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明細書 :被毛微生物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明の名称または考案の名称 被毛微生物
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C07K  14/22        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 1/21
C07K 14/22
C12P 21/02 C
C07K 19/00
国際予備審査の請求
全頁数 33
出願番号 特願2015-534325 (P2015-534325)
国際出願番号 PCT/JP2014/072735
国際公開番号 WO2015/030171
国際出願日 平成26年8月29日(2014.8.29)
国際公開日 平成27年3月5日(2015.3.5)
優先権出願番号 2013179948
優先日 平成25年8月30日(2013.8.30)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG
発明者または考案者 【氏名】堀 克敏
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B064
4B065
4H045
Fターム 4B024AA11
4B024BA07
4B024BA41
4B024BA80
4B024CA07
4B024DA05
4B024EA04
4B024GA11
4B024HA11
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA19
4B064CB06
4B064CC24
4B064DA13
4B065AA04X
4B065AA04Y
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA50
4H045FA16
4H045FA74
要約 三量体オートトランスポーターアドヘシンに接着又は凝集以外の機能を持たせることを課題とする。三量体オートトランスポーターアドヘシン又はその一部にペプチド又は蛋白質からなる機能分子が結合又は融合してなる機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物が提供される。
特許請求の範囲 【請求項1】
三量体オートトランスポーターアドヘシン又はその一部にペプチド又は蛋白質からなる機能分子が挿入、結合又は融合してなる機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物。
【請求項2】
前記三量体オートトランスポーターアドヘシンが、アシネトバクター属微生物の三量体オートトランスポーターアドヘシンである、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記三量体オートトランスポーターアドヘシンが、アシネトバクターsp. Tol5株のAtaAである、請求項1に記載の微生物。
【請求項4】
前記微生物がグラム陰性菌である、請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項5】
前記微生物がガンマプロテオバクテリアである、請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項6】
前記微生物がアシネトバクター又は大腸菌である、請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項7】
前記機能分子が、タグ分子、酵素認識配列、酵素、蛍光蛋白質、抗原、電子伝達系蛋白質及び受容体蛋白質からなる群より選択される一又は二以上の機能分子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項8】
前記機能分子が、Hisタグ、FLAGタグ、ソルターゼ認識配列、HRV 3C認識配列、β-グルコシダーゼ又は緑色蛍光蛋白質である、請求項1~6のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項9】
前記機能分子が、プロテアーゼ認識配列、或いは、タグ分子、酵素認識配列、酵素、蛍光蛋白質、抗原、電子伝達系蛋白質及び受容体蛋白質からなる群より選択される一又は二以上の機能分子とプロテーゼ認識配列の組合せ、からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項10】
前記機能分子が、Hisタグ、FLAGタグ、ソルターゼ認識配列、HRV 3C認識配列、β-グルコシダーゼ又は緑色蛍光蛋白質である請求項9に記載の微生物。
【請求項11】
三量体オートトランスポーターアドヘシンをコードするDNAに、ペプチド又は蛋白質からなる機能分子をコードするDNAが挿入又は付加されてなる機能性ファイバーDNAを、標的微生物に導入するステップ、を含む、機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物の作製方法。
【請求項12】
三量体オートトランスポーターアドヘシンをコードする前記DNAが、アシネトバクター属微生物の三量体オートトランスポーターアドヘシンをコードするDNAである、請求項11に記載の作製方法。
【請求項13】
三量体オートトランスポーターアドヘシンをコードする前記DNAが、アシネトバクターsp. Tol5株のAtaAをコードするDNAである、請求項11に記載の作製方法。
【請求項14】
アシネトバクターsp. Tol5株のAtaAをコードする前記DNAが、以下の(a)~(d)のいずれかのDNAである、請求項13に記載の作製方法:
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと70%以上の相同性を有する塩基配列からなり、細胞外に分泌されてファイバー構造物を形成する蛋白質をコードするDNA、
(c)配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、細胞外に分泌されてファイバー構造物を形成する蛋白質をコードするDNA、
(d)配列番号1で表される塩基配列のシグナルペプチドに相当する部位(1~177位)を残し、その後ろからヘッドドメインのコード領域直前(323位)の間(即ち、178位から323位の間)、より好ましくは310位までの間(即ち、178位から310位までの間)から連続する数百から数千塩基を削った塩基配列からなるDNA。
【請求項15】
前記機能的ファイバーDNAと一緒に、以下の(A)~(C)のいずれかのDNAも前記標的微生物に導入する、請求項12~14のいずれか一項に記載の作製方法:
(A)配列番号3で表される塩基配列からなるDNA、
(B)配列番号3で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA、
(C)配列番号3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
【請求項16】
前記機能分子が、タグ分子、酵素認識配列、酵素、蛍光蛋白質、抗原、電子伝達系蛋白質及び受容体蛋白質からなる群より選択される一又は二以上の機能分子である、請求項11~15のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項17】
前記機能分子が、Hisタグ、FLAGタグ、ソルターゼ認識配列、HRV 3C認識配列、β-グルコシダーゼ又は緑色蛍光蛋白質である、請求項11~15のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項18】
前記標的微生物がグラム陰性菌である、請求項11~17のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項19】
前記標的微生物がガンマプロテオバクテリアである、請求項11~17のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項20】
前記標的微生物がアシネトバクター又は大腸菌である請求項11~17のいずれか一項に記載の作製方法。
【請求項21】
請求項11~20のいずれか一項に記載の作製方法で得られた、機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物。
【請求項22】
請求項9、10又は21に記載の微生物から回収された、機能性ファイバー。
【請求項23】
以下のステップ(1)及び(2)を含む、機能性ファイバーの回収方法:
(1)請求項9、10又は21に記載の微生物に対して、前記プロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを作用させるステップ、
(2)切断された機能性ファイバーを回収するステップ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は機能性ファイバーを細胞表面に発現する微生物及びその作製方法等に関する。本出願は、2013年8月30日に出願された日本国特許出願第2013-179948号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明者が以前にバイオフィルターから単離したAcinetobacter sp. Tol 5(アシネトバクター属細菌Tol 5株)は、細胞自己凝集性が高く、また、疎水性の各種プラスチック担体から親水性のガラス、金属表面まで、様々な材料表面に対して高い付着性を示す非病原性のグラム陰性細菌である。他の微生物では報告例のないこのような付着特性をもたらす因子として、細菌細胞表層に存在する新規のバクテリオナノファイバーを発見し、さらにナノファイバーを構成する新しい蛋白質を同定した。この蛋白質は三量体オートトランスポーターアドヘシン(TAA)ファミリーに属しており、本発明者がAtaAと名付けた(非特許文献1)。TAAは種々のグラム陰性病原性細菌が宿主の細胞やコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンといった細胞外マトリックスに特異的に接着し、宿主に感染するために有する病原性因子として知られている(非特許文献2)。TAAファミリーに属する蛋白質はホモ三量体を形成し、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、シグナルペプチド-ヘッド-ネック-ストーク-メンブレンアンカーという共通の基本構造をとる。メンブレンアンカードメインはトランスロケータードメインともいい、外膜にベータバレルを形成し、ペリプラズムでシグナルペプチドが切断された後のヘッド-ネック-ストークから成るパッセンジャードメインを細胞外に輸送、ファイバーとして細胞表層に提示させる機能を有する。パッセンジャードメインのヘッド側がファイバーの先端になり、成熟蛋白質のアミノ末端側にあたる。しかしTAAには、シングルペプチド鎖のアミノ酸残基数が300ほどの小さなものから3000を超える大きなものまで存在し、アミノ酸配列、特にパッセンジャードメインを構成するドメインやモチーフの種類と並びは多様である。本発明者が見つけたAtaAのペプチド鎖は3630アミノ酸から成り、TAAの中でも最大級である。長いストークに複数の長い繰返し配列がモザイク状に並ぶユニークな一次構造をしている。この繰返し配列は、何種類ものモチーフが反復、混在して形成されている。ヘッドもファイバーの先端以外にストークの途中、メンブレンアンカー寄りにもう一つ繰り返す。そして、AtaAのみが様々な表面に対し非特異的で高い接着性を示す。また、TAAの研究は病原性細菌に集中しており、Tol 5のような非病原性細菌についてのTAAの研究例は皆無である。以上の研究成果に基づき、本発明者は、AtaAをコードする遺伝子を導入することによって標的微生物に非特異的付着性及び/又は凝集性を付与又は増強する方法を報告した(特許文献1)。尚、特許文献1ではAtaA及びそれをコードする遺伝子(ataA遺伝子)をそれぞれAadA及びaadA遺伝子と呼称していた。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開第2009/104281号パンフレット
【0004】

