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明細書 :ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を有効成分とする脂質吸収促進剤及びこれを含む飲食品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明の名称または考案の名称 ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を有効成分とする脂質吸収促進剤及びこれを含む飲食品
国際特許分類 A61K  35/618       (2015.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P   3/00        (2006.01)
A61P   1/00        (2006.01)
A23L  33/10        (2016.01)
A23L  33/17        (2016.01)
A23L   2/52        (2006.01)
A23J   3/04        (2006.01)
A23J   1/04        (2006.01)
A23K  10/20        (2016.01)
A23K  20/147       (2016.01)
C07K   5/08        (2006.01)
C07K   5/10        (2006.01)
C07K   7/06        (2006.01)
C07K  14/435       (2006.01)
FI A61K 35/618 ZNA
A61K 37/18
A61P 3/00
A61P 1/00
A23L 1/30 A
A23L 1/305
A23L 2/00 F
A23J 3/04 501
A23J 1/04
A23K 10/20
A23K 20/147
C07K 5/08
C07K 5/10
C07K 7/06
C07K 14/435
国際予備審査の請求
全頁数 21
出願番号 特願2015-531806 (P2015-531806)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成25年2月18日に、独立行政法人科学技術振興機構が実施するA-STEP(研究成果最適展開支援プログラム、ウェブサイト:http://www.jst.go.jp/a-step/index.html)に関する「A-STEP〔FS〕探索タイプの平成23年度・平成24年度上期終了課題の事後評価結果」の一つとして、ウェブサイト上で発明の内容が公開された。
国際出願番号 PCT/JP2014/071169
国際公開番号 WO2015/022930
国際出願日 平成26年8月11日(2014.8.11)
国際公開日 平成27年2月19日(2015.2.19)
優先権出願番号 2013168308
優先日 平成25年8月13日(2013.8.13)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】岸村 栄毅
【氏名】武田 浩郁
【氏名】秋野 雅樹
【氏名】麻生 真悟
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
【識別番号】310010575
【氏名又は名称】地方独立行政法人北海道立総合研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100113332、【弁理士】、【氏名又は名称】一入 章夫
審査請求 未請求
テーマコード 2B150
4B017
4B018
4C084
4C087
4H045
Fターム 2B150AA01
2B150AA02
2B150AA03
2B150AA05
2B150AA08
2B150AB01
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2B150DA57
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4B017LL09
4B017LP03
4B017LP06
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4B018LB08
4B018LE03
4B018MD20
4B018MD75
4B018ME14
4B018MF06
4B018MF12
4C084AA02
4C084BA15
4C084BA16
4C084BA43
4C084CA47
4C084DC50
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZC33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB16
4C087CA16
4C087CA44
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZC33
4H045BA12
4H045BA13
4H045CA50
4H045EA01
4H045EA07
4H045FA70
要約 【課題】
本発明は、水産廃棄物であるホタテ貝外套膜のさらなる有効利用の可能性を提供することを目的とするものである。
【解決手段】
本発明は、ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を有効成分とする脂質吸収促進剤、これを含む飲食品及び非ヒト動物用飼料を提供する。本発明の脂質吸収促進剤は安全性が高く、そのまま摂取してもよく、あるいは様々な飲食品の形態へと加工して利用することもできる。さらには本発明の脂質吸収促進剤を他の飲食品や動物用飼料へ添加したりすることで、脂質吸収促進効果を有する飲食品又は飼料を提供することが可能になる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を有効成分とする脂質吸収促進剤。
【請求項2】
タンパク質分解物がAla-Pro-Lys、Gly-Gln-Gly、Ile-Met-Asp、Glu-Gln-Gly-Glu又はGly-Gln-Asp-Gln-Glyのいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一種以上を含有してなる、請求項1に記載の脂質吸収促進剤。
【請求項3】
タンパク質分解物がホタテ貝外套膜をパパイン処理又はトリプシン処理して得られるタンパク質分解物である、請求項1又は2に記載の脂質吸収促進剤。
【請求項4】
脂質がオレイン酸を主成分とする脂質である、請求項1~3のいずれかに記載の脂質吸収促進剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の脂質吸収促進剤を含む飲食品。
【請求項6】
高齢者用又は病者用の栄養補助飲食品である、請求項5に記載の飲食品。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の脂質吸収促進剤を含む非ヒト動物用飼料。
【請求項8】
Ile-Met-Asp、Glu-Gln-Gly-Glu又はGly-Gln-Asp-Gln-Glyのいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一種以上を有効成分とする、脂質吸収促進剤。
