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明細書 :アレルギー疾患に関連する、CD300a発現細胞の活性調節剤を含有する医薬品、ならびにCD300a遺伝子欠損マウスおよびCD300a発現細胞の活性調節剤の使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6226333号 (P6226333)
登録日 平成29年10月20日(2017.10.20)
発行日 平成29年11月8日(2017.11.8)
発明の名称または考案の名称 アレルギー疾患に関連する、CD300a発現細胞の活性調節剤を含有する医薬品、ならびにCD300a遺伝子欠損マウスおよびCD300a発現細胞の活性調節剤の使用
国際特許分類 A61K  38/00        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
A61P  17/00        (2006.01)
A61P  11/06        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C07K  16/28        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
FI A61K 38/00
A61K 39/395 ZNAN
A61P 37/08
A61P 17/00
A61P 11/06
C12Q 1/02
C07K 16/28
A01K 67/027
請求項の数または発明の数 3
全頁数 58
出願番号 特願2014-545706 (P2014-545706)
出願日 平成25年11月5日(2013.11.5)
国際出願番号 PCT/JP2013/079890
国際公開番号 WO2014/073529
国際公開日 平成26年5月15日(2014.5.15)
優先権出願番号 2012245816
優先日 平成24年11月7日(2012.11.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年10月17日(2016.10.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】渋谷 彰
【氏名】小田 ちぐさ
【氏名】カンカーナム ガマゲ ウダヤンガ サナトゥ
【氏名】三木 春香
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
審査官 【審査官】佐々木 大輔
参考文献・文献 特開2004-173531(JP,A)
国際公開第2004/039981(WO,A1)
国際公開第2008/103310(WO,A1)
韓国公開特許第10-2012-0100468(KR,A)
国際公開第2013/077186(WO,A1)
Biochem. Biophys. Res. Commun., 2003, Volume 312, No.2, pp.346-350
Clin. Exp. Immunol., 2010, Vol.160, No.1, pp.125-129
Immunity, 2007, Vol.27, No.6, pp.927-940
Cell Death and Differentiation, 2008, Vol.15, No.1, pp.192-201
Biochem. Biophys. Res. Commun., 2012.01.06, Vol.417, No.1, pp.646-650
臨床免疫・アレルギー科, 2010, Vol.54, No.2, pp.142-148
J. Exp. Med., 2012, Vol.209, No.8, pp.1493-1503
Blood, 2012.03, Vol.119, No.12, pp.2799-2809
Springer Semin. Immun., 2004, Vol.25, pp.335-348
調査した分野 A61K 38/00-38/58
A61K 41/00-45/08
A61K 39/00-39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
性調節剤を有効成分として含有することを特徴とする、アレルギー疾患を治療または予防するための医薬品であって、
前記活性調節剤が、CD300aを発現するミエロイド系細胞の、抑制性シグナル伝達を抑制する作用を有する成分を含有し、
前記抑制性シグナル伝達を抑制する作用を有する成分が、CD300aとホスファチジルセリンの結合を阻害する物質であって、
前記CD300aとホスファチジルセリンの結合を阻害する物質が、下記(i)~(iii)から選ばれる、アレルギー疾患を治療または予防するための医薬品
(i)可溶型TIM-1、可溶型TIM-4および可溶型スタビリンからなる群から選択される少なくとも1種類;
(ii)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるH鎖可変領域、または当該アミノ酸配列に対して1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域であって、前記アミノ酸の置換、付加、挿入または欠失が、前記H鎖可変領域に含まれる相補性決定領域(CDR)以外の部位において生じているH鎖可変領域と、
配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるL鎖可変領域、または当該アミノ酸配列に対して1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域であって、前記アミノ酸の置換、付加、挿入または欠失が、前記L鎖可変領域に含まれる相補性決定領域(CDR)以外の部位において生じているL鎖可変領域とを有する、抗ヒトCD300a抗体;
(iii)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるH鎖可変領域、または当該アミノ酸配列に対して1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域であって、前記アミノ酸の置換、付加、挿入または欠失が、前記H鎖可変領域に含まれる相補性決定領域(CDR)以外の部位において生じているH鎖可変領域と、
配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるL鎖可変領域、または当該アミノ酸配列に対して1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域であって、前記アミノ酸の置換、付加、挿入または欠失が、前記L鎖可変領域に含まれる相補性決定領域(CDR)以外の部位において生じているL鎖可変領域とを有する、抗マウスCD300a抗体。
【請求項2】
前記アレルギー疾患が、アトピー性皮膚炎または喘息である、請求項1に記載の医薬品。
【請求項3】
アレルギー疾患について病態解析を行うための、または前記アレルギー疾患の治療薬もしくは予防薬の有効成分となりうる候補物質をスクリーニングするための、CD300a遺伝子欠損マウスの使用であって、
前記CD300a遺伝子欠損マウスを、アレルギー疾患を誘導させる物質を投与したときにアレルギー疾患を発症しにくいモデルマウスとして使用することを特徴とする、CD300a遺伝子欠損マウスの使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー疾患に関連する、CD300a発現細胞の活性調節剤を含有する医薬品、ならびにCD300a遺伝子欠損マウスおよびCD300a発現細胞の活性調節剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
宿主(人体または動物体内)に病原体(細菌、ウイルス、寄生虫等)が侵入したり、内因性の起炎物質が発生したりすると、病原体の侵入部位または起炎物質の発生部位にて細動脈が一時的に収縮した後、拡張・充血に至って、病原体の侵入部位または起炎物質の発生部位の血流が局所的に緩慢になるといった炎症反応が発生する。
【0003】
すると、白血球が血管壁に膠着し、さらに各種免疫系細胞から放出されるケミカルメディエーターの作用により、アメーバ様運動により血管壁を通過して遊走する。ケミカルメディエーターとしては、ヒスタミン、セロトニン、リンホカイン等が知られている。ヒスタミンやセロトニンを産生・放出するマスト細胞は、炎症反応において中心的な役割を果たしているリンパ球の一つである。また、マクロファージもマスト細胞と同様にTNF等のケミカルメディエーターを産生・放出する。
【0004】
炎症反応によって、遊走させられた白血球が病原体等に誘引されると、病原体に抗原抗体反応を伴う体液性免疫や細胞障害性T細胞等が関与する細胞性免疫によって、病原体が体内から除去され(クリアランス)、感染拡大が防止される。このように、炎症反応およびそれに基づく免疫反応は、生体の恒常性を維持するためには極めて重要である。
【0005】
一方で、炎症反応は、上述のような生体防御とともに、発赤、発熱、腫張、疼痛、機能障害といった不具合な徴候・症状を示してしまう。このような症状として、具体的には、アレルギー疾患、各種急性または慢性炎症が挙げられる。また、免疫学的寛容が適用されず、自己に対して免疫応等が生じてしまう自己免疫疾患が発生した場合も、炎症反応によって組織傷害が発生してしまう。
【0006】
すなわち、炎症反応を伴う疾患を予防するには、炎症反応を惹起させる病原体を各種抗生物質(抗菌剤)によって死滅させることや、生体内の免疫機能を向上させる薬剤を投与して、炎症反応が過剰に亢進する前に、病原体を除去することが重要である。
【0007】
一方、炎症反応を伴う疾患を改善・治療するには、たとえば、ケミカルメディエーターの放出を抑制するような、過剰に活性化した免疫機能を低下させる薬剤(抗炎症剤)を投与して、炎症の鎮静化を図ることが知られている。
【0008】
たとえば、特許文献1には、免疫活性剤として、抗原提示細胞として各種免疫系細胞の活性化を担う樹状細胞の機能賦活化剤が開示され、具体的には、イソロイシン、ロイシンおよびバリンから選ばれる少なくとも1種の分岐鎖アミノ酸を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0009】
特許文献2には、抗炎症剤として、SPARC(Secreted prоtein which is acidic and rich in cystein)ペプチドおよび薬理学的担体を含む薬剤が開示されている。
【0010】
ところで、自然免疫系を担当するミエロイド系(骨髄系)細胞の細胞膜上には、MAIR(Myeloid Associated Ig like Receptors)と称されるレセプター分子群が発現していることが知られている(非特許文献1)。このうち、CD300aとしても知られている(その他「LMIR1」、「CLM-8」と称されることもある)MAIR-Iは、マクロファージ、肥満細胞、顆粒球(好中球)、樹状細胞に発現しており、細胞内領域のITIM(Immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)配列を介して脱リン酸化酵素と会合し、抑制性シグナルを伝達する抑制性レセプターであることが知られている(非特許文献2)。しかしながら、当該受容体のリガンドは不明であり、いわゆるオーファンレセプターとなっていた。
【0011】
アトピー性皮膚炎は、アレルギー物質(抗原)が体内に入り、活性化した免疫細胞から分泌された物質(インターロイキン4,13)が刺激となって作られたペリオスチンが、皮膚の角化細胞表面にある別のタンパク質「インテグリン」と結合することで炎症を起こすことが原因となっている。
【0012】
ペリオスチンがインテグリンと結合することによって新たな炎症誘発性物質が産生され、抗原がなくても症状が継続して慢性化する。マウスを使った実験で、ペリオスチンとインテグリンの結合を阻害剤により阻害すると、アトピー性皮膚炎は起きないことが示されている(非特許文献3)。
【0013】
アトピー性皮膚炎の主たる病因が明らかになったものの、アトピー性皮膚炎の病態のさらなる解明および他の炎症疾患との関連性の解析、上記阻害剤と併用可能なアトピー性皮膚炎用の医薬品等も望まれている。
【0014】
一方、気管支喘息(Bronchial Asthma)とはアレルギー反応や細菌・ウイルス感染などが発端となった気管支の炎症が慢性化することで気道過敏性の亢進、可逆性の気道狭窄をおこし、発作的な喘鳴、咳などの症状をきたす呼吸器疾患である。また、気管支喘息は、気道過敏性、アレルギー体質、環境の組合せでおこるとされている。ぜん鳴、無呼吸、胸部緊張および咳などの再発性の症状の発現の形で、特に夜または早朝に現れる。
【0015】
多くの細胞および細胞成分、特に肥満細胞、好酸球、Tリンパ球、マクロファージ、好中球および上皮細胞は、気道の炎症に役割を演じている。炎症は、血漿の滲出、浮腫、平滑筋肥大、粘液填塞(mucus plugging)および上皮変化と関連している。また、炎症は、種々の刺激に対して存在する気管支過応答の関連する増大を引き起こす。
【0016】
気道の炎症は、気道平滑筋の萎縮、微小血管の破裂および気管支過応答を導く。気道の反応性が高いと、症状はより重く、持続的になり、肺機能の日中の変動の規模がより大きくなる。気道の炎症が気管支の反応性に関連しているメカニズムは不明であり、喘息の病態解明に有用なツールや、医薬品等が望まれていた。
【先行技術文献】
【0017】