【非特許文献1】Ishikawa, M.; Nakatani, H.; Hori, K., AtaA, a new member of the trimeric autotransporter adhesins from Acinetobacter sp. Tol 5 mediating high adhesiveness to various abiotic surfaces. PLoS One 2012, 7, (11), e48830.
【非特許文献2】Linke, D.; Riess, T.; Autenrieth, I. B.; Lupas, A.; Kempf, V. A., Trimeric autotransporter adhesins: variable structure, common function. Trends Microbiol. 2006, 14, (6), 264-270.
【非特許文献3】Bentancor LV et al. CamachoJ Bacteriol. 2012 Aug;194(15):3950-60.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
TAAは一種類のペプチドで細胞表層への自己分泌が可能であり、細胞表層に完全なファイバーを形成する。中でも、アシネトバクター属細菌のTAA(特にAtaA)は標的微生物の固定化や凝集に有用である上に、250nmとTAAの中で最長レベルのファイバーであることから、長さを活かした機能性ナノファイバーとして、更なる用途の拡大が期待できる。本発明は、TAA(特にアシネトバクターのTAA)に接着/凝集以外の機能を持たせること、また新たな機能をもつファイバーで被覆された微生物を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、鋭意検討の結果、ニッケルやカドミウムなどの2価イオンに高親和性のHisタグをはじめ、様々な機能性ペプチドや蛋白質をTAAファイバーに導入し、標的微生物の表層に提示させることに成功した。即ち、付着や凝集とは異なる機能を備えるTAAファイバー(以下、「機能性ファイバー」とも呼ぶ)を細胞表面に発現した微生物(以下、「被毛微生物」とも呼ぶ)を作製することに成功した。また、ファイバーの長さを変えることによって、機能分子(機能性ペプチドや蛋白質)の提示位置を変化させることにも成功した。即ち、機能分子の提示距離を調整可能であることを実証した。さらには、ファイバーに導入したプロテアーゼ認識配列を利用することによって、機能性ファイバーの切断及び回収にも成功した。
以下の発明は、主として上記の成果に基づく。
[1]三量体オートトランスポーターアドヘシン又はその一部にペプチド又は蛋白質からなる機能分子が挿入、結合又は融合してなる機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物。
[2]前記三量体オートトランスポーターアドヘシンが、アシネトバクター属微生物の三量体オートトランスポーターアドヘシンである、[1]に記載の微生物。
[3]前記三量体オートトランスポーターアドヘシンが、アシネトバクターsp. Tol5株のAtaAである、[1]に記載の微生物。
[4]前記微生物がグラム陰性菌である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の微生物。
[5]前記微生物がガンマプロテオバクテリアである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の微生物。
[6]前記微生物がアシネトバクター又は大腸菌である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の微生物。
[7]前記機能分子が、タグ分子、酵素認識配列、酵素、蛍光蛋白質、抗原、電子伝達系蛋白質及び受容体蛋白質からなる群より選択される一又は二以上の機能分子である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の微生物。
[8]前記機能分子が、Hisタグ、FLAGタグ、ソルターゼ認識配列、HRV 3C認識配列、β-グルコシダーゼ又は緑色蛍光蛋白質である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の微生物。
[9]前記機能分子が、プロテアーゼ認識配列、或いは、タグ分子、酵素認識配列、酵素、蛍光蛋白質、抗原、電子伝達系蛋白質及び受容体蛋白質からなる群より選択される一又は二以上の機能分子とプロテーゼ認識配列の組合せ、からなる、[1]~[6]のいずれか一項に記載の微生物。
[10]前記機能分子が、Hisタグ、FLAGタグ、ソルターゼ認識配列、HRV 3C認識配列、β-グルコシダーゼ又は緑色蛍光蛋白質である[9]に記載の微生物。
[11]三量体オートトランスポーターアドヘシンをコードするDNAに、ペプチド又は蛋白質からなる機能分子をコードするDNAが挿入又は付加されてなる機能性ファイバーDNAを、標的微生物に導入するステップ、を含む、機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物の作製方法。
[12]三量体オートトランスポーターアドヘシンをコードする前記DNAが、アシネトバクター属微生物の三量体オートトランスポーターアドヘシンをコードするDNAである、[11]に記載の作製方法。
[13]三量体オートトランスポーターアドヘシンをコードする前記DNAが、アシネトバクターsp. Tol5株のAtaAをコードするDNAである、[11]に記載の作製方法。
[14]アシネトバクターsp. Tol5株のAtaAをコードする前記DNAが、以下の(a)~(d)のいずれかのDNAである、[13]に記載の作製方法:
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと70%以上の相同性を有する塩基配列からなり、細胞外に分泌されてファイバー構造物を形成する蛋白質をコードするDNA、
(c)配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、細胞外に分泌されてファイバー構造物を形成する蛋白質をコードするDNA、
(d)配列番号1で表される塩基配列のシグナルペプチドに相当する部位(1~177位)を残し、その後ろからヘッドドメインのコード領域直前(322位)の間(即ち、178位から322位の間)、より好ましくは310位までの間(即ち、178位から310位までの間)から連続する数百から数千塩基を削った塩基配列からなるDNA。
[15]前記機能的ファイバーDNAと一緒に、以下の(A)~(C)のいずれかのDNAも前記標的微生物に導入する、[12]~[14]のいずれか一項に記載の作製方法:
(A)配列番号3で表される塩基配列からなるDNA、
(B)配列番号3で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNA、
(C)配列番号3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
[16]前記機能分子が、タグ分子、酵素認識配列、酵素、蛍光蛋白質、抗原、電子伝達系蛋白質及び受容体蛋白質からなる群より選択される一又は二以上の機能分子である、[11]~[15]のいずれか一項に記載の作製方法。
[17]前記機能分子が、Hisタグ、FLAGタグ、ソルターゼ認識配列、HRV 3C認識配列、β-グルコシダーゼ又は緑色蛍光蛋白質である、[11]~[15]のいずれか一項に記載の作製方法。
[18]前記標的微生物がグラム陰性菌である、[11]~[17]のいずれか一項に記載の作製方法。
[19]前記標的微生物がガンマプロテオバクテリアである、[11]~[17]のいずれか一項に記載の作製方法。
[20]前記標的微生物がアシネトバクター又は大腸菌である[11]~[17]のいずれか一項に記載の作製方法。
[21][11]~[20]のいずれか一項に記載の作製方法で得られた、機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物。
[22][9]、[10]又は[21]に記載の微生物から回収された、機能性ファイバー。
[23]以下のステップ(1)及び(2)を含む、機能性ファイバーの回収方法:
(1)[9]、[10]又は[21]に記載の微生物に対して、前記プロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを作用させるステップ、
(2)切断された機能性ファイバーを回収するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】全長AtaAおよび短縮AtaAへのHisタグの挿入。図示の方法に従って、Hisタグを導入したAtaAファイバー用のコンストラクトを作製した。
【図2】AtaAファイバー中のHisタグ挿入位置。図において強調した5箇所にHisタグを挿入した。
【図3】FLAGタグつきAtaAの作製。図示の方法に従って、FLAGタグで標識されたAtaAファイバー用のコンストラクトを作製した。
【図4】ソルターゼA認識配列のAtaAへの導入。図示の方法に従って、ソルターゼA認識配列を導入したAtaAファイバー用のコンストラクトを作製した。
【図5】HRV3Cプロテアーゼ認識配列を持つAtaAの作製。図示の方法に従って、HRV3Cプロテアーゼ認識配列を導入したAtaAファイバー用のコンストラクトを作製した。
【図6】eGFP又はtfu0937ベータグルコシダーゼ(BGL)融合AtaAコンストラクトの作製。図示の方法に従って、eGFP又はtfu0937ベータグルコシダーゼが融合したAtaAファイバー用のコンストラクトを作製した。
【図7】eGFP又はtfu0937ベータグルコシダーゼ(BGL)融合AtaAファイバーの一次構造の模式図。
【図8】機能性ファイバー被毛微生物のフローサイトメトリー解析。(a)Hisタグを導入したAtaAファイバー遺伝子を発現する微生物をフローサイトメトリー(抗Hisタグ抗体を使用)で解析した。(b)FLAGタグで標識したAtaAファイバー遺伝子を発現する微生物をフローサイトメトリー(抗FLAGタグ抗体を使用)で解析した。
【図9】機能性ファイバー被毛微生物のフローサイトメトリー解析。(a)ソルターゼA認識配列を導入したAtaAファイバー遺伝子を発現する微生物をフローサイトメトリー(抗stalk抗体を使用)で解析した。(b)HRV3Cプロテアーゼ認識配列を導入したAtaAファイバー遺伝子を発現する微生物をフローサイトメトリー(抗stalk抗体を使用)で解析した。
【図10】被毛の長さの調整。Hisタグの提示位置を変えてAtaAファイバーを導入した。(a)は電子顕微鏡像、(b)は電子顕微鏡像から算出したファイバーの長さを比較したグラフ。
【図11】(a)Hisタグを導入したAtaAファイバー被毛微生物のNi-セファロースビーズへの結合。(b)同微生物のエステラーゼ活性。(c)HRV3Cプロテアーゼで切断、回収された機能性AtaAファイバー。
【図12】機能性ファイバー被毛微生物(大腸菌)のフローサイトメトリー解析。(a)Hisタグを導入したAtaAファイバー遺伝子を発現する大腸菌をフローサイトメトリー(抗Hisタグ抗体を使用)で解析した。(b)Hisタグを導入したAtaAファイバー被毛大腸菌のNi-セファロースビーズへの結合。(c)Hisタグを導入したAtaAファイバー被毛大腸菌(JCM20137 (Tfu0937-BLC):: His-tagged AtaA)のベータグルコシダーゼ活性。Ni-セファロースビーズ上に結合した状態で活性を測定した。
【図13】tfu0937ベータグルコシダーゼを融合したAtaAファイバー被毛微生物のフローサイトメトリー解析。
【図14】(a)eGFPを融合したAtaAファイバー被毛微生物のフローサイトメトリー解析。(b)同微生物が発する蛍光(緑色)。
【図15】tfu0937ベータグルコシダーゼを融合したAtaAファイバー被毛微生物(4140株)のベータグルコシダーゼ活性。
【図16】(a)Hisタグを導入したAtaAファイバー被毛微生物についてのウエスタンブロット解析。(b)HRV3Cプロテアーゼ認識配列を導入したAtaAファイバー被毛微生物についてのウエスタンブロット解析。(c)tfu0937ベータグルコシダーゼを融合したAtaAファイバー被毛微生物についてのウエスタンブロット解析。
【図17】ソルターゼA(Srt)によるYpet蛍光蛋白質連結反応のスキーム(上)。フローサイトメトリー解析の結果(左下)。レーザー蛍光顕微鏡解析の結果(右下)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の局面は機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物に関する。本発明では、TAAの本来の機能とは別の機能が付与されていることを表現するために用語「機能性」を使用する。従って、本発明の機能性ファイバーは、TAAに特徴的な本来の機能とは別の機能を発揮する。例えば、アシネトバクター属微生物TAAを用いた場合には接着性/凝集性以外の機能を発揮する。本発明の機能性ファイバーでは、機能分子としてのペプチド及び/又は蛋白質がTAAファイバーに挿入、結合又は融合しており、当該ペプチド及び/又蛋白質が所望の機能を発揮する。

