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明細書 :アントシアニン合成促進剤およびクロロフィル分解促進剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-043558 (P2017-043558A)
公開日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明の名称または考案の名称 アントシアニン合成促進剤およびクロロフィル分解促進剤
国際特許分類 A01N  43/16        (2006.01)
A01N  65/40        (2009.01)
A01N  65/00        (2009.01)
A01P  13/00        (2006.01)
A01G   7/00        (2006.01)
A01P  21/00        (2006.01)
FI A01N 43/16 A
A01N 43/16 C
A01N 65/40
A01N 65/00 A
A01P 13/00
A01G 7/00 604Z
A01P 21/00
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 42
出願番号 特願2015-167239 (P2015-167239)
出願日 平成27年8月26日(2015.8.26)
発明者または考案者 【氏名】小関 良宏
【氏名】長澤 和夫
【氏名】寺 正行
【氏名】百瀬 忠征
【氏名】関口 拓史
【氏名】本山 高貴
【氏名】立壁 伸也
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100135909、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 和歌子
審査請求 未請求
テーマコード 2B022
4H011
Fターム 2B022EA10
4H011AB00
4H011AB01
4H011BB08
4H011BB22
要約 【課題】安全で実用化可能なアントシアニン合成促進剤およびクロロフィル分解促進剤を提供すること。
【解決手段】本発明により、トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属に属する植物の抽出物を含む、アントシアニン合成促進剤およびクロロフィル分解促進剤を含む。前記抽出物は、好ましくは式(I)の化合物または式(II)の化合物の少なくともいずれかを活性化合物として含む。
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【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属に属する植物の抽出物を含む、トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属以外の植物に用いるためのアントシアニン合成促進剤。
【請求項2】
前記抽出物が、式(I)で表される化合物:
【化1】
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[式中、
R1は、水素またはβ結合したグリコシル基であり、
R2は、水素、-OH、および-O-C1-6-アルキルからなる群から選択され、
R3は、水素または-OHである]
または式(II)で表される化合物:
【化2】
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[式中、
R4は、水素、C1-6-アルキル、およびβ結合したグリコシル基からなる群から選択され、
R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはC1-6-アルキルであり、
R7は、メチルまたはエチルであり、
nは、3~5の整数である]
の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載のアントシアニン合成促進剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアントシアニン合成促進剤を植物の成熟した葉に吸収させることを含む、植物の紅葉誘導方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のアントシアニン合成促進剤を果実に吸収させることを含む、果実の着色促進方法。
【請求項5】
トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属に属する植物体の抽出物を含む、トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属以外の植物に用いるためのクロロフィル分解促進剤。
【請求項6】
前記抽出物が、式(I)で表される化合物:
【化3】
JP2017043558A_000023t.gif
[式中、
R1は、水素またはβ結合したグリコシル基であり、
R2は、水素、-OH、および-O-C1-6-アルキルからなる群から選択され、
R3は、水素または-OHである]
または式(II)で表される化合物:
【化4】
JP2017043558A_000024t.gif
[式中、
R4は、水素、C1-6-アルキル、およびβ結合したグリコシル基からなる群から選択され、
R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはC1-6-アルキルであり、
R7は、メチルまたはエチルであり、
nは、3~5の整数である]
の少なくともいずれかを含む、請求項5に記載のクロロフィル分解促進剤。
【請求項7】
請求項5または6に記載のクロロフィル分解促進剤を植物の葉に吸収させることを含む、植物の落葉または枯死促進方法。
【請求項8】
式(I)で表される化合物:
【化5】
JP2017043558A_000025t.gif
[式中、
R1は、水素またはβ結合したグリコシル基であり、
R2は、水素、-OH、および-O-C1-6-アルキルからなる群から選択され、
R3は、水素または-OHである]
または式(II)で表される化合物:
【化6】
JP2017043558A_000026t.gif
[式中、
R4は、水素、C1-6-アルキル、およびβ結合したグリコシル基からなる群から選択され、
R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはC1-6-アルキルであり、
R7は、メチルまたはエチルであり、
nは、3~5の整数である]
の少なくともいずれかを含む、アントシアニン合成促進剤。
【請求項9】
式(I)の化合物または式(II)の化合物を1.0×10-12~1.0×10-8mol/Lの濃度で含む、請求項8に記載のアントシアニン合成促進剤。
【請求項10】
請求項8に記載の式(I)の化合物または式(II)の化合物の少なくともいずれかを含む、クロロフィル分解促進剤。
【請求項11】
式(I)の化合物または式(II)の化合物を1.0×10-12~1.0×10-8mol/Lの濃度で含む、請求項10に記載のクロロフィル分解促進剤。
【請求項12】
請求項8に記載の式(I)の化合物または式(II)の化合物の少なくともいずれかを含む、落葉剤または除草剤。
【請求項13】
式(I)の化合物または式(II)の化合物を1.0×10-12~1.0×10-8mol/Lの濃度で含む、請求項12に記載の落葉剤または除草剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属に属する植物の抽出物、特にその抽出物に含まれる式(I)または式(II)の化合物を含むアントシアニン合成促進剤およびクロロフィル分解促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
樹木などの植物の紅葉現象は、非常に身近な現象であるにもかかわらず、それがどのようにして起こるのかは未だ十分解明されていない。紅葉現象には、アントシアニン合成およびクロロフィル分解の誘導、それに続く葉のプログラム死が伴うことが知られている。
【0003】
樹木における紅葉については、幹の環状剥離を行なうことで紅葉が誘導できることから、植物体内のショ糖が重要な役割を果たしていると以前から考えられてきた。実際に、紅葉していないモミジの枝をショ糖水に差すと紅葉が誘導されることが知られている。また、本発明者らは、トチカガミ科オオカナダモ属の水生植物であるオオカナダモや実験植物であるシロイヌナズナにおいても、ショ糖を培地に添加することによって紅葉が誘導できることを以前確認している(非特許文献1)。
【0004】
植物におけるアントシアニン合成については、例えば強光や紫外線、低温処理によって葉におけるアントシアニン合成を促進できることが古くから知られている。リンゴやモモのような果実については、果実に光を当てることにより果皮のアントシアニンの合成を促進できることが知られており、果実成熟の際には地面に銀シートを敷いたり果実を回転させたりすることにより光をまんべんなく当て、果実を均一に着色させるための努力が行われている。また、アントシアニン合成は植物ホルモンによっても発現が制御され、アブシシン酸などがブドウのアントシアニン合成に重要な役割を果たしていることが知られている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Momose, T. and Ozeki, Y. Regulatory effect of stems on sucrose-induced chlorophyll degradation and anthocyanin synthesis in Egeria densa leaves. J. Plant Res., 126(5): 859-867(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ショ糖によるアントシアニン合成誘導は、一般環境下では雑菌の繁殖が著しいため実用化が困難である。一方、強光、紫外線、または低温処理は、自然環境任せとすれば制御が困難であり、人為的に制御する場合には大掛かりな設備とエネルギーが必要となってしまう。植物ホルモンについては、化合物によっては高価である上、農薬として認められていないものについては果樹などに散布することはできない。例えばアブシジン酸は、いくつかの植物種においてアントシアニン合成を誘導できる植物ホルモンとして知られているが、一方で植物において休眠や生長抑制、気孔の閉鎖などを誘導することが知られており、植物体に深刻な影響を与えてしまうため、持続可能な農業を続けていくためには使用することができない。植物におけるアントシアニン合成を促進する物質は、人工的な紅葉の誘導、落葉または枯死の促進、あるいは果実の着色促進などに利用できると考えられるが、これまで実用化可能と考えられるものは見出されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、オオカナダモの紅葉現象の研究を進めたところ、オオカナダモの抽出物に植物のアントシアニン合成およびクロロフィル分解を促進する物質が含まれていることを発見し、本発明に想到するに至った。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1) トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属に属する植物の抽出物を含む、トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属以外の植物に用いるためのアントシアニン合成促進剤。
(2) 前記抽出物が、式(I)で表される化合物:
【化1】
JP2017043558A_000002t.gif
[式中、
R1は、水素またはβ結合したグリコシル基であり、
R2は、水素、-OH、および-O-C1-6-アルキルからなる群から選択され、
R3は、水素または-OHである]
または式(II)で表される化合物:
【化2】
JP2017043558A_000003t.gif
[式中、
R4は、水素、C1-6-アルキル、およびβ結合したグリコシル基からなる群から選択され、
R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはC1-6-アルキルであり、
R7は、メチルまたはエチルであり、
nは、3~5の整数である]
の少なくともいずれかを含む、(1)に記載のアントシアニン合成促進剤。
(3) (1)または(2)に記載のアントシアニン合成促進剤を植物の成熟した葉に吸収させることを含む、植物の紅葉誘導方法。
(4) (1)または(2)に記載のアントシアニン合成促進剤を果実に吸収させることを含む、果実の着色促進方法。
(5) トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属に属する植物体の抽出物を含む、トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属以外の植物に用いるためのクロロフィル分解促進剤。
(6) 前記抽出物が、式(I)で表される化合物:
【化3】
JP2017043558A_000004t.gif
[式中、
R1は、水素またはβ結合したグリコシル基であり、
R2は、水素、-OH、および-O-C1-6-アルキルからなる群から選択され、
R3は、水素または-OHである]
または式(II)で表される化合物:
【化4】
JP2017043558A_000005t.gif
[式中、
R4は、水素、C1-6-アルキル、およびβ結合したグリコシル基からなる群から選択され、
R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはC1-6-アルキルであり、
R7は、メチルまたはエチルであり、
nは、3~5の整数である]
の少なくともいずれかを含む、(5)に記載のクロロフィル分解促進剤。
(7) (5)または(6)に記載のクロロフィル分解促進剤を植物の葉に吸収させることを含む、植物の落葉または枯死促進方法。
(8) 式(I)で表される化合物:
【化5】
JP2017043558A_000006t.gif
[式中、
R1は、水素またはβ結合したグリコシル基であり、
R2は、水素、-OH、および-O-C1-6-アルキルからなる群から選択され、
R3は、水素または-OHである]
または式(II)で表される化合物:
【化6】
JP2017043558A_000007t.gif
[式中、
R4は、水素、C1-6-アルキル、およびβ結合したグリコシル基からなる群から選択され、
R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはC1-6-アルキルであり、
R7は、メチルまたはエチルであり、
nは、3~5の整数である]
の少なくともいずれかを含む、アントシアニン合成促進剤。
(9) 式(I)の化合物または式(II)の化合物を1.0×10-12~1.0×10-8mol/Lの濃度で含む、(8)に記載のアントシアニン合成促進剤。
(10) (8)に記載の式(I)の化合物または式(II)の化合物の少なくともいずれかを含む、クロロフィル分解促進剤。
(11) 式(I)の化合物または式(II)の化合物を1.0×10-12~1.0×10-8mol/Lの濃度で含む、(10)に記載のクロロフィル分解促進剤。
(12) (8)に記載の式(I)の化合物または式(II)の化合物の少なくともいずれかを含む、落葉剤または除草剤。
(13) 式(I)の化合物または式(II)の化合物を1.0×10-12~1.0×10-8mol/Lの濃度で含む、(12)に記載の落葉剤または除草剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価に調製でき、安全性の面などから実用化の可能性が高いアントシアニン合成促進剤およびクロロフィル分解促進剤を提供できる。また、それを用いることにより、人工的な紅葉の誘導、落葉または枯死の促進、および果実の着色促進が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】オオカナダモ抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行って得られたチャートである。
【図2】オオカナダモ抽出物の、図1に示したHPLCによる分離において保持時間3.5分に溶出される画分(Rt3.5画分)を用いた紅葉誘導バイオアッセイにおける、分取液の希釈率と紅葉誘導されたオオカナダモ葉に含有されるアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。
【図3】オオカナダモ抽出物の、図1に示したHPLCによる分離において保持時間4.2 分に溶出される画分(Rt4.2画分)を用いた紅葉誘導バイオアッセイにおける、分取液の希釈率と紅葉誘導されたオオカナダモ葉に含有されるアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。
【図4】化合物(A)(オオカナダモ由来抽出生成物/合成化合物)を用いたオオカナダモ紅葉誘導バイオアッセイにおける、化合物濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。
【図5】化合物(B)(オオカナダモ由来抽出生成物/合成化合物)を用いたオオカナダモ紅葉誘導バイオアッセイにおける、化合物濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。
【図6】化学合成した5-メトキシエピカテキンを用いたオオカナダモ紅葉誘導バイオアッセイにおける、化合物濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。
【図7】市販のエピカテキンを用いたオオカナダモ紅葉誘導バイオアッセイにおける、化合物濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。
【図8】市販のカテキンを用いたオオカナダモ紅葉誘導バイオアッセイにおける、化合物濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。
【図9】市販のナリンゲニンを用いたオオカナダモ紅葉誘導バイオアッセイ(比較例)における、化合物濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。
【図10】化学合成した化合物(B)アグリコンである3-OMe体、ならびにその類縁体である3,4,5-OH体、3,4-OMe体および3,4,5-OMe体を用いたオオカナダモ紅葉誘導バイオアッセイにおける、化合物濃度とアントシアニン量の相関を示すグラフである。
【図11】化合物(A)を用いたシロイヌナズナ紅葉誘導試験における、培養後のシロイヌナズナの葉切片および花柄切片の状態を撮影した写真である。
【図12】化合物(A)を用いたシロイヌナズナ紅葉誘導試験おける、切断葉、花柄葉および花柄における培養後のアントシアニン量を示すグラフである。
【図13】化合物(A)を用いたイロハモミジ紅葉誘導試験(1)に用いられたイロハモミジの盆栽の経時変化を記録した写真である。
【図14】化合物(A)および(B)を用いたイロハモミジ紅葉誘導試験(2)に用いられたイロハモミジの経時変化を記録した写真である。
【図15】化合物(A)を用いた落葉誘導試験に用いられたヤマモミジの経時変化を記録した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、オオカナダモ(Egeria densa)、またはその他のトチカガミ科(Hydrocharitaceae)のオオカナダモ属に属する植物(Egeria sp.)もしくはコカナダモ属に属する植物(Elodea sp.)の抽出物を含む、植物に用いるためのアントシアニン合成促進剤に関する。トチカガミ科オオカナダモ属の植物としては、オオカナダモ、エゲリア・ナヤス(Egeria najas、別名グレートモス)などが挙げられる。トチカガミ科コカナダモ属の植物としては、コカナダモ(Elodea nuttallii)、カナダモ(Elodea canadensis)などが挙げられる。

