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明細書 :一次樹洞営巣鳥類用の人工巣

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-055688 (P2017-055688A)
公開日 平成29年3月23日(2017.3.23)
発明の名称または考案の名称 一次樹洞営巣鳥類用の人工巣
国際特許分類 A01K  31/14        (2006.01)
FI A01K 31/14 ZBP
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2015-182097 (P2015-182097)
出願日 平成27年9月15日(2015.9.15)
発明者または考案者 【氏名】高木 昌興
出願人 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100065248、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信太郎
【識別番号】100159385、【弁理士】、【氏名又は名称】甲斐 伸二
【識別番号】100163407、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 裕輔
【識別番号】100166936、【弁理士】、【氏名又は名称】稲本 潔
【識別番号】100174883、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 雅己
審査請求 未請求
テーマコード 2B101
Fターム 2B101AA20
2B101FC01
2B101FC04
2B101FC09
要約 【課題】環境に負荷を与えることなく一次樹洞営巣鳥類、特に、キツツキ類よりも穴を掘る能力の低いカワセミ類の繁殖、誘致に好適な人工巣を提供する。
【解決手段】内部に空洞が形成されるようにその空洞を囲む外殻を備え、前記外殻は、空洞の側部に、天然の木材よりも柔らかくかつ生分解性の材質で形成された巣口穿孔部と空洞の底部から巣口穿孔部の下端へ立ち上がる立ち上がり部とを有し、前記巣口穿孔部は立ち上がり部に比べて、より薄く形成されているか、より柔らかく形成されているか、より薄くかつより柔らかく形成されている一次樹洞営巣鳥類用の人工巣。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に空洞が形成されるようにその空洞を囲む外殻を備え、
前記外殻は、空洞の側部に、天然の木材よりも柔らかくかつ生分解性の材質で形成された巣口穿孔部と空洞の底部から巣口穿孔部の下端へ立ち上がる立ち上がり部とを有し、
前記巣口穿孔部は立ち上がり部に比べて、より薄く形成されているか、より柔らかく形成されているか、より薄くかつより柔らかく形成されている一次樹洞営巣鳥類用の人工巣。
【請求項2】
前記立ち上がり部は、巣口穿孔部との間に厚さの違いによる段差を有する請求項1に記載の人工巣。
【請求項3】
前記立ち上がり部は、空洞の底部から巣口穿孔部下端に向けて空洞の内壁が上方に傾斜している請求項1に記載の人工巣。
【請求項4】
前記巣口穿孔部が、コルク材、パルプモールド材、段ボール材または生分解性樹脂の何れかの材質で形成されている請求項1~3の何れか一つに記載の人工巣。
【請求項5】
前記外殻は、巣口穿孔部以外の部分が、コルク材、パルプモールド材、段ボール材または生分解性樹脂の何れかの材質で形成されている請求項1~4の何れか一つに記載の人工巣。
【請求項6】
前記外殻は、巣口穿孔部以外の少なくとも一部がコルク材、パルプモールド材、段ボール材または生分解性樹脂の何れか一つから選択される材質であるが、前記巣口穿孔部と異なる材質で形成されている請求項1~5の何れか一つに記載の人工巣。
【請求項7】
前記外殻は、空洞の底部と外部とを連通させる水抜き穴をさらに備える請求項1~6の何れか一つに記載の人工巣。
【請求項8】
前記一次樹洞営巣鳥類が、カワセミ類である請求項1~7の何れか一つに記載の人工巣。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、一次樹洞営巣鳥類用の人工巣に関し、一次樹洞営巣鳥類の中でもキツツキ類に比べると穴を掘る力が弱く巧緻性が低いカワセミ類であってもその繁殖および誘致に適した人工巣に関する。
【背景技術】
【0002】
人工巣は、鳥類(主として野鳥)に繁殖場所を提供して繁殖を促すことを目的とし、人間が作って自然界に設置する人工の巣穴である。
一般に鳥類の人工巣としては、箱に丸や四角の穴が開いた巣箱がよく知られている。しかし、穴が開いた巣箱による繁殖誘致は二次樹洞営巣種と呼ばれる鳥類(以下、二次樹洞営巣鳥類ともいう)に限定される。
二次樹洞営巣鳥類は、一次樹洞営巣鳥類(主に樹木に自ら穴を掘りその樹洞で営巣する鳥類)が開けて使用した後の巣穴(樹洞)や岩の隙間にある穴などで繁殖する。
即ち、自らが作った樹洞で営巣する鳥類を一次樹洞営巣鳥類と呼ぶ。これに対して、自らは樹洞を作らないが樹洞等で営巣する鳥類を二次樹洞営巣鳥類と呼ぶ。
【0003】
一次樹洞営巣鳥類としては、キツツキ類やカワセミ類がよく知られている。たたし、カワセミ類であってもすべての鳥が一次樹洞営巣種とは限らない。カワセミ類の中でよく知られているのはカワセミであるが、カワセミは土手に巣を作る習性があるので一次樹洞営巣種ではない。これに対して、同じカワセミ類に属するアカショウビン、アオショウビン、ヤマショウビン、ナンヨウショウビンなどは一次樹洞営巣種である。
キツツキ類には、アカゲラ、コゲラ、ヤマゲラなどが含まれ、これらは一次樹洞営巣種を代表する鳥類といえる。樹に穴を開ける能力が高く、生木を叩いて穴を開けることができる程強力なくちばしを持っている。これに対してカワセミ類は、キツツキ類よりも樹に穴を掘る力が弱く、また、巧緻性が低い(巣穴を上手に掘って産座を成型する能力が劣る)ために朽ちていない生木には上手く穴を掘れない。
【0004】
キツツキ類用の人工巣箱が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の人工巣箱は入り口の開口部を有し、巣箱内部に接着剤である程度の硬さに固着したおが屑を充填したものである。
また、出入口と底部出入口が設けられたキツツキ類のねぐら用の底無型巣箱が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
これらは、何れも当初から穴が形成されている点で二次樹洞営巣鳥類用の巣箱に近い形態であるともいえる。
【0005】
さらに、天然の丸太において、キツツキ類が自身で出入口を掘れるように出入口無しの壁部を残し、内部をくり抜いて空洞を形成した人工営巣木が提案されている(例えば、特許文献3参照)。これらの人工営巣木は、キツツキ類を対象としているが、前述のようにキツツキ類よりも樹に穴を掘る力が弱く巧緻性が低いカワセミ類は、朽ちていない生木には上手く穴を掘れない。カワセミ類に穴を掘らせるには朽ちかけた木を用いる必要があるが、それを当該地域で調達できるのであれば、自然に存在する朽ちかけた木にカワセミ類が営巣し得るので、わざわざ人工営巣木を設置する必要性は小さいともいえる。一方、朽ちかけた木を他の地域から調達すると、それに付着している虫や菌類などを持ち込むことになる点で好ましくない側面がある。
【0006】
一次樹洞営巣鳥類は自ら掘った穴でないと営巣しない性質があるが、この性質を考慮して一次樹洞営巣鳥類用の巣箱として空洞のない発泡スチロールの筒を設置した事例が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。カワセミ類のアカショウビンが、発泡スチロールの筒に巣穴を掘って営巣したことが報告されている。しかし、発泡スチロールのカスが周囲に撒き散らかされるため、環境負荷の点で問題が指摘されていた。
以上のように、二次樹洞営巣種に適した人工巣はよく知られているが、一次樹洞営巣鳥類、特にキツツキ類よりも穴を掘る力が弱く巧緻性が低いカワセミ類の生態系に適合した人工巣はあまり知られていない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2015-29428号公報
【特許文献2】実開平5-63259号公報
【特許文献3】特開2003-274790号公報
【0008】

