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明細書 :水中通信システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明の名称または考案の名称 水中通信システム
国際特許分類 H04B  11/00        (2006.01)
FI H04B 11/00 D
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 20
出願番号 特願2015-529643 (P2015-529643)
国際出願番号 PCT/JP2014/070496
国際公開番号 WO2015/016379
国際出願日 平成26年8月4日(2014.8.4)
国際公開日 平成27年2月5日(2015.2.5)
優先権出願番号 2013161529
優先日 平成25年8月2日(2013.8.2)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】清 水 悦 郎
【氏名】小 澤 正 宜
【氏名】石 川 滉 大
【氏名】齋 藤 拓 也
【氏名】高 橋 あずみ
【氏名】松 岡 諒
出願人 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091982、【弁理士】、【氏名又は名称】永井 浩之
【識別番号】100091487、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 行孝
【識別番号】100082991、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 泰和
【識別番号】100105153、【弁理士】、【氏名又は名称】朝倉 悟
【識別番号】100152205、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 昌司
審査請求 未請求
要約 [課題]水中または海中における電波通信の通信可能距離を伸長させることができる水中通信システムを提供する。
[解決手段]実施形態による水中通信システム1は、水密構造の外殻体2aを有し、かつ使用状態において水中に配置される密閉構造体2と、外殻体2aの外側に一端部が接触し、使用状態において少なくとも一部が水中に配置される非導電性の伝達媒体3と、密閉構造体2の外殻体2a内に格納され、伝達媒体3の一端部を介して電波を送受信する送受信手段11と、伝達媒体3の他端部を介して電波を送受信する送受信手段12とを備え、伝達媒体3の外周部は、伝達媒体3と外殻体2aとの接触面を除き、電波を反射する電波漏洩防止部材4で覆われている。
特許請求の範囲 【請求項1】
水密構造の外殻体を有し、かつ使用状態において水中に配置される密閉構造体と、
前記外殻体の外側に一端部が接触し、使用状態において前記一端部を含む少なくとも一部が水中に配置される非導電性の伝達媒体と、
前記密閉構造体の外殻体内に格納され、前記伝達媒体の一端部を介して電波を送受信する送受信手段と、
を備え、
前記伝達媒体の外周部は、前記伝達媒体と前記外殻体との接触面を除き、電波を反射する電波漏洩防止部材で覆われていることを特徴とする水中通信システム。
【請求項2】
前記電波漏洩防止部材は、前記伝達媒体に巻き付けられた膜状部材、前記伝達媒体に取り付けられた網状部材、中心孔に前記伝達媒体が挿通された複数のリング状部材、または、前記伝達媒体に巻き付けられたらせん状部材であることを特徴とする請求項1に記載の水中通信システム。
【請求項3】
前記電波漏洩防止部材は、金属からなることを特徴とする請求項1に記載の水中通信システム。
【請求項4】
前記金属は、アルミニウム、銅、亜鉛またはステンレスであることを特徴とする請求項3に記載の水中通信システム。
【請求項5】
前記電波漏洩防止部材は、導電性材料を含有する、合成樹脂またはゴムからなることを特徴とする請求項1に記載の水中通信システム。
【請求項6】
前記導電性材料は、金属片、カーボンブラック、金属微粒子またはカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項5に記載の水中通信システム。
【請求項7】
前記電波漏洩防止部材は、前記伝達媒体の外周部に密着するように設けられた金属箔であり、前記金属箔の厚さは、前記伝達媒体中を伝搬する電波の表皮深さよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の水中通信システム。
【請求項8】
前記電波漏洩防止部材は、前記伝達媒体の外周部に取り付けられた金網であり、
前記金網の金属線の太さは、前記伝達媒体中を伝搬する電波の表皮深さよりも太く、かつ、前記金網の網目の大きさは、前記伝達媒体中を伝搬する電波の波長の半分以下であることを特徴とする請求項1に記載の水中通信システム。
【請求項9】
前記伝達媒体は可撓性を有する非導電性材料からなり、かつ、前記電波漏洩防止部材は導電性ゴムからなることを特徴とする請求項1に記載の水中通信システム。
【請求項10】
前記密閉構造体の外殻体のうち少なくとも前記伝達媒体と接触する部分は、非導電性の材料からなる、請求項1に記載の水中通信システム。
【請求項11】
