TOP > 国内特許検索 > 生物学的組織に血管系を付与する方法 > 明細書

明細書 :生物学的組織に血管系を付与する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明の名称または考案の名称 生物学的組織に血管系を付与する方法
国際特許分類 C12N   5/077       (2010.01)
A01K  67/027       (2006.01)
FI C12N 5/077
A01K 67/027
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 45
出願番号 特願2015-528240 (P2015-528240)
国際出願番号 PCT/JP2014/068808
国際公開番号 WO2015/012158
国際出願日 平成26年7月15日(2014.7.15)
国際公開日 平成27年1月29日(2015.1.29)
優先権出願番号 2013153056
優先日 平成25年7月23日(2013.7.23)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】武部 貴則
【氏名】谷口 英樹
【氏名】高橋 禎暢
出願人 【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
Fターム 4B065AA90X
4B065AC20
4B065BC31
4B065BC37
4B065BD50
4B065CA44
要約 in vitroにおいて、生物学的組織に血管系を付与する方法であって、生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養することを含む、前記方法。前記方法により、血管系が付与された生物学的組織。前記生物学的組織を非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、組織又は臓器の作製方法。前記生物学的組織をヒト又は非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、組織又は臓器の再生又は機能回復方法。前記生物学的組織を非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、非ヒトキメラ動物の作製方法。前記生物学的組織、前記方法で作製された組織及び臓器、並びに前記方法で作製された非ヒトキメラ動物からなる群より選択される少なくとも1つを用いて、薬剤を評価する方法。前記方法により、血管系を付与された生物学的組織を含む、再生医療用組成物。
特許請求の範囲 【請求項1】
in vitroにおいて、生物学的組織に血管系を付与する方法であって、生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養することを含む、前記方法。
【請求項2】
足場材料を用いることなく、生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養する請求項1記載の方法。
【請求項3】
生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養することで、生物学的組織に血管系が付与され、生物学的組織の機能が維持及び/又は向上する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の方法により、血管系が付与された生物学的組織。
【請求項5】
請求項4記載の生物学的組織を非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、組織又は臓器の作製方法。
【請求項6】
請求項4記載の生物学的組織をヒト又は非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、組織又は臓器の再生又は機能回復方法。
【請求項7】
請求項4記載の生物学的組織を非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、非ヒトキメラ動物の作製方法。
【請求項8】
請求項4記載の生物学的組織、請求項5記載の方法で作製された組織及び臓器、並びに請求項7記載の方法で作製された非ヒトキメラ動物からなる群より選択される少なくとも1つを用いて、薬剤を評価する方法。
【請求項9】
請求項4記載の生物学的組織を含む、再生医療用組成物。
【請求項10】
組織又は臓器を作製するために用いられる請求項9記載の組成物。
【請求項11】
組織又は臓器の再生又は機能回復を行うために用いられる請求項9記載の組成物。
【請求項12】
生体に移植した後、生物学的組織が血管網を有する組織又は臓器に分化する請求項9~11のいずれかに記載の組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的組織へ血管系を付与する方法に関し、より詳細には、多能性幹細胞等より誘導した組織や、個体より分離した正常組織や癌組織などの組織から、血管網を有する三次元組織を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個体より分離した正常/癌組織や、多能性幹細胞より誘導した組織を利用して、新たな医薬品を開発するための創薬スクリーニングや、失われた臓器の機能を補う再生医療を実現化することが注目されている。
多能性幹細胞などから三次元組織を誘導する試みとしては、肝臓、膵臓や神経などの領域において、スフェロイド状の小型組織を形成し、細胞の分化誘導を行う研究が報告されている(非特許文献1:Takayama K, et al.Biomaterials. 2013 Feb;34(7):1781-9. 非特許文献2:Saito H, et al. PLoS ONE. 2011;6(12):e28209、非特許文献3:Eiraku M, et al. Nature 2011、472, 51-56)。しかし、いずれの方法で誘導された組織も、血管構造が存在しない。血管構造は、移植した後に、組織が生存するために必要な酸素及び栄養素などを組織内部に送達する役割を有しているのみならず、(内部に血液が流入する以前にも、)血管を伴う三次元的な組織構造や細胞極性を再現することが細胞の分化・増殖・維持に重要であると考えられている。したがって、血管を有さない組織は、単に、移植後に定着せずに内部が壊死することのみならず、血管化に伴う組織の成熟化が達成されず、充分な機能を発揮することが困難であった。
【0003】
そこで、三次元的な組織に血管構造を付加することを目的として、個体より分離した膵島などの組織を、担体(足場材料)へ播種し、血管内皮細胞や線維芽細胞などと共培養を行う方法などが考案されている (非特許文献4:Kaufman-Francis K, et al. PLoS ONE 2012、7(7): e40741)。
【0004】
しかし、足場材料による空間的配置の制約が存在し細胞挙動が大きく影響を受けることから、生体組織のような精密な構造を構築することが困難であり、適正な細胞間の相互作用が再現されない。したがって、組織中の細胞の成熟や増殖が阻害されたり、機能的な血管網の再構成が遅延するために移植後の定着が悪いなどの問題が生じてしまう。さらに、移植などに用いる際に、足場材料が異物反応を生じ、炎症などを来すことも大きな問題点と考えられる。
以上のように、産業応用や再生医療応用を想定した際には、血管網を備えた三次元組織の再構築が望まれているにも関わらず、足場材料に頼ること無く、in vitroにおいて組織を用いて血管を備えた組織体を構築する方法は、未だに確立されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Takayama K, et al.Biomaterials. 2013 Feb;34(7):1781-9.
【非特許文献2】Saito H, et al. PLoS ONE. 2011;6(12):e28209
【非特許文献3】Eiraku M, et al. Nature 2011、472, 51-56
【非特許文献4】Kaufman-Francis K, et al. PLoS ONE 2012、7(7): e40741
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
肝臓・膵臓・腎臓・腸管・肺臓などの疾患に対する医薬品開発や再生医療の実現を目指すためには、血管化を伴う三次元的な組織構造や細胞極性を再現することが必須である。すなわち、多能性幹細胞より誘導された組織や個体より分離した組織の機能を最大化するためには、血管網の再構築を可能とする三次元組織体の形成が必要である。
【0007】
一方、本発明者らは、異なった細胞系譜の時空間的な相互作用を活用することにより、「臓器の再構成に基づく臓器細胞の分化誘導」を実現化した革新的な三次元培養技術を確立している(Nature, 499: 481-484, 2013、WO2013/047639:組織及び臓器の作製方法)。すなわち、臓器発生の初期プロセスに必須である臓器細胞と血管細胞と間葉系細胞との細胞間相互作用を再現化することにより立体的な臓器の原基(臓器の種)を誘導し、血管網を有する機能的な臓器の創出を可能とする基盤技術を確立している。しかし、本法においては、臓器細胞を対象としており、小型組織(組織)を用いることによって、血管網を有する三次元組織原基の創出が可能であるかは未解明であった。
【0008】
本発明では、組織を対象として、足場材料に頼ること無く、in vitroにおいて血管を備えた組織体を構築する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、臓器の元となる臓器細胞と、血管内皮細胞および間葉系細胞と密な細胞間相互作用を持つことで、自律的な組織構造の構築と細胞分化を伴う立体組織形成が進行することを見いだした(Nature, 499: 481-484, 2013、WO2013/047639:組織及び臓器の作製方法)。しかし、組織を対象として、血管網の付加が可能であるかは明らかとなっていない。
【0010】
本発明は、この様な器官発生の早期プロセスを人為的に再現することで、組織を対象として、試験管内で血管網を伴う立体組織を人為的に作製しようと試みるものである。さらに、培養系で誘導された立体組織を生体内へ移植することで血流を開始させ、組織機能の成熟・維持を実現化することの可能な血管系が付加された立体組織の作成を行うものである。
【0011】
本発明者らは、個体より分離した組織(10~3,000μm程度まで)や、多能性幹細胞より誘導した組織(10~3,000μm程度まで)を、適切な混合比率で血管細胞および間葉系細胞と共培養した。立体組織の誘導には、下記の方法を採用した。
1.マトリゲルなどの支持体上で、組織と血管・間葉系細胞とを共培養することにより、三次元組織を形成する。
2.底面に細胞が集まるような形状のプレート上で組織と血管・間葉系細胞とを共培養することにより、三次元組織を形成する。
上記に記載の方法により、短期間培養を行うことで、微小血管構造を付加した立体的な組織を試験管内で誘導することができた。
さらに、培養系で誘導された立体組織を生体内へ移植することにより、機能的な血管網の再構成を誘導することにより血液灌流を開始させる、成体組織と同等な高度に秩序だった組織構造を有する組織・臓器を作製することに成功した。
【0012】
このように組織より、細胞間相互作用による自律的な組織化を誘導し、組織・臓器の三次元的な再構築を試みる手法は過去には存在せず、新規性の極めて高い方法であると考えられる。
【0013】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)in vitroにおいて、生物学的組織に血管系を付与する方法であって、生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養することを含む、前記方法。
(2)足場材料を用いることなく、生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養する(1)記載の方法。
(3)生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養することで、生物学的組織に血管系が付与され、生物学的組織の機能が維持及び/又は向上する(1)又は(2)に記載の方法。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の方法により、血管系が付与された生物学的組織。
(5)(4)記載の生物学的組織を非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、組織又は臓器の作製方法。
(6)(4)記載の生物学的組織をヒト又は非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、組織又は臓器の再生又は機能回復方法。
(7)(4)記載の生物学的組織を非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、非ヒトキメラ動物の作製方法。
(8)(4)記載の生物学的組織、(5)記載の方法で作製された組織及び臓器、並びに(7)記載の方法で作製された非ヒトキメラ動物からなる群より選択される少なくとも1つを用いて、薬剤を評価する方法。
(9)(4)記載の生物学的組織を含む、再生医療用組成物。
(10)組織又は臓器を作製するために用いられる(9)記載の組成物。
(11)組織又は臓器の再生又は機能回復を行うために用いられる(9)記載の組成物。(12)生体に移植した後、生物学的組織が血管網を有する組織又は臓器に分化する(9)~(11)のいずれかに記載の組成物。
【0014】
本発明により、個体より分離した正常組織や癌組織、多能性幹細胞等から誘導した組織などに対し、適切な環境下で血管細胞と間葉系細胞との共培養を行うことで、試験管内で血管網を付与した立体的な組織体を構築することが可能となった。組織の成熟・維持・修復などに必須である血管網が付与されることにより、高機能性の組織が再構築され、創薬スクリーニングや再生医療に有益な組織体を製造するための基盤技術となることが期待される。
【0015】
従来、多能性幹細胞から分化誘導により得られた組織体は、成体組織を構成している機能細胞と比較して未成熟な分化段階に止まっていた。これは、従来の分化誘導法においては機能細胞の終末分化が誘導されていないことが原因である。
本発明により、血管網が付加された組織が再構築可能となり、ヒト機能細胞の終末分化の誘導法の確立が期待されることから(例えば、血管構造に対する細胞極性の再構成など)、ヒト機能細胞の創出技術として価値が高い。
【0016】
一方、個体より抽出した臓器に由来する組織は、分離直後に機能が著しく低下し、それらを維持することが困難であった。本発明により、組織に血管網を付与することにより、機能の向上・維持が達成されれば、血管系が存在しないために、従来の組織移植医療によって効果が不十分で有った患者に対し(例えば、膵島移植治療など)、飛躍的な治療効果を有する移植手法を提供出来る可能性がある。また、様々な臓器の機能を試験管内、ないし、生体内において最大化することが可能となり、創薬スクリーニングを行う上で、有益な基盤技術となることが期待される。
【0017】
さらに、本発明により血管系を有する立体的なヒト組織構造体を再構築することが可能である。したがって、これまでの技術では全く達成されていなかった、血管系が適切に配置された血流を有する組織・臓器を作製することが可能となる。これにより、薬剤の効果発現と血管との関連性など、現存する評価系では解析が困難であった、医薬品の効果を評価する全く新たな解析系を提供出来るものと期待される。
また、臓器細胞と、血管内皮細胞および間葉系細胞との密な細胞間相互作用を持つことで、自律的な組織構造の構築と細胞分化を伴う立体組織形成を進行させる方法(Nature, 499: 481-484, 2013,WO2013/047639)に対する優位性としては、以下のことが挙げられる。
1.増幅が困難な細胞(例えば、膵β細胞、腎糸球体上皮・尿細管上皮細胞、肝細胞、腸管上皮細胞、肺胞上皮細胞、腫瘍細胞、栄養外胚葉細胞、iPS細胞由来内胚葉細胞、iPS細胞由来中胚葉細胞、iPS細胞由来外胚葉細胞、iPS細胞由来組織幹・前駆細胞など)から構成される組織(例えば、膵島、腎糸球体、肝組織、腸管陰窩、肺胞、腫瘍組織、栄養外胚葉組織、iPS細胞由来内胚葉細胞由来スフェロイド、iPS細胞由来中胚葉細胞由来スフェロイド、iPS細胞由来外胚葉細胞由来スフェロイド、iPS細胞由来組織幹・前駆細胞由来スフェロイドなど))にも血管系を付与できる。
2.より大きな組織に血管系を付与できる。Nature, 499: 481-484, 2013、 WO2013/047639の方法で作製できる組織は、単離された細胞を用いた場合のみであるが、本願発明の方法では、細胞ではなく、10~3,000μm程度の大きさの組織に血管系を付与できることが確認されている。
3.iPS細胞等の幹細胞に由来する小型の組織に血管系を付与することにより、生体組織の発生過程と類似の環境を再現することができ、効率良く目的とする組織を構成する機能細胞への分化誘導を達成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、個体より分離した正常組織や癌組織、多能性幹細胞等から誘導した組織を血管細胞と間葉系細胞と共培養することで、試験管内で血管網を付与した立体的な組織体を構築することが可能となった。この技術は、ヒト機能細胞の創出、臓器移植、創薬スクリーニング、薬剤の効果発現と血管との関連性などを評価する新たな解析系などへの応用が可能である。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2013‐153056の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】膵島組織への血管網の付与を示す。A)LIVE/DEAD(登録商標) Cell Imaging Kitを用いたマウス膵島用培地の検証(緑:生細胞、赤:死細胞)。
【図1B】膵島組織への血管網の付与を示す。B)A)の定量データ。
【図1C】膵島組織への血管網の付与を示す。C)マウス膵島(色なし)、血管内皮細胞(緑)、間葉系幹細胞(赤)を用いた3次元組織構築過程のタイムラプスイメージング。
【図1DE】膵島組織への血管網の付与を示す。D)培養24時間後のマウス膵島。E)共培養24時間後のマウス膵島、血管内皮細胞、間葉系幹細胞。E’)E)で創出した3次元組織の免疫組織学的解析(緑:インスリン、赤:ヒトCD31)。
【図1F】膵島組織への血管網の付与を示す。F)LIVE/DEAD(登録商標) Cell Imaging Kitを用いたマウス膵島細胞の生死判定(緑:生細胞、赤:死細胞)。
【図1G】膵島組織への血管網の付与を示す。G)F)の定量データ。
【図1H】膵島組織への血管網の付与を示す。H)共培養を行ったマウス膵島からのインスリン放出濃度の増強。
【図1I】膵島組織への血管網の付与を示す。I)試験管内における糖負荷試験。
【図1J-1】膵島組織への血管網の付与を示す。J-1)血管内皮細胞および間葉系幹細胞との共培養により発現が著しく増強する遺伝子群。
【図1J-2】膵島組織への血管網の付与を示す。J-2)J-1)の続き。
【図1J-3】膵島組織への血管網の付与を示す。J-3)J-2)の続き。
【図2A】小型血管化膵島の作製を示す。A)底面に組織が集まるような培養基材を用いた小型血管化膵島の自律的形成(マウス膵島数を変更した場合でも血管化組織が形成される)。
【図2B】小型血管化膵島の作製を示す。B)血管内皮細胞数、間葉系幹細胞数の条件検討。
【図2C】小型血管化膵島の作製を示す。C)小型血管化膵島形成過程のタイムラプスイメージング(共培養による細胞の形態変化、マウス膵島(青)、血管内皮細胞(緑)、間葉系幹細胞(赤))。
【図2D】小型血管化膵島の作製を示す。D)作製された小型血管化膵島、マウス膵島(赤)、血管内皮細胞(緑)、間葉系幹細胞(色なし)。
【図2E】小型血管化膵島の作製を示す。E)小型血管化膵島の組織学的解析、マウス膵島(赤)、血管内皮細胞(緑)、間葉系幹細胞(色なし)、マウスCD31(青)。
【図3AB】血管化組織の移植による機能の検証を示す。A)血管化膵島移植部位のマクロイメージング(黄色の矢印が血液の流入を示す)。B)膵島単体移植部位(対照群)のマクロイメージング。
【図3CD】血管化組織の移植による機能の検証を示す。C)血管化膵島内部への血液還流、マウス膵島(緑)、血管内皮細胞(色なし)、間葉系幹細胞(色なし)、デキストラン(赤)。D)移植膵島周囲への血液還流、マウス膵島(緑)、血管内皮細胞(色なし)、間葉系幹細胞(色なし)、デキストラン(赤)。
【図3E】血管化組織の移植による機能の検証を示す。E)糖尿病モデルマウスを用いた腎被膜下への血管化膵島移植、血糖推移。
【図3F】血管化組織の移植による機能の検証を示す。F)糖尿病モデルマウスの血糖推移。
【図3G】血管化組織の移植による機能の検証を示す。G)糖尿病モデルマウスの体重推移。
【図3H】血管化組織の移植による機能の検証を示す。H)糖尿病モデルマウスの生存率。
【図3I】血管化組織の移植による機能の検証を示す。I)生体内における糖負荷試験。
【図3JK】血管化組織の移植による機能の検証を示す。J)CWへ移植した血管化膵島の組織学的解析。K)CWへ移植した膵島の組織学的解析。
【図3L】血管化組織の移植による機能の検証を示す。L)腎被膜下へ移植した血管化膵島の組織学的解析、インスリン(緑)、ラミニン(赤)、DAPI(青)。
【図3M】血管化組織の移植による機能の検証を示す。M)腎被膜下へ移植した膵島の組織学的解析、インスリン(緑)、ラミニン(赤)、DAPI(青)。
【図4】腎糸球体への血管網の付与を示す。A)24ウェルディッシュを用いたマウス腎糸球体、血管内皮細胞、間葉系幹細胞由来3次元組織の自律的形成。B)底面に細胞が集まるような培養基材を用いたマウス腎糸球体、血管内皮細胞、間葉系幹細胞由来3次元組織の自律的形成(マウス腎糸球体(緑)、血管内皮細胞(赤)、間葉系幹細胞(青)を用いた3次元組織のタイムラプスイメージング)。C)24ウェルディッシュを用いた培養24時間後の血管化された三次元マウス腎糸球体組織の肉眼像。D)96ウェルディッシュを用いた培養24時間後の血管化された三次元マウス腎糸球体組織の肉眼像。E)血管化腎糸球体移植部位の血管化および生着の確認。F)血管化腎糸球体移植部位のライブイメージング(マウス腎糸球体(赤)、ヒト血管内皮細胞(緑)、マウス血管内皮細胞(青))。
【図5】腫瘍組織への血管網の付与を示す。A)24ウェルディッシュを用いたヒト膵臓腫瘍組織(赤)、血管内皮細胞(緑)、間葉系幹細胞(色なし)由来3次元組織の自律的形成。B)24ウェルディッシュを用いた培養24時間後のマウス膵臓癌組織、血管内皮細胞、間葉系幹細胞より自律的に形成された3次元組織のラプスイメージング。C)血管化組織の形成によるがん幹細胞マーカー(CD44)の発現増強。
【図6】肝組織への血管網の付与を示す。A)マウス肝組織(緑)、血管内皮細胞(赤)、間葉系幹細胞(色なし)由来3次元組織形成過程のタイムラプスイメージング。B)底面に細胞が集まるような培養基材を用いたマウス肝組織(緑)、血管内皮細胞(赤)、間葉系幹細胞(色なし)由来3次元組織の自律的形成。C)血管化肝組織移植部位のマクロイメージング。D)血管化肝組織内部での血管系の再構成。
【図7】腸組織への血管網の付与を示す。A)マウス腸組織(赤)、血管内皮細胞(緑)、間葉系幹細胞(色なし)を用いた3次元組織形成過程のタイムラプスイメージング。B)底面に細胞が集まるような培養基材を用いた腸組織(赤)、血管内皮細胞(緑)、間葉系幹細胞(色なし)由来3次元組織の自律的形成。C)血管化腸組織移植部位のマクロイメージング。D)血管化腸組織移植部位のin vivoライブイメージング(マウス腸組織(赤)、血管内皮細胞(緑)、間葉系幹細胞(色なし))。
【図8】肺組織への血管網の付与を示す。A)マウス肺組織(赤)、血管内皮細胞(緑)、間葉系幹細胞(色なし)を用いた3次元組織の自律的形成。B)血管化肺組織移植部位のマクロイメージング。C)血管化肺組織移植部位のin vivoライブイメージング(マウス肺組織(赤)、血管内皮細胞(緑)、間葉系幹細胞(色なし)、マウスCD31(青))。
【図9】iPS細胞由来内胚葉組織への血管網の付与を示す。A)ヒトiPS細胞由来内胚葉細胞スフェロイドへの応用方法概略。B)ヒトiPS細胞由来小型内胚葉組織、血管内皮細胞、間葉系幹細胞を用いた3次元組織の自律的形成。C)ヒトiPS細胞由来小型内胚葉組織(色なし)、血管内皮細胞(赤)、間葉系幹細胞(色なし)より構築された3次元組織の蛍光画像観察。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0021】
本発明は、in vitroにおいて、生物学的組織に血管系を付与する方法であって、生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養することを含む、前記方法を提供する。