【特許文献1】特開2007-297379号公報
【特許文献2】特開2011-516609号公報
【0018】

【非特許文献1】Yotsumoto et al.. J Exp Med 198 (2), 223-233, 2003
【非特許文献2】Okoshi Y et al, Int Immunol., 17, 65-72, 2005.
【非特許文献3】Miho Masuoka et. al J Clin Invest. 2012; doi:10.1172/JC158978
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、アレルギー疾患に対する医薬品や、アレルギー疾患の病態解析に有用なツールなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、CD300aのリガンドおよびCD300aの機能を解明すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に示されるような知見を得た。
(i)CD300aのリガンドは、ホスファチジルセリン(フォスファチジルセリン、ホスホファチジルセリン)(PS)である。
(ii)PSがマスト細胞等のCD300aへ結合すると、CD300aの抑制性シグナル伝達が亢進し、マスト細胞等の活性化も抑制される。
(iii)ホスファチジルセリン結合性物質またはCD300a結合性物質が共存することにより、マスト細胞等のCD300aとPSとの結合が阻害されると、CD300aの抑制性シグナル伝達が抑制され、マスト細胞等の活性化も維持される。
(iv)上記の活性化の抑制または維持を通じて、アレルギー疾患などを治療できる。
(v)CD300a遺伝子欠損マウスは、アレルギー疾患の病態解析や医薬品の有効成分のスクリーニングなどを行うためのツールとなり得る。
【0021】
これらの知見に基づいてなされた本発明により、たとえば、下記[1]~[9]に示される各発明が提供される。
[1] CD300aとホスファチジルセリンの結合を阻害する物質を含有する、CD300aを発現するミエロイド系細胞の抑制性シグナル伝達を抑制するための活性調節剤を有効成分として含有することを特徴とする、アレルギー疾患を治療または予防するための医薬品。
【0022】
[2] 前記CD300aとホスファチジルセリンの結合を阻害する物質がホスファチジルセリン結合性物質である、[1]の医薬品。
[3] 前記ホスファチジルセリン結合性物質が、MFG-E8、MFG-E8変異体(D89E MFG-E8)、T細胞免疫グロブリン、可溶型TIM-1、可溶型TIM-4、可溶型スタビリンおよび可溶型インテグリンαvβ3からなる群から選択される少なくとも1種類である、[2]に記載の医薬品。
【0023】
[4] 前記CD300aとホスファチジルセリンの結合を阻害する物質がCD300a結合性物質である、[1]に記載の医薬品。
[5] 前記CD300a結合性物質が、配列番号3で表されるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列に対して1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域と、配列番号4で表されるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列に対して1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域とを有する、抗ヒトCD300a抗体である、[4]に記載の医薬品。
【0024】
[6] 前記CD300a結合性物質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列に対して1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を有するアミノ酸配列からなるH鎖可変領域と、配列番号2で表されるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列に対して1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を有するアミノ酸配列からなるL鎖可変領域とを有する、抗マウスCD300a抗体である、[4]に記載の医薬品。
【0025】
[7] 前記アレルギー疾患が、アトピー性皮膚炎または喘息である、[1]~[6]のいずれかに記載の医薬品。
[8] アレルギー疾患について、病態解析を行うための、またはその治療薬もしくは予防薬の有効成分となりうる候補物質をスクリーニングするための、CD300a遺伝子欠損マウスの使用であって、
前記CD300a遺伝子欠損マウスを、アレルギー疾患を誘導させる物質を投与したときにアレルギー疾患を誘発しにくいモデルマウスとして使用することを特徴とする、CD300a遺伝子欠損マウスの使用。
【0026】
[9] アレルギー疾患について、病態解析を行う際、またはその治療薬もしくは予防薬の有効成分となりうる候補物質をスクリーニングする際の、比較解析用のツールとしての、
CD300aとホスファチジルセリンの結合を亢進する物質を含有する、CD300aを発現するミエロイド系細胞の抑制性シグナル伝達を亢進するための活性調節剤の使用。
【0027】
また、上記発明の別の側面として、次の発明が提供される。
上記[1]に係る発明の別の側面として、CD300aとホスファチジルセリンの結合を阻害し、CD300aを発現するミエロイド系細胞の抑制性シグナル伝達を抑制することを特徴とする、アレルギー疾患を治療または予防する方法が提供される。当該方法は、生体内(in vivo)、生体外(ex vivo, in vitro)を問わずに適用可能であり、また生体内で適用される場合、その生物種は、ヒトであるか、ヒト以外であるか(たとえばマウス等の哺乳類)であるかを問わない。
【0028】
上記[1]に係る発明のさらなる側面として、アレルギー疾患を治療または予防するための医薬品の製造における、CD300aとホスファチジルセリンの結合を阻害し、CD300aを発現するミエロイド系細胞の抑制性シグナル伝達を抑制する活性調節剤の使用が提供される。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、CD300a発現細胞の抑制性シグナル伝達を阻害する活性調節剤を有効成分として含有する、アレルギー疾患を治療または予防するための医薬品の製造が可能となる。また、本発明により、CD300a遺伝子欠損マウス等を、アレルギー疾患の病態解明や治療等に有用なモデルマウス等として使用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、参考例1Aで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図2A】図2Aは、参考例1Bで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図2B】図2Bは、参考例1Bで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図2C】図2Cは、参考例1Cで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図2D】図2Dは、参考例1Dで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図2E】図2Eは、参考例1Dで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図2F】図2Fは、参考例1Eで得られたイムノブロット分析の結果を示す。
【図3A】図3Aは、野生型アレル中のCD300a遺伝子の構造、CD300a欠損マウスを作成するために使用したターゲティングベクター、および標的化アレルを示すための模式図である。
【図3B】図3Bは、野生型アレルおよび変異型アレルのPCR産物を示す電気泳動写真である。
【図3C】図3Cは、野生型マウスおよびCD300a欠損マウスを用いたウェスタンブロット分析の結果を示す。
【図3D】図3Dは、WTマウスとCD300a遺伝子欠損マウスのフローサイトメトリ-分析結果を示す。
【図4A】図4Aは、参考例2Aで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図4B】図4Bは、参考例2Cで得られた光学顕微鏡の分析結果を示す。
【図4C】図4Cは、参考例2Cで得られたレーザー走査型共焦点顕微鏡の分析結果を示す。
【図4D】図4Dは、参考例2Cで得られた、胸腺細胞を細胞質内に取り込んだNIH3T3または各形質転換体における細胞数の比率を示す結果を示す。
【図5A】図5Aは、参考例2Bで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図5B】図5Bは、参考例2Bで得られたRT-PCRの分析の結果を示す。
【図6A】図6Aは、参考例3Aで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図6B】図6Bは、参考例2Aで得られたβ—ヘキサミニダーゼアッセイの分析結果を示す。
【図7A】図7Aは、参考例3Bで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図7B】図7Bは、参考例3Cで得られた、各種サイトカインおよびケモカインの放出量の増加率の結果を示す。
【図7C】図7Cは、参考例3Eで得られた、各種サイトカインおよびケモカインの放出量の増加率の結果を示す図である。
【図7D】図7Dは、参考例3Fで得られた、イムノブロッティング分析の結果を示す。
【図7E】図7Eは、参考例3Gで得られた、イムノブロッティング分析の結果を示す図である。
【図7F】図7Fは、参考例3Gで得られた、TNF-αの増加率を示す図である。
【図8】図8は、参考例3Dで得られたフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図9A】図9Aは、参考例4Bで得られたデンシトメトリー分析の結果を示す。
【図9B】図9Bは、参考例4Bで得られたデンシトメトリー分析の結果を示す。
【図10A】図10Aは、参考例4Cで得られた抗気性細菌のCFUの算出結果を示す図である。
【図10B】図10Bは、CD300a好中球の誘導後、参考例4Cで得られた好中球およびマクロファージの細胞数を示す図である。
【図11】図11は、参考例4Cで得られた、大腸菌を貪食した各マクロファージの細胞数の比率を示す図である。
【図12A】図12Aは、参考例4Dで得られたフローサイトメトリー分析を示す図である。
【図12B】図12Bは、参考例4Dで得られた各マウスの生存率を示す図である。
【図12C】図12Cは、参考例4Dで各マウスの腸内の細菌クリアランスを細菌のCFUで示した図である。
【図12D】図12Dは、参考例4Eで得られたフローサイトメトリー分析の結果等を示す図である。
【図12E】図12Eは、参考例4FでTX41を投与した後の各マウスの生存率を示す図である。
【図12F】図12Fは、参考例4Gで、TX41を投与した後の腸内のクリアランスを示す図である。
【図12G】図12Gは、参考例4Gで、TX41を投与した後の好中球の細胞数の変化を分析した結果を示す図である。
【図13A】図13Aは、鶏卵白アルブミンで喘息を誘導した際のプロトコールを示した図である。
【図13B】図13Bは、実施例1Aについて、喘息誘導開始から25日目の各マウスの肺胞洗浄液中の総細胞数を示す。
【図13C】図13Cは、実施例1Bについて、喘息誘導開始から25日目の各マウスの肺胞洗浄液中の好酸球の割合を示す。
【図14】図14は、実施例1Bについて、喘息誘導開始から14日目の各マウスの血清IgE値を示す。
【図15】図15は、OVA感作をした各マウスの30分毎の擦過行動数の経時変化(日別)を示す図である(実施例2A)。
【図16】図16は、OVA感作後、第3週末時点の各マウスの皮膚の切片を示す(実施例2B)。
【図17】図17は、OVA感作後、第3週末時点の各マウスの皮膚サンプルについてトルイジンブルー染色した結果を示す図である(実施例2C)。
【図18A】図18Aは、OVA感作後、第3週末時点の各マウスの表皮内の細胞層数を示すグラフである(実施例2D)。
【図18B】図18Bは、OVA感作後、第3週末時点の各マウスの各皮膚サンプルについて真皮内に浸潤した好酸球数とマスト細胞数を示す(実施例2E)。
【図19】図19は、OVA感作後、第3週末時点の各マウスの各皮膚サンプルについてランゲリン免疫染色した結果を示す(実施例2F)。
【図20】図20は、図19の各サンプルのカウンター染色を示す。
【図21】図21は、マスト細胞とランゲリン陽性皮膚細胞との相互作用している状態を示した図である(実施例2H)。
【図22】図22は、TX41による治療の効果を確認する試験のスケジュールを示す図である。
【図23】図23は、TX74またはTX41投与後の各WTマウスについて、ELISA法により測定した血清総IgE濃度を示す。
【図24】図24は、TX74またはTX41投与後の各WTマウスについて、擦過行動数を示した図である。
【図25】図25は、TX74またはTX41投与後の各WTマウスの皮膚切片について、H&E染色を行った結果を示す図である。
【図26】図26は、TX74またはTX41投与後の各WTマウスの皮膚切片について、トルイジンブルー染色でカウンター染色をした状態を示す図である。
【図27】図27は、TX41とTX49のH鎖とL鎖とをそれぞれ相同性解析を行った結果である。
【図28】図28は、CD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスを鶏卵白アルブミンで喘息を誘導した際のプロトコールを示した図である(実施例2M、2N)。
【図29】図29は、図28で示すように喘息を誘導した際のCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスの気道内圧を示す図である(実施例2M)。
【図30】図30は、図28で示すように喘息を誘導した際のCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスの気管支を洗浄した液の中の総細胞数、及び好酸球数を示す図である(実施例2M)。
【図31】図31は、図28で示すように喘息を誘導した際のIgEの量をCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスで比較した図である。
【図32】図32は、図28で示すように喘息を誘導した際の鶏卵白アルブミンに特異的なIgG1の量をCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスで比較した図である(実施例2N)。
【図33】図33は、図28で示すように喘息を誘導した際のIgG2cの量をCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスで比較した図である(実施例2N)。
【図34】図34は、図28で示すように喘息を誘導した際のIgG2bの量をCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスで比較した図である(実施例2N)。
【図35】図35は、図28で示すように喘息を誘導した際のIgG3の量をCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスで比較した図である(実施例2N)。
【図36】図36は、図28で示すように喘息を誘導した3日後にCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスの縦隔リンパ節を採取し、撮影した写真である(実施例2O)。
【図37】図37は、図36のCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスの各縦隔リンパ節の細胞数を調べた結果を示す図である(実施例2O)。
【図38】図38は、図28で示すように喘息を誘導した7日後にCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスの縦隔リンパ節を採取し、フローサイトメトリー法で制御性T(Treg)細胞の転写因子FOXP3の発現量を調べた結果を示す図である(実施例2P)。
【図39】図39は、図28で示すように喘息を誘導した7日後にCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスの縦隔リンパ節を採取し、フローサイトメトリー法でT細胞に特異的な転写因子GATA3の発現量を調べた結果を示す図である(実施例2P)。
【図40】図40は、図28で示すように喘息を誘導した7日後にCD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスの縦隔リンパ節を採取し、フローサイトメトリー法で Th1分化に関わる転写因子T-betの発現量を調べた結果を示す図である(実施例2P)。
【図41】図41は、CD300aを発現している脾臓細胞をフローサイトメトリー法で分析し、ゲーティングした結果を示す図である(実施例2Q)。
【図42】図42は、CD300aを発現している脾臓細胞(CD11b+CD11c+)の量を示す図である(実施例2Q)。
【図43】図43は、CD300aを発現している脾臓細胞(CD11b+CD11c-)の量を示す図である(実施例2Q)。
【図44】図44は、CD300aを発現している脾臓細胞(CD11b-CD11c-)の量を示す図である(実施例2Q)。
【図45】図45は、CD300aを発現している縦隔リンパ節の細胞をフローサイトメトリー法で分析し、ゲーティングした結果を示す図である(実施例2Q)。
【図46】図46は、CD300aを発現している縦隔リンパ節の細胞(CD11b+CD11c+)の量を示す図である(実施例2Q)。
【図47】図47は、CD300aを発現している縦隔リンパ節の細胞(CD11b+CD11c-)の量を示す図である(実施例2Q)。
【図48】図48は、CD300aを発現している縦隔リンパ節の細胞(CD11b-CD11c+)の量を示す図である(実施例2Q)。
【図49】図49は、TX41抗体投与による喘息病態への影響の確認する際のプロトコールを示す図である(実施例2R)。
【図50】図50は、喘息を誘導した野生型マウスに対してTX41抗体を投与した場合の全細胞数への影響を示す図である(実施例2R)。
【図51】図51は、喘息を誘導した野生型マウスに対してTX41抗体を投与した場合の好酸球数(eosinophil number)への影響を示す図である(実施例2R)。
【図52】図52は、喘息を誘導した野生型マウスに対してTX41抗体を投与した場合の血清IgE(Serum IgE)への影響を示す図である(実施例2R)。
【図53】図53は、D89E MFG-E8投与による縦隔リンパ節における制御性T細胞の増加の有無を確認した結果を示す図である(実施例2S)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る活性調節剤、これを含有する医薬品、CD300a遺伝子欠損マウスの使用、抗CD300a抗体について、以下詳細に説明する。免疫機構およびCD300a等に関する従来の知見や公知の試験方法に言及する際に用いる文献を実施例の末尾に列挙した。

【0032】
[活性調節剤]
本発明における活性調節剤は、CD300aを発現するミエロイド系細胞の抑制性シグナル伝達を、抑制するためのものと、亢進するためのものを包含する。

【0033】
ここで、「CD300aを発現するミエロイド系細胞」には、マスト細胞(肥満細胞)、マクロファージ、好中球、樹状細胞(CD11b+樹状細胞等)などが含まれる。CD300aは、ヒト、マウス、その他の哺乳類に発現しているものを総称しており、生物種は特に限定されるものではない。

【0034】
また、「抑制性シグナル伝達」とは、抑制性レセプターであるCD300aが、細胞内領域のITIM(Immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)配列を介して脱リン酸化酵素と会合することにより生じるシグナル伝達である。

【0035】
<第1の活性調節剤>
本発明による第1の活性調節剤は、CD300aを介した抑制性シグナル伝達を抑制する作用を有する成分を含有する。本発明ではそのような成分として、ホスファチジルセリンとCD300aとの結合を阻害する物質、すなわちホスファチジルセリン結合性物質およびCD300a結合性物質を用いることができる。第1の活性調節剤は、これらの何れか一方を含んでいてもよいし、これら両方を含んでいてもよい。

【0036】
(ホスファチジルセリン結合性物質)
第1の活性調節剤の一つであるホスファチジルセリン結合性物質は、CD300aのリガンドであるホスファチジルセリン(PS)に結合して、ホスファチジルセリンとミエロイド系細胞に発現したCD300aとの相互作用(結合)を阻害するものである限り特に限定されない。

【0037】
ホスファチジルセリン結合性物質の具体例としては、MFG-E8(Milk Fat Globular Protein EGF-8)、T細胞免疫グロブリンや、可溶型TIM-1、可溶型TIM-4、可溶型スタビリンおよび可溶型インテグリンαvβ3などの可溶型蛋白質が挙げられ、中でもMFG-E8が好ましい。

【0038】
また、ホスファチジルセリン結合性蛋白質としては、MFG-E8などのようなネイティブの蛋白質に限定されず、ホスファチジルセリンへの結合性を喪失しない限り、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するもの(変異体)であってもよい(たとえば、実施例における「D89E MFG-E8」等)。

【0039】
これらの変異体は、部位特異的突然変異誘発(site-directed mutagenesis)やランダム突然変異法などの公知の方法によって作製される。
また、上記「可溶型蛋白質」とは、膜蛋白質など、後述するような希釈剤や体液に対して不溶性である、ネイティブの蛋白質において、公知の遺伝子組み換えの技術によって、疎水性ドメインを削除したり、親水性のペプチドを付加したりして、希釈剤や体液に対して可溶性になるように改変した蛋白質を指す。

【0040】
(CD300a結合性物質)
第1の活性調節剤の一つであるCD300a結合性物質は、CD300aに結合して、ミエロイド系細胞に発現したCD300aとホスファチジルセリンとの相互作用(結合)を阻害するものである限り特に限定されない。

【0041】
CD300a結合性物質の具体例としては、CD300aに対する中和抗体が挙げられる。中和抗体は、特定の一種類のモノクローナル抗体であってもよいし、二種類以上のモノクローナル抗体の組み合わせ(ないしポリクローナル抗体)であってもよい。また、中和抗体は、完全長の抗体であってもよいし、断片化された抗体(Fab断片もしくはF(ab')2等)であってもよい。

【0042】
中和抗体は、公知の手法によって作製することができる。モノクローナル抗体であれば、一般的には、CD300aを用いた免疫、ハイブリドーマの作製、スクリーニング、培養、回収といった手順で、抗CD300aモノクローナル抗体を作製することができる。それらの中から、好ましいCD300aとホスファチジルセリンとの結合阻害能(中和作用)を有し、本発明の作用効果を奏する適切なモノクローナル抗体を選択すればよい。

【0043】
(TX41、TX49およびこれらに類する抗体)
TX41は抗マウスCD300aモノクローナル抗体(ラットIgG2a)であり、TX49は抗ヒトCD300aモノクローナル抗体(マウスIgG1)である。どちらも後記実施例において作成、使用されたモノクローナル抗体であり、CD300aとホスファチジルセリンとの結合を阻害してシグナル伝達を抑制する機能に優れているため、本発明におけるCD300a結合性物質として好ましい。ただし、本発明に用いることのできる抗CD300a抗体は、TX41、TX49およびこれらに類する(同等のアミノ酸配列からなる可変領域を有する)抗体に限定されるものではない。

【0044】
TX41のH鎖の可変領域は配列番号1で示されるアミノ酸配列を有し、TX41のL鎖の可変領域は配列番号2で示されるアミノ酸配列を有し、TX49のH鎖の可変領域は配列番号3で示されるアミノ酸配列を有し、TX49のL鎖の可変領域は配列番号4で示されるアミノ酸配列を有する。なお、これらの可変領域には、3つの相補性決定領域(CDR)および4つのフレームワーク領域が含まれる。TX41およびTX49の可変領域(H鎖およびL鎖それぞれ)のアミノ酸配列同士の相同性を解析した結果を図27に示す。

【0045】
マウスのCD300aに対する結合性物質としては、TX41に基づいて、H鎖の可変領域が配列番号1で表されるアミノ酸配列からなり、L鎖の可変領域が配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる抗体を用いることが好ましい。

【0046】
ヒトのCD300aに対する結合性物質としては、TX49に基づいて、H鎖の可変領域が配列番号3で表されるアミノ酸配列からなり、L鎖の可変領域として配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる抗体を用いることが好ましい。

【0047】
また、マウスのCD300aに対する結合性物質としては、H鎖の可変領域が配列番号1で表されるアミノ酸配列に対し1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を有するアミノ酸配列からなる抗体、またはL鎖の可変領域が配列番号2で表されるアミノ酸配列に対し1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を含むアミノ酸配列からなる抗体を用いることもできる(H鎖およびL鎖の一方が上記の変異を有するものであってもよいし、それらの両方が上記の変異を有するものであってもよい)。

【0048】
ヒトのCD300aに対する結合性物質としては、H鎖の可変領域が配列番号3で表されるアミノ酸配列に対し1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を含むアミノ酸配列からなる抗体、またはL鎖の可変領域が配列番号4で表されるアミノ酸配列に対し1,2,3,4または5個のアミノ酸の置換、付加、挿入または欠失を有するアミノ酸配列からなる抗体を用いることもできる(H鎖およびL鎖の一方が上記の変異を有するものであってもよいし、それらの両方が上記の変異を有するものであってもよい)。

