TOP > 国内特許検索 > 無人回転翼機及びプログラム > 明細書

明細書 :無人回転翼機及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-047736 (P2017-047736A)
公開日 平成29年3月9日(2017.3.9)
発明の名称または考案の名称 無人回転翼機及びプログラム
国際特許分類 B64D  25/00        (2006.01)
B64C  27/08        (2006.01)
B64C  13/20        (2006.01)
B64D  31/10        (2006.01)
G05D   1/00        (2006.01)
G05D   1/04        (2006.01)
B64C  39/02        (2006.01)
FI B64D 25/00
B64C 27/08
B64C 13/20 Z
B64D 31/10
G05D 1/00 B
G05D 1/04
B64C 39/02
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2015-171066 (P2015-171066)
出願日 平成27年8月31日(2015.8.31)
発明者または考案者 【氏名】大塚 作一
【氏名】鹿嶋 雅之
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
審査請求 未請求
テーマコード 5H301
Fターム 5H301AA06
5H301BB10
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
5H301GG17
5H301KK03
5H301KK19
要約 【課題】異常事態が生じた場合に、それが墜落に発展してしまうことを防止することができる無人回転翼機及びプログラムを提供する。
【解決手段】モータM1~M8の各々は、回転することで揚力を発生させる回転翼と共に回転翼ユニットを構成する。CPU108は、リモートコントローラ200から受信する操縦信号が表す進行すべき方向への飛行が実現されるように、モータM1~M8を制御する。また、CPU108は、センサ群104が出力する信号に基づいて、異常事態としての、モータM1~M8の故障を検出し、モータM1~M8のいずれかの故障を検出した場合には、操縦信号によらずに、機体が着地するように少なくとも残りのモータを制御する。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
各々揚力を発生させる複数の回転翼ユニットと、
異常事態を検出する異常検出手段と、
進行すべき方向へ機体が飛行するように、前記回転翼ユニットを制御し、かつ飛行中に前記異常検出手段によって異常事態が検出された場合には、機体が着地するように、前記回転翼ユニットを制御する制御手段と、
を備える無人回転翼機。
【請求項2】
前記異常検出手段が、前記各回転翼ユニットの故障を検出する故障検出手段を含み、
前記制御手段が、前記故障検出手段によっていずれかの前記回転翼ユニットの故障が検出された場合に、少なくとも残りの前記回転翼ユニットを制御することにより機体を着地させる請求項1に記載の無人回転翼機。
【請求項3】
前記回転翼ユニットを4個以上の偶数個備え、それら回転翼ユニットは平面視において機体の重心を挟んで対向する対が複数対構成されるように配置され、
前記制御手段が、機体を着地させるに際し、前記故障検出手段によって故障が検出された前記回転翼ユニット及び該回転翼ユニットと対をなす前記回転翼ユニットを停止させる請求項2に記載の無人回転翼機。
【請求項4】
外部から操縦操作又は現在位置を表す信号を受信する受信手段をさらに備え、
前記異常検出手段が、前記受信手段による前記信号の受信状態の悪化を前記異常事態として検出する受信状態悪化検出手段を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の無人回転翼機。
【請求項5】
前記異常検出手段が、前記無人回転翼機の動作に必要な電力の供給状態の異常、又は前記制御手段の制御動作の異常を、前記異常事態として検出する内部異常検出手段を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の無人回転翼機。
【請求項6】
前記異常検出手段が、機体のおかれた状況が飛行に適した状況から逸脱したことを前記異常事態として検出する状況異常検出手段を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の無人回転翼機。
【請求項7】
前記異常検出手段によって異常事態が検出された場合に、音及び/又は光による警報を発する報知手段をさらに備える請求項1から6のいずれか1項に記載の無人回転翼機。
【請求項8】
各々揚力を発生させる複数の回転翼ユニットと、
進行すべき方向へ機体が飛行し、かつ飛行に際し、平面視において機体周縁の或る部分が前記進行すべき方向を向くように、前記回転翼ユニットを制御する制御手段と、
を備える無人回転翼機。
【請求項9】
機体の外部から視認可能な部分に、平面視において機体の重心からみた前記或る部分の向きを特定することができる標識が付された請求項8に記載の無人回転翼機。
【請求項10】
各々揚力を発生させる複数の回転翼ユニットを備える無人回転翼機を制御するコンピュータに、
異常事態を検出する異常検出機能と、
進行すべき方向へ機体が飛行するように、前記回転翼ユニットを制御し、かつ飛行中に前記異常検出機能によって異常事態が検出された場合には、機体が着地するように、前記回転翼ユニットを制御する制御機能と、
を実現させるプログラム。
【請求項11】
各々揚力を発生させる複数の回転翼ユニットを備える無人回転翼機を制御するコンピュータに、
進行すべき方向へ機体が飛行し、かつ飛行に際し、平面視において機体周縁の或る部分が前記進行すべき方向を向くように、前記回転翼ユニットを制御する制御機能、
を実現させるプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、無人回転翼機及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の回転翼を備える飛行体である無人回転翼機が、娯楽のみならず、例えば、農薬の散布や空撮等の目的で利用されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2014-227155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(1)無人回転翼機が飛行している最中に、例えば、回転翼が故障したり、リモートコントローラからの電波が届かなくなったりするといった異常事態が生じることがある。異常事態が発生すると、無人回転翼機が予期しない方向へ飛んで行ったり、墜落したりする場合がある。
