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明細書 :開花制御方法および電気刺激付与装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年4月20日(2017.4.20)
発明の名称または考案の名称 開花制御方法および電気刺激付与装置
国際特許分類 A01G   7/04        (2006.01)
FI A01G 7/04 A
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 27
出願番号 特願2016-529216 (P2016-529216)
国際出願番号 PCT/JP2015/065784
国際公開番号 WO2015/194355
国際出願日 平成27年6月1日(2015.6.1)
国際公開日 平成27年12月23日(2015.12.23)
優先権出願番号 2014125821
優先日 平成26年6月18日(2014.6.18)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】西村 亮
【氏名】田村 文男
【氏名】黒木 克翁
【氏名】浅野 圭祐
出願人 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100111383、【弁理士】、【氏名又は名称】芝野 正雅
審査請求 未請求
要約 【課題】簡便かつ快適な作業により花芽の開花制御を実現することが可能な開花制御方法およびそれに用いる電気刺激付与装置を提供する。
【解決手段】電気刺激付与装置1は、電極101と、電極101を保持するとともに電極101から離れた位置を把持可能なホルダ100と、電極101に接続され電極101に電位を付与する電源200と、電源200のアース端子202を地面に接続する電極板311と、を備える。作業者は、電極101に電位を付与した状態で、電極101を広葉果樹の枝に沿って移動させ、花芽に電圧を印加する。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
花芽の開花を制御する開花制御方法であって、
樹木の休眠期間中の所定のタイミングにおいて前記樹木の花芽に電圧を印加する、
ことを特徴とする開花制御方法。
【請求項2】
前記樹木の花芽に印加する前記電圧の絶対値が1キロボルト程度以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の開花制御方法。
【請求項3】
電位が付与された電極を前記花芽に接近させることにより前記花芽に前記電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の開花制御方法。
【請求項4】
前記電極を前記樹木に枝に沿って移動させることにより、前記枝の前記花芽に前記電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項3に記載の開花制御方法。
【請求項5】
前記電極は、前記花芽に近付けられる面が球面状となっている、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の開花制御方法。
【請求項6】
花芽の開花制御に用いる電気刺激付与装置であって、
電源と、
前記電源の電圧供給端子に接続され前記花芽に電圧を付与する電圧付与手段と、
前記電源のアース端子を地面に接続する接地手段と、を備える、
ことを特徴とする電気刺激付与装置。
【請求項7】
前記電圧付与手段は、
前記電源の前記電圧供給端子に接続された電極と、
前記電極を保持するとともに前記電極から離れた位置を把持可能なホルダと、を備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の電気刺激付与装置。
【請求項8】
前記接地手段は、靴底に絶縁状態で設置される電極板を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の電気刺激付与装置。
【請求項9】
前記ホルダの被把持部付近に、前記電極と前記電源との接続および非接続を切り替えるスイッチが設けられている、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の電気刺激付与装置。
【請求項10】
前記ホルダは、前記電極と被把持部との間の距離が調節可能な構成となっている、
ことを特徴とする請求項7ないし9の何れか一項に記載の電気刺激付与装置。
【請求項11】
前記電極は、前記花芽に近付けられる面が球面状となっている、
ことを特徴とする請求項7ないし10の何れか一項に記載の電気刺激付与装置。
【請求項12】
前記電源は、携帯可能な大きさであり、
作業者に前記電源を装備するための装備具をさらに備える、
ことを特徴とする請求項7ないし11の何れか一項に記載の電気刺激付与装置。
【請求項13】
前記電極は、第1電極部と第2電極部を有し、前記第1電極部と前記第2電極部で枝の周囲を取り囲むように構成され、
前記ホルダは、前記第1電極部と前記第2電極部を互いに接近および離間させる機構部を備える、
ことを特徴とする請求項7ないし12の何れか一項に記載の電気刺激付与装置。
【請求項14】
前記電圧付与手段は、前記樹木の枝に対する電圧の印加位置を切り替えるための付与位置切替手段を備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の電気刺激付与装置。
【請求項15】
前記電源から前記電極に付与される電位を調節するための調節手段が設けられている、
ことを特徴とする請求項6ないし14の何れか一項に記載の電気刺激付与装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、花芽の開花を制御する開花制御方法およびそれに用いる電気刺激付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
梨や桃等の落葉果樹は、生育過程で生育を一時的に停止する自発休眠を行う。自発休眠状態において、樹木が所定時間、低温環境下に晒されることにより、落葉果樹は、自発休眠から覚醒し生育を再開する。自発休眠から覚醒するのに必要な低温遭遇時間は、樹種や品種によって異なる。たとえば、日本梨では1400時間程度の低温遭遇が必要である。
【0003】
低温遭遇時間が所定時間に満たない状態において落葉果樹を自発休眠から早期に覚醒させるための手法として、落葉果樹の花芽に過酸化水素水を塗布または散布する方法が紹介されている(特許文献1参照)。また、最近では、ニンニクから抽出した液体を落葉果樹の花芽に塗布する方法も、自発休眠の打破に効果があることが確認されている。
【0004】
落葉果樹を自発休眠から早期に覚醒させることができれば、果実の収穫時期を早めることができ、果実の商品価値を高めることができる。また、地球温暖化の影響により果樹に必要な低温遭遇時間が確保されにくい地域では、低温遭遇時間の不足を上記手法による処置で補うことにより、着花不足や発芽・開花の不揃いを回避することが期待される。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2005-176728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記2つの手法では、何れも液材が用いられるため、作業時に空中に飛散する液材成分が目鼻等に刺激を与えることが想定され、これにより快適な作業が阻害されることが懸念される。特に、ニンニク抽出液を用いる方法では、臭いの問題が起こり得る。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、簡便かつ快適な作業により花芽の開花制御を実現することが可能な開花制御方法およびそれに用いる電気刺激付与装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、花芽の開花を制御する開花制御方法に関する。本態様に係る開花制御方法は、樹木の休眠期間中の所定のタイミングにおいて前記樹木の花芽に電圧を印加することを特徴とする。
