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明細書 :リグノセルロース分解物耐性微生物およびその製造方法、ならびにその微生物を用いてバイオエタノールを製造する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月16日(2017.3.16)
発明の名称または考案の名称 リグノセルロース分解物耐性微生物およびその製造方法、ならびにその微生物を用いてバイオエタノールを製造する方法
国際特許分類 C12N   1/19        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12P   7/10        (2006.01)
FI C12N 1/19 ZNA
C12N 15/00 A
C12P 7/10
国際予備審査の請求
全頁数 23
出願番号 特願2015-550624 (P2015-550624)
国際出願番号 PCT/JP2014/079090
国際公開番号 WO2015/079868
国際出願日 平成26年10月31日(2014.10.31)
国際公開日 平成27年6月4日(2015.6.4)
優先権出願番号 2013246294
優先日 平成25年11月28日(2013.11.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】北垣 浩志
【氏名】林 信行
【氏名】ラヒル ニロシャン ジャヤコディ
出願人 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100182567、【弁理士】、【氏名又は名称】遠坂 啓太
【識別番号】100195327、【弁理士】、【氏名又は名称】森 博
【識別番号】100197642、【弁理士】、【氏名又は名称】南瀬 透
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
4B065
Fターム 4B064AC03
4B064BJ01
4B064CA06
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD19
4B064CD24
4B064DA16
4B065AA72X
4B065AA73X
4B065AA79X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065BB18
4B065BB26
4B065CA06
4B065CA55
要約 木材の発酵を阻害する要因であったリグノセルロース分解物に耐性を有する微生物を提供する。
本発明の一態様は、野生型と比較して、以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子が高発現されたリグノセルロース分解物耐性微生物である。この遺伝子のうち配列番号1で表されるタンパク質をコードする遺伝子は、酵母のSMT3遺伝子として知られているSUMOの遺伝子である。
(1)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1以上のタンパク質
特許請求の範囲 【請求項1】
野生型と比較して、以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子が高発現されたリグノセルロース分解物耐性微生物。
(1)配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
【請求項2】
前記(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクターを含むことでその遺伝子が高発現された請求項1記載のリグノセルロース分解物耐性微生物。
【請求項3】
前記微生物が、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、キャンディダ属、クリュイベロミセス属、トリコスポロン属、シュワニオミセス属からから選択される少なくとも1以上の微生物である請求項1または2記載の微生物。
【請求項4】
前記微生物が、酵母である請求項1または2記載の微生物。
【請求項5】
以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクター。
(1)配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
【請求項6】
微生物に、以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクターを導入することを特徴とするリグノセルロース分解物耐性微生物を製造する方法。
(1)配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
【請求項7】
酵母を用いてリグノセルロース系バイオマスからバイオエタノールを製造する方法において、前記酵母が、野生型と比較して、以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子が高発現された酵母であることを特徴とするバイオエタノールを製造する方法。
(1)配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロース分解物に耐性を有する微生物およびその製造方法に関する。また、リグノセルロース分解物耐性微生物を用いた、リグノセルロース系バイオマスからのエタノール原料やエタノールを製造する方法に関するものである。特に、酵母の特定の遺伝子を高発現させることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
環境負荷を抑えたエネルギー源や、化学品の原料として木材や草本等のリグノセルロース系バイオマスの更なる利用が求められている。リグノセルロース系バイオマスを利用するために、これらの構成成分を単糖に分解し、この単糖を原料としてバイオエタノール等の様々な物質を製造することが検討されている。より具体的に説明すると、リグノセルロース系バイオマスは、セルロースやヘミロース、リグニンが強固に結合した構造であるリグノセルロースを含んでおり、これからエタノールを製造するためには、一旦リグノセルロースを分解した後、酵母等で発酵させる必要がある。しかしながら、リグノセルロースの分解物には、フルフラールや、HMF、グリコールアルデヒド、酢酸などの発酵阻害物質が含まれており、これらの分解物の存在は発酵効率が低下する原因となっていた。
【0003】
このようなリグノセルロースを発酵させる手法として、例えば特許文献1では、特にリグノセルロースの加水分解工程のプロセスに着目し、従来提案されてきた酸などの化学薬品を使う方法や、微粉化のような機械的処理、高温高圧の水を利用する方法等の問題点を解決する手法として、水熱処理工程の蒸気圧等を所定の値とすることなどを特徴とするエタノールを製造する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、セルロース系バイオマスを原料とする燃料用エタノールの効率的生産に利用するために、形質転換の対象となる微生物にヘミセルロースに由来するマンノース代謝系酵素に関する遺伝子を導入する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3や非特許文献1には、加圧熱水処理したセルロースおよびグリコールアルデヒドに対する酵母の耐性を向上させる方法として、ADH1の発現に着目した研究が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許5278991号公報
【特許文献2】特開2006-246789号公報
【特許文献3】特開2012-157270号公報
【0007】