前記非導電性の材料は、合成樹脂、ゴム、ガラスまたはセラミックであることを特徴とする請求項10に記載の水中通信システム。
【請求項12】
前記伝達媒体の他端部を介して電波を送受信する第2の送受信手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の水中通信システム。
【請求項13】
水密構造の外殻体を有し、かつ使用状態において水中に配置される第2の密閉構造体をさらに備え、
前記第2の送受信手段は、前記第2の密閉構造体の外殻体の内部に格納され、
前記伝達媒体の他端部は、前記第2の密閉構造体の外殻体の外側に接触していることを特徴とする請求項12に記載の水中通信システム。
【請求項14】
前記伝達媒体の他端部は水面から突出するように設けられ、
前記第2の送受信手段は、前記水面から突出した前記他端部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の水中通信システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水中通信システムに関し、より詳しくは、水密構造の外殻体の外側に接触させた非導電性の伝達媒体を介して水中または海水中で電波通信を行う水中通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中または海水中では電波の減衰が激しいため、電波通信を行うことが困難であった。このため、水中または海水中の通信では、比較的減衰量の少ない音波または光が用いられてきた。
【0003】
しかしながら、音波による通信の場合、通信速度が遅いという問題がある。また、光による通信の場合、陸上で使用される通信機器と比較して通信機器が非常に高価という問題がある。
【0004】
上記問題を解決すべく、特許文献1には、水中または海水中に電波の伝搬経路を形成するために非導電性の伝達媒体を用い、これにより、陸上の通信機器をそのまま利用して水中または海水中における電波通信を行うことが可能な水中通信システムが記載されている。
【0005】
この水中通信システムでは、水中または海水中に置かれた2つの水密容器(水密構造の外殻体)の各々に送受信機を格納している。また、非導電性の伝達媒体の一端部および他端部を各水密容器に接触させることで、水密容器間の電波通信を可能にしている。
【0006】
上記水中通信システムは、次の2つの利点を有する。
まず1つ目の利点は、水中または海水中での減衰が激しい高周波数帯の電波が使用可能となることである。これにより、2.4GHz帯等の電波を利用する規格化された通信機器をそのまま使用することが可能となる。2.4GHz帯の通信機器は、パーソナルコンピュータの無線LANなどに広く普及しており、容易かつ安価に入手することが可能である。
2つ目の利点は、水密容器に伝達媒体を接触させるだけで水中または海水中において電波通信が可能になるため、水密容器への加工が不要になる点である。従来の水中ケーブルによる有線通信では、水中ケーブルと接続するコネクタを水密容器に設ける必要があった。一般に、水密容器は、耐水性および耐圧性を確保することで、その中に格納された非耐水性の機器を水や海水から守る役割を果たしている。このため、コネクタを設けるために水密容器に加工を施すことは、水密容器の耐水性および耐圧性を低下させることにつながり、望ましくない。さらに、コネクタの設置作業には高い技術が必要であることから、コネクタの設置は、水中通信システムの製作費が高騰する要因の一つとなる。
【0007】
このように、特許文献1の水中通信システムによれば、その他の水中通信システムと比べて、水中または海水中における通信を容易かつ安価に実現することが可能である。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】国際公開第2013/039222号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、電波には伝搬距離の2乗に比例して減衰する性質があり、この性質は、非導電性の伝達媒体中を伝搬する電波においても変わらない。このため、特許文献1の水中通信システムにおいても、受信電波強度は通信距離の2乗に比例して減衰する。
【0010】
このように受信電波強度が減衰するということは、通信可能距離に限界が存在するということである。通信可能距離が十分に長くないと、水中電波通信を利用する上で設計や用途に制限が生じてしまう。そして、設計や用途の制限が、水中電波通信の普及に対して障害となるおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、水中または海中における電波通信の通信可能距離を伸長させることができる水中通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る水中通信システムは、
水密構造の外殻体を有し、かつ使用状態において水中に配置される密閉構造体と、
前記外殻体の外側に一端部が接触し、使用状態において前記一端部を含む少なくとも一部が水中に配置される非導電性の伝達媒体と、
前記密閉構造体の外殻体内に格納され、前記伝達媒体の一端部を介して電波を送受信する送受信手段と、
を備え、
