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明細書 :電気化学反応器及び複合電気化学反応器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月6日(2017.4.6)
発明の名称または考案の名称 電気化学反応器及び複合電気化学反応器
国際特許分類 C25B   9/00        (2006.01)
C25B  11/08        (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
C25B   9/10        (2006.01)
C25B   1/00        (2006.01)
C25B   9/18        (2006.01)
C25B   1/02        (2006.01)
B01D  53/22        (2006.01)
FI C25B 9/00 Z
C25B 11/08 A
C25B 11/06 A
C25B 9/10
C25B 1/00 Z
C25B 9/18
C25B 1/02
B01D 53/22
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 20
出願番号 特願2016-506467 (P2016-506467)
国際出願番号 PCT/JP2015/055968
国際公開番号 WO2015/133410
国際出願日 平成27年2月27日(2015.2.27)
国際公開日 平成27年9月11日(2015.9.11)
優先権出願番号 2014040719
優先日 平成26年3月3日(2014.3.3)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】平田 好洋
【氏名】上野 真奈
【氏名】下之薗 太郎
【氏名】鮫島 宗一郎
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査請求 未請求
テーマコード 4D006
4K011
4K021
Fターム 4D006GA41
4D006HA41
4D006JA29Z
4D006MA03
4D006MC03
4D006MC09
4D006MC54
4D006MC55
4D006MC77
4D006MC81
4D006PA03
4D006PB66
4D006PB67
4D006PC80
4K011AA30
4K011AA48
4K011BA01
4K011DA11
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA01
4K021BA08
4K021BB03
4K021BC05
4K021CA12
4K021DB04
4K021DB18
4K021DB19
4K021DB20
4K021DB36
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC13
4K021DC15
要約 電気化学反応器(20)には、ルテニウム及びイットリア安定化ジルコニアを含有するアノード電極(21)と、ニッケル及びイットリア安定化ジルコニアを含有するカソード電極(22)と、アノード電極(21)とカソード電極(22)との間に設けられ、イットリア安定化ジルコニアを含有し、酸化物イオンを透過させ、一酸化炭素の透過を妨げる電解質膜(23)と、が含まれる。
特許請求の範囲 【請求項1】
ルテニウム及びイットリア安定化ジルコニアを含有するアノード電極と、
ニッケル及びイットリア安定化ジルコニアを含有するカソード電極と、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、イットリア安定化ジルコニアを含有し、酸化物イオンを透過させ、一酸化炭素の透過を妨げる電解質膜と、
を有することを特徴とする電気化学反応器。
【請求項2】
メタン及び二酸化炭素から水素及び一酸化炭素を生成する第1の電気化学反応器と、
前記第1の電気化学反応器により生成された一酸化炭素から酸素を生成する第2の電気化学反応器と、
を有し、
前記第2の電気化学反応器は、
ルテニウム及びイットリア安定化ジルコニアを含有するアノード電極と、
ニッケル及びイットリア安定化ジルコニアを含有するカソード電極と、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、イットリア安定化ジルコニアを含有し、酸化物イオンを透過させ、一酸化炭素の透過を妨げる電解質膜と、
を有することを特徴とする複合電気化学反応器。
【請求項3】
前記第1の電気化学反応器と前記第2の電気化学反応器との間に設けられ、前記第1の電気化学反応器により生成された水素及び一酸化炭素を互いに分離する分離膜を有することを特徴とする請求項2に記載の複合電気化学反応器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学反応器及び複合電気化学反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果を有する二酸化炭素の増加による地球温暖化が、世界的な問題となっている。植物の光合成プロセスは理想的だが、これに基づく工業的システムの実用化には未だ至っていない。植物の光合成プロセスは(1)式で表され、COがブドウ糖として固定化されるとき、酸素ガス及び水が放出される。
12HO+6CO+光エネルギ→C12(ブドウ糖)+6HO+6O・・・(1)
【0003】
また、メタノールを含む水溶液中にCOを吹き込んで電解を行うと、水素、メタン、エチレン、エタン、CO、ギ酸メチル等が生成することが報告されている。
【0004】
また、人工的に二酸化炭素や一酸化炭素から酸素ガスを生成することを目的とした技術が特許文献1に記載されている。この技術によれば所期の目的は達成されるものの、高い効率で酸素ガスを得ることは困難である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2013-173980号公報
【特許文献2】特許第5376381号公報
【特許文献3】特開昭62-36005号公報
【特許文献4】特開昭62-36006号公報
【特許文献5】国際公開第2009/157454号
【0006】