【非特許文献1】Jayakody LN, Horie K, Hayashi N, Kitagaki H (2012) Improvement of Saccharamyces cerevisiae to hot-compressed water treated cellulose by expression of ADH1. Appl Microbiol Biotechnol 94:273-283
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、リグノセルロース系バイオマスはリグノセルロースを含有している。このリグノセルロース系バイオマスを発酵させエタノール等を得る工程において、リグノセルロースの分解物が生じ、このリグノセルロース分解物が発酵に用いられる微生物の生育を阻害する問題があった。そのため、例えば特許文献2のように、代謝系酵素に関する遺伝子を導入しても、微生物自体の生育阻害を十分に防止することができず、十分な発酵を行うことができない場合があった。この微生物の生育阻害について、従来、これらの生育阻害物質に対する個別の耐性酵母は馴養等により育種されてきたが、複合的なストレス(これらの阻害物質によるもの)耐性の微生物は育種されてこなかった。また、特許文献3や非特許文献1はADH1遺伝子産物による酸化還元に着目することで酵母の耐性を向上させるものであるが、これとは異なる方法で酵母等の微生物に耐性を付与することができれば、より発酵能が高い酵母等の微生物を得ることができることが期待される。
【0009】
そこで、本発明は、特許文献2、3や非特許文献1とは異なるアプローチで、リグノセルロース分解物に耐性(特に複合的なストレスに対する耐性)を有する微生物(リグノセルロース分解物耐性微生物)を提供することを課題とする。また、リグノセルロース分解物に耐性を有するように微生物を形質転換させる方法を提供することを課題とする。このようなリグノセルロース分解物耐性微生物によって、リグノセルロース系バイオマスからエタノールを製造するなどの資源化工程をより効率的にすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 野生型と比較して、以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子が高発現されたリグノセルロース分解物耐性微生物。
(1)配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
<2> 前記(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクターを含むことでその遺伝子が高発現された前記<1>記載のリグノセルロース分解物耐性微生物。
<3> 前記微生物が、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、キャンディダ属、クリュイベロミセス属、トリコスポロン属、シュワニオミセス属からから選択される少なくとも1以上の微生物である前記<1>または<2>記載の微生物。
<4> 前記微生物が、酵母である前記<1>または<2>記載の微生物。
<5> 以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクター。
(1)配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
<6> 微生物に、以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクターを導入することを特徴とするリグノセルロース分解物耐性微生物を製造する方法。
(1)配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
<7> 酵母を用いてリグノセルロース系バイオマスからバイオエタノールを製造する方法において、前記酵母が、野生型と比較して、以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子が高発現された酵母であることを特徴とするバイオエタノールを製造する方法。
(1)配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
【発明の効果】
【0012】
本発明によって微生物を形質転換させることで、微生物にリグノセルロース分解物への耐性を付与することができる。これによって、形質転換された微生物はリグノセルロース分解物存在下でも自身の発酵性能を維持することができる。また、この形質転換された微生物を用いて発酵を行うことによって、従来では工業的に行うことが困難だった発酵等を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例において製造したベクターの制限酵素地図の一例である。
【図2】本発明の実施例にかかる酵母の培養結果を示す図である。
【図3】本発明の実施例にかかる酵母の培養結果を示す図である。
【図4】本発明の実施例にかかる酵母の培養過程におけるエタノール生産量の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。

【0015】
本発明は、野生型と比較して、以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子が高発現されたリグノセルロース分解物耐性微生物に関するものである。この微生物は、これらの遺伝子が高発現されることでリグノセルロース分解物に対して優れた耐性を有するものとなる。
(1)配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質

