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明細書 :光クロスリンク能を有する光応答性ヌクレオチドアナログ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5925383号 (P5925383)
登録日 平成28年4月28日(2016.4.28)
発行日 平成28年5月25日(2016.5.25)
発明の名称または考案の名称 光クロスリンク能を有する光応答性ヌクレオチドアナログ
国際特許分類 C07H  21/04        (2006.01)
FI C07H 21/04 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 34
出願番号 特願2015-508725 (P2015-508725)
出願日 平成26年3月27日(2014.3.27)
国際出願番号 PCT/JP2014/058988
国際公開番号 WO2014/157565
国際公開日 平成26年10月2日(2014.10.2)
優先権出願番号 2013070381
優先日 平成25年3月28日(2013.3.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年4月17日(2015.4.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】藤本 健造
【氏名】坂本 隆
【氏名】田中 佑弥
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000523、【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
【識別番号】100127133、【弁理士】、【氏名又は名称】小板橋 浩之
審査官 【審査官】早川 裕之
参考文献・文献 国際公開第2009/066447(WO,A1)
国際公開第2010/147673(WO,A1)
国際公開第2005/083073(WO,A1)
特表平05-507419(JP,A)
調査した分野 C07H 21/00~04
C07H 19/00~24
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
次の式I:
【化1】
JP0005925383B2_000061t.gif
(ただし、式I中、
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、ホスホノ基、スルホ基、又は水素原子を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子を表し、
R3は、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、フッ化メチル基、C6~C12の単環式又は二環式の芳香族化合物の1価基、C6~C12の単環式又は二環式の複素環系芳香族化合物の1価基、又は、次の式:
【化2】
JP0005925383B2_000062t.gif
(ただし、上記式中、Ra、R1及びR2は、式Iについて上述したRa、R1及びR2とは独立に、式Iについて上述したRa、R1及びR2として挙げられた基から選択された基を表す)
で表される1価基を表し、
R4は、Q1-O-CH2-基を表し、
R5は、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、
R6は、-O-Q2基、-CH2-O-Q2基、又は-CH(CH3)-O-Q2基を表し、
1は、水素原子、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、又はQ1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸を表し、
2は、水素原子、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、又はQ2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸を表す
(ただし、Q1及びQ2は、少なくともいずれか一方が次を表す:Q1が、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結される核酸を表すか、又は、Q2が、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結される核酸を表す))
によって表される、光反応性架橋剤。
【請求項2】
次の式II:
【化3】
JP0005925383B2_000063t.gif
(ただし、式II中、
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、ホスホノ基、スルホ基、又は水素原子を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子を表し、
R3は、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、フッ化メチル基、C6~C12の単環式又は二環式の芳香族化合物の1価基、C6~C12の単環式又は二環式の複素環系芳香族化合物の1価基、又は、次の式:
【化4】
JP0005925383B2_000064t.gif
(ただし、上記式中、Ra、R1及びR2は、式Iについて上述したRa、R1及びR2とは独立に、式Iについて上述したRa、R1及びR2として挙げられた基から選択された基を表す)
で表される1価基を表し、
R5は、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、
1は、水素原子、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、又はQ1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸を表し、
2は、水素原子、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、又はQ2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸を表す
(ただし、Q1及びQ2は、少なくともいずれか一方が次を表す:Q1が、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結される核酸を表すか、又は、Q2が、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結される核酸を表す))
によって表される、請求項1に記載の光反応性架橋剤。
【請求項3】
R3が、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、フェニル基、2-ナフチル基、2-インドリル基、ベンゾイミダゾール-2-イル基、又はベンゾチオフェン-2-イル基である、請求項1~2のいずれかに記載の光反応性架橋剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の光反応性架橋剤を使用して、該光反応性架橋剤と、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸類と架橋可能な光反応性の核酸塩基類似構造、及びデオキシリボース代替構造を有する光反応性架橋剤、及び該核酸塩基類似構造を塩基部分として備えて該デオキシリボース代替構造をデオキシリボース部分として備えた、光クロスリンク(光架橋)能を有する光応答性ヌクレオチド類似化合物(光応答性ヌクレオチドアナログ)に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学の分野の基本的な技術に、核酸の連結及び核酸の架橋がある。核酸の連結や架橋は、例えば、ハイブリダイゼーションと組みあわせて、遺伝子の導入や、塩基配列の検出のために使用され、あるいは、例えば、遺伝子発現の阻害に使用される。そのために、核酸の連結及び架橋の技術は、分子生物学の基礎研究だけではなく、例えば、医療分野における診断や治療、あるいは治療薬や診断薬等の開発や製造、工業及び農業分野における酵素や微生物等の開発や製造に使用される極めて重要な技術である。
【0003】
このような核酸の連結あるいは架橋の技術として、酵素類を使用しない、光反応を利用した技術が、反応の時間的空間的な制御が自由であること、一般的な有機化学反応よりも緩和な条件で反応可能であること等の利点から、注目されるようになってきた。
【0004】
このような核酸の光反応技術として、5-シアノビニルデオキシウリジンを使用した光連結技術(特許文献1:特許第3753938号、特許文献2:特許第3753942号)、3-ビニルカルバゾール構造を塩基部位に持つ修飾ヌクレオシドを使用した光架橋技術(特許文献3:特許第4814904号、特許文献4:特許第4940311号)がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】日本国特許第3753938号公報
【特許文献2】日本国特許第3753942号公報
【特許文献3】日本国特許第4814904号公報
【特許文献4】日本国特許第4940311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
核酸の光反応技術の重要性から、核酸の光反応技術に使用可能な新しい化合物が、さらに求められている。本発明の目的は、核酸の光反応技術に使用可能な新しい光反応性化合物、及び該光反応性化合物を使用した光反応性架橋剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、核酸の光反応技術に使用可能な光反応性架橋剤となる光反応性化合物を鋭意探索してきたところ、核酸塩基の塩基部分に代えてビニルカルバゾール骨格構造を備えて、リボース及びデオキシリボース部分に代えて後述の式Iで表される骨格構造を備えた化合物が、このような核酸の光反応技術に使用可能な光反応性架橋剤となることを見いだして、本発明に到達した。
【0008】
本発明に係る化合物は、後述の式Iで表される骨格構造を備えており、天然のヌクレオシド及びヌクレオチドが備えているべきリボースあるいはデオキシリボースによる糖構造を備えていない。さらに、本発明に係る化合物は、天然のヌクレオシド及びヌクレオチドが備えているべきプリン塩基あるいはピリミジン塩基による塩基構造を備えていない。つまり、本発明に係る化合物は、天然のヌクレオシド及びヌクレオチドとは、構造的に全く類似するように思われない化学構造となっている。それにもかかわらず、本発明に係る化合物は、1本鎖の核酸として形成されると、これと相補的な1本鎖の核酸と二重らせんを形成することができ、ビニルカルバゾール部分が光反応によって架橋を形成すると、二重らせんの一方の鎖からもう一方の鎖へと形成された光架橋(光クロスリンク)となるので、本発明に係る光反応性の化合物は、所望の配列に特異的に反応可能な二重らせんの光クロスリンク剤(光架橋剤)として使用することができる。
【0009】
したがって、本発明は、次の(1)~ にある。
(1)
次の式I:
【化1】
JP0005925383B2_000002t.gif
(ただし、式I中、
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、ホスホノ基、スルホ基、又は水素原子を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子を表し、
R3は、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、フッ化メチル基、C6~C12の単環式又は二環式の芳香族化合物の1価基、C6~C12の単環式又は二環式の複素環系芳香族化合物の1価基、又は、次の式:
【化2】
JP0005925383B2_000003t.gif
(ただし、上記式中、Ra、R1及びR2は、式Iについて上述したRa、R1及びR2とは独立に、式Iについて上述したRa、R1及びR2として挙げられた基から選択された基を表す)
で表される1価基を表し、

