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明細書 :電波測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6029079号 (P6029079)
登録日 平成28年10月28日(2016.10.28)
発行日 平成28年11月24日(2016.11.24)
発明の名称または考案の名称 電波測定装置
国際特許分類 G01R  29/08        (2006.01)
G01R  29/10        (2006.01)
G01S  13/00        (2006.01)
H01Q   1/42        (2006.01)
H01P   1/08        (2006.01)
H01Q  15/14        (2006.01)
FI G01R 29/08 B
G01R 29/10 E
G01R 29/08 Z
G01S 13/00
H01Q 1/42
H01P 1/08
H01Q 15/14 B
請求項の数または発明の数 7
全頁数 14
出願番号 特願2015-521411 (P2015-521411)
出願日 平成26年5月29日(2014.5.29)
国際出願番号 PCT/JP2014/064208
国際公開番号 WO2014/196439
国際公開日 平成26年12月11日(2014.12.11)
優先権出願番号 2013116571
優先日 平成25年6月3日(2013.6.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年12月10日(2015.12.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
発明者または考案者 【氏名】田島 治
【氏名】小栗 秀悟
個別代理人の代理人 【識別番号】100093816、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 邦雄
審査官 【審査官】菅藤 政明
参考文献・文献 特開2003-23362(JP,A)
特開2008-145289(JP,A)
特開2013-96968(JP,A)
調査した分野 G01R 29/08
G01R 29/10
G01S 13/00
H01P 1/08
H01Q 1/42
H01Q 15/14
特許請求の範囲 【請求項1】
電波を入れる窓と前記窓の下方に載置される放射遮フィルタと前記放射遮フィルタの下方に載置される電波透過性材料とを備える冷却することができる真空容器(第一放射シールド)と、前記第一放射シールドの中にあって前記電波透過性材料の下方に置かれた電波検出器と、を備える電波測定装置であって、
前記窓を通して入射された電波に含まれる目的とする電波が前記放射遮フィルタにより透過させられ、続いて、該透過電波に含まれる目的としない電磁波が前記電波透過性材料により前記放射遮フィルタに向けて反射させられ、前記放射遮フィルタに熱として集熱され、該放射遮フィルタの熱伝導により系外に排熱され、
そのことにより、前記電波透過性材料を透過した電波が前記電波検出器により高感度測定されることを特徴とする電波測定装置。
【請求項2】
前記第一放射シールドと、前記第一放射シールドの中に、前記第一放射シールドと同様の構造の大きさが異なる放射シールドが入れ子にされ、最後の放射シールドの中に前記電波検出器が置かれている、電波測定装置であって、
前記窓を通して入射された電波に含まれる目的とする電波が前記放射シールド群の各放射遮フィルタにより透過させられ、続いて、該透過電波に含まれる目的としない電磁波が前記放射シールド群の各電波透過性材料により前記放射遮フィルタに向けて反射させられ、前記放射シールド群の各放射遮フィルタに熱として集熱され、各放射遮フィルタの熱伝導により系外に排熱され、
そのことにより、前記放射シールド群の各電波透過性材料を透過した電波が前記最後の放射シールドに置かれた電波検出器により高感度測定されることを特徴とする請求項1に記載の電波測定装置。
【請求項3】
天体望遠鏡用の電波測定装置に用いられる請求項1又は2に記載の電波測定装置。
【請求項4】
放射計用の電波測定装置に用いられる請求項1又は2に記載の電波測定装置。
【請求項5】
気象衛星用の電波測定装置に用いられる請求項1又は2に記載の電波測定装置。
【請求項6】
探査衛星用の電波測定装置に用いられる請求項1又は2に記載の電波測定装置。
【請求項7】
レーダー用の電波測定装置に用いられる請求項1又は2に記載の電波測定装置。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電波測定装置に関する。さらに詳しくは、極低温下で高感度の電波測定を可能にする大口径の電波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