前記伝達媒体の外周部は、前記伝達媒体と前記外殻体との接触面を除き、電波を反射する電波漏洩防止部材で覆われていることを特徴とする。
【0013】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記電波漏洩防止部材は、前記伝達媒体に巻き付けられた膜状部材、前記伝達媒体に取り付けられた網状部材、中心孔に前記伝達媒体が挿通された複数のリング状部材、または、前記伝達媒体に巻き付けられたらせん状部材であるようにしてもよい。
【0014】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記電波漏洩防止部材は、金属からなるようにしてもよい。
【0015】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記金属は、アルミニウム、銅、亜鉛またはステンレスであるようにしてもよい。
【0016】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記電波漏洩防止部材は、導電性材料を含有する、合成樹脂またはゴムからなるようにしてもよい。
【0017】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記導電性材料は、金属片、カーボンブラック、金属微粒子またはカーボンナノチューブであるようにしてもよい。
【0018】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記電波漏洩防止部材は、前記伝達媒体の外周部に密着するように設けられた金属箔であり、前記金属箔の厚さは、前記伝達媒体中を伝搬する電波の表皮深さよりも厚いようにしてもよい。
【0019】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記電波漏洩防止部材は、前記伝達媒体の外周部に取り付けられた金網であり、
前記金網の金属線の太さは、前記伝達媒体中を伝搬する電波の表皮深さよりも太く、かつ、前記金網の網目の大きさは、前記伝達媒体中を伝搬する電波の波長の半分以下であるようにしてもよい。
【0020】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記伝達媒体は可撓性を有する非導電性材料からなり、かつ、前記電波漏洩防止部材は導電性ゴムからなるようにしてもよい。
【0021】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記密閉構造体の外殻体のうち少なくとも前記伝達媒体と接触する部分は、非導電性の材料からなるようにしてもよい。
【0022】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記非導電性の材料は、合成樹脂、ゴム、ガラスまたはセラミックであるようにしてもよい。
【0023】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記伝達媒体の他端部を介して電波を送受信する第2の送受信手段をさらに備えてもよい。
【0024】
また、前記水中通信システムにおいて、
水密構造の外殻体を有し、かつ使用状態において水中に配置される第2の密閉構造体をさらに備え、
前記第2の送受信手段は、前記第2の密閉構造体の外殻体の内部に格納され、
前記伝達媒体の他端部は、前記第2の密閉構造体の外殻体の外側に接触しているようにしてもよい。
【0025】
また、前記水中通信システムにおいて、
前記伝達媒体の他端部は水面から突出するように設けられ、
前記第2の送受信手段は、前記水面から突出した前記他端部の近傍に設けられている。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、伝達媒体の外周部を覆う電波漏洩防止部材により電波が伝達媒体中に反射されるため、水中または海中に透過する電波を抑制でき、通信距離の伸長に伴う電波の減衰を緩和することができる。
【0027】
よって、本発明によれば、水中または海中における電波通信の通信可能距離を伸長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態による水中通信システムの概略的な構成を示す図である。
【図2】(a)は図1のA-A線に沿う断面図であり、(b)は金属箔が巻き付けられた伝達媒体中を伝搬する電波の様子を示す図である。
【図3】外周部に金網が巻き付けられた伝達媒体を示す図である。
【図4】(a)は、複数の金属製リングが取付けられた伝達媒体を示す図であり、(b)は、らせん状の金属線が巻き付けられた伝達媒体を示す図である。
【図5】本発明の水中通信システムのシステム構成の変形例を示す図である。
【図6】実施例による水中通信システムの概略的な構成を示す図である。
【図7】電波漏洩防止部材の種類および伝達媒体の長さを変え、各々の条件での受信電波強度を測定した実験結果を示す図である。
【図8】通信距離を変えて受信電波強度を測定する場合における実験系の概略的な構成図である。
【図9】通信距離を変えて受信電波強度を測定した実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。