【0009】
オートトランスポーターアドヘシンとは、グラム陰性細菌の持つ接着性ナノファイバーとして報告されている蛋白質であり、宿主の組織や細胞表層分子、細胞外マトリックスと特異的に相互作用することが知られている。オートトランスポーターアドヘシンは、付着、浸入、細胞毒性、血清耐性、細胞間伝播といった機能を持つと言われている。オートトランスポーターアドヘシンは、N末端シグナルペプチド、内部パッセンジャードメイン、C末端トランスロケータードメインという共通の領域編成を持っている。その中でもC末端トランスロケータードメインはこの属を定義するドメインである。オートトランスポーターアドヘシンの分泌はシグナルペプチドによって開始され、Secシステムによる内膜の通過から始まる。続いて、トランスロケータードメインが外膜へ挿入され、βバレル構造を形成する。最終的にパッセンジャードメインはバレルで形成されたトンネル内を通過し菌体表面へその姿を現す。オートトランスポーターアドヘシンは、単量体オートトランスポーターアドヘシンと三量体オートトランスポーターアドヘシン(TAA)に分類される(Shane E.Cotter,Neeraj K.Surana and Joseph W.St GemeIII 2005.Trimeric autotransporters:a distinct subfamily of Autotransporter proteins.TRENDS in Microbiology.13:199-205)。単量体オートトランスポーターアドヘシンのトランスロケータードメインは、12の膜貫通逆平行βシートからなるβバレル構造を、一つのサブユニットから形成していると考えられている。しかしTAAのトランスロケータードメインは、外膜中で三量体を形成しており、4つのβシートを持つサブユニットがオリゴマー化し三つのサブユニットから12ストランドのβバレル構造を形成していることが知られている。さらに、事実上全ての単量体オートトランスポーターアドヘシンのパッセンジャードメインはトランスロケータードメインと非共有結合でバクテリア表面につながれるか、細胞外に放出されるのに対し、全てのTAA蛋白質ではパッセンジャードメインはトランスロケータードメインと共有結合でつながれたままであると考えられている。よってTAAでは、トランスロケータードメインは、パッセンジャードメインを細胞外膜につなぎとめるメンブレンアンカードメインでもある。また、シグナルペプチドを切り取られた後に細胞外に出るパッセンジャードメインは、成熟蛋白質のアミノ末端であるファイバー先端から、ヘッドドメイン—ネックドメイン—ストークドメインと各種ドメイン構造が連なったファイバーを構成する。さらにストークドメインは、コイルドコイルを基本に、Trpリング、GIN、DALL、FGG、HANSなどのモチーフ構造を複数含むが、その種類と数、アミノ酸配列はTAAによって実にさまざまであり、この蛋白質ファミリーを多様なものとしている。通常、ネックドメインも複数回繰り返して出現する。また稀ではあるがTAAによっては、ヘッドドメインも複数回出現する。

【0010】
三量体オートトランスポーターアドヘシンは、TAA(トリメリックオートトランスポーターアドヘシン)と略称され、共通オリゴマー構造のコイルドコイルをつくる新しいクラスとしてOcaファミリー(Oligomeric Coiled-coil Adhesin Family)とも呼ばれている(Andreas Roggenkamp,Nikolaus Ackermann,Christoph A.Jacobi,Konrad Truelzsch,Harald Hoffmann,and Jurgen Heesemann 2003.Molecular analysis of transport and oligomerization of the Yersinia enterocolitica adhesin YadA.J Bacteriol.185:3735-3744)。

【0011】
本発明では、TAA又はその一部(即ち短縮物)が用いられる。TAAの由来(例えばアシネトバクター属、エシェリヒア属、エルシニア属、ヘモフィルス属)は特に限定されない。好ましくは、アシネトバクター属微生物のTAAを用いる。アシネトバクター属微生物TAAとしてはAtaA(アシネトバクター sp.Tol5株のTAA:特許文献1を参照)やAta(非特許文献3を参照)等の報告があるが、好ましくは、AtaAを用いる。AtaAの由来であるアシネトバクター sp.Tol5株は非病原性菌であり、この特徴は、本発明の産業上利用を図る上で重要である。

【0012】
本発明では、機能分子としてペプチド又は蛋白質が用いられる。機能分子としてのペプチドの例はタグ分子(例えばHisタグ、FLAGタグ、HAタグ、Mycタグ、Eタグ、T7タグ、Pkタグ、VSV-Gタグ、Strepタグ、ZZ-タグ、Spyタグ、エピトープタグ)、酵素認識配列(例えばソルターゼ認識配列、HRV 3C認識配列、トランスグルタミナーゼ認識配列、TEVプロテアーゼ認識配列、ビオチンリガーゼ認識配列(Aviタグ))である。同様に、機能分子としての蛋白質の例は酵素(例えば、β-グルコシダーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、β-グルカナーゼ、グルタミナーゼ、イソメラーゼ、デヒドロゲナーゼ、レダクターゼ、ペルオキシダーゼ、キナーゼ、フォスファターゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、脱塩素化酵素、オキシゲナーゼ、キチナーゼ、キトサナーゼ、リゾチーム、セロビオース、エンドグルカナーゼ、ヒドロキシラーゼ、セロビオハイドロラーゼ、ラッカーゼ、リアーゼ)、蛍光蛋白質(緑色蛍光蛋白質(GFP及びその改変体など)、赤色蛍光蛋白質(RFP及びその改変体など)、黄色蛍光蛋白質(YFP及びその改変体など))、抗原(細胞表面マーカーなど)、電子伝達系蛋白質(シトクローム、フェレドキシン、フラビン蛋白質など)、受容体蛋白質(細胞表面受容体など)である。機能分子の具体例を以下に示す。
Hisタグの一例:HHHHHH(配列番号7)
FLAGタグ:DYKDDDDK(配列番号8)
ソルターゼ(SrtA)認識配列:LPETGGGGG(配列番号9)
Thermobifida fusca由来のβ-グルコシダーゼ:配列番号10
eGFP:配列番号11

【0013】
機能性ファイバーには1種類又は2種類以上の機能分子が導入される。また、機能性ファイバー1分子あたりの機能分子の数も特に制限はない。即ち、機能性ファイバー1分子あたりに1又は複数の機能分子が導入される。