【0009】
本態様に係る開花制御方法によれば、液材を用いることなく樹木の花芽に電圧を印加するのみであるため、作業中に飛散した液材成分が目鼻に刺激を与えることがなく、よって、飛散した液材成分により快適な作業が阻害されることもない。また、花芽に電圧を印加するのみであるため、開花制御のための作業も簡便である。よって、簡便かつ快適な作業により花芽の開花制御を実現することができる。
【0010】
第1の態様に係る開花制御方法において、前記樹木の花芽に印加する前記電圧は、絶対値が1キロボルト程度以上であることが望ましい。これにより、花芽の開花を効果的に制御することができる。
【0011】
なお、花芽に対する電圧の印加は、たとえば、電位が付与された電極を前記花芽に接近させることにより行われる。この場合、たとえば、前記電極を前記樹木の枝に沿って移動させることにより、前記枝の前記花芽に前記電圧が印加される。こうすると、枝上の花芽に対して一連の動作により連続的に電圧を印加できるので、花芽に対する電圧の印加をより簡便なものとすることができる。
【0012】
ここで、前記電極は、前記花芽に近付けられる面が球面状に設定され得る。こうすると、枝に沿って電極を移動させる際に電極が花芽や葉等に引っ掛かりにくくなり、電極をスムーズに移動させることができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、花芽の開花制御に用いる電気刺激付与装置に関する。本態様に係る電気刺激付与装置は、電源と、前記電源の電圧供給端子に接続され前記花芽に電圧を付与する電圧付与手段と、前記電源のアース端子を地面に接続する接地手段と、を備える。
【0014】
本態様に係る電気刺激付与装置は、上記第1の態様に係る開花制御方法に用いて好適なものである。本態様に係る電気刺激付与装置を用いることにより、花芽に円滑かつ効果的に電圧を印加することができる。
【0015】
本態様に係る電気刺激付与装置において、前記電圧付与手段は、前記電源の前記電圧供給端子に接続された電極と、前記電極を保持するとともに前記電極から離れた位置を把持可能なホルダと、を備える構成とされ得る。こうすると、作業者は、ホルダを把持して電極を花芽に接近させることにより、花芽に円滑に電圧を印加することができる。
【0016】
本態様に係る電気刺激付与装置において、前記接地手段は、靴底に絶縁状態で設置される電極板を含むよう構成され得る。こうすると、電極板が設置された靴を作業者が履いて地面に立つだけで、地面に対し電源が接地される。よって、作業者は、花芽に対する電圧の印加作業を円滑に行うことができる。
【0017】
なお、本態様に係る電気刺激付与装置は、前記ホルダの被把持部付近に、前記電極と前記電源との接続および非接続を切り替えるスイッチが設けられることが好ましい。こうすると、作業者は、電極に対する電位の付与/非付与を、手元操作により簡単に切り替えることができる。よって、非作業時に電極に電位が付与され続けることが回避され易く、たとえば、作業者は、枝をなぞるときにだけ電極に電位を付与することを簡便に行い得る。これにより、無駄な電力消費を抑制でき、且つ、非作業時の安全性が確保され得る。
【0018】
なお、スイッチは、操作が簡単なプッシュスイッチであることが望ましい。この場合、押し込み位置(オン位置)にボタンが保持されるとともに、再度ボタンを押すことで突出位置(オフ位置)にボタンが戻るタイプのプッシュスイッチが用いられてもよく、あるいは、押し込み位置(オン位置)にボタンが保持されないプッシュスイッチが用いられてもよい。後者のタイプでは、電圧印加の際に作業者がプッシュスイッチを押し続ける必要があるため、前者に比べてやや操作性が低下するものの、作業者が押圧を解除すると直ちに電極への電位の印加が解除されるため、不要な電位の印加を確実に回避できるとの効果がある。
【0019】
また、本態様に係る電気刺激付与装置は、前記電源から前記電極に付与される電位を調節するための調節手段が設けられることが好ましい。こうすると、花芽の開花の時期を印加電圧によって制御できることが期待され得る。また、樹種によって印加電圧を変更することも可能となる。
【0020】
なお、調節手段は、予め、樹種や開花時期毎に印加電圧を段階的に切り替え可能な切替スイッチを含むよう構成され得る。こうすると、作業者は、切替スイッチを所望の位置に設定することにより、所望の樹種や開花時期に対応した電圧を花芽に印加することができる。
【0021】
本態様に係る電気刺激付与装置において、前記ホルダは、前記電極と被把持部との間の距離が調節可能な構成であることが好ましい。こうすると、枝の高低に応じてホルダの長さを調節することにより、目標の枝に電極を円滑に接近させることができる。
【0022】
本態様に係る電気刺激付与装置において、前記電極は、前記花芽に近付けられる面が球面状に設定され得る。こうすると、枝に沿って電極を移動させる際に電極が花芽や葉等に引っ掛かりにくくなり、電極をスムーズに移動させることができる。
【0023】
なお、本態様に係る電気刺激付与装置において、前記電源は、携帯可能な大きさであることが好ましく、また、電気刺激付与装置は、作業者に前記電源を装備するための装備具をさらに備えることが好ましい。こうすると、作業者は電源を携帯しながら木々を容易に渡り歩くことができ、作業性を向上させることができる。
【0024】
本態様に係る電気刺激付与装置において、前記電極は、第1電極部と第2電極部を有し、前記第1電極部と前記第2電極部で枝の周囲を取り囲むように構成され、前記ホルダは、前記第1電極部と前記第2電極部を互いに接近および離間させる機構部を備える構成とされ得る。こうすると、枝の周囲を取り囲むように電極が構成されているため、枝のどの位置に花芽があっても、電極を移動させるだけで、花芽に的確に電圧を印加できる。また、機構部を操作することにより、作業者は、枝に対する電極のセットと取り外しを簡便に行い得る。
【0025】
また、本態様に係る電気刺激付与装置において、前記電圧付与手段は、前記樹木の枝に対する前記電圧の印加を切り替えるための付与位置切替手段を備えるよう構成され得る。この構成によれば、電極で枝を一本ずつなぞらなくとも、枝に対する電圧の印加位置を移動させることができるため、枝に対する電圧の印加作業をより簡便なものとすることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり本発明によれば、簡便かつ快適な作業により花芽の開花制御を実現することが可能な開花制御方法およびそれに用いる電気刺激付与装置を提供することができる。
【0027】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】開花コントロールの検証実験に用いた装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】前記検証実験における花芽への電圧の印加方法を模式的に示す図である。
【図3】前記検証実験における花芽の開花状況(実験結果)を示す図である。
【図4】前記検証実験における花芽と葉芽の開花状況(実験結果)を示す図である。
【図5】実施の形態に係る電気刺激付与装置の構成を示す図である。
【図6】変更例に係る電気刺激付与装置の構成を示す図である。
【図7】電極の構成を変更した電気刺激付与装置の他の構成例を示す図である。
【図8】電圧付与手段を変更する場合の果樹の栽培方法を説明する図である。
【図9】電圧付与手段を変更した電気刺激付与装置の他の構成例を示す図である。
【図10】電圧付与手段を変更した電気刺激付与装置のさらに他の構成例を示す図である。