【0022】
本明細書において、「生物学的組織」とは、複数の細胞によって構築される構造体をいい、個体より分離した正常・異常組織や癌組織、多能性幹細胞(人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)など)、組織幹・前駆細胞、分化細胞等から誘導した組織)などを例示することができる。生物学的組織は、主としてヒト由来のものを用いるとよいが、ヒト以外の動物(例えば、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬などに利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニなど)由来の生物学的組織を用いてもよい。

【0023】
本明細書において、「血管系」とは、血管内皮細胞およびその支持細胞よりなる構造をいい、血管系は、組織を維持するのみならず、その成熟化過程においても重要な役割を担っている。血管構造は、移植した後に、組織が生存するために必要な酸素及び栄養素などを組織内部に送達する役割を有しているのみならず、(内部に血液が流入する以前にも、)血管を伴う三次元的な組織構造や細胞極性を再現することが細胞の分化・増殖・維持に重要であると考えられている。したがって、血管を有さない組織は、単に、移植後に定着せずに内部が壊死することのみならず、血管化に伴う組織の成熟化が達成されず、充分な機能を発揮することが困難であった。
本明細書において、「血管系を付与する」及び「血管化」とは、血管内皮細胞および支持細胞からなる血管系が、対象とする組織と直接統合することをいい、血管系を付与された生物学的組織を生体に移植すると、血管の成熟化が観察され、ホスト血管と接続して、血管灌流が開始し、血管網を有する機能的な組織・臓器への誘導が可能となる。

【0024】
血管細胞は、血管組織から分離することができるが、血管組織から分離された細胞に限定されることはなく、iPS細胞やES細胞などの全能性あるいは多能性を有する細胞から分化誘導されたものであってもよい。血管細胞としては、血管内皮細胞が好ましく、本明細書において、「血管内皮細胞」とは、血管内皮を構成する細胞、又はそのような細胞に分化することのできる細胞(例えば、血管内皮前駆細胞、血管内皮幹細胞など)をいう。ある細胞が血管内皮細胞であるかどうかは、マーカータンパク質、例えば、TIE2、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、CD31が発現しているかどうかを調べることにより確認できる(前記マーカータンパク質のいずれか一つあるいは複数が発現していれば血管内皮細胞であると判断できる)。また、血管内皮前駆細胞のマーカーとしては、c-kit、Sca-1などが報告されており、これらのマーカーの発現により、血管内皮前駆細胞であることを確認しうる(S Fang,et al. PLOS Biology. 2012;10(10):e1001407.)。当業者間で使用されている用語のうち、endothelial cells、umbilical vein
endothelial cells、endothelial progenitor cells、endothelial precursor cells、vasculogenic progenitors、hemangioblast(HJ. Joo, et al. Blood. 25;118(8):2094-104.(2011))などは本発明における血管内皮細胞に含まれる。血管細胞は、主としてヒト由来のものを用いるが、ヒト以外の動物(例えば、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬などに利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニなど)などの動物由来の血管細胞を用いてもよい。血管細胞は、臍帯血、臍帯血管、新生児組織、肝臓、大動脈、脳、骨髄、脂肪組織などから得られる。

【0025】
本明細書において、「間葉系細胞」とは、主として中胚葉に由来する結合織に存在し、組織で機能する細胞の支持構造を形成する結合織細胞であるが、間葉系細胞への分化運命が決定しているが、まだ間葉系細胞へ分化していない細胞も含む概念である。本発明において用いる間葉系細胞は、分化したものであっても、未分化なものであってもよいが、未分化間葉系細胞を用いることが好ましい。ある細胞が未分化間葉系細胞であるかどうかは、マーカータンパク質、例えば、Stro-1、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、CD133、CD271、Nestinが発現しているかどうかを調べることにより確認できる(前記マーカータンパク質のいずれか一つあるいは複数が発現していれば未分化間葉系細胞であると判断できる。)。また、前項のマーカーのいずれも発現していない間葉系細胞は分化間葉系細胞と判断できる。当業者間で使用されている用語のうち、mesenchymal stem cells、mesenchymal progenitor cells、mesenchymal cells(R. Peters, et al. PLoS One. 30;5(12):e15689.(2010))などは間葉系細胞に含まれる。間葉系細胞は、主としてヒト由来のものを用いるが、ヒト以外の動物(例えば、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬などに利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニなど)由来の間葉系細胞を用いてもよい。