【0005】
特許文献1は、回転翼に故障が生じた場合に、故障した回転翼を停止させ、かつその停止により不足する揚力を残りの回転翼で補う無人回転翼機を開示し、かかる無人回転翼機によれば、回転翼が故障しても、姿勢の安定を保って飛行を継続できると説明している。
【0006】
しかし、回転翼が故障すると、健全な回転翼の個数は減り、揚力の不足を補う回転翼に負担がかかるため、無人回転翼機の信頼性が低下することは避けられない。信頼性が低下した状態で飛行を継続すると、例えば、次に残りの回転翼等に故障が生じた場合に、無人回転翼機が姿勢の安定を保てなくなる場合が生じうる。その場合、リモートコントローラを用いた操縦は殆ど不可能となるため、無人回転翼機が墜落する事態が生じかねない。
【0007】
(2)無人回転翼機は、例えばホバリング状態から平面視において360°いずれの方向にも進行できるため、周囲の人にとってはその動きが予測し難い。このため、例えば、無人回転翼機が人と接触する事態が生じかねない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、異常事態が生じた場合に、それが墜落に発展してしまうことを防止することができる無人回転翼機及びプログラムを提供することを第1の目的とする。
【0009】
また、本発明は、飛行中の動きが予測しやすい無人回転翼機及びこれを実現するためのプログラムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記第1の目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る無人回転翼機は、
各々揚力を発生させる複数の回転翼ユニットと、
異常事態を検出する異常検出手段と、
進行すべき方向へ機体が飛行するように、前記回転翼ユニットを制御し、かつ飛行中に前記異常検出手段によって異常事態が検出された場合には、機体が着地するように、前記回転翼ユニットを制御する制御手段と、
を備える。
【0011】
前記異常検出手段が、前記各回転翼ユニットの故障を検出する故障検出手段を含み、
前記制御手段が、前記故障検出手段によっていずれかの前記回転翼ユニットの故障が検出された場合に、少なくとも残りの前記回転翼ユニットを制御することにより機体を着地させてもよい。
【0012】
この場合、前記回転翼ユニットを4個以上の偶数個備え、それら回転翼ユニットは平面視において機体の重心を挟んで対向する対が複数対構成されるように配置され、
前記制御手段が、機体を着地させるに際し、前記故障検出手段によって故障が検出された前記回転翼ユニット及び該回転翼ユニットと対をなす前記回転翼ユニットを停止させてもよい。
【0013】
外部から操縦操作又は現在位置を表す信号を受信する受信手段をさらに備え、
前記異常検出手段が、前記受信手段による前記信号の受信状態の悪化を前記異常事態として検出する受信状態悪化検出手段を含んでもよい。
【0014】
前記異常検出手段が、前記無人回転翼機の動作に必要な電力の供給状態の異常、又は前記制御手段の制御動作の異常を、前記異常事態として検出する内部異常検出手段を含んでもよい。
【0015】
前記異常検出手段が、機体のおかれた状況が飛行に適した状況から逸脱したことを前記異常事態として検出する状況異常検出手段を含んでもよい。
【0016】
前記異常検出手段によって異常事態が検出された場合に、音及び/又は光による警報を発する報知手段をさらに備えてもよい。
【0017】
上記第2の目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る無人回転翼機は、
各々揚力を発生させる複数の回転翼ユニットと、
進行すべき方向へ機体が飛行し、かつ飛行に際し、平面視において機体周縁の或る部分が前記進行すべき方向を向くように、前記回転翼ユニットを制御する制御手段と、
を備える。
【0018】
機体の外部から視認可能な部分に、平面視において機体の重心からみた前記或る部分の向きを特定することができる標識が付されていてもよい。
【0019】
上記第1の目的を達成するために、本発明の第3の観点に係るプログラムは、各々揚力を発生させる複数の回転翼ユニットを備える無人回転翼機を制御するコンピュータに、
異常事態を検出する異常検出機能と、
進行すべき方向へ機体が飛行するように、前記回転翼ユニットを制御し、かつ飛行中に前記異常検出機能によって異常事態が検出された場合には、機体が着地するように、前記回転翼ユニットを制御する制御機能と、
を実現させる。
【0020】
上記第2の目的を達成するために、本発明の第4の観点に係るプログラムは、各々揚力を発生させる複数の回転翼ユニットを備える無人回転翼機を制御するコンピュータに、
進行すべき方向へ機体が飛行し、かつ飛行に際し、平面視において機体周縁の或る部分が前記進行すべき方向を向くように、前記回転翼ユニットを制御する制御機能、
を実現させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の観点に係る無人回転翼機及び第3の観点に係るプログラムによれば、異常事態が検出された場合に、無人回転翼機が着地するように回転翼ユニットが制御されるので、異常事態が墜落に発展してしまうことを防止することができる。
【0022】
本発明の第2の観点に係る無人回転翼機及び第4の観点に係るプログラムによれば、平面視において機体の周縁の或る部分が進行すべき方向を向くように、回転翼ユニットが制御されるので、無人回転翼機の飛行中の動きが予測しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)は本発明の一実施形態に係る無人回転翼機の平面図であり、(B)は同無人回転翼機の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る無人回転翼機の機能ブロック図である。
【図3】(A)は比較例に係る無人回転翼機の飛行態様を示す概念図であり、(B)は本発明の一実施形態に係る無人回転翼機の飛行態様を示す概念図であり、(C)は本発明の他の実施形態に係る無人回転翼機の飛行態様を示す概念図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る無人回転翼機の制御手順のフローチャートである。
【図5】図4に示す通常飛行制御の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施形態に係る無人回転翼機の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る無人回転翼機について図面を参照しながら説明する。図中、同一又は相当する部分に同一符号を付す。