【0030】
図1は、本発明の一実施形態による水中通信システム1の概略的な構成を示す図である。

【0031】
水中通信システム1は、水中において電波通信を行うシステムである。なお、本発明において、「水中」という用語が用いられる場合には、「水中または海水中」を意味する。

【0032】
図1に示すように、水中通信システム1は、2つの密閉構造体2,5と、密閉構造体2および密閉構造体5間を接続する伝達媒体3とを備えている。密閉構造体2,5および伝達媒体3は、使用状態において水中に配置される。

【0033】
以下、水中通信システム1の各構成要素について詳しく説明する。

【0034】
密閉構造体2は、水密構造の外殻体2aを有し、かつ水中に配置されるものである。外殻体2aは、例えばガラス製の球殻である。

【0035】
より詳しくは、密閉構造体2は、水中で活動する密閉構造の装置であり、例えば、潜水艇、深海探査艇、水中作業ロボット等が該当する。

【0036】
伝達媒体3は、非導電性の材料からなる。図1に示すように、伝達媒体3の一端部は外殻体2aの外側に接触し、伝達媒体3の他端部は外殻体5aの外側に接触している。

【0037】
図1および図2(a)に示すように、伝達媒体3の外周部(外周面)は、電波を反射する電波漏洩防止部材4で覆われている。この電波漏洩防止部材4は、電波を反射することで、電波漏洩防止部材4の内部を伝搬する電波が外部に漏洩することを防止もしくは抑制する。ただし、伝達媒体3と外殻体2a,5aとの接触面Sは、電波漏洩防止部材4で覆われていない。

【0038】
なお、後述の説明から理解されるように、電波漏洩防止部材4には、所定の大きさの開口が存在してもよい。また、電波漏洩防止部材4の外周は、非導電性材料または耐腐食性材料で被覆されていてもよい。

【0039】
図2(b)は、電波漏洩防止部材4が巻き付けられた伝達媒体3中を伝搬する電波の様子を示している。図2(b)に示すように、伝達媒体3中を伝搬する電波の少なくとも一部は、電波漏洩防止部材4により反射を繰り返しながら伝達媒体3中を伝搬する。このため、伝達媒体3を電波漏洩防止部材4で覆うことで、電波の減衰量を大幅に緩和することができる。なお、伝達媒体3中を伝搬する電波には、電波漏洩防止部材4で反射されずに、伝達媒体3の一端部から他端部に直接到達するものもあると考えられる。

【0040】
なお、伝達媒体3の接続は、外殻体2a,5aに穴を開けることなく、外殻体2a,5aの外側にその端部を接着剤等により接触固定させることにより行ってもよい。

【0041】
また、伝達媒体3は、受信電波強度を向上させるために、端部全体で外殻体2a,5aに密着していることが好ましい。

【0042】
また、伝達媒体3は、一端部および他端部において外殻体の外側に接触していればよく、必ずしも外殻体に固定されている必要はない。例えば、外殻体の形状が直方体状である場合、伝達媒体3を外殻体上に載置するだけでも、密閉構造体2,5間で通信を行うことが可能である。

【0043】
なお、密閉構造体2は、図1に示すように、密閉構造体2を含む装置の一部であり、該装置は、密閉構造体2を移動させる移動手段13や、各種作業を行う作業手段14を有してもよい。作業手段14は、例えば、撮影機、照明器、または、海底の泥を採取する採泥器である。移動手段13や作業手段14は、密閉構造体2を含む装置の使用目的によって具体的な内容が異なる。

【0044】
また、密閉構造体2および密閉構造体5間を接続する伝達媒体3とは別の非導電性の伝達媒体を用意し、該伝達媒体により密閉構造体2および移動手段13(または作業手段14)間を接続してもよい。これにより、密閉構造体2と移動手段13(または作業手段14)との間の通信を、該伝達媒体3を介して行うことができる。

【0045】
また、密閉構造体2,5は、近接距離に配置されたモジュール同士であってもよい。例えば、水中通信システム1が水中ロボット中に設けられる場合は、密閉構造体2,5は機能モジュールとして近接配置される。

【0046】
図1に示すように、外殻体2aの内部には、情報処理装置10と送受信手段11が格納されている。

【0047】
情報処理装置10は、ノートパソコン等を含む情報処理装置である。情報処理装置10は、密閉構造体2を含む装置の全体を制御する。移動手段13や作業手段14が設けられている場合、情報処理装置10は、これらの手段の制御を行い、作業手段14により収集されたデータの処理を行う。また、情報処理装置10は、送受信手段11に接続されており、送受信手段11を制御する。