【0026】
血管細胞及び間葉系細胞と共培養する生物学的組織の大きさは、10~500μm程度の大きさであるとよいが、これに限定されるわけではない。好ましくは、100~300μm程度の大きさであり、より好ましくは、100~150μm程度の大きさである。
共培養に用いる血管細胞と間葉系細胞は、それぞれ、150μm程度の大きさの生物学的組織1個あたり、2x10~1x10個程度であるとよく、好ましくは、2x10~5x10個程度であり、より好ましくは、1x10個程度である。
共培養における血管細胞と間葉系細胞の培養比は、生物学的組織に血管系が付与される範囲内であれば特に限定されないが、好適な細胞の数比は、血管細胞:間葉系細胞=10~3:3~1である。
共培養における生物学的組織の数は、生物学的組織に血管系が付与される範囲内であれば特に限定されないが、好適な組織数としては、1x10個の血管細胞および間葉系細胞の混合物に対して、直径100~150μm程度の大きさの生物学的組織が1~100個である。

【0027】
また、血管細胞と間葉系細胞のいずれか一方又は両方は、血管細胞から分泌される因子、間葉系細胞から分泌される因子、血管細胞と間葉系細胞の両方が存在することによって分泌される因子などの物質で代替することもできる。

【0028】
血管細胞から分泌される因子、間葉系細胞から分泌される因子、及び血管細胞と間葉系細胞の両方が存在することによって分泌される因子などの物質の例としては、FGF2、FGF5、BMF4、BMP6、CTGF、angiopoietin 2、chemokine (C-C motif) ligand 14、von Willebrand factorなどを例示することができるが、これらに限定されることはない。

【0029】
これらの物質の添加量としては、FGF2については、細胞1x10個当たり、10~100ng/mlが適当であり、20ng/ml程度が好ましく、BMF4については、細胞1x10個当たり、10~100ng/mlが適当であり、20ng/ml程度が好ましい。

【0030】
培養の際に使用する培地は、生物学的組織に血管系が付与されるものであればどのようなものでもよいが、血管細胞(特に、血管内皮細胞)培養用の培地、生物学的組織培養用の培地、前記2つの培地を混合したものなどを使用することが好ましい。血管細胞(特に、血管内皮細胞)培養用の培地はどのようなものを使用してもよいが、hEGF(組換えヒト上皮細胞成長因子)、VEGF(血管内皮細胞成長因子)、ヒドロコルチゾン、bFGF、アスコルビン酸、IGF1、FBS、Antibiotics(例えば、ゲンタマイシン、アンフォテリシンBなど)、Heparin、L-Glutamine、Phenolred、BBEの少なくとも1種を含むものを使用するのが好ましい。血管内皮細胞培養用の培地としては、EGM-2 BulletKit(Lonza社製)、EGM
BulletKit(Lonza社製)、VascuLife EnGS Comp Kit(LCT社製)、Human Endothelial-SFM Basal Growth Medium(Invitrogen社製)、ヒト微小血管内皮細胞増殖培地(TOYOBO社製)などを用いることができる。生物学的組織培養用の培地はどのようなものを使用してもよいが、膵島組織用培地としては、RPMI1640 (Wako)またはEGM(登録商標) BulletKit(登録商標)) (Lonza CC-4133)中に、10% fetal bovine serum(BWT Lot.S-1560)、20 mmol/L L-glutamine(Gibco)、100μg/ml penicillin/streptomycin(Gibco)を加えたものが好ましく、腎組織(例えば、腎糸球体)用培地としては、RPMI1640 (Wako)中に、20% fetal bovine serum(BWT Lot.S-1560)、100μg/ml penicillin/streptomycin(Gibco)、Insulin-Transferrin-SeleniumX(GIBCO)を加えたものを加えたものが好ましく、腸組織(例えば、crypt fragments)用培地としては、RPMI1640 (Wako)中に、20% fetal bovine serum(BWT Lot.S-1560)、100μg/ml penicillin/streptomycin(Gibco)、Insulin-Transferrin-SeleniumX(GIBCO)を加えたものが好ましく、肝組織用培地としては、DMEM/F12(invitrogen)中に、10% fetal bovine serum(ICN Lot.7219F)、2 mmol/L L-glutamine(GIBCO)、 100 μg/mLpenicillin/streptomycin(Gibco)、10 mmol/L nicotinamide(SIGMA)、50μmol/L 2-Mercaptoethanol、1x10^7 mol/L 6.5% dexamethasone (SIGMA)、2.6x10^4 M L-Ascorbic acid 2-phosphate sesquimagnesium salt hydrate(SIGMA)、 5 mmol/L HEPES(DOJINDO)、1μg/mL Human recombinant insulin, expressed in yeast (Wako)、50 ng/mL
Human recombinant HGF, expressed in Sf21 insect cells(SIGMA)、20 ng/mL Mouse Submaxillary Glands EGF(SIGMA)が好ましく、iPS細胞由来内胚葉組織用培地としては、RPMI1640 (WAKO)中に、1% B27 SUPPLYMENT X50 (INVITROGEN 17504-044)、10nG/ML BFGF RECOMBINANT HUMAN (WAKO 060-04543)、20nG/ML BMP4 RECOMBINANT HUMAN (R&D 314-BP)を加えたものが好ましく、iPS細胞由来肝内胚葉組織用培地としては、肝細胞専用培地キット(HCMTM BulletKitTM lonza CC3198)中からhEGF( 組換えヒト上皮細胞成長因子)を除いたものに、0.1μM Dexamethasone(Sigma-Aldrich)、10ng/ml Oncostatin M(R&D)、10ng/mlHGF(PromoKine)を加えたものが好ましく、癌組織や肺組織用培地としては、血管用培地と同じものが好ましい。

【0031】
生物学的組織は、ゲルなどの支持体上に播種して、血管細胞及び間葉系細胞との共培養を行うことが好ましい。支持体は、0.5~25 kPaの硬度を有する基材であるとよく、そのような基材としては、ゲル(例えば、原液~4倍希釈マトリゲル(登録商標)、アガロースゲル、アクリルアミドゲル、ハイドロゲル、コラーゲンゲル、ウレタンゲルなど)を例示することができるが、それに限定されることはない。
また、底面に細胞が集まるような形状のプレート上で生物学的組織と血管細胞及び間葉系細胞とを共培養してもよい。使用するプレートは、底面に細胞が集まるような形状であれば特に限定されないが、PrimeSurface(登録商標)96ウェルUプレート(住友ベークライト社製)などを使用することができる。

【0032】
培養時の温度は特に限定されないが、30~40℃とするのが好ましく、37℃とするのが更に好ましい。

【0033】
培養期間は特に限定されないが、12~144時間とするのが好ましく、膵島などの成体組織への血管化は12~24時間程度とするのが更に好ましく、iPS細胞などに由来する組織への血管化は48~72時間程度、癌組織への血管化は12~72時間程度とするのが更に好ましい。
本発明の方法により血管系を付与された生物学的組織は、複合組織の形成がすべて細胞・組織自律的に生じることを特徴とする構造体でありうる。また、本発明の方法により血管系を付与された生物学的組織は、組織に血管系が直接統合(すなわち、付着、連結、あるいは連続)する複合組織でありうる。
本発明の方法において、生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養することにより、足場材料を用いることなく、生物学的組織に血管系を付与することができる。
生物学的組織を血管細胞及び間葉系細胞と共培養することで、生物学的組織に血管系が付与されると、生物学的組織の機能が維持及び/又は向上しうる。生物学的組織の機能の維持・向上に加え、移植効率が改善され、飛躍的な治療効果を有する治療法を提供できる。
また、本発明により、血管系が再構築可能となるため、iPS細胞、ES細胞等の多能性幹細胞に由来する組織から終末分化細胞を効率よく誘導する方法の確立につながる。

【0034】
本発明の方法により、血管系を付与された生物学的組織は、生体内において血管系が速やかに機能することが可能な複合組織でありうる。すなわち、本発明の方法により血管系を付与された生物学的組織を生体(ホスト)に移植すると、足場材料を用いた場合と比較して、ホスト血管との吻合~血液の流入までの時間が大幅に短縮されうる(例:足場材料を用いた場合=12日(Engineered blood vessel networks connect to host vasculature via wrapping-and-tapping anastomosis. Blood. 2011
Oct 27;118(17):4740-9.)、本発明の方法=1-2日(後述の実施例参照))。
本発明の方法により血管系を付与された生物学的組織を非ヒト動物に移植することにより、移植された組織に血管網が構築され、血管灌流が開始し、高度に秩序だった組織構造を有する組織や臓器が創出されうる。従って、本発明は、血管細胞及び間葉系細胞との共培養により血管系を付与された生物学的組織をヒト又は非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、組織又は臓器の作製方法を提供する。使用する非ヒト動物としては、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬などに利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニなどを挙げることができる。また、使用する非ヒト動物は、免疫拒絶反応を回避するために、免疫不全動物であることが好ましい。

【0035】
血管系を付与された生物学的組織の移植部位は、移植可能であればどの部位であってもよいが、頭蓋内、腸間膜、肝臓、脾臓、腎臓、腎被膜下、門脈上などを例示することができる。頭蓋内に移植する場合には、in vitroで作製した1~12個程度の500μm大の生物学的組織を移植するとよく、腸間膜に移植する場合には、in vitroで作製した1~12個程度の3-8mm大の生物学的組織を移植するとよく、門脈上に移植する場合には、in vitroで作製した1~12個程度の3-8mm大の生物学的組織を移植するとよい。腎皮膜に移植する場合には、in vitroで作製した1~6個程度の3-8mm大の生物学的組織を移植するとよく、肝臓・脾臓・腎臓・リンパ節・血管内に移植する場合には、in vitroで作製した100~2000個程度の100~200μm大の生物学的組織を移植するとよい。

【0036】
以上のようにして作製した組織及び臓器は、創薬スクリーニングや再生医療などに使用することができる。

【0037】
従って、本発明は、血管細胞及び間葉系細胞との共培養によって血管系を付与された生物学的組織をヒト又は非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、組織又は臓器の再生又は機能回復方法を提供する。非ヒト動物としては、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬などに利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニなどを挙げることができる。
また、本発明は、血管細胞及び間葉系細胞と共培養することによって血管系を付与された生物学的組織を含む、再生医療用組成物を提供する。
本発明の組成物を生体内に移植し、組織又は臓器を作製することができる。また、本発明の組成物を生体内に移植し、組織又は臓器の再生又は機能回復を行うことができる。生体としては、ヒトの他、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬などに利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニなどを挙げることができる。
本発明の組成物が生体に移植された後、生物学的組織は血管網を有する組織又は臓器に分化しうる。その血管網には血管灌流が生じうる。血管網に血管灌流が生じることにより、成体組織と同等若しくはそれに近い高度に秩序だった組織構造を有する組織・臓器を創出することが可能となると考えられる。
本発明の組成物には、FGF2、HGF、VEGFなどの組織血管化促進剤、移植に伴う止血用ゼラチンスポンジ(商品名:スポンゼル、アステラス株式会社)、および、移植組織の固定に用いるボルヒール(帝人ファーマ株式会社)・ベリプラスト(CSLベーリング株式会社)・タココンブ(CSLベーリング株式会社)などの組織接着剤などを添加してもよい。

【0038】
また、本発明は、血管細胞及び間葉系細胞との共培養によって血管系を付与された生物学的組織を非ヒト動物に移植し、血管網が構築された組織又は臓器に分化させることを含む、非ヒトキメラ動物の作製方法も提供する。血管系を付与された生物学的組織を移植した非ヒト動物(例えば、マウス)は、血管系を付与された生物学的組織の由来生物種(例えば、ヒト)の生理機能を模倣しうる。非ヒト動物としては、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬などに利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニなどを挙げることができる。非ヒト動物は、免疫拒絶反応を回避するために、免疫不全動物であることが好ましい。