【0016】
また、本発明は、リグノセルロース分解物耐性微生物を製造する方法であって、微生物に、以下の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクターを導入することを特徴とするリグノセルロース分解物耐性微生物を製造する方法としても達成することができる。この方法により、微生物にリグノセルロース分解物耐性を任意で付与することができ、特にリグノセルロースを含有するバイオマスであるリグノセルロース系バイオマスの発酵に適した微生物へと形質転換することができる。
(1)配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質から選択される少なくとも1以上のタンパク質
(2)配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つ以上のタンパク質

【0017】
本発明は、酵母における配列番号1~4のいずれかの配列番号で表されるタンパク質からなる群から選択される少なくとも1以上のタンパク質をコードする遺伝子が高発現するようにその発現性を調整することを特徴とする。この配列番号1~4で表されるタンパク質は、いずれもSUMO(Small Ubiquitin-related Modifier)タンパク質あるいは、SUMO化に関わるタンパク質である。SUMOタンパク質は、ユビキチン様タンパク質ともよばれ、近年、その機能が解明されてきている比較的分子量が小さいタンパク質である。発酵阻害が生じる理由として、リグノセルロース分解物のような発酵阻害物質により、発酵経路に寄与するようなタンパク質が変性して発酵環境に残留することが、理由の一つと考えられる。ここで、本発明の配列番号で表されるタンパク質は、発酵阻害物質により変性したタンパク質のSUMO化を亢進することによってそれら変性したタンパク質の分解を早めることに寄与していると考えられる。本発明の微生物は、この変性したタンパク質の分解を促進することにより、発酵阻害物質自体や変性タンパク質による発酵阻害の影響を速やかに取り除き、発酵阻害物質存在下における微生物の成長誘導期を短縮するといった効果を奏するものと考えられる。

【0018】
本発明においては、配列番号1で表されるタンパク質および配列番号2で表されるタンパク質、配列番号3で表されるタンパク質、配列番号4で表されるタンパク質の4つのタンパク質からなる群から選択される少なくとも1以上のタンパク質をコードする遺伝子を利用する。すなわち、配列番号1~4で表される4つのタンパク質のうち、いずれか1つ、或いは任意の2つ以上のタンパク質をコードする遺伝子を用いることができる。いずれか1つのタンパク質をコードする遺伝子を導入することで、一定のリグノセルロース耐性を付与することができ、これらを組み合わせて導入することでより優れたリグノセルロース耐性を付与することができる。最も好ましくは4つの遺伝子を利用することである。

【0019】
本発明に関するタンパク質および遺伝子についてより詳しく解説する。例えば、本発明に用いる配列番号1で表されるタンパク質は、酵母のSMT3とも呼ばれるSUMOタンパク質である。このたんぱく質をコードする遺伝子として、例えば、配列番号5に示す酵母Saccharomyces cerevisiaeの遺伝子があげられる。

【0020】
本発明の遺伝子がコードするタンパク質はさらに、配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、その対応する配列番号に示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードする遺伝子からなり、かつ、微生物にリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質を包含する。すわなち、アミノ酸配列が類似することで、微生物へリグノセルロース分解物耐性の形質転換を供与するものも包含する。また、ここで対応する配列番号に示されるアミノ酸配列との同一性とは、配列番号1~4のアミノ酸のうち、最も同一性が近い配列番号のアミノ酸配列との同一性である。すなわち、配列番号1との同一性が高いアミノ酸配列の場合は、配列番号1との比較を行うものであり、同様に配列番号2との同一性が高い場合は、配列番号2と、配列番号3との同一性が高い場合は配列番号3と、配列番号4との同一性が高い場合は配列番号4との比較を行う。
配列番号1~4のアミノ酸配列と対応するアミノ酸配列の同一性を求めるアルゴリズムとしては、この分野で汎用されているアルゴリズムの一つであるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を用いて求めることができる。

【0021】
なお、この配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、対応する配列番号で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されたアミノ酸配列からなり、かつ微生物へのリグノセルロース分解物耐性付与機能を有するタンパク質を用いる場合、配列番号1~4に対応するそれぞれのタンパク質を2種以上組み合わせて用いることが好ましく、4種を組み合わせて用いることが好ましい。このとき、配列番号1については、そのタンパク質とし、配列番号2についてはそれと対応する前記(2)に記載の同一性等の要件を満足するタンパク質を組み合わせることもできる。