【請求項9】
脂質がオレイン酸を主成分とする脂質である、請求項8に記載の脂質吸収促進剤。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の脂質吸収促進剤を含む飲食品。
【請求項11】
高齢者用又は病者用の栄養補助飲食品である、請求項10に記載の飲食品。
【請求項12】
請求項8~11のいずれかに記載の脂質吸収促進剤を含む非ヒト動物用飼料。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を有効成分とする脂質吸収促進剤及びこれを含む飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ホタテ貝の貝柱は高価な食材として取引される一方、貝柱を採取した後の生殖腺や外套膜などの加工原料としての価値は一般に低い。いわゆる「ヒモ」と称される外套膜は、その一部が珍味に加工されることもあるが、大半は水産廃棄物となり、コストをかけて廃棄処理されている。
【0003】
ホタテ貝外套膜を含む廃棄物の量は貝柱の需要増と共に増加するため、廃棄コストも同様に嵩み、ホタテ貝産業の負担増となる。同時に、ホタテ貝由来の水産廃棄物は未利用海洋資源でもあり、その有効利用は廃棄コストの低減と新たな産業の振興あるいは促進という意義を有する。そのために、これまでにもホタテ貝外套膜の有効利用が数多く検討されている。
【0004】
ホタテ貝外套膜の有効利用の例としては、ホタテ貝外套膜に豊富に含まれるコラーゲンを回収する方法(特許文献1)やホタテ貝外套膜にミネラルを吸着させたミネラル強化素材(特許文献2)などが挙げられる。さらには、ホタテ貝外套膜の酵素分解物からなる亜鉛吸収促進剤(特許文献3)、ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を含むアンギオテンシンI変換酵素阻害剤(特許文献4)なども報告されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008-162918号公報
【特許文献2】特開2002-262831号公報
【特許文献3】特開2005-82482号公報
【特許文献4】特開2008-37766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水産廃棄物であるホタテ貝外套膜のさらなる有効利用の可能性を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、肥満ひいてはメタボリックシンドロームの原因ともなり得る飲食品からの脂肪吸収に対して、これを抑制することのできる有効成分をホタテ貝外套膜中で探索したところ、ホタテ貝外套膜由来の成分が当初の目的とは逆に経口摂取した脂質の吸収をむしろ促進する機能を有していることを見出し、下記の各発明を完成させた。
【0008】
(1)ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を有効成分とする脂質吸収促進剤。
(2)タンパク質分解物がAla-Pro-Lys、Gly-Gln-Gly、Ile-Met-Asp、Glu-Gln-Gly-Glu又はGly-Gln-Asp-Gln-Glyのいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一種以上を含有してなる、(1)に記載の脂質吸収促進剤。
(3)タンパク質分解物がホタテ貝外套膜をパパイン処理又はトリプシン処理して得られるタンパク質分解物である、(1)又は(2)に記載の脂質吸収促進剤。
(4)脂質がオレイン酸を主成分とする脂質である、(1)~(3)のいずれかに記載の脂質吸収促進剤。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の脂質吸収促進剤を含む飲食品。
(6)高齢者用又は病者用の栄養補助飲食品である、(5)に記載の飲食品。
(7)(1)~(4)のいずれかに記載の脂質吸収促進剤を含む非ヒト動物用飼料。
(8)Ile-Met-Asp、Glu-Gln-Gly-Glu又はGly-Gln-Asp-Gln-Glyのいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一種以上を有効成分とする、脂質吸収促進剤。
(9)脂質がオレイン酸を主成分とする脂質である、(8)に記載の脂質吸収促進剤。
(10)(8)又は(9)に記載の脂質吸収促進剤を含む飲食品。
(11)高齢者用又は病者用の栄養補助飲食品である、(10)に記載の飲食品。
(12)(8)~(11)のいずれかに記載の脂質吸収促進剤を含む非ヒト動物用飼料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホタテ貝外套膜から低コストで、かつ簡便に脂質吸収促進剤を提供することができる。この脂質吸収促進剤は食経験のあるホタテ貝外套膜を原料とし、食品製造に利用されているタンパク質分解酵素を作用させて得られる成分であることから安全性が高い。特に本発明の脂質吸収促進剤はそのまま摂取してもよく、あるいは様々な飲食品の形態へと加工して利用することもできる。さらには本発明の脂質吸収促進剤を他の飲食品や動物用飼料へ添加したりすることで、脂質吸収促進効果を有する飲食品又は飼料を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実験動物に本発明の脂質吸収促進剤を経口投与した後の血中トリグリセリド濃度の変化を示すグラフである。
【図2】実験動物に脂質又は紅藻類抽出物を経口投与した後の血中トリグリセリド濃度の変化を示すグラフである。
【図3】図1及び図2のグラフから算出されるAUC(薬物血中濃度-時間曲線下面積)を示すグラフである。
【図4】ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を逆相高速液体クロマトグラフィーで分析したときのチャートである。
【図5】トリプシンを用いて調製した本発明の脂質吸収促進剤を実験動物に経口投与した後の血中トリグリセリド濃度の変化を、AUC(薬物血中濃度-時間曲線下面積)で表したグラフである。
【図6】内臓脂肪細胞に対する、アミノ酸配列がIle-Met-Aspであるペプチドの脂質吸収促進効果を示すグラフである。横軸は培地中の前記ペプチドの濃度を示す。
【図7】内臓脂肪細胞に対する、アミノ酸配列がGlu-Gln-Gly-Gluであるペプチドの脂質吸収促進効果を示すグラフである。横軸は培地中の前記ペプチドの濃度を示す。
【図8】内臓脂肪細胞に対する、アミノ酸配列がGly-Gln-Asp-Gln-Glyであるペプチドの脂質吸収促進効果を示すグラフである。横軸は培地中の前記ペプチドの濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の脂質吸収促進剤の一実施形態は、ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を有効成分とするものである。このタンパク質分解物は、ホタテ貝外套膜又はホタテ貝外套膜を原料とする加工製品をタンパク質分解酵素で処理して調製されるもので、特に酵素処理後の残渣を取り除いて回収される可溶性画分であることが好ましい。

