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明細書 :テラヘルツ波帯用の偏光子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-040803 (P2017-040803A)
公開日 平成29年2月23日(2017.2.23)
発明の名称または考案の名称 テラヘルツ波帯用の偏光子
国際特許分類 G02B   5/30        (2006.01)
FI G02B 5/30
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2015-162773 (P2015-162773)
出願日 平成27年8月20日(2015.8.20)
発明者または考案者 【氏名】鈴木 健仁
出願人 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100102635、【弁理士】、【氏名又は名称】浅見 保男
【識別番号】100197022、【弁理士】、【氏名又は名称】谷水 浩一
審査請求 未請求
テーマコード 2H149
Fターム 2H149AA22
2H149AB06
2H149BA04
2H149BA17
2H149BA23
要約 【課題】 透過波の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化できるテラヘルツ波帯用の偏光子を提供する。
【解決手段】 金属製とされた細長い矩形状のメタルプレート10a~10dを平行に重なるように配置して偏光子1が形成されている。メタルプレート10a~10dはz-y平面に平行に配置され、z方向が幅方向とされている。偏光子1への入射波Inにおける進行方向k’は、メタルプレート10a~10dの配置されたz-y平面のz軸方向に対して角度θだけ傾斜している。角度θは、偏光子1のブリュースター角θBとされており、テラヘルツ波帯において偏光子1の透過電力の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化することができる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
所定間隔をもって平行に配置した金属製の細長い複数のメタルプレートが入射光の光軸に対して、所定角度傾斜している偏光子であって、
前記メタルプレートが傾斜している前記所定角度が、前記メタルプレートの厚さと前記所定間隔とで決定されるブリュースター角とされていることを特徴とするテラヘルツ波帯用の偏光子。
【請求項2】
両側に支持部が形成され、該支持部の間に所定幅のプレート部が形成されている金属製のグリッド板と、
前記グリッド板の両側の前記支持部の間に挿入される所定の厚さのスペーサとを備え、
前記グリッド板の両側の前記支持部の間に前記スペーサを挿入して、複数の前記グリッド板を積層していくことにより、前記プレート部が所定間隔をもって平行に配置されたグリッド板積層体が構成され、該グリッド板積層体における前記プレート部が、前記グリッド板の厚さと前記スペーサの厚さとで決定されるブリュースター角だけ傾斜して配置されて、該プレート部が入射光の光軸に対してブリュースター角だけ傾斜していることを特徴とするテラヘルツ波帯用の偏光子。
【請求項3】
上基台と、所定角度傾斜して形成された平面状の下面を有する下基台とを、さらに備え、
前記上基台と前記下基台との間に、前記グリッド板積層体が挟持され、前記上基台と前記プレート積層体と前記下基台とが固着手段により固着されており、前記所定角度は、前記プレート部が入射光の光軸に対して前記ブリュースター角だけ傾斜する角度とされていることを特徴とする請求項2に記載のテラヘルツ波帯用の偏光子。
【請求項4】
細長い矩形状の金属薄板が一面のほぼ中央に形成されている矩形状のフィルムからなるフィルム基板と、
平面状の下面が所定角度傾斜した底部と、該底部の上面から立設した複数本の立設柱とを有する基台と、
前記基台の前記立設柱の位置が切り欠かれた前記フィルム基板を複数枚積層することにより、前記金属薄板が所定間隔をもって平行に配置されたフィルム基板積層体と、
平面状の平板部と、該平板部において前記基台の前記立設柱の位置が切り欠かれている押さえ板とを備え、
前記フィルム基板積層体が前記複数本の立設柱により位置合わせされて前記基台に収納され、該フィルム基板積層体の上に前記押さえ板が載置されて、該押さえ板に挿通されたネジが前記基台に螺着されており、前記所定角度は、前記金属薄板の厚さと前記フィルム基板の厚さとで決定されるブリュースター角だけ、前記金属薄板が入射光の光軸に対して傾斜する角度とされていることを特徴とするテラヘルツ波帯用の偏光子。
【請求項5】
所定間隔をもって平行に配置された多数のスリットが貫通して形成され、所定の奥行きを有する直方体状とされた導電性の枠体からなり、前記スリットが入射光の光軸に対して、所定角度傾斜している偏光子であって、
前記スリットが多数形成されることにより、前記スリット間に前記所定角度傾斜した多数のグリッドが形成され、前記傾斜角度が、前記グリッドの厚さと前記所定間隔とで決定されるブリュースター角とされていることを特徴とするテラヘルツ波帯用の偏光子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、テラヘルツ波帯の偏光や検光等に主に用いられる偏光子に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波帯は周波数が0.1~10THz(波長が30μm~3000μm)の電磁波とされており、波長が遠赤外~ミリ波領域とほぼ一致する。テラヘルツ波帯は、「光」と「ミリ波」に挟まれた周波数領域に存在しているため、テラヘルツ電磁波は光と同様に高い空間分解能でものを見分ける能力と、ミリ波と同様の物質を透過する能力を併せ持っている。テラヘルツ波帯はこれまで未開拓電磁波であったが、この周波数帯の電磁波の特徴を生かした時間領域分光、イメージング及びトモグラフィーによる材料のキャラクタリゼーションへの応用などが検討されてきている。テラヘルツ電磁波を用いると、物質透過性と直進性を兼ね備えるためX線に替わる安全かつ革新的なイメージングが可能になったり、数100Gbps級の超高速無線通信を可能とすることができる。
【0003】
従来、主にテラヘルツ波帯の偏光や検光等にはワイヤーグリッドを用いる偏光子が提案されており、このワイヤーグリッドの実現に向けて研究が進められている。
従来の自立型ワイヤーグリッドの一例は、直径5μm~50μm程度の金属細線を、1本づつ設定された間隔で平行に並べ、金属枠に接着剤で貼り付けて作成されている。この自立型ワイヤーグリッドは、適用可能な周波数に限界があり、概ね1.5THz以上の偏光子に適用可能な構造とすると、微細な構造になってしまうことから実現することが困難とされている。
【0004】
テラヘルツ波帯の偏光子に適用可能なワイヤーグリッド用金属板が特許文献1に開示されており、このワイヤーグリッド用金属板101の構成を示す平面図を図14に、ワイヤーグリッド用金属板101の一部の拡大平面図を図15に、図15の一部を更に拡大して示す平面図を図16(a)に、そのA-A線で切断した断面図を図16(b)に示す。
【0005】
ワイヤーグリッド用金属板101は例えば直径20mm~100mm程度のニッケルの円板形状とされ、図14~図16(a)(b)に示すように、縦方向に桟状(細線状)に延びる複数の縦桟部111と、各縦桟部111にほぼ直交する少なくとも1つの横桟部112とを有し、縦桟部111及び横桟部112は、それぞれの両端部が円形又は矩形のフランジ部113につながっている。
縦桟部111の幅(ワイヤー幅)や間隔は、ワイヤーグリッド用金属板101の性能を決定するパラメータであり、適用する光の周波数に応じて定まる。そして、ワイヤーグリッド用金属板101は、1.5THz以上のテラヘルツ波帯にも適用可能な構造とすることができ、縦桟部111の幅Waは1.5μm~50μmとすることができる。
【0006】
ワイヤーグリッド用金属板101においては、横桟部112が、少なくとも所定幅以上であって縦桟部111の幅以上に幅広とされている。これにより、幅Waが1.5μm~50μmの細線構造の縦桟部111を製造可能となる。また、ワイヤーグリッド用金属板101の板厚は、基板からの引き剥がし等における物理的強度や透過光特性の劣化を考慮して定める必要があり、板厚は10μmとされている。
なお、縦桟部111の幅Waはワイヤーグリッド用金属板101の性能を決定するパラメータとして一義的に定まるが、横桟部112の幅Wbや間隔(個数)等は、主にワイヤーグリッド用金属板101の強度を確保する観点から定まる。このため、横桟部112の幅Wbは、縦桟部111の幅以上の幅広に形成されている。具体的には、縦桟部111の幅Waを1.5μm~50μmとし、横桟部112を15μm以上であって縦桟部111より幅広に形成する。
【0007】
図17に、縦桟部111の幅Waが20μm、縦桟部111の間隔が60μm、横桟部112の幅Wbが20μm、横桟部112の間隔が5mm、厚みが50μmとされたワイヤーグリッド用金属板101を使用した場合の特性を示す。図17を参照すると、透過配置の特性線α2および阻止配置の特性線β2の周波数特性から、周波数0.1~1.5THzのテラヘルツ光に対して偏光子として動作していることが分かる。この場合、テラヘルツ光の電場の振幅方向が縦桟部111の延伸方向である縦方向と直交する場合に透過配置となり、テラヘルツ光の電場の振幅方向が縦桟部111の延伸方向である縦方向の場合に阻止配置となる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第5141320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のテラヘルツ波帯の偏光や検光等に用いられるワイヤーグリッド装置の透過配置の特性線α2で示されるように、透過波の周波数特性は上下に細かく変動するリップルが生じるという問題点があった。