【0029】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.開花コントロールの検証実験

【0031】
本願発明者らは、花芽に電圧を印加することにより花芽の開花時期をコントロールできることを検証するための実験を行った。まず、この実験について以下に説明する。

【0032】
図1は、開花コントロールの検証実験に用いた装置の構成を模式的に示す図である。

【0033】
本実験では、花芽に電圧を印加するための構成として、ホルダ10、電極20、配線30、電源40、配線50、接地ボード60が用いられた。電極20は、導電性の金属からなる球体であり、絶縁体からなる筒状のホルダ10の先端に装着されている。配線30は、一端が電極20に接続され、他端が電源40の電位付与端子に接続されている。電源40のアース端子は、配線50により接地ボード60に接続されている。接地ボード60は、大地に電気的に接続され、電気系統にグランドレベルを与える。

【0034】
本実験では、電圧を付与する対象として、日本梨が用いられた。また、鉢植えされた日本梨の樹木P1と、日本梨の切り枝P2に対して電圧が印加され、花芽の開花状況が観察された。樹木P1が植え付けられた植木鉢70は、升形の形状である。樹木P1に電圧を印加する場合、植木鉢70が接地ボード60の上面に載せられる。この状態で、植木鉢70内の用土に金属棒(接地棒)の一端が挿入され、金属棒の他端が接地ボード60に電気的に接続される。また、接地ボード60の上面には、発泡スチロールからなる台81が置かれている。切り枝P2に電圧を印加する場合、切り枝P2が台81の上に並べられる。さらに、切り枝P2の根元部分にアルミ箔83が敷設され、このアルミ箔83が配線82によって接地ボード60に接続される。こうして、樹木P1と切り枝P2が接地ボード60に接地される。実験では、この状態で、電源40から電極20に所定の電位が付与された。そして、電極20が樹木P1と切り枝P2に近づけられ、花芽に電圧が印加された。

【0035】
図2は、本実験における花芽への電圧の印加方法を模式的に示す図である。

【0036】
図2には、ホルダ10の先端付近が詳細に示されている。図2に示すように、ホルダ10は屈曲部11が胴部12の端部に嵌め込まれて形成されている。電極20は、屈曲部11の先端に装着される。屈曲部11には孔11aが形成されている。ミノムシクリップ31aに接続されたケーブル31が孔11aから屈曲部11の内部に挿入され、電極20に接続されている。ケーブル31は、バインダ13によって屈曲部11に留められている。ミノムシクリップ31aには、ミノムシクリップ32aが噛み合わされ、このミノムシクリップ32aに接続されたケーブル32が、図1に示す電源40の電位付与端子に接続されている。

【0037】
本実験では、図2に示すように、電極20を枝に接近させた状態で電極20を枝に沿って移動させることにより、枝上の花芽に電圧を印加した。本実験では、電極20を枝に接触させながら、枝と芽を撫でるように、電極20を移動させた。

【0038】
実験条件は、以下のとおりである。

【0039】
(1)樹木P1の開花観察

【0040】
・3年生、樹高約2mの鉢植え樹木P1を5本準備した。

【0041】
・準備した5本の樹木P1の一つは電圧を印加しない対照区とした。

【0042】
・残りの4本の樹木P1は、それぞれ、-1kV、-5kV、+1kV、+5kVの電圧を付与した。ここでは、これらの電位を電極20に付与した状態で、枝に沿って電極20を略一定の速度で移動させて花芽に対する電圧の印加を行った。

【0043】
・樹木P1に対する電圧の印加は、2013年12月19日に1回のみ行った。

【0044】
・電圧印加処理後の4本の樹木P1は対照区の樹木P1とともに、23±0.5℃、相対湿度75%、照度6000lx、16時間日長に制御した恒温室内で育成し、電圧印加後28日目の5本の樹木P1の開花状況を観察した。

【0045】
(2)切り枝P2の萌芽率調査:1回目

【0046】
・同一の日本梨の樹木から直径約1cm、長さ約40cmの切り枝P2を45本採取し、採取した切り枝P2を5本ずつの9個のグループに分けた。採取した切り枝P2は、腋花芽が連続して8節着生するように調整した。

【0047】
・9個のグループのうち一個は電圧を印加しない対照区とした。

【0048】
・残りの8個のグループのうち4個には、それぞれ、-1kV、-5kV、+1kV、+5kVの電圧を印加した。ここでは、これらの電位を電極20に付与した状態で、切り枝P2の全長を電極20が約2秒で通過するように電極20を切り枝P2に沿って移動させて、花芽に対する電圧の印加を行った。

【0049】
・最後に残った4個のグループには、それぞれ、-1kV、-5kV、+1kV、+5kVの電圧を印加した。ここでは、これらの電位を電極20に付与した状態で、切り枝P2の全長を電極20が約5秒で通過するように電極20を切り枝P2に沿って移動させて、花芽に対する電圧の印加を行った。

【0050】
・以上の電圧の印加は、2013年12月19日に1回のみ行った。

【0051】
・電圧印加処理後の各グループの切り枝P2と対照区のグループの切り枝P2は、腐敗防止のため0.03%硫酸アルミニウムおよび0.3%8-ヒドロキシキノリンを添加した水溶液中においた吸水性スポンジに水挿した。

【0052】
・水挿した各グループの切り枝P2は、23±0.5℃、相対湿度75%、照度6000lx、16時間日長に制御した恒温室内で育成し、電圧印加後28日目の各グループの切り枝P2の花芽の萌芽率を調査した。

【0053】
・育成中、基部が黒変したものについては、正常な部分まで切り戻しを行い、その都度、水溶液および吸水性スポンジは新しいものに取り換えた。

【0054】
・腋花芽のりん片が緩んだ後、明瞭な緑色を呈した状態を花芽の萌芽と定義し、萌芽率の算出を行った。萌芽率は、各切り枝P2の上位5節の萌芽の有無から求め、各グループの萌芽率は、グループ中の5本の切り枝P2の萌芽率の平均値で示した。

【0055】
・補足的に葉芽の萌芽率をグループ毎に算出した。ここでも、各グループの切り枝P2の葉芽の萌芽率の平均値を、そのグループの萌芽率とした。本実験では、葉芽のりん片が緩んだ状態を催芽とし、次に大きく緑色を呈したものを萌芽、その後の芽が開く状態を発芽と定義して、葉芽の萌芽率を算出した。

【0056】
(3)切り枝P2の萌芽率調査:2回目

【0057】
・上記1回目の萌芽率調査で切り枝P2を採取した樹木とは異なる樹木(同様に育成した同一品種)から1回目と同様に45本の切り枝P2を採取し、5本ずつ9個のグループに分けた。

【0058】
・9個のグループのうち1個は電圧を印加しない対照区とし、残り8個のグループにそれぞれ1回目の萌芽調査と同様の条件で電圧を印加した。

【0059】
・電圧の印加は、2014年1月9日に1回のみ行った。

【0060】
・電圧印加後、各グループの切り枝P2を1回目の萌芽調査と同様の条件で育成し、電圧印加後28日目の各グループの切り枝P2の花芽の萌芽率を調査した。花芽の萌芽率は、1回目の萌芽調査と同様に算出した。

【0061】
・補足的に、葉芽の萌芽率をグループ毎に算出した。葉芽の萌芽率は、1回目の萌芽調査と同様に算出した。

【0062】
<実験結果>
図3(a)~(g)は、「(1)樹木P1の開花観察」における花芽の開花状況(実験結果)を示す写真である。図3(a)~(e)は、電圧印加後28日目の5本の樹木P1を撮像したものである。図3(a)は対照区の樹木P1の写真、図3(b)~(e)は、それぞれ、-1kV、-5kV、+1kV、+5kVの電位を枝に印加した樹木P1の写真である。また、図3(f)は対照区の樹木P1の開花部分を拡大した写真、図3(g)は-1kVの電位を付与した樹木P1の開花部分を拡大した写真である。

【0063】
図3(a)~(e)を参照すると、対照区の樹木P1に比べて電圧を印加した樹木P1は花芽の開花が促進されていることが分かる。特に、電極20の電位を-1kvとして枝に電圧を印加した図3(b)の樹木P1は、花芽の開花が顕著に促進されていることが分かる。

