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明細書 :液滴製造デバイス、液滴の製造方法、リポソームの製造方法、固定具及び液滴製造キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6031711号 (P6031711)
登録日 平成28年11月4日(2016.11.4)
発行日 平成28年11月24日(2016.11.24)
発明の名称または考案の名称 液滴製造デバイス、液滴の製造方法、リポソームの製造方法、固定具及び液滴製造キット
国際特許分類 B01J  13/04        (2006.01)
C07K   1/02        (2006.01)
FI B01J 13/04
C07K 1/02
請求項の数または発明の数 23
全頁数 19
出願番号 特願2016-507781 (P2016-507781)
出願日 平成27年3月11日(2015.3.11)
国際出願番号 PCT/JP2015/057113
国際公開番号 WO2015/137380
国際公開日 平成27年9月17日(2015.9.17)
優先権出願番号 2014048037
優先日 平成26年3月11日(2014.3.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成28年3月9日(2016.3.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
発明者または考案者 【氏名】瀧ノ上 正浩
【氏名】森田 雅宗
【氏名】山下 仁義
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100139686、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 史朗
【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100108578、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 詔男
【識別番号】100152146、【弁理士】、【氏名又は名称】伏見 俊介
審査官 【審査官】岩下 直人
参考文献・文献 特開2004-255367(JP,A)
特開昭60-110329(JP,A)
調査した分野 B01J 13/04
C07K 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する内管と、を備える液滴製造デバイスであって、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成され、前記液滴原料が遠心力により送液されることを特徴とする遠心用液滴製造デバイス。
【請求項2】
前記内管吐出口は前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられた請求項1に記載の遠心用液滴製造デバイス。
【請求項3】
前記外管先端部の内径bが、前記内管先端部の内径aの2~30倍である請求項1又は2に記載の遠心用液滴製造デバイス。
【請求項4】
前記内管先端部の内径aが0.1μm~500μmである請求項1~3のいずれか一項に記載の遠心用液滴製造デバイス。
【請求項5】
前記内管先端部における前記外管の内径cが、前記内管先端部の内径aの2~100倍である請求項1~4のいずれか一項に記載の遠心用液滴製造デバイス。
【請求項6】
前記外管先端部の内径bが1μm~1000μmである請求項1~5のいずれか一項に記載の遠心用液滴製造デバイス。
【請求項7】
前記内管先端部と前記外管先端部との距離dが、前記内管先端部の内径aの2~1000倍である請求項2~6のいずれか一項に記載の遠心用液滴製造デバイス。
【請求項8】
外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する内管と、を備え、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成され、下記リポソームの製造方法に使用されることを特徴とするリポソーム製造用デバイス。
(リポソームの製造方法)
前記外管と前記内管との間に形成された間隙に第2の流体が導入され、前記内管内部に第1の流体が導入された状態にあるリポソーム製造用デバイスに対して、
前記第1の流体及び前記第2の流体を同時に送液させることにより、前記第2の流体が外層であり前記第1の流体が内層である流体を形成させて液滴を形成させ、液の界面に配置された両親媒性分子と接触させ、両親媒性分子を含有する膜を前記液滴表面に多重に形成させる。
【請求項9】
前記内管吐出口は前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられた請求項8に記載のリポソーム製造用デバイス。
【請求項10】
外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する内管と、を備え、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成された液滴製造デバイスを用いる液滴の製造方法であって、
前記外管と前記内管との間に形成された間隙に第2の流体が導入され、前記内管内部に第1の流体が導入された状態にある前記液滴製造デバイスに対して、
前記第1の流体及び前記第2の流体を同時に送液させることにより、前記第2の流体が外層であり前記第1の流体が内層である流体を形成させて液滴を形成させ、前記送液が遠心力を用いて行われることを特徴とする液滴の製造方法。
【請求項11】
前記液滴製造デバイスの前記内管吐出口は、前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられた請求項10に記載の液滴の製造方法。
【請求項12】
前記液滴がレイリー・プラトー不安定性により形成される請求項10又は11に記載の液滴の製造方法。
【請求項13】
前記第1の流体が生体分子を含有する請求項1012のいずれか一項に記載の液滴の製造方法。
【請求項14】
前記第2の流体が両親媒性分子を含有する請求項10~13のいずれか一項に記載の液滴の製造方法。
【請求項15】
請求項1014のいずれか一項に記載の液滴の製造方法を用い
液の界面に配置された両親媒性分子と接触させ、両親媒性分子を含有する膜を前記液滴表面に多重に形成させるリポソームの製造方法。
【請求項16】
外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する内管と、を備え、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成された液滴製造デバイスを用い、
前記外管と前記内管との間に形成された間隙に第2の流体が導入され、前記内管内部に第1の流体が導入された状態にある前記液滴製造デバイスに対して、
前記第1の流体及び前記第2の流体を同時に送液させることにより、前記第2の流体が外層であり前記第1の流体が内層である流体を形成させて液滴を形成させ、液の界面に配置された両親媒性分子と接触させ、両親媒性分子を含有する膜を前記液滴表面に多重に形成させることを特徴とするリポソームの製造方法。
【請求項17】
前記液滴製造デバイスの前記内管吐出口は、前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられた請求項16に記載のリポソームの製造方法。
【請求項18】
前記第2の流体が両親媒性分子を含有する請求項16又は17に記載のリポソームの製造方法。
【請求項19】
下記液滴製造デバイスを構成する管を、管内部に配置するために用いられ
前記外管を固定するための外管固定部材と、前記内管を固定するための内管固定部材とを有することを特徴とする固定具。
(液滴製造デバイス)
前記外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する前記内管と、を備え、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成されている。
【請求項20】
前記外管固定部材及び前記内管固定部材は中央部に孔を有する板状の部材であり、
前記外管固定部材及び前記内管固定部材は連結部材により連結され、
前記外管固定部材が有する前記孔及び前記内管固定部材が有する前記孔の夫々に、前記外管及び前記内管が嵌め込まれることで、前記内管が前記外管内部に配置される請求項19に記載の固定具。
【請求項21】
前記連結部材は、前記外管固定部材と前記内管固定部材とを回転自在に連結するネジである請求項20に記載の固定具。
【請求項22】
外管と、内管と、請求項19~21のいずれか一項に記載の固定具とを備え
前記内管を前記外管内部に配置することにより、下記液滴製造デバイスを形成する液滴製造キット。
(液滴製造デバイス)
前記外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する前記内管と、を備え、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成されている。
【請求項23】
前記液滴製造デバイスの前記内管吐出口は、前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられた請求項22に記載の液滴製造キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、少量の液滴原料から、単分散性に優れる液滴を製造可能な液滴製造デバイス、それを用いた液滴の製造方法、リポソームの製造方法、液滴製造デバイスの固定に用いられる固定具、及び液滴製造キットに関する。本願は、2014年3月11日に、日本に出願された特願2014-048037号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、微小な液滴の製造には、フォトリソグラフィー技術によって基板上に作製されたマイクロ流路が用いられている。この流路内に液滴原料の液を流し、送液用のポンプの動作を制御して、液滴原料を液滴化する方法が行われている。例えば、非特許文献1の図3に示される装置では、液滴原料が流れる流路の末端において、該流路とは別の流路が該流路に直角に交差する十字状の流路形状を備えている。液滴原料の液が流路の末端に到達すると、直交する流路から液滴原料の液とは混ざらない別の液がポンプ制御により間欠的に液滴原料の液流に向かって押し出され、これにより液滴原料の液流から液滴1つ分の液量が切り取られるようにして液滴が製造される。
【0003】
しかし、マイクロ流路を作製するには、フォトリソグラフィーを行うための専用装置、専用の作業環境等の設備を整える必要があり、液滴作製のためにそのような設備を新たに整えることは容易ではない。また、複数条件で液滴を作製したい場合にはマイクロ流路を複数作製する必要があるが、マイクロ流路の作製は高コストであるという問題がある。