そこで、本発明は、透過波の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化できるテラヘルツ波帯用の偏光子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子は、所定間隔をもって平行に配置した金属製の細長い複数のメタルプレートが入射光の光軸に対して、所定角度傾斜している偏光子であって、前記メタルプレートが傾斜している前記所定角度が、前記メタルプレートの厚さと前記所定間隔とで決定されるブリュースター角とされていることを最も主要な特徴としている。
【0011】
また、本発明の他のテラヘルツ波帯用の偏光子は、両側に支持部が形成され、該支持部の間に所定幅のプレート部が形成されている金属製のグリッド板と、前記グリッド板の両側の前記支持部の間に挿入される所定の厚さのスペーサとを備え、前記グリッド板の両側の前記支持部の間に前記スペーサを挿入して、複数の前記グリッド板を積層していくことにより、前記プレート部が所定間隔をもって平行に配置されたグリッド板積層体が構成され、該グリッド板積層体における前記プレート部が、前記グリッド板の厚さと前記スペーサの厚さとで決定されるブリュースター角だけ傾斜して配置されて、該プレート部が入射光の光軸に対してブリュースター角だけ傾斜していることを最も主要な特徴としている。
【0012】
さらに、本発明の他のテラヘルツ波帯用の偏光子は、上基台と、所定角度傾斜して形成された平面状の下面を有する下基台とを、さらに備え、前記上基台と前記下基台との間に、前記グリッド板積層体が挟持され、前記上基台と前記プレート積層体と前記下基台とが固着手段により固着されており、前記所定角度は、前記プレート部が入射光の光軸に対して前記ブリュースター角だけ傾斜する角度とされていてもよい。
【0013】
さらに、本発明の他のテラヘルツ波帯用の偏光子は、細長い矩形状の金属薄板が一面のほぼ中央に形成されている矩形状のフィルムからなるフィルム基板と、平面状の下面が所定角度傾斜した底部と、該底部の上面から立設した複数本の立設柱とを有する基台と、前記基台の前記立設柱の位置が切り欠かれた前記フィルム基板を複数枚積層することにより、前記金属薄板が所定間隔をもって平行に配置されたフィルム基板積層体と、平面状の平板部と、該平板部において前記基台の前記立設柱の位置が切り欠かれている押さえ板とを備え、前記フィルム基板積層体が前記複数本の立設柱により位置合わせされて前記基台に収納され、該フィルム基板積層体の上に前記押さえ板が載置されて、該押さえ板に挿通されたネジが前記基台に螺着されており、前記所定角度は、前記金属薄板の厚さと前記フィルム基板の厚さとで決定されるブリュースター角だけ、前記金属薄板が入射光の光軸に対して傾斜する角度とされていることを最も主要な特徴としている。
【0014】
さらに、本発明の他のテラヘルツ波帯用の偏光子は、所定間隔をもって平行に配置された多数のスリットが貫通して形成され、所定の奥行きを有する直方体状とされた導電性の枠体からなり、前記スリットが入射光の光軸に対して、所定角度傾斜している偏光子であって、前記スリットが多数形成されることにより、前記スリット間に前記所定角度傾斜した多数のグリッドが形成され、前記傾斜角度が、前記グリッドの厚さと前記所定間隔とで決定されるブリュースター角とされていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発明者は、入射波の光軸を傾けて偏光子に入射させると透過波の周波数特性に生じるリップルが少なくなることを見出し、特に傾斜角を偏光子のブリュースター角とすると、透過波の周波数特性に生じるリップルが最も少なくなることを見出した。すなわち、本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子は、所定間隔をもって平行に配置した金属製の細長い複数のメタルプレートの傾斜角度が、メタルプレートの厚さと所定間隔とで決定されるブリュースター角とされていることから、透過波の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化することができる。
また、本発明の他のテラヘルツ波帯用の偏光子は、金属製のグリッド板の両側に支持部が形成され、該支持部の間に所定幅のプレート部が形成され、前記グリッド板の両側の前記支持部の間に所定の厚さのスペーサを挿入して、複数の前記グリッド板を積層してグリッド板積層体を構成し、グリッド板積層体において所定間隔をもって平行に配置された前記プレート部の傾斜角度が、前記グリッド板の厚さと前記スペーサの厚さとで決定されるブリュースター角とされている。このことから、透過波の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化できる偏光子の構成を、簡易に組み立てることができる簡易な構成とすることができる。
また、本発明の他のテラヘルツ波帯用の偏光子は、フィルム基板の一面に細長い矩形状の金属薄板が形成されており、前記フィルム基板を積層してフィルム基板積層体を構成し、フィルム基板積層体において所定間隔をもって平行に配置された前記金属薄板の傾斜角度が、前記フィルム基板の厚さと前記金属薄板の厚さとで決定されるブリュースター角とされている。このことから、透過波の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化できる偏光子の構成を、簡易に組み立てることができる簡易な構成とすることができる。
また、本発明の他のテラヘルツ波帯用の偏光子は、所定間隔をもって平行に配置された多数のスリットが貫通して形成され、所定の奥行きを有する直方体状とされた導電性の枠体からなり、所定間隔をもって平行に配置された多数のスリットの傾斜角度が、前記スリット間に形成されたグリッドの厚さと所定間隔とで決定されるブリュースター角とされている。このことから、透過波の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化できる偏光子の構成を、簡易な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子の各部の寸法の例を示す図表である。
【図3】本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子の入射角度に対する透過電力の等高線図である。
【図4】本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子の透過電力の周波数特性、消光比の周波数特性を示す図である。
【図5】本発明のテラヘルツ波帯用の第1実施例の偏光子の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明のテラヘルツ波帯用の第1実施例の偏光子の構成を示す正面図、一部拡大図、断面図で示す側面図である。
【図7】本発明のテラヘルツ波帯用の第2実施例の偏光子の構成を示す正面図、側面図である。
【図8】本発明のテラヘルツ波帯用の第3実施例の偏光子の構成を示す正面図、側面図である。
【図9】本発明のテラヘルツ波帯用の第3実施例の偏光子におけるグリッド板積層体の構成を示す斜視図、上面図である。
【図10】本発明のテラヘルツ波帯用の第4実施例の偏光子の構成を示す正面図、側面図である。
【図11】本発明のテラヘルツ波帯用の第4実施例の偏光子の構成を示す分解組立図である。
【図12】本発明のテラヘルツ波帯用の第4実施例の偏光子におけるフィルム基板の構成を示す平面図、フィルム基板積層体の構成を示す斜視図である。
【図13】本発明のテラヘルツ波帯用の第4実施例の偏光子の入射角度に対する透過電力の等高線図、透過電力の周波数特性、消光比の周波数特性を示す図である。
【図14】従来のワイヤーグリッド用金属板の構成を示す斜視図である。
【図15】従来のワイヤーグリッド用金属板の構成を示す一部の拡大平面図である。
【図16】従来のワイヤーグリッド用金属板の構成を示す他の一部の拡大平面図である。
【図17】従来のワイヤーグリッド用金属板の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子1の構成を示す斜視図を図1に示す。
本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子1は、図1に示すように金属製とされた細長い矩形状のメタルプレート10a、10b、10c、10dを平行に重なるように配置して形成されている。メタルプレート10a~10dはz-y平面に平行に配置され、z方向が幅方向とされている。本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子1において特徴的な構成は、入射波Inにおける進行方向k’が、メタルプレート10a~10dが配置されたz-y平面のz軸方向に対して角度θだけ傾斜している構成とされている。これは、入射波の光軸をメタルプレート10a~10dが置かれた面から傾けて偏光子1に入射させると、透過波の周波数特性に極力リップルが生じることがなく平坦化されることを本発明の発明者が見出し、特に傾斜角を偏光子1のブリュースター角とすると、透過波の周波数特性が最も平坦化されることを見出したことに基づいている。すなわち、角度θは、偏光子1のブリュースター角θBとされており、ブリュースター角θBは、メタルプレート10a~10dの上面間(下面間)の間隔pとメタルプレート10a~10d間の間隔dとにより決定される。なお、図1に示す例では4枚のメタルプレート10a~10dが重なって構成されているが、実際にはメタルプレート10a~10dの上下に互いに平行に多数のメタルプレートが重なるように配置されている。

