危険性の程度を判断してもよい。
また、一つの実施態様として、被検動物(好ましくはヒト)由来の検体を経時的に採取し、本発明が提供するアレルギー疾患を診断する方法またはアレルギーを発症する危険性を判断する方法を用いて試験し、各採取された検体により惹起された細胞遊走の移動距離および/または移動速度を比較することにより、アレルギー疾患の程度またはアレルギーを発症する危険性の程度の経時変化を判断してもよい。例えば、同一の被検動物(好ましくはヒト)で以前採取した検体に比較し、細胞遊走の移動距離および/または移動速度の数値が大きくなった場合は、アレルギーの症状が亢進し、またはアレルギーを発症する危険性が高くなったと判断できる。一方、例えば、同一の被検動物(好ましくはヒト)で以前採取した検体に比較し、細胞遊走の移動距離および/または移動速度の数値が小さくなった場合は、アレルギーの症状が寛解され、またはアレルギーを発症する危険性が低くなったと判断できる。
【0038】
一つの実施態様において、本発明が提供するアレルギー疾患を診断する方法は、アレルギーではない疾患からアレルギー疾患を鑑別診断することに利用できる。例えば、薬疹が疑われる被験者由来の血清と、健常者あるいはアレルギーではない疾患患者由来の血清を試験して、被験者由来の血清を試験したときに測定された細胞遊走の移動距離および/または移動速度が、健常者あるいはアレルギーではない疾患患者由来の血清を試験したときに比較し、移動距離が長いおよび/または移動速度が速いとき、被験者がアレルギー疾患を罹患していると鑑別診断される。
【0039】
一つの実施態様として、被験動物がアレルギー疾患を罹患している、またはアレルギーを発症する危険性があることの判定は、走化性細胞が一定時間に移動する移動距離に基づき、検体中には走化性因子がないか、ほとんどない陰性(-)、次に走化性因子が多少存在すると疑われる疑陽性(+/-)、走化性因子がある陽性(+)、さらに高い濃度の走化性因子が存在する強陽性(++)のような4つのランクに分けることによって判定することも可能である。
【0040】
本発明が提供する
(1)被験動物由来の白血球細胞(例えば、単核球細胞)を、検体を添加した培地で培養する工程;
(2)培養上清を回収する工程;
(3)培養上清により走化性細胞の遊走を惹起する工程;および
(4)遊走した細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)を測定する工程を含む、検体中の被験動物のアレルギー誘発性または抑制性物質を同定または検出する方法については、被験動物由来の白血球細胞(例えば、単核球細胞)の代わりに健常動物由来の白血球細胞(例えば、単核球細胞)を用いて試験することにより、検体がアレルギー誘発性または抑制性物質であるか否か、検体にアレルギー誘発性または抑制性物質があるか否かを判断してもよい。また、検体に加えて陽性対照を試験することにより、検体がアレルギー誘発性物質であるか否か、検体にアレルギー誘発性物質があるか否かが判断してもよい。陽性対照には、白血球の刺激物質が挙げられ、例えば、マイトジェンである。具体的な陽性対照の例には、phytohemagglutinin(以下、PHAとも称す)、コンカナバリンA、PWM(pokeweed mitogen)などの植物レクチン、LPS(lipopolysaccharide)、PPD(purified protein derivative of tuberculin)、dextran sulfateが挙げられるが、これらに限定されない。
例えば、被験動物(好ましくはヒト)由来の白血球細胞(例えば、単核球細胞)の代わりに健常動物(好ましくはヒト)由来の白血球細胞(例えば、単核球細胞)を用いて試験した結果、被験動物(好ましくはヒト)由来の白血球細胞(例えば、単核球細胞)を用いて得られた結果が、健常動物(好ましくはヒト)由来の白血球細胞(例えば、単核球細胞)を用いて得られた結果に比較して、細胞遊走の移動距離および/または移動速度の数値が大きいとき(例えば、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2倍以上大きいとき)、検体がアレルギー誘発性物質である、または検体にアレルギー誘発性物質が検出される、と判定される。
検体に加えて陽性対照としてPHAを使用する場合は、PHAを試験して得られた結果が、検体を試験して得られた結果に比較して、細胞遊走の移動距離および/または移動速度の数値が同じまたは大きいとき(例えば、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2倍以上大きいとき)、検体がアレルギー誘発性物質である、または検体にアレルギー誘発性物質が検出される、と判定される。
また、例えば、PHAと検体を含む混合液を試験して得られた結果が、PHAを試験して得られた結果に比較して、細胞遊走の移動距離および/または移動速度の数値が小さいとき(例えば、0.5倍以下のとき)、検体がアレルギー抑制性物質である、または検体にアレルギー抑制性物質が検出される、と判定される。
本発明が提供するアレルギー誘発性または抑制性物質を同定または検出する方法においては、被検動物(好ましくはヒト)由来の白血球細胞(例えば、単核球細胞)の代わりに健常動物(好ましくはヒト)由来の白血球細胞(例えば、単核球細胞)を用いて試験すると共に、検体に加えて陽性対照を試験してもよく、どちらかだけでもよい。
【0041】
一つの実施態様において、検体がアレルギー誘発性または抑制性物質である、または検体にアレルギー誘発性または抑制性物質が検出されることの判定は、走化性細胞が一定距離を移動するのに要する移動時間に基づき、検体中には走化性因子がないか、ほとんどない陰性(-)、次に走化性因子が多少存在すると疑われる疑陽性(+/-)、走化性因子がある陽性(+)、さらに高い濃度の走化性因子が存在する強陽性(++)のような4つのランクに分けることによって判定することも可能である。
