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明細書 :フィルター

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-029908 (P2017-029908A)
公開日 平成29年2月9日(2017.2.9)
発明の名称または考案の名称 フィルター
国際特許分類 B01D  39/14        (2006.01)
FI B01D 39/14 D
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2015-151509 (P2015-151509)
出願日 平成27年7月31日(2015.7.31)
発明者または考案者 【氏名】内村 浩美
【氏名】薮谷 智規
出願人 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100134979、【弁理士】、【氏名又は名称】中井 博
【識別番号】100167427、【弁理士】、【氏名又は名称】岡本 茂樹
審査請求 未請求
テーマコード 4D019
Fターム 4D019AA03
4D019BA04
4D019BA12
4D019BA13
4D019BB07
4D019BC13
4D019BD02
4D019CA03
4D019CB06
4D019CB10
要約 【課題】所望のフィルター効果を簡単に調整でき、しかも、異なるサイズの物質を含有する生体試料から所望のサイズの物質を抽出できることを目的とする。
【解決手段】シート2を巻いて形成された筒状のフィルター1であって、シート2は、基材3と、基材3の表面に繊維材料6によって形成されたフィルター層5と、を備えている。繊維材料6の線幅や長さ、素材、密度を調整すれば、フィルター層5のフィルター効果を調整することができる。また、シート2におけるフィルター1となった際にフィルター1の軸方向に沿って、複数のフィルター層5が形成されている。すると、各フィルター層5の繊維材料6の線幅や長さ、素材、密度を調整すれば、フィルター層5毎にフィルター効果を変更することができる。すると、筒状のフィルター1の軸方向から濾過等する液体をフィルター1に供給すれば、所望の位置で所望の物質等を捕捉することができる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
シートを巻いて形成された筒状のフィルターであって、
前記シートは、
基材と、該基材の表面に繊維材料によって形成されたフィルター層と、を備えている
ことを特徴とするフィルター。
【請求項2】
前記シートにおける該フィルターとなった際における該フィルターの軸方向に沿って、複数のフィルター層が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のフィルター。
【請求項3】
前記複数のフィルター層は、
隣接するフィルター層の端縁同士が接触または重なるように形成されている
ことを特徴とする請求項2記載のフィルター。
【請求項4】
前記複数のフィルター層は、
繊維材料を含む液体を塗布して形成されたものであり、
一のフィルター層が乾燥する前に、隣接するフィルター層を塗布して形成されたものである
ことを特徴とする請求項3記載のフィルター。
【請求項5】
前記基材は、
その両面に親水性の官能基を有しており、
前記塗布されたフィルター層が乾燥する前に、前記シートを巻いて該フィルターを形成する
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のフィルター。
【請求項6】
シートを巻いて形成された筒状のフィルターであって、
前記シートは、
該シートにおける該フィルターとなった際における該フィルターの軸方向に沿って、複数の密度の異なる層が形成されている
ことを特徴とするフィルター。
【請求項7】
前記複数の密度の異なる層は、
前記シートに目詰まりを生じさせて形成されたものである
ことを特徴とする請求項6記載のフィルター。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液体に固形の不純物などが含まれている場合、この不純物を液体から除去する場合には、ろ紙等の濾過部材が使用される。かかる濾過部材には、液体を通すことができる程度の空隙や流路が形成されており、その空隙や流路の径よりも大きい物質は空隙や流路を通過できないので、液体から分離することができる。
【0003】
また、空隙や流路の径よりも小さいものであれば、固形物であっても濾過部材を通過できるので、特定の物質だけを液体中に残留させることもできる。すると、濾過部材によって特定の物質(目的物質)を他の物質(除去物質)から分離回収することも可能となる。
【0004】
ところで、液体中の除去物質が目的物質よりも大きい場合、液体から除去物質を除去するのであれば、空隙や流路の径(保留粒子径)が小さいフィルターを使用することが望ましい。具体的には、液体中の除去物質のうち、目的物質よりも大きいが除去物質のうち最も小さいものでも捕捉できる保留粒子径を有するフィルターを使用することが望ましい。
【0005】
しかし、上記のごときフィルターを使用して液体を濾過した場合には、大きな分子等によってフィルターがすぐに目詰まりしてしまい、濾過を実施できなくなる。逆に、保留粒子径がある程度大きいフィルターを使用した場合には目詰まりは生じない。しかし、濾過した後の液体には、目的物質以外の物質が多数存在する状態となるので、除去物質が一定量以下となるまで除去するには、フィルターの保留粒子径を変更しながら(順次保留粒子径の小さいフィルターに変更しながら)、複数回の濾過をしなければならない。
【0006】
このような状況から、一度の濾過でも目詰まりを防ぎつつ除去物質が一定量以下となるように濾過を行うものとして、様々な保留粒子径を有する複数の素材を組み合わせたフィルターが使用されている(特許文献1、2)。特許文献1、2の技術には、異なる素材で形成されたシート、つまり、保留粒子径が異なるシートを積層して形成したフィルターをホルダー内に入れた濾過器が開示されている。具体的には、濾過器のホルダーには、生体試料を供給する側から濾過された生体試料を排出する側に向かって、保留粒子径が順に小さくなるように積層された複数枚のシートからなるフィルターが収容されている。
【0007】