45mm電波望遠鏡に使用されている電波検出器は、20K程度に冷却された真空ジュワーの中に置かれることが知られている。
【0003】
特許文献1は、熱赤外線を効率よく吸収し、熱伝導率が高く、サブミリ波領域で透明度が高く、反射ロスが少ないという特性と共に、少なくとも170mmという大型の直径を有する冷却用窓材、同窓材を備える天体観測装置用の極低温冷却装置、並びに、テラヘルツ波観測を利用した検査機器の構成を開示している。前記窓材としては、単結晶サファイア基板を母材とし、カット面をC面として形成すると共に、酸化珪素(SiOx)の厚膜の反射防止膜を前記サファイア基板の表面に形成した冷却用窓材14を冷却容器11の電波導入窓13に備え付けた構造を開示している。しかし、この方法は外断熱には有効であるが、冷却用窓材を通過する電磁波が冷却容器の中で放射する熱の排熱手段については何ら記載も示唆もない。
【0004】
特許文献2には魔法瓶構造の真空容器の中に被試験体を置き、真空容器を極低温に冷却するシステムが開示されている。しかし、この方法は外断熱には有効であるが、真空容器の中で放射される熱の排熱手段については何ら記載も示唆もない。
【0005】
特許文献3には入れ子の真空ジュワー、各ジュワーの壁表面に多層の輻射シールド板が設けられ、最内部のジュワーに冷媒が充填され、その冷媒の中に超伝導巻線が置かれている極低温容器が開示されている。しかし、この方法は外断熱には有効であるが、冷却容器の中で放射される熱の排熱手段については何ら記載も示唆もない。
【0006】
天体観測のための電波を入れる窓にフィルタを設けることが一般に実施されている。フィルタとしては、紫外フィルタ、可視光フィルタ、赤外フィルタ、等の光学ガラスフィルタやプラスチックフィルタが使用されている。
【0007】
フィルタの吸収熱を冷凍機等により排熱することが行われている。大口径の電波検出器に使用した場合にはフィルタの冷却が冷凍機の負荷となるという問題がある。光学ガラスフィルタ及びプラスチックフィルタは、屈折率が大きく電波の一部を反射させる性質があるので、フィルタを厚くするほど電波の透過が少なくなる。そのため、紫外線、可視光線、赤外線、遠赤外線等の電磁波を或る程度、窓のフィルタを通過させている。光学ガラスフィルタ及びプラスチックフィルタは反射防止加工を必要とし、反射防止加工は高度な技術を必要としている。
【0008】
電波測定器の感度は、電波入射窓の開口面積に比例して向上するのであるが、反面、窓の大口径化は侵入熱の増大を招くので、窓の大口径化は非常に困難である。
【0009】
電波検出感度を高めるためには電波の入出が行われる真空容器の窓の大口径化が非常に有効である。そして、真空容器内の排熱には高い電波透過特性及び高い断熱特性を有する材料を真空容器内に備えることが望ましいものと考えられるが、このような工夫は、これまでほとんど報告されていない。
【0010】
前記のように電波検出器が真空低温容器に置かれた電波測定装置は、断熱材により低温容器の低温が維持されるのであるが、断熱原理は、一般的な冷凍機で使用される真空多層断熱材(MLI:multi-layer insulation)の原理と同様であるので、すなわち、放射平衡を利用した断熱原理であるので、低温容器を包むように低温容器の壁に沿ってMLIが設けられていた。しかし、この方法では、真空低温容器の中で放射される熱の排熱が十分に行われないので、極低温に達することが困難であるという問題がある。しかし、これを解決するための有効な手段はこれまで報告されていない。
【0011】
電波測定装置は、例えば、放射計用の電波測定装置として用いられている。放射計は、例えば、特許文献4に開示されている。
【0012】
特許文献4は電波検出を室温下で行うことを開示しているが、電波検出器を低温下に置くことについては記載も示唆もしていない。温度較正のために黒体を液体窒素中に浸漬する冷却手段が開示されているにすぎない。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特開2006-211626号公報
【特許文献2】特許3833671
【特許文献3】特開昭60-163475号公報
【特許文献4】EP-B1-00667518