【非特許文献1】矢野晴隆、上田恵介 「リュウキュウカショウビンによる発泡スチロール製人工営巣木の利用」 2005年3月26日受理 日本鳥学会誌54(1)p49-52)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、巣穴を掘る一次樹洞営巣鳥類等の個体数及び樹洞の減少によって、そこで営巣する鳥類の保全が問題となっている。
また、都市近郊あるいは整備された森林・里山では、一次樹洞営巣鳥類が巣穴を掘るのに適合した枯れかかった樹木が少なく、生息地として適さなくなり、生態系に大きく影響を与えている。
一次樹洞営巣鳥類が営巣するための適当な樹木がない場所に人工巣を提供することによって、一次樹洞営巣鳥類の営巣や繁殖を可能にできるならば、その場所において一次樹洞営巣鳥類の継続的、安定的な生息を可能とし、その地域の生物多様性保全に寄与できる。
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、環境に負荷を与えることなく一次樹洞営巣鳥類、特に、キツツキ類よりも穴を掘る能力の低いカワセミ類の繁殖、誘致に好適な人工巣を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、一次樹洞営巣鳥類、特にカワセミ類に自ら穴を掘らせて、これら一次樹洞営巣鳥類を人為的に誘致し、繁殖を促すことのできる人工巣について鋭意検討を重ねた結果、この発明に至った。
具体的には、(1)一次樹洞営巣鳥類、特にカワセミ類の生態に合わせた硬さ等を有する材料、寸法、形状について検討し、(2)一次樹洞営巣鳥類が穴を掘り易い部位を形成することによって一次樹洞営巣鳥類の営巣を促すようにし、かつ(3)所定の領域に入口が形成され易いようにして人工巣内の空洞と入り口とが孵卵に適した底部形状となるようにしてこの発明による一次樹洞営巣鳥類が容易に営巣できる人工巣を得た。
この発明は、内部に空洞が形成されるようにその空洞を囲む外殻を備え、前記外殻は、空洞の側部に、天然の木材よりも柔らかくかつ生分解性の材質で形成された巣口穿孔部と空洞の底部から巣口穿孔部の下端へ立ち上がる立ち上がり部とを有し、前記巣口穿孔部は立ち上がり部に比べて、より薄く形成されているか、より柔らかく形成されているか、より薄くかつより柔らかく形成されている一次樹洞営巣鳥類用の人工巣を提供する。
【発明の効果】
【0011】
この発明による一次樹洞営巣鳥類用の人工巣は、天然の木材よりも柔らかくかつ生分解性の材質で形成された巣口穿孔部と空洞の底部から巣口穿孔部の下端へ立ち上がる立ち上がり部とを有するので、環境に負荷を与えることなく、かつ、キツツキ類よりも穴を掘る能力の低いカワセミ類であっても巣口が掘りやすく、繁殖、誘致に好適な一次樹洞営巣鳥類用の人工巣を提供できる。しかも、巣穴となる空洞の底部から立ち上がる立ち上がり部を有するので、卵や雛が巣口から落下して繁殖が失敗することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明による人工巣の一態様を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す人工巣の正面図、平面図および右側面図である。(実施の形態1)
【図3】図1に示す人工巣が組立てられて樹の幹に設置された使用状態を示す斜視図である。
【図4】この発明による人工巣の、図2と異なる態様を示す正面図、平面図および右側面図である。(実施の形態2)
【図5】この発明による人工巣の、図2および図4と異なる態様を示す正面図、平面図および右側面図である。(実施の形態3)
【図6】この発明による人工巣の、図2および図4~図5と異なる態様を示す正面図、平面図および右側面図である。(実施の形態4)
【図7】この発明による人工巣の、図2および図4~図6と異なる態様を示す正面図、平面図および右側面図である。(実施の形態5)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。