【0022】
ここで配列番号2のタンパク質は酵母のSLX5とも呼ばれるタンパク質であり、配列番号3のタンパク質は酵母のSLX8とも呼ばれるタンパク質であり、配列番号4のタンパク質はUBC9とも呼ばれるタンパク質である。これらのたんぱく質をコードする遺伝子として、例えば、配列番号6(SLX5)、配列番号7(SLX8)、配列番号8(UBC9)に示す酵母Saccharomyces cerevisiaeの遺伝子があげられる。

【0023】
本発明は、野生型と比較して、前述の(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子が高発現されたリグノセルロース分解物耐性微生物とすることを特徴とする。これらの遺伝子を高発現させる方法は、特に限定されることはなく、いわゆるゲノム編集技術として提案されている手法で、本発明の対象となる遺伝子を高発現させることができる種々の方法を利用することができる。例えば、当該遺伝子を高発現するように、その遺伝子を付加的に導入する方法や、これらの遺伝子のプロモーターを当該遺伝子を高発現させるようなプロモーターと交換する方法などが挙げられる。遺伝子を導入する方法として代表的なものとしては、当該遺伝子が高発現される微生物の一部の染色体の塩基配列部分と、高い相同性を有する塩基配列部分を有する塩基配列を利用して、遺伝子を導入する相同組み換えが挙げられる。これは、例えばPCRで直鎖状のDNAフラグメントを作成し、そのとき、両端に約50bp程度の野生型の対象微生物の染色体と相同性が高い配列を持たせておき対象微生物に接触させることで、当該野生型の対象微生物がDNA修復するときに自動的にその相同性が高い配列を組込み、野生型の対象微生物の染色体の領域が入れ替わるものである。この相同組み換えを利用して、直鎖状のDNAフラグメントに、本発明の対象となる遺伝子を複数導入しておくなどし、その遺伝子が高発現するようにできる。

【0024】
対象遺伝子を高発現させる方法として、組み換えベクターを導入する方法も採用することができる。すなわち、本発明は、配列番号1~4で表されるタンパク質のように、上記(1)、(2)で表されるタンパク質(以下、「本発明に用いるタンパク質」と省略する場合がある。)をコードする遺伝子を含有する組み換えベクターを用いて、形質転換の対象となる微生物に導入することを特徴とすることができる。また、この遺伝子は、例えば、配列番号1で表されるタンパク質をコードする遺伝子のみではなく、さらに、それと一定の同一性等を有し、微生物へリグノセルロース分解物耐性付与機能を有する遺伝子とすることもできる。この組み換えベクターとしては、例えば、形質転換の対象を酵母とする場合、酵母用に用いられるベクターを使用でき、より具体的には、タンパク発現型のベクター等を用いることができる。その他の微生物を対象とする場合も、適宜、形質転換の対象となるその微生物に適した組み換えベクターを用いればよい。宿主細胞への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法、カルシウムイオンを用いる方法やプロトプラスト法等により組み換えベクターを導入することができる。

【0025】
発現ベクターには、プラスミド、ウイルス、コスミドなどが含まれる。ベクターは、原核生物用又は真核生物用ベクター、例えば、pMAL系、pTYB系ベクター(第一化学薬品)、pAUR123(タカラバイオ)、pET系、pBAC系、pTri—Ex1ベクター(pTri—Ex1)、pCruzTM系ベクター(コスモバイオ)などが挙げられる。

【0026】
ここで、本発明に用いるベクターには、本発明に係る遺伝子配列の他に、発現制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーター、開始コドン、スプライスシグナル、停止コドンなど、複製開始点、選択マーカー、ポリリンカーなどを含むことができる。

【0027】
プロモーターは、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターを含む。微生物系でクローニングを行う場合、バクテリオファージλのpL、placなどの誘導性プロモーターが例示される。

【0028】
選択マーカーは、薬剤耐性マーカー、例えばアンピシリン、カナマイシン、ネオマイシン、テロラサイクリン、クロラムフェニコール、G418、ハイグロマイシン、メトトレキサートなど、栄養要求性マーカー、例えばURA3などを含む。