【非特許文献1】Electrolytic reduction of carbon dioxide to formic acid, K. S. Udupa, Gs Subraman, H. V. K. Udupa, Electrochim. Acta, vol. 16, pp. 1593-1598 (1971)
【非特許文献2】Electroreduction of carbon-dioxide by metal phthalocyanines, N. Furuya, S. Koide, Electrochim. Acta, vol. 36, pp.1309-1313 (1991)
【非特許文献3】Electrocatalytic formation of CH4 from CO2 on a Pt gas diffusion electrode, K. Hara, T. Sakata, J. Electrochem. Soc., vol. 144, pp. 539-545 (1997)
【非特許文献4】High-rate gas-phase CO2 reduction to ethylene and methane using gas-diffusion electrodes, R. L. Cook, R. C. Macduff, A. F. Sammells, J. Electrochem. Soc., vol. 137, pp. 607-608 (1990)
【非特許文献5】The electrochemical reduction of aqueous carbon-dioxide to methanol at molybdenum electrodes with low overpotentials, D. P. Summers, S. Leach, K. W. Frese, J. Electroanal. Chem., vol. 205, pp. 219-232 (1986)
【非特許文献6】Electrochemical decomposition of CO2 and CO gases using porous yttria-stabilized zirconia cell, Y. Hirata, M. Ando, N. Matsunaga, S. Sameshima, Ceramics International, vol. 38, pp. 6377-6387 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、二酸化炭素や一酸化炭素から酸素ガスを高い効率で生成することができる電気化学反応器及び複合電気化学反応器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気化学反応器は、ルテニウム及びイットリア安定化ジルコニアを含有するアノード電極と、ニッケル及びイットリア安定化ジルコニアを含有するカソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、イットリア安定化ジルコニアを含有し、酸化物イオンを透過させ、一酸化炭素の透過を妨げる電解質膜と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る複合電気化学反応器は、メタン及び二酸化炭素から水素及び一酸化炭素を生成する第1の電気化学反応器と、前記第1の電気化学反応器により生成された一酸化炭素から酸素を生成する第2の電気化学反応器と、を有し、前記第2の電気化学反応器は、ルテニウム及びイットリア安定化ジルコニアを含有するアノード電極と、ニッケル及びイットリア安定化ジルコニアを含有するカソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に設けられ、イットリア安定化ジルコニアを含有し、酸化物イオンを透過させ、一酸化炭素の透過を妨げる電解質膜と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適切な電解質膜を間に挟んだアノード電極及びカソード電極での電気化学反応により、人工的に二酸化炭素や一酸化炭素から酸素ガスを高い効率で生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る電気化学反応器の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、アノード電極用の粉体を作製する方法を示す図である。
【図3】図3は、カソード電極用の粉体を作製する方法を示す図である。
【図4】図4は、電解質膜を作製する方法を示す図である。
【図5】図5は、アノード電極用の粉体、カソード電極用の粉体、及び電解質膜を一体化させる方法を示す図である。
【図6】図6は、実験で用いた電気化学反応システムの構成を示す図である。
【図7】図7は、第1の実験でのCO分解率を示すグラフである。
【図8】図8は、第1の実験においてアノード電極及びカソード電極のX線回折法による分析の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、第2の実験での出口ガスの成分の変化を示すグラフである。
【図10】図10は、第3の実験での出口ガスの成分の変化を示すグラフである。
【図11】図11は、第3の実験でのCO分解率と出口ガス割合の計算値を示すグラフである。
【図12】図12は、Cが酸化される反応における標準ギブス自由エネルギ変化(ΔG)を示すグラフである。
【図13】図13は、析出したCと実験に使用したガス量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電気化学反応器の構成を示す模式図である。

