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明細書 :抗菌性ポリマー及びその製造方法並びに用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-214630 (P2015-214630A)
公開日 平成27年12月3日(2015.12.3)
発明の名称または考案の名称 抗菌性ポリマー及びその製造方法並びに用途
国際特許分類 C08G  64/42        (2006.01)
A61L  29/00        (2006.01)
A61L  31/00        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
A01P   3/00        (2006.01)
A01N  61/00        (2006.01)
A01N  37/12        (2006.01)
A01N  33/08        (2006.01)
C08L 101/16        (2006.01)
FI C08G 64/42
A61L 29/00 C
A61L 29/00 Q
A61L 31/00 C
A61L 31/00 P
A61L 27/00 W
A61L 27/00 Y
A61L 27/00 E
A01P 3/00
A01N 61/00 D
A01N 37/12
A01N 33/08
C08L 101/16
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 41
出願番号 特願2014-097237 (P2014-097237)
出願日 平成26年5月8日(2014.5.8)
発明者または考案者 【氏名】福島 和樹
【氏名】岸 昴平
【氏名】佐々木 彩乃
【氏名】佐藤 千香子
【氏名】田中 賢
出願人 【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001508、【氏名又は名称】特許業務法人 津国
【識別番号】100078662、【弁理士】、【氏名又は名称】津国 肇
【識別番号】100131808、【弁理士】、【氏名又は名称】柳橋 泰雄
【識別番号】100116528、【弁理士】、【氏名又は名称】三宅 俊男
【識別番号】100146031、【弁理士】、【氏名又は名称】柴田 明夫
審査請求 未請求
テーマコード 4C081
4H011
4J029
4J200
Fターム 4C081AB13
4C081AB17
4C081AB32
4C081AB33
4C081AB34
4C081AC08
4C081AC09
4C081BA14
4C081BA16
4C081CA082
4C081CA202
4C081CC01
4C081DA12
4C081DA14
4C081DA15
4C081DC03
4C081DC14
4C081EA06
4H011AA02
4H011BA01
4H011BB04
4H011BB19
4H011BC18
4H011DA13
4H011DH02
4H011DH08
4H011DH18
4H011DH20
4J029AC01
4J029AC02
4J029AE06
4J029HC06
4J029KH01
4J200AA09
4J200BA08
4J200DA22
要約 【課題】有効な抗菌性を有するとともに、生体内組織や血液に接して使用した際に細胞毒性、特に溶血性が低く抑えられた生体適合性を有するポリマー材料を提供すること。
【解決手段】主鎖と、その主鎖にリンカーを介して少なくとも以下(A),(B)で特定される構造を含む側鎖部分を連結してなることを特徴とするポリマー。
(A)カチオン性基を含む構造
(B)生体適合性の発現が期待される構造
【選択図】図23
特許請求の範囲 【請求項1】
主鎖と、その主鎖にリンカーを介して少なくとも以下(A),(B)で特定される構造を含む側鎖部分を連結してなることを特徴とするポリマー。
(A)カチオン性基を含む構造
(B)生体適合性の発現が期待される構造
【請求項2】
前記カチオン性基が、第1級~第4級アンモニウム基であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記カチオン性基が、第1級アンモニウム基であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記生体適合性の発現が期待される構造が、少なくとも1つのエーテル基を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記主鎖が、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマー又はそれらの共重合体であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記主鎖が、生分解性ポリマーである請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
一般式(I):
【化21】
JP2015214630A_000023t.gif

(式中、
X及びX’は、互いに独立して-O-、-NH-又は-CH-であり、ただし、少なくとも一方は-CH-ではなく;
Yは、式:-L-Z(式中、Zは、カチオン性基を有する側鎖部分又はカチオン性基の前駆体となる基を有する側鎖部分Zであるか、又は生体内で中間水を保持しうる基Zであり、Lは、主鎖とZとのリンカーであり、アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合もしくはウレア結合又はそれらの組み合わせを有する単位構造から選択される)で示される基であり;
Mは、水素原子、炭素数3以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;
m及びm’は、互いに独立して、0~5の整数であり、ただし、X及びX’が共に-O-のとき、m及びm’の少なくとも一方は0ではなく、また、m及びm’の和は、7以下である)
で表される環状モノマーから選択される少なくとも2種類を混合し、ここで、第1の環状モノマーはZを有し、第2の環状モノマーはZを有し、これら少なくとも2種類のモノマー化合物を混合して開環重合する工程を含むことを特徴とするポリマーの製造方法。
【請求項8】
前記第1の環状モノマーと、第2の環状モノマーとの配合比率が、モル比で1:99~99:1であることを特徴とする請求項7に記載のポリマーの製造方法。
【請求項9】
請求項1~6の何れか一項に記載のポリマーを表面の少なくとも一部に有することを特徴とする医療機器。
【請求項10】
請求項1~6の何れか一項に記載のポリマーを含むことを特徴とする抗菌剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性ポリマーに関し、特に生体内組織や血液に接して使用した際に生体適合性を示すポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質の普及は感染症による被害を著しく改善してきたが、その乱用による多剤耐性菌の出現など、既存の抗生物質では対応が困難な新たな問題が生じている。また、臓器移植手術などのために免疫抑制剤の投与を受けた患者や、加齢による免疫機能が低下した高齢者にとっては、人口心臓弁やカテーテルなど体内へ挿入された人工材料による微生物感染を起こしやすい。このような事例に対し、感染症を防ぐ新たな材料として、カチオン性ポリマーが注目されている。従来のほとんどの抗生物質は、細胞内の特定のタンパク質等を標的とするため、これらの標的となる生体分子が変異することで、細菌が容易に抵抗性を獲得することができる。対照的に、例えば、マゲイニンやセクロピンなどのカチオン性ペプチドは、正電荷を持つ両親媒性構造に基づき、細菌の細胞膜と相互作用して損傷を与えるため、耐性菌が出現しにくい抗菌活性を発現することが可能である。
【0003】
一方、これら天然の抗菌性ペプチドは製造コストが高く、大量生産が難しいため、特定の医薬用途に限定される。そこで、安価なモノマーから調製可能であり、これらの抗菌性ペプチドの物理的及び生物学的特性を模倣した、両親媒性のアリールアミドポリマーが報告されている(非特許文献1参照)。これらのうち最も抗菌活性の高いポリマーは、大腸菌やサルモネラ菌、緑膿菌等の病原性細菌に対して、50μg/mL以下の最小発育阻止濃度(MIC)を有する(非特許文献1の表2参照)。
【0004】
また、N-(t-ブトキシカルボニル)アミノエチルメタクリレートと、ブチルメタクリレートとのラジカル共重合で調製したカチオン性両親媒性のポリメタクリレート誘導体について、種々の分子量における抗菌活性及び溶血活性を調べた結果も報告されている(非特許文献2参照)。その結果、高分子量のポリマーに比べて、分子量2000以下の低分子量ポリマーが最も小さなMICと、減少した溶血活性を示した。また、ブチル基の含有量が高くなるにしたがって、溶血活性に対する選択的な抗菌活性が低下する。
【0005】
さらに、特許文献1には、開環重合により調製される生分解性カチオン性ブロックコポリマー及びその抗微生物用途での使用方法が記載されている。カチオン性の親水性ブロックと疎水性ブロックとを含む、両親媒性のブロックコポリマーは、水溶液中でナノ構造を形成することにより、カチオン性電荷及びポリマー物質の局所濃度が増加し、負に荷電した細胞壁との相互作用の増強、ひいてはより強い抗微生物活性がもたらされると考えられる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】G.N. Tew et al., PNAS 2002, vol.99, pp.5110-5114
【非特許文献2】K. Kuroda and WF. DeGrado J Am Chem Soc. 2005 127, 4128-4129
【0007】

【特許文献1】特表2013-515815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、抗菌性ペプチドの物理的及び生物学的特性を模倣して人工的に合成されるポリマーにおいて、病原性の高い大腸菌などのグラム陰性菌に対する抗菌活性を上昇させた場合には、特に赤血球の破壊による溶血性が上昇するなど血液適合性が低下することが知られている。また、当該ポリマーにおいて逆に血液・生体への安全性を向上させると、グラム陰性菌への抗菌活性は低下または失われることが多いなど、抗菌活性と血液適合性の両立は抗菌性材料の開発において常に大きな課題となっている。
【0009】
そこで本発明は、有効な抗菌性を有するとともに、生体内組織や血液に接して使用した際に細胞毒性、特に溶血性が低く抑えられた生体適合性を有するポリマー材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、以下の特徴を有する。
(1)主鎖と、その主鎖にリンカーを介して少なくとも以下(A),(B)で特定される構造を含む側鎖部分を連結してなることを特徴とするポリマー。
(A)カチオン性基を含む構造
(B)生体適合性の発現が期待される構造
(2)前記カチオン性基が、第1級~第4級アンモニウム基である(1)に記載のポリマー。
(3)前記カチオン性基が、第1級アンモニウム基である(1)に記載のポリマー。
(4)前記生体適合性の発現が期待される構造が、少なくとも1つのエーテル基を含む(1)~(3)のいずれかに記載のポリマー。
(5)前記主鎖が、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマー又はそれらの共重合体である(1)~(4)のいずれかに記載のポリマー。
(6)前記主鎖が、生分解性ポリマーである(1)~(4)のいずれかに記載のポリマー。
(7)一般式(I):
【化1】
JP2015214630A_000003t.gif