【0018】
本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子1の寸法の一例を図2に示すが、メタルプレート10a~10dの幅aが約2.0mm、その厚さtが約20μm、メタルプレート10a~10d間の間隔dが約50μm、メタルプレート10a~10dの上面間(下面間)の間隔pが約70μmとされている。偏光子1のブリュースター角θBは、図2に示す下記(1)式で示され、
θB=cos-1(d/p) (1)
(1)で算出されたブリュースター角θBは、上記寸法の場合は約44.4°と算出される。すなわち、入射光Inをz-y平面のz軸方向に対してブリュースター角θB(約44.4°)だけ傾斜させて入射させる。これにより、入射光Inの電界成分Eがx軸からブリュースター角θBだけ傾斜する。

【0019】
図1に示す偏光子1は波長に対して十分に大きく、y軸方向は無限一様構造とされ、x軸方向は周期構造とされている。x軸方向に周期境界壁を仮想し、メタルプレートの1枚分を抜き出した解析モデルで設計できる。この解析は、有限要素法電磁界シミュレータを用いて解析することができる。後述する図3および図4は、メタルプレートを金(Au)としたモデルの場合の解析結果である。
本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子1の寸法が図2に示す寸法とされ、入射光Inの入射角度(光軸)θが0°~80°とされた際のTMモードの透過電力の等高線図を図3に示す。
図3の横軸は0°~80°の範囲の入射角度θであり、縦軸は0.3THz~2.3THzの周波数とされている。図3を参照すると、入射角度θが約35°ないし約50°の範囲において、約0.3THz~約1.0THzの周波数帯域において約95%以上の透過電力が得られ、約44.4°の入射角度θにおいては約0.3THz~約1.3THzの周波数帯域において約98%以上の透過電力が得られており、入射角度θがブリュースター角(θB=44.4°)付近においてインピーダンス整合が取れていることがわかる。