この濾過器のホルダーをシリンジ等の先端に取り付けて、シリンジ等から生体試料等の液体をフィルターに供給すれば、液体をフィルターに通して濾過することができる。つまり、供給された液体は、保留粒子径が大きいシートによって大きな分子等が除去されてから、保留粒子径が小さいシートに供給される。すると、大きな分子等によって保留粒子径が小さいシートが目詰まりするなどの問題は生じない。そして、サイズの異なる物質をそれぞれ適切な保留粒子径のシートによって捕捉することができるので、液体に含まれる物質をフィルターによって適切に濾過できる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2008-232785号公報
【特許文献2】特許3670288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1、2の技術では、異なる素材で形成されたシート(つまり保留粒子径が異なるシート)を複数枚積層してフィルターを形成した後、このフィルターをホルダー内に収容するので、濾過器の製造工程が煩雑となる。また、異なる素材で形成されたシートを積層してフィルターを形成しているので、シート同士を連結することが困難であるなど、フィルターの製造においても制約がある。
【0010】
また、異なる素材で形成されたシートを積層しているので、各シート間には界面が形成されてしまう。すると、この界面を通って濾過した生体試料がリークすることもあり、正確な濾過を達成できない場合がある。
【0011】
さらに、各シートを異なる素材で形成しているので、各シートの強度がバラバラである。このため、フィルターに強い圧力がかかった場合、強度が弱い部分で圧力が抜ける(素材が変形することにより圧力を吸収する)現象が生じる可能性がある。つまり、フィルター内に、シートの変形により空間や大きな空隙が形成されてしまう可能性がある。かかる変形は実質的に各シートの保留粒子径を変化させることになり、適切な濾過ができない可能性がある。しかも、各シートの保留粒子径が変化すれば、大きな粒子等が保留粒子径の小さいシートまで到達して、このシートの目詰まりを生じさせることも考えられる。
【0012】
したがって、一度の濾過でも、目詰まりを防ぎつつ除去物質が一定量以下となるように濾過でき、しかも、製造が容易であり耐久性等にも優れたフィルターが求められている。
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、所望のフィルター効果を簡単に調整でき、しかも、異なるサイズの物質を含有する生体試料から所望のサイズの物質を抽出できるフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明のフィルターは、シートを巻いて形成された筒状のフィルターであって、前記シートは、基材と、該基材の表面に繊維材料によって形成されたフィルター層と、を備えていることを特徴とする。
第2発明のフィルターは、第1発明において、前記シートにおける該フィルターとなった際に該フィルターの軸方向に沿って、複数のフィルター層が形成されていることを特徴とする。
第3発明のフィルターは、第2発明において、前記複数のフィルター層は、隣接するフィルター層の端縁同士が接触または重なるように形成されていることを特徴とする。
第4発明のフィルターは、第3発明において、前記複数のフィルター層は、繊維材料を含む液体を塗布して形成されたものであり、一のフィルター層が乾燥する前に、隣接するフィルター層を塗布して形成されたものであることを特徴とする。
第5発明のフィルターは、第1、第2、第3または第4発明において、前記基材は、その両面に親水性の官能基を有しており、前記塗布されたフィルター層が乾燥する前に、前記シートを巻いて該フィルターを形成することを特徴とする。
第6発明のフィルターは、シートを巻いて形成された筒状のフィルターであって、前記シートは、該シートにおける該フィルターとなった際における該フィルターの軸方向に沿って、複数の密度の異なる層が形成されていることを特徴とする。
第7発明のフィルターは、第6発明において、前記複数の密度の異なる層は、前記シートに目詰まりを生じさせて形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、フィルター層が繊維材料によって形成されているので、繊維材料の線幅や長さ、素材、密度を調整すれば、フィルター層のフィルター効果を調整することができる。
第2発明によれば、各フィルター層の繊維材料の線幅や長さ、素材、密度を調整すれば、フィルター層毎にフィルター効果を変更することができる。すると、筒状のフィルターの軸方向から濾過等する液体をフィルターに供給すれば、所望の位置で所望の物質等を捕捉することができる。
第3発明によれば、隣接するフィルター層間の境界をなくすことができるので、境界部分における液体の流れ(移動)をスムースにすることができる。
第4発明によれば、複数のフィルター層を、全てのフィルター層を同時に形成した場合と同等の効果を得ることができる。つまり、複数のフィルター層を一体の層とすることができるので、液体の流れ(移動)をよりスムースにすることができる。
第5発明によれば、シートを巻けば、繊維材料が隣接する基材を結合する接着剤のように機能する。したがって、接着剤等を使用しなくても、筒状の形状をしっかりと維持したフィルターを形成することができる。
第6、第7発明によれば、筒状のフィルターの軸方向から濾過等する液体をフィルターに供給すれば、所望の位置で所望の物質等を捕捉することができる。しかも、フィルターの断面全体をろ過に使用できるので、濾過性能を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は本発明のフィルター1の概略側面図であり、(B)は本発明のフィルター1の概略端面図である。
【図2】本発明のフィルター1の概略断面斜視図である。
【図3】本発明のフィルター1を使用したろ過作業の概略説明図である。
【図4】本発明のフィルター1を構成するシート2の概略平面図である。
【図5】シート2から本発明のフィルター1を製造する作業の概略説明図である。
【図6】(A)は空隙5hの径が変化するフィルター層5を有するフィルター1の概略側面図であり、(B)は空隙5hの径が変化するフィルター層5を備えた概略平面図である。
【図7】(A)は本発明のフィルター1Bを形成するシート2の概略平面図であり、(B)は(A)のB-B線断面矢視図である。
【図8】本発明のフィルター1Bの概略断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のフィルターは、流体に含まれる物質を捕捉したり、流体に特定の物質が含まれるように流体から他の物質を除去したりするために使用されるフィルターである。