【0014】
(実施の形態1)
図1は、この発明による人工巣の一態様を示す分解斜視図である。図2は、図1に示す人工巣の正面図、平面図および右側面図である。
図1および図2に示すように、人工巣10は、巣口穿孔用部材11aと基材11bとで構成される。巣口穿孔用部材11aと基材11bとは、外殻となる部材である。そのうち巣口穿孔用部材11aは、巣口穿孔部15が形成される部材である。いずれも直方体状の形状を有しており、互いの大きさが等しい。図1で、基材11bに対向する側の巣口穿孔用部材11aの面(接触面11ac)の中央部に凹部13aが形成されている。また、巣口穿孔用部材11aに対向する側の基材11bの面(接触面11bc)の中央部に凹部13bが形成されている。凹部13aおよび13bには、それぞれの下面と外部とを貫通する3つの水抜き穴14aおよび14bがそれぞれ形成されている。なお、凹部13aおよび13bの形状が分かり易いように隠れている部分を鎖線で示している。
接触面11acと接触面11bcとが対向して接触するように巣口穿孔用部材11aと基材11bとを重ね合わせると、その内部で凹部13aと凹部13bとが連なって1つの空洞13ができる。この空洞がアカショウビン等の一次樹洞営巣鳥類の巣穴になるべき部分である。人口巣10が組み立てられた状態で、空洞13は小さな水抜き穴14aおよび14bを除いて外部と連通していない。即ち、一次樹洞営巣鳥類が出入りする巣口が形成されていない。
巣口穿孔用部材11aと基材11bとの結合は、例えば膠などの接着剤を用いて接着してもよいし、シュロ縄等の縄紐や針金等で結束して重ね合わせしてもよい。熱可塑性の材質からなる部材であれは融着によって接合してもよい。
図2に示すように、凹部13aの接触面11acからの深さは上部と下部とで異なっており、2段になっている。言い換えると、凹部13aの底から外側の表面に至る側壁の厚さは、2段になっている。凹部13aの上の部分において側壁の厚さはThである。図2で、側壁の厚さがThの領域を巣口穿孔部15で示している。一方、凹部13aの下の部分において側壁の厚さはThよりさらにDrだけ分厚い。図2で、側壁の厚さが(Th+Dr)の領域を立ち上がり部17で示している。立ち上がり部17と巣口穿孔部15との間には側壁の厚さの違いによる段差が形成されている。

【0015】
図3は、図1に示す人工巣10が組立てられ、樹幹20に設置された使用状態を示す斜視図である。空洞13は外から視認できないが、その位置と形状が分かり易いように鎖線で示している。図3に示すように、人工巣10は、基材11bの側が幹に取付けられ、巣口穿孔用部材11aに形成された巣口穿孔部15が露出した状態で取付けられる。人工巣10の取り付けには、例えばシュロ縄等の縄紐を用いることができる。基材11bに縄紐を通す穴を形成してもよいが、そのような特段の形状を設けずに直方体状の人工巣10の外側と樹幹20とを縄紐で巻き回して取付けてもよい。ただし、設置に際して縄紐が巣口穿孔部15を塞がないようにする。
一次樹洞営巣鳥類は、くちばしで樹の外側をたたき、内部が腐朽した箇所を探してそこに穴を掘り営巣する習性がある。図3のようにして樹幹20に取付けられた人工巣10に一次樹洞営巣鳥類が飛来して空洞13を覆う巣口穿孔部15をたたくと、内部が腐朽した樹の感触と合致するのでその箇所に穴を掘って巣口を作り易い。
そのようにして、巣口が作られて空洞13内に卵が産み落とされた場合、巣口穿孔部15の下方に立ち上がり部17があるので、卵や雛が巣口から人工巣の外に転落するのを防ぐことができる。さらに、空洞13の下面(底部)に6つの水抜き穴が設けられており、豪雨などで巣穴となる空洞13に水が浸入しても底部に水が溜まることがない。
人工巣10の大きさ、特に空洞13の大きさは、自然の樹木や樹木に作られる巣の大きさに適合する範囲が好ましい。図2では、人工巣10の幅をWo、高さをHo、奥行きをDoで示している。また、空洞13の幅をWi、高さをHi、立ち上がり部17までの奥行きをDi、立ち上がり部17と巣口穿孔部15との奥行きの差をDr、立ち上がり部の高さをHr、巣口穿孔部の厚さをThで表している。