【0064】
この実験結果から、自発休眠期中に枝に電圧を印加することにより花芽の開花を促進させることが可能であることが検証された。また、印加する電圧の大きさと極性によって、花芽の開花の促進度合いが変わることが分かった。図3(a)~(e)の実験結果からは、枝にマイナス極性の1kVの電位を付与するのが開花の促進に最も効果的であることが分かる。

【0065】
なお、「(1)樹木P1の開花観察」において電圧印加がなされた12月19日は、日本梨の低温遭遇環境を満たす低温期の初期の時期であり、通常、日本梨は、この時期では自発休眠が深い状態にある。

【0066】
なお、日本梨では、品種によって若干異なるが、低温遭遇環境として、10℃以下の温度が休眠打破に有効である。最も休眠打破に効果の高い温度域は5℃以下程度であり、6℃~10℃では、5℃以下の場合の50~70%の効果が見込まれ得る。日本梨の場合、日本では、低温遭遇環境を満たす期間(低温期)の開始時期は、概ね11月後半ごろである。この開始時期から日本梨の低温要求時間である1400時間(約50日)が経過する期間が、休眠打破に必要な低温期の終了時期となる。ここでは、この期間に基づいて、低温期の初期および終期が定義付けされる。たとえば、低温遭遇環境を満たす期間(低温期)の開始時期から1400時間(約50日)の期間を3分割した前側を初期、後ろ側を終期と定義する。

【0067】
次に、図3(f)、(g)を参照すると、対照区に比べて-1kVの電圧を印加した枝は、花が密集していることが分かる。つまり、-1kVの電圧を印加した枝の方が、対照区に比べて、花の原基の開花率が高くなっている。これは、対照区では、低温遭遇環境によって原基のいくつかが開花前に死滅するが、-1kVの電圧を印加することにより、これらの原基が死滅せずに開花したためであると考察され得る。このことから、電圧印加処理は、原基の開花率を高める手段としても有効であると考えられ得る。

【0068】
図4(a)、(b)は、それぞれ、「(2)切り枝P2の萌芽率調査:1回目」と「(2)切り枝P2の萌芽率調査:2回目」の花芽の萌芽率の算出結果を棒グラフで示す図である。

【0069】
まず、図4(a)を参照すると、12月19日に電圧印加処理を行った実験では、-1kVを2秒/枝長の速度で枝に印加したグループと、-1kVを5秒/枝長の速度で枝に印加したグループと、+5kVを2秒/枝長の速度で枝に印加したグループと、-5kVを5秒/枝長の速度で枝に印加したグループにおいて、花芽の萌芽率が対照区に比べて高くなっている。また、上記4つのグループ以外のグループは、対照区に比べて、花芽の萌芽率が低くなっている。さらに、-1kVを5秒/枝長の速度で枝に印加したグループは対照区よりも花芽の萌芽率が高いが、同じ電圧(-1kV)を2秒/枝長の速度で枝に印加したグループは対照区よりも花芽の萌芽率が低くなっている。

【0070】
これらの結果から、自発休眠期中の低温期の初期、すなわち、自発休眠が深い状態において花芽に所定の強さの電圧を所定の速度で印加することにより、花芽の開花が促進され、開花時期を早め得ることが検証された。また、印加する電圧の極性と速度によっては、開花が抑制され、開花時期を遅らせ得ることも検証された。今回の実験結果からは、枝にマイナス極性の5kVの電位を5秒/枝長の速度で付与することが開花の促進に最も効果的であった。開花時期を効果的に早めるためには、樹種に適した電圧の強さと印加速度を確定することが必要であると言える。

【0071】
次に、図4(b)を参照すると、1月9日に電圧印加処理を行った実験では、全てのグループにおいて、花芽の萌芽率が対照区に比べて低くなっている。この実験結果からは、電圧処理を行うタイミングによっては、花芽の開花が抑制され、開花時期を遅らせ得ることが分かる。

【0072】
なお、この実験において電圧印加がなされた1月9日は、日本梨の低温遭遇環境を満たす低温期(低温遭遇時間)の終期であり、通常、日本梨は、この時期では自発休眠が覚めかけている状態にある。したがって、図4(b)の実験結果からは、自発休眠期中の低温期の終期、すなわち、樹木が自発休眠から覚めかけている状態において花芽に電圧を印加することにより、花芽の開花が抑制され、開花時期を遅らせ得ることが検証された。また、図4(b)からは、印加電圧の強さおよび速度によって、花芽の萌芽率の低下の程度が異なることが分かる。よって、開花時期を遅らせる場合も、樹種に適した電圧の強さと印加速度を確定することが必要であると言える。

【0073】
図4(c)、(d)は、それぞれ、「(2)切り枝P2の萌芽率調査:1回目」と「(2)切り枝P2の萌芽率調査:2回目」の葉芽の萌芽率の算出結果を棒グラフで示す図である。図4(c)、(d)を参照すると、電圧印加によって葉芽の発芽をある程度制御可能であるものの、電圧印加による効果は、花芽ほど高くないと言える。

【0074】
以上の実験より、花芽に対する電圧印加は日本梨の開花制御に効果的であることが検証された。この手法は、日本梨以外の他の落葉果樹にも効果があるものと推測され得る。開花制御のために最適な電圧値や電極20の移動速度は、樹種によって異なり、また、電圧の印加時期によっても異なると推測され得る。このような最適条件は、種々の落葉果樹に対して検証を繰り返すことにより確定され得る。

【0075】
2.電気刺激付与装置

【0076】
上述の電圧印加を農園等で行う場合、膨大な数の果樹に対して電圧印加処理を繰り返し行う必要がある。このため、花芽に電圧を印加するための装置は、花芽に対する電圧印加の作業を行い易く、且つ、携帯性および操作性に優れた構成とするのが望ましい。以下、落葉果樹に電圧を印加するための電気刺激付与装置の構成例について説明する。

【0077】
なお、以下の構成において、操作部203は特許請求の範囲に記載の「調節手段」に対応し、ベルト205は特許請求の範囲に記載の「装備具」に対応し、靴セット300は特許請求の範囲に記載の「接地手段」に対応する。ホルダ100および電極101は特許請求の範囲に「電圧付与手段」に対応する。

【0078】
図5(a)~(c)は、電気刺激付与装置1の構成を示す図である。図5(a)は電気刺激付与装置1の全体構成をその使用状況とともに示す斜視図、図5(b)は電源200の構成を示す斜視図、図5(c)は片方の作業靴310の構成を示す斜視図である。

【0079】
電気刺激付与装置1は、ホルダ100と、電源200と、靴セット300と、接続ケーブル1a、1bとを備える。ホルダ100は、直線状に延びるパイプ120の先端に、屈曲した中空の枠110が装着された構成となっている。枠110の先端には、球形の電極101が嵌め込まれて装着されている。パイプ120と枠110は、何れも絶縁体からなっている。

【0080】
電極101には、接続ケーブル1aの一端が接続され、この接続ケーブル1aがパイプ120の内部を通ってパイプ120の端部の開口から外に引き出されている。接続ケーブル1aの他端には棒状のコネクタが設けられており、このコネクタが電源200上面の電位付与端子201に差し込まれる。こうして、電極101と電源200の電位付与端子201が接続ケーブル1aにより接続される。