(式中、
X及びX’は、互いに独立して-O-、-NH-又は-CH-であり、ただし、少なくとも一方は-CH-ではなく;
Yは、式:-L-Z(式中、Zは、カチオン性基を有する側鎖部分又はカチオン性基の前駆体となる基を有する側鎖部分Zであるか、又は生体内で中間水を保持しうる基Zであり、Lは、主鎖とZとのリンカーであり、アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合もしくはウレア結合又はそれらの組み合わせを有する単位構造から選択される)で示される基であり;
Mは、水素原子、炭素数3以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;
m及びm’は、互いに独立して、0~5の整数であり、ただし、X及びX’が共に-O-のとき、m及びm’の少なくとも一方は0ではなく、また、m及びm’の和は、7以下である)
で表される環状モノマーから選択される少なくとも2種類の環状モノマーであって、第1の環状モノマーはZを有し、第2の環状モノマーはZを有し、これら少なくとも2種類のモノマー化合物を混合して開環重合する工程を含む、ポリマーの製造方法。
(8)前記第1の環状モノマーと、第2の環状モノマーとの配合比率が、モル比で1:99~99:1である(7)に記載の製造方法。
(9)(1)~(6)の何れかに記載のポリマーを表面の少なくとも一部に有する医療機器。
(10)(1)~(6)の何れかに記載のポリマーを含む抗菌剤。
(11)生分解性骨格を有する主鎖と、その主鎖にリンカーを介して連結した第1級アンモニウム基を含む側鎖部分とを含むポリマーを含む抗菌剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリマーは、低濃度で優れた抗菌作用を示すとともに、優れた生体適合性を示す。本発明のポリマーは、溶液状、固体状及びコーティング剤などの様々な加工処理に適用可能なため、様々な医療現場における感染症対策に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で合成した化合物(2)のH-NMRスペクトル(400MHz,CDCl)である。
【図2】実施例2で合成した化合物(3)のH-NMRスペクトル(400MHz,CDCl)である。
【図3】実施例3で合成した化合物(4)のH-NMRスペクトル(400MHz,アセトンd)である。
【図4】実施例4で合成した化合物(5)のH-NMRスペクトル(400MHz,アセトンd)である。
【図5】実施例5で合成した化合物(6)のH-NMRスペクトル(400MHz,アセトンd)である。
【図6】実施例5で合成した化合物(7)のH-NMRスペクトル(400MHz,アセトンd)である。
【図7】実施例6で合成したポリマー(8)のH-NMRスペクトル(500MHz,CDCl)である。
【図8】実施例7で合成したポリマー(10)のH-NMRスペクトル(400MHz,DMSO-d)である。
【図9】実施例11で合成したポリマー(11)のH-NMRスペクトル(500MHz,DMSO-d)である。
【図10】実施例13で合成したポリマー(12)のH-NMRスペクトル(500MHz,DMSO-d)である。
【図11】実施例14で合成したポリマー(13)のH-NMRスペクトル(400MHz,MeOH-d)である。
【図12】実施例15で合成したポリマー(14)のH-NMRスペクトル(400MHz,MeOH-d)である。
【図13】実施例16で合成したポリマー(15)のH-NMRスペクトル(500MHz,MeOH-d)である。
【図14】実施例17で合成したポリマー(16)のH-NMRスペクトル(500MHz,MeOH-d)である。
【図15】各濃度のポリマー(11)と処理した大腸菌の増殖挙動の経時変化(MIC=16mg/l)を示す。
【図16】各濃度のポリマー(12)と処理した大腸菌の増殖挙動の経時変化(MIC=16mg/l)を示す。
【図17】各濃度のポリマー(15)と処理した大腸菌の増殖挙動の経時変化(MIC=64mg/l)を示す。
【図18】各濃度のポリマー(16)と処理した大腸菌の増殖挙動の経時変化(MIC=32mg/l)を示す。
【図19】各濃度のPEIと培養した大腸菌の増殖挙動の経時変化(MIC=250mg/l)を示す。
【図20】各濃度のPEGと培養した大腸菌の増殖挙動の経時変化(MICなし)を示す。
【図21】各濃度のP/Sと培養した大腸菌の増殖挙動の経時変化(MIC=4mg/l)を示す。
【図22】各ポリマー(32mg/l)と処理した大腸菌のSEM画像を示す。
【図23】各ポリマーの溶血性試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、主鎖に対して、抗菌性が期待されるカチオン性基を含む側鎖と、生体適合性を示し得る構造を含む側鎖とを適宜の割合で連結してなるポリマーにおいて、所定の生体適合性を示しつつ抗菌性が発揮可能であることを見出したことに基づくものである。つまり、当該ポリマーが大腸菌やヒト赤血球のような生体物質(細胞)に接触した際には、カチオン性基の構造が細胞を破壊する方向で影響する一方で、当該影響を生体適合性を示す構造が抑制するという機構の存在が推察され、各構造が生体物質に影響を生じる機序は類似したレベルに存在し、両者が競合しながら生体物質に作用する関係の存在が考察される。そして、この知見を利用することで両構造を所定の割合で混在させたポリマーにより生体物質に与える影響の程度が調整可能であって、各種生体物質に対して選択性を持って対処することが可能であることが明らかにされた。
以下、本発明について具体的に説明する。
用語の定義
本発明において、以下の用語は、単独で現れるか又は組み合わせて現れるかにかかわらず、それぞれについて説明される内容を示すものとして使用される。

【0014】
本明細書において、用語「アルキル基」は、炭素原子による骨格を有する直鎖又は分岐鎖状の炭素鎖を含む、1価の飽和炭化水素基を示す。また、用語「アルキレン基」は、直鎖状の炭素鎖からなる2価の炭化水素基を示す。用語「アルキレンオキシド鎖」は、アルキレン基の末端以外の炭素原子をエーテル結合で置換した構造を示す。「低級アルキル基」又は「低級アルキレン基」は、炭素数が1~6の範囲である、上記アルキル又はアルキレン基を示す。

【0015】
用語「アルケニル」は、炭素原子による骨格中に一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖状の炭素鎖を含む、1価の飽和炭化水素基を示す。アルケニルの炭素原子の数は特に制限されないが、炭素原子数2~20が好ましく、炭素原子数2~10がより好ましく、炭素原子数2~6が最も好ましい。アルケニルの例は、エテニル(ビニル)、プロペニル、ブテニル、2-メチルプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル等を含むが、これらに限定されない。また、用語「アルキニル」は、炭素原子による骨格中に一つ以上の炭素-炭素三重結合を有する直鎖又は分岐鎖状の炭素鎖を含む、1価の飽和炭化水素基を示す。アルキニルの炭素原子の数は特に制限されないが、炭素原子数2~20が好ましく、炭素原子数2~10がより好ましく、炭素原子数2~6が最も好ましい。アルキニルの例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、2-メチルプロピニル、ペンチニル、ヘキシニル等を含むが、これらに限定されない。

【0016】
本明細書において、用語「アルコキシ」は、上記のアルキル基が酸素原子に結合した構造で、酸素原子で他の分子構造に結合している、1価の飽和炭化水素基を示す。アルコキシの炭素原子の数は特に制限されないが、炭素原子数1~20が好ましく、炭素原子数1~10がより好ましく、炭素原子数1~6が最も好ましい。アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ等を含むが、これらに限定されない。

【0017】
用語「脂環式アルキル」とは、炭素による骨格が環を形成する、1価の脂肪族環状炭化水素基を示す。脂環式アルキルは、環を形成する炭素原子の数により表現され、例えば「C3-8脂環式アルキル」というときは、環を形成する炭素原子の数が3~8個であることを示す。脂環式アルキルの例は、シクロプロピル(C)、シクロブチル(C)、シクロペンチル(C)、シクロヘキシル(C11)、シクロヘプチル(C13)、シクロオクチル(C15)等を含むが、これらに限定されない。

【0018】
用語「鎖状エーテル」又は「アルキレンオキシド」は、互換的に使用することができ、前記アルキル基中の末端以外の一つの-CH-部分がエーテル結合(-O-)で置き換えられた構造を示す。また、用語「環状エーテル」は、前記脂環式アルキルの一つの-CH-部分が、エーテル結合で置き換えられた構造を示す。

【0019】
用語「アリール基」とは、1個の環又は2個若しくは3個の縮合した環を含む芳香族置換基を示す。アリール基は6~18個の炭素原子を含むものが好ましく、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、フルオレニルおよびインダニルが挙げられる。

【0020】
用語「モノマー」又は「単量体」は、互換的に使用することができ、高分子の基本構造の構成要素となりうる、低分子量の分子をいう。モノマーは通常、例えば炭素-炭素二重結合、エステル結合のような、重合反応の反応点となる官能基を有する。

【0021】
用語「ポリマー」又は「重合体」は、互換的に使用することができ、分子量の小さいモノマーから得ることができる、モノマー単位の繰り返しで構成された構造を有する分子をいう。用語「高分子」は、ポリマーのほか、例えばタンパク質、核酸等のような多数の原子が共有結合してなる巨大分子をいう。

【0022】
ポリマーにおいて用語「平均重合度」は、1個のポリマー分子中に含まれるモノマー単位の平均数をいう。すなわち、ポリマー組成物中には、異なる長さのポリマー分子がある程度の範囲で分散して存在している。

【0023】
ポリマーの重合度に関して「数平均分子量」とは、ポリマー組成物中の分子1個あたりの分子量の平均をいい、「重量平均分子量」とは、重量に重みをつけて計算した分子量をいう。また、数平均分子量と重量平均分子量の比を分散度といい、ポリマー組成物の分子量分布の尺度となる。分散度が1に近いほど、ポリマー組成物中の平均重合度が近くなり、同じ程度の長さのポリマー鎖を多く含むことになる。

【0024】
本発明において、用語「生体適合性材料」とは、生体物質と接触した際に異物として認識されにくい材料をいう。生体適合性材料には、例えば補体活性、血栓活性、組織侵襲性等の生体に対する活性を有しない材料であれば、特定のタンパク質吸着や細胞粘着を誘導し、あるいは誘導しないような活性を示す材料を含む。本発明において用語「血液適合性材料」とは、上記生体適合性のうちで、主に血小板の付着や活性化に起因する血液凝固を惹起しない材料をいう。
人工的に合成されたポリマー等であっても、所定のポリマー等が生体物質と接触した際に異物として認識されにくい現象がこれまでに知られている。本来は生体にとって異物である物質が異物として認識されない機構は必ずしも明らかでないが、本発明者らはそのような物質の表面には共通に「中間水」と呼ばれる特殊な水和構造が存在することを明らかにしてきた。このような水和構造は生体由来の物質にも共通に観察されることから、生体物質と各種物質が接触する際に、この水和構造が介在することによって各種物質から生体物質が受ける影響が緩和・消失する機構が明らかになってきている。