【0039】
さらに、本発明は、上記の方法によって血管系を付与された生物学的組織、血管系を付与された生物学的組織から作製された組織及び臓器、及び血管系を付与された生物学的組織を移植された非ヒトキメラ動物からなる群より選択される少なくとも一つを用いて、薬剤を評価する方法も提供する。薬剤の評価としては、例えば、薬物代謝の評価(例えば、薬物代謝プロファイルの予測)、薬効評価(例えば、医薬品として有効な薬剤をスクリーニングすること、薬剤の効果と血管との関連性などの医薬品の効果を確認することなど)、毒性評価、薬物相互作用評価などを挙げることができる。
薬物代謝の評価は、血管系を付与された生物学的ヒト組織、血管系を付与された生物学的組織から作製されたヒト組織及び臓器、及び血管系を付与された生物学的ヒト組織を移植された非ヒトキメラ動物において、医薬品の候補化合物を投与したのちの生物試料を採取・解析することにより、ヒト型の薬物代謝プロファイルを取得することができる。これにより従来の技術では達成が極めて難しかったヒトでの医薬品の分布・代謝・排泄過程を予測することが可能となり、安全で効果のある医薬品の開発を飛躍的に加速できるものと期待される。
医薬品として有効な薬剤のスクリーニングは、疾病患者より樹立した細胞・組織より誘導された組織を対象として、血管系を付与された生物学的組織、血管系を付与された生物学的組織から作製された組織及び臓器、及び血管系を付与された生物学的組織を移植された非ヒトキメラ動物を用いて、新規の医薬品候補化合物を投与することにより解析することが可能となる。これにより、従来のin vitro試験で不十分であった、実際ヒトに投与した際の薬効の予測精度を大幅に改善できる可能性が期待される。
薬剤の効果と血管との関連性の確認は、血管系を付与された生物学的組織、血管系を付与された生物学的組織から作製された組織及び臓器、及び血管系を付与された生物学的組織を移植された非ヒトキメラ動物を対象として、任意の薬剤を投与後、血管近傍の組織中の薬剤の濃度分布や、細胞への目的とする効果を測定することにより取得することができる。
例えば、腫瘍組織においては、臨床上再発や転移の原因となるとされるがん幹細胞などを標的とすることが重要な治療戦略と考えられている。一方、がん幹細胞は血管近傍に存在している場合は血管透過性が低下するために抗癌剤が浸潤しづらいことや、血管から離れている場合は抗癌剤の拡散が不十分であることなどが知られており、それらを標的とする薬剤の開発には、血管を起点とした3次元的な腫瘍組織を再構成し、評価に用いることが重要であった。本法を用いることで、従来全く達成できなかった血管との細胞・組織極性に基づく薬効評価が可能となり、より治療効果の高い薬剤の開発を実施することが可能となる
毒性評価は、血管系を付与された生物学的組織、血管系を付与された生物学的組織から作製された組織及び臓器、及び血管系を付与された生物学的組織を移植された非ヒトキメラ動物を用いて、被験物質を投与したのちに、組織障害マーカーなどを測定することにより、障害予測の精度向上が可能となる。
抗がん剤をはじめとした毒性の問題となるような医薬品の開発は、薬物毒性を評価するために莫大なコストと長期の開発期間を要することが問題となっていた。そこで、血管化組織を用いて生体内を模倣した微小環境を作り出すことにより、これまでの評価が困難であった組織を対象とした毒性試験が利用可能となる。すなわち、血管と、疾患細胞や、正常細胞への毒性評価を行うことにより、新たな医薬品の研究開発が飛躍的に迅速化されることが期待される。
薬物相互作用評価は、血管系を付与された生物学的組織、血管系を付与された生物学的組織から作製された組織及び臓器、及び血管系を付与された生物学的組織を移植された非ヒトキメラ動物を用いて、複数の薬剤を投与したのちに、その後の各薬剤の分布・代謝・排泄過程などの薬物動態や毒性評価、薬効評価を行うことにより行うことができる。