【0013】
本実施形態に係る複合電気化学反応器1には、図1に示すように、電気化学反応器10、分離膜30、仕切り板31、及び電気化学反応器20が含まれている。

【0014】
電気化学反応器10では、アノード電極11とカソード電極12との間に、ガドリニウム固溶セリア(GDC:gadolinium-doped ceria)の電解質膜13が挟持されている。アノード電極11は、例えばRuとGDCとの混合物の多孔質体から構成されている。カソード電極12は、例えばNiとGDCとの混合物の多孔質体から構成されている。電解質膜13は、例えばGDCの多孔質体から構成されている。GDCの組成は特に限定されないが、例えばCe0.8Gd0.21.9で表される。このようにして、電気化学反応器10が構成されている。

【0015】
分離膜30は水素を透過させ、一酸化炭素の透過を妨げる。複合電気化学反応器1が30℃~100℃程度の比較的低い温度環境下で用いられる場合、分離膜30としては、例えば、ポリモノクロロパラキシレンの膜(U.C.C)、アモルファスナイロンフィルム(Allied Chemical and Dye Co.)、芳香族四塩基酸と芳香族アミンとの共重合体のアモルファスフィルム(Du Pont)等の高分子非多孔質膜が用いられる。サイズの小さい水素分子は分子拡散により分離膜30を通過するが、一酸化炭素はサイズが大きいため、分離膜30を透過しない。複合電気化学反応器1が比較的高い温度環境下で用いられる場合、分離膜30としては、例えば、非晶質シリカフィルムが用いられる。比較的高い温度環境下では、シリカの構造中の隙間を水素分子が拡散できるため、水素分子は分離膜30を通過するが、一酸化炭素はサイズが大きいため、シリカの構造中の隙間を拡散せず、分離膜30を透過しない。仕切り板31は、水素の透過を妨げる。仕切り板31としては、気体の透過を妨げる板が用いられる。

【0016】
電気化学反応器20では、アノード電極21とカソード電極22との間に、イットリア安定化ジルコニア(YSZ:yttria-stabilized zirconia)の電解質膜23が挟持されている。アノード電極21は、例えばRuとYSZとの混合物の多孔質体から構成されている。カソード電極22は、例えばNiとYSZとの混合物の多孔質体から構成されている。また、電解質膜23は、例えばYSZから構成されている。また、例えば電解質膜23は緻密であることが好ましい。つまり、電解質膜23に閉気孔があっても、開気孔又は連通孔はないことが好ましい。YSZの組成は特に限定されないが、例えばYの割合が8mol%、ZrOの割合が92mol%であり、Y0.15Zr0.851.93で表される。電解質膜23の厚さは、例えば40μm程度である。ここでいう厚さとは、アノード電極21とカソード電極22とを結ぶ方向における寸法である。このようにして、電気化学反応器20が構成されている。

【0017】
ここで、本実施形態に係る複合電気化学反応器1の動作について説明する。電気化学反応器10及び20は、例えば、アノード電極11とカソード電極22とが、分離膜30を間に挟んで対向するように管2に入れられて使用される。電気化学反応器10では、アノード電極11とカソード電極12との間に1V~5V程度の電圧が印加され、電気化学反応器20では、アノード電極21とカソード電極22との間に1V~8V程度の電圧が印加される。また、例えば、電気化学反応器10の温度は700℃~800℃程度とされ、電気化学反応器20の温度は800℃程度とされる。

【0018】
カソード電極12に向けてメタン(CH)及び二酸化炭素(CO)を含む原料ガスが供給されると、カソード電極12において、(11)式に示す二酸化炭素の還元反応が生じる。
CO+2e→CO+O2-・・・(11)

【0019】
この還元反応で生じた酸化物イオン(O2-)は一酸化炭素(CO)及びメタン(CH)と共に電解質膜13を透過し、アノード電極11まで到達する。そして、酸化物イオン(O2-)及びメタン(CH)がアノード電極11に到達すると、アノード電極11において、(12)式に示すメタンの酸化反応が生じる。
CH+O2-→CO+2H+2e・・・(12)

【0020】
(11)式及び(12)式より、電気化学反応器10における全反応の反応式は、(13)式で表わされる。
CO+CH→2H+2CO・・・(13)