【0012】
本発明のアントシアニン合成促進剤は、上記のトチカガミ科オオカナダモ属およびコカナダモ属に属する植物、およびそれ以外の他の植物においてアントシアニン合成を促進する作用を有する。対象植物は、アントシアニン合成能を有する植物であれば特に限定されないが、その典型例としては、カエデ科(イロハモミジ、ハウチワカエデ、サトウカエデ、メグスリノキなど)、ニシキギ科(ニシキギ、ツリバナなど)、ウルシ科(ツタウルシ、ヤマウルシ、ヌルデなど)、ツツジ科(ヤマツツジ、レンゲツツジ、ドウダンツツジなど)、ブドウ科(ツタ、ヤマブドウ、ブドウなど)、バラ科(ヤマザクラ、ウワミズザクラ、カリン、ナナカマド、モモ、スモモなど)、スイカズラ科(ミヤマガマズミ、カンボクなど)、ウコギ科(タラノキなど)およびミズキ科(ミズキなど)などの木本植物、ならびにイチゴ、ナス、紫キャベツ、赤チシャ、赤タマネギ、赤ニンジン、赤ダイコン、紫トウモロコシ、黒米、黒大豆、小豆、黒ゴマ、ムラサキイモ、赤シソなどの作物植物や、カーネーション、バラ、キク、トルコギキョウ、リンドウ、アサガオ、キキョウ、デルフィニウムなどの花卉に代表される草本植物が挙げられる。

【0013】
トチカガミ科オオカナダモ属およびコカナダモ属に属する植物の抽出物は、好ましくは、活性化合物として下記に記載の式(I)で表される化合物または式(II)で表される化合物の少なくともいずれかを含む。

【0014】
式(I)の化合物は以下のとおりである。
【化7】
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式(I)中、
R1は、水素またはβ結合したグリコシル基であり、
R2は、水素、-OH、および-O-C1-6-アルキル(好ましく-O-C1-4-アルキル、より好ましくは-O-メチルまたは-O-エチル)からなる群から選択され、
R3は、水素または-OHである。

【0015】
本明細書において「C1-6-アルキル」とは、炭素数1~6個のアルキル基を意味し、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどがこれに包含される。同様に、「C1-4-アルキル」とは、炭素数1~4個のアルキル基を意味する。

【0016】
本明細書において「β結合したグリコシル基」とは、糖からアノマー性ヒドロキシル基を除去して結合位置とした置換基であるグリコシル基であって、結合相手(アグリコン)がグリコシル基に対してアノマー炭素上でβ位を占めるように結合したものを意味する。グリコシル基の元となる糖としては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロースといったヘキソース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースといったペントース、エリトロース、トレオースといったテトロース、グリセルアルデヒドといったトリオースが挙げられる。グリコシル基は、好ましくはグルコース、グルクロン酸、ガラクトース、キシロース、アピオース、アロース、ラムノース、アラビノフラノースまたはマンノース、より好ましくはグルコース、グルクロン酸、ガラクトース、キシロース、アピオースまたはアロースから選択される糖に基づく基であり、最も好ましいグリコシル基はグルコースに基づく基、すなわちグルコシル基である。糖はD体でもL体でもかまわないが、D体のものがより好ましい。

【0017】
式(I)の化合物の具体例としては、カテキン、エピカテキン、フィセチニドール、エピフィセチニドール、ガロカテキン、エピガロカテキン、ロビネチニドールおよびエピロビネチニドールといったカテキンおよびその類縁体、ならびにそれらがクロマン環の7位で配糖化された配糖体、特にそれらがクロマン環の7位でグルコシル化されたグルコシドが挙げられる。なお、式(I)の化合物は、式中に*で示した2箇所に不斉炭素を有するため、式(I)の化合物には複数の立体異性体(ジアステレオマー)が存在する。それら立体異性体も化合物の定義に包含される。

【0018】
式(II)の化合物は以下のとおりである。
【化8】
JP2017043558A_000009t.gif
式(II)中、
R4は、水素、C1-6-アルキル(好ましくC1-4-アルキル、より好ましくはメチルまたはエチル)、およびβ結合したグリコシル基からなる群から選択され、
R5およびR6は、それぞれ独立して水素またはC1-6-アルキル(好ましくC1-4-アルキル、より好ましくはメチルまたはエチル)であり、
R7は、メチルまたはエチル(好ましくはメチル)であり、
nは、3~5の整数、好ましくは4である。

【0019】
式(II)中、R4、R5およびR6のうちいずれか1つ、特にいずれか2つがそれぞれ独立してC1-6-アルキル(好ましくC1-4-アルキル、より好ましくはメチルまたはエチル)であることが好ましい。とりわけ、R5と、R4またはR6のいずれか一方とが、それぞれ独立してC1-6-アルキル(好ましくC1-4-アルキル、より好ましくはメチルまたはエチル)であることが好ましい。

【0020】
式(II)の化合物の具体例としては、3-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)プロピルアセテート、3-(3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロピルアセテート、および3-(3-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシ-フェニル)プロピルアセテート、ならびにそれらの3-グリコシド(好ましくは3-グルコシド)、ならびに3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロピルアセテートが挙げられる。

【0021】
本発明は別の態様において、上記で定義した式(I)または式(II)の化合物の少なくともいずれか、あるいは両方を水性溶媒中、好ましくは水、またはメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、またはジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、あるいはそれらの混合物中、特に好ましくは農薬散布の際に使用される展着剤と共に含む、植物のアントシアニン合成促進剤に関する。本発明のアントシアニン合成促進剤において、式(I)または式(II)の化合物の含有量は極めて少なく、例えば1.0×10-12~1.0×10-8mol/Lの範囲内であることが好ましい。複数種の活性化合物を含む場合、それらの活性化合物の含有量の合計が1.0×10-12~1.0×10-8mol/Lの範囲内であることが好ましい。

【0022】
より厳密には、本発明のアントシアニン合成促進剤における各化合物の至適濃度は化合物ごとに異なる。式(I)の化合物であって、R1がグリコシル基である場合、至適濃度は約1.0×10-12~約1.0×10-10mol/Lの範囲内、特に約0.5×10-11~約5.0×10-11mol/Lの範囲内である。R1がグリコシル基ではない場合、至適濃度は約1.0×10-12~約1.0×10-9mol/Lの範囲内、特に約0.5×10-11~約5.0×10-10mol/Lの範囲内である。式(II)の化合物であって、R4がグリコシル基である場合、至適濃度は約0.5×10-11~約5.0×10-11mol/Lおよび約0.5×10-9~約5.0×10-9mol/Lの範囲内、特に約1.0×10-11mol/Lおよび約1.0×10-9mol/Lである。R4がグリコシル基ではない場合、至適濃度は約1.0×10-11~約1.0×10-8mol/Lの範囲内である。なお、本明細書において「約」とは、対象の数値が±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%の範囲で変動し得ることを意味する。

【0023】
本発明のアントシアニン合成促進剤は、アントシアニン合成能を有する植物の葉、好ましくは成熟した葉に吸収させることにより、その葉の紅葉を誘導することができる。従って、本発明は別の態様において、上述のアントシアニン合成促進剤を植物の成熟した葉に吸収させることを含む、植物の紅葉誘導方法に関する。ここで、「成熟した葉」とは、十分に成長し、アントシアニン合成能を獲得した葉を意味する。例えば一般的な落葉広葉樹の場合、春から初夏にかけて萌芽した葉は夏にかけて成長し、長日条件から短日条件に移行する時期までには十分に成熟する。その時期において、樹木は翌年のための新芽の形成、および葉柄の付け根における離層の形成を行い、葉を落とすための準備を始める。そのような葉を落とすための準備が始まった樹木の葉であれば、十分に成熟しアントシアニン合成能を獲得しているといえる。