【0049】
このような変異を生じさせる部位は、可変領域のうちCDRまたはその近傍の部位を避けることが好ましい。また、アミノ酸を置換する場合は、側鎖の構造および/または化学的な性質が類似するアミノ酸同士の間で行われる、保存的アミノ酸置換が好ましい。

【0050】
抗CD300a抗体の定常領域、すなわちFab領域のうちの上記のような可変領域以外の領域およびFc領域の形態(アミノ酸配列、アミノ酸長)は、CD300aへの結合性、すなわち中和作用にほとんど影響しないため、本発明の作用効果を阻害しない範囲で適宜設計することができる。

【0051】
すなわち、上記所定の可変領域のアミノ酸配列と、公知の各種の定常領域のアミノ酸配列からなる融合タンパク質として抗CD300a抗体を作製することができる。
たとえば、ヒトの定常領域を利用することにより、ヒトキメラ抗体として抗ヒトCD300a抗体を作製することは、好ましい実施形態の一つである。このような抗CD300a抗体は、公知の手法により作製することが可能である。

【0052】
たとえば、上記所定の可変領域のアミノ酸配列をコードするDNAを合成し、定常領域のアミノ酸配列をコードするDNAおよびその他の必要なDNA(転写因子等)と連結することにより、抗CD300a抗体遺伝子の発現ベクターを構築することができる。このベクターを宿主細胞に導入して発現させるようにすれば、目的とする抗CD300a抗体を産生することができる。

【0053】
なお、上述したようなTX41、TX49およびこれらに類する抗体は、本発明の作用効果に係る、ホスファチジルセリンとCD300aとの結合により生じる抑制性シグナル伝達を阻害する目的以外にも使用できる可能性がある。

【0054】
(CD300a siRNA)
また、CD300aの遺伝子配列(DDBJ/EMBL/GenBank=INSD等のDNAデータベースから入手可能)を元に設計されたsiRNAにより、罹患部位におけるミエロイド系細胞におけるCD300aの発現を抑制することで、CD300a遺伝子を欠損させた状態またはCD300aとホスファチジルセリンの結合を阻害した状態と同様に、上記の各種疾患に対する治療効果を得ることができる。換言すれば、CD300a遺伝子に対するsiRNAも、本発明におけるCD300aとホスファチジルセリンの結合を阻害する物質の一種といえる。

【0055】
(第1の活性調節剤の用途)
本発明における第1の活性調節剤は、CD300aを発現するミエロイド系細胞の抑制性シグナル伝達を抑制するために使用することができる。この際、ミエロイド系細胞は、生体内にあるものであっても、生体外に分離されたものまたは生体外で培養されたものであってもよい。

【0056】
上記の作用により、ミエロイド系細胞のCD300aの活性シグナリングを維持または向上させることで、当該ミエロイド系細胞から放出されるケミカルメディエーターを介する細胞間の情報伝達も維持または向上され、それに連なるさらなる細胞間の情報伝達によって引き起こされる炎症、アレルギー反応等に影響を及ぼすことができる。したがって、第1の活性調節剤は、後述する所定の医薬品の有効成分として使用することができる。また、実験動物のアレルギー疾患(喘息やアトピー性皮膚炎など)の病態を改善させて比較解析するための比較解析ツールとしての薬剤の有効成分としても使用することができる。例えば、第1の活性調節剤の一つであるD89E MFG-E8は、後記実施例で示すように炎症を抑制させる制御性T細胞の数を増加させる効果が得られるため、医薬品の有効成分や比較解析ツールとして有用である。

【0057】
なお、CD300a遺伝子を欠損させる(すなわちCD300aとホスファチジルセリンとの結合を完全に生じさせない)ことで症状が緩和されることが確認されるアレルギー疾患に対しては、CD300a結合性物質(TX41、TX49等の中和抗体)や、ホスファチジルセリン結合性物質(MFG-E8、D89E MFG-E8等)が治療薬となりうることは、当業者にとって十分に推認可能である。

【0058】
<第2の活性調節剤>
第2の活性調節剤は、CD300aを介した抑制性シグナル伝達を亢進する(つまり、CD300aの活性シグナリングを抑制する)作用を有する成分を含有する。本発明ではそのような成分として、ホスファチジルセリンとCD300aとの結合を亢進する物質、特にCD300aのリガンドであるホスファチジルセリンを用いることができる。

【0059】
本発明では、第2の活性調節剤を、アレルギー疾患について、病態解析を行う際、またはその治療薬もしくは予防薬の有効成分となりうる候補物質をスクリーニングする際の、比較解析用のツールとして使用することができる。

【0060】
また、本発明の別の側面により提供されるCD300a遺伝子欠損マウスを用いたスクリーニングにより、ホスファチジルセリンと同様の作用を有する、CD300aに対するアゴニスト(低分子化合物、抗体等)を発見できる可能性があり、それらもホスファチジルセリンとCD300aとの結合を亢進する物質として用いることができる。

【0061】
(ホスファチジルセリン)
ホスファチジルセリン(PS)は、ミエロイド系細胞に発現しているCD300aのリガンドであり、PSとCD300aとの相互作用(結合)によって、CD300a発現細胞の抑制性シグナリングが亢進する。たとえば、マスト細胞においては、この抑制性シグナリングを介して、ヒスタミンや、サイトカイン、ケモカインなどのケミカルメディエーターを放出するという、炎症反応に関連するマスト細胞の活性が抑制される。PSは工業的に生産されており、容易に入手することができる。

【0062】
なお、生体外にある(試験的な環境における)CD300a発現細胞に対しては、PSを提示した状態にあるアポトーシス細胞(PSは、通常の細胞においては細胞の内側(脂質二重層のうち細胞質側の層)に存在するが、アポトーシスが起こると細胞の外側に提示されることが知られている)も第2の活性調節剤となり得る。また、外側にPSを含む脂質膜が形成されているリポソーム等も、第2の活性調節剤として用いることができる可能性がある。

【0063】
(カルシウム塩)
PSとマスト細胞におけるCD300aとの相互作用は、カルシウムイオンを必要とすることから、第2の活性調節剤は、電離によってカルシウムイオンを発生するカルシウム塩(たとえば、塩化カルシウム等)を含有することが好ましい。

【0064】
第2の活性調節剤中のカルシウム塩の含有量は、投与部位におけるカルシウムイオンの濃度や、第2の活性調節剤に含まれるPSの量等を考慮して、適宜決定することができる。

【0065】
(第2の活性調節剤の用途)
本発明に係る第2の活性調節剤は、CD300aを発現するミエロイド系細胞の抑制性シグナル伝達を亢進するために使用することができる。この際、ミエロイド系細胞は、生体内にあるものであっても、生体外に分離されたものまたは生体外で培養により生産したものであってもよい。

【0066】
上記の作用により、ミエロイド系細胞のCD300aの活性シグナリングを抑制することで、当該ミエロイド系細胞から放出されるケミカルメディエーターを介する細胞間の情報伝達も抑制され、それに連なるさらなる細胞間の情報伝達によって引き起こされる炎症、アレルギー反応等に影響を及ぼすことができる。したがって、第2の活性調節剤は、たとえば、実験動物のアレルギー疾患(喘息やアトピー性皮膚炎)を増悪させて比較解析するための比較解析ツールとしての薬剤の有効成分として使用することができる。

【0067】
[医薬品]
本発明に係る医薬品(医薬組成物)は、上述したような活性調節剤を有効成分として含有し、必要に応じて薬学的に許容される各種の添加剤(たとえば担体)をさらに含有していてもよい。

【0068】
このような医薬品は、CD300aを発現するミエロイド系細胞の抑制性シグナル伝達が関与する疾病または症状(特に炎症反応)を、治療または予防するためのものとして製剤化することができる。

【0069】
より具体的には、前記第1の活性調節剤を有効成分として配合することにより、アレルギー疾患(喘息やアトピー性皮膚炎)を治療または予防するための医薬品などを調製することができる。

【0070】
医薬品の投与部位は、適用対象とする疾病または病状に応じて、過剰な免疫機能(炎症反応)が生じている部位とすることができ、特に限定されるものではない。たとえば、腹腔内、気管内、皮下、皮内、泌尿生殖器内などの部位が挙げられる。

【0071】
CD300aを発現するミエロイド系細胞は、通常、哺乳類の粘膜下組織や結合組織に存在するため、医薬品は、上記の部位の粘膜下組織や結合組織またはその付近に直接的に投与されることが好ましい。そのような投与は、静脈内注射、動脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射等の注射投与によって行うことができる。たとえば、炎症性感染症(細菌性腹膜炎など)を治療または予防する場合は、腹腔内注射が好ましい。

【0072】
医薬品(ないしそこに含まれる有効成分)の1回あたりの投与量および投与回数は、患者の年齢、性別、体重及び症状、必要とされる治療効果の程度、投与方法、処理時間、有効成分の種類などにより異なり、適宜調整されてもよい。投与回数は、たとえば、1日あたり1回~数回である。

【0073】
医薬品が第1の活性調節剤のうちホスファチジルセリン結合性物質を有効成分として含有する場合、当該医薬品は、投与されるヒトまたは動物1kgあたり、ホスファチジルセリン結合性物質の1回あたりの投与量が通常3~15mg、好ましくは5~10mgになるよう製剤化してもよい。

【0074】
医薬品が第1の活性調節剤のうちCD300a結合性物質を有効成分として含有する場合、当該医薬品は、投与されるヒトまたは動物1kgあたり、CD300a結合性物質の1回あたりの投与量が通常50~150mg、好ましくは50~100mgになるよう製剤化してもよい。

【0075】
(薬学的に許容され得る担体)
本発明に係る医薬品は、必要に応じて、薬学的に許容され得る担体を含んでいてもよい。

【0076】
薬学的に許容され得る担体とは、医薬品の目的に反しないものである限り特に限定されず、たとえば、水性希釈剤や非水性希釈剤等の希釈剤、抗酸化剤(亜硫酸塩など)等の安定剤・保存剤、リン酸塩類等の緩衝剤、界面活性剤等の乳化剤、着色剤、粘稠剤、リドカインなどの局所麻酔剤、グリコール類などの溶解補助剤、塩化ナトリウムやグリセリン等の等張化剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。

【0077】
たとえば、本発明に係る医薬品の剤形が注射剤である場合、所望の粘度や含有成分の濃度になるように希釈剤を配合することにより、有効成分を希釈剤に溶解または分散させることが好ましい。

【0078】
このような希釈剤としては、生理食塩水または市販の注射用蒸留水等の水性希釈剤、ポリエチレングリコール、エタノール等のアルコール類等の非水性希釈剤が挙げられる。剤形が注射剤である医薬品は、常法に従って、フィルターによる濾過滅菌されてもよいし、殺菌剤の配合等により無菌化されてもよい。

【0079】
また、本発明に係る医薬品を注射剤として投与する場合、用時調製の形態としてもよい。たとえば、凍結乾燥法などによって第1の活性調節剤を含む固体剤を調製し、使用前に希釈剤に溶解または分散させて注射剤を調製してから投与することができる。

【0080】
<喘息に対する医薬品>
CD300a発現細胞に対するホスファチジルセリンの結合を阻害すると、好酸球性気道炎症を抑制し、総血清IgE濃度を低減することができる。したがって、第1の活性調節剤を有効成分として使用することにより、喘息に対する医薬品が得られる。
例えば、後記実施例に示すように、第1の活性調節剤の一つであるTX41の投与により、喘息患者における気道内圧と、気管支洗浄細胞の総細胞数およびこれに含まれる好酸球数を低下させて喘息の病態を軽減させることができるため、TX41を有効成分として使用することにより、喘息に対して有用な医薬品が得られる。
また、D89E MFG-E8の投与により炎症を抑制する制御性T細胞数が増加し、喘息の病態を軽減させることができるため、D89E MFG-E8も喘息治療用の医薬品の有効成分として有用である。
さらに、CD300aは、CD11b+CD11c+樹状細胞に強く発現するため、CD300aとともにCD11bおよび/またはCD11cを標的とするドラッグデリバリーシステム、たとえばTX41(抗CD300a抗体)と、抗CD11b抗体および/または抗CD11c抗体とが結合した親水性高分子(PEG等)を表面に有するリポソーム製剤も医薬品の一実施形態として挙げられる。

【0081】
<アトピー性皮膚炎に対する医薬品>
CD300a発現細胞に対するホスファチジルセリンの結合を阻害すると、好酸球、マスト細胞(真皮内の皮膚ランゲリン陽性樹状細胞と相互作用し、CD4陽性T細胞を活性化することが知られている)および単核球の細胞浸潤や、表皮(繊維芽細胞)の過形成を抑制し、総血清IgE濃度を低減することができる。したがって、第1の活性調節剤を有効成分として使用することにより、アトピー性皮膚炎に対する医薬品が得られる。例えば、第1の活性調節剤の一つであるD89E MFG-E8を有効成分とすることで制御性T細胞数の増加による炎症抑制効果が高い医薬品が得られる。
現状、アトピー性皮膚炎の治療剤としてステロイド剤が広く用いられているが、抗かゆみ作用は不十分といわれており、また、タクロリムス等の免疫抑制剤も用いられているが、これら既存の薬剤の副作用も問題となっている。上記医薬品は、抗かゆみ作用を有し、副作用が少ない、喘息やアトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患の新たな治療薬として期待できる。

【0082】
[CD300a遺伝子欠損マウスの使用]
<喘息に関する用途>
本発明で得られた知見により、CD300a欠損マウスに対して、喘息を誘導する物質(ダニ抗原、鶏卵白アルブミン等)を投与して喘息を誘導させた場合、野生のマウスよりも喘息の症状、病態が軽度である。
例えば、後記実施例に示すように、鶏卵白アルブミン(OVA)で喘息を誘導した場合に、CD300a欠損マウスでは、野生型マウスに比べて、気道抵抗および気管支洗浄細胞(特に好酸球、樹状細胞、B細胞、T細胞)の数が減少するとともに、縦隔リンパ節の大きさ及び細胞数、免疫応答の抑制的制御(免疫寛容)を司る制御性T細胞(Treg)の数、IgG2bの量、およびIgG2cの量が有意に増加し、IgEと鶏卵白アルブミン(OVA)特異的IgG1が有意に減少する。そのようなCD300a欠損マウスに認められる、そのような喘息の症状の軽さを示す指標、あるいは喘息の症状の軽さとは一見関係性が不明な指標について、どのようなメカニズム(野生型マウスとの相違)によってもたらされているか、さらにそのようなメカニズムに関連している因子は何なのかといったことを解析することは有用である。

【0083】
すなわち、前記CD300a遺伝子欠損マウスを、喘息を誘導する物質を投与したときに喘息を発症しにくいモデルマウスとして利用でき、さらには喘息を起こした際のシグナル伝達経路の解明、病態解析等のためのツールとして使用することができる。

【0084】
<アトピー性皮膚炎に関する用途>
本発明で得られた知見により、CD300a遺伝子欠損マウスに対して、アトピー性皮膚炎を誘導する物質(ダニ抗原、鶏卵白アルブミン等)を投与した場合、野生のマウスよりもアトピー性皮膚炎の症状が緩和される。

【0085】
すなわち、CD300a遺伝子欠損マウスは、アトピー性皮膚炎を発症しにくいモデルマウスとして使用することができる。さらには、CD300a遺伝子欠損マウスは、IL-4、IL-13産生との関係で、アトピー性皮膚炎に関わるシグナル伝達経路の解析、病態解析等に用いることができる。

【0086】
(CD300a遺伝子欠損マウスの作製方法)
本発明のCD300a遺伝子欠損マウスは、染色体上のCD300a遺伝子が不活性型CD300a遺伝子に置換されたことにより、CD300aタンパク質の機能が欠損したマウスである。