R4は、水素原子、又は Q1-O-CH2-基を表し、
R5は、-O-Q1基、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、
(ただし、R4が水素原子である場合には、R5は-O-Q1基を表し、
R4がQ1-O-CH2-基である場合には、R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表す)
R6は、-O-Q2基、-CH2-O-Q2基、又は-CH(CH3)-O-Q2基を表し、

1は、水素原子、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、又はDMTr基を表し、
2は、水素原子、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、次の式:
【化3】
JP0005925383B2_000004t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、又は次の式:
【化4】
JP0005925383B2_000005t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、を表す)
によって表される、光反応性の化合物。
(2)
次の式II:
【化5】
JP0005925383B2_000006t.gif
(ただし、式II中、
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、ホスホノ基、スルホ基、又は水素原子を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子を表し、
R3は、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、フッ化メチル基、C6~C12の単環式又は二環式の芳香族化合物の1価基、C6~C12の単環式又は二環式の複素環系芳香族化合物の1価基、又は、次の式:
【化6】
JP0005925383B2_000007t.gif
(ただし、上記式中、Ra、R1及びR2は、式Iについて上述したRa、R1及びR2とは独立に、式Iについて上述したRa、R1及びR2として挙げられた基から選択された基を表す)
で表される1価基を表し、
R5は、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、

1は、水素原子、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、又はDMTr基を表し、
2は、水素原子、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、次の式:
【化7】
JP0005925383B2_000008t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、又は次の式:
【化8】
JP0005925383B2_000009t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、を表す)
によって表される、(1)に記載の化合物。
(3)
次の式III:
【化9】
JP0005925383B2_000010t.gif
(ただし、式III中、
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、ホスホノ基、スルホ基、又は水素原子を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子を表し、

R3は、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、フッ化メチル基、C6~C12の単環式又は二環式の芳香族化合物の1価基、C6~C12の単環式又は二環式の複素環系芳香族化合物の1価基、又は、次の式:
【化10】
JP0005925383B2_000011t.gif
(ただし、上記式中、Ra、R1及びR2は、式Iについて上述したRa、R1及びR2とは独立に、式Iについて上述したRa、R1及びR2として挙げられた基から選択された基を表す)
で表される1価基を表し、
R7は、水素原子、又はメチル基を表し、

1は、水素原子、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、又はDMTr基を表し、
2は、水素原子、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、次の式:
【化11】
JP0005925383B2_000012t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、又は次の式:
【化12】
JP0005925383B2_000013t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、を表す)
によって表される、(1)に記載の化合物。
(4)
上記式IIによって表される(2)に記載の化合物であって、式II中の次の式IIa:
【化13】
JP0005925383B2_000014t.gif
で表される骨格構造が、
次の式:
【化14】
JP0005925383B2_000015t.gif
で表されるD-トレオニノール構造、
次の式:
【化15】
JP0005925383B2_000016t.gif
で表されるL-トレオニノール構造、
又は、次の式:
【化16】
JP0005925383B2_000017t.gif
で表されるセリノール構造である、化合物。
(5)
上記式IIIによって表される(3)に記載の化合物であって、式III中の次の式IIIa:
【化17】
JP0005925383B2_000018t.gif
で表される骨格構造が、
次の式:
【化18】
JP0005925383B2_000019t.gif
で表される(R)-3-アミノ-1,2-プロパンジオール構造、
又は、次の式:
【化19】
JP0005925383B2_000020t.gif
で表される(S)-3-アミノ-1,2-プロパンジオール構造である、化合物。
(6)
R3が、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、フェニル基、2-ナフチル基、2-インドリル基、ベンゾイミダゾール-2-イル基、又はベンゾチオフェン-2-イル基である、(1)~(5)のいずれかに記載の化合物。
(7)
(1)~(6)のいずれかに記載の化合物であって、
1が、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸であり、
2が、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸である、化合物。
(8)
(1)~(6)のいずれかに記載の化合物であって、
1が、水素原子であり、Q2が、水素原子である、化合物。
(9)
(1)~(6)のいずれかに記載の化合物であって、
1が、DMTr基であり、
2が、水素原子、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、次の式:
【化20】
JP0005925383B2_000021t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、又は次の式:
【化21】
JP0005925383B2_000022t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基である、化合物。
(10)
(1)~(9)のいずれかに記載の化合物からなる、光反応性架橋剤。
【0010】
さらに、本発明は、次の(11)~ にもある。
(11)
(1)~(9)の何れかに記載の化合物を使用して、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
(12)
(7)に記載の化合物と、ピリミジン環を核酸塩基として有する核酸を、ハイブリダイズして二重らせんを形成させる工程、
形成された二重らせんに光照射する工程、
を含む、光架橋の形成方法。
(13)
(1)~(9)の何れかに記載の化合物の、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成するための使用(use)。
(14)
(7)に記載の化合物の、ハイブリダイズして形成された二重らせんにおいてピリミジン環を核酸塩基として有する他の核酸類との間に光架橋を形成するための使用。
【0011】
さらに、本発明は、次の(21)~ にもある。
(21)
次の式IV:
【化22】
JP0005925383B2_000023t.gif
(ただし、式IV中、
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、ホスホノ基、スルホ基、又は水素原子を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子を表し、
R3は、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、フッ化メチル基、C6~C12の単環式又は二環式の芳香族化合物の1価基、C6~C12の単環式又は二環式の複素環系芳香族化合物の1価基、又は、次の式:
【化23】
JP0005925383B2_000024t.gif
(ただし、上記式中、Ra、R1及びR2は、式IVについて上述したRa、R1及びR2とは独立に、式IVについて上述したRa、R1及びR2として挙げられた基から選択された基を表す)
で表される1価基を表わす)