【0018】
本発明のフィルターは、種々の流体のろ過に使用することができる。例えば、生体試料や、液体状医薬品、水質、環境試料、工業試料等を挙げることができる。なお、前述した生体試料とは、生体から採取した試料を含む液体である。例えば、鼻汁、血液等の液体や、便、吐瀉物、食品、臓器、粘膜拭浄綿棒等を水などの液体に溶解させた溶解液等を挙げることができる。水質、環境試料としては、海水、湖水、池水、工業用水、農業用水、水道水、工業排水、廃棄物等を挙げることができる。工業試料としては、工業排水、製品洗浄液、エッチング液等を挙げることができる。

【0019】
また、本発明のフィルターによって流体に特定の物質(目的物質)が含まれるように他の物質(除去物質)を除去する場合において、流体に残留させる目的物質もとくに限定されない。例えば、目的物質を含む液体(ろ過後の液体)を免疫学的手法による検査に使用する場合であれば、かかる検査の対象となるウイルスやタンパク質・アミノ酸、脂質等を挙げることができる。環境試料においては、岩石、廃棄物、食品、水圏サンプルを挙げることができる。

【0020】
(本発明のフィルター)
図1および図2に示すように、本発明のフィルター1は、シート2を巻いて筒状に形成された部材である。本発明のフィルター1では、シート2として、基材3の表面にフィルター層5を設けたものを使用している。そして、本発明のフィルター1では、その軸方向から濾過する対象となる流体を供給することによって、基材3の間に位置するフィルター層5によって流体をろ過するという特徴を有している。

【0021】
従来、筒状に形成されたフィルターの多くは、フィルターを形成するシート材の表面をろ過面として使用するので、その半径方向に沿ってろ過する流体を流すことによってろ過を実施する(例えば、特許第5164241号公報、特開2014-87735号公報等)。この従来のフィルターでは、ろ過する流体を流す方向においてフィルター内に境界(シート材同士の表面が接触している部分)が生じるので、この境界から流体のリーク等が生じる可能性がある。
一方、本発明のフィルター1では、基材3の間に位置するフィルター層5で流体をろ過する点において、上記のごとき従来の筒状に形成されたフィルターと相違する。そして、本発明のフィルター1では、ろ過する流体を流す方向においてフィルター層5内に境界等が存在しない状態とできるので、従来のフィルターのような境界における流体のリークなどの問題が生じないという利点が得られる。また、フィルター層5は、後述するように、繊維材料で形成された繊維層となっている。このため、毛管を多数配置したのと同様の効果を有しており、円滑に流体を移送できるという利点を有している。

