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明細書 :データ抽出装置、データ抽出方法およびデータ抽出プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6161133号 (P6161133)
公開番号 特開2017-016991 (P2017-016991A)
登録日 平成29年6月23日(2017.6.23)
発行日 平成29年7月12日(2017.7.12)
公開日 平成29年1月19日(2017.1.19)
発明の名称または考案の名称 データ抽出装置、データ抽出方法およびデータ抽出プログラム
国際特許分類 H01M  10/48        (2006.01)
G01R  31/36        (2006.01)
H02J   7/00        (2006.01)
FI H01M 10/48 P
G01R 31/36 ZHVA
H02J 7/00 Y
請求項の数または発明の数 18
全頁数 27
出願番号 特願2015-216762 (P2015-216762)
出願日 平成27年11月4日(2015.11.4)
優先権出願番号 2015133303
優先日 平成27年7月2日(2015.7.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年4月5日(2017.4.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】長光 左千男
【氏名】長岡 直人
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】赤穂 嘉紀
参考文献・文献 特開2013-253784(JP,A)
特開平10-221418(JP,A)
特開2011-047820(JP,A)
調査した分野 H01M 10/48
G01R 31/36
H02J 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データを格納する記憶部と、
前記記憶部に格納された前記電流測定データから前記二次電池の過渡応答時の過渡応答データを抽出する抽出部と、
を備えたデータ抽出装置であって、
前記抽出部は、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1処理と、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2処理と、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3処理と、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4処理と、を実行する
ことを特徴とするデータ抽出装置。
【請求項2】
前記前区間および前記後区間は、前記第1区間よりも広い
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ抽出装置。
【請求項3】
前記二次電池の電池劣化を診断する電池劣化診断部をさらに備え、
前記記憶部には、前記二次電池の電圧値を前記サンプリング間隔で測定した電圧測定データが格納されており、
前記抽出部は、前記第4処理において、前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電圧値データを前記過渡応答データに含めて抽出し、
前記電池劣化診断部は、前記過渡応答データに基づいて、前記二次電池の充電終了時または放電終了時における電気的等価回路の回路パラメータを算出し、前記回路パラメータに基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のデータ抽出装置。
【請求項4】
前記電気的等価回路は、前記二次電池の内部抵抗に相当する直列抵抗と、1段または2段のRC並列回路と、充電終了時または放電終了時における前記二次電池の内部電圧に相当する電圧を出力する電圧源とを直列接続した回路である
ことを特徴とする請求項3に記載のデータ抽出装置。
【請求項5】
前記抽出部は、複数の前記過渡応答データを抽出し、
前記電池劣化診断部は、
複数の前記過渡応答データから第1過渡応答データおよび第2過渡応答データを選択する選択処理と、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から前記第2過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出する第1算出処理と、
前記第1電圧値と、前記第2電圧値と、前記回路パラメータである前記内部電圧とに基づいて、前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出する第2算出処理と、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する診断処理と、を実行する
ことを特徴とする請求項4に記載のデータ抽出装置。
【請求項6】
ユーザからの入力を受け付ける入力受付部をさらに備え、
前記入力受付部は、前記第1閾値、前記第2閾値、前記第3閾値、前記前区間の範囲および前記後区間の範囲に関する入力を受け付ける
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のデータ抽出装置。
【請求項7】
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データと、前記二次電池の電圧値を前記サンプリング間隔で測定した電圧測定データとを格納する記憶部と、
前記電流測定データから前記二次電池の過渡応答時における複数の過渡応答データを抽出する抽出部と、
前記複数の過渡応答データのうちの第1過渡応答データと第2過渡応答データとに基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する電池劣化診断部と、
を備えたデータ抽出装置であって、
前記抽出部は、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1処理と、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2処理と、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3処理と、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4処理と、を実行し、
前記電池劣化診断部は、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から前記第2過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出する第1算出処理と、
前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出する第2算出処理と、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する診断処理と、を実行する
ことを特徴とするデータ抽出装置。
【請求項8】
前記電池劣化診断部は、前記第2算出処理において、前記第1電圧値と、前記第2電圧値と、前記二次電池の充電終了時または放電終了時における電気的等価回路の回路パラメータとに基づいて前記差分を算出し、
前記電気的等価回路は、前記二次電池の内部抵抗に相当する直列抵抗と、1段または2段のRC並列回路と、充電終了時または放電終了時における前記二次電池の内部電圧に相当する電圧を出力する電圧源とを直列接続した回路であり、
前記回路パラメータは、前記内部電圧である
ことを特徴とする請求項7に記載のデータ抽出装置。
【請求項9】
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データと、前記二次電池の電圧値を前記サンプリング間隔で測定した電圧測定データとを格納する記憶部と、
前記電流測定データから前記二次電池の過渡応答時における複数の過渡応答データを抽出する抽出部と、
前記複数の過渡応答データから選択した第1過渡応答データのみに基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する電池劣化診断部と、
を備えたデータ抽出装置であって、
前記抽出部は、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1処理と、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2処理と、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3処理と、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4処理と、を実行し、
前記電池劣化診断部は、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から当該第1過渡応答データの前記後区間内の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出する第1算出処理と、
前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出する第2算出処理と、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する診断処理と、を実行する
ことを特徴とするデータ抽出装置。
【請求項10】
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データから、データ抽出装置が前記二次電池の過渡応答時の過渡応答データを抽出するデータ抽出方法であって、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1ステップと、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2ステップと、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3ステップと、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4ステップと、を含む
ことを特徴とするデータ抽出方法。
【請求項11】
前記前区間および前記後区間は、前記第1区間よりも広い
ことを特徴とする請求項10に記載のデータ抽出方法。
【請求項12】
前記第4ステップにおいて、前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電圧値データを前記過渡応答データに含めて抽出し、
前記過渡応答データに基づいて、前記二次電池の充電終了時または放電終了時における電気的等価回路の回路パラメータを算出し、前記回路パラメータに基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する第5ステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項10または11に記載のデータ抽出方法。
【請求項13】
前記電気的等価回路は、前記二次電池の内部抵抗に相当する直列抵抗と、1段または2段のRC並列回路と、充電終了時または放電終了時における前記二次電池の内部電圧に相当する電圧を出力する電圧源とを直列接続した回路である
ことを特徴とする請求項12に記載のデータ抽出方法。
【請求項14】
複数の前記過渡応答データのうちの第1過渡応答データと第2過渡応答データとに基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する第6ステップをさらに含み、
前記第6ステップは、
複数の前記過渡応答データから前記第1過渡応答データおよび前記第2過渡応答データを選択するステップと、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から前記第2過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出するステップと、
前記第1電圧値と、前記第2電圧値と、前記回路パラメータである前記内部電圧とに基づいて、前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出するステップと、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断するステップと、を含む