【0025】
本発明において、「生分解性ポリマー」とは、加水分解、酵素分解、微生物分解等の作用により化学的に分解することが可能なポリマーをいう。生分解性ポリマーの例としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等のポリエステルやポリカーボネート等のような化学合成ポリマー、ポリペプチド、多糖類、セルロース等のような生体由来のポリマー、及びこれらの組み合わせによるポリマーが挙げられる。

【0026】
本発明において「側鎖」とは、ポリマー主鎖に結合した枝分かれ構造を示す。

【0027】
また、本発明において、「抗菌剤」とは、細菌、酵母、真菌、ウイルス及び原生生物を死滅又は増殖抑制できる物質をいい、医療用途などで求められる広義の抗菌作用を有する物質を意味する。

【0028】
本発明の一つの実施形態において、主鎖と、その主鎖にリンカーを介して連結される、少なくとも2種類の側鎖部分とを含むポリマーが提供される。本発明のポリマーを構成する主鎖は、特に限定されることなく、アルキル鎖等の疎水性骨格であってもよい。アルキル鎖を主鎖とする場合は、ポリマーに耐水溶性が付与されるため、例えば、耐水性(非水溶性)が要求される構造材料や被膜としての用途に適したポリマーとすることができる。

【0029】
一方、PEGを構成するポリオキシエチレン基のような親水性の主鎖を用いた場合には、ポリマー全体として水溶性を付与されるため、例えば、溶解した状態で生体内に投与し薬剤として使用する用途に適したポリマーとすることができる。
また、ポリマーが生分解性を有するか否か、又はその生分解性の度合いにより、生体内での存在時間を調節することができる。本発明のポリマーを抗生物質のように血中へ投与されたり、医療用材料として生体内で使用する際には、その用途に応じた期間の経過後には分解吸収されることが好ましい。多くの生分解が可能なポリマー構造が公知であり、本発明の目的に反しない範囲でこれらの生分解が可能なポリマー構造を本発明のポリマーの主鎖部分に使用することができる。合成の容易さや側鎖との連結の多様性の観点からは、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド結合、ウレタン結合もしくはウレア結合又はそれらの組み合わせを有する単位構造を含む生分解性ポリマーが好ましい。その非限定的な具体例として、以下のスキーム1に掲げる単位構造が挙げられる:
【化2】
JP2015214630A_000004t.gif

【0030】
これらの生分解性を付与する単位構造は、本発明に係る少なくとも2種類の側鎖部分との連結のために、C1-8アルキレン基を含むことができ、場合により、C1-8アルキレン基中の上記単位構造に隣接する炭素原子以外の少なくとも一つの炭素原子がN、O又はSから選択されるヘテロ原子で置き換えられているか、及び/又はC1-8アルキレン基中の水素原子が低級アルキル基で置換されている基であってもよい。このように構成されるポリマーの主鎖部分に対し、リンカーを介して側鎖部分と連結される。リンカーの構造も特に限定されるものではないが、側鎖部分の抗菌性や生体適合性を効率的に発揮させるために、アルキレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合もしくはウレア結合又はそれらの組み合わせを有する単位構造から選択されることが好ましい。

【0031】
本発明の一つの実施形態として、前記主鎖を、生分解性ポリマーと非生分解性ポリマーとの共重合体とすることができる。非生分解性ポリマーとしては、必要とする物性に応じて当業者に公知のポリマーを適宜用いることができ、その例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフルオロアルケン、ナイロン、シリコーン等が挙げられるが、これらに限定されない。非生分解性ポリマー骨格は、生分解性ポリマー骨格とブロック共重合体を形成していてもよく、生分解性ポリマーを形成するモノマー単位とランダム共重合していてもよい。また、所望の物性を得るために、複数の非生分解性ポリマーとの共重合体を形成していてもよい。

【0032】
本発明のポリマーの側鎖部分に導入される構造の1種は、そのポリマーに抗菌性を付与する目的でカチオン性基を含む。高分子カチオン性ペプチドが、細菌抵抗性を克服しうる抗菌性物質として知られている。マゲイニンやセクロピンなどのカチオン性ペプチドは、微生物中の特定の標的タンパク質を阻害する代わりに、微生物膜と相互作用し、それらの静電的相互作用に基づいて微生物膜に修復困難な損傷を引き起こす。微生物細胞膜の崩壊は、最終的に細胞死につながる。これらのペプチド表面の両親媒性構造及び抗菌性機能を模倣するいくつかのカチオン性ブロックコポリマーが報告されている(例えば、Chem. Eur. J., 2009, 15, 11715-11722、Biomacromolecules, 2009, 10, 1416-1428、Biomacromolecules, 2011, 12, 3581-3591、Biomacromolecules, 2012, 13, 1554-1563、Biomacromolecules, 2012, 13, 1632-1641)。その例としては、抗菌性ポリノルボルネン及びポリアクリレート誘導体、ポリ(アリールアミド)、ポリ(β-ラクタム)及びピリジニウムコポリマーである。本発明において、側鎖部分に存在するカチオン性基は特に限定されるものではないが、その側鎖部分への導入の容易さや、ポリマー全体での配置の制御等の観点から、第1級~第4級アンモニウム基が好ましい。

【0033】
本発明において第1級~第4級アンモニウム基とは、1つの窒素原子にそれぞれ1~4つの炭素原子が結合して陽イオンになったものをいう。ただし、複数の炭素原子は必ずしも異なる炭素原子である必要はなく、同一の炭素原子である場合を含む。例えば、ピリジニウム基やイミダゾリウム基のような不飽和の第4級アンモニウム中心を含んでもよい。第4級アンモニウム基は、水溶液中のpHとは無関係に存在し、酸性のpH条件下のみでプロトン化される低級アンモニウム基とは区別される。これに対し、第1級~第3級アンモニウム基は、水溶液中のpH条件によってその性質が変化し、中性条件下では正電荷を有する第1級~第3級アンモニウム基と、正電荷を持たないアミン基との平衡状態にあると考えられる。従って、生体内では第4級アンモニウム基に比べてよりマイルドなカチオン性基として働き、細胞毒性を抑制しながら効果的な抗菌性を発揮すると考えられる。

【0034】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記カチオン性基として、第1級アンモニウム基を側鎖部分に有するポリマーが提供される。これらのカチオン性基は、得られるポリマーの用途にもよるが、ポリマー全体において任意の割合で存在することができ、例えば、側鎖部分全体量の約1モル%~約99モル%、好ましくは、約5モル%~約75モル%、さらに好ましくは、約10モル%~約50モル%である。

【0035】
本発明のポリマーの側鎖部分には、上記カチオン性基を含む構造と共に、生体適合性の発現が期待される構造が導入される。このような生体適合性の発現が期待される構造としては、当該構造を適宜の主鎖に対する側鎖部分としたポリマーにおいて、「中間水」と呼ばれる状態の水分子が含有可能であるものを使用することができる(例えば、Tanaka, M. et al., J. Biomat. Sci. Polym. Ed., 2010, 21, 1849-1863を参照されたい)。このような生体適合性が期待される構造の具体例として、主鎖に対してリン脂質極性基を含む側鎖を有するMPCポリマーをはじめ、エーテル構造からなるPEGや、主にエーテル構造から構成される側鎖を有するポリマーであるPMEA、並びにエーテル構造及びアミド結合を有するポリアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等のような、エーテル構造、アミド結合等の親水性基を有するポリマー材料が挙げられる。
これまでの研究により、生体由来物質であるか人工的な合成物であるかによらず、生体適合性を示す物質は「中間水」を含有可能であることが明らかになっている。この中間水と呼ばれる状態の水分子が物質の表面に存在することにより生体組織中のタンパク質の非特異吸着が防止され、その結果として生体適合性を発現することが実験的に明らかにされてきている。そして、所定の物質が「中間水」を含有するためには、例えばPEGのように物質全体が「中間水」の含有に適した構造を有するものの他、アルキル鎖等を主鎖として「中間水」の含有に適した構造を側鎖として設けることによっても、全体として「中間水」を含有可能であることが明らかになっている。

【0036】
物質に含有される中間水の存在は、典型的には、過冷却後の昇温過程で見られる特異な潜熱の放出や吸収によって特徴付けられる。つまり、中間水を含有する物質においては、-100℃程度に冷却した後に室温付近まで徐々に加熱する過程で、-40℃付近において潜熱の放出が観察されたり、-10℃以上の氷点下において潜熱の吸収が観察される等、特異的な潜熱の放出や吸収が観察される。様々な検証により、これらの潜熱の放出・吸収は物質に含まれる水分子の一定割合が規則化・不規則化を生じることに起因することが明らかになっており、このような挙動を示す水分子が中間水と定義されている。中間水は、物質を構成する分子からの特定の影響により弱く拘束された水分子であると推察されるが、リン脂質等の生体物質にも含まれることが明らかになっており、生体組織中のタンパク質の非特異吸着等の防止と関連するものと考えられている。そして、生体に含まれるリン脂質極性基を側鎖として設けたPMCポリマーの他、上記PEG、PMEA、ポリアルコキシアルキル(メタ)アルキルアミド等の物質においても中間水を含有可能であることが、生体適合性の発現に関係しているものと考えられている。

【0037】
本発明において、側鎖部分に導入される生体適合性の発現が期待される構造は特に限定されるものではないが、その側鎖部分への導入の容易さや、ポリマー全体での配置の制御等の観点から、少なくとも1つのエーテル基を含む基が好ましい例として挙げられる。
本発明において、主鎖部分に上記カチオン性基を含む構造、生体適合性の発現が期待される構造を連結するリンカー部分の構造は、当該側鎖部分の構造が発揮する性質を阻害しない範囲で、製造のし易さ等を勘案して適宜決定することができる。一般的には、エステル結合をリンカーとすることが、使用するモノマーの製造の点で有効であるがこれに限定されず、例えば、エーテル結合、アミノ結合等、適宜の結合形態を採ることが可能である。
本発明に係る好ましいポリマーの一例として、従来知られる生分解性ポリマーの内、脂肪族ポリエステル系やポリアミド系のものと同様に、主鎖としてアルキレン基等をカーボネート結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合等で結合した繰り返し単位を含む主鎖を有するものが挙げられる。そして、当該アルキレン基等に含まれる炭素原子に対して所定の結合様式により、カチオン性基を含む構造として第1級~第4級アンモニウム基、及び生体適合性の発現が期待される構造としてエーテル構造を含む側鎖が導入されているものが挙げられる。