【0029】
本発明は、上記の特定の遺伝子を含む発現ベクター、及び該発現ベクター等によって野生型と比較して特定の遺伝子が高発現された宿主細胞(微生物)を提供するものである。本発明の対象となる宿主細胞(微生物)は、SUMOやSUMO化に関与する本発明に用いるタンパク質に関連する遺伝子を有することでリグノセルロース分解物耐性を示す微生物である。このような微生物として、本発明の微生物には、真核細胞、酵母(例えばサッカロマイセス・セレビシェ)などが挙げられる。この微生物(宿主細胞)として、例えばリグノセルロース系バイオマスを発酵する微生物である酵母等を対象とすることで、これらの微生物にリグノセルロース分解物耐性を付与する形質転換を行うものである。この対象となる微生物は、エタノール発酵を行う真菌類を選択することができる。これらの中でも、酵母は代表的なエタノール発酵を行う微生物であり、エタノールは各種工業的利用(特にバイオエタノールとしての燃料)が行われ、今後、更にその技術開発が期待されるものであり、本発明によりリグノセルロース分解物耐性を付与する対象として好ましい微生物である。

【0030】
本発明において、宿主細胞となる微生物のその属を例示すると、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、キャンディダ属、クリュイベロミセス属、トリコスポロン属、シュワニオミセス属から選択される少なくとも1以上の微生物とすることができる。発酵に同時に用いられる微生物などを複数形質転換させておき利用することもできる。

【0031】
本発明においては宿主細胞である微生物を酵母とすることが好ましい態様の一つである。酵母とは、かび、真菌のうち、丸い形で増殖するものの総称である。また、Candidaなどのように、二形性の増殖を示し酵母型で増殖するフェーズと先端成長するフェーズを有する、いわゆる不完全酵母も含めて、本発明の対象となる酵母とすることができる。より具体的には、本発明において宿主細胞として酵母を選択するとき、形質転換酵母の作製に用いられる酵母は、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、シュワニオミセス(Schwanniomyces)属から選択される少なくとも1以上の酵母とすることができる。これらの具体例としては、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisae)、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pasteurianus)、サッカロミセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)、シゾサッカロミセス・ボンベ(Schizosaccharomyces pombe)、キャンディダ・グラブラータ(Candida glabrata)、クリュイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pullulans)、シュワニオミセス・アルビウス(Schwanniomyces alluvius)等を挙げることができる。

【0032】
一部前述したように、本発明に用いる配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子は、酵母のSMT3遺伝子として知られているものであり、この遺伝子を元来有する酵母も存在する。また、同様に、配列番号2~4のタンパク質に対応する、SLX5、SLX8、UBC9の遺伝子を有する酵母も存在する。しかしながら、この遺伝子を単に有していても、従来の酵母がそうであるように、酵母はリグノセルロース分解物による生育阻害を受ける。本発明は、この遺伝子を組み換えベクターを用いて、酵母に導入することで、通常よりもこの遺伝子を高発現し、優れたリグノセルロース分解物耐性を有する酵母とすることができる。

【0033】
本発明はリグノセルロース系バイオマスを資源化する発酵に有用な微生物を提供するものである。また、そのような微生物を用いて、発酵資源を得るものである。すなわち、本発明は、リグノセルロース系バイオマスを発酵する方法において、当該発酵を行うための微生物が、配列番号1で表されるタンパク質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクターを含む微生物であることを特徴とする発酵法とすることができる。特に、酵母を用いてリグノセルロース系バイオマスからバイオエタノールを製造する方法において、前記酵母が、野生型と比較して、前述した(1)または(2)のタンパク質をコードする遺伝子が高発現された酵母であることを特徴とするバイオエタノールを製造する方法とすることができる。

【0034】
ここで、リグノセルロース系バイオマスとは、主としてセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンから構成されるリグノセルロースを有するバイオマス(生物由来の有機資源)のことを意味し、木質系や、草本植物系のものなどを包含する概念である。具体的には、木材、イナワラ、ムギワラ、バガス、竹、パルプ、コーンストーバー、もみがら、パーム椰子残渣、キャッサバ残渣、麻等が挙げられる。

【0035】
このリグノセルロース系バイオマスを発酵して資源化するにあたっては、特にリグノセルロースの分解物に問題があった。リグノセルロースの分解物には、フルフラールや、HMF、グリコールアルデヒド、酢酸などが含まれている。これらの物質は、多くの微生物の生育を阻害し、微生物生育が阻害されることで発酵効率が低下する。すなわち、リグノセルロース分解物は、発酵阻害物質となっていた。