【0024】
本発明の紅葉誘導方法では、例えばアントシアニン合成促進剤を葉に直接散布または噴霧することにより、活性化合物を葉に吸収させることができる。散布または噴霧は、葉の表面が濡れる程度の量、毎日、1日おき、あるいは2~3日おきのサイクルで、1日以上、好ましくは3日以上、より好ましくは1週間以上、特に好ましくは1ヶ月以上の期間行うことが好ましい。本発明の紅葉誘導方法によれば、モミジやカエデなどの植物の紅葉を本来の時期よりも早く開始させることが可能となり、例えば観賞用植物の価値を高めるのに有用である。本発明のアントシアニン合成促進剤は、有効成分がトチカガミ科オオカナダモ属およびコカナダモ属に属する植物由来であり、特に式(I)の化合物は茶などに含まれることが知られるカテキンおよびその類縁体であり、食品中に含まれ、しかも食品添加物公定書において既存添加物として収載されている化合物であり、環境および人体に与える影響が少なく安全である。

【0025】
本発明のアントシアニン合成促進剤は、特に果皮においてアントシアニン合成能を有する果実、特に果皮に吸収させることにより、その果実における着色を誘導することができる。従って、本発明は別の態様において、上述のアントシアニン合成促進剤を果実に吸収させることを含む、果実の着色促進方法に関する。アントシアニン合成能を有する果実の例としては、例えば、モモ、ブドウ、リンゴ、サクランボ、ブルーベリー、ラズベリー、プルーンなどが挙げられる。本発明の果実の着色促進方法では、例えばアントシアニン合成促進剤を果実に直接散布または噴霧することにより、活性化合物を果実、特に果皮に吸収させることができる。散布または噴霧は、果実の表面が濡れる程度の量、毎日、1日おき、あるいは2~3日おきのサイクルで、1日以上、好ましくは3日以上、より好ましくは1週間以上、特に好ましくは1ヶ月以上の期間行うことが好ましい。

【0026】
本発明のアントシアニン合成促進剤は、上記の他、ナス、紫キャベツ、赤チシャ、トレビス、イチゴなどのアントシアニン合成能を有する野菜類、特に果菜類および葉茎類の食用部分に直接散布または噴霧することにより、それらの着色を誘導することができる。例えば、紫キャベツや赤チシャ、トレビスなどであって水耕栽培されているものの場合には、その培養液中に本発明のアントシアニン合成促進剤を加えることによっても着色を誘導することができる。

【0027】
本発明のアントシアニン合成促進剤は、上述のとおり安全なものであり、特に式(I)の化合物であるカテキンおよびその類縁体については、安全性が既に十分確認されている。従って、果実に直接散布または噴霧するに際しても、さらに噴霧された農作物を食品として直接食する場合においても、その摂取量は既存添加物としての摂取量を下回ると考えられ、人体への影響などを特に考慮する必要がない。また、オオカナダモやコカナダモは繁殖力が強く、侵略的外来種とみなされている程であるため、それらを原料とすれば本発明のアントシアニン合成促進剤は比較的低コストで製造することができると考えられる。あるいは、式(I)の化合物であるカテキンおよびその類縁体は茶などから容易に得ることができ、既に様々な用途に広く利用されているため、それらを原料としても本発明のアントシアニン合成促進剤は比較的低コストで製造することができると考えられる。

【0028】
上述のトチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属に属する植物体の抽出物は、アントシアニン合成促進作用の他に、トチカガミ科オオカナダモ属およびコカナダモ属に属する植物、およびそれ以外の他の植物においてクロロフィル分解を促進する作用も有する。従って、本発明は別の態様において、トチカガミ科オオカナダモ属またはコカナダモ属に属する植物体の抽出物を含む、植物に用いるためのクロロフィル分解促進剤に関する。対象植物は、クロロフィル合成能を有する植物であれば特に限定されない。

【0029】
本発明のクロロフィル分解促進剤は、好ましくは活性化合物として、上述した式(I)または式(II)で表される化合物を含む。本発明は別の態様において、上記で定義した式(I)または式(II)の化合物の少なくともいずれか、あるいは両方を水性溶媒中、好ましくは水、またはメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、またはジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、あるいはそれらの混合物中、特に好ましくは農薬散布の際に使用される展着剤と共に含む、植物のクロロフィル分解促進剤に関する。本発明のクロロフィル分解促進剤における活性化合物の濃度等は、アントシアニン合成促進剤について上述したものと同様である。

【0030】
本発明のクロロフィル分解促進剤は、植物の葉、好ましくは未成熟の葉、特に幼若期にある葉に吸収させることにより、木本植物であれば落葉を、草本植物であれば枯死を促進させることができる。従って、本発明は別の態様において、上述のクロロフィル分解促進剤を植物の葉に吸収させることを含む、植物の落葉または枯死促進方法に関する。未成熟の葉とは、萌芽直後の幼若期あるいは、それ以降の成長期にある葉であって、未だ成熟期を迎えていないものを意味する。