通常、流路への送液はシリンジポンプが用いられる。しかし、シリンジポンプを用いた場合では、シリンジ内やシリンジと流路との接続部に液滴原料の液が充填される必要があるため、製造した液滴分の液滴原料よりも多くの液滴原料を用意する必要がある。液滴原料としたいサンプルが希少である場合には、このような原料のロスを少なくすることが強く求められる。
また、単分散性に優れる高品質な液滴を製造しようとするとシリンジポンプの動作を正確に行わなければならず、その調整が煩雑である。さらには、正確な送液が求められることにより液滴の生産スピードが低下してしまうという欠点もある。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Charles N. Baroud, Francois Gallaire and Remi Dangla「Dynamics of microfluidic droplets」 Lab on a Chip, 2010, 10, p2032-2045
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、少量の液滴原料から製造することが可能であり、単分散性に優れ、且つ液滴の生産性の高い液滴製造デバイスの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、下記の特徴を有する液滴製造デバイスにより前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の特徴を有する液滴製造デバイス、液滴の製造方法、固定具及び液滴製造キットを提供する。
【0007】
(1)外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する内管と、を備える液滴製造デバイスであって、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成され、前記液滴原料が遠心力により送液されることを特徴とする遠心用液滴製造デバイス。
(2)前記内管吐出口は前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられた前記(1)に記載の遠心用液滴製造デバイス。
(3)前記外管先端部の内径bが、前記内管先端部の内径aの2~30倍である前記(1)又は(2)に記載の遠心用液滴製造デバイス。
(4)前記内管先端部の内径aが0.1μm~500μmである前記(1)~(3)のいずれか一つに記載の遠心用液滴製造デバイス。
(5)前記内管先端部における前記外管の内径cが、前記内管先端部の内径aの2~100倍である前記(1)~(4)のいずれか一つに記載の遠心用液滴製造デバイス。
(6)前記外管先端部の内径bが1μm~1000μmである前記(1)~(5)のいずれか一つに記載の遠心用液滴製造デバイス。
(7)前記内管先端部と前記外管先端部との距離dが、前記内管先端部の内径aの2~1000倍である前記(2)~(6)のいずれか一つに記載の遠心用液滴製造デバイス。
(8)外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する内管と、を備え、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成され、下記リポソームの製造方法に使用されることを特徴とするリポソーム製造用デバイス。
(リポソームの製造方法)
前記外管と前記内管との間に形成された間隙に第2の流体が導入され、前記内管内部に第1の流体が導入された状態にあるリポソーム製造用デバイスに対して、
前記第1の流体及び前記第2の流体を同時に送液させることにより、前記第2の流体が外層であり前記第1の流体が内層である流体を形成させて液滴を形成させ、液の界面に配置された両親媒性分子と接触させ、両親媒性分子を含有する膜を前記液滴表面に多重に形成させる。
(9)前記内管吐出口は前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられた前記(8)に記載のリポソーム製造用デバイス。
【0008】
10外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する内管と、を備え、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成された液滴製造デバイスを用いる液滴の製造方法であって、
前記外管と前記内管との間に形成された間隙に第2の流体が導入され、前記内管内部に第1の流体が導入された状態にある前記液滴製造デバイスに対して、
前記第1の流体及び前記第2の流体を同時に送液させることにより、前記第2の流体が外層であり前記第1の流体が内層である流体を形成させて液滴を形成させ、前記送液が遠心力を用いて行われることを特徴とする液滴の製造方法。
(11)前記液滴製造デバイスの前記内管吐出口は、前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられた前記(10)に記載の液滴の製造方法。
12)前記液滴がレイリー・プラトー不安定性により形成される前記(10)又は(11)に記載の液滴の製造方法。
13)前記第1の流体が生体分子を含有する前記(10)~(12)のいずれか一つに記載の液滴の製造方法。
(14)前記第2の流体が両親媒性分子を含有する前記(10)~(13)のいずれか一つに記載の液滴の製造方法。
15)前記(10)~(14)のいずれか一つに記載の液滴の製造方法を用い
液の界面に配置された両親媒性分子と接触させ、両親媒性分子を含有する膜を前記液滴表面に多重に形成させるリポソームの製造方法。
(16)外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する内管と、を備え、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成された液滴製造デバイスを用い、
前記外管と前記内管との間に形成された間隙に第2の流体が導入され、前記内管内部に第1の流体が導入された状態にある前記液滴製造デバイスに対して、
前記第1の流体及び前記第2の流体を同時に送液させることにより、前記第2の流体が外層であり前記第1の流体が内層である流体を形成させて液滴を形成させ、液の界面に配置された両親媒性分子と接触させ、両親媒性分子を含有する膜を前記液滴表面に多重に形成させることを特徴とするリポソームの製造方法。
(17)前記液滴製造デバイスの前記内管吐出口は、前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられた前記(16)に記載のリポソームの製造方法。
(18)前記第2の流体が両親媒性分子を含有する前記(16)又は(17)に記載のリポソームの製造方法。
【0009】
19下記液滴製造デバイスを構成する管を、管内部に配置するために用いられ
前記外管を固定するための外管固定部材と、前記内管を固定するための内管固定部材とを有することを特徴とする固定具。
(液滴製造デバイス)
前記外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する前記内管と、を備え、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成されている。
20)前記外管固定部材及び前記内管固定部材は中央部に孔を有する板状の部材であり、
前記外管固定部材及び前記内管固定部材は連結部材により連結され、
前記外管固定部材が有する前記孔及び前記内管固定部材が有する前記孔の夫々に、前記外管及び前記内管が嵌め込まれることで、前記内管が前記外管内部に配置される前記(19)に記載の固定具。
21)前記連結部材は、前記外管固定部材と前記内管固定部材とを回転自在に連結するネジである前記20に記載の固定具。
22)外管と、内管と、前記(19)~(21)のいずれか一つに記載の固定具とを備え
前記内管を前記外管内部に配置することにより、下記液滴製造デバイスを形成する液滴製造キット。
(液滴製造デバイス)
前記外管と、前記外管の内部に配置され、液滴原料を送液する前記内管と、を備え、
流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、
前記外管と前記内管との間には間隙が形成されている。
(23) 前記液滴製造デバイスの前記内管吐出口は、前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられた前記(22)に記載の液滴製造キット。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液滴製造デバイスによれば、少量の液滴原料から、高い生産性で、単分散性に優れた液滴を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)~(b)本発明に係る液滴製造デバイスの実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)~(c)本発明に係る液滴製造デバイスを用いて液滴が製造される様子を示す図である。
【図3】本発明に係る液滴製造デバイスの好ましい形状を説明するための斜視図である。
【図4】本発明に係る液滴製造デバイスを用いて人工細胞膜小胞(リポソーム)が製造される様子を示す図である。
【図5】本発明に係る固定具の実施形態の一例を示す斜視図である。
【図6】(a)~(c)本発明に係る固定具の一例において、外管及び内管を同心円状に配置する様子を示す正面図である。
【図7】(a)本発明に係る固定具及び液滴製造デバイスが液滴回収用のチューブへと収納された様子を示す模式図である。(b)本発明に係る固定具及び液滴製造デバイスが液滴回収用のチューブへと収納された様子を示す写真である。
【図8】実施例1において製造された油中水滴の様子を示す写真である。
【図9】(a)実施例1において製造された油中水滴の様子を示す写真である。(b)実施例2において製造された油中水滴の様子を示す写真である。(c)実施例3において製造された油中水滴の様子を示す写真である。(d)実施例1~3において製造された水滴のサイズ分布を示すグラフである。
【図10】実施例1~3において製造された水滴の平均値と内管先端部の内径との関係を示すグラフである。
【図11】実施例1~9において製造された水滴の単分散性の評価を示すグラフである。
【図12】実施例10において液滴内にて製造された、緑色蛍光タンパク質の様子を示す写真である。
【図13】実施例11において製造されたリポソームの様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪液滴製造デバイス≫
本発明の液滴製造デバイスは、外管と、該外管の内部に配置され液滴原料を送液する内管と、を有する液滴製造デバイスであって、流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、前記外管と前記内管との間には間隙が形成される。間隙では液滴原料とは混じり合わない又は混じり合い難い流体が送液される。