【0016】
一例では、Woが30センチメートル(cm)、Hoが30cm、Doが21cm、Wiが10cm、Hiが10cm、Diが10cm、Drが2cm、Hrが3cm、Thが3.5cmである。また、幅方向および高さ方向において、空洞13は、人工巣10の略中央にある。
空洞の大きさは対象とする鳥の大きさによって変わる。また、人工巣の大きさは部材の価格、質量、耐久性などによって種々の値をとる。
人工巣が、とり得る大きさの範囲については、WoおよびHoは30~50cm、Doは20~40cm、Wi,HiおよびDiは15~31cm、Drは1~5cm、Hrは2~10cm、Thは1~10cmの範囲である。
それらの範囲の中でより好ましくは、WoおよびHoは30~40cm、Doは20~35cm、Wi,HiおよびDiは15~25cm、Drは2~4cm、Hrは2~5cm、Thは3~6cmの範囲である。
さらに好ましくは、WoおよびHoは30~35cm、Doは25~35cm、Wi,HiおよびDiは20~25cm、Drは2~3cm、Hrは3~4cm、Thは4~5cmの範囲である。
また、水抜き穴は、卵や雛が穴に陥ることのないように、例えば5mm以下の直径が好ましい。

【0017】
人工巣の材質については、キツツキ類よりも樹に穴を掘る力が弱く巧緻性が低いカワセミ類であっても巣口穿孔部15に穴が掘れるように適度な硬さの材質が好ましい。朽ちていない生木に上手く穴を掘れないカワセミ類を考慮すると、天然の木材よりも柔らかい材質が好ましい。さらに、穴を掘るときに生じる欠片が落下、飛散しても樹林の自然環境を害さない材質(生分解性を有する素材)が好ましい。具体的には、コルク材が適用できる。コルク材の他にも、古紙などの紙を水に溶かしたものを抄き上げて乾燥させたパルプモールド材、その他に、例えば段ボール材や生分解性樹脂が適用できる。好ましい生分解性樹脂としては、硬さの観点からは発泡樹脂が挙げられるがこれに限らない。また、環境負荷の観点からはトウモロコシ等の植物、木質廃棄物、生ゴミに由来するものが挙げられるがこれに限らない。なお、パルプモールド材や段ボール材を用いる場合は、外側の表面に天然樹脂由来のワニスや動物由来のニカワ等を塗って防水処理を施すことが好ましい。
また、部材に応じて異なる材質を用いてもよい。例えば、巣口穿孔部15を有する巣口穿孔用部材11aは、対象の鳥類が巣口を掘りやすい柔らかめの材質を選択すればよい。一方、基材11bについては耐久性や経済性の観点から巣口穿孔用部材11aと異なる材質を用いてもよい。ただし、特に空洞の底部は、カワセミ類にとって産座や巣穴が整形しやすい硬さの材質が好ましい。

【0018】
(実験例)
発明者は、実験補助者らと共に一次樹洞営巣鳥類の生態を観察しかつ人工巣の有用性を実証すべく研究を重ねてきた。観察の対象としたのは、カワセミ類に属するリュウキュウアカショウビンである。リュウキュウアカショウビン(以下、単にアカショウビンという)は、琉球列島に夏鳥として飛来し、主に枯木など柔らかい材に穴を開けて営巣する。
まず、人工巣の材料の可能性を探るために、アカショウビンが毎年飛来する沖縄県宮古島市の山林の9箇所にコルク材の板を設置して、誘致を試みた。このときに用いたコルク材は、大きさ30cm×30cm×21cmの直方体状のものであり内部に空洞を形成していない。コルク材を設置した第1年目には造巣は確認されなかった。
その後発明者らは、コルク材の板の空洞への入り口となるべき部分の表面に窪み(傷)を付けた。ただし、コルク材の内部に空洞は形成していない。窪みは、アカショウビンが空洞を作り易いようにと考えたものである。
その結果、第2年目の6月17日に1箇所で造巣行動を確認した。即ち、コルク材に穴が掘りはじめられた。窪みが効果を奏したものと推察している。
同年6月30日、巣の下に落下して割れた2卵を発見した。

