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明細書 :インキュベータおよびこれを備えた細胞培養システム、加湿水の供給方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月23日(2017.3.23)
発明の名称または考案の名称 インキュベータおよびこれを備えた細胞培養システム、加湿水の供給方法
国際特許分類 C12M   1/00        (2006.01)
C12M   3/00        (2006.01)
FI C12M 1/00 D
C12M 1/00 C
C12M 3/00 B
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 27
出願番号 特願2015-558840 (P2015-558840)
国際出願番号 PCT/JP2015/051226
国際公開番号 WO2015/111544
国際出願日 平成27年1月19日(2015.1.19)
国際公開日 平成27年7月30日(2015.7.30)
優先権出願番号 2014011455
優先日 平成26年1月24日(2014.1.24)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】太田 章博
【氏名】矢野 利一
【氏名】高橋 頼雄
【氏名】高橋 秀幸
【氏名】山本 宏
【氏名】神谷 芳生
【氏名】岡野 浩司
【氏名】山本 博一
【氏名】桑田 秀典
【氏名】谷口 英樹
【氏名】関根 圭輔
出願人 【識別番号】592031097
【氏名又は名称】パナソニックヘルスケア株式会社
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000202、【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
審査請求
テーマコード 4B029
Fターム 4B029AA14
4B029BB01
4B029CC01
4B029CC02
4B029DG10
要約 インキュベータ(3)は、搬送機構(32)と、加湿空間(S3)と、循環部(ファン(37)、循環経路(37a))と、を備えている。搬送機構(32)は、アイソレータ(2)側から搬送されてくる各種物品を受け取って所定の位置へと搬送するとともに、培養空間(S2)内の湿度を維持するための無菌処理された加湿水が入った加湿容器(10)をアイソレータ(2)側から受け取る。加湿空間(S3)は、搬送機構(32)が受け取った加湿容器(10)が載置される。ファン(37)は、加湿空間(S3)に載置された加湿容器(10)の開放側付近を通過する空気流を生成し、加湿水を含む空気を培養空間(S2)内において循環させる。
特許請求の範囲 【請求項1】
細胞操作チャンバ内に形成された清浄空間から培養が行われる細胞を受け取って、前記細胞の培養を行う培養空間を内部に形成するインキュベータであって、
前記細胞操作チャンバ側から搬送されてくる各種物品を受け取って所定の位置へと搬送するとともに、前記培養空間内の湿度を維持するための無菌処理された加湿水が入った容器を前記細胞操作チャンバ側から受け取る搬送部と、
前記搬送部が受け取った前記加湿水が入った前記容器が載置される加湿空間と、
前記加湿空間に載置された前記容器の開放側付近を通過する空気流を生成し、前記加湿水を含む空気を前記培養空間内において循環させる循環部と、
を備えているインキュベータ。
【請求項2】
前記加湿空間内に設けられており、前記容器が載置される加湿棚と、
前記搬送部によって前記加湿空間に搬送される前記容器の受け渡しを行う受け渡し位置と、前記加湿空間に設けられており前記循環部によって形成された空気流が通過する加湿位置との間において、前記加湿棚を移動させる移動機構を、さらに備えている、
請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項3】
前記加湿空間に載置された前記容器の開放部分に対して殺菌用の紫外線を照射して、前記加湿水を殺菌処理するUV照射部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載のインキュベータ。
【請求項4】
前記UV照射部によって紫外線が照射される前記加湿空間と前記培養空間とを遮蔽する遮蔽部材を、さらに備えている、
請求項3に記載のインキュベータ。
【請求項5】
前記加湿空間内に設けられており、前記容器が載置される加湿棚と、
前記加湿空間に搬送される前記容器の受け渡しを行う受け渡し位置と、前記加湿空間に設けられた加湿位置との間において、前記加湿棚を移動させる移動機構と、を、さらに備え、
前記遮蔽部材は、前記加湿棚が前記加湿位置に移動すると、前記UV照射部から照射された紫外線の前記加湿空間外への漏れ出しを防止する、
請求項4に記載のインキュベータ。
【請求項6】
前記遮蔽部材は、前記容器の開放側の空間を覆う蓋部材と、前記容器の側方を覆う側壁部と、を有している、
請求項4または5に記載のインキュベータ。
【請求項7】
前記加湿空間内に設けられており、前記容器が載置される加湿棚と、
前記加湿空間に搬送される前記容器の受け渡しを行う受け渡し位置と、前記加湿空間に設けられた加湿位置との間において、前記加湿棚を移動させる移動機構と、を、さらに備え、
前記移動機構は、前記受け渡し位置と前記加湿位置との間において前記加湿棚を移動させる際には、前記加湿棚と前記蓋部材とを一体化して移動させる、
請求項6に記載のインキュベータ。
【請求項8】
前記加湿空間内に設けられており、前記容器が載置される加湿棚と、
前記加湿空間に搬送される前記容器の受け渡しを行う受け渡し位置と、前記加湿空間に設けられた加湿位置との間において、前記加湿棚を移動させる移動機構と、を、さらに備え、
前記加湿棚が前記加湿位置にある状態以外では、前記UV照射部からの紫外線の照射を停止させる、
請求項3から6のいずれか1項に記載のインキュベータ。
【請求項9】
前記培養空間へ搬送される培養容器と前記加湿水が入った容器とを判別する容器検知部を、さらに備えている、
請求項1から8のいずれか1項に記載のインキュベータ。
【請求項10】
前記容器検知部は、前記培養容器、前記加湿水が入った容器の底面の形状の違いを検出する複数のセンサを含んでいる、
請求項9に記載のインキュベータ。
【請求項11】
前記循環部は、前記空気の流れを形成するファンと、前記ファンによって形成される空気の流れを、前記加湿空間内に載置された前記容器の開放側へと導く循環経路と、を有している、
請求項1から10のいずれか1項に記載のインキュベータ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のインキュベータと、
前記インキュベータに対して、前記細胞に対して前処理が実施されるとともに、前記容器に無菌処理された前記加湿水を投入する作業が実施される細胞操作チャンバと、
備えた細胞培養システム。
【請求項13】
前記インキュベータと前記細胞操作チャンバとの間に設けられており、前記インキュベータと前記細胞操作チャンバとの間において、無菌状態のまま前記容器を搬送する連結ボックスを、
さらに備えた、
請求項12に記載の細胞培養システム。
【請求項14】
前記連結ボックスは、使用期限が経過した前記加湿水が入れられた前記容器を前記インキュベータの搬送部から受け取って、前記容器を外部へ取り出すための開口部を有している、
請求項13に記載の細胞培養システム。
【請求項15】
前記連結ボックスは、前記培養空間へ搬送される培養容器と前記加湿水が入った容器とを判別する容器検知部を、さらに有している、
請求項13または14に記載の細胞培養システム。
【請求項16】
前記容器検知部は、前記培養容器、前記加湿水が入った容器の底面の形状の違いを検出する複数のセンサを含んでいる、
請求項15に記載の細胞培養システム。
【請求項17】
内部に清浄空間が形成された細胞操作チャンバから内部に細胞の培養を行う培養空間が形成されたインキュベータに対して、前記培養空間を加湿するための加湿水を供給する方法であって、
前記細胞操作チャンバ内において、無菌処理された加湿水が封入された加湿水容器から前記加湿水を容器に投入するステップと、
前記容器を前記細胞操作チャンバ側から前記インキュベータ内に形成された所定の加湿空間へと搬送するステップと、
前記加湿空間へ搬送された前記容器の開放部分付近を通過する空気流を生成し、前記加湿水を含む空気を前記培養空間内において循環させるステップと、
を備えている加湿水の供給方法。
【請求項18】
前記加湿空間へ搬送された前記容器の開放部分に対して殺菌用の紫外線を照射して、前記加湿水を殺菌処理するステップを、さらに備えている、
請求項17に記載の加湿水の供給方法。
【請求項19】
前記加湿空間へ前記容器を搬送するステップと、前記殺菌処理を行うステップとの間に実施され、前記加湿空間と前記培養空間とを遮蔽するための遮蔽部材を挿入するステップを、さらに備えている、
請求項18に記載の加湿水の供給方法。
【請求項20】
前記加湿空間へ搬送された前記容器に入れられた前記加湿水の使用期限が経過した場合には、前記インキュベータと前記細胞操作チャンバとの間に設けられた連結ボックスから前記容器を取り出すステップを、さらに備えている、
請求項17から19のいずれか1項に記載の加湿水の供給方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の培養を行う培養空間を有するインキュベータおよびこれを備えた細胞培養システム、加湿水の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、処置者がグローブを介して前処理を行う処理室(アイソレータ)と細胞の培養空間を有する培養室(インキュベータ)とを備えた細胞培養システムにおいて、インキュベータ内の湿度を一定に保つために、滅菌水を用いた加湿方法が採用されている。
例えば、特許文献1には、細胞の培養空間を有するインキュベータの外側に装着される給水タンクと、給水タンクに貯留された滅菌水をインキュベータ内の培養空間内へと供給する給水通路と、給水通路を介して供給される滅菌水をガス、ミストあるいは蒸気化して培養空間を加湿する加湿手段と、を備えた給水機能付き培養装置について開示されている。
ここで、培養空間を加湿するための水は、インキュベータ内の無菌状態を確保するために、無菌状態で供給される必要がある。
【0003】
しかし、上記公報に開示された培養装置の構成では、給水タンクがインキュベータの外側に装着されるため、インキュベータとの接続部分や給水口等が外部空間にさらされてしまう。このため、給水タンクに滅菌水が貯留されていたとしても、インキュベータの培養空間内へ無菌状態を維持したままの水を供給できるとは言い難い。