【0013】
外管及び内管の流路の断面形状は特に制限されず、円形、楕円形、多角形等とすることができる。内管の形状は、内管の周囲に間隙を途切れなく形成させることのできるよう、外管内壁と接する部分のない形状とすることが好ましい。
なお、好ましい流路内径の値について後述するが、流路の断面形状が真円でない場合、流路の断面積がほぼ同一の真円として換算し、好ましい内径の値とすることができる。

【0014】
<第一実施形態>
本実施形態の液滴製造デバイスは、同心円状に配置された外管及び内管を有する液滴製造デバイスであって、流体の送液方向で下流側に形成された内管先端部に内管吐出口が開口し、同じく流体の送液方向で下流側に形成された外管先端部に外管吐出口が開口し、前記外管と前記内管との間には間隙が形成されるものである。
以下、本発明に係る液滴製造デバイスの実施形態の一例を、図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明に係る液滴製造デバイスの実施形態の一例である。本実施形態の液滴製造デバイス1は、同心円状に配置された外管2及び内管3を有している。外管及び内管の流路の断面形状は真円である。図1に示すように、内管3は外管2の内部に配置され、外管2と内管3との間には間隙2cが形成されている。より詳しくは、外管2の内壁と内管3の外壁との間には間隙2cが形成されている。
内管3の内部には流体F1が充填されている。間隙2cには流体F2が充填されている。なお、流体F1及び流体F2は本実施形態の液滴製造デバイスの構成要素ではない。
前記流体F1及び流体F2は、外管2及び内管3の軸方向に送液される。外管2及び内管3における流体F1及び流体F2の送液方向は互いに同一である。本実施形態の液滴製造デバイス1における流体の送液方向を、図1中の矢印で示される方向としたとき、内管先端部3aには内管吐出口3bが開口し、外管先端部2aには外管吐出口2bが開口している。
<第二実施形態>
本実施形態の液滴製造デバイス11は、前記第一実施形態の液滴製造デバイスの内管吐出口が前記外管吐出口よりも流体の送液方向で上流側の外管内部に設けられているものである。第一実施形態の液滴製造デバイスと共通する点について、説明を省略する。
図1(b)に示すように、内管吐出口3bは、外管吐出口2bよりも当該送液方向の上流側の外管2内部に設けられている。このように、本実施形態の液滴製造デバイス11は、内管先端部3aよりも送液方向上流側では、外管2と内管3からなる複合管部4を有しており、内管先端部3aよりも送液方向下流側では、外管2からなる単管部5を有している。

