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明細書 :振動装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-047343 (P2017-047343A)
公開日 平成29年3月9日(2017.3.9)
発明の名称または考案の名称 振動装置
国際特許分類 B06B   1/16        (2006.01)
A61H  23/02        (2006.01)
F01D   1/12        (2006.01)
FI B06B 1/16
A61H 23/02 332
F01D 1/12
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2015-170444 (P2015-170444)
出願日 平成27年8月31日(2015.8.31)
発明者または考案者 【氏名】余 永
【氏名】松脇 広和
【氏名】下堂薗 惠
【氏名】川平 和美
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
審査請求 未請求
テーマコード 4C074
5D107
Fターム 4C074AA03
4C074BB05
4C074CC02
4C074DD02
4C074FF01
4C074FF05
4C074GG01
5D107BB07
5D107DD09
5D107EE03
要約 【課題】片麻痺運動機能回復訓練における振動刺激の脳神経再建効果の検証のため、MRI環境で使用可能な振動装置を提供する。
【解決手段】圧縮空気の駆動を用いた回転運動と回転時の偏心重りとから、振動を実現する。振動装置100において、ハウジング2は、圧縮空気の流入口及び排出口が設けられた樹脂製である。回転軸3は、ベアリング6を介して回転可能にハウジング2に収容されたチタン合金より成る。エアタービン4は、回転軸3の回転に伴って回転可能に回転軸3に固定され、流入口から流入した圧縮空気が羽根に当たるように設けられた非磁性の材料(樹脂)から成る。偏心重り5は、回転軸3の回転に伴って回転可能で、回転軸3の回転中心に対して重心が偏心した非磁性の金属(黄銅)から成る。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
圧縮空気の流入ノズル及び排出口が設けられたハウジングと、
回転可能に前記ハウジングに収容された回転軸と、
前記ハウジングに収容されるとともに前記回転軸に固定され、前記流入ノズルから流入した圧縮空気が羽根に当たって回転する羽根車と、
前記ハウジングに収容されるとともに前記回転軸に固定され、前記回転軸の回転中心に対して重心が偏心した偏心重りと、
前記ハウジングの外部を覆う外殻と、
を備え、
前記ハウジング、前記回転軸、前記羽根車、前記偏心重り、及び前記外殻が、非磁性の材料で形成されている、
振動装置。
【請求項2】
前記ハウジング、前記羽根車、及び前記外殻は、樹脂で形成されており、
前記回転軸は、チタン合金で形成されており、
前記偏心重りは、黄銅で形成されている、
請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
前記偏心重りは、
前記回転軸の回転中心を回転中心とし、かつ、互いの回転角度を調節可能な2つの扇形の部材で形成されている、
請求項2に記載の振動装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、透明なアクリル部材で形成されており、
前記2つの扇形の部材の回転角度を、外部から調節可能である、
請求項3に記載の振動装置。
【請求項5】
前記流入ノズルから流入した圧縮空気が、前記羽根車の回転位相に関わらず常に垂直に翼面に直交して当たるように、
前記羽根車の翼面が円弧状に形成されている、
請求項4に記載の振動装置。
【請求項6】
前記外殻の側面の一部は平面となっている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の振動装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脳血管疾患は、脳が損傷を受けることから、多くの人に後遺症が残ることが知られている。その症状は、損傷を受ける部位によって様々であるが、最も多く見られる症状として片麻痺がある。片麻痺は、脳の運動中枢又は運動神経経路が損傷したことで半身に麻痺が生じる運動機能障害である。片麻痺では、意図した動作が困難になるため、患者は日常生活において、多大な負担を強いられることになる。症状緩和、負担軽減のため、発症後のリハビリテーションが非常に重要となる。
【0003】
近年、損傷した神経細胞の代わりに、他の神経細胞がその役割を代行するという脳の可塑性の存在が明らかになった。以降、片麻痺のリハビリでは、神経経路の強化・再建を目的とする運動療法が効果的であるとされる。リハビリの分野では、運動療法の効果をさらに高めるため、様々な手法が提案されている。そのうちの1つに、振動刺激療法を併用したものがある。
【0004】
振動刺激療法は、ハンディマッサージャのような振動装置を用いて、振動による刺激を筋に加える方法である。振動を加えると、筋の興奮性を高め、麻痺肢の随意運動を誘発する効果があるとされる。最近では、鹿児島大学リハビリテーションセンターより、数分間の振動刺激で痙縮が抑制されるという振動刺激痙縮抑制法(Direct Application of Vibratory Stimuli;DAVS)が考案され、新たな治療法として期待されている。
【0005】
振動刺激療法は、促通反復療法との併用で、麻痺肢への機能改善効果が確認されている。しかし、作用メカニズム等明らかになっていない点も多々ある。適切な治療のため、こうした点を解明することは重要であるといえる。そこで、検討されているのがfMRI(functional Magnetic Resonance Imaging;機能的MRI)を用いた解析である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2009-297382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