【0022】
また、筒状に形成されたフィルターでも、その軸方向から流体を供給して濾過するものもある(例えば、特開平10-137511号公報)。この従来のフィルターでは、フィルターを形成するシート間の隙間に物質を捕捉するものであるので、シート間において隙間の広い部分が形成されると、そこから流体のリークが生じるという問題がある。また、流体は、シート間の隙間を移動することとなるが、流体を移動させる駆動に欠けることから、通常は、ポンプや重力等を利用した圧力送液などのように、送液に一定の装置を設けたりスムースにシート間の隙間に流体を流すための工夫をしたりする必要がある。
一方、本発明のフィルター1では、基材3の間に位置するフィルター層5の接着効果によって基材3を密着し、上記従来のフィルターのようなリークなどの問題が生じないという利点が得られる。また、送液に関しても、フィルター層5の繊維層空隙を利用した毛管現象により流体は自然に(無重力下でも)流動させることができる。このため、ポンプや重力印加(流体を位置的に高い位置に配置すること)等による圧力送液を行わなくてもよいという利点も得られる。

【0023】
以上のごとく、本発明のフィルター1は、基材3の表面にフィルター層5を設けたシート2を巻いて円筒状とし、その軸方向から濾過する対象となる流体を供給するので、従来の円筒状のフィルターにおいて問題となるリークを防止できるという特徴を有している。
以下、本発明のフィルター1の構造を説明する。

【0024】
(フィルター1の構造)
上述したように、本発明のフィルター1は、基材3の表面にフィルター層5を設けたシート2を巻いて円筒状としたものである。

【0025】
まず、フィルター層5は、繊維材料6によって形成された層である。このフィルター層5では、繊維材料6が絡み合って内部に網目状の空隙5hが形成されている(図1参照)。この繊維材料6としては、例えば、セルロースなどの天然繊維やポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ガラス等の人工繊維等を使用することができる。

【0026】
基材3は、ろ過対象となる流体を通さない素材によって形成されたシート状の部材である。かかる素材によって基材3を形成すれば、フィルター1の軸方向から流体を流した場合、基材3を通って流体がリークすることがない。つまり、フィルター1に供給される流体を確実にフィルター層5に通すことができる。かかる基材3の素材としては、例えば、耐水紙やプラスチックフィルム等を使用することができる。

【0027】
以上のごとき構成であるので、シート2を巻いて円筒状としてフィルター1を形成すれば、基材3の間に挟まれた状態のフィルター層5が存在するフィルター1となる。このフィルター1にその軸方向から流体を供給すれば、基材3は流体を通さないので、流体はフィルター層5だけを通って軸方向に沿って流れる。すると、流体に含まれるフィルター層5の空隙5hよりも大きい物質はフィルター層5に捕捉されるので、フィルター1によって流体を除去することができる。

【0028】
とくに、ろ過する流体が液体の場合には、フィルター層5の空隙5hが小さければ、フィルター層5に液体が接触すれば毛細管現象によって液体はフィルター層5内に導入される。つまり、フィルター1に液体を通す際に、毛細管現象も利用できるので、フィルター1への液体の送液圧を低くしても、液体をフィルター1に通すことができる。

【0029】
また、ろ過する流体が液体の場合には、基材3を耐水紙で形成し、フィルター層5の繊維材料6にセルロース繊維を使用すれば、フィルター1全体を紙材料で形成することができる。すると、使用後のフィルター1の廃棄処理が容易になるという利点が得られる。

【0030】
(空隙5hの径が変化するフィルタ1)
また、フィルター層5は、その全体でほほ同じ空隙5hを有するように形成してもよい。しかし、空隙5hを、その大きさがフィルター層5内で均一ではなく、位置によって大きさが異なるように形成してもよい。具体的には、フィルター1の軸方向に沿って(流入面1aから流出面1bに向かって)、空隙5hの径が小さくなるようにフィルター層5を形成してもよい。