で表される化合物を、次の式V:
【化24】
JP0005925383B2_000025t.gif
(ただし、式V中、
R4は、水素原子、又は Q1-O-CH2-基を表し、
R5は、-O-Q1基、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、
(ただし、R4が水素原子である場合には、R5は-O-Q1基を表し、
R4がQ1-O-CH2-基である場合には、R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表す)
R6は、-O-Q2基、-CH2-O-Q2基、又は-CH(CH3)-O-Q2基を表し、
1は、水素原子を表し、Q2は、水素原子を表す)
で表される化合物と脱水縮合反応させることによって、次の式VI:
【化25】
JP0005925383B2_000026t.gif
(ただし、式VI中、
Ra、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、上記式IV及び式Vについて、上述した通りの基を表す)
で表される化合物を製造する方法。
(22)
次の式VI:
【化26】
JP0005925383B2_000027t.gif
(ただし、式VI中、
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、ホスホノ基、スルホ基、又は水素原子を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子を表し、
R3は、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、フッ化メチル基、C6~C12の単環式又は二環式の芳香族化合物の1価基、C6~C12の単環式又は二環式の複素環系芳香族化合物の1価基、又は、次の式:
【化27】
JP0005925383B2_000028t.gif
(ただし、上記式中、Ra、R1及びR2は、式VIについて上述したRa、R1及びR2とは独立に、式VIについて上述したRa、R1及びR2として挙げられた基から選択された基を表す)
で表される1価基を表わし、

R4は、水素原子、又は Q1-O-CH2-基を表し、
R5は、-O-Q1基、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、
(ただし、R4が水素原子である場合には、R5は-O-Q1基を表し、
R4がQ1-O-CH2-基である場合には、R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表す)
R6は、-O-Q2基、-CH2-O-Q2基、又は-CH(CH3)-O-Q2基を表し、
1は、水素原子を表し、Q2は、水素原子を表す)
で表される化合物を、ヌクレオシド分子の代替分子として使用して、次の式VII:
【化28】
JP0005925383B2_000029t.gif
(ただし、式VII中、
Ra、R1、R2、R3は、上記式VIにおいて、上述した基を表し、
R4は、水素原子、又は Q1-O-CH2-基を表し、
R5は、-O-Q1基、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、
(ただし、R4が水素原子である場合には、R5は-O-Q1基を表し、
R4がQ1-O-CH2-基である場合には、R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表す)
R6は、-O-Q2基、-CH2-O-Q2基、又は-CH(CH3)-O-Q2基を表し、

1は、DMTr基を表し、
2は、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、次の式:
【化29】
JP0005925383B2_000030t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、又は次の式:
【化30】
JP0005925383B2_000031t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、を表す)
によって表される、核酸合成用の化合物を製造する方法。
(23)
次の式VII:
【化31】
JP0005925383B2_000032t.gif
(ただし、式VII中、
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、ホスホノ基、スルホ基、又は水素原子を表し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子を表し、
R3は、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、フッ化メチル基、C6~C12の単環式又は二環式の芳香族化合物の1価基、C6~C12の単環式又は二環式の複素環系芳香族化合物の1価基、又は、次の式:
【化32】
JP0005925383B2_000033t.gif
(ただし、上記式中、Ra、R1及びR2は、式VIIについて上述したRa、R1及びR2とは独立に、式VIIについて上述したRa、R1及びR2として挙げられた基から選択された基を表す)
で表される1価基を表わし、

R4は、水素原子、又は Q1-O-CH2-基を表し、
R5は、-O-Q1基、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、
(ただし、R4が水素原子である場合には、R5は-O-Q1基を表し、
R4がQ1-O-CH2-基である場合には、R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表す)
R6は、-O-Q2基、-CH2-O-Q2基、又は-CH(CH3)-O-Q2基を表し、
1は、DMTr基を表し、
2は、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、次の式:
【化33】
JP0005925383B2_000034t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、又は次の式:
【化34】
JP0005925383B2_000035t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、を表す)
によって表される、核酸合成用の化合物を使用して、次の式I:
【化35】
JP0005925383B2_000036t.gif
(ただし、式I中、
Ra、R1、R2、R3は、上記式VIIにおいて、上述した基を表し、
R4は、水素原子、又は Q1-O-CH2-基を表し、
R5は、-O-Q1基、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、
(ただし、R4が水素原子である場合には、R5は-O-Q1基を表し、
R4がQ1-O-CH2-基である場合には、R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表す)
R6は、-O-Q2基、-CH2-O-Q2基、又は-CH(CH3)-O-Q2基を表し、