【0087】
「不活性型CD300a遺伝子」とは、CD300a遺伝子の一部の欠損、CD300a遺伝子のコード領域への他の塩基配列の挿入、CD300a遺伝子内の点突然変異、CD300a遺伝子の発現調節領域内の変異などにより、正常なCD300aタンパク質を発現できない遺伝子をいう。欠損型CD300a遺伝子としては、たとえば、CD300a遺伝子に含まれるエクソン1~6の少なくとも一つが欠損した遺伝子などが挙げられるが、これには限定されない。

【0088】
「CD300aタンパク質の機能が欠損した」とは、本発明が関与する抑制性シグナル伝達に係るCD300aタンパク質の機能の少なくとも一部が失われたことをいい(たとえば、ヘテロノックアウトマウスのように片方のアレルのみ不活性型に置換されて、CD300aタンパク質の機能が一部失われたような場合が含まれる。)、好ましくは当該機能が完全に失われたことを意味する。

【0089】
遺伝子カセットを用いてCD300a遺伝子欠損マウスを得るための一般的な方法は次の通りである。ただし、本発明のCD300a遺伝子欠損マウスはこの方法により得られるものに限定されない。

【0090】
野生型アレル中のCd300a遺伝子のエクソンを抗生物質耐性遺伝子(マーカー遺伝子)カセットで置き換えた標的化アレル(変異型アレル)を有するターゲティングベクターを調製する。常法に従い、当該ターゲティングベクターとES細胞を用いてキメラマウスを得る。当該キメラマウスと野生型マウスとを交配させて、子マウス(ヘテロ接合体(+/-))を得、さらに子マウス同士を交配させて、孫マウスを得る。