【0038】
上記第4級アンモニウム基を含むポリマー等が抗菌活性を有することや、エーテル構造を含む側鎖を有するポリマー等が生体適合性を示すことは従来から知られている。これに対し、本発明のポリマーにおいては、これらの両方を側鎖として、例えばカーボネート結合等によりアルキレン基等が結合された主鎖に対して導入することにより、生体適合性を保持しつつ併せて抗菌活性を付与可能であることを見出したことに基づく。つまり、抗菌活性を示す側鎖のみの場合には、大腸菌等に対する殺菌効果が得られる一方で、赤血球の破壊に伴う溶血等が必ずしも抑制できないのに対して、適宜の割合で生体適合性を示す構造を導入することで殺菌効果を維持したままで溶血等を防止することが可能となった。
このような現象は、第4級アンモニウム基等による大腸菌や赤血球のような生体物質(細胞)への作用の一部が、エーテル構造等に起因する中間水の含有により緩和可能であることを示すものである。そして、それぞれの構造が示す作用が相互に競合することを利用することで、溶血等の副作用を抑制しつつ標的物質を攻撃することが可能であることを示すものである。

【0039】
本発明のポリマーの重合度は特に制限されないが、重合度に応じてポリマーの平均分子量も変化し、分子量に応じて材料として使用するときの操作性等が変化する。つまり、本発明に係るポリマーを水溶性の薬剤として使用する場合には比較的小さな平均分子量とすることが好ましい一方で、非水溶性として各種基材の表面に塗布するような場合には、比較的大きな平均分子量として溶出を防止することが好ましい。一般的には、本発明に係るポリマーの平均分子量は、1000~1000000の範囲であることが好ましく、5000~800000の範囲であることがより好ましく、8000~500000の範囲であることが最も好ましい。本発明に係るポリマーの分子量分布は、特に制限されないが、1.0~10の範囲であることが好ましく、1.0~8の範囲であることがより好ましく、1.05~5.0の範囲であることが最も好ましい。

【0040】
本発明に係るポリマーの合成は、典型的にはカチオン性基を含む構造を有するモノマーと、生体適合性の発現が期待される構造を有するモノマーとの少なくとも2種類のモノマーを共重合させることにより行うことができる。ポリマーの用途及び要求される物性により使用するモノマーの種類や使用割合は適宜選択されるが、上記特性を備えた構造を有するモノマーが少なくとも1種類ずつ含まれることで、本発明のモノマーを得ることができる。重合の方法も、上記複数のモノマーを共重合することが可能であれば、用いられるモノマーの種類に応じて、カチオン重合、アニオン重合、開環メタセシス重合、リビングラジカル重合等、当業者に公知の重合方法を適宜用いることができる。
本発明に係るポリマーの具体的な合成方法の例として、例えば以下のように、重合して得られるポリマーの側鎖となる部分を予め導入した環状構造を有する少なくとも2種類のモノマーを開環重合により共重合することにより製造することができる。

【0041】
【化3】
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例えば、上記一般式(I)において、カルボニル炭素に隣接するX、X’として、CH、O、Nから選択することで、重合後のポリマーの主鎖に含まれる骨格部分として、カーボネート結合(O/O)、エステル結合(CH/O)、ウレタン結合(O/N)、アミド結合(CH/N)、ウレア結合(N/N)のいずれかが選択される。
また、m、m’として、互いに独立して0を含む整数(カーボネート結合、ウレア結合の場合には、いずれか一方は0でない)を選択することで、主鎖の骨格部分と結合されるアルキレン基部の長さが決定される。
そして、上記一般式(I)の「Y」として、リンカーLを介して、少なくとも2種類の側鎖部分Z及びZを別々に結合させた、少なくとも2種類のモノマーを用いることで、重合後のポリマーの側鎖部分にZ又はZを有する側鎖を設けることができる。ここで、Zは、カチオン性基を有する側鎖部分又はカチオン性基の前駆体となる基を有する側鎖部分であり、好ましくは、第1級~第4級アンモニウム基から選択される。一方、Zは、生体内で中間水を保持しうる基であり、好ましくは、エーテル基を含む。これらの少なくとも2種類の環状モノマーを、典型的にはカルボニル炭素に隣接する結合のいずれかで開環して相互に重合することで、本発明に係る生体適合性カチオン性ポリマーを製造することができる。側鎖部分Zは、カチオン性基の代わりに、カチオン性基の前駆体となる基を有していてもよい。例えば、第3級アミン等のアミンと反応して第4級アンモニウム基等のアンモニウム基を形成できる官能基を含んでいてもよく、又は、アミンをtert-ブトキシカルボニル(Boc)基等の保護基により保護したものを含んでいてもよい。これらの前駆体からは、重合反応後に脱保護等のさらなる処理を行ってポリマー上にカチオンを生じさせることができ、例えば、アンモニウム基に付加した脱離基を含んだままで重合し、重合後に酸加水分解してより低級のアンモニウム基を生成させることもできる。

【0042】
好ましい実施形態において、一般式(I)において、
X、X’を共に酸素原子として環状カーボネートとし、m及びm’が共に1であり、Mが、メチル基であり、
として、所定の第1級~第4級アンモニウム基及びZとして、所定のエーテル構造を結合したものを所定のモル比で混合して用いれば、当該環状カーボネートを開環重合させることにより、C=3のアルキレン基がカーボネート結合により結合された主鎖を有し、当該アルキレン基の中央の炭素原子に対して上記第1級~第4級アンモニウム基及びエステル基のそれぞれが側鎖部分として設けられたポリマーを得ることができる。これら2種類のポリマーの配合比率は、モル比で1:99~99:1でありえ、好ましくはモル比で10:90~90:10であり、より好ましくはモル比で30:70~70:30である。

【0043】
また、重合方法も、あらかじめ第1のモノマーを重合させてから第2のモノマーを添加して重合させて得られるブロックコポリマーであっても、両方のモノマーを混合して同時に重合させて得られるランダムコポリマーであってもよい。

【0044】
本発明において、上記のように使用されるモノマー化合物のうち、Zを有するもの、すなわちポリマーにおいて抗菌性を担う部分となるモノマーとしては、例えば、
2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エチル 5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-カルボキシラート、
2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)プロピル 5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-カルボキシラート、
2-(ベンジルアミノ)エチル 5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-カルボキシラート、
等が挙げられるが、これらに限定されず、目的とするポリマーの構造に応じて、適宜使用するモノマーを選択することができる。

【0045】
本発明において、上記のように使用されるモノマー化合物のうち、Zを有するもの、すなわちポリマーにおいて生体適合性を担う部分又はその前駆体となるモノマーとしては、例えば、
5-メチル-5-(2-メトキシエチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
5-メチル-5-(2-エトキシエチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
5-メチル-5-(2-テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
5-メチル-5-(3-テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
5-メチル-5-(3-テトラヒドロピラニルメチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン
5-メチル-5-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
5-メチル-5-(2-エポキシオキシエチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
4-メチル-4-(2-メトキシエチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
4-メチル-4-(2-エトキシエチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
4-メチル-4-(2-テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
4-メチル-4-(3-テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
4-メチル-4-(3-テトラヒドロピラニルメチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン
4-メチル-4-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
4-メチル-4-(2-エポキシオキシエチル)オキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン、
γ-メチル-γ-(2-メトキシエチル)オキシカルボニル-δ-バレロラクトン、
γ-メチル-γ-(2-エトキシエチル)オキシカルボニル-δ-バレロラクトン、
γ-メチル-γ-(2-テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル-δ-バレロラクトン、
γ-メチル-γ-(3-テトラヒドロフラニルメチル)オキシカルボニル-δ-バレロラクトン、
γ-メチル-γ-(3-テトラヒドロピラニルメチル)オキシカルボニル-δ-バレロラクトン、
等が挙げられるが、これらに限定されず、目的とするポリマーの構造に応じて、適宜使用するモノマーを選択することができる。

【0046】
上記では、カーボネート結合等の生分解性が期待される結合と、所定のカチオン性基及び生体内で中間水を保持しうる基を含む構造が導入されたモノマーを重合して本発明に係る生体適合性ポリマーを製造する方法について説明したが、本発明はこれに限定されず、ポリマー主鎖をなす所定の炭素原子に対して所定のカチオン性基又は生体内で中間水を保持しうる基を含む構造を導入することで本発明に係る生体適合性ポリマーを製造してもよい。本発明の生体適合性ポリマー組成物において、主鎖ポリマーの繰り返し単位全てにわたってカチオン性基及び生体内で中間水を保持しうる基を含む構造が側鎖として結合している必要は必ずしもないが、合成の簡便さや、ポリマーの特性を予測しやすくする観点からは、これらの基を含む構造が導入された2種以上のモノマーを重合してポリマーとすることも好ましい。

【0047】
また、本発明の一つの態様において、主鎖の部分に、生分解性ポリマーと非生分解性ポリマーのいずれをも含めることができる。そのような構造を有するポリマーは、例えば生分解性ポリマーと非生分解性ポリマーの共重合により、得ることができる。

【0048】
一般式(I)で示される化合物において、例えば、X、X’が共に-O-である場合、すなわち環状カーボネートである場合は、そのような化合物は、当業者に公知の方法を用いて合成することができる。例えば、以下のスキーム2に示すように、ジオールの誘導体から出発して、(a)エーテル基を含む構造を導入する反応、及び(b)ホスゲン、炭酸ジフェニル又は触媒存在下での一酸化炭素等の炭酸源を作用させて環状カーボネートを形成する反応を含む工程により、合成することができる。