【0025】
図1(A)に示すように、本実施形態に係る無人回転翼機100は、回転することにより揚力を発生させる回転翼P1~P8と、駆動機としてのモータM1~M8とを備える。モータMiが、回転翼Piを回転させる(但し、iは1~8の任意の自然数とする)。回転翼PiとモータMiとを含んで回転翼ユニットUiが構成されている。

【0026】
回転翼ユニットU1~U8は、平面視において、無人回転翼機100の重心Gを挟んで対向する対が4対構成されるように、配置されている。具体的には、回転翼ユニットU1とU5、回転翼ユニットU2とU6、回転翼ユニットU3とU7、回転翼ユニットU4とU8とが、それぞれ重心Gを挟んで対向する対をなしている。

【0027】
以下の説明中、モータM1~M8、回転翼P1~P8、及び回転翼ユニットU1~U8の各々を区別する必要がないときは、それぞれモータM、回転翼P、及び回転翼ユニットUと表記する。

【0028】
回転翼Pの回転の反作用で無人回転翼機100の機体が回転することを防止するために、回転翼P1、P3、P5、及びP7は、回転翼P2、P4、P6、及びP8とは逆方向に回転することで揚力を発生させる。具体的には、回転翼P1、P3、P5、及びP7は時計まわりに回転し、回転翼P2、P4、P6、及びP8は反時計まわりに回転する。

【0029】
無人回転翼機100は、その重心Gの位置に配置された筐体101と、重心Gと同一の重心(面心)をもつ仮想正8角形の対角線に沿って配置されるように、筐体101から放射状に延在する8本のアームA1~A8とをさらに備える。

【0030】
一端が筐体101に固定されたアームAiの他端は自由端であり、その自由端に回転翼ユニットUiが支持されている(但し、iは1~8の任意の自然数とする)。

【0031】
また、筐体101の外部から視認可能な表面には、矢印のマークよりなる標識Sign1が付されている。標識Sign1は、平面視において、重心Gからみた、機体の周縁の或る部分、具体的には、回転翼P1の方向を表している。