一方、特許文献2には、インキュベータ内の培養空間内を加湿するための水を供給する供給経路上に、水に含まれる菌等を除去するためのフィルタを設けたインキュベータについて開示されている。
この構成では、インキュベータに入る直前にフィルタによって無菌化しているため、インキュベータの培養空間内には、無菌状態の水が供給される。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-166748号公報
【特許文献2】特開2011-160672号公報
【特許文献3】実開平4-113599号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記従来のインキュベータでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたインキュベータでは、無菌化するためのフィルタの一時側が汚染された場合には、長期間の使用において無菌状態を維持することは困難である。また、供給経路を構成する接続部分等が汚染された場合も同様に、長期間の使用において無菌状態を維持することは困難である。
本発明の課題は、培養空間内の加湿に用いられる水の無菌状態を十分に担保することが可能なインキュベータおよびこれを備えた細胞培養システム、加湿水の供給方法を提供することにある。
第1の発明に係るインキュベータは、細胞操作チャンバ内に形成された清浄空間から培養が行われる細胞を受け取って、細胞の培養を行う培養空間を内部に形成するインキュベータであって、搬送部と、加湿空間と、循環部と、を備えている。搬送部は、細胞操作チャンバ側から搬送されてくる各種物品を受け取って所定の位置へと搬送するとともに、培養空間内の湿度を維持するための無菌処理された加湿水が入った容器を細胞操作チャンバ側から受け取る。加湿空間は、搬送部が受け取った加湿水が入った容器が載置される。循環部は、加湿空間に載置された容器の開放側付近を通過する空気流を生成し、加湿水を含む空気を培養空間内において循環させる。
【0006】
ここでは、細胞の培養空間を有するインキュベータにおいて、インキュベータで培養される細胞に対して、例えば、所定の前処理等を実施するための清浄空間を有する細胞操作チャンバから、無菌処理された加湿水が入れられた容器を受け取って加湿空間に載置し、循環部によって培養空間内の加湿を行う。
なお、上記清浄空間には、滅菌または除染された空間や、清浄度の高いクリーンルーム等が含まれる。また、上記無菌処理された加湿水は、水中に含まれる菌が0の無菌水に限定されるものではなく、許容範囲内の数の菌を含む水も含まれる。また、上記細胞操作チャンバには、内部に清浄空間を有するアイソレータや、バイオハザードキャビネット等が含まれる。
ここで、搬送部には、細胞操作チャンバ側から容器を受け取って所定の位置まで搬送するための、例えば、ロボットアーム、その他の搬送機構が含まれる。また、循環部には、加湿水を含む空気(例えば、蒸気、ミスト、ガス等)を培養空間内において循環させるファン等が含まれる。
【0007】
これにより、加湿水が細胞操作チャンバ内の清浄空間において開封されて所定の容器に入れられることで、加湿水の無菌状態を維持したまま、加湿水が入れられた容器が細胞操作チャンバからインキュベータ側へと搬入される。この結果、従来よりも無菌状態を確実に確保した状態で、加湿水をインキュベータ内へ搬送して培養空間内を加湿することができる。
第2の発明に係るインキュベータは、第1の発明に係るインキュベータであって、加湿棚と、移動機構と、をさらに備えている。加湿棚は、加湿空間内に設けられており、容器が載置される。移動機構は、搬送部によって加湿空間に搬送される容器の受け渡しを行う受け渡し位置と、加湿空間に設けられており循環部によって形成された空気流が通過する加湿位置との間において、加湿棚を移動させる。
【0008】
ここでは、搬送部によって細胞操作チャンバ側からインキュベータ内へ搬入されてきた容器が加湿棚へと載置される受け渡し位置から、加湿空間内に設けられた所定の加湿位置まで、加湿棚を移動させる移動機構を備えている。
これにより、容器が載置される加湿棚を移動させる移動機構を、容器を搬送する搬送部とは別に設けることで、容器の受け渡し位置と加湿位置とを別々の位置に設けることができる。よって、受け渡し位置においては、容器の受け渡しをスムーズに行うことができるとともに、加湿位置においては、循環部によって生成される空気流の付近に容器を設置して効率よく培養空間内を加湿することができる。
第3の発明に係るインキュベータは、第1または第2の発明に係るインキュベータであって、加湿空間に載置された容器の開放部分に対して殺菌用の紫外線を照射して、加湿水を殺菌処理するUV(Ultraviolet)照射部を、さらに備えている。
【0009】
ここでは、インキュベータ内に搬入された加湿水入りの容器の開放部分に対して殺菌用の紫外線を照射するUV照射部を設けている。
なお、UV照射部による紫外線の照射は、常時照射、所定間隔ごとの照射等、適宜設定が可能である。また、UV照射部による紫外線の照射は、容器が加湿位置にある状態で行われることがより好ましい。
これにより、インキュベータ内へ搬入後の加湿水を、より確実に無菌状態のまま維持することができる。
第4の発明に係るインキュベータは、第3の発明に係るインキュベータであって、UV照射部によって紫外線が照射される加湿空間と培養空間とを遮蔽する遮蔽部材を、さらに備えている。
【0010】
ここでは、加湿空間においてUV照射部から照射される紫外線が、培養空間内へ漏れ出すことを防止するために、遮蔽部材を設けている。
ここで、遮蔽部材には、加湿空間に載置されたUV照射部の紫外線を照射する部分を覆う蓋状の部材等が含まれる。
これにより、殺菌用に照射される紫外線によって、培養空間内に載置された細胞等が死滅してしまうことを防止することができる。
第5の発明に係るインキュベータは、第4の発明に係るインキュベータであって、加湿棚と、移動機構と、をさらに備えている。加湿棚は、加湿空間内に設けられており、容器が載置される。移動機構は、加湿空間に搬送される容器の受け渡しを行う受け渡し位置と、加湿空間に設けられた加湿位置との間において、加湿棚を移動させる。遮蔽部材は、加湿棚が加湿位置に移動すると、UV照射部から照射された紫外線の加湿空間外への漏れ出しを防止する。
【0011】
ここでは、遮蔽部材の少なくとも一部が加湿空間に設けられており、移動機構によって加湿棚を加湿位置まで移動させた状態で、遮蔽部材がUV照射部から照射された紫外線の外部への漏れ出しを防止する。
これにより、加湿位置においてUV照射部から照射された紫外線が培養空間へ漏れ出すことを防止することができる。
第6の発明に係るインキュベータは、第4または第5の発明に係るインキュベータであって、遮蔽部材は、容器の開放側の空間を覆う蓋部材と、容器の側方を覆う側壁部と、を有している。
ここでは、UV照射部から照射された紫外線の培養空間内への漏れ出しを防止するための遮蔽部材が、加湿位置において、容器の開放側の空間を覆う蓋部材と、容器の側方を覆う側壁部と、を有している。
【0012】
これにより、加湿水が入れられた容器が、例えば、シャーレ等の透明な容器であっても、容器の開放側および側方を遮蔽部材(蓋部材および側壁部)で覆うことで、紫外線が加湿空間外へ漏れ出すことを防止することができる。
第7の発明に係るインキュベータは、第6の発明に係るインキュベータであって、加湿棚と、移動機構と、をさらに備えている。加湿棚は、加湿空間内に設けられており、容器が載置される。移動機構は、加湿空間に搬送される容器の受け渡しを行う受け渡し位置と、加湿空間に設けられた加湿位置との間において、加湿棚を移動させる。移動機構は、受け渡し位置と加湿位置との間において加湿棚を移動させる際には、加湿棚と蓋部材とを一体化して移動させる。
ここでは、移動機構によって、容器の受け渡し位置と加湿位置との間において加湿棚を移動させる構成において、遮蔽部材を構成する蓋部材が加湿棚とともに一体化して移動する。
【0013】
これにより、遮蔽部材の構成部材のうち、容器の開放側を覆う蓋部材は加湿棚とともに移動する一方、容器の側方を覆う側壁部は加湿位置に固定配置することで、受け渡し位置においては、加湿棚の側方が開放されるため容易に容器の出し入れを行うことができる。よって、UV照射部から紫外線が照射される加湿位置においては、遮蔽部材の蓋部材と側壁部とによって容器の開放側と側方とを覆うことができるため、加湿空間外への紫外線の漏れ出しを防止するとともに、受け渡し位置における容器の出し入れをスムーズに行うことができる。
第8の発明に係るインキュベータは、第3から第6の発明のいずれか1つに係るインキュベータであって、加湿棚と、移動機構と、をさらに備えている。加湿棚は、加湿空間内に設けられており、容器が載置される。移動機構は、加湿空間に搬送される容器の受け渡しを行う受け渡し位置と、加湿空間に設けられた加湿位置との間において、加湿棚を移動させる。加湿棚が加湿位置にある状態以外では、UV照射部からの紫外線の照射を停止させる。
【0014】
ここでは、移動機構によって、容器の受け渡し位置と加湿位置との間において加湿棚を移動させる構成において、加湿棚が加湿位置にある状態以外では、UV照射部からの紫外線の照射を停止させる。すなわち、UV照射部は、加湿棚が移動中および受け渡し位置にある状態では、紫外線の照射を停止する。
これにより、移動機構によって加湿棚が移動中あるいは受け渡し位置にある状態では、UV照射部から紫外線が照射されないため、加湿水を入れる容器の出し入れを行う際に、加湿空間外へ紫外線が漏れ出すことを防止することができる。
第9の発明に係るインキュベータは、第1から第8の発明のいずれか1つに係るインキュベータであって、培養空間へ搬送される培養容器と加湿水が入った容器とを判別する容器検知部を、さらに備えている。
【0015】
ここでは、細胞操作チャンバ側からインキュベータ内へ搬入される容器が、培養される細胞が入れられた培養容器か、加湿水が入れられた容器かを判別するための容器検知部を設けている。
これにより、細胞が入れられた培養容器が誤って加湿空間内へ搬送されてしまい、UV照射部からの紫外線を受けて死滅してしまう、あるいは加湿水が入れられた容器が誤って培養室の搬送されてしまう等の不具合を防止することができる。
第10の発明に係るインキュベータは、第9の発明に係るインキュベータであって、容器検知部は、培養容器、加湿水が入った容器の底面の形状の違いを検出する複数のセンサを含んでいる。
なお、上記複数のセンサとしては、機械式スイッチ等の接触センサや、近接センサ等の非接触センサ等が含まれる。
【0016】
ここでは、容器の種別を判別するための容器検知部として、培養容器と加湿水を入れる容器の底面の形状の違いを判別する複数のセンサを用いている。