【0040】
従来の多能性幹細胞の分化誘導法では、得られる細胞の機能レベルは成体組織の機能細胞と比して未熟な段階に止まっていた。本発明により、多能性幹細胞などより誘導した組織から終末分化した機能細胞を得ることができれば、革新的な分化誘導技術として、ヒト機能細胞の工業的製造に向けた重要な基盤技術となる。例えば、本発明により人為的に作製されたヒト肝臓組織からヒト肝細胞やヒト肝幹細胞を分離することで、創薬開発において必要なヒト成熟肝細胞を大量に製造することが可能となる。
また、癌組織や正常組織などに立体的な血管網を付与することにより、創薬開発における課題であった薬剤の効果発現と血管との空間的配置の相関など、全く新たな視点から薬効を評価する革新的なスクリーニング技術となることが期待される。
従来、糖尿病などを対象とした移植医療は、脳死ドナーなどに由来する個体より抽出した膵島組織などを移植する組織移植療法が主体であった。しかし、組織移植療法は、血管系を有さないために移植後の生着が著しく低く、治療効果が限定的であることが課題とされていた。本発明により、この様な問題を解決可能な、血管系を付与した移植材を提供することが可能となる。血管網を付与した治療用のヒト組織・臓器を工業的に製造することが可能となれば、高い治療効果を期待することのできる新たな移植用組織・臓器を提供でき、革新的な医療技術となることが期待される。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕膵島組織への血管網の付与
【実施例】
【0042】
〔方法〕
1.マウス膵島の単離法
マウス膵島の単離は主にDongらの方法に従い行った(文献名:A protocol for islet isolation from mouse pancreas)。ジエチルエーテル(Wako)を用いて麻酔したC57BL/6Jマウス(日本SLC)の腹部を70%エタノールで消毒した後、開腹し、総胆管と十二指腸の結合部であるファーター膨大部を結紮した。その後、胆嚢管と肝管の合流部に27G注射針を挿入し、ハンクス緩衝液(HBSS, GIBCO)で調製したコラゲナーゼXI液(1,000 U/ml)(Sigma, cat. No.C7657)を3 ml 注入し、膵臓全体にコラゲナーゼXI液を充填した。膵臓を切り出し、コラゲナーゼXI液の入った50 mlチューブに入れ、37.5℃で15分間震盪した。膵臓を消化後、氷冷しておいたHBSS(CaCl 1 mMを含む)を25 ml添加し洗浄、遠心(290 g, 30秒間, 4 ℃)後、上清を除去した。再度、洗浄、遠心を行った後、HBSSを15 ml添加し、70μmメッシュのセルストレーナーを用いて濾過し、残存物を独自に調製した培地(EGM(登録商標) BulletKit(登録商標) (Lonza CC-4133)を基礎に膵島の培養用に独自改変したもの)を用いてペトリディッシュに全量を移した。
2. マウス膵島の選別法
1で単離したマウス膵島を実体顕微鏡下で観察すると、橙色で球状のマウス膵島(直径:150~250μm)が確認できる。これをピペットマンで膵島用培地へと採取していった。
3. マウス膵島の初代培養法
独自に調製した培地(EGM(登録商標) BulletKit(登録商標)) (Lonza CC-4133)中に、10% fetal bovine serum(BWT Lot.S-1560)、20 mmol/L L-glutamine(Gibco)、100μg/ml penicillin/streptomycin(Gibco)を加えたものを用いて37℃、5%COのインキュベーター内で培養した。
4. 細胞培養
正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(Normal Human Umbilical Vein Endothelial Cells: HUVEC) (Lonza CC-2517)は、HUVEC培養用に調製された専用の培地 (EGM(登録商標) BulletKit(登録商標)) (Lonza CC-4133)を用いて、保証継代回数(5回)以内の継代回数で培養した。ヒト間葉系幹細胞(human Mesenchymal Stem Cell: hMSC) (Lonza PT-2501)は、hMSC培養に調製された専用の培地(MSCGMTM BulletKit(登録商標))(Lonza PT-3001)を用いて、保証継代数(5回)以内の継代回数で培養した。それぞれの細胞は37℃、5%COのインキュベーター内で培養した。
5. レトロウイルスベクターによる蛍光標識
全ての遺伝子組み換え実験は、横浜市立大学DNA組み換え委員会の了承を得たうえで、P2レベル安全キャビネット内にて施行した。
ウイルスベクターpGCDΔNsamEGFPおよびpGCDΔNsamKOの産出は以下の方法で行った。293GPG/pGCDΔNsamEGFP細胞(Masafumi Onodera氏に提供)および293GPG/pGCDΔNsamKO細胞(Masafumi Onodera氏に提供)を、poly-L-lysineでコーティングしたディッシュへ播種し、専用に調製した培地(293GPG mediumと示す)を用いて培養した。すなわち、DMEM (SIGMA)中へ10% fetal bovine serum(Gibco)、2mmol/L L-glutamine (Gibco)、1penicillin/streptomycin(Gibco)、1μg/mL Tetracycline hydrochloride(SIGMA T-7660)、2μg/mL puromycin(SIGMA P-7255)、0.3mg/mL G418(SIGMA A-1720)を含むものを用いた。培養は37℃、10%COのインキュベーター内で培養した。約80%コンフルエント状態まで培養した後、培地を293GPG mediumからTetracycline hydrochloride、puromycin、G418を抜いた培地(293GP mediumと示す)へ置換した(Day 0とする)。Day 3で培地を交換した後、Day4からウイルスを培地ごと回収し、再び293GP mediumで満たした。回収した培地を0.45μmフィルターで濾過し一時的に4℃で保管した。上記の手順でDay7まで回収したものを6000G、4℃、16時間遠心し、ペレットへ400μL のStempro (invitrogen)を添加し、4℃、72時間振盪後、この-80℃で回収・保存した。(100倍濃縮ウイルス溶液と示す)。
HUVECを30~50%コンフルエント状態になるまで培養し、培地にProtamine (Sigma)を終濃度0.4μm/mLになるように加え、HUVECへはpGCDΔNsamEGFPを添加した。37℃、5%COのインキュベーター内で4時間感染させ、PBSで2回洗浄後、培地を新鮮なものに交換し、再び37℃、5%COインキュベーター内で培養した。この操作を4回繰り返し、細胞を蛍光標識した。
6. マウス膵島用培地の検討
RPMI1640 (Wako)と内皮細胞用培地(EGM(登録商標) BulletKit(登録商標)) (Lonza CC-4133)それぞれを用いて膵島用培地を調製した。各培地で充填しておいたPrimeSurface(登録商標)96ウェルUプレート(住友ベークライト)の1ウェルにマウス膵島を1個静置し、37℃のインキュベーター内で培養した。その後、LIVE/DEAD(登録商標) Cell Imaging Kit(ライフテクノロジーズ・ジャパン)を20 μl添加し、37℃、5%COのインキュベーター内で15分間培養し、共焦点顕微鏡(LEICA TCS-SP5)を用いて観察した。
7. 24ウェル平底プレートを用いたヒト血管構造を有する3次元組織の作製
経時観察用として、EGFP-HUVECを2.0×10 cells、hMSCを4.0×10 cellsの細胞数で混合し、950rpmで5分間遠心を行った。その後、上清を除去し20μlの膵島用培地で懸濁し、ゲルを固定し(マトリゲル(BD)と膵島用培地を1:1の割合で混合した溶液を1ウェル毎に300μlずつ入れ、37℃、5%COのインキュベーター内に10分以上静置し固めた)、マウス膵島300個を静置しておいた24ウェル平底プレート(BD)の1ウェルに細胞を播種した。播種後、37℃のインキュベーター内に10分間静置した。10分後、膵島用培地を1 mlウェルの壁伝いに静かに加え、37℃のインキュベーターで1日間培養した。
8. 96ウェルUプレートを用いたヒト血管構造を有する3次元組織の作製
膵島用培地を充填しておいたPrimeSurface(登録商標)96ウェルUプレート(住友ベークライト)の1ウェルにマウス膵島を静置し、そこへHUVEC、hMSCを播種した。その後、37℃のインキュベーターで1日間培養した。
9. 実体顕微鏡を用いた細胞共培養の経時観察
実体顕微鏡での経時変化を追跡するために共培養を行った。PrimeSurface(登録商標)96ウェルUプレートの1ウェルにマウス膵島10個を静置し、そこへHUVECを1.0×10 cells、hMSCを1.0×10 cellsの細胞数で播種した。播種後、実体顕微鏡(LeicaDFC300FX)にプレートを設置し、細胞共培養による、形態変化を観察した。
10. トランスウェルプレートを用いた膵島細胞生存率の検証
24ウェルトランスウェルプレートの底面部に、マウス膵島を30個静置した。インサートを別の24ウェルプレート 内に入れ、HUVECを1x10cells播種したもの、hMSCを2x10cells播種したもの、HUVEC を1x10cells、MSCを2x10cells混合し播種したものを、マウス膵島を静置した24ウェルプレートに入れ、これらを、37℃、5%COのインキュベーター内で一晩培養した。培養後、マウス膵島を静置した24ウェルプレートにLIVE/DEAD(登録商標) Cell Imaging Kit(ライフテクノロジーズ・ジャパン)を200
μl添加し、37℃、5%COのインキュベーター内で15分間培養し、その後、共焦点顕微鏡(LEICA TCS-SP5)を用いて観察した。
11. 96ウェルUプレートを用いた膵島細胞生存率の検証
8で作製した3次元組織の培地中に、LIVE/DEAD(登録商標) Cell Imaging Kit(ライフテクノロジーズ・ジャパン)を20 μl添加し、37℃、5%COのインキュベーター内で15分間培養し、その後、共焦点顕微鏡を用いて観察した。
12. トランスウェルプレートを用いたインスリン分泌量の測定
24ウェルトランスウェルプレートの底面部に、マウス膵島を100個静置した。インサートを別の24ウェルプレート 内に入れ、HUVEC を1x10cells、hMSCを2x10cells混合し播種したものと、細胞を播種しないものとを、マウス膵島を静置した24ウェルプレートに入れ、これらを、37℃、5%COのインキュベーター内で一晩培養した。培養後、マウス膵島を静置した24ウェルプレート中の上清を採取し、これをインスリン測定キット(シバヤギ, cat. No.AKRIN-011H)にて測定した。
13. 試験管内における糖負荷試験
グルコース不含RPMI1640(Wako)を膵島用培地に調製し、グルコースを添加することでグルコース低濃度培地(60 mg / 100 ml)と高濃度培地(360 mg / 100 ml)を作製した。マウス膵島100個が静置してある24ウェルトランスウェルプレートのインサートにグルコース低濃度培地を充填し、HUVECが1×10 cells、hMSCが2×10 cells混合播種してあるウェルへインサートを移し、37℃、5%COのインキュベーター内で1時間培養した。その後、インサート内の培地をグルコース高濃度培地に置換し、別のウェルへインサートを移し、インキュベーター内で1時間培養した。培養後、インサートとウェル中の上清を採取し、これをインスリン測定キット(シバヤギ)にて測定した。
14. 実験動物
移植動物として用いたNOD/SCIDマウス(Sankyo Labo Service Co. , Tokyo, Japan)は、SPF環境下で昼間10時間・夜間14時間の明暗周期で飼育した。実験動物の飼育は横浜市立大学医学部動物実験センターに委託し、また本学の定める倫理規定を遵守し実験を行った。
15. 継続観察用Cranial Window (CW)マウスの作製
CWマウスの作製は主にYuanらの方法に従い行った(文献名:Vascular permeability and microcirculation of gliomas and mammary carcinomas transplanted
in rat and mouse cranial windows.)。麻酔はケタラール(Sankyo Yell Yakuhin Co., Tokyo, Japan)90 mg/kg, キシラジン(Sigma Chemical CO., St.Louis, MO,USA)9 mg/kgを滅菌処理したPBSで1個体200μlの投与量になるように調整し、腹腔注射により実施した(ケタラール・キシラジン混合麻酔)。ケタラールは麻薬管理法に従い使用した。麻酔後、電動バリカンで頭部の毛を除去し、70%エタノールでNOD/SCIDマウス頭部を消毒し、頭部皮膚を切開し、頭蓋骨表面の骨膜を綿棒により除去した後、歯科用マイクロドリル(Fine Sciencd Tools, USA)を用いて頭蓋骨を円形に削り、慎重に取り除いた。続いてピンセットを用いて硬膜を剥離した。出血した際には、スポンゼル(Astellas
Co., Tokyo, Japan)を用いて止血を行った。出血が見られないことを確認した後、生理食塩水(Otuka Pharmaceutical Co., Tokyo, Japan)で脳表面を満たし、直径7 mmの特注円形スライドガラス(MATSUNAMI, Osaka, Japan)を表面に乗せ、コートレープラスチックパウダー(Yoshida, Tokyo, Japan)とアロンアルファ(Toagosei CO., Tokyo, Japan)をセメント状になるように混合した接着剤により強固に封入した。CW作製から1週間経過後、手術部に出血や炎症が見られないマウスを使用した。
16. 糖尿病モデルマウスの作製
SCID Ins-TRECK-Tgマウス(東京都臨床医学総合研究所より提供)に、ジフテリアトキシン(DT)を投与することで、糖尿病モデルマウスを作製した。DT 1μg/kgを生理食塩水で、1個体200μlの投与量になるよう調製し、腹腔注射によって投与した。投与後、毎日17時に平常血糖と体重の計測を行い、3日以上連続で平常血糖値が300 mg/dlを記録したものを、糖尿病モデルマウスとして使用した。血糖値計測は、尾静脈から血液を採取し、グルテストneoセンサー(登録商標)(パナソニック 東京)で計測を行った。
17. CWマウスへの移植
15で作製したCWマウスの、頭部観察窓のガラスを除去することで、脳表面を露出させ移植を行った。使用するCWマウスは、脳表面の出血、炎症や感染などが見られないマウスを使用した。麻酔後、頭部観察窓周辺を、70%エタノールで消毒し、特注円形スライドガラスとアロンアルファの境目から、18Gの針先を侵入させ、脳表面を傷つけずに特注円形スライドガラスを剥離し、脳表面を露出させた。その後、生理食塩水で洗浄を行い、脳表面の中心付近に移植組織を静置し、特注円形スライドガラスを乗せた。この時、隙間が残らないよう、ガラスと脳表面の間を、生理食塩水で満たした後に、作製時と同様に、コートレープラスチックパウダーとアロンアルファによる接着剤で封入を行った。
18. 腎被膜下への移植
16で作製した糖尿病モデルマウスに対し、実験動物用麻酔装置(シナノ製作所)を用いて、イソフルランで麻酔を行った。麻酔後、マウス背側の左半身を電動バリカンで毛を除去し、70%エタノールで消毒した後、1.5~2 cm切開により腎臓を露出させた。腎臓露出後、固定し腎臓腹側の被膜を一部切開し、開口部から被膜下へ7で作製した3次元組織を移植した。移植後、腎臓を体内に戻し、筋膜と皮膚の縫合を行った。
19. 共焦点顕微鏡による CW移植マウスへ移植した組織の追尾定点観察
17で、CWへ移植した3次元組織の観察を行った。
移植したCWマウスに、11で使用したのと同様に、ケタラール・キシラジン混合麻酔で麻酔を行い、CWマウスを25×60 mmマイクロカバーガラス(MATSUNAMI)の上に、頭部観察窓と水平になるように仰臥位固定し、共焦点顕微鏡(LEICA TCS-SP5)を用いて移植した血管網を有した3次元組織の形態変化を観察した。
19-1 マウス血流の可視化
移植した宿主マウス側からの血流の可視化を行うため、15と同様の麻酔を行い、Flourescen isothio-cynate-dextran(SIGMA USA)を生理食塩水により調製した蛍光色素をマウス体重20 gに対し100μl、マウス尾静脈から29Gのマイジェクターを用いて、投与した。その後19と同様の方法で観察を行った。
19-2 宿主側血管内皮細胞の可視化
移植した細胞に作られる血管網のうち、宿主由来血管を可視化するため、15と同様の麻酔を行い、マウス尾静脈から29Gの注射器で、Alexa-Flour647anti-mouseCD31(Biolegend)抗体を、マウス体重20 gに対して100μl投与した。その後19と同様の方法で観察を行った。
20. 正常膵島組織の可視化
Pdx-DsRedマウス(Douglous Melton氏より提供)、CAG-GFPマウス(日本エスエルシー)を用いることで、正常膵島組織内の構造を可視化した。実験動物用麻酔装置を用いて、イソフルランで麻酔をかけた。マウス背側を電動バリカンによって毛を除去したのち、0.5~1 cm切開を行い、脾臓を外部に露出させることで、脾臓付近に接着している膵臓の露出を行った。露出後10 cmディッシュ底面部に膵臓が張り付くように、マウスを保持した。保持した状態で、37℃まで冷却した1.5%アガロースゲル溶液をディッシュに注入することで、膵臓を露出した状態のマウスを固定した。固定したマウスを共焦点顕微鏡により、正常膵島組織を観察した。
21. 生体内における糖負荷試験
グルコース溶液3 g / kgを生理食塩水で、1個体200μlの投与量になるよう調製し、腹腔注射によって投与した。投与後、15分毎に尾静脈から血液を採取し、グルテストneoセンサー(登録商標)(パナソニック 東京)で血糖値を計測した。
22. 凍結切片の作製
移植後サンプルの摘出を行った後、PBSで洗浄し4%パラホルムアルデヒド(PFA)で1日固定した。その後、10、20%の各濃度のスクロース溶液でサンプルが沈降するまでスクロース置換を行い、20%スクロース溶液中のサンプルが沈降後、30%スクロース溶液で1日スクロース置換を行った。置換後のサンプルをO.C.T. Compound(Funakoshi Co)に包埋し、4℃で10分間浸透させた後に、液体窒素の上に浮かべたアルミホイル製の台に乗せ、凍結した。
クライオスタット(Leica CM1950)により5μmで薄切し、スライドガラス(MATSUNAMI)に接着させた。凍結切片を風乾させ凍結切片として使用した。23. パラフィン切片の作製
移植後サンプルの摘出を行った後、PBSで洗浄を行い4%PFAで1日固定した。固定後PBSで3回洗浄し50、70、80、90、95、100%の各濃度のエタノールで1時間ずつ脱水を行い、100%エタノールで1時間脱水後、新しい100%エタノールで1日脱水を行った。脱水後、キシレンで1時間ずつ3回置換を行い、65℃に設定したパラフィン包埋用恒温槽内にて、パラフィン:キシレン=1:1混合溶液に1時間浸透させ、パラフィンに2時間3回ずつ浸透させた。浸透後パラフィンに包埋しパラフィンブロックを作製した。
作製したパラフィンブロックをミクロトームにより5μmに薄切し、パラフィン切片として用いた。
24. HE(Haematoxylin/Eosin)染色
水道水で2分凍結切片を洗浄し、脱OCTを行った。イオン交換水で洗浄後、Haematoxylin(Wako)で9分間核染色を行った。イオン交換水で染色液を落とし、水道水に10分間つけ、水だしを行った。その後、イオン交換水で洗浄後、Eosin
(武藤化学)で10分間細胞質染色を行った。余分なEosinをイオン交換水で落とした後、上昇エタノール系列にて脱水し、キシレンで透徹処理し、封入した。
パラフィン切片を、100%キシレンで、5分間3回ずつ浸透させ、100、90、80、70、60、50% エタノールに3分ずつ浸し、脱パラフィンを行い親水させた。その後、上記の凍結切片と同様に、イオン交換水で洗浄後、HE染色を行った。
25. 免疫組織化学染色