【0042】
一つの実施態様において、アレルギー誘発性物質または抑制性物質の濃度に比例して、被検者由来の白血球細胞から走化性因子が放出され、走化性細胞が遊走する。よって、アレルギー誘発性物質または抑制性物質を含む検体の同定または検出の際に、アレルギー誘発性物質または抑制性物質を含む検体を段階的に希釈し、検体の濃度依存的に走化性細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)が変化することを確認することにより、検体にアレルギー誘発性物質が含まれると判断してもよい。
【0043】
また、本発明が提供するアレルギー誘発性または抑制性物質を定量する方法であって、
(1)被験動物由来の白血球細胞(例えば、単核球細胞)を、既知量のアレルギー誘発性物質、既知量のアレルギー抑制性物質または検体を添加した培地で培養する工程;
(2)培養上清を回収する工程;
(3)培養上清により走化性細胞の遊走を惹起する工程;および
(4)遊走した細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)を測定する工程を含む方法については、例えば、既知量のアレルギー誘発性または抑制性物質を使用したときの遊走した細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)と検体を使用したときの遊走した細胞の細胞動態(例えば、移動距離および/または移動速度)を比較することにより、アレルギー誘発性または抑制性物質を定量することができる。
一つの実施態様として、複数の既知濃度のアレルギー誘発性または抑制性物質を試験し、移動距離および/または移動速度の検量線を作成することにより、アレルギー誘発性または抑制性物質を定量してもよい。
【0044】
本発明が提供するアレルギーを発症する危険性を判断する方法を用いることにより、被験物質がアレルギーを誘発するかどうかを事前に検査することが可能である。したがって、一つの実施態様では、本発明が提供するアレルギーを発症する危険性を判断する方法はこれまでにないアレルギー事前検査法としても応用可能であり、極めて有用である。
【0045】
本発明が提供するアレルギーを発症する危険性を判断する方法をアレルギー事前検査法として利用する場合、被検薬当たり約10ml程度必要なDLSTやLMTに比較し少量でよく、例えば、被験者の血液(細胞)は、被検薬あたり~100μlでよい。被験者からDLSTやLMTで求められるほど多くの血液や細胞を必要としない点は、患者の負担軽減という観点からも非常に有益である。
【0046】
一つの実施態様として、本発明が提供するアレルギーの診断方法、アレルギーを発症する危険性を判断する方法、またはアレルギー誘発性または抑制性物質を同定、検出、または定量する方法は、被験者の血清を含む検体または、被験化学物質、被験薬剤、被験食物などのアレルギー誘発性または抑制性物質を被験者の白血球に暴露して生じた走化性因子を含む検体を調製する検体調製工程、被験者または健常人の血液試料などから走化性細胞を調製する細胞調製工程、上記細胞の細胞動態を測定する細胞動態測定工程、上記細胞動態を画像処理する画像処理工程、上記画像処理結果から被験者がアレルギー疾患を有するか否か、アレルギーを発症する危険性があるか否か、検体がアレルギー誘発性または抑制性物質であるか否か、検体にアレルギー誘発性または抑制性物質があるか否かを判定する判定工程を含む。
【0047】
上記検体調製工程においては、例えば被験者からの体液や血液などの生体成分から、常法に従ってアレルギー検査に適した検体を調製する。例えば、検体として血清を使用する場合には、被験者から採血した血液に血清分離剤を加え遠心分離をすることにより調製することができる。その他の検体調製にしても同様に常法に従って行うことができる。
【0048】
また、本発明が提供するアレルギーの診断方法、アレルギーを発症する危険性を判断する方法、またはアレルギー誘発性または抑制性物質を同定、検出、または定量する方法によりアレルギー誘発性または抑制性物質のアレルギー誘発性または抑制性を同定/検査をする場合、またはアレルギー事前検査をする場合、被験者から分離調製した白血球を検査対象のアレルギー誘発性または抑制性物質に暴露することにより分泌される走化性因子を含む溶液を、検査試料として使用してもよい。
【0049】
上記細胞調製工程においては、走化性細胞は、例えば、アレルギー症状のない健常ボランティアの血液にヘパリンやEDTAなどを添加して常法に従い密度勾配遠心分離法などにより、好中球など顆粒球を含む白血球を分離し、適切な培養液に懸濁して調製することができる。また、特定の受容体を発現する樹立細胞株を走化性細胞に用いることもでき、その場合には、適切な培養液に懸濁して調製することができる。
【0050】
上記細胞動態測定工程においては、例えば、所定量の走化性細胞を市販走化性細胞検査ホルダーの下部ウェルに注入し観察テラス端まで吸引し、一方、所定量の血清などの検体を上部ウェルに注入し濃度勾配を作成して観察テラス上に形成した走化性細胞の画像を測定する。
【0051】
上記画像処理工程においては、上記細胞動態測定工程において形成された走化性細胞の画像を画像処理ソフトウェアにて解析し、走化性細胞の血清などの検体に対する各種パラメータ、例えば移動距離、移動時間、移動方向などを算出する。
【0052】