【0021】
このように、電気化学反応器10により、二酸化炭素及びメタンから水素及び一酸化炭素が生成される。

【0022】
電気化学反応器10により生成された水素及び一酸化炭素のうち水素は分離膜30を透過するが、仕切り板31を透過できず、例えば管2の外部に排出され、収集される。一方、一酸化炭素は分離膜30を透過できないが、バイパス部32を通じて電気化学反応器20のカソード電極22に供給される。

【0023】
カソード電極22に向けて一酸化炭素が供給されると、カソード電極22において、(21)式、(22)式に示す反応が生じる。
Ni+CO→NiO+C・・・(21)
NiO+2e→Ni+O2-・・・(22)

【0024】
従って、カソード電極22では、(23)式に示す一酸化炭素の還元反応が生じることとなる。
CO+2e→C+O2-・・・(23)

【0025】
この還元反応で生じた酸化物イオン(O2-)は電解質膜23を透過し、アノード電極21まで到達する。そして、酸化物イオン(O2-)がアノード電極21に到達すると、アノード電極21において、(24)式、(25)式に示す反応が生じる。
2O2-→O+4e・・・(24)
Ru+2O-→RuO+4e・・・(25)

【0026】
ここで、(24)式の反応割合をx(0≦x≦1)とすると、(25)式の反応割合は(1-x)となる。従って、反応割合xを考慮すると、(24)式、(25)式の反応は(24´)式、(25´)式で表わされる。アノード電極21では、(24´)式と(25´)式との和より(26)式に示す反応が生じることとなる。
2xO2-→xO+4xe・・・(24´)
(1-x)Ru+2(1-x)O2-→(1-x)RuO+4(1-x)e・・・(25´)
2O2-+(1-x)Ru→xO+(1-x)RuO+4e・・・(26)

【0027】
(23)式及び(26)式より、電気化学反応器20では、(27)式に示す反応が生じる。
2CO+(1-x)Ru→2C+xO+(1-x)RuO・・・(27)

【0028】
このようにして、電気化学反応器20を用いて酸素ガスを製造することができる。

【0029】
そして、電気化学反応器10及び電気化学反応器20を含む複合電気化学反応器1では、(28)式に示す反応が生じる。
CO+CH→2H+2C+O・・・(28)

【0030】
つまり、複合電気化学反応器1を用いれば、メタン及び二酸化炭素から水素及び酸素を製造することができる。例えば、水素は燃料電池の燃料に用いることができる。

【0031】
メタンとしては天然ガス及びバイオガス等に含まれたものを用いることができる。本実施形態は、バイオガスの利用に特に好適である。これは、バイオガスは50体積%~70体積%のメタン及び30体積%~50体積%の二酸化炭素を含有していることが多いからである。つまり、バイオガスはカソード電極22に供給するメタンのみならず二酸化炭素をも含有しているからである。

【0032】
電気化学反応器20は電気化学反応器10から分離して用いることもできる。そして、電気化学反応器20のカソード電極22に向けて二酸化炭素が供給されると、カソード電極22において、(31)式、(32)式に示す反応が生じる。
Ni+CO→NiO+CO・・・(31)
NiO+2e→Ni+O2-・・・(32)

【0033】
従って、カソード電極22では、(33)式に示す二酸化炭素の還元反応が生じることとなる。
CO+2e→CO+O2-・・・(33)

【0034】
二酸化炭素が供給された場合に、カソード電極22において、(34)式、(35)式に示す反応が生じることもある。
2Ni+CO→2NiO+C・・・(34)
2NiO+4e→2Ni+2O2-・・・(35)

【0035】
この場合、カソード電極22では、(36)式に示す二酸化炭素の還元反応が生じることとなる。
CO+4e→C+2O2-・・・(36)

【0036】
ここで、(33)式の反応割合をy(0≦y≦1)とすると、(36)式の反応割合は(1-y)となる。従って、反応割合yを考慮すると、(33)式、(36)式の反応は(33´)式、(36´)式で表わされる。アノード電極21では、(33´)式と(36´)式との和より(37)式に示す反応が生じることとなる。
yCO+2ye→yCO+yO2-・・・(33´)
(1-y)CO+4(1-y)e→(1-y)C+2(1-y)O2-・・・(36´)
CO+2(2-y)e→yCO+(1-y)C+(2-y)O2-・・・(37)