fMRIは、脳の賦活化を画像化し、脳活動を観測することができる技術である。これを用いれば、振動刺激の脳神経への作用を観測することができ、その結果を解析することで、振動刺激について様々なことが明らかになると期待される。しかしながら、MRI装置付近には磁性材を持ち込めないため、電磁モータを用いている通常の装置は使うことができない。
【0008】
MRI環境で使用できるアクチュエータとして超音波モータが知られている。しかし、低速、高トルクという特徴を持つ超音波モータでは、十分な回転数が得られず、超音波モータに電力を付与する電気配線等に流れる電流は画像のノイズの原因になってしまう。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、片麻痺運動機能回復訓練における振動刺激の脳神経再建効果の検証のため、MRI環境で使用可能な振動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る振動装置は、圧縮空気の駆動を用い、回転運動とそれに基づく振動とを実現する。そこでは、
圧縮空気の流入ノズル及び排出口が設けられたハウジングと、
回転可能に前記ハウジングに収容された回転軸と、
前記ハウジングに収容されるとともに前記回転軸に固定され、前記流入ノズルから流入した圧縮空気が羽根に当たって回転する羽根車と、
前記ハウジングに収容されるとともに前記回転軸に固定され、前記回転軸の回転中心に対して重心が偏心した偏心重りと、
前記ハウジングの外部を覆う外殻と、
を備え、
前記ハウジング、前記回転軸、前記羽根車、前記偏心重り、及び前記外殻が、非磁性の材料で、振動装置が形成されている。
【0011】
前記ハウジング、前記羽根車、及び前記外殻は、樹脂で形成されており、
前記回転軸は、チタン合金で形成されており、
前記偏心重りは、黄銅で形成されている、
こととしてもよい。
【0012】
前記偏心重りは、
前記回転軸の回転中心を回転中心とし、かつ、互いの回転角度を調節可能な2つの扇形の部材で形成されている、
こととしてもよい。
【0013】
前記ハウジングは、透明なアクリル部材で形成されており、
前記2つの扇形の部材の回転角度を、外部から調節可能である、
こととしてもよい。
【0014】
前記流入ノズルから流入した圧縮空気が、前記羽根車の回転位相に関わらず常に垂直に翼面に直交して当たるように、
前記羽根車の翼面が円弧状に形成されている、
こととしてもよい。
【0015】
前記外殻の側面の一部は平面となっている、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部材の全てが非磁性の材料で形成されており、圧縮空気を羽根車に当てることにより、偏心重りが着いた回転軸を回転させて振動を発生させているので、周囲の電磁界に影響を与えることなく被検者に振動を伝えることができる。この結果、片麻痺運動機能回復訓練における振動刺激の脳神経再建効果の検証のため、MRI環境で使用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(A)は、本発明の一実施の形態に係る振動装置の外観を示す図である。図1(B)は、図1(A)の振動装置を一部破砕して示す斜視図である。
【図2】図2(A)は、外殻の外観を示す斜視図である。図2(B)及び図2(C)は、振動装置の被検者への装着状態を示す図である。
【図3】図3(A)は、ハウジングの斜視図である。図3(B)は、ハウジングの分解図である。
【図4】図1(A)の振動装置を、構成要素を一部省略して示す断面図である。
【図5】図5(A)は、回転軸を示す斜視図である。図5(B)は、ベアリングを示す斜視図である。図5(C)は、回転軸と、ベアリングと、回転軸に固定される構成要素との位置関係を示す図である。図5(D)は、回転軸にかかる力を示す模式図である。
【図6】図6(A)は、エアタービンの外観を示す図である。図6(B)は、エアタービンの羽根車の翼の形状を示す図である。図6(C)は、エアタービンとノズルとの位置関係を示す図である。
【図7】図7(A)は、羽根車の翼の形状及び圧縮空気の流れを示すベクトル線図(その1)である。図7(B)は、羽根車の翼の斜視図である。図7(C)は、羽根車の翼の形状及び圧縮空気の流れを示すベクトル線図(その2)である。
【図8】図8(A)は、振動装置における偏心重りが回転する様子を示す図である。図8(B)は、偏心重りの重心の移動を示す図である。図8(C)は、振動装置から被検者に伝えられる振動を示す図である。図8(D)は、振動装置から被検者に伝えられる振動の時間変化を示すグラフである。図8(E)は、流路断面を示す模式図である。
【図9】図9(A)は、偏心重りの構成を示す斜視図である。図9(B)は、偏心重りの一方の重りの上面図である。図9(C)は、偏心重りのもう一方の上面図である。図9(D)は、2つの重りの位置関係の調整を示す図である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は、重りの回転角を調整する様子を示す図である。
【図11】振動装置の各構成要素の材料を示す図である。
【図12】振動を被検者に与えるためのシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図13】MRI装置で計測する部位と、振動装置を接触させる部位とを示す模式図である。
【図14】圧縮空気の設定圧力と振動装置の振動数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る振動装置について、図面を参照して詳細に説明する。各図において同じ構成要素には同じ符号を付すものとする。