上記判定工程においては、画像処理の結果得られた各種パラメータを所定の判定基準に基づいて、血清などの検体に含まれるアレルギー誘発性または抑制性物質のアレルギー反応の有無ならびに程度を判定することができる。また、アレルギーが診断され、アレルギーを発症する危険性が判断され、アレルギー誘発性または抑制性物質が同定、検出、または定量される。
【0053】
一つの実施態様において、本発明が提供するアレルギーの診断方法、アレルギーを発症する危険性を判断する方法、またはアレルギー誘発性または抑制性物質を同定、検出、または定量する方法はin vitroで実施される。本発明が提供するアレルギーを発症する危険性を判断する方法、アレルギー誘発性または抑制性物質を同定、検出、または定量する方法により得られた結果は、医師がアレルギー疾患を診断する補助となり得る。
【0054】
本発明が提供するアレルギーの診断方法、アレルギーを発症する危険性を判断する方法、またはアレルギー誘発性物質を同定、検出、または定量する方法を実施し、得られた結果に基づき、アレルギーを治療または予防することができる。例えば、本発明が提供するアレルギー誘発性物質を同定、検出、または定量する方法を実施し、アレルギー誘発性物質を同定した場合は、被験者とアレルギー誘発性物質との接触を抑制することにより、アレルギーを治療または予防することができる。また、例えば、本発明が提供するアレルギーの診断方法またはアレルギーを発症する危険性を判断する方法を実施し、アレルギー疾患に罹患している、または現在は罹患していないが今後罹患する危険性が高いと判断された場合は、抗アレルギー薬(例えば、抗ヒスタミン薬)を投与することで、アレルギーを治療または予防することができる。よって、一つの実施態様において、本発明は、本発明が提供するアレルギーの診断方法、アレルギーを発症する危険性を判断する方法、またはアレルギー誘発性物質を同定、検出、または定量する方法を実施することを含む、アレルギーを治療または予防する方法を提供する。一つの実施態様において、アレルギーを治療または予防する方法は、さらに、被験者とアレルギー誘発性物質との接触を抑制する工程および/または抗アレルギー薬を投与する工程を含んでもよい。例えば、アレルギーが薬疹であれば、原因となる薬剤の投与を中止する工程を含んでもよい。
【0055】
一つの実施態様において、本発明は、 ケモタキシスチャンバー、白血球または樹立細胞株、および細胞培養用培地を含む、アレルギー疾患の診断用;アレルギーを発症する危険性の判断用;またはアレルギー誘発性または抑制性物質の同定、検出または定量用キットを提供する。白血球は、例えば、健常人血液より調製することができる。樹立細胞株の例には、ヒト白血球系細胞株、例えば、ヒトT細胞系細胞株(例えば、Jurkat細胞)やヒト前骨髄性細胞株(例えば、HL-60細胞)等が挙げられる。ヒト白血球系細胞株のその他の例としては、HL60RG、K562、MOLT-4F、IM-9、CCRF-HSB2、CCRF-SB、CCRF-CEM、RPMI 8226、RPMI 1788、HLCL-1、HEL、KG-1、BALL-1、TALL-1、P31/FUJ、P30/OHK、P32/ISH、A4/Fuk、A3/KAW、KU812、KU812E、KU812F、KY821、KY821A3、THP-1、LC4-1、SCC-3、KMS-12-BM、KMS-12-PE、PEER、RAJI、U937、CCRF-CEM、MOLT-4、MOLT-3、KG-1、HS-Sultan、WIL2-NS、Daudi、Ramos(RA1)、U937 cl1-14、U937 cl1-22、KO52、KHM-1B、SKM-1、MLMA、JKT-beta-del、KHYG-1、TK、MY-M12、MY-M13、SLVL、MY、RPMI 8226、RPMI 1788、NC-37、Namalwa、Raji、MEG-01、MEG-01SSF、MOLT-4、KU812、CCRF-CEM、CMK-86、CMK-11-5、MEG-01s、NOMO-1、NOMO-1s、NKM-1、MEG-A2、NAGL-1、MTA、TMD5、KAI3、Kasumi-4、HL60(S)、KHM-10B、K562/ADM、Kasumi-1、Kasumi-3、Kasumi-6、Ki-JK、CPT-K5、NOMO-1/ADM、NCO2、SKNO-1、KMS-11、KMM-1、KMS-21BM、KMS-26、KMS-27、KMS-28PE、KMS-28BM、KMS-34、KMS-20、TK、KCL-22、PL-21、MKPL-1、NALL-1、RC-K8、HD-70、DL-40、delta-47、PALL-2、FLAM-76、B104、KML-1、STR-428、KMS-33、KHM-2B、Kasumi-2、Kasumi-5、Kasumi-7、Kasumi-8、Kasumi-9、Kasumi-10、Minami-1、Minami-2、KasumiA-541、KasumiA-568、KasumiA-554等が挙げられるが、これらに限定されない。白血球または樹立細胞株は凍結保存状態で提供されてもよい。細胞培養用培地の例としては、DMEMやRPMI1640が挙げられる。キットには、さらに、陽性対照として使用することができるPHAを含んでもよい。さらに、キットには、細胞染色試薬、好ましくは、顕微鏡下で細胞を観察しやすくするために、生きたまま細胞を染色できる試薬(例えば、POLARIC-500c6F)をさらに含んでもよい。また、一つの実施態様において、本発明は、細胞の遊走の顕微鏡画像を経時的に記録するレコーダーおよび顕微鏡画像を解析して細胞の移動距離、移動速度を算出する画像解析装置を含む、アレルギー疾患の診断用;アレルギーを発症する危険性の判断用;またはアレルギー誘発性物質の同定、検出または定量用装置を提供する。上記装置に上記キットが備えられていてもよい。上記キットおよび上記装置は、本発明が提供するアレルギーの診断方法、アレルギーを発症する危険性を判断する方法、またはアレルギー誘発性または抑制性物質を同定、検出、または定量する方法に使用することができる。
