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明細書 :タンパク質発現方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-029015 (P2017-029015A)
公開日 平成29年2月9日(2017.2.9)
発明の名称または考案の名称 タンパク質発現方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 101
C12P 21/02 C
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2015-149826 (P2015-149826)
出願日 平成27年7月29日(2015.7.29)
発明者または考案者 【氏名】間世田 英明
【氏名】上手 麻希
出願人 【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B064
4B065
Fターム 4B024AA11
4B024AA20
4B024BA07
4B024CA02
4B024DA06
4B024EA04
4B024FA02
4B024GA11
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA13
4B065AA26X
4B065AA26Y
4B065AA41Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA46
要約 【課題】タンパク質をコードするポリヌクレオチド、これを含有する発現カセット、発現ベクター、及び形質転換体、並びにこれらを用いた新規なタンパク質発現方法を提供する。
【解決手段】PODiR配列を含むDNAでコードされるタンパク質を発現させる際に、該PODiR配列中のX-Y[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列が欠失したmRNAの生成、及びそれに起因する変異タンパク質の生成をより抑制方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
タンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、
該タンパク質が、本来、式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を含むDNAでコードされるタンパク質であり、且つ
該ポリヌクレオチドが、該式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を、変異した状態で含む
ことを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記X及び前記Yの塩基数がそれぞれ2~15である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記変異がフレームシフトを伴わない変異である、請求項1又は2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記変異がアミノ酸の置換、欠失、及び挿入からなる群より選択される少なくとも1種を伴わない変異である、請求項1~3のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記タンパク質が、本来、式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を含み、且つX-Yが3以上繰り返された塩基配列を含まないDNAでコードされるタンパク質である、請求項1~4のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する、発現カセット。
【請求項7】
プロモーターを含有する、請求項6に記載の発現カセット。
【請求項8】
前記プロモーターが刺激応答性プロモーターである、請求項7に記載の発現カセット。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の発現カセットを含有する、発現ベクター。
【請求項10】
請求項6~8のいずれかに記載の発現カセットを含有する、形質転換体。
【請求項11】
タンパク質の発現方法であって、
該タンパク質が、本来、式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を含むDNAでコードされるタンパク質であり、且つ
請求項6~8のいずれかに記載の発現カセットから該タンパク質を発現させる
ことを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記タンパク質をin vitroで発現させる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質をin vivoで発現させる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項11~13のいずれかに記載の方法で発現させたタンパク質を回収する工程を含む、タンパク質の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質をコードするポリヌクレオチド、これを含有する発現カセット、発現ベクター、及び形質転換体、並びにこれらを用いたタンパク質発現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多様な分野において、in vitroやin vivoでの組換えタンパク質の発現技術が利用されている。例えば、医薬分野においては、インスリン等のタンパク質製剤を、大腸菌や酵母に導入した遺伝子から発現させることによって生産している。また、抗体作製、タンパク質の機能解析、タンパク質の立体構造解析等に用いられるタンパク質の調製にも、組換えタンパク質の発現技術が利用されている。
【0003】
ただ、この組換えタンパク質を発現させると、しばしば、発現したタンパク質同士が凝集してしまうことがある。この凝集は、一次配列が異なる変異タンパク質や一次構造が同じでもコンフォメーションが変化したタンパク質等がわずかにでも存在する場合、それらを核としてその他の正常なタンパク質等が凝集して起こるといわれている(非特許文献1)。凝集した状態ではタンパク質本来の機能は発揮されないので、組換えタンパク質の発現は、通常、この凝集が起こらないような条件下で行うことが重要である。例えば、特許文献1には、凝集によるタンパク質の不活性化を防ぐために、目的タンパク質をシャペロンタンパク質と共発現させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-019699号公報
【0005】