【0049】
【化4】
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(式中、M、m、m’、L、Zは、先に定義されたとおりであり、P及びP’は脱離基を表し、Rは、-O-フェニルであるか、塩素原子であるか、又は存在しない)

【0050】
さらに別の一例として、リンカー部分Lがエステル結合であるような一般式(I)の化合物は、まず工程(a)として、ジオール構造を有するカルボン酸、例えば2,2-ビス(メチロール)プロピオン酸に、エーテル基を含む構造を有するアルコール、例えば2-メトキシエタノールを作用させてビス(ヒドロキシ)エステルを形成し、次いで工程(b)として、トリホスゲンを作用させることで、得ることができる。

【0051】
ビス(ヒドロキシ)エステルを合成する工程は、場合により溶媒中で、例えばイオン交換樹脂の存在下で加熱することによって行われる。溶媒を用いる場合には、反応を阻害せず、原料を溶解する溶媒であればその種類は特に制限されないが、原料である構造部分Zを有するアルコールが液体であり、ジオールを十分に溶解する場合は、これを溶媒として用いることもできる。反応温度は室温から溶媒の沸点の範囲をとることができるが、収率を向上させるため、室温から100℃が好ましく、50~90℃の範囲が最も好ましい。反応時間は原料化合物、加熱温度によって変化するが、1~100時間、好ましくは10~50時間の範囲である。

【0052】
リンカー部分Lがエステル以外の構造である場合は、原料化合物の選択、例えばLをアミドとする場合は構造部分Zを有するアルコールをアミンにする、Lをエーテル基(-O-)とする場合にはジオール構造を有するカルボン酸をハロゲン化物にする等の変更を適宜行うことにより、対応するジオールの誘導体が合成される。その際に用いられる反応条件は、当業者に公知である。

【0053】
環状カーボネートを形成する工程は、例えば前記得られたジオールの誘導体に、適切な溶媒中、塩基の存在下で、トリホスゲンを作用させることによって行われる。用いられる溶媒は特に制限されず、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族溶媒又は酢酸エチル等が挙げられるが、これらに限定されない。塩基はトリホスゲンを分解して反応系中でホスゲンを発生させるために用いられる。用いられる塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0054】
一般式(I)で示される化合物において、X、X’の一方が-O-である場合、すなわちラクトンである場合は、そのような化合物は、当業者に公知の方法を用いて合成することができる。

【0055】
一般式(I)で示されるラクトンは、(a)エーテル基を含む構造を導入する反応、及び(b)ラクトン化反応を含む方法によって合成される。エーテル基を含む構造を導入する反応は、先にカーボネートの合成において述べたとおりである。ラクトン化反応は、例えばヒドロキシカルボン酸の分子内縮合、ヨードラクトン化又はStaudingerのケテン環化付加反応等の縮合反応、環状ケトンのBaeyer-Villiger酸化のような過酸を用いた酸化反応、あるいは予め環化したラクトールを酸化する等、当業者に公知の反応を用いて行うことができる。種々のモノマー化合物の合成に対する汎用性の高さから、過酸を用いた酸化反応が好ましい。例えば、一般式(I)で示されるラクトンは、以下に示すようなスキーム3に従って合成することができる。原料化合物は、市販されているか又は当業者に公知の合成方法によって得ることができる。

【0056】
【化5】
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(式中、M、m、m’及びZは、先に定義されたとおりである)。

【0057】
本発明により製造されるポリマーは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、例えば、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を添加して使用することができる。また、本発明のポリマー以外のポリマーと混合させて使用することができる。このような、本発明のポリマーを含む組成物もまた、本発明の目的である。

【0058】
本発明のポリマー組成物を他の高分子化合物等と混合して組成物として使用する場合には、その使用の用途に応じて適宜の混合割合で使用することができる。特に、本発明のポリマー組成物の割合を90重量%以上とすることで、本発明の特徴を強く有する組成物とすることができる。その他、使用の用途によっては、本発明のポリマー組成物の割合を50~70重量%とすることで、本発明の特徴を活かしつつ、各種の特性を併せ持つ組成物とすることができる。

【0059】
本発明の一つの態様は、本発明のポリマーをコーティングしてなる医療機器である。また、本発明のポリマーは、生体内組織や血液と接して使用される医療用機器の表面の少なくとも一部分に適用して、医療用機器とすることができる。つまり、医療用機器を成す基材の表面に対して、表面処理剤として用いることができるほか、医療用機器の少なくとも一部の部材を構成する材料として用いることができる。ここで、「医療用機器」とは、人工器官等の体内埋め込み型デバイス及びカテーテル等の一時的に生体組織と接触することがあるデバイスを含み、生体内で取り扱われるものに限定されない。また、本発明の医療用機器は、本発明のポリマーを少なくとも表面の一部に有する医療用途に使用される機器である。本発明でいう医療用機器の表面とは、例えば、医療用機器が使用される際に血液等が接触する医療用機器を構成する材料の表面並びに材料内の孔の表面部分等をいう。
なお、本明細書において、「生体内組織や血液に接して使用され」とは、例えば、生体内に入れられた状態、生体内組織が露出した状態で当該組織や血液と接して使用される形態、及び体外循環医用材料において体外に取り出した生体内成分である血液と接して使用される形態等を当然に含むものとする。また、「医療用途に使用され」とは、上記「生体内組織や血液に接して使用され」、又は、それを予定して使用されることを含むものである。

【0060】
本発明において、医療用機器を構成する基材の材質や形状は特に制限されることなく、例えば、多孔質体、繊維、不織布、粒子、フィルム、シート、チューブ、中空糸や粉末等いずれでも良い。その材質としては木錦、麻等の天然高分子、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(メタ)アクリレート、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体等の合成高分子あるいはこれらの混合物が挙げられる。また、金属、セラミクス及びそれらの複合材料等が例示でき、複数の基材より構成されていても構わず、その血液と接する表面の少なくとも一部、好ましくは血液と接する表面のほぼ全部に本発明に係るポリマー組成物が設けられることが望ましい。

【0061】
本発明の好ましい実施形態において、ポリマーを生体内組織や血液と接して使用される医療用機器の全体をなす材料、又はその表面部をなす材料として用いることができ、体内埋め込み型の人工器官や治療器具、体外循環型の人工臓器類、手術縫合糸、さらにカテーテル類(血管造影用カテーテル、ガイドワイヤー、PTCA用カテーテル等の循環器用カテーテル、胃管カテーテル、胃腸カテーテル、食道チューブ等の消化器用カテーテル、チューブ、尿道カテーテル、尿菅カテーテル等の泌尿器科用カテーテル)等の医療用機器の血液と接する表面の少なくとも一部、好ましくは血液と接する表面のほぼ全部が本発明に係るポリマーで構成されることが望ましい。また、本発明に係るポリマーを生分解性を有するものとして、治療の際に体内に留置される医療用機器に特に好ましく用いることができる。

【0062】
本発明のポリマー組成物は、止血剤、生体組織の粘着材、組織再生用の補修材、薬物徐放システムの担体、人工すい臓や人工肝臓等のハイブリッド人工臓器、人工血管、塞栓材、細胞工学用の足場のためのマトリックス材料等に用いても良い。

【0063】
本発明のポリマーを含む組成物を医療用機器等の表面に保持させる方法としては、コーティング法、放射線、電子線及び紫外線によるグラフト重合、基材の官能基との化学反応を利用して導入する方法等の公知の方法が挙げられる。この中でも特にコーティング法は製造操作が容易であるため、実用上好ましい。さらにコーティング方法についても、塗布法、スプレー法、ディップ法等があるが、特に制限なくいずれも適用できる。その膜厚は、好ましくは、0.1μm~1mmである。例えば、本発明のポリマーを含む組成物の塗布法によるコーティング処理は、適当な溶媒に本発明のポリマーを含む組成物を溶解したコーティング溶液に、コーティングを行う部材を浸漬した後、余分な溶液を除き、ついで風乾させる等の簡単な操作で実施できる。また、コーティングを行う部材に本発明のポリマーをより強固に固定化させるために、コーティング後に熱を加え、本発明のポリマーとの接着性を更に高めることもできる。また、表面を架橋することで固定化しても良い。架橋する方法として、コモノマー成分として架橋性モノマーを導入しても良い。また、電子線、γ線、光照射によって架橋しても良い。