【0015】
図2に、液滴製造デバイス11を用いて液滴が製造される様子を模式的に示す。液滴製造デバイス11では、複合管部4において外管2と内管3との間に形成された間隙2cに流体F2が、内管3内部に流体F1がそれぞれ導入された状態にある(図2(a))。流体F1が液滴原料である。また、単管部においては外管内部に流体F2が導入された状態にある。ここで、図2(b)中の矢印で示される方向に流体F1及び流体F2を送液する。すると同心円状の外管2及び内管3の位置関係を維持したまま流体F1及び流体F2が送液され、流体F2が外層であり流体F1が内層である層流が単管部5において形成される(図2(b))。さらに流体F1及び流体F2の送液が進むと、内層である流体F1の流れが不連続になり、流体F1の流れの先端(下流側)から流体F1の液滴が形成される。
流体F1の流れが不連続となるのは、単管部5における流体F1及び流体F2間の流れがレイリー・プラトー不安定性により不安定となることによると考えられる。

【0016】
液滴製造デバイス1では、外管2及び内管3を有し、外管2と内管3との間には間隙が形成されているので、少量の液滴原料の液(流体F1)を内管3内部に配置し、液滴原料と混じり合わない又は混じり合い難い液(流体F2)を間隙2cに配置し、送液を行うだけで、少量の液滴原料から流体F1の液滴を極めて容易に製造することができる。そして、製造された液滴は単分散性に優れた高品質なものである。

【0017】
液滴製造デバイス11では、外管2に囲まれた単管部5が形成されていることにより、流体F2が外層であり流体F1が内層である層流が効率よく形成されるため、単分散性に優れる液滴をより効率的に製造することができる。流体F1の液滴の製造に必要な流体F1の量は内管3に導入される量のみであり、本実施形態の液滴製造デバイス1によれば少量の液滴原料から液滴を製造することが可能である。また、複雑な送液制御を必要とせずに短時間で多数の液滴を製造することができる。

【0018】
<液滴製造デバイスの好ましい形状>
次に、単分散性に優れる液滴をより容易に製造可能とするとの観点から、本発明に係る液滴製造デバイスの好ましい形状について、図3を参照して説明する。
液滴製造デバイス11を構成する内管3の内管先端部3aの内径aは、0.1μm~500μmであることが好ましく、1μm~100μmであることがより好ましく、5μm~30μmであることがさらに好ましい。内管先端部3aの内径aが上記範囲にある液滴製造デバイス11では、製造される液滴はマイクロ流体力学の法則に従うため、単分散性に優れる液滴をより容易に製造することが可能となる。また、製造される液滴の直径と内径aとが正の相関を示し易く、製造される液滴のサイズ制御をより容易に行うことができる。

【0019】
内管先端部3aの内径aと外管先端部2aの内径bとの比は、流体F2が外層であり流体F1が内層である層流が形成され得るものであれば特に限定されないが、単分散性に優れる液滴をより容易に製造可能とするとの観点から、内径aと内径bとの比は、内径bが内径aの2~30倍であることが好ましく、3~20倍であることがより好ましく、4~18倍であることがさらに好ましく、4.5~15倍であることがさらに好ましく、5~10倍であることが特に好ましい。