【0037】
この還元反応で生じた酸化物イオン(O2-)は電解質膜23を透過し、アノード電極21まで到達する。そして、酸化物イオン(O2-)がアノード電極21に到達すると、アノード電極21において、(38)式に示す反応が生じる。
2O2-+(1-x)Ru→xO+(1-x)RuO+4e・・・(38)

【0038】
(37)式及び(38)式より、電気化学反応器20では、(39)式に示す反応が生じる。
2CO+(1-x)(2-y)Ru→2yCO+2(1-y)C+x(2-y)O+(1-x)(2-y)RuO・・・(39)

【0039】
このようにして、電気化学反応器20を用いて酸素ガスを製造することができる。

【0040】
次に、電気化学反応器20を製造する方法について説明する。

【0041】
先ず、アノード電極21用の粉体及びカソード電極22用の粉体を作製する。図2は、アノード電極21用の粉体を作製する方法を示す図であり、図3は、カソード電極22用の粉体を作製する方法を示す図である。

【0042】
アノード電極21用の粉体の作製では、図2に示すように、先ず、塩化ルテニウム水和物の粉体及びYSZの粉体をルテニウム量に換算してRu:YSZ=30:70の体積比で混ぜ合わせる。次いで、この混合物の固体含有量が30体積%になるように再蒸留水で分散させた懸濁液(サスペンション)を作製し、13MのNHOH溶液を用いてサスペンションのpHを、例えば10に調整する。その後、サスペンションの凍結乾燥を行い、800℃で1時間の仮焼及び1000℃で2時間の仮焼を空気中で行う。このようにして、アノード電極21用の粉体としてRuO-YSZ粉体が得られる。

【0043】
カソード電極22用の粉体の作製では、図3に示すように、先ず、1.4Mの硝酸ニッケル六水和物水溶液にYSZの粉体をニッケル量に換算してNi:YSZ=30:70の体積比で混ぜ合わせ、この混合物の懸濁液(サスペンション)を作製する。その後、サスペンションの凍結乾燥を行い、600℃で1時間の仮焼及び1000℃で2時間の仮焼を空気中で行う。このようにして、カソード電極22用の粉体としてNiO-YSZ粉体が得られる。

【0044】
また、電解質膜23を作製する。図4は電解質膜23を作製する方法を示す図である。電解質膜23の作製では、YSZの粉体を固体含有量が20体積%になるように、トルエン及びイソプロパノールの混合溶液中に分散させて、懸濁液(サスペンション)を作製する。混合溶液におけるトルエンとイソプロパノールとの体積比は、例えば1:2とする。次いで、サスペンションに、粉体に対して9質量%のポリエチレングリコール(可塑剤)及び5質量%のポリビニルブチラール(結合剤)を加える。その後、サスペンションを24時間、撹拌する。そして、撹拌後のサスペンションを用いてドクターブレード法によりYSZ膜を形成する。ドクターブレード法によるYSZ膜の形成では、例えば、前ブレードを80μm、後ブレードを150μm、送り速度を50mm/分、乾燥時間を1週間とする。

【0045】
次に、アノード電極21用の粉体、カソード電極22用の粉体、及び電解質膜23を一体化させる。図5は、アノード電極21用の粉体、カソード電極22用の粉体、及び電解質膜23を一体化させる方法を示す図である。

【0046】
先ず、電解質膜23とカソード電極22用のNiO-YSZ粉体とを互いに積層し、50MPaで1分間の一軸加圧成形及び100MPaで1分間の等方加圧成形によりペレット状の積層体を作製する。次いで、積層体を空気中、1400℃で4時間、共焼結して共焼結体を作製する。その後、アノード電極21用のRuO-YSZ粉体を90体積%エタノール-10体積%ポリエチレングリコール混合溶液中に固体含有量が15体積%となるように分散させてサスペンションを作製し、このサスペンションを共焼結体の電解質膜23の表面にスクリーン印刷する。続いて、900℃で1時間、焼き付けを行う。このようにして、アノード電極21、カソード電極22及び電解質膜23を備えた電気化学反応器20を製造することができる。