【0031】
例えば、フィルター1の軸方向と交差する断面において、その断面に存在するフィルター層5の空隙5hの径の平均値を算出する。すると、流入面1aから流出面1bに向かって、平均値が順次小さくなるようにフィルター層5を形成してもよい。別な観点で定義すると、フィルター1の軸方向と交差する断面におけるフィルター層5の保留粒子径が、流入面1aから流出面1bに向かって順次小さくなるようにフィルター層5を形成してもよい(図6参照)。なお、本明細書 でいう保留粒子径とは、JIS P3801で規定されたものを意味している。つまり、硫酸バリウムを自然濾過後、原液と濾液の硫酸バリウムの粒子数により効率を算出し、約99%以上分離している粒子径を保留粒子径としている。

【0032】
上記のごときフィルター層5を有するフィルター1の場合、サイズの異なる多数の物質がろ過する流体に含まれていても、各物質を適切な位置で捕捉できるので、フィルター1の目詰まりなどを防ぐことができる。

【0033】
そして、最小の空隙5hよりも大きい物質はフィルター層5で捕捉されるが、最小の空隙5hよりも小さい物質は流体とともにフィルター1を透過する。したがって、所定の目的物質よりも最小の空隙5hを大きくしておけば、フィルター1を含む生体試料から目的物質以外の物質を分離して、目的物質を含有する流体を得ることができる。

【0034】
(フィルター1を使用した濾過方法)
上述したフィルター1によって、流体を除去する場合を説明する。
以下では、上述したように、フィルター1の軸方向に沿って空隙5hの径が小さくなるようにフィルター層5を形成した場合において、多数の物質を含む生体材料をろ過する場合を説明する。

【0035】
なお、以下では、シリンジSの先端にフィルター1を配置したホルダーHを取り付けて、生体材料をシリンジSからホルダーHに供給してろ過する場合を代表として説明する。

【0036】
図3に示すように、ホルダーH内にフィルター1を配置する。つまり、ホルダーHにおいてシリンジSに取り付けられる側の開口(流入開口)と、先端のノズルNとの間をフィルター1で遮断するように、フィルター1を配置する。このとき、フィルター1は、流入面1aが流入開口に位置し、流出面1bがノズルN側に位置するように配置する。

【0037】
このとき、フィルター1は一体となった一つの筒状の塊であるので、ホルダーH内への設置が容易になる。

【0038】
なお、ホルダーH内にフィルター1がセットされた状態で提供される(市販される)場合には、濾過前にフィルター1を取り付けることは行わない。この場合、提供されるフィルター1を製造する段階において、ホルダーHにフィルター1をセットする作業が容易になる。すると、フィルター1が設けられたホルダーHの製造を効率よく実施することができる。

【0039】
フィルター1がセットされたホルダーHは、濾過対象となる生体材料が収容されたシリンジSの先端に取り付けられる。すると、生体材料の濾過作業の準備が完了する(図2参照)。

【0040】
濾過準備が完了すると、シリンジSのピストンPを押して、生体材料をフィルター1に供給する。すると、本発明のフィルター1のフィルター層5には空隙5hが形成されているので、フィルター層5に生体材料が流入する。すると、本発明のフィルター1のフィルター層5では、その厚さ方向に沿って、その径が順次減少するように空隙5hが形成されているので、比較的大きな粒子等は、流入面1aに近い側で捕捉されて生体材料から除去される。

【0041】
生体材料中の物質はフィルター1を通過する間に、その大きさに合わせて順次生体材料から除去される。そして、目的物質よりも若干大きい物質が流出面1bに近い側で捕捉されて、流出面1b近傍の平均径や保留粒子径よりも小さい物質、つまり、目的物質を含み、目的物質以外の物質が少ない生体材料がノズルNから流出する。

【0042】
以上のように本発明のフィルター1を使用して生体材料をろ過すれば、多数の物質を含む生体試料から目的物質以外の物質を分離して、目的物質を含有する生体試料を得ることができる

【0043】
しかも、本発明のフィルター1では、流入面1a近傍で大きな粒子等が捕捉されている。また、流出面1bの保留粒子径よりも比較的大きい物質は、流出面1b近傍まで生体材料が流れる間に捕捉される。したがって、流出面1b近傍の空隙1hよりも比較的大きい物質によって、流出面1b近傍の空隙1hが目詰まりすることを防ぐことができる。

【0044】
(他の濾過方法)
フィルター1による濾過方法は、上記の方法に限られない。流体が流れる配管内などに、その配管の軸方向とフィルター1の軸方向が一致するように、フィルター1を配置すれば、フィルター1によって配管内を流れる流体をろ過することができる。