【0019】
本実施の形態に係る振動装置は、MRI環境で使用可能である。また、この振動装置は、人体に直接接触するものであるため、安全性の高いものとなっている。また、この振動装置は、振動のパラメータ(振動数、振幅)を調整可能である。

【0020】
この振動装置には、MRI装置の撮像結果に影響を与えないことや、安全性等の理由から、動力として圧縮空気が用いられる。圧縮空気を動力とする振動装置は、工業用として数種類のものが存在し、例えば、ピストン型、ボール型、ロータ型、タービン型がある。本実施の形態では、圧縮空気を効率的に利用することを考え、重りを回転させるアクチュエータとしてエアタービンを採用する。

【0021】
工業用のタービン型の振動装置では、羽根車自体を偏心させ振動を生じさせているのが一般的である。しかし、本実施の形態に係る振動装置では、後述する原理から振幅の変更が可能となるように、偏心重りの部分とエアタービンの部分とを分けた構成となっている。

【0022】
(振動装置の構成)
図1(A)及び図1(B)に示すように、振動装置100は、外殻1と、ハウジング2と、回転軸3と、エアタービン4と、偏心重り5と、を備える。

【0023】
(外殻)
図1(A)に示すように、外殻1は、全体として円筒形に形成されている。外殻1は、図1(B)に示すように、ハウジング2等、振動装置100全体を覆っている。外殻1には、空気の取り入れ口7が設けられている。取り入れ口7には樹脂チューブ30(図3(A)参照)が挿入される、外殻1は、非磁性の材料、例えば樹脂製の部材であり、3Dプリンタで加工可能である。

【0024】
外殻1は、その長手方向に沿って、前側部1A、後側部1Bに分割されている。前側部1Aの先端部分は半球形に形成されており、全体として砲弾型となっている。本実施の形態では、この半球側を便宜的に前側と呼ぶ。また、後側部1Bは円筒形に形成されている。

【0025】
図2(A)に示すように、外殻1の側面の一部は、人体に装着し易いように平面となっている。図2(B)に示すように、振動装置100は、この平面が接するように人体に装着されるようにしてもよいし、図2(C)に示すように、リハビリを行う被検者50の手に握られるようにしてもよい。

【0026】
(ハウジング)
ハウジング2は、非磁性の材料、例えば樹脂で形成されている。図3(A)に示すように、ハウジング2は、アクリル製であり、透明となっている。これにより、例えばハウジング2内部の様子を外側から確認することができるようになっており、後述のように、偏心重り5の調整をし易くなっている。また、ハウジング2では、軽量化の工夫も加えた。

【0027】
図1(B)及び図3(B)に示すように、ハウジング2は、前側部2A、中央部2B、後側部2Cに分割されている。前側部2Aは、中央部2Bにねじ止めにより固定される。後側部2Cは、中央部2Bにはめ込まれ、ねじ止めされて固定される。前側部2Aと中央部2Bとの間には、円筒部2Dが設けられている。