【0020】
また、本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子1の寸法が図2に示す寸法とされ、偏光子1に入射光Inの入射角度(光軸)θがブリュースター角(θ=44.4°)で入射された時の透過電力の周波数特性を、入射光Inの入射角度(光軸)θが傾斜することなく入射(θ=0°)した場合の透過電力の周波数特性と対比して図4に示すと共に、入射角度(光軸)θが0°の場合の消光比の周波数特性を図4に示す。
図4に示す透過電力の周波数特性を参照すると、入射光Inの入射角度θが0°の時は、0.3THz~2.3THzの全周波数帯域において透過電力の周波数特性にリップルが生じており、周期的に約10%の幅で上下に変動している。これに対して、入射光Inの入射角度θが44.4°(ブリュースター角)の時は、0.3THz~約1.1THzの周波数帯域において透過電力の周波数特性にほぼリップルが生じておらず、約95%~100%の透過電力が得られ、約1.1THz~約2.0THzの周波数帯域ではリップルが生じるが、入射角度θが0°の時よりリップル幅が抑えられている。また、約2.0THzを超えると、入射角度θが0°の時よりリップル幅が大きくなる。このように、入射光Inの入射角度θをブリュースター角とすることにより、テラヘルツ波帯において偏光子1の透過電力の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化することができる。
図4に示す消光比の周波数特性は、入射光Inの入射角度θが0°の場合であり、0.3THzから2.3THzの全周波数帯域でおおむね-50dB以下の消光比が得られている。なお、図2に示す寸法とされた偏光子1のカットオフ周波数は3.0THzとなっている。

【0021】
本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子1の具体的構成である第1実施例の偏光子2の構成を示す斜視図を図5に、その偏光子2の正面図を図6(a)に、その偏光子2のBで示す一部の拡大図を図6(b)に、その偏光子2のA-A断面図で示す側面図を図6(c)に示す。
これらの図に示すように、第1実施例の偏光子2は、所定の奥行きを有する直方体状とされた導電性の枠体2aと、枠体2aの前面から後面まで斜め方向に枠体2aを貫通して多数形成されたスリット2bとから構成されている。枠体2aは金属製等の導電性とされ、枠体2aの奥行きはスリット2bの奥行きがaとされる長さとされる。多数のスリット2bの横方向の長さはl(小文字のエル)とされ、スリット2bは互いに平行に配置されている。スリット2b間の枠体2aの領域によりグリッド2cが形成される。スリット2bの奥行きはa、スリット2bの幅はd、グリッド2cの厚さはtとされている。第1実施例の偏光子2では、枠体2aに多数のスリット2bが形成されることにより、平行配置された多数のグリッド2cが形成されており、このグリッド2cが偏光子1のメタルプレートとして機能するので偏光子として機能するようになる。なお、lはグリッド2cの長さでもあって、偏光子2の開口の寸法ともされている。

【0022】
多数本のスリット2bは、偏光子2の前面がx-y平面に平行に置かれた際に、図6(c)に示すようにz軸方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜して形成されている。すなわち、グリッド2cもz軸方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜して形成されており、ブリュースター角θBは、グリッド2cの厚さtと、グリッド2c間の間隔に相当するスリット2bの幅dとにより決定される。この場合のブリュースター角θBは、下記(2)式で算出できる。
θB=cos-1(d/(d+t)) (2)
ここで、スリット2bの幅dを約50μm、グリッド2cの厚さtを約20μmに形成すると、ブリュースター角θBは、約44.4°となる。第1実施例の偏光子2に入射する入射光の進行方向kはz軸方向となり、スリット2bおよびグリッド2cに対してブリュースター角θBだけ傾斜すると共に、x軸方向となる入射光の電界成分Eも、スリット2bおよびグリッド2cに対してブリュースター角θBだけ傾斜する。
第1実施例の偏光子2においても、入射光の入射角度θをブリュースター角θBとすることにより、テラヘルツ波帯において偏光子2の透過電力の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化できるようになる。なお、スリット2bおよびグリッド2cの寸法は、図2に示す寸法と同様とされるが、この場合、メタルプレートの幅aがスリット2bの奥行きaに相当し、メタルプレートの厚さtがグリッド2cの厚さtに相当し、メタルプレート間の間隔dがスリット2bの幅dに相当する。また、透過特性に極力リップルが生じることなく平坦化できる第1実施例の偏光子2の構成は、図6(a)(b)(c)に示すように簡易な構成となる。

【0023】
本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子1の具体的構成である第2実施例の偏光子3の構成を示す正面図を図7(a)に、その偏光子2のB2で示す一部の拡大図を図7(b)に、その偏光子2のC-C断面図で示す側面図を図7(c)に示す。
これらの図に示すように、第2実施例の偏光子3は、所定の奥行きを有する直方体状とされ、奥に向かって傾斜して立つ導電性の枠体3aと、枠体3aの下面に装着された平板状の支持台3dとから構成されている。枠体3aは金属製等の導電性とされ、枠体3aには、前面から後面まで枠体3aを貫通してスリット3bが多数形成されており、スリット3bは互いに平行に配置されている。スリット3b間の枠体3aの領域によりグリッド3cが形成される。枠体3aの下面は傾斜しており、その傾斜角は、偏光子3がx軸方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜する角度に形成されている。すなわち、y-z面に対する偏光子3の傾斜角は(90°-θB)となる。第2実施例の偏光子3では、枠体3aに多数のスリット3bが形成されることにより、平行配置されたメタルプレートとされる多数のグリッド3cが形成されており、このグリッド3cが偏光子1のメタルプレートとして機能するので偏光子として機能するようになる。なお、第2実施例の偏光子3では、枠体3aの奥行きはa、多数のスリット3bの横方向の長さはl、スリット3bの幅はd、グリッド3cの厚さはtとされている。lはグリッド3cの長さでもあって、偏光子3の開口の寸法ともされている。枠体3aの下面に装着された平板状の支持台3dは、枠体3aの下面が傾斜していることから、偏光子3が傾斜して安定に立つようにする支持台であり、金属製に限るものではない。