【0031】
本発明の落葉または枯死促進方法では、例えばクロロフィル分解促進剤を葉に直接散布または噴霧することにより、活性化合物を葉に吸収させることができる。散布または噴霧は、葉の表面が濡れる程度の量、毎日、1日おき、あるいは2~3日おきのサイクルで、1日以上、好ましくは3日以上、より好ましくは1週間以上、特に好ましくは1ヶ月以上の期間行うことが好ましい。脱用または枯死は、クロロフィル分解促進剤の散布または噴霧が直接的に行われた葉においてのみ促進され、その葉が落葉または枯死した後に萌芽した葉は影響を受けることがない。従って、本発明のクロロフィル分解促進剤は、木本植物に対する落葉剤、または草本植物に対する除草剤として有用である。本発明は別の態様において、式(I)の化合物または式(II)の化合物の少なくともいずれかを含む落葉剤または除草剤に関する。本発明によれば、安全かつ低価格な落葉剤または除草剤を提供することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
[実施例1]オオカナダモ抽出物に含有される活性化合物の構造決定
(a)抽出および精製
東京都東久留米市の落合川に自生している600gのオオカナダモの茎葉を、2.4Lの100%メタノールに入れて3日間4℃で抽出した。これをエバポレーターで濃縮し、300mLの水に溶解させた。得られた水溶液を、水で平衡化させたダイヤイオンHP-20カラム(直径50mmx高さ100mm、三菱化学製)にロードし、大量の水を通して洗浄した。次に、結合した化合物をカラムの3倍容の100%メタノールで溶出させ、エバポレーターで濃縮し、10mLの20%メタノールに溶解させた。得られた溶液を20mLのODSオープンカラム(Wakosil 25C18、直径20mm×高さ65mm、和光純薬製)にロードし、100mLの20%、30%、50%メタノールで順次溶出した。非特許文献1に記載のオオカナダモ切断葉を用いた紅葉誘導バイオアッセイ(オオカナダモ切断葉を入れたバイアルにサンプル溶液を入れ光照射下でインキュベートする)を行ったところ、30%メタノール溶出画分に活性が見られたので、その画分をエバポレーターで濃縮し、6mLの70%メタノールに溶解させた。そのごく一部を取って、高速液体クロマトグラフィー(La Chrom Elite System、205nm紫外吸収モニター付き、日立ハイテクノロジーズ製)で分離した。カラムはCosmosil Packed Column 5C18-MS-II(直径4.6mm×長さ100mm、ナカライテスク製)を用い、A液として水、B液としてアセトニトリルを用い、0~6分でB液10%から60%になるような直線的勾配で分離を行なった。得られた高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略する)チャートを図1に示す。各ピークを分取して、オオカナダモ切断葉を用いた紅葉誘導バイオアッセイを行ったところ、保持時間(Rt)3.5分および4.2分のピークに対応する画分に紅葉誘導活性が見られた。以下、分取液のそれぞれの画分をRt3.5およびRt4.2と称する。図2および図3は、Rt3.5およびRt4.2を用いたバイオアッセイにおける、分取液の希釈率と紅葉誘導されたオオカナダモ葉に含有されるアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。
【実施例】
【0034】
上記の抽出およびカラムによる分離操作を9回繰り返し、合計5.4kgのオオカナダモ茎葉から抽出を行なった。9回分54mLをまとめて、ODS中圧分取液体クロマトグラフ装置(山善製)にてさらに精製した。直径26mm×長さ100mmのHI-FLASHODS-SMカラム(山善製)にロードし、A液を水、B液を100%アセトニトリルとし、サンプルをロードした後、十分にA液で洗浄し、0~20分がB液20%、20~40分がB液30%、40~60分がB液40%となるようにして、10mL/minの流速で段階的に溶出した。各々で溶出されてくる物質を、中圧分取液体クロマトグラフ装置に接続した紫外光吸収モニター(205nm)でモニターし、B液30%のところで溶出されてきたピーク群を分取して、オオカナダモ切断葉の紅葉誘導系によるバイオアッセイおよびHPLCによる分析を行ったところ、Rt3.5とRt4.2が異なったピークとして得られた。各々のピークを別々に濃縮し、個々のピーク画分につき、ODS中圧分取液体クロマトグラフ装置(山善製)にてさらに精製した。分離条件は、0~8分がB液0%~5%、8~38分がB液5%~30%の直線的勾配、そして最後の38~50分が30%B液となるようにし、流速6ml/minで溶出した。その結果、Rt3.5およびRt4.2のそれぞれを、単一のシャープなピークが表れる程度まで精製することに成功した。
【実施例】
【0035】
(b)活性化合物の構造決定
Rt3.5を精製して得られた化合物(以下、化合物(A)と称する)について、1H NMRおよび13C NMR測定を行ってその構造を特定したところ、化合物(A)は下記式で表される5-メトキシ-7-β-D-グルコシルエピカテキンであることがわかった。
【化9】
JP2017043558A_000010t.gif
【実施例】
【0036】
また、Rt4.2を精製して得られた化合物(以下、化合物(B)と称する)について、1H NMRおよび13C NMR測定を行ってその構造を特定したところ、化合物(B)は下記式で表される3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-β-D-グルコシルフェニル)プロピルアセテートであることがわかった。
【化10】
JP2017043558A_000011t.gif
【実施例】
【0037】
[実施例2]活性化合物の化学合成
(a-1)化合物(A)のアグリコンおよびその類縁体の合成
下記に示すスキーム1に従って化合物(A)のアグリコンおよびその類縁体を合成した。
【化11】
JP2017043558A_000012t.gif
【実施例】
【0038】
(i)化合物33の合成
(-)-エピカテキン(32)(4g, 14.05mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジでアセトニトリル400mLを加え、さらにN2ガス下、0℃でジクロロジフェニルメタン(3.68mL, 15.46mmol)とトリエチルアミン(5.22mL, 70.3mmol)を加え、反応液をN2ガス下、0℃で一晩反応させた。反応後、H2Oを一定量加え、エバポレーターによってアセトニトリルを除去した。水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、残留物を40%アセトニトリル水溶液に溶解させ、中圧液体クロマトグラフィー(FLC, Yamazen Flash Liquid Chromatography YFLC-AI-580, 山善製)、および分離カラムとして逆相カラム(Hi-Flash columns, ODS-SM: 50μm, i.d. 20×65mm column, followed by i.d. 20×100mm column, 山善製)を用いて精製を行った。分離条件は、流速が20mL/min、溶離液としてA液にH2O、B液に100%アセトニトリルを用いて、20分で49-61%アセトニトリルとなる直線勾配で行った。さらに、中圧クロマトグラフィーによる精製後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒15:1-1:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、淡黄色の化合物33(収量:1.01g, 収率:16%)を得た。化合物33の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は477.33であった。構造解析は、核磁気共鳴測定装置(以下、NMRと称する)(ECA-500, JEOL)を用いて行い、化合物33の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ7.63-7.51(4H, m), 7.40-7.32(6H, m), 7.10(1H, d, J=1.37), 6.95(1H, dd, J=0.64, 8.24), 6.87(1H, d, J=8.24), 5.94(1H, d, J=2.39), 5.92(1H, d, J=2.39), 4.85(1H), 4.15(1H, s, br), 2.89-2.71(2H, m, J=2.29, 4.58, 16.94)であった。
【実施例】
【0039】
(ii)化合物34、35および36の合成
化合物33(1g, 2.20mmol)、炭酸カリウム(334.5mg, 2.42mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジでアセトン300mLを加え、さらにN2ガス下、0℃で硫酸ジメチル(125μL, 1.32mmol)を加え、反応液をN2ガス下、室温で3日間反応させた。反応後、H2Oを一定量加え、エバポレーターによってアセトンを除去した。水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、残留物を50%アセトニトリル水溶液に溶解させ、中圧液体クロマトグラフィー(FLC, Yamazen Flash Liquid Chromatography YFLC-AI-580, 山善製)、および分離カラムとして逆相カラム(Hi-Flash columns, ODS-SM: 50μm, i.d. 20×65mm column, followed by i.d. 20×100mm column, 山善製)を用いて精製を行った。分離条件は、流速が20mL/min、溶離液としてA液にH2O、B液に100%アセトニトリルを用いて、0-30分で53-59%アセトニトリルとなる直線勾配、30-40分で59-100%となる直線勾配で行った。これにより、モノメチル体である化合物34(収量: 168mg, 収率: 17%)、化合物35(収量: 198mg, 収率: 20%)を9:10の割合で獲得、ジメチル体である化合物36(収量: 239mg, 収率: 24%)を獲得した。
【実施例】
【0040】
化合物34の質量分析は、ESI-質量分析機(以下 ESI-MSと称する)(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は491.23であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA500, JEOL)を用いて行い、化合物34の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ7.63-7.51(4H, m), 7.40-7.32(6H, m), 7.10(1H, d, J=1.37), 6.95(1H, dd, J=0.64, 8.24), 6.87(1H, d, J=8.24), 5.94(1H, d, J=2.39), 5.92(1H, d, J=2.39), 4.85(1H), 4.15(1H, s, br), 3.75(3H, s), 2.89-2.71(2H, m, J=2.29, 4.58, 16.94であった。
【実施例】
【0041】
化合物35の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は491.25であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA500, JEOL)を用いて行い、化合物35の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ7.58-7.52(4H, m), 7.40-7.34(6H, m), 7.10(1H, d, J=1.72), 6.94(1H, dd, J=1.72. 8.02), 6.88(1H, d, J=8.02), 6.02(1H, d, J=2.29), 5.99(1H, d, J=2.29), 4.86(1H), 4.14(1H, s, br), 3.69(3H, s), 2.86-2.70(2H, m, J=2.29, 4.58, 17.18)であった。
【実施例】
【0042】
化合物36の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は505.26であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行い、化合物36の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ7.58-7.52(4H, m), 7.39-7.32(6H, m), 7.11(1H, d, J=1.72), 6.95(1H, dd, J=1.72. 8.02), 6.87(1H, d, J=8.02), 6.11(2H, s), 4.85(1H), 4.14(1H, s, br), 3.75(3H, s), 3.71(3H, s), 2.87-2.71(2H, m, J=2.29, 4.58, 17.18)であった。
【実施例】
【0043】
(iii)化合物37、38、39の合成
化合物34(168mg, 0.359mmol)、化合物35(198mg, 0.423mmol)、化合物36(200mg, 0.517mmol)をそれぞれナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、メタノール30mLを加えた。その後、10%水酸化パラジウム(60mg)を加え、H2ガスに置換した。室温で一晩マグネティックスターラーを用いて激しく攪拌させ、反応させた。反応後、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、メタノールによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、モノメトキシ体の化合物37(化合物(A)のアグリコン)(収量: 104mg, 収率: 95%)、化合物38(収量: 42mg, 収率: 33%)、およびジメトキシ体の化合物39(収量: 109mg, 収率: 83%)を得た。
【実施例】
【0044】
化合物37の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は327.23であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行い、化合物37の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.96(1H, d, J=1.72), 6.78(1H, dd, J=1.72, 8.02), 6.75(1H, d, J=8.02), 6.02(1H, d, J=2.29), 5.99(1H, d, J=2.29), 4.80(1H, s), 4.15(1H, s, br), 3.75(3H, s), 2.85-2.69(2H, m, J=2.86, 4.58, 16.61)、13C-NMRのシフト値(125MHz, CD3OD)は、δ29.39, 55.99, 67.52, 80.06, 92.97, 96.90, 101.13, 115.49, 116.09, 119.56, 132.38, 145.98, 146.14, 157.27, 158.21, 160.76であった。また、化合物37の旋光度測定をPolarimeter(P-2200, JAS. C. O., Tokyo, Japan)を用いて行い、その旋光度は[α]31 D -50.14(c 1.16, CH3OH)であった。
【実施例】
【0045】
化合物38の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は327.22であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行い、化合物38の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.97(1H, d, J=2.29), 6.80(1H, dd, J=2.29, 8.02), 6.01(1H, d, J=2.39), 6.00(1H, d, J=2.39), 4.83(1H), 4.18(1H, s, br), 3.69(3H, s), 2.90-2.72(2H, m, J=2.86, 4.58, 17.18)、13C-NMRのシフト値(125MHz, CD3OD)は、δ30.10, 56.36, 68.19, 80.77, 94.92, 96.15, 101.99, 116.11, 116.70, 120.18, 133.01, 146.61, 146.77, 158.25, 158.82, 161.51であった。また、化合物38の旋光度測定をPolarimeter(P-2200, JAS. C. O., Tokyo, Japan)を用いて行い、その旋光度は[α]33 D -45.2(c 1.35, CH3OH)であった。
【実施例】
【0046】
化合物39の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は341.19であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行い、化合物39の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.93(1H, d, J=1.83), 6.75(1H, dd, J=1.83, 8.24), 6.73(1H, d, J=8.24), 6.06(2H, s), 4.77(1H), 4.13(1H, s, br), 3.73(3H, s), 3.69(3H, s), 2.87-2.66(2H, m, J=2.29, 4.58, 16.94)、13C-NMRのシフト値(125MHz, CD3OD)は、δ30.04, 56.48, 56.66, 68.03, 80.76, 93.12, 95.38, 102.88, 116.08, 116.68, 120.17, 132.90, 146.61, 146.77, 157.92, 161.30, 161.80であった。また、化合物39の旋光度測定をPolarimeter(P-2200, JAS. C. O., Tokyo, Japan)を用いて行い、その旋光度は[α]34 D -42.04(c 0.86, CH3OH)であった。