各切片の脱OCT・脱パラフィン後、切片をPBSで5分間3回洗浄し、4%PFAで10分間、4℃で固定を行った。その後、PBSで5分間3回洗浄し、二次抗体作成動物(goat)の正常血清を10%含むブロッキング溶液を用いて、組織を4℃で1晩ブロッキングした。次に、PBSで200倍希釈した一次抗体を添加し4Cで1晩反応させた後、PBSで5分間、3回洗浄を行った。一次モノクローナル抗体として、抗マウス/モルモットInsulin抗体、抗ヒト/マウスCD31、抗マウス/ラットCD31、抗ヒト/マウスCollagen4、抗ヒト/ラビットLaminin抗体、抗マウス/ラビットcaspase-3抗体を組み合わせて用いた。 更に、PBSで500倍希釈した二次抗体を添加し、室温の遮光条件下で1時間反応させた後、PBSで5分間3回洗浄し、4’,6-diamidino-2-phenylindole dihydrochloride (DAPI, invitrogen)が添加されている封入剤で封入し、蛍光顕微鏡で観察と撮影を行った。2次抗体(Molecular probe)として、Alexa 488、555標識ヤギ抗ラビットIgG(H+L) 抗体、Alexa 488、555,647標識ヤギ抗ラットIgG(H+L) 抗体、Alexa 488、555標識ヤギ抗モルモットIgG(H+L)抗体、Alexa 488、555,647標識ヤギ抗マウスIgG(H+L) 抗体を組み合わせて用いた。
26. Whole mount法による免疫組織学的な解析
創出された血管化膵島を回収し、4%PFA溶液に入れ1日固定を行い、PBSで10分間の洗浄を3回行った。固定後、3%BSA入りの0.1%Triton-PBS溶液に入れ、室温環境で1時間ブロッキングを行った。ブロッキング後0.1%Triton-PBS溶液で10分間の洗浄を3回行い、0.1%Triton-PBS溶液で希釈した1次抗体液に移植片を入れ、4℃で1日反応させた。反応後、0.1%Triton-PBS溶液で10分間の洗浄を3回行い、0.1%Triton-PBS溶液で希釈した2次抗体液に移植片を入れ、室温環境で4時間反応させた。反応後、0.1%Triton-PBS溶液で10分間の洗浄を3回行い、DAPI入りの封入材を添加し、共焦点顕微鏡を用いて観察した。
〔結果〕
1. マウス膵島、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の共培養による3次元組織の創出
膵島細胞の生存率を指標に培地の検証を行った(図1A)。培養72時間後、各条件の膵島面積当たりの死細胞数は、RPMI1640培地を用いた膵島では14 cells
/ mm、RPMI1640と内皮細胞用培地の混合培地では1.8 cells / mm、内皮細胞用培地では0.8 cells / mm存在していた(図1B)。
方法7のように培養を行った。培養開始直後の状態では、膵島周辺に細胞が散在しており、目視可能な3次元組織は確認できなかった。しかし、培養開始4時間後には、細胞同士の相互作用が開始し、散在していた細胞が密集を開始し、培養が進んだ8時間後には、細胞が膵島を覆うように凝集し、徐々に3次元的な構造を構築していった。そして、培養24時間後には、自律的な組織化が更に進行し、血管化された3次元組織を構築した(図1C上段、1E)。一方、共培養を行わずに膵島のみを培養した際には、血管化はもちろん、3次元組織の形成も認めなかった(図1D)。
また、方法8のように培養を行うことで、底面に細胞・組織が集まるような培養基材の中で血管化された3次元組織の小型化を図った(図2)。マウス膵島組織1、5、10、20個をそれぞれHUVEC、MSCと共培養を行ったところ、培養開始24時間後には3次元組織を構築し、48時間後も形態が維持されていた(図2A)。さらに、血管化された3次元組織の構築に最小限必要なHUVEC、MSCの細胞数を検討した(図2B)。マウス膵島が10個の際は、HUVECが1.0x10cells、MSCが1x10cellsで共培養を行うと、培養開始2時間後には、細胞間接着により、散在していた細胞が凝集を開始した。培養が進んだ9時間後には、細胞が膵島を覆うように凝集し、3次元組織を構築した(図2C左)。細胞の形態変化を追跡するため、蛍光標識したマウス膵島と、各種細胞を用いて共培養実験を行った(図1A下段、2C右、2D)。Pdx-DsRedマウスから単離した膵島(図1A,2D:赤、2C:青)、green fluorescent protein (GFP)を導入したHUVEC(図1A,2C,2D:緑)、MSC(図2C:赤)を共培養し、共焦点顕微鏡で細胞形態を観察したところ、培養開始直後では、HUVECは偏りなく膵島周辺に散在していることが確認された。さらに、HUVECは膵島組織に直接付着しているのみならず、一部には膵島内部における血管内皮細胞と連結していることが示された(図2E)。
以上より、マウス膵島、HUVEC、MSCの3種類の細胞を適切な条件下で共培養することで、血管化された3次元組織が自律的に創出されることが判明した。
2. 血管内皮細胞、間葉系幹細胞との共培養によるマウス膵島機能の向上
方法10のように培養を行い、各条件でのマウス膵島細胞の生存率を比較した(図1F
生細胞:緑、死細胞:赤)。培養24時間後、各条件の膵島面積当たりの死細胞数は、膵島単独培養では53 cells/mm、HUVECとの共培養では14 cells/mm、MSCとの共培養では2 cells/mm、HUVECとMSCとの共培養では0.1 cells/mm存在していた(図1G)。以上のことから、HUVECとMSCと共培養を行うことで、マウス膵島細胞の生存率が向上することが示された。
また、方法12のように培養を行い、マウス膵島から分泌されたインスリン量を測定した(図1H)。培養開始24時間後、膵島単独で培養した場合と比較し、HUVEC、MSCと共培養したマウス膵島では、インスリン分泌量が増加した。試験管内において糖負荷試験を行ったところ、膵島単独培養群では1.37倍、共培養群では1.97倍にインスリン分泌量が増加した(図1I)。このような膵島の機能向上に寄与する分子群を特定する目的で、マイクロアレイ解析によりHUVECおよびMSCの共培養前後における網羅的に遺伝子発現の変化を解析した。その結果、共培養することにより発現が2倍以上増強する遺伝子として、214の候補遺伝子が抽出された(図1J)。以上より、HUVEC・MSCと共培養を行うことにより様々な遺伝子の発現変動が惹起され、マウス膵島機能が向上することが示唆された。
3. 血管化膵島移植による追尾定点観察
結果1で創出された血管化膵島を、マウスへ移植し、組織の形態変化を追跡した(図3)。また、組織創出における、血管化の必要性を検討するために、マウス膵島単独をマウスへ移植し、比較した。17の方法を用いて、頭部観察窓(CW)マウスに移植を行い、19の方法を用いて形態変化を追跡した。
マウス膵島単独を移植後、マウス頭部では、移植後2日目まで、肉眼的な変化は見受けられず、移植膵島への血液灌流などは見られなかったが、移植後日数が経つにつれて、生存している膵島が減少していった(図3B)。また、蛍光標識を用いて、細胞形態変化を観察したところ、こちらも同様に変化は見られなかったが、徐々に移植膵島が減少していった。さらに、血流の可視化を行ったところ、移植後7日目において、膵島内部への血液灌流は存在しなかった(図3D 膵島:緑、血流:赤)。しかし、血管化膵島を移植したマウス頭部では、移植後2日目に、移植箇所全体に対して血液灌流が行われていた(図3A)。また、共焦点顕微鏡を用いて観察したところ、移植後7日目において、移植膵島内部への血液灌流が確認された(図3C 膵島:緑、血流:赤)。
これらの結果から、血管化膵島を移植することで、移植膵島内部への早期血流再開を誘発し、移植後の膵島生存率が向上したことが示された。
4. 血管化膵島移植による糖尿病治療効果の検証
膵島5個の条件で共培養した血管化膵島40個を、糖尿病モデルマウスの腎被膜下へ移植し、治療効果を測定した(図3E)。移植後1日で血糖降下がみられ、移植2週間以降は正常血糖値が安定して保たれていた(図3F)。さらに、大幅な体重増加がみられ(図3G)、生存率は向上した(図3H)。生体内における糖負荷試験を行ったところ、正常マウスとほぼ変わらないインスリン分泌応答を示した(図3I)。
以上のことから、血管化膵島を移植することで、糖尿病治療効果が示された。
5. 血管化膵島の組織学的解析
共培養1日後の血管化膵島を組織学的、免疫組織学的に解析した。HE染色を行ったところ、中心壊死が無く、HUVEC、MSCと隣接している膵島組織が観察された(図2E上)。さらに、免疫染色を行い、インスリン抗体を用いて膵島(1E’:緑、2E:赤)を、ヒト血管内皮細胞抗体を用いてHUVEC(1E’:赤、2E:緑)を、マウス血管内皮細胞抗体を用いてマウス血管(2E:青)を、それぞれ染色した(図1E’、2E下)。インスリン陽性の膵島内部にHUVECの存在を確認し、さらに、HUVECとマウス血管とが接合していた。
また、頭部観察窓へ移植後30日目の血管化膵島(図3J)、膵島(図3K)をそれぞれ組織学的、免疫組織学的に解析した。HE染色を行ったところ、脳組織上に生着している膵島が確認された。また、免疫染色を行った結果、血管化膵島ではインスリン陽性箇所において、ヒト血管内皮細胞が存在し、さらに、細胞外基質であるラミニン、コラーゲンIVを分泌する安定したヒト血管であることを見出した。しかし、膵島単独移植をした膵島内部では、血管内皮細胞の存在は見られなかった。
さらに、腎被膜下へ移植後28日目の血管化膵島(図3L)、膵島(図3M)をそれぞれ組織学的、免疫組織学的に解析した。HE染色を行ったところ、腎臓実質と被膜間に存在している膵島が確認された(図3L左下、3M左下)。さらに、免疫染色を行い、インスリン抗体を用いて膵島(緑)を、ラミニン抗体を用いて血管内皮細胞(赤)をそれぞれ染色した(図3L右下、3M右下)。血管化膵島では、インスリン陽性の膵島内部において、ラミニン陽性の血管内皮細胞の発現を確認した。しかし、膵島単独移植をした膵島内部では、血管内皮細胞の存在は見られなかった。
以上のことから、血管化膵島は、組織学的、免疫組織学的な視点から、ヒト血管を伴った膵島組織であることを示した。
【実施例】
【0043】
〔実施例2〕腎糸球体への血管網の付与
〔方法〕
1 マウス糸球体の単離法
ジエチルエーテル(Wako)を用いて麻酔したC57BL/6-Tgマウス(日本SLC)の腹部を70%エタノールで消毒した後、開腹し、腎臓を摘出した。摘出した腎臓から腎皮膜を取り除き、生理食塩水で洗った後、メスで腎臓を輪切りにした。腎盂と髄質をハサミで取り除き、皮質を回収した。氷上で回収した皮質をミンスし、100μmメッシュのセルストレーナーを用いて0.1%Albumin, from bovine serum(BSA, SIGMA)入りハンクス緩衝液(HBSS, GIBCO)を少しずつ添加しながら濾過した。フロースルーを70μmメッシュのセルストレーナーを用いて濾過し、最後にフロースルーを40μmメッシュのセルストレーナーを用いて濾過した。40μmメッシュのセルストレーナーに残った細胞塊を0.1%BSA入りハンクス緩衝液を用いて回収した。さらに、回収したものを100μmメッシュのセルストレーナーで濾過した。
2 マウス糸球体の選別法
1で単離したマウス糸球体を実体顕微鏡下で観察すると、球状のマウス糸球体(直径:
50~100μm)が確認できる。これをピペットマンで糸球体用培地へ回収した。
3 マウス糸球体の初代培養法
RPMI1640 (Wako)中に、20% fetal bovine serum(BWT Lot.S-1560)、100μg/ml penicillin/streptomycin(Gibco)、Insulin-Transferrin-SeleniumX(GIBCO)を加えたものを用いて37℃、5%COのインキュベーター内で培養した。
4 細胞培養
正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(Normal Human Umbilical Vein
Endothelial Cells: HUVEC) (Lonza CC-2517)は、HUVEC培養用に調製された専用の培地 (EGM(登録商標) BulletKit(登録商標)) (Lonza CC-4133)を用いて、保証継代回数(5回)以内の継代回数で培養した。ヒト間葉系幹細胞(human Mesenchymal Stem Cell: hMSC) (Lonza PT-2501)は、hMSC培養に調製された専用の培地(MSCGMTM BulletKit(登録商標))(Lonza PT-3001)を用いて、保証継代数(5回)以内の継代回数で培養した。それぞれの細胞は37℃、5%COのインキュベーター内で培養した。
5 血管系を有する3次元組織の作製
経時観察用として、糸球体用培地を充填しておいたPrimeSurface(登録商標)96ウェルUプレート(住友ベークライト)の1ウェルにマウス糸球体1,5,10個を静置し、そこへHUVECを5×10 cells、hMSCを5×10 cellsの細胞数で播種した。その後、37℃のインキュベーターで1日間培養した。また、24ウェルプレートの1ウェルにマウス糸球体100個を静置し、そこへHUVECを2×10 cells、hMSCを2×10 cellsの細胞数で播種した。
6 実体顕微鏡を用いた経時観察
実体顕微鏡での経時変化を追跡するために共培養を行った。24ウェルプレートの1ウェルにマウス糸球体20個を静置し、そこへHUVECを2×10 cells、hMSCを2×10 cellsの細胞数で播種した。播種後、実体顕微鏡(LeicaDFC300FX)にプレートを設置し、細胞共培養による、形態変化を観察した。
7 実験動物
移植動物として用いたNOD/SCIDマウス(Sankyo Labo Service Co. , Tokyo, Japan)は、SPF環境下で昼間10時間・夜間14時間の明暗周期で飼育した。実験動物の飼育は横浜市立大学医学部動物実験センターに委託し、また本学の定める倫理規定を遵守し実験を行った。
8 CWマウスへの移植
作製したCWマウスの、頭部観察窓のガラスを除去することで、脳表面を露出させ移植を行った。使用するCWマウスは、脳表面の出血、炎症や感染などが見られないマウスを使用した。麻酔後、頭部観察窓周辺を、70%エタノールで消毒し、特注円形スライドガラスとアロンアルファの境目から、18Gの針先を侵入させ、脳表面を傷つけずに特注円形スライドガラスを剥離し、脳表面を露出させた。その後、生理食塩水で洗浄を行い、脳表面の中心付近に移植組織を静置し、特注円形スライドガラスを乗せた。この時、隙間が残らないよう、ガラスと脳表面の間を、生理食塩水で満たした後に、作製時と同様に、コートレープラスチックパウダーとアロンアルファによる接着剤で封入を行った。
9 共焦点顕微鏡による CW移植マウスへ移植した組織の追尾定点観察
8 で、CWへ移植した3次元組織の観察を行った。
移植したCWマウスに、11で使用したのと同様に、ケタラール・キシラジン混合麻酔で麻酔を行い、CWマウスを25×60 mmマイクロカバーガラス(MATSUNAMI)の上に、頭部観察窓と水平になるように仰臥位固定し、共焦点顕微鏡(LEICA TCS-SP5)を用いて移植した血管網を有した3次元組織の形態変化を観察した。
〔結果〕
1. マウス糸球体、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の共培養による血管化3次元組織の創出
方法6のように培養を行った。培養開始直後の状態では、糸球体周辺に細胞が散在しており、目視可能な3次元組織は確認できなかった。しかし、培養開始4時間後には、細胞同士の相互作用が開始し、散在していた細胞が密集を開始し、培養が進んだ8時間後には、細胞が糸球体を覆うように凝集し、徐々に3次元的な構造を構築していった。そして、培養24時間後には、自律的な組織化が更に進行し、血管化された3次元組織を構築した(図4A、4B)。一方、共培養を行わずに糸球体のみを培養した際には、血管化はもちろん、3次元組織の形成も認めなかった(図4C)。
また、方法5のように培養を行うことで、底面に細胞・組織が集まるような培養基材の中で血管化された3次元組織の小型化を図った(図4C)。マウス糸球体5、10、15個をそれぞれHUVEC、MSCと共培養を行ったところ、培養開始24時間後には3次元組織を構築した。細胞の形態変化を追跡するため、蛍光標識したマウス糸球体と、各種細胞を用いて共培養実験を行った(図4B、4C、4D)。マウスから単離した糸球体(緑)、Kusabira Orange (KO)を導入したHUVEC(図4B, 4C, 4D, :赤)、MSC(図4B, 4D, :青)を共培養し、共焦点顕微鏡で細胞形態を観察したところ、培養開始直後では、HUVECは偏りなく糸球体周辺に散在していることが確認された
以上より、マウス糸球体、HUVEC、MSCの3種類の細胞を適切な条件下で共培養することで、血管化された3次元組織が自律的に創出されることが判明した。
2. 血管化糸球体移植による追尾定点観察
結果1で創出された血管化糸球体を、マウスへ移植し、組織の形態変化を追跡した(図4E,)。8の方法を用いて、頭部観察窓(CW)マウスに移植を行い、9の方法を用いて形態変化を追跡した。
血管化糸球体を移植したマウス頭部では、移植後3日目に、移植箇所全体に対して血液灌流が行われていた(図4E)。さらに、共焦点顕微鏡を用いた移植後10日目におけるライブ観察の結果から、移植後も糸球体構造が維持されていたのみならず、糸球体内部におけるマウス血管がその周囲においてヒト血管(HUVEC)と直接吻合し、内部を血液が交通していることが明らかとなった(図4F)。これらの結果から、血管化糸球体を移植することで、移植糸球体内部への早期血流再開を認め、効率的に生着することが示された。
【実施例】
【0044】
〔実施例3〕腫瘍組織への血管網の付与
〔方法〕
1. ヒト膵臓腫瘍組織の回収
びまん性ラ氏島細胞増殖症患者から切除されたヒト膵臓腫瘍組織をクリーンベンチ環境下でPBSによる洗浄を行い、HBSS培地を入れた6cmディッシュに移し1mm画に細切後、以降の実験に使用した。
2. ヒト膵臓腫瘍組織への血管網付与
1mm画に切断したヒト膵臓腫瘍組織をピペットマンで20個回収し、EGFP-HUVECを2x10、MSCを2x10の細胞数で混合し950rpmで遠心後、上清を除去しEGM培地1mlで懸濁しあらかじめマトリゲルを入れた24ウェルプレートに播種し共焦点顕微鏡による形態変化の追跡を行った。
3. マウス膵臓癌組織の回収
膵臓癌の多段階発癌を再現することが可能とされている膵臓癌モデルマウス(Pdx1-cre;LSL-KrasG12D;CDKN2A-/-:NCIより購入)から膵臓癌組織を回収し、PBSにより洗浄を行いクリーンベンチ環境下でHBSS培地を入れた6cmディッシュに移した。回収した癌組織を1mm画に細切後、以降の実験に使用した。
4. マウス膵臓癌組織への血管網付与
1mm画に細切した膵臓癌組織を20個回収し、EGFP-HUVECを2x10cells、MSCを2x10cellsの細胞数で混合し950rpmの速度で5分間遠心を行った。遠心後上清を除去しEGM(登録商標)BulletKit(登録商標)(LonzaCC-4133)培地を1ml加えあらかじめマトリゲルを入れた24ウェルプレートに播種し、37℃のインキュベーターに入れ毎日培地交換を行い、4日間培養した。
24ウェルプレートはEGM培地とBD MatrigelTM基底膜マトリックス(日本BD 356234)を1:1で混合し作製した溶液300μlを24 ウェルプレートの1ウェルに加え10分間、37℃のインキュベーター内に入れ固定した。
〔結果〕
1.ヒト膵臓腫瘍組織の血管化
共焦点顕微鏡による観察の結果、共培養により1mm画に細切したヒト膵臓組織周辺に血管網を構築しつつ、24-48時間程度で、自律的に血管化された3次元組織を創出することを確認した(図5A)。
2.マウス膵臓癌組織の血管化
1mm画に切断した膵臓癌組織をHUVEC、MSCと24ウェルプレートに固相化したマトリゲル上で共培養することにより、血管化された3次元組織を創出することに成功した(図5B、上段)。対照実験として、1mm画の膵臓癌組織のみを固相化したマトリゲル上で培養を行っても、3次元組織の形成や血管化は確認されず、特筆する変化は見られなかった(図5B、下段)。
4日間培養後、形成された血管化3次元組織の遺伝子発現を定量PCRにより解析を行った。その結果、重要な癌幹細胞マーカーとして知られるCD44の遺伝子発現が単独培養群と比べて、1.6倍程度の発現レベルの向上することが判明した(図5C)。