【0048】
送受信手段11は、伝達媒体3の一端部を介して電波を送受信する。ここで、「伝達媒体3の一端部を介して電波を送受信する」とは、電波を伝達媒体3の一端部から入れて伝達媒体3の他端部に送信すること、および/または、伝達媒体3の一端部から放出された電波を受信することを意味する。

【0049】
送受信手段11は、例えば、無線LAN等の通信モジュールであり、情報処理装置10に内蔵されていてもよい。図1に示すように、送受信手段11は、外殻体2aに接触していなくてもよい。あるいは、送受信手段11は、外殻体2aに接触するように設けられていてもよい。

【0050】
一方の密閉構造体5は、図1に示すように、密閉構造体2と同様の構成を有している。即ち、密閉構造体5は、水密構造の外殻体5aを有し、水中に配置されるものである。外殻体5aは、例えばガラス製の球殻である。外殻体5aの内部には、情報処理装置10と送受信手段12が格納されている。

【0051】
送受信手段12は、伝達媒体3の他端部を介して電波を送受信する。ここで、「伝達媒体3の他端部を介して電波を送受信する」とは、電波を伝達媒体3の他端部から入れて伝達媒体3の一端部に送信すること、および/または、伝達媒体3の他端部から放出された電波を受信することを意味する。

【0052】
送受信手段12は、例えば、無線LAN等の通信モジュールであり情報処理装置10に内蔵されていてもよい。図1に示すように、送受信手段12は、外殻体5aに接触していなくてもよい。あるいは、送受信手段12は、外殻体5aに接触するように設けられていてもよい。

【0053】
図1に示すように、密閉構造体5には、移動手段13および作業手段14が設けられていない。このように、移動手段13および作業手段14は必須の構成ではない。例えば密閉構造体5がデータ収集のために定置される場合には、移動手段13や作業手段14を省略してもよい。

【0054】
なお、送受信手段11,12は、一方を送信手段とし、他方を受信手段とすることで、片方向のみの通信を行うようにしてもよい。

【0055】
また、外殻体2a,5aのうち少なくとも伝達媒体3と接触する部分は、非導電性の材料(例えば、合成樹脂、ゴム、ガラスまたはセラミック)からなることが好ましい。このように接触部分を非導電性の材料で構成することにより、受信電波強度を向上させることができる。

【0056】
ここで、伝達媒体3の構成材料について詳しく説明する。

【0057】
伝達媒体3は、水中での電波通信を可能とするため、非導電性の材料からなる。この非導電性材料は、例えば、合成樹脂、ゴム、ガラスまたはセラミックである。

【0058】
合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ベークライト、またはポリエステルを用いることが可能である。

【0059】
また、ゴムとしては、天然ゴム、または合成ゴム(例えば、スチレン・ブタジエン・ラバー、アクリロニトル・ブタジエン・ラバー、クロロブレン・ラバー、エチレン・プロピレン・ラバー、またはメチル・ビニル・シリコーン・ラバー)を用いることが可能である。ガラスとしては、例えば、エポキシガラスを用いることが可能である。

【0060】
なお、非導電性材料であれば水中電波通信の伝達媒体とすることができるため、上記の非導電性材料を適宜組み合わせて伝達媒体3を構成してもよい。

【0061】
また、外殻体2a,5aが曲面を有する形状の場合、あるいは、密閉構造体2,5を独立して移動させる必要がある場合等には、伝達媒体3は、可撓性を有する合成樹脂またはゴムなどの絶縁材料からなることが好ましい。

【0062】
次に、伝達媒体3を覆う電波漏洩防止部材4の具体例について説明する。

【0063】
電波漏洩防止部材4は、伝達媒体3に巻き付けられた膜状部材であり、例えば、伝達媒体3の外周部に密着するように設けられた金属箔である。金属箔は、例えばアルミニウム、銅、亜鉛またはステンレスからなるが、金属の種類は特に限定されない。好ましくは、電波漏洩防止部材4は、電気伝導率の高い金属材料からなる。

【0064】
なお、金属箔の厚さは、伝達媒体3中を伝搬する電波の表皮深さよりも厚いことが好ましい。これにより、伝達媒体3中の電波が水中または海中に透過することを抑制できる。

