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明細書 :ヒトMMP2を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳類動物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月16日(2017.3.16)
発明の名称または考案の名称 ヒトMMP2を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳類動物
国際特許分類 A01K  67/027       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI A01K 67/027 ZNA
C12N 15/00 A
C12Q 1/68 A
国際予備審査の請求
全頁数 24
出願番号 特願2015-552485 (P2015-552485)
国際出願番号 PCT/JP2014/082691
国際公開番号 WO2015/087916
国際出願日 平成26年12月10日(2014.12.10)
国際公開日 平成27年6月18日(2015.6.18)
優先権出願番号 2013256900
優先日 平成25年12月12日(2013.12.12)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】ガバザ エステバン セサル
【氏名】田口 修
【氏名】小林 哲
出願人 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100108280、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 洋平
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
Fターム 4B063QA13
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ43
4B063QR32
4B063QR62
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS02
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS38
4B063QX01
要約 【課題】 ヒトマトリックスメタロプロテアーゼ2(human matrix metalloproteinase 2;hMMP2)を全身組織に発現するトランスジェニック(TG)非ヒト哺乳類動物を提供すること、及びCOPD発症モデル動物を提供すること。
【解決手段】 遺伝子発現用プロモーターと、その下流に配置されて全身性に発現を誘導されるhMMP2の全遺伝子領域とを含むことを特徴とするhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物によって達成される。このとき、遺伝子発現用プロモーターは、βアクチンプロモーターであることが好ましく、非ヒト哺乳類動物はマウスであることが好ましい。このTG非ヒト哺乳類動物に、タバコ煙抽出物を吸引させることにより、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症させることができる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
遺伝子発現用プロモーターと、その下流に配置されて全身性に発現を誘導されるヒトマトリックスメタロプロテアーゼ2(human matrix metalloproteinase 2;hMMP2)の全遺伝子領域とを含むことを特徴とするhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物。
【請求項2】
前記遺伝子発現用プロモーターは、βアクチンプロモーターであることを特徴とする請求項1に記載のhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物。
【請求項3】
上記非ヒト哺乳類動物は、マウスであることを特徴とする請求項1または2に記載のhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物。
【請求項4】
遺伝子発現用プロモーターの下流にヒトマトリックスメタロプロテアーゼ2(human matrix metalloproteinase 2;hMMP2)の全遺伝子領域を発現可能な状態で組み込んでhMMP2発現コンストラクトを構築し、このhMMP2発現コンストラクトを受精卵に導入後、非ヒト哺乳類動物に移植し、分娩させることを特徴とするhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物の作製法。
【請求項5】
前記移植した非ヒト哺乳類動物に分娩させた後に、各産子をファウンダー候補個体として保育し、各ファウンダー候補個体の組織からゲノムDNAを抽出後に前記hMMP2発現コンストラクトの有無を確認し、hMMP2発現コンストラクトの存在を確認できたファウンダー個体を得ることを特徴とする請求項4記載のhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物の作製法。
【請求項6】
前記遺伝子発現用プロモーターが、βアクチンプロモーターであることを特徴とする請求項4または5に記載のhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物の作製法。
【請求項7】
前記非ヒト哺乳類動物が、マウスであることを特徴とする請求項4~6のいずれか一つに記載のhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物の作製法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一つに記載のhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物、又は請求項4~7のいずれか一つに記載のhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物の作製法によって作製された非ヒト哺乳類動物にタバコおよび/またはタバコ煙の成分含有物、ブレオマイシン、並びにアルブミンから選択される少なくとも1つを投与することにより、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、気道リモデリング、肺高血圧症の少なくとも1つを発症させることを特徴とするモデル動物の作製法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトMMP2(metalloproteinase2;メタロプロテアーゼ2:以下「hMMP2」という)を発現するトランスジェニック(TG)非ヒト哺乳類動物に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase;MMP)は、活性中心に金属イオンを含むタンパク質分解酵素の総称であるメタロプロテアーゼの一群である。MMPには、1, 2, 3, 7, 8, 9, 10など20種類以上のタイプが知られている。MMPは、コラーゲン・プロテオグリカン・エラスチンなどから成る細胞外マトリックスの分解、細胞表面に発現するタンパク質の分解、及び生理活性物質のプロセシングなどの作用を示す。MMPのうち、ヒトMMP1(hMMP1)を発現するトランスジェニック(TG)非ヒト哺乳類動物(マウス)の報告がある(非特許文献1)。このTGマウスでは、肺組織中にhMMP1を発現するものの、全身の臓器での発現は認められない。また、hMMP2を全身に発現するTG非ヒト哺乳類動物については、知られていなかった。
【0003】
一方、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、以前から病理学的に肺気腫と称されていた疾患概念と、臨床的に慢性気管支炎と呼ばれていた疾患概念を統一した総称である。2001年の国際ガイドライン(GOLD)および日本呼吸器学会の診療ガイドラインにこれらのことが明記され、日本および国際的な学会レベルでも本疾患概念は公式のものとなっている。COPDのうち肺気腫は、肺胞壁の破壊的変化を伴う疾患であり、気道や終末細気管支から末梢にかけての含気区域が異常に拡大する病態を示す。COPDの進行は緩慢ではあるが、放置するとさらに肺性心に移行する。COPDは、20年以上の喫煙歴を経て発症する病気である。日本では2011年のCOPDによる死亡者数は16,639人であり、増加傾向にある。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】D'Armiento J, Dalal SS, Okada Y, Berg RA, Chada K., Collagenase expression in the lungs of transgenic mice causes pulmonary emphysema, Cell. 1992 Dec 11;71(6):955-61.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
hMMP2の全身での作用を知るために、全身でhMMP2を発現するTG非ヒト哺乳類動物が望まれているが、現在までのところ、そのようなTG非ヒト哺乳類動物は得られていなかった。
また、COPDの治療、予防法を研究するためには、良好なモデル動物の開発が望まれており、いくつかの研究開発が行われているものの、満足できるモデル動物は開発されていない。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、hMMP2を全身組織に発現するTG非ヒト哺乳類動物を提供すること、及びCOPD等のモデル動物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために本発明に係るhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物は、遺伝子発現用プロモーターと、その下流に配置されて全身性に発現を誘導されるhMMP2の全遺伝子領域とを含むことを特徴とする。