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記の説明のように、電波測定装置は、例えば、天体望遠鏡用の電波測定装置、放射計用の電波測定装置、気象衛星用の電波測定装置、探査衛星用の電波測定装置、レーダー用の電波測定装置、等として利用されている。これらの電波測定装置は、天体、空、物体、物質などの測定対象が放射する電波の強度測定に基づいて測定対象の温度を求めている。電波測定の高感度化は、あらゆる電波測定装置に求められている。例えば、天体望遠鏡による宇宙背景放射の高感度測定は、宇宙の起源の解明に貢献する。放射計による高感度の電波測定は、自然災害の迅速な予知と防災に貢献する。気象衛星による高感度の電波測定は、気象変化の迅速な予知と自然災害防止に貢献する。探査衛星による高感度の電波測定は、例えば埋蔵資源の新発見に貢献する。レーダーによる高感度の電波測定は、動体追跡の高速化に貢献する、等である。
【0015】
電波測定装置の窓を通して電波検出器が置かれた容器に入ってくる電波は、目的とする電波の他に目的としない電磁波を含んでいる。自然界の電磁波は、電波法で定められる3THz以下の電波の他にガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、遠赤外線が混在する。本発明にとって、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、遠赤外線は目的としない電磁波であり、目的とする電波の測定にとってノイズである。したがって、目的とする電波を高感度で測定するには目的としない電磁波を電波測定器の手前で除去する必要がある。目的としない電磁波のうち紫外線、可視光線、赤外線、及び遠赤外線は10-2eV以上の物質に吸収されやすい熱放射源であり、測定系外に排熱しない限り大きなノイズである。一方、電波は10-2eV以下の小さなエネルギーであるので、電波測定にとって前記電磁波ノイズのカットは必須である。したがって、理想的な電波測定は、目的としない電磁波が完全にカットされた目的とする電波だけを絶対零度下に置かれた電波検出器により測定することである。しかし、前記の説明のように、従来の電波測定は、真空容器内又は低温容器内に単に電波検出器を置くだけの装備を用いて、低温下での電波測定を行っていた。そのため、低温下での電波測定は電波検出器自身の放射熱を冷却源に移動させる効果はあるものの、電波に含まれる熱放射源としての電磁波は除去されていないので、電磁波の熱放射の影響のために、電波検出器による高感度測定が困難であった。
【0016】
以上の事情に鑑み、本発明の目的は、電波を従来よりも10倍以上の高感度で測定することを可能にする電波測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、真空容器に入る電波のうち目的とする電波を透過させ、透過電波に含まれる目的としない電磁波を反射させ、その反射を熱として集めて効率的に排熱するという新しい手段(電磁波真空反射断熱法と命名)を見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、
1.
電波を入れる窓と前記窓の下方に載置される放射遮フィルタと前記放射遮フィルタの下方に載置される電波透過性材料とを備える冷却することができる真空容器(第一放射シールド)と、前記第一放射シールドの中にあって前記電波透過性材料の下方に置かれた電波検出器と、を備える電波測定装置であって、
前記窓を通して入射された電波に含まれる目的とする電波が前記放射遮フィルタにより透過させられ、続いて、該透過電波に含まれる目的としない電磁波が前記電波透過性材料により前記放射遮フィルタに向けて反射させられ、前記放射遮フィルタに熱として集熱され、該放射遮フィルタの熱伝導により系外に排熱され、
そのことにより、前記電波透過性材料を透過した電波が前記電波検出器により高感度測定されることを特徴とする電波測定装置の構成とした。
2.
前記第一放射シールドと、前記第一放射シールドの中に、前記第一放射シールドと同様の構造の大きさが異なる放射シールドが入れ子にされ、最後の放射シールドの中に前記電波検出器が置かれている、電波測定装置であって、
前記窓を通して入射された電波に含まれる目的とする電波が前記放射シールド群の各放射遮フィルタにより透過させられ、続いて、該透過電波に含まれる目的としない電磁波が前記放射シールド群の各電波透過性材料により前記放射遮フィルタに向けて反射させられ、前記放射シールド群の各放射遮フィルタに熱として集熱され、各放射遮フィルタの熱伝導により系外に排熱され、
そのことにより、前記放射シールド群の各電波透過性材料を透過した電波が前記最後の放射シールドに置かれた電波検出器により高感度測定されることを特徴とする前記1に記載の電波測定装置の構成とした。
3.
天体望遠鏡用の電波測定装置に用いられる前記1又は2に記載の電波測定装置の構成とした。
4.
放射計用の電波測定装置に用いられる前記1又は2に記載の電波測定装置の構成とした。
5.
気象衛星用の電波測定装置に用いられる前記1又は2に記載の電波測定装置の構成とした。
6.
探査衛星用の電波測定装置に用いられる前記1又は2に記載の電波測定装置の構成とした。
7.