【0056】
また、本発明は、以下のような実施態様をさらに提供する。
(a)被験動物から採取された体液にて検査用濃度勾配を作成し、前記体液に含まれる走化性因子の有無又は濃度に依存する走化性細胞の前記検査用濃度勾配中での細胞動態を観察するアレルギー検査方法。
【0057】
(b)アレルギー症状のない比較対照動物から採取された比較対照体液にて比較対照用濃度勾配を作成し、前記比較対照体液中に含まれる走化性因子の有無又は濃度に依存する走化性細胞の前記比較対照用濃度勾配中での細胞動態を観察し、前記検査用濃度勾配中における走化性細胞の運動性と、前記比較対照用濃度勾配中における走化性細胞の運動性とを比較することを特徴とする(a)に記載のアレルギー検査方法。
【0058】
(c)アレルギーを起こした被験動物のアレルギーの原因となる物質を同定する方法であって、前記被験動物のアレルギーを引き起こすことが疑われる被疑物質と、前記被験動物から採取された少なくともリンパ球を含む体液とを混合して検査用混合液を調製し、この検査用混合液にて検査用濃度勾配を作成し、前記検査用混合液中に含まれる走化性因子の有無又は濃度に依存する走化性細胞の前記検査用濃度勾配中での細胞動態を観察するアレルギー誘発性物質同定/検査方法。
【0059】
(d)少なくとも前記被疑物質に対してアレルギーのない比較対照動物から採取された少なくともリンパ球を含む体液と前記被疑物質とを混合して比較対照用混合液を調製し、この比較対照用混合液にて比較対照用濃度勾配を作成し、前記比較対照用混合液中に含まれる走化性因子の有無又は濃度に依存する走化性細胞の前記比較対照用濃度勾配中での細胞動態を観察し、前記検査用濃度勾配中における走化性細胞の運動性と、前記比較対照用濃度勾配中における走化性細胞の運動性とを比較することを特徴とする(c)に記載のアレルギー誘発性物質同定/検査方法。
【0060】
(e)被験動物のアレルギーの原因となる物質を前記被験動物がアレルギーを発現する前に事前に同定/検査する方法であって、前記被験動物に使用または摂取させた場合にアレルギーを引き起こすことが疑われる被疑物質と、前記被験動物から採取された少なくともリンパ球を含む体液とを混合して検査用混合液を調製し、この検査用混合液にて検査用濃度勾配を作成し、前記検査用混合液中に含まれる走化性因子の有無又は濃度に依存する走化性細胞の前記検査用濃度勾配中での細胞動態を観察するアレルギー事前検査方法。
【0061】
(f)少なくとも前記被疑物質に対してアレルギーのない比較対照動物から採取された少なくともリンパ球を含む体液と前記被疑物質とを混合して比較対照用混合液を調製し、この比較対照用混合液にて比較対照用濃度勾配を作成し、前記比較対照用混合液中に含まれる走化性因子の有無又は濃度に依存する走化性細胞の前記比較対照用濃度勾配中での細胞動態を観察し、前記検査用濃度勾配中における走化性細胞の運動性と、前記比較対照用濃度勾配中における走化性細胞の運動性とを比較することを特徴とする(e)に記載のアレルギー事前検査方法。
【0062】
なお、上記(a)~(f)において、被験動物や比較対照動物は、ヒトと非ヒト動物との両方を含む概念である。被験動物と比較対照動物は、同じ種類の動物とするのが望ましい。具体的には、被験動物がヒトであれば、比較対照動物もヒトであり、被験動物がマウスであれば、比較対照動物もマウスであるのがよい。
【0063】
また、上記(b)において、アレルギー症状のない比較対照動物とは、存在するか否かは別にして、アレルギー症状が全くない動物は勿論のこと、僅かながらのアレルギーは有するものの自他覚症状のない動物も含まれる。
【0064】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例により一切限定されるものではなく、本発明をより具体的に説明する意図で記載されるものである。したがって、当業者であれば下記実施例より容易に類推することができる変法などは本発明の範囲に包含されるものである。
【実施例】
【0065】
実施例1:健常人由来白血球の遊走を利用した薬剤アレルギー患者の検出
【0066】
(検査患者)
薬剤アレルギー様症状を発現した患者および健常ボランティアからの採血と白血球取得・使用に関しては、大学病院臨床研究審査委員会において、おもにLMTによる検討を目的とした臨床研究として申請し認可されている。また、検査依頼のあった対象患者に対しては、臨床研究に関する説明を行い、同意・協力に関するインフォームド・コンセントを文書にて取得した。今回、大学病院で薬剤アレルギー様症状を発現しLMTによるアレルギー様症状の誘発薬剤同定依頼があった患者のLMTにおける余剰血清と抗原刺激反応液を用いた。
【0067】
(患者#1)
過敏症状:汎血球数減少
被疑薬剤:Nafamostat mesilate (Naotamin), Nifedipine (Sepamit-R, Adalat-CR)
臨床経過:被疑薬の変更、中止後も汎血球減少に改善は見られなかった。
以上のことから、被疑薬の薬剤アレルギー発現による症状とはやや考えにくい。
【0068】
(患者#2)
過敏症状:不明熱(39.0°C)
被疑薬剤:Levofloxacin hydrate (Cravit), Doripenem hydrate (Finibax)
臨床経過:被疑薬投薬の前後に原因不明の発熱。自然に解熱した。
以上のことから、被疑薬の薬剤アレルギー発現による症状とは考えにくい。
【0069】
(患者#3)
過敏症状:好酸球増多
被疑薬剤:Mosapride citrate hydrate (Gasmotin), Sulpride (Dogmatyl),Rabeprazole sodium (Pariet)