プロモーターとしては、特に限定されないが、例えばCAGプロモーター、βアクチンプロモーター、hTERTプロモーター、PSAプロモーター、c-mycプロモーター、GLUTプロモーター、OCT3/4プロモーター、NANOGプロモーター、Nestinプロモーター、HSP70プロモーター、HSP90プロモーター、p53プロモーター、アルブミンプロモーター、TNF-alphaプロモーター、SV40プロモーター、EF1-αプロモーター、CMV-iプロモーター、CMVプロモーターなどを用いることができる。また、βアクチンプロモーターを用いる場合に、その由来種は限定されず、ヒト、ニワトリ由来のものが用いられる。
上記発明において、非ヒト哺乳類動物としては、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、サルなどが含まれるが、このうち取り扱いの点で、マウスが好ましい。また、マウスの場合には、その系統はC57BL/6Jであることが好ましい。
また、hMMP2の発現量を増加させるために、プロモーター領域の上流に、エンハンサーを設けることが好ましい。エンハンサーとしては、特に限定されないが、例えば、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、hTERTエンハンサーなどを用いることができる。エンハンサーとしては、1つのみではなく、2つ以上の同一又は別のエンハンサーを用いたり、異なる複数のエンハンサーを組み合わせて用いることもできる。異なる複数のエンハンサーを用いる場合、その順番は限定されない。例えば、hTERTエンハンサー、SV40エンハンサー、CMVエンハンサーをこの順で連結したものが例示される。
但し、hMMP2の発現量が高すぎると、TG非ヒト哺乳類動物の平均寿命が短くなりすぎる可能性があるので、過度な発現については、適当に調整すべきである。
別の発明に係るhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物の作製法は、遺伝子発現用プロモーターの下流にヒトマトリックスメタロプロテアーゼ2(human matrix metalloproteinase 2;hMMP2)の全遺伝子領域を発現可能な状態で組み込んでhMMP2発現コンストラクトを構築し、このhMMP2発現コンストラクトを受精卵に導入後、非ヒト哺乳類動物に移植し、分娩させることを特徴とする。
このとき、非ヒト哺乳類動物に分娩させた後に、各産子をファウンダー候補個体として保育し、各ファウンダー候補個体の組織からゲノムDNAを抽出後に前記hMMP2発現コンストラクトの有無を確認し、hMMP2発現コンストラクトの存在を確認できたファウンダー個体を得ることが好ましい。
また、前記遺伝子発現用プロモーターが、CAGプロモーターまたはβアクチンプロモーターであることが好ましい。また、前記非ヒト哺乳類動物が、マウスであることが好ましい。
本発明によって得られたTG非ヒト哺乳類動物は、自然に肺気腫を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺外病変(腎障害、肝障害、被嚢性腹膜硬化症)等を発症するという特徴を有し、誘発物質を投与させることにより、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺外病変(腎障害、肝障害、被嚢性腹膜硬化症)等をより短期間で発症させることができる他、肺線維症や、気道リモデリング、肺高血圧症等を発症させることができる。なおCOPDが悪化することにより、筋肉量減少、骨粗鬆症、貧血、心血管病変を発症することが知られており、本発明のTG非ヒト哺乳類動物はそれら疾患モデルにもなる。誘発物質としては、タバコ煙、タバコ煙抽出物またはタバコ成分の含有物の他、アルブミン、ブレオマイシン、環境汚染物質、プロテアーゼ等が挙げられる。またその投与方法としては、吸引、静脈注射、経口投与、腹腔内投与、皮下投与、経気管投与等が挙げられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、全身にhMMP2を発現すると共に、長期的には自然にCOPDや肺外病変を発症し、タバコ煙抽出物等の投与により、COPDや肺外病変を短期間で発症または肺線維症や、気道リモデリング、肺高血圧症を発症するTG非ヒト哺乳類動物を提供できる。ここで長期的とは8ヶ月から12ヶ月程度をいい、短期間とは2週から4週程度をいう。このhMMP2発現TG非ヒト哺乳類動物を用いることにより、COPD等に関する研究を飛躍的に発展させられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】hMMP2発現コンストラクト(発現ベクター)の構築ストラテジーを示す図である。
【図2】hMMP2発現コンストラクトの概要を示すマップである。
【図3】CAG発現コンストラクトとhMMP2 cDNAの接合部分の塩基配列を確認した結果を示す図である。
【図4】hMMP2発現コンストラクトを各種の制限酵素で分解し、電気泳動したときのフラグメントを示すゲル写真図である。
【図5】CAG-hMMP2発現コンストラクトの精製結果を示すゲル写真図である。(A)CAG-hMMP2発現コンストラクトをHind III+Spe Iで分解したものを分析用1%アガロースゲルで電気泳動した結果を示す写真図、(B)CAG-hMMP2発現コンストラクトのHind III+Spe Iフラグメントを分離用0.8%アガロースゲルで電気泳動した結果を示す写真図、(C)分離用アガロースゲルから切り出し、精製した後のCAG-hMMP2を分析用1%アガロースゲルで電気泳動した結果を示す写真図である。
【図6】ファウンダー候補個体の尾部組織から抽出したゲノムDNA、CAG-hMMP2発現コンストラクト、1,3,10,30コピーとコントロールのマウスゲノムDNAを含む陽性対照、及びコントロールのマウスゲノムDNAのみを含む陰性対照DNAを制限酵素EcoR Iで分解した後にアガロースゲルで電気泳動した結果を示す写真図である。
【図7】CAG-hMMP2発現コンストラクトの特異的なシグナルを検出するために、[32P]ラベル化プローブを用いたサザン・ハイブリダイゼーションを実施した結果を示す写真図である。
【図8】hMMP2発現TGマウス・ファウンダー個体の尾部DNAを用いたサザン・ハイブリダイゼーションを実施し、既知コピー数のコントロールシグナルの信号強度を比較した写真図である。
【図9】hMMP2発現TGマウスの各種組織において、hMMP2導入遺伝子と内在マウスMmp2遺伝子の発現をRT-PCRによって調べた結果を示す写真図である。
【図10】hMMP2発現TGマウスと野生型マウスの各種組織において、hMMP2導入遺伝子と内在マウスMmp2遺伝子の発現をRT-PCRによって調べた結果を示す写真図である。
【図11】野生型マウスの通常肺CT画像である。(A)背骨方向に垂直な方向の断面画像、(B)背骨方向に沿った断面画像を示す(図12において同じ)。
【図12】hMMP2発現TGマウスの肺CT画像である。矢印にて示す低減衰野は、肺気腫を示している。
【図13】生理食塩水を吸入させたマウスと、タバコ煙抽出物を吸入させたhMMP2発現TGマウスにおいて、気管支肺胞洗浄液(BALF)の白血球数を比較したグラフである。
【図14】野生型マウス通常肺の染色後の顕微鏡写真図である。
【図15】hMMP2発現TGマウスにタバコ煙抽出物を吸入させた後の肺の顕微鏡写真図である。
【図16】hMMP2発現TGマウスを用いたCOPDにおけるNFκB siRNAの抑制効果を調べた結果を示す肺の顕微鏡写真図である。
【図17】各群から抽出したサンプルについて、(A)BALF総細胞数、(B)TNFα濃度、(C)IFNγ濃度、(D)脾臓中のCD8 T細胞数割合、(E)脾臓CD4/CD8比、(F)TNFα/GAPDH比を測定した結果を示すグラフ、及び(G)TNFαの発現を確認した写真図である。
【図18】hMMP2発現TGマウスに対するブレオマイシンの影響を確認した結果を示すデータである。(A)BALF総細胞数を示すグラフ、(B)BALF中総蛋白量を示すグラフ、(C)肺組織中のMCP-1/GAPDHを示すグラフ、(D)hMMP2発現TGマウスに生理食塩水を投与した群の肺の顕微鏡写真図及び(E)hMMP2発現TGマウスにブレオマイシンを投与した群の肺の顕微鏡写真図である。
【図19】hMMP2発現TGマウスに対する卵白アルブミンの影響を確認した結果を示すデータである。(A)BALF総細胞数を示すグラフ、(B)肺組織中IL5/GAPDHを示すグラフ、(C)肺組織中IL-4 mRNAを示すグラフ、(D)肺組織中IL-13/GAPDHを示すグラフ、(E)hMMP2発現TGマウスに生理食塩水を投与した群の肺の顕微鏡写真図及び(F)hMMP2発現TGマウスに卵白アルブミンを感作した群の肺の顕微鏡写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
<hMMP2発現TGマウスの作製>
1.hMMP2発現ベクターの構築
図1に示すように、hMMP2 cDNA(アクセション番号:BC002576)をクローニングしたpENTRベクター(pENTR221-human MMP2)からGateway LR反応(インビトロージェン)を使用して、hMMP2 cDNAフラグメントをpBS-CAG-DESTZベクターにサブクローニングすることで、hMMP2発現ベクターpBS-CAG-hMMP2を構築した(図1、図2)。hMMP2発現コンストラクトには、TGマウスの遺伝子解析用に、1つのみのEcoRI部位を持つように設定した。
hMMP2 cDNAの発現は、ヒトサイトメガロウイルスの前初期エンハンサー(CMV enhancer)に続いて、トリβアクチンのプロモーター及び第1エクソンとイントロンを連結したトリβアクチン(Chicken β-actin promoter)によって行った。ストップコドンとポリ(A)シグナルを持つhMMP2の転写物は、ウサギβグロビン(Rabbit β-globin)のポリ(A)配列(Poly A signal)の上流に連結した(図2)。hMMP2は図1,2中でhuman MMP2またはHuman MMP2の記載を用いているが同じものを示す記号として使用している。