【実施例】
【0047】
(a-2)化合物(A)の合成
下記に示すスキーム2に従って配糖体である化合物(A)を合成した。
【化12】
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【実施例】
【0048】
(i)化合物40の合成
化合物34水酸基のtert-ブチルジメチルシリル(TBS)基の保護反応は、Sudha ら(Sudha et al, 2002)の方法を参考にして行った。化合物34(65mg, 0.134mmol)とN-エチルジイソプロピルアミン(166μL, 0.934mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、塩化ジメチル10mLを加えた。さらにN2ガス下、0℃でtert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TBSOTf)(108μL, 0.466mmol)を加えた後、0℃で一晩反応させた。反応液に飽和塩化アンモニウム、H2Oを加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒1:0-13:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、化合物40(収量: 70mg, 収率: 75%)を得た。化合物40の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は719.35であった。構造解析は、300MHz NMR(ECX-300, JEOL)を用いて行い、化合物40の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.58-7.54(4H, m), 7.38-7.32(6H, m), 7.07(1H, s), 6.80(2H, s), 6.07(1H, d, J=2.06), 5.97(1H, d, J=2.06), 4.88(1H, s, br), 4.11(1H, s, br), 3.74(3H, s), 2.80-2.67(2H, m, J=3.78, 4.26, 12.38), 0.98(9H, s, br), 0.70(9H, m), 0.19(6H, m), -0.19(3H, s, br), -0.38(3H, s, br)であった。
【実施例】
【0049】
(ii)化合物41の合成
化合物40(74mg, 0.106mmol)と水酸化リチウム(22mg, 0.530mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、乾燥DMF 3mLを加え室温で一晩反応させた。反応液に飽和塩化アンモニウム、H2Oを加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒12:1-8:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、化合物41(収量: 49mg, 収率: 79%)を得た。
【実施例】
【0050】
化合物41の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は605.29であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行い、化合物40の1H-NMRのシフト値(500MHz, CDCl3)は、δ7.58-7.54(4H, m), 7.37-7.32(6H, m), 7.04(1H, s), 6.80(2H, s), 6.03(1H, d, J=2.29), 5.97(1H, d, J=2.29), 4.87(1H, s), 4.11(1H, m), 3.75(3H, s), 2.78-2.63(2H, m, J=4.01, 4.58, 16.61), 0.69(9H, s), -0.20(3H, s, br), -0.38(3H, s)であった。
【実施例】
【0051】
(iii)化合物42の合成
エピカテキンのβ-グリコシル化反応は、Tsuda(Tsuda et al, 2003: 2004: 2005)らと Hashimoto(Hashimoto et al, 1984)らの方法を参考にして行った。化合物41(56mg, 0.0962mmol)、2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-α-D-グルコピラノシルN,N,N',N'-テトラメチルホスホロジアミデート(約20%ベンゼン中)(130.22mg, 0.193mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、塩化ジメチル3mLを加えた。さらにN2ガス下、-78℃で塩化ジメチル2mLに溶解させたTMSOTf(70μL, 0.386mmol)を加えた後、-78℃で3時間マグネティックスターラーで攪拌し、反応させた。反応液にH2O、AcOEt、NaHCO3 を加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒1:0-15:1-8:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、糖化された化合物42(収量: 24mg, 収率: 23%, α-,β-は分離しなかった)を得た。
【実施例】
【0052】
化合物42の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は1127.57であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行い、1H-NMRのシフト値(500MHz, CDCl3)は、δ7.58-7.13(20H, m), 7.05(1H, s), 6.81(2H, s), 6.35(0.7H, d, J=2.29), 6.31(0.3H, d, J=2.29), 6.21(0.3H, d, J=2.29), 6.20(0.7H, d, J=2.29), 5.43(0.7H, d, J=3.44), 5.04-4.39(8H, m), 4.87(3H, s), 4.17-4.12(1H, m), 3.90-3.69(5H, m), 3.73(3H, s), 2.79-2.64(2H, dd, J=4.01, 16.61), 0.69(9H, m), -0.20(3H, s, br), -0.37(3H, m)であった。
【実施例】
【0053】
(iv)化合物43の合成
化合物42(22mg, 0.020mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、乾燥THF3mLを加えた。さらにN2ガス下、0℃でフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(42mg, 0.16mmol)を加えた後、室温で一晩反応させた。反応液に飽和塩化アンモニウム、H2Oを加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒11:1-4:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、化合物43(収量: 12mg, 収率: 65%, α-,β-は分離しなかった)を得た。
【実施例】
【0054】
化合物43の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は1013.59であった。構造解析は、300MHz NMR(ECX-300, JEOL)を用いて行い、化合物43の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.58-7.13(20H, m), 7.09(1H, m), 6.91(2H, m), 6.37(0.7H, d, J=2.02), 6.34(0.3H, d, J=2.02), 6.25(0.7H, d, J=2.02), 6.23(0.3H, d, J=2.02), 5.45(0.7H, d, J=3.44), 5.02-4.41(8H, m), 4.85(1H, s, br), 4.23(1H, s, br), 3.90-3.59(5H, m), 3.73(3H, s), 2.79-2.64(2H, m, J=4.13, 4.47, 11.70)であった。
【実施例】
【0055】
(v)化合物(A)の合成
化合物43(12mg, 0.0121mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、MeOH-THF(2:1, 3mL)を加えた。その後、10%水酸化パラジウム(10mg)を加え、H2ガスに置換した。室温で一晩マグネティックスターラーを用いて激しく攪拌させ、反応させた。反応後、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、メタノールによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、糖化された化合物(A)(収量: 6mg, 収率:44%, α:β=5:3)を得た。α-グリコシド体、β-グリコシド体の割合の確認および分離は、HPLC-DAD LaChromElite System(pump L-213-, UV-vis detector L2420, Hitachi High-Technologies, Tokyo, Japan)、および分離カラムとして逆相カラムHandy ODS(i.d. 4.6mm×250mm; Wako Pure Chemicals)を用いて行った。分離条件は、流速が1mL/min、溶離液としてA液にH2O、B液に100%メタノールを用いて、10分で5%から37%となる直線勾配で行った。化合物(A)の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は489.23であった。構造解析は、NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行った。
【実施例】
【0056】
α-グリコシド体の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.96(1H, d, J=2.29), 6.79(1H, dd, J=2.29, 8.02), 6.74(1H, d, J=8.02), 6.39(1H, d, J=2.29), 6.38(1H, d, J=2.29), 5.42(1H, d, J=4.01), 4.83(1H, d, J=5.73), 4.17(1H, s, br), 3.83(1H, t, J=9.74), 3.78(3H, s), 3.77-3.70(2H, m), 3.68-3.64(1H, m), 3.53(1H, dd, J=4.01, 9.74), 3.42(1H, t, J=9.74), 2.88-2.73(2H, m, J=2.86, 4.58, 17.18)、13C-NMRのシフト値(125MHz, CD3OD)は、δ29.65, 56.28, 62.61, 67.44, 71.78, 73.66, 74.62, 75.31, 80.33, 95.02, 98.93, 99.75, 104.22, 115.58, 116.17, 119.67, 132.35, 146.15, 146.30, 157.31, 158.62, 160.73であった。また、旋光度測定をPolarimeter(P-2200, JAS. C. O., Tokyo, Japan)を用いて行い、その旋光度は[α]35 D 46.2(c 0.4, CH3OH)であった。
【実施例】
【0057】
β-グリコシド体の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.96(1H, d, J=2.29), 6.79(1H, dd, J=2.29, 8.02), 6.74(1H, d, J=8.02), 6.36(1H, d, J=2.29), 6.31(1H, d, J=2.29), 4.86(1H), 4.83(1H, d, J=5.73), 4.18(1H, s, br), 3.90-3.86(1H, dd, J=2.29, 12.02), 3.79(3H, s), 3.69-3.65(1H, dd, J=5.73, 12.03), 3.47-3.34(4H, m), 2.89-2.72(2H, m, J=2.29, 4.58, 17.18)、13C-NMRのシフト値(125MHz, CD3OD)は、δ29.67, 56.28, 62.84, 67.47, 71.79, 75.23, 78.33, 78.51, 80.38, 94.63, 98.63, 102.97, 104.20, 115.63, 116.17, 119.68, 132.33, 146.17, 146.30, 157.27, 159.24, 160.70であった。また、Polarimeter(P-2200, JAS.C.O., Tokyo, Japan)を用いて旋光度測定を行い、その旋光度は[α]35 D -43.0(c 0.1, CH3OH)であった。
【実施例】
【0058】
(b-1)化合物(B)のアグリコンの合成
下記に示すスキーム3に従って化合物(B)のアグリコンを合成した。
【化13】
JP2017043558A_000014t.gif
【実施例】
【0059】
(i)化合物2の合成
ナス型フラスコに没食子酸(1)(10g, 58.8mmol)を入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。シリンジでメタノール100mLを加え、0℃で攪拌し、H2SO4(5mL, 93.88mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、80℃で1晩中還流させた。反応液に15% NaOH水溶液(30mL)を加えて反応を停止し、酢酸エチルを用いて分配抽出した。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固し、白色固体の化合物2(収量: 10.1g, 収率: 93%)を得た。得られた化合物の構造は、CDCl3溶媒に溶かし、300MHz NMR(ECX-300, JEOL)を用いて構造解析を行った。2の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.21(2H, s, H-benzylic CH2)、3.85(3H, s, CH3)であった。
【実施例】
【0060】
(ii)化合物3の合成
化合物2(9.573g, 52.02mmol)、10-カンファースルホン酸(1.208g, 5.202mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。シリンジでベンゼン100mL、トリエチルオルトギ酸(24.6mL,156.08mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、90℃で6時間還流させた。反応後、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、塩化ジメチルによって溶出した。溶出液を濃縮乾固後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒5:1-4:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、オルソエステル化合物3(収量: 6.537g, 収率: 56%)を得た。化合物3の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.32(1H, d, J=1.24), 7.17(1H, d, J=1.24), 6.93(1H, s), 3.75(3H, s), 3.73(2H, m, J=6.88, etc), 1.24(3H, m, J=6.88, etc)であった。
【実施例】
【0061】
(iii)化合物4の合成
化合物3(10g, 58.8mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジでアセトン 200mLを加え、N2ガス下、0℃で炭酸カリウム(15.38g, 223mmol)とヨウ化メチル(7mL, 111.5mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、室温で3時間反応させた。反応後、エバポレーターによってアセトンを除去し、H2O100mLを加えた。水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒8:1-6:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物4(収量: 4.91g, 収率: 93%)を得た。化合物4の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.25(1H, s), 7.15(1H, s), 6.87(1H, s), 3.86(3H, s), 3.80(3H, s), 3.67(2H, q, J=7.22), 1.18(3H, t, J=7.22)であった。