【0019】
その後、穴はさらに掘り進められて巣穴が深くなり、7月13日に再度の産卵を確認し、その後抱卵を確認した。なお、この時期に自然巣の観察も行ったが、観察した自然巣26個において、捕食により失敗した巣で同じ穴を再び利用する例は確認されていない。コルク材の人工巣については、第1回目に産卵した2卵が落下し繁殖に失敗しているが、これは第1回目の産卵時の巣穴が浅く、アカショウビンの出入りの際に卵が落下したものと推察する。捕食による失敗ではないことから同じ穴を再度利用したのかもしれない。
コルク板はアカショウビンに営巣場所を提供できることがわかった。アカショウビンがコルク板を造巣に利用したことは、周囲に営巣に適した枯木が少なかったためと推察している。
一方、発明者らがアカショウビンの自然巣を観察したところ、アカショウビンはくちばしで樹木を叩いて内部が空洞の枯木を探し、その箇所に穴を掘って巣を造ることが確認された。樹木を叩いたときの反応を知覚しているようである。今回の実験で用いたコルク材は中空のものでなかったが、自然巣の観察結果を考慮すると、コルク材の内部に予め空洞を形成しておくことによって、アカショウビンの造巣をより促進することができるであろうと考える。
さらに、安定した産座を提供し、卵や雛が巣口から落下しにくい形状で空洞を形成しておけば、繁殖の失敗を防止することができる。
そのためには、巣口を掘る場所が定まるようにしておくことが大切である。

【0020】
この実施形態によれば、人工巣は、中心部にアカショウビンの産座となるべき空洞を予め形成しているので、安定した産座を提供することができる。さらに、樹木とは反対側の空洞の壁、即ち巣口穿孔用部材11a側の壁には、アカショウビンが内部の空洞を知覚し易くかつ穴を堀り易い厚さの巣口穿孔部15が形成されている。さらに巣口穿孔部15の下方に巣口穿孔部15よりも厚い立ち上がり部17が形成されている。よって、卵や雛が巣から外へ落下しにくい形状になっている。
また、枯木に巣をつくる種では巣内の状況を把握することが通常は難しく、自然環境保全ためのモニタリングや科学研究を妨げている。警戒心が強い種では、繁殖生態の調査自体が繁殖に悪影響を与えかねず、観察に際して細心の注意が必要になる。その点、加工が容易なコルク材の人工巣を用いればCCDカメラ等の機器を容易に設置できて巣内のモニタリングが容易になる。
以上のように、コルク材を用いた人工巣は、一次樹洞営巣鳥類の営巣に適しておりかつ環境負荷も小さい。生態系のエンジニアとも呼ばれる一次樹洞営巣鳥類の繁殖を促進することにより、二次樹洞営巣鳥類や哺乳類等が誘致されていく。人工巣は、人為が及び、自然度が低い地域の生物多様性の向上に寄与できる可能性がある。
なお、この発明による人工巣は、リュウキュウアカショウビン以外のカワセミ類の一次樹洞営巣鳥類、例えばアオショウビン、ヤマショウビン、ナンヨウショウビンにも適用可能である。さらに、カワセミ類以外の一次樹洞営巣鳥類、例えばキツツキ類にも適用可能である。

【0021】
(実施の形態2)
実施の形態1は、この発明による人工巣の一態様を示すが、この発明の本質は異なる態様により実現することもできる。以下に幾つかの異なる態様を示す。なお、図1~図3に示す実施の形態1と異なる複数の特徴点を一つの図(態様)で示したものがあるが、各特徴点はそれぞれ個別に適用でき、個別に他の特徴点と組み合わせることができる。なお、図1~図3と対応する箇所、対応する寸法には同一の符号を付している。

【0022】
図4は、この発明による人工巣の、実施の形態1と異なる態様を示す正面図、平面図および右側面図である。
実施の形態1に係る図2と比べると、人工巣10の外殻の外観形状が異なり稜がやや丸みを帯びている。このように、人工巣の外観形状は図1の直方体状に限るものでなく、図4のように稜が丸みを帯びた形状でもよいし、それ以外の形状(例えば、三角柱状、球状、楕円体状など)であってもよい。
さらに、図2と比べて、空洞13の形状が異なり、略円筒状である。このように、空洞13の形状は図1の直方体状に限らず、図4の円筒状や例えば多角柱状、球状、楕円体状など他の形状であってもよい。
また、図4に示す態様は、図2と比べて立ち上がり部17が巣口穿孔部15の下方だけでなく、側方や上方にもある。これによって、人工巣10に天地がなくなり、取付けの際に天地を気にする必要がなくなる。このように、立ち上がり部17は、少なくとも巣口穿孔部15の下方にあればよく、その他の箇所に形成されてもよい。
さらにまた、図2と比べて巣口穿孔用部材11aと基材11bの奥行き方向の寸法が異なってもよい。図4において、巣口穿孔用部材11aの接合面の一部が空洞13の立ち上がり部17の内壁を兼ねている。巣口穿孔用部材11aの凹部13aおよび基材11bの凹部13bは、何れも円柱状に部材を削るだけで形成でき、図2に示す態様に比べて凹部を形成する際の加工が単純になる。このように、巣口穿孔用部材11aと基材11bとの分割は、種々の態様があり得る。
図4で、水抜き穴14は、空洞13の四方の内壁にそれぞれ4個ずつ設けられており、合計で16個ある。水抜き穴14を四方に設けているので、いずれの方向を底にして樹に取り付けられても空洞13内に水が溜まることがない。なお、人口巣10が傾いて取り付けられる場合を考慮すると、四方に限らずより多くの方向に水抜き穴14を設けてもよい。