【0047】
次に、本発明者らが行った実験について説明する。

【0048】
(第1の実験)
第1の実験では、図6に示すように、上記の実施形態と同様の構成の電気化学反応器20を有する電気化学システムを構築し、この電気化学システムを用いて電気化学反応器20の特性の調査を行った。ここでは、YSZの粉体として、東ソー株式会社製の純度が99.9質量%超の8mol%Y-92mol%ZrO(Y0.15Zr0.851.93)の粉体を用いた。

【0049】
電気化学反応器20は、上記の実施形態と同様の方法で作製した。そして、ガラスシール123を介して電気化学反応器20をアルミナホルダ121及び122内に挿入した。なお、アルミナホルダ121及び122の間にガラスリング124を介在させた。アルミナホルダ121の下端にガラスシール125を介して磁製管127を繋ぎ、アルミナホルダ122の上端にガラスシール126を介して磁製管129を繋いだ。また、アルミナホルダ121の下端にガスが通流する開口部を設け、アルミナホルダ122の上端にもガスが通流する開口部を設けた。そして、これら開口部を介して、直流電源131に接続された白金線133、及び電流計132に接続された白金線134を、アノード電極21及びカソード電極22に接続した。なお、アノード電極21への白金線133及び134の接続には白金メッシュ136及び白金ペーストを用い、カソード電極22への白金線133及び134の接続には白金メッシュ135及び白金ペーストを用いた。磁製管127の内側の空間を二分する磁製管128を設け、磁製管129の内側の空間を二分する磁製管130を設けた。

【0050】
アルミナホルダ121及び122並びに磁製管127~130には、株式会社ニッカトー製のHB(成分:40.6質量%SiO、56.2質量%Al、0.2質量%TiO、0.5質量%Fe、0.2質量%CaO、0.1質量%MgO、0.5質量%NaO、1.7質量%KO)を用いた。そして、電気化学システムの組み立てに当たっては、電気化学反応器20とアルミナホルダ121及び122並びに磁製管127~130との封着のために、870℃に15分間保持した。その後、カソード電極22内の酸化ニッケル及びアノード電極21内の酸化ルテニウムを還元するために、800℃まで降温した後に、カソード電極22側及びアノード電極21側に水を含ませた水素(97体積%H、3体積%HO)を100ml/分で供給し、24時間、保持した。還元の後、電気化学反応器20の内部に残留しているHを除去するためにArを100ml/分で1時間供給した。

【0051】
そして、800℃で、10体積%CO-90体積%Arガスを磁製管128の内側を通じて5ml/分でカソード電極22に供給し、Arガスを磁製管130の内側を通じて20ml/分でアノード電極21に供給した。また、直流電源131によりアノード電極21とカソード電極22との間に1.0V~8.0Vの電圧を印加し、磁製管127と磁製管128との間を通じて排出されるガスの組成、磁製管129と磁製管130との間を通じて排出されるガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。

【0052】
この結果を図7に示す。図7中の縦軸はCO分解率を示している。CO分解率は、COの分解反応(2CO→2C+O)に由来するアノード電極21でのOガスの生成量から求めた。印加電圧が1.0Vの場合のCO分解率は、9%~15%であった。一方、印加電圧を2.0V以上に増加させると、分解率は急激に増加し、ばらつきはあるものの長時間にわたり67%~100%に達した。電気化学反応器20を流れた電流は印加電圧に依らず検出限界値の1.1Aを示したが、実際には印加電圧の増加と共に電流も増加していると考えられる。

【0053】
この分解実験を行った後には、カソード電極22の表面及びアノード電極21の表面のX線回折分析を行った。この結果を図8に示す。図8(a)はカソード電極22の表面の分析結果を示し、図8(b)はアノード電極21の表面の分析結果を示す。カソード電極22には、YSZ、Ni及びPtの存在が確認された。アノード電極21には、YSZ、Ru、RuO及びPtの存在が確認された。輸送された一部のO2-イオンによって、RuがRuOへ酸化されたことが分かる。また、カソード電極22の断面を電子線プローブマイクロアナライザーで測定したところ、平均で4.76質量%(表面近傍で0.315重量%、中央で1.67重量%、電解質膜との界面近傍で12.30重量%)の炭素の析出が確認された。