【0045】
(空隙径について)
上述したように、本発明のフィルター1では、フィルター1の軸方向に沿って、順次径が減少するようにフィルター層5の空隙5hが形成されている。したがって、空隙5hの径やその変化状況を調整すれば、濾過する流体に適した濾過状態に調整することができる。つまり、流体に含まれる物質の大きさやその割合(混合量)に合わせて、空隙5hの径を調整すれば、流体に含まれる物質を適切に分離できる。つまり、フィルター1のフィルター層5内を流れる間に、厚さ方向の適切な位置で適切な物質を捕捉できるので、目的物質以外の物質を適切に除去した流体をより得やすくなる。

【0046】
フィルター1の空隙5hは、保留粒子径が1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.2μm以上となるように調整されていることが望ましい。具体的には、流出面1b(とのその近傍)の保留粒子径が、1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.2μm以上となるように形成されていることが望ましい。
なお、流入面1a(とのその近傍)の保留粒子径はとくに限定されず、流体中の比較的大きな固形物を除去することが可能な程度の保留粒子径に形成されていればよい。例えば、一般的な血液や便、痰、粘膜拭浄液等の生体材料や、液体状医薬品、水質、環境、工業試料等をろ過する場合であれば、流入面1a(とのその近傍)の保留粒子径は、10μm程度、好ましくは、15μm程度に形成されていてもよい。

【0047】
(シート2の製造方法)
上述したフィルター1は、シート2を筒状に巻いて形成されるが、このフィルター1を構成するシート2は、スクリーン印刷などの方法で製造することができる。

【0048】
例えば、図4に示すように、基材3の表面に、繊維材料6を含有する繊維含有液Lをスクリーン印刷等の方法で塗布して、所定の幅と厚さを有する帯状のフィルター層5を形成する。このとき、フィルター層5の長手方向が基材3の長手方向と平行となるようにフィルター層5を形成する。かかるフィルター層5を基材3の表面に形成すると、フィルター層5よりも外方の部分(図4(A)のCL線より外方)を切除する。最後に、外方の部分を切除した基材3(シート2に相当する)を巻いて筒状に形成すれば(図5(A)~(C)参照)、本発明のフィルター1を形成することができる。

【0049】
なお、基材3を巻くときには、図4(B)に示すように、フィルター層5が形成された面が内側になるように巻いてもよいし、外側になるように巻いてもよい。フィルター層5が形成された面が内側となるように巻いた場合には、最外面が基材3によって形成されることになるので、基材3がある程度の強度などを有する場合には、基材3自体に、上述したホルダーHの機能を発揮させることも可能となる。

【0050】
また、乾燥後の保留粒子径が異なるように、複数の繊維含有液L1~L3を調整し、各繊維含有液L1~L3によって、フィルター層5a~5cを形成すれば、軸方向に沿って空隙5hの径が順次減少するフィルター層5を有するフィルター1を形成することができる。

【0051】
具体的には、複数の繊維含有液L1~L3を、繊維含有液L1、L2、L3の順で、乾燥後の保留粒子径が小さくなるように調整する。このとき、繊維含有液L1~L3の調整は、繊維含有液L1~L3に含まれる繊維の長さ、繊維幅、繊維の種類によって調整することができる。例えば、繊維長や繊維幅が大きくなれば乾燥後の保留粒子径は大きくなる傾向となり、繊維長や繊維幅が小さくなれば乾燥後の保留粒子径は小さくなる傾向となる。

【0052】
上記のごとく調整された繊維含有液L1~L3のうち、まず、乾燥後の保留粒子径が一番大きい繊維含有液L1を、基材3の表面に帯状に塗布する。すると、フィルター層5aが形成される。

【0053】
ついで、フィルター層5aが乾燥する前に、繊維含有液L2を基材3となるシート3sの表面に帯状に塗布して、フィルター層5bを形成する。このとき、フィルター層5bがフィルター層5aと平行となるように繊維含有液L2を塗布する。しかも、フィルター層5bの幅方向の端部とフィルター層5aの幅方向の端部が、一部重なるかまたは接触した状態となるように、繊維含有液L2を塗布する。すると、フィルター層5aが乾燥する前にフィルター層5bを形成しているので、両層の端部間には境界ができず、両層がほぼ一体となった状態となる。