これにより、培養容器と加湿水を入れる容器とが異なる底面の形状を有している場合には、例えば、細胞操作チャンバ側から容器を受け取る際に、容器の種別を判別することができる。
第11の発明に係るインキュベータは、第1から第10の発明のいずれか1つに係るインキュベータであって、循環部は、空気の流れを形成するファンと、ファンによって形成される空気の流れを、加湿空間内に載置された容器の開放側へと導く循環経路と、を有している。
ここでは、加湿空間内に加湿水を含む空気を循環させる循環部として、インキュベータ内に空気の流れを生成するファンと、ファンによって生成された空気の流れを加湿空間内の容器の開放側へと導く循環経路と、を用いている。
【0017】
これにより、ファンの回転によって生じた空気流を、容器の開放側の部分へと導くことで、容器に入れられた加湿水によってインキュベータの内部を加湿することができる。
第12の発明に係る細胞培養システムは、第1から第11の発明のいずれか1つに係るインキュベータと、細胞操作チャンバと、を備えている。細胞操作チャンバは、インキュベータに対して、細胞に対して前処理が実施されるとともに、容器に無菌処理された加湿水を投入する作業が実施される。
ここでは、上述したインキュベータと、インキュベータに対して搬送される容器に入れられた細胞および加湿水について前処理を行う細胞操作チャンバと、を備えた細胞培養システムを構成する。
なお、上記細胞操作チャンバには、内部に清浄空間を有するアイソレータや、バイオハザードキャビネット等が含まれる。
【0018】
これにより、細胞操作チャンバ内の清浄空間内において加湿水が容器に入れられた後、インキュベータ側へ搬送されることで、従来よりも確実に無菌状態を維持したまま、インキュベータ内の加湿を行うことができる。
第13の発明に係る細胞培養システムは、第12の発明に係る細胞培養システムであって、インキュベータと細胞操作チャンバとの間に設けられており、インキュベータと細胞操作チャンバとの間において、容器を搬送する連結ボックスを、さらに備えている。
ここでは、上述したインキュベータと細胞操作チャンバとを含む細胞培養システムにおいて、インキュベータと細胞操作チャンバとの間に、無菌状態のまま容器を搬送するための連結ボックスを設けている。
ここで、連結ボックスは、細胞操作チャンバにおいて前処理された容器等の物品を、インキュベータ側へ引き渡す搬送機構を有しており、内部は細胞操作チャンバと同様に無菌状態が確保されている。
【0019】
これにより、細胞操作チャンバ側において前処理された容器等を、無菌状態を維持したまま、インキュベータ側へ搬送することができる。
第14の発明に係る細胞培養システムは、第13の発明に係る細胞培養システムであって、連結ボックスは、使用期限が経過した加湿水が入れられた容器をインキュベータの搬送部から受け取って、容器を外部へ取り出すための開口部を有している。
ここでは、インキュベータ内へ搬送された加湿水の使用期限が切れた場合において、インキュベータ側から搬送されてきた容器を、連結ボックスに設けられた開口部から取り出す。
これにより、細胞操作チャンバ側の搬出入口まで容器を搬送することなく、インキュベータに隣接された連結ボックスから容器を取り出すことができる。
【0020】
第15の発明に係る細胞培養システムは、第13または第14の発明に係る細胞培養システムであって、連結ボックスは、培養空間へ搬送される培養容器と加湿水が入った容器とを判別する容器検知部を、さらに有している。
ここでは、細胞操作チャンバ側からインキュベータ内へ搬入される容器が、培養される細胞が入れられた培養容器か、加湿水が入れられた容器かを判別するための容器検知部を、連結ボックス内に設けている。
これにより、連結ボックス内において容器の種別を判別することで、インキュベータないにおいて、細胞が入れられた培養容器が誤って加湿空間内へ搬送されてしまい、UV照射部からの紫外線を受けて死滅してしまう、あるいは加湿水が入れられた容器が誤って培養室の搬送されてしまう等の不具合を防止することができる。
【0021】
第16の発明に係る細胞培養システムは、第15の発明に係る細胞培養システムであって、容器検知部は、培養容器、加湿水が入った容器の底面の形状の違いを検出する複数のセンサを含んでいる。
なお、上記複数のセンサとしては、機械式スイッチ等の接触センサや、近接センサ等の非接触センサ等が含まれる。
ここでは、培養容器と加湿水を入れる容器とが異なる底面の形状を有している場合には、例えば、細胞操作チャンバ側から容器を受け取る際に、連結ボックス内において容器の種別を判別することができる。
第17の発明に係る加湿水の供給方法は、内部に清浄空間が形成された細胞操作チャンバから内部に細胞の培養を行う培養空間が形成されたインキュベータに対して、培養空間を加湿するための加湿水を供給する方法であって、以下のようなステップを備えている。細胞操作チャンバ内において、無菌処理された加湿水が封入された加湿水容器から加湿水を容器に投入するステップ。容器を細胞操作チャンバ側からインキュベータ内に形成された所定の加湿空間へと搬送するステップ。加湿空間へ搬送された容器の開放部分付近を通過する空気流を生成し、加湿水を含む空気を培養空間内において循環させるステップ。
【0022】
ここでは、細胞の培養空間を有するインキュベータにおいて、インキュベータで培養される細胞に対して所定の前処理等を実施するための清浄空間を有する細胞操作チャンバから、無菌処理された加湿水が入れられた容器を受け取って加湿空間に載置し、培養空間内の加湿を行う。
ここで、搬送ステップでは、細胞操作チャンバ側から容器を受け取って所定の位置まで搬送するための、例えば、ロボットアーム、その他の搬送機構が用いられる。また、循環ステップでは、加湿水を含む空気(例えば、蒸気、ミスト、ガス等)を培養空間内において循環させるファン等が用いられる。
なお、上記細胞操作チャンバには、内部に清浄空間を有するアイソレータや、バイオハザードキャビネット等が含まれる。
【0023】
これにより、加湿水が細胞操作チャンバ内の清浄空間において開封されて所定の容器に入れられることで、加湿水の無菌状態を維持したまま、加湿水が入れられた容器が細胞操作チャンバからインキュベータ側へと搬入される。この結果、従来よりも無菌状態を確実に確保した状態で、加湿水をインキュベータ内へ搬送して培養空間内を加湿することができる。
第18の発明に係る加湿水の供給方法は、第17の発明に係る加湿水の供給方法であって、加湿空間へ搬送された容器の開放部分に対して殺菌用の紫外線を照射して、加湿水を殺菌処理するステップを、さらに備えている。
ここでは、インキュベータ内に搬入された加湿水入りの容器の開放部分に対して殺菌用の紫外線を照射するステップをさらに備えている。
【0024】
なお、紫外線の照射は、常時照射、所定間隔ごとの照射等、適宜設定が可能である。また、紫外線の照射は、容器が加湿位置にある状態で行われることがより好ましい。
これにより、インキュベータ内へ搬入後の加湿水を、より確実に無菌状態のまま維持することができる。
第19の発明に係る加湿水の供給方法は、第18の発明に係る加湿水の供給方法であって、加湿空間へ容器を搬送するステップと、殺菌処理を行うステップとの間に実施され、加湿空間と培養空間とを遮蔽するための遮蔽部材を挿入するステップを、さらに備えている。
ここでは、加湿空間において照射される紫外線が培養空間内へ漏れ出すことを防止するために、容器の搬送ステップと殺菌処理を行うステップとの間に、遮蔽部材を挿入するステップを設けている。
【0025】
ここで、遮蔽部材には、加湿空間に載置されたUV照射部の紫外線を照射する部分を覆う蓋状の部材等が含まれる。
これにより、殺菌用に照射される紫外線によって、培養空間内に載置された細胞等が死滅してしまうことを防止することができる。
第20の発明に係る加湿水の供給方法は、第17から第19の発明のいずれか1つに係る加湿水の供給方法であって、加湿空間へ搬送された容器に入れられた加湿水の使用期限が経過した場合には、インキュベータと細胞操作チャンバとの間に設けられた連結ボックスから容器を取り出すステップを、さらに備えている。
ここでは、インキュベータ内へ搬送された加湿水の使用期限が切れた場合において、インキュベータ側から搬送されてきた容器を、連結ボックスに設けられた開口部から取り出す。
【0026】
これにより、細胞操作チャンバ側の搬出入口まで容器を搬送することなく、インキュベータに隣接された連結ボックスから容器を取り出すことができる。
(発明の効果)
本発明に係るインキュベータによれば、培養空間内の加湿に用いられる水の無菌状態を十分に担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るインキュベータを含む細胞培養システムの全体構成を示す正面図。
【図2】図1の細胞培養システムに含まれるインキュベータの内部の構成を示す正面図。
【図3】図1の細胞培養システムに含まれるインキュベータの内部の構成を示す側面図。
【図4】図1の細胞培養システムに含まれるインキュベータの内部の構成を示す上面図。
【図5】図1の細胞培養システムに含まれるインキュベータの内部に設けられる加湿水が入れられた容器の受け渡し位置および加湿位置の周辺に構成を示す斜視図。
【図6】図1の細胞培養システムに含まれる連結ボックス内の構成を示す斜視図。
【図7】(a)および(b)は、容器が載せられる大・小トレイの構成を示す平面図。(c)は、加湿水容器が載せられるトレイの構成を示す平面図。
【図8】(a)~(c)は、各種容器の種別を判別する容器検知部の構成を示す模式図。
【図9】(a)~(c)は、図8(a)等に示すトレイを持ち上げるインキュベータ内に設けられた搬送部の先端に装着される爪部材の構成を示す平面図、側面図、正面図。
【図10】図1の細胞培養システムにおける加湿水の供給方法の流れを示すフローチャート。
【図11】図1の細胞培養システムにおける加湿水の交換方法の流れを示すフローチャート。
【図12】本発明の他の実施形態に係る細胞培養システムの全体構成を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態に係るインキュベータ3を備えた細胞培養システム1について、図1~図11を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明において登場する清浄空間には、滅菌または除染された空間や、清浄度の高いクリーンルーム等が含まれる。同様に、無菌処理された加湿水は、水中に含まれる菌が0の無菌水に限定されるものではなく、許容範囲内の数の菌を含む水も含まれるものとする。
(細胞培養システム1全体の構成)
本実施形態に係る細胞培養システム1は、清浄操作空間S1内において前処理された細胞の培養を行うシステムであって、図1に示すように、アイソレータ(細胞操作チャンバ)2と、インキュベータ3と、連結ボックス4と、を備えている。