【0054】
以上の実験結果より、上記の(21)式~(27)式の反応が生じていることが裏付けられた。すなわち、COがNi及びRuと電気化学的に反応し、その結果、C、O、及びRuOが生成された。なお、図7のCO分解率は反応割合xが1の場合に相当する値である。

【0055】
(第2の実験)
第2の実験では、第1の実験で用いた電気化学システムと同様のものを作製した。そして、800℃で、COガスを磁製管128の内側を通じて5ml/分でカソード電極22に供給し、Arガスを磁製管130の内側を通じて20ml/分でアノード電極21に供給した。また、直流電源131によりアノード電極21とカソード電極22との間に1.0V~8.0Vの電圧を印加し、磁製管127と磁製管128との間を通じて排出されるガスの組成、磁製管129と磁製管130との間を通じて排出されるガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。

【0056】
この結果を図9に示す。図9(a)はカソード電極22側のガスの割合を示し、図9(b)はアノード電極21側のガスの割合を示す。カソード電極22側では、COの割合が92%~94%程度であった。つまり、COの割合が6%~8%程度減少し、COガスの割合が6%~8%程度増加していた。この傾向は印加電圧に依存しなかった。アノード電極21側でのOガス割合は2%~9%であった。これらの結果は、COがCO及びOに分解したことを示している。つまり、「CO→CO+1/2O」で表される反応が生じたことを示している。また、COの分解で生成したCOガス及びOガスが完全に分離されたことも示している。電気化学反応器20を流れた電流は印加電圧に依らず検出限界値の1.1Aを示したが、実際には印加電圧の増加と共に電流も増加していると考えられる。

【0057】
この分解実験を行った後には、カソード電極22の表面及びアノード電極21の表面のX線回折分析を行った。この結果、カソード電極22には、YSZ、Ni及びPtの存在が確認された。アノード電極21には、YSZ、Ru、RuO及びPtの存在が確認された。輸送された一部のO2-イオンによって、RuがRuOへ酸化されたことが分かる。また、カソード電極22の断面を電子線プローブマイクロアナライザーで測定したところ、平均で1.16質量%(表面近傍で1.24重量%、中央で0.711重量%、電解質膜との界面近傍で1.55重量%)の炭素の析出が確認された。

【0058】
ここで、COのカソード電極22での反応について考察する。カソード電極22で生じると考えられる反応として(41)式と(42)式の反応が挙げられる。
CO→CO+1/2O・・・(41)
CO→C+O・・・(42)

【0059】
これら各式の反応割合をそれぞれs、tとすると、未反応のCOの割合は「1-s-t」、生成したCOの割合は「s」、生成したOの割合は「s/2+t」と表せる。また、(43)式と(44)式の定義をすると、(45)式と(46)式が得られる。
[CO]/([CO]+[CO])=s/(1-t)=A・・・(43)
[O]/([Ar]+[O])=s/2+t=B・・・(44)
s=2A(B-1)/(A-2)・・・(45)
t=(A-2B)/(A-2)・・・(46)

【0060】
これらの式に図9に示す結果から得られる値を代入すると、sの値は6.5~7.3%であり、1.0-8.0Vの印加電圧に無関係であった。tの値は1.0Vでほぼ0%であり、2.0-8.0Vの範囲で約3%に増加した。以上の実験結果より、COの生成が1.0-8.0Vの電圧範囲で支配的な反応である。一方で、炭素析出には1.0Vより大きな電圧が必要である。

【0061】
(第3の実験)
第3の実験では、第1の実験で用いた電気化学システムと同様のものを作製した。そして、800℃で、10体積%CO-90体積%Arガス及びCOガスを磁製管128の内側を通じて50ml/分でカソード電極22に供給し、Arガスを磁製管130の内側を通じて20ml/分でアノード電極21に供給した。また、直流電源131によりアノード電極21とカソード電極22との間に8.0Vの電圧を印加し、磁製管127と磁製管128との間を通じて排出されるガスの組成、磁製管129と磁製管130との間を通じて排出されるガスの組成をガスクロマトグラフィーで分析した。なお、混合ガス中のCOガスの割合を25体積%、50体積%、75体積%の順に変化させた。