【0054】
ついで、フィルター層5bが乾燥する前に、繊維含有液L3を基材3となるシート3sの表面に帯状に塗布して、フィルター層5cを形成する。このとき、フィルター層5cがフィルター層5bと平行となるように繊維含有液L3を塗布する。しかも、フィルター層5cの幅方向の端部とフィルター層5bの幅方向の端部が、一部重なるかまたは接触した状態となるように、繊維含有液L3を塗布する。すると、フィルター層5bが乾燥する前に前にフィルター層5cを形成しているので、両層の端部間には境界ができず、両層がほぼ一体となった状態となる(図4(B)参照)。

【0055】
すると、フィルター層5aとフィルター層5bもほぼ一体になっているので、フィルター層5aからフィルター層5cまでがほぼ一体になった状態になる。つまり、基材3の表面に、フィルター層5aからフィルター層5cによって一つのフィルター層5が形成されたシート2が形成される(図4(B)参照)。

【0056】
この基材3において、フィルター層5aおよびフィルター層5cの外方に位置する部分((図6(B)のCL線より外方)を切除して基材3を巻けば、軸方向に沿って空隙5hの径が順次減少するフィルター層5を有するフィルター1を形成することができる(図4(A)参照)。

【0057】
なお、上記例では、乾燥後の保留粒子径が小さい繊維含有液L1から塗布する場合を説明したが、繊維含有液L1~L3を塗布する順番はとくに限定されない。

【0058】
また、3つの繊維含有液L1~L3を同時に塗布して3つのフィルター層5a~5cを同時に形成してもよい。

【0059】
さらに、上記例では、3つのフィルター層5a~5cによって一つのフィルター層5を形成した場合を説明したが、一つのフィルター層5を形成するフィルター層は、3つ以上でもよい。より多くのフィルター層で一つのフィルター層5を形成すれば、フィルター層間の空隙の差が小さくなるようにフィルター層5を形成することができる。

【0060】
(フィルター層5の素材)
フィルター層5を形成する繊維材料6の素材は、乾燥する際に水素結合する繊維であれば、とくに限定されない。例えば、セルロースなどの天然繊維やポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ガラス等の人工繊維等を使用することができる。また、繊維そのものが水素結合しない場合でも、水素結合をする微細繊維を中間材料として添加してもよい。例えば、セルロースの微細繊維とポリエチレンテレフタレート繊維、ガラス繊維を混合して使用する等の方法を採用することができる。

【0061】
なお、本発明のフィルター1を生体試料の濾過に使用する場合には、繊維材料6の素材には、濾過した生体試料を保持したり吸収したりすることなく、生体試料を通過させる素材が望ましい。これは以下の理由による。

【0062】
生体試料は、患者等から採取するものであるので、患者等の負担を考慮すれば、採取する生体試料の量は少ない方が望ましい。すると、本発明のフィルター1が濾過する生体試料は、できるだけろ過後に回収することが求められる。したがって、フィルター層5を形成する繊維材料6の素材には、濾過した生体試料を保持したり吸収したりすることなく、生体試料を通過させる素材が望ましい。具体的には、濾過素材として良く用いられるセルロースや、素材の性質を改質させて疎水性性質を有するようになった素材、また、両者を組み合わせた素材を使用することができる。例えば、セルロース系繊維とポリエチレンテレフタレート(PET)系繊維を組合せた素材であれば、前記性質を持たせることが可能である。つまり、かかる素材でフィルター層5を形成すれば、濾過性能と回収率両方を有するフィルター1を形成することができる。

【0063】
(基材3の素材)
基材3として、フィルター層5を形成する面(表面)が親水性の官能基を有するものを使用することが望ましい。この場合、基材3に繊維含有液Lを塗布した際に、フィルター層5の繊維材料6を基材3に強固に連結できる。すると、基材3の表面とフィルター層5との間に隙間等が形成されないので、両者間の隙間を流体がリークする等の問題が生じることを防止できる。

【0064】
さらに、基材3は、その裏面も親水性の官能基を有していることが望ましい。この場合、基材3の表面に塗布されたフィルター層5が乾燥する前に、シート2を巻いてフィルター1を形成すれば、フィルター層5と基材3の裏面も強固に連結できる。すると、接着剤や固定部材(例えば嵌合リングなど)をしなくても、シート2を巻いてフィルター1を筒状に維持することができる。しかも、フィルター層5と基材3の裏面を、フィルター層5と基材3表面と同様に、隙間等が形成されない状態とできるので、流体がリークする等の問題が生じることを防止できる。

【0065】
しかも、基材3の表面近傍でも、フィルター層5内部とほぼ同程度の保留粒子径となるので、フィルター1の半径方向の断面において、位置によるろ過状態のバラつきを小さくすることができる。