【0012】
本発明におけるホタテ貝外套膜のタンパク質分解物は、公知の適当な方法により、生のホタテ貝から回収されるホタテ貝外套膜、ボイル加工したホタテ貝から回収されるホタテ貝外套膜、これらの乾燥品及びその粉末などをタンパク質分解酵素で処理して調製されるタンパク質分解物であればよい。

【0013】
本発明におけるタンパク質分解物は、貝柱も含む生又はボイル等の加熱処理したホタテ貝軟体部全体をタンパク質分解酵素で処理して調製されるタンパク質分解物でもよいが、貝柱等や生殖腺などを取り除いて単離した外套膜をタンパク質分解酵素で処理して調製されるタンパク質分解物であることが好ましく、生のホタテ貝外套膜をタンパク質分解酵素で処理して調製されるタンパク質分解物であることが特に好ましい。

【0014】
本発明におけるホタテ貝外套膜のタンパク質分解物は、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、サーモライシンなどから選ばれる1種又は2種以上のタンパク質分解酵素で処理して調製されるものを利用することができる。酵素は市販のバルク品酵素、公知の手法によって天然物から分離した酵素、遺伝子組み換え的に生産した酵素又は発酵生産した酵素いずれであってもよい。特にパパイン処理又はトリプシン処理によって調製されるタンパク質分解物の利用が好ましい。