【0081】
電源200の上面には、電位付与端子201とともにアース端子202が設けられている。また、靴セット300を構成する一対の作業靴310、320のうち、片方の作業靴310には、裏底の踵部分に絶縁部材を介して電極板311が装着され、この電極板311がケーブル312を介してコネクタ313に接続されている。コネクタ313はベルト等によって作業靴310の側面に留められている。このコネクタ313には接続ケーブル1bの一端に設けられた棒状のコネクタが差し込まれる。また、接続ケーブル1bの他端に設けられた棒状のコネクタが電源200上面のアース端子202に差し込まれる。こうして、電極板311と電源200のアース端子202が接続ケーブル1bとケーブル312によって接続される。

【0082】
図5(b)に示すように、電源200の前面には、操作部203と表示部204が設けられている。作業者は、操作部203に配されたボタンまたは摘みを操作することにより、電極101に対する電圧の印加を開始させることができ、また、印加する電圧を所望の値に設定することができる。

【0083】
このように、操作部203には、電源200から電極101に付与される電位を調節するためのボタンや摘みが設けられている。これにより、作業者が所望する花芽の開花の時期に適した印加電圧を広葉果樹に印加することが可能となり、また、樹種によって印加電圧を変更することも可能となる。

【0084】
なお、操作部203は、予め、樹種や開花時期毎に印加電圧を段階的に切り替え可能な切替スイッチを含むよう構成され得る。この切替スイッチは、たとえば、所定の回転角毎に摘みの位置が係止される回転式の切替スイッチとされ得る。こうすると、作業者は、切替スイッチを所望の位置に設定することにより、所望の樹種や開花時期に対応した電圧を花芽に印加することができる。

【0085】
表示部204には、電極101に対する電位の付与が開始されているか否かを示す情報や、印加されている電位の内容を示す情報が表示される。この他、表示部204には、開花時期の制御の内容(たとえば、開花促進/開花遅延、等)や、開花制御の対象とされる樹種等が表示されても良い。

【0086】
電源200には、肩掛け用のベルト205が敷設されている。作業者は、図5(a)に示すようにベルト205を肩に掛けることにより、電源200を携帯でき、電源200を容易に運搬することができる。

【0087】
広葉果樹に電圧を印加する際、作業者は、枠110から離れたパイプ120の端部を把持した状態で、電源200の操作部203を操作して、電極101に所望の電位を付与する。そして、この状態で、図5(a)のように広葉果樹の前の地面に立ち、広葉果樹の枝に沿って電極101を移動させる。作業者が地面に立つと、作業靴310の踵部分に装着された電極板311が地面に触れる。これにより、電源200のアース端子202が地面に接地される。このため、電極101を広葉果樹の枝に接近させると、枝に電圧が付与される。こうして作業者は、広葉果樹の各枝に順次電圧を印加する。そして、全ての枝に対して電圧を印加し終えると、作業者は、次の広葉果樹へと移動し、この広葉果樹に対して同様の作業を実行する。

【0088】
<実施の形態の効果>
以上のとおり、本実施の形態によれば、液材を用いることなく広葉果樹の花芽に電圧を印加するのみであるため、作業中に飛散した液材成分が目鼻に刺激を与えることがなく、よって、飛散した液材成分により快適な作業が阻害されることもない。また、花芽に電圧を印加するのみであるため、開花制御のための作業も簡便である。よって、簡便かつ快適な作業により花芽の開花制御を実現することができる。

【0089】
また、電極101を広葉果樹の枝に沿って移動させることにより、枝の花芽に電圧が印加されるため、枝上の花芽に対して一連の動作により連続的に電圧を印加でき、花芽に対する電圧の印加を簡便なものとすることができる。本実施の形態によれば、数kVの電圧を枝に沿って数秒印加するのみで、枝上の花芽の開花時期をコントロールできる。また、枝に対して長時間電圧を印加し続ける必要がないため、作業も極めて簡便であり、且つ、枝に対して電圧を印加し続ける状態を長時間監視する必要も無い。本実施の形態によれば、簡便な作業により効率的に、花芽の開花時期をコントロールできる。

【0090】
また、電極101は、花芽に近付けられる面が球面状であるため、枝に沿って電極101を移動させる際に電極101が花芽や葉、小枝等に引っ掛かりにくくなり、電極101をスムーズに移動させることができる。

【0091】
また、接続ケーブル1aは、パイプ120の持ち手側の端部から引き出されるため、電圧印加の作業の際に接続ケーブル1aが広葉果樹の枝等に引っ掛かることを回避できる。よって、枝に沿って電極101をスムーズに移動させることができる。

【0092】
また、作業靴310の靴底踵部分に絶縁部材を介して電極板311が装着されているため、作業靴310を作業者が履いて地面に立つだけで、地面に対し電源200のアース端子202が接地される。よって、作業者は、花芽に対する電圧の印加作業を円滑に行うことができる。

【0093】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態および設計例について説明したが、本発明は、上記実施の形態および設計例によって制限されるものではなく、本発明の実施形態も、上記以外に種々の変更が可能である。

【0094】
たとえば、図5(a)~(c)に示す構成では、予め作業靴310の靴底に電極板311が装着されたが、電極板311は、使用の際に作業者が作業靴に設置しても良い。また、電極板311の配置位置は、踵に限られるものではなく、作業の際に地面に触れ易いその他の場所であっても良く、靴底全面を電極板311が覆う形態であっても良い。さらに、電極板311は、片方の作業靴310とともに他方の作業靴320にも同様に設けられても良い。この場合、接続ケーブル1bの下部が2つに分岐し、分岐した各ケーブル部分がそれぞれ作業靴310、320のコネクタに接続される。こうすると、片脚立ちで作業せざるを得ない状況においても、電源200のアース端子202を地面に設置することができる。

【0095】
また、電源200のアース端子202を地面に接地する手段は、靴底に電極板を設ける方法の他にも種々の方法を用い得る。たとえば、接続ケーブル1bの先端に導電性の杭を設け、この杭を地面に差し込むことにより、電源200のアース端子202を地面に接地しても良い。ただし、この方法は、一つの広葉果樹から他の広葉果樹へと移動する際に、電源200を遮断した状態で、杭を地面から抜き取り、さらに、移動後の広葉果樹付近の地面に再び杭を差し込むといった作業が必要となる。よって、作業の簡便性の面からは、上記実施の形態のように、作業靴310の靴底に電極板311を装着する方法が好ましい。

【0096】
また、図5(a)~(c)に示す構成では、パイプ120の長さが固定であり、作業者によって把持される被把持部と電極101の間の距離が一定であったが、この距離が可変であっても良い。

【0097】
図6(a)、(b)は、被把持部と電極101の間の距離を可変とする構成例を示す図である。

【0098】
この構成例では、パイプ120aの一端に枠110が装着され、パイプ120aの他端からパイプ120a内にパイプ120bが挿入されている。また、パイプ120aとパイプ120bの繋ぎ目部分に、パイプ120aに対するパイプ120bの移動を留める留め具120cが設けられている。留め具120cは、周方向に回転可能となっており、一方向に留め具120cを回転させるとパイプ120aに対するパイプ120bの移動が制限され、他方向に留め具120cを回転させるとパイプ120aに対するパイプ120bの移動が許容される。