【0010】
導入遺伝子のmRNA転写物は、トリβアクチンの第1エクソン(これは転写されるものの翻訳はされない)の一部として構築されており、hMMP2 cDNAが転写される。
hMMP2発現コンストラクトを構築後に、シークエンス解析と制限酵素マッピングにより、hMMP2 cDNA接合部分のDNA配列を確認した。その結果、計画通りにhMMP2 cDNAがCAG発現ベクターにクローニングされていることが確認された(図3)。また、制限酵素Dra I, EcoR I, Hind III, Nco I, Sac I, Spe Iによるフラグメントは、予想される断片サイズと一致した(図4)。
以上の結果より、hMMP2発現コンストラクトの構築を完了した。

【0011】
2.TGマウス作製用直鎖DNAの精製
DH5αコンピテント細胞(インビトロージェン)にhMMP2の発現ベクターpBS-CAG-hMMP2を導入処理した後、アンピシリンを含むLBアガー培地上に播き、アンピシリン耐性株を選択した。アンピシリン耐性株のシングルコロニーをピックアップし、液体培地で一昼夜振盪培養した。
クローニングしたpBS-CAG-hMMP2をプラスミド抽出キット(キアゲン社製プラスミド・ミディキット)にて精製し、制限酵素Hind III + Spe Iを加えて、37℃、16時間反応した。ベクター由来のDNA断片とhMMP2発現用のDNA断片が生成していることを1%アガロースゲル電気泳動により確認した(図5(A))。その後、フェノール/クロロホルム抽出及びイソプロパノール沈澱によりDNA断片を回収した。