臨床経過:被疑薬剤中止後、好酸球が減少、過敏症状が改善した。
以上のことから、薬剤アレルギーが強く疑われ、上記被疑薬剤中に起因薬剤があると考えられる。
【0070】
(血清)
被験者(健常あるいは軽度の皮膚掻痒症をもつボランティアと薬剤アレルギーが疑われる患者)の血液に血清分離剤を加え室温にて静置、2,000rpmで30分間の遠心分離にて、あるいはチューブ21(登録商標)-S(積水化学工業(株)、大阪)を用いて血清を分離した。
【0071】
(走化性細胞)
アレルギー症状のない健常ボランティアの血液(ヘパリン添加)より定法に従い密度勾配遠心分離法(Lympholyte(登録商標)-poly:CEDARLANE Labs. Ltd、Ontario、Canada)にて好中球など顆粒球を含む白血球を分離し、培養液(RPMI1640:Sigma-Aldrich、MO USA)5mlに懸濁した。そして、CO2インキュベータで37℃、1時間培養した後に、~5×105/mlの濃度に調整し、これを走化性細胞として用いた。
【0072】
(細胞動態の測定)
走化性細胞は、EZ-TAXIScanTM(GE ヘルスケア、東京)のホルダー下部ウェルに~5μl/ウェルずつ注入し、観察テラス端まで吸引法にて寄せた。次いで、血清を上部ウェルにマイクロシリンジを用いて1.5μl/ウェルずつ注入、観察テラスに濃度勾配を作製し観察テラス上に存在する走化性細胞の画像を経時的に記録した。なお、このときテラスの深さは4μmとした。
【0073】
(画像解析)
観察テラス上を移動する走化性細胞の動態は、画像処理ソフトウェアImageJ(NIH、MD、USA)にて解析し、血清に対する細胞の移動速度や移動距離、方向性など、細胞の走化性/遊走能に関する各種パラメータを算出した。なお、統計解析はGraphPad Prism(登録商標)(GraphPad Software、CA、USA)を用いて行った。
【0074】
血清1.5μlを上部ウェルに添加後の細胞動態は、顕微鏡下で2分毎20分間の記録画像を用いて解析した。観察開始時と終了時の画像は図1の通りであり、走化性細胞が観察テラス上で移動する様子が観察できた。なお、図1中において、aは健常ボランティア、b~dは患者#1~#3、eは皮膚掻痒症ボランティアの血清を用いている。
【0075】
観察テラス上の折れ線は、解析に用いた細胞の軌跡を示す。細胞動態で、方向性がなく移動距離の少なかったaやb、cに比べて、dとeの動きは直線的で移動距離も長かった。さらに、dとeでは観察テラス上につぎつぎと細胞が侵入し、解析終了時には多くの細胞が観察テラス上に存在した。
【0076】
実際に任意の細胞を選択し、細胞動態を解析した結果は図2に示す通りで、観察時の空間座標を原点とした場合の個々の細胞の動きを図2Aに、このときの移動速度と移動距離それぞれの解析結果を図2B及び図2Cに示す。健常ボランティア(a)と臨床経過から薬剤アレルギーとは考えにくい患者#1と#2(bとc)では、予想した通りにいずれのパラメータにおいても変化量の少ない結果となった。一方、薬剤アレルギーが強く疑われる患者#3(d)と軽度の皮膚掻痒症をもつボランティア(e)では、それぞれ他のすべての群に対して有意差を示した。
【0077】
(判定基準)
アレルギー検査の判定基準の策定にあたり、対照群(健常ボランティア血清の場合:a)を基準としたときの移動速度および移動距離それぞれの百分率を計算した(図3A及び図3B参照)。仮に、アレルギー発現の程度を表1に示す4分割(強陽性、++;陽性、+;疑陽性、+/-;陰性、-)とする判定基準を用いた場合、今回の判定結果は表2に示す通りであり、移動速度および移動距離いずれのパラメータを用いても患者#3では強陽性(++)と強いアレルギーを発現していると判断できた。また、患者#1と#2については、陰性(-)と判断でき、臨床経過とも一致した。さらに、軽度の皮膚掻痒症をもつボランティアでは、それぞれ陽性~疑陽性という判定となり、これは実際の症状を鑑みても妥当な結果だった。これらの結果から、このような判定基準を策定し用いることがアレルギー検査に有用といえる。
【0078】
【表1】
JP0006108570B2_000002t.gif

【0079】
【表2】
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【0080】
実施例2:ヒトT細胞系細胞株の遊走を利用した薬剤アレルギー患者の検出
(血清)
使用する血清は、実施例1と実質的に同様に調製した。
【0081】
(走化性細胞)
健常ボランティアの白血球に代えて、ヒトT細胞系樹立細胞株Jurkat細胞(American Type Culture Collection、VA、USA)を走化性細胞として用いた。細胞は培養液(DMEM:Sigma-Aldrich)5mlに懸濁、実施例1と同様にCO2インキュベータで37℃、1時間培養した後、~5×105/mlの濃度に調整、走化性細胞として用いた。なお、Jurkat細胞は、経代用培養液(DMEMに10%FBS(JRHBiosciences、KS、USA)と100U/ml penicillin、100μg/ml streptomycin(いずれもSigma-Aldrich)を添加したもの)にて維持し、週2回培養液の交換と必要に応じて濃度調整を行った。
【0082】
(細胞動態の測定)
細胞の細胞動態は、実施例1と実質的に同様にして測定した。ただし、テラスの深さは8μmとした。
【0083】
(画像解析)
細胞の細胞動態についての画像処理は、実施例1と実質的に同様に解析した。
【0084】
(結果)