【0062】
この結果を図10に示す。図10(a)はカソード電極22側のガスの割合を示し、図10(b)はアノード電極21側のガスの割合を示す。アノード電極21側では、2%~10%のOガスが検出された。COガスの割合を25体積%、75体積%とした場合にカソード電極22側の出口ガスの組成が供給ガスの組成に近かった。一方、COガスの割合を50%とした場合には、カソード電極22側の出口ガスのCOガスの濃度が増加し、COガスの濃度が減少した。電気化学反応器20を流れた電流は印加電圧に依らず検出限界値の1.1Aを示したが、実際には印加電圧の増加と共に電流も増加していると考えられる。

【0063】
この分解実験を行った後には、カソード電極22の表面及びアノード電極21の表面のX線回折分析を行った。カソード電極22には、YSZ、Ni及びPtの存在が確認された。アノード電極21には、YSZ、RuO及びPtの存在が確認された。輸送された一部のO2-イオンによって、RuがRuOへ酸化されたことが分かる。また、カソード電極22の断面を電子線プローブマイクロアナライザーで測定したところ、平均で0.185質量%(表面で0.131重量%、中央で0.234重量%、電解質膜との界面近傍で0.190重量%)の炭素の析出が確認された。

【0064】
ここで、CO及びCOのカソード電極22での反応について考察する。カソード電極22で生じると考えられる反応として(47)式~(50)式の反応が挙げられる。
CO→CO+1/2O・・・(47)
CO→C+O・・・(48)
CO+C→2CO・・・(49)
CO→C+1/2O・・・(50)

【0065】
これら各式の反応割合をそれぞれs、t、u、vとし、供給したCOの組成をA、供給したCOの組成をBとすると、CO、CO、Oの出口ガス割合は(51)、(52)、(53)式でそれぞれ表せる。
f(CO)=B(1-s-t-u)/(A(1-v)+B(1-t-u))・・・(51)
f(CO)=(A(1-v)+B(s+2u))/(A(1-v)+B(1-t-u))・・・(52)
f(O)=B(s/2+t)+Av/2・・・(53)

【0066】
ここで、測定された炭素析出量が小さいことから、u=Av/Bを仮定した。また、前述のCO分解実験に基づき、s~0.07,t~0.03を用いる。図11は(a)COの分解率(v)及び(b)カソード側の出口ガス割合の計算値を示す。(51)と(52)式による計算値は実験結果を説明する。75%CO混合ガスを供給したとき、v値は0%であった。COに富む混合ガスでは、COの分解がCOの分解に比べて優勢であることを示している((47)と(48)式)。計算されたCO含有量は測定値より約7%低かった。50%CO-50%CO混合ガスでは、v値は0.06-0.18に増加した。これはCOの分解が促進されたことを示している((50)式)。生成した炭素は再びCOにより酸化され、COを生成する((49)式)。結果として、COの出口ガス割合は増加する。計算結果は上記のCOとCOガスの分解機構を反映し、測定されたCOとCOの出口ガス割合を説明する。75%CO-25%CO混合ガスでは、v値は0.15となり、ほぼ一定であった。COとCOの出口ガス割合はそれぞれ89%と11%と計算された。しかしながら、測定されたCOの出口ガス割合(~77%)は計算値よりも小さかった。この結果は、COに富む混合ガスではCOの分解((47)と(48)式)が抑制されることを示す。混合されたCOガスの一部は(49)式の析出した炭素との反応に消費される。以上の反応機構のために、COの出口ガス割合は計算値より増加する。

【0067】
図12は(49)式の反応に対する標準ギブス自由エネルギの値を示している。標準ギブス自由エネルギが実験温度(800℃)において負であり、このことは、(49)式の反応が熱力学的にも進行することを裏付けている。

【0068】
図13は析出したCと実験に使用したガス量との関係を示すグラフである。電子線プローブアナライザーの分析結果で確認された析出炭素量を、実験で使用したCO又はCO全ガス量で除すると供給ガス1mlに対する炭素析出量が導出できる。図13に示す結果から、CO分解の炭素析出量はCO分解の炭素析出量と比べて21.6倍高いといえる。また、CO及びCO混合ガス分解の炭素析出量はCO単体のときとほぼ同程度の量である。これは、COから析出したCがCOと反応し、COへ変化するためである。

【0069】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えば、電気化学反応器に関連する産業に利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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