【0012】
回収後のDNA断片TEに再溶解し、0.8%アガロースゲルにて電気泳動した後、分離したDNA断片のうち、hMMP2発現用のDNA断片を切り出した。切り出したDNA断片をDNA抽出キット(キアゲン、DNAゲル抽出キット)にて精製し、1%アガロースゲル電気泳動により精製度を確認すると共に、NanoDrop分光光度計(旭テクノグラス社)により、その濃度を決定した。DNA断片を2ng/μLとなるように希釈し、マイクロインジエクション用のhMMP2発現用DNA(CAG-hMMP2発現コンストラクト)溶液を得た。この溶液は、試験に使用するまで-25℃にて保存した。

【0013】
3.発現コンストラクトの受精卵へのマイクロインジエクション
PMSG及びhCG投与により過排卵誘起した雌性マウスから受精卵を採取し、マイクロインジェクション法により、CAG-hMMP2発現コンストラクトを導入した。偽妊娠処置したマウスの卵管にCAG-hMMP2発現コンストラクトを導入した受精卵を移植した。
過排卵誘起して交配したC57BL/6J雌性マウスから、862個の受精卵を採取した。このうち266個の受精卵にCAG-hMMP2発現コンストラクトを注入した。注入後の受精卵を顕微鏡下で観察したところ、236個の受精卵はマイクロインジェクションを行った後も安定な状態を保っていた。このうち210個の受精卵を偽妊娠マウスに移植できた。

【0014】
4.hMMP2発現TGマウスの育成とファウンダー個体の確認
(1)hMMP2発現TGマウスの育成
CAG-hMMP2発現コンストラクトをマイクロインジェクションしたC57BL/6Jマウス受精卵から自然分娩により得た産子を離乳まで保育した。hMMP2 TGマウスのファウンダー候補個体を3週齢で離乳し、固定識別のための耳標を付けた後に、尾部組織を生検し、解析に供するまで-80℃にて保管した。
210個の受精卵を移植して約3週間の妊娠期間を経た後に、CAG-hMMP2発現コンストラクトを注入した受精卵を移植した仮親マウスから65頭のマウス産子を得ることができた。これらの産子を分娩した仮親に哺育させた結果、65頭全ての個体を離乳まで育成できた。これらの離乳した全ての個体と離乳後に死亡した個体の一部から尾部組織のサンプルを回収した。
発現コンストラクトを導入した初期胚からの産子数及び離乳数は良好であった。このことから、発現コンストラクトが注入されたことによる受精卵の発生、分化への悪影響はなかったと考えられた。

【0015】
(2)hMMP2発現TGマウス・ファウンダー候補個体のジェノタイピング
-80℃にて保存したhMMP2 TGマウスの候補個体の尾部組織を室温で融解し、1%SDS(和光純薬工業株式会社)、1mg/mLアクチナーゼE(科研製薬株式会社)及び0.15mg/mLプロテアーゼK(メルク株式会社)を含む溶解用緩衝液を加え、55℃にて16時間振盪して組織を可溶化した。フェノール抽出、及びフェノール/クロロホルム抽出を行って、組織から可溶化したゲノムDNAに結合するタンパク質を除去した。ゲノムDNAに混在するRNAをRNaseA(シグマ)により分解した後、イソプロパノール沈澱により高分子ゲノムDNAを析出した。ゲノムDNAを70%エタノールで洗浄して風乾した後、50μLのTEに再溶解した。
各検体から調製したゲノムDNA溶液のDNA濃度を吸光法により決定し、各検体のDNA濃度の値から5μgのDNAに相当するゲノムDNA溶液の容量を求めた。
マイクロインジェクションに使用したCAG-hMMP2発現コンストラクトを1, 3, 10及び30コピーとなるように希釈し、別に調製したコントロールマウスのゲノムDNA 5μgを添加し、サザンブロッティング用の陽性対照DNAを調製した。一方、コントロールマウスのゲノムDNA 5μgをサザンブロッティング用の陰性対照DNAとした。
離乳まで生育できたhMMP2 TGマウス、ファウンダー候補個体の組織から抽出して調製したゲノムDNA濃度は5μgのDNAを用いるサザン解析に十分な回収量であった(表1)。