【非特許文献1】ポストゲノム時代のタンパク質科学 —構造・機能・ゲノミクス— Arthur M. Lesk著 高木淳一訳 化学同人 p291
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、ある種の組換えタンパク質を発現させる際に、一部の塩基配列が欠失したmRNAが生成されてしまうことを見出した。さらに解析を進めた結果、本来、式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列(本明細書において、「PODiR(artially verlapped Direct epeat)配列」と示す場合もある。)を含むDNAでコードされるタンパク質を発現させる際に、そのDNA配列(PODiR配列含む)をそのまま用いてタンパク質を作ろうとすると、PODiR配列中のX-Yで示される塩基配列が欠失したmRNA、及びその欠失に基づいて変異したタンパク質が一定確率で生成されてしまうという、全く新しい問題を見出した。このような変異タンパク質の生成は、それを核としたタンパク質凝集を引き起こすと考えられるので、望ましくない。
【0007】
そこで、本発明は、本来、PODiR配列を含むDNAでコードされるタンパク質を発現させる際に、該PODiR配列中のX-Yで示される塩基配列が欠失したmRNAの生成、及びそれに起因する変異タンパク質の生成をより抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、PODiR配列を変異させることにより、欠失mRNAや変異タンパク質の生成を抑制できることを見出した。この知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明が完成した。
【0009】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0010】
項1. タンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、
該タンパク質が、本来、式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を含むDNAでコードされるタンパク質であり、且つ
該ポリヌクレオチドが、該式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を、変異した状態で含む
ことを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【0011】
項2. 前記X及び前記Yの塩基数がそれぞれ2~15である、項1に記載のポリヌクレオチド。
【0012】
項3. 前記変異がフレームシフトを伴わない変異である、項1又は2に記載のポリヌクレオチド。
【0013】
項4. 前記変異がアミノ酸の置換、欠失、及び挿入からなる群より選択される少なくとも1種を伴わない変異である、項1~3のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【0014】
項5. 前記タンパク質が、本来、式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を含み、且つX-Yが3以上繰り返された塩基配列を含まないDNAでコードされるタンパク質である、項1~4のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【0015】
項6. 項1~5のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する、発現カセット。
【0016】
項7. プロモーターを含有する、項6に記載の発現カセット。
【0017】
項8. 前記プロモーターが刺激応答性プロモーターである、項7に記載の発現カセット。
【0018】
項9. 項6~8のいずれかに記載の発現カセットを含有する、発現ベクター。
【0019】
項10. 項6~8のいずれかに記載の発現カセットを含有する、形質転換体。
【0020】
項11. タンパク質の発現方法であって、
該タンパク質が、本来、式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を含むDNAでコードされるタンパク質であり、且つ
項6~8のいずれかに記載の発現カセットから該タンパク質を発現させる
ことを特徴とする、方法。
【0021】
項12. 前記タンパク質をin vitroで発現させる、項11に記載の方法。
【0022】
項13. 前記タンパク質をin vivoで発現させる、項11に記載の方法。
【0023】
項14. 項11~13のいずれかに記載の方法で発現させたタンパク質を回収する工程を含む、タンパク質の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、本来、PODiR配列を含むDNAでコードされるタンパク質を発現させる際に、該PODiR配列を変異した状態で含むポリヌクレオチドを用いて発現させることにより、欠失mRNAの生成、及びそれに起因する変異タンパク質の生成をより抑制することができる。これにより、変異タンパク質を核としたタンパク質凝集をより抑制することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.ポリヌクレオチド
本発明は、タンパク質(本明細書において、「目的タンパク質」と示すこともある。)をコードするポリヌクレオチドであって、該タンパク質が、本来、式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を含むDNAでコードされるタンパク質であり、且つ該ポリヌクレオチドが、該式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を、変異した状態で含むことを特徴とする、ポリヌクレオチド(本明細書において、「本発明のポリヌクレオチド」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。

【0026】
1-1.目的タンパク質
本発明のポリヌクレオチドがコードするタンパク質(目的タンパク質)は、本来、式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を含むDNAでコードされるタンパク質である。このDNAは、好ましくは、式(1)で示される塩基配列を含む塩基配列として、X-Yが3以上繰り返された塩基配列(いわゆるタンデムリピート)を含まないことが好ましい。また、このDNAにおいて、式(1)で示される塩基配列は、X-Yが3以上繰り返された塩基配列内の配列として存在しないことが好ましい。さらに、式(1)で示される塩基配列において、X-Yで示される塩基配列は、Z(塩基数1以上の任意の塩基配列)が2以上繰り返した配列ではないことが好ましい。

【0027】
「本来・・・を含むDNAでコードされるタンパク質」とは、例えば生物の内在性タンパク質(生物由来タンパク質)であり、該生物種のゲノムDNA(外来性DNA含まない)における該タンパク質のコード配列中にPODiR配列が含まれていることを意味し、また別の例としては生物の内在性タンパク質(生物由来タンパク質)の改変タンパク質(例えば、ある種の蛍光タンパク質)であり、該改変タンパク質の市販発現ベクターにおける該タンパク質のコード配列中にPODiR配列が含まれていることを意味する。

【0028】
生物由来タンパク質の由来生物としては、特に限定されないが、例えば大腸菌、枯草菌、藍藻、緑膿菌、ビフィズス菌、乳酸菌、ブドウ球菌、ウェルシュ菌等の真正細菌; パイロコッカス・フリオサス、メタノカルドコックス・ヤンナスキイ等の古細菌; アカパンカビ、出芽酵母、分裂酵母、アスペルギルス・ニガー等の菌類; 細胞性粘菌、テトラヒメナ、ゾウリムシ等の単細胞真核生物; 線虫、昆虫(ショウジョウバエ等)、脊索動物(ホヤ等)、魚類(ゼブラフィッシュ等)、両生類(アフリカツメガエル等)、哺乳類(ヒト、アカゲザル、マウス、ラット、ウサギ等)等の多細胞動物; ボルボックス、クラミドモナス、シロイヌナズナ、イネ、小麦、タバコ等の植物等が挙げられ、好ましくは真正細菌、古細菌等が挙げられ、より好ましくは真正細菌が挙げられる。