【0020】
単分散性に優れる液滴の製造には、単管部5において、流体F2が外層であり流体F1が内層である層流が形成されることが好ましい。当該層流の形状は内径cと内径aとの比によっても決定される。内径cと内径aとの比は、層流が形成され得るものであれば特に限定されないが、好ましい内径cと内径aとの比として、内管先端部3aにおける外管の内径cが内管先端部3aの内径aの2~100倍程度であることが好ましく、3~50倍程度であることがより好ましく、5~10倍程度であることがさらに好ましい。内径cと内径aとの比が上記範囲にあると、単分散性に優れる液滴がより得られ易い。
なお、上述の液滴製造デバイス1のように内管先端部3aが外管先端部2aと一致する場合は、内径cと内径bは同一部分を指すので、内径aと内径cの比は、上述した内径aと内径bとの比と同様である。

【0021】
外管先端部2aの内径bは、1μm~1000μmであることが好ましく、10μm~400μmであることがより好ましく、40μm~100μmであることがさらに好ましく、40μm~60μmであることが特に好ましい。内径bが1000μ以下であると、製造される液滴の直径と内径aとが正の相関を示し易い。特に内径bが60μm以下であると、外管先端部2aから吐出された流体が雫状に膨らみ難くなるため、製造される液滴の直径と内径aとが正の相関をより示し易い。このため液滴のサイズ制御がより容易である。

【0022】
液滴は、流体F1の流れの先端(下流側)から、順次形成される。液滴製造デバイス11は単管部5を有するので、単管部5を構成する外管2により流体が効率良く送液される。このように、液滴は単管部5において形成されることが好ましい。通常、液滴の形成に必要な距離は液滴の内径の10倍程度である。したがって、内管先端部3aと外管先端部2aとの距離dが、内管先端部の内径aの2~1000倍程度であることが好ましく、5~500倍程度であることがより好ましく、7~300倍程度であることがさらに好ましい。

【0023】
本発明の液滴製造デバイスは、液滴原料を遠心力により送液することで、液滴を製造可能な遠心用液滴製造デバイスであることが好ましい。遠心用液滴製造デバイスとは、遠心分離機等を用いて、遠心力によって液滴を製造するのに好適な構造を有するものであり、例えば、液滴を製造可能な遠心力をかけても破損しない程度の強度を有する。
また、遠心分離機を用いた遠心力による送液を容易とするという観点から、液滴製造デバイス11の長さは、0.1~30cmの範囲であることが好ましく、0.5~15cmの範囲であることがより好ましく、1~5cmの範囲であることがさらに好ましい。

【0024】
外管2及び内管3の構成材料は特に制限されず、例えば、樹脂、金属、ガラス等の材料を使用することができる。なかでも、外管2及び内管3の構成材料としてガラスが用いられることが好ましい。ガラス管は、市販のガラス管を熱して引き延ばすことで微細な内径の管の作製が容易であり、所望の径を有する部分でガラス管を切断すれば、容易に所望の径を有する外管2及び内管3を得ることができる。

【0025】
≪液滴の製造方法≫
本発明の液滴の製造方法は、本発明の液滴製造デバイスを用いる液滴の製造方法であって、前記外管と前記内管との間に形成された間隙に第2の流体が導入され、前記内管内部に第1の流体が導入された状態にある液滴製造デバイスにおいて、前記第1の流体及び前記第2の流体を同時に送液させることにより、前記第2の流体が外層であり前記第1の流体が内層である流体を形成させるものである。
一例としては、上述の≪液滴製造デバイス≫で示した第二実施形態の液滴製造デバイス11を用いる液滴の製造方法である。第1の流体が流体F1に相当し、第2の流体が流体F2に相当する。液滴製造デバイス11を用いた液滴の製造方法については、上述の≪液滴製造デバイス≫の説明において先に図2を参照して説明したものと重複するため、説明を省略する。なお、液滴製造デバイス11を用いた場合、前記第2の流体が外層であり前記第1の流体が内層である流体を、前記内管先端部と前記前記外管先端部との間に形成させるので、送液が効率的となり、単分散性に優れる液滴をより効率的に製造することができる。

【0026】
本発明の液滴製造デバイスを用いた液滴の製造方法によれば、単分散性に優れる液滴の製造に必要な送液作業は、少なくとも一方向且つ一回のみで十分あり、複雑な送液制御を必要とせず、高い液滴の生産性を実現できる。

【0027】
当該送液を行う手段は特に制限されず、ポンプを用いる等の定法により行うことができるが、遠心力を用いて行われることが好ましい。遠心力を用いた送液は、遠心分離機等を用いて行うことができる。遠心分離機としては卓上小型遠心機が好ましい。本発明の液滴の製造方法は卓上小型遠心機を用いて簡便に送液ができる点からも優れている。従来のマイクロ流路を用いた液滴の製造方法でシリンジポンプによる送液を行った場合には、シリンジ内やシリンジと流路との接続部に液滴原料の液が充填される必要があった。そのため、シリンジ内やシリンジと流路との接続部にデッドボリュームとなってしまう余分な液滴原料が必要となってしまい、例えば、直径10μmの液滴を1万個製造するには、通常数mLの液滴原料の液が必要であった。対して、本発明の液滴製造デバイスを用いて遠心力により送液を行った場合では、余分な液滴原料を用意する必要はなく、流体F1の液滴の製造に必要な液滴原料の量は内管3に導入されるのみであるため、例えば、0.1μLの液滴原料から直径10μmの液滴を1万個製造することも可能である。また、遠心分離機による送液では複雑な送液の制御を必要としないため、ポンプを用いた送液と比較して、極めて容易に送液操作を行うことができる。