レーダー用の電波測定装置に用いられる前記1又は2に記載の電波測定装置の構成とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記構成であるので、以下の効果を発揮する。すなわち、
1.本発明は、冷却することができる真空容器内で、目的とする電波が放射遮フィルタを透過させられ、透過電波に含まれる目的としない電磁波が前記放射遮フィルタの下方に載置された電波透過性材料により前記放射遮フィルタに向けて反射させられ、該放射遮フィルタに熱として集熱され、該放射遮フィルタの熱伝導により系外に排熱することができるので、効率的に真空容器内の温度を極低温に到達させることができる。その結果、冷却負荷を従来の1/10以下に低減させることが可能であり、大口径の電波測定を高感度で行うことが可能である。
2.前記電波透過性材料として紫外線、可視光、赤外線および遠赤外線の反射が大きく且つ断熱性の高い電波透過性材料を用いることができるので、前記熱放射性の電磁波によるノイズを低減させると共に、真空容器内の温度を極低温に維持できる。その結果、従来よりも10倍以上の高感度測定を可能にする。
3.本発明で用いられる電波透過性材料としては、電波透過性材料を2枚以上積層させた材料であるのが好ましい。
4.前記電波透過性材料が有する反射性能の指標としての、反射させる電磁波を熱換算した時の単位時間当たりの熱量Hrは、通常、1MJ/m以上である。ここで、mは、電波透過性材料の単位平面積である。
5.前記電波透過性材料の電磁波反射性についての他の指標として、目的とする周波数帯域の電波の透過率及び目的としない周波数帯域の電磁波の透過率を与えることができる。例えば、電波望遠鏡、放射計、気象衛星、探査衛星、レーダーの電波測定のためには、周波数帯域の400GHz以下の電波の透過率が90%以上であり、1THz以上の電磁波の透過率が95%以下である。
6.前記電波透過性材料の電磁波反射性は、前記4又は前記5のうちどちらかを満たすものであればよい。
7.前記電波透過性材料としては、発泡樹脂材料が好ましい。発泡樹脂材料は、目的とする電波を透過させる高い電波透過性と目的としない電磁波を反射させる性質を有するので前記窓を大口径化しても冷凍機に新たな負荷を与えることがない。
8.本発明は、電波望遠鏡用の電波測定装置、放射計用の電波測定装置、気象衛星用の電波測定装置、探査衛星用の電波測定装置、レーダー用の電波測定装置、等の多くの電波測定装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】請求項1に従う電波測定装置を説明する概略図である。
【図2】請求項2に従う電波測定装置を説明する概略図である。
【図3】本発明電波測定装置を説明する写図である。写真(A)は、本発明電波測定装置の全景写図である。写真(B)は、発泡ポリスチレン樹脂シートを積層させたものの写図である。
【図4】放射遮フィルタと電波透過性材料の配置及びこの配置により行われる熱放射を説明する概略図である。
【図5】冷却試験によって得られる実験結果を説明するグラフ及び表である。グラフAは、第三放射シールド内の電波透過性材料の下面の中央部と端部の温度差を示す。グラフBは、第三シールド内の電波透過性材料の積層枚数と入熱量(W)の関係を示す。RT-MLIは、電波透過性材料の一つ(radio-transparent multi-layer insulator)である。
【図6】冷却試験によって得られる実験結果を説明するグラフである。グラフCは、電波透過性材料の積層枚数と電波透過率の関係を示す。
【図7】表1は、第一放射シールド内の電波透過性材料として発泡ポリスチレン樹脂(商品名:スタイロフォーム、ダウケミカル社登録商標)のシート(厚み3mm)を12枚積層し、第二放射シールド内に前記と同じ材料を5枚積層した時の第三放射シールド内の電波検出器表面の温度を示す表である。比較のために、ファーストステージGM冷凍機の温度、及びセカンドステージGM冷凍機の温度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、前記「電磁波真空反射断熱法」という新しい技術思想に基づく。「電磁波真空反射断熱法」とは、真空の空間に入射する電磁波に含まれる電波が真空中を通過するのを遮蔽することなく、前記電磁波に含まれる熱放射性の電磁波がその通過の過程で電波透過性材料の介在により電磁波の進行方向に対して逆向きに反射させられることにより断熱する(熱の侵入を遮断する)、ことをいう。本発明は、従来のように断熱材が吸収する熱を直接的に冷却排熱することではない。本発明は、熱の積極的な冷却を必要としない。本発明における冷却は、真空容器を所定の温度に冷却することで足りる。真空容器を所定の温度にまで冷却するのに要する時間は、従来よりも大幅に短縮できる。