【0014】
機能性ファイバーにおける機能分子の結合又は融合の位置は目的に応じて設計ないし調整可能である。

【0015】
一態様では、タグ分子、酵素認識配列、酵素、蛍光蛋白質、抗原、電子伝達系蛋白質及び受容体蛋白質からなる群より選択される一又は二以上の機能分子とプロテアーゼ認識配列の組合せを機能分子として採用する。この態様の微生物では、プロテアーゼ認識配列に加えて、別の機能分子が導入された機能性ファイバーが細胞表面に発現する。このような微生物からは、プロテアーゼ認識配列を機能分子として採用した場合(即ち、プロテアーゼ認識配列が導入された機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物)と同様に、使用したプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを作用させることにより、機能性ファイバーを切断ないし回収することが可能となる(詳細は後述する)。

【0016】
本発明の微生物は以下の方法、即ち、TAA又はその一部をコードするDNA(以下、「ファイバーDNA」とも呼ぶ」)に、ペプチド又は蛋白質からなる機能分子をコードするDNA(以下、「機能分子DNA」とも呼ぶ))が挿入又は付加されてなる機能性ファイバーDNAを標的微生物に導入するステップ、を含む方法、によって作製することができる。

【0017】
ファイバーDNAとしては、好ましくは、アシネトバクター sp.Tol5株から単離・同定されたataA遺伝子が用いられる。ataA遺伝子は配列番号1で表される塩基配列からなり、配列番号2で表される蛋白質AtaAをコードする。アシネトバクター sp.Tol5株は、排ガス処理リアクターから分離されたトルエン分解能を有する株であり、受託番号FERM P-17188として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE IPOD)(日本国茨城県つくば市東1-1-1つくばセンター中央第6)に寄託されている。

【0018】
好ましい一態様では配列番号1で表される塩基配列からなるDNAがファイバーDNAとして採用されるが、該DNAと機能的に同等のDNAを用いることにしてもよい。配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと機能的に同等のDNAとしては、配列番号1で表される塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性(又は同一性)を有する塩基配列からなり、細胞外に分泌されてファイバー構造物を形成するDNAが挙げられる。あるいは、配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、細胞外に分泌されてファイバー構造物を形成するDNAが挙げられる。

【0019】
別の好ましい一態様では、配列番号1で表される塩基配列のシグナルペプチドに相当する部位(1~177位)を残し、その後ろからヘッドドメインのコード領域直前(322位)の間(即ち、178位から322位の間)、より好ましくは310位までの間(即ち、178位から310位までの間)から連続する数百から数千塩基を削った塩基配列からなるDNAがファイバーDNAとして採用される。このDNAは、AtaAが形成するファイバーの先端(成熟蛋白質のアミノ末端)または先端付近からファイバー長の8割ほど(約3000アミノ酸)の間の任意の長さを削って短くしたファイバーを形成する。該DNAと機能的に同等のDNAを用いることにしてもよい。該DNAと機能的に同等のDNAとしては、該DNAの塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性(又は同一性)を有する塩基配列からなり、細胞外に分泌されてファイバー構造物を形成する蛋白質をコードするDNAが挙げられる。あるいは、該DNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、細胞外に分泌されてファイバー構造物を形成する蛋白質をコードするDNAが挙げられる。

【0020】
ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、低ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件が挙げられるが、高ストリンジェントな条件が好ましい。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、5×SSC、0.1% SDSで洗浄する条件であり、好ましくは50℃、5×SSC、0.1% SDSで洗浄する条件である。高ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1% SDSで洗浄する条件である。

【0021】
塩基配列における変異はシグナルペプチド、ヘッドドメイン、及びメンブレンアンカードメインの各ドメイン構造を維持するものであることが好ましい。同時に、ストークドメインに含まれる各モチーフ構造を維持するものであることが好ましい。配列番号1で表される塩基配列において、シグナルペプチドは1~177位の塩基に相当し、ヘッドドメインは322~888位及び8989~9450位の塩基に相当し、ストークドメインは946~8988位及び9508~10671位の塩基に相当し、メンブレンアンカードメインは10672~10890位の塩基に相当する。

【0022】
TAAの一部をコードするDNAの具体例は後述の実施例に示される。即ち、後述の実施例に示すΔNHisBでは、配列番号1の塩基配列における301位~1020位の領域を削除したDNAをファイバーDNAとして使用している。同様に、ΔNHisCでは301位~4728の領域、ΔNHisDでは301位~7563位の領域を削除したDNAをファイバーDNAとして使用している。

【0023】
アシネトバクター属微生物TAAをコードするDNAとともに、配列番号3で表される塩基配列からなるDNAを標的微生物に導入することにより、標的微生物における機能性ファイバーの形成能をさらに向上させることができる。配列番号3で表される塩基配列からなるDNAと機能的に同等の遺伝子を導入してもよい。配列番号3で表される塩基配列からなるDNAと機能的に同等のDNAとしては、配列番号3で表される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNAが挙げられる。あるいは、配列番号3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが挙げられる。尚、配列番号3で表される塩基配列は、Tol5株のAtaA遺伝子のすぐ下流に見出された配列であり、グラム陰性細菌が有する外膜蛋白質ompA遺伝子やBamE遺伝子、omlA遺伝子などと相同性を示す蛋白質のORFをコードする。当該ORFであるTol5-OmlT(特許文献1ではTol5-OmpAと呼称されていた)は795bpの遺伝子(配列番号3)でコードされる264アミノ酸(配列番号4)からなる。

【0024】
オートトランスポーターアドヘシンをコードするDNAを含むオペロンを標的微生物に導入してもよい。例えば、配列番号5で表される塩基配列からなるDNAを標的微生物に導入することにより、オートトランスポーターアドヘシンをコードするDNAとともに上記外膜蛋白質をコードするDNAを標的微生物に導入することができる。該オペロンと機能的に同等のオペロンを導入してもよい。機能的に同等のオペロンとしては、配列番号5で表される塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列からなり、細胞外に分泌されてファイバー構造物を形成する蛋白質とその機能を促進する蛋白質をコードするDNAからなるオペロンが挙げられる。配列番号5で表される塩基配列はTol5株から単離・同定されたオペロン(ataA-omlTオペロン)であり、プロモーター/リボソーム結合部位(1~106位)、ataA遺伝子(107~10999位)及びTol5-omlT遺伝子(11064~11858位)を含む。尚、当該オペロンを組込んだベクターで形質転換したE.coli DH5αは、「DH5α-XLTOPO::aadA-ompA」として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に受託番号NITE BP-490(受託日2008年(平成20年)2月19日)として寄託されている。

【0025】
標的微生物には様々な微生物を用いることができる。標的微生物は野生株、変異株、遺伝子組換え株のいずれであってもよい。本発明の用途に応じて適切な微生物が選択される。好ましくはグラム陰性菌を、さらに好ましくはガンマプロテオバクテリアを標的微生物とする。標的微生物として利用し得る微生物を例示すると、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、例えば、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)、アシネトバクター(Acinetobacter)属細菌、例えばアシネトバクター カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌、例えばエントロバクター アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、ラルストニア(Ralstonia)属細菌、例えばラルストニア ユートロファ(Ralstonia eutropha)、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、例えばシュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、アエロモナス(Aeromonas)属細菌、例えばアエロモナス キャビエ(Aeromonas caviae)、アルカリゲネス(Alcaligenes)属細菌、例えばアルカリゲネス レータス(Alcaligenes latus)、ザントモナス(Xanthomonas)属細菌、例えばザントモナス カンペストリス(Xanthomonas campestris)、デスルフォモナイル(Desulfomonile)属細菌、例えばデスルフォモナイル ティージェイ(Desulfomonile tiedjei)、デスルフォモナス(Desulfuromonas)属細菌、例えばデスルフォモナス クロロエテニカ(Desulfuromonas chloroethenica)、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属細菌、例えばクロモバクテリウム チヨコラチウム(Chromobacterium chocolatum)、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌、例えばバークホルデリア アルボリス(Burkholderia arboris)、ロドバクター(Rhodobacter)属細菌、アシドボラックス(Acidovorax)属細菌、例えばアシドボラックス ファシリス(Acidovorax facilis)、ザイモモナス(Zymomonas)属細菌、例えばザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)である。中でも、エシェリヒア コリ(大腸菌)とアシネトバクターは好適な標的微生物である。