ことを特徴とする請求項13に記載のデータ抽出方法。
【請求項15】
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データから、データ抽出装置が前記二次電池の過渡応答時における複数の過渡応答データを抽出する抽出ステップと、
前記二次電池の電圧値を前記サンプリング間隔で測定した電圧測定データと、前記複数の過渡応答データのうちの第1過渡応答データおよび第2過渡応答データとに基づいて、前記データ抽出装置が前記二次電池の電池劣化を診断する診断ステップと、
を含むデータ抽出方法であって、
前記抽出ステップは、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1ステップと、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2ステップと、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3ステップと、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4ステップと、を含み、
前記診断ステップは、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から前記第2過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出するステップと、
前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出するステップと、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断するステップと、を含む
ことを特徴とするデータ抽出方法。
【請求項16】
前記診断ステップでは、前記第1電圧値と、前記第2電圧値と、前記二次電池の充電終了時または放電終了時における電気的等価回路の回路パラメータとに基づいて前記差分を算出し、
前記電気的等価回路は、前記二次電池の内部抵抗に相当する直列抵抗と、1段または2段のRC並列回路と、充電終了時または放電終了時における前記二次電池の内部電圧に相当する電圧を出力する電圧源とを直列接続した回路であり、
前記回路パラメータは、前記内部電圧である
ことを特徴とする請求項15に記載のデータ抽出方法。
【請求項17】
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データから、データ抽出装置が前記二次電池の過渡応答時における複数の過渡応答データを抽出する抽出ステップと、
前記二次電池の電圧値を前記サンプリング間隔で測定した電圧測定データと、前記複数の過渡応答データから選択した第1過渡応答データのみに基づいて、前記データ抽出装置が前記二次電池の電池劣化を診断する診断ステップと、
を含むデータ抽出方法であって、
前記抽出ステップは、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1ステップと、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2ステップと、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3ステップと、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4ステップと、を含み、
前記診断ステップは、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から当該第1過渡応答データの前記後区間内の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出するステップと、
前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出するステップと、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断するステップと、を含む
ことを特徴とするデータ抽出方法。
【請求項18】
請求項10~17のいずれか一項に記載のデータ抽出方法をコンピュータに実行させるためのデータ抽出プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、過渡応答特性を有する二次電池の測定データから当該二次電池の電池劣化の診断に適したデータを抽出するデータ抽出装置、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、電池劣化により異常動作を行うおそれがあることから、電池劣化を診断する必要がある。電池劣化を診断する方法としては、従来から、交流重畳法による専用機器を用いた電池劣化診断方法が知られている。しかしながら、この電池劣化診断方法は、専用機器が高価であり、しかもリチウムイオン二次電池を使用機器から取り外して専用機器に接続する必要があるため、産業用機器に用いられるリチウムイオン二次電池の電池劣化診断方法としては有用ではない。
【0003】
電池劣化を診断する別の方法としては、リチウムイオン二次電池稼働中の電圧・電流波形から内部インピーダンスを導出し、内部インピーダンスに基づいて電池劣化を診断する電池劣化診断方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この電池劣化診断方法は、充電率(SOC)の依存性が大で、精度等に問題があるため、実用化には至っていない。
【0004】
そこで、本願発明者は、リチウムイオン二次電池の過渡応答特性に着目した、比較的安価で実用性のある電池劣化診断方法を開発した(例えば、特願2015-33944号参照)。この電池劣化診断方法を用いてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断するためには、稼働中のリチウムイオン二次電池の電流値および電圧値を連続的に測定した測定データから、リチウムイオン二次電池の過渡応答時のデータを抽出する必要がある。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】岡田修平、外3名、「リチウムイオン電池の劣化診断技術の開発」、横河技報、横河電機株式会社、Vol.56 No.2(2013)、p27-30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、過渡応答特性を有する二次電池の測定データから二次電池の電池劣化の診断に適した過渡応答時のデータを抽出することが可能なデータ抽出装置、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るデータ抽出装置は、
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データを格納する記憶部と、
前記記憶部に格納された前記電流測定データから前記二次電池の過渡応答時の過渡応答データを抽出する抽出部と、
を備えたデータ抽出装置であって、
前記抽出部は、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1処理と、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2処理と、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3処理と、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4処理と、を実行することを特徴とする。
【0008】
上記データ抽出装置では、
前記前区間および前記後区間は、前記第1区間よりも広いことが好ましい。
【0009】
上記データ抽出装置は、
前記二次電池の電池劣化を診断する電池劣化診断部をさらに備え、
前記記憶部には、前記二次電池の電圧値を前記サンプリング間隔で測定した電圧測定データが格納されており、
前記抽出部は、前記第4処理において、前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電圧値データを前記過渡応答データに含めて抽出し、
前記電池劣化診断部は、前記過渡応答データに基づいて、前記二次電池の充電終了時または放電終了時における電気的等価回路の回路パラメータを算出し、前記回路パラメータに基づいて前記二次電池の電池劣化を診断するよう構成できる。
【0010】
上記データ抽出装置では、
前記電気的等価回路は、前記二次電池の内部抵抗に相当する直列抵抗と、1段または2段のRC並列回路と、充電終了時または放電終了時における前記二次電池の内部電圧に相当する電圧を出力する電圧源とを直列接続した回路であることが好ましい。
【0011】
上記データ抽出装置は、
前記抽出部は、複数の前記過渡応答データを抽出し、
前記電池劣化診断部は、
複数の前記過渡応答データから第1過渡応答データおよび第2過渡応答データを選択する選択処理と、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から前記第2過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出する第1算出処理と、
前記第1電圧値と、前記第2電圧値と、前記回路パラメータである前記内部電圧とに基づいて、前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出する第2算出処理と、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する診断処理と、を実行するよう構成できる。
【0012】
上記データ抽出装置は、
ユーザからの入力を受け付ける入力受付部をさらに備え、
前記入力受付部は、前記第1閾値、前記第2閾値、前記第3閾値、前記前区間の範囲および前記後区間の範囲に関する入力を受け付けるよう構成できる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る別のデータ抽出装置は、
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データと、前記二次電池の電圧値を前記サンプリング間隔で測定した電圧測定データとを格納する記憶部と、
前記電流測定データから前記二次電池の過渡応答時における複数の過渡応答データを抽出する抽出部と、
前記複数の過渡応答データのうちの第1過渡応答データと第2過渡応答データとに基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する電池劣化診断部と、
を備えたデータ抽出装置であって、
前記抽出部は、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1処理と、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2処理と、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3処理と、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4処理と、を実行し、
前記電池劣化診断部は、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から前記第2過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出する第1算出処理と、
前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出する第2算出処理と、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する診断処理と、を実行する
ことを特徴とする。
【0014】
上記データ抽出装置では、
前記電池劣化診断部は、前記第2算出処理において、前記第1電圧値と、前記第2電圧値と、前記二次電池の充電終了時または放電終了時における電気的等価回路の回路パラメータとに基づいて前記差分を算出し、
前記電気的等価回路は、前記二次電池の内部抵抗に相当する直列抵抗と、1段または2段のRC並列回路と、充電終了時または放電終了時における前記二次電池の内部電圧に相当する電圧を出力する電圧源とを直列接続した回路であり、