【0015】
タンパク質分解酵素によるホタテ貝外套膜の処理は、ホタテ貝外套膜をそのまま、あるいは適当量の脱イオン水などを加えてミキサー等でホモジナイズして懸濁液を得、これにタンパク質分解酵素を加えて、酵素反応に好適な反応条件(温度、pHなど)の下でインキュベーションすることで行うことができる。

【0016】
酵素毎の望ましいpHと温度としては、例えばペプシンはpH1~2と35~38℃、トリプシン及びキモトリプシンはpH6.5~7.0と35~37℃、サーモライシンはpH7.0~7.8と60~70℃、パパインはpH8.0~9.0と70~80℃などを挙げることができる。

【0017】
タンパク質分解酵素の使用量は、用いる酵素の力価、ホタテ貝外套膜の処理量などによって異なるが、当業者が適宜調節することができる範囲内であればよい。典型的には、ホタテ貝外套膜の湿重量(グラム)に対して1/100~1/10000重量の酵素を適宜使用すればよい。処理時間についても同様にホタテ貝外套膜の処理量、酵素量、反応条件によって変動するが、概ね5~30時間、好ましくは10~25時間とすればよい。なお、酵素反応は90℃以上、サーモライシンの場合には110℃以上で10~15分加熱することで停止させることができる。

【0018】
上記のような反応条件でのタンパク質分解酵素処理により、多少の残留物は残るがホタテ貝外套膜はほとんど分解され液化される。本発明ではかかるタンパク質分解酵素処理後の液状物をそのままタンパク質分解物として利用してもよいが、残留物を遠心分離や濾過等によって取り除いた可溶性画分をそのまま、又は乾燥粉末等に適宜加工したものをタンパク質分解物として利用することが好ましい。

【0019】
上記のホタテ貝外套膜のタンパク質分解物、特にパパインで処理して調製されるタンパク質分解物には、下記表1に示される5種類のペプチド(以下、SMP-P1~P5とする)が含まれている。したがって本発明のタンパク質分解物は、SMP-P1~P5のいずれか一種以上、好ましくは前記ペプチドの全てを含有するホタテ貝外套膜のタンパク質分解物と表すことができる。したがって、本発明の一実施態様は、タンパク質分解物がAla-Pro-Lys、Gly-Gln-Gly、Ile-Met-Asp、Glu-Gln-Gly-Glu又はGly-Gln-Asp-Gln-Glyのいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一種以上、好ましくは前記の全てのペプチドを含有するホタテ貝外套膜のタンパク質分解物を有効成分とする脂質吸収促進剤と表すことができる。

【0020】
【表1】
JP2015022930A1_000003t.gif

【0021】
また本発明におけるホタテ貝外套膜のタンパク質分解物は、前記SMP-P1~P5を特徴的かつ主要な成分として含有するものである。したがって本発明の別の実施態様は、SMP-P1~P5のいずれか一種以上を有効成分とする脂質吸収促進剤を提供するものである。具体的には、Ala-Pro-Lys、Gly-Gln-Gly、Ile-Met-Asp、Glu-Gln-Gly-Glu又はGly-Gln-Asp-Gln-Glyのいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドのいずれか一種以上を有効成分とする脂質吸収促進剤が提供される。特に、Ile-Met-Asp、Glu-Gln-Gly-Glu又はGly-Gln-Asp-Gln-Glyのいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドの少なくとも一種以上を有効成分とする脂質吸収促進剤が好ましい。なお、これらペプチドはそのアミノ酸配列から、ホタテ貝外套膜に含まれるコラーゲンに由来するものと推定される。

【0022】
なお、SMP-P1~P5のいずれか一種以上を有効成分として利用する場合には、前記ホタテ貝外套膜をタンパク質分解酵素処理して調製されるタンパク質分解物から適宜精製したものを使用してもよく、あるいはt-BOC法に代表される化学合成法によって合成されるペプチドを使用してもよい。ペプチドの精製や化学合成に関する手法は、当業者に周知又は公知の任意の方法を用いて適宜行うことができる。