【0022】
前記窓とは、前記真空容器に設けられた電磁波の入出のための開口部のことである。窓は、目的とする電波を透過させ、真空圧に耐える材料であれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン樹脂材料、ポリプロピレン樹脂材料、ポリスチレン樹脂材料、ポリエチレンテレフタレート樹脂材料、ポリテトラフルオロエチレン樹脂材料、アクリル樹脂材料、ポリカーボネート樹脂材料及びこれらの発泡樹脂材料が挙げられる。

【0023】
前記電磁波とは、電波法で定められる3THz以下の電波と、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、遠赤外線等が混在する電磁波のことである。

【0024】
前記電波とは、電波法で定められる3THz以下の電波のことである。本発明は、目的に応じて3THz以下の電波のうち特定の振動数領域の電波を透過させることができる。例えば、電波望遠鏡用、放射計用、気象観測衛星用、探査衛星用、レーダー用の電波測定のためには400GHz以下の電波を90%以上の透過率で透過させることができる。

【0025】
前記反射は、反射方向への熱放射及びミラー的反射の両方の寄与を含む。反射の程度は、電波透過性材料に依存する。

【0026】
前記電波透過性材料による電磁波の反射量は、電波透過性材料の枚数(N)が多いほど大であり、熱換算量qの入射電磁波がN枚の電波透過性材料を通過した時の電磁波の熱換算量qN+1は、qN+1≦q/N+1である。

【0027】
前記放射遮フィルタとは、電波に含まれる電磁波放射を遮蔽し、電波を透過させるためのフィルタのことである。この放射遮フィルタは、目的とする電波を透過させることができる。放射遮フィルタとして、目的とする電波を透過させるのに適したフィルタを適宜選択できる。例えば、電波法で定められる3THz以下の電波を透過させるには、プラスチック材料が適している。プラスチック材料には、発泡樹脂材料を用いることもできる。プラスチック材料は、金属メッシュを挟んでもよい。前記発泡樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。前記窓に発泡樹脂の放射遮フィルタを挿入しても良い。また、前記窓の直下に前記電波透過性材料を載置することもできる。こうすることにより、前記窓の結露を抑制する、二次的な効果が生じる。

【0028】
前記電波透過性材料とは、放射遮フィルタを通過する電波に含まれる電磁波を遮蔽し、電波を透過させるための材料のことである。電波透過性材料は、目的としない電磁波を反射させ、目的とする電波を透過させることができる。電波透過性材料としては、目的としない電磁波を反射させ目的とする電波を透過させるのに適した材料を適宜選択できる。

【0029】
前記放射遮フィルタの単位時間当たりの熱伝導量Htと前記電波透過性材料により反射される電磁波の1時間の熱換算放射量Hrは、通常、Ht≧Hrになるように調節されている。Hrは、通常、1MJ/m以上である。mは、放射遮フィルタ及び電波透過性材料の単位平面積である。このHrは、1時間の日射量を参考にしている。日本の1時間の日射量は1MJ/m~4MJ/mである。

【0030】
前記電波透過性材料の電磁波反射性についての他の指標としては、目的とする周波数帯域の電波の透過率及び目的としない周波数帯域の電磁波の透過率を与えることができる。例えば、電波望遠鏡、放射計、気象衛星、探査衛星、レーダーの電波測定のためには、周波数帯域の400GHz以下の電波の透過率が90%以上であり、1THz以上の電磁波の透過率が95%以下である。