【0065】
例えば、電波の周波数を無線LANで使用される2.4GHzとし、伝達媒体3がシリコンポリマー(シリコンゴム)からなるとし、電波漏洩防止部材4をアルミ箔とした場合、表皮深さδsは0.94~1.25[μm]である。

【0066】
電波漏洩防止部材4は、伝達媒体3に取付けられた網状部材であってもよい。この網状部材は、例えば、図3に示すように、伝達媒体3の外周部に取り付けられた金網5である。金網5は、伝達媒体3に密着していることが好ましい。

【0067】
金網5は、例えば亜鉛、銅、アルミニウムまたはステンレスからなるが、金網5の金属の種類は特に限定されない。金網5は、電気伝導率の高い金属材料からなることが好ましい。

【0068】
また、金網5の金属線の太さ(伝達媒体3の径方向の厚さ)が伝達媒体3中を伝搬する電波の表皮深さよりも太く、かつ、金網5の網目の大きさ(G1)が伝達媒体3中を伝搬する電波の波長の半分以下であることが好ましい。これにより、水中での電波通信において、伝達媒体3中の電波が水中に透過することを抑制できる。

【0069】
また、電波漏洩防止部材4は、中心孔に伝達媒体3が挿通された複数のリング状部材、または、伝達媒体3に巻き付けられたらせん状部材であってもよい。リング状部材およびらせん状部材は、それぞれ、例えば、図4(a),(b)に示すように、複数の金属リング6およびらせん状の金属線7である。図4(a)は、複数の金属製リング6が取付けられた伝達媒体3を示し、図4(b)は、らせん状の金属線7が巻き付けられた伝達媒体3を示している。

【0070】
電波漏洩防止部材4が複数の金属製リング6からなる場合、金属製リング6の内径は伝達媒体3の外径にほぼ等しく、金属製リング6は伝達媒体3に密着している。また、金属製リング6の厚さは、伝達媒体3中を伝搬する電波の表皮深さよりも太いことが好ましい。これにより、伝達媒体3中の電波が水中に透過することを抑制できる。

【0071】
電波漏洩防止部材4がらせん状の金属線7からなる場合、金属線7の太さ(伝達媒体3の径方向の厚さ)が伝達媒体3中を伝搬する電波の表皮深さよりも太く、かつ、らせん状の金属線7の間隔(G2)が伝達媒体3中を伝搬する電波の波長の半分以下であることが好ましい。これにより、水中での電波通信において、伝達媒体3中の電波が水中に透過することを抑制できる。

【0072】
また、電波漏洩防止部材4は、導電性材料を含有する、合成樹脂またはゴムからなるようにしてもよい。導電性材料として、例えば、金属片、カーボンブラック、金属微粒子またはカーボンナノチューブなどが挙げられる。電波漏洩防止部材4は、例えば、小さな金属箔片(アルミ箔片等)を練り込んだ合成樹脂またはゴムであってもよい。

【0073】
なお、電波漏洩防止部材4の形成方法としては、例えば、上記導電性材料を含有する導電性ゴムからなるシートを伝達媒体3に巻き付けることにより行ってもよい。あるいは、上記導電性材料を含有する樹脂を伝達媒体3の外周に塗布することにより行ってもよい。

【0074】
伝達媒体3は、可撓性を有する非導電性材料(可撓性樹脂またはゴム等)からなり、かつ、電波漏洩防止部材4は、伸縮可能な導電性ゴム等からなることが好ましい。これにより、伝達媒体3および電波漏洩防止部材4からなる接続媒体を自在に変形させることができる。

【0075】
以上説明したように、本実施形態では、伝達媒体3の外周部が電波漏洩防止部材4で覆われている。この電波漏洩防止部材4により電波が伝達媒体3中に反射されるため、水中または海水中に透過する電波を抑制でき、通信距離の伸長に伴う電波の減衰を緩和することができる。

【0076】
よって、本実施形態によれば、水中または海中における電波通信の通信可能距離を伸長させることができる。

【0077】
(水中通信システムの変形例)
水中通信システム1は、密閉構造体2および密閉構造体5間の通信を行うシステムであったが、本発明はこのようなシステム構成に限るものではない。例えば、伝達媒体3の他端部は水面上に配置されてもよい。