【0016】
【表1】
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【0017】
各検体から調製したゲノムDNA、陽性対照DNA及び陰性対照DNAに制限酵素EcoR Iを加えて、37℃、16時間の反応を行った。生成したゲノムDNAのEcoR I断片をイソプロパノール沈澱により析出し、70%エタノールで洗浄して風乾した後、TEに再溶解した。これらのゲノムDNA断片を1.2%アガロースゲルを用いて電気泳動し、アガロースゲル中に分離したゲノムDNA断片をUVトランスイルミネータにより可視化し、スケールと共に撮影した。
図6に示すように、電気泳動後のアガロースゲルには、高分子量から低分子量にわたるDNA断片が観察され、生成した様々なサイズのゲノムDNA断片が電気泳動により均一に分離されていることが確認された。
このアガロースゲルを0.25N塩酸に浸して10分間穏やかに振盪した後、0.4N水酸化ナトリウムに浸して、更に10分間穏やかに振盪した。0.4N水酸化ナトリウムを用いたキャピラリー法により、アガロースゲル中に分離したゲノムDNA断片を室温で16時間、ナイロンメンブレン(Hybond-XL; GEH)にトランスファした。ゲノムDNA断片をトランスファしたナイロンメンブレンを2×SSCに浸して10分間穏やかに振盪した後に風乾し、ハイブリダイゼーションに用いるまで室温で保存した。

【0018】
DNAラベル化キット(Megaprime DNA Labelling System; GEH)を用いて、ランダムプライム法により、hMMP2プローブ2フラグメントを[32P]標識した。セファデックススピンカラム(ProbeQuant G-50 Micro Columns; GEH)を用いて[32P]標識フラグメントを生成し、[32P]ラベル化hMMP2プローブ2とした。
ゲノムDNA断片をトランスファしたナイロンメンブレンをハイブリダイゼーション緩衝液に入れて、65℃にて1時間プレインキュベートした。その後、95℃、5分間加熱した直後に5分間氷冷し、変性した[32P]ラベル化hMMP2プローブを加えて、65℃、4時間インキュベートした。その後、ナイロンメンブレンを取り出し、0.1%SDS、0.5×SSCで65℃にて約15分間洗浄した。放射能サーベイメータでメンブレンに結合したプローブに由来する放射活性をモニタし、放射活性がほぼ一定となるまで洗浄を繰り返した。

【0019】
洗浄後のメンブレンをラップフィルムで覆い、暗室内でX線フィルム(BioMax MS; コダック)を重ねた後、オートラジオグラフィカセットに入れた。4℃、1週間感光した後にX線フィルムを現像した。CAG-hMMP2発現コンストラクトに由来する2.1kbの特異的シグナルをオートラジオグラフィで検出し、[32P]ラベル化プローブとのハイブリダイゼーションによる特異的なシグナルをもたらす個体をhMMP2 TGマウス、ファウンダー個体として同定した。各個体のシグナル強度を陽性対照DNAのシグナル強度と比較して、ゲノムに導入したCAG-hMMP2発現コンストラクトのコピー数を概算した。
図7に示すように、[32P]ラベル化プローブを用いたハイブリダイゼーションにより、全ての陽性対照であるCAG-hMMP2発現コンストラクトの断片から発現コンストラクトに由来する特異的なシグナルを検出できた。全ての陽性対照から発現コンストラクト由来のハイブリダイゼーションシグナルを検出できたことから、[32P]ラベル化プローブを用いたサザン解析により、宿主ゲノムに導入された1コピー以上の発現コンストラクトを検出できることが分かった。
また、図8に示すように、尾部DNAを用いたサザンブロッティングによって、65頭のファウンダー候補個体のうち2匹について(3%)、導入遺伝子が確認された。これらのトランスジェニックマウスファウンダーに導入した発現コンストラクトのコピー数は、1コピー~3コピーであった。