前記回路パラメータは、前記内部電圧である
ことが好ましい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係るさらに別のデータ抽出装置は、
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データと、前記二次電池の電圧値を前記サンプリング間隔で測定した電圧測定データとを格納する記憶部と、
前記電流測定データから前記二次電池の過渡応答時における複数の過渡応答データを抽出する抽出部と、
前記複数の過渡応答データから選択した第1過渡応答データのみに基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する電池劣化診断部と、
を備えたデータ抽出装置であって、
前記抽出部は、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1処理と、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2処理と、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3処理と、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4処理と、を実行し、
前記電池劣化診断部は、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から当該第1過渡応答データの前記後区間内の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出する第1算出処理と、
前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出する第2算出処理と、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する診断処理と、を実行する
ことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るデータ抽出方法は、
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データから、データ抽出装置が前記二次電池の過渡応答時の過渡応答データを抽出するデータ抽出方法であって、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1ステップと、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2ステップと、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3ステップと、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4ステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
上記データ抽出方法では、
前記前区間および前記後区間は、前記第1区間よりも広いことが好ましい。
【0018】
上記データ抽出方法は、
前記第4ステップにおいて、前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電圧値データを前記過渡応答データに含めて抽出した場合、
前記過渡応答データに基づいて、前記二次電池の充電終了時または放電終了時における電気的等価回路の回路パラメータを算出し、前記回路パラメータに基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する第5ステップをさらに含むことが好ましい。
【0019】
上記データ抽出方法では、
前記電気的等価回路は、前記二次電池の内部抵抗に相当する直列抵抗と、1段または2段のRC並列回路と、充電終了時または放電終了時における前記二次電池の内部電圧に相当する電圧を出力する電圧源とを直列接続した回路であることが好ましい。
【0020】
上記データ抽出方法では、
複数の前記過渡応答データのうちの第1過渡応答データと第2過渡応答データとに基づいて前記二次電池の電池劣化を診断する第6ステップをさらに含み、
前記第6ステップは、
複数の前記過渡応答データから前記第1過渡応答データおよび前記第2過渡応答データを選択するステップと、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から前記第2過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出するステップと、
前記第1電圧値と、前記第2電圧値と、前記回路パラメータである前記内部電圧とに基づいて、前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出するステップと、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断するステップと、を含むよう構成できる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明に係る別のデータ抽出方法は、
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データから、データ抽出装置が前記二次電池の過渡応答時における複数の過渡応答データを抽出する抽出ステップと、
前記二次電池の電圧値を前記サンプリング間隔で測定した電圧測定データと、前記複数の過渡応答データのうちの第1過渡応答データおよび第2過渡応答データとに基づいて、前記データ抽出装置が前記二次電池の電池劣化を診断する診断ステップと、
を含むデータ抽出方法であって、
前記抽出ステップは、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1ステップと、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2ステップと、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3ステップと、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4ステップと、を含み、
前記診断ステップは、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から前記第2過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出するステップと、
前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出するステップと、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断するステップと、を含む
ことを特徴とする。
【0022】
上記データ抽出方法は、
前記診断ステップでは、前記第1電圧値と、前記第2電圧値と、前記二次電池の充電終了時または放電終了時における電気的等価回路の回路パラメータとに基づいて前記差分を算出し、
前記電気的等価回路は、前記二次電池の内部抵抗に相当する直列抵抗と、1段または2段のRC並列回路と、充電終了時または放電終了時における前記二次電池の内部電圧に相当する電圧を出力する電圧源とを直列接続した回路であり、
前記回路パラメータは、前記内部電圧である
ことが好ましい。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明に係るさらに別のデータ抽出方法は、
過渡応答特性を有する二次電池の電流値を所定のサンプリング間隔で測定した電流測定データから、データ抽出装置が前記二次電池の過渡応答時における複数の過渡応答データを抽出する抽出ステップと、
前記二次電池の電圧値を前記サンプリング間隔で測定した電圧測定データと、前記複数の過渡応答データから選択した第1過渡応答データのみに基づいて、前記データ抽出装置が前記二次電池の電池劣化を診断する診断ステップと、
を含むデータ抽出方法であって、
前記抽出ステップは、
電流値の変化量が第1閾値以上となる第1区間を特定する第1ステップと、
前記第1区間の始点と連続し、前記始点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる前区間を特定する第2ステップと、
前記第1区間の終点と連続し、前記終点の電流値に対する変化量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下となる後区間を特定する第3ステップと、
前記前区間の始点から前記後区間の終点までの電流値データを前記過渡応答データとして抽出する第4ステップと、を含み、
前記診断ステップは、
前記第1過渡応答データにおいて電流値が前記第1閾値以上変化した後の第1電流値から当該第1過渡応答データの前記後区間内の第2電流値までの各電流値と、前記第1電流値の測定時における第1電圧値から前記第2電流値の測定時における第2電圧値までの各電圧値とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果に前記サンプリング間隔を乗算した電力積分値を算出するステップと、
前記第1電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧と前記第2電流値の測定時における前記二次電池のSOCに対応する電圧との差分を算出するステップと、
前記電力積分値を前記差分で除算した値を劣化指標とし、前記劣化指標に基づいて前記二次電池の電池劣化を診断するステップと、を含む
ことを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明に係るデータ抽出プログラムは、上記いずれかのデータ抽出方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、過渡応答特性を有する二次電池の測定データから二次電池の電池劣化の診断に適した過渡応答時のデータを抽出することが可能なデータ抽出装置、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(A)は、過渡応答特性を考慮していないリチウムイオン二次電池の電気的等価回路図である。(B)は、過渡応答特性および内部電圧V(SOC)を考慮したリチウムイオン二次電池の電気的等価回路図である。
【図2】(A)は、内部電圧Vの電圧偏差△Vを考慮したリチウムイオン二次電池の電気的等価回路図である。(B)は、電圧偏差△Vを1段のRC並列回路で示したリチウムイオン二次電池の電気的等価回路図である。
【図3】充電終了時または放電終了時におけるリチウムイオン二次電池の電気的等価回路図である。
【図4】パルス電流でリチウムイオン二次電池を充電したときの電流・電圧波形図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るデータ抽出装置のブロック図である。
【図6】本発明の過渡応答データを説明するための図である。
【図7】(A)は、電動バイクに搭載されたリチウムイオン二次電池の電流測定データである。(B)は、(A)の電流測定データと同時に測定された電圧測定データである。
【図8】図7の電流測定データおよび電圧測定データから抽出した過渡応答データである。
【図9】本発明の他の実施形態に係るデータ抽出装置のブロック図である。
【図10】第1過渡応答データおよび第2過渡応答データを含む電流測定データと、電圧測定データとを示す図である。
【図11】本発明による電池劣化の診断を比較・説明するための図であって、(A)は、劣化指標△Q/△VをSOC全領域での平均値とした図、(B)は、劣化指標△Q/△VをSOCが40%未満での平均値とした図である。
【図12】電流が零ではない過渡応答時におけるリチウムイオン二次電池の電気的等価回路図である。
【図13】電流が零ではない過渡応答時におけるリチウムイオン二次電池の電圧変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るデータ抽出装置、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムの実施形態について説明する。なお、以下では、過渡応答特性を有する二次電池として、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。