【0078】
本変形例に係る水中通信システム1Aでは、水中に配置される密閉構造体2と、水面上に設けられた送受信手段12との間で通信を行う。

【0079】
この水中通信システム1Aは、図5に示すように、水中に配置された密閉構造体2と、水面上に浮遊する浮遊体16を有する受信基地15と、密閉構造体2および受信基地15間を接続する伝達媒体3とを備えている。

【0080】
伝達媒体3の他端部は、図5に示すように、浮遊体16に固定され、水面から突出するように設けられている。伝達媒体3は、使用状態において、他端部を除く部分(一端部を含む一部分)が水中に配置される。

【0081】
送受信手段12は、浮遊体16上に設けられている。より詳しくは、送受信手段12は、水面から突出した伝達媒体3の他端部の近傍に設けられている。

【0082】
図5に示すように、電波漏洩防止部材4は、伝達媒体3の外周部のうち水中に配置された部分を覆うように設けられ、水面上にある外周部には設けられないことが好ましい。これにより、伝達媒体3の他端部だけでなく水面上の伝達媒体3の外周部からも電波が放出されるため、送受信手段12の受信電波強度を向上させることができる。

【0083】
本変形例に係る水中通信システム1Aにおいても、送受信手段11は伝達媒体3の一端部を介して送受信手段12と通信を行うことができ、送受信手段12は伝達媒体3の他端部を介して密閉構造体2内の送受信手段11と通信を行うことができる。