【0028】
第1の流体と第2の流体との組合せ(上述の≪液滴製造デバイス≫の動作の説明においては流体F1と流体F2の組合せ)は、二液相分離系である組合せ又は二液が混じりあい難い組合せであれば特に制限されない。例えば、流体F1と流体F2との好ましい組合せとしては、油と水の組合せが挙げられる。流体F1が水で流体F2が油の組合せ(油中水滴)でも、その逆の流体F1が油で流体F2が水の組合せ(水中油滴)であってもよい。油としては、ミネラルオイル、オリーブオイル等の植物油、シリコンオイル、デカン等が挙げられる。上記水としては水溶液の状態であってもよく、緩衝液、細胞抽出液などの生物試料由来の溶液等が挙げられる。

【0029】
液滴の界面は両親媒性分子によって区画化されていてもよい。界面が両親媒性分子によって区画化されることで、液滴同士が融合してしまう恐れが低減される。両親媒性分子としては界面活性剤、脂質等を挙げることができる。界面活性剤としては、Span80, Tween80, Tween20, TritonX-100, ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等を例示できる。脂質としては、ジオレオイルフォスファチヂルコリン(DOPC), ジパルミトイルフォスファチヂルコリン(DPPC), コレステロール, スフィンゴミエリン, 糖脂質ガングリオシド等を例示できる。

【0030】
各液滴一つ一つは、言わば微小な試験管として用いることができる。液滴内に反応物を含有させることで、各液滴内で独立に多数の化学反応を起こすことができる。本発明の液滴の製造方法によって製造される液滴は単分散性に優れるので、測定結果は均質な多サンプルの測定結果として利用することができる。これは反応結果の平均値を得る際などに有用である。また、液滴ごとに異なる反応条件やサンプル等が含有させることも可能であるため、多検体のスクリーニングを一度に行ったり、様々な条件を一度に試したりすることができる。液滴内で実施され得る反応の一例として、化学合成、遺伝子解析、PCR、タンパク質結晶化、酵素活性測定などが挙げられる。

【0031】
<人工細胞膜小胞(リポソーム)の製造方法>
本発明の液滴の製造方法によれば、例えば、直径0.1μm~500μm程度の微小液滴を多量に製造することが可能である。この直径0.1μm~500μmの液滴サイズは、一般的な細胞のサイズである直径5μm~30μm程度を包含するので、細胞を模した構造の人工細胞膜小胞(リポソーム)を製造することができる。なお、本発明において、リポソームは液滴に包含されるものとする。
以下、図4に、液滴製造デバイス11を用いた人工細胞膜小胞(リポソーム)が製造される様子の一例を模式的に示す。図4は液滴製造デバイス11により液滴が製造される過程を示している。内管3には流体F1として水又は緩衝液が導入されている。間隙2cには流体F2としてミネラルオイルが導入されている。流体F2には両親媒性分子としてジオレオイルフォスファチヂルコリン(DOPC)が含有されている。液滴製造デバイス11の外管先端部2aは流体F2と同じミネラルオイルに没するように配置されている。さらに送液方向の下流側では、今度は水又は緩衝液が配置されている。水又は緩衝液とミネラルオイルの界面には両親媒性分子としてDOPCが配置されている。
まず、液滴製造デバイス11により製造された液滴が外管先端部2aからミネラルオイル内へと放出される。この時放出された液滴は脂質の一重膜を有している。このまま該液滴は送液方向を直進しミネラルオイルと水又は緩衝液の界面に配置されたDOPCに接触し、DOPCに包まれつつ水又は緩衝液内へと到達する。この時、液滴は脂質二重膜を有している。このようにして、細胞と同様に脂質二重膜を有する人工細胞膜小胞(リポソーム)を得ることができる。
さらに、流体F1内に予めタンパク質、DNA、RNA等の生体分子及び/又は生体物質を含有させることで、機能的にも細胞に類似した人工細胞とすることができる。これらの生体分子を用いて、細胞内及び細胞外で通常生じる種々の代謝の反応を、液滴内部にて生じさせることが可能である。
また、流体F2内に混合している脂質と下流側のミネラルオイル内に混合している脂質を異なる種類のものにすることで、脂質二重膜の外層と内層を非対称にすることができる。

【0032】
≪固定具≫
本発明の固定具は、本発明の液滴製造デバイスを構成する前記内管を、前記外管内部に配置するために用いられる固定具であって、前記外管を固定するための外管固定部材と、前記内管を固定するための内管固定部材とを有する。
図5は本発明に係る固定具6の実施形態の一例である。
外管固定部材7及び内管固定部材8は中央部に孔を有する板状の部材であり、外管固定部材7及び内管固定部材8は連結部材9により連結されている。連結部材9は、外管固定部材7と内管固定部材8とを回転自在に連結するネジである。さらに固定具6には、外管及び内管を支えてより効果的に同心円状の配置を保つため、中央部に孔を有する板状の部材である支持体10,10’が備えられている。