【0023】
このようにして利用される本発明の脂質吸収促進剤は、後の実施例に示すように、脂質と共に経口摂取させることで、血中トリグリセリド濃度で表される血中脂質濃度を、本発明の脂質吸収促進剤を摂取させない場合と比較して上昇させる機能を示す。脂質とは脂肪酸や脂肪酸誘導体の総称で油脂を構成する主成分であり、通常、脂質はこれを主成分とする油脂の形で経口的に摂取される。また、トリグリセリドはグリセロールの3つのヒドロキシル基が脂肪酸とエステル結合したものであり、その血中濃度の上昇は血液中の脂肪酸濃度の上昇を意味する。

【0024】
したがって、本発明における脂質吸収促進は、経口的に摂取された脂質の体内吸収を促進させる機能として、血中トリグリセリド濃度の上昇によって確認できるものである。また本発明における脂質吸収促進剤は、油脂と共に経口摂取させることで、血中トリグリセリド濃度で表される血中脂質濃度を、本発明の脂質吸収促進剤を摂取させない場合と比較して上昇させる機能を意味するとして表すこともできる。

【0025】
経口的に摂取される油脂の例としては、ナタネ油、サラダ油、コーン油、大豆油、ごま油、こめ油、糠油、ベニバナ油、パーム油、ヤシ油、ひまわり油、荏油、からし油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、魚油、肝油、鮫油、ラード、ヘット(牛脂)、鶏油、ショートニング、バター、マーガリン、カカオバター等を挙げることができる。本発明の脂質吸収促進剤との組み合わせにおいては、オリーブオイルとナタネ油が好ましく、特にオリーブオイルが好ましい。

【0026】
オリーブオイルとナタネ油はいずれも主要な脂質はオレイン酸であり、特にオリーブオイルは含有脂肪酸の70%以上がオレイン酸であるが、本発明の脂質吸収促進剤はこのオレイン酸の吸収を効果的に促進させることができる。またオリーブオイルは、その摂取により、エネルギー補給のみならず動脈硬化を抑制するなどの様々な健康上のメリットを享受することができることから、本発明の脂質吸収促進剤との組み合わせにおいて好ましい油脂である。

【0027】
本発明においては、上記で説明した脂質吸収促進剤を含む脂質の吸収性に優れた食品素材、及び上記脂質吸収促進剤を含む高齢者用又はエネルギー摂取が困難な病者用のエネルギー補助飲食品も提供される。また、肉体労働や運動等の身体的な負荷に対して必要とされるエネルギーを補給するための飲食品も提供される。

【0028】
一般に、ヒトの一日あたりのエネルギー摂取量は成人男性で約2200kcal、成人女性で約1800kcalほどとされている。しかし、加齢により食事の量や回数が少なくなった、あるいは栄養素の吸収能が低下した高齢者や、消化器系器官に疾患を抱えることで必要とされるエネルギー量を食事から獲得することが難しい病者が存在する。また、腎臓に疾患を抱える病者にはタンパク質の摂取制限が課される場合があるが、肉や魚或いは大豆等の摂取制限に伴ってこれら食材に含まれる脂質の摂取も不足すると、結果としてエネルギー不足を招いて腎臓にさらに負担がかかり、病状が悪化するおそれもある。さらには、様々な原因によって引き起こされる吸収不良症候群を抱える病者が存在する。また、肉体労働者やアスリートらも、通常の食事では必要となるエネルギーを摂取しきれない場合も考えられる。

【0029】
本発明の脂質吸収促進剤は、この様な高齢者や病者に、あるいは肉体的負荷に対応するためによりエネルギーを必要とする者に、脂質を含有する食事と合わせて摂取させることで、脂質の吸収を促進させてエネルギーをより効率的に獲得させることができると期待される。また本発明の脂質吸収促進剤は前記の通り液体や粉末などの様々な形態をとることができるので、飲食品に添加することもできる。さらには、本発明の脂質吸収促進剤は加熱処理してもその活性は失われないことから、食材と共に調理又はその他の方法で加工して飲食品として利用することができる。この様に本発明においては、前記脂質吸収促進剤を含む飲食品が提供され、また高齢者用又はエネルギー摂取が困難な病者用のエネルギー補助飲食品、さらにはよりエネルギーを必要とする者用のエネルギー補助飲食品も提供される。