1は、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸を表し、
2は、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸を表す)
によって表される、光反応性の化合物を製造する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、核酸の光反応技術に使用可能な、新規な光反応性架橋剤を提供する。これは、天然の糖構造も塩基構造も備えていない、新規な化学構造によるものである。本発明によれば、従来よりも簡便で高収率の合成によって、短時間で高い転化率を示す光反応性架橋剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は光架橋による光二量体の形成実験の手順と結果を示す図である。
【図2】図2は合成ステップ数と総収率を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
具体的な実施の形態をあげて、以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、以下にあげる具体的な実施他の形態に限定されるものではない。

【0015】
[化合物の構造]
本発明は、次の式I:
【化36】
JP0005925383B2_000037t.gif
によって表される、光反応性の化合物、にある。

【0016】
上記式Iにおいて、
Raは、シアノ基、アミド基(-CO-NH2)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ホスホノ基(-PO(OH)2)、スルホ基(-SO2(OH))、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2~C7、さらに好ましくはC2~C6、さらに好ましくはC2~C5、さらに好ましくはC2~C4、さらに好ましくはC2~C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。

【0017】
上記式Iにおいて、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2~C7、さらに好ましくはC2~C6、さらに好ましくはC2~C5、さらに好ましくはC2~C4、さらに好ましくはC2~C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。

【0018】
上記式Iにおいて、
R3は、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、フッ化メチル基、C6~C12の単環式又は二環式の芳香族化合物の1価基、C6~C12の単環式又は二環式の複素環系芳香族化合物の1価基、又は、次の式:
【化37】
JP0005925383B2_000038t.gif
(ただし、上記式中、Ra、R1及びR2は、式Iについて上述したRa、R1及びR2とは独立に、式Iについて上述したRa、R1及びR2として挙げられた基から選択された基を表す)
で表される1価基である。

【0019】
好適な実施の態様において、R3は、水素原子、水酸基、C1~C3のアルコキシ基、C1~C3のアルキルスルファニル基、ニトロ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、フェニル基、2-ナフチル基、2-インドリル基、ベンゾイミダゾール-2-イル基、又はベンゾチオフェン-2-イル基とすることができる。

【0020】
好適な実施の態様において、例えば、R3として、次に挙げる基を使用することができる。(ただし、波線は遊離原子価の位置を示している。)

【0021】
【化38】
JP0005925383B2_000039t.gif

【0022】
上記式Iにおいて、
R4は、水素原子、又は Q1-O-CH2-基を表し、
R5は、-O-Q1基、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、
(ただし、R4が水素原子である場合には、R5は-O-Q1基を表し、
R4がQ1-O-CH2-基である場合には、R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表す)
R6は、-O-Q2基、-CH2-O-Q2基、又は-CH(CH3)-O-Q2基を表わす。

【0023】
上記Q1は、水素原子、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、又はDMTr基を表し、
2は、水素原子、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、次の式:
【化39】
JP0005925383B2_000040t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、又は次の式:
【化40】
JP0005925383B2_000041t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、を表す。

【0024】
好適な実施の態様において、上記式IのR4をQ1-O-CH2-基、R5を水素原子、メチル基又はエチル基、R6を-O-Q2基とすることができる。この場合に、上記式Iで表される化合物は、次の式II:
【化41】
JP0005925383B2_000042t.gif
で表される化合物である。

【0025】
上記式II中の部分構造である次の式IIa:
【化42】
JP0005925383B2_000043t.gif
で表される骨格構造は、好ましくは、
次の式:
【化43】
JP0005925383B2_000044t.gif
で表されるD-トレオニノール構造、
次の式:
【化44】
JP0005925383B2_000045t.gif
で表されるL-トレオニノール構造、
又は、次の式:
【化45】
JP0005925383B2_000046t.gif
で表されるセリノール構造とすることができる。

【0026】
好適な実施の態様において、上記式IのR4を水素原子、R5を-O-Q1基、R6を-CH2-O-Q2基又は-CH(CH3)-O-Q2基(すなわち、R6を-CH(R7)-O-Q2基、ただしR7は水素原子又はメチル基)とすることができる。この場合に、上記式Iで表される化合物は、次の式III:
【化46】
JP0005925383B2_000047t.gif
で表される化合物である。

【0027】
上記式III中の部分構造である次の式IIIa:
【化47】
JP0005925383B2_000048t.gif
で表される骨格構造は、好ましくは、
次の式:
【化48】
JP0005925383B2_000049t.gif
で表される(R)-3-アミノ-1,2-プロパンジオール構造、
又は、次の式:
【化49】
JP0005925383B2_000050t.gif
で表される(S)-3-アミノ-1,2-プロパンジオール構造とすることができる。

【0028】
[修飾核酸類]
好適な実施の態様において、Q1を、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸として、Q2を、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸とすることができる。すなわち、上記式Iで表される化合物は、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログが配列中に取り込まれた核酸又はオリゴヌクレオチド(本発明に係る修飾核酸又は修飾オリゴヌクレオチド、本発明に係る修飾核酸類ということがある)とすることができる。また、本発明に係る修飾核酸類において、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログが配列中の末端に位置していてもよく、この場合にはQ1又はQ2のいずれかの側のみがQ1又はQ2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸となる。

【0029】
[ヌクレオシドアナログ]
好適な実施の態様において、Q1及びQ2を、水素原子とすることができる。すなわち、上記式Iで表される化合物は、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(本発明に係るヌクレオシドアナログということがある)とすることができる。

【0030】
[ヌクレオチドアナログ]
好適な実施の態様において、Q1を、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基とすることができ、Q2を、水素原子とすることができる。すなわち、上記式Iで表される化合物は、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログ分子(本発明に係るヌクレオチドアナログということがある)とすることができる。