【0031】
前記電波透過性材料は、電波透過性材料を2枚以上積層させたものが好ましい。積層することで隙間が形成され、一層、断熱効果が向上し、空気と同程度の屈折率であるので、反射防止加工が必要ない。電波透過性材料の積層体は、冷却負荷の大きな増大を招かないので、窓を大口径化しても冷却負荷はあまり大きくならない。

【0032】
前記電波透過性材料としては、発泡樹脂材料が好ましい。発泡樹脂材料は、高断熱性を有し、高い電波透過性を有する。この発泡樹脂材料(シート、フイルム等のこと)を積層することで隙間が形成され、よりいっそう、断熱効果が向上し、空気と同程度の屈折率であるので、反射防止加工が必要ない。発泡樹脂材料の積層体の使用は、冷却負荷の大きな増大を招かないので、窓を大口径化しても冷却負荷はあまり大きくならない。後述のように発泡樹脂を用いて作られる電波透過性材料は、電磁波を反射させる性質が優れていることから、発泡樹脂材料の膜構造が影響しているものと考えられる。

【0033】
前記発泡樹脂材料としては、発泡ポリスチレン樹脂材料、発泡ポリエチレン樹脂材料、発泡ナイロン樹脂材料、発泡ポリプロピレン樹脂材料、発泡ポリテトラフルオロエチレン樹脂材料、発泡アクリル樹脂材料、等、気泡を含む樹脂材料を例示することができる。なかでも、発泡ポリスチレン樹脂材料は、好ましい。

【0034】
前記発泡樹脂材料の1枚の厚さは、2mm~5mm程度が好ましい。より好ましくは、2mm~3mmである。

【0035】
前記電波透過性材料としては、前記発泡樹脂材料以外にも利用できる材料がある。例えば、合成繊維、天然繊維、等が挙げられる。

【0036】
前記放射遮フィルタ及び電波透過性材料は、入射する電磁波の進行方向に平行にならないように敷設される。前記放射遮フィルタ面及び電波透過性材料面は、通常、電磁波の進行方向に対して垂直になるように配置される。

【0037】
前記電波検出器は、電波法で定義される3THz以下の周波数の電波を検出することができる。

【0038】
前記冷却することができる真空容器とは、圧力が大気圧より低い状態にある空間が作られる、冷却することができる容器のことである。真空容器の真空度は、通常、10-1Pa以下であり、好ましくは、10-3Pa以下であり、より好ましくは10-5Pa以下である。前記冷却することができるとは、冷凍機を使用することにより冷却することができる、ということである。

【0039】
前記冷却とは、ヒートポンプの原理を用いて熱を移動させることである。冷却は、冷凍機を用いて行われる。冷凍機のうち液体冷媒を寒材として用いない無冷媒冷凍機は、本発明に好ましく用いられる。ここで、無冷媒冷凍機とは、コンプレッサーを用いヘリウムガスの圧縮・膨張を繰り返して冷却を行う機械式冷凍機のことである。GM冷凍機、パルスチューブ冷凍機とも呼ばれる。無冷媒冷凍機としては、通常、ファーストステージ及びセカンドステージを備える極低温冷凍機が用いられる。前記冷凍機により前記真空容器を冷却する温度は、極低温であることが好ましい。ここで極低温とは、通常、10K以下の温度のことであり、好ましくは4K以下であり、より好ましくは1K以下の温度のことをいう。

【0040】
前記高感度測定とは、ノイズを低減させることにより相対的に信号をノイズよりも十分大きくして測定すること、である。感度の指標は、計測機器や電波測定の対象などによってさまざまである。