【0036】
本発明によって形質転換された微生物は、このリグノセルロース分解物耐性を有している。すなわち、本発明により得られる微生物は、前述したようなリグノセルロース分解物の存在下においても、十分に生育することができる微生物となる。これによって、それらの微生物による本来の発酵が十分に行われる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
[評価項目]
(濁度(OD600))
濁度計(株式会社島津製作所社製“UV-1800”:試験波長600nm、石英セル使用、光路長1cm)を用いて、発酵試験液の濁度を測定することで、菌の繁殖の程度を評価する指標とした。なお、濁度(OD600)が0となるブランクとして、蒸留水を用いた。
【実施例】
【0039】
[培地の調製]
実施例、比較例、参考例およびそれらの実験を行うための前培養用に、以下の、SC標準培地、リグノセルロース分解物含有培地、CSM培地を調製した。なお、いずれの培地も植菌前に、オートクレーブ(121℃2気圧15分)で滅菌処理を行った。
【実施例】
【0040】
(SC標準培地)
標準SC培地として、2%グルコースを含有するSC培地を用いた。
【実施例】
【0041】
(リグノセルロース分解物含有培地)
発酵阻害物質(inhibitor)として、リグノセルロースの分解物にも含まれる、グルコールアルデヒド、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)、フルフラール、メチルグリオキサール、酢酸を用いた。SC標準培地に、これらの各発酵阻害物質を、各濃度が10mmol/Lとなるように混合したものをリグノセルロース分解物含有培地とした。
【実施例】
【0042】
(CSM培地)
CSM培地(2% (w/v) glucose (Wako, 041-00595), 790 mg/l of a complete supplement mixture (CSM complete) medium (Formedium, DCS0019), and a 0.67% (w/v) yeast nitrogen base without amino acids and ammonium sulphate (Becton Dickinson and Company, 233520)を培地の一つとして用いた。なお、CSM培地は、必要に応じてNaOH(Wako製192-13763)を用いてpH6.5となるように調整した。
【実施例】
【0043】
<酵母>
・酵母BY4743:実験室酵母BY4743株を「酵母BY4743」として使用した。
・酵母BYpADH1:BY4743株に、Saccharomyces cerevisiae由来のADH1遺伝子をベクターRS426を用いて導入することで、強いグリコアルデヒドの還元活性を示すことが見出された菌株を、「酵母BYpADH1」として使用した。(参考:非特許文献1)
【実施例】
【0044】
<標準酵母前培養液の調製>
各酵母1.5×106cellsを、前述の培養用CSM培地1.5mL(短い試験管)に植菌。30℃にて、1日培養して、酵母前培養液とした。
【実施例】
【0045】
<配列番号5で表される遺伝子を含むベクター(以下、「ベクター(I)」)の調製>
SMT3fw(CGA GCT CTA GAG GTT AGC CAT GCT GTT TCC ATC A)及びSMT3rv(GAA ATT CGC TTA GTT TGT GGC ACG TCG TGA AAG AAT)で、酵母Saccharomyces cerevisiae BY4743株のゲノムからSMT3断片(配列番号5で表される遺伝子を含む断片)を取り出し、PCRで増幅してPCR断片を得た。なお、PCRはアステック社製“PC320”を使用し、ポリメラーゼとして東洋紡社製“KOD plus ver2”を用いておこなった。PCR時の条件として、10倍濃縮高塩濃度緩衝液2.5μL、2mM dNTP2.5μL、25mM MgSO41.0μL、In-fusion primer(FW)0.75μL、In-fusion primer(RW)0.75μL、Template0.01375μg、ポリメラーゼ0.5μLを混合し、ミリQ水を残部とし、25μLの反応液として用いた。このPCR反応は、変性(denature)94℃15秒、アニール(annealing)53℃30秒、伸長(elongation)68℃2分のサイクルとし40サイクル行った。ベクターとして用いる「pAUR123」を制限酵素「KpnI」で切断し、Clontech Infusion kitにて、ベクターとPCR断片を結合し、大腸菌に形質転換して選抜することで、配列番号5で表される遺伝子を含むベクター(「ベクター(I)」)を得た。配列番号5で表される遺伝子は、配列番号1で表されるタンパク質をコードする遺伝子であることから、このベクター(I)は配列番号1で表されるタンパク質をコードする遺伝子を含有する組み換えベクターである。このベクター(I)の制限酵素地図を図1に示す。
【実施例】
【0046】
<他の配列番号で表されるベクター(ベクター(II)、(III))の調製>
前述のベクター(I)の調製に準じて、他の配列番号の遺伝子を含むベクター(II)、(III)の調製を行った。含有させた遺伝子の組み合わせを、表1に示す。なお、複数の遺伝子を導入したベクターの調製にあたっては、Infusion cloningにより複数の遺伝子を導入した。
【実施例】
【0047】
【表1】
JP2015079868A1_000003t.gif
【実施例】
【0048】
<ベクター(I)~(III)の導入により形質転換された酵母の調製>
前述のベクター(I)~(III)を用いて、酵母BY4743を、Nature Protocols 2,-31-34(2007)High-efficiency yeast transformation using the LiAc/SS carrier DNA/PEG methodの方法に従い形質転換した。なお、例えば「酵母BY4743+pAUR123+SMT3」とは、酵母BY4743にベクター(I)を導入した酵母培養液を表す。
同様の手法で、適宜、酵母BYpADH1に、ベクター(I)~(III)を導入した。
【実施例】
【0049】
<ベクターpAUR123のみを導入した酵母の調製>
配列番号5で表される遺伝子の有無による差を評価するために、前述のベクターpAUR123を、配列番号5で表される遺伝子を導入する組み換えを行わないままで、酵母に導入した。なお、「酵母BY4743+pAUR123」とは、酵母にベクターのみを加えた酵母培養液を表わす。
【実施例】
【0050】
<酵母の本培養>
酵母の本培養にあたり、試験管に移した培地に、酵母培養液を、培地中の酵母菌数の濁度(OD600)が0.1となるように添加した。なお、この酵母培養液の添加量の調整を行うために、酵母培養液は10倍希釈したときの濁度(OD600)を予め測定し、この結果から添加量を決定した。
(a)培地に、酵母培養液を添加して本培養液とし、その濁度を測定し本培養直後の濁度を求めた。この本培養液をさらに30℃にて、継続して静置培養し、本培養を行った。
(b)前述した本培養の液を、培養開始から3時間毎に100μLずつ取り出し濁度を測定した。
【実施例】
【0051】
[実施例1、比較例1、参考例1、2]
前述の酵母の本培養の方法に則り、表2に示す培地と、酵母培養液の組み合わせで、酵母の生育試験を行った。この酵母の本培養経過における濁度(OD600)の測定結果を図2に示す。
【実施例】
【0052】
【表2】
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【実施例】
【0053】
リグノセルロース分解物の有無による酵母生育の程度を評価するために、参考例1、2の評価をおこなった。図2の参考例に示すように、リグノセルロース分解物を含まない培地においては、形質転換の有無に関わらずいずれの酵母も同程度の生育を示す。
本発明の形質転換を行った酵母培養液である「酵母BY4743+pAUR123+SMT3」を用いた実施例1は、従来の酵母培養液に相当する「酵母BY4743+pAUR123」を用いた比較例1と比し、明らかに酵母が生育しやすく、リグノセルロース分解物により初期の生育速度は低下するものの参考例の濁度まで生育することができる。