【0031】
[修飾核酸合成モノマー]
好適な実施の態様において、Q1を、DMTr基とすることができ、Q2を、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、次の式:
【化50】
JP0005925383B2_000051t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、又は次の式:
【化51】
JP0005925383B2_000052t.gif
(ただし、上記式は、Pに遊離原子価を有する1価の基を表す)
によって表される基、
とすることができる。すなわち、上記式Iで表される化合物は、特徴的な構造を備えた光応答性修飾核酸合成用のモノマー(本発明に係る修飾核酸合成モノマーということがある)とすることができる。よく知られているように、このような構造のモノマーは、ホスホロアミダイト法、及びH-ホスホネート法によって使用可能な核酸合成試薬となる。

【0032】
このような修飾核酸合成モノマーとして、次のようなモノマーを例示することができる。

【0033】
【化52】
JP0005925383B2_000053t.gif

【0034】
[光架橋の形成]
本発明に係る修飾核酸類は、これを1本鎖核酸として使用すると、これと相補的な1本鎖核酸とハイブリダイズして二重らせんを形成することができる。二重らせんの形成にあたって、ビニルカルバゾール構造部分に対して、相補鎖中において塩基対を形成すべき位置にある核酸塩基については、特段の制約がなく、自由に選択できる。形成された二重らせんに光照射を行うと、二重らせんを形成する核酸鎖の間に、光反応によって架橋を形成することができる。この光架橋は、配列中でビニルカルバゾール構造部分が核酸塩基として位置する位置から配列中で1塩基分だけ5’末端側に位置する核酸塩基に対して、相補鎖中において塩基対を形成する位置にある核酸塩基と、ビニルカルバゾール構造との間に形成される。言い換えれば、この光架橋は、ビニルカルバゾール構造部分に対して、相補鎖中において塩基対を形成すべき位置にある核酸塩基から、配列中で1塩基分だけ3’末端側に位置する核酸塩基と、ビニルカルバゾール構造との間に形成される。

【0035】
本発明に係る光反応性の化合物のビニルカルバゾール構造が光架橋を形成可能である相手方の塩基は、ピリミジン環を有する塩基である。一方で、本発明に係る光反応性の人工核酸塩基は、プリン環を有する塩基とは光架橋を形成しない。すなわち、本発明に係る光架橋性の化合物は、天然の核酸塩基としては、シトシン、ウラシル、及びチミンに対して光架橋を形成し、一方で、グアニン及びアデニンに対しては光架橋を形成しないという、強い特異性を有している。

【0036】
本発明に係る光反応性の化合物は、光反応性の修飾核酸類(光架橋性修飾核酸類)として使用することによって、その修飾核酸類と相補的な塩基配列を有する配列とハイブリダイズさせて二重らせんを形成させることができるために、目的とする特定の配列に対してのみ光クロスリンク反応(光架橋反応)を行わせることができる。すなわち、本発明に係る光架橋剤化合物は、非常に高い配列選択性を、所望に応じて配列設計して、付与することができる。

【0037】
光架橋のために照射される光は、一般に350~380nmの範囲、好ましくは360~370nmの範囲、さらに好ましくは366nmの波長を含む光が好ましく、特に好ましくは、366nmの単波長のレーザー光である。

【0038】
光架橋した後に、さらに光照射によって光開裂をすることができる。すなわち、本発明に係る光反応性の化合物は、可逆的な光架橋を可能とするものであり、可逆的な光架橋剤として使用することができる。

【0039】
光開裂のために照射される光は、一般に330~370nmの範囲、好ましくは330~360nmの波長を含む光を使用することができる。また、好適な実施の態様において、366nmの波長を含む光、特に好ましくは、366nmの単波長のレーザー光を使用することができる。

【0040】
好適な実施の態様において、これらの光架橋及び光開裂の光反応は、350~370nmの範囲の波長を含む光の照射によって行うことができ、好ましくは366nmの単波長のレーザー光を使用して行うことができる。この範囲の波長の光を使用すれば、同一の光源によって光架橋及び光開裂の光反応のいずれをも行うことができ、2種の光源を用意する必要がない点で有利である。この範囲の波長の光を使用する場合には、温度条件によって、光架橋、及び光開裂のいずれの光反応が進行するかを制御することができる。光架橋反応を進行させるためには、一般に0~50℃、好ましくは0~40℃、さらに好ましくは0~30℃、さらに好ましくは0~20℃、さらに好ましくは0~10℃、さらに好ましくは0~5℃の範囲の温度、特に好ましくは0℃で光照射を行う。光開裂反応を進行させるためには、一般に60~100℃、好ましくは60~90℃、さらに好ましくは70~90℃の範囲の温度で光照射を行う。

【0041】
本発明による光架橋及び光開裂は、光反応を利用しているために、pH、温度、塩濃度などに特段の制約がなく、核酸類等の生体高分子が安定に存在可能なpH、温度、塩濃度とした溶液中で、光照射によって行うことができる。

【0042】
本発明による光架橋及び光開裂は、極めて迅速に進行し、例えば、光反応性の化合物として知られるソラレンであれば数時間を要する条件(350nm光照射)において、わずか1秒間(366nm光照射)で光反応が進行する。すなわち、本発明に係る光架橋剤を使用すれば、数秒間、例えば、1~9秒間、1~7秒間、1~5秒間、又は1~3秒間の時間の光照射によって、光反応を進行させて光架橋を形成させることができる。

【0043】
[糖構造を備えた従来型の光応答性人工ヌクレオチドとの対比]
本発明者は、光応答性人工ヌクレオチドとして、リボース又はデオキシリボースの構造を備えた人工ヌクレオチド構造を、長年にわたって研究してきた(特許文献1~4参照)。ところが、上述のように、本発明に係る化合物は、リボース及びデオキシリボースの構造を備えていないにもかかわらず、光応答性人工ヌクレオチドと同様に使用して、光架橋反応を進行させることができるものであった。つまり、本発明者による特許文献4(日本国特許第4940311号)で開示した優れた特性を、リボース及びデオキシリボースの構造を備えていないにもかかわらず、同様に発揮することができるものとなっていた。それどころか、本発明による化合物は、同一のビニルカルバゾール構造を備えた場合であっても、デオキシリボースの構造を備えた従来型の光応答性人工ヌクレオチド(光架橋剤)と比較して、より短い光照射時間で、より高い転化率(すなわち、光架橋の形成の割合)を示すという、優れた効果を奏するものとなっていた。