【0026】
ファイバーDNAに、ペプチド又は蛋白質からなる機能分子をコードするDNA(機能分子DNA)を挿入又は付加することにより、機能性ファイバーDNAが構築される。ファイバーDNA1分子あたりの機能分子DNAの挿入又は付加数は1又は2以上(これに限定されるものではないが、例えば2分子~10分子)である。挿入位置は、ファイバーDNAの発現産物(アシネトバクター属微生物TAA)の重要な立体構造、即ち、ファイバー構造に影響のない位置が好ましい。この観点から、Trpリングドメイン(配列番号1で表される塩基配列において1528~1656、1885~2013、2431~2559、2788~2916、3334~3462、3691~3819位の塩基に相当する)、ヘッドドメイン(配列番号1で表される塩基配列において322~888位及び8989~9444位の塩基に相当する)、メンブレンアンカードメイン(配列番号1で表される塩基配列において10672~10890位の塩基に相当する)に対応する位置を避けて挿入位置を決定するとよい。一方、機能分子DNAの発現産物の機能が発揮し易くするためには、ファイバーDNAの上流側領域に機能分子DNAを挿入するとよい。このようにすれば、微生物の細胞表面から離れた位置に機能分子を提示させることができる。例外的に、後に機能性ファイバーを回収するために機能分子としてプロテアーゼ認識配列を採用する場合(その他の機能分子と併用する場合を含む)には、中央領域から下流側領域(但し、機能性ファイバーの切り出しを考慮し、メンブレンアンカードメインを除く部分)に機能分子DNAである、プロテアーゼ認識配列をコードするDNAを挿入するとよい。特に好ましい態様の一つでは、シグナルペプチドをコードする配列の直後に機能分子DNAを挿入する。ここでの上流領域とは、ファイバーDNAの5'側末端から全長の約1/3に相当する位置までの領域(配列番号1のDNAにおいては3700位塩基までの領域が相当する)、好ましくは5'側末端から全長の約1/4に相当する位置までの領域、更に好ましくは5'側末端から全長の約1/5に相当する位置までの領域である。同様に、下流側領域とは、ファイバーDNAの3'側末端から全長の約1/3に相当する位置までの領域(配列番号1のDNAにおいては7260位塩基までの領域が相当する)、好ましくは3'側末端から全長の約1/4に相当する位置までの領域、更に好ましくは3'側末端から全長の約1/5に相当する位置までの領域である。また、中央領域とは、上流側領域と下流側領域に挟まれた領域である。

【0027】
上述の通り、本発明では、機能分子として、タグ分子(例えばHisタグ、FLAGタグ、HAタグ、Mycタグ、Eタグ、T7タグ、Pkタグ、VSV-Gタグ、Strepタグ、ZZ-タグ、Spyタグ、エピトープタグ)、酵素認識配列(例えばソルターゼ認識配列、HRV 3C認識配列、トランスグルタミナーゼ認識配列、TEVプロテアーゼ認識配列、ビオチンリガーゼ認識配列(Aviタグ))などのペプチド、或いは酵素(例えば、β-グルコシダーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、β-グルカナーゼ、グルタミナーゼ、イソメラーゼ、デヒドロゲナーゼ、レダクターゼ、ペルオキシダーゼ、キナーゼ、フォスファターゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、脱塩素化酵素、オキシゲナーゼ、キチナーゼ、キトサナーゼ、リゾチーム、セロビオース、エンドグルカナーゼ、ヒドロキシラーゼ、セロビオハイドロラーゼ、ラッカーゼ、リアーゼ)、蛍光蛋白質(緑色蛍光蛋白質(GFP及びその改変体など)、赤色蛍光蛋白質(RFP及びその改変体など)、黄色蛍光蛋白質(YFP及びその改変体など))、抗原(細胞表面マーカーなど)、電子伝達系蛋白質(シトクローム、フェレドキシン、フラビン蛋白質など)、受容体蛋白質(細胞表面受容体など)など)などの蛋白質が用いられる。従って、このようなペプチド又は蛋白質をコードするDNAを機能分子DNAとして用意することになる。機能分子DNAの配列の具体例を以下に示す。
Hisタグの一例:CAT CAT CAC CAT CAT CAC(配列番号12)
FLAGタグ:GAC TAC AAG GAC GAC GAT GAC AAG(配列番号13)
ソルターゼ(SrtA)認識配列:TTG CCT GAG ACA GGA GGC GGT GGA GGC(配列番号14)
Thermobifida fusca由来のβ-グルコシダーゼ:配列番号15
eGFP:配列番号16

【0028】
1種類又は2種類以上の機能分子DNAがファイバーDNAに挿入されることになる。一態様では、コードする分子が異なる2種類以上の機能分子DNAが併用される。当該態様によれば、2種類以上の機能が付加された機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物を得ることができる。

【0029】
一態様では、後に機能性ファイバーを切断ないし回収することを可能にするために、タグ分子、酵素認識配列、酵素、蛍光蛋白質、抗原、電子伝達系蛋白質及び受容体蛋白質からなる群より選択される一又は二以上の機能分子をコードするDNAと、プロテアーゼ認識配列をコードするDNAを併用する。

【0030】
機能分子DNAが挿入されたファイバーDNA(機能性ファイバーDNA)を標的微生物に導入して形質転換することにより、機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物が得られる。典型的には、機能性ファイバーDNAを適当なベクターに連結し、該ベクターで標的微生物(宿主微生物)を形質転換することにより、機能性ファイバーを細胞表面に発現する微生物を得ることができる。具体的には、宿主微生物に該DNAを多コピーにて導入したり、構成的に発現するプロモーター支配下に該DNAを連結したり、又は誘導酵素系プロモーター支配下に該DNAを連結したりして、機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物を得ることができる。

【0031】
まず、目的のDNAをベクター中に連結し、組換えベクターを製造する。上記ベクターには、宿主細胞で自律的に増殖し得るファージ、コスミド、人工染色体又はプラスミドが使用されるほかに、例えば、プラスミドを発現カセットとして染色体に導入するような場合にはその発現カセットの構築に必要な宿主(例えば、大腸菌)での自律複製能は必要だが、その発現カセットを導入する宿主(例えば、アシネトバクター属細菌)での自律複製能は必ずしも必要でない。これらの組換えベクターは例えば、大腸菌とアシネトバクター属細菌の両方で使用可能なように設計したシャトルベクター等も使用可能である。

【0032】
プラスミドとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pET21a(+)、pET32a(+)、pET39b(+)、pET40b(+)、pET43.1a(+)、pET44a(+)、pKK223-3、pGEX4T、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19等)、大腸菌-アシネトバクター間シャトルベクタープラスミドpARP3などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(λgt11、λZAP等)が挙げられる。また、クローニング、シークエンス確認用にpCR4-TOPO(登録商標)などの市販のクローニング用ベクターを用いてもよい。

【0033】
ベクターにDNAを挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。例えば、目的のDNAは、通常知られている方法により合成することができ、ベクターに組み込むため、適当な制限酵素の切断部位を両末端に含むように、プライマーを用いてPCR法により増幅してもよい。PCR反応の条件は、当業者が適宜決定することができる。

【0034】
その他、組換えベクターには、プロモーター及び機能性ファイバーDNAに加えて、必要に応じてエンハンサーなどのシスエレメント、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などが連結されていてもよい。選択マーカーの例としては、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコールなどの薬剤耐性マーカー、ロイシン、ヒスチジン、リジン、メチオニン、アルギニン、トリプトファン、ウラシルなどの栄養要求性マーカーが挙げられるがこれに限定されない。

【0035】
プロモーターは、特に制限されず、宿主微生物に応じて当業者が適宜選択すればよい。例えば、宿主が大腸菌である場合には、T7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λ-PLプロモーターなどが使用できる。配列番号6で表される塩基配列からなるプロモーター、及びそれと機能的に同等のプロモーター、例えば、配列番号6で表される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列からなるプロモーターも好適に用いられる。

【0036】
機能性ファイバーDNAとベクター断片とを連結させるには公知のDNAリガーゼを用いるとよい。そして、機能性ファイバーDNAとベクター断片とをアニーリングさせた後連結させ、組換えベクターを作製する。好ましくは市販のライゲーションキット、例えば、ライゲーションhigh(東洋紡株式会社製)を用いて、規定の条件にてライゲーション反応を行うことにより組換えベクターを得ることができる。

【0037】
クローニング、連結反応、PCR等を含む組換えDNA技術は、例えば、Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.,9.47-9.58,Cold Spring Harbor Lab.press(1989)及びShort Protocols In Molecular Biology,Third Edition,A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.に記載されるものを利用することができる。

【0038】
得られたベクターを、必要であればボイル法、アルカリSDS法、磁性ビーズ法及びそれらの原理を使用した市販されているキット等により精製し、さらに例えばエタノール沈殿法、ポリエチレングリコール沈殿法などの濃縮手段により濃縮することができる。

【0039】
標的微生物への組換えベクターの導入方法は、特に限定されないが、例えばカルシウムイオンを用いるヒートショック法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法等が挙げられる。