【0028】
(第1実施形態)
本実施形態に係るデータ抽出装置は、電池劣化の診断に適した過渡応答時のデータを抽出するだけでなく、抽出した過渡応答時のデータに基づいてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する。したがって、まず、電池劣化の診断に必要なリチウムイオン二次電池の電気的等価回路について説明する。

【0029】
[電気的等価回路]
図1~図3に、リチウムイオン二次電池の電気的等価回路(以下、等価回路)を示す。図1(A)に示す等価回路は、リチウムイオン二次電池の内部抵抗RB0とリチウムイオン二次電池の内部電圧Vを出力する電圧源Eとを直列接続した最も簡易な回路である。図1(A)において、Vはリチウムイオン二次電池の内部インピーダンス(内部抵抗RB0)による電圧降下を示し、Vはリチウムイオン二次電池の端子電圧を示し、Iはリチウムイオン二次電池の電流を示す。ただし、電流Iは充電方向を正とする。

【0030】
図1(A)に示す等価回路において、内部電圧Vは、リチウムイオン二次電池のSOC(充電率)に依存する。また、端子電圧Vは、例えばパルス電流による充電が開始されると、急峻に上昇した後、時間経過に伴い徐々に上昇する一方、パルス電流による充電を終了すると、急峻に下降した後、時間経過に伴い徐々に下降する。すなわち、パルス電流が遮断された後の端子電圧Vは、リチウムイオン二次電池の過渡応答特性に応じて減衰する。これらのことから、リチウムイオン二次電池の等価回路として、図1(B)に示すように、内部抵抗RB0と、2段のRC並列回路と、SOCに依存した内部電圧V(SOC)を出力する電圧源E(SOC)とを直列接続した回路(モデルA)を用いることができる。この等価回路(モデルA)において2段のRC並列回路を用いているのは、電流遮断後に徐々に下降する端子電圧Vの波形に2つの傾きが観測されたためである。この等価回路(モデルA)は、内部電圧Vの特性がSOCの関数として良く知られているリチウムイオン二次電池に対しては有用であるが、内部電圧VのSOC特性、すなわち内部電圧V(SOC)が知られていないリチウムイオン二次電池に対しては適用することができない。

【0031】
ところで、充電開始前の端子電圧V(0)は、充電開始前のSOCにおける内部電圧V(0)に相当する。また、充電終了後の端子電圧V(t)と充電開始前の端子電圧V(0)(=V(0))との差分は、内部インピーダンスによる電圧降下Vと充電による内部電圧Vの電圧偏差(電圧増加)△Vとの和に相当する。これらのことから、リチウムイオン二次電池の等価回路として、図2(A)に示すように、内部抵抗RB0と、2段のRC並列回路と、電圧偏差△Vを出力する電圧源△Eと、内部電圧V(0)を出力する電圧源E(0)とを直列接続した回路を用いることができる。この等価回路は、電圧偏差△Vを知ることができれば、内部電圧VのSOC特性、すなわち内部電圧V(SOC)が知られていないリチウムイオン二次電池に対しても適用することができる。図2(B)に、図2(A)に示す回路において電圧偏差△Vを出力する電圧源△Eを、抵抗RB3およびコンデンサCB3からなる1段のRC並列回路に置き換えた等価回路(モデルB)を示す。

【0032】
上述したように、電流遮断後(充電終了後)の端子電圧Vは、リチウムイオン二次電池の過渡応答特性に応じて減衰する。このときの電圧変化分は、SOCに依存せず、内部インピーダンスによる電圧降下Vのみによって定まる。このことから、リチウムイオン二次電池の電流遮断時(充電終了時)における等価回路として、図3に示すように、内部抵抗RB0と、2段のRC並列回路と、内部電圧V(一定の電圧)を出力する電圧源Eとを直列接続した回路(モデルC)を用いることができる。

【0033】
ここで、図1(B)に示す等価回路(モデルA)における内部電圧V(SOC)はSOCの関数であるのに対して、等価回路(モデルC)における内部電圧Vは定数である(定数と見なすことができる)。等価回路(モデルC)を適用している時間範囲内では、電流が流れていない時間範囲内なためSOCが変化しないからである。このため、等価回路(モデルC)では、内部電圧VからSOCを推定することができる。すなわち、等価回路(モデルC)では、内部電圧Vが大であればSOCも大であり、内部電圧Vが小であればSOCも小である。よって、等価回路(モデルC)における内部電圧VとSOCとの関係を示すデータ(例えば、プロファイルまたはテーブル)があれば、当該データに基づいてSOCを推定することができる。

【0034】
等価回路(モデルC)では、回路パラメータの演算を簡略化するためにRC並列回路を1段にしてもよい。例えば、図3に示す等価回路(モデルC)において、2段のRC並列回路を抵抗RB1およびコンデンサCB1からなる1段のRC並列回路にした場合、リチウムイオン二次電池の電流遮断時の端子電圧V、すなわちリチウムイオン二次電池の過渡応答時の端子電圧Vは、下記の(1)式で与えられる。
【数1】
JP0006161133B2_000002t.gif
なお、下記の図4の場合、電流遮断後(充電終了後)のリチウムイオン二次電池の過渡応答時の端子電圧Vは、下記の(2)式で与えられる。
【数2】
JP0006161133B2_000003t.gif

【0035】
図4に、パルス電流でリチウムイオン二次電池を充電したときの電流・電圧波形を示す。同図に示すように、内部電圧Vは充電中に上昇し、充電終了後は一定となる。このため、本実施形態に係るデータ抽出装置、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムでは、SOCが変化せず内部電圧Vの変動分(電圧偏差△V)を考慮する必要のない充電終了後(または放電終了後)の端子電圧Vを電池劣化の診断に用いる。言い換えれば、本実施形態に係るデータ抽出装置、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムでは、充電終了時(または放電終了時)における等価回路(モデルC)を用いて、リチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する。

【0036】
[データ抽出装置]
図5に、本実施形態に係るデータ抽出装置1を示す。データ抽出装置1は、記憶部2と、抽出部3と、電池劣化診断部4と、入力受付部5とを備えている。記憶部2、抽出部3および電池劣化診断部4は、例えばマイコンで構成することができ、入力受付部5は、例えばキーボードおよびディスプレイで構成することができる。

【0037】
記憶部2には、稼働中のリチウムイオン二次電池の電流値、電圧値および周囲温度を所定のサンプリング間隔で連続的に測定した測定データが格納される。測定データのうち、電流値に関するものを電流測定データといい、電圧値に関するものを電圧測定データといい、周囲温度に関するものを温度測定データという。

【0038】
また、記憶部2には、等価回路(モデルC)における内部電圧VとSOCとの関係を示すデータ(例えば、プロファイルまたはテーブル)が格納されていることが好ましい。等価回路(モデルC)は、上述のとおり、リチウムイオン二次電池の内部電圧Vの特性がSOCに依存しない充電終了時または放電終了時における等価回路であって、具体的には、リチウムイオン二次電池の内部抵抗RB0と、1段または2段のRC並列回路と、充電終了時または放電終了時におけるリチウムイオン二次電池の内部電圧Vを出力する電圧源Eとを直列接続した回路である。

【0039】
抽出部3は、記憶部2に格納された測定データから、リチウムイオン二次電池の過渡応答時の過渡応答データを抽出する。図6に、時刻t1において放電が終了したリチウムイオン二次電池の過渡応答データを示す。なお、図6では、電圧値データおよび周囲温度データを省略している。

【0040】
抽出部3は、図6に示すような過渡応答データを抽出するために、
(1)電流測定データにおいて、電流値の変化量が第1閾値X1以上となる第1区間を特定する第1処理と、
(2)第1区間の始点と連続し、始点の電流値に対する変化量が第1閾値X1よりも小さい第2閾値X2以下となる前区間を特定する第2処理と、
(3)第1区間の終点と連続し、終点の電流値に対する変化量が第1閾値X1よりも小さい第3閾値X3以下となる後区間を特定する第3処理と、
(4)前区間の始点から後区間の終点までの電流値データと、当該電流値データに対応した区間の電圧値データおよび周囲温度データとを過渡応答データとして抽出する第4処理と、
を実行する。なお、本実施形態では、電流値の変化量を絶対値で表すものとする。