【0029】
式(1)中、X及びYは塩基数が1以上の任意の塩基配列であって、互いに異なる塩基配列である。

【0030】
Xの塩基数は、例えば2~15、好ましくは2~12、より好ましくは2~10、より好ましくは3~9、より好ましくは4~8、さらに好ましくは5~7、特に好ましくは6である。

【0031】
Yの塩基数は、例えば2~15、好ましくは2~12、より好ましくは2~10、より好ましくは2~5、より好ましくは2~4、さらに好ましくは2~3、特に好ましくは2である。

【0032】
Xの塩基数とYの塩基数の組み合わせは、好ましくはXの塩基数が3~9であり且つYの塩基数が2~5である組み合わせ、より好ましくはXの塩基数が4~8であり且つYの塩基数が2~4である組み合わせ、さらに好ましくはXの塩基数が5~7であり且つYの塩基数が2~3である組み合わせ、特に好ましくはXの塩基数が6であり且つYの塩基数が2である組み合わせである。

【0033】
目的タンパク質には、「本来、PODiR配列を含むDNAでコードされるタンパク質」のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列からなるタンパク質の他に、該タンパク質本来の機能が損なわれない限りにおいて、「本来、PODiR配列を含むDNAでコードされるタンパク質」のアミノ酸配列に対して変異したアミノ酸配列からなるタンパク質も包含される。例えば、目的タンパク質のアミノ酸配列は、「本来、PODiR配列を含むDNAでコードされるタンパク質」のアミノ酸配列に対して70%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。別の例として、目的タンパク質のアミノ酸配列は、「本来、PODiR配列を含むDNAでコードされるタンパク質」のアミノ酸配列に対して、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列である。「複数個」とは、「本来、PODiR配列を含むDNAでコードされるタンパク質」を構成するアミノ酸数にもよるが、例えば2~50個であり、好ましくは2~30個であり、より好ましくは2~15個であり、よりさらに好ましくは2~10個であり、よりさらに好ましくは2~5個であり、よりさらに好ましくは2又は3個である。

【0034】
アミノ酸配列の『同一性』とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対する同一のアミノ酸配列の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の同一性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは、KarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(KarlinS, Altschul SF.“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes”Proc.Natl Acad Sci USA.87:2264-2268(1990)、KarlinS,Altschul SF.”Applications and statistics for multiple high-scoringsegments in molecular sequences.”NatlAcad Sci USA.90:5873-7(1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、NationalCenter of BiotechnologyInformation(NCBI)のウエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。

【0035】
また、目的タンパク質には、公知のタンパク質タグが付加されていてもよい。タンパク質タグとしては、例えばHisタグ、FLAGタグ、GSTタグ、MBPタグ、HAタグ、mycタグ、GFPタグ、BCCPタグ等が挙げられる。

【0036】
1-2.目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、上記目的タンパク質をコードする。

【0037】
従来であれば、上記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを得ようとした場合、PODiR配列含むポリヌクレオチドがそのまま利用されていた。ところが、本発明者等は、該PODiR配列に起因して、PODiR配列中のX-Yで示される塩基配列が欠失したmRNAの生成、及びそれに起因する変異タンパク質の生成が起こることを見出した。そして、PODiR配列を変異させることにより、塩基配列が欠失したmRNAの生成、及びそれに起因する変異タンパク質の生成を抑制できることを見出した。そこで、本発明では、上記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、PODiR配列を変異した状態で含むポリヌクレオチドを用いることを特徴としている。

【0038】
変異は、PODiR配列の構造が壊れる、すなわち式(1):X-Y-X-Y-Xで規定される配列とならないような変異であれば特に限定されず、1塩基のみの変異であっても、2塩基以上の変異であってもよい。変異の具体的態様としては、例えば塩基の置換、欠失、挿入が挙げられる。通常、PODiR配列内において、ある1塩基を他の塩基に置換させる、或いは1塩基を挿入または欠失させることにより、PODiR配列の構造は壊れる。変異は、フレームシフトを伴わない変異、及び/又はアミノ酸の置換、欠失、及び挿入からなる群より選択される少なくとも1種を伴わない変異であることが好ましい。

【0039】
変異の具体例を表1に示す。なお、以下の例において、PODiR配列は、CGGCCA(X)-GC(Y)-CGGCCA(X)-GC(Y)-CGGCCA(X)であり、読み枠は、CGG|CCA|GCC|GGC|CAG|CCG|GCC|A(「|」が読み枠の区切りを示す。)である。

【0040】
【表1】
JP2017029015A_000002t.gif

【0041】
本発明のポリヌクレオチドは、目的タンパク質をコードする領域のみからなるものであってもよく、該領域に加えて、他の領域(例えば、各種リンカー配列、各種シグナルペプチド、各種タグ等をコードする領域)を含有していてもよい。