実施例1で用いたヒト白血球の場合に比べてJurkat細胞の場合、移動速度では1/5程度と細胞動態が非常に緩やかだった。そのため、解析には20分でなく50分までの記録画像を用いた(図4A及び図4B参照)。その一方で、実施例1と同様に健常ボランティア(実施例1-a)に対し患者#3(実施例1-d)では、図4C~図4Eに示すように移動速度が有意に大きかった(p<0.001)。また、データは示していないが、移動距離についても同様の解析結果であり、これらのことは、目的(検査に必要な、すなわち対象とする走化性因子の種類)に応じて、顆粒球を含む白血球のみならず適当な樹立細胞株による解析も可能なことを示唆する。【0085】
実施例3:本発明が提供する方法によるアレルギー誘発性物質の同定
(血清)
血清は、実施例1と実質的に同様に調製した。ただし、実施例1で明らかな陽性反応が認められた患者#3を対象とした。
【0086】
(走化性細胞)
走化性細胞は、実施例1と実質的に同様に調製した。
【0087】
(薬剤抗原液)
薬剤溶液は、易溶性の錠剤や粉末など固形剤の場合はHank's balanced salt solution(HBSS:Sigma-Aldrich)で溶解、調製した。一方、難溶性の薬剤はDimethyl-sulfoxide(DMSO:Sigma-Aldrich)に溶解し、HBSSにて希釈、DMSOの最終濃度が1%以下になるように調整した。薬剤抗原液では、血清は薬剤溶液と患者血清の比率が1:1の溶液とした。このとき、被疑薬剤の濃度は、原則としてCmaxの1/2とし、また、対照として用いたリンパ球の刺激・活性化抗原であるphytohemagglutinin(PHA:和光純薬、大阪)の濃度は1μg/mlとした。
【0088】
(単核球細胞)
患者の血液(ヘパリン添加)より定法に従い密度勾配遠心分離法(LymphoprepTM:Axis-Shield PoC、Oslo、Norway)にて単核球(PBMC)を分離しHBSSで洗浄後、反応用培養液(RPMI1640に10%ウマ血清(Invitrogen、CA、USA)を加えたもの)にて~5×106/mlの濃度に調整した。
【0089】
(抗原刺激反応液)
単核球浮遊液と薬剤抗原液を4:1で加え、CO2インキュベータで37℃、72時間反応させ、反応上清を抗原刺激反応液とした。抗原の種類としては、PHA(a)、gasmotin(b)、dogmatyl(c)、pariet(d)、DMSO(e)を用いた。
【0090】
(細胞動態の測定)
細胞動態は、実施例1と実質的に同様にして測定した。ただし、このとき上部ウェルには血清の代わりに抗原刺激反応液を注入した。
【0091】
(画像解析)
画像解析は、実施例1と実質的に同様にして行った。
【0092】
(結果)
ヒト白血球を用いていることから、実施例1と同様に20分までの記録画像を用いて解析した。その結果、図5Aに示すようにgasmotin(b)において、抗原刺激反応液に対して血清で認められたものと同様に、走化性細胞の正の濃度勾配方向への素早い移動が観察テラス上で認められた。対照群のPHA(a)では、bほどではないものの、他の被疑薬剤(cとd)や溶媒(DMSO、e)に比べると強い走化性/遊走能を示した。任意の細胞を選択しさらに詳細な解析を行ったところ、移動速度(図5B参照)、移動距離(図5C参照)ともに、被疑薬剤bが他の被疑薬剤や溶媒(c、dとe)に対して有意に大きい結果となった。この結果から、患者#3で薬剤アレルギーを誘発しているのは薬剤b(gasmotin)であることが強く示唆された。なお、図5B及び図5C中における「*」は、被疑薬bの群に対する有意差を示す(p < 0.05)。
【0093】
(判定基準)
薬剤アレルギーを誘発した起因薬剤の同定あるいは事前検査法の判定基準策定にあたり、対照群(PHA刺激反応液:a)を基準としたときの移動速度、移動距離それぞれの百分率を計算した(図6A及び図6B参照)。仮に、アレルギー発現の程度を表3に示す4分割(強陽性、++;陽性、+;疑陽性、+/-;陰性、-)とする判定基準を用いた場合、今回の判定結果は表4に示す通りとなった。移動速度、移動距離いずれのパラメータを用いても、患者#3において考えられる被疑薬剤のうちgasmotin(b)では強陽性(++)となり、薬剤アレルギーを誘発する原因薬剤と判断できた。また、その他の被疑薬剤や溶媒(c、dとe)については、とくに移動距離を指標とした場合には、疑陽性(+/-)~陰性(-)と判断できた。今回、事後的に薬剤アレルギーを発現した患者のリンパ球を血清とともに薬剤で刺激することで、白血球の走化性の大きな変化を確認できたことから、事前に薬剤に暴露し刺激することでも、事後の場合と同様に薬剤アレルギー発現の判断にも用いることが可能と考えられる。これらの結果から、このような判定基準を策定し用いることが薬剤アレルギー起因薬同定法/事前検査法に有用といえる。
【0094】
【表3】
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【0095】
【表4】
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【0096】
実施例4:遊走細胞の細胞動態に対する抗原濃度の影響
(血清)
血清は、実施例1と実質的に同様にして調製した。ただし、被験者はスギ花粉症既往歴をもつが、採血時(9月)に花粉症症状を発現していないボランティアであった。
【0097】
(走化性細胞)
走化性細胞は、実施例1と実質的に同様にして調製した。
【0098】
(薬剤抗原液)
スギ花粉抗原SBP(林原生物化学研究所、岡山)を用いた。また、血清は最終濃度が10%となるように調製した。
【0099】
(単核球細胞)
スギ花粉症の既往歴をもち採血時に症状のないボランティアの血液(ヘパリン添加)より定法に従い密度勾配遠心分離法にて単核球(PBMC)を分離しPBSで洗浄後、反応用培養液(RPMI1640に10%FBSを加えたもの)にて~5×106/mlの濃度に調整した。