【0032】
以下、平面視において重心Gからみた回転翼P1の方向を前方と定義する。前方が決まれば、平面視において、後方、左方、及び右方が決まることになる。

【0033】
なお、筐体101の裏面にも同様に、裏面視において、重心Gからみた回転翼P1の方向、即ち前方を示す矢印状の標識が付されている。

【0034】
また、回転翼P1そのものにも、他の回転翼P2~P8の色彩とは異なる色彩よりなる標識Sign2が付されている。標識Sign2によっても、機体の前方を特定することができる。

【0035】
図1(B)に示すように、筐体101の前方側の側面にも、筐体101の他の領域の色彩とは異なる色彩よりなる標識Sign3が付されている。標識Sign3によっても、機体の前方を特定することができる。

【0036】
回転翼ユニットU1~U8が上記仮想正8角形の頂点の位置に配置されているため、仮に標識Sign1~Sign3が無いとした場合、方向を特定し難い。そこで、標識Sign1~Sign3を付したことにより、無人回転翼機100を観察する人が、標識Sign1~Sign3の少なくともいずれかを視認することにより機体の前方を明確に特定することができる。

【0037】
また、無人回転翼機100は、筐体101の下面に、報知器102をさらに備える。報知器102は、赤色発光ダイオード及び警音器を含んで構成され、後述する各種異常事態が生じた際に、周囲、特に下方に向かって赤色光と警音とを発する。

【0038】
図2に示すように、無人回転翼機100は、上記報知器102に加え、受信部103、センサ群104、記憶部105、バッテリ残量計106、モータコントローラC1~C8、及びCPU(Central Processing Unit)108が、バス109で接続された構成をさらに備える。

【0039】
なお、少なくとも、受信部103、センサ群104、記憶部105、バッテリ残量計106、モータコントローラC1~C8、CPU108、及びバス109は、図1の筐体101の内部に収められている。また、図1の筐体101内には、モータM1~M8の駆動やCPU108の動作等を含む無人回転翼機100の動作に必要な電力を供給するバッテリ107も収められている。

【0040】
受信部103は、リモートコントローラ200から、前進、後退、左進、右進、上昇、下降等の操縦操作を表す操縦信号を無線(電波)によって受信する。また、受信部103は、操縦信号を担う電波の強度を検出する受信強度検出部103aを含む。

【0041】
センサ群104は、ジャイロセンサや加速度センサ等を含んで構成され、無人回転翼機100の飛行中における機体の姿勢や変位等を表す姿勢変位検出信号を出力する。ここで変位とは、移動量を表す変位のみならず、ピッチング、ローイング、ヨーイングといった回転角に関する変位も含む。また、センサ群104は、飛行中の機体の高度を検出し、検出結果を表す高度信号を出力する高度センサも含む。また、センサ群104は、モータM1~M8の各々の回転数を表す回転数検出信号も出力する。

【0042】
モータコントローラC1~C8は、モータM1~M8の各々がCPU108によって指定された回転数で回転するように、モータM1~M8を制御する。モータコントローラCiがモータMiを制御する(但し、iは1~8の任意の自然数とする)。

【0043】
記憶部105は、ROM(Read Only Memory)で構成され、CPU108と共に、コンピュータを構成する。記憶部105は、制御・自己診断プログラム105aを記憶する。制御・自己診断プログラム105aは、記憶部105とCPU108とで構成されるコンピュータに、無人回転翼機100の飛行を実現する制御機能と、飛行中に自己診断によって異常事態を検出する異常検出機能とを実現させる。

【0044】
具体的には、CPU108は、制御・自己診断プログラム105aを実行することにより、主に以下の(a)~(f)の機能を果たす。

【0045】
(a)第1に、CPU108は、受信部103を通じてリモートコントローラ200から受信する操縦信号に基づいて、その操縦信号が表す進行すべき方向(以下、単に進行すべき方向ということがある。)への飛行が実現されるように、モータコントローラC1~C8を介してモータM1~M8を制御する。以下、この制御を通常飛行制御と呼ぶ。

【0046】
特に、通常飛行制御において、CPU108は、進行すべき方向が左右方向成分をもつ場合、上述した前方が進行すべき方向を向くように、モータM1~M8を制御する。以下、図3を参照し、具体例を挙げて説明する。