【0030】
エネルギー補助飲食品の形態には特に制限はないが、肉類や魚などの脂質を含む食材を用いた加工調理品、ドレッシングやマヨネーズ等の油脂を含む調味料、バターやマーガリン等の油脂類、油脂類を用いたパンや菓子類など、それ自身脂質を含む食品であることが好ましい。またこの様な食品と合わせて摂ることの多いコーヒー、紅茶、ウーロン茶、緑茶、ジュースなどの飲料などの形態であってもよい。

【0031】
本発明の脂質吸収促進剤の摂取量は、ホタテ貝外套膜由来の蛋白質分解物として50~2000mg/kg/日、好ましくは100~2000mg/kg/日、より好ましくは500~2000mg/kg/日、さらに好ましくは750~1500mg/kg/日である。また、飲食品に含有させる場合には、飲食品の単位重量当たり3~10重量%、好ましくは5~8重量%とすればよい。特に油脂を含有する食品に本発明の脂質吸収促進剤を含有させるときは、油脂1gに対して150~300mgとすればよい。

【0032】
さらに本発明は、上記で説明した脂質吸収促進剤を含む、脂質の吸収性に優れた非ヒト動物用飼料も提供する。ここで非ヒト動物とは、牛、豚、羊、鶏その他の家畜及び魚類などの食用肉として利用される動物全般を意味する。本発明の脂質吸収促進剤はこれをそのまま非ヒト動物に与えてもよいが、飼料特に油脂を含有する飼料に本発明の脂質吸収促進剤を添加して与えることで、飼料中の油脂に含まれる脂質の吸収が促進され、より少ない飼料で肥育が進む他、肉にいわゆるさしが入りやすくなるなどの効果が期待される。

【0033】
本発明の脂質吸収促進剤を添加することのできる非ヒト動物用飼料の種類や形態には特に制限はないが、油脂が適当量配合されている飼料であることが好ましい。また、必要に応じて本発明の脂質吸収促進剤と共に適当量の油脂を飼料に添加してもよい。なお、飼料中の本発明の脂質吸収促進剤の配合量は対象となる動物の種類によって異なるが、もともと水産廃棄物から調製されるタンパク質分解物であって栄養価もある上に安価であり、また摂取量が増えても特別な副作用はないことなどから、配合量について厳格な制御は必要とされない。