【0042】
本発明のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子工学的手法に従って容易に得ることができる。例えば、PCR、制限酵素切断、DNA連結技術等を利用して作製することができる。より具体的には、例えば目的タンパク質の由来生物のゲノムDNAから、PCRにより、該タンパク質をコードする領域のDNA断片を得て、公知の塩基置換方法に従って又は準じて該DNA断片中のPODiR配列を変異させることにより、本発明のポリヌクレオチドを得ることができる。

【0043】
2.発現カセット
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含有する発現カセット(本明細書において、「本発明の発現カセット」と示すこともある)に関する。以下、これについて説明する。

【0044】
本発明の発現カセットは、本発明のポリヌクレオチドを、該ポリヌクレオチドでコードされる目的タンパク質が発現可能な状態で含有するポリヌクレオチドであり、この限りにおいて、特に限定されない。

【0045】
本発明の発現カセットは、原核細胞用、真核細胞用のいずれであってもよい。本発明の発現カセットは、より確実に本発明の効果を発揮できるという観点から、原核細胞用であることが好ましい。

【0046】
本発明の発現カセットは、典型的には、例えば本発明のポリヌクレオチドの他に、プロモーター、ターミネーター等を含有し、より具体的には5’側から順に、プロモーター、本発明のポリヌクレオチド、ターミネーターが配置されている。また、その他にも、例えばプロモーターと本発明のポリヌクレオチドの間にリボソーム結合配列を含有していることが好ましい。

【0047】
プロモーターとしては、原核細胞又は真核細胞内において転写開始に必要な配列である限り特に限定されず、公知のプロモーターを採用することができる。例えば、原核細胞用のプロモーターとしては、lacプロモーター、tacプロモーター、tetプロモーター、araプロモーター等の刺激応答性プロモーターが挙げられる。真核細胞用のプロモーターとしては、CMVプロモーター、EF1プロモーター、SV40プロモーター、MSCVプロモーター、hTERTプロモーター、βアクチンプロモーター、CAGプロモーター等が挙げられる。

【0048】
PODiR配列中のX-Yで示される塩基配列が欠失したmRNAの生成割合は、プロモーターの転写活性が高い程、高い傾向にある。よって、通常であれば、刺激応答性プロモーターの転写活性が刺激に応じて上昇すると、この欠失mRNAの生成割合が高まる。これに対して、本発明の発現カセットであれば、刺激応答性プロモーターの転写活性が刺激に応じて上昇しても、欠失mRNAの生成を抑えることができる。

【0049】
本発明の発現カセットは、公知の遺伝子工学的手法に従って容易に得ることができる。例えば、PCR、制限酵素切断、DNA連結技術等を利用して作製することができる。

【0050】
3.発現ベクター
本発明は、本発明の発現カセットを含有する発現ベクター(本明細書において、「本発明の発現ベクター」と示すこともある)に関する。以下、これについて説明する。

【0051】
本発明の発現ベクターは、本発明の発現カセットを、該発現カセット中の本発明のポリヌクレオチドでコードされる目的タンパク質が発現可能な状態で含有するポリヌクレオチドであり、この限りにおいて、特に限定されない。

【0052】
本発明の発現ベクターは、原核細胞用、真核細胞用のいずれであってもよい。本発明の発現ベクターは、より確実に本発明の効果を発揮できるという観点から、原核細胞用であることが好ましい。

【0053】
本発明の発現カセットは、典型的には、例えば本発明の発現カセットの他に、複製機点、薬剤耐性遺伝子等を含有する。

【0054】
薬剤耐性遺伝子としては、特に限定されないが、例えば、クロラムフェニコール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。

【0055】
本発明の発現ベクターは、本発明の発現カセットを1つのみ含有していても、2つ以上含有していてもよい。2つ以上含有することにより、2種以上の目的タンパク質を、1種の発現ベクターで効率的に発現させることが可能となる。なお、この場合、それぞれの目的タンパク質の発現が可能である限りにおいて、各発現カセットそれぞれにプロモーターやターミネーターが存在している必要はなく、2つ以上の発現カセットが連結した領域の上流にプロモーターが、下流にターミネーターが存在していればよい。

【0056】
本発明の発現ベクターは、公知の遺伝子工学的手法に従って容易に得ることができる。例えば、PCR、制限酵素切断、DNA連結技術等を利用して作製することができる。

【0057】
4.形質転換体
本発明は、本発明の発現カセットを含有する形質転換体(本明細書において、「本発明の形質転換体」と示すこともある)に関する。以下、これについて説明する。

