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明細書 :グラフェンナノリボン前駆体製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-057182 (P2017-057182A)
公開日 平成29年3月23日(2017.3.23)
発明の名称または考案の名称 グラフェンナノリボン前駆体製造方法
国際特許分類 C07C  17/12        (2006.01)
C07C  25/22        (2006.01)
FI C07C 17/12
C07C 25/22
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2015-185711 (P2015-185711)
出願日 平成27年9月18日(2015.9.18)
発明者または考案者 【氏名】山田 容子
【氏名】林 宏暢
出願人 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
Fターム 4H006AA02
4H006AC30
4H006BB12
4H006BB17
4H006BB21
4H006BB61
4H006BE53
4H006EA23
要約 【課題】従来より用いられている水素終端グラフェンナノリボン作製用の前駆体分子(アントラセンダイマー)の構造から大きく逸脱せず、かつ、材料の特性を様々に変調させることのできる前駆体分子を作製する方法を提供する。
【解決手段】ベンゼンに対してフタル酸無水物のアシル基をフリーデル・クラフツ反応させて2-ベンゾイル安息香酸(1)を作製し、該2-ベンゾイル安息香酸(1)の脱水反応によりアントラキノン(2)を作製し、該アントラキノン(2)の還元的カップリング反応によりアントラセンダイマー(3)又は有機リチウム試薬を用いたカップリング反応によりアントラセントリマー(4)であるグラフェンナノリボン前駆体を作製する。特に、出発物質を1,2-ジフルオロベンゼンと4,5-ジフルオロフタル酸無水物とすることにより、フッ素終端グラフェンナノリボンの作製が容易なものとなる。これにより、グラフェンナノリボンのバンドギャップやPN極性などの物性を自由に制御できることが期待される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
a)ベンゼンに対してフタル酸無水物のアシル基をフリーデル・クラフツ反応させて2-ベンゾイル安息香酸を作製し、
b)前記2-ベンゾイル安息香酸の脱水反応によりアントラキノンを作製し、
c)前記アントラキノンの還元的カップリング反応によりアントラセンダイマーであるグラフェンナノリボン前駆体又は有機リチウム試薬を用いたカップリング反応によりアントラセントリマーであるグラフェンナノリボン前駆体を作製する
という工程を含むことを特徴とするグラフェンナノリボン前駆体製造方法。
【請求項2】
a) 1位及び2位の少なくとも1箇所に置換基R1を導入したベンゼンに対して、4位及び5位の少なくとも1箇所に置換基R2を導入したフタル酸無水物のアシル基をフリーデル・クラフツ反応させて2-ベンゾイル安息香酸誘導体を作製し、
b)前記2-ベンゾイル安息香酸誘導体の脱水反応によりアントラキノン誘導体を作製し、
c)前記アントラキノン誘導体の還元的カップリング反応によりアントラセンダイマー誘導体であるグラフェンナノリボン前駆体又は有機リチウム試薬を用いたカップリング反応によりアントラセントリマー誘導体であるグラフェンナノリボン前駆体を作製する
という工程を含むことを特徴とするグラフェンナノリボン前駆体製造方法。
【請求項3】
a)1,2-ジフルオロベンゼンに対して4,5-ジフルオロフタル酸無水物のアシル基をフリーデル・クラフツ反応させて2-ベンゾイル安息香酸誘導体を作製し、
b)前記2-ベンゾイル安息香酸誘導体の脱水反応によりアントラキノン誘導体を作製し、
c)前記アントラキノン誘導体の還元的カップリング反応によりアントラセンダイマー誘導体であるグラフェンナノリボン前駆体又は有機リチウム試薬を用いたカップリング反応によりアントラセントリマー誘導体であるグラフェンナノリボン前駆体を作製する