【0034】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0035】
1)ホタテ貝外套膜のタンパク質分解物の調製
サロマ湖産の冷凍ホタテ貝外套膜(市販品)を解凍し、流水で洗浄して黒膜を除去した後、ミンチ処理した。ホタテ貝外套膜のミンチに対して、食品添加物として市販されている酵素製剤であるパパイン(商品名スミチームP、300U/mg、新日本化学工業株式会社製)を0.1重量%となるように添加し、55℃で6時間、酵素処理を行った。処理後の反応液の一部はそのまま真空凍結乾燥処理して、粉状のタンパク質分解物(以下、SMPとする)を得た。また処理後の反応液の一部については、12,000×gで30分間遠心分離して上清を回収し、これをけい藻土濾過し、さらに真空凍結乾燥を行って、粉状のタンパク質分解物(以下、SMP-supとする)とした。
【実施例1】
【0036】
2)既存の脂質吸収促進剤の調製
特開2009-35538号公報に記載の海苔を含む脂質吸収促進剤をボジティブコントロール(以下、ポジコンとする)とするため、海苔として例示されている紅藻を選択した。紅藻粉末20gに20倍容量(w/v)の蒸留水を加えて4℃で7時間浸漬させたのち、4℃で15,000×g、10分間遠心分離した。上清を回収後、使用時まで-30℃で凍結保管した。
【実施例1】
【0037】
3)ラットを用いた脂質吸収促進効果の確認
7週齢のSD雄性ラットを日本チャールズ・リバー株式会社より購入し、温度23±1℃、湿度30±10%、照明12時間(8:00~20:00)の環境下で、ケージあたり3~4尾収容し、固形飼料MF(オリエンタル酵母工業株式会社製)を、イオン交換水を自由摂取させながら予備飼育を行った。1週間の検疫期間を含む予備飼育の後、一般状態に異常がみられなかった動物35匹をランダムに、コントロール群、脂質群、SMP群、SMP-sup群及びポジコン群の計5群(n=7/群)に分けた。
【実施例1】
【0038】
投与前採血として、18時間絶食したラットの尾静脈より無麻酔下で約150μL採血した。続いて、コントロール群には蒸留水、脂質群には蒸留水と株式会社J-オイルミルズの食用オリーブオイル(5mL/kg)、SMP群にはSMP(2000mg/kg)とオリーブオイル(5mL/kg)、SMP-sup群にはSMP-sup(2000mg/kg)とオリーブオイル(5mL/kg)、ポジコン群には紅藻水抽出物とオリーブオイル(5mL/kg)を、1匹あたりの投与容量が20mL/kgとなるように経口投与した。
【実施例1】
【0039】
経口投与後2、4、6、8、10時間の時点で採取した血液を遠心分離し、血漿中のトリグリセリドを血中トリグリセリド濃度として測定した。血中トリグリセリド濃度の測定には市販の測定キットを用いた。
【実施例1】
【0040】
得られた数値は各群で平均値及び標準誤差を算出した。各群間の有意差は、Bartlett法(有意水準5%)により等分散性の検定を行い、等分散の場合は更に一元配置分散分析を行い、有意な場合Tukey-Kramer法により平均値の比較を行った。有意水準は危険率5%及び1%とした。この結果を図1及び図2に示す。
【実施例1】
【0041】
また、体内に取り込まれたトリグリセリドの量を示す指標として、投与後10時間までの血中濃度曲線下面積(AUC)を算出し、統計解析を一元配置分散分析とダネットの多重比較検定により行った。この結果を図3に示す。
【実施例1】
【0042】
図1及び図2に示すように、脂質群の血中トリグリセリド濃度は投与後6時間で最大値200mg/dLを示す一方、SMP群の血中トリグリセリド濃度は投与後8時間で最大値200mg/dLを示した。さらに、SMP-sup群の血中トリグリセリド濃度はSMP群と同様に投与後8時間で最大値を示したが、その値は350mg/dLであった。なお、投与後8及び10時間の血中トリグリセリド量は、脂質群に対して有意差(P<0.05)が認められた。
【実施例1】
【0043】
また、ポジコン群の血中トリグリセリド濃度は、SMP群と同様に投与後8時間で最大吸収量270mg/dLを示した。投与後10時間の血中トリグリセリド量は、脂質投与群に対して有意差(P<0.01)が認められた。
【実施例1】
【0044】
さらに、上記結果を示す図1、2より算出される各群のAUC(図3)に示されるように、SMP-sup群のAUCは脂質群の約2倍で、約1.5倍であるポジコン群を上回った。なお、いずれの値も脂質群と比較して有意差(P<0.01)が認められた。
【実施例1】
【0045】
以上のように、SMP及びSMP-supは血中トリグリセリド濃度を上昇させた、すなわち脂質吸収を促進させた。また、SMP-supの脂質吸収促進効果はSMPのそれより高く、ポジコンである紅藻由来の水性抽出物の脂質吸収促進効果を上回るものであった。
【実施例2】
【0046】
実施例1で調製したSMP、SMP-sup及び遠心分離後の沈殿物(SMP-pptとする)について、全自動アミノ酸分析機JLC-500/V(日本電子社製)を用いてアミノ酸組成を分析した。その結果を表2に示す。