【0020】
<hMMP2発現TGマウスにおける各種組織中のhMMP2の発現>
トリゾール試薬(インビトロージェン)と添付マニュアルに従って、マウスの各組織からRNAを精製した。RNAサンプルを、オリゴdTを使用してスーパースクリプト(インビトロージェン)によって逆転写し、DNAを得た。PCR反応にはPTC-100サーマルコントローラ(MJリサーチ)を使用し、94℃にて10秒間、60℃にて20秒間、72℃にて40秒間を1サイクルとして、28サイクル(GAPDHについて)または38サイクル(ヒトMMP2及びマウスMmp2)を実施し、最後に72℃にて5分間の伸長反応を行った。逆転写反応を行わないRNAサンプルについて、コントロール反応を行った。GAPDH、マウスMmp2、及びヒトMMP2遺伝子の増幅に用いたプライマーは、次の通りであった。mGapdhについては、センスプライマーとして、5’-CCCTTATTGACCTCAACTACATGGT-3’(配列番号1)、アンチセンスプライマーとして、5’-GAGGGGCCATCCACAGTCTTCTG-3’(配列番号2)、mMmp2については、センスプライマーとして、5’-CACCACCGAGGACTATGACC-3’(配列番号3)、アンチセンスプライマーとして、5’-TGTTGCCCAGGAAAGTGAAG-3’(配列番号4)、hMMP2については、センスプライマーとして、5’-TACTGGATCTACTCAGCCAGCAC-3’(配列番号5)、アンチセンスプライマーとして、5’-CAGGATCCATTTTCTTCTTCACC-3’(配列番号6)を用いた。

【0021】
図9には、hMMP2発現TGマウスの各種組織(全血(Whole Blood)、胸腺(Thymus)、脾臓(Spleen)、骨髄(Bone Marrow)、脳(Brain)、心臓(Heart)、胃(Stomach)、腸(Intestine)、骨格筋(Skeletal Muscle)、脂肪組織(Adipose Tissue)、腎臓(Kidney)、肝臓(Liver)、肺(Lung)、皮膚(Skin)、卵巣(Ovary)、子宮(Uterus)、精巣(Testis)、精嚢(Seminal Vesicle)、前立腺(Prostate)及び膵臓(Pancreas))において、外来性hMMP2遺伝子と内在マウスMmp2遺伝子の発現をRT-PCRによって調べた結果を示した。Gapdhは陽性対照として用いた。内在性のマウスMmp2は、多くの組織で発現が認められたが、各組織での発現量には大きな幅があった。また、マウスMmp2のバンドが確認されない組織(全血、骨髄、精嚢、前立腺及び膵臓)も認められた。一方、hMMP2は、評価した全ての組織中において、大量の発現が認められた。
図10には、hMMP2発現TGマウスと野生型マウスの各組織(脾臓、心臓、骨格筋、脂肪組織、腎臓、肝臓、肺、皮膚)において、hMMP2遺伝子とmMmp2遺伝子の発現をRT-PCRによって調べた結果を示した。hMMP2遺伝子の発現は、TGマウスでは全ての組織で認められた一方、野生型マウスでは検出されなかった。mMmp2遺伝子の発現は、TGマウスと野生型マウスとにおいて、組織間での違いが認められなかった。図9中mMmp2とMouse Mmp2は同じものを示す記号として使用している。

【0022】
<コンピュータ断層撮影法による所見>
野生型マウス及びhMMP2発現TGマウスの肺の状態をコンピュータ断層撮影法(CT)にて観察した。図11には、野生型マウスの通常肺のCT画像を示した。図12には、hMMP2発現TGマウスの肺のCT画像を示した。低減衰野(矢印で示す領域)は、肺気腫であることを示している。
<タバコ煙抽出物の吸入投与後のhMMP2発現TGマウスの重篤な炎症変化と慢性閉塞性肺疾患>
hMMP2発現TGマウスにタバコ煙抽出物及び生理食塩水を吸入させた後、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の白血球数を計数した。
図13に示すように、生理食塩水を吸入させたhMMP2発現TGマウス(MMP2/saline)と比較すると、タバコ煙抽出物を吸入させたhMMP2発現TGマウス(MMP2/タバコ)では、BALF中の白血球数が増加した。このことは、TGマウスでは炎症が増悪したことを示している。

【0023】
<肺の組織学的所見>
野生型マウス、及びタバコ煙抽出物を吸入させたhMMP2発現TGマウスのそれぞれについて、肺の組織学的所見を観察した。各マウスの肺組織をヘマトキシリン・エオシン(hemotaxilin eosin)で染色し、顕微鏡下で観察した。
図14には、野生型マウスの通常肺の顕微鏡写真図を示した。図15には、タバコ煙抽出物を吸入させた後のhMMP2発現TGマウスの肺の様子を示した。hMMP2発現TGマウスの肺では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪(実線矢印)が見られ、血管周囲及び気管支周囲における白血球の浸潤が増加した(点線矢印)。