【0058】
本発明の形質転換体は、本発明の発現カセットを、該発現カセット中の本発明のポリヌクレオチドでコードされる目的タンパク質が発現可能な状態で含有する形質転換体であり、この限りにおいて、特に限定されない。具体的には、例えば、本発明の発現カセットが宿主のゲノムDNAに組み込まれている場合や、本発明の発現カセット(発現カセット単独、或いは発現ベクターに組み込まれた状態の発現カセット)がゲノムDNAに組み込まれずに宿主の核内に存在している場合が挙げられる。

【0059】
宿主は、目的タンパク質を発現可能である限りにおいて、特に限定されない。宿主としては、例えば、大腸菌等の原核細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞等が挙げられる。宿主は、より確実に本発明の効果を発揮できるという観点から、原核細胞が好ましい。

【0060】
昆虫細胞としては、例えば、Sf細胞、MG1細胞、High FiveTM細胞、BmN細胞等が挙げられる。Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞等が挙げられる。

【0061】
動物細胞としては、例えば、サルCOS-7細胞、サルVero細胞、チャイニーズハムスター細胞CHO、マウスL細胞、マウスAtT-20細胞、マウスミエローマ細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞等が挙げられる。

【0062】
本発明の形質転換体は、公知の遺伝子工学的手法に従って容易に得ることができる。例えば、本発明の発現ベクターを、PEG(ポリエチレングリコール)-カルシウム法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法、及びエレクトロポレーション法等の公知の核酸導入法により、宿主に導入することにより作製することができる。

【0063】
5.タンパク質の発現方法、及びタンパク質の製造方法
本発明は、タンパク質の発現方法であって、該タンパク質が、本来、式(1):X-Y-X-Y-X (1)[式中、X及びYは塩基数が1以上の異なる塩基配列を示す。]で示される塩基配列を含むDNAでコードされるタンパク質であり、且つ本発明の発現カセットから該タンパク質を発現させることを特徴とする、方法(本明細書において、「本発明の発現方法」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。

【0064】
「発現カセットから該タンパク質を発現させる」とは、本発明の発現カセットから、目的タンパク質のmRNAを生成させ、さらに該mRNAから目的タンパク質を生成させることができる限りにおいて、その態様は特に限定されず、in vitroで発現させる態様であっても、in vivoで発現させる態様であってもよい。

【0065】
in vitroで発現させる態様は、公知の無細胞タンパク質合成方法に従って又は準じて行うことができる。例えば、本発明の発現ベクターと、mRNAの生成及びタンパク質の合成に必要な因子群(RNAポリメラーゼ(T7 RNAポリメラーゼ等)、各種ヌクレオチド、リボソーム、翻訳開始・伸長因子、tRNA、各種アミノ酸等)とを反応させることにより、目的タンパク質を発現させることができる。反応条件は、公知の無細胞タンパク質合成方法の条件に従って又は準じて適宜設定することができる。反応条件は、例えば25~40℃で1~24時間である。

【0066】
in vivoで発現させる態様は、細胞を用いた公知の組換えタンパク質発現方法に従って又は準じて行うことができる。例えば、本発明の形質転換体を培養することにより、目的タンパク質を発現させることができる。培養条件は、細胞を用いた公知の組換えタンパク質発現方法に従って又は準じて適宜設定することができる。培養条件は、宿主が大腸菌であれば、例えば、約30~40℃で6~36時間である。

【0067】
さらに、発現させた目的タンパク質を回収することにより、目的タンパク質を製造することができる。

【0068】
回収は、公知の方法に従って行うことができる。in vitroで発現させた場合は、例えばその反応液をそのまま回収すればよい。in vivoで発現させた場合であって目的タンパク質が細胞内に存在している場合は、例えば目的タンパク質を発現している細胞を破砕し、目的タンパク質を含有する溶液を回収すればよい。in vivoで発現させた場合であって目的タンパク質が細胞外に存在している場合は、例えば細胞外の目的タンパク質を含む溶液(例えば培地等)をそのまま回収すればよい。