【0029】
(アイソレータ2)
アイソレータ2は、細胞操作チャンバの一例であって、図1に示すように、外気と隔離された清浄操作空間S1を内部に形成している。
清浄操作空間S1は、アイソレータ2の上部および下部に設置されたHEPAフィルタを介して流入してきた清浄空気を上から下に循環させることにより、一定レベル以上の清浄度が維持されている。
清浄度は、一般には清浄度グレードと呼ばれる指標で表される。培養細胞の処理に使用されるアイソレータ2内は、グレードAを担保することが必要であると言われている。
(i)グレードA:製品への汚染リスクを高いレベルで防ぐ必要のある作業を行う局所的な区域である。
(ii)グレードB:製品への汚染リスクを比較的高いレベルで防ぐ必要のある作業を行う多目的な区域である。
(iii)グレードC,D:製品への汚染リスクが比較的高い作業を行う区域である。

【0030】
なお、各グレードの定義については、以下を参照。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
無菌医薬品製造区域の環境モニタリング法(http://www.pmda.go.jp/public/pubcome_201012/file/028-1012.pdf)
アイソレータ2と外部空間の間には、パスボックス20が設けられている。パスボックス20には、開閉扉21を介して外部から各種物品がアイソレータ2内の清浄操作空間S1の清浄度を保ったまま搬入される。
具体的には、パスボックス20には、図示しない内部扉、エアレーションファン、エアレーションフィルタを備えている。そして、内部扉と、開閉扉21とは同時に開放できない構造になっている。