【0066】
(他の実施形態のフィルター1B)
上記例では、基材3の表面に複数のフィルター層5を形成したシート2を巻いてフィルター1を形成した場合を説明した。そして、基材3自体は、ろ過する流体を通過しないものを使用する場合を説明した。

【0067】
しかし、基材3に流体を透過する素材を使用して、フィルター1Bを形成してもよい。例えば、流体を透過する素材で形成された基材3自体にフィルター部7を設けてこの基材3を巻けば、フィルター1Bを形成することができる。つまり、基材3だけで形成されたシート2を使用すれば、基材3に流体を透過する素材を使用して、フィルター1Bを形成することができる。

【0068】
この場合も、フィルター部7として帯状の複数のフィルター部7a~7cを基材3に形成すれば、上述した「軸方向に沿って空隙5hの径が順次減少するフィルター層5を有するフィルター1」と同様の機能を有するフィルター1Bを形成することができる。つまり、基材3の幅方向に沿って、フィルター部7として帯状に複数のフィルター部7a~7cを形成し、各フィルター部7a~7cは、この順で保留粒子径が小さくなるようにする。すると、基材3を長尺方向に巻いたときに、軸方向に沿って保留粒子径が変化したフィルター部7a~7cを有するフィルター1Bを形成することができる。

【0069】
かかるフィルター1Bを形成する基材3(つまりフィルター部7が形成された基材)を製造する方法はとくに限定されない。例えば、異なる保留粒子径を有する帯状のフィルターをその軸方向(長尺方向)が平行となるように並べて、その幅方向の端部同士を連結して基材3を形成することができる。

【0070】
また、図7に示すように、繊維材料3bから形成されるシートに目詰まりを生じさせて、フィルター部7を有する基材3を形成することができる。つまり、シートの繊維材料3b間に形成される隙間3hを、ナノファイバーやビーズなどの充填部材7dによって塞いで、基材3にフィルター部7を形成する。この場合、フィルター部7が形成された部分の外方の部分を除去してから、基材3を巻けば、フィルター部7のみで形成された基材2からなるフィルター1Bを形成することができる。

【0071】
とくに、フィルター部7における充填部材7dの充填状態を調整すれば、保留粒子径が異なるフィルター部7a~7cが形成された基材3を形成することができる(図6(B)参照)。この場合には、複数のフィルター部7a~7cが形成された部分の外方(図6(A)のCL線より外方)を除去してから基材3を巻けば、軸方向に沿って保留粒子径が変化したフィルター1Bを形成することができる(図7参照)。

【0072】
基材3における繊維材料3b間に形成される隙間3hを埋める充填部材7dはとくに限定されない。基材3の繊維材料3b間に形成される隙間3hよりも小さく、また、繊維材料3bと接着剤なしても結合するものが望ましい。例えば、ナノファイバーやビーズなどを充填部材7dとして使用することができる。

【0073】
また、充填部材7dによって隙間3hを埋める方法もとくに限定されない。例えば、繊維材料3bと接着剤なしても結合する充填部材7dを使用する場合には、充填部材7dを含む液体を基材3に通して、隙間3hを埋めることができる。この場合には、液体に含まれる充填部材7dの量(つまり充填部材7dの濃度)を変化させれば、充填状態を調整できる。さらに、隙間を埋める方法として、熱や光硬化などで接着する繊維および充填部材を用いて、隙間3hを埋めることもできる。

【0074】
さらに、上述したように、充填部材7dを含む液体を基材3に通して基材3を形成する場合には、基材3が乾燥する前に基材3を巻いてフィルター1Bを形成する。すると、充填部材7dによって隣接する基材3を連結することができる。すると、接着剤や固定部材(例えば嵌合リングなど)をしなくても、基材3を巻いてフィルター1Bを筒状の形状に維持することができる。しかも、基材3間が充填部材7dによって埋められるので、フィルター1Bの半径方向の断面を境界が無い状態に近づけることができる。つまり、フィルター1Bを、一体形成されたような状態に近づけることができるので、フィルター1B断面において、位置によるろ過状態のバラつきを小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のフィルターは、イムノクロマト法を含めた免疫学的手法の生体試料、液体状医薬品、水質、環境試料、工業試料等の分析時の前処理具に適している。
【符号の説明】
【0076】
1 フィルター
1a 流入面
1b 流出面
2 シート
3 基材
5 フィルター層
5h 空隙
6 繊維部材
7 フィルター部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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