【0041】
電池劣化診断部4は、過渡応答データに基づいて等価回路(モデルC)の回路パラメータを算出し、算出した回路パラメータに基づいてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する。例えば、内部抵抗RB0と、抵抗RB1およびコンデンサCB1からなる1段のRC並列回路と、一定の内部電圧Vを出力する電圧源Eとを直列接続した等価回路(モデルC)の場合、内部抵抗RB0およびRC並列回路の抵抗RB1は電池劣化に伴い大となるが、内部抵抗RB0は接触抵抗による影響が大であるため、RC並列回路の抵抗RB1により電池劣化を診断することが好ましい。

【0042】
RC並列回路の抵抗RB1により電池劣化を診断する場合、電池劣化診断部4は、第4処理で抽出した過渡応答データに基づいて、等価回路(モデルC)の回路パラメータを算出する。次いで、電池劣化診断部4は、記憶部2に格納された等価回路(モデルC)における内部電圧VとSOCとの関係を示すデータに基づいて、回路パラメータの内部電圧VからSOCを推定する。そして、電池劣化診断部4は、SOCに対する回路パラメータの抵抗RB1により、リチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する。例えば、SOCが同じであるにもかかわらず抵抗RB1が増加している場合、電池劣化診断部4は、リチウムイオン二次電池が劣化していると診断する。なお、抵抗RB1の値は周囲温度の影響を受けるので、電池劣化診断部4は、温度測定データに基づいて周囲温度毎に抵抗RB1の値を統計的に整理して比較することが好ましい。

【0043】
入力受付部5は、抽出部3が第1処理を実行する前に、第1閾値X1、第2閾値X2、第3閾値X3、前区間の範囲および後区間の範囲に関し、ユーザからの入力を受け付ける。入力受付部5がユーザからの入力を受け付けると、抽出部3は、ユーザからの入力に従って第1処理~第4処理を実行し、電池劣化診断部4は、上述のとおり電池劣化を診断する。なお、前区間および後区間が第1区間よりも広い範囲となるように、ユーザの入力に制限をかけることが好ましい。

【0044】
[データ抽出方法]
次に、本実施形態に係るデータ抽出方法について説明する。本実施形態に係るデータ抽出方法は、リチウムイオン二次電池の電流値、電圧値および周囲温度を所定のサンプリング間隔で測定した測定データから、データ抽出装置1が過渡応答データを抽出するものである。

【0045】
具体的には、本実施形態に係るデータ抽出方法は、
(1)電流測定データにおいて、電流値の変化量が第1閾値X1以上となる第1区間を特定する第1ステップと、
(2)第1区間の始点と連続し、始点の電流値に対する変化量が第1閾値X1よりも小さい第2閾値X2以下となる前区間を特定する第2ステップと、
(3)第1区間の終点と連続し、終点の電流値に対する変化量が第1閾値X1よりも小さい第3閾値X3以下となる後区間を特定する第3ステップと、
(4)前区間の始点から後区間の終点までの電流値データと、当該電流値データに対応した区間の電圧値データおよび周囲温度データとを過渡応答データとして抽出する第4ステップと、
(5)過渡応答データに基づいてリチウムイオン二次電池の等価回路(モデルC)の回路パラメータを算出し、回路パラメータに基づいてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する第5ステップと、
を含む。

【0046】
測定データの一例として、図7(A)に、電動バイクに搭載されたリチウムイオン二次電池の数年分の電流測定データを示し、図7(B)に、当該電流測定データに対応した(当該電流測定データと同時に測定した)電圧測定データを示す。電流測定データおよび電圧測定データのサンプリング間隔は0.5秒である。また、本実験に用いた電動バイクには回生機能はなく、電動バイクに搭載されたリチウムイオン二次電池は、電動バイクの走行中に放電されるが、電動バイクの停止時には充放電は行われない。以下、図7(A)および(B)に示す測定データから、データ抽出装置1が放電終了時の過渡応答データ(図8参照)を抽出するデータ抽出方法について説明する。

【0047】
データ抽出装置1の抽出部3および電池劣化診断部4がデータ抽出方法を実行する前に、データ抽出装置1の入力受付部5が、第1閾値X1、第2閾値X2、第3閾値X3、前区間の範囲および後区間の範囲に関し、ユーザからの入力を受け付けたものとする。ここでは、第1閾値X1を12[A]とし、第2閾値X2を8[A]とし、第3閾値X3を2[A]とし、前区間の範囲(データ数)および後区間の範囲(データ数)をいずれも4とする。また、第1区間の範囲(データ数)は2に設定されているものとする。

【0048】
第1ステップでは、抽出部3が、図7(A)の電流測定データに含まれるn(nは1以上の整数)個目の電流値データと(n+1)個目の電流値データとに基づいて電流値の変化量を演算し、電流値の変化量が第1閾値X1(=12[A])以上となる第1区間(データ数=2)を特定する。図8に示すように、150.0秒時の電流値が-13.04[A]であり、150.5秒時の電流値が-0.42[A]であるため、この区間における電流値の変化量は、12.62[A]となり第1閾値X1(=12[A])以上となる。よって、抽出部3は、150.0秒から150.5秒までの区間を、第1区間として特定する。

【0049】
第2ステップでは、抽出部3が、第1区間の始点である150.0秒時の電流値データと連続し、第1区間の始点の電流値(150.0秒時の電流値)に対する変化量が第2閾値X2(=8[A])以下となる前区間(データ数=4)を特定する。図8に示すように、150.0秒時の電流値データと連続した4つの電流値データ、すなわち148.0秒、148.5秒、149.0秒、149.5秒時の電流値データは、いずれも150.0秒時の電流値に対する変化量が第2閾値X2(=8[A])以下となる。よって、抽出部3は、148.0秒から149.5秒までの区間を、前区間として特定する。

【0050】
第3ステップでは、抽出部3が、第1区間の終点である150.5秒時の電流値データと連続し、第1区間の終点の電流値(150.5秒時の電流値)に対する変化量が第3閾値X3(=2[A])以下となる後区間(データ数=4)を特定する。図8に示すように、150.5秒時の電流値データと連続した4つの電流値データ、すなわち151.0秒、151.5秒、152.0秒、152.5秒時の電流値データは、いずれも150.5秒時の電流値に対する変化量が第3閾値X3(=2[A])以下となる。よって、抽出部3は、151.0秒から152.5秒のまで区間を、後区間として特定する。

【0051】
第4ステップでは、抽出部3が、前区間の始点である148.0秒から後区間の終点である152.5秒までの電流値データと、同区間の電圧値データおよび周囲温度データとを過渡応答データとして抽出する。すなわち、抽出部3により前区間、第1区間、後区間のすべてが特定された場合にのみ、過渡応答データが抽出される。

【0052】
第5ステップでは、電池劣化診断部4が、抽出部3により抽出された過渡応答データに基づいて、等価回路(モデルC)の回路パラメータを算出し、算出した回路パラメータに基づいてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する。例えば、内部抵抗RB0と、抵抗RB1およびコンデンサCB1からなる1段のRC並列回路と、一定の内部電圧Vを出力する電圧源Eとを直列接続した等価回路(モデルC)の場合、電池劣化診断部4は、過渡応答データに基づいて内部抵抗RB0、抵抗RB1、コンデンサCB1および内部電圧Vを算出する。次いで、電池劣化診断部4は、記憶部2に格納された等価回路(モデルC)における内部電圧VとSOCとの関係を示すデータに基づいて、内部電圧VからSOCを推定する。そして、電池劣化診断部4は、SOCに対する抵抗RB1に基づいて、リチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する。