【0100】
(抗原刺激反応液)
単核球細胞に薬剤抗原液(スギ花粉抗原SBP:0、0.5、5、50μg/ml)を添加し、CO2インキュベータで37℃、72時間反応させ、反応上清を抗原刺激反応液とした。
【0101】
(細胞動態の測定)
細胞動態は実施例1と実質的に同様にして測定した。ただし、このとき上部ウェルには血清の代わりに抗原刺激反応液を注入した。
【0102】
(画像解析)
画像解析は実施例1と実質的に同様にして解析した。
【0103】
(結果)
実施例3と同様に抗原刺激反応液、この場合スギ花粉抗原SBPに対する正の濃度勾配方向への走化性細胞の観察テラス上における活性化/移動が認められた(図7A参照)。このとき、細胞は、抗原濃度依存的に活性化された。任意の細胞を選択し、さらに詳細な解析を行ったところ、移動速度(図7B参照)、移動距離(図7C参照)それぞれにおいて、期待した通り、抗原の濃度依存的に有意に大きくなった(*:p<0.01、†:p<0.001)。(判定基準)
アレルギー発現の事前検査法の判定基準策定にあたり、対照群(スギ花粉抗原SBP=0μg/ml)を基準としたときの移動速度、移動距離それぞれの百分率を計算した(図8A及び図8B参照)。仮に、アレルギー発現の程度を表5に示す4分割(強陽性、++;陽性、+;疑陽性、+/-;陰性、-)とする判定基準を用いた場合、今回の判定結果は表6に示す通りとなった。移動速度、移動距離いずれのパラメータを用いても強陽性(++)~擬陽性(+/-)となり、花粉アレルギーを誘発したと判断できた。したがって、今後、被験者がスギ花粉に暴露されると重篤な花粉症を発症する可能性が高い、と判定できる。以上のことから、たとえアレルギー症状がない場合であっても、事前に被験者のリンパ球と血清を用いて抗原で刺激した抗原刺激反応液を適用し、細胞の走化性/遊走能を測定・解析後、適当な判定基準を用いることで、これまでにないアレルギー発現の事前検査が可能であることが示唆された。
【0105】
【表5】
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【0106】
【表6】
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【0107】
実施例5:被験者の花粉症の有無による花粉エキス刺激の細胞動態に与える影響
(走化性細胞)
走化性細胞は、実施例1と実質的に同様にして調製した。
【0108】
(薬剤抗原液)
スギ花粉抗原SBP(林原生物化学研究所、岡山)を用いた。また、血清は最終濃度が10%となるように調製した。
【0109】
(単核球細胞)
スギ花粉症患者の血液(ヘパリン添加)および花粉症のない健常人ボランティアの血液(ヘパリン添加)より定法に従い密度勾配遠心分離法にて単核球(PBMC)を分離しPBSで洗浄後、反応用培養液(RPMI1640に10%FBSを加えたもの)にて~5×106/mlの濃度に調整した。
【0110】
(抗原刺激反応液)
単核球細胞に薬剤抗原液(スギ花粉抗原SBP:0、0.5、5、50μg/ml)を添加し、CO2インキュベータで37℃、72時間反応させ、反応上清を抗原刺激反応液とした。
【0111】
(細胞動態の測定)
細胞動態は実施例1と実質的に同様にして測定した。ただし、このとき上部ウェルには血清の代わりに抗原刺激反応液を注入した。
【0112】
(画像解析)
画像解析は実施例1と実質的に同様にして解析した。
【0113】
被験者単核球に対する花粉エキスの暴露では、被験者の花粉症の有無により白血球(健常ボランティア)の細胞動態に明確な違いが認められた。すなわち、花粉症のない被験者では、花粉エキス暴露による単核球刺激上清は白血球(健常ボランティア)の細胞動態に対して何ら影響を与えなかった一方で、花粉症の被験者では、花粉エキスの濃度依存的に単核球刺激上清に対する白血球(健常ボランティア)の移動度が増加した(図9)(*:p<0.01)。この結果より、花粉症患者の単核球は、花粉刺激により、健常人の単核球とは相違する走化因子が分泌されること、当該走化因子が、健常人の白血球を遊走させることが示された。実施例6:本発明が提供する方法による漢方薬でアレルギーを発現した被験者の診断およびアレルギー誘発性物質の特定
(走化性細胞)
走化性細胞は、実施例1と実質的に同様にして調製した。
【0115】
(薬剤抗原液)
漢方薬(長倉泌尿煎)18 gを550 mlの精製水に入れ、330 mlになるまで加熱濃縮後ペーパーフィルターにかけ、漢方薬(長倉泌尿煎)浸出液を調製した。同様に、漢方薬(長倉泌尿煎)の4成分:仙骨、白朮、茯苓、木通についても浸出液を調製した。
【0116】
(単核球細胞)
スギ花粉症患者の血液(ヘパリン添加)および花粉症のない健常人ボランティアの血液(ヘパリン添加)より定法に従い密度勾配遠心分離法にて単核球(PBMC)を分離しPBSで洗浄後、反応用培養液(RPMI1640に10%FBSを加えたもの)にて~5×106/mlの濃度に調整した。
【0117】
(抗原刺激反応液)
単核球細胞に薬剤抗原液を添加し、CO2インキュベータで37℃、72時間反応させ、反応上清を抗原刺激反応液とした。
【0118】
(細胞動態の測定)
細胞動態は実施例1と実質的に同様にして測定した。ただし、このとき上部ウェルには血清の代わりに抗原刺激反応液を注入した。
【0119】
(画像解析)
画像解析は実施例1と実質的に同様にして解析した。
【0120】
漢方薬(長倉泌尿煎)の服用後にアレルギー様症状を呈した患者の単核球に、被疑薬剤である漢方薬(浸出液)を暴露(1:10,000)、その培養上清の白血球(健常ボランティア)に対する細胞動態への影響を検討した。漢方薬暴露により、患者単核球より走化性因子が産生・放出され、白血球(健常ボランティア)の細胞動態に影響を与えたことから、被験者でアレルギーを発現したことが示唆された