という工程を含むことを特徴とするグラフェンナノリボン前駆体製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンナノリボンを作製するために用いられるグラフェンナノリボン前駆体、特に、そのエッジ(側端)をフッ素で置換したグラフェンナノリボンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ムーアの法則に従い達成されてきた微細化に基づく電子デバイスの高性能化は、その物理的限界から今後10年以内に終焉を迎えると言われている。したがって、既存のシリコン材料が示す限界を打ち破る、革新的な新材料の創発が望まれている。中でも、グラフェンナノリボン(GNR)は既存のシリコン半導体を上回る優れた物性を示すことから注目を集めている。
【0003】
GNRの作製方法としては、ネガ型レジスト(ハイドロシルセスキオキサン)を用いて電子線リソグラフィにより形成する方法(非特許文献1等)、カーボンナノチューブを化学的に切開する方法(例えば、特許文献1)、有機溶媒に溶解したグラファイトフレークからソノケミカル法により形成する方法(非特許文献2等)などが報告されている。
【0004】
最近では、アントラセンダイマーを合成し、それらを原子レベルで平坦な(111)結晶面を有する金(Au)又は銀(Ag)の金属基板上に超高真空下で蒸着し、基板加熱によるラジカル反応により連結/縮環して、ボトムアップ的にGNRを形成する方法(非特許文献3等。以下、この方法を昇華法と呼ぶ。)が示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2012-158514号公報
【特許文献2】特開2014-218386号公報
【0006】

【非特許文献1】M. Y. Han et al., Phys. Rev. Lett., 98 (2007), 206805
【非特許文献2】X. Li et al., Science, 319 (2008), 1229
【非特許文献3】J. Cai et al., Nature, 466 (2010), 470
【非特許文献4】Chen Y. et al., ACS Nano, 7 (2013), 6123
【非特許文献5】Wagner, P. et al., J. Phys. Chem. C, 117 (2013), 26790
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バンドギャップ等のGNRの半導体としての特性は、GNRの幅(リボン幅)によって変化することが知られている(特許文献2等)。アントラセンダイマーを前駆体とする昇華法(非特許文献3、非特許文献4等)では、リボン幅の揃ったGNRを作製できる反面、リボン幅が1 nm以上のGNRを作製することができないため、GNRの特性を制御することが難しい。一方、GNRのエッジ部分に置換基を導入することで、GNRの幅を変えることなく、バンドギャップなどのGNRの特性を制御できることが計算により予測されている(非特許文献5)が、これまで昇華法で作製されるGNRのエッジは全て水素終端であった。
【0008】
したがって、バリエーションに富むGNRを作製できるGNR前駆体分子の開発により、材料としてのGNRの可能性が開発され、幅広い次世代デバイスへの応用が期待される。しかしながら、GNRのエッジ部位を置換基で系統的に修飾した例は報告されていない。すなわち、GNRの特性制御には、GNRのリボン幅を制御する方法(特許文献2等)しか開発されていないと言える。
【0009】
このように、GNRの物性はエッジ部分への置換基導入により大きく変調させることが可能であるが、この達成には、GNRの前駆体となる材料を、有機合成を用いて作製することが必要となる。しかしながら、GNRの作製には、1)昇華法を用いて基板上に材料を配列する、2)高温処理によりGNRに変換する、というステップを踏むことになる。この際、従来型の水素終端GNRの作製に用いられている前駆体分子構造から構造を大きく変化させてしまうと、昇華法による基板上での配列制御過程がうまく進行せず、GNRが得られない可能性がある。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、従来より用いられている水素終端グラフェンナノリボン作製用の前駆体分子(アントラセンダイマー)の構造から大きく逸脱せず、かつ、材料の特性を様々に変調させることのできる前駆体分子を作製する方法を提供することである。
【0011】