【0047】
図3は、前方に進行中に、右方向に進行すべき旨の操縦信号を受信した場合の、無人回転翼機の飛行態様を平面視でみた概念図である。理解を容易にするため、筐体101と標識Sign1のみを示す。

【0048】
図3(A)は、比較例に係る無人回転翼機の飛行態様を示す。図示のように、機体の向きを変えずに、右方向に飛行すると、周囲の人にとってはその動きが予測できない。このため、例えば、無人回転翼機が人と接触する事態が生じかねない。

【0049】
図3(B)は、本実施形態に係る無人回転翼機100の飛行態様を示す。CPU108は、図示のように、標識Sign1が表す機体の前方が、進行すべき方向を向くように、一旦機体を時計まわりに旋回させてから、機体を進行すべき方向に進行させる制御を行う。これにより、周囲の人は、機体が旋回した際に、機体が右方向に移動することを予測できる。このため、無人回転翼機100が人と接触する事態を防止することができる。

【0050】
なお、機体の旋回は、例えば、回転翼Pの回転の反作用を利用して実現することができる。図1(A)を参照して述べたように、回転翼P1、P3、P5、及びP7は時計まわりに回転し、回転翼P2、P4、P6、及びP8は反時計まわりに回転する。そこで、CPU108は、回転翼P1、P3、P5、及びP7の回転数が、回転翼P2、P4、P6、及びP8の回転数よりも低くなるように、モータM1~M8を制御することで、機体を時計まわりに旋回させることができる。また、CPU108は、回転翼P1、P3、P5、及びP7の回転数が、回転翼P2、P4、P6、及びP8の回転数よりも高くなるように、モータM1~M8を制御することで、機体を反時計まわりに旋回させることができる。

【0051】
また、機体の前方への移動は、図1(A)で、重心Gを通り左右方向(アームA3及びA7が延在する方向)に延びる仮想軸まわりのモーメントの釣り合いを、回転翼P1の高さが回転翼P5よりも低くなるようにアンバランスさせることで実現できる。具体的には、CPU108は、例えば、回転翼P8、P1、及びP2の回転数が、残りの回転翼P3~P7の回転数よりも低くなるように、モータM1~M8を制御することで、機体を前方へ飛行させることができる。

【0052】
図3(C)は、他の実施形態に係る無人回転翼機の飛行態様を示す。CPU108は、図示のように、機体を旋回させつつ前方に進行させることにより、常に前方が進行すべき方向(右方向)を向くように各モータMを制御してもよい。

【0053】
(b)第2に、CPU108は、センサ群104によって出力された上記姿勢変位検出信号及び上記回転数検出信号を用いて、異常事態としての、各回転翼ユニットUの故障を検出する。ここで、回転翼ユニットUの故障とは、モータMの故障と、回転翼Pの故障とを含む。

【0054】
具体的には、CPU108は、特定のモータMについて、センサ群104が出力した回転数検出信号が表す回転数と、自己がモータコントローラCに与えた回転数の目標値とに、著しい偏差がある場合は、そのモータMが故障していることを検知できる。

【0055】
また、CPU108は、上記回転数と目標値との偏差が小さいにも拘らず、姿勢変位検出信号が表す機体の姿勢又は変位の応答が、目標からかけ離れている場合、回転翼Pが回転しているにも拘らず、必要な揚力が生じていないことを表すため、回転翼Pの故障を検知できる。姿勢変位検出信号が表す姿勢又は変位によって、どの回転翼Pが故障しているかを特定することができる。このようにして、CPU108は、センサ群104と共に、回転翼ユニットU1~U8の各々の故障を検出する故障検出手段として機能する。

【0056】
(c)第3に、CPU108は、バッテリ残量計106の検出結果に基づいて、バッテリ107の残量が閾値未満になったことを異常事態として検出すると共に、自己の制御動作の異常を異常事態として検出する内部異常検出手段として機能する。なお、CPU108の制御動作の異常としては、例えば、CPU108自身が上記通常飛行制御において誤動作する場合、CPU108と各構成部材とを接続するバス109に欠線が生じた場合、それら各構成部材がCPU108の指示通りに動作しない場合等が挙げられる。