【0044】
[光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子の合成]
本発明に係る光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子は、後述するスキーム1(Scheme 1)に示す合成経路に沿って、合成することができる。
このスキーム1の合成経路は、次の式VIII:
【化53】
JP0005925383B2_000054t.gif
で表される修飾ビニルカルバゾール分子(VIII)から、次の式IV:
【化54】
JP0005925383B2_000055t.gif
で表されるカルボン酸を合成して、これを、次の式V:
【化55】
JP0005925383B2_000056t.gif
(ただし、式V中、
R4は、水素原子、又は Q1-O-CH2-基を表し、
R5は、-O-Q1基、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、
(ただし、R4が水素原子である場合には、R5は-O-Q1基を表し、
R4がQ1-O-CH2-基である場合には、R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表す)
R6は、-O-Q2基、-CH2-O-Q2基、又は-CH(CH3)-O-Q2基を表し、
1は、水素原子を表し、Q2は、水素原子を表す)
で表されるアミンと脱水縮合反応させることによって、次の式VI:
【化56】
JP0005925383B2_000057t.gif
(ただし、式VI中、R4、R5、R6は、上記式Vについて上述した通りの基を表す)
で表される光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子を得るというものである。

【0045】
上記の合成経路においては、得られる光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(VI)のなかの糖構造に対応するべき部分の骨格構造は、使用されるアミン(V)の構造をそのまま反映したものとなる。

【0046】
そこで、光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(VI)のなかの糖構造に対応するべき部分の骨格構造を、例えば、D-トレオニノール構造としたい場合には、アミン(V)として、D-トレオニノールを用いればよく、例えば、L-トレオニノール構造としたい場合には、アミン(V)として、L-トレオニノールを用いればよく、例えば、セリノール構造としたい場合には、アミン(V)として、セリノールを用いればよく、例えば、(R)-3-アミノ-1,2-プロパンジオール構造としたい場合には、アミン(V)として、(R)-3-アミノ-1,2-プロパンジオールを用いればよく、例えば、(S)-3-アミノ-1,2-プロパンジオール構造としたい場合には、アミン(V)として、(S)-3-アミノ-1,2-プロパンジオールを用いればよい。

【0047】
上記の合成経路によれば、修飾ビニルカルバゾール分子(VIII)から光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(VI)を得るまでのステップは少なく、簡便であり、総収率を非常に高く維持できるという点で、優れたものとなっている。さらに、合成経路中には、塩化水素による活性化のステップなど、操作に注意と熟練を要するステップを含んでいないという点で、有利なものとなっている。これに対して、従来型の光反応性の修飾ヌクレオシド分子の合成においては、その構造中にデオキシリボースまたはリボースを備えているために、上記本発明の合成経路と比較すると、合成経路中のステップは多く、複雑であり、総収率は、上記本発明の合成経路による総収率の数分の一程度であり、低い。また、従来型の光反応性の修飾ヌクレオシド分子の合成においては、その構造中にデオキシリボースまたはリボースを備えているために、糖の水酸基の保護と活性化のために、塩化水素による活性化のステップなど、操作に注意と熟練を要するステップを含むものとなっている。したがって、本発明に係る化合物は、上記合成の簡便さと総収率の高さの点でも、優れたものである。また、本発明は、上記の優れた合成方法(製造方法)にもある。