そして、その中でも特にエッジ部のフッ素化に着目し、フッ素修飾率を系統的に制御できる前駆体分子を合成することで、グラフェンナノリボンのバンドギャップやPN極性などの物性を、自由に制御できることが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係るグラフェンナノリボン前駆体製造方法は、図1に示すように(以下において化合物(X)とは図1中の記号X(1から4までの数字)の化合物を表し、工程yは図1中の記号y(aからd2までの英小文字)で表されたプロセスに対応する。)、
a)ベンゼンに対してフタル酸無水物のアシル基をフリーデル・クラフツ反応させて2-ベンゾイル安息香酸(1)を作製し、
b)前記2-ベンゾイル安息香酸(1)の脱水反応によりアントラキノン(2)を作製し、
c)前記アントラキノン(2)の還元的カップリング反応によりアントラセンダイマー(3)であるグラフェンナノリボン前駆体又は有機リチウム試薬を用いたカップリング反応によりアントラセントリマー(4)であるグラフェンナノリボン前駆体を作製する(c1、c2)
という工程を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る方法では、作製されたグラフェンナノリボン前駆体であるアントラセンダイマー(3)又はアントラセントリマー(4)は、従来のそれらと何ら変わるところがなく、これらの前駆体を用いて(図1においてd1及びd2で示す臭素化工程を経た後)、従来の昇華法によりグラフェンナノリボンを製造することが期待できる。
【0014】
本発明に係るグラフェンナノリボン前駆体製造方法の特徴は、出発物質であるフタル酸(無水物)とベンゼンに様々な置換基を導入しておくことにより、様々な置換基で修飾されたアントラセンダイマー又はアントラセントリマー(グラフェンナノリボン前駆体)を作製することができ、これらを元に、様々なエッジ修飾を有するグラフェンナノリボンを製造することができる、ということである。
【0015】
すなわち、本発明に係るグラフェンナノリボン前駆体製造方法は、図2に示すように(以下において化合物(X)とは図2中の記号X(11から16までの数字)の化合物を表し、工程yは図2中の記号y(aからc2までの英小文字)で表されたプロセスに対応する。)、
a)1位及び2位の少なくとも1箇所に置換基R1を導入したベンゼンに対して、4位及び5位の少なくとも1箇所に置換基R2を導入したフタル酸無水物のアシル基をフリーデル・クラフツ反応させて2-ベンゾイル安息香酸誘導体(11)を作製し、
b)前記2-ベンゾイル安息香酸誘導体(11)の脱水反応によりアントラキノン誘導体(12)を作製し、
c)前記アントラキノン誘導体(12)の還元的カップリング反応によりアントラセンダイマー誘導体(15)であるグラフェンナノリボン前駆体又は有機リチウム試薬を用いたカップリング反応によりアントラセントリマー誘導体(16)であるグラフェンナノリボン前駆体を作製する(c1、c2)
という工程を含むという形態で有効に実施することができる。
【0016】
この方法において、出発物質であるベンゼンに導入した置換基R1と、フタル酸(無水物)に導入した置換基R2が、本発明に係る方法の製造物であるアントラセンダイマー誘導体又はアントラセントリマー誘導体(グラフェンナノリボン前駆体)の両端において置換基として残り、それがグラフェンナノリボンにおけるエッジ修飾となる。
【0017】
そこで、図2にも示したように、上記方法の工程b)において両端に様々な置換基を有するアントラキノン誘導体(図2の(12)~(16)等)を作製しておき、それらを適宜組み合わせて還元的カップリング反応又は有機リチウム試薬を用いたカップリング反応により、様々なアントラセンダイマー誘導体(図2の(17)等)やアントラセントリマー誘導体(図2の(18)等)であるグラフェンナノリボン前駆体を作製することができる。すなわち、出発物質であるベンゼンの置換基とフタル酸(無水物)の置換基を予め任意に設定しておくことにより、グラフェンナノリボンにおけるエッジ修飾を任意に制御することができる。
【0018】