【0057】
(d)第4に、CPU108は、機体のおかれた状況が飛行に適した状況から逸脱したことを異常事態として検出する状況異常検出手段として機能する。ここで、機体のおかれた状況とは、具体的には、機体にどれほどの速さの風があたっているか、機体の高度はどれほどか、機体がどのような姿勢をとっているか等を指す。風が強すぎる状況は、機体が風に流されて墜落する事態を招きやすいので、飛行に適した状況から逸脱している。機体の高度が高すぎる状況や、機体が極端に傾いている状況は、揚力が得られにくくなる事態等を招きやすいので、飛行に適した状況から逸脱している。そこで、CPU108は、それら異常事態の発生を検出する。

【0058】
なお、CPU108は、リモートコントローラ200からの操縦信号に従って発生させた推進力を表すベクトルと、センサ群104からの姿勢変位検出信号によって特定される機体の変位を表すベクトルとの比較によって、風の強さを検出できる。また、CPU108は、センサ群104からの高度信号によって機体の高度を検出できる。また、CPU108は、センサ群104からの姿勢変位検出信号によって機体の姿勢を検出できる。CPU108は、それらの検出量が、対応する所与の閾値を超えるか否かによって、機体のおかれた状況が飛行に適した状況から逸脱したか否かを検出できる。

【0059】
(e)第5に、CPU108は、受信強度検出部103aの検出結果により、異常事態としての、リモートコントローラ200からの操縦信号の受信状態の悪化を検出する。具体的には、CPU108は、操縦信号を担う電波の強度が或る閾値未満となったことをもって、操縦信号の受信状態が悪化したこと、例えば電波障害の発生を検出できる。このようにして、CPU108は、受信強度検出部103aと共に、操縦信号の受信状態の悪化を検出する受信状態悪化検出手段として機能する。

【0060】
(f)第6に、CPU108は、上記異常検出機能、具体的には、上記故障検出手段、上記内部異常検出手段、上記状況異常検出手段、及び上記受信状態悪化検出手段としての各機能によって異常事態を検出した場合には、リモートコントローラ200からの操縦信号によらずに、機体が着地するように、回転翼ユニットUを制御する。

【0061】
図4を参照し、CPU108が行う制御について具体的に説明する。なお、本制御は、無人回転翼機100の電源が投入されることにより開始する。

【0062】
CPU108は、無人回転翼機100の電源が投入されると、リモートコントローラ200からの操縦信号に従って、モータMを制御する上記通常飛行制御を行う(ステップS11)。通常飛行制御の詳細については、図5を参照して後述する。

【0063】
CPU108は、無人回転翼機100の電源のOFFを検出すると(ステップS12でYES)、通常飛行制御を終了する。

【0064】
CPU108は、無人回転翼機100の電源がONの状態において(ステップS12でNO)、上記故障検出手段及び上記受信状態悪化検出手段としての機能により、異常事態の発生の有無を監視している(ステップS13)。

【0065】
なお、図4では、理解を容易にするために、ステップS11~S13を順番に示したが、CPU108は、ステップS11の通常飛行制御を行いつつ、ステップS12の電源ON/OFFの判定、及びステップS13の異常事態の有無の判定を並行して常時に行える。

【0066】
CPU108は、異常事態の発生を検出した場合(ステップS13でYES)、まず、報知器102に、赤色光と警音とによる報知を行わせる(ステップS14)。これにより、無人回転翼機100の周囲、特に下方に居る人が、無人回転翼機100がこれから着地することを認識できる。このため、人に無人回転翼機100が接触してしまう事故を防止することができる。

【0067】
CPU108は、ステップS13で検出した異常事態が、いずれかの回転翼ユニットUの故障による場合(ステップS15でYES)、リモートコントローラ200からの操縦信号によらずに、まず、故障が検出された回転翼ユニットU、及びその回転翼ユニットUと対をなす回転翼ユニットUのモータMを停止させる(ステップS16)。

【0068】
ここで、対をなすとは、図1(A)を参照して説明したように、重心Gを挟んで対向することを意味する。

【0069】
具体的には、CPU108は、ステップS13で回転翼ユニットUkの故障が検出された場合は、モータMk及びモータMmod(k+4,8)を停止させる(但し、kは1~8の任意の自然数であり、mod(k+4,8)は、k+4>8のとき、k+4を8で割った余りを表し、k+4≦8のとき、k+4を表す関数である)。

【0070】
このように、故障した回転翼ユニットUkのモータMkのみならず、それと対をなすモータMmod(k+4,8)も停止させることは、モータMkとモータMmod(k+4,8)とが対向する方向に対して平面視で直交する軸まわりのモーメントの釣り合いを保つことに資する。即ち、モータMkと同時にモータMmod(k+4,8)を停止させることは、無人回転翼機100の機体を水平に保つことに資する。このため、機体を安定して水平に保ちつつ着地させることが可能となる。