【0041】
以下に図面を参照しつつ本発明の一側面を実施形態(以下、「本実施形態」とも表記する)として本発明を詳細に説明する。また、本発明は、本実施形態に限られるものではなく、本実施形態、本発明の考え及び請求項の範囲により想到される種々のバリエーションも含むものである。
【実施例1】
【0042】
図1は、請求項1に従う電波測定装置Aを示す。電波測定装置Aは、電波(Z)を入れる窓(1)と、窓(1)の下方に載置される放射遮フィルタ(2)と、放射遮フィルタ(2)の下方に載置される電波透過性材料(3)とを備える、冷却することができる真空容器(第一放射シールド)(Q)と、第一放射シールド(Q)の中にあって電波透過性材料(3)の下方に置かれた電波検出器(4)と、を備える電波測定装置Aであって、窓(1)を通して入射された電波に含まれる目的とする電波が放射遮フィルタ(2)により透過させられ、続いて、該透過電波に含まれる目的としない電磁波が電波透過性材料(3)により放射遮フィルタ(2)に向けて反射させられ、該放射遮フィルタ(2)に熱として集熱され、放射遮フィルタ(2)の熱伝導により系外に排熱され、そのことにより、電波透過性材料(3)を透過した電波が電波検出器(4)により高感度測定されることを特徴とする電波測定装置Aの構成とした。
【実施例2】
【0043】
図2は、請求項2に従う電波測定装置Bを示す。電波測定装置Bは、前記第一シールド(Q)と、前記第一シールド(Q)の中に、第一放射シールド(Q)と同様の構造の大きさが異なる放射シールド(R,S)が入れ子にされ、最後の放射シールド(S)の中に電波検出器(4)が置かれている、電波測定装置Bであって、窓(1)を通して入射された電波(Z)に含まれる目的とする電波が放射シールド群(Q,R,S)の各放射遮フィルタ(2)により透過させられ、続いて、該透過電波に含まれる目的としない電磁波が放射シールド群(Q,R,S)の各電波透過性材料(3)により各放射遮フィルタ(2)に向けて反射させられ、放射シールド群(Q,R,S)の放射遮フィルタ(2)に熱として集熱され、各放射遮フィルタ(2)の熱伝導により系外に排熱され、そのことにより、放射シールド群(Q,R,S)の各電波透過性材料(3)を透過した電波が最後の放射シールド(S)に置かれた電波検出器(4)により高感度測定されることを特徴とする電波測定装置Bの構成とした。前記第一シールドの中に入れ子にされる放射シールド(R,S)の窓は、省略できることもある。
【実施例2】
【0044】
前記第一放射シールド及び第一放射シールドに入れ子にされる各放射シールドに載置される放射遮フィルタは、通常、金属ワイヤを介して冷凍機と接続され(図省略)、放射遮フィルタに集熱された熱が排熱される。
【実施例3】
【0045】
図3は、本発明電波測定装置の組立て例を示す写図である。図3の写図Aは、電波測定装置Cを示す。電波測定装置Cは、第一放射シールド、第二放射シールド、及び第三放射シールドを持つ。各放射シールドは、外断熱材の敷設に隠れてよく見えない。電波測定装置Cは、直径508mm、高さ480mmの円柱形をしており、放射遮フィルタ(2)には直径260mm、厚さ10mmの高密度ポリエチレンが使用され、電波透過性材料(3)には、厚み2mm~3mm直径210mmの発泡ポリスチレン樹脂シートを積層した材料が使用されている。温度較正のための黒体(図示省略)は、室温(約300K)に置き、電波検出器(4)は直径200mmである。金属ワイヤ(5)は、第一放射シールド、第二シールド及び第三シールドの各放射遮フィルタ(2)と冷凍機(6)を接続している。図3の写図Bは電波透過性材料の一例として用いられるスタイロフォームを直径210mm、厚さ3mmにスライスして切り出した円板を積層(17枚)したものを示す。他には、発泡ポリエチレン樹脂材料、発泡ナイロン樹脂材料、発泡ポリプロピレン樹脂材料、発泡ポリテトラフルオロエチレン樹脂材料、発泡アクリル樹脂材料、等を例示することができる(図示省略)。
【実施例4】
【0046】
図4は、放射遮フィルタ(2)と電波透過性材料(3)の配置及びこの配置により行われる熱放射を説明する概略図である。前記電波透過性材料の積層枚数は、隙間を形成させることが望ましいので、2枚以上である。この配置により、各層の間で放射熱が平衡状態になる。熱放射性の電磁波は各層の電波透過性材料(3)により前記放射遮フィルタ(2)に向けて反射されるので、多層化により侵入する電磁波の熱量換算としての熱量が減少する。電波透過性材料(3)の積層枚数が多いほど侵入熱量は減少する。電波透過性材料(3)の積層枚数を10枚程度にすれば侵入熱量を1/10程度に減少させることができる。積層枚数は所望に応じて適宜設定可能である。電波透過性材料(3)の積層枚数が少ない時や第一放射遮フィルタ(2)の温度Thighが小さい値の時はそれ以上の効果を発揮する。電波透過性材料(3)としては熱伝導の小さな材料を使用しているので、各層の表裏(Ttop, Tbottom)間でも熱伝導による熱平衡状態になるからである。