【0091】
孫マウスからゲノムDNAを抽出し、該ゲノムDNAをPCR法によって、ゲノムDNA中の野生型アレルおよび変異型アレルの存在の有無を確認し、変異型アレルのみを有する孫マウス(ホモ接合体(-/-))を得る。さらにCD300aが発現していないことを確認するために、当該マウス由来の細胞を抗CD300a抗体を用いたウエスタンブロット分析で確認し、CD300a遺伝子欠損マウスとする。
【実施例】
【0092】
以下、実施例に則して、本発明をより具体的に説明するが、下記の実施例は、本発明を限定するものではない。
1.調製例
(1)CD300a-Fc融合タンパク質、MFG-E8およびD89E MFG-E8の調製
(1-1) ヒトIgGのFc部位を有するCD300aの融合タンパク質(CD300a-Fc)を、下記文献25に記載されているように、マウスまたはヒトCD300aの細胞外ドメイン全体をコードする遺伝子のcDNAとヒトIgG1Fcをコードする遺伝子のcDNAとを含むキメラcDNAから調製した。なお、上記融合タンパク質において、CD300aの細胞外ドメインが、マウス由来のものおよびヒト由来のものを、それぞれ「マウスCD300a-Fc」および「ヒトCD300a-Fc」と称する。
【実施例】
【0093】
(1-2) MFG-E8は、Masato Tanaka氏(RCAI、日本国横浜市)から提供されたものである。
(1-3) D89E MFG-E8は、下記文献4に記載されているように、MFG-E8のRGDモチーフに部位特異的突然変異を導入して得られたMFG-E8の変異体である。
【実施例】
【0094】
得られたD89E MFG-E8は、N末端から89番目のアミノ酸がアスパラギン酸からグルタミン酸に置換されている。また、MFG-E8(ネイティブ)は、フォスファチジルセリン(PS)とαvβ3インテグリンとの両方に結合して、アポトーシス細胞とαvβ3インテグリンを発現する貪食細胞とを架橋する(下記文献4)のに対して、D89E MFG-E8は、フォスファチジルセリン(PS)に結合するものの、αvβ3インテグリンに結合しない。
【実施例】
【0095】
(2)マウスおよび盲腸結紮穿刺(CLP)
本実施例で使用されたノックアウトマウスは、以下のように作製あるいは提供されたものである。
【実施例】
【0096】
(i)CD300a遺伝子欠損(Cd300a-/-)マウス
野生型アレル中のCd300a遺伝子のエクソン1~6を、細菌人工染色体(BAC)システムを用いて、ネオマイシン耐性遺伝子カセット(PGK-GB2-neo)で置き換え、標的化アレル(変異型アレル)を調製した(図3A)。次いで、常法に従い、キメラマウスを得、さらに該キメラマウスと野生型マウスとを交配させて、子マウス(ヘテロ接合体(+/-))を得、さらに子マウス同士を交配させて、孫マウスを得た。
【実施例】
【0097】
孫マウスの中から、CD300a欠損(Cd300a-/-)マウスを選別するために、各孫マウスの尾部からゲノムDNAを抽出し、該ゲノムDNAをPCR法によって、ゲノムDNA中の、WTアレルおよび変異型アレルの存在の有無を確認した。
【実施例】
【0098】
なお、図3Bに示されるように、WTアレルを示すPCR産物、変異型アレルを示すPCR産物は、それぞれ、約540bp、約700bpのバンドとして検出される。
さらにCD300a遺伝子欠損マウスに、CD300aが発現していないことを確認するために、CD300a遺伝子欠損マウス由来の細胞を抗CD300a抗体を用いたウエスタンブロット分析に供した。図3Cに示されるように、野生型マウスでは、約50kDaにCD300aに由来するバンドが示される一方で、CD300a遺伝子欠損マウスでは、このバンドは検出されなかった。
【実施例】
【0099】
(ii)C57BL/6J-kitW-sh/W-shマウス
C57BL/6J-kitW-sh/W-shマウス(以下、「kitW-sh/W-shマウス」または「マスト細胞欠損マウス」)は、理研バイオリソースセンター(日本国つくば市)から提供されたものである。なお、該マウスは、マスト細胞を欠損したマウスであること(下記文献21)および、アポトーシス性のDNA断片化を経ずに、貪食細胞によってDNAが取り込まれた後に、貪食細胞内でDNAの分解が生じることが知られている(下記文献12)。
【実施例】
【0100】
(iii)CAD欠損マウス CAD(カスパーゼ活性型DNA分解酵素(Caspase-activated DNase))欠損マウスは、下記文献12に記載されたものである。
【実施例】
【0101】
(iv)マクロファージおよび好中球のin vivo除去
下記文献30の記載に基づき、クロドン酸リポソームおよびコントロール用PBSリポソーム(Encapsula NanoSciences)を調製した。次いで、CLP後24時間目に、これらのリポソーム0.5mLをマウス腹腔内に注入して、マクロファージを除去した。
【実施例】
【0102】
また、CLP後24時間目に、抗Gr-1抗体を、マウス腹腔内に注入して、好中球を除去した。
なお、本実施例におけるマウスを用いた調製および評価試験の実施は何れも、筑波大学生命科学動物資源センター動物倫理員会作製のガイドラインを遵守したものである。
【実施例】
【0103】
(3)各種抗体
各種抗体の購入先および調製方法を下記表1に示す。
【実施例】
【0104】
【表1】
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【実施例】
【0105】
(4)各種細胞の調製
各種細胞は、以下のように調製されたものである。
(i)骨髄由来マスト細胞(BMMC)
マウス骨髄細胞2×108個を、10cmmディッシュにて、細胞増殖因子(SCF)(10ng/mL)、IL-3(4ng/mL)および仔牛血清(FBS)(10%)を含むコンプリートRPMI1649メディウム中で5週間以上培養して骨髄由来マスト細胞(BMMC)を調製した。BMMCは、毎週新しいメディウムで継代した。調製されたBMMCのうち、95%超は、フローサイトメトリー分析によって、c-Kit+FcεRI+細胞であることが示された。
【実施例】
【0106】
(ii)骨髄由来マクロファージ(BMMφ)
マウス骨髄細胞2×106細胞を、10cmmディッシュにて、M-CSF(10ng/mL)および仔牛血清(FBS)(10%)を含むコンプリートRPMI1649メディウム中で1週間培養して骨髄由来マクロファージ(BMMφ)を調製した。
【実施例】
【0107】
(iii)NIH3T3細胞形質転換体
常法に基づいて、Flagタグ付きCD300aのcDNAまたはFlagタグ付きCD300dのcDNAを含むpMX-neoレトロウイルスベクタープラスミドを調製した。
【実施例】
【0108】
調製されたプラスミドをNIH3T3細胞を形質導入(トランスフェクト)して、CD300aまたはCD300dを安定発現する形質転換体を得た。得られた、CD300aを安定発現する形質転換体およびCD300dを安定発現する形質転換体をそれぞれ、「NIH3T3形質転換体(CD300a)」および「NIH3T3形質転換体(CD300d)」と称する。
【実施例】
【0109】
また、TIM-4を安定発現するNIH3T3細胞形質転換体は、T.Kitamura氏(東京大学)から提供されたものである。なお、この形質転換体を、「NIH3T3形質転換体(TIM-4)」と称する。
【実施例】
【0110】
[評価方法]
以下に、評価方法の条件を記載する。なお、生存試験においては、カプラン・マイヤーログランク検定(Kaplan-Meier log-rank test)を用い、その他の評価試験においては、アンペアード・スチューデントt検定(unpaired Student's t test)を用いて統計学分析を行った。P<0.05を統計学的有意差とみなした。
【実施例】
【0111】
(5)結合アッセイ等
(i)結合アッセイ
細胞を、2%FBSを含むリン酸緩衝液中、1mMCaCl2の存在下または非存在下でCD300aまたはコントロール用ヒトIgGを用いて30分間染色し、同一の緩衝液で2回洗浄して、FITC結合型のヤギ抗ヒトIgGのF(ab')2フラグメントとともにインキュベートした。次いで、アネキシンVで染色するために、細胞を、140mM NaClおよび2.5mMCaCl2を含む10mM HEPES-NaOH緩衝液中で、アネキシンVとともに15分室温でインキュベートした。
【実施例】
【0112】
(ii)結合阻止アッセイ
細胞を、マウスCD300aに対するモノクローナル抗体(TX41)、コントロール用アイソタイプの抗体またはMFG-E8とともに、30分間プレインキュベートした後、上記結合アッセイのように、CD300a-Fcで染色した。また、CD300a-Fcがリン脂質へ結合したか否かを分析するために、PIPストリップアッセイ(Echelon Biosciences社製)を製造元の取扱説明書に準拠して実施した。
【実施例】
【0113】
(6)好気性細菌のCFU(コロニー形成単位)の測定
マウスの腹膜灌流液の段階希釈液をプレーティングして、該希釈液をブレインハートインフュージョン(BHI)寒天を含むプレート上で、37℃、48時間培養した。次いで、好気性細菌のCFUを、下記文献27に記載されているように、腹膜灌流液1mL中のコロニー数を計測して算出した。
【実施例】
【0114】
[参考例1:CD300aのリガンドの同定]
[参考例1A]
各種造血幹細胞系列細胞株または腫瘍細胞系列細胞株におけるマウスCD300aリガンドの発現を確認するために、以下のような試験を行った。
【実施例】
【0115】
「1.調製例」において得られた、骨髄由来マクロファージ(BMMφ)、骨髄由来樹状細胞(BMDC)またはIL-3依存性造血細胞株(BaF/3細胞)(各細胞数2X105個)を、CD300a-Fc(1μg)、および塩化カルシウム(1mM)を含むPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中で20℃、30分間インキュベートし、次いでFITC結合型抗ヒトIgG抗体(0.1μg)およびヨウ化プロピジウム(PI)(1μg)を含む緩衝液を用いて染色した。
【実施例】
【0116】
染色された各細胞を、フローサイトメトリー(ベクトン・ディッキンソン社製、FACSCalibur、型番「E6133」)を用いた分析に供した。
また、マウスCD300a-Fcの代わりにコントロール用ヒトIgG(1μg)を用いたこと以外は上記試験方法と同様にして、対照試験も実施した。
【実施例】
【0117】
BMMφ、BMDCおよびBaF/3細胞を用いた場合のフローサイトメトリーの分析結果を、それぞれ図1A、図1Bおよび図1Cに示す(なお、対照試験は、「Ctrl Ig」に示す。)。
【実施例】
【0118】
図1A~図1Cに示されるように、マウスCD300a-Fcは、塩化カルシウムを含む場合、PI-細胞(生細胞)に結合する一方、PI+細胞(死細胞)には結合しないことが分かった。つまり、マウスCD300aリガンドは、死細胞において発現していることが示唆される。
【実施例】
【0119】
[参考例1B]
マウスCD300a-Fcが、死細胞の一種であるアポトーシス細胞に結合するか否かを検証するために、以下のような試験を行った。
【実施例】
【0120】
C57BL/6マウス(野生型マウス)由来の胸腺細胞に、RPMIメディウム中でデキサメタゾン(Sigma社製)(10μM)とともにインキュベートして、胸腺細胞のアポトーシス細胞を調製した。
【実施例】
【0121】
得られたアポトーシス細胞(細胞数2X105)を、CD300a-Fc(1μg)、APC結合型アネキシンV(BD Pharmingen社製)(1μl)および塩化カルシウム(1mM)を含むメディウム(PBS)中で20℃、30分間インキュベートし、次いで、FITC結合型抗ヒトIgG抗体(0.1μg)およびヨウ化プロピジウム(PI)(1μg)を含む緩衝液を用いて染色した。
【実施例】
【0122】
染色された各細胞を、フローサイトメトリー(ベクトン・ディッキンソン社製、FACSCalibur、型番「E6133」)を用いて分析した(結果:図2A)。
また、塩化カルシウムを含むメディウムの代わりに塩化カルシウムを含まないメディウムを用いたこと以外は、上記試験条件と同様にして、フローサイトメトリーを用いた分析に供した(結果:図2B)。
【実施例】
【0123】
図2Aによると、塩化カルシウムの存在下では、マウスCD300a-Fcは、アネキシンVで染色されない(アネキシンV-)胸腺細胞に結合しないのに対して、アネキシンVで染色される胸腺細胞に結合することが分かる。すなわち、マウスCD300a-Fcは、アポトーシスした胸腺細胞に結合することが示される。
【実施例】
【0124】
一方で、図2Bに示されるように、塩化カルシウムの非存在下では、マウスCD300a-Fcは、アポトーシスした胸腺細胞へ結合しないことが分かる。
本試験結果から、マウスCD300aは、カルシウムイオン依存的に、アポトーシス細胞に結合することが理解できる。
【実施例】
【0125】
[参考例1C]
参考例1Bで得られたアポトーシス細胞(細胞数2X105)を、マウスCD300a-Fc(1μg)、APC結合型アネキシンV(BD Pharmingen社製)(1μl)、コントロール用ヒトIgG1(1μg)および塩化カルシウム(1mM)を含むメディウム(PBS)中で20℃、30分間インキュベートし、次いで、FITC結合型抗ヒトIgG抗体(0.1μg)およびヨウ化プロピジウム(PI)(1μg)を含む緩衝液を用いて染色した。
【実施例】
【0126】
染色された各細胞を、フローサイトメトリー(ベクトン・ディッキンソン社製、FACSCalibur、型番「E6133」)を用いた分析に供した(結果:図2C「HuIgG1」)。
【実施例】
【0127】
また、コントロール用ヒトIgG1の代わりに、モノクローナル抗体である「TX41」またはマクロファージに発現する蛋白質「MFG-E8」を用いたこと以外は、上記試験条件と同様にして、上記試験条件と同様にして、フローサイトメトリーを用いて分析した(結果:図2C「TX41」および「MFG-E8」)。
【実施例】
【0128】
ここで使用された「TX41」は、上述したように、抗マウスCD300aモノクローナル抗体であり、マウスCD300aとリガンドとの結合を阻止するものである。
また、「MFG-E8」は、フォスファチジルセリン(PS)とαvβ3インテグリンとの両方に結合し、アポトーシス細胞とαvβ3インテグリンを発現する貪食細胞(phagocyte)とを架橋することが知られている(下記文献4)。
【実施例】
【0129】
図2Cの各フローサイトメトリーの結果を対比すると分かるように、TX41またはMFG-E8の存在下では、マウスCD300aは、アポトーシス細胞へ結合しないことが理解できる。
この点を鑑みると、マウスCD300a-Fcは、PSに対する結合性を有すること(CD300aのリガンドはPSであること)が示唆される。
【実施例】
【0130】
[参考例1D]
ヒトCD300aも、マウスCD300aと同様に、アポトーシス細胞に結合するのか否かを検証すべく、以下の試験を行った。
【実施例】
【0131】
まず、Jurkat細胞(ヒトT細胞系列)を、RPMI1640メディウムに懸濁させ、該メディウムに紫外線を60分間照射して、Jurkat細胞のアポトーシス細胞を調製した。
【実施例】
【0132】
アポトーシス細胞として、野生型マウス胸腺細胞由来のアポトーシス細胞の代わりに、上記「Jurkat細胞由来のアポトーシス細胞」を用い、「マウスCD300a-Fc」の代わりに「ヒトCD300a-Fc」を用いたこと以外は、参考例1Aの試験条件と同様にして、フローサイトメトリーを用いて分析した(結果:図2D)。
【実施例】
【0133】
また、アポトーシス細胞として、野生型マウス胸腺細胞由来のアポトーシス細胞の代わりに、上記「Jurkat細胞由来のアポトーシス細胞」を用い、「マウスCD300a-Fc」の代わりに「ヒトCD300a-Fc」を用い、さらに、「TX41」の代わりに「TX49」または「コントロール用ヒトIgG1」を用いたこと以外は、参考例1Bの試験条件と同様にして、フローサイトメトリーを用いて分析した(結果:図2E「TX49」または「HuIgG1」)。なお、「TX49」とは、抗ヒトCD300a抗体(モノクローナル抗体)であり、CD300aとリガンドとの結合を阻止するものである。
【実施例】
【0134】
図2D~図2Eに示されるように、ヒトCD300a-Fcも、アネキシンV+細胞に結合する一方で、抗ヒトCD300a抗体の存在下では結合しないことが分かる。すなわち、マウスCD300a-Fcと同様に、ヒトCD300aもアポトーシス細胞に結合することが示唆される。
【実施例】
【0135】
[参考例1E]
メンブレン(PIP-strip(Echelon Bioscience社製))に、各種リン脂質(PS、PC、PE)(100 pmol)を含む液(試料液)をスポットして、該メンブレン上に各種リン脂質を吸着させた。
【実施例】
【0136】
次いで、該メンブレンを、マウスCD300a-Fc(1.5μg/mL)を含む塩化カルシウム(1mM)及びBSAを加えたTBST緩衝液(pH 8.0)中に20℃で2時間浸漬した。
【実施例】
【0137】
浸漬後、マウスCD300a-Fcを含まないTBST緩衝液(pH8.0)で、3回洗浄して、メンブレン上の各リン脂質に未結合のCD300a-Fcを除去した後、HRP結合型抗ヒトIgG(Jackson Immun社製)を含むBSAを加えたTBST緩衝液(pH8.0)を用いて検出した(結果:図2F)
【実施例】
【0138】
図2F中、「PE」、「PC」および「PS」は、それぞれホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、およびホスファチジルセリンがメンブレン上にスポットされた部分を指し、「Blank」は、何れのリン脂質もメンブレン上にスポットされていない部分を指す。
【実施例】
【0139】
図2Fによれば、CD300aは、PEおよびPCの何れにも結合しない一方、PSに特異的に結合したことを示している。参考例1A~1Eの結果から、CD300aは、カルシウムイオン依存的にホスファチジルセリン(PS)に結合すること(CD300aのリガンドはPSであること)が理解できる。
【実施例】
【0140】
[参考例2:CD300aの機能解析(2)]
一部のPS結合性受容体は、貪食細胞において発現し、生理学的および病理的状況下で、アポトーシス細胞の除去に関与することが知られている(下記文献4~9)。
【実施例】
【0141】
また、PSは、CD300aを発現する細胞である貪食細胞(マクロファージ等)において、いわゆる「eat me」シグナルを介在することが知られている(下記文献10~11)。この点を鑑みて、下記参考例2A~Cに記載の試験を行って、CD300aが、アポトーシス細胞の貪食作用に関与するか否かを検証した。
【実施例】
【0142】
[参考例2A]
CAD欠損マウスに由来する胸腺細胞を、参考例1Bと同様にして、アポトーシス胸腺細胞を調製した。
【実施例】
【0143】
次いで、CD300a遺伝子欠損マウス由来のマクロファージ(チオグリコレート誘発性腹腔マクロファージ)(2×105細胞)を、8穴Lab-TeKIIチャンバースライド(Nalge Nunc社製)内で、CAD欠損マウスに由来するアポトーシス胸腺細胞とともに、1:5(マクロファージ:アポトーシス胸腺細胞(細胞数))の比率で、37℃、1時間共培養した。
【実施例】
【0144】
次いで、下記文献5または26に記載されているように、共培養したマクロファージを冷PBSで洗浄し、パラホルムアルデヒド(1%)を含む固定液で固定した後、FITC標識化dUTP(Roche社製)を含む緩衝液を用いたTUNEL染色に供した。
【実施例】
【0145】
染色された50細胞数以上のマクロファージをランダムにレーザー走査型共焦点顕微鏡(オリンパス社製、「FV10i」、型番:1B22358)で分析し、マクロファージ1細胞に含まれるTUNELポジティブ細胞(アポトーシス細胞)の数を計測した。全マクロファージの個数を100%として、0~8個の各アポトーシス細胞を含むマクロファージの比率(貪食率)を算出した(結果:図4A「Cd300a-/-」)。
【実施例】
【0146】
