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明細書 :合金超伝導体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3536920号 (P3536920)
公開番号 特開2002-266045 (P2002-266045A)
登録日 平成16年3月26日(2004.3.26)
発行日 平成16年6月14日(2004.6.14)
公開日 平成14年9月18日(2002.9.18)
発明の名称または考案の名称 合金超伝導体及びその製造方法
国際特許分類 C30B 29/02      
C01B 35/04      
C22C  1/05      
C22C 25/00      
H01B 13/00      
H01L 39/12      
FI C30B 29/02
C01B 35/04
C22C 1/05
C22C 25/00
H01B 13/00
H01L 39/12
請求項の数または発明の数 5
全頁数 6
出願番号 特願2001-067663 (P2001-067663)
出願日 平成13年3月9日(2001.3.9)
審査請求日 平成13年3月9日(2001.3.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】秋光 純
【氏名】銭谷 勇磁
【氏名】村中 隆弘
【氏名】門村 和信
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】横山 敏志
参考文献・文献 特開 平4-297542(JP,A)
特公 昭45-39325(JP,B1)
国際公開95/20059(WO,A1)
国際公開02/72903(WO,A1)
FELNER, I.,Absence of Superconductivity in BeF2,Los Alamos National Laboratory, Preprint Archive, Condensed Matter,(2001) No pp. Given,arXiv:cond-mat/0102508, 28 Feb 2001.,(abstract) CAS [online];American Chemical Society, USA. [retrieved on 25 March 2002] from:STN
Jun NAGAMATSU et al.,Superconductivity at 39 K in magnesium diboride,Nature,1 March 2001,Vol.410, pp.63-65
調査した分野 C30B 1/00 - 35/00
C01B 35/04
C22C 1/05
C22C 25/00
H01B 13/00
H01L 39/12
特許請求の範囲 【請求項1】
組成式Mg1 Bex y (0<x<20、0<y<20)で表される組成を有し、六方晶AlB2 型結晶構造を有することを特徴とする、合金超伝導体。

【請求項2】
前記合金超伝導体は、超伝導転移温度(Tc)35Kを有することを特徴とする、請求項1に記載の合金超伝導体。

【請求項3】
前記合金超伝導体は、超伝導転移温度(Tc)から室温に渡って、6×10-5Ωcm以下の比抵抗を有することを特徴とする、請求項1に記載の合金超伝導体。

【請求項4】
Mgを含む原料粉末とBeを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:Be:B=1:x:y,(0<x<20,0<y<20)で混合して成型し、1~200MPaの加圧不活性ガス中で、600~1100℃に加熱して形成することを特徴とする、合金超伝導体の製造方法。

【請求項5】
Mgを含む原料粉末とBeを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:Be:B=1:x:y,(0<x<20,0<y<20)で混合して成型し、0.1~6GPa、700~1400℃の加圧加熱成形して形成することを特徴とする、合金超伝導体の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、大規模な超伝導送電、超伝導電力貯蔵、高性能なジョセフソン素子、高周波素子等の超伝導エレクトロニクス等に利用でき、特に、高い超伝導転移温度を有し、製造が容易で、かつ、展性、延性に優れた全く新規な合金超伝導体、並びにその製造方法に関する。

【10】


【11】
本発明の合金超伝導体の製造方法は、Mgを含む原料粉末とBeを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:Be:B=1:x:y,(0<x<20,0<y<20)で混合して成型し、1~200MPの加圧不活性ガス中で600~1100℃に加熱して形成することを特徴とする。また、本発明の合金超伝導体の製造方法は、Mgを含む原料粉末とBeを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:Be:B=1:x:y,(0<x<20,0<y<20)で混合して成型し、0.1~6GPa、700~1400℃の加圧加熱成形して形成することを特徴とする。

【12】


【13】
合金超伝導体の製造方法における加圧不活性ガス中の加熱は、1~200MPaの不活性ガス圧力中で、600~1100℃の温度で数分以上行えばよい。また、合金超伝導体の製造方法における加圧加熱成形は、0.1~6GPaの圧力を加えながら、700~1400℃の温度で数分以上加熱するようにしてもよい。

【14】
上記構成の合金超伝導体の製造方法によれば、合金超伝導体を再現性よく、かつ、容易に製造することができる。

【15】

【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。最初に、本発明の合金超伝導体の結晶構造を説明する。図1は本発明の、組成式Mg1 Bex y (0<x<20、0<y<20)で表される合金超伝導体の粉末X線回折の測定結果を示す図である。X線回折測定は、二軸X線回折測定装置(RIGAKU社製,RINT2000)を用いて行った。図1に示した回折パターンから、本発明の合金超伝導体は、六方晶系、空間群p6/mmmに属し、a軸及びc軸長、0.3084nm、0.35508nmを有する六方晶AlB2 型結晶構造を有していることが解る。また、本発明の合金超伝導体の化学組成の同定には、EPMA(Electron Probe Micro Analysis)法及びICP(Induced Coupled Plazma)法を使用した。