【0031】
各種物品をパスボックス20内に搬入する際には、開閉扉21を開放して各種物品を搬入した後、開閉扉21を閉鎖すると、エアレーションファンの動作によってエアレーションフィルタを介して清浄空気が流入し、パスボックス20内および各種物品の表面を清浄する。その後、内部扉が開放されて、グローブ22a,22bを介して各種物品がアイソレータ2内に搬入され、内部扉が閉鎖される。
なお、開閉扉21は、取っ手21aを有しており、ユーザは取っ手21aを持って開閉扉21を開閉する
具体的には、アイソレータ2内の清浄操作空間S1では、インキュベータ3において培養される細胞に対する培地への播種、培地交換、継代等の各種処理や、インキュベータ3内に形成される培養空間S2を加湿するために無菌処理された加湿水を所定の容器に入れる処理等が行われる。

【0032】
アイソレータ2の周囲は、グレードCまたはDの清浄度を有している。そして、アイソレータ2の周囲は、人の作業および菌の繁殖を防止するために、概ね20~25℃、かつ低湿度になる様に管理されている。アイソレータ2内の清浄空間S1も、その周囲空間に対しては密閉されているが、ほぼ同一の温度、湿度となる。
アイソレータ2内において行われる処理は、予め無菌処理された道具や容器等を用いて行われる。これらの道具、容器等は、上述したように、パスボックス20を経由して清浄空間S1の清浄度を保ったままアイソレータ2内へ搬入される。
(インキュベータ3)
インキュベータ3は、図1に示すように、連結ボックス4を介してアイソレータ2から容器に入れられた状態で開口部3a(図2参照)を介して受け取った細胞の培養を行う培養空間S2と、培養空間S2を一定の湿度範囲になるように湿度管理を行う加湿空間S3(図2参照)とを内部に形成する。インキュベータ3内の培養空間S2の温度は、例えば、ヒト細胞の場合であれば、細胞の培養を促すために、アイソレータ2内の清浄操作空間S1よりも高い温度(約37℃)であって、かつ高湿度になるように管理されている。

【0033】
なお、インキュベータ3の詳細な構成については、後段にて詳述する。
(連結ボックス4)
連結ボックス4は、アイソレータ2とインキュベータ3との間で細胞が導入された容器や各種道具等の物品を受け渡しするために設けられており、図1に示すように、アイソレータ2とインキュベータ3との間に設置されている。具体的には、連結ボックス4は、アイソレータ2の清浄操作空間S1内で前処理された細胞、および無菌処理された加湿水が入れられた容器等を、無菌状態を維持したまま、インキュベータ3の培養空間S2あるいは加湿空間S3へと受け渡す搬送機構42(図7参照)を有している。
インキュベータ3の加湿空間S3において使用済みの加湿容器10は、搬送機構42によってアイソレータ2内まで搬送される。アイソレータ2内では、加湿に使用されて減少した加湿水が補充される。あるいは、加湿容器10における菌等の繁殖の可能性をより低減するために、使用済みの加湿容器10および残っている加湿水が、一旦、パスボックス20経由で取り出されて廃棄されてもよい。この場合には、新たな加湿容器10および無菌処理済みの加湿水が搬入される。

【0034】
なお、本実施形態では、加湿容器10、培養容器11は、シャーレのような一端が開口した円筒状の容器を用いているが、容器としては他の形状を有するものであってもよい。容器の材質によっては、後述する殺菌処理を行う紫外線を通し難いものもある。このため、容器は、加湿水全体に紫外線が照射できるように、一端が大きく開口した形状を有していることが望ましい。
搬送機構42は、連結ボックス4において、アイソレータ2およびインキュベータ3の間において搬送される各種物品を受け渡す機構であって、各種容器等が上面に載置されるトレイ51~53を搬送する。搬送機構42は、回転軸42aを中心に回転可能な載置台42bを有している。これにより、開口部4bあるいは開口部4c付近において回転軸42aを中心にして載置台42bを回転させることで、アイソレータ2側、あるいはインキュベータ3側に載置台42bを近づけることができる。

【0035】
また、連結ボックス4は、アイソレータ2側から受け取った容器について、インキュベータ3へ受け渡す前の段階で容器(トレイ)の種別を判別するトレイ検知部50(図6および図8(a)~図8(c)参照)を有している。
トレイ検知部50は、図6および図8(a)~図8(c)に示すように、搬送機構42に取り付けられており、3つのセンサ部SW1~SW3を有している。
ここで、本実施形態では、アイソレータ2からインキュベータ3に対して搬送されてくる容器には、3種類の容器が用いられており、それぞれの容器ごとに異なるトレイ51~53に載せられて搬送される。具体的には、本実施形態では、図7(a)~図7(c)に示すように、培養容器用トレイ51、培養容器用トレイ52、および加湿水用トレイ53が用いられている。

【0036】
培養容器用トレイ51は、細胞が入れられる容器が載せられるトレイであって、図7(a)に示すように、本体部51aと、被検出部51ba,51bbと、把持部51cと、を有している。
本体部51aは、上部に培養容器が載せられる部分であって、内側に開口部分を有しており、平面視において略長方形状のフレーム部分によって形成されている。
被検出部51ba,51bbは、本体部51aのフレーム部分の内側における互いに対向する位置から内側に突出するように形成された突出面であって、後述するセンサ部SW1~SW3によって検出される。
把持部51cは、後述するインキュベータ3側の搬送機構32に含まれる搬送部32aの先端部に取り付けられる爪部材32b(図2等参照)が下方から挿入され、インキュベータ3内において所望の位置まで搬送される。

【0037】
培養容器用トレイ52は、細胞が入れられる容器のうち、培養容器用トレイ51よりも大きい容器、あるいは複数の容器が載せられるトレイであって、図7(b)に示すように、本体部52aと、被検出部52ba,52bbと、把持部52cと、を有している。
本体部52aは、上部に培養容器が載せられる部分であって、内側に開口部分を有しており、平面視において略長方形状のフレーム部分によって形成されている。また、本体部52aは、図7(a)に示す培養容器用トレイ51の本体部51aと比較して、長手方向における寸法が長い。
被検出部52ba,52bbは、本体部52aのフレーム部分の内側における互いに対向する位置から内側に突出するように形成された突出面であって、後述するセンサ部SW1~SW3によって検出される。具体的には、図8(a)に示すように、センサ部SW1~SW3のうち、センサ部SW1,SW2によってのみ検出される。

【0038】
被検出部52ba,52bbは、本体部52aが本体部51aよりも長手方向に長いため、図7(a)に示す培養容器用トレイ51の被検出部51ba,51bbよりも間隔が大きくなるように配置されている。
これにより、培養容器用トレイ51,52が載置された際に、被検出部51ba,51bb、被検出部52ba,52bbを検出するセンサ部SW1~SW3が異なる。具体的には、図8(b)に示すように、センサ部SW1~SW3のうち、センサ部SW1,SW3だけに検出される。よって、培養容器用トレイ51,52のいずれかが載置されているかを容易に判別することができる。
把持部52cは、図7(a)に示す培養容器用トレイ51の把持部51cと同じ大きさ・形状を有しており、後述するインキュベータ3側の搬送機構32に含まれる搬送部32aの先端部に取り付けられる爪部材32b(図2等参照)が下方から挿入され、インキュベータ3内において所望の位置まで搬送される。

【0039】
加湿水用トレイ53は、インキュベータ3の培養空間S2の湿度を所定の範囲内に維持するための加湿水が入れられた加湿容器10を、インキュベータ3内へ搬送するためのトレイであって、図7(c)に示すように、本体部53aと、把持部53cと、を有している。
本体部53aは、上面に加湿容器10が載せられる部分であって、平面視において略長方形状の平面によって形成されている。また、本体部53aは、図7(b)に示す培養容器用トレイ52の本体部52aと比較して、平面視における寸法がほぼ同じである。本体部53aは、上述した培養容器用トレイ51,52の本体部51a,52aと比較して、内側に開口部分を有していない。これにより、搬送機構42上に加湿水用トレイ53が載せられた場合には、本体部53aの裏面側全体が被検出部として機能する。