なお、出発物質であるベンゼン及びフタル酸(無水物)に導入しておく置換基R1、R2は、1個だけであってもよいし、2個であってもよい。また、ベンゼンに2個の置換基を導入する場合、これら2個の置換基は同一であってもよく異なっていても良い。フタル酸に2個の置換基を導入する場合も同様である。ベンゼン及びフタル酸にそれぞれ1個の置換基を導入した場合は、置換基を導入した箇所に応じて図2の(12)、(13)等のアントラキノン誘導体が作製され、ベンゼン及びフタル酸にそれぞれ2個の置換基を導入した場合は、図2の(14)のアントラキノン誘導体が作製される。また、ベンゼン及びフタル酸のいずれか一方に1個の置換基を導入し、他方に2個の置換基を導入した場合は、図2の(15)、(16)等のアントラキノン誘導体が作製される。図2には、これらアントラキノン誘導体(12)~(16)等から作製されるグラフェンナノリボン前駆体として(17)及び(18)を例として挙げたが、これらに限定されない。また、グラフェンナノリボン前駆体(17)及び(18)の置換基R1~R8は同一であってもよく異なっていても良い。
【0019】
ここで、グラフェンナノリボンのエッジ修飾、すなわち、出発物質であるベンゼンの置換基とフタル酸(無水物)の置換基、としてはフッ素F、塩素Cl、臭素Br等のハロゲン元素や、水酸基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基などの置換基、縮環チオフェン等の芳香族等を用いることができるが、その中ではフッ素Fが極めて有望である。フッ素Fは、1)全原子中で最大の電気陰性度を示す、2)ファンデルワールス半径が水素の次に小さい、3)形成されたC-F結合が極めて強固、といった特徴を示す。そのため、材料のフッ素化は、その特性・物性を大きく変えることができる有効な手段である。したがって、通常は水素で置換されているグラフェンナノリボンのエッジ部分をフッ素で修飾することが可能となれば、グラフェンナノリボンの物性制御につながる可能性がある。
【0020】
この点を考慮すると、本発明に係るグラフェンナノリボン前駆体製造方法はフッ化グラフェンナノリボン前駆体の製造方法として好適に利用することができ、その場合、本発明に係る方法は、図3に示すように(以下において化合物(X)とは図3中の記号X(21から28までの数字)の化合物を表し、工程yは図3中の記号y(aからhまでの英小文字)で表されたプロセスに対応する。)、
a)1,2-ジフルオロベンゼンに対して4,5-ジフルオロフタル酸無水物のアシル基をフリーデル・クラフツ反応させて2-ベンゾイル安息香酸誘導体を作製し、
b)前記2-ベンゾイル安息香酸誘導体の脱水反応によりアントラキノン誘導体を作製し、
c)前記アントラキノン誘導体の還元的カップリング反応によりアントラセンダイマー誘導体であるグラフェンナノリボン前駆体又は有機リチウム試薬を用いたカップリング反応によりアントラセントリマー誘導体であるグラフェンナノリボン前駆体を作製する
という工程を含むという形態で有効に実施することができる。
【0021】
より具体的には、次のような工程で実施し得る。
a)1,2-ジフルオロベンゼンに対して4,5-ジフルオロフタル酸無水物のアシル基をフリーデル・クラフツ反応させて2-ベンゾイル安息香酸誘導体(21)を作製し、
b)前記2-ベンゾイル安息香酸誘導体(21)の脱水反応により2,3,6,7-テトラフルオロアントラキノン(22)を作製し、
c)前記2,3,6,7-テトラフルオロアントラキノン(22)の還元的カップリング反応、又は前記2,3,6,7-テトラフルオロアントラキノン(22)とアントラキノンの還元的カップリング反応によりアントラセンダイマー誘導体(23、25)であるグラフェンナノリボン前駆体、又は2,3,6,7-テトラフルオロアントラキノン(22)と9-ブロモアントラセンの有機リチウム試薬を用いたカップリング反応によりアントラセントリマー誘導体(27)であるグラフェンナノリボン前駆体を作製する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るグラフェンナノリボン前駆体製造方法では、製造されたグラフェンナノリボン前駆体であるアントラセンダイマー又はアントラセントリマーは従来のそれらと何ら変わるところがなく、これらの前駆体を用いて従来の昇華法によりグラフェンナノリボンを製造することができる。また、出発物質であるフタル酸(無水物)とベンゼンに様々な置換基を導入しておくことにより、様々な置換基で修飾されたグラフェンナノリボン前駆体を製造することができ、これを元に、様々なエッジ修飾を有するグラフェンナノリボンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態を示す合成工程図。