【16】
次に、本発明の、組成式Mg1 Bex y (0<x<20、0<y<20)で表される合金超伝導体の超伝導特性について説明する。図2は本発明の、組成式Mg1 Bex y (0<x<20、0<y<20)で表される合金超伝導体の比抵抗(電気抵抗率)の温度特性の測定結果を示す図である。比抵抗の測定は、四探針法で行った。図2から、温度が低下するに従って電気抵抗が下がり、35Kで急峻に0になることが解る。すなわち、本発明の合金超伝導体は、超伝導転移温度35Kを有している。また、図2から、超伝導転移温度35Kから室温に渡る常伝導比抵抗が6×10-5Ωcm以下と、非常に低いことがわかる。

【17】
次に、本発明の、組成式Mg1 Bex y (0<x<20、0<y<20)で表される合金超伝導体の磁化率(Susceptibility)の測定結果を示す。図3は本発明の、組成式Mg1 Bex y (0<x<20、0<y<20)で表される合金超伝導体の磁化率の温度特性の測定結果を示す図である。磁化率の測定は、直流磁化率測定装置(カンタム・デザイン社製磁気特性測定システム,MPMSシリーズMPMSR2)を使用した。図3から明らかなように、Tc=35Kから低温側で負の磁化率、すなわち反磁性を示しており、本発明の組成式Mg1 Bex y (0<x<20、0<y<20)で表される合金超伝導体は、超伝導転移温度Tc=35Kを有する超伝導体であることがわかる。

【18】
次に、本発明の合金超伝導体の製造方法を説明する。以下に説明する本発明の製造方法によれば、混合粉が化学組成比Mg:Be:B=1:x:y,(0<x<20,0<y<20)で混合されている場合には、上記の合金超伝導体となり、使用目的に応じて組成比を変えることができる。例えば、Mgの組成比を大きくすれば、展性及び延性に特に優れた超伝導電線を製造することができる。Mgの原料粉末には、Mg粉末又はMgO粉末を使用することができ、また、Beの原料粉末にはBe粉末、また、Bの原料粉末にはB粉末、又はBN粉末を使用できる。

【19】


【2】

【従来の技術】従来、超伝導体には、単体金属からなる超伝導体、化合物からなる超伝導体、合金からなる超伝導体、及び複合酸化物からなる超伝導体等が知られている。単体金属からなる超伝導体には、Pb、Nb等が良く知られているが、超伝導転移温度が低く実用性に欠ける。金属間化合物からなる超伝導体には、Nb3 Ge、Nb3 Ga、Nb3 Al、及びNb3 Snに代表されるAl5型結晶構造を有する金属間化合物超伝導体、及びPbMo6 8 に代表されるシェブレル型結晶構造を有する金属間化合物超伝導体等が知られている。また、NbB2 に代表されるAlB2 型結晶構造を有する金属間化合物超伝導体も知られているが、超伝導転移温度(Tc)が極めて低い(Tc=0.62K,Journal of the Less-Common Metals,67(1979)249-255)。これらの金属間化合物超伝導体には、Nb3 Ge(超伝導転移温度:約23K)のように、超伝導転移温度が比較的高いものもあるが、歪みに弱く、また脆いと言った欠点を有している。

【20】


【21】
本発明の合金超伝導体の製造方法として、いくつか例を挙げることができる。第1の方法は、Mg粉末、Be粉末、またはB粉末を撹拌装置で混合して混合粉末を形成し、この混合粉末をペレット状に成型したものを、HIP加圧装置(例えば、神戸製鋼社製,高温高圧雰囲気炉)等を用いて、不活性ガスを充填し、1~200MPaの不活性ガス圧力中で、600~1100℃の温度で数分以上加熱することからなり、この方法によって容易に形成できる。

【22】
第2の方法は、Mg粉末、Be粉末、またはB粉末を撹拌装置で混合して混合粉末を形成し、この混合粉末をペレット状に成型したものを、立方体アンビル加圧装置等の加圧装置を用いて、0.1~6GPaの圧力を加えながら、700~1400℃の温度で数分以上加熱することからなり、この方法によって容易に形成できる。高圧力は、粒界結合を促進するために必要であり、高温度は、超伝導相を成長するために必要である。

【23】
なお、本発明の合金超伝導体は、上記の多結晶焼結体に限らず、多結晶バルク体、大型単結晶、又は薄膜であってもよい。公知の鍛造装置、超高圧加圧加熱合成装置等のバルク体作製装置を用いれば、軽量、高硬度、及び耐腐食性に優れた多結晶バルク体の金属間化合物超伝導体、及び合金超伝導体を製造できる。また、大型合金超伝導体は、再結晶法、単純引き上げ法、浮遊帯域溶融法、フラックス法等の公知の単結晶育成法を使用し、適切なるつぼを使用し、雰囲気制御を行って製造できる。