【0040】
目的のDNAを含む形質転換微生物は、その組換えベクターが有するマーカー遺伝子により、例えば、アンピシリン、カナマイシンなどの抗生物質を含むLB培地寒天プレート上でコロニーを形成することにより選抜することができるが、クローニングされた宿主微生物が組換えベクターにより形質転換されたものかどうかを確認するため、一部を用いて、PCR法によるインサートの増幅確認、又はシーケンサーを用いたダイデオキシ法による配列解析をしてもよい。自律複製可能なプラスミドを導入する形式の他に、染色体の遺伝子と相同な領域をベクター内に配置し、相同組換えを起こさせて目的遺伝子を導入させる染色体組み込み型の導入方法を使用してもよい。

【0041】
得られた形質転換微生物を培地で培養する方法は、標的微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。大腸菌等の微生物を宿主として得られた形質転換微生物を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換微生物の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。具体的には、M9培地、M9G培地、BS培地、LB培地、Nutrient Broth培地、肉エキス培地、SOB培地、SOC培地等が挙げられる。

【0042】
炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコースなどの糖類、グリセリンなどのポリオール類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、又はピルビン酸、コハク酸、クエン酸若しくは乳酸等の有機酸類の他、脂肪酸類や油脂などを使用することができる。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物、メチルアミンなどのアルキルアミン類、又はアンモニア若しくはその塩などを使用することができる。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミン、消泡剤なども必要に応じて使用してもよい。また、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドなどの蛋白質発現誘導剤を必要に応じて培地に添加してもよい。

【0043】
培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、好ましくは0~40℃、より好ましくは10~37℃、特に好ましくは15~37℃で行う。培養期間中、培地のpHは宿主の発育が可能で、オートトランスポーターアドヘシンの活性が損なわれない範囲で適宜変更することができるが、好ましくはpH4~8程度の範囲である。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。

【0044】
上記のようにして、機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物を得ることができる。

【0045】
以上の方法にて作製した被毛微生物から機能性ファイバーを切り出すことにより、機能性ファイバーを回収することができる。そこで本発明の更なる局面は、機能性ファイバーの回収方法及び回収した機能性ファイバーに関する。この局面では、プロテアーゼ認識配列が結合又は融合した機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物、或いは、プロテアーゼ認識配列に加えて、他の機能分子(タグ分子、酵素認識配列、酵素、蛍光蛋白質、抗原など)が結合又は融合した機能性ファイバーを細胞表面に発現した微生物が用いられる。即ち、細胞表面を覆う機能性ファイバーにプロテアーゼ認識配列が組み込まれている微生物を用意する。そして、当該微生物に対して、当該プロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを作用させる。例えば、プロテアーゼ認識配列としてHRV 3C認識配列を採用した場合には、HRV 3Cプロテアーゼ又は同様の活性(基質の認識及び切断)を示すプロテアーゼを作用させればよい。各種プロテアーゼが市販されており、適切なプロテアーゼは容易に入手することが可能である。反応条件は、添付の操作マニュアル(市販品を利用する場合)や過去の報告等を参考にすればよい。