【0040】
すなわち、加湿水用トレイ53は、長手方向における寸法が培養容器用トレイ52と同等であって、本体部53aの裏面全体が全てのセンサ部SW1~SW3によって検出される。具体的には、図8(c)に示すように、センサ部SW1~SW3のうち、全てのSW1~SW3によって検出された状態となる。
これにより、培養容器用トレイ51,52、加湿水用トレイ53のいずれかが載置されているかを容易に判別することができる。よって、培養容器が誤って加湿空間S3内へ搬送され、紫外線照射によって細胞が死滅してしまう等の問題の発生を回避することができる。
把持部53cは、培養容器用トレイ51,52の把持部51c,52cと同じ大きさ・形状を有しており、後述するインキュベータ3側の搬送機構32に含まれる搬送部32aの先端部に取り付けられる爪部材32b(図2等参照)が下方から挿入され、インキュベータ3内において所望の位置まで搬送される。

【0041】
本実施形態では、以上のように、容器(トレイ)の種別を判別するためのトレイ検知部50が設けられている。
これにより、上述したように、いずれかのトレイ51~53が搬送機構42上に載置されたことをセンサ部SW1が検出状態となることで検知することができるとともに、どのトレイ51~53が載置されたかを、センサ部SW2,SW3の検出状態によって判別することができる。
なお、本実施形態では、容器(トレイ)の種別を判別する方法として、容器裏面の形状の違いと、検出センサを使用する場合を例に説明したが、容器の種別が培養物か、加湿水かを判別することができれば同様に実施可能である。
判別方法としては、例えば、容器の形状を透過光などの光学的手段を用いて検出する方法や、RFIDとその非接触読取装置やバーコードとバーコードリーダシステムを用いた培養物の検体管理システムと連携して判別する方法などがある。

【0042】
(インキュベータ3の詳細な構成)
本実施形態のインキュベータ3は、図2に示すように、上述したアイソレータ2において前処理された細胞が入れられた容器を受け取って細胞を培養する培養空間S2と、培養空間S2を所定の湿度範囲になるように維持するための加湿空間S3と、を内部に形成している。
また、インキュベータ3は、図2~図4に示すように、培養棚31a,31bと、搬送機構32と、加湿棚33と、UV照射部34と、遮蔽部材(蓋部材35a、側壁部35b)と、移動機構36と、ファン37と、を備えている。
培養棚31a,31bは、培養容器11(図4等参照)が載置される棚であって、図2に示すように、正面視において、インキュベータ3の左側面、右側面に沿って複数配置されている。

【0043】
培養棚31aは、図2に示すように、連結ボックス4側から各種容器等が搬送されてくる開口部3aが形成された側面とは反対側の側面に取り付けられており、鉛直方向に沿って複数設けられている。
培養棚31bは、培養棚31aよりも載置面積が小さい棚であって、図2に示すように、開口部3aが形成された側面における開口部3aよりも上部に鉛直方向に沿って複数設けられている。
搬送機構32は、連結ボックス4側から搬送されてくる各種容器をトレイ51~53ごと受け取って、所望の位置まで搬送する機構であって、ロボットアームとしての搬送部32a、爪部材32b、取付部32c、ガイドレール32dを有している。
搬送部32aは、鉛直方向に沿って移動可能、かつ6軸で駆動されるロボットアームであって、図2に示すように、開口部3aを介して連結ボックス4側から搬送されてくる各種容器を受け取って加湿棚33へ受け渡す受け渡し位置P1まで搬送する。また、搬送部32aは、ロボットアームの手先部分に、トレイ51~53をつかんで搬送するための爪部材32bを有している。

【0044】
爪部材32bは、図9(a)~図9(c)に示すように、本体部32ba、突起部32bb、接続部32bcを有している。
本体部32baは、図9(a)~図9(c)に示すように、略U字状の平面部材であって、接続部32baを介して搬送部32aと接続されている。
突起部32bbは、上述した各種トレイ(培養容器用トレイ51,52および加湿水用トレイ53)の把持部51c,52c,53cに形成された穴部に下方から挿入される部材であって、図9(b)および図9(c)に示すように、本体部32baの略U字状の先端部の上面から上向きに突出している。
これにより、インキュベータ3内における各種トレイ51~53の搬送は、2つの突起部32bb,32bbが各種トレイ51~53の把持部51c~53cの穴部に下方から挿入・支持された状態で行われる。

【0045】
接続部32bcは、図9(b)および図9(c)に示すように、略円柱状の部材であって、搬送部32aのロボットアームの手先部分に装着され、搬送部32aと爪部材32bとを連結する。
取付部32cは、図2に示すように、ロボットアームとしての搬送部32aを、インキュベータ3の側面(図2に示す正面に配置された側面)に取り付けるための部材であって、ガイドレール32dに沿って鉛直方向において移動する。
挿入部32caは、取付部32cの面から突出する部分であって、図2に示すように、ガイドレール32dに挿入された状態でガイドレール32dに鉛直方向に誘導される。
ガイドレール32dは、図2に示すように、鉛直方向に沿って形成された誘導溝であって、搬送部32aが取り付けられた取付部32cの挿入部32caが挿入された状態で移動することで、ロボットアームとしての搬送部32aを鉛直方向に沿って移動させることができる。なお、接続部32aを鉛直方向において移動させる機構については、説明を省略する。

【0046】
加湿棚33は、無菌処理された加湿水が入れられた加湿容器10が載置される棚であって、図2に示すように、開口部3aが形成された側面に沿って、開口部3aよりも下方に形成された加湿空間S3に配置されている。また、加湿棚33は、後述する移動機構36によって、加湿容器10の受け渡しを行う受け渡し位置P1と、加湿空間S3内に設けられた加湿位置P2との間において移動する。
UV照射部34は、加湿棚33に加湿水用トレイ53ごと載置された加湿容器10の開放部分に対して紫外線を照射して、加湿容器10に貯留された加湿水が雑菌等によって汚染されないように殺菌処理を行うために設けられている。また、UV照射部34は、図2に示すように、加湿容器10の開放側に紫外線を照射するために、加湿棚33の上方に配置されている。このため、図2に示すように、加湿棚33が鉛直方向において移動すると、UV照射部34も一緒に移動する。さらに、UV照射部34は、加湿棚33が加湿位置P2に移動した状態で、所定時間経過ごとに加湿水に対して紫外線を照射する。

【0047】
なお、紫外線の照射は、所定時間経過ごとに限らず、加湿棚33が加湿位置P2にある間は常時照射されていてもよい。
遮蔽部材(蓋部材35a、側壁部35b)は、図2に示すように、UV照射部34から照射された紫外線が直接的に加湿空間S3の外部に漏れ出すことがないように遮蔽するために設けられている。遮蔽部材は、蓋部材35aと、側壁部35bとを有している。
つまり、加湿空間S3と循環部との接続箇所となる開口へは、UV照射部34から照射された紫外線は、反射光のみが到達するように遮蔽部材は構成されている。
これにより、紫外線は度重なる反射により強度が低下し、仮に、接続箇所となる開口から紫外線が漏れ出たとしても、培養棚31a,31bに載置された培養容器内の培養物には害を与えない強度まで低下させることができる。

【0048】
なお、本実施の形態では、遮蔽部材はステンレスによって構成されているが、これに限定されるものではない。
反射による紫外線の強度をより低下させるために、例えば、アルマイト処理が施されたアルミニウム等、紫外線の反射率が低い材質を使用してもよい。これにより、漏れ出た紫外線の培養物への影響を、より一層低下させることができる。
蓋部材35aは、図2に示すように、板状の部材であって、加湿棚33の上方を覆うように、加湿棚33に対して取り付けられている。よって、蓋部材35aは、加湿棚33が移動すると、UV照射部34とともに加湿棚33と一体化して移動する。また、蓋部材35aは、その上面に、UV照射部34が配置されている。よって、UV照射部34は、板状の蓋部材35aの中央部分に形成された開口部を介して、加湿水に対して紫外線を照射する。