【0099】
図6(a)は、パイプ120bがパイプ120a内に最も挿入された状態を示している。この状態からパイプ120bを引き出す場合、作業者は、留め具120cを緩めて、パイプ120bを移動可能な状態にする。その後、作業者は、図6(b)に示すように、所望の位置までパイプ120bを引き出して、再び留め具120cを締めつける。こうして、被把持部と電極101の間の距離が変更される。

【0100】
なお、この構成例において、接続ケーブル1aは、パイプ120bを引き出すことが可能なように、螺旋状に巻かれた状態でパイプ120a、120b内に収容されている。これにより、パイプ120bが引き出されて電極101からパイプ120bの下端までの距離が変わると、螺旋が延びることにより、接続ケーブル1aの見かけ上の長さが変化する。

【0101】
この構成例によれば、作業者は、適宜、枝の高低に応じてパイプ120bの引き出し量を調節することにより、目標の枝に電極101を円滑に接近させることができるようになる。

【0102】
また、上記実施の形態では、電源200の操作部203を操作することによって、電極101に対する電位の印加/非印加が切り替えられたが、パイプ120の被把持部付近に電極101に対する電位の印加/非印加を切り替えるためのスイッチが設けられても良い。

【0103】
図6(c)、(d)は、パイプ120の被把持部付近に切替スイッチを設ける構成例を示す図である。図6(c)、(d)には、パイプ120の被把持部付近が拡大して示されている。

【0104】
この構成例では、パイプ120の被把持部120dの上方に孔121が設けられている。また、孔121に対応する位置のパイプ120の内側に、プッシュスイッチ102が装着され、このプッシュスイッチ102の操作ボタンが孔121から外部に臨んでいる。

【0105】
また、この構成例では、乾電池程度の低電圧を所望の電圧値まで上昇させる昇圧回路が設けられる。プッシュスイッチ102は、昇圧回路によって電圧が高められる前の低電圧の回路部分をON/OFFするように設けられる。電極101は、枠110とパイプ120の内部を通る配線によって昇圧回路に接続される。プッシュスイッチ102によりON/OFFされる低電圧の回路部分に接続ケーブル1aが接続され、この接続ケーブル1aがパイプ120に端部から外に引き出されている。

【0106】
電圧調整は、電源200ではなく、昇圧回路によって行われることが望ましい。これらの回路構成は、パイプ120内に収納されることが望ましいが、パイプ120内のスペースでは回路構成の収容に足りない場合は、回路構成を収めるためのボックス状の収納部をパイプ120に連結して、回路構成の収納スペースが確保される。なお、この場合、電源として乾電池を用いることも可能である。こうすると、携帯性をさらに高めることができる。

【0107】
この構成例によれば、作業者は、電極101に対する電位の付与/非付与を、手元操作により簡単に切り替えることができる。よって、非作業時に電極101に電位が付与され続けることが回避され易く、たとえば、作業者は、枝をなぞるときにだけ電極101に電位を付与することを簡便に行い得る。これにより、無駄な電力消費を抑制でき、且つ、非作業時の安全性がより確保され易くなる。

【0108】
なお、プッシュスイッチ102としては、たとえば、押し込み位置(オン位置)に操作ボタンが保持されるとともに、再度操作ボタンを押すことで突出位置(オフ位置)に操作ボタンが戻るタイプのプッシュスイッチが用いられ得る。あるいは、押し込み位置(オン位置)に操作ボタンが保持されないプッシュスイッチがプッシュスイッチ102として用いられてもよい。後者のタイプでは、電圧印加の際に作業者がプッシュスイッチ102の操作ボタンを押し続ける必要があるため、前者に比べてやや操作性が低下するものの、作業者が操作ボタンの押圧を解除すると直ちに電極101への電位の印加が解除されるため、不要な電位の印加を確実に回避できるとの効果がある。

【0109】
また、図6(e)、(f)のように、プッシュスイッチ102がON状態にあることを示すための発光部103がパイプ120の被把持部付近に設けられても良い。発光部103は、たとえば発光ダイオードからなり、被把持部付近に設けられた孔122から外部に臨んでいる。発光部103には、昇圧回路によって電圧が高められる前の乾電池程度の低い電圧が供給される。こうすると、作業者は、被把持部付近の発光部103を見ることにより、電極101に電圧が印加された状態にあるかを容易に確認することができる。よって、無駄な電力消費をさらに抑制でき、且つ、非作業時の安全性が一層確保され易くなる。

【0110】
また、上記実施の形態おいて、電極101は、花芽に近付けられる面が球面状であったが、電極101の形状はこれに限られるものではなく、花芽に近付けられる面が平面または曲面であっても良い。また、電極101は、たとえば、刷毛状の細かい針金の集合体であっても良く、あるいは、導電性プラスチックを用いたスポンジ状の柔らかい電極であっても良い。ただし、上述のように、電極101の花芽に近付けられる面が球面状であると、電極101を枝に沿って移動させる際に、電極101が花や葉、小枝に引っ掛かりにくく、電極101をスムーズに移動させることができる。この効果は、球面形状の他、滑らかに突出する曲面形状であっても奏され得る。

【0111】
また、上記実施の形態における実験では、電極101を花芽に接触させて花芽に電圧を印加したが、電極101を花芽から僅かに離して花芽に電圧を印加しても、同様の効果が期待され得る。

【0112】
<電極の変更例>
上記実施の形態では、球状の電極101を枝に沿って移動させたが、図7(a)~(d)に示すように、枝の周囲を取り囲むように電極が構成されても良い。図7(a)~(d)の構成では、パイプ120の先端に、円弧形状の一対の枠部材410、420が設けられている。パイプ120の先端は、下側の枠部材421に連結されている。上側の枠部材410は、蝶番により下側の枠部材420に回旋可能に支持され、さらにコイルバネ430によって閉塞方向に付勢されている。コイルバネ430の付勢によって枠部材410が閉じると、図7(b)に示すように、枠部材410、420によって中空の筒部が形成される。

【0113】
上側の枠部材410にワイヤー443の一端が連結されている。ワイヤー443の他端は、パイプ120の内部において、スライドレバー444に連結されている。スライドレバー444は、パイプ120の長手方向に移動可能にパイプ120に装着されている。したがって、図7(b)、(d)に示す閉塞状態においてスライドレバー444をパイプ120の端部方向(図7(c)の矢印方向)に手動で移動させることにより、図7(b)、(d)に示すように、上側の枠部材410を開放させることができる。

【0114】
枠部材410、420の内面には、それぞれ、板状の電極411、421が設置されている。電極411、421は、ケーブル441を介してケーブル1aに接続されている。ケーブル411の端部は2つに分かれており、それぞれの端部が電極411、421に接続されている。また、ケーブル441は、スイッチ102によって、短絡および遮断される。スイッチ102がON状態にあるときに、電源200からの電圧がケーブル1aおよびケーブル441を介して電極411、421に印加される。