【0069】
回収後は、目的タンパク質の濃縮、精製等をしてもよい。濃縮、沈殿、精製等は、公知の方法に従って又は準じて行うことができる。

【0070】
目的タンパク質の濃縮方法としては、例えば凍結乾燥、限外ろ過、硫安沈殿、TCA沈殿、アセトン沈殿等が挙げられる。

【0071】
目的タンパク質の精製方法としては、例えば、透析、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
試験例1:in vivoにおける、PODiR配列中のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNA、及びその欠失に基づいて変異したタンパク質の生成
5’側から、開始コドン、PODiR配列、薬剤耐性遺伝子のORFが配置された発現ベクターを用いて、PODiR配列中のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNA、及びその欠失に基づいて変異したタンパク質の生成について、in vivoで解析した。具体的には次のように行った。
【実施例】
【0074】
まずアッセイプラスミドを構築した。5’側から、GAATTC(EcoR Iサイト)、19 bpの配列(CCTGGAAACGAGGAACGCC(配列番号1))、及び緑膿菌野生株のゲノムDNA由来のmexT遺伝子の開始コドンから該遺伝子のSal Iサイトまでの配列(配列番号2、PODiR配列を含む)が連結した配列からなるDNA断片(断片1)と、5’側から、GTCGAC(Sal Iサイト)、クロラムフェニコール耐性遺伝子のORFの開始コドンの次のコドンから終始コドンの一つ前のコドンまでの配列、6×His tagをコードする配列、TAA(終始コドン)、及びAAGCTT(Hind IIIサイト)が連結した配列からなるDNA断片(断片2)とを、pMMB67EHベクターのMCSのEcoR IサイトとHind IIIサイト、及び断片1の3’末端のSal Iサイトと断片2の5’末端のSal Iサイトを利用して、該ベクターのMCS中に連結した状態で導入した(大腸菌アッセイ用ベクター)。
【実施例】
【0075】
断片1の開始コドンと断片2のクロラムフェニコール耐性遺伝子のORFとの間の塩基数は635 bp(3の倍数+2)であるため、通常であれば、クロラムフェニコール耐性遺伝子のORFは正常な読み枠で翻訳されない。しかし、断片1のPODiR配列のX‐Yで示される塩基配列(8 bp(3の倍数+2))が欠失したmRNAが生成すれば、該mRNAに基づいて、正常な読み枠で翻訳されたクロラムフェニコール耐性タンパク質が生成される。
【実施例】
【0076】
次に、上記で構築した大腸菌アッセイ用ベクターを、定法に従って大腸菌に導入した。得られた大腸菌を1 mM IPTGを含む液体培地(1%Tryptone, 0.5% Yeast extract, 0.5% NaCl, pH 7.0, 1 mM IPTG)、又はIPTGを含まない液体培地5 mLに植菌し、37℃で16時間培養した。
【実施例】
【0077】
培養後の培養液500 μLからtotal RNAを抽出(マッハライ・ナーゲル社製NucleoSpin(R) RNA Kit使用)した。約3.0×106細胞分のtotal RNAを用いて、大腸菌アッセイ用ベクターから発現するmRNAのPODiR配列周辺領域の配列を、次世代シークエンサー(illumina社製Hiseq 2000)で解析した。解析結果に基づいて、大腸菌アッセイ用ベクターから発現するmRNA中、PODiR配列のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNAの割合(PODiR欠失mRNA生成割合)を算出した。
【実施例】
【0078】
一方で、培養後の培養液の残りを1/1000に希釈し、該希釈液100 μLを10 cmディッシュ上のクロラムフェニコール含有寒天培地(16 μg/mL クロラムフェニコール, 1.5% agar, 1% Tryptone, 0.5% Yeast extract, 0.5% NaCl, pH 7.0, 1 mM IPTG)及びコントロール寒天培地(クロラムフェニコール含有寒天培地からクロラムフェニコールを除いた組成、又はクロラムフェニコールに替えて50 μg/mL CARを含有する組成を有する)にプレーティングし、37℃で22時間培養した。培養後、出現したコロニー(クロラムフェニコール耐性株のコロニー)数から、クロラムフェニコール耐性株の出現割合を算出した。
【実施例】
【0079】
結果を表2に示す。
【実施例】
【0080】
【表2】
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【実施例】
【0081】
表2より、PODiR配列を含むテンプレートDNAから、PODiR配列のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNA、及び該欠失に基づいた正常な読み枠のクロラムフェニコール耐性タンパク質が、一定割合で生成することが示された。また、この生成割合は、IPTG添加の場合(転写活性「高」)の方が、IPTG非添加の場合(転写活性「低」)よりも高かった。このことから、転写活性がより高い方が、欠失mRNAの生成割合も高まることが示唆された。
【実施例】
【0082】
試験例2:PODiR配列変異による影響の解析
5’側から、開始コドン、PODiR配列(CGGCCAGCCGGCCAGCCGGCCA(配列番号3))、薬剤耐性遺伝子のORFが配置された発現ベクター、及び該発現ベクターにおいてPODiR配列を変異させた発現ベクターを用いて、PODiR配列変異による影響を解析した。具体的には次のように行った。
【実施例】
【0083】