【0028】
図4に示すように、外殻1の前側部1Aの後方には、壁部1Cが設けられ、壁部1Cの中央には貫通孔が設けられている。また、外殻1の後側部1Bの前方には、壁部1Dが設けられ、璧部1Dには、貫通孔が設けられている。ハウジング2の円筒部2Dは、壁部1C、1Dの貫通孔を通過するとともに、壁部1C、1Dは、ハウジング2の前側部2A、中央部2Bとによって狭持されている。これにより、外殻1は、ハウジング2に固定されるため、外殻1全体の剛性を増加させることができる。また、このようにすれば、ハウジング2内部で発生した振動を、外殻1へ確実に伝えることができる。

【0029】
さらに、エアタービン4の羽根車4Aが設置される部分に近いハウジング2内部には、圧縮空気を吹き出すノズル2Eと、継手設置部2Fとが設けられている(図3(B)、図6(A)~図6(C)参照)。継手設置部2Fには、外殻1の取り入れ口7から取り入れられ樹脂チューブ30の先端に取り付けられた継手10が設置される。継手10は、ノズル2Eと樹脂チューブ30との間の継手である。樹脂チューブ30を流れる圧縮空気は、継手10を介してノズル2Eからハウジング2内部に流入する。また、ハウジング2内部には、空気の排出口2Gも設けられている。排出口2Gから排出された空気は、外殻1の取り入れ口7から排出される。

【0030】
(回転軸)
振動装置100は、図5(A)に示す回転軸3を備えている。回転軸3は、非磁性の金属、例えばチタン合金で形成されている。回転軸3には、発生する回転、振動に十分耐え得る強度が必要とされるためである。振動装置100は、図5(B)に示すラジアル方向のベアリング6を備えている。回転軸3の一方の端部は、ハウジング2外に張り出して手動で回転させることができるようになっている。

【0031】
回転軸3は、3つのベアリング6を介してハウジング2に回転可能に固定されている。図5(C)に示すように、回転軸3には、エアタービン4と、偏心重り5とが取り付けられている。ベアリング6は、エアタービン4及び偏心重り5を挟んで両側に1つずつはめ込まれ、エアタービン4と偏心重り5との間に1つはめ込まれている。回転軸3、エアタービン4、偏心重り5及びベアリング6は、この状態で、ハウジング2内に嵌め込まれ、ハウジング2内に流入した圧縮空気が、エアタービン4に当たることにより、回転軸3が回転可能となる。

【0032】
(エアタービン)
エアタービン4は、止めねじ15(図11参照)で回転軸3に固定されている。エアタービン4としては、非磁性で軽いものが求められ、例えば樹脂製である。エアタービン4は、衝動形と呼ばれるタイプが使用される。図6(A)、図6(B)及び図6(C)に示すように、エアタービン4は、羽根車4Aを備えている。エアタービン4は、ノズル2Eから噴出する圧縮空気の衝動力で羽根車4Aを回転させる。

【0033】
一般的な羽根車4B(本実施の形態に係る羽根車4Aとは形状が異なる一般的な羽根車)の翼の形状(図7(B)参照)は、図7(A)に示すようなベクトル線図に基づいて定められる。ここで、翼に作用する質量流量を、
【数1】
JP2017047343A_000003t.gif
とする。また、翼の半径をRとする。また、圧縮空気の絶対流速をcとし、羽根車4Bの周速をvとし、圧縮空気の相対流速をwとする。さらに、翼面と絶対流速cとのなす角度をθとし、翼周速vと絶対流速cとのなす角度をαとし、翼面と相対流速wとのなす角をθとする。また、図7(C)に示すように、出口側の相対流速をwとし、流出相対角度の出口角度をβとする。

【0034】
この場合、羽根車4Bの出力トルクTは、運動量の定理より、以下の式のようになる。
【数2】
JP2017047343A_000004t.gif

この式に基づいて、羽根車4Bの最適な形状が決定される。

【0035】
ここで、設計と加工を容易にするため、翼面を平面とし、衝動力のみを考慮する。この場合、βについては、以下のように定義される。
【数3】
JP2017047343A_000005t.gif