【0053】
[データ抽出プログラム]
次に、本実施形態に係るデータ抽出プログラムについて説明する。本実施形態に係るデータ抽出プログラムは、コンピュータに上述のデータ抽出方法を実行させるためのものである。

【0054】
記憶媒体またはネットワークを介して本実施形態に係るデータ抽出プログラムがコンピュータに提供され、かつ当該コンピュータが本実施形態に係るデータ抽出プログラムを読み出して実行することで、当該コンピュータは、少なくとも一部がデータ抽出装置1として機能し、上述のデータ抽出方法を実行することが可能になる。

【0055】
結局、本実施形態に係るデータ抽出装置1、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムによれば、過渡応答特性を有するリチウムイオン二次電池の測定データからリチウムイオン二次電池の電池劣化の診断に適した過渡応答データを自動的に抽出することができる。さらに、本実施形態に係るデータ抽出装置1、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムによれば、抽出した過渡応答データに基づいてリチウムイオン二次電池の等価回路(モデルC)の回路パラメータを算出することで、リチウムイオン二次電池の電池劣化を診断することができる。

【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るデータ抽出装置、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムについて説明する。

【0057】
[データ抽出装置]
図9に、本実施形態に係るデータ抽出装置1’を示す。本実施形態に係るデータ抽出装置1’は、記憶部2、抽出部3、電池劣化診断部4’および入力受付部5を備えている。なお、図5と同一の符号を付した構成要素については第1実施形態で説明したものと同様なので、ここでは説明を一部省略する。

【0058】
電池劣化診断部4’は、抽出部3が電流測定データに対して第1処理~第4処理を実行して抽出した複数の過渡応答データから、2つの過渡応答データ(第1過渡応答データと第2過渡応答データ)を選択する。第1過渡応答データおよび第2過渡応答データの選択の仕方は、入力受付部5においてユーザが任意に設定することができる。例えば、図10に示すように、隣接する2つの過渡応答データを第1過渡応答データおよび第2過渡応答データとしてもよいし、最初に抽出された過渡応答データを第1過渡応答データとし、X番目(X≧3)に抽出された過渡応答データを第2過渡応答データとしてもよい。

【0059】
電池劣化診断部4’は、
(1)上記のとおり、複数の過渡応答データから第1過渡応答データおよび第2過渡応答データを選択する選択処理と、
(2)第1過渡応答データにおいて電流値が第1閾値X1以上変化した後の第1電流値A1から第2過渡応答データにおいて電流値が第1閾値X1以上変化した後の第2電流値A2までの各電流値(A1、・・・、A2)と、第1電流値A1の測定時における第1電圧値V1から第2電流値A2の測定時における第2電圧値V2までの各電圧値(V1、・・・、V2)とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果にサンプリング間隔△Tを乗算した電力積分値△Q(=(V1×A1+・・・+V2×A2)×△T)を算出する第1算出処理と、
(3)第1電流値A1の測定時におけるリチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VE1と第2電流値A2の測定時におけるリチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VE2との差分△V(>0)を算出する第2算出処理と、
(4)電力積分値△Qを差分△Vで除算した値を劣化指標△Q/△Vとし、劣化指標△Q/△Vに基づいてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する診断処理と、
を実行する。

【0060】
電池劣化診断部4’は、第1算出処理において、記憶部2に格納された電流測定データに基づいて第1電流値A1から第2電流値A2までの各電流値を取得し、記憶部2に格納された電圧測定データに基づいて第1電圧値V1から第2電圧値V2までの各電圧値を取得する。また、電池劣化診断部4’は、第2算出処理において、第1電圧値V1と、第2電圧値V2と、電気的等価回路(モデルC)とに基づいてリチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VE1、VE2を算出し、差分△Vを算出する。

【0061】
具体的には、第1電圧値V1および第2電圧値V2は、上記(2)式の端子電圧Vに相当するので、第1電圧値V1および上記(2)式から、第1電圧値V1の測定時における内部電圧V(V1)を算出することができ、第2電圧値V2および上記(2)式から、第2電圧値V2の測定時における内部電圧V(V2)を算出することができる。ここで、リチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VEとは、SOCに依存しない定数または電流一定時に線形関数となる電圧であって、当該電圧からSOCを推定することができるものをいう。電気的等価回路(モデルC)の場合、内部電圧Vがリチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VEとなる。よって、電池劣化診断部4’は、SOC(V1)に対応する内部電圧V(V1)と、SOC(V2)に対応する内部電圧V(V2)から、差分△V(=V(V2)-V(V1)、または=V(V1)-V(V2))、すなわち、差分△V(=VE2-VE1、または=VE1-VE2)を算出することができる。

【0062】
電池劣化診断部4’は、診断処理において、SOCに対する劣化指標△Q/△Vにより、リチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する。例えば、SOCが同じであるにもかかわらず劣化指標△Q/△Vの絶対値が減少している場合、電池劣化診断部4’は、リチウムイオン二次電池が劣化していると診断する。

【0063】
なお、電池劣化診断部4’は、診断処理で△Q/△Vを算出するにあたって、第2算出処理において△Vが適切な値かどうかを判断し、不適切と判断した場合は、診断処理をスキップしてもよい。例えば、△VがSOCで0~10%未満の電位差のときには、診断処理(△Q/△Vの演算)を行わないようにしてもよい。このように診断処理をスキップした場合、電池劣化診断部4’は、再び選択処理を行い、少なくとも一方の過渡応答データが前回とは異なるように、再び2つ過渡応答データ(第1過渡応答データおよび第2過渡応答データ)を選択するよう構成できる。

【0064】
[データ抽出方法]
次に、本実施形態に係るデータ抽出方法について説明する。本実施形態に係るデータ抽出方法は、抽出ステップと診断ステップとを含む。

【0065】
抽出ステップは、第2実施形態に係るデータ抽出装置1’が電流測定データから複数の過渡応答データを抽出するステップであり、第1実施形態と大部分が共通している。すなわち、抽出ステップは、
(1)電流測定データにおいて、電流値の変化量が第1閾値X1以上となる第1区間を特定する第1ステップと、
(2)第1区間の始点と連続し、始点の電流値に対する変化量が第1閾値X1よりも小さい第2閾値X2以下となる前区間を特定する第2ステップと、
(3)第1区間の終点と連続し、終点の電流値に対する変化量が第1閾値X1よりも小さい第3閾値X3以下となる後区間を特定する第3ステップと、
(4)前区間の始点から後区間の終点までの電流値データを過渡応答データとして抽出する第4ステップと、
を含む。

【0066】
診断ステップは、第2実施形態に係るデータ抽出装置1’が、抽出ステップにおいて抽出した複数の過渡応答データから2つの過渡応答データ(第1過渡応答データと第2過渡応答データ)を選択し、当該第1過渡応答データおよび第2過渡応答データに基づいてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断するステップである。