【0024】
多数本のスリット3bは、図7(b)に示すようにz軸方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜して形成されている。すなわち、グリッド3cも同様にz軸方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜して形成されている。ブリュースター角θBは、上記(2)式で算出できる。ここで、スリット3bの幅dを約50μm、グリッド3cの厚さtを約20μmに形成すると、ブリュースター角θBは、約44.4°となる。第2実施例の偏光子3に入射する入射光の進行方向kはz軸方向となり、スリット3bおよびグリッド3cは、進行方向kに対してブリュースター角θBだけ傾斜すると共に、入射光の電界成分Eはx軸方向となり、スリット3bおよびグリッド3cは、電界成分Eの方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜する。
これにより、本発明の第2実施例の偏光子3において、偏光子3の寸法が上記寸法とされ、入射光Inの入射角度(光軸)θが0°~80°とされた際のTMモードの透過電力の等高線図は図3と同様となり、透過電力の周波数特性は図4と同様になる。このように、入射光の入射角度θがブリュースター角θBとなって、テラヘルツ波帯において偏光子3の透過電力の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化できるようになる。なお、スリット3bおよびグリッド3cの寸法は、図2に示す寸法と同様とされるが、この場合、メタルプレートの幅aが枠体3aの奥行きaに相当し、メタルプレートの厚さtがグリッド3cの厚さtに相当し、メタルプレート間の間隔dがスリット3bの幅dに相当する。透過電力の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化できる第2実施例の偏光子3の構成は、図7(a)(b)に示すように簡易な構成となる。

【0025】
次に、本発明のテラヘルツ波帯用の偏光子1の具体的構成である本発明の第3実施例の偏光子4の構成を図8,図9に示す。第3実施例の偏光子4の構成を示す正面図を図8(a)に、その偏光子4のD-D断面図で示す側面図を図8(b)に、その偏光子4におけるグリッド板積層体の構成を示す斜視図を図9(a)に、その偏光子4におけるグリッド板積層体の構成を示す上面図を図9(a)に示す。
図8(a)(b)に示すように、第3実施例の偏光子4は、奥に向かって傾斜して立っており、後述するグリッド板積層体4aと、このグリッド板積層体4aを上下から挟持する上基台42と下基台43と、下基台43の傾斜した下面に装着された支持台44とから構成されている。この場合、グリッド板積層体4aが、上基台42と下基台43とで挟持されて固着されるよう、上基台42から挿通された2本の取付ネジ45が、グリッド板積層体4aを貫通して下基台43に螺着されている。下基台43の傾斜した下面に装着された支持台44は、下基台43の下面が傾斜していることから、偏光子4が傾斜して安定に立つようにする支持台であり、金属製に限るものではない。

【0026】
ここで、グリッド板積層体4aの構成を図9(a)(b)を参照して説明する。グリッド板積層体4aは、金属製の平板状のグリッド板40の両側にスペーサ41を介して多数枚積層することにより形成されている。図9(a)(b)に示すように、グリッド板40は、厚みの薄い細長い矩形状の金属板の一方の長辺の中央部を矩形状に切り欠くことにより、他方の長辺に沿って細長い矩形状のプレート部40aが形成されている。このプレート部40aの両側には、ほぼ正方形状の支持部40bが形成されており、それぞれの支持部40bのほぼ中央に円形の取付孔40cが形成されている。このプレート部40aの横方向の長さがL2、その幅がa2とされ、グリッド板40の厚さはt2とされる。

【0027】
図9(a)に示すように、複数枚のグリッド板40は両側の支持部40bの間にそれぞれスペーサ41を配置して積層され、積層された際にプレート部40aがスペーサ41の厚さの間隔で配置された平行平板を構成し、このプレート部40aが偏光子1のメタルプレートとして機能するので、テラヘルツ波帯の偏光子として機能するようになる。この場合、スペーサ41の形状を支持部40bと同形状とすると、グリッド板40の両側の支持部40bの上に、縁を合わせると共に取付孔40cにスペーサ41の貫通孔の位置を合わせながらそれぞれ載置して、その上にスペーサ41の貫通孔に取付孔40cの位置を合わせながら次のグリッド板40を載置する。そして、次のグリッド板40の両側の支持部40bの上に、取付孔40cにスペーサ41の貫通孔の位置を合わせながら次のスペーサ41をそれぞれ載置して、その上にスペーサ41の貫通孔に取付孔40cの位置を合わせながらさらに次のグリッド板40を載置する。この作業を繰り返し行うことにより、プレート部40aが所定間隔で配置された平行平板を構成しているグリッド板積層体4aを組み立てることができる。