【実施例2】
【0047】
【表2】
JP2015022930A1_000004t.gif
【実施例2】
【0048】
表2に示すように、SMP及びSMP-pptと比較してSMP-supのグリシン(Gly)、プロリン(Pro)及びヒドロキシプロリン(HyP)の含有率が高いことが確認された。この結果から、SMP-sup中の主要な脂質物質は、ホタテ貝外套膜に含まれるコラーゲンに由来するペプチドと推察された。
【実施例2】
【0049】
また、SMP-supを以下の条件で逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を行った。
【実施例2】
【0050】
カラム:関東化学社製 Mightysil RP-18 GPAqua(粒子サイズ5μm、φ4.6×250mm)
展開溶媒:0.1%TFA、1%-30%アセトニトリル(直線濃度勾配)
温度:40℃
検出:220nm
【実施例2】
【0051】
このRP-HPLCのチャートを図4に示す。図中の特徴的なピーク5つをそれぞれSMP-P1~P5とし、溶出液を回収した。各ピークに相当するペプチドのアミノ酸配列をApplied Biosystems社製プロテインシーケンサProcise 493 cLCを用いて決定した。
【実施例2】
【0052】
その結果、SMP-P1はAla-Pro-Lys、SMP-P2はGly-Gln-Gly、SMP-P3はIle-Met-Asp、SMP-P4はGlu-Gln-Gly-Glu、SMP-P5はGly-Gln-Asp-Gln-Glyであることがそれぞれ確認された。
【実施例3】
【0053】
実施例1の1)で調製したホタテ貝外套膜のミンチに対して、実験試薬として市販されている酵素製剤であるトリプシン(10300U/mg、Sigma社製)を0.02重量%となるように添加し、37℃で6時間、酵素処理を行った。酵素処理後の反応液を90℃で30分加熱して、失活処理を行った。この反応液は、12,000×gで30分間遠心分離して上清を回収し、これをけい藻土濾過し、さらに真空凍結乾燥を行って、粉状のタンパク質分解物(以下、SMP-supTとする)とした。さらに、実施例1の3)に記載された方法にしたがって、SMP-supTの脂質吸収促進効果の確認を行った。具体的には、体内に取り込まれたトリグリセリドの量を示す指標として、投与後10時間までの血中濃度曲線下面積(AUC)を算出し、統計解析を一元配置分散分析とダネットの多重比較検定により行った。この結果を図5に示す。
【実施例3】
【0054】
図5に示されるように、トリプシンによるタンパク質分解物も、パパインによるタンパク質分解物とほぼ同等の脂質吸収促進効果を有することが確認された。特に、サーモライシン、ブロメライン又はペプシンによるタンパク質分解物と比較して、トリプシン又はパパインによるタンパク質分解物が優れた脂質吸収促進効果を示すことが確認された。
【実施例4】
【0055】
コスモ・バイオ社から購入した内臓脂肪細胞培養キットP-1を37℃(5%CO)で2日間培養した。その後、実施例2で調製したペプチドSMP-P3、P4及びP5を0.05μg/mL、0.5μg/mL、5μg/mL及び50μg/mLの濃度となるようにそれぞれ加え、さらに4日間培養した。前記ペプチドに代えて実施例1の1)で調製したSMPを50μg/mL加えたものをポジコンとし、またペプチド及びSMPを加えないものをコントロールとしてそれぞれ用意した。
【実施例4】
【0056】
4日間培養後の各細胞をリピットアッセイキット(コスモ・バイオ株式会社)により脂肪細胞内に蓄積された脂肪を染色し、抽出した溶液の540nmにおける吸光度を測定し、ペプチド添加による脂肪蓄積量の増加を測定した。脂肪蓄積量は各試料の吸光度/コントロールの吸光度×100として算出した。その結果を図6(SMP-P3)、図7(SMP-P4)、図8(SMP-P5)に示す。
【実施例4】
【0057】
図6~図8に示されるように、SMP-P3~P5を含む培地で培養された内臓脂肪細胞は、コントロールと比較して高い脂質蓄積量を示した。すなわち、SMP-P3~P5はいずれも、脂質吸収促進能を有するペプチドであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の脂質吸収促進剤は、食経験のあるホタテ貝外套膜を原料とし、食品製造に利用されているタンパク質分解酵素を作用させて得られる成分であることから、安全性が高く、そのまま又は様々な飲食品の形態へと加工して利用することができる。また、本発明の脂質吸収促進剤を他の飲食品や動物用飼料へ添加したりすることで、脂質吸収促進効果を有する飲食品又は飼料を提供することが可能になる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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