【0033】
図6に、固定具6を用いて外管2と内管3とを同心円状に配置する手順の一例を示す。図6(a)に示す固定具6では、外管固定部材7、支持体10、内管固定部材8及び支持体10’の有する孔が同心円状列に配置されている。
まず、内管固定部材8及び支持体10’を回転させ、外管固定部材7及び支持体10の有する各孔の中心と、内管固定部材8及び支持体10’の有する各孔の中心とをずらし、外管固定部材7及び支持体10の有する各孔に外管2を挿入する(図6(b))。ここで外管2は流体の送液方向で上流側ほど外径が大きくされているので、外管固定部材7に設けられた孔7aに通すことで外管2が嵌め込まれ、外管2が固定される。
次いで、内管固定部材8及び支持体10’を回転させ、外管固定部材7及び支持体10の有する各孔の中心と、内管固定部材8及び支持体10’の有する各孔の中心とを一致させ、内管固定部材8及び支持体10’の有する各孔に内管3を挿入する(図6(c))。ここで内管3も流体の送液方向で上流側ほど外径が大きくされているので、内管3を内管固定部材8に設けられた孔8aに通すことで内管3が嵌め込まれ、内管3が固定される。このようにして、外管2及び内管3を同心円状に配置することができる。
固定具6では、外管固定部材7、支持体10、内管固定部材8及び支持体10’がネジである連結部材9によって連結されている。そのため、各部材を回転させて部材同士の距離を調節することが可能である。仮に外管固定部材7と内管固定部材8との距離が大きすぎるために外管2と内管3とが同心円状に配置されない場合でも、外管固定部材7と内管固定部材8との距離を小さくして、外管2内に内管3が同心円状に配置されるよう調節することができる。

【0034】
ところで、液滴製造デバイスによって製造された液滴は、液滴原料の送液方向の下流側に配置された容器内に溜められてもよい。固定具6は、前記内管を、前記外管内部に配置するために用いられることに加えて、前記内管及び前記外管を前記容器に取り付けるために用いられてもよい。例えば、固定具6の一部又は全部を容器内に挿入し、外管固定部材7、内管固定部材8、支持体10、支持体10’等の固定具6の構成部材の表面と、容器内壁面とを当接させて、前記内管及び前記外管を前記容器内に取り付け可能である(後述の図7も参照)。

【0035】
≪液滴製造キット≫
本発明の液滴製造キットは外管と内管とを備え、内管を外管内部に配置することにより、本発明の液滴製造デバイスを形成する。液滴製造デバイスとしては、上述した液滴製造デバイス1及び液滴製造デバイス11に代表される。
また、本発明の液滴製造キットは、本発明の固定具、液滴原料、両親媒性分子等の試薬類、製造された液滴を溜めるための容器等をさらに備えてもよい。固定具としては、上述した固定具6に代表される。
本発明の液滴製造キットでは、複数種類のサイズの液滴を製造可能とする目的で、液滴製造デバイスを構成する内管3が、内管先端部3aの内径が夫々異なる複数種類の内管3を備えていてもよい。内管先端部3aの内径が異なる内管3を備える液滴製造キットによれば、内管3を取り換えるだけで簡便に複数サイズの液滴を製造可能である。