(図10A)(*:p<0.01)。実施例7:本発明が提供する方法による診断とDLST、LMTによる診断の比較
(血清)
典型的なアレルギー様症状を発現した患者または典型的なアレルギー様症状を発現していない患者の血液に血清分離剤を加え室温にて静置、2,000rpmで30分間の遠心分離にて、あるいはチューブ21(登録商標)-S(積水化学工業(株)、大阪)を用いて血清を分離した。
(走化性細胞)
走化性細胞は、実施例1と実質的に同様にして調製した。
【0122】
(薬剤抗原液)
薬剤溶液は、易溶性の錠剤や粉末など固形剤の場合はHank's balanced salt solution(HBSS:Sigma-Aldrich)で溶解、調製した。一方、難溶性の薬剤はDimethyl-sulfoxide(DMSO:Sigma-Aldrich)に溶解し、HBSSにて希釈、DMSOの最終濃度が1%以下になるように調整した。薬剤抗原液では、血清は薬剤溶液と患者血清の比率が1:1の溶液とした。このとき、被疑薬剤の濃度は、原則としてCmaxの1/2とし、また、対照として用いたリンパ球の刺激・活性化抗原であるphytohemagglutinin(PHA:和光純薬、大阪)の濃度は1μg/mlとした。
【0123】
(抗原刺激反応液)
単核球細胞に薬剤抗原液を添加し、CO2インキュベータで37℃、72時間反応させ、反応上清を抗原刺激反応液とした。
【0124】
(単核球細胞)
典型的なアレルギー様症状を発現した患者の血液(ヘパリン添加)および典型的なアレルギー様症状を発現していない患者の血液(ヘパリン添加)より定法に従い密度勾配遠心分離法にて単核球(PBMC)を分離しPBSで洗浄後、反応用培養液(RPMI1640に10%FBSを加えたもの)にて~5×106/mlの濃度に調整した。
【0125】
(細胞動態の測定)
細胞動態は実施例1と実質的に同様にして測定した。
【0126】
(画像解析)
画像解析は実施例1と実質的に同様にして解析した。
【0127】
非典型例と典型例のアレルギー様症状(皮膚障害)を発現した患者で、臨床検査として汎用されているDLST とさらに高精度な場合のあることが報告されているLMT、本検査方法の3 種類の異なる検査方法を用いて比較を行った。
表7に示すように、現在主要な検査方法として行われているDLST とLMT では、今回の非典型例(患者A)と典型例(患者B)のいずれにおいてもその結果は陰性となり、特に、典型例ではその臨床症状や臨床経過から明らかに中毒性表皮壊死症(TEN)の皮膚症状を発現していたにもかかわらず陰性であった。
一方、本願発明が提供する方法では、非典型例における細胞動態は陽性コントロールであるPHA を除きいずれの被疑薬剤においても陰性となり、DLST やLMT の場合と同様の結果であった(図11)(*:p<0.01)。したがって、この非典型例の患者では、アレルギーではなく他の原因による症状発現だったことが示唆された。【表7】
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【0129】
実施例8:ヒト前骨髄性細胞株:HL-60細胞を用いたアレルギー誘発性物質の検出
(血清)
健常人血清を実施例1と同様に調製した。
【0130】
(走化性細胞)
ヒト前骨髄性細胞株:HL-60細胞を走化性細胞として用いた。細胞は培養液(RPMI1640)5mlに懸濁、実施例1と同様にCO2インキュベータで37℃、1時間培養した後、~5×105/mlの濃度に調整、走化性細胞として用いた。なお、HL-60細胞は、経代用培養液(RPMI1640に10%FBS(JRHBiosciences、KS、USA)と100U/ml penicillin、100μg/ml streptomycin(いずれもSigma-Aldrich)を添加したもの)にて維持し、週2回培養液の交換と必要に応じて濃度調整を行った。
【0131】
(薬剤抗原液)
スギ花粉抗原SBP(林原生物化学研究所、岡山)を用いた。単核球細胞に添加するときに、 50μg/mlとなるように調製した。

【0132】
(単核球細胞)
スギ花粉症患者の血液(ヘパリン添加)より定法に従い密度勾配遠心分離法にて単核球(PBMC)を分離しPBSで洗浄後、反応用培養液(RPMI1640に10%FBSを加えたもの)にて~5×106/mlの濃度に調整した。
【0133】
(抗原刺激反応液)
単核球細胞に健常人血清または健常人血清で希釈した花粉エキスを添加し、CO2インキュベータで37℃、72時間反応させ、反応上清を抗原刺激反応液とした。
【0134】
(細胞動態の測定)
実施例4と同様にして測定した。
【0135】
(画像解析)
実施例4と同様に解析した。
【0136】
花粉エキスを暴露したスギ花粉症患者単核球の培養上清は、HL-60細胞の遊走距離を増加させた(図13)。スギ花粉症患者単核球に花粉エキスを暴露することにより、健常人血清に存在しない走化因子が分泌され、その走化因子がHL-60細胞の細胞動態に影響することが示された。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図3A】
4
【図3B】
5
【図4A】
6
【図4B】
7
【図4C】
8
【図4D】
9
【図4E】
10
【図5A】
11
【図5B】
12
【図5C】
13
【図6A】
14
【図6B】
15
【図7A】
16
【図7B】
17
【図7C】
18
【図8A】
19
【図8B】
20
【図9】
21
【図10A】
22
【図10B】
23
【図11】
24
【図12】
25
【図13】
26