【0036】
ここで、図7(A)に示す速度線図より、以下のように定義できる。
【数4】
JP2017047343A_000006t.gif
したがって、出力トルクTの式(1)は、以下のように変形できる。
【数5】
JP2017047343A_000007t.gif

この式から、θが垂直に近いほど出力トルクTが大きくなるのがわかる。しかし、羽根車4Bは回転しているため、回転位相によってθは変わっていく。そこで、本実施の形態に係る羽根車4Aの翼の形状は、図6(B)に示すように、ノズル2Eに向かって丸みをつけた形状とした。すなわち、羽根車4Aの翼面は、羽根車4Aの回転位相に関わらず常に垂直に翼面に直交して当たるように、円弧状に形成されている。これにより、ノズル2Eの中心線M上では常にθは垂直となる。このため、平坦な翼と比べると効率が増し、位相による出力トルクTの変化も小さくなる。

【0037】
続いて、
【数6】
JP2017047343A_000008t.gif
と仮定すると、出力トルクTの式は、以下のように変形できる。
【数7】
JP2017047343A_000009t.gif
このとき、図6(C)に示すように、翼周速vと絶対流速cとのなす角度αは羽根車4Aの外径Dとノズル2Eの位置関係から決まり、羽根車4Aの翼に空気が当たり始めるときの角度αであるα11は、以下のようになる。
【数8】
JP2017047343A_000010t.gif
ここで、Dは、羽根車4Aの外径である。xは、ノズル2Eの中心からの距離である。本実施の形態では、翼の枚数は16枚なので、次の翼に空気が当たり始めるまでに翼はπ/8回転する。よって、次の翼に切り替わるときの角度αであるα12は、以下のようになる。
【数9】
JP2017047343A_000011t.gif

上述の式を見れば、αの平均が0に近いほど出力トルクが大きくなることが分かる。ノズル2Eの位置は、ノズル2Eから噴出する圧縮空気の距離による減衰を考慮し、翼への圧縮空気の当たり始めと、圧縮空気が当たる翼が次の翼に切り替わるときの距離が極力小さくなるように設定される。このような距離が最小となるのは、α12が0となるときである。本実施の形態では、ハウジング2の大きさから、羽根車4Aの翼の直径Dを決定し、α12が0に近くなるようなノズル2Eの位置を決定した。

【0038】
(偏心重り)
偏心重り5は、止めねじ15(図11参照)で回転軸3に固定されている。偏心重り5には、非磁性で振動を発生し易いように比較的重いものが求められ、例えば、黄銅で形成されている。偏心重り5は、回転軸3の回転に伴って回転し、回転軸3に振動を発生させる。

【0039】
(振動の原理)
ここで、振動装置100における振動の原理について説明する。振動装置100は、偏心重り5を回転させ、ロータ(回転軸3、エアタービン4及び偏心重り5)の不釣り合いによる強制振動で振動を発生させている。図8(A)及び図8(B)に示すように、回転軸3に偏心重り5を取り付けて回転させたとき、偏心重り5の重心Gには以下の遠心力が作用する。
F=mrω …(8)
ここで、mは、偏心重り5の質量であり、rは、偏心重り5の重心距離であり、ωが角加速度である。

【0040】
このときの遠心力の上下方向成分は以下のようになる。
=mrωsinωt …(9)
これにより、振動装置100に発生する上下方向成分の周期的な力Fyが、図8(C)及び図8(D)に示すように、振動力となって被検者50に伝達される。

【0041】
(振動数、振幅変更の原理)
本実施の形態に係る振動装置100では、上述のように回転軸3にエアタービン4及び偏心重り5が取り付けられているため、回転数と振動数とが等しくなる。エアタービン4の回転数は、出力トルクと負荷トルクが平衡したとき一定となる。羽根車4Aの翼に作用する質量流量を増減させることで出力トルクTは変化する。流路断面を通過する質量は、圧力の関数となっている。レギュレータ(後述)により供給圧力を変えることで振動装置100の振動数を変更できる。

【0042】
流路断面を通過する流量の式は以下の通りである。
【数10】
JP2017047343A_000012t.gif

ここで、Kは、定数であり、その値は例えば0.04043である。Sは、図8(E)に示すような流路の有効断面積である。Cは、流路内の絶対温度である。Pは流路の上流側圧力であり、Pは流路の下流側圧力である。