【0067】
具体的には、診断ステップは、
(1)複数の過渡応答データから第1過渡応答データと第2過渡応答データとを選択するステップと(例えば、図10参照)、
(2)第1過渡応答データにおいて電流値が第1閾値X1以上変化した後の第1電流値A1から第2過渡応答データにおいて電流値が第1閾値X1以上変化した後の第2電流値A2までの各電流値(A1、・・・、A2)と、第1電流値A1の測定時における第1電圧値V1から第2電流値A2の測定時における第2電圧値V2までの各電圧値(V1、・・・、V2)とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果にサンプリング間隔△Tを乗算した電力積分値△Q(=(V1×A1+・・・+V2×A2)×△T)を算出するステップと、
(3)第1電流値A1の測定時におけるリチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VE1と第2電流値A2の測定時におけるリチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VE2との差分△V(>0)を算出するステップと、
(4)電力積分値△Qを差分△Vで除算した値を劣化指標△Q/△Vとし、劣化指標△Q/△Vに基づいてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断するステップと、
を含む。なお、各ステップは、電池劣化診断部4’の選択処理、第1算出処理、第2算出処理および診断処理と同様であるため、説明を省略する。

【0068】
[データ抽出プログラム]
次に、本実施形態に係るデータ抽出プログラムについて説明する。本実施形態に係るデータ抽出プログラムは、コンピュータに第2実施形態に係るデータ抽出方法を実行させるためのものである。換言すれば、コンピュータを第2実施形態に係るデータ抽出装置1’として機能させるためのものである。

【0069】
結局、本実施形態に係るデータ抽出装置1’、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムによれば、過渡応答特性を有するリチウムイオン二次電池の測定データからリチウムイオン二次電池の電池劣化の診断に適した過渡応答データを自動的に抽出することができる。さらに、本実施形態に係るデータ抽出装置1’、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムによれば、抽出した2つの過渡応答データ(第1過渡応答データと第2過渡応答データ)に基づいて劣化指標△Q/△Vを算出することで、劣化指標△Q/△Vを用いてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断することができる。

【0070】
ところで、リチウムイオン二次電池の電池劣化には、内部抵抗に変化が見られなくても電池容量が減少(劣化)している場合や、電池容量に変化が見られなくても内部抵抗が増加(劣化)している場合や、内部抵抗も電池容量も劣化している場合がある。図11に、充放電回数に対するリチウムイオン二次電池の電池容量[kWh](図11の実線)、抵抗RB1[Ω](図11の黒の丸)、劣化指標△Q/△V[kWh/V](図11の黒の四角)の関係を示す。なお、図11において、一点鎖線は抵抗RB1の近似曲線を示し、破線は劣化指標△Q/△Vの近似曲線を示す。また、比較のために、縦軸のスケールを調整している。

【0071】
図11(A)および(B)において、リチウムイオン二次電池の電池容量は、リチウムイオン二次電池をフル充電した後にフル放電させて測定したものである。抵抗RB1は、第1実施形態に係るデータ抽出装置1で測定したものである。劣化指標△Q/△Vは、第2実施形態に係るデータ抽出装置1’で測定したものであるが(A)の劣化指標△Q/△Vは、リチウムイオン二次電池のSOC全領域での劣化指標△Q/△Vの平均値であるのに対して、(B)の劣化指標△Q/△Vは、リチウムイオン二次電池のSOCが40%未満での劣化指標△Q/△Vの平均値である。

【0072】
図11(A)および(B)に示されているように、抵抗RB1は、充放電回数が増えるにつれて増加している。一方、劣化指標△Q/△Vとリチウムイオン二次電池の電池容量は、充放電回数が増えるにつれてほぼ同じ傾向で減少している。特に、図11(A)では、劣化指標△Q/△Vがリチウムイオン二次電池本来の電池容量の変化をかなり正確に表現できていることが分かる。また、図11(B)においても、劣化指標△Q/△Vについて不安定性(推定バラツキの増加)が観察されるものの、充放電回数の増加に伴う減少傾向が観察される。以上のことから、劣化指標△Q/△Vを測定することで、リチウムイオン二次電池の電池容量の劣化を診断できること、より詳しくは、測定領域が低SOC領域(ここでは、SOC40%未満の領域)の場合であっても、電池容量の劣化を診断でき、測定領域がSOC全領域の場合は、より正確に電池容量の劣化を診断できることが分かる。すなわち、第1実施形態によればリチウムイオン二次電池の内部抵抗の劣化を診断することができ、第2実施形態によればリチウムイオン二次電池の電池容量の劣化を診断することができる。

【0073】
したがって、第1実施形態と第2実施形態とを併用することで、具体的には、第1実施形態の電池劣化診断部4に電池劣化診断部4’の機能を追加するか、または第2実施形態の電池劣化診断部4’に電池劣化診断部4の機能を追加することで、リチウムイオン二次電池の電池劣化を、(1)内部抵抗のみが劣化している場合と、(2)電池容量のみが劣化している場合と、(3)内部抵抗も電池容量も劣化している場合とに大別できる。

【0074】
例えば、自動車用のリチウムイオン二次電池は、内部抵抗が劣化していると自動車用として使用することはできないが、電池容量が劣化していなければ(劣化が比較的少ない場合も含む)、家庭用のリチウムイオン二次電池として再利用することができる。第1実施形態と第2実施形態とを併用することで、このように再利用可能なリチウムイオン二次電池を選別することができる。

【0075】
以上、本発明に係るデータ抽出装置、データ抽出方法およびデータ抽出プログラムの各実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。

【0076】
(第1実施形態に関する変形例)
例えば、上記第1実施形態に係るデータ抽出装置1では、記憶部2および抽出部3と、電池劣化診断部4および入力受付部5とを別々の装置にすることができる。この場合、記憶部2および抽出部3のみが、本発明に係るデータ抽出装置となる。さらに、この場合、第5ステップを除く第1~第4ステップが本発明に係るデータ抽出方法に含まれることになり、データ抽出プログラムは、第5ステップを含まないデータ抽出方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとなる。

【0077】
第1区間の範囲(データ数)が3以上に設定されている場合、第1処理および第1ステップにおける電流値の変化量は、第1区間の始点の電流値データと第1区間の終点の電流値データとに基づいて演算することができる。例えば、第1区間の範囲(データ数)が3の場合、抽出部3は、電流測定データに含まれるn個目の電流値データと(n+2)個目の電流値データとに基づいて電流値の変化量を演算することができる。なお、前区間の範囲および後区間の範囲は、いずれも第1区間の範囲よりも広く(データ数が多く)なるように設定されることが好ましい。

【0078】
また、上記第1実施形態において、回生機能を持たない電動バイクを例に挙げたが、もちろん回生機能を有するハイブリッドカーにも本発明を適用することができる。この場合、第1区間における放電から電流遮断への電流変化を検出するのみならず、充電から電流遮断への変化を検出するものであってもよい。

【0079】
さらに、前区間と後区間の電流変化量がそれぞれの閾値以内であれば、第1区間における電流変化が多少オーバーシュートもしくはアンダーシュートしても、若干の補正を加えるだけで本発明が適用できる。例えば、電流が放電から(電流遮断を通りこして)充電に変化したとしても、その後の(後区間における)電流変化が小さければ充電時の電圧は単調増加(逆に、充電から放電に変化した場合には単調減少)することが予測されるので、その分を補正すれば、電流遮断時の電圧変化を推定することができる。つまり、これらはモデルAやモデルBに相当する推定手法である。