【0048】
[修飾核酸合成モノマー及び修飾核酸類の合成]
上記の合成経路によって得られる光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(VI)を用いて、後述するスキーム1に記載の手法、あるいは当業者に公知の手法を使用して、本発明に係る修飾核酸合成モノマーを得ることができる。本発明に係る修飾核酸合成モノマーの構造は上述した通りであり、これを、ホスホロアミダイト法、及びH-ホスホネート法等の公知の手法によって核酸合成試薬として使用すれば、光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(VI)が配列中に取り込まれた核酸又はオリゴヌクレオチド(本発明に係る修飾核酸類)を得ることができる。このように、本発明に係る修飾核酸合成モノマーは、ホスホロアミダイト法、及びH-ホスホネート法等の公知の手法において核酸合成試薬として使用できる点で、優れたものである。
【実施例】
【0049】
以下に実施例をあげて、本発明を詳細に説明する。本発明は、以下に例示する実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
[製造例1]
[ヌクレオシドアナログ(光反応性素子)の合成]
次のスキーム1に示す合成経路に沿って、光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(ヌクレオシドアナログ、あるいは光反応性素子ということがある)、さらに修飾核酸合成モノマーの合成を行った。
【実施例】
【0051】
【化57】
JP0005925383B2_000058t.gif
【実施例】
【0052】
(1)化合物2の合成
1 Lの3つ口フラスコ中でCarbazole(化合物1、4.0 g、23.6 mmol)をエタノール(800 mL)に溶解しヨウ素(3.0 g)、NaIO4 (1.28 g)をフラスコに加え、濃硫酸エタノール溶液(2.5 mL/100 mL)添加後、60℃で2時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル、4:1)で反応の終了を確認後、水酸化ナトリウムのエタノール溶液で中和し、溶媒を除去した。残渣をクロロホルムに溶解し水・飽和炭酸水素ナトリウム溶液・飽和食塩水で洗浄後、エバポレータにより溶媒を除去した。残渣をエタノールに溶解し、再結晶により化合物2を得た。(収量:3.4 g、収率:49%)
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.40 (s, 1H, NH), 8.51 (d, 1H, J=1.7 Hz, H-4), 8.14 (d, 1H, J=7.8 Hz, H-5), 7.62 (dd, 1H, J=8.5, 1.7 Hz, H-2), 7.51 (d, 1H, J=8.1 Hz, H-8), 7.40 (m, 1H, H-7), 7.36 (d, 1H, J=8.5 Hz, H-1), 7.19 (m,1H, H-6)
【実施例】
【0053】
(2)化合物3の合成
化合物2(3.4 g、12 mmol)のDMF溶液(6 mL)に酢酸パラジウム(269 mg、1.2 mmol)、アクリロニトリル(2.0 mL、31 mmol)、トリブチルアミン(2.9 mL、12 mmol)を加え、マイクロウェーブ照射下(60 W)、160°で10分撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル、4:1)で反応の終了を確認後、クロロホルムに溶解し水・飽和炭酸水素ナトリウム溶液・飽和食塩水で洗浄後、エバポレータにより溶媒を除去した。硫酸ナトリウムで乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)にて精製を行い、化合物3を得た。(収量:2.2 g、収率:83%)
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.60 (s, 1H, NH), 8.44 (s, 1H, H-4), 8.12 (d, 1H, J=7.6 Hz, H-5), 7.77 (d, 1H, J=16.6 Hz, vinyl), 7.69 (dd, 1H, J=14.3, 1.7 Hz, H-8), 7.53 (m, 1H, H-1), 7.51 (d, 1H, J=3.5 Hz, H-2), 7.45 (m,1H, H-7), 7.24 (m, 1H, H-6), 6.38 (d, 1H, J=16.6 Hz, vinyl)
【実施例】
【0054】
(3)化合物4の合成
化合物3(0.6 g、2.8 mmol)、KOH(0.46 g、8.3 mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(28 mg、0.09 mmol)をアセトン(15 mL)に溶解し、85℃で30 分間撹拌した。Ethyl bromoacetate (0.8 mL、3.3 mmol)を反応溶液に滴下した後、12時間還流した。TLC(クロロホルム:メタノール、9:1)で原料の消失を確認した後、溶媒を除去、クロロホルムに再溶解後、水で洗浄した。有機層をエバポレータにより濃縮しシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により精製を行った。(収量:0.72 g、2.4 mmol、収率:85 %)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.03-7.03 (m, 8H, ArH, ArCH), 5.87 (d, 0.85H, trans-CNCH), 5.35 (d, 1H, 0.15H, cis-CNCH), 5.00 (s, 2H, CH2CO), 4.22 (q, 2H, CH3CH2), 1.24 (t, 3H, CH3). MALDI-TOF-MS: calcd.; 305.12 ([(M+H)+]), found; 304.68.
【実施例】
【0055】
(4)化合物5の合成
化合物4(0.12 g, 0.41 mmol)をクロロホルム(6 mL)に溶解し、メタノール(7 mL)、水(3 mL)を加え撹拌した。さらに水酸化ナトリウム(0.39 g、1 mmol)を加え、室温で4時間撹拌を行った。TLCで原料の消失を確認した後、反応混合物に塩酸のメタノール溶液を加え、pHを2に調整した。濃縮後、酢酸エチルに溶解させ、水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール、7:3)により精製した。(収量:0.1 g、0.34 mmol、収率:92%)
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.4 (s, 1H, OH), 8.08-7.26 (m, 8H, Ar-H, ArCH), 6.4 (d, 0.92H, trans-CNCH), 5.7 (d, 0.08H, cis-CNCH), 4.8 (s, 2H, CH2CO).
【実施例】
【0056】
(5)化合物6の合成
化合物5(0.75 g、2.7 mmol)、WSC(0.5 g、2.7 mmol)、HOBt(0.35 g、2.7 mmol)のDMF溶液(20 mL)にD-トレオニノール(0.27 g、2.7 mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。TLC(クロロホルム:メタノール、9:1)で原料の消失を確認した後、反応液をクロロホルムで希釈した。この溶液を水および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール、9:1)により精製した。(収量:0.92 g、2.6 mmol、収率:94%)
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.5 (s, 1H, NHCO), 8.0-7.2 (m, 8H, Ar-H, ArCH), 6.4 (d, 0.78H, trans-CNCH), 5.7 (d, 0.21H, cis-CNCH), 5.1 (t, 2H, CH2CO), 4.7 (m, 2H, CH2OH), 3.9 (m, 1H, NCH), 3.6 (q, 1H, CH2OH), 3.5 (m, 1H, CHOH), 3.4 (m, 1H, CHOH), 1.0 (d, 3H, CH3). MALDI-TOF-MS: calcd.; 363.15 [(M+H)+], found; 364.71.