【図2】本発明の別の実施形態を示す合成工程図。
【図3】本発明の実施例1~実施例3の合成工程図。
【図4】本発明の実施例1~実施例3で作製されるグラフェンナノリボン前駆体を用いて製造されるグラフェンナノリボンの形態図。
【図5】グラフェンナノリボンの概略構成図。
【図6】図5のグラフェンナノリボンのエッジに様々な修飾を施した場合のバンドギャップエネルギーの値のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施したいくつかのグラフェンナノリボン前駆体の製造方法について、図3を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の合成に用いた試薬および溶媒は、市販品をそのまま使用するか、乾燥剤存在下で蒸留精製したものを使用した。NMRはJEOL社製JNM-ECA600を用いて測定し、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として使用した。精密質量測定には、ブルカー社製Autoflex II MALDI TOF MSもしくはJEOL社製JMS-700を用いた。
【実施例1】
【0025】
実施例1は、図3の記号24で表されるグラフェンナノリボン前駆体を作製したものである。
【実施例1】
【0026】
[化合物21の生成=プロセスa]
50 ml丸底フラスコに4,5-ジフルオロフタル酸無水物(5.0 g, 27.2 mmol)と1,2-ジフルオロベンゼン(16.0 ml, 165 mmol)を加え、50℃で20分間加熱した。室温に冷却後、塩化アルミニウムAlCl3(7.9 g, 54 mmol)を30分かけて加え、室温で4時間撹拌した。次いで、これを0℃に冷却した後、1 M塩酸溶液をゆっくり加えて反応を停止し、ジエチルエーテル抽出を3回行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、エバポレーターで溶媒を除去することで、目的化合物21(7.4 g, 24.9 mmol)を収率91%で白色固体として得た。
NMRおよびマススペクトルの結果を以下に示す。
1H NMR (600 MHz, ppm, CDCl3, J = Hz) 7.96 (t, 9.0 Hz, 1H), 7.63 (t, 8.4 Hz, 1H), 7.41 (br, 1H), 7.23-7.19 (m, 2H)
HR-MS: calc. 298.0253, found 298.0250
【実施例1】
【0027】
[化合物22(2,3,6,7-テトラフルオロアントラキノン)の生成=プロセスb]
化合物21(7.4 g, 24.9 mmol)の硫酸(39 ml)溶液を、100℃で6時間撹拌した。次に、室温に戻した後、氷を加えることで反応を停止した。生じた白色沈殿をろ過し、メタノールで洗浄することで目的化合物22(5.0 g, 17.9 mmol)を収率72%で灰色固体として得た。
NMRおよびマススペクトルの結果を以下に示す。
1H NMR (600 MHz, ppm, CDCl3, J = Hz) 8.10 (t, 8.4 Hz, 4H)
HR-MS: calc. 280.0142, found 280.0152
【実施例1】
【0028】
[化合物23の生成=プロセスc]
マイクロウェーブ用反応容器に化合物22(100 mg, 0.36 mmol)、アントラキノン(76 mg, 0.37 mmol)、亜鉛(0.90 g, 13.8 mmol)、および酢酸(6.0 ml)を加え撹拌し、得られた懸濁液に対して濃塩酸(3.0 ml)を滴下した。5分間撹拌した後、マイクロウェーブを用いて140℃で4時間加熱した。室温まで冷却後、亜鉛(0.90 g, 13.8 mmol)、酢酸(1.0 ml)、濃塩酸(3.0 ml)を加え5分間撹拌後、マイクロウェーブを用いて140℃で4時間加熱した。室温まで冷却後、水を加え、生じた白色沈殿をろ過することで回収した。得られた混合物をシリカカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製して、目的化合物23(48 mg, 0.12 mmol)を収率34%で薄い黄色の固体として得た。