【0023】
(実施の形態3)
図5は、この発明による人工巣の、実施の形態1および2と異なる態様を示す正面図、平面図および右側面図である。
実施の形態1に係る図2と比べて、空洞13の内壁の立ち上がり部17の内壁の形状が異なる。立ち上がり部17と巣口穿孔部15との間に段差がなく、内壁が傾斜して巣口穿孔部と異なる壁厚になっている。立ち上がり部17の壁は、上方へいくに従って徐々に薄くなり、巣口穿孔部15に連なる。このように、立ち上がり部17の形状は図2のような段差に限らず、図5のように傾斜していてもよい。あるいは多段の段差や曲面状に傾斜した形状であってもよい。

【0024】
また、図5に示す態様は、図2や図4と比べて巣口穿孔用部材11aと基材11bの奥行き方向の寸法比が異なっている。図5に示す態様は、基材11bの接合面の一部が空洞13の巣口穿孔部15に対向する内壁を兼ねている。この態様によれば、基材11bのみに凹部13bを形成するだけでよく、巣口穿孔用部材11aに凹部を形成する必要がない。よって、図2に示す態様に比べて凹部を形成する加工が単純になる。また、巣口穿孔部15と空洞13の底部を同じ部材、同じ材質にできる。

【0025】
(実施の形態4)
図6は、この発明による人工巣の、実施の形態1~3と異なる態様を示す正面図、平面図および右側面図である。
外観および空洞13の形状が類似する実施の形態2に係る図4と比べて、空洞13の内壁の立ち上がり部17の内壁の形状が異なる。立ち上がり部17と巣口穿孔部15との間に段差がなく、空洞13の外周から曲線を描いて巣口穿孔部15に連なる。このように、図6は、立ち上がり部17の内壁の形状が曲面状の一例である。
また、図4と比べて、巣口穿孔用部材11aが巣口穿孔部15および立ち上がり部17とその周囲の部分のみであり他の部分は基材11bであって、巣口穿孔用部材11aが基材11bに嵌め込まれる形状になっている。
そもそも、人工巣10を巣口穿孔用部材11aと基材11bの複数の部材から構成するのは、閉塞された空洞13を内部に形成するためである。図2および図4~図5に示す態様のように一つの平面で接合する必然性はない。
この態様によれば、巣口穿孔用部材11aが基材11bに嵌め込まれるので、2つの部材を容易に固定することができる。また、固定された2つの部材が外れにくく、堅牢な人工巣が実現できる。

【0026】
さらに、人工巣10の全体に占める巣口穿孔用部材11aの体積が小さいので、例えば一次樹洞営巣鳥類にとって巣口の造り易さを考慮して高価な材料を用いる一方、基材11bに安価な材料を選択して人工巣10のトータルコストを抑制できる。
あるいは、巣口形性用部材11aに対して基材11bに耐久性のある材料を選択して人工巣10の耐用年数を確保し、巣口穿孔用部材11aのみを毎年交換し一次樹洞営巣鳥類の人工巣として繰り返し使用することができる。自然巣となる樹木がある程度存在する環境下でこの人工巣を使用することで、一次樹洞営巣鳥類の繁殖を促進し、繁殖した一次樹洞営巣鳥類によって自然巣が造られて二次樹洞営巣鳥類や哺乳類を誘導するといった目的に人工巣を用いることができる。

【0027】
(実施の形態5)
さらに異なる態様として、人工巣10は、3つ以上の部材から構成されてもよい。
図7は、この発明による人工巣の、実施の形態1~4と異なる態様を示す正面図、平面図および右側面図である。
図7に示す人工巣10は、外観形状および空洞13の形状が図2と同一であるが、人工巣10は巣口穿孔用部材11a、基材11bおよび両者に挟まれた枠部材11cの3つの部材で構成される。枠部材11cには、中央部分に断面が略正方形状の貫通穴が形成されている。