【実施例】
【0057】
(6)化合物7の合成
100 mL二口ナスフラスコに化合物6(0.95 g, 2.4 mmol)を加え窒素置換した後、DMTrCl (0.90 g, 2.7 mmol)、DMAP (60 mg, 0.49 mmol)のピリジン溶液(20 mL)を滴下し室温で一晩撹拌した。反応溶液にメタノールを加えた後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え溶液をクロロホルムで抽出後、有機層をエバポレートし濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.2% trietylamine, 1% MeOH in CHCl3)により目的物を精製した。(収量:0.86 g、1.3 mmol、収率:54%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.1 (s, 1H, NHCO), 7.5-6.3 (m, 21H, Ar-H, ArCH), 5.8 (d, 0.9H, trans-CNCH), 5.3 (d, 0.1H, cis-CNCH), 4.9 (t, 2H, CH2CO), 3.9 (m, 1H, CHOH), 3.8 (m, 1H, NCH), 3.74 (s, 6H, OCH3), 3.1-3.2 (m, 2H, CH2O), 2.7 (m, 1H, CHOH), 0.9 (d, 3H, CH3).
【実施例】
【0058】
(7)化合物8の合成
ゴムシールボトル(25 mL)に化合物7(0.37 g, 0.55 mmol)の無水アセトニトリル溶液を加え、密栓後、2回共沸させた。その後容器内を窒素置換し、無水アセトニトリル(5.0 mL)、2-cyanoethyl-N,N,N’,N’-tetraisopropylphosphordiamidite (0.17 g, 0.55 mmol)、0.25 M BTT in MeCN(2.2 mL, 0.55 mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。TLCにより原料の消失を確認後、反応混合物を脱酢酸処理した酢酸エチルで希釈し、炭酸水素ナトリウム水溶液と塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過、溶媒の除去を行い、化合物8を得た。(収量:0.48 g、0.52 mmol、収率:94 %)
【実施例】
【0059】
[製造例2]
[光反応性素子を含むオリゴDNAの合成]
一般的なシアノエチルホスホロアミダイト法に従い、DNA自動合成機により光反応性素子(核酸光反応性素子ということがある)を含むオリゴDNAを合成した。化合物8の固相縮合反応のみ反応時間を999秒に設定した。トリチリルモニターによる化合物8のカップリング収率は97%以上であった。28%アンモニア水溶液による固相からの切出し・脱保護を行った後、逆相HPLCによる精製を行い目的の核酸光反応性素子を含むオリゴDNA(5’-TGCAXCCGT-3’、Xは核酸光反応性素子)を得た。オリゴDNAの同定はMALDI-TOF-MS解析により行った。([(M+H)+]; Calcd. 2809.55, Found 2809.35)
【実施例】
【0060】
[製造例3]
[従来型の光反応性修飾ヌクレオシドを含むオリゴDNAの合成]
対照実験のために、核酸塩基の塩基部分に代えてビニルカルバゾール骨格構造を備えて、デオキシリボース部分にはデオキシリボースを備えた、従来型の光反応性修飾ヌクレオシドとして、次式:
【化58】
JP0005925383B2_000059t.gif
の3-シアノビニルカルバゾール-1’-β-デオキシリボシド (CNVK)を合成した。この化合物から、次式:
【化59】
JP0005925383B2_000060t.gif
の核酸合成試薬を合成した。これらの合成は、特許文献4(日本国特許第4940311号)の実施例のスキーム1の手順に沿って行った。その後、上記と同様に、一般的なシアノエチルホスホロアミダイト法に従い、DNA自動合成機により、従来型の光反応性修飾ヌクレオシドを含むオリゴDNA(5’-TGCAXCCGT-3’、XはCNVK)を合成した。
【実施例】
【0061】
[光反応性の評価]
製造例2で得られた光反応性素子を含むオリゴDNAと、相補的オリゴDNA(5’-ACGGGTGCA-3’)の等量混合液(5 μM in 50 mM Na-Cacodylate buffer (pH 7.4), 100 mM NaCl)に内部標準としてデオキシウリジン(25 μM)を添加し、0℃にて光照射(366 nm、1,600 mW/cm2)を行った。この溶液をUPLC(溶離液:アセトニトリル/50 mMギ酸アンモニウム、1~20% アセトニトリル/10 min、流速:0.2 mL/min)により分析することで、光反応性を評価した。
【実施例】
【0062】
図1の(a)は、この操作の内容を示す説明図である。図中の修飾ODNには、配列中のXの位置に、本発明に係るヌクレオシドアナログ(光反応性素子)が、改良型光反応性素子として導入されている(製造例2)。また、比較対象実験として、製造例3で得られた、従来型の光反応性修飾ヌクレオシドを含むオリゴDNAを使用した。この場合には、配列中のXの位置に、CNVKが導入されている。
【実施例】
【0063】
図1の(b)は、製造例2のオリゴDNAと相補的オリゴDNAを使用して、光照射した後に、UPLCによって分析した結果を示す図である。縦軸方向に並べられたチャートはそれぞれ光照射時間(0.0秒、0.2秒、0.5秒、1.0秒、3.0秒、5.0秒)に対応しており、横軸は保持時間(分)を示す。光照射前(0.0秒)の時点で存在していた2種類の1本鎖ODN(単量体)が、光照射によって減少し、同時に1本鎖ODNの光2量体が形成されて、光照射によって増大している。図1の(c)は、この変化をグラフにしたものである。図1の(c)の横軸は光照射時間(秒)、縦軸は転化率(%)である。白抜きのマル(○)は従来型を表し、黒塗りの四角(■)は改良型を表す。この転化率、すなわち単量体から二量体へと変化した割合は、完全に二量体と変化した場合を転化率100%とした。本発明に係るヌクレオシドアナログ、すなわち改良型光反応性素子は、0.2秒後に約57%、0.5秒後に約83%、1.0秒後に96%という、高い転化率を示した。一方、比較例である従来型の光反応性修飾ヌクレオシドでは、0.2秒後に約35%、0.5秒後に約71%、1.0秒後に90%という、転化率を示した。この従来型による転化率であっても、光化学反応であることを反映して十分に高い転化率が短時間で達成されているが、改良型による転化率は、従来型と比較して、例えば0.2秒で約1.6倍という、高い転化率を示すものとなっていた。
【実施例】
【0064】
[合成収率の比較]
本発明に係るヌクレオシドアナログ(改良型)は、上述したスキーム1で示した通りの経路で合成可能であり、これは入手容易な出発材料から、5ステップでの合成となり、総収率は30%であった。一方、従来型の光反応性修飾ヌクレオシドは、上述した通りの経路で合成可能であり、これは入手容易な出発材料から、7ステップでの合成となり、総収率は17%であった。図2は、これらの合成のステップと総収率を対比させた説明図である。このように、本発明に係るヌクレオシドアナログの合成は、糖構造を保持した従来型の光反応性修飾ヌクレオシドの合成と比較して、少ない合成ステップ数でよく、約2.3倍という高い総収率を達成できるものであった。さらに、本発明に係るヌクレオシドアナログの合成は、糖構造を保持した従来型の光反応性修飾ヌクレオシドの合成において必要となる、塩化水素による活性化のステップなど、操作に注意と熟練を要するステップを合成経路中に含んでいないという点で、有利なものとなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、核酸の光反応技術に使用可能な、新規な光反応性架橋剤を提供する。本発明は産業上有用な発明である。
図面
【図1】
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【図2】
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