【実施例】
【0062】
(iv)化合物5の合成
化合物4(5.1g, 21.4mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジで乾燥テトラヒドロフラン(THF)100mLを加え、N2ガス下、0℃でゆっくりと水素化アルミニウムリチウム(896mg, 23.6mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、0℃で1時間反応させた。反応液にH2O(5mL)、15% NaOH水溶液(5mL)、さらにH2O(15mL)を加えて反応を停止し、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、THFによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒5:1-1:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物5(収量: 4.84g, 収率: 100%)を得た。化合物5の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ6.81(1H, s), 6.51(2H, s), 4.50(2H, s), 3.85(3H, s), 3.69(2H, q, J=7.22), 1.20(3H, t, J=7.22)であった。
【実施例】
【0063】
(v)化合物6の合成
化合物5(4.84g, 21.39mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジで塩化ジメチル200mLを加え、N2ガス下、室温で二酸化マンガン(56.8g, 855mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、60℃で2時間還流、振とうさせた。反応後、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、塩化ジメチルによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、アルデヒド化合物6(収量: 3.91g, 収率: 80%)を得た。化合物6の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ9.78(1H, s), 7.14(1H, s), 7.07(1H, s), 6.96(1H, s), 3.95(3H, s), 3.75(2H, q, J=6.88), 1.25(3H, t, J=7.22)であった。
【実施例】
【0064】
(vi)化合物7の合成
化合物6(3.91g, 17.3mmol)、ホスホノ酢酸トリエチル(7.1mL, 34.7mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、Arガス置換した。その後、シリンジで乾燥THF100mLを加え、Arガス下、0℃でゆっくりと THF80mLに溶解させた水素化ナトリウム(1.5g, 38.06mmol)を加えた。その後、反応液をArガス下、室温で1時間反応させた。酢酸エチル、1N HCl、H2Oを加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒15:1-6:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物7(収量: 5.26g, 収率: 100%)を得た。化合物7の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.55(1H, d, J=15.82), 6.89(1H, s), 6.76(1H, s), 6.70(1H, s), 6.26(1H, d, J=15.82), 4.24(2H, q, J=6.88), 3.91(3H, s), 3.74(2H, q, J=7.22), 1.31(3H, t, J=6.88), 1.25(3H, t, J=7.22)であった。
【実施例】
【0065】
(vii)化合物8の合成
化合物7(3.19g, 10.8mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、エタノール40mLを加えた。その後、5%カーボン担持パラジウム(80mg)を加え、H2ガスに置換した。室温で5時間マグネティックスターラーを用いて激しく攪拌させ、反応させた。反応後、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、エタノールによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、化合物8(収量: 2.55g, 収率: 98%)を得た。化合物8の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は263.15であった。1H-NMRのシフト値(400MHz, CDCl3)は、δ6.42(1H, d, J=1.72), 6.30(1H, d, J=1.72), 4.10(2H, q, J=7.22), 3.83(3H, s), 2.82(2H, t, J=7.57), 2,55(2H, t, J=7.57), 1.22(3H, t, J=7.22)であった。
【実施例】
【0066】
(viii)化合物9の合成
化合物8(1.00g, 4.16mmol)、臭化ベンジル(1.1mL, 8.74mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、Arガス置換した。その後、シリンジで乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)20mLを加え、Arガス下、0℃でゆっくりと乾燥DMF20mLに溶解させた水素化ナトリウム(420mg, 10.4mmol)を加えた。その後、反応液をArガス下、室温で1時間反応させた。酢酸エチル、1N HCl、H2Oを加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒15:1-9:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物9(収量: 1.917g, 収率: 100%)を得た。化合物8の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.44-7.26(10H, m), 6.46(1H, d, J=1.37), 6.42(1H, d, J=1.37), 5.05(2H, s), 4.98(2H, s), 4.11(2H, q, J=6.87), 3.80(3H, s), 2.85(2H, t, J=7.33), 2.57(2H, t, J=7.33), 1.22(3H, t, J=6.87)であった。
【実施例】
【0067】
(ix)化合物10の合成
ナス型フラスコに化合物9(1g, 2.3mmol)を入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジでTHF20mLを加え、N2ガス下、-20℃でゆっくりと水素化アルミニウムリチウム(99mg, 2.6mmol)を加えた。その後、反応液をArガス下、0℃で1時間反応させた。反応液にH2O(5mL)、15% NaOH水溶液(5mL)、さらにH2O(15mL)を加えて反応を停止し、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、THFによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒8:1-2:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物10(収量: 819mg, 収率: 94%)を得た。化合物10の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.45-7.27(10H, m), 6.45(1H, s), 6.41(1H, s), 5.07(2H, s), 4.98(2H, s), 3.87(3H, s), 3.62(2H, t, J=6.41), 2.61(2H, t, J=7.79), 1.84(2H, m, J=7.79, 6.41)であった。
【実施例】
【0068】
(x)化合物11の合成
化合物10(810mg, 2.1mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、Arガス置換した。その後、シリンジでピリジン15mL、無水酢酸15mLを加え、Arガス下、室温で2時間反応させた。ピリジンおよび 無水酢酸はエバポレーターでトルエンと共沸させ、濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒8:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物11(収量: 853mg, 収率: 96%)を得た。化合物11の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.43-7.26(10H, m), 6.43(1H, d, J=1.37), 6.39(1H, d, J=1.37), 5.06(2H, s), 4.98(2H, s), 4.05(2H, t, J=6.41), 3.81(3H, s), 2.59(2H, t, J=7.79), 2.04(3H, s), 1.09(2H, m, J=7.79, 6.41)であった。
【実施例】
【0069】
(xi)化合物12の合成
化合物11(450mg, 1.07mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、メタノール10mLを加えた。その後、5%カーボン担持パラジウムカーボン担持パラジウム(20mg)を加え、H2ガスに置換した。室温で2時間マグネティックスターラーを激しく攪拌させ、反応させた。反応後、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、メタノールによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、単黄色の固体化合物12(化合物(B)のアグリコン)(収量: 240mg, 収率: 93%)を得た。化合物12の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は263.14であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行い、1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.30(1H, s), 6.29(1H, s), 4.04-4.01(2H, t, J=6.3), 3.79(3H, s), 2.52(2H, t, J=7.5), 1.90-1.85(2H, m, J=7.5, 6.3)、13C-NMRのシフト値(CD3OD)は、δ21.12, 31.84, 33.23, 56.82, 65.34, 105.02, 110.14, 133.51, 133.71, 146.78, 149.91, 173.31であった。
【実施例】
【0070】
(b-2)化合物(B)の合成
下記に示すスキーム4に従って配糖体である化合物(B)を合成した。
【化14】
JP2017043558A_000015t.gif
【実施例】
【0071】
(i)化合物30の合成
フラボノイドのβ-グリコシル化反応は、Tsuda(Tsuda et al, 2003: 2004: 2005)ら、Hashimoto(Hashimoto et al, 1984)らの方法を参考にして行った。化合物12(78mg, 0.326mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-α-D-グルコピラノシルN,N,N',N'-テトラメチルホスホロジアミダート(約20%ベンゼン中)(200mg, 0.296mmol)と塩化ジメチル3mLを加えた。さらにN2ガス下、-78℃で塩化ジメチル2mLに溶解させたトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)(100μL, 0.532mmol)を加えた後、-78℃で3時間マグネティックスターラーを用いて激しく攪拌させ、反応させた。反応液にH2O、AcOEt、NaHCO3 を加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。カラムに充填したセライトによってろ過を行い、THFによって溶出した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒8:1-6:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製し、化合物30(収量: 152mg, 収率: 67%, α-,β-は分離しなかった)を得た。化合物30の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は785.45であった。構造解析は、NMR(ECX-400, JEOL)を用いて行い、1H-NMRのシフト値(400MHz, CDCl3)は、δ67.43-7.15(20H, m), 6.46(0.7H, d, J=1.37), 6.41(0.3H, d, J=1.37), 6.27(0.7H, d, J=1.37), 6.21(0.7H, d, J=1.37), 5.26(0.7H, d, J=11.00), 4.99-4.66(8H, m), 4.12-4.05(2H, t, J=7.33), 3.88-3.67(5H, m), 3.64(3H, s), 3.47-3.44(1H, m), 2.61-2.57(2H, t, J=7.33), 2.05(3H, s), 1.93(2H, m, J=1.33)であった。
【実施例】
【0072】
(ii)化合物(B)の合成
化合物30(152mg, 0.199mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、メタノール3mLを加えた。その後、10%水酸化パラジウム(30mg)を加え、H2ガスに置換した。室温で一晩マグネティックスターラーを用いて激しく攪拌させ、反応させた。反応後、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、メタノールによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、糖化された化合物(B)(収量: 8mg, 収率: 10%, α:β=3:5)を得た。α-グリコシド体、β-グリコシド体の割合は、HPLC-DAD LaChromElite System(pump L-213-, UV-vis detector L2420, Hitachi High-Technologies, Tokyo, Japan)、および分離カラムとして逆相カラムHandy ODS(i.d. 4.6mm×250mm; Wako Pure Chemicals)を用いて確認した。分離条件は、流速が1mL/min、溶離液としてA液にH2O、B液に100%アセトニトリルを用いて、10分で10%から30%となる直線勾配で行った。また、α-グリコシド体、β-グリコシド体の分離は、中圧液体クロマトグラフィー(FLC, Yamazen Flash Liquid Chromatography YFLC-AI-580, 山善製)、および分離カラムとして逆相カラム(Hi-Flash columns, ODS-SM: 50μm, i.d. 20×65mm column, followed by i.d. 20×100mm column, 山善製)を用いた。分離条件は、流速が20mL/min、溶離液としてA液にH2O、B液に100%アセトニトリルを用いて、0-16分で12% アセトニトリル、16-32分で16% アセトニトリルとなるステップワイズで行った。化合物(B)の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は425.26であった。構造解析は、NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行った。α-グリコシド体の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.76(1H, d, J=1.72), 6.55(1H, d, J=1.72), 5.30(1H, d, J=3.44), 4.06-4.02(2H, m, J=6.87), 3.86(1H, m, J=9.74), 3.82(3H, s), 3.80-3.76(1H, m), 3.76-3.66(2H, m), 3.54(1H, dd, J=3,44, 9.74), 3.40(1H, m, J=9.16), 2.59(2H, t, J=7.45), 2.02(3H, s), 1.93-1.89(2H, m)、13C-NMRのシフト値(125MHz, CD3OD)は、δ21.14, 31.83, 33.27, 57.00, 62.67, 65.28, 71.71, 74.78, 75.21, 75.38, 101.72, 108.80, 112.37, 133.88, 136.42, 146.91, 149.91, 173.41であった。β-グリコシド体の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.70(1H, d, J=1.72), 6.54(1H, d, J=1.72), 4.75(1H, d, J=7.45), 4.09-4.01(2H, m), 3.88(1H, dd, J=1.72, 12.03), 3.82(3H, s), 3.69(1H, dd, J=5.73, 12.68), 3.47-3.37(4H, m), 2.59(2H, t, J=7.45), 2.02(3H, s), 1.93-1.89(2H, m)、13C-NMRのシフト値(125MHz, CD3OD)は、δ21.14, 31.70, 33.25, 57.02, 62.78, 65.25, 71.69, 75.21, 77.91, 78.61, 104.48, 108.68, 111.71, 133.95, 135.94, 147.21, 149.85, 173.39であった。