これにより、従来in vitroにおいて維持することが困難であった癌幹細胞が増幅されていることが示唆された。従来の平面培養では、生体内に投与した際の反応性と大きく異なる環境のため、抗癌剤の有効性を事前に評価する系としての利用は困難であった。本法を用いることで、血管系も含め生体内における癌組織における反応性を良好に再現できることが期待され、新たな抗癌剤を開発する際の薬剤スクリーニング系としての利用が大いに期待される培養技術である。
【実施例】
【0045】
〔実施例4〕肝組織への血管網の付与
〔方法〕
1 マウス肝組織の分離法
ジエチルエーテル(Wako)を用いて麻酔したC57BL/6-Tgマウス(日本SLC)の腹部を70%エタノールで消毒した後、開腹し、経心腔的灌流を行った。肝臓を摘出し、生理食塩水で洗った後、ハサミで肝臓をミンスした。ミンスした肝臓を100μmメッシュのセルストレーナーを用いて0.1%Albumin, from bovine serum(BSA, SIGMA)入りハンクス緩衝液(HBSS, GIBCO)を少しずつ添加しながら濾過した。フロースルーを70μmメッシュのセルストレーナーを用いて濾過した。70μmメッシュのセルストレーナーに残った細胞塊を0.1%BSA入りハンクス緩衝液を用いて回収した。
2 マウス肝組織の初代培養法
DMEM/F12(invitrogen)中に、10% fetal bovine serum(ICN Lot.7219F)、2 mmol/L L-glutamine(GIBCO)、 100 μg/mLpenicillin/streptomycin(Gibco)、10 mmol/L nicotinamide(SIGMA)、50μmol/L 2-Mercaptoethanol、1x10^7 mol/L 6.5% dexamethasone (SIGMA)、2.6x10^4 M L-Ascorbic acid 2-phosphate sesquimagnesium salt hydrate(SIGMA)、 5 mmol/L HEPES(DOJINDO)、1μg/mL Human recombinant insulin,
expressed in yeast (Wako)、50 ng/mL Human recombinant HGF, expressed in Sf21 insect cells(SIGMA)、20 ng/mL Mouse Submaxillary Glands EGF(SIGMA)を加えたものを用いて37℃、5%COのインキュベーター内で培養した。
3 細胞培養
正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(Normal Human Umbilical Vein
Endothelial Cells: HUVEC) (Lonza CC-2517)は、HUVEC培養用に調製された専用の培地 (EGM(登録商標) BulletKit(登録商標)) (Lonza CC-4133)を用いて、保証継代回数(5回)以内の継代回数で培養した。ヒト間葉系幹細胞(human Mesenchymal Stem Cell: hMSC) (Lonza PT-2501)は、hMSC培養に調製された専用の培地(MSCGMTM BulletKit(登録商標))(Lonza PT-3001)を用いて、保証継代数(5回)以内の継代回数で培養した。それぞれの細胞は37℃、5%COのインキュベーター内で培養した。
4 血管網を有する3次元組織の作製
経時観察用として、肝組織用培地を充填しておいたPrimeSurface(登録商標)96ウェルUプレート(住友ベークライト)の1ウェルにマウス肝組織2個を静置し、そこへHUVECを5×10 cells、hMSCを5×10 cellsの細胞数で播種した。その後、37℃のインキュベーターで1日間培養した。
5 実験動物
移植動物として用いたNOD/SCIDマウス(Sankyo Labo Service Co. , Tokyo, Japan)は、SPF環境下で昼間10時間・夜間14時間の明暗周期で飼育した。実験動物の飼育は横浜市立大学医学部動物実験センターに委託し、また本学の定める倫理規定を遵守し実験を行った。
6 CWマウスへの移植
8で作製したCWマウスの、頭部観察窓のガラスを除去することで、脳表面を露出させ移植を行った。使用するCWマウスは、脳表面の出血、炎症や感染などが見られないマウスを使用した。麻酔後、頭部観察窓周辺を、70%エタノールで消毒し、特注円形スライドガラスとアロンアルファの境目から、18Gの針先を侵入させ、脳表面を傷つけずに特注円形スライドガラスを剥離し、脳表面を露出させた。その後、生理食塩水で洗浄を行い、脳表面の中心付近に移植組織を静置し、特注円形スライドガラスを乗せた。この時、隙間が残らないよう、ガラスと脳表面の間を、生理食塩水で満たした後に、作製時と同様に、コートレープラスチックパウダーとアロンアルファによる接着剤で封入を行った。
7 共焦点顕微鏡による CW移植マウスへ移植した組織の追尾定点観察
6 で、CWへ移植した3次元組織の観察を行った。
移植したCWマウスに、11で使用したのと同様に、ケタラール・キシラジン混合麻酔で麻酔を行い、CWマウスを25×60 mmマイクロカバーガラス(MATSUNAMI)の上に、頭部観察窓と水平になるように仰臥位固定し、共焦点顕微鏡(LEICA TCS-SP5)を用いて移植した血管網を有した3次元組織の形態変化を観察した。
〔結果〕
1. マウス肝組織、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の共培養による3次元組織の創出
方法4のように培養を行った。培養開始直後の状態では、肝組織周辺に細胞が散在しており、目視可能な3次元組織は確認できなかった。しかし、培養開始4時間後には、細胞同士の相互作用が開始し、散在していた細胞が密集を開始し、培養が進んだ8時間後には、細胞が肝組織を覆うように凝集し、徐々に3次元的な構造を構築していった。そして、培養24時間後には、自律的な組織化が更に進行し、血管化された3次元組織を構築した(図6A、6B)。一方、共培養を行わずに肝組織のみを培養した際には、血管化はもちろん、3次元組織の形成も認めなかった(図6B)。
また、方法4のように培養を行うことで、底面に細胞・組織が集まるような培養基材の中で血管化された3次元組織の小型化を図った(図6A)。マウス肝組織をそれぞれHUVEC、MSCと共培養を行ったところ、培養開始24時間後には3次元組織を構築した。細胞の形態変化を追跡するため、蛍光標識したマウス肝組織と、各種細胞を用いて共培養実験を行った(図6A)。マウスから単離した肝組織(図6A,:赤、6B、6D:緑)、green fluorescent protein (GFP)を導入したHUVEC(図6B)、MSCを共培養し、共焦点顕微鏡で細胞形態を観察したところ、培養開始直後では、HUVECは偏りなく肝組織周辺に散在していることが確認された。
以上より、マウス肝組織、HUVEC、MSCの3種類の細胞を適切な条件下で共培養することで、血管化された3次元組織が自律的に創出されることが判明した。
2. 血管化肝組織移植による追尾定点観察
結果1で創出された血管化肝組織を、マウスへ移植し、組織の形態変化を追跡した(図6C)。6の方法を用いて、頭部観察窓(CW)マウスに移植を行い、7の方法を用いて形態変化を追跡した。
血管化肝組織を移植したマウス頭部では、移植後3日目に、移植箇所全体に対して血液灌流が行われていた(図6C)。また、共焦点顕微鏡を用いて観察したところ、移植肝組織内部への血液灌流が確認された(図6D)。
これらの結果から、血管化肝組織を移植することで、移植肝組織内部への早期血流再開を誘発したことが示された。
【実施例】
【0046】
〔実施例5〕腸組織への血管網の付与
〔方法〕
1 マウス腸組織の単離法
ジエチルエーテル(Wako)を用いて麻酔したC57BL/6-Tgマウス(日本SLC)の腹部を70%エタノールで消毒した後、開腹し、小腸口側約20cmを切離した.切離された小腸内腔を生理食塩水50mlにて洗浄後、縦切開を加えて粘膜を露出 し約5cmの細片とした。つづいて2mMEthylenediaminetetraaceticacid (EDTA,同仁化学研究所)と0.5mM Dithiothreitol (DTT, SIGMA CHEMICALCOMPANY)を含むPBSの中で,37°C・20分処理した。その上清を100μmメッシュのセルストレーナーを通過させ、PBSで3回洗浄した。最後にフロースルーを40μmメッシュのセルストレーナーを用いて濾過した。40μmメッシュのセルストレーナーに残った細胞塊を0.1%BSA入りハンクス緩衝液を用いて回収した。
3 マウス腸組織の初代培養法
RPMI1640 (Wako)中に、20% fetal bovine serum(BWT Lot.S-1560)、100μg/ml penicillin/streptomycin(Gibco)、Insulin-Transferrin-SeleniumX(GIBCO)を加えたものを用いて37℃、5%COのインキュベーター内で培養した。
4 細胞培養
正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(Normal Human Umbilical Vein
Endothelial Cells: HUVEC) (Lonza CC-2517)は、HUVEC培養用に調製された専用の培地 (EGM(登録商標) BulletKit(登録商標)) (Lonza CC-4133)を用いて、保証継代回数(5回)以内の継代回数で培養した。ヒト間葉系幹細胞(human Mesenchymal Stem Cell: hMSC) (Lonza PT-2501)は、hMSC培養に調製された専用の培地(MSCGMTM BulletKit(登録商標))(Lonza PT-3001)を用いて、保証継代数(5回)以内の継代回数で培養した。それぞれの細胞は37℃、5%COのインキュベーター内で培養した。
5 血管網を有する3次元組織の作製
経時観察用として、腸組織用培地を充填しておいたPrimeSurface(登録商標)96ウェルUプレート(住友ベークライト)の1ウェルにマウス腸組織20個を静置し、そこへHUVECを5×10 cells、hMSCを5×10 cellsの細胞数で播種した。その後、37℃のインキュベーターで1日間培養した。
6 実体顕微鏡を用いた細胞共培養の経時観察
実体顕微鏡での経時変化を追跡するために共培養を行った。24ウェルプレートの1ウェルにマウス腸組織を静置し、そこへHUVECを2×10 cells、hMSCを2×10 cellsの細胞数で播種した。播種後、実体顕微鏡(LeicaDFC300FX)にプレートを設置し、細胞共培養による、形態変化を観察した。
7 実験動物
移植動物として用いたNOD/SCIDマウス(Sankyo Labo Service Co. , Tokyo, Japan)は、SPF環境下で昼間10時間・夜間14時間の明暗周期で飼育した。実験動物の飼育は横浜市立大学医学部動物実験センターに委託し、また本学の定める倫理規定を遵守し実験を行った。
8 CWマウスへの移植
作製したCWマウスの、頭部観察窓のガラスを除去することで、脳表面を露出させ移植を行った。使用するCWマウスは、脳表面の出血、炎症や感染などが見られないマウスを使用した。麻酔後、頭部観察窓周辺を、70%エタノールで消毒し、特注円形スライドガラスとアロンアルファの境目から、18Gの針先を侵入させ、脳表面を傷つけずに特注円形スライドガラスを剥離し、脳表面を露出させた。その後、生理食塩水で洗浄を行い、脳表面の中心付近に移植組織を静置し、特注円形スライドガラスを乗せた。この時、隙間が残らないよう、ガラスと脳表面の間を、生理食塩水で満たした後に、作製時と同様に、コートレープラスチックパウダーとアロンアルファによる接着剤で封入を行った。
9 共焦点顕微鏡による CW移植マウスへ移植した組織の追尾定点観察
8 で、CWへ移植した3次元組織の観察を行った。
移植したCWマウスに、11で使用したのと同様に、ケタラール・キシラジン混合麻酔で麻酔を行い、CWマウスを25×60 mmマイクロカバーガラス(MATSUNAMI)の上に、頭部観察窓と水平になるように仰臥位固定し、共焦点顕微鏡(LEICA TCS-SP5)を用いて移植した血管網を有した3次元組織の形態変化を観察した。
〔結果〕
1. マウス腸組織、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の共培養による3次元組織の創出
方法4のように培養を行った。培養開始直後の状態では、腸組織周辺に細胞が散在しており、目視可能な3次元組織は確認できなかった。しかし、培養開始4時間後には、細胞同士の相互作用が開始し、散在していた細胞が密集を開始し、培養が進んだ8時間後には、細胞が腸組織を覆うように凝集し、徐々に3次元的な構造を構築していった。そして、培養24時間後には、自律的な組織化が更に進行し、血管化された3次元組織を構築した(図7A、7B)。一方、共培養を行わずに腸組織のみを培養した際には、血管化はもちろん、3次元組織の形成も認めなかった(図7B)。
また、方法4のように培養を行うことで、底面に細胞・組織が集まるような培養基材の中で血管化された3次元組織の小型化を図った(図7B)。マウス腸組織をそれぞれHUVEC、MSCと共培養を行ったところ、培養開始24時間後には3次元組織を構築した。細胞の形態変化を追跡するため、蛍光標識したマウス腸組織と、各種細胞を用いて共培養実験を行った(図7B)。マウスから単離した腸組織(図7B:赤)、green fluorescent protein (GFP)を導入したHUVEC(図7B)、MSCを共培養し、共焦点顕微鏡で細胞形態を観察したところ、培養開始直後では、HUVECは偏りなく腸組織周辺に散在していることが確認された。
以上より、マウス腸組織、HUVEC、MSCの3種類の細胞を適切な条件下で共培養することで、血管化された3次元組織が自律的に創出されることが判明した。
2. 血管化腸組織移植による追尾定点観察
結果1で創出された血管化腸組織を、マウスへ移植し、組織の形態変化を追跡した(図7C)。6の方法を用いて、頭部観察窓(CW)マウスに移植を行い、7の方法を用いて形態変化を追跡した。
血管化腸組織を移植したマウス頭部では、移植後3日目に、移植箇所全体に対して血液灌流が行われていた(図7C)。また、共焦点顕微鏡を用いて観察したところ、移植後3日目において、移植腸組織内部への血液灌流が確認された(図7D)。
これらの結果から、血管化腸組織を移植することで、移植腸組織内部への早期血流再開を誘発したことが示された。
【実施例】
【0047】
〔実施例6〕肺組織への血管網の付与
〔方法〕
1 マウス肺組織の分離法
ジエチルエーテル(Wako)を用いて麻酔したC57BL/6-Tgマウス(日本SLC)の腹部を70%エタノールで消毒した後、開腹し、肺を摘出した。生理食塩水で洗った後、ハサミで肺をミンスした。ミンスした肺を100μmメッシュのセルストレーナーを用いて0.1%Albumin, from bovine serum(BSA,
SIGMA)入りハンクス緩衝液(HBSS, GIBCO)を少しずつ添加しながら濾過した。フロースルーを40μmメッシュのセルストレーナーを用いて濾過した。40μmメッシュのセルストレーナーに残った細胞塊を0.1%BSA入りハンクス緩衝液を用いて回収した。
2 細胞培養
正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(Normal Human Umbilical Vein
Endothelial Cells: HUVEC) (Lonza CC-2517)は、HUVEC培養用に調製された専用の培地 (EGM(登録商標) BulletKit(登録商標)) (Lonza CC-4133)を用いて、保証継代回数(5回)以内の継代回数で培養した。ヒト間葉系幹細胞(human Mesenchymal Stem Cell: hMSC) (Lonza PT-2501)は、hMSC培養に調製された専用の培地(MSCGMTM BulletKit(登録商標))(Lonza PT-3001)を用いて、保証継代数(5回)以内の継代回数で培養した。それぞれの細胞は37℃、5%COのインキュベーター内で培養した。
3 血管網を有する3次元組織の作製
経時観察用として、肺組織用培地を充填しておいたPrimeSurface(登録商標)96ウェルUプレート(住友ベークライト)の1ウェルにマウス肺組織20個を静置し、そこへHUVECを5×10 cells、hMSCを5×10 cellsの細胞数で播種した。その後、37℃のインキュベーターで1日間培養した。また、24ウェルプレートの1ウェルにマウス肺組織を静置し、そこへHUVECを2×10 cells、hMSCを2×10 cellsの細胞数で播種した。
4 実体顕微鏡を用いた細胞共培養の経時観察
実体顕微鏡での経時変化を追跡するために共培養を行った。24ウェルプレートの1ウェルにマウス肺組織20個を静置し、そこへHUVECを2×10 cells、hMSCを2×10 cellsの細胞数で播種した。播種後、実体顕微鏡(LeicaDFC300FX)にプレートを設置し、細胞共培養による、形態変化を観察した。
5 実験動物
移植動物として用いたNOD/SCIDマウス(Sankyo Labo Service Co. , Tokyo, Japan)は、SPF環境下で昼間10時間・夜間14時間の明暗周期で飼育した。実験動物の飼育は横浜市立大学医学部動物実験センターに委託し、また本学の定める倫理規定を遵守し実験を行った。
6 CWマウスへの移植
8で作製したCWマウスの、頭部観察窓のガラスを除去することで、脳表面を露出させ移植を行った。使用するCWマウスは、脳表面の出血、炎症や感染などが見られないマウスを使用した。麻酔後、頭部観察窓周辺を、70%エタノールで消毒し、特注円形スライドガラスとアロンアルファの境目から、18Gの針先を侵入させ、脳表面を傷つけずに特注円形スライドガラスを剥離し、脳表面を露出させた。その後、生理食塩水で洗浄を行い、脳表面の中心付近に移植組織を静置し、特注円形スライドガラスを乗せた。この時、隙間が残らないよう、ガラスと脳表面の間を、生理食塩水で満たした後に、作製時と同様に、コートレープラスチックパウダーとアロンアルファによる接着剤で封入を行った。
7 共焦点顕微鏡による CW移植マウスへ移植した組織の追尾定点観察
9 で、CWへ移植した3次元組織の観察を行った。
移植したCWマウスに、11で使用したのと同様に、ケタラール・キシラジン混合麻酔で麻酔を行い、CWマウスを25×60 mmマイクロカバーガラス(MATSUNAMI)の上に、頭部観察窓と水平になるように仰臥位固定し、共焦点顕微鏡(LEICA TCS-SP5)を用いて移植した血管網を有した3次元組織の形態変化を観察した。
〔結果〕
1. マウス肺組織、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の共培養による3次元組織の創出
方法6のように培養を行った。培養開始直後の状態では、肺組織周辺に細胞が散在しており、目視可能な3次元組織は確認できなかった。しかし、培養開始4時間後には、細胞同士の相互作用が開始し、散在していた細胞が密集を開始し、培養が進んだ8時間後には、細胞が肺組織を覆うように凝集し、徐々に3次元的な構造を構築していった。そして、培養24時間後には、自律的な組織化が更に進行し、血管化された3次元組織を構築した(図8A)。一方、共培養を行わずに肺組織のみを培養した際には、血管化はもちろん、3次元組織の形成も認めなかった(図8A)。
また、方法4のように培養を行うことで、底面に細胞・組織が集まるような培養基材の中で血管化された3次元組織の小型化を図った(図2)。マウス肺組織、HUVEC、MSCと共培養を行ったところ、培養開始24時間後には3次元組織を構築した。細胞の形態変化を追跡するため、蛍光標識したマウス肺組織と、各種細胞を用いて共培養実験を行った(図8A)。マウスから単離した肺組織(図8A:赤、)、green fluorescent protein (GFP)を導入したHUVEC(図8A:緑)、MSC共培養し、共焦点顕微鏡で細胞形態を観察したところ、培養開始直後では、HUVECは偏りなく肺組織周辺に散在していることが確認された。
以上より、マウス肺組織、HUVEC、MSCの3種類の細胞を適切な条件下で共培養することで、血管化された3次元組織が自律的に創出されることが判明した。