【0115】
枝に電圧を印加する場合、作業者は、図7(a)、(c)に示すように上側の枠部材410を開放した状態で、2つの枠部材410、420を枝に接近させて、2つの枠部材410、420の間に枝を介在させる。この状態で、作業者は、スライドレバー444を離す。これにより、コイルバネ430の付勢により上側の枠部材410が閉じ、図7(b)、(d)の状態になる。その後、作業者は、スイッチ102をON状態に設定し、2つの枠部材410、420を枝に沿って移動させる。これにより、枝に電圧が印加される。枝の全長に亘って電圧の印加が終了すると、作業者は、スイッチ102をOFF状態に設定する。さらに作業者は、スライドレバー444を操作して、枠部材410を開放し、2つの枠部材410、420を枝から離間させる。その後、作業者は、他の枝に対して同様の操作を繰り返す。

【0116】
図7(a)~(d)の変更例によれば、枝の周囲を取り囲むように電極411、421が構成されているため、枝のどの位置に花芽があっても、枠部材410、420とともに電極411、421を移動させるだけで、花芽に的確に電圧を印加できる。また、手元操作により簡単に枠部材410を開放できるため、枝に対する電極411、421の配置を簡便に行い得る。なお、枠部材410、420の径および幅は、図7(b)の例に限られるものではなく、花芽に良好に電圧を印加できる寸法に適宜調整され得る。花芽に電極411、421を接触させる場合は、図7(b)、(d)の例よりも、枠部材410、420の径が小さく設定される。

【0117】
なお、図7(a)~(d)に示す構成において、電極411、412の一方が特許請求の範囲に記載の「第1電極部」に対応し、他方が特許請求の範囲に記載の「第2電極部」に対応する。また、ワイヤー433およびスライドレバー444が特許請求の範囲に記載の「機構部」に対応する。

【0118】
<電圧付与手段の変更例>
上記実施の形態では、作業者がパイプ120を把持して電極101を移動させることにより、電圧の印加位置を枝に沿って変化させた。しかしながら、電圧の印加位置を枝に沿って変化させる方法は、これに限られるものではなく、自動で、電圧の印加位置を枝に沿って変化させる方法であっても良い。

【0119】
図8および図9は、電圧の印加位置を枝に沿って自動で変化させる場合の構成例を示す図である。なお、図9に示す電圧付与ユニット500が、請求項14に記載の「付与位置切替手段」に相当する。

【0120】
図8に示すように、この構成例では、予め、枝B1~B4が同一方向に延びるように果樹が栽培されている。この例では、枝B1~B4が、略同じ高さ位置で略水平かつ互いに略並行となるように幹T1~T4から延びている。幹T1~T4は主幹Tから枝分かれしている。果樹の上部には、果樹の成長を所定の高さに制限するための棚Sが設置されている。棚Sは、絶縁材料からなっている。果樹はたとえば日本梨であり、棚Sはたとえば梨棚である。

【0121】
この変更例では、枝B1~B4に導線が接触するように、網状の電圧付与ユニット500が棚Sに設置される。

【0122】
図9は、電圧付与ユニット500の設置状態を模式的に示す図である。

【0123】
電圧付与ユニット500は、端子501から延びる導線502が網目状に分岐した構成となっている。導線502には、スイッチ510、520、530、540と絶縁体550、560が図9に示すように直列に接続されている。スイッチ510、520、530、540は、後述のように制御回路602からの制御信号によってON/OFFが切り替え可能で、且つ、1キロボルト程度の電圧に耐え得る高耐圧の素子からなっている。絶縁体550、560に代えて、常時開放状態にあるスイッチが設けられても良い。

【0124】
スイッチ510と絶縁体550との間に枝B1が位置付けられ、スイッチ520と絶縁体550との間に枝B1が位置付けられるように、電圧付与ユニット500の半分が図8の棚Sに設置される。また、スイッチ530と絶縁体560との間に枝B3が位置付けられ、スイッチ540と絶縁体560との間に枝B4が位置付けられるように、電圧付与ユニット500の残り半分が図8の棚Sに設置される。導線502の隣り合う分岐の間隔D(図9参照)は、導線502の全ての分岐において一定である。電圧付与ユニット500は、枝B1~B4上に配置される導線502の部分が、それぞれ、枝B1~B4に接触する状態で設置される。

【0125】
電源ユニット600は、電源601と制御回路602を備える。電源601の電位付与端子(図示せず)が電源付与ユニット500の端子501に接続されている。電源601のアース端子(図示せず)は、たとえば、アース端子が接続された電極を地面に差し込む方法によって接地されている。制御回路602は、図示しない制御ラインを介して、スイッチ510~540を制御する。制御回路602は、CPU等の演算処理回路とメモリを備え、メモリに保持されたプログラムに従ってスイッチ510~540を制御する。制御回路602は、スイッチ510~540のON/OFFを切り替えることにより、枝B1~B4に対する電圧の印加を制御する。

【0126】
たとえば、枝B1~B4に電圧を印加する場合、制御回路602は、まず、スイッチ510~540を全てOFF状態に設定し、電源602から端子501に電圧を印加する。このようにスイッチ510~540の全てがOFF状態にある場合、枝B1~B4に接触する導線502の部分は何れも電圧が供給されない。このため、枝B1~B4には、どの個所にも電圧が印加されない。この状態で、制御回路602は、最上段右端のスイッチ510のみをON状態に切り替える。これにより、枝B1の右端の部分に接触する導線502の部分に電圧が供給され、枝B1の右端の位置P11に電圧が印加される。

【0127】
その後、制御回路602は、右端のスイッチ510をOFF状態に切り替え、同時に、右から2番目のスイッチ510をON状態に切り替える。これにより、枝B1の右から2番目の位置P12に電圧が印加される。以下同様に、制御回路602は、ON状態に設定するスイッチ510を順番に左方向に移していく。これにより、枝B1の右端から左端へと電圧の印加位置が送られる。こうして、恰も枝B1に沿って電極を移動させたと同様の電圧の印加状態が実現される。

【0128】
その後、制御回路602は、左端のスイッチ510をOFF状態に切り替え、同時に、2段目右端のスイッチ520をON状態に切り替える。これにより、枝B2の右端の位置P21に電圧が印加される。さらに、制御回路602は、右端のスイッチ520をOFF状態に切り替え、同時に、右から2番目のスイッチ520をON状態に切り替える。これにより、枝B2の右から2番目の位置P22に電圧が印加される。以下同様に、制御回路602は、ON状態に設定するスイッチ520を順番に左方向に移していく。これにより、枝B2の右端から左端へと電圧の印加位置が送られる。その後、制御回路602、枝B3、B4に対しても上記と同様の制御を実行する。これにより、枝B3、B4の右端から左端へと電圧の印加位置が送られる。枝B4に対する電圧の印加が終了すると、制御回路602は、電圧の印加処理を終了する。

【0129】
図8および図9の構成例によれば、上記実施形態のように電極101で枝を一本ずつなぞる必要がない。よって、作業者は、枝に対する電圧の印加作業をより簡便に行い得る。