【0064】
本発明の他の1つの実施形態において、ポリマーにおける主鎖が生分解性を有する、本発明のポリマーを含む抗菌剤が提供される。本発明のポリマーを含む抗菌剤は、例えば抗生物質の代替として、注射液等の溶液状態で用いることができる。本発明のポリマーは、カチオン性基の存在に基づく抗菌性のみならず、生体適合性も付与されており、さらに生分解性とすることもできるので、生体に安全な抗菌剤として投与することが可能となりうる。さらに、モノマーの選択によりポリマーの構成・物性を適宜変更することができるので、生体内に留まり抗菌作用を持続する時間等を用途に合わせて適宜調整したポリマーの設計が可能となりうる。本発明は、広い抗菌スペクトルを持ち、抗菌性を発揮できる抗菌剤となるポリマーを、生体適合性を持たせつつ、要求される特性に合わせて設計することが可能となるという知見にも基づく。
【実施例】
【0065】
以下に本発明のポリマーの詳細について、その合成方法や抗菌性/溶血性を検討した実験方法及びその結果について実施例等を挙げて説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
[実施例1]
2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸ベンジル(2)の合成
【化6】
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還流管を取り付け、脱気後、窒素封入した500mL三口フラスコに、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(1)(22.5g、0.168mol)、水酸化カリウム(11.0g、0.165mol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF;125mL)を加え、100℃で1時間撹拌した。溶液が透明になったことを確認後、ベンジルブロミド(23.96mL、0.202mol)を加え100℃で16時間撹拌した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、生じた沈殿物を吸引濾過により除去した。得られた濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮した後、酢酸エチル(150mL)、ヘキサン(150mL)に溶解させ、分液漏斗にてイオン交換水(150mL)を用いて2回洗浄操作を行った。その後有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターによって濃縮させた。得られた固体をトルエンより再結晶し、白色固体としてベンジル 2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオナート(2)を得た(収量:23.3g、収率:62.0%)。H-NMR (400 MHz,CDCl): δ7.37(m, 5H, ArH ), 5.23(s, 2H, ArCH), 3.965(d, J=12Hz, 2H, CHCH), 3.75(d, J=8Hz, 2H, CHCH), 1.09(s, 3H, CCH) .
【実施例】
【0067】
[実施例2]
5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-カルボン酸ベンジル(3)の合成
【化7】
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100mL滴下漏斗を取り付けた500mL三口フラスコに、(2)(13.0g、58.0mmol)を加え、脱気後、窒素置換した。次に、脱水塩化メチレン(175mL)、ピリジン(28.0mL、348mmol)を加えた。ドライアイス/2-イソプロパノール冷浴を用いて反応系を-75℃に冷却し、予め調製したトリホスゲン(8.61g、29.0mmol)の脱水DCM溶液(75.0mL)を滴下漏斗より徐々に加えた。滴下終了後、-75℃の冷却下で1時間、その後室温にて2時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液(90.0mL)を加えて30分間撹拌し、分液漏斗を用いて有機相を1規定塩酸水溶液(120mL)で3回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(120mL)、及び飽和食塩水(120mL)で各1回ずつ洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥後、ロータリーエバポレーターによって減圧下で濃縮し、さらに室温にて真空乾燥を行い、白色固体として5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-カルボン酸ベンジル(3)を得た(収量:13.7g、収率:94.4%)。H-NMR (400 MHz,CDCl): δ 7.35(m, 5H, ArH ), 5.21(s, 2H, ArCH), 4.705(d, J=12 Hz, 2H, CHCH), 4.195(d, J=12 Hz, 2H, CHCH), 1.33(s, 3H, CCH).
【実施例】
【0068】
[実施例3]
5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-カルボン酸(4)の合成
【化8】
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還流管を取り付けた500mL三口フラスコ中で、(3)(8.0g、32.0mmol)をテトラヒドロフラン(THF;160mL)に溶解させ、パラジウム炭素(2.0g、25%w/w)を添加後、十分に脱気し、窒素置換を行った。次にシクロヘキセン(32.5mL、320mmol)を加え、60℃で24時間撹拌した。反応終了後、溶液を室温に冷却し、脱気操作によって水素ガスを取り除いた。THFで湿らせた珪藻土を含んだガラスフィルターにて不溶物を濾過し、濾液をロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮し、さらに室温で真空乾燥させた。得られた固体を塩化メチレンで洗浄し、残った残渣を吸引濾過によって単離し、白色固体である5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-カルボン酸(4)を得た(収量:4.66g、収率:90.9%)。
H-NMR (400 MHz,アセトン-d): δ 4.665(d, J=12 Hz, 2H, CHCH), 4.355(d, J=12 Hz, 2H, CHCH), 1.32(s, 3H, CCH) .
【実施例】
【0069】
[実施例4]
tert-ブチル N-(2-ヒドロキシエチル)カルバマート(5)の合成
【化9】
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50mL滴下漏斗を取り付け、脱気後、窒素封入した500mL三口フラスコに、エタノールアミン(3.01mL、50.0mmol)、予め蒸留精製したトリエチルアミン(7.67mL、550mmol)、脱水塩化メチレン(35mL)を加えた。次に、予め調製したジ-tert-ブチル ジカルボン酸(10.9g、50.0mmol)の脱水塩化メチレン溶液(25mL)を滴下漏斗より徐々に加えた後、常温で18時間撹拌した。反応終了後、溶液をロータリーエバポレーターによって減圧下で濃縮し、生じた残渣をジエチルエーテル(85mL)に溶解させ、分液漏斗を用いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(85mL)で2回、飽和食塩水(60mL)で2回それぞれ洗浄した。さらに、水層をクロロホルム(150mL)で2回抽出し、先の有機層と合わせた。その後有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮した。室温で十分に真空乾燥させた後、無色の粘性液体としてtert-ブチル N-(2-ヒドロキシエチル)カルバマート(5)を得た(収量:7.56g、収率:93.9%)。
H-NMR (500 MHz, アセトン-d): δ 5.90(br, 1H, NH), 3.555(q, J=7.5 Hz, 2H, OCH), 3.165(q, J=7.5 Hz, 2H, CHNH), 1.40(s, 9H, C(CH).
【実施例】
【0070】
[実施例5]
2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エチル 5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-カルボキシラート(6)の合成
【化10】
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50mL滴下漏斗を取り付けた200mL三口フラスコに、(4)(2.4g、15.0mmol)を加え、脱気し、窒素置換した後、脱水THF(75mL)及びDMF数滴を加えた。次に、予め調製した塩化オキサリル(1.5mL、16.5mmol)の脱水THF溶液(30mL)を滴下漏斗より徐々に添加し、その後室温で1時間撹拌した。反応終了後、30分間窒素バブリングによって酸性ガスを取り除いた後、反応溶液をロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮した。反応が完了していることを1H-NMRにて確認した後、再び脱水THF(35mL)に溶解させ、50mL滴下漏斗を取り付け、脱気、窒素置換させた200mL三口フラスコに加えた。予め水素化カルシウムを加えて1晩撹拌した後にシリンジフィルター(0.45μm)で濾過して脱水処理しておいた(5)(2.3g、14.3mmol)の脱水THF溶液(25mL)と蒸留精製済みのトリエチルアミン(2.20mL、15.8mmol)を滴下漏斗に加え、緩やかに滴下した。室温で3時間撹拌後、沈殿物を濾別し、濾液をロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮した。残渣をその後、酢酸エチル(75mL)を加えて不溶物を吸引濾過にて取り除いた後、分液漏斗にて1規定塩酸水溶液(75mL)、飽和食塩水(75mL)、イオン交換水(75mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥後、ロータリーエバポレーターにて減圧下で濃縮し、室温で真空乾燥させた。その後、溶離液に酢酸エチルを使用したカラムクロマトグラフィーを行った後、酢酸エチル/ヘキサンより再結晶させ、白色固体として2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)エチル 5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキサン-5-カルボキシラート(7)を得た(収量:1.6g、収率:41.9%)。H-NMR (400 MHz,アセトン-d): δ 6.21(br, 1H, NH), 4.69(d, J=8 Hz, 2H, CHCH), 4.36(d, J=8 Hz, 2H, CHCH), 4.225(t, J=6Hz, 2H, OCHCH), 3.385(q, 2H, CHCHNH), 1.40(s, 9H, C(CH), 1.33(s, 3H, CCH) .
【実施例】
【0071】
[実施例6]
ポリマー合成(7の単独重合)
【化11】
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窒素雰囲気下グローブボックス内にて、(7)(0.303g、1.00mmol)、1-ピレンブタノール(PB;5.48mg、0.02mmol)、N-ビス(3,5-トリフルオロメチル)フェニル-N’-シクロヘキシルチオウレア(TU;37.0mg、0.10mmol)、スパルテイン(Sp;11.7mg、0.05mmol)を脱水塩化メチレン(2mL)に溶解させ、室温で撹拌した。47.5時間後H-NMRにて大部分のモノマーの消費(83.7%)を確認後、安息香酸を加えて重合を停止した。反応溶液をその後グローブボックスより取り出し、ヘキサン/トルエン(4/1)中に再沈殿させ、遠心分離によって重合物を単離した。その後真空下で十分に乾燥し、無色の粘調体としてPCBAE(8)を得た(収量:0.19g、収率:62.1%)。GPC(THF): Mn=4,300,Mw/Mn=1.18.