【0049】
側壁部35bは、図2に示すように、加湿棚33とは別に、加湿空間S3内における加湿位置P2に固定配置されている。このため、加湿棚33が加湿位置P2へ移動してくると、側壁部35bは加湿水が貯留された加湿容器10の側方を覆うことができる。
本実施形態のインキュベータ3では、以上のように、加湿位置P2においてのみUV照射部34からの紫外線の照射を行うとともに、加湿位置P2では、加湿棚33に載置された加湿容器10の上面と側方は遮蔽部材を構成する蓋部材35a、側壁部35bによって覆うことができる。
これにより、加湿空間S3内において照射された紫外線が、誤って加湿空間S3外の培養空間S2の培養棚31a,31bに載置された培養容器11に入れられた細胞に当たって細胞を死滅させてしまう等の問題の発生を防止することができる。

【0050】
移動機構36は、受け渡し位置P1と加湿位置P2との間において、加湿棚33を鉛直方向に沿って移動させる機構であって、駆動モータ36a、リンク機構36b、回転軸36c、接続部36d、および案内部36eを有している。
駆動モータ36aは、図3および図4に示すように、インキュベータ3の培養空間S2の外側に配置されており、加湿棚33を鉛直方向において移動させるための駆動力を供給する。
リンク機構36bは、図3および図4に示すように、駆動モータ36aとともに、インキュベータ3の培養空間S2の外側に配置されている。リンク機構36bは、駆動モータ36aから供給される回転駆動力を回転軸36cに対して伝達する。
回転軸36cは、図3および図4に示すように、インキュベータ3の培養空間S2の外側から内側にかけて配置されており、リンク機構36bを介して伝達された回転駆動力を受けて回転する。

【0051】
なお、回転軸36cは、同軸に配置された2つの軸部材と、それぞれを連結するカップリング部材によって構成されてもよい。
例えば、培養空間S2の内側に配置された第1の軸部材と、培養空間S2の外側に配置された第2の軸部材とを、断熱材によって覆われた空間の中で樹脂製のカップリングにて連結した構成とする。
これにより、培養空間S2の外側の環境温度が、回転軸36cを伝わって培養空間S2内の環境温度に影響を与えることを防止することができる。
接続部36dは、回転軸36cにおける培養空間S2側の端部に接続されており、回転軸36cの回転によって回動することで、加湿棚33を鉛直方向において移動させる。
案内部36eは、接続部36dの回動によって移動する加湿棚33が鉛直方向に沿って移動するように、鉛直方向に沿って形成された案内溝であって、接続部36dを鉛直方向に沿って誘導する。

【0052】
ファン37は、図2に示すように、インキュベータ3における培養空間S2の上部に配置されており、循環経路(循環部)37a(図2中の点線矢印参照)を介して、加湿空間S3内へと導かれる空気流を形成する。すなわち、ファン37によって形成された空気流は、培養空間S2の上方を通過して開口部3aが形成された側面に沿って下方へと道にかれる。そして、空気流は、図5に示すように、培養棚31bの背面側を通過した後、加湿空間S3から培養空間S2へと流れていき、インキュベータ3内を循環する。
このとき、ファン37によって形成された空気流は、加湿空間S3において、蓋部材35aと加湿容器10の開放側との間の隙間を通過して、加湿水を含む空気となり、培養空間S2へと流れていく。これにより、培養空間S2は、常に加湿された状態を維持することができるため、細胞の培養に必要な適度な湿度範囲から培養空間S2内の湿度が外れることを防止することができる。

【0053】
<加湿水の供給方法>
本実施形態のインキュベータ3は、上述した構成を備えており、以下のような手順によって、培養空間S2の湿度を維持するために無菌処理された加湿水がアイソレータ2側から供給される。
すなわち、図10に示すように、まず、ステップST1において、図1に示すように、パスボックス20を介して、無菌処理された加湿水が入った加湿水容器をアイソレータ2内へ搬入する。なお、加湿水容器は、ボトル状のものであってもよいし、密閉されたパック状のものであってもよい。
次に、ステップST2において、アイソレータ2の清浄操作空間S1内において、グローブ22a,22bを介して、加湿水容器から加湿水を所定の容器(加湿容器10)へと注ぐ。

【0054】
次に、ステップST3において、加湿水が入れられた加湿容器10を加湿水用トレイ53上に載置した後、連結ボックス4へと引き渡す。なお、ステップST3における加湿容器10の引渡しは、アイソレータ2とインキュベータ3との間の連結ボックス4内に設けられた搬送機構を用いて行われてもよいし、グローブ22a,22bを介してユーザの手によって行われてもよい。
また、搬送機構を用いる場合は、加湿水をアイソレータ2内でこぼす危険性を最小限とするため、搬送機構に加湿水用トレイ53および加湿容器10を載置した状態で、グローブ21a,21bを用いて加湿水を注いでもよい。
次に、ステップST4において、連結ボックス4内に設けられたトレイ検知部50によって、搬入された容器(トレイ)の種別が判別される。ここでは、加湿容器10を載せた加湿水用トレイ53が連結ボックス4内の搬送機構42上に載置されるため、上述したセンサ部SW1~SW3によって、加湿容器10が搬送されてきたことを検知することができる。なお、ここで検知された容器の種別は、細胞培養システム1の全体の制御を行う制御部(図示せず)へと送信される。

【0055】
次に、ステップST5において、連結ボックス4内の搬送機構42によって、加湿容器10が、加湿水用トレイ53ごとインキュベータ3側へと搬送される。具体的には、搬送機構42によってインキュベータ3側の開口部3a付近まで搬送された加湿水用トレイ53を、インキュベータ3側の搬送機構32の爪部材32bによって下方から持ち上げてインキュベータ3内の受け渡し位置P1へと搬送する。
次に、ステップST6において、搬送機構32によってインキュベータ3内における受け渡し位置P1まで搬送された加湿水用トレイ53は、加湿棚33上へ載置された後、加湿棚33が下方へと移動することで加湿位置P2へと移動する。
次に、加湿棚33が加湿位置P2へ移動すると、ステップST7において、遮蔽部材を構成する側壁部35bが加湿容器10の側方を覆う位置に相対移動する。つまり、側壁部35bは、加湿位置P2付近に固定配置されているため、加湿棚33が加湿位置P3へ移動してくることで、自動的に加湿容器10の側方を覆うことができる。よって、加湿位置P2に搬送されてきた加湿容器10の上面は蓋部材35aによって覆われ、側方は側壁部35bによって覆われる。この結果、加湿空間S3を、培養空間S2とは遮蔽された空間とすることができる。

【0056】
次に、ステップST8において、UV照射部34によって、加湿位置P2にある加湿容器10に貯留された加湿水に対して殺菌用の紫外線を所定時間経過ごとに照射する。これにより、加湿空間S3へ搬送された加湿水の無菌状態を維持することができるため、培養空間S2内が加湿によって菌等に汚染されることを防ぐことができる。
また、高頻度に紫外線の照射を行ってもよい。これにより、加湿容器10に貯留された加湿水が温められ、培養環境S2の湿度をより高く保つことができる。
ここで、以上のような工程によってインキュベータ3内へ搬送された加湿水について、所定の使用期限が経過した場合や加湿により加湿水が減少した場合等、加湿水の補充、交換が必要になった場合の補充、交換の手順について、図11のフローチャートを用いて以下で説明する。

【0057】
すなわち、図11に示すように、まず、ステップST11において、加湿水の搬入から所定の期間が経過しているか否かの判定を行う。
ここで、所定の期間とは、予め設定された加湿水の使用期限か、搬入された加湿水が加湿によって一定量以下になると予想される期間のいずれか短い方とするのが一般的である。当然、培養開始初期には、インキュベータ3内の湿度が低い状態であるので、より短時間で加湿水が減少することが予想される。よって、状況に合わせた予想期間が設定される。
ここで、上記所定期間が経過している場合には、ステップST12へと進み、加湿水の交換作業が開始される。
次に、ステップST12において、加湿水が入れられた加湿容器10を加湿水用トレイ53ごと加湿棚33とともに、加湿位置P2から受け渡し位置P1へと搬送する。