【実施例】
【0054】
[実施例2、3、比較例2、参考例3、4、5]
前述の酵母の本培養の方法に則り、表3に示す培地と、酵母培養液の組み合わせで、酵母の生育試験を行った。この酵母の本培養経過における濁度(OD600)の測定結果を図3に示す。また、本培養経過におけるエタノール濃度の測定結果を図4に示す。
【実施例】
【0055】
【表3】
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【実施例】
【0056】
本発明の形質転換を行った酵母培養液を用いた実施例2、3は、従来の酵母培養液を用いた比較例2と比べて、酵母が生育しやすく、特に、培養開始後、24~36時間において有意な差を示した。すなわち、本発明により、リグノセルロース分解物存在下における酵母について、大幅にその成長誘導期を短縮できることがわかる。なお、48時間培養時に同程度の濁度を示すのは、測定上限または本培養条件で飽和する値と考えられる。また、図4に示すように、実施例3にかかるベクター(III)を導入した酵母を用いて培養を行うことで、ADH1を高発現するようにのみ遺伝子導入した比較例2の酵母を用いた場合と比べて、エタノール生産速度が高くなることがわかった。

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により、リグノセルロース系バイオマスの発酵時に問題となるリグノセルロース分解物耐性を有する等の、発酵に適した特性を有する微生物を得ることができる。これによって、リグノセルロース系バイオマスの利用効率が向上し有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3