H-NMR(500 MHz,CDCl): δ 8.32-7.78(m, 9H, pyrene), 5.06(br, 16H, NH), 4.39-4.25(m, 76H, OCOOCH2), 4.24-4.16(m, 45H, COOCH), 3.40-3.31(m, 34H, CHNH), 1.45(s, 203H, C(CH), 1.28(s, 53H, CCH) 平均重合度 n = 20.
【実施例】
【0072】
【化12】
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窒素雰囲気下グローブボックス内にて、7(0.303g、1.00mmol)、PB(2.74mg、0.01mmol)、TU(18.5mg、0.05mmol)及びSp(5.86mg、0.025mmol)を脱水塩化メチレン(1mL)に溶解させ、室温で撹拌した。22時間後、H-NMRにて大部分のモノマーの消費(85.1%)を確認後、無水酢酸(AcO)を加えて重合を停止し、同時に末端のアセチル化を行った。重合溶液を1時間の攪拌後、グローブボックスより取り出し、ヘキサン/トルエン(4/1)中に再沈殿させ、遠心分離によって重合物を単離した。その後真空下で十分に乾燥し、無色の粘調体としてPCBAE(8’)を得た(収量:0.222g、収率:73.0%)。GPC(DMF):Mn=9,600、Mw/Mn=1.27.H-NMR(400 MHz,DMSO-d): δ 8.38-7.66(m, 9H, pyrene), 6.89(br, 21H, NH), 4.23(m, 84H, CHOCOO), 4.01(m, 50H, OCHCH), 3.16(m, 50H, CHCHNH), 1.99(OCOCH end group), 1.36(s, 223H, C(CH), 1.16(s, 64H, CH)平均重合度 n = 25.
【実施例】
【0073】
[実施例7]
MTC-ME(9)との共重合
【化13】
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((7):(9)=1:1)
MTC-ME(9)は公知の手法によって合成した。MTC-MEを導入することにより、重合後のポリマーの主鎖部分に対し、エステル結合によって(-CHCH-O-CH)の構造を有する側鎖が導入される。当該側鎖の構造は、中間水を含有可能であって生体適合性を有することが知られているPMEA(Poly(2-methoxyethyl acrylate))の側鎖部分と同一の構造である。窒素雰囲気下グローブボックス内にて、(7)(0.303g、1.00mmol)、(9)(0.218g、1.00mmol)、PB(2.74mg、0.01mmol)、TU(37.0mg、0.10mmol)及びSp(11.7mg、0.05mmol)を脱水塩化メチレン(2mL)に溶解させ、室温で撹拌した。72時間後、H-NMRにてモノマーの消費(91.8%)を確認した後、無水酢酸を加えて重合を停止し、末端のアセチル化を行った。無水酢酸を添加して1時間後、グローブボックスより取り出し、ヘキサン/トルエン(4/1)中に再沈殿させ、遠心分離によって重合物を単離した。その後真空下で十分に乾燥し、無色の粘調体としてPC(BAE-ME)(10a)を得た(収量:0.42g、収率:80.1%)。GPC(DMF):M=10,500、Mw/Mn=1.30.H-NMR(400 MHz,DMSO-d): δ 8.42—7.61(m, 9H, pyrene), 6.87(br, 31H, NH), 4.30-4.10(m, 334H, CHOCOO and COOCHCH), 4.02(m, 72H, OCH2CH2N), 3.49(m, 75H, COOCHCHO), 3.23(s, 85H, OCH), 3.15(m, 69H, OCHCHN), 2.00(s, 3H, OCOCH3 end group), 1.36(s, 324H, C(CH), 1.17(s, 194H, CH3) 平均重合度 n=35、m=38.
【実施例】
【0074】
[実施例8]
((7):(9)=1:3)
実施例7と同様の手順でMTC-ME(9)との共重合体の合成を行った。ただし、(7)(0.152g、0.50mmol)、(9)(0.327g、1.50mmol)を使用した。76時間後、H-NMRにてモノマーの消費(86%)を確認した後、無水酢酸を加えて重合を停止し、末端のアセチル化を行った。無水酢酸を添加して1時間後、グローブボックスより取り出し、ヘキサン/トルエン(4/1)中に再沈殿させ、遠心分離によって重合物を単離した。その後真空下で十分に乾燥し、無色の粘調体としてPC(BAE-ME)(10b)を得た(収量:0.308g、収率:64%)。GPC(DMF): Mn=8,100,Mw/Mn=1.32.H-NMR(500MHz,CDCl):平均重合度 n=10、m=28.
【実施例】
【0075】
[実施例9]
((7):(9)=1:9)
実施例7と同様の手順でMTC-ME(9)との共重合体の合成を行った。ただし、(7)(0.061g、0.20mmol)、(9)(0.393g、1.80mmol)を使用した。76時間後、H-NMRにてモノマーの消費(87%)を確認した後、無水酢酸を加えて重合を停止し、末端のアセチル化を行った。無水酢酸を添加して1時間後、グローブボックスより取り出し、ヘキサン/トルエン(4/1)中に再沈殿させ、遠心分離によって重合物を単離した。その後真空下で十分に乾燥し、無色の粘調体としてPC(BAE-ME)(10c)を得た(収量:0.261g、収率:57%)。GPC(DMF): Mn=8,300、Mw/Mn=1.34.H-NMR(500 MHz,CDCl): 平均重合度 n=3,m=25.
【実施例】
【0076】
[実施例10]
((7):(9)=5:95)
実施例7と同様の手順でMTC-ME(9)との共重合体の合成を行った。ただし、(7)(0.030g、0.10mmol)、(9)(0.415g、1.90mmol)を使用した。76時間後、H-NMRにてモノマーの消費(88%)を確認した後、無水酢酸を加えて重合を停止し、末端のアセチル化を行った。無水酢酸を添加して1時間後、グローブボックスより取り出し、ヘキサン/トルエン(4/1)中に再沈殿させ、遠心分離によって重合物を単離した。その後真空下で十分に乾燥し、無色の粘調体としてPC(BAE-ME)(10d)を得た(収量:0.275g、収率:61%)。GPC(DMF): Mn=9,000, Mw/Mn=1.33.H-NMR(500MHz,CDCl):平均重合度 n=2,m=26.
【実施例】
【0077】
[実施例11]
Boc基の脱保護
【化14】
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(8)(0.19g、Boc基:0.63mmol)をアセトニトリル3.0mLに溶解させ、脱気、窒素置換済みの10mLシュレンク管に加えた。氷水/食塩の冷浴で反応系を-5℃に冷却し、その低温条件下でトリフルオロ酢酸(0.63mL、8.23mmol)を緩やかに滴下し、-5℃で30分間撹拌し、その後6時間室温にて撹拌した。反応溶液はその後、ジエチルエーテル(30mL)中に再沈殿させ、遠心分離によって沈殿物を回収した。残渣は室温で真空乾燥させ、無色な粘調体としてPC2PA(11)が得られた(収量:86.6mg、収率:67.6%)。GPC(DMF):Mw=1,900, Mw/Mn=3.76.H-NMR(500 MHz,DMSO): δ 8.23-7.89(m, NH), 4.34-4.10(m, 155H, CH2OCOO and COOCH2CH2N), 3.11(m, CHNH), 1.25—1.05(m, CH)ゼータ電位: +58.9 mV, Dh 312.2 nm,PDI 0.597.
【実施例】
【0078】
[実施例12]
【化15】
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(8’)(0.17g、Boc基:0.56mmol)をアセトニトリル3.0mLに溶解させ、脱気、窒素置換済みの10mLシュレンク管に加えた。氷水/食塩の冷浴で反応系を-5℃に冷却し、その低温条件下でトリフルオロ酢酸(0.44mL、5.64mmol)を緩やかに滴下し、-5℃で10分間撹拌し、その後6時間室温にて撹拌した。反応溶液はその後、ジエチルエーテル/ヘキサン(1/1、30mL)中に再沈殿させ、デカンテーションおよび遠心分離によって沈殿物を回収した。残渣は室温で真空乾燥させ、無色な粘調体としてPC2PA(11’)が得られた(収量:124mg、収率:69%)。GPC(DMF): Mw=1,500, Mw/Mn=7.37. H-NMR(500 MHz,DMSO): δ 8.14(br, 72H, NH), 4.40-4.11(m, 155H, CH2OCOO and COOCH2), 3.11(m, 56H, CHNH), 2.00(s, 3H, OCOCH end group), 1.20(m, 80H, CH) 平均重合度 n = 25.
【実施例】
【0079】
[実施例13]
((7):(9)=1:1)
【化16】
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(10a)(0.37g、Boc基:0.35mmol)をアセトニトリル6.0mLに溶解させ、脱気、窒素置換済みの10mLシュレンク管に加えた。氷水/食塩の冷浴で反応系を-5°Cに冷却し、その低温条件下でトリフルオロ酢酸(0.26mL、3.52mmol)を緩やかに滴下し、-5℃で15分間撹拌し、その後24時間室温にて撹拌した。反応溶液はその後、ジエチルエーテル/ヘキサン(1/1、60mL)中に再沈殿させ、デカンテーションおよび遠心分離によって沈殿物を回収した。残渣は室温で真空乾燥させ、無色な粘調体としてPC(2PA-ME)(12)を得た(収量:295mg、収率:88.0%)。GPC(DMF):Mn=5,200, Mw/Mn=1.38. H-NMR(400 MHz,DMSO):δ 8.04(br, 125H, NH), 4.42-4.10(m, 524H, CHOCOO and COOCHCH), 3.23(s, 132H, OCH), 3.11(m, 97H, CH2NH3), 2.00(s, 3H, OCOCH3 end group), 1.25-1.14(m, 259H, CH) 平均重合度 n= 48, m= 43. ゼータ電位: +17.6 mV, Dh 337.2 nm,PDI 0.434.
【実施例】
【0080】
[実施例14]
PDEAEMA(13)の合成
【化17】
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還流管を取り付け、脱気後、窒素封入した100 ml三口フラスコにジエチルアミノエチルメタクリレート(15.0 g, 81.0 mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(1.21 g, 7.36 mmol)を加え、THF(30 ml)に溶解させ60℃で撹拌した。20時間後撹拌を停止し、常温に戻した後に、超純水(1 L)中に再沈殿を行い、得られた沈殿物をTHFに溶解させ再び超純水中に再沈殿させた。この精製を3回行った。その後、超純水をデカンテーションで取り除き、残渣をTHFに溶解させロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、室温で真空乾燥させ、PDEAEMAを得た(収量:13.58 g, 収率:90.5%)。H-NMR (400 MHz,MeOH-d): δ4.06(br, COOCH2CH2N ), 2.90-2.73(m, COOCHCHN), 2.72-2.50(m,NH(CH2CH3), 2.17-1.76(m, CH), 1.23-0.80(m, CH) GPC(DMF): Mn = 17,600, Mw/Mn = 1.87.
【実施例】