1H NMR (600 MHz, ppm, CDCl3, J = Hz) 8.73 (s, 1H), 8.51 (s, 1H), 8.18 (d, 9.0 Hz, 2H), 7.80 (dd, 18.6 Hz, 7.2 Hz, 2H), 7.50-7.48 (m, 2H), 7.23-7.20 (m, 2H), 6.98 (d, 8.4 Hz, 2H), 6.72 (dd, 20.4 Hz, 7.8 Hz, 2H)
HR-MS: calc. 426.1032, found 426.1022
【実施例1】
【0029】
[化合物24=グラフェンナノリボン前駆体24の作製=プロセスd]
窒素雰囲気下で化合物23(20 mg, 0.047 mmol)とNBS(N-Bromosuccinimide、60 mg, 0.34 mmol)のクロロホルム(5 ml)/アセトニトリル(18 ml)溶液を、窒素雰囲気下で24時間加熱還流した。その後、NBS(100 mg, 0.56 mmol)を加え、さらに48時間加熱還流した。室温に冷却後、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、クロロホルム抽出を3回行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた混合物をシリカカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製して、目的化合物24(20 mg, 0.034 mmol)を収率73%で薄黄色の固体として得た。
NMRおよびマススペクトルの結果を以下に示す。
1H NMR (600 MHz, ppm, CDCl3, J = Hz) 8.74 (d, 9.0 Hz, 2H), 8.40 (dd, 20.4 Hz, 7.8 Hz, 1H), 7.64-7.61 (m, 2H), 7.27-7.24 (m, 2H), 6.98 (d, 8.4 Hz, 2H), 6.75 (dd, 19.2 Hz, 8.4 Hz, 2H)
HR-MS: calc. 583.9223, found 583.9233
【実施例2】
【0030】
実施例2は、図3の記号26で表されるグラフェンナノリボン前駆体を作製したものである。
[化合物25の生成=プロセスe]
マイクロウェーブ用反応容器に化合物22(50 mg, 0.18 mmol)、亜鉛(0.30 g, 5.3 mmol)、および酢酸(1.5 ml)を加え撹拌し、得られた懸濁液に対して濃塩酸(1.0 ml)を滴下した。5分間撹拌した後、マイクロウェーブを用いて140℃で4時間加熱した。室温まで冷却後、亜鉛(0.30 g, 5.3 mmol)、濃塩酸(1.0 ml)を加え5分間撹拌後、マイクロウェーブを用いて140℃で4時間加熱した。室温まで冷却後、水を加え、生じた白色沈殿をろ過することで回収した。得られた混合物をシリカカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製して、目的化合物25(40 mg, 0.08 mmol)を収率45%で白色固体として得た。
NMRおよびマススペクトルの結果を以下に示す。
1H NMR (600 MHz, ppm, CDCl3, J = Hz) 8.56 (s, 2H), 7.84 (dd, 18.6 Hz, 8.4 Hz, 4H), 6.63 (dd, 19.2 Hz, 7.2 Hz, 4H)
HR-MS: calc. 498.0655, found 498.0666
【実施例2】
【0031】
[化合物26=グラフェンナノリボン前駆体26の作製=プロセスf]
化合物25(50 mg, 0.10 mmol)の酢酸(30 ml)溶液に臭素(0.1 ml)を滴下し、90℃で4時間加熱した。室温まで冷却後、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止し、生じた白色沈殿をろ過により回収した。得られた混合物をシリカカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)により精製し、白色の目的化合物26(65 mg, 0.10 mmol)として定量的に得た。
NMRおよびマススペクトルの結果を以下に示す。
1H NMR (600 MHz, ppm, CDCl3, J = Hz) 8.45 (dd, 19.2 Hz, 7.8 Hz, 4H), 6.66 (dd, 19.2 Hz, 7.8 Hz, 4H)
HR-MS: calc. 655.8847, found 655.8819
【実施例3】
【0032】