また、CD300a遺伝子欠損マウス由来のマクロファージの代わりに、野生型マウス由来のマクロファージを用いたこと以外は、上記試験条件と同様にして、貪食率を計測した(結果:図4A「WT」)。
【実施例】
【0147】
図4Aに示されるように、マクロファージがCD300a遺伝子欠損マウスに由来する場合であっても、野生型マウスに由来する場合であっても、貪食率には明確な差異は見られなかった。
【実施例】
【0148】
[参考例2B]
マスト細胞は、公知のPS受容体(TIM-1、TIM-4、スタビリン2、インテグリンαvβ3)を発現するか否かを検証するために、以下の試験を行った。
【実施例】
【0149】
骨髄由来マスト細胞(BMMC)(細胞数2X105個)と、PE(Phycoerythrin)結合型抗TIM-1モノクローナル抗体(0.1μg)、APC結合型抗TIM-4モノクローナル抗体(0.1μg)およびAlexa結合型抗マウスCD300aモノクローナル抗体(TX41)(0.5μg)を含むメディウム(PBS)中で20℃、30分間インキュベートした。
【実施例】
【0150】
次いで、PBSを用いて、2回洗浄した後、染色された各細胞を、フローサイトメトリー(ベクトン・ディッキンソン社製、FACSCalibur、型番「E6133」)を用いた分析に供した(結果:図5A「骨髄由来マスト細胞」)。
【実施例】
【0151】
また、BMMCのかわりに、腹腔マクロファージおよびBM由来マクロファージを用いたこと以外は上記試験方法と同様にして、フローサイトメトリー分析も実施した(結果:図5A「腹腔マクロファージ」および「骨髄由来マスト細胞」)。
【実施例】
【0152】
さらに、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(applied biosystems社製)を用いて、腹腔マクロファージおよびBMMCからcDNAを調製し、調製された各cDNAを用いて、スタビリン2、BAl-1、αvインテグリン、Cd300aおよびβアクチン(ローディングコントロール))の発現量を、RT-PCRによって分析した(結果:図5B)。
図5Aおよび図5Bを参照すると、マクロファージの場合とは異なって、マスト細胞は、CD300aおよびαvβ3インテグリンを発現するものの、貪食作用に関与するPS受容体であるTIM-1、TIM-4およびスタビリン2を低いレベルでしか発現していないことが分かる。
【実施例】
【0153】
[参考例2C]
NIH3T3形質転換体(CD300a)(細胞数6X104)を、FITCで標識化した細胞(アポトーシス胸腺細胞または胸腺細胞(生細胞))とともに、2時間共培養し、PBSで洗浄した後、光学顕微鏡(Keyence社製、BZ-9000)で分析した(結果:図4B)。
【実施例】
【0154】
また、共培養および洗浄後の細胞を、パラフォルムアルデヒドを含む固定液Vectashield(Vector Laboratories社製)で固定して、レーザー走査型共焦点顕微鏡によって分析した(結果:図4C)。なお、図4Cにおいて、緑色部分(矢印で示す。)は、包摂された細胞(アポトーシス胸腺細胞または胸腺細胞(生細胞))を示す。
【実施例】
【0155】
また、NIH3T3形質転換体(CD300a)の代わりに、NIH3T3未形質転換細胞(ネガティブコントロール)または「NIH3T3形質転換体(TIM-4)」(ポジティブコントロール)を用いたこと以外は、上記試験条件と同様にして、光学顕微鏡およびレーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて分析した。
【実施例】
【0156】
図4Bおよび図4Cにおける「NIH-3T3」および「NIH-3T3/Tim4」は、それぞれ、「NIH3T3」(未形質転換細胞)および「NIH3T3形質転換体(TIM-4)」を用いた光学顕微鏡およびレーザー走査型共焦点顕微鏡のイメージを示す。
【実施例】
【0157】
また、レーザー走査型共焦点顕微鏡のイメージから、アポトーシス胸腺細胞を細胞質内に取り込んだ、未形質転換細胞または各形質転換体の細胞数の比率(共培養された未形質転換細胞または各形質転換体の細胞数を100%とする。)を計測した(結果:図4D「apoptotic」)。
【実施例】
【0158】
また、同様にして、胸腺細胞(生細胞)を細胞質内に取り込んだNIH3T3または各形質転換体の細胞数の比率(共培養された未形質転換細胞または各形質転換体の細胞数を100%とする。)を計測した(結果:図4D「Live」)。
【実施例】
【0159】
図4Bに示されるように、NIH3T3とは異なって、上記の形質変換体は、両方ともアポトーシス胸腺細胞に付着した。しかしながら、図4Cおよび図4Dから判断すると、NIH3T3形質転換体(TIM-4)のみがアポトーシス胸腺細胞を取り込み、貪食作用を発揮したことがわかる。
【実施例】
【0160】
また、データを示さないが、NIH3T3と同様に、NIH3T3形質転換体(CD300a)は、生細胞(胸腺細胞)を貪食しないことが観察された。
参考例2A~Cの結果から、CD300aは、マクロファージによるアポトーシス細胞の貪食作用に関与しないことが理解できる。
【実施例】
【0161】
[参考例3:CD300aの機能解析(2)]
図5に示すように、マスト細胞は、CD300aを発現するものの、マクロファージとは異なって、PS受容体であるTIM-1、TIM-4、スタビリンを発現しない。
【実施例】
【0162】
これらのPS受容体には、PSが直接的にまたは間接的に結合することが知られており、アポトーシス細胞の取り込みに寄与することが知られている(下記文献13)。そこで、CD300aもこのような機能を有しているのか否か(アポトーシス細胞を取り込む機能的重複があるのか否か)を検証すべく、下記参考例3A~Cに示す試験を行った。
【実施例】
【0163】
[参考例3A]
CD300a遺伝子欠損マウスの骨髄細胞(BM細胞)2×108個を10cmmディッシュにて、細胞増殖因子(SCF)(10ng/mL)、IL-3(4ng/mL)および仔牛血清(FBS)(10%)を含むコンプリートRPMI1649メディウム中で4週間培養して、CD300a遺伝子欠損マウスの骨髄由来のマスト細胞(BMMC)を調製した。なお、BMMCは、毎週新しいメディウムで継代した。
【実施例】
【0164】
次いで、得られたBMMCを、FITC結合型抗FcεRIα抗体(0.1μg)およびPE結合型抗c-Kit抗体(0.1μg/mL)を含むRPMI1649メディウム中で、4℃、30分インキュベートし、フローサイトメトリーで分析した(結果:図6A「CD300a-/-」)。
【実施例】
【0165】
また、CD300a遺伝子欠損マウス由来の骨髄細胞の代わりに野生型マウス由来の骨髄細胞を用いて、BMMCを調製したこと以外は、上記試験条件と同様にして、フローサイトメトリーで分析した(結果:図6A「WT」)なお、図6Aの数字は、ボックス中の細胞の比率を指し、各試験は独立して3回行った。
【実施例】
【0166】
また、各BMMCを用いてβ-ヘキソサミニダーゼ放出アッセイ(脱顆粒アッセイ)を以下のように実施した(詳細な条件は下記文献29に記載されている)。
まず、対数増殖期における各BMMC1×105細胞~2×105細胞を、ゼラチン(Sigma社製)でコートされた24穴プレート中で37℃、一昼夜培養し、ビオチン結合型マウス抗トリニトロフェノールIgE(0.5mg/mL)を含み、サプリメントを含まないメディウム中において、37℃、1時間インキュベートした。
【実施例】
【0167】
次いで、上記メディウム中にストレプトアビジンを添加して、ビオチン結合型マウス抗トリニトロフェノールIgE同士をクロスリンクさせて、37℃、45分間培養した後、上清を採取した。
【実施例】
【0168】
採取された上清に、p-ニトロフェニルーN-アセチルーβーD-グルコサミド(Sigma社製)およびクエン酸(0.4M)およびリン酸ナトリウム(0.2M)を含む緩衝液(pH4.5)を加え、37℃、3時間インキュベートして、放出されたβ-ヘキソサミニダーゼによってp-ニトロフェニルーN-アセチルーβーD-グルコサミドを加水分解反応させ、該反応を、0.2Mグリシン-NaOH(pH10.7)を添加して、停止した後、p-ニトロフェニルーN-アセチルーβーD-グルコサミドの加水分解によって生じる波長415nmの吸光度を測定し、β-ヘキソサミニダーゼの放出量を定量した。さらに、上記処理をしていない各BMMCに対する、β-ヘキソサミニダーゼの放出量の増加率(%)を図6Bに示した。
【実施例】
【0169】
図6Bは、β-ヘキソサミニダーゼを放出したBMMCの比率を示す。図6Aおよび図6Bに示されるように、BMMCがCD300a遺伝子欠損マウス由来の場合と野生型マウス由来との場合とで、FcεRIαやc-Kitの発現(マスト細胞のマーカー蛋白質)や、β-ヘキソサミニダーゼの放出量の増加率には、有意な差異は見られなかった。
すなわち、骨髄細胞からの分化やFceRI介在性の脱顆粒化には、CD300aは影響を与えるものではないことが分かる。
【実施例】
【0170】
[参考例3B]
CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCおよび、参考例1Bで得られたアポトーシス細胞(BMMC:アポトーシス細胞=10:1(細胞数比))を、塩化カルシウム(1mM)、APC結合型アネキシンV(1μl)、CD300a-Fc(1μg/mL)およびMFG-E8(5μg)を含むPBS中で20℃、30分間インキュベートし、次いで、FITC結合型抗ヒトIgG抗体(0.1μg/mL)およびヨウ化プロピジウム(PI)(1μg)を含む緩衝液を用いて染色した。
【実施例】
【0171】
染色された細胞を、フローサイトメトリー(ベクトン・ディッキンソン社製、FACSCalibur、型番「E6133」)を用いた分析に供した(結果:図7A「MFG-E8」)。
【実施例】
【0172】
また、MFG-E8の代わりにコントロール用IgGを用いたこと以外は、上記試験条件と同様にして、フローサイトメトリー分析を行った(結果:図7A「Ctrl Ig」)。
【実施例】
【0173】
図7Aに示される結果から、コントロール用IgGの存在下では、CD300a-Fcはアポトーシス細胞(アネキシンV+)に結合するのに対して、MFG-E8(PS結合性物質)の存在下では、この結合が特異的に阻害されていることが分かる。
【実施例】
【0174】
なお、この混合試料の上清において、サイトカインおよびケモカインの濃度は、BD Pharmingen社製(TNF-αおよびIL-6)およびR&D Systems社製(MIP-2、MCP-1,IL-13およびMIP-1α)のELISAキットを用いてサイトカインやケモカインの定量を試みたところ、サイトカインやケモカインは検出されなかった。
【実施例】
【0175】
[参考例3C]
BMMCおよびアポトーシス細胞が共存する場合、LPS(リポポリサッカリド)の刺激によって、各種サイトカインの放出量が変化するか否かを検証すべく、以下のような試験を行った。
【実施例】
【0176】
CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCおよびアポトーシス細胞(BMMC:アポトーシス細胞=10:1(細胞数比))を、LPS(1μg/mL)を含むRPMI中で4時間インキュベートした後、メディウムの上清を採取した。
【実施例】
【0177】
次いで、サイトカインおよびケモカインの濃度を、BD Pharmingen社製(TNF-αおよびIL-6)およびR&D Systems社製(MIP-2、MCP-1,IL-13およびMIP-1α)のELISAキットを用いて3回測定し、上記のLPS処理が実施されていないBMMCの各サイトカインおよびケモカインの放出量の増加率を算出した(結果:図7B「Cd300a-/-」)。
【実施例】
【0178】
また、CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCの代わりに、野生型マウス由来のBMMCを用いたこと以外は上記試験条件と同様にして、サイトカインおよびケモカインの増加率を算出した(結果:図7B「WT」)。
【実施例】
【0179】
図7Bに示されるように、何れのBMMCにおいても、LPSによって、各種サイトカインの放出量が増加した。しかしながら、CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCにおいては、野生型マウス由来のBMMCに比べてTNF-α、IL-13、およびMCP-1が有意に増加した。
【実施例】
【0180】
[参考例3D]
さらに、各BMMCの細胞内中の各種サイトカインおよびケモカインの増加率を検証すべく、以下の試験を行った。
【実施例】
【0181】
CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCおよび、参考例1Bで得られたアポトーシス細胞(BMMC:アポトーシス細胞=10:1(細胞数比))を、LPS(リポポリサッカリド)(1μg/mL)を含むメディウム(RPMI)中で4時間インキュベートした後、上記インキュベート後のBMMCおよびアポトーシス細胞を、各種サイトカインおよびケモカインに対する各種蛍光標識化抗体と、ホルムアルデヒドを含むメディウム(FIX & PERM,invitrogen社製)中で4℃、20分インキュベートし、染色された細胞を、フローサイトメトリー(ベクトン・ディッキンソン社製、FACSCalibur、型番「E6133」)を用いた分析に供した(結果:図8矢印(1))。また、各種サイトカインおよびケモカインに対する各種蛍光標識化抗体の代わりに、コントロール用抗体を用いたことは上記試験条件と同様にして、フローサイトメトリー分析を行った(コントロール試験(結果:図8矢印(2)))。
【実施例】
【0182】
また、CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCの代わりに、野生型マウス由来のBMMCを用いたこと以外は上記試験条件と同様にして、フローサイトメトリー分析を行った(結果:図8矢印(3))。さらに、各種サイトカインおよびケモカインに対する各種蛍光標識化抗体の代わりに、コントロール用抗体を用いたことは上記試験条件と同様にして、フローサイトメトリー分析を行った(コントロール試験(結果:図8矢印(4)))。
【実施例】
【0183】
また、図8のグラフは、各BMMCにおける各サイトカイニンおよびケモカインに関するMFI値(mean fluorescence intensity)を測定し、LPS未処理のBMMCに対するMFIの増加量を示す。
【実施例】
【0184】
図8によれば、何れのBMMCの細胞質中においても、LPS未処理の場合に比べてサイトカイニンおよびケモカインの量が増加したことを示しているが、CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCの細胞質中では、野生型マウス由来のBMMCの細胞質中と比べても、TNF-α等が有意に増加したことが分かる。
【実施例】
【0185】
[参考例3E]
D89E MFG-E8は、RGDモチーフにおいて点変異(D89E)を含むMFG-E8のバリアント(変異体)であり、PSに結合するが、αvβ3インテグリンに結合しないという結合特性を有する。
【実施例】
【0186】
そこで、D89E MFG-E8の存在下において、各BMMCのサイトカインおよびケモカインの放出量が変化するか否かを検証すべく、以下のような試験を行った。
CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCおよびアポトーシス細胞を含むメディウム中に、LPSとともにD89E MFG-E8(5μg/mL)を添加したこと以外は、参考例3Cと同様にして、TNF-α、IL-13、MCP-1およびIL-6を定量した(結果:図7C「CD300a-/-」)。
【実施例】
【0187】
また、CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCの代わりに、野生型マウス由来のBMMCを用いたこと以外は上記試験条件と同様にして、TNF-α、IL-13、MCP-1およびIL-6を定量した(結果:図7C「WT」)。
【実施例】
【0188】
図7Cに示されるように、D89E MFG-E8の存在下では、BMMCがCD300a遺伝子欠損マウス由来の場合と野生型マウス由来との場合とで、各種サイトカインの濃度には、有意な差異が見られなかった。
【実施例】
【0189】
[参考例3F]
CD300aは、細胞内部位において免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を有し、抗CD300a抗体で架橋されると、SHP-1が誘導されることが知られている(下記文献14)。
【実施例】
【0190】
そこで、CD300aとSHP-1とが相互作用するのか否かを検証すべく、以下のような試験を実施した。試験例3Cのように、LPSの存在下でアポトーシス細胞と4時間共培養したCD300a遺伝子欠損マウスまたは野生型マウス由来のBMMCの細胞破砕物を、抗CD300a抗体(TX41)で免疫沈降させた。
【実施例】
【0191】
得られた免疫沈降物を用いて、下記文献14に記載されているように、抗SHP-1抗体または抗CD300a抗体によるイムノブロットを行った(結果:図7D)。
この結果からも分かるように、BMMCがアポトーシス細胞と共培養された場合、LPS刺激に応答して、SHP-1を誘導(リクルート)することが分かる。しかしながら、D89E MFG-E8の存在下においては、CD300aはSHP-1をリクルートしなかった。
すなわち、LPS刺激の応答に対するCD300aによるSHP-1の誘導(リクルート)には、PSがCD300aへ結合することが必要であると考えられる。
【実施例】
【0192】
[参考例3G]
SHP-1が、CD300a介在性のシグナリングに関与しているかどうかを調べるために、まず、野生型マウス由来のBMMCにおいて、siRNAでPtpn6(SHP-1遺伝子)をノックアウトして、SHP-1欠損(Ptpn6-KD)野生型マウス由来のBMMCを以下の条件で作製した。また、同様にして、CD300a遺伝子欠損マウス由来BMMCからSHP-1欠損(Ptpn6-KD)CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCを作製した。
【実施例】
【0193】
BMMC中のSHP-1遺伝子(Ptpn6遺伝子)をターゲットとしたsiRNA(SHP-1 siRNA)(siGENOME SMARTpool;ThermoScientific Dharmacom)0.5mMを、X-treme Gene siRNA transfection reagent(Roche社製)1mLと混合し、下記文献28に記載されているように、5×105細胞のCD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCに形質導入(トランスフェクト)して、SHP-1がノックダウンされたCD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMC(BMMC(CD300a-/-・Ptpn6-KD))を作製した。
【実施例】
【0194】
また、CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCの代わりに、野生型マウス由来のBMMCを用いたこと以外は、上記試験条件と同様にして、SHP-1がノックダウンされた野生型マウス由来のBMMC(BMMC(WT・Ptpn6-KD))を作製した。
【実施例】
【0195】
ここで、SHP-1 siRNAが各BMMCに形質導入され、SHP-1の発現量が低減していることを確認するために、BMMC(CD300a-/-・Ptpn6-KD)またはBMMC(WT・Ptpn6-KD)のライセートを用いて、抗SHP-1抗体、抗SHP-2抗体および抗βアクチン抗体によるイムノブロッティング分析を行った(結果:図7E)。
【実施例】
【0196】
図7Eに示されるように、SHP-1 siRNAを形質導入したBMMCでは、SHP-1の発現量が低減されていることが確認できる。なお、「Ctrl」は、SHP-1 siRNAの代わりに、コントロール用siRNAを形質導入したBMMCを用いたイムノブロッティング分析の結果を示す。