【0024】
<hMMP2発現TGマウスを用いたCOPDにおけるNFκB siRNAの抑制効果>
COPDの発症には、炎症性細胞及び肺組織構成細胞の活性化によるTNF-α, IL-1β, IL-6などの炎症性サイトカインの産生が必要で、phosphatidylinositol-3-kinase (PI3)-protein kinase C-nuclear factor-κB(NFκB)の経路が重要な役割を果たしている。そこで、NFκB経路の細胞内シグナル伝達機構に着目して、COPDの発症に及ぼすNFκBの吸入siRNAの効果を検討した。
1.試験方法
マウスを5群に分けて、次のようにして設定した。すなわち、(A)野生型マウスに生理食塩水を吸入させた群(野生型マウス+生理食塩;n=6)、(B)hMMP2発現TGマウスに生理食塩水を吸入させた群(MMP-2マウス+生理食塩;n=5)、(C)野生型マウスに煙草煙抽出液を吸入させた群(野生型マウス+煙草煙抽出液;n=10)、(D)hMMP2発現TGマウスに煙草煙抽出液を吸入させた群(MMP-2マウス+煙草煙抽出液;n=10)及び(E)hMMP2発現TGマウスに煙草煙抽出液を吸入させ、点鼻内にNFκβ siRNAを投与した群(MMP-2マウス+煙草煙抽出液+NFκB siRNA;n=3)とした。
(1)喫煙誘発COPDマウスモデルの作成
hMMP2発現TGマウスに毎日60分、2週間タバコ煙抽出液を暴露させ、肺気腫モデルを作成した。コントロールとして、C57BL/6野生型マウスを使用した。
(2)核酸投与法
NFκB siRNAは、タバコ煙抽出液の暴露前に、0、2、4、6、8、10、12 日目に蒸留水で溶解し、鼻腔内投与した。
(3)RT-PCR
RT-PCR方法によりmRNA発現を検討した。Total RNA は肺組織からTRIZOL (Invitrogen, Carlsbad, CA)で処理して単離した。Single-strand cDNAの合成はreverse transcriptase(Invitrogen)とoligo(dT)を利用して行った。目的cDNAの増幅はAB Applied Biosystem 7600とGold AmpliTaq (AB Applied Biosystem, Foster city, CA)、及び目的cDNAの特異プライマを用い、反応液は94℃ 10分後、94℃ 30秒、 55℃ 30秒、 72℃ 30秒の反応を至適サイクル数行った。PCR productは2%アガロース電気泳動後、ethidium bromideで発色した。NIH imaging systemで密度解析を行い、Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)の発現強度を標準とし、サイトカインなどのmRNA発現の比較検討を行った。
(4)細胞数の測定及び生化学検査
気管支肺洗浄液(BALF)中の総細胞数は、ChemoMetec (Allerod, Denmark) Nucleocounter を用いて測定した。
(5)データは、ANOVAにより統計学的検討を行った。

【0025】
2.試験結果
結果を図16及び図17に示した。
図17に示すように、非投与のhMMP2発現TGマウス群(MMP-2マウス+生理食塩)、野生型マウスに煙草煙抽出液を投与した群(野生型マウス+煙草煙抽出液)に比べ、hMMP2発現TGマウスに煙草煙抽出液を投与した群(MMP-2マウス+煙草煙抽出液)では、BALF総細胞数、TNFα、IFNγ及び脾臓CD8T細胞が有意に増加した。また、脾臓CD4/CD8は有意に減少した。一方、hMMP2発現TGマウスに煙草煙抽出液及びNFκB siRNAを投与した群(MMP-2マウス+煙草煙抽出液+NFκB siRNA)では、これらの値は有意に減少し、脾臓CD4/CD8は回復した。なお図17(F)は、図17(G)の各バンドの密度を定量化したものである。
図16に示すように、図17(F)において炎症に関与するTNFαのmRNAの発現が同程度であったコントロール群((C)野生型マウス+煙草煙抽出液)と、hMMP2発現TGマウスに煙草煙抽出液を投与した群((D)MMP-2マウス+煙草煙抽出液)とを比較すると、hMMP2発現TGマウスに煙草煙抽出液を投与した群((D)MMP-2マウス+煙草煙抽出液)において肺胞壁の破壊が大きく生じており、COPDが有意に増悪していることがわかった。一方、hMMP2発現TGマウスに煙草煙抽出液を投与した群((D)MMP-2マウス+煙草煙抽出液)に比べ、hMMP2発現TGマウスに煙草煙抽出液及びNFκB siRNAを投与した群((E)MMP-2マウス+煙草煙抽出液+NFκB siRNA)では、肺胞壁の破壊が抑制されており、肺気腫とCOPDの変化が有意に低下していることがわかった。
以上より、hMMP2発現TGマウス群は煙草煙抽出液を投与することにより、COPDを多発していることがわかった。

【0026】
<hMMP2発現TGマウスに対するブレオマイシンの影響>
hMMP2発現TGマウスに対し、浸透圧ポンプを用いて、生理食塩水又はブレオマイシンを投与し、ブレオマイシンの影響を調べた。被験群として、生理食塩水を投与した群(MMP-2マウス+生理食塩、n=4)と、ブレオマイシンを投与した群(MMP-2マウス+ブレオマイシン、n=4)の2群を用いた。
ブレオマイシンを投与するため、hMMP2発現TGマウス(メス、8週齢)にペントバルビタールを腹腔内投与後、マウス背部皮下にALZET浸透圧ポンプを埋め込んだ。ALZET浸透圧ポンプには、ブレオマイシン又は生理食塩水溶液200μLをあらかじめ注入した。
浸透圧ポンプの埋め込み後21日目に、ペントバルビタールをマウス腹腔内投与し、麻酔下のマウスの頚部皮膚および筋肉を剥離し、気管を露出させた。留置針を用いて生理食塩水を気管内へ注入し、気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収した。次いで、開胸し、生理食塩水で灌流を行い、肺組織(LUNG Tissue)を摘出した。
RT-PCR方法によりmRNA発現を検討した。Total RNA は肺組織からTRIZOL (Invitrogen, Carlsbad, CA)で処理して単離した。Single-strand cDNAの合成はreverse transcriptase(Invitrogen)とoligo(dT)を利用して行った。目的cDNAの増幅はAB Applied Biosystem 7600とGold AmpliTaq (AB Applied Biosystem, Foster city, CA)、及び目的cDNAの特異プライマを用い、反応液は94℃ 10分後、94℃ 30秒、 55℃ 30秒、 72℃ 30秒の反応を至適サイクル数行った。PCR productは2%アガロース電気泳動後、ethidium bromideで発色した。NIH imaging systemで密度解析を行い、Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)の発現強度を標準とし、サイトカインなどのmRNA発現の比較検討を行った。
気管支肺方洗浄液中の総細胞数はChemoMetec (Allerod, Denmark) Nucleocounter を用いて測定した。気管支肺洗浄液中の総蛋白量はdye-binding assay (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて測定した。また、データはANOVAによって、統計的に評価した。