【0046】
プロテアーゼを作用させた後、切断された機能性ファイバーを回収する。回収には硫安沈殿、密度勾配遠心分離等を利用することも可能であるが、簡便且つ効率的な回収のためには、タグ分子(例えばHisタグ、FLAGタグ)を利用することが好ましい。タグ分子を利用する場合には、タグ分子が組み込まれるように機能性ファイバーを設計しておけばよい(即ち、プロテアーゼ認識配列(或いはプロテアーゼ認識配列と他の機能分子)に加えてタグ分子も含む機能性ファイバーが発現するようにする)。タグ分子を利用した機能性ファイバーの回収操作の一例(Hisタグを利用した場合)を示すと、プロテアーゼを作用させた後の培養液をNiが固定化された担体を充填したカラム(例えばNi-セファロースカラム)で精製する。この精製に先立って、培養液を前処理(濾過、希釈、濃縮、 脱塩、硫安沈殿、限外濾過等)に供してもよい。また、Ni-セファロースカラムによる精製の後、必要に応じて更なる精製(濾過、限外濾過、濃縮、脱塩、遠心処理、カラムクロマトグラフィー、凍結、乾燥等)を行うことにしてもよい。
【実施例】
【0047】
アシネトバクター sp. Tol 5由来の三量体オートトランスポーターアドヘシン(TAA)であるAtaAの遺伝子を改変することにより、有用な機能をもつナノファイバー(機能性AtaAファイバー)で覆われた微生物(被毛微生物)を作製することを試みた。また、機能性AtaAファイバーの回収も試みた。
【実施例】
【0048】
1.方法
(1)全長AtaAおよび短縮AtaAへのHisタグの挿入(図1)
制限酵素サイトSfiIとポリヒスチジンタグを含むプライマーを表1の通り設計した。
【実施例】
【0049】
【表1】
JP2015030171A1_000002t.gif
【実施例】
【0050】
PCRの鋳型にはpTa2ベクターにataA遺伝子をクローニングしてあるpTa2::ataAを使用した。1回目のPCRは表1の3,6,9,13,17番のフォワードプライマーとそれらと対になる4,10,14,18番のリバースプライマー、および2,5,8,12,16番のリバースプライマーとそれらと対になる1,7,11,15番のフォワードプライマーの組み合わせで行い、一部の配列が重複する2種類の増幅産物の5つの組合せ(A~E)を得た。2回目のPCRは1回目のPCRで増幅した断片2種類と、それぞれの増幅断片の末端に結合するプライマーのセット(それぞれ1と4、7と10、11と14、15と18番)を用いて目的断片を増幅した。5つの増幅断片HisA~Eはそれぞれ、両端にAtaA遺伝子由来またはAtaA遺伝子をクローニングしたプラスミドベクター由来の制限酵素サイトをもち、配列中にSfiIサイトとHisタグをコードする配列を持つ。これら増幅断片をTAクローニングによってpTa2ベクターにサブクローニングした。pTa2ベクターにサブクローニングした断片を両端の制限酵素サイトを利用して切り出し、同じ制限酵素で処理したpTa2::ataAまたはpDONR::ataAベクターにライゲーションすることで、AtaA遺伝子の一部にHisタグをコードする領域が導入されたコンストラクトpTA2::hisA-ataA, pTA2::hisB-ataA, pTA2::hisE-ataA またはpDONR::hisC-ataA, pDONR::hisD-ataAを作製した。
【実施例】
【0051】
アミノ末端を欠失させたAtaAのアミノ末端にHisタグを導入したコンストラクト(ΔNhis (B-D)-ataA) を作製するために、pDNOR::hisA-ataAをataAのコード領域の少し上流に認識サイトがある制限酵素EcoRIと上記増幅断片中に組み込んだSfi Iで処理し、AtaAのシグナルペプチドをコードする領域を含む断片を得た。また、pTA2::hisB-ataA, pDONR::hisC-ataA, pDONR::hisD-ataAのそれぞれもEcoRIとSfi Iで処理し、Sfi I-Hisタグの挿入位置から上流を切り落とし、それぞれにAtaAのシグナルペプチドコード領域を含む断片をつないで、ΔNhisB,ΔNhisC,ΔNhisDを作製した。
【実施例】
【0052】
こうして、AtaAファイバー蛋白質のA, B, C, Dまたは Eの位置にSfiI認識サイトとともにHisタグを挿入した5種類のHis-AtaAファイバー蛋白質と、N末シグナル配列の後ろからB, C, またはDの位置まで削除した3種類の短縮AtaAファイバーのほぼ先端(シグナル配列切断後の蛋白質のN末端付近)にHisタグを付加したHis-ΔNAtaAファイバー蛋白質を得た。これらタグ導入AtaAの遺伝子は発現ベクターであるpARP3ベクターにサブクローニングしてから使用した。
【実施例】
【0053】
尚、各コンスタラクトが発現する、Hisタグが挿入されたAtaAのアミノ酸配列は以下の通りである。
HisA-ataA:配列番号50
HisB-ataA:配列番号51
HisC-ataA:配列番号52
HisD-ataA:配列番号53
HisE-ataA:配列番号54
ΔNHisB-ataA:配列番号55
ΔNHisC-ataA:配列番号56
ΔNHisD-ataA:配列番号57
【実施例】
【0054】
(2)AtaAファイバー中のHisタグ導入位置(図2)
AtaAは三量体オートトランスポーターアドヘシン(TAA)ファミリーに属し、他のTAAと同様に、ファイバー先端(シグナルペプチド切断後のN末端)のヘッドドメイン-ネックドメイン-ストークドメイン-メンブレンアンカードメイン(C末端)の構造をとる。さらにストークドメインには複数の繰り返し配列がモザイク状に並ぶ。この繰り返し配列は、TAAを構成する多種類のモチーフを含む。また、AtaAは、ストークのC末寄りにもう一つのヘッドドメインを有する。Hisタグの挿入位置(A~D)は、AtaAタンパク質の高次構造予測にもとづき、推定モチーフの境界付近を選択した。具体的な導入位置はシグナルペプチドとアミノ末端側のヘッドドメインの間(Asn100の直後(A): HisA)、アミノ末端側のヘッドドメインおよびネックドメインの後(Ala340の直後(B): HisB)、パッセンジャードメインの繰り返しモチーフの中央付近と終わり付近(それぞれThr1576 の直後(C)および Leu2521の直後(D):HisC およびHisD)、カルボキシル末端側のヘッドドメインの前 (Asn2966の直後: HisE)である。
【実施例】
【0055】
(3)FLAGタグつきAtaAの作製(図3)
2回の連続したFLAGタグペプチド配列をコードするDNA配列の両末端にSfi I制限酵素サイトを持つ二本鎖オリゴヌクレオチドをSfi Iで処理し、同様にSfi I処理したpTa2::his A-ataAにライゲーションした。導入されたオリゴヌクレオチドの数と配列はDNAシークエンシングによって確認した。これらのFLAGタグ導入AtaAの遺伝子は発現ベクターであるpARP3ベクターにサブクローニングしてから使用した。
【実施例】
【0056】
尚、各コンスタラクトが発現する、FLAGタグが挿入されたAtaAのアミノ酸配列は以下の通りである。
2xFLAG-HisA-ataA:配列番号58
4xFLAG-HisA-ataA:配列番号59
6xFLAG-HisA-ataA:配列番号60
【実施例】
【0057】
(4)ソルターゼA認識配列のAtaAへの導入(図4)
両端にXmnI制限酵素サイトをもち、SfiIサイトとHisタグをコードする配列を持つ二本鎖オリゴヌクレオチドをXmnIで処理し、ataA遺伝子の内部(シグナルペプチドコード領域とアミノ末端側ヘッドドメインコード領域の間)に存在するXmnIサイトに導入し、pDNOR::XmnI-his-ataAを得た。ソルターゼA認識配列をコードする遺伝子配列を制限酵素Sfi Iサイトではさんだ二本鎖オリゴヌクレオチドをSfi Iで処理し、同じくSfi Iで処理したpDNOR::XmnI-his-ataAコンストラクトにライゲーションした。得られたソルターゼA認識配列を導入したataAの遺伝子は、発現ベクターであるpARP3ベクターにサブクローニングしてから使用した。尚、構築したコンスタラクトが発現する、ソルターゼA認識配列が挿入されたAtaAのアミノ酸配列は以下の通りである。
SrtA-ataA:配列番号61
【実施例】
【0058】
(5)HRV3Cプロテアーゼ認識配列を持つAtaAの作製(図5)
オーバーラップPCRによってHRV3Cプロテアーゼ認識配列を含むAtaA遺伝子の断片を作製した。pTA2::ataAを鋳型として1回目のPCRを図中1, 2と3, 4の組み合わせのプライマーセットを用いて行った。増幅した各断片と1,4のプライマーセットを用いた2回目のPCRによって、AtaA遺伝子中のBgl ll制限酵素サイトと終止コドン直後に存在するpTA2::ataA上のXba I制限酵素サイトの間に、HRV3Cプロテアーゼ認識配列をコードするDNA配列を挿入したataA遺伝子断片を増幅した。増幅断片をpTA2ベクターにサブクローニングしてDNA配列を確認後、このコンストラクトをBgl llとXbaI制限酵素で処理し、得られた断片を同じ酵素で処理したpTA2::ataAにライゲーションしpTA2::3CataAコンストラクトを得た。最終的に3CataA遺伝子は発現ベクターであるpARP3ベクターにサブクローニングし、p3CAtaAを得た。尚、構築したコンスタラクトが発現する、HRV3Cプロテアーゼ認識配列を持つAtaAのアミノ酸配列は以下の通りである。
3CAtaA:配列番号62
【実施例】
【0059】
(6)eGFP又はtfu0937ベータグルコシダーゼ(BGL)融合AtaAコンストラクトの作製(図6、7)
eGFP遺伝子とtfu0937BGL遺伝子の両端の配列にそれぞれSfi I制限酵素サイトを付加したプライマーを設計した。eGFP遺伝子の両端にはグリシン5つで構成されるlinker部分を付加したプライマーも設計した。また、tfu0937BGL遺伝子の3'末端側にはGGSGG(配列番号63)のリンカーをコードする塩基を挿入した。設計したプライマーを用いてPCRを行い、PCR産物をTAクローニングして、DNAシーケンシングにより増幅産物の配列を確認した。配列が正しいことを確認後、クローニングベクターから目的の遺伝子をコードする領域をSfi I処理により切り出し、pDONR::ΔNhisB-ataA,pDONR::ΔNhisC-ataA,pDONR::ΔNhisD-ataA のSfi Iサイトにライゲーションした。最終的には発現用ベクターであるpARP3 vectorに目的の遺伝子をサブクローニングし下記コンストラクトを得た。
pARP3::eGFP-ΔNhisB-ataA, pARP3::eGFP-ΔNhisC-ataA, pARP3::eGFP-ΔNhisD-ataA
pARP3::eGFP-linker-ΔNhisB-ataA, pARP3::eGFP-linker-ΔNhisC-ataA, pARP3::eGFP-linker-ΔNhisD-ataA
pARP3:: tfu0937-ΔN hisC-ataA, pARP3:: tfu0937-ΔN hisD-ataA
pARP3:: tfu0937-ΔN hisD-3CataA
【実施例】
【0060】
尚、各コンスタラクトが発現する、GFPまたはtfu0937BGLを融合したAtaAのアミノ酸配列は以下の通りである。
Gfp-ΔNHisB-linker-ataA(リンカー有):配列番号64
Gfp-ΔNHisC-linker -ataA(リンカー有):配列番号65
Gfp-ΔNHisD-linker -ataA(リンカー有):配列番号66
Gfp-ΔNHisB-ataA(リンカー無) :配列番号67
Gfp-ΔNHisC-ataA(リンカー無):配列番号68
Gfp-ΔNHisD-ataA(リンカー無):配列番号69
tfu0937-ΔNHisC-ataA:配列番号70
tfu0937-ΔNHisD-ataA:配列番号71