【実施例】
【0197】
次に、BMMC(CD300a-/-・Ptpn6-KD)またはBMMC(WT・Ptpn6-KD)および参考例1Bで得られたアポトーシス細胞(BMMC:アポトーシス細胞=10:1(細胞数比))を、塩化カルシウム(1mM)およびLPS(リポポリサッカリド)(1μg/mL)含むRPMI中で4時間インキュベートした後、参考例3Bと同様にして、TNF-αの放出量を測定した(結果:図7F)。
【実施例】
【0198】
図7F(左グラフ)に示されるように、CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCは野生型マウス由来のBMMCよりも有意にTNF-αを産生した。一方で、図7F(右グラフ)に示されるように、野生マウスまたはCD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCは、SHP-1 siRNAが形質導入された場合、野生由来BMMCもCD300a遺伝子欠損マウス由来BMMCも、TNF-αの放出量は同程度であり、両者に有意な差異は見られなかった。
【実施例】
【0199】
これらの結果は、PSがCD300aに結合すると、CD300aはSHP-1を誘導して、BMMCの活性化抑制シグナルを介在し、結果として、TNF-αの分泌の抑制をすることを示唆している。
【実施例】
【0200】
参考例3の結果から、PSとCD300aとの相互作用は、BMMCから炎症誘発性の(LPS誘導性の)サイトカインおよびケモカインの産生を阻害すること、およびこの相互作用はSHP-1をリクルートして、TNF-αの分泌の抑制をすることが理解される。
【実施例】
【0201】
[参考例4:CD300aの機能解析(3)]
マスト細胞が産生するTNF-α、IL-3およびMCP-1は、好中球の化学誘引物質であり、CLP腹膜炎マウスにおいて、細菌クリアランスに重要な役割を果たすことが知られている(下記文献15~19)。
そこで、CD300aが細菌クリアランス機能を有するか否かを検討するために、下記参考例4A~4Hを行った。
【実施例】
【0202】
[参考例4A]
野生型マウスの盲腸(腹側域)上において、1~2cmの正中線切開を実施し、その末端部を結紮した。次いで、結紮部位において、27ゲージ針を用いて2回穿刺した後、該盲腸を腹部に戻し、無菌食塩水1mLを皮下注射して補水した後、切開部を縫合して切開部分を閉じた。なお、上記のCLPの詳細内容・条件は、下記文献16に記載されている。
【実施例】
【0203】
CLPの実施前またはCLPの実施後4時間目において、腹膜灌流液を採取した。次いで、該腹膜灌流液にAPC結合型アネキシンV(1μg)およびCD300-Fc(1μg)を添加した後、FITC結合型抗ヒトIgGおよびPI(ヨウ化プロピジウム)で染色し、フローサイトメトリーで分析した(結果:図12A)。
【実施例】
【0204】
図12Aは、下記文献20に記載されているように、腹膜炎部位は、多数の細胞がアポトーシスに至る部位であることを確認できる結果となっている。
すなわち、CD300aは、膜炎部位のマスト細胞の免疫制御に影響を与えることが示唆される。
【実施例】
【0205】
[参考例4B]
CD300aとマスト細胞の免疫制御との関係を検証すべく、以下のようにプロテオーム解析を行った。
【実施例】
【0206】
まず、野生型マウスおよびマスト細胞欠損マウス(kitW-sh/W-shマウス)に、参考例4Aと同様にしてCLPを実施した。
CLP実施から4時間経過後、各マウスの腹膜灌流液を採取して、採取された腹膜灌流液を、製造元の説明書に準拠して、Proteome Profiler Array(R&D Systems社製)を用いてサイトカインおよびケモカインのプロテオーム解析に供した。
【実施例】
【0207】
図9Aは、野生型マウスおよびマスト細胞欠損マウス(kitW-sh/W-shマウス)の腹膜灌流液を用いたデンシトメトリー分析(プロテオーム分析)の結果を示す(図9A中「PC」はポジティブコントロールを示す。)。
【実施例】
【0208】
また、図9Bは、図9Aで示される各シグナルをデンシトメトリー像から得られた、各ケモカインやサイトカインのシグナルのピクセル密度を示す。
図9Bに示されるように、CLP後4時間目において、腹腔内のケモカインの濃度は、野生型マウスよりもkitW-sh/W-shマウスにおいて高いことが分かる。なお、本試験は、2回実施しても同様の結果が得られた。
【実施例】
【0209】
[参考例4C]
参考例4Bと同様にして、野生型マウスおよびマスト細胞欠損マウス(kitW-sh/W-shマウス)から腹膜灌流液を採取した(各n=3)。
【実施例】
【0210】
次いで、各腹膜灌流液から段階希釈液系列を調製し、調製された腹膜灌流液の各段階希釈液をプレーティングし、ブレインハートインフュージョン(BHI)寒天を含むプレート上で、37℃、48時間培養した。次いで、好気性細菌のCFUを、下記文献27に記載されているように、腹膜灌流液1mL中のコロニー数を計測して好気性細菌のCFUを算出した(結果:図10A)。
【実施例】
【0211】
また、各腹膜灌流液中の好中球およびマクロファージの細胞数も計測し、結果をそれぞれ図10Bの「neutrophil」および「macrophage」に示す。
さらに、野生型マウスまたはマスト細胞欠損マウス(kitW-sh/W-shマウス)からBM由来マクロファージを調製した。これらのマクロファージ(細胞数:1X106)を、フルオレセイン標識化大腸菌を含むメディウム中で、24穴プレートで1時間共培養し、フローサイトメトリーで大腸菌を貪食した各マクロファージの細胞数を測定し、貪食しているマクロファージの比率を算出した(結果:図11「BM macrophage」)。
【実施例】
【0212】
野生型マウスまたはマスト細胞欠損マウス(kitW-sh/W-shマウス)由来のBM由来マクロファージの代わりに、野生型マウスまたはマスト細胞欠損マウス(kitW-sh/W-shマウス)由来のPECマクロファージを用いたこと以外は、上記試験条件と同様にして、貪食しているマクロファージの比率を算出した(結果:図11「PEC macrophage」)。
【実施例】
【0213】
図10Aに示されるように、CLP後4時間目のマスト細胞欠損マウス(kitW-sh/W-shマウス)では、野生型マウスに比べて、腹腔内における細菌CFUが少なく、好中球の細胞数が多いことが分かる。対して、図10Bおよび図11に示されるように、マクロファージの細胞数および貪食作用は、両遺伝子型間で有意差が無いものであった。
【実施例】
【0214】
[参考例4D]
CD300aが好中球の誘導(リクルート)に関与するか否かを検証するために、以下の実施例を行った。
【実施例】
【0215】
マスト細胞欠損マウス(KitW-sh/W-shマウス)に、野生型マウス由来のBMMC(細胞数1X106)を含むPBS緩衝液を腹腔内注射で投与した(n=20)。次いで、投与してから28日間経過後、参考例4Aと同様にしてCLPを実施し、マウスの生存率を測定した(結果:図12B「WT BMMCs→KitW-sh/KitW-sh」)。
【実施例】
【0216】
また、野生型マウス由来のBMMCの代わりに、CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCを用いたこと以外は、上記試験条件と同様にして、マウスの生存率を測定した(結果:図12B「CD300a-/- BMMCs→KitW-sh/KitW-sh」)。なお、図12Bにおける「KitW-sh/KitW-sh」は、BMMCを投与しないで、CLPを実施したマスト細胞欠損マウス(KitW-sh/W-shマウス)の生存率を示す。
【実施例】
【0217】
図12Bによれば、CLP後であっても、野生型マウス由来のBMMCが供されたマスト細胞欠損マウス(KitW-sh/W-shマウス)では、BMMCを投与されなかった場合と比べて、高い生存率が示された。
【実施例】
【0218】
しかしながら、CLPの後において、CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCが供されたマスト細胞欠損マウス(KitW-sh/W-shマウス)では、野生型マウス由来のBMMCやBMMCが投与されなかったマウスと比べて、CLP後であっても生存率が有意に高かったことが分かる(図12B)。
【実施例】
【0219】
さらに、CLP後4時間目の上記各マウスの腹膜灌流液を用いて、参考例4Cと同様にして細菌のCFUを測定したところ、CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMCが供されたマスト細胞欠損マウス(KitW-sh/W-shマウス)では、他のマウスに比べて、細菌クリアランスも大きいことが示された(結果:図12C)。
【実施例】
【0220】
[参考例4E]
BMMCをマスト細胞欠損マウス(KitW-sh/W-shマウス)の腹腔内に投与することで、TNF-αの放出量が増加するか否かを検証するために、以下の実施例を行った。
【実施例】
【0221】
CLPの24時間前において、マスト細胞欠損マウス(KitW-sh/W-shマウス)の腹腔内に、CFSE標識化した混合BMMC(CD300a遺伝子欠損マウス由来のBMMC:野生マウス由来のBMMC=1:1(細胞数比))を腹腔内注射で投与した。
【実施例】
【0222】
該混合BMMCが注射されたマウスに参考例4Aと同様にしてCLPを実施し、CLP後4時間目に、腹膜灌流液を採取した。該腹膜灌流液中に含まれる各BMMCをフローサイトメトリー(ベクトン・ディッキンソン社製、FACSCalibur、型番「E6133」)を用いた分析に供した(結果:図12D)。
【実施例】
【0223】
図12Dに示されるように、CLPから4時間後において、CD300D遺伝子欠損マウス由来のBMMC(CD300a-CFSE+細胞)は、野生型マウス由来のBMMC(CD300a+CFSE+細胞)よりも有意に大量のTNF-αを産生していることが分かる。
【実施例】
【0224】
[参考例4F]
抗CD300aモノクローナル抗体(TX41)を投与した場合、CD300aにおいてどのような影響があるのかを検証するために、以下のような実施例を行った。
【実施例】
【0225】
まず、CLPの1時間前または18時間前において、野生型マウスに、500μgの抗CD300aモノクローナル抗体(TX41)(n=13)を腹腔内注射したこと以外は、参考例4Aと同様にしてCLPを実施して、参考例4Dと同様にして、マウスの生存率を測定した(結果:図12E「Antibody to CD300a」)。
【実施例】
【0226】
また、コントロールとして、TX41(n=13)の代わりに、アイソタイプコントロール用抗体(n=11)を用いたこと以外は上記試験条件と同様にして、マウスの生存率を測定した(結果:図12E「Control antibody」)。
【実施例】
【0227】
図12Eに示されるように、CLP実施の1時間または18時間前において野生型マウスに腹腔内注射によってTX41を投与した後にCLPを実施した場合、コントロール用抗体を投与した場合と比べて、生存期間が長くなることが分かった。
【実施例】
【0228】
[参考例4G]
参考例4Fにおける、CLP後4時間目の各マウスから腹膜灌流液を採取した。得られた腹膜灌流液を用いて、参考例4Cと同様にして、細菌CFUおよび好中球の細胞数を測定した(コントロール用抗体:n=5および、抗CD300aモノクローナル抗体:n=5)(それぞれ図12Fおよび図12G)。
【実施例】
【0229】
なお、TX41が腹腔内注射で投与されても、各マウスのマスト細胞を含めたミエロイド系細胞が欠損することはなかった。
図12Fおよび図12Gに示されるように、CLP実施の1時間または18時間前において野生型マウスに腹腔内注射によってTX41を投与した場合、腹腔内において、有意に好中球の細胞数は増加し、細菌クリアランスも向上した。
【実施例】
【0230】
参考例4の結果から、PSとCD300aとの相互作用を、たとえばTX41などで阻止することで、腹膜炎誘発性の敗血症を予防できることが理解される。
なお、生理的状況下においては、多くの細胞がアポトーシスに至っている。ここで、アポトーシス細胞の取り込みには、PS受容体は中心的な役割を果たし、自己免疫疾患の進展を防ぐのに必須なものである(下記文献22)。
【実施例】
【0231】
一方で、微生物感染のような病理的状況では、顕著にアポトーシスによる細胞死が増加し、病原関連分子パターン(PAMPs)に対する受容体(たとえばToll様受容体)を介し、マスト細胞による炎症反応を引き起こすことが知られている(下記文献15,23および24)。また、マスト細胞は、病原体に対する免疫反応において重要な役割を果たすことも知られている。
【実施例】
【0232】
以上から、上記実施例における結果は、PSが、数種類のPS受容体を介して貪食細胞へ取り込みシグナルを提供することのみならず、今回新たな知見として得られたように、CD300aを介したマスト細胞による炎症反応を有効に抑制する効果を有することが理解できる。
【実施例】
【0233】
したがって、ホスファチジルセリン結合性物質(MFG-E8等)やCD300a結合性物質(CD300aに対する中和抗体等)が、PSとマスト細胞におけるCD300aとの相互作用を阻止して、マスト細胞を活性化させるまたは該活性を維持させることが理解される。
【実施例】
【0234】
すなわち、これらの物質は、たとえばLPS誘発性の各種炎症性感染症(さらにはそれによる敗血症)の予防に用いられる医薬品の有効成分として有用であることが理解できる。
【実施例】
【0235】
<喘息>
(材料と方法)
(マウス)
C57BL/6Jマウスはクレア日本社より購入した。CD300a遺伝子欠損マウス(CD300a-/-マウス)は、当研究室で作成したBalb/cのCD300a遺伝子欠損マウスと、購入したWT C57BL/6Jマウスとを12世代交配し、バッククロスを行うことにより得た。喘息の誘導開始時にはいずれも8-10週の雄または雌マウスを用いた。
【実施例】
【0236】
(OVA誘導喘息)
図13Aに、鶏卵白アルブミンで誘導喘息のプロトコールを示す。喘息誘導開始から0、7、14日目に、100μgの鶏卵白アルブミン(OVA、鶏卵のアルブミン, シグマ社製)と100μLのアルミニウム水酸化物ゲル (ALUM、ALhydrogel 2%, インビトロジェン社製)を混和したものを各マウスに腹腔内注射した。
【実施例】
【0237】
また、喘息誘導開始から21,22,23日目に、PBSで10%に希釈した鶏卵白アルブミンを超音波ネブライザー(NE-U17,Omuron)で各マウスに30分間吸入させた。そして、喘息誘導開始から25日目に各マウスの気管支肺胞洗浄(BAL)と、各マウスから血清の回収を行った。
【実施例】
【0238】
[実施例1A](図13A、図13B)
(気管支肺胞洗浄BAL)
マウスの気管を切開し、1mLの2%FBS/PBSで3回洗浄し、洗浄液を回収し、細胞数を測定した。図13AおよびBに示すように、喘息誘導開始から25日目の各マウスの肺胞洗浄液(BAL液)中の細胞数は、総細胞数について、好酸球数についても、CD300a遺伝子欠損マウスの方がWTマウスよりも有意に少なかった。この結果は、CD300aが卵白アルブミン(OVA)による好酸球性気道炎症を増悪させており、CD300a遺伝子欠損マウスは好酸球性気道炎症の症状が改善されることを示している。
【実施例】
【0239】
[実施例1B](肺胞洗浄液中の細胞の解析)(図13C)
回収した気管支肺胞洗浄液から1×106個の細胞をCD45.2-FITC、Siglec-F-PE、CD11b-APCCy7、CD11c-PECCy7、F4/80-Alexa(いずれも購入,BD)で染色し、 CD45+SiglecF-CD11b+CD11c-F4/80-を好酸球分画としてフローサイトメトリー(FACS)にて解析した。
【実施例】
【0240】
喘息誘導開始から25日目のマウスの肺胞洗浄液中の細胞をFACS解析したところ、CD45陽性細胞中の好酸球の割合(CD45+SiglecF-CD11b+CD11c-F4/80-)を示した。CD300a遺伝子欠損マウスはWTマウスに比べ、有意にBAL液中の好酸球の浸潤割合が低かった。
【実施例】
【0241】
[実施例1C](血清IgE値の測定)(図14)
血清IgEの測定はラット抗マウスIgE(BD)とビオチン化抗マウスIgE(BD)を用いて、ELISA法にて測定した。
【実施例】
【0242】
図14に示すように、CD300a遺伝子欠損マウスは鶏卵白アルブミンで誘導した喘息の感作の時期に、血清のIgE値を有意に低下させた。OVAで誘導した喘息モデルの14病日目のWTマウスで、各マウスの血清IgE値を比較すると、CD300a遺伝子欠損マウスでは、WTマウスに比べ有意に、アレルギーの程度を示す指標の血清IgE値が低かった。
【実施例】
【0243】
CD300aのシグナル伝達を抑制する抗CD300a抗体を投与することにより、鶏卵白アルブミンにより誘導した喘息において、血清IgEが有意に抑制されると考えられる。
【実施例】
【0244】
<アトピー性皮膚炎>
CD300aがアトピー性皮膚にどのように関与しているのか、調べた。
以下、材料と方法、および各実施例を示す。
【実施例】
【0245】
(実験動物)
Balb/cマウスは、Clea社から、購入し、承認された飼育舎条件下、発明者らの実験室で飼育した。本研究に用いたマウスのうち、8匹はCD300a(MAIR-I)遺伝子欠損であり、他の8匹のマウスはBalb/c種の野生型(WT:Wild Type)のマウスであった。実験期間中、各マウスは餌および水を自由に与えられ、通常の実験室条件で維持された。
【実施例】
【0246】
(経皮感作)
各マウスに対し、イソフルラン(マイラン制約株式会社、大阪、日本)により穏やかに麻酔を行った後、電気シェーバーで背部の剃毛を行った。各マウスにつき背面皮膚の一箇所(1cm2)に、粘着性セロファンテープを用いて、少なくとも10回テープストリッピングを行った。
【実施例】
【0247】
100μLのリン酸緩衝食塩水中100μgの鶏卵白アルブミン(OVA)をバンドエイド(登録商標)テープのガーゼに配置し、テープストリッピングを行った各群のマウスのうち5匹の体に貼り付けた。残りの3匹のマウスには、PBSをテープで貼り付けた。テープは、2日目に一度更新され、1週間、テープで毎日、OVA感作を行った。
【実施例】
【0248】
各マウスは、第2週にはOVA感作から開放した。第3週に、再度、上記と同じOVA感作に供した。第3週の終わりに、各マウスを犠牲にして、組織学とELISAのためのサンプルを採取した。
【実施例】
【0249】
(擦過行動数)
擦過行動数は、第1~3週の各週の終わりに各マウスを注意深く観察することにより、30分間カウントすることにより計測した。
【実施例】
【0250】
(組織学)
組織学的観察のために、各マウスのOVA感作部位の皮膚を採取した。採取した全ての皮膚のサンプルを小さな組織ブロックにカットし、4%のパラホルムアルデヒドに4℃で24時間浸漬した。
【実施例】
【0251】
この固定化に続いて、脱水工程を行なった。その後、全ての皮膚のサンプルをドライアイス入の容器内のアセトン中で急速冷凍した。各サンプルは使用するまで-30℃で保存した。
【実施例】
【0252】
その後、凍結切片作製装置であるColdtomeHM560E(カールツァイス社製、イエナ、ドイツ)を用いて、皮膚のサンプルを4μm厚の切片にカットし、ニューシランIII(武藤化学株式会社、東京、日本)でプレコートしたスライドグラスにのせた。
【実施例】
【0253】
組織切片に対して、ヘマトキシリン・エオシン(サクラファインインデックジャパン株式会社製)で染色、並びにトルイジンブルー(サンタクルーズバイオテクノロジー社)で染色を行った。
組織初見の評価は、表皮厚(細胞層)、好酸球、単核細胞およびマスト細胞の浸潤、繊維芽細胞の過形成のレベルについて行った。
【実施例】
【0254】
[実施例2A]擦過行動数(図15)
図15に各マウスの30分毎の擦過行動数を示す。そう痒症(発疹がないのに、かゆみだけがある疾患)は、アトピー性皮膚炎の一般的な条件である。したがって、OVA感作時に擦過行動数を慎重に30分間、それぞれの動物を観察することによってカウントし、これに基づいて評価している。