【0071】
但し、単純にモータMk及びMmod(k+4,8)を停止させるだけでは、機体を水平に保つことはできても、回転翼Pの回転の反作用が釣り合わないこととなり、機体が旋回することとなる。

【0072】
そこで、CPU108は、機体の旋回を防止するために、モータMmod(k+1,8)、Mmod(k+3,8)、Mmod(k+5,8)、及びMmod(k+7,8)の回転数を、モータMmod(k+2,8)及びMmod(k+6,8)の回転数よりも低下させることにより、回転翼Pmod(k+2,8)及びPmod(k+6,8)の回転の反作用と、回転翼Pmod(k+1,8)、Pmod(k+3,8)、Pmod(k+5,8)、及びPmod(k+7,8)の回転の反作用とをバランスさせつつ、機体を着地させる(ステップS17)。

【0073】
なお、CPU108は、機体の揺動をもたらす外乱が存在する場合は、機体が水平に保たれかつ機体の旋回が防止されつつ、ゆるやかに降下し軟着地できるように、モータMk及びMmod(k+4,8)以外の各モータMの回転数を個別に制御することができる。

【0074】
次に、CPU108は、センサ群104からの姿勢変位検出信号によって機体の着地を検知すると、すべてのモータMを停止させ、本制御を終了する(ステップS18)。

【0075】
一方、CPU108は、ステップS13で検出した異常事態が、バッテリ107の残量が閾値未満になったことによる場合、自己の制御動作の異常による場合、機体のおかれた状況が飛行に適した状況から逸脱したことによる場合、又はリモートコントローラ200からの操縦信号の受信状態の悪化による場合(ステップS15でNO)、たとえその操縦信号が指示する操縦操作が判別できるとしても、その操縦信号によらずに、機体が着地するように回転翼ユニットUを制御する(ステップS19)。

【0076】
なお、この場合は、回転翼ユニットUが故障している訳ではないから、すべての回転翼ユニットを用いて、機体を着地させることができる。

【0077】
以上説明したように、本実施形態によれば、異常事態が生じた場合には、操縦信号によらずに、無人回転翼機100が着地するようにモータMが制御されるので、異常事態が墜落に発展してしまうことを防止することができる。

【0078】
図5を参照し、以下、上記通常飛行制御(ステップS11)について具体的に述べる。

【0079】
まず、CPU108は、受信部103を通じて、リモートコントローラ200から進行すべき方向を表す操縦信号を受信する(ステップS21)。

【0080】
次に、CPU108は、センサ群104からの上記姿勢変位検出信号を用いて、操縦信号が表す進行すべき方向と、機体の前方とのなす角度θを算出する(ステップS22)。

【0081】
次に、CPU108は、機体が角度θだけ旋回するようにモータMを制御することで、機体の前方を進行すべき方向と一致させる(ステップS23)。具体的には、CPU108は、センサ群104からの上記姿勢変位検出信号及び回転数検出信号を用いて、機体を角度θ旋回させるのに必要な各モータMの回転数を算出し、算出した回転数を表す指令をモータコントローラCに出力する。

【0082】
次に、CPU108は、上記姿勢変位検出信号によって機体が角度θだけ旋回したことを検知すると、機体が前方に飛行するように、モータMを制御する(ステップS24)。具体的には、CPU108は、センサ群104からの上記姿勢変位検出信号及び回転数検出信号を用いて、機体を前方に飛行させるのに必要な各モータMの回転数を算出し、算出した回転数を表す指令をモータコントローラCに出力する。

【0083】
以上により、例えば、図3(B)に示した飛行態様を実現することができる。なお、図5では、ステップS23の旋回を行った後に、ステップS24の飛行を行ったが、CPU108は、ステップS23の旋回と、ステップS24の飛行とを同時並行して行うこともできる。即ち、CPU108は、機体を旋回させつつ進行させることもできる。これにより、例えば、図3(C)に示した飛行態様を実現することもできる。

【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、機体の前方が進行すべき方向を向くように各回転翼ユニットUが制御されるので、飛行中の機体の動きが予測しやすくなる。