【24】
また、合金超伝導体の薄膜は、Mg、Be、Bの組成比が1:x:y、(0<x<20,0≦y<20)となるような気相源を用いた化学気相蒸着法、又は、上記組成を有するターゲットをスパッタして形成するスパッタ法を用いて製造できる。また、合金超伝導体の薄膜を付着させる基板として、Cuなどの金属基板、セラミックス基板、または、金属基板の上にセラミックスを被覆した複合基材等を用いることができる。用途に合わせて適宜の基板を選択すればよい。また、展性、延性に富んだMgの組成比を大きくして、または、展性、延性に富んだ他の金属を混合して合成することによって、適宜の展性、延性を有する超伝導合金を製造できる。この超伝導合金は、圧延、押し出し等の加工技術を使用すれば、極細多芯形超伝導線材、超伝導細線、又は、超伝導合金線に加工することができる。

【25】

【発明の効果】以上の説明から理解できるように、本発明の合金超伝導体は、超伝導転移温度が高く、展性、延性に優れ、かつ、この合金超伝導体の常伝導比抵抗が小さいから、電流バイパス用金属線を必要としない極めて低コストの超伝導電線を提供できる。また、高性能なジョセフソン素子、高周波素子等の超伝導エレクトロニクス用材料としても使用できる。また、本発明の合金超伝導体の製造方法を用いれば、極めて再現性よく、容易に、かつ、低コストで、合金超伝導体を製造することができる。

【3】
複合酸化物からなる超伝導体には、La2-x Bax CuO4 の組成に代表されるLa系酸化物超伝導体、Y1 Ba2 Cu3 7-x の組成に代表されるY系酸化物超伝導体、Bi2 Sr2 Can-1 Cun 2n+2の組成に代表されるBi系酸化物超伝導体、Tl2 Ba2 Can-1 Cun 2n+2の組成に代表されるTl系酸化物超伝導体、Hg1 Ba1 CaCu1 6+x の組成に代表されるHg系酸化物超伝導体等が知られている。これらの複合酸化物からなる超伝導体は、超伝導転移温度が高く、なかには150Kに達するものもある。これらの複合酸化物系超伝導体は、八面体型、ピラミッド型、または平面型からなるCuO2 超伝導層と、La,Ca、Y,Bi、あるいはHg等の原子と酸素とからなるブロック層(超伝導層とは結晶構造が異なる)とが、互いに積層して構成されるペロブスカイト構造を有している。このように、結晶構造が極めて複雑であることから、再現性よく、大量に生産することが困難であり、また、複合酸化物であることから、展性、延性といった特性に乏しく、超伝導電線として使用することが難しい。

【4】
合金からなる超伝導体には、Nb-Ti合金が良く知られており、展性及び延性に優れるため、超伝導電線及び超電導磁石等に広く使用されている。しかしながら、合金からなる超伝導体は、超伝導転移温度が低く(Nb-Ti合金で最良のものでも約9Kである)、改善が望まれている。

【5】
また、超伝導電線においては、超伝導電線の一部分が偶発的に常伝導状態になる現象があり、この現象が生じると、この常伝導部分の有限な電気抵抗によるジュール熱が引き金となって、超伝導電線全体が一瞬にして常伝導状態に変化してしまう現象、すなわち、クエンチ現象が生ずる。クエンチ現象が生ずると、大電流のジュール熱による超伝導電線の焼損、冷媒の爆発的蒸発と言った重大な事故を招く。従来の超伝導電線は、超伝導電線の回りに電気抵抗率(比抵抗)の低い金属線を巻き付けた電流バイパスを設け、超伝導電線の一部分が偶発的に常伝導状態になった場合にこの電流バイパスを介して電流を逃がし、クエンチ現象を防止している。しかしながら、これらの電気抵抗率の低い金属線には、銀(Ag)等のコストの高い材料を使用しなければならないため、超伝導電線のコストが高いと言った課題がある。

【6】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題に鑑み、超伝導転移温度が高く、展性及び延性に優れ、かつ、超伝導電線として使用した場合に電流バイパス用金属線を必要としない合金超伝導体を提供することを目的とする。さらに本発明は、再現性よく、製造コストが低い、この超伝導体の製造方法を提供することを目的とする。

【7】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の合金超伝導体は、組成式Mg1 Bex y (0<x<20、0<y<20)で表される組成を有し、六方晶AlB2 型結晶構造を有することを特徴とする。この合金超伝導体は、超伝導転移温度(Tc)35Kを有する。また、この合金超伝導体は、超伝導転移温度(Tc)から室温に渡って、6×10-5Ωcm以下の比抵抗を有する。

【8】
この構成による合金超伝導体は超伝導転移温度(Tc)35Kを有しており、、従来知られているいずれの合金超伝導体より超伝導転移温度が高く、また、従来知られているAlB2 型結晶構造を持つ合金超伝導体よりも遙かに超伝導転移温度が高い。また、展性及び延性に富んでおり、かつ、超伝導転移温度から室温に渡っての比抵抗が小さい。

【9】
上記構成の合金超伝導体を用いれば、超伝導転移温度が高く、展性、延性に優れ、かつ、電流バイパス用金属線を必要としない、超伝導送電用、超伝導電力貯蔵用、超伝導マグネット用等の超伝導電線に使用でき、また、高性能なジョセフソン素子、高周波素子等の超伝導エレクトロニクス用材料としても使用できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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