【実施例5】
【0047】
図5、図6は、前記電波測定装置Cを用いて行われる冷却試験の結果を示す。ファーストステージ及びセカンドステージを備える冷凍機(住友重機械工業株式会社製造GM冷凍機:RDK-408S)を用いて冷却試験を行うった。図5のグラフAは、第三放射シールド内の電波透過性材料の下面の中心部と端部の温度差を示す。図5のグラフBは、電波透過性材料の積層枚数と入熱量Wの関係を示す。図6のグラフCは、電波透過性材料による電波透過性と積層枚数の関係を示す。グラフCの縦軸の1は、透過率が100%であること示す。電波透過率の測定は、異なる二つの測定器、フーリエ変換分光系(Fourier transform spectrometer)及びラジオ波信号発振器(radiowave signal generator)を用いて行う。図7の表1は、第三放射シールド内の電波検出器の表面温度を示す。グラフの横軸は、電波透過性材料の積層枚数である。
【実施例5】
【0048】
グラフAから、電波透過性材料の中央部と端部の上下面の温度差は、ほとんどないことがわかる。グラフBから、入熱量を1W以下の小さな量に低減できることがわかる。グラフCから、電波透過性材料により、目的とする周波数帯域の電波(ここでは400GHz以下の電波)の電波透過性を損なうことなく、電波に含まれる1THz以上の電磁波の約5%を1枚の電波透過性材料により除去することができることがわかる。また、電波に含まれる電波法で定められる3THz以上の電磁波を90%以上除去することが可能である(図示省略)。また、目的とする電波の透過性は電波透過性材料の積層枚数の影響を受けにくいことがわかる。表1から放射シールド内の電波検出器の表面温度を使用する極低温冷凍機の冷却能力温度とほぼ同じ温度に到達させることができることがわかる。
【実施例5】
【0049】
本発明電波測定装置の構成は、電波望遠鏡が目的とする電波の高感度測定のために用いることが可能であるので、本発明電波測定装置は、電波望遠鏡用の電波測定装置として用いることができる。
【実施例5】
【0050】
本発明電波測定装置の構成は、放射計が目的とする電波の高感度測定のために用いることが可能であるので、本発明電波測定装置は、放射計用の電波測定装置として用いることができる。
【実施例5】
【0051】
本発明電波測定装置の構成は、気象衛星が目的とする電波の高感度測定のために用いることが可能であるので、本発明電波測定装置は、気象衛星用の電波測定装置として用いることができる。
【実施例5】
【0052】
本発明電波測定装置の構成は、探査衛星が目的とする電波の高感度測定のために用いることが可能であるので、本発明電波測定装置は、探査衛星用の電波測定装置として用いることができる。
【実施例5】
【0053】
本発明電波測定装置の構成は、レーダーが目的とする電波の高感度測定のために用いることが可能であるので、本発明電波測定装置は、レーダー用の電波測定装置として用いることができる。
【実施例5】
【0054】
本発明の構成は、前記電波透過性材料をテラヘルツ帯透過性材料に置き換えることによりテラヘルツ波測定装置としての利用が可能である。また、前記電波透過性材料を電磁波透過性材料に置き換え、前記電波検出器を、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、近赤外線、赤外線、遠赤外線、等の検出のための電磁波検出器に置き換えることにより、電磁波の測定を行う電磁波測定装置としての利用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、電波望遠鏡用の電波測定装置、放射計用の電波測定装置、気象衛星用の電波測定装置、探査衛星用の電波測定装置、レーダー用の電波測定装置、等、の多くの産業機器に幅広く利用できる。
【符号の説明】
【0056】
A 電波測定装置
B 電波測定装置
C 電波測定装置
Q 冷却される真空容器(第一放射シールド)
R 放射シールド
S 放射シールド
Z 電磁波
1 窓
2 放射遮フィルタ
3 電波透過性材料
4 電波検出器
5 金属ワイヤ
6 冷凍機

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6