【0028】
図7において、巣口穿孔用部材11aの接合面の一部が空洞13の巣口穿孔部15および立ち上がり部17の内壁を兼ねている。さらに、基材11bの接合面の一部が空洞13の巣口穿孔部15に対向する内壁を兼ねている。そして、枠部材11cに形成された貫通穴の内壁が、空洞13の他の内壁に対応している。この態様によれば、枠部材11cに貫通穴を形成し、巣口穿孔用部材11aに凹部13aを形成するだけでよく、単純な加工で空洞13が形成できる。
この態様のように、人工巣を構成する部材の数は、2つに限らない。
また、巣口穿孔用部材11aは、空洞13の内壁となる側が平面であって、反対側に凹部19が形成されている。そして、凹部19の領域が巣口穿孔部15になっている。
上述の実験例で、コルク材の表面に窪みを付けた後にアカショウビンの造巣行動が確認されたことを述べた。この態様によれば、その窪みに対応する凹部19が人口巣10の表面に形成されている。そして、凹部19の領域が巣口穿孔部15になっている。よって、凹部19に巣口が造られやすいと考える。この態様のように、人口巣10の表面に窪み(凹部)を形成することによって巣口穿孔部を形成してもよい。

【0029】
図示しないがさらなる変形例として、図7に示す凹部を有する巣口穿孔用部材11aに代えて、厚さThの巣口穿孔用部材、厚さDrの第二枠部材とを用いてもよい。その場合、巣口穿孔用部材は平板で、第二枠部材は巣口穿孔部15に対応する貫通穴が形成された平板でよい。
この変形例のように、立ち上がり部17となる部分の少なくとも一部が、巣口穿孔用部材11a以外の部材で構成されてもよい。
さらに、巣口穿孔用部材と第二枠部材とが異なる材質であってもよい。すなわち、巣口穿孔部15と立ち上がり部17の材質は、少なくともその一部が異なっていてもよい。立ち上がり部17の部分には、巣口となる穴が掘られることが予定されていないからである。立ち上がり部17に巣口穿孔用部材よりも耐久性のある部材や軽量な部材を用いることができる。
あるいはまた、図7に示す凹部を有する一体の巣口穿孔用部材11aに代えて、巣口穿孔部15の部分と、その周囲の外枠部分(立ち上がり部17を含む)とを別の部材で形成してもよい。この態様によれば、巣口穿孔部15の部材を外枠の部材に嵌め込むようにして図7の巣口穿孔用部材11aに相当する部分が提供される。

【0030】
(その他の実施形態)
また、例えば、図2で、基材11bに巣口穿孔用部材11aと同一の部材を用いてもよい。例えば巣口形性部材11aの作製に金型を用いる場合、基材11bに同一形状の部材を用いることによって金型を1つにできる。
この態様のように、巣口穿孔部15および立ち上がり部17が、空洞13の一側面のみに形成される必要はない。
さらに、人口巣10の外殻は、複数の部材を接合して形成されるのでなく、一体のものとして形成されてもよい。

【0031】
以上に述べたように、
(i)この発明による一次樹洞営巣鳥類用の人工巣は、内部に空洞が形成されるようにその空洞を囲む外殻を備え、前記外殻は、空洞の側部に、天然の木材よりも柔らかくかつ生分解性の材質で形成された巣口穿孔部と空洞の底部から巣口穿孔部の下端へ立ち上がる立ち上がり部とを有し、前記巣口穿孔部は立ち上がり部に比べて、より薄く形成されているか、より柔らかく形成されているか、より薄くかつより柔らかく形成されていることを特徴とする。
この発明において、一次樹洞営巣鳥類は、樹木に自ら穴を掘りその樹洞で営巣する習性を持った鳥類である。その具体的な態様は、例えば、アカショウビン、アオショウビン、ヤマショウビン、ナンヨウショウビンなどのカワセミ類、さらに、アカゲラ、コゲラ、ヤマゲラなどのキツツキ類である。前述の実施形態におけるリュウキュウアカショウビンは、カワセミ類の一次樹洞営巣鳥類に相当する。

【0032】
また、空洞を囲むとは、一次樹洞営巣鳥類が内部の空洞と外との間を出入りできないように空洞が外と隔てられていることを意味し、水抜き穴のような小さな穴があってもよい。
巣口穿孔部は、一次樹洞営巣鳥類によって穴が掘られ巣口が造られるべき部分であり、巣口が掘られる際に屑が落下し周囲に飛散するので特に自然環境に負荷を与えない材質が選択される。また、穴を掘る力がキツツキ類に比べて弱いカワセミ類であっても巣口が掘れる天然の木材よりも柔らかい材質であって、かつ微生物によって分解されて無機物や資源になる生分解性の材質が選択される。具体的に好適な材質の例としてはコルク材がある。コルク材の他に、パルプモールド材、段ボール材または生分解性樹脂等の材質であってもよい。
コルク材は、コルク樫の表皮下のコルク組織をはぎとったものである。パルプモールド材は、古紙などの紙を水に溶かしたものを抄き上げて乾燥させたものである。段ボール材は、波板状のシートを含んだ紙のシートを多層に張り合わせたものである。生分解性樹脂は、微生物によって分解、消費されて自然界の物質(水、二酸化炭素、堆肥等)になる樹脂である。例えば、でんぷんを原料とする生分解性樹脂がよく知られているが、原料はでんぷんに限らない。
さらにまた、空洞の底部とは、空洞の底面をいうが、空洞が平らな底面を有していない場合、卵が置かれたり、雛や親鳥が座ったり歩いたりするような底の領域をいう。