【0080】
(第2実施形態に関する変形例)
第1実施形態の電池劣化診断における抵抗RB1の算出にはモデルCを利用したデータ抽出プログラムによる手段(データ抽出方法またはデータ抽出装置)を用いることが有効であるが、第2実施形態の電池劣化診断における劣化指標△Q/△Vの算出は、モデルCを利用したデータ抽出プログラム(データ抽出方法またはデータ抽出装置)に依存せずに任意の2点間での電力積分値を使用することも可能である。ただし、モデルCを利用したデータ抽出プログラム等に依存しないためには、抵抗RB1の推定やSOCの推定を実行できるモデルAやモデルB等の他の手法の適用が必要である。なお、モデルAとかモデルBでは、モデルCのように電流遮断後を前提としていないため、電流が零ではない、過渡応答時の電流の任意波形を対象とすることになる。

【0081】
電流が零ではない過渡応答時の電流波形を対象とする場合、下記のとおり、過渡応答時における等価回路(モデルC’)の回路パラメータを利用して劣化指標△Q/△Vを算出することで、上記第2実施形態とほぼ同様に、リチウムイオン二次電池の電池容量の劣化を診断することができる。

【0082】
図12に、過渡応答時における等価回路(モデルC’)を示す。この等価回路は、図3に示す等価回路(モデルC)に、内部電圧Vの電圧偏差△Vを出力する電圧源△Eを追加したものである。電圧偏差△Vは図2(A)の等価回路にも存在するが、図2(A)の電圧偏差△Vが任意の関数であるのに対して、モデルC’における電圧偏差△Vは、線形関数である。この等価回路(モデルC’)から、リチウムイオン二次電池の過渡応答時の端子電圧Vは、下記の(3)式で与えられる。
【数3】
JP0006161133B2_000004t.gif
(3)式の△Vは、上記のとおり、リチウムイオン二次電池の充電や放電による内部電圧Vの変化を表現する項であり、電流が一定の場合には、単調に時間変化する線形関数である。△Vは、放電の場合は単調減少し、充電の場合は単調増加する。

【0083】
また、図13(A)~(C)に示すように、電流が零ではない過渡応答時(モデルC’)の電圧変化I(図13(A)参照)は、電流が零になる過渡応答時(モデルC)の電圧変化II(図13(B)参照)に、内部電圧Vの電圧偏差△Vにより表現される電圧変化IIIを加えたもの(または、電圧変化IIIを差し引いたもの)であることからも(図13(C)参照)、電流が零ではない過渡応答時のリチウムイオン二次電池の端子電圧Vは、上記の(3)式で与えられることが分かる。

【0084】
したがって、等価回路(モデルC’)の回路パラメータを利用する場合、電池劣化診断部4’は、
(1)選択処理において、抽出部3が抽出した複数の過渡応答データから、電流が零ではない過渡応答時の第1過渡応答データおよび第2過渡応答データを選択し、
(2)第1算出処理において、第1過渡応答データ内の第1電流値A1から第2過渡応答データ内の第2電流値A2までの各電流値(A1、・・・、A2)と、第1電流値A1の測定時における第1電圧値V1から第2電流値A2の測定時における第2電圧値V2までの各電圧値(V1、・・・、V2)とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果にサンプリング間隔△Tを乗算した電力積分値△Q(=(V1×A1+・・・+V2×A2)×△T)を算出し、
(3)第2算出処理において、第1電流値A1の測定時におけるリチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VE1(=(3)式の内部電圧V(V1)+電圧偏差△V(V1))と第2電流値A2の測定時におけるリチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VE2(=(3)式の内部電圧V(V2)+電圧偏差△V(V2))との差分△V(>0)を算出し、
(4)診断処理において、電力積分値△Qを差分△Vで除算した値を劣化指標△Q/△Vとし、劣化指標△Q/△Vに基づいてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する。

【0085】
さらに、上記第2実施形態では、モデルCで求めた時点と、他のモデルAやモデルBで推定した時点の2点間での電力積分値△Qを算出していくような、組み合わせも可能である。例えば、第1過渡応答データに含まれる第1電流値A1から別の方法(モデルAやモデルBを利用した方法)で抽出した第3過渡応答データに含まれる第3電流値A3までの各電流値(A1、・・・、A3)と、第1電圧値V1から第3電流値A3の測定時における第3電圧値V3までの各電圧値(V1、・・・、V3)とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果にサンプリング間隔△Tを乗算した電力積分値△Q(=(V1×A1+・・・+V3×A3)×△T)を算出してもよい。

【0086】
また、上記第2実施形態では、2つの過渡応答データ(第1過渡応答データと第2過渡応答データ)から算出した劣化指標△Q/△Vを用いて、リチウムイオン二次電池の電池劣化を診断しているが、1つの過渡応答データのみから算出した劣化指標△Q/△Vを用いて、リチウムイオン二次電池の電池劣化を診断してもよい。

【0087】
例えば、第1過渡応答データのみを用いる場合、電池劣化診断部4’は、
(1)複数の過渡応答データから第1過渡応答データを選択する選択処理と、
(2)第1過渡応答データにおいて電流値が第1閾値X1以上変化した後の第1電流値A1から当該第1過渡応答データの後区間内の電流値Aまでの各電流値(A1、・・・、A)と、第1電流値A1の測定時における第1電圧値V1から電流値Aの測定時における電圧値Vまでの各電圧値(V1、・・・、V)とを乗算して各乗算結果を加算するとともに、その加算結果にサンプリング間隔△Tを乗算した電力積分値△Q(=(V1×A1+・・・+V×A)×△T)を算出する第1算出処理と、
(3)第1電流値A1の測定時におけるリチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VE1と電流値Aの測定時におけるリチウムイオン二次電池のSOCに対応する電圧VEとの差分△V(>0)を算出する第2算出処理と、
(4)電力積分値△Qを差分△Vで除算した値を劣化指標△Q/△Vとし、劣化指標△Q/△Vに基づいてリチウムイオン二次電池の電池劣化を診断する診断処理と、
を実行する。

【0088】
この変形例の方法(1つの過渡応答データのみから劣化指標△Q/△Vを算出する方法)と、上記第2実施形態の方法(2つの過渡応答データから劣化指標△Q/△Vを算出する方法)は、下記の点を踏まえて使い分けることが好ましい。
(1)上記第2実施形態の方法は、電流変化(過渡応答)の頻度が高く、抽出される過渡応答データの出現頻度が高い場合に、有効である。
(2)この変形例の方法は、電流変化(過渡応答)の頻度が低く、抽出される過渡応答データの出現頻度が低いものの、電流変化後(過渡応答後)の電流値が一定となる時間が継続する場合(放電状態または充電状態が継続する場合)に、有効である。

【0089】
なお、この変形例における第1過渡応答データの範囲は、上記第2実施形態における第1過渡応答データの範囲よりも広い方が好ましい。

【0090】
(その他の変形例)
上記各実施形態では、二次電池としてリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、本発明に係るデータ抽出装置およびデータ抽出方法は、過渡応答特性を有する二次電池であれば、リチウムイオン二次電池以外にも適用することができる。

【0091】
また、本発明は車やバイクなどの輸送手段以外にも、例えば住宅への電力供給用の太陽光発電システムにおける蓄電池にも適用できる。この種のシステムにおいても天候の急激な変化等により充放電電流が遮断もしくはそれに近い状態に変化する場合があるからである。ただし、車やバイクと比べて全般的に変化が緩いので、それに合わせてサンプリング間隔を長くする(例えば2秒以上)など、若干の最適化は必要である。
【符号の説明】
【0092】
1、1’ データ抽出装置
2 記憶部
3 抽出部
4、4’ 電池劣化診断部
5 入力受付部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12