【0043】
図9(A)に示すように、偏心重り5は、2つの重り5A、5Bを備える。図9(B)及び図9(C)に示すように、重り5A、5Bは、それぞれ回転軸3の回転中心を回転中心とする半円状の部材である。

【0044】
図9(D)に示すように、偏心重り5の2つの重り5A、5Bの相対角度を調節することにより、偏心重り5の偏心距離(回転軸3から重心までの距離)を変えることが可能となる。偏心距離が変われば、作用する遠心力が変化し、振動装置100に発生する振動の振幅を変更することができる。これにより、振動装置100を分解して重りを取り替えたり、多くの重りを準備したりすることなく、振幅を変更することができる。

【0045】
偏心量が最大になるような形状は、重り5A、5Bがほぼ重なっている半円形のときである。2つの重り5A、5Bの重さ、偏心量は等しく、左右対称であるとした。この条件より、重り1つの重さをmとし、偏心距離をrとし、回転速度をθとすると、それぞれの重りの重さ、重心位置は、以下の表のようになる。ここで、重り1が重り5Aであり、重り2が重り5Bである。
【表1】
JP2017047343A_000013t.gif


この場合、合成した重りの重心xg、ygは、以下のようになる。
【数11】
JP2017047343A_000014t.gif

また、合成した重り5A、5Bの偏心距離
【数12】
JP2017047343A_000015t.gif
は、以下のようになる。
【数13】
JP2017047343A_000016t.gif

この振動装置100では、図9(B)に示すように、重り5Aに回転角度の調整用のねじ穴が設けられている。上式より、重り5Aに、偏心距離
【数14】
JP2017047343A_000017t.gif
が5段階になる回転角θの位置にねじ穴15Aを加工した。なお、釣り合わせのため、加工したねじ穴の対称の位置にもねじ穴15Aが加工されている。同様に、もう1つの重り5Bについても、同じ重さ、偏心距離
【数15】
JP2017047343A_000018t.gif
とするため、図9(C)に示すように、CAD(Computer Aimed Design)で重心、質量を計算し、釣り合わせの位置にねじ穴15Bを加工した。

【0046】
合成した重り5A、5Bの質量、偏心距離は以下の振幅Aの式から、偏心量が最大となる位置で振幅Aが約1mmになるよう設計した。
【数16】
JP2017047343A_000019t.gif
ここで、合成した重りの重さ、偏心距離、振動装置100全体の重さは、それぞれ、
【数17】
JP2017047343A_000020t.gif
である。

【0047】
図10(A)に示すように、ドライバ60をハウジング2の穴に挿入すると、重り5A、5Bを固定するねじ(ねじ穴15A、15Bを挿通するねじ)を緩めることができるようになっている。内側からねじ頭部直径より少し大きい穴が加工されており、ねじを緩めると備えられたばね(ゴムなど)によりねじが飛び出し、ハウジング2に引っかかり固定される。ドライバ60を挿入する穴は、ねじ頭部の直径よりも小さいので、ねじが外れ落ちることはない。重り5A、5Bの固定を外した状態にした後、図10(B)に示すように、回転軸3を回せば、重り5Bは回転軸3に、重り5Aはハウジング2に固定されているため、重り5A、5Bの相対位置を簡単に変更することができる。

【0048】
(回転軸の強度計算)
偏心重り5に作用する遠心力により、回転軸3には曲げ荷重がかかる。回転軸3の直径は、想定される荷重から決定されるのが望ましいが、振動装置100には、大きさの制限があるため、回転数の上限を求め、その範囲内で発生する荷重に基づいて回転軸3の直径が決定される。

【0049】
偏心によるねじり荷重は非常に小さいため、回転軸3には、曲げだけが作用するものとする。荷重は、繰り返し荷重とする。偏心重り5の両側はベアリング6で支えられているため、両端支持はりとする。

【0050】
回転軸3の直径、曲げモーメント、許容曲げ応力をそれぞれ、
【数18】
JP2017047343A_000021t.gif
とする。この場合、回転軸3の直径を、以下の式を満たす直径以上とする必要がある。
【数19】
JP2017047343A_000022t.gif


回転軸3の直径が決まっているとすると、許容曲げ応力は、以下のように表される。
許容曲げ応力=材料の基準強さ/安全率
荷重は繰り返し荷重なので、基準強さとして疲労強度(=引張強さ×疲労比)を採用した。この場合、両端支持はりの曲げモーメントの最大値Mmaxは、以下のようになる。
【数20】
JP2017047343A_000023t.gif