【0027】
結果を図18に示した。生理食塩を投与したコントロール群(MMP-2マウス+生理食塩)に比べ、ブレオマイシンを投与した群(MMP-2マウス+ブレオマイシン)では、BALF総細胞数(A)、BALF中総蛋白量(B)及び肺組織中のmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)(C)は、有意に高値を示した。また、ブレオマイシンを投与した群では、コントロール群に比べ、肺気腫の変化が有意に強度であった(D)。
以上より、hMMP2発現TGマウス群はブレオマイシンを投与することにより、肺胞壁の破壊が大きく生じており、COPDを多発していることがわかった。

【0028】
<hMMP2発現TGマウスに対する卵白アルブミンの影響>
hMMP2発現TGマウスに対し、卵白アルブミンを腹腔内投与で感作させた後、ネブライザーで卵白アルブミンを5日間吸引させ、喘息モデルを作製した。コントロールマウスには、生理食塩水を与えた。被験群として、生理食塩水を投与した群(MMP-2マウス+生理食塩、n=3)と、腹腔内及び吸入卵白アルブミンを投与した群(MMP-2マウス+卵白アルブミン、n=3)の2群を用いた。
試験開始から0,7,14及び21日目に卵白アルブミン10μgとAl(OH)3 1mg、又は生理食塩水を腹腔内に投与した後、28,29,30,31及び32日目に2%卵白アルブミン又は生理食塩水を吸入させた。試験開始から33日目にマウスにペントバルビタールを腹腔内投与し、麻酔科のマウスの頸部皮膚及び筋肉を剥離し、気管を露出させた。留置針を用いて生理食塩水を気管内へ注入し、気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収した。次いで、開胸し、生理食塩水で灌流を行い、肺組織を(LUNG Tissue)摘出した。
RT-PCR方法によりmRNA発現を検討した。Total RNA は肺組織からTRIZOL (Invitrogen, Carlsbad, CA)で処理して単離した。Single-strand cDNAの合成はreverse transcriptase(Invitrogen)とoligo(dT)を利用して行った。目的cDNAの増幅はAB Applied Biosystem 7600とGold AmpliTaq (AB Applied Biosystem, Foster city, CA)、及び目的cDNAの特異プライマを用い、反応液は94℃ 10分後、94℃ 30秒、 55℃ 30秒、 72℃ 30秒の反応を至適サイクル数行った。PCR productは2%アガロース電気泳動後、ethidium bromideで発色した。NIH imaging systemで密度解析を行い、Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)の発現強度を標準とし、サイトカインなどのmRNA発現の比較検討を行った。
気管支肺方洗浄液中の総細胞数はChemoMetec (Allerod, Denmark) Nucleocounter を用いて測定した。気管支肺洗浄液中の総蛋白量はdye-binding assay (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて測定した。また、データはANOVAによって、統計的に評価した。

【0029】
結果を図19に示した。生理食塩を投与したコントロール群(MMP-2マウス+生理食塩)に比べ、卵白アルブミンで感作した群(MMP-2マウス+卵白アルブミン)では、気管支肺洗浄液(BALF)中の総細胞数(A)が有意に多く、肺組織中のインターロイキン-5(IL5; B),インターロイキン-4(IL4; C)及びインターロイキン-13 (IL13; D)の発現が有意に高値を示した。気管支炎及び肺気腫の程度(E)も卵白アルブミンで感作されたマウスでは、コントロール群に比べ、有意に強度であった。
以上より、hMMP2発現TGマウス群は卵白アルブミンを投与することにより、肺胞壁の破壊が大きく生じており、COPDを多発していることがわかった。

【0030】
このように本願実施形態によれば、全身にhMMP2を発現するTGマウスを提供できた。このTGマウスは、自然発症的にCOPDを発症するので、COPDに関する研究を飛躍的に発展させられる。なお、実施形態における誘発物質として、タバコ煙、タバコ煙抽出物またはタバコ成分の含有物、アルブミン、ブレオマイシンを例示したが、その他の誘発物質として、環境汚染物質、プロテアーゼ等であってもよく、複数の誘発物質を併用してもよい。また実施形態における投与方法として、煙草煙やその抽出液、アルブミンの吸引、ブレオマイシンの腹腔内投与を例示したが、その他の投与方法として、静脈注射、経口投与、皮下投与、経気管投与等であってもよい。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
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【図18】
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【図19】
18