2. 血管化肺組織移植による追尾定点観察
結果1で創出された血管化肺組織を、マウスへ移植し、組織の形態変化を追跡した(図8B)。16の方法を用いて、頭部観察窓(CW)マウスに移植を行い、7の方法を用いて形態変化を追跡した。
血管化肺組織を移植したマウス頭部では、移植後3日目に、移植箇所全体に対して血液灌流が行われていた(図8B)。また、共焦点顕微鏡を用いて観察したところ、移植後7日目において、移植肺組織内部への血液灌流が確認された(図8C)。
これらの結果から、血管化肺組織を移植することで、移植肺組織内部への早期血流再開を誘発したことが示された。
【実施例】
【0048】
〔実施例7〕iPS細胞由来内胚葉組織への血管網の付与
〔方法と結果〕
1.iPSの分化誘導
未分化状態を保ったまま増殖したiPS細胞(東京大学、中内博士より供与。TkDA3クローン。皮膚線維芽細胞より樹立。)を洗浄培地(DMEM/F12 ライフテクノロジーズ 11320)で1度洗浄し、100mmディッシュ1枚に対して1mlの培養細胞分離液(フナコシAT104)を加え、細胞を50ml遠心管に回収し、900rpm
5min遠心操作を行った。細胞数をカウントした後、マトリゲルコートを施した60mmディッシュ1枚に1.5X10cellの細胞数で播種した。マトリゲルコーティングは、BD MatrigelTM 基底膜マトリックス(日本BD 356234)をDMEM(ライフテクノロジーズ 11965118)で30倍に希釈し、60mmディッシュに2mlを加えて2時間室温で静置した。この時の培養液はiPS培養培地にROCK阻害剤Y-27632(calbiochem 688000)を添加した培養液を用いた。37℃のインキュベーターで24時間培養し、細胞を接着させた後、培養液を分化誘導培地へと交換した。分化誘導培地は、RPMI-1640(和光純薬 189-02025)にB-27(登録商標) Supplement Minus Insulin (ライフテクノロジーズ0050129SA)を1/100希釈、Activin
A (味の素)を100ng/ulで添加したものを用いた。培地交換を2日に1度行いながら、6日間培養を行い、胚体内胚葉(Definitive Endoderm)へと分化誘導を行った。内胚葉系列への分化度は定量PCRと免疫染色によって確認を行った。
2.iPS細胞由来内胚葉組織の作製
胚体内胚葉へ分化誘導を施したヒトiPS細胞をEZSPHERETM(旭硝子 4810-900 6well-Flat bottom)の1wellに1.0X10cellsの細胞数で播種した。培養液は肝細胞専用培地キット(HCMTM BulletKitTM Lonza CC3198)とEGM(登録商標) BulletKit(登録商標) (Lonza CC-4133)を1:1で混合したものを用いた。37℃のインキュベーターで2日に1度、半量の培地交換を行いながら8日間培養し、50~5
00μmの直径を有する立体的な内胚葉組織を作成した。
3.96ウェルUプレートを用いたヒト血管構造を有する3次元組織の作製
2のiPS細胞由来内胚葉組織用培地を充填しておいたPrimeSurface(登録商標)96ウェルUプレート(住友ベークライト)の1ウェルにiPS細胞由来内胚葉組織1~20個を静置し、そこへHUVECを1.0×10 cells、hMSCを1.0×10 cellsの細胞数で播種した。その後、37℃のインキュベーターで4日間培養した。
その結果、内胚葉組織はヒト血管内皮細胞、間葉系幹細胞と共培養することにより、自律的に三次元的な組織を誘導することが明らかとなった(図9B)。誘導された組織中には、ヒト血管内皮細胞が管腔様の構造を形成し、血管化された組織が形成されることが判明した(図9C)。このような三次元組織形成はiPS細胞由来内胚葉組織単独培養群では、全く確認されなかったことから、本法を用いることが血管化組織の作製に必須であることが示された(図9B)。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によって血管系を付与された生物学的組織は、ヒト機能細胞の創出、臓器移植、創薬スクリーニング、薬剤の効果発現と血管との関連性などを評価する新たな解析系などへの応用が可能である。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図1DE】
3
【図1F】
4
【図1G】
5
【図1H】
6
【図1I】
7
【図1J-1】
8
【図1J-2】
9
【図1J-3】
10
【図2A】
11
【図2B】
12
【図2C】
13
【図2D】
14
【図2E】
15
【図3AB】
16
【図3CD】
17
【図3E】
18
【図3F】
19
【図3G】
20
【図3H】
21
【図3I】
22
【図3JK】
23
【図3L】
24
【図3M】
25
【図4】
26
【図5】
27
【図6】
28
【図7】
29
【図8】
30
【図9】
31