実施例3は、図3の記号28で表されるグラフェンナノリボン前駆体を作製したものである。
[化合物27の生成=プロセスg]
9-ブロモアントラセン(925 mg, 3.6 mmol)とTMEDA(tetramethylethylenediamine、2.4 ml, 16.1 mmol)のTHF(tetrahydrofuran、120 ml)溶液を-50℃に冷却後、1.6 M n-BuLiヘキサン溶液(2.4 ml)を窒素雰囲気下で滴下した。その後、-50℃で4時間撹拌後、化合物22(257 mg, 0.90 mmol)のTHF(40 ml)懸濁液を上記の混合溶液に加えた。3時間かけてゆっくりと室温まで昇温し、室温で10時間撹拌した。次に、エバポレーターで混合溶液を濃縮後、ヨウ化ナトリウム(810 mg, 5.4 mmol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(834 mg, 7.9 mmol)、酢酸(100 ml)を加え2.5時間加熱還流した。室温に冷却後、エバポレーターを用いて濃縮し、クロロホルム/メタノールで再結晶化を行うことで、目的化合物27(269 mg, 0.45 mmol)を収率50%で黄色結晶として得た。
NMRおよびマススペクトルの結果を以下に示す。
1H NMR (600 MHz, ppm, CDCl3, J = Hz) 8.80 (s, 2H), 8.25 (d, 8.4 Hz, 4H), 7.58-7.56 (m, 4H), 7.39-7.37 (m, 4H), 7.24 (d, 9.0 Hz, 4H), 6.86 (d, 10.2 Hz, 4H)
HR-MS: calc. 602.1652, found 602.1647
【実施例3】
【0033】
[化合物28=グラフェンナノリボン前駆体28の作製=プロセスh]
300 ml2口丸底フラスコに、窒素雰囲気下で化合物27(10 mg, 0.017 mmol)、NBS(6.2 mg, 0.035 mmol)、クロロホルム(10 ml)、および、アセトニトリル(20 ml)を加え、10時間加熱還流した。その後、NBS(10 mg)を加え、さらに7時間加熱還流した。室温に冷却後、亜硫酸水素ナトリウムで反応を停止し、クロロホルムで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた混合物をシリカカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/クロロホルム = 1/6)により精製して、白色の目的化合物28(5.4 mg, 0.0071 mmol)を収率43%で得た。
NMRおよびマススペクトルの結果を以下に示す。
1H NMR (600 MHz, ppm, CDCl3, J = Hz) 8.81 (d, 9.0 Hz, 4H), 7.72-7.69 (m, 4H), 7.42-7.40 (m, 4H), 7.24 (d, 9 Hz, 4H), 6.85 (t, 9.6 Hz, 4H)
HR-MS: calc. 757.9862, found 757.9861
【実施例3】
【0034】
以上のように、出発物質であるフタル酸無水物及びベンゼンに予めフッ素置換基を導入しておき、本発明に係る方法で合成を進めてゆくことにより、様々な形態のフッ素エッジ修飾を有するグラフェンナノリボン前駆体を作製することができる。これらの各種グラフェンナノリボン前駆体を組み合わせることにより、図4(a)~(d)に示すように、最終的に作製されるグラフェンナノリボンのエッジにおけるフッ素修飾を任意に制御することができ、様々なバンドギャップやPN極性などの物性を、自由に制御できることが期待される。
【実施例3】
【0035】
図5に示すように、エッジ部分を様々な置換基(□)で修飾した場合の、グラフェンナノリボンの半導体としてのバンドギャップエネルギーを計算した結果を図6に示す(非特許文献5)。従来の水素(-H)基のバンドギャップエネルギーが1.5~2.0 eV程度であるのに対し、全エッジをフッ素で置換した場合のエネルギーは1~1.5 eVとなっており、半導体特性を変調できることを示唆している。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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