【0084】
上記実施形態および変形例の説明から理解されるように、伝達媒体3の外周部のうち、少なくとも水中に配置された部分は、伝達媒体3と外殻体2a,5aとの接触面を除き、電波漏洩防止部材4で覆われている。
【実施例】
【0085】
次に、電波漏洩防止部材の種類や伝達媒体の長さを変えて受信電波強度を測定した実験結果の一例について説明する。
【実施例】
【0086】
図6は、実験を行った水中通信システム1Bの構成を示している。密閉構造体2,5および伝達媒体3は人工海水で満たされた水槽の中に配置される。
【実施例】
【0087】
本実験では、送受信手段11,12の機能を含む情報処理装置10として、無線LAN通信モジュール(使用周波数2.4GHz)を内蔵した小型のノートPCを2台使用した。
【実施例】
【0088】
水密構造の外殻体2a,5aとして、樹脂(ポリプロピレン)製の防水ケースを使用した。防水ケースのサイズは205[mm]×134[mm]×52[mm]である。
【実施例】
【0089】
伝達媒体3として、直方体状のシリコンポリマーを使用した。このシリコンポリマーの断面積は50[mm]×50[mm]であり、伝達媒体3中の電波の波長の半分(35[mm])よりも大きい直径を確保している。また、シリコンポリマーの長さは、200mm、300mm、および400mmの3種類のものを用意した。
【実施例】
【0090】
電波漏洩防止部材4として、アルミホイル、亜鉛製の金網、およびステンレス製の金網を用意した。アルミホイルは、厚さが11[μm]であり、伝達媒体3中を伝搬する電波の表皮深さ(0.94~1.25[μm])よりも厚いものを用意した。金網は、いずれも平織金網巻で、網目は正方形状である。網目の一辺の長さが2mmの金網と4mmの金網を用意した。
【実施例】
【0091】
次に、実験手順について説明する。
【実施例】
【0092】
まず、2台のノートPCを起動し、一定の強度の電波を発信させて相互に通信を行う状態とする。そして、電波強度測定ソフト(InSSIDer)およびデータ記録用のAGデスクトップレコーダを起動した後、防水ケースにノートPCを格納する。なお、防水ケースに蓋をする際、十分な水密性を確保するため、ゴムパッキンの部分にシリコングリースを薄く塗りつけた。
【実施例】
【0093】
次に、ノートPCを格納した2つの防水ケースを海水中に沈める。
【実施例】
【0094】
なお、防水ケースは予め水槽中に沈められた金属製の台の上に設置した。これは、電波が水槽の底を透過し水槽外の空気を介して伝搬することにより、通信が行われる可能性を排除するためである。
【実施例】
【0095】
また、防水ケースは、海水面から30[mm]以上離して設置した。これは、電波が海水面上の空気を介して伝搬することにより、通信が行われる可能性を排除するためである。
【実施例】
【0096】
次に、図6に示すように、防水ケース間を橋渡しするように伝達媒体を防水ケース上に設置する。この際、伝達媒体が防水ケースに接触する部分の面積は50[mm]×50[mm]とした。
【実施例】
【0097】
その後、所定の時間(例えば5分間)、防水ケース間で通信を行わせた後、防水ケースを引き上げる。そして、防水ケースからノートPCを取り出し、記録された受信電波強度を確認する。
【実施例】
【0098】
なお、受信電波強度が-89[dB]程度までは、十分実用に耐える通信を行えるということが他の実験で確認されている。
【実施例】
【0099】
図7は、上記のようにして測定された受信電波強度を、伝達媒体の種類ごとに示している。なお、図7では、各種の伝達媒体の受信電波強度として、5回~10回測定した測定値の平均値を示している。
【実施例】
【0100】
図7からわかるように、電波漏洩防止部材4を設けない“巻無し”の場合は、伝達媒体3の長さが200[mm]から400[mm]に伸長すると、受信電波強度の平均値は-63.9[dB]から-86.4[dB]に急減する。これに対して、伝達媒体3にアルミ箔を巻き付けた“アルミ箔巻”場合は、受信電波強度の平均値は-56.3[dB]から-58[dB]にわずかに低下するのみである。
【実施例】
【0101】
また、網目の大きさが2[mm]の亜鉛製の金網(2mm目亜鉛金網巻)の場合、伝達媒体3の長さが400[mm]であっても、比較的高い受信電波強度(平均-65.4[dB])が得られている。
【実施例】
【0102】
よって、伝達媒体3に電波漏洩防止部材4として金属箔または金網を巻き着けることで、伝達媒体3の長さが伸長した際における受信電波強度の減衰を緩和することができることがわかる。
【実施例】
【0103】
なお、網目の大きさが4[mm]の亜鉛製の金網(4mm目亜鉛金網巻)については、伝達媒体3の長さが400[mm]のとき受信電波強度が300[mm]の長さのときに比べ大きく減衰しており、電波の減衰を十分に緩和しているとは言えない。これに対して、2mm目亜鉛金網では長さ300[mm]と400[mm]の伝達媒体3で比較しても、受信電波強度は大きく減衰しないことがわかる。このことから、金網の場合、網目の大きさが小さい、つまり金属を巻きつける密度が高い方が電波の減衰を緩和することができるといえる。
【実施例】
【0104】
また、ステンレスからなる金網を伝達媒体3に巻き付けた場合については、亜鉛製の金網の場合に比べて受信電波強度が低下している。これは、ステンレスがアルミニウムや亜鉛に比べて導電率が低いためと考えられる。このことから、伝達媒体に巻きつける金属の導電率が高い、つまり抵抗率が低いほど電波の減衰を緩和することができるといえる。
【実施例】
【0105】
次に、通信距離を変えて受信電波強度を測定した実験結果の一例について説明する。図8は、実験系の概略的な構成を示している。前述の水中通信システム1Bと共通する部分については詳しい説明を省略する。図8に示すように、水槽床面17に伝達媒体3を設置し、この伝達媒体3の上に密閉構造体2および密閉構造体5を配置した。そして、密閉構造体2と密閉構造体5との間の距離(通信距離)を変えながら電波強度の測定を行った。使用した伝達媒体3の大きさは、幅が約250mm、厚さが約10mm、長さが約1000mmである。実験結果を図9に示す。図9に示すように、電波漏洩防止部材4が設けられていない場合、通信距離が長くなるにつれて受信電波強度が弱くなり、通信距離が600mm以上では通信が困難であった。これに対して、伝達媒体3と密閉構造体2,5との接触面を除いて伝達媒体3を電波漏洩防止部材4のアルミ箔で覆った場合、通信距離が600mmの場合においても、受信電波強度の平均値(計測10回)は-61.4dBであり、通信距離が長くなってもほとんど電波強度が低下することなく通信を行うことができた。
【実施例】
【0106】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0107】
1,1A,1B 水中通信システム
2,5 密閉構造体
2a,5a 外殻体
3 伝達媒体
4 電波漏洩防止部材
5 金網
6 金属製リング
7 (らせん状の)金属線
10 情報処理装置
11,12 送受信手段
13 移動手段
14 作業手段
15 受信基地
16 浮遊体
17 水槽床面
S 接触面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8