【0058】
次に、ステップST13において、インキュベータ3内に設けられた搬送機構32によって、受け渡し位置P1において、加湿水が入れられた加湿容器10を加湿水用トレイ53ごと受け取って連結ボックス4側の搬送機構42へと引き渡す。
使用済みの加湿容器10は、搬送機構42によってアイソレータ2内まで搬送される。
アイソレータ2内においては、加湿のために減少した加湿水を補充するか、より加湿容器10内での菌等の繁殖の可能性を低減するために、使用済みの加湿容器10および残っている加湿水は一旦パスボックス20経由で取り出して廃棄し、新たな容器および加湿水を搬入して加湿を継続する。
<主な特徴>
本実施形態のインキュベータ3は、図1に示すように、アイソレータ2内に形成された清浄操作空間S1において前処理が施された細胞を受け取って、細胞の培養を行う培養空間S2を内部に形成する。そして、インキュベータ3は、図2に示すように、搬送機構32と、加湿空間S3と、ファン37と、を備えている。搬送機構32は、アイソレータ2側から搬送されてくる各種物品を受け取って所定の位置へと搬送するとともに、培養空間S2内の湿度を維持するための無菌処理された加湿水が入った加湿容器10をアイソレータ2側から受け取る。加湿空間S3は、搬送機構32が受け取った加湿水が入った加湿容器10が載置される。ファン37は、加湿空間S3に載置された加湿容器10の開放側付近を通過する空気流を生成し、加湿水を含む空気を培養空間S2内において循環させる。

【0059】
これにより、加湿水がアイソレータ2内の清浄操作空間S1において開封されて加湿容器10に入れられることで、加湿水の無菌状態を維持したまま、加湿水が入れられた加湿容器10をアイソレータ2から受け取ることができる。
この結果、インキュベータの外部に取り付けられる滅菌水タンクから配管を通じてインキュベータ内へ滅菌水を供給する従来の構成と比較して、無菌状態を確実に確保した状態で、加湿水をインキュベータ3内へ搬送して培養空間S2内を加湿することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、容器の種別を判別する容器検知部を、連結ボックス内に設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。

【0060】
例えば、連結ボックスから容器を受け取るインキュベータ内に、容器検知部を設けてもよい。
この場合には、図2等に示すロボットアームの先端部分に容器検知部を設ければよい。
これにより、インキュベータ内において容器を受け取る際に、受け取った容器の種別を判別することができるため、細胞が入れられた培養容器を誤って加湿空間S3の方へ誤搬送してしまうことを防止することができるという、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
(B)
上記実施形態のでは、インキュベータ3とアイソレータ2との間に、連結ボックス4を設けた細胞培養システム1を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。

【0061】
例えば、インキュベータとアイソレータとが直接接続された細胞培養システムであってもよい。
(C)
上記実施形態では、インキュベータ3内の培養空間S2を加湿するために、ファン37によって加湿水を貯留した加湿容器10の開放側付近に流れる空気流を形成し、加湿水を蒸発させながら加湿する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、培養空間を加湿する方法としては、加湿水の近傍を通過する空気流によって蒸発を促す方法以外にも、加湿水をミスト状にして培養空間S2内へ散布したり、加湿水を含むガスを形成したりして培養空間S2内を循環させてもよい。

【0062】
(D)
上記実施形態では、インキュベータ3内において容器等を搬送する搬送機構として、ロボットアームを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、インキュベータ内における搬送は、ロボットアームに限らず、他の搬送機構を採用してもよい。
(E)
上記実施形態では、インキュベータ3の加湿空間S3における使用済みの加湿容器10は、搬送機構42によってアイソレータ2内まで搬送された後、アイソレータ2内において、無菌処理された加湿水を補充されるか、使用済みの加湿容器10および残っている加湿水が、一旦、パスボックス20経由で取り出されて廃棄される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。

【0063】
例えば、連結ボックス4の開閉扉41を介して、使用済みの加湿容器10を取り出して加湿水を廃棄してもよい。
この場合には、インキュベータ3の加湿空間S3において使用済みの加湿容器10は、連結ボックス4まで搬送され、図示しないシャッタ機構を閉鎖した状態で開閉扉41を開放した状態で、取り出される。
これにより、万が一、加湿容器10において菌等が繁殖していた場合でも、菌等が繁殖した加湿容器10がアイソレータ2へ搬送されてアイソレータ2内の清浄空間S1が汚染されてしまう危険性を最小限にすることができる。
なお、使用済みの加湿容器10が取り出された後は、吸気部16によってフィルタを介して清浄空気を連結ボックス4内に導入し、排気部18を介して排気するエアレーション動作や、除染ガス導入部(図示せず)を用いた除染動作によって、連結ボックス4内を清浄化することができる。

【0064】
その後、搬送機構42を用いて新たな加湿容器10が、インキュベータ2内の加湿空間S3に搬入されることで、加湿空間S3における加湿を継続することができる。
(F)
上記実施形態では、アイソレータ2、インキュベータ3、および連結ボックス4を含む細胞培養システム1を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、細胞培養システムの設置環境が、上述したグレードAまたはBである場合には、図12に示すように、アイソレータの代わりに、バイオハザードキャビネット(細胞操作チャンバ)102を設けた細胞培養システム101としてもよい。
この場合には、細胞培養システム101を設置する環境がグレードCまたはDであれば、アイソレータを使用する必要があるが、環境がグレードBであれば、バイオハザードキャビネット102を使用することができる。

【0065】
バイオハザードキャビネット102は、正面ガラスは開閉可能になっており、扉を所定量開けてそこから手を入れて作業を行う。作業空間S4には、HEPAフィルタ等のフィルタを介した清浄空気流が上から下に空気流が発生しており、作業空間S4内を清浄に保っている。正面ガラス付近では、さらに速い空気流によりエアカーテンが形成されているとともに、下端部で吸引動作がなされているので、扉を開けても内部から外部に物質が漏れ出ることがない。
よって、図12に示す細胞内用システム101においても、上記実施形態と同様に、加湿水をバイオハザードキャビネット102の扉から入れて、加湿水として供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のインキュベータは、培養空間内の加湿に用いられる水の無菌状態を培養物と同等以上のレベルで十分に担保することができるという効果を奏することから、培養空間内の湿度管理を行うインキュベータに対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 細胞培養システム
2 アイソレータ(細胞操作チャンバ)
2a 開口部
3 インキュベータ
3a 開口部
4 連結ボックス
4a~4c 開口部
10 加湿容器
11 培養容器
20 パスボックス
21 開閉扉
21a 取っ手
22a,22b グローブ
31a,31b 培養棚
32 搬送機構
32a 搬送部
32b 爪部材
32ba 本体部
32bb 突起部
32bc 接続部
32c 取付部
32ca 挿入部
32d ガイドレール
33 加湿棚
34 UV照射部
35a 蓋部材(遮蔽部材)
35b 側壁部(遮蔽部材)
36 移動機構
36a 駆動モータ
36b リンク機構
36c 回転軸
36d 接続部
36e 案内部
37 ファン(循環部)
37a 循環経路(循環部)
41 開閉扉
42 搬送機構
42a 回転軸
42b 載置台
43,44 ファン
50 トレイ検知部
51 培養容器用トレイ(小)
51a 本体部
51ba,51bb 被検出部
51c 把持部
52 培養容器用トレイ(大)
52a 本体部
52ba,52bb 被検出部
52c 把持部
53 加湿水用トレイ
53a 本体部
53c 把持部
102 バイオハザードキャビネット(細胞操作チャンバ)
P1 受け渡し位置
P2 加湿位置
S1 清浄操作空間
S2 培養空間
S3 加湿空間
S4 作業空間
SW1~SW3 センサ部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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