tfu0937-ΔNHisD-3CataA:配列番号72
【実施例】
【0061】
(7)機能性ファイバー遺伝子コンストラクトの導入
上記の方法で構築した各コンストラクトを保有するドナー株E. coli S17-1(Simon, R.; Priefer, U.; Puhler, A., Bio-Technol 1983, 1, (9), 784-791)との接合によりTol 5のataA遺伝子欠損変異株である4140株を形質転換した。Hisタグを挿入した遺伝子を含むコンストラクトについては大腸菌BL21株にも導入し、形質転換体を得た。
【実施例】
【0062】
2.結果
(1)機能性AtaAファイバーの発現の確認
フローサイトメトリー又は共焦点レーザー顕微鏡解析により、機能性AtaAファイバーで被覆された微生物(被毛微生物)が得られているか確認した。図8(a)(Hisタグ)、図8(b)(FLAGタグ)、図9(a)(ソルターゼA認識配列)、図9(b)(HRV3Cプロテアーゼ認識配列)、図12(a)(Hisタグ、大腸菌)、図13(tfu0937ベータグルコシダーゼ)、図14(GFP)に示す通り、各機能性AtaAファイバーで被覆された微生物を確認できた。ウエスタンブロット解析によっても、Hisタグを導入した機能性AtaAファイバー(図16(a))、HRV3Cプロテアーゼ認識配列を導入した機能性AtaAファイバー(図16(b))及びtfu0937ベータグルコシダーゼを融合した機能性AtaAファイバー(図16(c))の生産を確認した。Hisタグを導入した機能性AtaAファイバーについては、ファイバーの長さを調整することが可能であった(図10)。即ち、ファイバーの長さを変えることにより、機能分子(この例ではHisタグ)の細胞表層からの提示位置を変えることに成功した。
【実施例】
【0063】
(2)機能性AtaAファイバーの機能評価
Hisタグを導入した機能性AtaAファイバー被毛微生物のNi-セファロースビーズへの結合能を評価した。図11(a)に示す通り、良好な結合を認め、機能性AtaAファイバーに導入したHisタグがその機能を維持した状態で提示されていることが確認された。また、Ni-セファロースビーズに結合させた被毛微生物のエステラーゼ活性を測定した結果(図11(b)からも、Hisタグを介して被毛微生物がNi-セファロースビーズに結合していることが示された。各被毛微生物のエステラーゼ活性の比較から、AtaAファイバー上のHisタグによって菌体をNi-セファロースビーズに結合させるためには、Hisタグを細胞表層から遠い位置に提示することが有利といえる。尚、エステラーゼ活性は以下の方法で測定した。まず、Hisタグ融合AtaAを発現誘導し、OD600 = 1.5-2.0まで培養した培養液をOD600 = 0.6になるようにLB培地で希釈した。ここにNi-セファロースビーズ(50%スラリー 純水中にけん濁)を20μl加えて攪拌し、ビーズに結合させた。LB培地と水でビーズを洗浄後、菌が付着したビーズを反応に供した。反応は回収したビーズに対して、200μlの4-NBP反応溶液(1.9mM パラニトロフェニル酪酸、1.1% トリトン-X 100、50mM 3,3-ジメチルグルタル酸、50mM トリス、50mM 2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール)を加え30分間室温でインキューべートした後、生成物であるパラニトロフェノールの吸収波長である405nmの吸光度をそのままマイクロプレートリーダーで測定することによりエステラーゼ活性を求めた。
【実施例】
【0064】
大腸菌を宿主にした場合も同様に、Hisタグを導入した機能性AtaAファイバー被毛微生物が、Hisタグを介してNi-セファロースビーズに結合することが確認された(図12(b)、(c))。なお、Hisタグを導入した機能性AtaAファイバーで被覆された大腸菌は、表層にベータグルコシダーゼを有している組換え株なので、Ni-セファロースビーズへの微生物細胞の結合はBGL活性で評価した(図12(c))。BGL活性の測定法はtfu0937ベータクルゴシダーゼ活性の測定法(下記)と同じである。
【実施例】
【0065】
HRV3Cプロテアーゼ認識配列を導入した機能性AtaAファイバー被毛微生物に対してHRV3Cプロテアーゼを作用させ、硫安沈殿により機能性AtaAファイバーの回収を試みた。図11(c)に示す通り、機能性AtaAファイバーの回収に成功した。
【実施例】
【0066】
eGFPを融合させた機能性AtaAファイバー被毛微生物の蛍光を観察した。発現誘導によって蛍光(緑色)を認め(図14(b))、eGFPがファイバー上で機能していることが確認された。
【実施例】
【0067】
tfu0937ベータグルコシダーゼを融合させた機能性AtaAファイバー被毛微生物のベータグルコシダーゼ活性を以下の方法で測定した。tfu0937ベータグルコシダーゼ融合AtaAファイバーを発現誘導し、O.D.600が2.1-2.7になるまで培養した。菌培養液300μlから菌体を回収し、BS-N溶液に溶かした1 mM PNPG 300μlを菌体に加えて37℃で30分反応させ、反応液から上清を回収し、生成物であるパラニトロフェノールの吸収波長である405nmの吸光度をそのままマイクロプレートリーダーで測定することによりエステラーゼ活性を求めた。測定の結果、tfu0937ベータグルコシダーゼを融合させた機能性AtaAファイバー被毛微生物では発現誘導によって活性の上昇を認め(図15)、当該酵素がファイバー上で機能していることが確認された。
【実施例】
【0068】
ソルターゼA(Srt)認識配列を導入したAtaAファイバーの機能性及び有用性を評価した。Srt認識配列を導入したAtaAまたは導入していないAtaA(コントロール)に、Srt認識配列を連結したYpet蛍光蛋白質をSrt反応により連結させた(図17上)。コントロールとして、Ypet無しの系とSrt無しの系も同様に処理した。フローサイトメトリーで、Srtの連結によるAtaAファイバーの蛍光強度のシフトを解析した。Srt認識配列を導入したAtaAの場合、蛍光強度のシフトが認められ(図17左下)、蛍光蛋白質の連結を確認できた。また、レーザー顕微鏡で、Srtの連結によるAtaAファイバーの細胞周毛蛍光を観察した結果、Srt認識配列を導入したAtaAの場合には細胞周囲に蛍光を認めた(図17右下)。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、接着機能以外の様々な有用な機能をもつファイバー(機能性ファイバー)を微生物の表面に発現させることができる。機能性ファイバーで被覆された微生物(被毛微生物)は、機能性ファイバーに導入した機能に応じて様々な用途に用いられる。例えば、タグ分子を導入した場合には特異的な結合性を利用して、微生物の固定化、重金属やレアメタルなどの回収(環境中の有害物質の除去、バイオレメディエーション、環境中からの有用物質の取得など)、蛋白質・ペプチド以外の低分子機能化合物のコンジュゲート等を行うことができる。また、酵素を導入した場合には、酵素反応を利用した有用物質の生産、有害物質の分解・除去、高分子バイオマスの低分子化などへの適用が想定される。蛍光蛋白質や抗原、受容体蛋白質を導入した場合には、各種分析(バイオイメージング、バイオセンサー、バイオマーカー、迅速診断等)・検出などへの利用が想定される。電子伝達系蛋白質を導入した場合は、バイオ燃料の生産、微生物発電、環境中の有害物質の分解除去などへの利用が想定される。一方、本発明の回収方法は、機能性ファイバー単独での利用を可能にするものであり、機能性ファイバーの利用分野・応用分野を大幅に拡大する。
【0070】
本発明によれば、微生物が細胞表面に発現するファイバー(毛)に本来の機能とは異なる機能を付与することができる。余分な機能性の配列が挿入/追加されれば、毛を構成する蛋白質がその高次構造を形成できなくなることや、細胞表層に発現する(分泌される)ことができなくなる可能性が高い。余分な配列が、蛋白質の高次構造を壊したり、分泌機能を喪失させたりするおそれがあるからである。本発明は当該困難性を克服し、機能性が付与されたファイバーを発現する微生物を提供することに成功している。
【0071】
本発明では、微生物が細胞表面に発現するファイバーに機能性を付与する。この特徴により、細胞から距離をおいた位置で特定の機能を発揮させることができる。細胞からの距離を保つことは、ファイバー上の機能分子と細胞表層との相互作用や立体障害を回避して機能を発揮させるのに重要である。また、細胞毒性のある機能を発現させる場合、細胞から離れておれば毒性を回避できる。更には、プロテアーゼを利用して、機能性ファイバーを回収すれば、ナノマテリアルとしての利用価値も出てくる。このように、細胞表面に発現するファイバーに機能性を付与することの意義は極めて大きい。
【0072】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【配列表フリ-テキスト】
【0073】
配列番号7:人工配列の説明:Hisタグ
配列番号8:人工配列の説明:FLAGタグ
配列番号9:人工配列の説明:ソルターゼA認識配列
配列番号11:人工配列の説明:eGFP
配列番号12:人工配列の説明:Hisタグ
配列番号13:人工配列の説明:FLAGタグ
配列番号14:人工配列の説明:ソルターゼA認識配列
配列番号16:人工配列の説明:eGFP
配列番号17~18:人工配列の説明:プライマー
配列番号19:人工配列の説明:Hisタグを含む配列
配列番号20:人工配列の説明:FLAGタグを含む配列
配列番号21:人工配列の説明:FLAGタグを含む配列
配列番号22~24:人工配列の説明:断片配列
配列番号25~28:人工配列の説明:プライマー
配列番号29、30:人工配列の説明:プライマー
配列番号31:人工配列の説明:断片配列
配列番号32~49:人工配列の説明:プライマー
配列番号50:人工配列の説明:HisA-ataA
配列番号51:人工配列の説明:HisB-ataA
配列番号52:人工配列の説明:HisC-ataA
配列番号53:人工配列の説明:HisD-ataA
配列番号54:人工配列の説明:HisE-ataA
配列番号55:人工配列の説明:ΔNHisB-ataA
配列番号56:人工配列の説明:ΔNHisC-ataA
配列番号57:人工配列の説明:ΔNHisD-ataA
配列番号58:人工配列の説明:2xFLAG-HisA-ataA
配列番号59:人工配列の説明:4xFLAG-HisA-ataA
配列番号60:人工配列の説明:6xFLAG-HisA-ataA
配列番号61:人工配列の説明:SrtA-ataA
配列番号62:人工配列の説明:3CAtaA
配列番号63:人工配列の説明:リンカー
配列番号64:人工配列の説明:Gfp-ΔNHisB-linker-ataA
配列番号65:人工配列の説明:Gfp-ΔNHisC-linker-ataA
配列番号66:人工配列の説明:Gfp-ΔNHisD-linker-ataA
配列番号67:人工配列の説明:Gfp-ΔNHisB-ataA
配列番号68:人工配列の説明:Gfp-ΔNHisC-ataA
配列番号69:人工配列の説明:Gfp-ΔNHisD-ataA
配列番号70:人工配列の説明:tfu0937-ΔNHisC-ataA
配列番号71:人工配列の説明:tfu0937-ΔNHisD-ataA
配列番号72:人工配列の説明:tfu0937-ΔNHisD-3CataA
配列番号73:人工配列の説明:ソルターゼ反応関連配列
配列番号74:人工配列の説明:ソルターゼ反応関連配列
配列番号75:人工配列の説明:ソルターゼ反応関連配列
配列番号76:人工配列の説明:ソルターゼ反応関連配列
配列番号77:人工配列の説明:ソルターゼ反応関連配列
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16