ここで、
【数21】
JP2017047343A_000024t.gif
は図5(D)に示す長さであり、
【数22】
JP2017047343A_000025t.gif
は、荷重である。この場合、回転軸3は、振幅最大の位置で約110Hzまで可能である。

【0051】
(部品の材質)
図11に示すように、振動装置100を構成する部品のうち、外殻1、ハウジング2、羽根車4A、ベアリング6、樹脂チューブ30(図12参照)などは、樹脂製である。また、回転軸3は、チタン合金製としている。さらに、偏心重り5は十分な偏心量が得られるよう黄銅製とし、継手10と止めねじ15も黄銅製とした。ここで使うチタン合金は、アルミが約6%、パナジウムが約4パーセント、チタンが約90%含まれる合金である。チタン合金は、MRI室に持ち込み可能な金属として広く知られており、吸引作用による危険はないと考えられる。発熱についても、インプラント等の研究で報告があり、3TのMRI装置において問題にならない範囲である。

【0052】
ここで使う黄銅は銅が約70%、亜鉛が約30%含まれる合金である。黄銅については、チタン合金と比較し、磁化率が低く、放熱性も良いため、吸引作用、発熱どちらも問題はない。

【0053】
非磁性であっても、金属により磁場が乱され、撮像に影響することがあるが、黄銅、チタン合金の磁化率は十分に小さく、振動装置100は、撮像範囲外にあるため、画像化への影響は少ないと考えられる。

【0054】
このように、振動装置100の構成要素はすべて非磁性の部材で形成されている。

【0055】
(MRI環境について)
次に、本実施の形態に係る振動装置100の使用環境について説明する。この振動装置100は、MRI装置が設置されたMRI室で用いられる。

【0056】
MRI(Magnetic Resonance Imaging,核磁気共鳴法)は、原子核の核磁気共鳴現象を利用した画像化技術である。核磁気共鳴現象とは、静磁場中の原子核が磁場強度に比例した特定周波数の電磁波に共鳴し、エネルギーの吸収、放出を行うようになるというものである。静磁場中にてある対象に電磁波を照射し、そのエコー信号を処理することで画像化が行われる。

【0057】
fMRIでは、主にBOLD法と呼ばれる方法が用いられる。血液中のヘモグロビンは、酸素化の違いによって磁性が異なる。脳が活動すると、活動部位では酸素が消費され、磁性が変化する。この変化は、エコー信号の強度の増減として現れる。BOLD法では、この変化を捉えることで脳の活動を画像化する。このようにfMRIも基本的な原理は同じとなっている。こうした原理のため、MRIには、共鳴現象を起こすための静磁場、エコー信号を得るためのRF波、エコー信号に位置情報を付加するための勾配磁場という3つの要素が必要となる。

【0058】
上記の原理のため、MRI室内で機器を使用する場合、その機器は以下の要件を満たす必要があるとされる。
(1)振動装置100を安全に使用できること
(2)振動装置100がMRIの画質に悪影響を与えないこと
(3)MRI装置の磁場、撮像動作が振動装置100の所定の機能に影響しないこと
本実施の形態に係る振動装置100を、MRI装置を備えるMRI室で、画像撮影を行っても、振動装置100が原因を考えられるノイズは混入されなかった。

【0059】
(システム構成)
図12に、被検者50に振動を付与するシステム全体の構成を示す。図12に示すように、このシステムは、コンプレッサ20と、レギュレータ21と、電磁弁22と、USBモジュール23と、スイッチング回路24と、パーソナルコンピュータ(PC)25とを備える。

【0060】
コンプレッサ20は、圧縮空気を生成する。レギュレータ21は、コンプレッサ20で生成された圧縮空気の圧力を調整する。電磁弁22は、開いた状態で、レギュレータ21を通過した圧縮空気を振動装置100に送る。電磁弁22の開閉により振動装置100のオンオフが切り替えられる。USBモジュール23は、PC25の入出力装置である。レギュレータ21としては、電空レギュレータが使用され、PC25からのアナログ出力(A/O)で操作が可能となっている。レギュレータ21からの圧力等の検出情報は、アナログ入力(I/O)としてPC25に入力される。また、PC25は、トランジスタとリレーを用いたスイッチング回路24を介して、そのデジタル出力(D/O)を用いて電磁弁22の操作が可能である。