【0028】
スペーサ41の厚さはd2とされ、グリッド板40間の間隔、すなわち、プレート部40a間の間隔をd2とする機能を奏している。スペーサ41は、支持部40bとほぼ同形状とすることができ、中央部には貫通孔が形成されている。スペーサ41は、金属製でも合成樹脂製でも良い。貫通孔の内径は、グリッド板40の両側の支持部40bに形成された2つの取付孔40cの内径とほぼ一致している。また、グリッド板40とスペーサ41との位置合わせのために、取付孔40cと貫通孔の形状を同じ形状の多角形としてもよい。グリッド板40は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル等の導電率の高い金属性とされている。
上記したグリッド板積層体4aの下に下基台43を配置し、グリッド板積層体4aの上に上基台42を配置して、上基台42に形成された孔部に上面から2本の取付ネジ45を挿通し、さらに、グリッド板積層体4aを構成するグリッド板40の取付孔40cおよびスペーサ41の貫通孔に取付ネジ45を順次挿通し、下基台43に形成されたネジ孔に螺着する。これにより、下基台43、グリッド板積層体4aおよび上基台42が2本の取付ネジ45により固着されて、第3実施例の偏光子4が構成される。下基台43の下面は図8(b)に示すように傾斜しており、その傾斜角は、偏光子4がx軸方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜する角度に形成されている。すなわち、y-z面に対する傾斜角は(90°-θB)となる。これにより、グリッド板積層体4aにおけるプレート部40aは、z軸方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜するようになる。上記説明した第3実施例の偏光子4は、堅牢で再現性に優れ歩留まり良く組み立てられる構造となる。

【0029】
第3実施例の偏光子4は、グリッド板積層体4aが、上基台42の傾斜してない下面と下基台43の傾斜してない上面との間に挟持されることから、グリッド板積層体4aにおけるプレート部40aは、z軸方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜するようになる。また、偏光子4の前面がx-y平面に対してブリュースター角θBだけ傾斜する。ブリュースター角θBは、グリッド板40の上面間(下面間)の間隔p2と、グリッド板40間の間隔に相当するスペーサ41の厚さd2とにより決定される。この場合、グリッド板40の上面間(下面間)の間隔p2は、スペーサ41の厚さd2にグリッド板40の厚さt2を加算した値となり、偏光子4のブリュースター角θBは、下記(3)式で算出できる。
θB=cos-1(d2/p2)=cos-1(d2/(d2+t2)) (3)
ここで、スペーサ41の厚さd2を約50μm、グリッド板40の厚さt2を約20μmに形成すると、ブリュースター角θBは、約44.4°となる。第3実施例の偏光子4に入射する入射光の進行方向kはz軸方向となり、プレート部40aは進行方向kに対してブリュースター角θBだけ傾斜すると共に、入射光の電界成分Eはz軸方向となり、プレート部40aは電界成分Eの方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜する。
本発明の第3実施例の偏光子4において、偏光子4の寸法が上記寸法とされ、入射光Inの入射角度(光軸)θが0°~80°とされた際のTMモードの透過電力の等高線図は図3と同様となり、透過電力の周波数特性は図4と同様になる。このように、入射光の入射角度θがブリュースター角θBとなって、テラヘルツ波帯において偏光子4の透過電力の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化できるようになる。なお、スペーサ41およびグリッド板40の寸法は、図2に示す寸法と同様とされるが、この場合、メタルプレートの幅aがグリッド板40のプレート部40aの幅a2に相当し、メタルプレートの厚さtがグリッド板40の厚さt2に相当し、メタルプレート間の間隔dがスペーサ41の厚さd2に相当する。透過電力の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化できる第3実施例の偏光子4の構成は、図8、図9に示すように簡易な構成とすることができる。

【0030】
次に、本発明の第4実施例の偏光子5の構成を図10ないし図12に示す。図10(a)(b)は第4実施例の偏光子5の構成を示す正面図および側面図であり、図11は第4実施例の偏光子5の構成を示す分解組立図であり、図12(a)(b)は第4実施例の偏光子5におけるフィルム基板50の構成を示す平面図およびフィルム基板積層体5aの構成を示す斜視図である。
これらの図に示すように、第4実施例の偏光子5は、奥に向かって傾斜して立っており、基台52と、複数のフィルム基板50を積層したフィルム基板積層体5aと、押さえ板53と、基台52の傾斜した下面に装着された支持台55とから構成されている。基台52はアルミニウム合金等の金属製とされており、図10(b)に示すように底部の平面状の下面が傾斜しており、その傾斜角は、偏光子5がx軸方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜する角度に形成されている。底部の矩形状の上面において1つの隅を除く3つの隅から所定の高さで3本の立設柱が立設されている。3本の立設柱の断面は、横長の矩形状とされている。また、底部には4つのネジ孔56が形成されている。

【0031】
また、押さえ板53はアルミニウム合金等の金属製とされており、横長の矩形の平板状とされ、1の隅を除く3つの隅には、3本の立設柱の断面形状とそれぞれほぼ同じ形状とされた3つの切欠部が形成されている。基台52に押さえ板53を組み合わせた時に、3つの切欠部に3本の立設柱がそれぞれ嵌合するようになる。また、基台52に設けられているネジ孔56と同じ位置に4つの挿通孔がそれぞれ形成されている。なお、4つの挿通孔には座繰り加工が施されている。基台52の傾斜した下面に装着された支持台55は、基台52の下面が傾斜していることから、偏光子5が傾斜して安定に立つようにする支持台であり、金属製に限るものではない。

【0032】
第4実施例の偏光子5におけるフィルム基板50は、外形形状がほぼ押さえ板53と同様の外形形状とされたポリマーフィルム61と、ポリマーフィルム61上に設けられた横に細長い金属薄板51とから構成されている。ポリマーフィルム61は、シクロオレフィンポリマーフィルムとされ、その比誘電率は約2.34、tanδは約0.0016の低損失とされる。ポリマーフィルム61は、横長の矩形の平板状とされ、取付部61bおよび取付部61cが両側に形成され、取付部61bと取付部61cとの間に矩形状切欠部66が形成されて、金属薄板51を保持する横に細長い保持部61aが中央部の一側に形成されている。基台52の3本の立設柱の位置に対応する取付部61bの1つの隅と取付部61cの2つの隅には、3本の立設柱の断面形状と同じ形状とされた第1切欠部63、第2切欠部64、第3切欠部65がそれぞれ形成されている。保持部61aの一面には、横長の矩形状とされた金属薄板51が蒸着あるいは貼着、または、ポリマーフィルム61の一面に成膜したCu等の金属薄膜をエッチングすることにより形成されている。金属薄板51の長さはL3、幅はa3、厚さはt3とされる。この場合、保持部61aの縁部から金属薄板51の長辺までの長さが両側ともb3とされ、金属薄板51は保持部61aのほぼ中央に形成されている。また、取付部61bと取付部61cには、基台52に形成されている4つのネジ孔56に対応する位置に4つの孔部67が形成されている。
また、フィルム基板積層体5aのパラメータとなる寸法は、金属薄板51間の間隔がd3とされ、金属薄板51の厚さはt3とされ、金属薄板51が配置される周期がp3とされる。p3=d3+t3となる。