【0033】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)前記立ち上がり部は、巣口穿孔部との間に厚さの違いによる段差を有してもよい。
このようにすれば、巣口穿孔部より厚い立ち上がり部には巣口の穴が掘られにくい。一次樹洞営巣鳥類によって巣口が形成される巣口穿孔部の下にその立ち上がり部があるので、産座となる空洞の底部に置かれた卵や雛が巣口から外へ落下しにくい形状が実現される。そして、落下による繁殖の失敗が防止される。

【0034】
(iii)前記立ち上がり部は、空洞の底部から巣口穿孔部下端に向けて空洞の内壁が上方に傾斜していてもよい。
このようにすれば、産座となる空洞の底部から巣口が形成される巣口穿孔部にかけて空洞の内壁が上方に傾斜した立ち上がり部は巣口穿孔部より側壁が厚くなり、立ち上がり部に巣口の穴が掘られにくい。巣口穿孔部の下にその立ち上がり部があるので、産座に置かれた卵や雛が巣から外へ落下しにくい形状が実現され、落下による繁殖の失敗が防止される。

【0035】
(iv)前記巣口穿孔部が、コルク材、パルプモールド材、段ボール材または生分解性樹脂の何れかの材質で形成されていてもよい。
このような材質を用いることによって、天然の木材よりも柔らかくかつ生分解性の材質で形成された巣口穿孔部が実現できる。
(v)前記外殻は、巣口穿孔部以外の部分が、コルク材、パルプモールド材、段ボール材または生分解性樹脂の何れかの材質を用いて形成されていてもよい。
このようにすれば、巣口穿孔部に限らず、外殻の他の部分についても環境に負荷を与えることがない。また、一次樹洞営巣鳥類の中でもキツツキ類に比べて穴を掘る力が弱く巧緻性が低いカワセミ類が対象であっても空洞内の産座や巣穴が整形しやすい。

【0036】
(vi)前記外殻は、巣口穿孔部以外の少なくとも一部が、コルク材、パルプモールド材、段ボール材または生分解性樹脂の何れか一つから選択される材質であるが、前記巣口穿孔用部材と異なる材質で形成されていてもよい。
この態様によれば、部分に応じて材質を使い分けることができる。例えば巣口穿孔部は、一次樹洞営巣鳥類にとって穿孔のし易さを優先して材質を選択することができる。一方で他の部分は、それよりも経済性、耐久性あるいは重量の観点からより好適な材料を選択することができる。

【0037】
(vii)前記外殻は、空洞の底部と外部とを連通させる水抜き穴をさらに備えていてもよい。
この態様によれば、豪雨などで巣穴となる空洞に水が浸入した場合でも、巣口の下端より下方の空洞底部に水が溜まることがなく、水抜き穴から水が排水される。よって、産座となる空洞底部が水没や腐敗から守られる。
(viii)前記一次樹洞営巣鳥類が、カワセミ類であってもよい。
一次樹洞営巣鳥類の中でもキツツキ類に比べて穴を掘る力が弱いカワセミ類に適した硬さの巣口穿孔部を形成し、カワセミ類に好適な巣口穿孔部の厚さを選択することで、カワセミ類の繁殖および誘致を促進できる。
この発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明の人工巣は、キツツキ類に比べて穴を掘る力が弱く巧緻性の低いカワセミ類の繁殖および誘致にも適用できるので、広範な一次樹洞営巣鳥類の繁殖および誘致に用いることができる。
一次樹洞営巣鳥類の巣穴は、その後、シジュウカラ、ムクドリなど樹洞を利用する二次樹洞営巣鳥類に利用される。さらに、リス、ヤマネ、モモンガ、ムササビなどのほ乳類や樹洞性コウモリ類にも利用されることもある。そのため、一次樹洞営巣鳥類が生息し、営巣することは、その地域の生態系や生物多様性保全の上で、重要な意義を持っている。
この発明による人口巣は、開発により失われ、もしくは失われつつある生態系の保全に用いることができる。また、開発が原因でなくとも、ある地域の自然環境の質・量を向上させることがある。例えば、ある地域の開発を行う際に、その地域の生態や自然環境への影響が不可避な場合に他の地域の自然環境の質・量を向上させることでそれを補償するミティゲーション・バンキングがある。その是非は議論があるが、ともかくこのように開発が行われずともある地域の自然環境を向上させる場合があり、その一つの手段としてこの発明による人工巣を用いることができる。
また、自然保護区や植林地への一次樹洞営巣種の誘致が人工的に可能となる。自然保護区の場合は、希少種鳥類の個体数維持に寄与できる。また、植林地では林木に害を与えるカミキリムシなどの昆虫の個体数コントロールに寄与できる。
【符号の説明】
【0039】
10:人工巣、 11a:巣口穿孔用部材、 11b:基材、 11c:枠部材、 11ac,11bc:接触面、 13:空洞、 13a、13b、19:凹部、 14,14a,14b:水抜き穴、 15:巣口穿孔部、 17:立ち上がり部、 20:樹幹
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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