【0061】
MRI装置付近では機器の使用が制限されるため、これらコンプレッサ20、レギュレータ21、電磁弁22等はMRI室の外に置かれ、これらは樹脂チューブ30により、MRI室内の振動装置100と接続される。樹脂チューブ30を介して圧縮空気が振動装置100に送られる。

【0062】
(安全対策)
本実施の形態では、振動装置100全体が外殻1で覆われているので、被検者50が振動装置100内部の回転軸3、エアタービン4及び偏心重り5等の駆動部と接触することはない。このため、被検者50の安全性が確保されている。電磁弁22はノーマルクローズのものを使用している。この場合、電源が落ちた場合には電磁弁22が閉じて、振動装置100は停止するので、この点でも安全である。

【0063】
また、コンプレッサ20の吐き出し口にはバルブが取り付けているので、何か起こったときにはプログラムに頼らず、手動で空気の供給を止め、振動装置100を停止することができる。

【0064】
図13に示すように、MRI室内では、被検者50の腕や脚の設置場所41に振動装置100が設置されるとともに、被検者50の頭部がMRI装置の測定範囲40として設定され、被検者50の手足に振動を与えつつ、脳の活性化の状態がMRI装置によって測定される。これにより、振動刺激の脳神経への作用を観測することができる。

【0065】
図14には、圧縮空気の設定圧力と、振動数との関係が示されている。図14に示すように、振動装置100において、5つの位置(◆、■、▲、×、○)でそれぞれ測定を行った。どの位置においても、圧縮空気の設定圧力が高くなるにつれて、振動数が高くなっている。

【0066】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る振動装置100によれば、部材の全てが非磁性の材料で形成されており、圧縮空気を羽根車4Aに当てることにより、偏心重り5が着いた回転軸3を回転させて振動を発生させているので、周囲の電磁界に影響を与えることなく被検者50に振動を伝えることができる。この結果、片麻痺運動機能回復訓練における振動刺激の脳神経再建効果の検証のため、MRI環境で使用可能となる。

【0067】
なお、上記実施の形態では、偏心重り5の各重り5A、5Bを半円形としたが、これに限らず、それぞれが扇形であってもよい。

【0068】
上記実施の形態では、外殻1、ハウジング2、エアタービン4(羽根車4A)を、樹脂で形成し、回転軸3をチタン合金で形成し、偏心重り5を黄銅で形成したが、本発明はこれには限られない。外殻1、ハウジング2、羽根車4Aを、できるだけ軽量な非磁性材で形成し、回転軸3を、強度の強い非磁性材で形成し、偏心重り5を十分な振動を発生させる重量を有する非磁性材で形成すればよい。ハウジング2については、一部が開放され、偏心重り5の状態を外部から確認できるのであれば、透明である必要はない。

【0069】
外殻1の形状も上記実施の形態のものに限られないが、外殻1は、振動を人体に伝える部分であるので、上記実施の形態のように、全体として丸みを帯び、かつ、一部平坦な部分を有するような、安全で、かつ、人体に振動を伝達しやすい構造となっているのが望ましい。外殻1とハウジング2が一体であってもよい。すなわち、外殻1がハウジング2の外側部分であるとみなすこともできる。

【0070】
羽根車4Aの翼の形状についても、十分な振動が得られるのであれば、上記実施の形態の形状には限られない。翼の数も任意である。

【0071】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、MRI環境のような、磁性材を用いることができない環境下で使用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 外殻、1A 前側部、1B 後側部、1C、1D 壁部、2 ハウジング、2A 前側部、2B 中央部、2C 後側部、2D 円筒部、2E ノズル、2F 継手設置部、2G 排出口、3 回転軸、4 エアタービン、4A、4B 羽根車、5 偏心重り、5A、5B 重り、6 ベアリング、7 取り入れ口、10 継手、15 止めねじ、15A、15B ねじ穴、20 コンプレッサ、21 レギュレータ、22 電磁弁、23 USBモジュール、24 スイッチング回路、25 パーソナルコンピュータ(PC)、30 樹脂チューブ、40 MRI装置の測定範囲、41 設置場所、50 被検者、60 ドライバ、100 振動装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13