まずアッセイプラスミドを構築した。5’側から、GAATTC(EcoR Iサイト)、19 bpの配列(CCTGGAAACGAGGAACGCC(配列番号1))、開始コドン、CTGCAG(Pst Iサイト)、GCGGCCGC(Not Iサイト)、GTCGAC(Sal Iサイト)、クロラムフェニコール耐性遺伝子のORFの開始コドンの次のコドンから終始コドンの一つ前のコドンまでの配列、6×His tagをコードする配列、TAA(終始コドン)、及びAAGCTT(Hind IIIサイト)が連結した配列からなるDNA断片を、定法に従って作製した。このDNA断片を、制限酵素サイトを利用して、pMMB67EHベクターのMCSのEcoR IサイトとHind IIIサイトの間に挿入した。
【実施例】
【0084】
得られたベクター(pLCM)をPst I及びSal Iで切断し、そこへ、5’側から、CTGCAG(Pst Iサイト)、下記表3の配列1~4(配列番号4~7)のいずれか、及びGTCGAC(Sal Iサイト)が連結された配列からなるDNA断片をPst I及びSal Iで切断して得られた断片を挿入して、アッセイプラスミドを得た。
【実施例】
【0085】
【表3】
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【実施例】
【0086】
配列1は、PODiR配列に4塩基を付加した配列、配列2及び3は、配列1においてPODiR配列中の1塩基が他の塩基に置換され、PODiR配列が変異した配列、配列4は、配列1においてPODiR配列中の2塩基が他の塩基に置換されはいるものの、PODiR配列は保っている配列である。表3中、下線は、PODiR配列において変異した箇所を示す。
【実施例】
【0087】
配列1~4の塩基数はいずれも「3の倍数+2」であるため、通常であれば、クロラムフェニコール耐性遺伝子のORFは正常な読み枠で翻訳されない。しかし、配列1~4中のPODiR配列のX‐Yで示される塩基配列(8 bp(3の倍数+2))が欠失したmRNAが生成すれば、該mRNAに基づいて、正常な読み枠で翻訳されたクロラムフェニコール耐性タンパク質が生成される。
【実施例】
【0088】
次に、上記で構築したアッセイプラスミドを、定法に従って緑膿菌mexF遺伝子破壊株に導入した。アッセイプラスミドを導入した該緑膿菌を液体培地(1% Tryptone, 0.5% Yeast extract, 0.5% NaCl, pH 7.0)5 mLに植菌し、37℃で18時間培養した。該培養液を1/1000もしくは1/100に希釈し、該希釈液100 μLを10 cmディッシュ上のクロラムフェニコール含有寒天培地(200 μg/mL クロラムフェニコール, 1.5% agar, 1% Tryptone, 0.5% Yeast extract, 0.5% NaCl, pH 7.0, 2 mM IPTG)及びコントロール寒天培地(クロラムフェニコール含有寒天培地からクロラムフェニコールを除いた組成、又はクロラムフェニコールに替えて150 μg/mL CARを含有する組成を有する)にプレーティングし、37℃で24時間培養した。培養後、出現したコロニー(クロラムフェニコール耐性株のコロニー)数から、クロラムフェニコール耐性株の出現割合を算出した。また、配列1を挿入した場合の耐性株出現割合を1とした場合の、他の配列を挿入した場合の耐性株出現割合の比率も算出した。
【実施例】
【0089】
結果を表4に示す。
【実施例】
【0090】
【表4】
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【実施例】
【0091】
表4に示されるように、PODiR配列を変異させた配列2及び3では、耐性株出現割合が著しく低下していた。一方、配列2及び3の変異を両方有しながらもPODiR配列を保っている配列4では、耐性株出現割合はそれ程低下していなかった。これらのことから、PODiR配列を変異させると、PODiR配列のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNA、及び該欠失に基づいた正常な読み枠のクロラムフェニコール耐性タンパク質の生成割合が、著しく低下することが示された。
【実施例】
【0092】
試験例3:in vitroにおける、PODiR配列中のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNAの生成
試験例1で作製した大腸菌アッセイ用ベクターのtac promoterからmexT遺伝子のPODiR配列を含む領域をPCRで増幅し、template DNA(配列番号8)とした。該DNA 50 ng、大腸菌のRNA polymerase(New England Biolabs社製のE. coli RNA polymerase, Holoenzyme使用)、及び4種のリボヌクレオチド核酸(New England Biolabs社製のRibonucleotide Solution Set使用)を混合し、37℃で1時間反応させ、mRNAを合成した。該mRNA 10 ngをマッハライ・ナーゲル社製NucleoSpin(R) RNA XS Kitを使用して精製し、DNase(RQ1 RNase-Free DNase)で処理した後、mexT2プライマー(配列番号9)とPrimeScriptTMRT reagent Kitを用いてcDNAを合成した。該cDNAを次世代シークエンサー(illumina社製Hiseq 2000)用プライマーを用いて増幅した後、定法に従ってゲル精製した。得られたDNAを用いて、PODiR配列周辺領域の配列を、次世代シークエンサーで解析した。解析結果に基づいて、in vitroで生成したmRNA中、PODiR配列のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNAの割合(PODiR欠失mRNA生成割合)を算出した。
【実施例】