【0033】
このような構成のフィルム基板50を図12(b)に示すように位置合わせしながら複数枚積層してフィルム基板積層体5aを構成する。図12(b)に示すフィルム基板50a,50b,50c,50d,50e,50fは図12(a)に示すフィルム基板50と同じ構成とされている。フィルム基板積層体5aは、図12(b)では6枚のフィルム基板50a~50fから構成されているが、図12(b)は模式的に示す図であり実際には数十枚以上のフィルム基板50を積層してフィルム基板積層体5aが構成される。そして、フィルム基板積層体5aにおいては、フィルム基板50a~50fに形成されている金属薄板51a~52fが同じ位置で重ねられると共に、隣接する金属薄板51間の間隔は、ポリマーフィルム61の厚さであるdとなる。これにより、上下にわたり重ねられた複数の金属薄板51が平行平板を構成し、この金属薄板51が偏光子1のメタルプレートとして機能するので、テラヘルツ波帯の偏光子として機能するようになる。

【0034】
このようにして構成されたフィルム基板積層体5aを図11に示すように基台52上に配置して基台52内に収納する。収納した際にフィルム基板積層体5aにおける各フィルム基板50の第1切欠部63~第3切欠部65に、基台52の3本の立設柱がそれぞれ嵌合されることにより、基台52に対してフィルム基板積層体5aにおける各フィルム基板50が位置合わせされて収納されるようになる。また、フィルム基板積層体5aにおける各フィルム基板50の4つの孔部67が基台52の4つのネジ孔56に位置合わせされる。
フィルム基板積層体5aを基台52に収納した後に、基台52上に押さえ板53を配置して基台52に収納したフィルム基板積層体5aの上に載置する。この時、押さえ板53の3つの切欠部に、基台52の3本の立設柱がそれぞれ嵌合されて、基台52に対して押さえ板53が位置合わせされるようになる。また、押さえ板53に形成された4つの挿通孔が、フィルム基板積層体5aにおける各フィルム基板50の4つの孔部67および基台52の4つのネジ孔56に位置合わせされる。

【0035】
そこで、押さえ板53の4つの挿通孔にそれぞれ取付ネジ54を挿通して、フィルム基板積層体5aにおける各フィルム基板50の孔部67を貫通した4本の取付ネジ54を、それぞれ基台52のネジ孔56に螺着する。これにより、フィルム基板50同士が密着されて図10(a)(b)に示す第4実施例の偏光子5が組み立てられるようになる。第4実施例の偏光子5においては、押さえ板53により、金属薄板51が形成されているフィルム基板50の保持部61aが圧接されて、金属薄板51間の間隔が安定して保持されるようになる。また、フィルム基板積層体5aにおける各フィルム基板50の金属薄板51が上下にわたり平行に配置された平行平板とされて、偏光子1のメタルプレートに相当することを理解できる。この場合、平行平板とされる金属薄板51の間隔は、第4実施例の偏光子5の性能を決定するパラメータであるが、この間隔はフィルム基板50の厚さで一義的に決定される。すなわち、第4実施例の偏光子5では、4本の取付ネジ54で固着される基台52と押さえ板53との間に平行平板とされている金属薄板51を備えるフィルム基板積層体5aが挟持されることから、平行平板とされる金属薄板51間の間隔がきわめて安定化されており、大量生産した場合にも上記間隔を安定して一定の値に保つことができ、第4実施例の偏光子5の歩留まりを向上することができる。なお、4本の取付ネジ54は皿ネジとされており、押さえ板53の4つの座繰り加工された挿通孔46内に頭部が収まるようになり、取付ネジ54を螺着することにより基台52、フィルム基板積層体5aおよび押さえ板53が位置合わせされて固着されるようになる。

【0036】
第4実施例の偏光子5は、基台52の底部の下面が傾斜しており、フィルム基板積層体5aが、基台52の傾斜してない上面と傾斜してない押さえ板53との間に挟持されることから、フィルム基板積層体5aにおける金属薄板51は、z軸方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜するようになる。また、偏光子5の前面がx-y平面に対してブリュースター角θBだけ傾斜する。ここで、第4実施例の偏光子5の寸法の一例を示すと、フィルム基板50の厚さd3が約50μm、金属薄板51の幅a3が約2mm、金属薄板51の厚さt3が約20μmとされ、金属薄板51が配置される周期p3(=d3+t3)が約70μmとされる。第4実施例の偏光子5に入射する入射光の進行方向kはz軸方向となり、金属薄板51は進行方向kに対してブリュースター角θBだけ傾斜すると共に、入射光の電界成分Eはz軸方向となり、金属薄板51は電界成分Eの方向に対してブリュースター角θBだけ傾斜する。

【0037】
図10ないし図12に示す第4実施例の偏光子5は波長に対して十分に大きく、y軸方向は無限一様構造とされ、x軸方向は周期構造とされている。x軸方向に周期境界壁を仮想し、メタルプレートの1枚分を抜き出した解析モデルで設計できる。この解析は、有限要素法電磁界シミュレータを用いて解析することができる。図13(a)(b)は、メタルプレートを完全導体としたモデルの場合の解析結果である。
本発明の第4実施例の偏光子5の寸法が上記寸法とされ、入射光Inの入射角度(光軸)θが0°~80°とされた際のTMモードの透過電力の等高線図を図13(a)に示す。
図13(a)の横軸は0°~80°の範囲の入射角度θであり、縦軸は0.1THz~1.95THzの周波数とされている。図13(a)を参照すると、入射角度θが約40°ないし約55°の範囲において、約0.1THz~約1.4THzの周波数帯域において約95%以上の透過電力が得られ、約51°の入射角度θにおいては約0.1THz~約1.95THzの周波数帯域において約98%以上の透過電力が得られており、入射角度θが約51°付近においてインピーダンス整合が取れていることがわかる。この等高線図における平均透過電力がピークなる角度がブリュースター角θBと推定できることから、ブリュースター角θBは約51°と推定できる。なお、ブリュースター角θBは、金属薄板51の上面間(下面間)の間隔p3と、金属薄板51間の間隔に相当するフィルム基板50の厚さd3により決定されるが、フィルム基板50の比誘電率も影響することから、第4実施例の偏光子5ではブリュースター角θBが約51°と推定される。この場合、金属薄板51の上面間(下面間)の間隔p3は、フィルム基板50の厚さd3に金属薄板51の厚さt3を加算した値となる。