【実施例】
【0073】
(b-3)化合物(B)のアグリコンのトリヒドロキシ体の合成
下記に示すスキーム5に従って、化合物(B)のアグリコンのトリヒドロキシ体を合成した。
【化15】
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【実施例】
【0074】
(i)化合物14の合成
化合物13(3,4,5-トリベンジルオキシ安息香酸)(500mg, 1.135mmol)、塩酸N,O-ジメチルヒドロキシルアミン(162mg, 1.702mmol)、そして4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドn-ハイドレート(470.9mg, 1.702mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジでTHF-H2O(9:1, 10mL)を加え、N2ガス下、室温でN-メチルモルホリン(318μL, 2.27mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、室温で4時間反応させた。酢酸エチル、1N HCl、H2Oを加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒5:1-2:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物14(収量: 583mg, 収率: 56%)を得た。化合物14の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.42-7.25(15H, m), 7.10(2H, s), 5.15-5.13(6H, m), 4.07(3H, s), 3.63(3H, s)であった。
【実施例】
【0075】
(ii)化合物15の合成
化合物14(279mg, 0.577mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジで乾燥ジエチルエーテル6mLを加え、N2ガス下、0℃でゆっくりと水素化アルミニウムリチウム(39.8mg, 1.038mmol)を加えた。その後、反応液をArガス下、0℃で1時間反応させた。反応液にH2O(1mL)、15% NaOH水溶液(1mL)、さらにH2O(3mL)を加えて反応を停止し、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、THFによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒6:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物15(収量: 142mg, 収率: 92%)を得た。化合物15の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ9.78(1H, s), 7.43-7.25(15H, m), 7.10(2H, s), 5.14(6H, m)であった。
【実施例】
【0076】
(iii)化合物16の合成
化合物15(142mg, 0.334mmol)、ホスホノ酢酸トリエチル(136.4μL, 0.688mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジで乾燥THF5mLを加え、N2ガス下、0℃でゆっくりと乾燥THF5mLに溶解させた水素化ナトリウム(29.4mg, 0.734mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、室温で1時間反応させた。酢酸エチル、1N HCl、H2Oを加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒8:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物16(収量: 173mg, 収率: 100%)を得た。化合物16の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.52(1H, d, J=15.82), 7.42-7.25(15H, m), 6.79(2H, s), 6.25(1H, d, J=15.82), 5.10-5.07(6H, m), 4.23(2H, q, J=7.22), 1.31(3H, t, J=7.22)であった。
【実施例】
【0077】
(iv)化合物17の合成
化合物16(165mg, 0.332mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジで乾燥THF-乾燥ジエチルエーテル(1:1, 6mL)を加え、N2ガス下、-20℃でゆっくりと水素化アルミニウムリチウム(26mg, 0.664mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、0℃で1時間反応させた。反応液にH2O(1mL)、15% NaOH水溶液(1mL)、さらにH2O(3mL)を加えて反応を停止し、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、THFによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒6:1-2:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物17(収量: 102mg, 収率: 68%)を得た。化合物17の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.43-7.24(15H, m), 6.67(2H, s), 6.46(1H, m), 6.19(1H, m), 5.09-5.04(6H, m), 4.27(2H, d, J=4.82)であった。
【実施例】
【0078】
(v)化合物18の合成
化合物17(102mg, 0.225mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジでピリジン2mL、無水酢酸2mLを加え、N2ガス下、室温で2時間反応させた。ピリジンおよび 無水酢酸はエバポレーターでトルエンと共沸させ、濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒8:1-6:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物18(収量: 105mg, 収率: 100%)を得た。化合物18の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.43-7.24(15H, m), 6.68(2H, s), 6.48(1H, m), 6.12(1H, m), 5.08-5.03(6H, m), 4.67(2H, d, J=6.54), 2.08(3H, s)であった。
【実施例】
【0079】
(vi)化合物19の合成
化合物18(97mg, 0.196mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、AcOEt2mLを加えた。その後、5%カーボン担持パラジウム(7mg)を加え、H2ガスに置換した。室温で一晩マグネティックスターラーを用いて激しく攪拌させ、反応させた。反応後、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、メタノールによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、化合物19(化合物(B)のアグリコンのトリヒドロキシ体)(収量 : 39mg, 収率 : 75%)を得た。化合物19の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は249.11であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行い、1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.17(2H, s), 4.02(2H, t, J=6.87), 2.46(2H, t, J=7.45), 2.01(3H, s), 1.85(2H, m, J=7.45, 6.87)であった。13C-NMRのシフト値(125MHz, CD3OD)は、δ21.11, 31.78, 32.98, 65.37, 108.55, 132.51, 133.86, 147.27, 147.27, 173.38であった。
【実施例】
【0080】
(b-4)化合物(B)のアグリコンのジメトキシ体の合成
下記に示すスキーム6に従って、化合物(B)のアグリコンのジメトキシ体を合成した。
【化16】
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【実施例】
【0081】
(i)化合物20の合成
化合物3(1.00g, 4.46mmol)、臭化ベンジル(2.706mL, 22.3mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジで乾燥DMF 20mLを加え、N2ガス下、0℃でゆっくりと乾燥DMF 20mLに溶解させた水素化ナトリウム(892mg, 22.3mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、室温で1時間反応させた。酢酸エチル、1N HCl、H2Oを加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒20:1-15:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物20(収量: 830mg, 収率: 56%)を得た。化合物20の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.45-7.26(5H, m), 7.22(1H, s), 6.93(1H, s), 5.19(2H, s), 3.86(3H, s), 3.70(2H, m, J=6.88), 1.24(3H, t, J=6.88)であった。
【実施例】
【0082】
(ii)化合物21の合成
化合物20(830mg, 2.51mmol)をナス型フラスコに入れ、80%酢酸水溶液30mLを加え、50℃で2時間反応させた。酢酸およびH2Oはエバポレーターでトルエンと共沸させ、濃縮乾固した。その結果、化合物21(収量: 629mg, 収率: 91%)を得た。化合物21の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.40-7.24(5H, m), 7.29(2H, s), 5.11(2H, s), 3.86(3H, s)であった。
【実施例】
【0083】
(iii)化合物22の合成
化合物21(629mg, 2.29mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジでアセトン25mLを加え、さらにN2ガス下、0℃で炭酸カリウム(6.3g, 45.8mmol)とヨウ化メチル(1.42mL, 22.9mmol)を加え、反応液をN2ガス下、室温で一晩反応させた。反応後、エバポレーターによってアセトンを除去し、反応液にH2O 50mLを加えた。水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒8:1-6:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物22(収量: 692mg, 収率: 100%)を得た。化合物22の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.46-7.30(5H, m), 7.29(1H, s), 7.28(1H, s), 5.14(2H, s), 3.90(3H, s), 3.89(3H, s), 3.88(3H, s)であった。
【実施例】
【0084】
(iv)化合物23の合成
化合物22(692mg, 2.29mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジで乾燥ジエチルエーテル20mLを加え、N2ガス下、-20℃でゆっくりと水素化アルミニウムリチウム(92mg, 2.42mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、0℃で2時間反応させた。反応液にH2O、15% NaOH水溶液、さらにH2Oを加えて反応を停止し、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、THFによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒5:1-2:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物23(収量: 678mg, 収率: 100%)を得た。化合物23の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.45-7.29(5H, m), 6.62(1H, d, J=1.72), 6.60(1H, d, J=1.72), 5.12(2H, s), 3.86(3H, s), 3.85(3H, s)であった。
【実施例】
【0085】
(v)化合物24の合成
化合物23(678mg, 2.47mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジで塩化ジメチル25mLを加え、N2ガス下、室温で二酸化マンガン(8.6g, 98.86mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、50℃で5時間還流、振とうさせた。反応後、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、塩化ジメチルによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、アルデヒド化合物24(収量: 3.91g, 収率: 80%)を得た。化合物24の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.45-7.31(5H, m), 7.15(1H, d, J=1.72), 7.12(1H, d, J=1.72), 5.17(2H, s), 3.94(3H, s), 3.91(3H, s)であった。
【実施例】
【0086】
(vi)化合物25の合成
化合物24(538mg, 1.98mmol)、ホスホノ酢酸トリエチル(1mL, 3.95mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジで乾燥THF10mLを加え、N2ガス下、0℃でゆっくりと乾燥THF 10mLに溶解させた水素化ナトリウム(174mg, 4.35mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、室温で1時間反応させた。酢酸エチル、1N HCl、H2Oを加えて反応を停止し、水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒8:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物25(収量: 5.26g, 収率: 100%)を得た。化合物25の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.56-7.51(1H, d, J=15.59), 7.44-7.30(5H, m), 6.77(1H, d, J=1.77), 6.74(1H, d, J=1.72), 6.28(1H, d, J=15.59), 5.13(2H, s), 4.25(2H, q, J=7.22), 3.89(3H, s), 3.87(3H, s), 1.31(3H, t, J=7.22)であった。
【実施例】
【0087】
(vii)化合物26の合成
化合物25(676mg, 1.97mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジで乾燥THF20mLを加え、N2ガス下、-20℃でゆっくりと水素化アルミニウムリチウム(75mg, 1.97mmol)を加えた。その後、反応液をN2ガス下、0℃で2時間反応させた。反応液にH2O、15% NaOH水溶液、さらにH2Oを加えて反応を停止し、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、THFによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒6:1-4:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物26(収量: 428mg, 収率: 72%)を得た。化合物26の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.44-7.26(5H, m), 6.63(1H, d, J=1.72), 6.61(1H, d, J=1.72), 6.48(1H, d, J=15.82), 6.25-6.17(1H, q, J=5.85, 15.82), 4.29(2H, d, J=5.85), 3.86(6H, s, br)であった。