【0093】
その結果、PODiR欠失mRNA生成割合は、2.13×10-2%であった。このことより、in vitroにおいても、PODiR配列中のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNAが、一定割合で生成することが示された。
【実施例】
【0094】
試験例4:in vivoにおける、PODiR配列中のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNA、及びその欠失に基づいて変異したタンパク質の生成(T7 RNA polymerase使用)
T7 polymeraseを用いた場合にも、PODiR配列中のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNA、及びその欠失に基づいて変異したタンパク質の生成が起こるかどうか調べた。概要としては、実験例1で用いた大腸菌用アッセイベクターのtacpromoterからTdCm6Hisまでの領域をT7 promoter、TdCm6His、T7 terminatorに置換したアッセイベクター(pM-T7-TdCm6His)を構築し、BL21(DE3)株に導入し、アッセイを行った。具体的には次のように行った。
【実施例】
【0095】
<4-1.pU-tacベクターの作製>
pUC19ベクターの全長を、EcoR Iサイトを付加したプライマー(invR-Eco:配列番号10)とMlu Iサイトを付加したプライマー(invF-Mlu:配列番号11)とを用いたPCRで増幅し、EcoR I及びMlu Iで消化してDNA断片を得た。一方で、pMMB67EHベクターもEcoR I及びMlu Iで消化してMCSを含む短いDNA断片を得た。得られた2つの断片を連結し、pU-tacベクターを得た。
【実施例】
【0096】
<4-2.pET21a(+)-TdCm6Hisベクターの作製>
TdCm断片(5’側からCATATG(Nde Iサイト)、緑膿菌野生株のゲノムDNA由来のmexT遺伝子の2番目のコドンから該遺伝子のSal Iサイトまでの配列(配列番号2で示される配列から5’末端のATGが除かれた配列)、クロラムフェニコール耐性遺伝子のORFの開始コドンの次のコドンから終始コドンの一つ前のコドンまでの配列、CTCGAG(Xho Iサイト)が連結した配列からなるDNA断片)をNde I及びXho Iで消化してDNA断片を得た。一方で、pET-21a(+)ベクターもNde I及びXho Iで消化して、これらの制限酵素サイトに挟まれる短い領域が除去されたDNA断片を得た。得られた2つの断片を連結し、pET21a(+)-TdCm6Hisベクターを得た。
【実施例】
【0097】
<4-3.pU-tac-T7-TdCm6Hisベクターの作製>
pET21a(+)-TdCm6HisベクターのT7 promoterからT7 terminatorまでを、EcoR Iサイトを付加したプライマー(T7-TdCm-Eco1:配列番号12)とHind IIIサイトを付加したプライマー(T7-TdCm-Hin2:配列番号13)とを用いてPCRで増幅し、EcoR I及びHind IIIで消化してDNA断片を得た。一方で、pU-tacもEcoR I及びHind IIIで消化して、これらの制限酵素サイトに挟まれる短い領域が除去されたDNA断片を得た。得られた2つの断片を連結し、pU-tac-T7-TdCm6Hisベクターを得た。
【実施例】
【0098】
<4-4.pU-T7-TdCm6Hisベクターの作製>
pU-tac-T7-TdCm6Hisベクターからtac promoter領域を除去するために、EcoR Iサイトを付加したプライマー(T7-TdCm-Eco1:配列番号12、及びinv-pU-tac2-Eco:配列番号14)を用いて増幅した後、EcoR Iで処理し、self-ligationによりpU-T7-TdCm6Hisを得た。
【実施例】
【0099】
<4-5.pM-T7-TdCm6Hisベクターの作製>
pU-T7-TdCm6HisベクターをHind III及びMlu Iで消化して、これらの制限酵素サイトに挟まれる、TdCm断片を含むDNA断片を得た。一方で、pMMB67EHベクターもHind III及びMlu Iで消化して、これらの制限酵素サイトに挟まれる短い領域が除去されたDNA断片を得た。得られた2つの断片を連結し、目的物であるpM-T7-TdCm6Hisベクター(T7 polymerase用アッセイベクター)を得た。
【実施例】
【0100】
<4-6.アッセイ>
上記で構築したT7 polymerase用ベクターを、定法に従って大腸菌BL21(DE3)株に導入した。得られた大腸菌を1 mM IPTGを含む液体培地(1% Tryptone, 0.5% Yeast extract, 0.5% NaCl, pH 7.0, 1 mM IPTG)5 mLに植菌し、37℃で16時間培養した。該培養液を1/100に希釈し、該希釈液100 μLを10 cmディッシュ上のクロラムフェニコール含有寒天培地(2 μg/mL クロラムフェニコール, 1.5% agar, 1% Tryptone, 0.5% Yeast extract, 0.5% NaCl, pH 7.0, 1 mM IPTG)及びコントロール寒天培地(クロラムフェニコール含有寒天培地からクロラムフェニコールを除いた組成、又はクロラムフェニコールに替えて50 μg/mL CARを含有する組成を有する)にプレーティングし、37℃で24時間培養した。
【実施例】
【0101】
その結果、2.73×10-5の効率でクロラムフェニコール耐性株が出現した。このことから、T7 polymeraseを用いた場合にも、PODiR配列中のX‐Yで示される塩基配列が欠失したmRNA、及びその欠失に基づいて変異したタンパク質の生成が起こることが示された。