【0081】
[実施例15]
PDEAEMA-PMEAランダム共重合体(14)の合成
PMEA(Poly(2-methoxyethyl acrylate))は、中間水を含有可能であって生体適合性を有することが知られている物質である。
【化18】
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還流管を取り付け、脱気後、窒素封入した300 ml三口フラスコにメトキシエチルアクリレート (10.16 g, 78.1 mmol)と、ジエチルアミノエチルメタクリレート(4.826 g, 26.0 mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(15 mg, 9.13×10-2 mmol)を加え、1,4-ジオキサン(60 g, 62 ml)に溶解させ75℃で撹拌した。24時間後撹拌を停止し、常温に戻した後に、ヘキサン(1 L)中に再沈殿させ、得られた残渣をTHFに溶解させ再びヘキサン中に再沈殿させた。その後ヘキサンをデカンテーションで取り除き、沈殿物をTHFに溶解させロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、室温にて真空乾燥させた。乾燥後の物質を超純水で精製し、P(MEA-DEAEMA)を得た(収量:3.95 g, 収率:26.1%)。H-NMR (400 MHz,MeOH-d): δ4.34-3.96(m, COOCH2CH2 ), 3.61(s, COOCHCHO), 3.38(s, OCH3), 2.91—2.56(m, NCH), 2.54—1.52(m, CH), 1.26-0.89(m,CH3 and CH). GPC(DMF): Mn= 11,000, Mw/Mn = 1.67.
【実施例】
【0082】
[実施例16]
3級アンモニウム塩化
【化19】
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脱気、窒素置換させた10mL枝つき試験管中にて、(13)(500mg、N 5.40mmol)をメタノール2.7mLに溶解させ、氷浴(塩+氷水)で冷却させた。濃塩酸(10規定,1.35mL、13.5mmol)をパスツールピペットを用いて3分間かけて滴下し、その後、室温にて2.5時間撹拌した。1H-NMRにて反応の完了を確認後、ジエチルエーテル中に再沈殿させ、デカンテーションによって沈殿物を回収し、室温にて真空乾燥を行い、透明な粘調体として15を得た。(収量:284.3 mg, 収率:51%)。H-NMR(500 MHz,MeOH): δ4.45(br, COOCH2CH2N ), 3.58(s, COOCHCHN), 3.36(m,NH(CH2CH3), 2.36-1.63(m, CH), 1.44(s, CH2CH), 1.27-0.91(m, CH).ゼータ電位: +33.5 mV, Dh 149.5 nm,PDI 0.908.
【実施例】
【0083】
[実施例17]
【化20】
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脱気、窒素置換させた10mL枝つき試験管中にて、(14)(500mg、N 1.11mmol)をメタノール6.74mLに溶解させ、氷浴(塩+氷水)で冷却させた。濃塩酸(10規定,0.56mL,5.55mmol)をパスツールピペットを用いて3分間かけて滴下し、その後、室温にて1時間撹拌した。H-NMRにて反応の完了を確認後、ジエチルエーテル中に再沈殿させ、デカンテーションによって沈殿物を回収し、室温にて真空乾燥を行い、透明な粘調体として16を得た。(収量:496.2 mg, 収率:92%)。H-NMR(500 MHz,MeOH): δ4.50-4.00(m, COOCH2CH2 ), 3.61(s, COOCHCHO), 3.47(br,COOCH2CH2N), 3.37(s, OCH3), 2.60—1.44(m, CH), 1.38(s, CH3), 1.26-0.98(m, CH).ゼータ電位: +27.7 mV, Dh 307.4 nm,PDI 0.548.
【実施例】
【0084】
[実施例18]
抗菌活性試験
LB培地(トリプトン 1 w/v%, 酵母エキス 0.5 w/v%, 塩化ナトリウム 0.5 w/vを滅菌超純水中に溶解)に寒天を1.5 w/v%となるように加え、LBプレートを作製した。大腸菌(タカラバイオ株式会社,E.coli DH5α Competent Cells, 製品コード9057)をLB培地に塗抹し、37°Cで一晩培養した。LB培地80 mLにプレート上の1コロニーをかき取って植菌し、37℃、230rpmの条件で一晩振とう培養した。可視光度計で経時的に濁度を測定することによって作製した検量線を元に、O.D.600=0.2となるよう菌体濃度を調整した。次に、96ウェルプレートに、滅菌超純水を用いて調整した各試験濃度の2倍濃度のポリマー溶液を100μlずつ添加した。その後、大腸菌液を各ウェルに100μLずつ添加し、ポリマー溶液と混合した後に37℃で培養し、0,2,4,6,8,24時間におけるO.D.595の吸光度をプレートリーダーにて測定した。最終的なポリマーの試験濃度は4,8,16,32,64,125,250,500mg/Lとした。対照試料として、ポリエチレングリコール(PEG;Mn=5,000)、ポリエチレンイミン(PEI;Mn=70,000)、ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S;ペニシリン10,000U ストレプトマイシン 10mg/mL)を使用し、同様に各濃度に対する大腸菌の増殖を吸光度(濁度)にて評価した。24時間の培養後において大腸菌の増殖が抑制された試料濃度を最小発育阻止濃度(MIC)とした。
【実施例】
【0085】
[実施例19]
溶菌の確認(SEM観察)
96ウェルプレートに、64mg/lのポリマー溶液を100 μl加え、そこにO.D.600=0.2となるよう菌体濃度を調整した大腸菌を100 μl添加し、ポリマー溶液と混合した後に37℃で24時間培養した。最終的なポリマーの試験濃度は32 mg/lとした。プレートを4000 rpmで10分間遠心し、上澄み液を除いた。PBS(-)を加え、4000 rpmで10分間遠心し、上澄みを除いた。この操作を更に2回行った後、1 %グルタルアルデヒドを加え、37 ℃のインキュベーターに1晩静置した(固定)。固定後、1 %グルタルアルデヒドを除き、超純水で洗浄し、35, 50, 75, 90, 95, 100 %のエタノール水溶液で段階的に脱水した。室温で1晩乾燥した後、プレートの底面を切り出し、白金パラジウムでイオンコートを行った。SEM台にカーボンテープで固定し、電界放出形走査電子顕微鏡(JEPL, JSM- 7600FA)で形態観察を行った。
【実施例】
【0086】
[実施例20]
溶血性試験
3.2%クエン酸ナトリウム溶液が0.5 ml入っている真空採血管にヒト血液を4.5 ml採血し、2500gにて10分間遠心分離させ、赤血球の分画を分離した。そのうち、1mLをリン酸緩衝液(PBS)9mLと混合し、2500gにて5分間遠心分離し、その後上澄み約9mLを除去した(洗浄)。この洗浄操作をさらに2回繰り返し、残った赤血球溶液をPBSによって希釈し、4%ヒト赤血球懸濁液として調製した。
96ウェルプレートに4%ヒト赤血球懸濁液100μlと各濃度のポリマー溶液100μlを加えて37°Cにて1時間静置した。最終的なポリマー濃度は3000,2500,2000,1500,1000,500,100,50μg/mLとした。その後、各ポリマー処理溶液を1000gにて5分間遠心分離し、100μlの上澄みを別の96ウェルプレートに移し、マイクロプレートリーダーにて測定した576nmの吸光度からヘモグロビンの放出量を評価した。4%ヒト赤血球懸濁液をネガティブコントロール、0.5% Triton X-100にて溶血させたサンプルを100%(ポジティブコントロール)とし、溶血性(%)は{(ポリマー処理溶液の吸光度)-(PBSの吸光度)}/{(Triton X-100処理溶液の吸光度)-(PBSの吸光度)}として定義した。
【実施例】
【0087】
実施例18において行った抗菌活性試験の結果を図15~18に示す。図15に示すポリマー11(実施例11。ポリカーボネートを主鎖として、カチオン性基を含む側鎖のみを持つホモポリマー。)は、MIC=16mg程度で大腸菌の繁殖を抑制可能であり、抗菌活性があることが示された。一方、図16に示すポリマー12(実施例13。ポリカーボネートを主鎖として、カチオン性基を含む側鎖と、生体適合性が期待される側鎖を1:1の割合で含むコポリマー。)では、ポリマー11と比較してカチオン性基を含む側鎖の密度が低下しているにも関わらず、MIC=16mg程度であり、ポリマー11と同等の大腸菌に対する抗菌活性があることが示された。
【実施例】
【0088】
また、主鎖としてアクリレート構造を有するポリマーにおいても、図17に示すポリマー15(実施例15。アクリレートを主鎖として、カチオン性基を含む側鎖のみを持つホモポリマー。)がMIC=64mg程度で抗菌活性を示すのに対して、図18に示すポリマー16(実施例17。アクリレートを主鎖として、カチオン性基を含む側鎖と、生体適合性が期待される側鎖を1:1の割合で含むコポリマー。)ではMIC=32mg程度で抗菌活性が示された。
【実施例】
【0089】
上記の結果より、従来知られるようにカチオン性基を含む側鎖を有するホモポリマーにおいては良好な抗菌活性が観察されることが実施例18において示され、その抗菌作用は抗菌材料として知られるポリエチレンイミン(PEI、図19)より良好であることが観察された。これに対して、当該カチオン性基を含む側鎖に加えて生体適合性が期待される側鎖を導入したコポリマーにおいても、ホモポリマーと同等以上の抗菌活性が観察されることが実施例18において示された。この結果は、生体適合性を示す典型的な材料であるポリエチレングリコール(PEG、図20)が抗菌活性を全く示さないことと対比すれば、生体適合性が期待される側鎖のポリマーへの導入が、カチオン性基に起因する抗菌活性を積極的に阻害しないことを示すものと考えられる。
【実施例】
【0090】
また、図22に示すように、カチオン性基を含む側鎖を有するホモポリマー(ポリマー11)と、カチオン性基を含む側鎖と、生体適合性が期待される側鎖を1:1の割合で含むコポリマー(ポリマー12)のいずれにおいても、大腸菌の細胞膜が変性するような形態で死滅することが示され、生体適合性が期待される側鎖の存在により具体的抗菌作用の形態に変化が生じないと考えられる。
【実施例】
【0091】
他方、図23には、実施例20で行った溶血性試験の結果を示す。図23から明らかなように、従来の抗菌材料であるポリエチレンイミン(PEI)においては、MIC値(250mg)近辺において顕著な溶血を生じる一方で、本発明に係るカチオン性基を含む側鎖を有するホモポリマー(ポリマー11)と、カチオン性基を含む側鎖と、生体適合性が期待される側鎖を1:1の割合で含むコポリマー(ポリマー12)の両方において、大腸菌の繁殖を抑制するために必要な濃度(MIC値:16mg程度)においては殆ど溶血が生じないことから、両者ともに十分な生体適合性を示す範囲内において良好な抗菌活性を示すことが明らかとなった。更に、生体適合性が期待される側鎖が導入されたポリマー12では、1500mg/l以上の顕著な高濃度の範囲でも溶血性が抑制されており、高濃度で処理した場合でも十分な生体適合性を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のポリマーは、低濃度で優れた抗菌作用を示すと共に、溶血性等を低く抑えて生体に適合するものであり、生体に接して使用される用途において有用である。さらに、本発明のポリマーは、溶解性、生体分解性等の物性を調整することが可能であるので、血液等生体に接触することがある医療機器の材料又はそのコーティング材料、抗生物質に代替する抗菌剤等として好ましく用いることができ、産業上きわめて重要である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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