【実施例】
【0088】
(viii)化合物27の合成
化合物26(428mg, 1.43mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジでピリジン15mL、無水酢酸15mLを加え、N2ガス下、室温で1.5時間反応させた。ピリジンおよび 無水酢酸はエバポレーターでトルエンと共沸させ、濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒12:1-8:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物27(収量: 467mg, 収率: 95%)を得た。化合物27の1H-NMRのシフト値(300MHz, CDCl3)は、δ7.44-7.26(5H, m), 6.64(1H, d, J=1.83), 6.61(1H, d, J=1.83), 6.50(1H, d, J=15.82), 6.17-6.10(1H, m, J=6.87, 15.82), 5.12(2H, s), 4.68(2H, dd, J=1.37, 6.87), 3.85(6H, s, br)であった。
【実施例】
【0089】
(ix)化合物28の合成
化合物27(467mg, 1.36mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させた後、エタノール15mLを加えた。その後、5%カーボン担持パラジウム(45mg)を加え、H2ガスに置換した。室温で一晩マグネティックスターラーを用いて激しく遠心させ、反応させた。反応後、カラムに充填したセライトによってろ過を行い、メタノールによって溶出した。エバポレーターで濃縮乾固後、化合物28(化合物(B)のアグリコンのジメトキシ体)(収量 : 279.02mg, 収率 : 81%)を得た。化合物28の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は277.15であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行い、1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.31(2H, s), 4.02(2H, t, J=6.87), 3.78(3H, s), 3.73(3H, s), 2.53(2H, t, J=7.81), 2.00(3H, s), 1.88(2H, m, J=6.87, 7.81)、13C-NMRのシフト値(125MHz, CD3OD)は、δ19.53, 29.99, 31.83, 55.00, 59.67, 63.69, 103.71, 108.73, 134.55, 137.38, 150.08, 153.13, 171.72であった。
【実施例】
【0090】
(b-5)化合物(B)のアグリコンのトリメトキシ体の合成
下記に示すスキーム7に従って、化合物(B)のアグリコンのトリメトキシ体を合成した。
【化17】
JP2017043558A_000018t.gif
【実施例】
【0091】
(i)化合物29の合成
化合物12(100mg, 0.446mmol)をナス型フラスコに入れ、真空ポンプで十分乾燥させたのち、N2ガス置換した。その後、シリンジでアセトン5mLを加え、さらにN2ガス下、0℃で炭酸カリウム(1.23g, 8.92mmol)とヨウ化メチル(277μL, 4.46mmol)を加え、反応液をN2ガス下、室温で一晩反応させた。反応後、エバポレーターによってアセトンを除去し、反応液にH2O 10mLを加えた。水層に対して酢酸エチルを加え、分配抽出を行った。有機層をNaHCO3および飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して得られたろ液をエバポレーターで濃縮乾固した。続いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒9:1-6:1ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。目的物が含まれている画分を回収、濃縮し、化合物29(化合物(B)のアグリコンのトリメトキシ体)(収量: 79mg, 収率: 74%)を得た。化合物29の質量分析は、ESI-MS(AccuTOF MS, JMS-T100LC, JEOL, TOKYO, Japan)によって行い、[M+Na]+は291.26であった。構造解析は、500MHz NMR(ECA-500, JEOL)を用いて行い、化合物29の1H-NMRのシフト値(500MHz, CD3OD)は、δ6.49(2H, s), 4.05(2H, t, J=6.87), 3.80(6H, s), 3.71(3H, s), 2.62(2H, t, J=8.02), 2.02(3H, s), 1.92(2H, m, J=6.87, 8.02)、13C-NMRのシフト値(125MHz, CD3OD)は、δ19.40, 29.99, 32.03, 55.13, 59.68, 63.54, 105.32, 135.91, 137.49, 153.03, 171.58であった。
【実施例】
【0092】
[実施例3]オオカナダモ由来化合物と合成化合物の比較
(a)化合物(A)
エピカテキンから合成した化合物(A)(5-メチル-7-α/β-D-グルコシルエピカテキン)の収量は6mg(α:β=5:3)、総収率は0.04%(αβ合計)であった。合成した化合物の1H、13C、1H-1H COSY、HMBC、HMQC、NOESY NMR解析を行い、構造を評価した。合成した化合物およびオオカナダモより抽出した化合物のNMR値を比較した結果、1Hの化学シフト値およびカップリング定数、13Cの化学シフト値とともに一致した(表1)。また、合成した5-メチル-7-β-D-グルコシルエピカテキンおよびオオカナダモより抽出した化合物(A)のMS解析およびHPLC解析を行った結果、分子量は466であり、最大吸収波長が203nm、および極大吸収波長が280nmであった。また、HPLCにおける保持時間(Retention Time)も一致していた。
【表1】
JP2017043558A_000019t.gif
【実施例】
【0093】
(b)化合物(B)
没食子酸から合成した化合物(B)(3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-α/β-D-グルコシルフェニル))プロピルアセテートの収量は8mg(α:β=3:5)、総収率は2.3%(αβ合計)であった。合成した化合物の1H、13C、1H-1H COSY、HMBC、HMQC、NOESY NMR解析を行い、構造を評価した。合成した化合物およびオオカナダモより抽出した化合物のNMR値を比較した結果、1Hの化学シフト値および13Cの化学シフト値、Jカップリングのいずれにおいても一致した(表2)。また、合成した 3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-β-D-グルコシルフェニル)プロピルアセテートおよびオオカナダモより抽出した化合物(B)のMS解析、HPLC解析を行った結果、分子量は402であり、最大吸収波長が203nm、および極大吸収波長が278nmであった。また保持時間も一致していた。
【表2】
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【実施例】
【0094】
[実施例4]オオカナダモ紅葉誘導試験
(a-1)化合物(A)(オオカナダモ由来/合成化合物)
オオカナダモから抽出した化合物(A)と上記の手順に従って合成した化合物(A)とをそれぞれ用いて、オオカナダモ切断葉を用いた紅葉誘導バイオアッセイを行い、紅葉誘導されたオオカナダモ葉に含有されるアントシアニンおよびクロロフィルの量を調べた。図4は、それぞれの化合物濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。合成化合物とオオカナダモ由来化合物とで至適濃度および誘導活性がほぼ同一であることから、両者が同一の化合物であることが確認された。化合物(A)の至適濃度は約1.0×10-12~約1.0×10-10mol/Lの範囲内、特に約0.5×10-11~約5.0×10-11mol/Lの範囲内であり、約1.0×10-11mol/Lであると判断された。
【実施例】
【0095】
(b-1)化合物(B)(オオカナダモ由来/合成化合物)
オオカナダモから抽出した化合物(B)と上記の手順に従って合成した化合物(B)とをそれぞれ用いて、オオカナダモ切断葉を用いた紅葉誘導バイオアッセイを行い、紅葉誘導されたオオカナダモ葉に含有されるアントシアニンおよびクロロフィルの量を調べた。図5は、それぞれの化合物濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。合成化合物とオオカナダモ由来化合物とで至適濃度および誘導活性がほぼ同一であることから、両者が同一の化合物であることが確認された。化合物(B)の至適濃度は2点存在し、それぞれ、約0.5×10-11~約5.0×10-11mol/Lおよび約0.5×10-9~約5.0×10-9mol/Lの範囲内、特に約1.0×10-11mol/Lおよび約1.0×10-9mol/Lであると判断された。
【実施例】
【0096】
(a-2)5-メトキシエピカテキン(化合物(A)アグリコン)
化合物(A)におけるグルコースの役割について調べるため、化合物(A)のアグリコンである5-メトキシエピカテキンについて、オオカナダモ切断葉を用いた紅葉誘導バイオアッセイを行った。図6は、5-メトキシエピカテキン濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。濃度1.0×10-10mol/Lにおいて最大のアントシアニン合成およびクロロフィル分解がみられ、至適濃度こそ異なるものの、アグリコンも配糖体と同様の活性を有することが確認された。5-メトキシエピカテキンの至適濃度は約1.0×10-11~約1.0×10-9mol/Lの範囲内、特に約0.5×10-10~約5.0×10-10mol/Lの範囲内であり、約1.0×10-10mol/Lであると判断された。
【実施例】
【0097】
(a-3)エピカテキンおよびカテキン(化合物(A)アグリコン類縁体)
化合物(A)アグリコンである5-メトキシエピカテキンの類縁体にも紅葉誘導活性がみられるかを確認するため、5位がメトキシ化されていないエピカテキンおよびその立体異性体であるカテキンについて、オオカナダモ切断葉を用いた紅葉誘導バイオアッセイを行った。図7は市販のエピカテキンについて、図8は市販のカテキンについてそれぞれ行ったアッセイにおける、化合物濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。エピカテキンおよびカテキンのいずれも、化合物(A)およびそのアグリコンと同様に、アントシアニン合成およびクロロフィル分解誘導活性を有することがわかった。エピカテキンの至適濃度は約1.0×10-12~約1.0×10-10mol/Lの範囲内、特に約0.5×10-11~約5.0×10-11mol/Lの範囲内であり、約1.0×10-11mol/Lであると判断された。カテキンの至適濃度は、約1.0×10-11~約1.0×10-8mol/Lの範囲内、特に約1.0×10-11~約1.0×10-9mol/Lの範囲内であり、約1.0×10-10mol/Lであると判断された。これにより、茶などから抽出され、食品添加物として用いられており、上記の濃度では人の健康に対して有害作用を有しないことが確認されているカテキン類が紅葉誘導活性を有することが確認された。
【実施例】
【0098】
(c-1)比較例:ナリンゲニン
フラボノイドの一種であるナリンゲニンについて、オオカナダモ切断葉を用いた紅葉誘導バイオアッセイを行った。図9は市販のナリンゲニンについて行ったアッセイにおける、ナリンゲニン濃度とアントシアニン量およびクロロフィル量の相関を示すグラフである。試験した他の化合物とは異なり、明らかな紅葉誘導活性は確認されなかった。
【実施例】
【0099】
(b-2)化合物(B)アグリコンおよびその類縁体
化合物(B)のアグリコンおよびその類縁体について、オオカナダモ切断葉を用いた紅葉誘導バイオアッセイを行った。図10は、化合物(B)アグリコンである3-OMe体(化合物12)、ならびにその類縁体である3,4,5-OH体(化合物19)、3,4-OMe体(化合物28)および3,4,5-OMe体(化合物29)について行ったアッセイにおける、化合物濃度とアントシアニン量の相関を示すグラフである。3,4-OMe体の活性が化合物(B)アグリコンである3-OMe体よりも高く、さらに配糖体である化合物(B)よりも高かった。3,4-OMe体の至適濃度は約1.0×10-11~1.0×10-8mol/Lの範囲内、特に約1.0×10-10~約1.0×10-8mol/Lの範囲内であり、約1.0×10-9mol/Lであると判断された。3-OMe体および3,4,5-OMe体の至適濃度は2点存在し、それぞれ、約1.0×10-11mol/Lおよび約1.0×10-9mol/Lであると判断された。3,4,5-OH体の至適濃度も2点存在し、それぞれ、約1.0×10-10mol/Lおよび約1.0×10-8mol/Lであると判断された。
【実施例】
【0100】
[実施例5]シロイヌナズナ紅葉誘導試験
オオカナダモ以外の植物に対しても紅葉誘導活性を有するかを確認するため、双子葉植物のモデル植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を用いたアッセイを行った。化合物(A)の1.0×10-11mol/Lもしくは1.0×10-10mol/L水溶液、または対照として蒸留水(DW)を11mL入れたバイアル(直径 2.5cm、高さ 4.5cm)に、シロイヌナズナの成熟した葉の切片または花柄切片を刺し、葉切片は3日間、花柄切片は5日間培養した。図11は、培養後のシロイヌナズナの葉切片および花柄切片の状態を撮影した写真である。葉切片では特に葉の裏側において、花柄切片では特に花柄下部および花柄葉の裏側において、アントシアニンの蓄積が目視で確認できた。図12は、シロイヌナズナの切断葉、花柄葉および花柄における培養後のアントシアニン量を示すグラフである。化合物(A)の水溶液、特に濃度1.0×10-11mol/Lの水溶液で培養した葉および花柄では、蒸留水(DW)のみの対照と比較して、アントシアニンの蓄積が促進されることが確認された。
【実施例】
【0101】
[実施例6]イロハモミジ紅葉誘導試験(1)
モデル植物としてイロハモミジの盆栽を用い、化合物(A)の紅葉誘導活性を調べた。2009年8月2日に購入したイロハモミジ盆栽を、しばらく日が当たり雨の当たらない場所で栽培して馴化させた。葉の約半分が隠れるようビニルシートでカバーし、カバーされていない部分に化合物(A)の1.0×10-11mol/L水溶液を1mLずつ、2~3日間のインターバルでスプレーした。スプレーは、2009年8月26日より、同年12月1日までの期間行った。図13は試験に用いられたイロハモミジの盆栽の経時変化を記録した写真である。試験の結果、イロハモミジの盆栽は、スプレーした側の葉の紅葉が明らかに促進されていた。
【実施例】
【0102】
[実施例7]イロハモミジ紅葉誘導試験(2)
野外で生育しているイロハモミジに対する化合物(A)および(B)の効果を調べた。各化合物の1.0×10-11mol/L水溶液を調製し、2011年9月24日から同年11月15日まで2~4日間のインターバルで、2mLずつ、1本のイロハモミジの1つの枝の先端の葉(約20枚)にスプレーした。図14は、試験に用いられたイロハモミジの経時変化を記録した写真である。2011年11月15日に観察したところ、スプレーした葉群の中に既にアントシアニンが合成されて蓄積している葉が観察された。さらに、2011年12月3日に観察したところ、スプレーしていない葉ではアントシアニンの蓄積がわずかのみ観察されたのに対し、スプレーした葉では、その多くにおいて明らかなアントシアニンの蓄積が確認された。
【実施例】
【0103】
[実施例8]ヤマモミジ落葉誘導試験
化合物(A)が植物の葉に対して、紅葉誘導活性のみならず落葉活性も有するのかを、ヤマモミジをモデルとして調べた。プランター栽培したヤマモミジの夏前の若い葉に化合物(A)の1.0×10-11mol/L水溶液を約1mLスプレーした。2015年5月29日~6月3日の期間、隔日ごとにスプレーしたところ、6月3日の時点で葉の先端に褐変がみられた。その時点でスプレーを中止して栽培を続けたところ、スプレーされた葉は徐々に枯れていき、約1ヶ月後に落葉した。一方、スプレー終了後に生えた若葉には特に影響はみられなかった。図15は、試験に用いられたヤマモミジの経時変化を記録した写真である。写真左はスプレー終了後約1ヶ月後の6月30日の状態であり、写真右はさらにその10日後の7月10日の状態である。写真左で褐変していた葉が写真右では落葉していること、および写真右では健全な若葉が生えてきていることがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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