【0036】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
<実施例1>
[固定具を使用して内管及び外管が固定された液滴製造デバイスの作製]
(内管・外管)
プーラー(製造元:ナリシゲ、型番:PC-10)を使用して、市販のガラス管(製造元:ナリシゲ、型番:G-1, 製造元:World Precision Instruments、型番:1B200—6)を引きのばし、以下の形状を有する外管2及び内管3を作製した。
内管先端部3aの内径a:10μm
外管先端部2aの内径b:60μm
(固定具)
ポリアセタール樹脂を加工し、直径0.9cm、厚み0.2cmで中心部に直径0.2cmの孔が設けられた板を4枚作製し、それぞれを外管固定部材7、支持体10、内管固定部材8及び支持体10’とした。さらに2本のネジ(規格:M2×15)を貫通させるための2か所ネジ穴を、各板の端部にそれぞれ同位置に設けた。外管固定部材7、支持体10、内管固定部材8及び支持体10’に図5及び図6に示される順で1本目のネジを通した。
【実施例】
【0038】
(液の導入)
外管2内部に、Span80を2%(w/w)含有するヘキサデカンを9μL封入した。
内管先端部3aを、水に浸し、毛細管現象により内管3内部に0.1μLの水を吸い上げた。なお、内管3内部には10μL程度の水を封入可能である。
(内管及び外管の固定)
図6に示す手順で、固定具6を用いて外管2と内管3とを同心円状に配置した。これにより外管2と内管3との間に形成された間隙2cにSpan80を含有したヘキサデカンが、内管3内部に水がそれぞれ導入された状態となった。内管先端部3aと前記外管先端部2aとの距離dは2000μmであり、内管先端部3aにおける外管の内径cは115μmであった。2本目のネジを外管固定部材7、支持体10、内管固定部材8及び支持体10’に通してこれらを固定した。
【実施例】
【0039】
[液滴回収の準備]
市販の1.5mLチューブ(製造元:日京テクノス(株)、型番:MP-150HC)に100μLのヘキサデカンを注ぎ、外管2及び内管3を固定した固定具6をチューブへと収納した(図7(a),(b))。このとき外管先端部はチューブ底に溜められたヘキサデカンの液中に浸っていた。
【実施例】
【0040】
[液滴の製造]
チューブを卓上小型遠心機(製造元:(株)ハイテック、型番:ATT-101)にセットし、1200G(使用した卓上小型遠心機の最大出力)の遠心力で3秒間遠心し、ヘキサデカン及び水を同時に送液し、レイリー・プラトー不安定性により水滴を製造した。製造された水滴はチューブ底に溜められたヘキサデカン中に放出された。
【実施例】
【0041】
[液滴の確認]
実施例1において製造された水滴の画像を図8及び図9(a)に示す。3秒間の送液操作で約5万個の液滴を製造することができた。
【実施例】
【0042】
<実施例2>
実施例1の液滴製造デバイスの作製において、内管先端部3aの内径aを5μmにした以外は実施例1と同様にして液滴製造デバイスの作製を行い、液滴を製造した。
[液滴の確認]
実施例2において製造された水滴の画像を図9(b)に示す。
【実施例】
【0043】
<実施例3>
実施例1の液滴製造デバイスの作製において、内管先端部3aの内径aを20μmにした以外は実施例1と同様にして液滴製造デバイスの作製を行い、液滴を製造した。
[液滴の確認]
実施例3において製造された水滴の画像を図9(c)に示す。
【実施例】
【0044】
<実施例1~3で製造された水滴の比較>
実施例1~3で製造された水滴のサイズを計測した結果を図9(d)のグラフに示す。図9(d)のグラフから単分散性に優れる液滴を、短時間で大量に製造できたことがわかる。
【実施例】
【0045】
内管先端部の内径(a)と油中水滴の直径サイズ(x)については、以下の値であった。
a = 5 μmで、x = 8.0±3.0 μm
a = 10 μmで、x = 13.0±3.3 μm
a = 20 μmで、x = 18.5±4.2 μm
この値をグラフにしたものを図10に示す。内管先端部の内径と油中水滴の直径は、ほぼ比例関係にあることがわかる。このことから、内管の先端部の内径(a)を変更するだけで、水滴の直径を制御可能であることが示された。
【実施例】
【0046】
<内管先端部の内径aと外管先端部の内径bとの比についての検討>
実施例1~3と同様にして、内径aがそれぞれ5μm、10μm、20μmである内管を製造し、内径bがそれぞれ40μm、60μm、80μm、100μmである外管を製造した。これらの外管と内管を組みわせ、以下の形状を有する液滴製造デバイスを製造した。
【実施例】
【0047】
【表1】
JP0006031711B2_000002t.gif
【実施例】
【0048】
次いで、実施例1で示したものと同様の方法で液滴を製造し、液滴の直径の単分散性を評価した。単分散性の評価は、単分散性制御率 = 単分散の結果が得られた回数/全試行数として算出した。標準偏差が3~4μmであれば、単分散の結果が得られたこととした。全試行数は各実施例ともに最低3回行った。
結果を図11に示す。実施例1~9の液滴製造デバイスにより製造された液滴は、単分散性制御率60%以上であり、これらの液滴製造デバイスによれば、単分散性に優れた液滴を製造可能であることが示された。特に、実施例1、2、4~9の液滴製造デバイスより製造された液滴は、単分散性制御率80%以上であり、これらの液滴製造デバイスによれば、単分散性に極めて優れた液滴を製造可能であることが示された。
【実施例】
【0049】
<実施例10:蛍光タンパク質の合成>
液滴製造デバイスを用いて製造した液滴内で、タンパク質合成を行った。まず、内管内部にタンパク質発現システム(緑色蛍光タンパク質(GFP)の鋳型DNA、アミノ酸、タンパク質合成に必要な各種因子)を含む緩衝液を導入し、液滴を製造した。製造された液滴は1.5mLチューブに溜められた。
次いで、当該1.5mLチューブを37℃でインキュベーションした。これにより鋳型DNAの情報が転写され、RNAが合成され、さらにはRNAの情報が翻訳されて、タンパク質が合成される。37℃インキュベーション前と、37℃インキュベーション後の液滴の様子を図12に示す。今回、発現させたタンパク質はGFPなので、液滴内でのみ、緑色の蛍光が観察された。本発明に係る液滴製造デバイスにより製造された液滴内で、タンパク質の合成が可能であることが示された。
【実施例】
【0050】
<実施例11:リポソームの製造>
上記実施例1に示す液滴製造デバイス、及びそれを用いた液滴の製造において、間隙2Cに導入したSpan80を含有したヘキサデカンに代えて、終濃度5mMでL-α-phosphatidylcholine(Egg PC(100%))を含有したミネラルオイルを導入したこと、並びに、1.5mLチューブに注いだヘキサデカンに代えて、終濃度5mMでL-α-phosphatidylcholine(Egg PC(100%))を含有したミネラルオイル及び水を導入したこと以外は、実施例1と同様にして、リポソームの製造を行った。上記1.5mLチューブ内では、ミネラルオイルと水との界面にEggPCが一様に配置される。
【実施例】
【0051】
実施例11において製造されたリポソームの画像を図13に示す。本実施例によれば、上記実施例1に示す液滴製造デバイスにより、リポソームが製造可能であることが示された。
内管先端部の内径(a)とリポソームの直径サイズ(x)については、以下の値であった。
a = 10 μmで、x = 10.0±4.0μm
【実施例】
【0052】
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、化学関連分野、物理学関連分野、生物関連分野などに幅広く利用可能であり、化学合成、遺伝子解析等にも利用可能である。また、実施例において示されるとおり、本発明は、液滴内でのタンパク質合成や、人工細胞膜小胞(リポソーム)の製造にも利用可能であるので、特に生物学関連分野、医学関連分野において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1,11…液滴製造デバイス、2…外管、2a…外管先端部、2b…外管吐出口、2c…間隙、3…内管、3a…内管先端部、3b…内管吐出口、4…複合管部、5…単管部、
6…固定具、7…外管固定部材、8…内管固定部材、9…連結部材、10,10’…支持体、F1,F2…流体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図10】
6
【図11】
7
【図7】
8
【図8】
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【図9】
10
【図12】
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【図13】
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