【0130】
なお、図8のように栽培された果樹において、2本の枝B1、B2に同時に電圧を印加した場合、地面との抵抗値が低い枝B2に電流が集中して流れる。この場合、枝B1およびB2には同じ大きさの電圧がかっており、電位差がない(同電位)ため、枝B1、B2間には電流は流れない。このことから、1本の果樹の2本以上の枝に同時に電圧を印加することは望ましくない。この点を考慮して、図9の構成例では、枝B1~B4のうち、何れか1つの枝の1カ所のみに電圧が印加されるよう、スイッチ510~540が制御される。これにより、枝B1~B4に所望の強度の電圧を的確に印加することができる。

【0131】
なお、分岐の間隔D(図9参照)を縮めるほど、枝に対する電圧印加のピッチを細かくでき、花芽に電圧が印加され易くなる。しかし、その反面、分岐の間隔Dを縮めるほど、導線502の分岐部分の密度が高くなり、果樹に日光が届きにくくなる。よって、分岐の間隔Dは、花芽に対する電圧の印加と果樹に対する日光の照射とを考慮して調整する必要がある。分岐の間隔Dは、必ずしも一様で無くても良く、隣り合う分岐部分ごとに異なっていても良い。

【0132】
また、図8および図9には、便宜上、枝が4本である場合を例示したが、枝の数は4本に限られるものではない。たとえば、枝が5本以上ある場合は、適宜、枝の並び方向における導線502の分岐数を増加させる等、各枝の長手方向の異なる位置に電圧を選択的に印加するための構成が追加される。

【0133】
また、図8および図9の構成では、枝B1~B4に対し、右端から左端へと電圧の印加位置を変化させたが、枝に対する電圧の印加位置の変更はこの方法に限られるものではなく、スイッチ510~540の切替制御によって、任意に調整可能である。たとえば、幹T1の連結位置(枝B1の中央位置)から枝B1の右端に向かう方向に電圧の印加位置を移動させた後、幹T1の連結位置から枝B1の左端に向かう方向に電圧の印加位置を移動させても良く、あるいは、枝B1の右端から幹T1の連結位置に向かう方向に電圧の印加位置を移動させた後、枝B1の左端から幹T1の連結位置に向かう方向に電圧の印加位置を移動させても良い。

【0134】
さらに、電圧付与ユニット500は、導線502の全ての部分が外部に導電可能な状態でなくても良く、少なくとも枝B1~B4上に配置される導線502の部分のみが外部に対して導電可能であれば良い。たとえば、枝B1~B4上に配置される導線502の部分以外の部分は、全て、絶縁体によって被覆されていても良い。また、図9の構成例では、スイッチ510~540を制御する制御回路602が電源ユニット600側に設けられたが、制御回路602が電源付与ユニット500側に設けられても良い。

【0135】
図8および図9の構成例では、網目状の電圧付与ユニット500を棚Sに設置して枝B1~B4に電圧を印加したが、枝B1~B4を長手方向に自走する電圧付与ユニットにより枝B1~B4に沿って電圧を印加する構成であっても良い。

【0136】
図10は、枝B1~B4を長手方向に自走する電圧付与ユニット700の構成を模式的に示す図である。なお、図10には、便宜上、電圧付与ユニット700の構成のうち電圧印加に関する部分の構成のみが示されている。なお、図10に示す電圧付与ユニット700も、請求項14に記載の「付与位置切替手段」の一例である。

【0137】
電圧付与ユニット700は、自走の際に枝B1、B2上を転がるローラ711、721を備える。ローラ711、721の外周面には、それぞれ、螺旋状に導体712、722が巻き付けられている。導体712、722はブラシなどで電源801の電位付与端子(図示せず)に電気的に接続されている。導体712、722は、両方が同時に枝B1、B2に接触しないように、巻き方が調整されている。また、導体712、722が同時に枝B1、B2に接触しないように、枝B1、B2の間隔に応じてローラ711、712の相対位置が調整可能である。すなわち、電圧付与ユニット700は、枝B1、B2を跨ぐ方向にローラ711、712の相対位置を調節するための機構部を備えている。

【0138】
このような機構部は、たとえば、ローラ711、712を回転可能に支持する支持枠を案内するための長孔と、長孔に嵌り支持枠にネジ留めされるネジとを備える構成とされ得る。ネジを緩めると、支持枠が長孔に沿って移動可能となり、ネジを締めると、支持枠が固定される。作業者は、ネジを緩めた状態で、導体712、722が同時に枝B1、B2に接触しないようにローラ711、712の相対位置を調整し、その後、ネジを締めつけて、ローラ711、712の位置を固定する。

【0139】
なお、図10の構成では、電源801が電圧付与ユニット700とは別に設けられているが、電源801は、電圧付与ユニット700に内蔵されていても良い。

【0140】
枝B1、B2に電圧を印加する場合、作業者は、上記のようにローラ711、712の相対位置を調整した後、電圧付与ユニット700を枝B1、B2の右端に載せ、導体712、722に電圧を印加した状態で、電圧付与ユニット700を枝B1、B2の右端から左端に向かって自走させる。これにより、導体712、722の一方のみが枝B1、B2の一方に間欠的に当接し、枝B1、B2に電圧が印加される。この動作により、枝B1、B2に対する電圧の印加位置が、枝B1、B2の右端から左端へと移動する。こうして、恰も枝B1、B2に沿って電極を移動させたと同様の電圧の印加状態が実現される。

【0141】
枝B1、B2に対する電圧の印加が終了すると、作業者は、導体712、722に対する電圧の印加を遮断した後、電圧付与ユニット700を、枝B3、B4の右端に載せる。この場合も、作業者は、適宜、ローラ711、712の相対位置を調整する。その後、作業者は、上記と同様、導体712、722に電圧を印加した状態で、電圧付与ユニット700を枝B3、B4の右端から左端へと自走させる。これにより、枝B3、B4に対する電圧の印加位置が、枝B3、B4の右端から左端へと移動し、恰も枝B3、B4に沿って電極を移動させたと同様の電圧の印加状態が実現される。

【0142】
なお、図10の例では、電圧付与ユニットに2つのローラ711、721が設けられたが、ローラの数はこれに限られない。たとえば、4つの枝B1~B4上をそれぞれ転がる4つのローラが電圧付与ユニット700に設けられ、各ローラに導体が巻き付けられても良い。この場合も、自走の際に4つの枝B1~B4のうち一つのみに導体が接触するよう、導体の巻き方が調整され、また、ローラ間の相対位置が調整される。また、一つの枝上を転がるローラのみが配置されても良い。この場合、複数の枝に同時に電圧が印加されることが起こり得ないため、ローラ外周の全領域に電極を配置すれば良い。

【0143】
本発明の実施の形態は、請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0144】
100 … ホルダ
101 … 電極
102 … プッシュスイッチ
110 … 枠
120 … パイプ
120a … パイプ
120b … パイプ
120c … 留め具
200 … 電源
203 … 操作部
205 … ベルト
300 … 靴セット
313 … 電極板
411、412 … 電極
433 … ワイヤー
444 … スライドレバー
500 … 電圧付与ユニット
700 … 電圧付与ユニット
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図3】
9