【0085】
図6は、他の実施形態に係る無人回転翼機400の機能ブロック図である。この無人回転翼機400は、GPS(Global Positioning System)衛星300からGPS信号を受信するGPS受信部401を備える。GPS信号には、現在位置を表す情報が含まれる。また、GPS受信部401は、GPS信号を担う電波の強度を検出する受信強度検出部401aを含む。

【0086】
記憶部105には、無人回転翼機400が飛行する航路の位置情報を表す航路データ402が予め記憶されている。CPU403は、GPS受信部401によって受信されたGPS信号を用いてリアルタイムに現在位置を求め、求めた現在位置と航路データ402とを照合することにより、進行すべき方向を求める。そして、CPU108は、その進行すべき方向に機体が飛行するように、モータMを制御する。このようにして、無人回転翼機400は、リモートコントローラ200で操縦信号を与えなくても、予め与えられた航路データ402が表す航路に沿って、自律して飛行することができる。

【0087】
CPU403は、受信強度検出部401aの検出結果により、GPS信号の受信状態の悪化を検出する受信状態悪化検出手段として機能することができる。CPU403は、GPS信号の受信状態の悪化を検出した場合、GPS信号によらずに航行を中止し、機体が着地するように回転翼ユニットUを制御する。これにより、無人回転翼機400が予期しない方向へ飛んで行って墜落することを防止できる。

【0088】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、以下の変形が可能である。

【0089】
(1)無人回転翼機は、回転翼ユニットUを2つのみ備えるものでもよい。一方の回転翼ユニットUが故障した場合、その回転翼ユニットUを停止させると共に、他方の回転翼ユニットUを用いて、機体を着地させることができる。同様に、無人回転翼機が回転翼ユニットUを3つのみ備える場合でも、1つの回転翼ユニットUが故障した場合、その回転翼ユニットUを停止させると共に、残りの回転翼ユニットUを用いて、機体を着地させることができる。

【0090】
但し、着地の際に、機体の姿勢の安定性を保ちやすいという観点からは、無人回転翼機は、回転翼ユニットUを4個以上の偶数個備えることが好ましい。それら回転翼ユニットが、図1(A)に示したように、平面視において無人回転翼機の重心を挟んで対向する対が複数対構成されるように配置されている場合、図4のステップS16~S18に示す着地制御と同様の要領で、機体を水平に保ったまま着地させることができる。

【0091】
(2)また、上記実施形態では、故障が検出された回転翼ユニットUのモータMを停止させたが、故障が検出された回転翼ユニットUのモータMは、必ずしも停止させなくてもよい。例えば、故障が検出された回転翼ユニットUがまだ揚力を発生可能である場合は、その揚力も利用して機体の着地を行ってもよい。さらに、その揚力を増減させる制御が可能である場合、CPU108は、機体を着地させるに際しその揚力の制御を行ってもよい。

【0092】
(3)上記実施形態では、標識Sign1~Sign3をマークや色彩で構成したが、標識Sign1~Sign3は、例えば発光ダイオード等の発光手段を含んで構成してもよい。発光手段を用いて標識を構成すると、夜間等でも人が機体の進行方向を認識することができる。

【0093】
(4)制御・自己診断プログラム105aを、既存の無人回転翼機にインストールすることで、その既存の無人回転翼機を、上記各実施形態に係る無人回転翼機100として機能させることもできる。制御・自己診断プログラム105aのインストールは、例えば、既存の無人回転翼機が備える記憶部としてのROMの書き換えやROMの交換により実現することができる。

【0094】
制御・自己診断プログラム105aの配布方法は任意であり、例えば、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよいし、CD-ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布することもできる。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に制御・自己診断プログラム105aを格納しておき、通信ネットワークを通じてダウンロード等できるようにしてもよい。搬送波に制御・自己診断プログラム105aを重畳し、通信ネットワークを介して配信することもできる。通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に制御・自己診断プログラム105aを掲示し、ネットワークを介して配信してもよい。

【0095】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。上記実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0096】
100,400…無人回転翼機、101…筐体、102…報知器、103…受信部、103a,401a…受信強度検出部、104…センサ群、105…記憶部、105a…制御・自己診断プログラム、106…バッテリ残量計、107…バッテリ、108,403…CPU、109…バス、200…リモートコントローラ、300…GPS衛星、401…GPS受信部、402…航路データ、P1~P8…回転翼、M1~M8…モータ、C1~C8…モータコントローラ、U1~U8…回転翼ユニット、A1~A8…アーム、G…重心、Sign1~Sign3…標識。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5