【0038】
また、本発明の第4実施例の偏光子5の寸法が上記した寸法とされ、偏光子5に入射光Inの入射角度(光軸)θがブリュースター角(θ=51°)で入射された時の透過電力の周波数特性を、入射光Inの入射角度(光軸)θが傾斜することなく入射(θ=0°)した場合の透過電力の周波数特性と対比して図13(b)に示すと共に、入射角度(光軸)θが0°の場合の消光比の周波数特性を図13(b)に示す。
図13(b)に示す透過電力の周波数特性を参照すると、入射光Inの入射角度θが0°の時は、0.1THz~1.95THzの全周波数帯域において透過電力の周波数特性にリップルが生じており、周期的に約18%の幅で上下に変動している。これに対して、入射光Inの入射角度θが51°(ブリュースター角)の時は、0.1THz~約1.2THzの周波数帯域において透過電力の周波数特性にほぼリップルが生じておらず、約98%~100%の透過電力が得られ、約1.2THz~約1.95THzの周波数帯域ではリップルが生じるが、入射角度θが0°の時よりリップル幅が抑えられている。このように、入射光Inの入射角度θをブリュースター角とすることにより、第4実施例の偏光子5はテラヘルツ波帯の透過電力の周波数特性に極力リップルが生じることなく平坦化することができる。なお、0.1THz~1.95THzの全周波数帯域における平均透過電力は、入射角度θが0°の時は約91.2%となるが、入射角度θが51°(ブリュースター角)の時は約99.4%が得られる。
図13(b)に示す消光比の周波数特性は、入射光Inの入射角度θが0°の場合であり、0.1THzから1.95THzの全周波数帯域でおおむね-50dB以下の消光比が得られている。
第4実施例の偏光子5においても、入射光の入射角度θをブリュースター角θBとすることにより、偏光子5の透過電力の周波数特性がテラヘルツ波帯においてリップル上下に変動することを防止できるようになる。このように、透過特性に極力リップルが生じることなく平坦化できる偏光子5の構成を、簡易に組み立てることができる簡易な構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明した本発明にかかる偏光子においては、テラヘルツ波帯においてなるべくリップルが生じない良好な透過波の周波数特性が得られる。また、本発明の第1,2実施例の偏光子においては、枠体の前面の縦横の寸法を偏光子に必要とされる開口の寸法とし、その開口寸法となる長さおよび本数のスリットを前面から形成するようにしている。さらに、本発明の第3実施例の偏光子においてグリッド板を積層する枚数は、グリッド板を積層していった寸法が、偏光子に必要とされる開口の高さの寸法になる枚数とされ、グリッド板の横方向の長さは開口の幅の寸法とされる。さらに、本発明の第4実施例の偏光子においてフィルム基板を積層する枚数は、フィルム基板を積層していった寸法が、偏光子に必要とされる開口の高さの寸法になる枚数とされ、フィルム基板の横方向の長さは開口の幅の寸法とされる。
また、第1,2実施例の偏光子において、スリットはエッチング等により形成することができ、スリットは枠体の辺に平行に枠体のほぼ全領域に形成すればよい。
さらに、本発明の第3実施例の偏光子における平行平板とされるグリッド板の間隔は、偏光子の性能を決定するパラメータであるが、この間隔はスペーサの厚さで一義的に決定される。すなわち、本発明の第3実施例の偏光子では、大量生産した場合にも上記間隔を安定して一定の値に保つことができ、当該偏光子の歩留まりを向上することができる。また、スペーサの厚さを変更するだけで、適用される周波数帯を変更することができるようになる。
また、第4実施例の偏光子における平行平板とされる金属薄板の間隔は、偏光子の性能を決定するパラメータであるが、この間隔はフィルム基板の厚さで一義的に決定される。すなわち、本発明の第4実施例の偏光子では、大量生産した場合にも上記間隔を安定して一定の値に保つことができ、当該第4実施例の偏光子の歩留まりを向上することができる。また、フィルム基板の厚さを変更するだけで、適用される周波数帯を変更することができるようになる。さらに、ポリマーフィルムは、シクロオレフィンポリマーフィルムを用いるようにしたが、これに限ることはなくテラヘルツ波帯において誘電正接の小さいフィルムならばいずれの材料からなるフィルムでも用いることができる。また、フィルムに替えてフィルム状の物質を金属薄板の面に形成しても良い。例えば、金属薄板の面に所定の厚さになる樹脂等の絶縁性の物質を塗布あるいは貼着することにより、金属薄板を所定間隔で対向させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 偏光子、2 偏光子、2a 枠体、2b スリット、2c グリッド、3 偏光子、3a 枠体、3b スリット、3c グリッド、3d 支持台、4 偏光子、4a グリッド板積層体、5 偏光子、5a フィルム基板積層体、10a~10d メタルプレート、40 グリッド板、40a プレート部、40b 支持部、40c 取付孔、41 スペーサ、42 上基台、43 下基台、44 支持台、45 取付ネジ、46 挿通孔、50 フィルム基板、50a~50f フィルム基板、51 金属薄板、51a,51b 金属薄板、52 基台、53 押さえ板、54 取付ネジ、55 支持台、56 ネジ孔、61 ポリマーフィルム、61a 保持部、61b 取付部、61c 取付部、63 第1切欠部、64 第2切欠部、65 第3切欠部、66 矩形状切欠部、67 孔部、101 ワイヤーグリッド用金属板、111 各縦桟部、111 縦桟部、112 横桟部、113 フランジ部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図3】
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【図13】
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