【実施例】
【0255】
図15に示すように、OVA感作をしたWTマウス(◆)では、OVA感作後に重度の擦過行動の状態を示し、擦過行動数はOVA感作をしたCD300a遺伝子欠損マウス(▲)よりも高かった、最も多い擦過行動数は、第4のOVA感作の終了時に観察された。
【実施例】
【0256】
OVA感作の間、WTマウスにおいて最も高い擦過行動の症状が観察された(図15)。擦過行動の症状が高度に発現することは、アトピー性皮膚炎の最も一般的な病理特徴の一つである。したがって、このことから、CD300a(MAIR-I)陽性細胞がアトピー性皮膚炎において重要な役割に関わっていることが明らかになる可能性がある。
【実施例】
【0257】
[実施例2B]観察(図16参照)
OVA感作をした各マウスの皮膚について観察した。
図16(A)にWTマウスでOVA感作をしなかったマウスの皮膚を示す。鶏卵白アルブミン感作を行わなかったWTマウス未処理では、真皮で細胞浸潤は見られず、薄い表皮が観察される。なお、図16の下側のパネルは、上段の矩形領域の拡大図を示している。また、太いバーの長さは、10μmを示す。
【実施例】
【0258】
一方、図16(B)に示すように、OVA感作を行ったWTマウスの皮膚では、表皮の過形成と線維芽細胞の過形成が観察された。WTマウスで鶏卵白アルブミンの感作を行ったマウスの皮膚の真皮で、好酸球(白抜矢印参照)と単核細胞の浸潤が明確に見られた。
【実施例】
【0259】
図16(C)に示すように、OVA感作を行わなかったCD300a遺伝子欠損マウスの表皮では、細胞浸潤が観察されず、図16(A)と同様に、薄い皮膚が観察された。
図16(D)に示すように、OVA感作後のCD300a遺伝子欠損マウスの皮膚では、驚くべきことに、表皮の厚さは増加したが、表皮の過形成は観察されなかった。さらに、その真皮では、細胞浸潤や線維芽細胞の過形成が認められなかった。
【実施例】
【0260】
[実施例2C]マスト細胞染色(図17参照)
図17に示すように、すべてのマウスの皮膚サンプルでトルイジンブルー染色を行った。トルイジンブルー染色は、マスト細胞の細胞内顆粒を好適に染色する染色法である。
【実施例】
【0261】
図17の(A)にOVA感作をしなかったWTマウスの皮膚を示す。図17の(B)にOVA感作を行ったWTマウスの皮膚を示す。図17の(C)にOVA感作をしなかったCD300a遺伝子欠損マウスの皮膚を示す。図17の(D)にOVA感作を行ったWTマウスの皮膚を示す。なお、染色されたマスト細胞が白抜矢印で示されている。
図17に示すように、OVA感作後、WTマウスの皮膚でマスト細胞の数の増加が観察され、表皮もCD300a遺伝子欠損マウスに比較してより厚くなった。
【実施例】
【0262】
[実施例2D]細胞層数の計測(図18A)
すべてのマウスの皮膚サンプルで表皮内の細胞層数を計数した(図18A参照)。OVA感作後、WTマウスで最も多い細胞層数を示した。これに対して、OVA感作を行ったCD300a遺伝子欠損マウスでは、その半数以下であった。
【実施例】
【0263】
[実施例2E]好酸球数とマスト細胞数の計測(図18B)
図18Bに示すように、全てのマウスの表皮サンプルで真皮内に浸潤したアトピー性皮膚炎の指標である好酸球数とマスト細胞数の計測を行った。鶏卵白アルブミン感作後のWTマウスの表皮で最も多い細胞数が観測された。
【実施例】
【0264】
これに対して、OVA感作をしたCD300a遺伝子欠損マウスでは、好酸球数およびマスト細胞の増加がWTマウスのものより軽減された。OVA感作の後、表皮過形成および過形成線維芽細胞が、WTマウスにおいて最も高く発現した(図16および図18A)。表皮および線維芽細胞の過形成は、いずれも、アトピー性皮膚炎のもう一つの主要な病理特徴である。
【実施例】
【0265】
また、OVA感作をしたWTマウスの皮膚では、好酸球,肥満細胞および単核細胞の浸潤が高く発現した(図16~図18B)。浸潤した好酸球と過形成の繊維芽細胞との相互作用により、IL-31が分泌される。このIL-31は、かゆみ惹起性サイトカインである(下記文献34:Wong CKら,2012)。
したがって、OVA感作の後において、WTマウスは、CD300a遺伝子欠損マウスと比べて、アトピー性皮膚炎の特徴がより重度に表れる。
【実施例】
【0266】
(免疫組織学)
連続皮膚切片上のCD300a(MAIR-I)およびランゲリン抗原の検出を行うために、酵素免疫組織化学の1工程または2工程の方法を行った。まず、全ての切片を0.05%Tween添加リン酸緩衝食塩水(TPBS,pH7.4)で3回すすいだ。その後、これらを冷無水メタノールおよび0.5%H22にそれぞれ30分ずつ浸漬した。
【実施例】
【0267】
TPBS中での洗浄の後、切片に対し、ブロッキング ワン Histo試薬(ナカライテスク株式会社,京都,日本)によるブロッキング処理を10分間行い、TPBSで洗浄した。皮膚切片を、抗ランゲリンヤギIgG(サンタクルーズバイオテクノロジー社,サンタクルーズ,カリフォルニア,米国)およびビオチン化抗CD300a(MAIR-I)ラットIgG 2aλ(発明者らの実験室で調製した。)の存在下で4℃にて18時間培養し、ランゲリンの第2抗体としてビオチン化ロバ抗ヤギIgG存在下で室温にて1時間培養した。
【実施例】
【0268】
最後に、これらを、DAB/金属 濃縮物(サーモサイエンティフィック社,ウォルサム,マサチューセッツ,米国)の存在下で培養し、ヘマトキシリンで対比染色した。陰性対照切片については、第1抗血清に代えて、TPBSまたはアイソタイプコントロール抗体の存在下で培養した。
【実施例】
【0269】
[実施例2F]ランゲリン免疫染色(図19)
各マウスの表皮について、免疫染色時の樹状細胞マーカーであるランゲリンについて、陽性であるか否かを調べた。ランゲリンは、ランゲルハンス細胞に発現するC型レクチンの1つであり,真皮樹状細胞の一部にも発現し、抗原認識と取り込み、細胞内の抗原輸送を担うバーベック顆粒(Birbeck granules)の形成に関与する。
【実施例】
【0270】
(結果)
図19(A)は、未処理(OVA感作なし)のWTマウスの表皮を示す。図19(B)は、OVA感作をしたWTマウスの表皮を示す。図19(C)は、未処理のCD300a遺伝子欠損マウスの表皮を示す。図19(D)は、OVA感作をしたCD300a遺伝子欠損マウスの表皮を示す。なお、a、b、cおよびdは、それぞれ上段の図面の矩形領域を拡大した図である。
【実施例】
【0271】
OVA感作後、WTマウスの表皮で、CD300a遺伝子欠損マウスの表皮よりも有意により多くのランゲリン陽性細胞を示した。なお、矢印は、ランゲリン陽性細胞を示す。スケールバーは10μmを表す。
【実施例】
【0272】
[実施例2G]ランゲリン免疫染色のカウンター染色(図20)
ランゲリン抗体の免疫陽性をトルイジンブルーによるカウンター染色で評価した。WTマウスの皮膚は、真皮内のランゲリン陽性細胞数の増加を示した。真皮では、いくつかのランゲリン陽性細胞はマスト細胞と相互作用していた。マスト細胞は紫色に染色されている。スケールバーは10μmを示す。
【実施例】
【0273】
ランゲルハンス細胞および皮膚樹状細胞は、皮膚における主要な抗原提示細胞である。ランゲルハンス細胞はその細胞膜においてランゲリン抗原陽性であり、皮膚樹状細胞の中にも、ランゲリン抗原陽性のものが存在する(下記文献35:Nakajima S. ら,2012)。
【実施例】
【0274】
皮膚ランゲリン陽性樹状細胞は、マスト細胞と相互作用し、CD4陽性T細胞を活性化する(下記文献36:Otsuka A. ら,2011)。OVA感作モデルでは、皮膚中のマスト細胞(図17および図18B)およびランゲリン陽性細胞(図19参照)の数は、OVA感作の後のWTマウスの皮膚において大きく増加している(図19白矢印対比参照)。OVA感作の後のWTマウスの皮膚においては、マスト細胞とランゲリン陽性皮膚細胞との相互作用が確認された(図20)。
【実施例】
【0275】
(考察)
したがって、このことから、CD300a遺伝子欠損マウスの皮膚と比べてWTマウスの皮膚においてアトピー性皮膚炎が重度に発現することを導き出すことができる。これらの結果から、CD300a(MAIR-I)がアトピー性皮膚炎において重要な働きを有していることが示唆される。
【実施例】
【0276】
WT皮膚の真皮において、CD300a(MAIR-I)陽性細胞は、OVA感作の後に大きく増加している(図20)。この結果によって、CD300a(MAIR-I)陽性細胞がアトピー性皮膚炎において重要な働きをしていることが更に確認される。
【実施例】
【0277】
(アトピー性皮膚炎の治療)
(抗CD300a(MAIR-I)抗体での処置)
本実験では、6匹の7週齢Balb/cマウスを使用した。図22に示したプロトコールに従い、6動物のうち3動物については、抗CD300a(MAIR-I)ラットIgG 2aλ(TX41)を静注し、残りの3動物については、ラットIgG 2aλコントロール抗体(TX74)を静注した。これらの抗体は、両方とも、発明者らの実験室で調製しチェックした。「TX74」は、TX41のアイソタイプコントロール抗体であり、以下に示すように中和作用を有さない抗体である。抗体の稀釈は滅菌PBSを用いて行い、抗体濃度1600μg/mLにて150μLを一度に注射した。
【実施例】
【0278】
<CD300a(MAIR-I)抗体の注射によるCD300a(MAIR-I)抗原のブロック>
図22に、Balb/cWTマウスでCD300a(MAIR-I)抗原をブロックする手順を示す。太い線は、OVA感作の期間を示す。矢印は、各抗体の注射の日程を示す。
【実施例】
【0279】
血清総IgEは感作をした各週の終わりに評価した。組織学的試料は、連続した感作の後に回収した。抗ラットCD300a(MAIR-I)抗体IgG2aλ(TX41)とそのアイソタイプであるコントロール抗体(TX74)を静脈内注射に使用した。
【実施例】
【0280】
(ELISA)
末梢血を、プレーン(plain)のガラス製ヘマトクリット管(ドラモンド サイエンティフック カンパニー,ブルームオール,ペンシルバニア,米国)を用いて後眼窩洞 (retro-orbital cavity)から採取し、12000rpmで5分間遠心分離を行った。
【実施例】
【0281】
管をカットすることにより血清を集め、血清全体を、ELISAに用いる前にブロッキング血清で稀釈した。ELISA実験は、米国カリフォルニアのBDバイオサイエンス社による全IgEについての標準的なプロトコールに従って行った。
【実施例】
【0282】
[実施例2H]抗CD300a抗体の免疫反応(受容体の存在確認)(図21) 抗CD300a抗体の免疫陽性を、各マウスの皮膚サンプルで評価した。図21の(A)は、WTマウスの表皮で非処理のものを示し、(B)は、WTマウスでOVA感作の表皮を示す。
【実施例】
【0283】
WTマウスの表皮はOVA感作後に有意に免疫陽性の細胞を示した。CD300a遺伝子欠損マウスの表皮は免疫陽性反応を示さなかった。(B)の矢印は、CD300a(MAIR-I)陽性の細胞を示す。また、スケールバーは10μmを示す。
【実施例】
【0284】
[実施例2I]CD300a抗体の投与による治療(図23)
(ELISA)
図22に示すようにWTマウスに対して、それぞれTX41とTX74を上述した手順に従って投与し、アトピー性皮膚炎の指標であるIgE濃度を測定した。
図23に、ELISA法により測定した血清総IgE濃度を示す。OVA感作後のIgE値は、TX41を注射したマウスより、TX74を注射したマウスの方が高かった。
【実施例】
【0285】
[実施例2J]抗CD300a抗体の投与による治療(図24)
図24に示すように、OVA感作後、TX74を注射したWTマウスは、TX41を注射したWTマウスより高い擦過行動の症状を示した。
【実施例】
【0286】
[実施例2K]H&E染色(図25)
図25に示すように、実施例2Iの各WTマウスの皮膚切片でH&E染色を行った。OVA感作後、TX74を注射されたWTマウスの皮膚は、TX41を注射されたWTマウスの皮膚よりも表皮の過形成および単核細胞の浸潤を示した。なお、図25の各写真右下のスケールバーは10μmを示す。
【実施例】
【0287】
[実施例2L]トルイジンブルー染色(図26)
図26に示すように、各WTマウスの皮膚について、トルイジンブルー染色を行った。OVA感作後、TX41を注射したWTマウスよりも、TX71を注射したWTマウスの皮膚の方が、相対的に多くのマスト細胞が観測された。図25と同様に、スケールバーは10μmを示す。
【実施例】
【0288】
(考察)
全IgEおよび擦過行動数は、TX41を注射されたマウスよりもTX74を注射されたマウスの方が高かった(図23および図24参照)。表皮厚、浸潤細胞数、線維芽細胞数および肥満細胞数もまた、TX41を注射されたマウスよりもTX74を注射されたマウスの方が高かった(図25および図26参照)。
【実施例】
【0289】
これらの結果から、CD300a(MAIR-I)がアトピー性皮膚炎において重要な働きを有していることがより一層確認され、抗CD300a抗体であるTX41のアトピー性皮膚炎の治療薬としての効果が確認された。
【実施例】
【0290】
[実施例2M]CD300a遺伝子欠損マウスにおける喘息病態の確認
方法:CD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスにOVA100μg/アルミニウムハイドロゲル(aluminium hydrogel)100μLとしたものを0,7,14日目に腹腔内投与し、21,22、23日目に10%OVA/PBSとした噴霧液を鼻腔投与して喘息を誘導した(図28)。25日目にメサコリンを吸入させ、高性能呼吸機能解析システム(プライムテック株式会社製「FLexivent(TM)」)にて気道内圧を測定した。また、PBS 3mLにて気管支を洗浄し、洗浄液を回収した。気管支洗浄液は細胞を遠心分離し、フローサイトメトリー法にて表面マーカーから細胞集団を解析した。
結果:CD300a遺伝子欠損マウスでは野生型マウスと比較して、メサコリンを吸入させた際の気道内圧が低下しており(図29)、また、気管支洗浄液中の総細胞数、及び好酸球数が低下していた(図30)。CD300a遺伝子欠損マウスは野生型マウスに比べて喘息の病態が軽減されていることが分かる。
【実施例】
【0291】
[実施例2N]CD300a遺伝子欠損マウスのIgE値等
方法:実施例2Mと同様に喘息を誘導した(図28)。25日目に血清を回収し、血清中のIgE, OVA特異的IgG1,IgG2b, IgG2c, IgG3をELISA法にて測定した。
結果:CD300a遺伝子欠損マウスでは野生型マウスと比較して、IgE, OVA特異的IgG1が低下しており、一方で、IgG2b, IgG2cの増加が認められた(図31~図35)。
Th2細胞による免疫応答の指標であるIgEおよびOVA特異的IgG1が低下したことは、CD300a遺伝子欠損マウスではTh2細胞の誘導が減ってアレルギー反応が軽減されることを示している(図31、図32)。
また、Th1細胞による免疫応答の指標であるIgG2cの血中濃度については、CD300a遺伝子欠損マウスの方がWTマウスよりも高く、CD300a遺伝子欠損マウスではTh1細胞の免疫反応がWTマウスよりも増強される結果となった。このTh1細胞の免疫反応の増強は、Th2細胞の免疫反応が相対的に低減されたことを示している(図33)。
【実施例】
【0292】
[実施例2O]CD300a遺伝子欠損マウス免疫後の縦隔リンパ節の確認
方法:CD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスにOVA100μg/アルミニウムヒドロゲル(aluminium hydrogel)100μLとしたものを腹腔内投与して3日目に縦隔リンパ節を採取し、細胞を単離して細胞数を測定した。
結果:CD300a遺伝子欠損マウスでは野生型マウスと比較して、縦隔リンパ節の腫大が認められ(図36)、その細胞数も増加していた(図37)。
【実施例】
【0293】
[実施例2P]CD300a遺伝子欠損マウスの粘膜固有層での制御性T細胞数の確認
方法:CD300a遺伝子欠損マウス及び野生型マウスにOVA100μg/アルミニウムハイドロゲル(aluminium hydrogel)100μLとしたものを腹腔内投与して7日目に縦隔リンパ節を採取した。細胞を単離して染色し、細胞内転写因子の発現をフローサイトメトリー法にて解析した。
結果:CD300a遺伝子欠損マウスでは野生型マウスと比較して、縦隔リンパ節におけるCD4陽性細胞中のCD25陽性FOXP3陽性細胞、つまりCD4+CD25+FOXP3+Treg細胞が増加していた(図38~図40)。各種の免疫抑制機能を有するTreg細胞が増加していることは、CD300a遺伝子欠損マウスが野生型マウスより免疫機能が抑制された状態にあり、結果的に喘息の病態が軽減されることが示唆されている。
【実施例】
【0294】
[実施例2Q]CD11b+樹状細胞におけるCD300aの発現の確認
方法:脾臓、及び縦隔リンパ節におけるCD300aの発現をフローサイトメトリー法にて解析した。
結果:CD300aは、野生型マウスの脾臓細胞および縦隔リンパ節細胞のいずれにおいても、CD11b陽性CD11c陽性細胞で強い発現が認められた(図41~図48)。
【実施例】
【0295】
[実施例2R]TX41抗体投与による喘息病態への影響の確認
方法:野生型マウスにOVA100μg/アルミニウムハイドロゲル(aluminium hydrogel) 100μLとしたものを0日目、7日目、14日目に腹腔内投与し、21日目、22日目、23日目に10%OVA/PBSとした噴霧液を鼻腔投与して喘息を誘導した(図49)。この際、0、3、7、10日目にTX41抗体もしくはコントロールIgG抗体を300μgずつ腹腔内投与した。25日目にメサコリンを吸入させ、高性能呼吸機能解析システム(プライムテック株式会社製「FLexivent(TM)」)にて気道内圧を測定した。また、PBS 3mLにて気管支を洗浄し、洗浄液を回収した。気管支洗浄液は細胞を遠心分離し、フローサイトメトリー法にて好酸球数を解析した。
結果:TX41抗体を投与したマウスではコントロール抗体を投与したマウスと比較して、メサコリンを吸入させた際の気道内圧が低下しており、また、気管支洗浄液中の総細胞数、及び好酸球数が低下していた(図50~図52)。TX41抗体(抗CD300a抗体)は喘息の病態を軽減する効果を有することが分かる。
【実施例】
【0296】
[実施例2S]D89E MFG-E8投与による縦隔リンパ節における制御性T細胞の増加の有無の確認
方法:野生型マウスにOVA100μg/アルミニウムハイドロゲル(aluminium hydrogel) 100μLとしたものを腹腔内投与して7日目に縦隔リンパ節を採取した。この際、1、2日目にD89E MFG-E8もしくはコントロールタンパク質(EPT MFG-E8)を100μg腹腔内投与した。縦隔リンパ節の細胞を単離して染色し、細胞内転写因子の発現をフローサイトメトリー法にて解析した。
結果:D89E MFG-E8投与マウスではコントロールタンパク質(EPT MFG-E8)投与マウスと比較して、縦隔リンパ節におけるCD4陽性細胞中のCD25陽性FOXP3陽性細胞が増加していた(図53)。D89E MFG-E8は、各種の免疫抑制機能を有するTreg細胞を増加させることで、喘息の病態を軽減する効果を有することが示唆されている。
【実施例】
【0297】
1.K.Yotsumotoら、J Exp Med 198,223(2003年7月21日).
2.H.kumagaiら、Biochem Biopys Res Commun 307,719(2003年8月1日).
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図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図45】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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